スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新ジャンル「母ヒートのようです」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 19:05:28.95 ID:p6U2ps32O [1/26]
うちの母が喧しくて困る。
毎朝ご近所に響き渡る声で俺を叩き起こし、そのまま父のいる部屋へ向かっていく。
母は父に朝っぱらから甘えたいようだが、そうは問屋が卸さない。
父はいつも母が起こしにいくより先に起きて、抱きつこうとする母を冷たくあしらう。
それでも母は満足そうに、俺と父の朝食を作るために台所へ立っている。
今日の目玉焼きも半分焦げている。
父はそれに文句も言わず、焦げた部分を器用によけて食べている。
母はいつまで経っても料理が上手くならないと愚痴をこぼす。
父はそれを聞いて、焦げた部分までも残さずたいらげる。
母はニッコリ笑っている。
俺には真似出来そうもない。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:06:33.67 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
体重が2キロ増えたと言っては大騒ぎ。
ダイエット、ダイエットとお題目のように唱えている。
高校生の息子がいるにしてはプロポーションも崩れていないと思うのだが
母はそんな俺の言葉にも耳を貸さない。
父が仕事から帰宅すると、母は父にも太ったかもしれないと嘆いた。
父はいつも通りの無表情で、そういえば確かに太ったかもなとのたまう。
とたん母は、悲劇のヒロインでも乗り移ったかのように
こんな私でもあなたは愛してくれますか!? とか吠え始めた。
父はやや白けた表情で、はいはい愛してる愛してると母の頭をくしゃくしゃかき混ぜる。
母は父のその言葉が欲しかったらしく、以降母の口からダイエットという言葉は聞かれなくなった。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:07:52.97 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
休日に、遅く起きた俺がリビングへ向かうと、両親がすでにソファを占領していた。
珍しく母が父の肩にもたれ、日曜の朝に特有の、あまり内容のない旅番組なんかを見ている。
父が母を甘えさせる姿はあまり見ないので、パンダでも見るような心持ちでドアの影から覗いていると
母が机の上にあったホットケーキ(これも珍しく焦げていないので、父が焼いたと推測)をフォークで切り取り
父の口へ向かってあーんしていた。
驚いたのは父がそれを受け入れたことである。
ビックリした俺がその場から離れようとしたのと、父が振り返って新聞を取ろうとしたのが同時だった。
父がホットケーキを咀嚼しながら気まずそうにしている。
俺も気まずくて顎をポリポリ掻いている。
母だけが余裕綽々で、元気よくおはよう! と挨拶している。
その間も、母は父の腕に自分の腕を絡めて離そうとしない。
朝からごちそうさまでした。
8 名前:>>4-5 怖い、だと……?[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:13:50.04 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
リビングの掃除を命じられ、仕方なくちんたら片付けていると、両親の若いころのアルバムを見つけてしまった。
恐らくは今の俺くらいの年齢だろう父と母が、あまり仲良くとは言えない風に写っている。
一緒に写っている女の人は母の友人だろう。となると写真を撮っているのは、父の友人の男友さんだろうか。
しばらくそのアルバムをめくっていると、俺は一つの事実に気がついた。
初めは母に対して素っ気なく、渋々写真に写っているようだった父が、写真の枚数を重ねる毎ににこやかな表情になっているのだ。
そのアルバムの最後のページには、教室の中で泣きじゃくる母と、母と手を繋ぐ父の姿が写されていた。
繋いでいない方の手には、卒業証書らしき筒が握られている。
父と母の青春を、俺は知らない。けれどそれはきっと、そんなに悪いものではなかったのだろう。
俺もこんな青春送りてぇなぁ、とか思いながら床でゴロゴロしていたら、早く掃除しろと母に怒られた。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:15:41.88 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母が今夜の夕飯は焼き肉だという。俺は思わず安堵に顔を緩める。
母の作るご飯は、食べれなくないが食べたくはないという絶妙な味付けのものが多い。
だから、肉をホットプレートで焼いてタレをつけるだけの料理は、安全度が段違いに増すのである。
ただ、そんな焼き肉にも弊害はある。
油断すると母が、ホットプレート上の肉を全てかっさらってしまうのだ。
以前はそれで野菜しか食べれず、ずいぶんひもじい思いをしたものだが
今回は俺も母に当たり負けしないよう、充分に注意を払っている。
目をギラギラさせる親子二人を尻目に、父はエリンギやカボチャを淡々と焼いては食べ、その合間に自分の肉はきちんと確保している。
俺もいつか父のようになりたい。焼き肉をする度に俺は、そんな間違った憧れを胸に抱くようになっていた。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:18:33.99 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
ある日、俺が着替えを取ろうと箪笥をあさっていると、見覚えのない下着が出てきた。
尻の部分に漢と書かれた、唐草模様のトランクスである。
いつの間に紛れ込んだのか分からずいぶかしんでいると、母が俺の部屋へ来て、下着を新しく買ったと伝えてきた。
このセンスの欠片もない下着のチョイスは、母の仕業だったのだ。
そういえば母は昔から、世に数多いる母族のように、子供の年齢に合った服装を選ぶのが下手だった。
自分には比較的似合うものを選べるのだが、俺に服を買い与えようとすると
必ず変なバックプリントの入った服を着せたがるのである。
だって似合うじゃない、と母は言うが、アリエールのロゴが入った面白Tシャツなんか誰が好き好んで着るというのか。
思い返せば父は、服を買う時だけは母に任さず、下着もYシャツも自分で買っていたような気がする。
今度から俺もそうしようと誓いつつ、勿体ないので今日だけその下着を着ることにした。
何となく似合っているような気がしないでもないのが、妙に恐ろしかった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:23:25.85 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
これは、俺がまだ反抗期著しかった中学のころの話だ。
そのころの俺は、喧しい母も冷静沈着な父も、あまり好きではなかった。
二人がイチャイチャする度に俺はイラつき、八つ当たりすることも多かったように思う。
父は、思春期にはよくあることだと流していたようだが、母はそんな俺を見て心配していたようだ。
ある日の父が帰宅する前のこと、母が俺の部屋を訪ね、ごめんねと謝りながら突然俺のことを抱きしめてきた。
あまりのことに面食っていると、母は微笑みながら、父も好きだけど俺も大好きだよと、
それだけを言って部屋から去っていった。
思春期の男にする愛情表現とは思えないやり方だった。
その笑顔が、反抗期の俺にとっては面白くないものだったのも事実だが
後年、父にその時のことを言うと、流石は母さんだなと得心のいった顔で一人うなずくだけだった。
今なら俺にも理解出来るが、父にとっては母のその行動は、意外でもなんでもなかったらしい。
多分、俺が道を間違えずここまでこれたのも、二人のそんな関係があったからなんだろう。
実の両親のこととはいえ、俺は二人のことが羨ましくてしょうがなかった。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:31:39.58 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
俺がまだ小学生だったころ、自分が好きな言葉というテーマで作文を書かされた。
作文の苦手だった自分は上手く書けずに、母に相談することに決めた。
母も作文は苦手だったようだが、好きな言葉を聞くと即答で「好きだ・大好き・愛してる」と返してきた。
そのまま父の職場に乗り込んで愛を叫びかねない勢いだったので、子供ながらに焦って止めたのをよく覚えている。
母にとっての好きな言葉とは、愛する人への興奮剤へと変わるらしい。
帰宅した父がちゃんと作文を見てくれはしたが、その時まで母の興奮は収まらず
父の耳元で母の言う好きな言葉を囁き続けていた。
今の俺なら、その晩二人がどうなったかは想像に固くない。
愛しあうきっかけが息子の作文というのも、父にとっては災難だっただろう。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:34:04.18 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
もう一つ、小学生時代の思い出を話そう。
ある日、突然母が駅まで父を迎えにいこうと言い出した。
何故かと尋ねる俺に母は、愛する人を出迎えるのに理由はいらないと言い切った。
そのまま手を繋いで歩くこと十分、駅前に着き父を待つ。
定時に上がった父が、少し驚いた顔をして俺たちに出会ったのが、それから数分後。
その後、母は父と手を握って帰りたいと駄々をこねたり、父は父で子供に譲れと母を叱ったり、
折衷案として父が俺を抱き抱え、反対の手で母と手を繋ぐと言ったり、母がそれだと疲れるだろうと自分の言ったことを忘れて心配したり、
父が照れた顔で、俺だってたまにはお前と手を繋いで帰りたいと告白したり、母がそれに感激して公衆の面前で父に抱きつこうとしたり……。
そんな風な波乱があった。
馬鹿馬鹿しさここに極まれり、と言った感じだ。けれど当時の俺は、その状況をそれなりに楽しんでいたように思う。
げに恐ろしきは子供の順応の早さだろうか。いや、真に恐ろしいのは、母の父へ対する一途な思いだろう。
今でも枯れない母のそれには、頭が下がるばかりである。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:36:38.04 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
我が家で脳を鍛えるゲームが流行っている。クイズ形式で脳年齢を割り出すゲームである。
普段はゲームをしない父母もこれには興味津々のようで、
特に母は俺がプレイする横からああでもないこうでもないと大変に煩わしい。
あまりに鬱陶しいので試しにやらせてみると、狙い違わず脳年齢60代という記録を叩き出した。
悔しそうな母を尻目に、父は余裕で脳年齢20代をキープし得意げである。
リベンジを誓って再挑戦する母にコツを教えようと、父が横合いから覗き込んでくるため、俺の居場所がなくなった。
しばらくDSは二人のものになりそうだ。諦めてモンハンの攻略に専念することにしよう。
その後、父との特訓によって母は年齢相応の結果が出せるようになったらしい。
両手を上げてガッツポーズする母を、心なしか嬉しそうな父が横から見つめていた。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:39:50.43 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母の友人が家を訪ねてきた。実に数年ぶりのことらしい。
週末で俺も家にいたので、友人さんから昔の母の様子を聞くことができた。
友人さん曰く、昔から母は父のことが大好きで、その病的なまでの愛情には時折閉口したそうだ。
その父も、母の愛に敗北して一児をもうけざるを得なかったことに、同情を禁じえないとも言う。
母は不満たらたらだったが、父もまんざらではなかったのではないかと俺がフォローすると
母の友人は、知ってる、だって男くんツンデレだもんね、と苦笑しながら言った。
最近どうもツンデレからデレデレにシフトしつつあると俺が言うと
友人さんは、あの男くんでも丸くなるのねぇと妙に感慨深そうだった。
その後は父が帰宅するのを待って、友人さんの旦那も交えてどこかへ飲みに出るらしい。
俺も同席したかったが、さすがにそれは無理だったようだ。当たり前である。
友人さんの旦那も父とは旧知の仲らしいので、その人からも何か話が聞ければ面白かったのだが。
ともあれ、友人との再会を果たした母がすごく楽しそうだったので、それはそれで良しとしよう。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:43:49.89 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
我が家では、母の日なら母へ、父の日なら父へ、子供の日なら子供へという風に
それぞれの日にそれぞれへプレゼントを送る習慣がある。
理由は至極単純で、お祭り好きな母が、祝い事は多い方がいいと言って聞かないからだ。
そして今日は、件の母の日である。
俺のプレゼントは赤いカーネーションというベタな物だったが、父はいつまで経ってもプレゼントを渡そうとしない。
周到な父に限って忘れたなんてことはあるまい。どうしたのかと思っていると、父が俺に意味ありげな目配せをしてきた。
どうやらプレゼントは、息子のいないところでという趣向らしい。
気を効かせた俺が部屋を出て三十分後、二人の様子を見に部屋まで行くと、
顔を真っ赤にさせ、ニヤニヤほくそ笑む母と鉢合わせた。
聞いてもいないのに語りだしたところによると、父のプレゼントというのは
俺が部屋を出てから再び部屋を訪れるまで、背後から抱きしめる形でずっと母へ愛の言葉を囁く、というものだったらしい。
母は赤い顔を興奮でさらに赤くさせ、父がどんな甘い言葉で愛を囁いたか説明しようとする。
父はそんな母を気にも留めず、いつものクールな相好を崩さない。
安上がりなプレゼントで羨ましいと言うと、父と母両方に拳骨で殴られた。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:47:50.57 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
何に影響されたのか、母が社交ダンスを習いたいと言い出した。
俺はあまり乗り気ではなかったが、父から好きにすればいいという許しを得て、翌日からさっそく習いに出かけたようだ。
案の定というか予想通りというか、母は習ったばかりのステップの練習台に、俺を使うようになった。
そして、その姿が多少は様になり始めたころ、母はダンス教室からドレスを借りてきて、父と一緒に踊りたいと言い出した。
父は踊れるはずがないと一端は断ったが、母が適当で構わないというので、仕方なしに一曲だけ踊ることに決めたようだ。
リビングのソファーその他を片付け、適度なスペースを作ると、母はノリノリで父の手を取った。
最初は母が父をリードするという、社交ダンスの儀礼から外れたハチャメチャな踊りだったが
何でもそつなくこなす父が早くもテンポと足運びを覚え、三十分後には
男側がリードするという基本がきちんと出来るようになっていた。
母は父に身体を預けるようにして、俺との練習の時とは比べ物にならないほど心地良さそうに舞っている。
一時間ほどして、母は満足して俺に曲を止めるよう言った。
母は余韻に浸るように潤んだ瞳で父を見つめ、父も無言でその目を見つめ返す。
俺は二人の舞台に水を差さないよう、聞こえるか聞こえないか程度の大きさで称賛の拍手を送った。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:59:39.57 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
父との踊りを終えた一週間後、母が社交ダンスを止めると言い出した。
せっかく物になりはじめていたのに、なんだか勿体ない。
理由を聞くと、基本を学ぶ段階を終えて、次回からパートナーと組んで踊ることになったから止めたのだと言う。
母は父以外と踊る気はないそうで、父も一緒に通うのなら続けてもいいと言う。
無論、父に仕事の後、社交ダンスを習う余裕などあるはずがなく、結局母の社交ダンスデビューはなかったことになった。
ただ、ダンスの曲を収めたテープは手元に残しているらしく、
時々父と踊った時を思い出すように、音楽を聞きながらステップを踏んでいる姿を見かけた。
父も、母が踊りたい時は応じる気でいるようだ。
また夫婦で踊る時がくるのなら、俺はまたいい観客になるつもりである。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:12:32.39 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
春期テストの結果が芳しくなかった。
我が家は学業にはあまりうるさくない方だが、それでも今回の結果は酷かったようだ。
父は無言で頭を抱え、母は俺と父の様子を見ながらハラハラしている。
父は仕方なさそうに、少し勉強を見てやるから部屋へ来いという。
父は昔から学業優秀で、教えるのもなかなか上手い。
しかし、そういう場合に限って、母も力を入れて邪魔しがちなのがうちの常である。
勉強に力を入れるのではない、勉強の応援に力を入れるのだ。
父と俺が机に向かう背後で、母は頑張れ頑張れと声を掛ける。
父がちょっと黙れと言うと一時的に黙るが、すぐにまた横合いからごちゃごちゃと声を掛け始める。
勉強を教えられない自分は応援しか出来ないというのだが、それにしても少々鬱陶しい。
そんな姿を見るにつけ、母は学生時代、勉強が出来なかったんだろうなと、思うのだった。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:23:51.81 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母は辛いもの好きである。対して父は、辛いものがそこまで得意ではない。
いつもなら辛いものが食卓に並ぶ時は、父だけ別のものを用意して食べるのだが
それだと母が寂しそうな顔をするので、時々は父も辛いものに箸をつける。
渋い顔をしながら口を動かす父に、美味しいかどうか尋ねる母。
辛すぎて味がよく分からんと父が言うと、母は辛さが和らぐおまじないをかけると言って
父の口に軽くキスをした。
俺は思わず口の中のものを吹き出しそうになったが、父は短くありがとうと言っただけで、また食事に手をつけ始めた。
母は恥ずかしそうにするでもなく、父の隣で誇らしげに座っている。
その日の食事で何回のキスが交わされたか、数える気にもならなかった。
31 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2010/04/08(木) 20:20:12.96 ID:2VTwPpmYO [1/2]
うちの母が喧しくて困る。
その日の朝、目が覚めたのは母親の奇声が耳に入ったからである。
母親の様子を見に行くと、見ているこちらが恥ずかしくなるくらいの愛を父親にぶつけている。
早朝からお盛んな両親、その原因は足元に落ちている、リボンつきの小包のようだ。
母親や父親の誕生日ではなく、俺の知らない記念日であるとすれば、なるほど、なんとなく想像がつく。
そのまま本番に入りそうだった母親を止めた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 20:23:10.98 ID:IqqovmCN0 [2/5]
うちの母親が喧しくて困る。
俺が、むかし同級生の女の子を泣かせてしまった時の話だ。
ささいな事で喧嘩をしたのだが、口論になった末に女の子を強くぶってしまったのだ。
案の条、その女の子はわんわんと泣き出してしまい、俺は謝りもせずにそそくさと帰ってしまったのだ。
帰ってきた時、母はおかえりを言いかけて、じぃっと俺の顔を見つめてきた。
思わずどきっとして後ずさると、母は何かあったのかと問い詰めてきた。
追い詰められた俺は、白状した。
すると母は、よく正直に言った、エライぞと俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
でも、男の子が女の子に暴力をふるうのは悪い事だ、と叱られてしまったけど。
次の日、母が俺と一緒にその女の子の所に謝りにいってくれた。
女の子とその親は、意外にもあっさりと許してくれた。
その時の清々しさは、今でも忘れられない。
あの日、母に全てを打ち明けてよかったと思っている。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:28:46.01 ID:p6U2ps32O
>>34
開けっ広げな愛情
臆面もない行動力
こんな感じか。しかし主観によって変わるかと
思ったままを書けばいいと思うよ
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:37:22.68 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
犬が捨てられていたといっては拾い、猫が捨てられていたといっては拾いするうちの母。
動物嫌いだった俺と父も、今ではすっかりペットにデレデレだ。
今度は何を拾ってくるのかと思えば、もう動物は拾わないという。
父と俺の愛情のベクトルが、ペットへ向かうのが嫌なのだそうだ。
しかし、そんなことを言いながら、拾ってきた動物の里親が見つかると、一番残念そうにするのも母なのだ。
父はそんな母を見ながら、俺はお前のそういうところに惚れたんだと言う。
母はその台詞を聞くとニッコリ笑い、父の膝で眠る猫をやんわり退けて、代わりに父の膝を占拠した。
父は小さく微笑し、母の頭を優しく撫でた。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:51:21.62 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
ある冬の寒い日のこと、健康優良児な母が風邪をひいた。
母はふらふらの体を引きずりながら、それでも働くのが勤めとばかりに家事をこなそうとする。
こんな時ばかりは父も母に優しく、無理をしようとする母をいさめて強引にベッドに押し込んだ。
寝ている母の頭を冷えピタで冷やし、首筋の汗を拭いてやると、うわごとで父の名前を呼んでいる。
父を呼ぶと、何も言わずに母の手を握り、母も無意識にその手を握り返す。
あとは俺が看るからと父が言うので、看病は任せて室外で控えていることにした。
翌日、看病疲れからかベッドに顔を伏せて寝ている父と、その父を愛しそうに見つめる母の姿があった。
熱はもういいのかと聞くと、幸せ過ぎて逆に熱が出そうだと返された。
40 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2010/04/08(木) 20:57:40.44 ID:2VTwPpmYO [2/2]
うちの母が喧しくて困る。
けれども不気味なくらい大人しくなってしまう日もある。
しばらく前のことだ。父が数日のあいだ家を空けることになり、母は駄々をこねて引き止めようとしたが
それは叶わず、父が出かけると、母は糸の切れた操り人形のようにずっと椅子に座っていた。
そのあまりの落胆ぶりに心配して、俺が声を掛けると
私は二番目なのだろうか、と母は寂しそうに呟いた。
それが嵐の前の静けさだったのは言うまでもなく、
後日、帰宅した父は玄関口で母に飛び付かれた拍子に転んで気絶。
そのまま本番に入りそうだった母親を止めた。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 21:11:01.79 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
休日に、俺が室内でゲームに興じていると、台所から母の叫び声が聞こえてきた。
一体何事かと駆けつけてみると、母が壁の一点を指差し、ガタガタと震えている。
よくみるとそこには、黒光りする大きなゴキブリが鎮座ましましていた。
大抵のことは気合いで乗り越える母も、ゴキブリだけは苦手らしい。
近くにあった新聞紙を丸めて応戦すること数秒、ゴキブリは案外あっけなく壁から落ちた。
母は俺を称え、帰宅した父にもその勇姿を語って聞かせたが、父はそのくらい自分で片付けろと素っ気なかった。
今度は父がいるときにゴキブリが出ればいい。そうすれば母も、遠慮なく父を頼ることが出来る。
俺のことを熱く語る母を見て、俺はそう思わずにはいられなかった。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 23:15:45.77 ID:0qDqIetPO
うちの父がクール過ぎて困る。
休日ともなれば毎朝毎昼毎晩愛の言葉を叫ぶ母を、いつも素知らぬ顔で受け流している。
たとえ母がメイド服を着ていようと、猫耳だろうとだ。
しかし時折何かが切れたように母を抱えて寝室に入り、そのまま一日中出てこなかったりもする。
次の日もだったりする。
普段から発散していればああはならないだろうに。
そんな家に居る訳にもいかない俺は、今日も友達の家に泊まる。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:21:06.00 ID:jdgmDZtiO [1/3]
うちの母を理解出来ない
朝起きると、窓の外は大海原だった。
呆気にとられていると、ドアがノックされる。
「起きろ、そろそろ上陸だ」
鮫のコスプレをした母である
「えっ」
「久しぶりの陸地だ。バナナの皮に気をつけろ」
えっ
えっ
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 17:26:59.64 ID:jdgmDZtiO [2/3]
やっぱりヒートにいかなきゃスレ違いだよね
うちの母が熱くて困る。
今日、六代目になる我が家が全焼した。各所に施された耐熱・耐火災設備も意味をなさなかったのは流石と言わざるを得ない。
事の発端は父からの誕生日プレゼントである。それに感動した母が歓喜の咆哮と共にビッグバンを起こしたのだ。
まさか父も誕生日プレゼントのお返しに自宅を全焼させられるとは思ってなかったようで、「参ったな」と苦笑い。
参ったな、じゃねーんだよクソ親父。てめえ二代目がお前の抱擁一つで消し炭になったのを忘れた訳ではあるまいな。
母も母で「綺麗なお星様ね」じゃねーんだよ、お前の頭がお星様だよ。ついでに言うと綺麗なのは我が家の敷地だよ。
どうなってんだよ。
どうなってんの。
マジで。
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 17:45:30.84 ID:jdgmDZtiO [3/3]
物理的に熱いのは何かが違うな
情熱的な、真紅の薔薇のような熱さだな
今うちの母が熱い←イチオシ
買い物に行く前に銀行に寄った訳だが、中に入ると覆面を被った男と母が泣きながら抱き合っていた。
床には包丁が転がっており、職員や他のお客さん達もハンカチで涙を拭ったり、惜しみない拍手を贈ったりしていた。
俺は何も言わずに回れ右をし、携帯に手をかける。
送信先「お父さん」
件名「 」
本文「お仕事中すみません。帰りに醤油とみりんを買ってきてください」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:23:50.27 ID:BO9j0aAGO [1/29]
うちの母が喧しくて困る。
寒い季節が終わりを告げた。
母は公園まで桜を見に行こうと、俺と父を誘って出かけることにしたようだ。
弁当と簡素な荷物を持って公園に着くと、母は荷物の中から赤ワインを取り出して見せた。
曰く、今日はなんだか飲みたい気分だった、という。
父の分のグラスも用意してあり、俺だけが自販機で買った烏龍茶を啜る羽目になった。
酔った母は、父に向かっていつも以上に真面目くさって愛しているという。
父は素知らぬ顔で、ぼんやり桜を眺めている。
スルーされたと勘違いした母が、桜の木に登って父の気を引こうとする。
そんな母の服の袖を握り、父が半ば無理矢理、母を自分の膝にのせる。
一瞬きょとんとした母は事態を理解し、父の膝の上で上機嫌に、さくらさくらを唄っている。
これだから酔っぱらいは、と思いながら、いつか酒を飲む時は、母のような酔い方をしてみたいと思うようになった。
56 名前:>>53 シュール民の方ですか?[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:33:46.91 ID:BO9j0aAGO [2/29]
うちの母が喧しくて困る。
俺の秘蔵のエロ本が母に見つかった。掃除はしなくていいと言っていたのに。
母は年頃だからと一応の理解は示してくれていたが、ショックは隠しきれなかったようだ。
どうやら帰宅してきた父に、そのことを相談したらしい。
父は男ならそういう本を持っていて当たり前だとフォローしてくれたが、そこから先がいけなかった。
母は、父もそんな本を持っているのかと聞くと、冷静な父がわずかに動揺する。
敏感な母はそれを見逃さず、以降、父がどこかに隠したであろうエロ本を探すのに、躍起になっていた。
標的が俺から逸れるのは有難いし、父の狼狽える姿も滅多に見れないから貴重ではあるのだが
この時ばかりは父のことを、憐れだと思わずにはいられなかった。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:48:34.42 ID:BO9j0aAGO [3/29]
うちの母が喧しくて困る。
母は魚を食べるのが苦手らしい。
いつも身をぼろぼろに崩し、腹わたも小骨も指でどけながら食べている。
父はそんな母とは対照的に、箸できっちり骨をよけ、一匹の形をそのまま残して綺麗に食べている。
母は父の箸使いに見とれ、父の食事風景をうっとり見つめることが多かった。
母が呆けているといつまで経っても食事が終わりそうにないので、
父のゴーサインと共に、母の死角から忍びよって、おでこに箸を突き刺した。
もちろん突き刺したというのは比喩で、実際は多少額がへこんだだけだったが
不意を突かれた母は、派手な声を出して椅子から転げ落ちた。
たかだか魚を食べる程度でここまで大騒ぎするのも、うちくらいなものだろう。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:05:39.61 ID:BO9j0aAGO [4/29]
うちの母が喧しくて困る。
イベントデーになるとにわかに活気づくのがうちの母であるが、
とりわけバレンタインデーやクリスマスなど、カップルが祝うべき行事になると力の入れ方が違う。
毎年食べきれない量のご馳走と、ばかでかいクラッカーとを準備して祝うのである。
俺はいまだに、規模を考えないそのお祭り騒ぎに慣れずにいるが、結婚して長い父はさすがにもう慣れたらしい。
父も、母へのプレゼントを忘れない辺り、それなりに楽しんではいるようだ。
ただ、母が要求するのは、毎年「父からのキスと抱擁」と決まっているので、多少辟易している感はあるようだ。
だったら断ればいいのに、というのは二人には禁句であるらしい。
なんだかんだで仲が良い二人である。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:22:57.50 ID:BO9j0aAGO [6/29]
うちの母が喧しくて困る。
普段から声が大きく、また態度もデカイ我が家の母であるが、テンションが上がるとそれにさらに拍車がかかる。
一度、宝くじで五千円が当たった時なぞ、天地がひっくり返るかと思うほどの喜びようだった。
例のごとく帰宅した父に、母が突進して宝くじが当選したことを告げる。
父は最初こそ興味深げだったが、あまりに喧しくテンションの高い母にうんざりしたのか、突然、母の脇腹をつつき始めた。
とたんに母は、身をよじらせて身悶えし始め、十回それを繰り返す頃には、すっかり大人しくなっていた。
どうやら脇腹は、俺の知らない母の弱点だったらしい。
父はへなへなとくずおれる母を抱き抱え、ベッドに放り投げた。
父は母の扱いをよく心得ているようだ。
68 名前:お題随時募集中[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:44:23.62 ID:BO9j0aAGO [9/29]
うちの母が喧しくて困る。
喧嘩なぞ滅多にしない両親だが、先に書いたように喧嘩する時は派手にぶちあげる。
しかし、喧嘩よりさらに少ない頻度ではあるが、下らない理由が元でいさかいを起こすこともあるにはある。
それが、「目玉焼きには醤油派(父)」VS「目玉焼きにはソース派(母)」の百年戦争である。
俺が小学生の頃には、母が無理にでも父をソース派に転向させようとする姿を何度も見かけ、
父もそれに苛立ち、ついには何も掛けずに目玉焼きを食べるようになった。
焦げた目玉焼きを何も着けずに食べるのは至難の業だと思うのだが、これも愛の成せることなのだろうか。
ちなみに俺は、二人を刺激したくないのでもっぱら塩コショーで食べるようになった。
俺も家族の関係を維持するために貢献しているのである。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 02:08:09.71 ID:BO9j0aAGO [11/29]
うちの母が喧しくて困る。
母は料理が苦手だ。だから必然的に、弁当もおかしな風になる。
全体的に甘だるい味付けで、例えるならば外れではないけど三等賞、くらいのがっかり感がいつも漂っている。
個人的には毎食購買部で済ませたいのだが、金銭的な関係でそれもなかなか出来ずにいる。
一度なぞ、野菜炒めから甘い汁が滴っており、口に含んだ瞬間何が起こったのかと目を白黒させたものだった。
では、そんな母の弁当に対し、父はどう対処しているのだろうか。
なんと父は、甘い野菜炒めも何もかも全て、文句一つ言わずに食べているのだ。
実は外で食べているのではないかと疑ってみたが、どうも本当に完食しているらしい。
いつか腹を壊さないかと、密かに心配せずにはいられない。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 02:21:29.02 ID:BO9j0aAGO [12/29]
うちの母が喧しくて困る。
父は幽霊を信じていない。そしてそれは、母も同じである。
父はともかく母は意外な気がしたので理由を尋ねると、信じたら怖いからだという。
それは理由になっていないんじゃ、という突っ込みが出来ずにいると、父が
死後の世界はない、だから幽霊なんかいないとはっきりと断言した。
父は恐らく、母を怯えさせないようそんな言い方をしたのだと思う。実に父らしい。
母はそれを受けて、私はお化けでも何でもいいから、死んでも二人に会いたいな、と言う。
父は勘弁してくれと後退りしたが、顔は満更でもなさそうだ。
死後も二人して、今のような夫婦漫才をやっているのだろうか。
きっとやっているのだろう。そんな気がした。
81 名前:出かけるまでにせめて一本[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 07:43:58.29 ID:BO9j0aAGO [15/29]
うちの母が喧しくて困る。
ある日の食卓で、「もし家族が死んだらどうするか」という話題を母に降った。
とたん母は、そんなの嫌だと泣きだした。
自分が家族を残して先立つのも嫌だし、その逆もまた嫌だという。
そんなことを言ってもいずれはそのどちらかになるのだし、嫌々しても仕方ない。
俺がそんな話題を出したことを後悔していると、父が、俺はお前を置いて先に死んだりしないと言って、母の頭を胸にかき抱いた。
母は何も言わず、うんうん頷きながら父の胸に顔を埋めた。
そんな両親の姿を見るのは恥ずかしいので、俺は食事もそこそこに席を立った。
去り際、母が父へ、私の旦那様になってくれてありがとうといっているのが聞こえた。
父は柄にもないことを言うなと言いながら、母の頭を離さない。
俺が両親へ向けてありがとうなんて言うのはまだ先のことだろう。
今はまだ、それでいいのだと思う。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 13:27:40.42 ID:BO9j0aAGO [17/29]
うちの母が喧しくて困る。
ついに俺にも彼女が出来た。念願叶ってひとしおである。
それ自体は悪くないのだが、困ったことに母がその話をどこからか聞きつけて、彼女について根掘り葉掘り聞き出そうとしてきた。
そして、母に伝わった話は当然のように父にも筒抜けで、夕飯の席で良かったなと祝いの言葉をかけられた。
父は、恋人同士仲良く、互いを尊重するようにと、いつもの父らしくない説教口調で重々しく言う。
俺はなんだか悔しくなったので、それなら父のようになればいいのかと言うと、
父は、俺は母を泣かせてばっかりだったから、反面教師にしかならないよと苦笑した。
母は、でも今の私は幸せだよと、父の言葉を否定するように言う。
そこからはいつものラブコールが始まったので、俺は二人のどこかが参考にならないものかと、
いつも以上に念入りに、目を皿のようにして二人を観察した。
結果、この二人の相思相愛っぷりには、なんら参考になるような部分はないということだけがわかった。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 19:42:32.97 ID:BO9j0aAGO [20/29]
うちの母が喧しくて困る。
彼女と別れた。わずか一月ほどの付き合いだった。
理由は、なんか会わないから、だそうだ。なんだそれ。
母はまたもやどこからか情報を仕入れてきて、学校帰りの俺を激しく慰めた。
あまり蒸し返して欲しくはない話だったが、母は母なりに俺を気づかってくれているのだと思うと、無下にも出来ない。
別にそこまでショックではないから、と伝えると、そんなはずはない、私は父に冷たくされると悲しかった
と、まるで自分のことのように俺がフラれたことを悲しんでくれた。
言わずもがな、父にもそのことは伝わったが、父はそうかと言うだけで、それ以上そのことには触れなかった。
母は不満げだったが、父のその冷淡とも取れる態度に、俺は正直救われた思いだった。
後で聞いたところによると、父はナイーブな話題をほじくり出すなと、母を諌めてもくれたらしい。
どうやったらこの二人のようになれるものか。傷心の俺はそう思いながら、ベッドに潜り込んで少しだけ泣いた。
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 19:51:22.41 ID:BO9j0aAGO [21/29]
うちの母が喧しくて困る。
俺の住む町に台風がくるらしい。それも、観測史上最大の規模でだ。
学校も臨時休校になり、父も職場から自宅待機を命じられた。
どことなく塞ぎがちになっている俺たちをよそに、母はウキウキとどこか嬉しそうだ。
嵐の前の、遠足に行くようなあの感じに似てはいるが、どこか違うような気もする。
あるいはそれは、台風を理由に父に甘えんとしているからかもしれない。
案の定、母は台風で停電になると、わざと怯えたふりをして父ににじり寄り、その膝にすがりついた。
結婚して長いのだから、母の演技くらい見抜けそうなものだが、父は膝の母を退けようとはしない。
父も、母が本当に怯えていたらと思うと、あまり邪険には出来ないのだろう。
俺は苦笑しながら、非常用に買っていたパンにかぶりついた。
パンはパサパサしてまずかったけれど、二人の間に漂う空気は甘ったるくて胸焼けしそうだった。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:09:12.58 ID:BO9j0aAGO [23/29]
うちの母が喧しくて困る。
今日は父と母の結婚記念日だ。
いつものように盛大なパーティーが行われた後、プレゼントを交換しあう段階に入る。
俺は少ない小遣いの中から、母にアクセサリーを、父に万年筆を選んだのだが、
父が母へ渡したのは、一枚の飾り気のない封筒だった。
中身は何かと母が尋ねると、父は臆面もなく、恋文だと言った。
父の話によると、いつものようにキスと抱擁だけだと、後で形に残る物が何もない。
だからたまには、こういう形で愛を伝えるのもいいんじゃないかと思った、とのことだった。
理知的な父らしいやり方である。母も今までに増して喜び、中にどんなことが書いてあったかは、絶対に教えてくれなかった。
因みに、母から父への贈り物は、特大の手作りケーキだった。
味の方は、まぁ言わずもがなであろう。
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 20:23:34.58 ID:BO9j0aAGO [24/29]
うちの母が喧しくて困る。
母が、町内会の会報誌の執筆を頼まれたらしい。
毎日うんうん唸っているが、肝心の中身は一向に進む気配がない。
どうやら速く書けとせっつかれているようで、最終手段として母はいつものように父に泣きついた。
結果、父の助力もあって会報誌の原稿は完成したが、その大半は母ではなく父が書いたものだった。
父は安請け合いをするなと怒りながらも、何故か少しだけ楽しんでいるようにも見えた。
聞けば、大学時代のレジュメの作成等も、今日のように父が母を手伝って、ようやく完成させていたそうだ。
なんのことはない。急場に陥っているように見えて、その実二人は昔を懐かしんでいただけなのだ。
父が手伝ってくれるなら、来月も頼まれようかという母に、調子に乗るなと父が拳骨を食らわしていた。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 20:38:49.86 ID:BO9j0aAGO [26/29]
うちの母が喧しくて困る。
父が出かける直前、母がスーツのボタンが取れていると指摘した。
俺はその光景を何の気なしに見ていたのだが、
母は裁縫道具を持ち出し、器用に運針してボタンをつけ始めた。
てっきり針で指を刺すものと思っていた俺は、その玄人はだしの腕前に唖然としてしまった。
最後に糸切り歯でぷちんと糸を切ると、それまでボタンが外れていたのが嘘のように綺麗に着け直されていた。
母はこれでバッチリと言いながら、父にお出かけのキスをせがむ。
普段あまり意識することはないが、やはり母はちゃんと母親なのだ。
俺は母を見直しながら、それでもお出かけ前のキスは止めた方がいいのでは、と心の隅で思った。
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 21:00:03.99 ID:BO9j0aAGO [27/29]
うちの母が喧しくて困る。
ワールドカップで世間が盛り上がっていたころ、我が家でも一人盛り上がりを見せる人物がいた。
もちろんそれは母である。
俺と父は運動が苦手で、スポーツにもあまり関心はないのだが、母だけは違う。
日本の試合当日になると、ユニフォームを着てフェイスペイントまでこなし、完全ににわかサッカーファンと成り果てるのである。
母は父にも日本を応援してほしいようだが、父は誰が代表に選ばれたかも知らないほど興味がない。
かくいう母も、単なるフリークなので詳しくは知らなかったりする。
俺も当然のように知らない。
まるで蛇と蛙と蛞蝓のような三竦みだ。
しばらくして馬鹿らしくなったのか、母も日本代表の応援を止めた。
その代わり、毎日頑張っている父を応援することに決めたそうだ。
応援用の小旗を振りながら父を見送る母は、なんだか小さい子供のようだった。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 21:39:49.13 ID:BO9j0aAGO [28/29]
うちの母が喧しくて困る。
母が伊達眼鏡を買ってきた。
何事かと思ったら、父とお揃いにしたいのだという。
そこまですると媚びていると取られかねないのではと余計な心配をしたが
父は母の眼鏡姿を見ると、なんだか新鮮だと言って意外と食いついてきた。
母は父に誉められたのが嬉しかったのか、それから毎日眼鏡を着けるようになった。
不思議なもので、眼鏡という知的アイテムを使うだけで、がさつな母がおしとやかに見えてしまう。
母は父だけでなく、俺にまで妙なフェチズムを植え付けてしまったようだ。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 11:06:15.10 ID:ny1WmSJnO [3/7]
コイツの母がすごくて困る。
コイツは弁当を食べるときにいつも面白い顔をする。
あまりにも面白い顔をするので、残してもいいんじゃないかと言ってみたところ、
「何で残したのかの言い訳を考えるのが面倒だ」と返ってきた。
どんな味なのかと一口貰ってみて、少し後悔する。
今の私はどんな顔をしているだろうか。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:21:44.56 ID:ny1WmSJnO [6/7]
アイツの母がすごくて困る。
友達からの前評判で綺麗だとは聞いていたが、まさかここまでとは。
アイツはというと、他人に自分の親を見られるのが恥ずかしかったのだろう、
あの人に気が付いた直後に逃げだしたようだ。
結局すぐに捕まってなぜ逃げたのか言い訳をしていた。
こうして見ているとまるで姉弟みたいだなと笑っていると、あの人はこちらに気付いて声をかけてくる。
……私にかけられた「息子の彼女」疑惑を当事者2人掛かりで否認するのは骨が折れる作業だった。
ただ、あの人がお詫びにと買ってくれたタイヤキは美味しかった。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:22:51.21 ID:VjmsKfclO [4/4]
うちの父がクール過ぎて困る。
部屋で漫画を読んでいたらいきなり父さんがやって来て真面目な話が有ると言う。
何だ何だと思っていたら、新しく弟か妹が出来るとのたまった。
固まる俺をよそに部屋を出て行く父さん。
我に帰って慌てて父さんを追い掛けようと部屋を出る。
そこにはドッキリ大成功と掛かれたプラカードを持つ父さんと、ニヤニヤ笑う母さんが。
そうだ今日はエイプリルフールだったと思い出すと同時に、母さんに対して甘過ぎる父さんに頭を抱えた。
ああびっくりした。
うちの母が喧しくて困る。
毎朝ご近所に響き渡る声で俺を叩き起こし、そのまま父のいる部屋へ向かっていく。
母は父に朝っぱらから甘えたいようだが、そうは問屋が卸さない。
父はいつも母が起こしにいくより先に起きて、抱きつこうとする母を冷たくあしらう。
それでも母は満足そうに、俺と父の朝食を作るために台所へ立っている。
今日の目玉焼きも半分焦げている。
父はそれに文句も言わず、焦げた部分を器用によけて食べている。
母はいつまで経っても料理が上手くならないと愚痴をこぼす。
父はそれを聞いて、焦げた部分までも残さずたいらげる。
母はニッコリ笑っている。
俺には真似出来そうもない。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:06:33.67 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
体重が2キロ増えたと言っては大騒ぎ。
ダイエット、ダイエットとお題目のように唱えている。
高校生の息子がいるにしてはプロポーションも崩れていないと思うのだが
母はそんな俺の言葉にも耳を貸さない。
父が仕事から帰宅すると、母は父にも太ったかもしれないと嘆いた。
父はいつも通りの無表情で、そういえば確かに太ったかもなとのたまう。
とたん母は、悲劇のヒロインでも乗り移ったかのように
こんな私でもあなたは愛してくれますか!? とか吠え始めた。
父はやや白けた表情で、はいはい愛してる愛してると母の頭をくしゃくしゃかき混ぜる。
母は父のその言葉が欲しかったらしく、以降母の口からダイエットという言葉は聞かれなくなった。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:07:52.97 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
休日に、遅く起きた俺がリビングへ向かうと、両親がすでにソファを占領していた。
珍しく母が父の肩にもたれ、日曜の朝に特有の、あまり内容のない旅番組なんかを見ている。
父が母を甘えさせる姿はあまり見ないので、パンダでも見るような心持ちでドアの影から覗いていると
母が机の上にあったホットケーキ(これも珍しく焦げていないので、父が焼いたと推測)をフォークで切り取り
父の口へ向かってあーんしていた。
驚いたのは父がそれを受け入れたことである。
ビックリした俺がその場から離れようとしたのと、父が振り返って新聞を取ろうとしたのが同時だった。
父がホットケーキを咀嚼しながら気まずそうにしている。
俺も気まずくて顎をポリポリ掻いている。
母だけが余裕綽々で、元気よくおはよう! と挨拶している。
その間も、母は父の腕に自分の腕を絡めて離そうとしない。
朝からごちそうさまでした。
8 名前:>>4-5 怖い、だと……?[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:13:50.04 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
リビングの掃除を命じられ、仕方なくちんたら片付けていると、両親の若いころのアルバムを見つけてしまった。
恐らくは今の俺くらいの年齢だろう父と母が、あまり仲良くとは言えない風に写っている。
一緒に写っている女の人は母の友人だろう。となると写真を撮っているのは、父の友人の男友さんだろうか。
しばらくそのアルバムをめくっていると、俺は一つの事実に気がついた。
初めは母に対して素っ気なく、渋々写真に写っているようだった父が、写真の枚数を重ねる毎ににこやかな表情になっているのだ。
そのアルバムの最後のページには、教室の中で泣きじゃくる母と、母と手を繋ぐ父の姿が写されていた。
繋いでいない方の手には、卒業証書らしき筒が握られている。
父と母の青春を、俺は知らない。けれどそれはきっと、そんなに悪いものではなかったのだろう。
俺もこんな青春送りてぇなぁ、とか思いながら床でゴロゴロしていたら、早く掃除しろと母に怒られた。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:15:41.88 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母が今夜の夕飯は焼き肉だという。俺は思わず安堵に顔を緩める。
母の作るご飯は、食べれなくないが食べたくはないという絶妙な味付けのものが多い。
だから、肉をホットプレートで焼いてタレをつけるだけの料理は、安全度が段違いに増すのである。
ただ、そんな焼き肉にも弊害はある。
油断すると母が、ホットプレート上の肉を全てかっさらってしまうのだ。
以前はそれで野菜しか食べれず、ずいぶんひもじい思いをしたものだが
今回は俺も母に当たり負けしないよう、充分に注意を払っている。
目をギラギラさせる親子二人を尻目に、父はエリンギやカボチャを淡々と焼いては食べ、その合間に自分の肉はきちんと確保している。
俺もいつか父のようになりたい。焼き肉をする度に俺は、そんな間違った憧れを胸に抱くようになっていた。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:18:33.99 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
ある日、俺が着替えを取ろうと箪笥をあさっていると、見覚えのない下着が出てきた。
尻の部分に漢と書かれた、唐草模様のトランクスである。
いつの間に紛れ込んだのか分からずいぶかしんでいると、母が俺の部屋へ来て、下着を新しく買ったと伝えてきた。
このセンスの欠片もない下着のチョイスは、母の仕業だったのだ。
そういえば母は昔から、世に数多いる母族のように、子供の年齢に合った服装を選ぶのが下手だった。
自分には比較的似合うものを選べるのだが、俺に服を買い与えようとすると
必ず変なバックプリントの入った服を着せたがるのである。
だって似合うじゃない、と母は言うが、アリエールのロゴが入った面白Tシャツなんか誰が好き好んで着るというのか。
思い返せば父は、服を買う時だけは母に任さず、下着もYシャツも自分で買っていたような気がする。
今度から俺もそうしようと誓いつつ、勿体ないので今日だけその下着を着ることにした。
何となく似合っているような気がしないでもないのが、妙に恐ろしかった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:23:25.85 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
これは、俺がまだ反抗期著しかった中学のころの話だ。
そのころの俺は、喧しい母も冷静沈着な父も、あまり好きではなかった。
二人がイチャイチャする度に俺はイラつき、八つ当たりすることも多かったように思う。
父は、思春期にはよくあることだと流していたようだが、母はそんな俺を見て心配していたようだ。
ある日の父が帰宅する前のこと、母が俺の部屋を訪ね、ごめんねと謝りながら突然俺のことを抱きしめてきた。
あまりのことに面食っていると、母は微笑みながら、父も好きだけど俺も大好きだよと、
それだけを言って部屋から去っていった。
思春期の男にする愛情表現とは思えないやり方だった。
その笑顔が、反抗期の俺にとっては面白くないものだったのも事実だが
後年、父にその時のことを言うと、流石は母さんだなと得心のいった顔で一人うなずくだけだった。
今なら俺にも理解出来るが、父にとっては母のその行動は、意外でもなんでもなかったらしい。
多分、俺が道を間違えずここまでこれたのも、二人のそんな関係があったからなんだろう。
実の両親のこととはいえ、俺は二人のことが羨ましくてしょうがなかった。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:31:39.58 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
俺がまだ小学生だったころ、自分が好きな言葉というテーマで作文を書かされた。
作文の苦手だった自分は上手く書けずに、母に相談することに決めた。
母も作文は苦手だったようだが、好きな言葉を聞くと即答で「好きだ・大好き・愛してる」と返してきた。
そのまま父の職場に乗り込んで愛を叫びかねない勢いだったので、子供ながらに焦って止めたのをよく覚えている。
母にとっての好きな言葉とは、愛する人への興奮剤へと変わるらしい。
帰宅した父がちゃんと作文を見てくれはしたが、その時まで母の興奮は収まらず
父の耳元で母の言う好きな言葉を囁き続けていた。
今の俺なら、その晩二人がどうなったかは想像に固くない。
愛しあうきっかけが息子の作文というのも、父にとっては災難だっただろう。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:34:04.18 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
もう一つ、小学生時代の思い出を話そう。
ある日、突然母が駅まで父を迎えにいこうと言い出した。
何故かと尋ねる俺に母は、愛する人を出迎えるのに理由はいらないと言い切った。
そのまま手を繋いで歩くこと十分、駅前に着き父を待つ。
定時に上がった父が、少し驚いた顔をして俺たちに出会ったのが、それから数分後。
その後、母は父と手を握って帰りたいと駄々をこねたり、父は父で子供に譲れと母を叱ったり、
折衷案として父が俺を抱き抱え、反対の手で母と手を繋ぐと言ったり、母がそれだと疲れるだろうと自分の言ったことを忘れて心配したり、
父が照れた顔で、俺だってたまにはお前と手を繋いで帰りたいと告白したり、母がそれに感激して公衆の面前で父に抱きつこうとしたり……。
そんな風な波乱があった。
馬鹿馬鹿しさここに極まれり、と言った感じだ。けれど当時の俺は、その状況をそれなりに楽しんでいたように思う。
げに恐ろしきは子供の順応の早さだろうか。いや、真に恐ろしいのは、母の父へ対する一途な思いだろう。
今でも枯れない母のそれには、頭が下がるばかりである。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:36:38.04 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
我が家で脳を鍛えるゲームが流行っている。クイズ形式で脳年齢を割り出すゲームである。
普段はゲームをしない父母もこれには興味津々のようで、
特に母は俺がプレイする横からああでもないこうでもないと大変に煩わしい。
あまりに鬱陶しいので試しにやらせてみると、狙い違わず脳年齢60代という記録を叩き出した。
悔しそうな母を尻目に、父は余裕で脳年齢20代をキープし得意げである。
リベンジを誓って再挑戦する母にコツを教えようと、父が横合いから覗き込んでくるため、俺の居場所がなくなった。
しばらくDSは二人のものになりそうだ。諦めてモンハンの攻略に専念することにしよう。
その後、父との特訓によって母は年齢相応の結果が出せるようになったらしい。
両手を上げてガッツポーズする母を、心なしか嬉しそうな父が横から見つめていた。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:39:50.43 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母の友人が家を訪ねてきた。実に数年ぶりのことらしい。
週末で俺も家にいたので、友人さんから昔の母の様子を聞くことができた。
友人さん曰く、昔から母は父のことが大好きで、その病的なまでの愛情には時折閉口したそうだ。
その父も、母の愛に敗北して一児をもうけざるを得なかったことに、同情を禁じえないとも言う。
母は不満たらたらだったが、父もまんざらではなかったのではないかと俺がフォローすると
母の友人は、知ってる、だって男くんツンデレだもんね、と苦笑しながら言った。
最近どうもツンデレからデレデレにシフトしつつあると俺が言うと
友人さんは、あの男くんでも丸くなるのねぇと妙に感慨深そうだった。
その後は父が帰宅するのを待って、友人さんの旦那も交えてどこかへ飲みに出るらしい。
俺も同席したかったが、さすがにそれは無理だったようだ。当たり前である。
友人さんの旦那も父とは旧知の仲らしいので、その人からも何か話が聞ければ面白かったのだが。
ともあれ、友人との再会を果たした母がすごく楽しそうだったので、それはそれで良しとしよう。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:43:49.89 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
我が家では、母の日なら母へ、父の日なら父へ、子供の日なら子供へという風に
それぞれの日にそれぞれへプレゼントを送る習慣がある。
理由は至極単純で、お祭り好きな母が、祝い事は多い方がいいと言って聞かないからだ。
そして今日は、件の母の日である。
俺のプレゼントは赤いカーネーションというベタな物だったが、父はいつまで経ってもプレゼントを渡そうとしない。
周到な父に限って忘れたなんてことはあるまい。どうしたのかと思っていると、父が俺に意味ありげな目配せをしてきた。
どうやらプレゼントは、息子のいないところでという趣向らしい。
気を効かせた俺が部屋を出て三十分後、二人の様子を見に部屋まで行くと、
顔を真っ赤にさせ、ニヤニヤほくそ笑む母と鉢合わせた。
聞いてもいないのに語りだしたところによると、父のプレゼントというのは
俺が部屋を出てから再び部屋を訪れるまで、背後から抱きしめる形でずっと母へ愛の言葉を囁く、というものだったらしい。
母は赤い顔を興奮でさらに赤くさせ、父がどんな甘い言葉で愛を囁いたか説明しようとする。
父はそんな母を気にも留めず、いつものクールな相好を崩さない。
安上がりなプレゼントで羨ましいと言うと、父と母両方に拳骨で殴られた。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:47:50.57 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
何に影響されたのか、母が社交ダンスを習いたいと言い出した。
俺はあまり乗り気ではなかったが、父から好きにすればいいという許しを得て、翌日からさっそく習いに出かけたようだ。
案の定というか予想通りというか、母は習ったばかりのステップの練習台に、俺を使うようになった。
そして、その姿が多少は様になり始めたころ、母はダンス教室からドレスを借りてきて、父と一緒に踊りたいと言い出した。
父は踊れるはずがないと一端は断ったが、母が適当で構わないというので、仕方なしに一曲だけ踊ることに決めたようだ。
リビングのソファーその他を片付け、適度なスペースを作ると、母はノリノリで父の手を取った。
最初は母が父をリードするという、社交ダンスの儀礼から外れたハチャメチャな踊りだったが
何でもそつなくこなす父が早くもテンポと足運びを覚え、三十分後には
男側がリードするという基本がきちんと出来るようになっていた。
母は父に身体を預けるようにして、俺との練習の時とは比べ物にならないほど心地良さそうに舞っている。
一時間ほどして、母は満足して俺に曲を止めるよう言った。
母は余韻に浸るように潤んだ瞳で父を見つめ、父も無言でその目を見つめ返す。
俺は二人の舞台に水を差さないよう、聞こえるか聞こえないか程度の大きさで称賛の拍手を送った。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 19:59:39.57 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
父との踊りを終えた一週間後、母が社交ダンスを止めると言い出した。
せっかく物になりはじめていたのに、なんだか勿体ない。
理由を聞くと、基本を学ぶ段階を終えて、次回からパートナーと組んで踊ることになったから止めたのだと言う。
母は父以外と踊る気はないそうで、父も一緒に通うのなら続けてもいいと言う。
無論、父に仕事の後、社交ダンスを習う余裕などあるはずがなく、結局母の社交ダンスデビューはなかったことになった。
ただ、ダンスの曲を収めたテープは手元に残しているらしく、
時々父と踊った時を思い出すように、音楽を聞きながらステップを踏んでいる姿を見かけた。
父も、母が踊りたい時は応じる気でいるようだ。
また夫婦で踊る時がくるのなら、俺はまたいい観客になるつもりである。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:12:32.39 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
春期テストの結果が芳しくなかった。
我が家は学業にはあまりうるさくない方だが、それでも今回の結果は酷かったようだ。
父は無言で頭を抱え、母は俺と父の様子を見ながらハラハラしている。
父は仕方なさそうに、少し勉強を見てやるから部屋へ来いという。
父は昔から学業優秀で、教えるのもなかなか上手い。
しかし、そういう場合に限って、母も力を入れて邪魔しがちなのがうちの常である。
勉強に力を入れるのではない、勉強の応援に力を入れるのだ。
父と俺が机に向かう背後で、母は頑張れ頑張れと声を掛ける。
父がちょっと黙れと言うと一時的に黙るが、すぐにまた横合いからごちゃごちゃと声を掛け始める。
勉強を教えられない自分は応援しか出来ないというのだが、それにしても少々鬱陶しい。
そんな姿を見るにつけ、母は学生時代、勉強が出来なかったんだろうなと、思うのだった。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:23:51.81 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
母は辛いもの好きである。対して父は、辛いものがそこまで得意ではない。
いつもなら辛いものが食卓に並ぶ時は、父だけ別のものを用意して食べるのだが
それだと母が寂しそうな顔をするので、時々は父も辛いものに箸をつける。
渋い顔をしながら口を動かす父に、美味しいかどうか尋ねる母。
辛すぎて味がよく分からんと父が言うと、母は辛さが和らぐおまじないをかけると言って
父の口に軽くキスをした。
俺は思わず口の中のものを吹き出しそうになったが、父は短くありがとうと言っただけで、また食事に手をつけ始めた。
母は恥ずかしそうにするでもなく、父の隣で誇らしげに座っている。
その日の食事で何回のキスが交わされたか、数える気にもならなかった。
31 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2010/04/08(木) 20:20:12.96 ID:2VTwPpmYO [1/2]
うちの母が喧しくて困る。
その日の朝、目が覚めたのは母親の奇声が耳に入ったからである。
母親の様子を見に行くと、見ているこちらが恥ずかしくなるくらいの愛を父親にぶつけている。
早朝からお盛んな両親、その原因は足元に落ちている、リボンつきの小包のようだ。
母親や父親の誕生日ではなく、俺の知らない記念日であるとすれば、なるほど、なんとなく想像がつく。
そのまま本番に入りそうだった母親を止めた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 20:23:10.98 ID:IqqovmCN0 [2/5]
うちの母親が喧しくて困る。
俺が、むかし同級生の女の子を泣かせてしまった時の話だ。
ささいな事で喧嘩をしたのだが、口論になった末に女の子を強くぶってしまったのだ。
案の条、その女の子はわんわんと泣き出してしまい、俺は謝りもせずにそそくさと帰ってしまったのだ。
帰ってきた時、母はおかえりを言いかけて、じぃっと俺の顔を見つめてきた。
思わずどきっとして後ずさると、母は何かあったのかと問い詰めてきた。
追い詰められた俺は、白状した。
すると母は、よく正直に言った、エライぞと俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
でも、男の子が女の子に暴力をふるうのは悪い事だ、と叱られてしまったけど。
次の日、母が俺と一緒にその女の子の所に謝りにいってくれた。
女の子とその親は、意外にもあっさりと許してくれた。
その時の清々しさは、今でも忘れられない。
あの日、母に全てを打ち明けてよかったと思っている。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:28:46.01 ID:p6U2ps32O
>>34
開けっ広げな愛情
臆面もない行動力
こんな感じか。しかし主観によって変わるかと
思ったままを書けばいいと思うよ
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:37:22.68 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
犬が捨てられていたといっては拾い、猫が捨てられていたといっては拾いするうちの母。
動物嫌いだった俺と父も、今ではすっかりペットにデレデレだ。
今度は何を拾ってくるのかと思えば、もう動物は拾わないという。
父と俺の愛情のベクトルが、ペットへ向かうのが嫌なのだそうだ。
しかし、そんなことを言いながら、拾ってきた動物の里親が見つかると、一番残念そうにするのも母なのだ。
父はそんな母を見ながら、俺はお前のそういうところに惚れたんだと言う。
母はその台詞を聞くとニッコリ笑い、父の膝で眠る猫をやんわり退けて、代わりに父の膝を占拠した。
父は小さく微笑し、母の頭を優しく撫でた。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 20:51:21.62 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
ある冬の寒い日のこと、健康優良児な母が風邪をひいた。
母はふらふらの体を引きずりながら、それでも働くのが勤めとばかりに家事をこなそうとする。
こんな時ばかりは父も母に優しく、無理をしようとする母をいさめて強引にベッドに押し込んだ。
寝ている母の頭を冷えピタで冷やし、首筋の汗を拭いてやると、うわごとで父の名前を呼んでいる。
父を呼ぶと、何も言わずに母の手を握り、母も無意識にその手を握り返す。
あとは俺が看るからと父が言うので、看病は任せて室外で控えていることにした。
翌日、看病疲れからかベッドに顔を伏せて寝ている父と、その父を愛しそうに見つめる母の姿があった。
熱はもういいのかと聞くと、幸せ過ぎて逆に熱が出そうだと返された。
40 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2010/04/08(木) 20:57:40.44 ID:2VTwPpmYO [2/2]
うちの母が喧しくて困る。
けれども不気味なくらい大人しくなってしまう日もある。
しばらく前のことだ。父が数日のあいだ家を空けることになり、母は駄々をこねて引き止めようとしたが
それは叶わず、父が出かけると、母は糸の切れた操り人形のようにずっと椅子に座っていた。
そのあまりの落胆ぶりに心配して、俺が声を掛けると
私は二番目なのだろうか、と母は寂しそうに呟いた。
それが嵐の前の静けさだったのは言うまでもなく、
後日、帰宅した父は玄関口で母に飛び付かれた拍子に転んで気絶。
そのまま本番に入りそうだった母親を止めた。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 21:11:01.79 ID:p6U2ps32O
うちの母が喧しくて困る。
休日に、俺が室内でゲームに興じていると、台所から母の叫び声が聞こえてきた。
一体何事かと駆けつけてみると、母が壁の一点を指差し、ガタガタと震えている。
よくみるとそこには、黒光りする大きなゴキブリが鎮座ましましていた。
大抵のことは気合いで乗り越える母も、ゴキブリだけは苦手らしい。
近くにあった新聞紙を丸めて応戦すること数秒、ゴキブリは案外あっけなく壁から落ちた。
母は俺を称え、帰宅した父にもその勇姿を語って聞かせたが、父はそのくらい自分で片付けろと素っ気なかった。
今度は父がいるときにゴキブリが出ればいい。そうすれば母も、遠慮なく父を頼ることが出来る。
俺のことを熱く語る母を見て、俺はそう思わずにはいられなかった。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/08(木) 23:15:45.77 ID:0qDqIetPO
うちの父がクール過ぎて困る。
休日ともなれば毎朝毎昼毎晩愛の言葉を叫ぶ母を、いつも素知らぬ顔で受け流している。
たとえ母がメイド服を着ていようと、猫耳だろうとだ。
しかし時折何かが切れたように母を抱えて寝室に入り、そのまま一日中出てこなかったりもする。
次の日もだったりする。
普段から発散していればああはならないだろうに。
そんな家に居る訳にもいかない俺は、今日も友達の家に泊まる。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:21:06.00 ID:jdgmDZtiO [1/3]
うちの母を理解出来ない
朝起きると、窓の外は大海原だった。
呆気にとられていると、ドアがノックされる。
「起きろ、そろそろ上陸だ」
鮫のコスプレをした母である
「えっ」
「久しぶりの陸地だ。バナナの皮に気をつけろ」
えっ
えっ
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 17:26:59.64 ID:jdgmDZtiO [2/3]
やっぱりヒートにいかなきゃスレ違いだよね
うちの母が熱くて困る。
今日、六代目になる我が家が全焼した。各所に施された耐熱・耐火災設備も意味をなさなかったのは流石と言わざるを得ない。
事の発端は父からの誕生日プレゼントである。それに感動した母が歓喜の咆哮と共にビッグバンを起こしたのだ。
まさか父も誕生日プレゼントのお返しに自宅を全焼させられるとは思ってなかったようで、「参ったな」と苦笑い。
参ったな、じゃねーんだよクソ親父。てめえ二代目がお前の抱擁一つで消し炭になったのを忘れた訳ではあるまいな。
母も母で「綺麗なお星様ね」じゃねーんだよ、お前の頭がお星様だよ。ついでに言うと綺麗なのは我が家の敷地だよ。
どうなってんだよ。
どうなってんの。
マジで。
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 17:45:30.84 ID:jdgmDZtiO [3/3]
物理的に熱いのは何かが違うな
情熱的な、真紅の薔薇のような熱さだな
今うちの母が熱い←イチオシ
買い物に行く前に銀行に寄った訳だが、中に入ると覆面を被った男と母が泣きながら抱き合っていた。
床には包丁が転がっており、職員や他のお客さん達もハンカチで涙を拭ったり、惜しみない拍手を贈ったりしていた。
俺は何も言わずに回れ右をし、携帯に手をかける。
送信先「お父さん」
件名「 」
本文「お仕事中すみません。帰りに醤油とみりんを買ってきてください」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:23:50.27 ID:BO9j0aAGO [1/29]
うちの母が喧しくて困る。
寒い季節が終わりを告げた。
母は公園まで桜を見に行こうと、俺と父を誘って出かけることにしたようだ。
弁当と簡素な荷物を持って公園に着くと、母は荷物の中から赤ワインを取り出して見せた。
曰く、今日はなんだか飲みたい気分だった、という。
父の分のグラスも用意してあり、俺だけが自販機で買った烏龍茶を啜る羽目になった。
酔った母は、父に向かっていつも以上に真面目くさって愛しているという。
父は素知らぬ顔で、ぼんやり桜を眺めている。
スルーされたと勘違いした母が、桜の木に登って父の気を引こうとする。
そんな母の服の袖を握り、父が半ば無理矢理、母を自分の膝にのせる。
一瞬きょとんとした母は事態を理解し、父の膝の上で上機嫌に、さくらさくらを唄っている。
これだから酔っぱらいは、と思いながら、いつか酒を飲む時は、母のような酔い方をしてみたいと思うようになった。
56 名前:>>53 シュール民の方ですか?[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:33:46.91 ID:BO9j0aAGO [2/29]
うちの母が喧しくて困る。
俺の秘蔵のエロ本が母に見つかった。掃除はしなくていいと言っていたのに。
母は年頃だからと一応の理解は示してくれていたが、ショックは隠しきれなかったようだ。
どうやら帰宅してきた父に、そのことを相談したらしい。
父は男ならそういう本を持っていて当たり前だとフォローしてくれたが、そこから先がいけなかった。
母は、父もそんな本を持っているのかと聞くと、冷静な父がわずかに動揺する。
敏感な母はそれを見逃さず、以降、父がどこかに隠したであろうエロ本を探すのに、躍起になっていた。
標的が俺から逸れるのは有難いし、父の狼狽える姿も滅多に見れないから貴重ではあるのだが
この時ばかりは父のことを、憐れだと思わずにはいられなかった。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 00:48:34.42 ID:BO9j0aAGO [3/29]
うちの母が喧しくて困る。
母は魚を食べるのが苦手らしい。
いつも身をぼろぼろに崩し、腹わたも小骨も指でどけながら食べている。
父はそんな母とは対照的に、箸できっちり骨をよけ、一匹の形をそのまま残して綺麗に食べている。
母は父の箸使いに見とれ、父の食事風景をうっとり見つめることが多かった。
母が呆けているといつまで経っても食事が終わりそうにないので、
父のゴーサインと共に、母の死角から忍びよって、おでこに箸を突き刺した。
もちろん突き刺したというのは比喩で、実際は多少額がへこんだだけだったが
不意を突かれた母は、派手な声を出して椅子から転げ落ちた。
たかだか魚を食べる程度でここまで大騒ぎするのも、うちくらいなものだろう。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:05:39.61 ID:BO9j0aAGO [4/29]
うちの母が喧しくて困る。
イベントデーになるとにわかに活気づくのがうちの母であるが、
とりわけバレンタインデーやクリスマスなど、カップルが祝うべき行事になると力の入れ方が違う。
毎年食べきれない量のご馳走と、ばかでかいクラッカーとを準備して祝うのである。
俺はいまだに、規模を考えないそのお祭り騒ぎに慣れずにいるが、結婚して長い父はさすがにもう慣れたらしい。
父も、母へのプレゼントを忘れない辺り、それなりに楽しんではいるようだ。
ただ、母が要求するのは、毎年「父からのキスと抱擁」と決まっているので、多少辟易している感はあるようだ。
だったら断ればいいのに、というのは二人には禁句であるらしい。
なんだかんだで仲が良い二人である。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:22:57.50 ID:BO9j0aAGO [6/29]
うちの母が喧しくて困る。
普段から声が大きく、また態度もデカイ我が家の母であるが、テンションが上がるとそれにさらに拍車がかかる。
一度、宝くじで五千円が当たった時なぞ、天地がひっくり返るかと思うほどの喜びようだった。
例のごとく帰宅した父に、母が突進して宝くじが当選したことを告げる。
父は最初こそ興味深げだったが、あまりに喧しくテンションの高い母にうんざりしたのか、突然、母の脇腹をつつき始めた。
とたんに母は、身をよじらせて身悶えし始め、十回それを繰り返す頃には、すっかり大人しくなっていた。
どうやら脇腹は、俺の知らない母の弱点だったらしい。
父はへなへなとくずおれる母を抱き抱え、ベッドに放り投げた。
父は母の扱いをよく心得ているようだ。
68 名前:お題随時募集中[] 投稿日:2010/04/09(金) 01:44:23.62 ID:BO9j0aAGO [9/29]
うちの母が喧しくて困る。
喧嘩なぞ滅多にしない両親だが、先に書いたように喧嘩する時は派手にぶちあげる。
しかし、喧嘩よりさらに少ない頻度ではあるが、下らない理由が元でいさかいを起こすこともあるにはある。
それが、「目玉焼きには醤油派(父)」VS「目玉焼きにはソース派(母)」の百年戦争である。
俺が小学生の頃には、母が無理にでも父をソース派に転向させようとする姿を何度も見かけ、
父もそれに苛立ち、ついには何も掛けずに目玉焼きを食べるようになった。
焦げた目玉焼きを何も着けずに食べるのは至難の業だと思うのだが、これも愛の成せることなのだろうか。
ちなみに俺は、二人を刺激したくないのでもっぱら塩コショーで食べるようになった。
俺も家族の関係を維持するために貢献しているのである。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 02:08:09.71 ID:BO9j0aAGO [11/29]
うちの母が喧しくて困る。
母は料理が苦手だ。だから必然的に、弁当もおかしな風になる。
全体的に甘だるい味付けで、例えるならば外れではないけど三等賞、くらいのがっかり感がいつも漂っている。
個人的には毎食購買部で済ませたいのだが、金銭的な関係でそれもなかなか出来ずにいる。
一度なぞ、野菜炒めから甘い汁が滴っており、口に含んだ瞬間何が起こったのかと目を白黒させたものだった。
では、そんな母の弁当に対し、父はどう対処しているのだろうか。
なんと父は、甘い野菜炒めも何もかも全て、文句一つ言わずに食べているのだ。
実は外で食べているのではないかと疑ってみたが、どうも本当に完食しているらしい。
いつか腹を壊さないかと、密かに心配せずにはいられない。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 02:21:29.02 ID:BO9j0aAGO [12/29]
うちの母が喧しくて困る。
父は幽霊を信じていない。そしてそれは、母も同じである。
父はともかく母は意外な気がしたので理由を尋ねると、信じたら怖いからだという。
それは理由になっていないんじゃ、という突っ込みが出来ずにいると、父が
死後の世界はない、だから幽霊なんかいないとはっきりと断言した。
父は恐らく、母を怯えさせないようそんな言い方をしたのだと思う。実に父らしい。
母はそれを受けて、私はお化けでも何でもいいから、死んでも二人に会いたいな、と言う。
父は勘弁してくれと後退りしたが、顔は満更でもなさそうだ。
死後も二人して、今のような夫婦漫才をやっているのだろうか。
きっとやっているのだろう。そんな気がした。
81 名前:出かけるまでにせめて一本[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 07:43:58.29 ID:BO9j0aAGO [15/29]
うちの母が喧しくて困る。
ある日の食卓で、「もし家族が死んだらどうするか」という話題を母に降った。
とたん母は、そんなの嫌だと泣きだした。
自分が家族を残して先立つのも嫌だし、その逆もまた嫌だという。
そんなことを言ってもいずれはそのどちらかになるのだし、嫌々しても仕方ない。
俺がそんな話題を出したことを後悔していると、父が、俺はお前を置いて先に死んだりしないと言って、母の頭を胸にかき抱いた。
母は何も言わず、うんうん頷きながら父の胸に顔を埋めた。
そんな両親の姿を見るのは恥ずかしいので、俺は食事もそこそこに席を立った。
去り際、母が父へ、私の旦那様になってくれてありがとうといっているのが聞こえた。
父は柄にもないことを言うなと言いながら、母の頭を離さない。
俺が両親へ向けてありがとうなんて言うのはまだ先のことだろう。
今はまだ、それでいいのだと思う。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 13:27:40.42 ID:BO9j0aAGO [17/29]
うちの母が喧しくて困る。
ついに俺にも彼女が出来た。念願叶ってひとしおである。
それ自体は悪くないのだが、困ったことに母がその話をどこからか聞きつけて、彼女について根掘り葉掘り聞き出そうとしてきた。
そして、母に伝わった話は当然のように父にも筒抜けで、夕飯の席で良かったなと祝いの言葉をかけられた。
父は、恋人同士仲良く、互いを尊重するようにと、いつもの父らしくない説教口調で重々しく言う。
俺はなんだか悔しくなったので、それなら父のようになればいいのかと言うと、
父は、俺は母を泣かせてばっかりだったから、反面教師にしかならないよと苦笑した。
母は、でも今の私は幸せだよと、父の言葉を否定するように言う。
そこからはいつものラブコールが始まったので、俺は二人のどこかが参考にならないものかと、
いつも以上に念入りに、目を皿のようにして二人を観察した。
結果、この二人の相思相愛っぷりには、なんら参考になるような部分はないということだけがわかった。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 19:42:32.97 ID:BO9j0aAGO [20/29]
うちの母が喧しくて困る。
彼女と別れた。わずか一月ほどの付き合いだった。
理由は、なんか会わないから、だそうだ。なんだそれ。
母はまたもやどこからか情報を仕入れてきて、学校帰りの俺を激しく慰めた。
あまり蒸し返して欲しくはない話だったが、母は母なりに俺を気づかってくれているのだと思うと、無下にも出来ない。
別にそこまでショックではないから、と伝えると、そんなはずはない、私は父に冷たくされると悲しかった
と、まるで自分のことのように俺がフラれたことを悲しんでくれた。
言わずもがな、父にもそのことは伝わったが、父はそうかと言うだけで、それ以上そのことには触れなかった。
母は不満げだったが、父のその冷淡とも取れる態度に、俺は正直救われた思いだった。
後で聞いたところによると、父はナイーブな話題をほじくり出すなと、母を諌めてもくれたらしい。
どうやったらこの二人のようになれるものか。傷心の俺はそう思いながら、ベッドに潜り込んで少しだけ泣いた。
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 19:51:22.41 ID:BO9j0aAGO [21/29]
うちの母が喧しくて困る。
俺の住む町に台風がくるらしい。それも、観測史上最大の規模でだ。
学校も臨時休校になり、父も職場から自宅待機を命じられた。
どことなく塞ぎがちになっている俺たちをよそに、母はウキウキとどこか嬉しそうだ。
嵐の前の、遠足に行くようなあの感じに似てはいるが、どこか違うような気もする。
あるいはそれは、台風を理由に父に甘えんとしているからかもしれない。
案の定、母は台風で停電になると、わざと怯えたふりをして父ににじり寄り、その膝にすがりついた。
結婚して長いのだから、母の演技くらい見抜けそうなものだが、父は膝の母を退けようとはしない。
父も、母が本当に怯えていたらと思うと、あまり邪険には出来ないのだろう。
俺は苦笑しながら、非常用に買っていたパンにかぶりついた。
パンはパサパサしてまずかったけれど、二人の間に漂う空気は甘ったるくて胸焼けしそうだった。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:09:12.58 ID:BO9j0aAGO [23/29]
うちの母が喧しくて困る。
今日は父と母の結婚記念日だ。
いつものように盛大なパーティーが行われた後、プレゼントを交換しあう段階に入る。
俺は少ない小遣いの中から、母にアクセサリーを、父に万年筆を選んだのだが、
父が母へ渡したのは、一枚の飾り気のない封筒だった。
中身は何かと母が尋ねると、父は臆面もなく、恋文だと言った。
父の話によると、いつものようにキスと抱擁だけだと、後で形に残る物が何もない。
だからたまには、こういう形で愛を伝えるのもいいんじゃないかと思った、とのことだった。
理知的な父らしいやり方である。母も今までに増して喜び、中にどんなことが書いてあったかは、絶対に教えてくれなかった。
因みに、母から父への贈り物は、特大の手作りケーキだった。
味の方は、まぁ言わずもがなであろう。
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 20:23:34.58 ID:BO9j0aAGO [24/29]
うちの母が喧しくて困る。
母が、町内会の会報誌の執筆を頼まれたらしい。
毎日うんうん唸っているが、肝心の中身は一向に進む気配がない。
どうやら速く書けとせっつかれているようで、最終手段として母はいつものように父に泣きついた。
結果、父の助力もあって会報誌の原稿は完成したが、その大半は母ではなく父が書いたものだった。
父は安請け合いをするなと怒りながらも、何故か少しだけ楽しんでいるようにも見えた。
聞けば、大学時代のレジュメの作成等も、今日のように父が母を手伝って、ようやく完成させていたそうだ。
なんのことはない。急場に陥っているように見えて、その実二人は昔を懐かしんでいただけなのだ。
父が手伝ってくれるなら、来月も頼まれようかという母に、調子に乗るなと父が拳骨を食らわしていた。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 20:38:49.86 ID:BO9j0aAGO [26/29]
うちの母が喧しくて困る。
父が出かける直前、母がスーツのボタンが取れていると指摘した。
俺はその光景を何の気なしに見ていたのだが、
母は裁縫道具を持ち出し、器用に運針してボタンをつけ始めた。
てっきり針で指を刺すものと思っていた俺は、その玄人はだしの腕前に唖然としてしまった。
最後に糸切り歯でぷちんと糸を切ると、それまでボタンが外れていたのが嘘のように綺麗に着け直されていた。
母はこれでバッチリと言いながら、父にお出かけのキスをせがむ。
普段あまり意識することはないが、やはり母はちゃんと母親なのだ。
俺は母を見直しながら、それでもお出かけ前のキスは止めた方がいいのでは、と心の隅で思った。
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/09(金) 21:00:03.99 ID:BO9j0aAGO [27/29]
うちの母が喧しくて困る。
ワールドカップで世間が盛り上がっていたころ、我が家でも一人盛り上がりを見せる人物がいた。
もちろんそれは母である。
俺と父は運動が苦手で、スポーツにもあまり関心はないのだが、母だけは違う。
日本の試合当日になると、ユニフォームを着てフェイスペイントまでこなし、完全ににわかサッカーファンと成り果てるのである。
母は父にも日本を応援してほしいようだが、父は誰が代表に選ばれたかも知らないほど興味がない。
かくいう母も、単なるフリークなので詳しくは知らなかったりする。
俺も当然のように知らない。
まるで蛇と蛙と蛞蝓のような三竦みだ。
しばらくして馬鹿らしくなったのか、母も日本代表の応援を止めた。
その代わり、毎日頑張っている父を応援することに決めたそうだ。
応援用の小旗を振りながら父を見送る母は、なんだか小さい子供のようだった。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 21:39:49.13 ID:BO9j0aAGO [28/29]
うちの母が喧しくて困る。
母が伊達眼鏡を買ってきた。
何事かと思ったら、父とお揃いにしたいのだという。
そこまですると媚びていると取られかねないのではと余計な心配をしたが
父は母の眼鏡姿を見ると、なんだか新鮮だと言って意外と食いついてきた。
母は父に誉められたのが嬉しかったのか、それから毎日眼鏡を着けるようになった。
不思議なもので、眼鏡という知的アイテムを使うだけで、がさつな母がおしとやかに見えてしまう。
母は父だけでなく、俺にまで妙なフェチズムを植え付けてしまったようだ。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 11:06:15.10 ID:ny1WmSJnO [3/7]
コイツの母がすごくて困る。
コイツは弁当を食べるときにいつも面白い顔をする。
あまりにも面白い顔をするので、残してもいいんじゃないかと言ってみたところ、
「何で残したのかの言い訳を考えるのが面倒だ」と返ってきた。
どんな味なのかと一口貰ってみて、少し後悔する。
今の私はどんな顔をしているだろうか。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:21:44.56 ID:ny1WmSJnO [6/7]
アイツの母がすごくて困る。
友達からの前評判で綺麗だとは聞いていたが、まさかここまでとは。
アイツはというと、他人に自分の親を見られるのが恥ずかしかったのだろう、
あの人に気が付いた直後に逃げだしたようだ。
結局すぐに捕まってなぜ逃げたのか言い訳をしていた。
こうして見ているとまるで姉弟みたいだなと笑っていると、あの人はこちらに気付いて声をかけてくる。
……私にかけられた「息子の彼女」疑惑を当事者2人掛かりで否認するのは骨が折れる作業だった。
ただ、あの人がお詫びにと買ってくれたタイヤキは美味しかった。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/09(金) 20:22:51.21 ID:VjmsKfclO [4/4]
うちの父がクール過ぎて困る。
部屋で漫画を読んでいたらいきなり父さんがやって来て真面目な話が有ると言う。
何だ何だと思っていたら、新しく弟か妹が出来るとのたまった。
固まる俺をよそに部屋を出て行く父さん。
我に帰って慌てて父さんを追い掛けようと部屋を出る。
そこにはドッキリ大成功と掛かれたプラカードを持つ父さんと、ニヤニヤ笑う母さんが。
そうだ今日はエイプリルフールだったと思い出すと同時に、母さんに対して甘過ぎる父さんに頭を抱えた。
ああびっくりした。
<<上条「素直な一方通行?」 | ホーム | 唯「うん!こ! うん!こ! うん!こ!」>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |