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最終信号ですが、下位個体に追われています

761 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[1/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:00:46.82 ID:YjEGrego [1/13]
 事の発端は些細なことだった。

 平日だろうと休日だろうとあまり人気のない通りだ。
 路肩に二人の少女が立っていた。見た目の年齢を除けば、彼女たちは不自然なほどによく似た顔立ちをしている。

「ねえ一〇〇三二号、ちょっと屈んでみて、ってミサカはミサカはお願いしてみたり」

 突然自分の後ろに回りこんでそんなことを言い出した上位固体に対し、御坂妹は振り返らずに、

「何故そのようなことをする必要があるのですか、とミサカは疑問を述べます」

 以前ゴーグルを奪われたことのある御坂妹は、目の前の少女が再びそれを狙っているのではないかと考えた。
 そんな下位固体を他所に、打ち止めは御坂妹の背中を見上げたまま、

「ゴミがついてるよ、ってミサカはミサカはお知らせしてみたり」

762 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[2/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:02:47.29 ID:YjEGrego
 ゴミですか? と御坂妹は少し首をかしげる。
 唐突な指摘に違和感を覚えたが、指摘されたゴミが気になるのか、御坂妹は頭の後ろからそのまま背中に右手を伸ばす。

「そこじゃないよ。もうちょっと上、ああっ! もう取ってあげるから屈んでよ、ってミサカはミサカはジタバタしながらもう一度お

願いしてみる!」

 もどかしそうに騒ぐ打ち止めだが、実のところ、その発言はすべて演技<デタラメ>だ。
 少女の視線は下位固体のうなじのあたりに釘付けだ。肩のあたりまで伸びている髪の、その隙間から僅かに見える鎖に。

 結局ゴミが気になる御坂妹は、ゴーグルを手でしっかり押さえつけて、

「先に言っておきますが、悪戯をした場合はタダじゃおきません、とミサカは忠告します」

 上位固体の指示に従うことにした。

763 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[3/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:03:42.50 ID:YjEGrego
 その場にしゃがみこむだけで良かったはずなのだが、御坂妹はぺたんとその場に座り込もうとする。
 冬真っ盛りである。当然アスファルトは冷たい。御坂妹は片膝が地面に触れた状態でしばらく硬直した後、特にリアクションするこ

ともなく、一度着いた脚を逆再生するようにして立ち上がると、再び膝を折り曲げた。

 よくわからないフェイントをかけられた打ち止めは、

「……いいの? ってミサカはミサカは下位個体の動きに困惑しつつ確認を取ってみたり」

「大丈夫です。それより取ってください、とミサカはゴミの回収を急かしてみます」

 文句を飲み込んで、『うん』と短く返事をした打ち止めは、都合のいい高さになった下位固体の背を見た。好奇心に満ちた目で、首

元へと手を伸ばす。

764 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[4/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:04:45.11 ID:YjEGrego
 プチン、という音が聞こえた気がした。首のすぐ後ろからだったが、御坂妹には何の音かわからなかった。

 しかし、

 ジャラジャラ、という金属音と共に首筋から何かがスルリと抜き取られ、少女はハッとする。

「ハハハいただきーっ!! ってミサカはミサカは再び強奪に成功してみたり!!」

 ドダダダダーッ! と、いつか見たような感じで小さな後姿が遠ざかっていく。
 それを見送った御坂妹は寂しくなった首筋に手を当てて、それから、すぐ近くに置いておいたバッグを手繰り寄せた。その重さを確

認してから、スッと立ち上がる。

 そして数秒後。
 その場に響いたのは、割と本気で怒りに打ち震える検体番号一〇〇三二号の叫び声だった。

765 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[5/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:06:29.63 ID:YjEGrego
 ジャコジャキガチャ! と鈍い金属音を幾度も響かせて、御坂妹は装備を整えていく。
 普段から人気の少ない通りとは言っても、人通りが皆無というわけではない。絶賛ドン引き中の何人かの通行人の視線が御坂妹に集

っていて、なんかもう通報されてもおかしくない状態にあるのだが、とある常盤台のお嬢様と瓜二つな姿をした少女は少しも気にしな

かった。というか気にしてる暇などないのだ。

 そこにミサカネットワークを介して、上位固体の発言が届いた。

『へへーん! ミサカはそんなに走ってないからまだ近くにいるよ、ってミサカはミサカは余裕を見せてみたり。ハッハー! 早く追

いついてくれないとつまらないよ、ってミサカはミサカは下位固体を挑発してみる!』

「おおおォォォおおおォォおおおお!! あのクソ野郎がああああァァァァあああああ!!」

 キャラを見失い義務的な口調さえも忘れた御坂妹は、弾を装填し終えたばかりのサブマシンガンをその辺のブロック塀に向けると八

つ当たり気味に乱射する。
 ドババババボボボボ! と音を立てながら跳ね返ったゴム弾がそこらじゅうに散らばり、通行人も慌てた様子で散っていった。『ヤ

バイ逃げろ! あれは関わらない方がいい』という声が聞こえて来ようとも、やっぱり御坂妹は気にしない。

766 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[6/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:07:28.06 ID:YjEGrego
 音が止む。
 御坂妹は目を閉じて一度深呼吸をすると、カッ! と目を見開いて上位固体の逃げた方向へと走り出した。

『覚悟しなさい最終信号! 蜂の巣にしてやります! とミサカはここに宣言します!』

 かくして二度目の鬼ごっこが始まった。

 と、

「ぎゃああああぁぁ!! こっち来ないでェェええェェえええ!?」

 少し前に同じ方向へと逃げる感じで動き出していた通行人の少年が、迫り来る少女を見て涙目で絶叫した。

767 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[7/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:09:58.61 ID:YjEGrego
 一月九日。
 そもそも、御坂妹が外出していたのは、日課となっていた散歩という名目によるものだった。

 もともとは夏休みに負った怪我のリハビリのために始めたものだ。しかし現在では身体はほとんど万全であるため、もはやその必要
もない。それでも彼女が散歩を続けていたのは健康に良いだとかスタイルの維持に良いだとか、そういった雑誌の情報に振り回された
結果だったりする。一応、習慣として染み付いてしまっているという点も加えておこう。

 いつも通りに病院から出た検体番号一〇〇三二号は、特に道順なども考えずに適当に歩いていた。

 今日は気分が良いのです、とミサカは自身のテンションを報告してみます。

 微妙に膨らむ胸ポケットへと手を伸ばし、御坂妹は僅かな笑みを浮かべた。
 そこには新品の携帯電話が入っている。つい昨日ゲットしたものである。

768 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[8/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:11:44.54 ID:YjEGrego
 数日前に、とあるツンツン頭の少年が電話をかけるところを見ていた彼女は、その一連の様子を羨んでソレを入手することにした。
 白井黒子の趣味に合いそうな最新型の細長い機種であるが、実は医者にねだって買ってもらったものだったりする。

 ただ一度見ただけの、通話中の少年の横顔が思い浮かぶ。いつもの明るい表情。その時の相手はお姉様だったが、きっと自分の時も
そういう顔をしてくれるに違いない。
 見えなくてもわかる。数日のうちに御坂妹はそんな関係に強い憧れを抱くようになっていた。いつまでもお姉様に負けてはいられないのだ。

 そんなわけで、あわよくば件の少年と遭遇したりしないものか、というような確率的にちっとも期待できないシチュエーションを想
像しつつ、実際に遭遇したらどのように切り出そうかといったシミュレートを繰り返す。

 そうしていると自然に足取りも軽くなり、少し遠くに行ってみようなどと思い始めたところでばったり上位個体と出会ってしまった。

769 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[9/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:14:35.46 ID:YjEGrego
 御坂妹としては適当にあしらって散歩を続けたいところだが、打ち止め曰く『もうすぐお昼ご飯ができる』とのことなので、少し相
手になってやることにした。

 しかしこの小さな最終信号は相当退屈していたらしい。
 結局、以前のように直接的なコミュニケーションを楽しむ形で時差の修正を行おうという上位固体の強引な持論もとい提案で、再び
どうでもいいやり取りが始まることとなった。

「そのゴーグルってどうやったらもらえるの? ってミサカはミサカは他のミサカたちの装備に憧れを示してみたり」

 再びそんなことを言い出した打ち止めだったが、御坂妹は万全の警戒態勢でそれをあしらった。
 打ち止めの方も相変わらずの様子で興味がころころ移り、次へ次へと話題が変わっていく。

770 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[10/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:16:17.34 ID:YjEGrego
「ところで、それはどうしたの? ってミサカはミサカは下位固体のアンバランスな胸を指摘してみたり」

 携帯電話が入っている胸ポケットのことだ。

「これですか、とミサカは新装備を見せびらかします」

 出してから軽く後悔した。『見せて見せて』というノリで上位個体が飛びついてくることを予想して警戒する御坂妹だったが、打ち
止めは大して興味を示さなかった。彼女にとってそれほど珍しいものではないのだろう。

 しかしその流れで携帯電話の使い方についての話題で盛り上がっていく。
 通話のほかにメールやGPSコードの使い方などといった機能について学んだ御坂妹は、『たまには役に立つのですね、とミサカは上
位固体の個人的な知識に感心します』などと毒を吐いては上位個体をじたばたさせていた。

 目の前の小さな最終信号が、自分の首元を狙っているとは知らずに。

 そして、冒頭へと話は戻る。

771 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[11/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:18:08.30 ID:YjEGrego
 第七学区の病院の臨床研究エリア。

 院内のはずれの方の区画であり、利用者がいないため自然と誰も近づかなくなってしまったスペースだが、そんなエリアに設置され
ている小さな待合室のソファにちょこんと座っている少女がいた。

 検体番号一〇〇三九号。
 御坂妹と同じ病院で調整を行う『妹達』のうちの一人だ。
 他の『妹達』それぞれが外に散歩に出てしまったために現在は彼女一人しかいなかった。
 少女は待合室に放置されている雑誌を読んでいたのだが、

(ああ、またあの小っこいのですか、とミサカは冷ややかに感想を述べてみます)

772 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[12/?][] 投稿日:2010/05/10(月) 00:19:38.68 ID:YjEGrego
 『妹達』のネットワークに飛び込んできた二名の会話を聞いて、彼女は情報整理を行ってみることにした。
 数ヶ月前にも似たようなやり取りを聞いた記憶がある。今回と同様、検体番号一〇〇三二号と最終信号の間で起きたトラブルだっ
たはずだ。また同じような事が起きているのだろうか。

 しかし、ゴーグルを奪われたにしては、検体番号一〇〇三二号の取り乱しぶりは少々異常に思える。何か別の要素がありそうだ。

 あれこれ考える検体番号一〇〇三九号だったが、そういった情報整理は手元の雑誌のついでにすぎない。
 現在は血液型占いに見入っていて、今月のAB型が4位であるという表記を認めまいと否定要素を探すのに躍起になっている。

 つまるところ、彼女にとってはどれもこれもただの暇つぶしなのだ。

 最終信号が奪った物品についても大して興味はなかった。
 その時には、まだ。

773 名前:最終信号ですが、下位個体に追われています[STOP] ◆WAWBD2hzCI[] 投稿日:2010/05/10(月) 00:24:35.36 ID:YjEGrego [13/13]
とりあえずこの辺まで。一応中断用酉をば。

上条や他の妹達を巻き込んで展開していく感じで、全体像はなんとなくあるんだけど、
打ち止めと御坂妹のおにごっこ(つーかかくれんぼ)の部分のネタが全く浮かばない。

よかったら何かネタを恵んでください。
あと文章力も恵んでください。

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