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番外個体「小さい一方通行?」 軍覇妹
「嘘でしょう? 他のは低くても中能力者(レベル2)だってのに。低能力者(レベル1)……か」
試験室に落胆した様な声が響く。
『絶対能力進化』の要である『御坂美琴』のクローン体の少女『ミサカ』は、自身が低能力者--つまりは失敗作だという事実を受け入れた。
「はあ……ダメね、『実験』には使えないわ。あなたは廃棄処分よ、ついてきなさい」
「分かりました、とミサカは頷きます」
試験室から出て、研究者に連れられて廃棄場に向かうミサカ。
彼女は特に恐怖を感じる事はなかった。
彼女が『学習装置』で学んだのは、言葉や行動といった自らの意思表示に必要な最低限の知識のみで、感情など入力されなかった。
--そのはずだった。
「ほら、キビキビ歩きな……うっ」
ミサカは自分の方を見ずに先を歩いていた研究者の首筋を強打して昏倒させる。
研究者が動かないのを確認すると、研究所の出口を目指して走り出す。
ミサカは走る。
ただ只管に。
出口を探して。
追ってきた研究者達を振り切り、何とか街へと出てきたミサカ。
が、研究所が寄越したのであろう武装した男達に再び追い立てられ、路地裏の袋小路に追い詰められる。
「ふん、手こずらせやがって。大人しく廃棄処分されてりゃ痛い目見ずに済んだのにな」
男達は銃を構える。
ミサカはここまでか、と死を覚悟する。
--その時。
「おい、そこのお前ら。幼気な女子を寄って集って追い立てるとは、根性ってもんが足りてねえな」
声のした方に男達が振り返ると、学ランをバンカラスタイルで羽織り、朱く輝く旭を抱くシャツを着た、見るからに暑苦しい少年が立っていた。
「何者か知らんが、俺達の邪魔を」
「すごいパーンチ」
「しようってんならブギュルワ!?」
少年の、問答無用の正義もとい根性の剛拳が振るわれ、男の一人が錐揉み回転をしながらミサカの後ろまで吹っ飛ばされる。
423 名前:新作?プレビュー ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 20:29:11.08 ID:vltfcMAO [3/3]
「くそ、貴様何をビリュワ!?」
「おい、ちょ、待てデュリウエ!?」
少年が拳を振るう度、ミサカを追ってきた男達が奇声をあげながら吹っ飛ばされていく。
男達をミサカの後ろで山積みにした所で、暑苦しい少年はミサカに声をかける。
「怪我はないか、お嬢ちゃん」
「はい……助けて頂いてありがとうございます、とミサカは感謝を述べます」
「なに、当然の事をしたまでだ。さあ、いつまでもここにいたら危ない、家まで送ってやろう」
少年のその言葉に、ミサカは暗い表情で答える。
「ミサカには……帰るべき家がありません、とミサカは自身の現状を報告します」
「そうか! ならばオレの家に来るといい! 一人で使うには広くてな、ちょうどルームメイトが欲しいと思っていた所だ!」
あっさりそう言い放つ少年に度肝を抜かれるミサカ。
かくしてクローン少女と昭和系ヒーローの、ハチャメチャにして暑苦しい日々が始まった。
431 名前:423続き ◆bmhfkfa102[sage] 投稿日:2010/05/18(火) 00:57:11.99 ID:nrzceQAO [1/9]
「なるほど。つまりその絶賛何とかの過程で造られたトランジスタラジオがお前って事か」
「『欠陥電気(レディオノイズ)』です、とミサカは訂正を求めます」
暑苦しい少年--削板軍覇の住む部屋で、ミサカは彼に自身について説明する。
トレーニングをしながら聞いていた削板は、理解した所までを簡単にまとめて確認を取った。
重要な所を間違っているが。
「ミサカは本来ならば達しているはずの条件を満たしていなかった為、廃棄処分が決定されました。
しかし、その事実を受け入れたはずのミサカは、気づいたらそれを拒む行動に出ていたのです、
とミサカは逃走に至るまでの経緯を懇切丁寧に説明します」
「廃棄処分……つまりは死を恐れる事を根性無しとは言わん。誰だって死ぬのは恐いからな。
……だが、逃げる他に出来る事があったはずだ! 能力が低かったなら上げればいい! そうだろう?」
「確かにその通りだと思います、しかしミサカにはその機会すら与えられなかったのです、とミサカは報告します」
432 名前: ◆bmhfkfa102[sage] 投稿日:2010/05/18(火) 00:58:55.42 ID:nrzceQAO [2/9]
それを聞いた削板は腕を組んで唸りながら何かを考え始める。
しばらくして何かを思いついたのか大きく頷いて、
「よし! ならばオレと修行をするぞ! スローガンは『根性に不可能は無い!』だ!」
「修行……ですか? とミサカは頭に疑問符を浮かべます」
「その通り! お前を廃棄処分なんぞにしようとした連中を見返してやりたくはないか!? いや見返してやるんだ!!
根性さえあれば何でも出来る! お前の根性を見せてみろ!!」
--『根性』。
ミサカは削板が語るその言葉に、何故かとても神秘的かつ超常的な力を感じた。
「はい! お願いします、師匠! とミサカは気合いの入った返事をします!」
「いい返事だ! 根性を養う前にまずはその説明口調を直すぞ!」
「しかしこの口調はミサカの個性へぶう!?」
反論しようとしたミサカは、削板が放った謎の衝撃波に吹っ飛ばされる。
「馬鹿者! 個性とは最初からあるものではない! 日々のたゆまぬ努力と根性で作り上げるものなのだああああああ!!」
433 名前: ◆bmhfkfa102[sage] 投稿日:2010/05/18(火) 01:00:15.95 ID:nrzceQAO [3/9]
ズハーンとぶち上げられた驚愕の新事実に、ミサカは開いた口が塞がらなかった。
「確かに……! 師匠! ミサカが間違っていました! ミサカの説明口調! 根性で直してみせます! と、ミ……!」
謎の感動を覚えたミサカは、早速後半の言葉を封印し始める。
「ようし! その意気だ! 根性だあああ!」
「根性おおおおおお!!」
「そして! 根性は健全なる肉体にこそ宿る! 今日からこのメニューをこなすのだ!」
そう言ってミサカに一枚のメモを渡す削板。
そこに書かれたメニューとは、腹筋・背筋・スクワット・腕立て各300回二セット、バリーザブートキャンプ基本~最終を一セットというハードスケジュールだった。
(な、なんという過酷さ……! しかし! こんな事で根をあげては! 師匠に合わせる顔がない! 根性、根性、ド根性おおおおおお!!)
ミサカは早速そのスパルタメニューをこなし始める。
「ふにゃああああああ!! ふしゃああああああ!! だらっしゃああああああ!!」
434 名前:しまったsageてた ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/18(火) 01:01:09.16 ID:nrzceQAO [4/9]
ズハーンとぶち上げられた驚愕の新事実に、ミサカは開いた口が塞がらなかった。
「確かに……! 師匠! ミサカが間違っていました! ミサカの説明口調! 根性で直してみせます! と、ミ……!」
謎の感動を覚えたミサカは、早速後半の言葉を封印し始める。
「ようし! その意気だ! 根性だあああ!」
「根性おおおおおお!!」
「そして! 根性は健全なる肉体にこそ宿る! 今日からこのメニューをこなすのだ!」
そう言ってミサカに一枚のメモを渡す削板。
そこに書かれたメニューとは、腹筋・背筋・スクワット・腕立て各300回二セット、バリーザブートキャンプ基本~最終を一セットというハードスケジュールだった。
(な、なんという過酷さ……! しかし! こんな事で根をあげては! 師匠に合わせる顔がない! 根性、根性、ド根性おおおおおお!!)
ミサカは早速そのスパルタメニューをこなし始める。
「ふにゃああああああ!! ふしゃああああああ!! だらっしゃああああああ!!」
435 名前:二重投稿しちまうとは根性が足らん ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/18(火) 01:02:34.19 ID:nrzceQAO [5/9]
一週間後。
筋骨隆々、とまでは行かなくとも、引き締まった肉体を手に入れたミサカ。
「よし! これまでの修行で体力はかなり向上したはずだ! 次は精神力向上の為の修行だ! 行くぞ!」
「ハイ師匠! ……えーと、どこへ、ですか?」
「オレの実家だ!」
学園都市から離れる事数十km、人里離れた山に建つ坤浄寺にやって来た削板とミサカ。
「ここが……師匠の実家……! なんとも荘厳な空気に満ち溢れています……! ミサカは早くも心が押し潰されてしまいそうです……!」
「無理もないな。根性の伝道師であるオレでさえ、未だにこの空気には畏怖さえ感じる。まだまだ根性が足りんな」
境内へ向かうと、堂内から一人の男が出てくる。
「久しいな軍覇よ。少しは根性を鍛えて来た様だな。まあ、儂に較べたら未だ未だ、と云った処だが」
一声発するだけで、辺りに強烈な『氣』を同時に発する削板の父の姿に、思わず膝をつき深々と頭を下げるミサカ。
「軍覇よ。この娘がお主の言っていた根性の灯火を持つ少女か」
436 名前: ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/18(火) 01:05:21.53 ID:nrzceQAO [6/9]
削板が静かに頷き、その男--削板の父である住職がミサカを見やる。
「娘、面を上げよ」
ミサカは彼の言葉に気圧され、言われるままに顔を上げる。
「良いか、根性を鍛えると云う事は生半可な気概では成し得ぬ行だ。お主の覚悟の程を見せて貰うぞ」
「は、はい! お願いします!」
それからというもの、削板と共に仏門の修行に明け暮れるミサカ。
様々な修行を繰り返すうちに、ミサカは心に灯る根性の火が次第に大きくなるのを感じた。
二週間後。
再び学園都市に戻って来た削板とミサカ。
夕飯の買い出しの為に第七学区を往くミサカは、ゴツい軍用ゴーグルを着けたミサカを見かける。
そのミサカも彼女に気付いたのか、彼女に近付いてくる。
「あなたはミサカと同じミサカのようですが、何番目のミサカですか、とミサカは検体番号の確認を取ります」
「そもそも廃棄処分されるはずだったこのミサカに、検体番号なんてものがあると思うの?」
「口調がミサカ達と違いますね、とミサカは違和感を覚えます」
437 名前: ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/18(火) 01:07:32.61 ID:nrzceQAO [7/9]
そのミサカはしばらく思案すると、彼女に再び質問を投げかける。
「では、固有名詞はありますか? とミサカは質問します。ちなみにミサカの固有名詞はマユです、とミサカは名乗ります」
「名前があるか……って事? うーん……」
ミサカは考える。
無論削板には付けて貰ってはいない。
削板に付けてくれ、などと言えば「根性が足らん!」と叱られる事は明白である。
それだけは意地でも避けたいミサカは、しばらく悩んだ挙げ句、
「……サヤ。今考えた名前だけど、他人任せにするよりは根性があるわよね?」
「根性があるかどうかは分かりませんが、素敵な名前だと思います、とミサカは感心します」
そんな事よりも、とマユは前置きして、
「一つ重要なお知らせがあります、とミサカは何故か脳波リンクがされていないサヤに口頭で伝えます。
『絶対能力進化計画』は第一位『一方通行』が実験に介入した無能力者に敗北した為に、その中止が決定されました、
とミサカは事実を報告します」
438 名前: ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/18(火) 01:09:40.91 ID:nrzceQAO [8/9]
そんな事、と言われてムッとしたサヤだったが、実験が中止になったと聞かされて内心ホッとした。
コレで他のミサカ達も死なずに済んだのか、と。
「そう。今のミサカには関係ない事だけど、一応お礼は言っとくわ。さーて早く行かないとタイムセールがおわっちゃうー」
あくまで興味がない様に装って、かなりの速度でその場を後にするサヤ。
あれは生体電流でも操って身体能力を向上させているのだろうか、とマユはぼんやり考えていたが、
「……はっ! ミサカも早く行かなくては、浜面さんと滝壺さんが待っています、とミサカはスーパーへダッシュで向かいます」
そう言ってサヤの向かったスーパーへとマユも向かう。
「今日はすき焼きか! 根性の入った料理だな!」
「ミサカは初めてお肉を食べます! それでは……」
「「いただきます!!」」
土鍋にグツグツと煮え立ったすき焼きを、二人の根性ある猛者が壮絶な肉の奪い合いを繰り広げながら食べ尽くしていった。
根性の夜更けは、まだまだ訪れない。
444 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:24:07.87 ID:SfuZEoAO [1/12]
(『ただの機械』にでもされるかと思ってたんだがな……普通に五体満足で生かされてやがる。何企んでやがんだ、アレイスター)
垣根帝督は、気がつくと『冥土帰し』の病院にいた。
一方通行に生きたまま粉々にされた気がしたのだが、事実体はある。
不思議に思い、病室の窓ガラスを見た垣根は驚嘆する。
(……誰だコイツは!? コレが、俺なのかよ!?)
彼の姿は、元の『垣根帝督』のそれではなく、全くの別人へと変貌していた。
唖然とする垣根の元に、カエル顔の医者がやって来る。
「やあ、新しい体の調子はどうだい?」
「あ? あんたが俺をこの体にしやがったのか。大した驚きぶりだぜ」
「君の体はバラバラにされてしまったから体は新しく作ったけど、君の脳を回収して移植するのに苦労したよ。まあ、実際に回収してきたのは彼女なんだけどね?」
そう言って後ろを振り返る医者につられて、垣根も病室の入口を見る。
そこには、野球帽を被った『欠陥電気』が立っていた。
「お前……あの時の『欠陥電気』じゃねえか。なんで……」
「言ったじゃないですか。ミサカはあなたの味方ですから、とミサカはあの日に想いを馳せます」
445 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:26:07.22 ID:SfuZEoAO [2/12]
数ヶ月前のその日、垣根はあてもなく街をぶらついていた。
裏の『仕事』もないらしく、『心理定規』が一切連絡を取って来ない。
暇を持て余していたが特にしたい事も見つからない為、散歩ついでに趣味探しでもしてみよう、と思い立って街に出た。
ふと人通りの少ない路地を見ると、野球帽を被った一人の少女が大勢の男達に囲まれているのが見えた。
(はん、情けねえヤロウ共だ。あんな人数で一人をナンパとはな)
垣根はその光景を無視して散歩を続ける事にした--つもりだった。
「つまんねえ連中だなあオイ。女一人に何人がかりなんだよ?」
自分で気付いた時には、垣根は既に男達を挑発していた。
「ああ? なんだてめえは? 失せやがれ」
自分の行為に驚いた垣根だったが、後に退く気になれず、更に男達を挑発する。
「何でもいいだろ、クズ共が。目障りだから消えてくれねえか?」
「この女のツレか? だったら目の前で拉致られんのを」
「消えろっつったんだよ、聞こえなかったか? それとも……『未元物質』の餌食になりてえのか?」
そう言う垣根の背中に、『未元物質』による三対の白い翼が現れる。
446 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:29:00.10 ID:SfuZEoAO [3/12]
それを見た男達は彼が何者かに気づき、蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。
(ちっ、下らねえ事しちまったな)
心の中で自分の行為に毒づく垣根。
「ありがとうございます天使様、とミサカは膝をつき祈る様に感謝をします」
「天使様はよしてくれ。実は結構気にしてるんだ」
ばつが悪そうに少女から目を逸らす垣根。
だが、この端正な顔立ちの少女にならそう呼ばれるのも意外と悪くないと思い、垣根は微かに笑った。
「それで、天使様は何というお名前なのですか、とミサカはメルヘン野郎に質問します」
「おい、誉めんのか貶すのかどっちかにしろ! ……垣根だ、垣根帝督」
せっかくのいい気分を即座にぶち壊されて、半ばふてくされ気味に名乗る垣根。
「帝督……まさかの司令官! とミサカは意味の分からない驚き方をします」
「『ていとく』違いだ。俺は帝王の帝に監督の督だ」
いちいち説明させんな、と言いつつ律儀に説明する垣根。
「なるほど、とても素敵な名前ですね天使様、とミサカはメルヘン野郎の名前の格好良さに惚れ惚れしますぷふっ」
「いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞ!?」
447 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:31:53.74 ID:SfuZEoAO [4/12]
馬鹿馬鹿しくなった垣根は、少女を置いてその場を立ち去る。
少女が後ろを付いてきている気もしたが、気にせずに散歩を続行。
散歩を続行。
散歩を
「はっはっはっ、どこへ行こうというのかね? とミサカはメルヘン☆ていとくんの三歩後ろを追従しながら問います」
続ける垣根を追いながら少女は垣根に問いかける。
「大声で変な名前で呼ぶな! ただの散歩だ、あてなんかねえよ」
垣根の後を追いながら少し思案し、何かを思い付いた少女は再び口を開く。
「なるほど、『お前は俺の背中だけを見て、黙って遅れずに付いて来い』ですか。何というていと関白、とミサカはあなたの名前でダジャレを作ってみます」
何故かどや顔で垣根を見つめる少女に、垣根は呆れて応える。
「はっ、上手くもなんともねえな。十点」
「十点満点を頂けるとは光栄です、とミサカは自分に何らかの才能がある事を自覚します」
「誰が十点満点中だと言った? 百点満点中に決まってんだろ」
「おやおやこれは手厳しい、とミサカは額を叩きます」
あちゃー、と言いたげに額を叩く少女に、呆れて声も出ない垣根。
448 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:34:41.01 ID:SfuZEoAO [5/12]
その時、垣根の携帯が鳴り出す。
ディスプレイに表示された名前は--『心理定規』。
「ようやく『仕事』が入ったのか。ったく、待たせやがって……んで? 今度は俺らに何させてえって?」
『まあ、簡単なものよ。内容は、学園都市に来訪中の『原石』の保護。どうやら『科学結社』とやらが捕まえようとしているらしいわ』
「先回りしてその『原石』を確保するか、『科学結社』をぶっ潰す。そのどっちかでいいんだろ?
だったら俺は後者を選ぶね。守りながら戦うのは柄じゃねえからな」
『そう。なら私と残りの面子で『原石』を保護しておくわね。じゃあ』
一通り話し終えると携帯をしまう垣根。
少女はその様子を黙って見ていたが、電話を終えたと見るや何故か垣根を問い詰める。
「今の女は誰ですか、あなたの信者ですかそれとも恋人ですか、とミサカは詰問します」
「ああ? 単なる仕事仲間だよ。つうか何でそんな事聞いてきやがるんだ?」
少女は何処か苛立っているような表情で、垣根の質問に答えようともせずにそっぽを向く。
(ったく、何なんだコイツは……訳分かんねえ奴だな……ん? 待てよ、まさか……)
449 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:36:40.96 ID:SfuZEoAO [6/12]
「さてはお前、妬いてんのか?」
垣根にそう指摘されて慌てふためく少女。
「べっ別にミサカはメルヘン使様の事なんか、これっぽっちも、すすす好きなんかじゃないんですから!
とミサカはあなたの的を射た発言にツンデレ反応をしてみます!」
「……何だそりゃ。てかメルヘンと天使様混ざってるぞ」
何故か少しだけこの少女に興味が湧いてきた垣根は、アジトの住所が書かれたメモを少女に手渡す。
少女は不思議そうな顔をしながらメモを受け取り、
「これはつまり『帰って来るのを料理でも作って待ってろ』と言うツンデレ的メッセージですね、
とミサカは自分に都合のいい解釈をしてみます」
と言って表情を綻ばせる。
その笑顔を見た垣根の胸は高鳴り、顔は火照る。
「は、はん、そんなんじゃねえよ! ちいっとてめえに興味が湧いただけだ! 変な解釈してんじゃねえ!」
慌てて顔を逸らしたものの、彼のその様子を見た少女はいやらしい笑みを浮かべる。
「嬉しさを隠す為の苦し紛れの言い訳にしか聞こえませんよぷふっ、とミサカは垣根さんを嘲笑しますぷふっ」
「うっうるせえっ!」
450 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:41:11.11 ID:SfuZEoAO [7/12]
夜も更けてしばらくした頃。
『原石』保護並びに『科学結社』討伐という仕事を終えてアジトに帰還する垣根達。
アジトから何やら芳しい蒸気が漏れている事を訝しんだ心理定規が、急ぎアジトに向かう。
アジトの扉を開き、蒸気の発生源へと向かうと、そこでは割烹着に身を包んだ少女が幾つかの料理を作っていた。
「あら、貴女は誰かしら? 見たところ、下部組織の人間では無いようだけれど」
突然声をかけられても一切動じる事なく振り返り、心理定規の問いに答える少女。
「ミサカはミサカといいます、正確には検体番号14001号のミサカです、とミサカは自己紹介をします」
「ふうん、そうなの。それで、『欠陥電気』が何故ここにいるのかしら? うちの男の中の誰かに連れ込まれたといった感じ?」
そんな事をしそうな男はいないはずなのだけど、と呟き、後からやって来た『スクール』の男性陣に一瞥をくれる心理定規。
「オイオイ……本当に料理を作って待ってるとは思わなかったぜ」
早くも嫁気取りかよ、と呆れ気味の反応をする垣根。
そんな垣根を見つけた少女は、薄く笑みを浮かべ、割烹着を脱ぎ捨てて彼に飛びつく。
451 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:45:14.67 ID:SfuZEoAO [8/12]
「お帰りなさい垣根さん、とミサカはあたかも新妻の如き愛慕の情を披露します」
そう言って胸に顔を埋められ、複雑な表情で立ち尽くす垣根。
「あら、さすがはリーダー。もう嫁候補がいるだなんて、隅に置けないわね」
いやらしい笑みを浮かべて心理定規が言う。
「少し羨ましいかな。僕にも誰か紹介して欲しいな」
異様な出で立ちの少年は皮肉を言って微笑む。
「他人の色恋沙汰に口を挟む気は無い……まあ、幸せにな」
肩に銃を提げた男は、既に結婚秒読みであると勘違いしているかの様な言葉を垣根に投げかける。
彼等『スクール』の上の人間は変なところが律儀で、報酬は必ず下部組織の人間経由での現金直払いとなっている。
こういう事をするなら本人が直接来いと言いたいが、本人の多忙さは重々承知している為、敢えて気にしない事にしている『スクール』の構成員達。
やって来た下部組織から渡された報酬を受け取り、それぞれ帰路につく。
垣根も出ようかと思ったが、「一口も食べずに行こうだなんて、女心が分かってないのね」と心理定規に煽られ、仕方なく少女作の手料理で遅めの夕食を取る。
452 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:46:51.80 ID:SfuZEoAO [9/12]
「……へえ。学習装置で覚えた知識だけでもやれば出来るもんだな」
少女の料理に舌鼓を打つ垣根。
「料理が出来る女はポイント高いわよ。男は女の手料理に弱いから」
と心理定規。
「って、お前は何でまだいるんだよ?」
「あら、女一人で夜道を帰れって言うの? 相変わらずの甲斐性なしね」
「女性をエスコートするのは男性の務めだと学習したのですが、とミサカは心理定規さんに同意します」
ほら見なさい、と勝ち誇った顔で垣根を見下す心理定規。
「はん、お前の能力ならチンピラだろうがスキルアウトだろうが問題ないだろ」
食事を終え、心理定規を送り届けた垣根は、少女と共に家路を行く。
少女と共に。
「って何で付いてくるんだ? 帰る家がねえ訳じゃねえだろ?」
「偶然同じ方向にミサカが泊まり込みで働かせて貰っている病院があるのです、とミサカは説明します」
「そうか、そんじゃそこまで送ってやるよ」
病院に辿り着き、少女と別れて自分の居場所に戻る垣根に、少女は声をかける。
「何かあったらいつでもこの病院にご連絡下さい、必ずあなたの助けとなります! ミサカはいつでも、ずっとあなたの味方ですから!」
453 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:48:48.82 ID:SfuZEoAO [10/12]
そして現在。
垣根の病室を見舞った少女は、あの時の約束を守り、垣根の人生を守ったのだ。
「有言実行ってやつか。俺は命まで救った覚えはねえんだがな。って事は、借りが出来ちまったか」
「気にしないで下さい、ミサカが勝手に助けただけですから、とミサカは垣根さんが生きている事を素直に喜びます」
そう言って微笑む少女を見て、垣根の表情も自然と綻ぶ。
「そうそう垣根君、気付いているとは思うけどね? 今の君は『女の子』だから、その辺りは自覚して生活してくれるかね?」
(………………はっ? この医者、今何つった?)
嫌な予感がして自身の体を弄る垣根。
(ない!? アレがねえ!? そしてこの胸の膨らみは……!!)
そう、窓に映った自分を見た時点では童顔の少年だと思った、女性だとは思えなかったし思いたくなかった。
その時に体も調べるべきだった、と言うか声出した時点で気付けよ自分、と垣根は激しい自己嫌悪に陥りつつ、
「お、おい! 何で『女』なんだよ!? 『男』じゃ駄目な理由でもあるのかよ!? っていねえ!」
いつの間にか病室から姿を消していたカエル顔の医者の代わりに、少女がその理由を語り始める。
454 名前:未元電気投下 ◆bmhfkfa102[saga] 投稿日:2010/05/23(日) 20:52:46.92 ID:SfuZEoAO [11/12]
「垣根さんは表では死亡した事になっていますので、元通りにする事は避けようと言う事になりました。
そこで新たに肉体を製造する事になったのですが、その過程でY染色体に異常が発生した為に非常に中性的な肉体になっていまして、
ならばいっそ女性にしてしまおうという事になって現在に至るという感じです、とミサカは懇切丁寧に説明します」
「なんかその場のノリで決めたみたいな言い方だなオイ」
「さすがは垣根さんその通りです、とミサカは垣根さんの勘の鋭さを褒め称えます」
「んな事褒められても嬉しくねえよ! 不幸だああああああ!!」
垣根は頭を抱えて断末魔の如き叫び声をあげる。
「何か叫び声が聞こえましたが、とミサカは首を傾げます」
「俺にも聞こえた。誰の声だろうな?」
「私にも聞こえた。北北東から電波も届いた」
道行くとある男女三人組は、その叫び声を聞いて首を傾げる。
「……なンか寒気が……」
「えーっ大丈夫!? ってミサカはミサカはあなたを心配してみる!」
幼女を連れた杖突く少年は、その叫び声に何故か危機感を覚えた。
新たに得た体で、図らずも「『未元物質』に常識は通用しない」を身をもって示した垣根なのだった。
455 名前: ◆bmhfkfa102[] 投稿日:2010/05/23(日) 21:01:05.45 ID:SfuZEoAO [12/12]
終わり
垣根♀ことミカちゃんネタは他スレでやってる様なのでここでは今後浜壺妹の続きに絡めるかも知れない
浜壺妹のネタはまだ考え中だけど
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