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残虐少女「あひっ! ひっひひゃっひゃひゃひゃひゃ」
1 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:09:47.17 ID:7nPkOsDO [1/16]
継母「さぁ、さっさとおめかしして! お城の舞踏会に遅れることはできないの!」
姉娘「お母さん、そんなこと言ってもこの子は」
妹娘「あまり興味がないようですよ」
残虐少女「………」
継母「さぁ、さっさとおめかしして! お城の舞踏会に遅れることはできないの!」
姉娘「お母さん、そんなこと言ってもこの子は」
妹娘「あまり興味がないようですよ」
残虐少女「………」
2 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:13:01.18 ID:7nPkOsDO [2/16]
継母「体面ってものよ」
継母「一番下の娘さんは? なんて聞かれたら……来てませんとは言えないでしょう」
姉娘「……聞いたでしょ? 早く支度をしなさいよ、この愚図」
妹娘「お、お姉ちゃん」
残虐少女「………」
スタスタ
姉娘「まったく、あの生意気な態度……改めさせなきゃ」
3 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:14:15.29 ID:7nPkOsDO
継母「あらいけない、舞踏会が始まりそう」
妹娘「もう出発しましょう。私、少女ちゃんに伝えてきます」
継母「わかったわ」
姉娘「………」
継母「妹ちゃんは良い子ね、ちゃんと少女ちゃんの面倒まで……」
継母「それに比べて、姉娘……さっきの口の悪さ、あなたこそ改めるべきでなくて?」
姉娘「おわかりになっていませんのね、母上」
継母「いったい何をかしら?」
姉娘「あの子は、妹娘は」
姉娘「私以上の性悪ですよ」
4 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:17:26.11 ID:7nPkOsDO
妹娘「あら、それが精一杯のおめかしなのかしら?」
残虐少女「……」
妹娘「貴方の肌って、白くてとっても素敵だわ」
妹娘「まるで豚の肌みたい」
残虐少女「……」
妹娘「目は、そう……この間亡くなった叔父さんみたいに濁っているし」
妹娘「髪の毛は古井戸の底みたいな色」
妹娘「貴方みたいなのが舞踏会に出たら、私まで恥をかくの。分かる?」
残虐少女「……」
妹娘「謝りなさい」
妹娘「額を床に擦り付けるの」
残虐少女「……」
5 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:19:12.64 ID:7nPkOsDO
妹娘「さっさとしなさいよ、さあ!」
残虐少女「……」
継母『妹娘? 早くしないと遅れます!』
妹娘「……っ、分かりました」
妹娘「じゃあ参りましょうか、少女」 にこり
残虐少女「……」
6 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:20:56.68 ID:7nPkOsDO
継母「さあ、大部屋に入ったら社交場」
継母「最初にすることは何かしら? 姉娘」
姉娘「え? ……ええと」
妹娘「招待にあずかったことに対する感謝の辞述ですね」
継母「さすが妹娘、しっかりしてるわ」
継母「さてどなたのお招きにあずかったのかしら?」
姉娘「大地主さんです!」
継母「そう だからまずは大地主さんのところへ向かいます」
継母「学識の広い方ですから分からない話を振られることもありましょう」
継母「しかし、黙り込んではなりませんよ」
継母「学のない私たちでも、機知を働かせれば場を取り繕えるのです」
継母「肝に銘じなさい」
両娘「はい」
残虐少女「………」
7 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:22:45.23 ID:7nPkOsDO
大地主「やあよく来てくれた 会えて嬉しいよ」
継母「お目にかかれて光栄ですわ」
大地主「可愛らしい娘さんたち、こんばんは」
両娘「こんばんは」
残虐少女「……」
大地主「おや、こちらのとびきり愛想の良いお嬢さんは?」
継母「お聞かせするには少々な話なのですが、よろしいですか」
大地主「構わんよ」
継母「お気遣いありがとうございます」
―――――
8 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:25:24.77 ID:7nPkOsDO
継母「つい先日私の夫が突然の不幸な死に見舞われたのは、ご存知のことと思います」
継母「しかしそれ以上に突然の、驚くべきことに、夫には隠し子がおりまして」
継母「私の家に養うこととなり、当初は戸惑いましたが、今はもう、この子は立派な家族の一員ですわ」
大地主「よほど人を驚かせるのが好きみたいですな、運命ってやつは」
継母「ええ、それはもう……」
9 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:27:54.38 ID:7nPkOsDO
大地主「ところで、舞踏会の後なんだが、私の家に貴方をご招待したい」
大地主「積もり積もる話もありそうですしな」
継母「ええ、無理に都合をつけてでも是非……」
商人「こんばんは、地主さん!」
大地主「おお、必ずよい知らせを届けてくれる、偉大な伝書鳩よ!」
商人「鳥頭って? 今度の商談で勘定を違えても怒らないでくださいよ」
大地主「私の最も信頼する若き友人が、勘定など間違えるはずもないだろう」
大地主「こちら、紹介しよう。継母と姉娘、妹娘に少女だ」
継母「お見知りおきを、ええと、伝書鳩さん?」
商人「参ったな。僕は鳩じゃないですよ、胸はたしかに厚いけど」
10 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:29:34.73 ID:7nPkOsDO
大地主「こちらは商人。中々の好青年だろう?」
大地主「まだ恋人はいないそうだ」
商人「そういう意味でも、よろしく」
大地主「さて、一つ踊りませんか、継母」
継母「喜んで」
商人「ではそちらのお嬢さん、お手を拝借」
残虐少女「……」
スッ
両娘「!」
11 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:32:45.76 ID:7nPkOsDO
姉娘「あの子、踊りの心得あったのね。何も知らないような顔して」
妹娘「そうですね」
姉娘「……何を考えてるの?」
妹娘「大地主さんと継母のことですよ」
姉娘「父が死んで、寂しいんでしょ」
妹娘「我が母ながら、軽い女です」
姉娘「な、何てことを言うのよ」
妹娘「地主家への招待、お受けしたでしょう」
妹娘「ほんの一月前まで貞淑な妻だった女が、今宵は夫でない男に股を開くのですよ?」
妹娘「それも権力のある大地主さん……」
妹娘「ああ、まるで売女です」
姉娘「……言葉が過ぎるわよ、淑女にしてはね」
12 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:34:00.26 ID:7nPkOsDO
大地主「さて、今宵はお集まりいただきありがとうございました」
大地主「我が国の穀の豊穣地をめぐる戦争が続き、不安定な時勢ではありますが」
大地主「こうして皆で楽しい一時を過ごすのは、心に安らぎという潤いを与えるために不可欠です」
大地主「さもなければ、心が乾いて不毛の土地に変わりかねませんから。まるでどこかの国のようにね」
大地主「これでお開きとなりますが、皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます」
大地主「明日からの日々の糧としての今日を、ありがとう」
14 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:38:52.85 ID:7nPkOsDO
継母「ご立派な挨拶でしたわ」
大地主「まぁ、出まかせだ」
継母「なんてご立派な出まかせかしら」
妹娘「私達は先においとまします。楽しい一時をありがとうございました」
大地主「ああ。夜道に気を付けて」
姉娘「あれ、少女は?」
妹娘「商人さんと踊り終えた後から、姿が見えませんね」
姉娘「まったく……もういい時間だってのに、あの愚図」
妹娘「先に帰ってしまいましょう」
姉娘「一人で大丈夫かしら」
妹娘「畜生が畜生を犯すようなことが起きても、なんら問題ないでしょう」
姉娘「……」
15 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:44:48.78 ID:7nPkOsDO
継母「上品なお宅ですわ」
大地主「君さえよければ、住んでもいいのだけどね」
継母「それは……使用人として、でしょうか?」
大地主「……私の部屋で教えよう」
継母「はい……」
残虐少女「…………」
16 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:47:15.89 ID:7nPkOsDO
翌朝
姉娘「大変よ! 母さんがっ!」
妹娘「んう、なんですか早朝から……」
姉娘「母さんが大地主さんの家で火事に巻き込まれて!」
姉娘「死んだって!」
妹娘「……なんてこと」
残虐少女「……」
17 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:52:41.90 ID:7nPkOsDO
姉娘「……ちょっと、少女?」
残虐少女「……」
姉娘「な、何でそんなに嬉しそうなのよ!?」
妹娘「姉さん。落ち着いて」
残虐少女「……」
姉娘「だって! だって、少女ったら……笑うんだもの」
妹娘「……」
23 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 21:59:07.25 ID:/PRjeQDO [1/11]
商人「やあ」
妹娘「こんにちは」
商人「今回のことは聞いたよ。不審火だなんて、物騒な世の中になったものさ……」
妹娘「……本当に物騒ですね」
妹娘「私の母はいったい誰に殺されたんでしょうか」
商人「あ、いやその。そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
妹娘「じゃあどういうおつもりで? なんとなく情をかけてみたというところですの?」
商人「……純粋に君が気に掛かっただけだよ。そう辛く当たらないでくれ」
妹娘「……」
商人「……」
24 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 21:59:44.63 ID:/PRjeQDO [2/11]
妹娘「ごめんなさい、取り乱して。私、母が死んでとっても心細くて」
商人「僕につとまるか分からないけど、君の相談相手にならいつだって立候補する」
商人「だから、あまり悲しそうな顔をしないで」
妹娘「……ありがとう」
25 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:00:57.46 ID:/PRjeQDO [3/11]
商人「今日は一人で来てるのかい?」
妹娘「姉と少女も一緒です」
商人「しかし王様も暇の多い方だ。このような豪勢な食事会を……」
妹娘「おそらく……貴族への愛想の振りまきといったところでしょう」
商人「何のためだい」
妹娘「最近の財政事情のために、貴族への地代免除に疑問の声があがっていますから」
妹娘「貴族の特権はもはや砂上の楼閣。次の議会における法案提出では……」
商人「なるほど、恐れ入るよ。聡いお嬢さんだ」
26 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:01:38.98 ID:/PRjeQDO [4/11]
王子「楽しんでおられますか?」
姉娘「ええ。素晴らしい料理に素晴らしい賓客の皆々様! 楽しめないはずがないですわ」
王子「それは喜ばしいこと!」
王子「どうです、少し宮庭内を散策してみませんか?」
姉娘「! ……はい、ご一緒させていただきます」
27 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:03:27.67 ID:/PRjeQDO [5/11]
姉娘「今日はなぜこのような機会を?」
王子「さあ。道楽者の父を宮宰が誑かしたのかもしれません」
姉娘「あら、その宮宰さまはなんて大物なのかしら」
王子「……」
王子「その、姉娘さん」
姉娘「はい」
王子「私はあなたの家のご不幸を知っています」
王子「そのせいでしょうか、あなたが冗談を言うたび、そこにぎこちなさを感じてしまいます」
姉娘「……」
王子「本当は、今日のような会を楽しめていないのでしょう?」
姉娘「……建前を抜きにすれば、仰る通りです」
王子「ならば、あなたに美しいものを見せたいと思います」
王子「僅かでも、あなたの慰みになれば……」
28 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:04:45.03 ID:/PRjeQDO [6/11]
姉娘「一つ、お聞きしたいのですが」
王子「なんです?」
姉娘「なぜ、私のような娘に、ここまでのお気遣いをなさってくれるのですか……?」
王子「……あなたが、私の大切な人民だからです」
姉娘「まぁ!」
姉娘「浅はかにも期待したお言葉ではありませんでしたが……」
姉娘「貴方様はきっと、今にご立派な王様となるでしょうね」
29 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:06:29.44 ID:/PRjeQDO [7/11]
――――――――
姉娘「私が見た中で一番素敵な庭ですわ」
王子「そうですね、芝や花壇の薔薇、隅々まで手が行き届いている……」
王子「でも、僕はこれらを本当の美しさではないと思うんです」
姉娘「それなら、どんなものが真に美しいと仰るのです?」
王子「……ついてきてください」
30 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:07:33.22 ID:/PRjeQDO [8/11]
姉娘「すごい……!」
王子「実は裏門から少し歩くと、この切り立った崖にこれるんです」
王子「街並が一望できる絶景……おや、あれはあなたのお住まいですか?」
姉娘「……管理の行き届いた美しさよりも、自然の創りだした自由な絵画……」
姉娘「感服いたしました」
31 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:13:18.11 ID:/PRjeQDO [9/11]
王子「僕はこの風景が真の美しさだとは言ってないですよ」
王子「ただ一つ言えるとすれば」
王子「あなたの驚きに満ちた瞳は、どんな宝石より美しく輝いていました」
姉娘「王子様……!」
どんっ
王子「なっ」
姉娘「えっ」
がらがら……
残虐少女「……」
32 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:15:22.14 ID:/PRjeQDO [10/11]
―――――――――
妹娘「あ、見つけたわ。そこの小汚い娘!」
残虐少女「……」
妹娘「裏門に何か用でもあったのかしら? 向こうから歩いてきたみたいだけど」
残虐少女「……」
妹娘「……まぁ良いわ。私、姉さんを探してくる」
残虐少女「……」
33 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:21:38.79 ID:/PRjeQDO [11/11]
妹娘「どこへ行ったのかしら、姉さん」
……け……たす……て……
妹娘「? 声が……、姉さん!?」
妹娘「姉さん! どこ!?」
姉娘「ここ! したよ!」
妹娘「た、大変!」
姉娘「なんとか木に掴まったけど、もう…、手がっ」
妹娘「姉さん!!」
姉娘「……妹、よく聞きなさい! 少女は! あの娘はっ!」
姉娘「悪魔よ!!!」
するっ
姉娘「いやああぁあぁぁぁあっ!!!!!」
ぐしゃ
妹娘「……神様」
38 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/04(火) 04:16:37.36 ID:93zmFsDO
「……あの話、聞いたわよね」
「ああ、王子様とあの娘の話ね」
「皆が言うような、無理心中ではないと思うの」
「身分の差を思いつめて……って噂?」
「そう」
「噂ってのはね、流れたいように流れるものよ。恣意的に、暴力的に」
「そもそもが無理のある話よね。あの王子様は色狂いだったって話だし」
「あったわね。『孕ませた娘の責任をとらない王子様の尻拭いを大枚はたいて務めた宮宰』事件とか」
「きっと今回もそうよ。あの色狂いが娘に迫って、娘は切り立った崖に追い詰められて……」
「なるほどね。それが一番しっくりくる結末」
妹娘「……」
妹娘「……なによもう、結局噂は流れたいように流れるってわけ?」
妹娘「ふざけないでよ!!」
妹娘「……ふざけないでよ……」
42 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[saga] 投稿日:2010/05/05(水) 03:50:46.73 ID:f1OegADO [1/12]
残虐少女「……」
妹娘「あなたが姉さんを殺したのよね?」
残虐少女「……」
妹娘「何故? 王子様に見初められた姉さんを妬んで?」
残虐少女「……」
妹娘「答えなさいよ……。それか、笑うのを止めなさい」
残虐少女「……」
妹娘「あんたが来てから、不幸続きだわ」
妹娘「母さんに続いて、姉さんまで……」
残虐少女「……」
妹娘「全部あんたのせいよ。疫病神の豚畜生」
こんこん
妹娘「あら、お客様かしら」
残虐少女「……」
43 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/05(水) 03:51:50.24 ID:f1OegADO [2/12]
商人「こんにちは」
妹娘「あ……こんにちは。今日はどういった御用向きで?」
商人「なに、これを受け取ってもらおうと思ってね」
妹娘「……指輪?」
商人「どうか薬指に……左手のね」
妹娘「ああ、なんてことなの! こんなに幸せなのって、私初めて!」
商人「明日の朝、君を迎えに来る」
商人「それから、この国を出よう。君には少し悲しみが重すぎる土地だから……」
商人「どこか遠くで、二人でやっていこう」
妹娘「……はい、きっと」
残虐少女「……」
45 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:14:50.18 ID:f1OegADO [3/12]
妹娘「そういうわけで、私は明日隣国へ発つわ」
妹娘「あなたにはこの家をあげるから、上手くやりなさいよ」
残虐少女「……」
妹娘「とは言っても……社交界で幅を利かせていた母さんが亡くなった今……」
妹娘「この家の一族を相手にしてくれる貴族がどれだけいるかしら?」
妹娘「財産の取り分に関しては、私が9であなたが1よ」
妹娘「血縁関係の法としては、正妻の子供のみに相続権があるわけだし」
妹娘「お情けにしては多すぎるかしらね? ま、ありがたく受け取りなさい」
残虐少女「……」
46 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:15:34.73 ID:f1OegADO [4/12]
妹娘「しかし、不気味な目をしてるわ、あんたって」
残虐少女「……」
妹娘「今にも人を、私を殺しそうな目をしてる……」
残虐少女「……」
妹娘「今日は包丁を持って床に就くとしましょうか」
妹娘「部屋に入ってきたら殺すわ」
残虐少女「……」
妹娘「じゃ、おやすみ」
47 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:16:09.97 ID:f1OegADO [5/12]
――――――――――――
妹娘(さあ、来るなら来なさい!)
妹娘(母さんと姉さんを殺した張本人め!)
妹娘(どちらも殿方とうまく行きかけたところを妬んで、そして……)
妹娘(来るなら今夜のはず。絶対に眠れないわ……)
――――――――――――
48 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:16:50.28 ID:f1OegADO [6/12]
翌朝
こんこん
商人「おはよう」
妹娘「はい、支度は出来ております」
商人「じゃあ馬車に荷物を積んじまおう」
商人「こいつらに手伝いを頼んだから、手や足の代わりに使ってくれ」
大男二人「うす」
妹娘「よろしくお願いしますわ」
49 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:17:35.62 ID:f1OegADO [7/12]
商人「なかなか、荷物が多いな」
妹娘「ええ、母さんや姉さんの遺品も少し入れてしまったので」
商人「しかし、あの少女って子はどうするんだい?」
妹娘「構いませんわ。この家に残され、餓えて死のうと……ね」
商人「そうかい」
50 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:18:34.61 ID:f1OegADO [8/12]
商人「さて、あらかた積み終えたな」
妹娘「ええ」
商人「二人とも、最後の荷物を頼む」
大男二人「うす」
妹娘「きゃあっ!!? な、なにをっ!」
妹娘「むぐっ……!」
商人「猿轡と拘束はしっかりな。商品に傷が付いたらかなわない」
妹娘「!!」
商人「ああ、泣いちまうほどショックだったか 悪いな」
商人「大人しくお願いしますよ、お嬢さん?」
51 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/05(水) 22:21:06.33 ID:f1OegADO [9/12]
商人「さて、この位の値段で手をうとう」
残虐少女「……」
商人「元貴族、しかも敵国の奴隷ってことを加味しても、これ以上の値となるとあの国では売れないだろう」
残虐少女「……」
商人「久しぶりに良い仕事だった。感謝する」
残虐少女「……」
商人「まったく肝の座ったお嬢さんだな。こちらも少し君について調べたよ」
商人「……母親は異民だったそうじゃないか」
商人「虐げられた記憶なんかに縛られていたら、自由には生きられないと思うがね」
商人「……ま、奴隷商のいう言葉じゃない。聞かなかったことにしてくれ」
商人「じゃあな」
残虐少女「……」
52 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:22:26.12 ID:f1OegADO [10/12]
残虐少女「……」
残虐少女「……ひっ」
残虐少女「あひっ! ひっひひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
53 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:23:38.92 ID:f1OegADO [11/12]
残虐少女「……一生分、笑ったかしら」
終わり
継母「体面ってものよ」
継母「一番下の娘さんは? なんて聞かれたら……来てませんとは言えないでしょう」
姉娘「……聞いたでしょ? 早く支度をしなさいよ、この愚図」
妹娘「お、お姉ちゃん」
残虐少女「………」
スタスタ
姉娘「まったく、あの生意気な態度……改めさせなきゃ」
3 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:14:15.29 ID:7nPkOsDO
継母「あらいけない、舞踏会が始まりそう」
妹娘「もう出発しましょう。私、少女ちゃんに伝えてきます」
継母「わかったわ」
姉娘「………」
継母「妹ちゃんは良い子ね、ちゃんと少女ちゃんの面倒まで……」
継母「それに比べて、姉娘……さっきの口の悪さ、あなたこそ改めるべきでなくて?」
姉娘「おわかりになっていませんのね、母上」
継母「いったい何をかしら?」
姉娘「あの子は、妹娘は」
姉娘「私以上の性悪ですよ」
4 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:17:26.11 ID:7nPkOsDO
妹娘「あら、それが精一杯のおめかしなのかしら?」
残虐少女「……」
妹娘「貴方の肌って、白くてとっても素敵だわ」
妹娘「まるで豚の肌みたい」
残虐少女「……」
妹娘「目は、そう……この間亡くなった叔父さんみたいに濁っているし」
妹娘「髪の毛は古井戸の底みたいな色」
妹娘「貴方みたいなのが舞踏会に出たら、私まで恥をかくの。分かる?」
残虐少女「……」
妹娘「謝りなさい」
妹娘「額を床に擦り付けるの」
残虐少女「……」
5 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:19:12.64 ID:7nPkOsDO
妹娘「さっさとしなさいよ、さあ!」
残虐少女「……」
継母『妹娘? 早くしないと遅れます!』
妹娘「……っ、分かりました」
妹娘「じゃあ参りましょうか、少女」 にこり
残虐少女「……」
6 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:20:56.68 ID:7nPkOsDO
継母「さあ、大部屋に入ったら社交場」
継母「最初にすることは何かしら? 姉娘」
姉娘「え? ……ええと」
妹娘「招待にあずかったことに対する感謝の辞述ですね」
継母「さすが妹娘、しっかりしてるわ」
継母「さてどなたのお招きにあずかったのかしら?」
姉娘「大地主さんです!」
継母「そう だからまずは大地主さんのところへ向かいます」
継母「学識の広い方ですから分からない話を振られることもありましょう」
継母「しかし、黙り込んではなりませんよ」
継母「学のない私たちでも、機知を働かせれば場を取り繕えるのです」
継母「肝に銘じなさい」
両娘「はい」
残虐少女「………」
7 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:22:45.23 ID:7nPkOsDO
大地主「やあよく来てくれた 会えて嬉しいよ」
継母「お目にかかれて光栄ですわ」
大地主「可愛らしい娘さんたち、こんばんは」
両娘「こんばんは」
残虐少女「……」
大地主「おや、こちらのとびきり愛想の良いお嬢さんは?」
継母「お聞かせするには少々な話なのですが、よろしいですか」
大地主「構わんよ」
継母「お気遣いありがとうございます」
―――――
8 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:25:24.77 ID:7nPkOsDO
継母「つい先日私の夫が突然の不幸な死に見舞われたのは、ご存知のことと思います」
継母「しかしそれ以上に突然の、驚くべきことに、夫には隠し子がおりまして」
継母「私の家に養うこととなり、当初は戸惑いましたが、今はもう、この子は立派な家族の一員ですわ」
大地主「よほど人を驚かせるのが好きみたいですな、運命ってやつは」
継母「ええ、それはもう……」
9 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:27:54.38 ID:7nPkOsDO
大地主「ところで、舞踏会の後なんだが、私の家に貴方をご招待したい」
大地主「積もり積もる話もありそうですしな」
継母「ええ、無理に都合をつけてでも是非……」
商人「こんばんは、地主さん!」
大地主「おお、必ずよい知らせを届けてくれる、偉大な伝書鳩よ!」
商人「鳥頭って? 今度の商談で勘定を違えても怒らないでくださいよ」
大地主「私の最も信頼する若き友人が、勘定など間違えるはずもないだろう」
大地主「こちら、紹介しよう。継母と姉娘、妹娘に少女だ」
継母「お見知りおきを、ええと、伝書鳩さん?」
商人「参ったな。僕は鳩じゃないですよ、胸はたしかに厚いけど」
10 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:29:34.73 ID:7nPkOsDO
大地主「こちらは商人。中々の好青年だろう?」
大地主「まだ恋人はいないそうだ」
商人「そういう意味でも、よろしく」
大地主「さて、一つ踊りませんか、継母」
継母「喜んで」
商人「ではそちらのお嬢さん、お手を拝借」
残虐少女「……」
スッ
両娘「!」
11 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:32:45.76 ID:7nPkOsDO
姉娘「あの子、踊りの心得あったのね。何も知らないような顔して」
妹娘「そうですね」
姉娘「……何を考えてるの?」
妹娘「大地主さんと継母のことですよ」
姉娘「父が死んで、寂しいんでしょ」
妹娘「我が母ながら、軽い女です」
姉娘「な、何てことを言うのよ」
妹娘「地主家への招待、お受けしたでしょう」
妹娘「ほんの一月前まで貞淑な妻だった女が、今宵は夫でない男に股を開くのですよ?」
妹娘「それも権力のある大地主さん……」
妹娘「ああ、まるで売女です」
姉娘「……言葉が過ぎるわよ、淑女にしてはね」
12 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:34:00.26 ID:7nPkOsDO
大地主「さて、今宵はお集まりいただきありがとうございました」
大地主「我が国の穀の豊穣地をめぐる戦争が続き、不安定な時勢ではありますが」
大地主「こうして皆で楽しい一時を過ごすのは、心に安らぎという潤いを与えるために不可欠です」
大地主「さもなければ、心が乾いて不毛の土地に変わりかねませんから。まるでどこかの国のようにね」
大地主「これでお開きとなりますが、皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます」
大地主「明日からの日々の糧としての今日を、ありがとう」
14 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:38:52.85 ID:7nPkOsDO
継母「ご立派な挨拶でしたわ」
大地主「まぁ、出まかせだ」
継母「なんてご立派な出まかせかしら」
妹娘「私達は先においとまします。楽しい一時をありがとうございました」
大地主「ああ。夜道に気を付けて」
姉娘「あれ、少女は?」
妹娘「商人さんと踊り終えた後から、姿が見えませんね」
姉娘「まったく……もういい時間だってのに、あの愚図」
妹娘「先に帰ってしまいましょう」
姉娘「一人で大丈夫かしら」
妹娘「畜生が畜生を犯すようなことが起きても、なんら問題ないでしょう」
姉娘「……」
15 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:44:48.78 ID:7nPkOsDO
継母「上品なお宅ですわ」
大地主「君さえよければ、住んでもいいのだけどね」
継母「それは……使用人として、でしょうか?」
大地主「……私の部屋で教えよう」
継母「はい……」
残虐少女「…………」
16 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 00:47:15.89 ID:7nPkOsDO
翌朝
姉娘「大変よ! 母さんがっ!」
妹娘「んう、なんですか早朝から……」
姉娘「母さんが大地主さんの家で火事に巻き込まれて!」
姉娘「死んだって!」
妹娘「……なんてこと」
残虐少女「……」
17 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/22(木) 00:52:41.90 ID:7nPkOsDO
姉娘「……ちょっと、少女?」
残虐少女「……」
姉娘「な、何でそんなに嬉しそうなのよ!?」
妹娘「姉さん。落ち着いて」
残虐少女「……」
姉娘「だって! だって、少女ったら……笑うんだもの」
妹娘「……」
23 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 21:59:07.25 ID:/PRjeQDO [1/11]
商人「やあ」
妹娘「こんにちは」
商人「今回のことは聞いたよ。不審火だなんて、物騒な世の中になったものさ……」
妹娘「……本当に物騒ですね」
妹娘「私の母はいったい誰に殺されたんでしょうか」
商人「あ、いやその。そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
妹娘「じゃあどういうおつもりで? なんとなく情をかけてみたというところですの?」
商人「……純粋に君が気に掛かっただけだよ。そう辛く当たらないでくれ」
妹娘「……」
商人「……」
24 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 21:59:44.63 ID:/PRjeQDO [2/11]
妹娘「ごめんなさい、取り乱して。私、母が死んでとっても心細くて」
商人「僕につとまるか分からないけど、君の相談相手にならいつだって立候補する」
商人「だから、あまり悲しそうな顔をしないで」
妹娘「……ありがとう」
25 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:00:57.46 ID:/PRjeQDO [3/11]
商人「今日は一人で来てるのかい?」
妹娘「姉と少女も一緒です」
商人「しかし王様も暇の多い方だ。このような豪勢な食事会を……」
妹娘「おそらく……貴族への愛想の振りまきといったところでしょう」
商人「何のためだい」
妹娘「最近の財政事情のために、貴族への地代免除に疑問の声があがっていますから」
妹娘「貴族の特権はもはや砂上の楼閣。次の議会における法案提出では……」
商人「なるほど、恐れ入るよ。聡いお嬢さんだ」
26 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:01:38.98 ID:/PRjeQDO [4/11]
王子「楽しんでおられますか?」
姉娘「ええ。素晴らしい料理に素晴らしい賓客の皆々様! 楽しめないはずがないですわ」
王子「それは喜ばしいこと!」
王子「どうです、少し宮庭内を散策してみませんか?」
姉娘「! ……はい、ご一緒させていただきます」
27 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:03:27.67 ID:/PRjeQDO [5/11]
姉娘「今日はなぜこのような機会を?」
王子「さあ。道楽者の父を宮宰が誑かしたのかもしれません」
姉娘「あら、その宮宰さまはなんて大物なのかしら」
王子「……」
王子「その、姉娘さん」
姉娘「はい」
王子「私はあなたの家のご不幸を知っています」
王子「そのせいでしょうか、あなたが冗談を言うたび、そこにぎこちなさを感じてしまいます」
姉娘「……」
王子「本当は、今日のような会を楽しめていないのでしょう?」
姉娘「……建前を抜きにすれば、仰る通りです」
王子「ならば、あなたに美しいものを見せたいと思います」
王子「僅かでも、あなたの慰みになれば……」
28 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:04:45.03 ID:/PRjeQDO [6/11]
姉娘「一つ、お聞きしたいのですが」
王子「なんです?」
姉娘「なぜ、私のような娘に、ここまでのお気遣いをなさってくれるのですか……?」
王子「……あなたが、私の大切な人民だからです」
姉娘「まぁ!」
姉娘「浅はかにも期待したお言葉ではありませんでしたが……」
姉娘「貴方様はきっと、今にご立派な王様となるでしょうね」
29 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:06:29.44 ID:/PRjeQDO [7/11]
――――――――
姉娘「私が見た中で一番素敵な庭ですわ」
王子「そうですね、芝や花壇の薔薇、隅々まで手が行き届いている……」
王子「でも、僕はこれらを本当の美しさではないと思うんです」
姉娘「それなら、どんなものが真に美しいと仰るのです?」
王子「……ついてきてください」
30 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:07:33.22 ID:/PRjeQDO [8/11]
姉娘「すごい……!」
王子「実は裏門から少し歩くと、この切り立った崖にこれるんです」
王子「街並が一望できる絶景……おや、あれはあなたのお住まいですか?」
姉娘「……管理の行き届いた美しさよりも、自然の創りだした自由な絵画……」
姉娘「感服いたしました」
31 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:13:18.11 ID:/PRjeQDO [9/11]
王子「僕はこの風景が真の美しさだとは言ってないですよ」
王子「ただ一つ言えるとすれば」
王子「あなたの驚きに満ちた瞳は、どんな宝石より美しく輝いていました」
姉娘「王子様……!」
どんっ
王子「なっ」
姉娘「えっ」
がらがら……
残虐少女「……」
32 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:15:22.14 ID:/PRjeQDO [10/11]
―――――――――
妹娘「あ、見つけたわ。そこの小汚い娘!」
残虐少女「……」
妹娘「裏門に何か用でもあったのかしら? 向こうから歩いてきたみたいだけど」
残虐少女「……」
妹娘「……まぁ良いわ。私、姉さんを探してくる」
残虐少女「……」
33 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/04/24(土) 22:21:38.79 ID:/PRjeQDO [11/11]
妹娘「どこへ行ったのかしら、姉さん」
……け……たす……て……
妹娘「? 声が……、姉さん!?」
妹娘「姉さん! どこ!?」
姉娘「ここ! したよ!」
妹娘「た、大変!」
姉娘「なんとか木に掴まったけど、もう…、手がっ」
妹娘「姉さん!!」
姉娘「……妹、よく聞きなさい! 少女は! あの娘はっ!」
姉娘「悪魔よ!!!」
するっ
姉娘「いやああぁあぁぁぁあっ!!!!!」
ぐしゃ
妹娘「……神様」
38 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/04(火) 04:16:37.36 ID:93zmFsDO
「……あの話、聞いたわよね」
「ああ、王子様とあの娘の話ね」
「皆が言うような、無理心中ではないと思うの」
「身分の差を思いつめて……って噂?」
「そう」
「噂ってのはね、流れたいように流れるものよ。恣意的に、暴力的に」
「そもそもが無理のある話よね。あの王子様は色狂いだったって話だし」
「あったわね。『孕ませた娘の責任をとらない王子様の尻拭いを大枚はたいて務めた宮宰』事件とか」
「きっと今回もそうよ。あの色狂いが娘に迫って、娘は切り立った崖に追い詰められて……」
「なるほどね。それが一番しっくりくる結末」
妹娘「……」
妹娘「……なによもう、結局噂は流れたいように流れるってわけ?」
妹娘「ふざけないでよ!!」
妹娘「……ふざけないでよ……」
42 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[saga] 投稿日:2010/05/05(水) 03:50:46.73 ID:f1OegADO [1/12]
残虐少女「……」
妹娘「あなたが姉さんを殺したのよね?」
残虐少女「……」
妹娘「何故? 王子様に見初められた姉さんを妬んで?」
残虐少女「……」
妹娘「答えなさいよ……。それか、笑うのを止めなさい」
残虐少女「……」
妹娘「あんたが来てから、不幸続きだわ」
妹娘「母さんに続いて、姉さんまで……」
残虐少女「……」
妹娘「全部あんたのせいよ。疫病神の豚畜生」
こんこん
妹娘「あら、お客様かしら」
残虐少女「……」
43 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/05(水) 03:51:50.24 ID:f1OegADO [2/12]
商人「こんにちは」
妹娘「あ……こんにちは。今日はどういった御用向きで?」
商人「なに、これを受け取ってもらおうと思ってね」
妹娘「……指輪?」
商人「どうか薬指に……左手のね」
妹娘「ああ、なんてことなの! こんなに幸せなのって、私初めて!」
商人「明日の朝、君を迎えに来る」
商人「それから、この国を出よう。君には少し悲しみが重すぎる土地だから……」
商人「どこか遠くで、二人でやっていこう」
妹娘「……はい、きっと」
残虐少女「……」
45 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:14:50.18 ID:f1OegADO [3/12]
妹娘「そういうわけで、私は明日隣国へ発つわ」
妹娘「あなたにはこの家をあげるから、上手くやりなさいよ」
残虐少女「……」
妹娘「とは言っても……社交界で幅を利かせていた母さんが亡くなった今……」
妹娘「この家の一族を相手にしてくれる貴族がどれだけいるかしら?」
妹娘「財産の取り分に関しては、私が9であなたが1よ」
妹娘「血縁関係の法としては、正妻の子供のみに相続権があるわけだし」
妹娘「お情けにしては多すぎるかしらね? ま、ありがたく受け取りなさい」
残虐少女「……」
46 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:15:34.73 ID:f1OegADO [4/12]
妹娘「しかし、不気味な目をしてるわ、あんたって」
残虐少女「……」
妹娘「今にも人を、私を殺しそうな目をしてる……」
残虐少女「……」
妹娘「今日は包丁を持って床に就くとしましょうか」
妹娘「部屋に入ってきたら殺すわ」
残虐少女「……」
妹娘「じゃ、おやすみ」
47 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:16:09.97 ID:f1OegADO [5/12]
――――――――――――
妹娘(さあ、来るなら来なさい!)
妹娘(母さんと姉さんを殺した張本人め!)
妹娘(どちらも殿方とうまく行きかけたところを妬んで、そして……)
妹娘(来るなら今夜のはず。絶対に眠れないわ……)
――――――――――――
48 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:16:50.28 ID:f1OegADO [6/12]
翌朝
こんこん
商人「おはよう」
妹娘「はい、支度は出来ております」
商人「じゃあ馬車に荷物を積んじまおう」
商人「こいつらに手伝いを頼んだから、手や足の代わりに使ってくれ」
大男二人「うす」
妹娘「よろしくお願いしますわ」
49 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:17:35.62 ID:f1OegADO [7/12]
商人「なかなか、荷物が多いな」
妹娘「ええ、母さんや姉さんの遺品も少し入れてしまったので」
商人「しかし、あの少女って子はどうするんだい?」
妹娘「構いませんわ。この家に残され、餓えて死のうと……ね」
商人「そうかい」
50 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:18:34.61 ID:f1OegADO [8/12]
商人「さて、あらかた積み終えたな」
妹娘「ええ」
商人「二人とも、最後の荷物を頼む」
大男二人「うす」
妹娘「きゃあっ!!? な、なにをっ!」
妹娘「むぐっ……!」
商人「猿轡と拘束はしっかりな。商品に傷が付いたらかなわない」
妹娘「!!」
商人「ああ、泣いちまうほどショックだったか 悪いな」
商人「大人しくお願いしますよ、お嬢さん?」
51 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2010/05/05(水) 22:21:06.33 ID:f1OegADO [9/12]
商人「さて、この位の値段で手をうとう」
残虐少女「……」
商人「元貴族、しかも敵国の奴隷ってことを加味しても、これ以上の値となるとあの国では売れないだろう」
残虐少女「……」
商人「久しぶりに良い仕事だった。感謝する」
残虐少女「……」
商人「まったく肝の座ったお嬢さんだな。こちらも少し君について調べたよ」
商人「……母親は異民だったそうじゃないか」
商人「虐げられた記憶なんかに縛られていたら、自由には生きられないと思うがね」
商人「……ま、奴隷商のいう言葉じゃない。聞かなかったことにしてくれ」
商人「じゃあな」
残虐少女「……」
52 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:22:26.12 ID:f1OegADO [10/12]
残虐少女「……」
残虐少女「……ひっ」
残虐少女「あひっ! ひっひひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
53 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:23:38.92 ID:f1OegADO [11/12]
残虐少女「……一生分、笑ったかしら」
終わり
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