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唯「憂のお腹が妊娠したみたいになってるよ!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 11:36:17.12 ID:VQD/2T5JO [1/50]
唯「……大丈夫?」


憂「…………」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 11:45:40.08 ID:VQD/2T5JO [2/50]
どうも平沢憂です。さっそくですけど大丈夫じゃないです。とってもお腹が苦しいです。
はちきれそうです。ヤバいです。得体の知れない何かが身体の内側で暴れ
狂っています。未知の激痛がお腹を苛んで、私を見つめるお姉ちゃんの心配げな
表情すらも酷く不明瞭です。

お母さん。

今ならあなたの気持ちがわかる気がします。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 11:53:32.19 ID:VQD/2T5JO [3/50]
周りからよくできた娘なんて言われますが、ていうか自分でそう思わないこともないんで
すけど、それでもやっぱり白状すれば、年相応に両親に迷惑をかけたことはたくさんあります。

わがままを言って困らせたこともあります。

それでも私、平沢憂は今日までまっすぐ姉の平沢唯とともに真面目に気丈に女の子らしく生きてきました。

私たちの両親は行き過ぎた放任主義ゆえに家にいないことも多々ありましたが、
私たち姉妹は決して道を踏み外すことはありませんでした。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 12:04:24.06 ID:VQD/2T5JO
お母さん。あなたにはどんなにお礼を言っても足りないくらいです。
あなたが私に料理のスキルを叩き込んでくれたおかげでお姉ちゃんに毎日、おいしいご飯をたべさせて
あげることができました。

そしてお父さん。ごめんなさい。小学校で出された「お父さんの似顔絵の宿題」で思わず
カツラをとった寝顔を描いてしまって。

図工の先生に絶賛されたとき正直満更でもありませんでした。


本当に二人とも今日までありがとうございました。

そして松居一代さん。
あなたのお掃除術によって、今日も我が家は清潔に美しく保たれています。
ありがとうございます、松居棒。

--最後にお姉ちゃん。
私の大切なお姉ちゃん。
私の大好きなお姉ちゃん。
私がいなくなっても勉強に部活に恋愛、全部頑張ってね。
応援しています。

私はいつも、いつまでもお姉ちゃんを見ています。




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 12:12:18.99 ID:VQD/2T5JO
様々な思い出が走馬灯のように脳裏をかけ巡ります。

まるでこれから天に召されるかのようです。

そもそろなにゆえ私はこんな悲惨な目にあっているのでしょうか。
いえ、というより今私が陥っている状況に認識が追いつけていないのです。

だんだん、視界がぼやけてきました。

額には気持ちの悪い汗が浮かびます。

激痛に思考にまでも暗幕がかかろうとしています。

瞼がどんどん重くなっていくのを感じます。


最後に視界の端で黒い二つの髪が揺れたのを見て、私の意識は途絶えました。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 12:25:18.77 ID:VQD/2T5JO
――何故こんなことになってしまったのか?



♪ある日の昼休み・学校の屋上!

和「わざわざ呼び出してごめんなさい」

憂「いえ、気にしないで下さい。ところで屋上って立ち入り禁止じゃないんですか?」

和「許可は取ってあるから大丈夫よ」

憂「それで用件っていうのは?」

和「唯のことよ」

憂「お姉ちゃんのこと、ですか」

和「単刀直入に言うわよ。唯を今すぐ鍛えなさい」

憂「……はい?」

和「言い方が悪かったわね。唐突な話だけど、憂ちゃん。仮にあなたが死んだら唯はどうなると思う?唯がひとりぼっちになってしまったら」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 12:37:22.22 ID:VQD/2T5JO
憂「……」

和「それに今の状態のままで唯が社会に出たら。考えてもみなさい。飼い猫同然の唯にとって
社会なんてものは盛りのついたオス猫の吹き溜まりみたいなものよ」

憂「社会って恐ろしいんですね。私まで社会に出る自信が無くなりそうです」

和「あなたなら大丈夫よ。ところで憂ちゃんは交尾中の猫の喘ぎ声の生々しさを知ってる?」

憂「知ってます。何て言うか赤ん坊の泣き声みたいですよね」

和「そうなのよ。春とか盛り真っ最中でしょ。夜中に勉強してると聞こえてくるから
集中できないのよね」

憂「なんであんな声になっちゃうんでしょうね」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 13:15:41.47 ID:VQD/2T5JO
和「アレはオスの性器に突起のようなものがついているからよ。だから性器を引き抜く時に
強烈な刺激がメス猫に与えられるらしいわ。それでその激痛によってメスは声をあげてし
まうの。でもその痛みがトリガーになって排卵を促すからオス猫の突起は絶対に必要なもの
なのよ。ああ、人間のオスにも突起をつければ少子化問題の解消につながるかもしれないわ
ね。いや、でもそうしたら今度は交尾をしたがらなくなってしまうかもしれないわね。
まあ、考え方次第ではアダルトビデオとかの流通が減るかもしれないから、教育的に見れば
悪くないかもね。そうそう話は戻るけど同じ系統のライオンも猫と同様らしいわ。ただ、
メスのライオンは、交尾中は恍惚とした表情を浮かべているのだけど、オスが性器を引き抜
こうとするとあまりの痛みに激怒してオスに噛み付こうとするらしいわ。その獰猛さにオス
のライオンは一目散に逃げ出すそうよ。そうそう、交尾と言えばウサギの交尾を見たこと
あるかしら。私は未だに拝んだことがないんだけれど。なんでもウサギはオスとメス
を一緒にして放置しておくと延々と交尾しちゃうらしいの。あんまりにしすぎちゃうもん
だから男性器が腐ってしまうらしいわ。ちなみにオスのウサギは達すると、バタンと倒れる
らしいの。しかも叫ぶらしいのよ。まるで人間みたいでしょ? え? 人間の交尾は見た
ことがあるのか……ってそ、そんなことは聞かないでほしいわね。正直に言うわ。見たこと
なんてないわ。別に人間には興味ないもの。え? 本当に興味ないのかって? いや、うん
まあそうね。全く興味が無いと言えば嘘になるわ。でも見たことがないのは本当よ。そう
よね、だったら想像ってことになるのだから知ったかぶりってことになるわね。まあそんな
ことは気にしないで。うん?しかも人間はイッてもバタンと倒れない? ええそうね。倒れ
ないわよね? でも面白いと思わない? とにかく交尾をさせすぎないようにウサギを監視
しておかないといけないらしいわ。そういえば、先日生徒会の関係で講堂に朝呼ばれたのよ。
ちょうどその時、鳥が二匹入ってきたのだけど、さっそく交尾を始めちゃったの。早朝よ。
早朝。でも、遠くから見てると強姦してるようにしか見えないのよ。天井の辺りでしていたの
だけど、何回か暴れすぎて片方が落ちてきたりして。気になっちゃって私、仕事どころ
じゃなかったわ。ところで憂ちゃんはクジラの交尾については(以下略)――」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 13:26:03.26 ID:VQD/2T5JO
憂「あの、本題に戻りませんか?」

和「ごめんなさい。ちょっとしゃべりすぎたわね。また聞きたかったらいくらでも話すけど」

憂「とりあえず本題を」

和「……どこまで話したかしら?」

憂「お姉ちゃんを鍛えるとか鍛えないとか、そんな話です」

和「そう、それ。簡単に言うと今の唯は一人で生きていく生存能力と社会的経験値が
圧倒的に足りないと思うの」

憂「確かに、そう思わなくもないですけど……」

和「唯が今のまま大人になったらどうなるか想像してみて」




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 13:39:51.03 ID:VQD/2T5JO
憂「それは……」

和「もし社会人として一人で暮らすことになったら。生活能力の零の唯は自分で料理
も作ることができない。自炊もできない唯はインスタントで済ませる毎日を送る。
やがて、栄養の傾きに伴って病を患う。当然、掃除もできないので、気づいた頃
にはもうゴミ屋敷の完成。不衛生な環境は病気を呼ぶには十分ね」

憂「…………」

和「汚い大人がわんさかいる社会。欺瞞に満ちた社会。果たして純粋無垢な唯は
どうなるのかしら。簡単に他人に騙され、利用されるかもしれない。そうじゃなく
ても今までの世界とのギャップに、耐性の無い唯はやがて悪い薬に手を出してしまい……」

憂「和さん!私、お姉ちゃんちゃんが社会に出ても大丈夫なように今日から
お姉ちゃんを鍛えあげます!」

和「ありがとう。私の気持ちを汲みとってくれたのね。
私もできる限り協力するわね」


こうして私の闘いが始まりました。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 13:50:55.49 ID:VQD/2T5JO
♪その日の夜・平沢家!

お姉ちゃんは私のクラスメートの梓ちゃんのことを「あずにゃん」と呼びます。

なんでもその所以は、さわこ先生の用意したネコミミカチューシャが大変似合っていた
というそれだけの理由なのだそうですけど、それ以来お姉ちゃんは梓ちゃんのことを
「あずにゃん」と呼ぶのです。

しかし、自由気ままに怠惰な生活を送り、食べては寝てを繰り返すお姉ちゃんの方が
よっぽど猫に似ているのではないのかと、和さんの言葉を聞いてふと思いました。

何はともあれ、私は私自身と仏様と和さんに誓って、自分の使命を全うするのみです。

善は急げというので、とりあえず普段より早めにに夕飯を食べることにしました。

これが本当の膳は急げ……あれ、面白くないですか?

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 13:55:08.00 ID:VQD/2T5JO
憂「お姉ちゃん、ちょっと聞いてほしい話があるんだ」

唯「ふえ?何?」

憂「あのね……」




27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:05:16.59 ID:VQD/2T5JO
それから私は今朝、和さんに言われたことを話し始めました。

本当は夏目漱石のかの名作先生のように思いの丈を手紙にしてありのままに綴り
たかったのですが、現実問題としてあれだけの量を手紙で送るというのは不可能らしい
ので断念しました。


唯「そっかあ。唯も和ちゃんもそんなにわたしのことを考えてくれていたなんて……」

お姉ちゃんがどこか感慨深そうに呟いた頃には、時計の針が三週目を終えようとしていました。

唯「憂、わたし立派な人になれるように頑張るよ!」

憂「私も全力を挙げて協力するからね!」


私たちは仲の良い姉妹らしく決意も新たに食卓を挟んで抱きしめ合いました。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:11:23.59 ID:VQD/2T5JO
……この時の私はあまりに楽観的だったのかもしれません。


私はこれでもお姉ちゃんのことなら誰よりも、無論、生みの親であるお母さんよりも
知っているつもりでした。

いいえ。

実際知っていることだけなら、おそらく誰よりも多いのでしょう。

しかし、それ以上に知らないことも山ほどあるということに、私、平沢憂はこれから
気づかされるのでした。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:19:50.85 ID:VQD/2T5JO
♪食器洗い!

とりあえず、いきなりご飯を作れと言うのはさすがにお姉ちゃんでなくとも難しい
と思うので、順を追ってまずは食器洗いからすることにしました。

唯「うい~、いくらわたしでも食器洗いくらいはできるよ~ほらほら」

憂「さすがお姉ちゃん!」

唯「洗って~流して~ふきふき~」

憂「いいカンジだね」

唯「余裕のよっちゃんだよ~洗って~ま~たふきふき~」

憂「…………」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:30:00.86 ID:VQD/2T5JO
唯「~~~~~~~♪」

憂「お姉ちゃん……」

唯「んん?何~?」

憂「とりあえず食器洗ってそのつど流して拭いてたら、効率悪いから全部洗って
流してからまとめて拭いたほうがいいよ」

唯「おお!さすが憂!」

憂「ちなみにタワシはこびりついた汚れをとる時以外は使っちゃダメだよ。
傷がついちゃうからね」

唯「なーるへそ」

憂「それと油ものを後回しにして洗おうね。洗剤を無駄に使わなくて済むよ。
あと、お湯を使ったほうが汚れを落としやすいからね」

唯「さすが憂~!

憂「…………」

どうも道のりは私の予想よりも長いみたいです。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:37:25.41 ID:VQD/2T5JO
♪お洗濯!

憂「お風呂に入ったことだし次は洗濯だね」

唯「まかせなさい!ほれほれほれーい」

憂「お姉ちゃん洗剤入れすぎっ!めっ!

唯「あうう~調子に乗りました」

憂「量は適切に!」

唯「エコだねっ」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 14:48:47.16 ID:VQD/2T5JO
唯「そういえば我が家には色んなハンガーがあるね」

憂「たぶんどの家にもハンガーは何種類かあると思うよ」

唯「まあいいや。さっさと干しちゃおー」

憂「お姉ちゃん、きちんとシワは伸ばさなきゃダメだよ。こうパンパンって。
そろと洗濯バサミできちんと型崩れしないようにね」

唯「おっけ~」

憂「ちなみに今は冬だからストーブをかけておくこと」

唯「洗濯物を乾かしやすくするんだねっ」

憂「うん。それにこうしておくことで乾燥予防にもなるしね」

唯「へえー」

憂「最後に冬はカッターシャツの袖口とから渇きにくいから、こうやってもう
一個のハンガーの方に袖をかけておくと渇きやすくなるよ」

唯「うぉんだふぉー!?」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 15:01:01.12 ID:VQD/2T5JO
唯「憂せんせーしつもーん」

憂「何かなお姉ちゃん?」

唯「冬になるといつもなんで窓の溝のところにわたしや憂の使えなくなった靴下とかを
挟んで置いてあるの?」

憂「あれはね、冬になると窓に結露によって水滴がつくでしょ?」

唯「ケツロってなに?」

憂「結露っていうのは空気中の水分が冷たい窓の表面に触れることで水滴になって
くっついちゃう現象のことだよ」

唯「ふんふん」

憂「それでそういう水分が溝に溜まったりするとカビの原因になるから、事前に
靴下とかを置いといて、水滴が溜まらないようにしてるんだ」

唯「じゃあわたしの要らなくなったパンツとかタイツもあげるよ」

憂「パンツにはまた違う用途があるんだよ」

唯「どんな?」

憂「ひみつ」


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 15:15:02.60 ID:VQD/2T5JO
唯「じゃあついでにもう一個質問。今日のごはんのメニューにから揚げがあったけど、
なんで使った後のフライパンに週間少年ジャンプが刺してあった?」

憂「一応わかってると思うけど載せてあるだけだからね。ああしておくと油を吸って
くれるから便利なんだよ。一時期はこの油吸い取るためだけにガンガン買ってたけど、
月刊だから結局やめたんだ」

唯「使えるものはなんでも使うなんて、憂は主婦のかがみだねっ」

憂「ちなみにこの油取りの方法は「伊藤家の食卓」で知ったんだ。まあ、日本人は
勿体ない主義だしね。本当かどうかは知らないけど勿体ないって言葉は日本にしか
ないんだって」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 15:22:33.91 ID:VQD/2T5JO
♪おやすみ!

唯「憂、アドバイスある?」

憂「普通に寝ていいよ」

唯「じゃあおやすみ~」

憂「おやすみ。明日も頑張ろうね」

唯「あいあいまむ!」


とりあえず、一日目は無事に終わりました。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 15:34:20.72 ID:VQD/2T5JO
♪また別の日・早朝!

唯「憂は朝は絶対カフェオレだよね?」

珍しく早起きしたお姉ちゃんが、トマトとチーズとシーチキンのホットサンドを
頬張りながら私に尋ねました。

憂「うん、なぜかこれ飲まないとエンジンかからないから」

本当はブラックの方がより好みなんですが、空っぽの胃にコーヒーはあまり
よろしくないようなのでやむなく朝は毎回カフェオレにしています。

ちなみにお姉ちゃんは朝っぱらから季節に関係なくキンキンに冷やした牛乳を
おいしそうに毎日飲みます。

唯「いってきまーす」

憂「いってきます」


恒例の挨拶を済ませて私たち姉妹は今日も今日とて学校に向かうのでした。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 16:10:14.40 ID:VQD/2T5JO
ごめんずっと和は憂のことを憂ちゃんって呼ぶと思ってた。
和は憂のこと普通に呼び捨て?



♪学校・昼休み

梓「へえ、唯先輩が家事を手伝ってるんだ」

憂「うん、って言ってもまだまだ道のりは長そうだけどね。でもやる気はあるから教える側
としてはすごくやりがいがあるかな」

純「唯先輩って家だとどんな感じなの?」

憂「盛りのついた猫みたいに床やそこら中をごろごろしてるよ。これがまた
とってもかわいいんだ」

梓「憂は相変わらずだね」

純「そうそう猫と言えば最近家の猫が……」

純ちゃんが両目を輝かせて、猫について語りだしました。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 16:23:04.18 ID:VQD/2T5JO
♪放課後・音楽準備室!

今朝、私はお姉ちゃんに放課後におつかいに行ってもらうように頼んでいました。
おつかいと言ってもおやつを買いに行ってもらうだけなんですけれど。

ちなみに私はお菓子を買う場合は薬局を利用します。

最近の薬局の品揃えと安さには目を見張るものがあります。
もちろん、お姉ちゃんにも薬局へ行ってもらうように言っておきました。


ただ一つ問題がありました。普段からしっかりしているなんて評判のある私ですが、
もちろん時にはドジを踏む日もあります。

今日がまさにその日でした。

お姉ちゃんにポイントカードと朝刊に挟まっていたポイント二倍券を渡すのを
うっかり忘れていたのです。

救いなのは私がそれに放課後にすぐ気がついたということと、音楽準備室に行けば、
十中八九お姉ちゃんに会えるというこです。

というわけでレッツゴー。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 16:46:22.35 ID:VQD/2T5JO
私たちの教室のある校舎と違って旧校舎は独特のにおいが漂っています。

もっともそんな旧校舎の一角にある音楽室は紅茶のかぐわしい香りが満ちていて、
ここだけ別次元のようです。

律「おっ、憂ちゃんどうしたの?」

憂「こんにちは。お姉ちゃんに用事があって来たんですけど……いませんね」

律「唯なら掃除当番だからまだ三十分くらい来ないんじゃない?」

紬「もしよかったら、せっかく来たんだし待っている間一緒にお茶しない?」

憂「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて」


紬さんの用意したお菓子がどれだけ美味なのかを知っていた私は、もちろん喜んで
快諾しました。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 16:58:26.17 ID:VQD/2T5JO
憂「もう純ちゃんが猫のさかりについて昼休み中延々と語りだしちゃって」

梓「無駄に熱心に話してたよね。少し怖かったぐらいだよ」

澪「そういえば、和も最近動物の話をよくするな」

紬「私も何か動物を飼ってみたいわね」

律「ムギが買う動物……ゴールデンレトリバーとか?」

紬「そういうのもいいけど、チワワとか可愛いのも良いと思わない?」

澪「私は犬より猫派かな……」

梓「やっぱり猫ですよね。可愛いし散歩の必要はないし、うるさくないし」

律「意外と猫も鳴くとうるさいらしいけどな」

美味しい美味しいチョコモンブランを平らげ、芳しい香りをたてる紅茶が底を尽きる
かけた頃に、ようやくお姉ちゃんはやって来ました。

唯「ごめーん、遅くなっちゃった」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 17:08:31.31 ID:VQD/2T5JO
お姉ちゃんに用件を伝え、目的のものを渡して軽音部を後にした渡した私は
少々手持ち無沙汰でした。


お姉ちゃんにおつかいを頼んだのはなにも私に時間が無いからではありません。

これも訓練の一環としてのことなのです。

一応、お姉ちゃんには学校でしなければならない用事ができてしまったと伝えましたが、
そんなものはありません。もちろん私はお姉ちゃんのおつかいの行方を見守ろうと
思っています。

憂「とりあえず図書室で軽音部が終わるまで待とうかな……って純ちゃん?」

純「憂、少し話したいことがあるんだけどいい?」

暇と言えば暇なので頷いておきました。





64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 17:21:04.17 ID:VQD/2T5JO
純「――つまりあれはオスの性器に突起のようなものがついていて、それによって
性器を引き抜く時には強烈な(以下略)――」


強烈な既視感に襲われて、私は思わず目頭を揉みました。

純ちゃんはあれから狂った機関銃のように動物の交尾について、熱弁を奮う
のをやめようとしません。

和さん。どうやらあなたに共通の趣味を持つ相手が見つかったようです。

おめでとうございます。いえ、別に投げやりなんていません。

ただそろそれ帰りたいかなあって思っただけです。

お姉ちゃんも心配してるでしょうし――

憂「ってお姉ちゃんはおつかいに行ってもらってるんだった!!」


今更のように思い出して腕時計を確認すれば、既に時計は六を跨がろうとしていました。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 17:31:07.57 ID:VQD/2T5JO
憂「ごめん純ちゃんそろそろ帰っていいかなお姉ちゃんが心配でわた」


返事を待たずに既に全力疾走の体勢に入っていましたが、右腕を掴むあまりの握力に
思わず私は踏み出そうとしていた足を止めてしまいました。

純「話は最後まで聞いてよね……」

憂「……!」


そんなに交尾の話がしたいんなら和さんとしろっ!!――と振り返ってそうツッコミ
を入れようとして私は息を呑みました。

目の前にいる純ちゃんの瞳には昼間のような輝きは存在せず、澱が沈澱したかのような
闇が支配していました。


私の第六感が告げます。これはヤバいと。





67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 17:40:39.02 ID:VQD/2T5JO
目の前にいるのがクラスメイトだということも忘れて、咄嗟に身を翻すと同時に
純ちゃんの腕を振りほどきます。

これでも足は速い方です。五十メートル走の記録七秒前半。

体勢を低くして、思いっきり地面を蹴りあげます。
後ろを振り返る余裕はありません。


和「憂!廊下を走っちゃ……」
憂「ごめんなさい!」


廊下の角を曲がる直前に突然和さんの声がして脊髄反射的に謝り、ほとんど同じタイミング
で和さんの横をすり抜けます。

ていうか私の姿を見る前に私の名前を呼びましたよね!?

と、ツッコむ暇もなく階段を二段飛ばしで下りて行きます。


目指すはお姉ちゃんの向かっているであろう薬局です。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 18:06:08.43 ID:VQD/2T5JO
♪初めてのおつかい!


憂「いや、さすがにお姉ちゃんもおつかいは初めてではないけど」


何とか純ちゃんを撒くことに成功した私は、お姉ちゃんのおつかいの行く末を
見守るために先回りして既に薬局でスタンバっていました。

普通に部活を終えているならば、まもなく来るはずです。


唯「~~~♪」

数分もしないうちにお姉ちゃんが店内に入ってきました。

化粧品売り場の棚に隠れて様子を窺う私からもお姉ちゃんのどこか
楽しそうな表情が見てとれます。

おお、さっそく特売セールスのところへ向かうとは。

お姉ちゃん、買い物は思ったよりうまくできるかもしれません。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 18:33:10.63 ID:VQD/2T5JO
ちなみに買い物について、私は一切何も言ってませんでしたので、ここはお姉ちゃんの
実力の試されるところです。

本来であれば三つ買うだけで千円近くも行ってしまうお菓子の並んだ棚を眺め……
おもむろに一つのお菓子を取りました。

レーズンパイです。

しかし難しい顔をして手放します。次は源氏パイです。
私のお気に入りの一つです。あ、また棚に戻しました。

チョコパイ、ホームパイ、パイの実……と、なぜかパイの類を手にとっては棚に
戻すという作業を数回した後に、今度は隣の棚に目をつけたらしく再びお菓子の
吟味を開始しました。

あ、すみません、ここは邪魔ですよね……ってこんばんは店員さん。はい?
土日以外に来るなんて珍しいって、ええ普段ならポイント二倍デーにしか来ないんです
けど。いえ、ちょっと今日は用事があったもので、ってお姉ちゃん大量に買い過ぎだよ
しかも特売セールス対象外の商品だけなんて……すみませんこちらの話しです。

ああ、これメ○ードの試供品ですか、ありがとうございますお姉ちゃんと一緒に
使わせてもらいます。これからもよろしくお願いします。

ってお姉ちゃんポイント二倍券出さないと何のために券を渡したのか……というか、
また新しいカード作ってもらって……あ、ビ○レの新作ですか今度買いに行きます。

本年に邪魔してすみません。



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 18:40:02.25 ID:VQD/2T5JO
本年にじゃなくて本当にだったorz

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 18:59:59.43 ID:VQD/2T5JO
浮かんでは消えるヤキモキした気持ちを抑えこむのに苦労しながらも、
何とか
無事にお姉ちゃんが買い物を済ませたのを見取って、とりあえずは姉よりも多少
大きい胸を撫で下ろしました。


しかし店に入ったにも関わらず、何も買わないことにある種の罪悪感を感じてしまう
私は、仕方なくマスク一箱を買うことにしました。


あ……ポイントカードはお姉ちゃんに渡しているんだった。


結局、私はマスクとレシートを受け取って薬局を立ち去りました。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 19:12:58.20 ID:VQD/2T5JO
♪平沢家・帰宅後!

無事に帰宅したところで今日もまた今日とてお姉ちゃんを立派なお姉ちゃんにする
べく私は心して、お姉ちゃんにかからなければなりません。


♪勉強?

唯「憂先生~またまたしつもーん」

憂「何かな?」

唯「今日世界史の授業で『ぐーぞーすーはい』っていうのをやったんだけど、これは
いったい何?」

憂「うーん、そうだなあ……お姉ちゃんは神様や幽霊が見えたりする?」

唯「うん見えるよ」

憂「今後の展開がガラリと変わっちゃうかもしれないからそこは見えても見えない
って言おうね」

唯「じゃあ見えないよ」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 19:29:01.06 ID:VQD/2T5JO
憂「だから神様は私たちみたいな凡愚のために……」

唯「ストップ。『ボング』って何?」

憂「私たちみたいな普通の人間のことを凡愚って言うんだよ」

唯「うんうん、それで?」

憂「当然私たち普通の人間には神様は見えないよね。だけど心優しい神様は
私たちにもお祈りができるように偶像として私たちの目に見える形をとってくれてるの」

唯「『ぐーぞーすーはい』はスゴクいいものなんだね」

憂「そう、とってもありがたいものなんだ。まあ、世の中には偶像崇拝を否定したり
批判する人もいるし、もとからそういう宗教的概念が存在しない国もあるけどね」

唯「憂は何でも知ってるね」

憂「何でもは知らないよ。知ってることだけ」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 19:44:20.93 ID:VQD/2T5JO
♪米研ぎ!


憂「時間も時間なので米研ぎをしようね。とりあえずこれさえできれば一人でも生きて
いけるようになるから頑張ろうね、お姉ちゃん」

唯「うん!わたしガンバっちゃうよ!ええと、この軽量カップに出るか出ないかの
ギリギリまで入れればいいんだよね?」

憂「そうだよ。二合だからカップ二杯分だね。ちなみに手は濡れてない?」

唯「大丈夫っ。憂に言われた通り手を濡らさないようにトイレ行った後だけど
手は洗ってないよ!」

憂「お姉ちゃん。私は平気だし、むしろそんなお姉ちゃんの手によってできたお米なら
どんな非合法な手段を使ってでも食べるけど他の人の気持ちも考えようね」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/05(月) 20:14:06.15 ID:VQD/2T5JO
唯「さあ!米研ぎ開始っ!」

憂「いい、お姉ちゃん?最初のお米の研ぎ汁はにおいが強くて早く捨てないとまずく
なっちゃうから注意してね」

唯「オッケー。水をつけてゴシゴシして素早く捨てて……ああああああぁぁ!!
お米がああぁ……」

憂「うん、期待通りだよお姉ちゃん」

唯「ああ……わたし、これじゃあ一人で生きていけないよ」

憂「切ないね、お姉ちゃん」


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 20:16:02.03 ID:VQD/2T5JO
唯「もう一回再チャレンジ!」

憂「米研ぎで一番面倒な最初の数回は私がしておいたから今度は大丈夫だよ。
お米が水分を吸って重くなってるからうっかり捨てちゃうことも無くなるしね」

唯「今度は上手くできるよ。ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ(以外五分間延々とやり続ける)
…………ねえなかなか水、透明にならないよ?」

憂「お姉ちゃん、言ったよね?お米の研ぎ汁を完璧に透明になるまで研いだら旨味が無くなるって」

唯「でもじゃあ憂は普段はどうやってあんな美味しそうな真っ白いお米を炊いてるの?」

憂「これを使ってるんだよ」

唯「これは……木炭?」

憂「そう。この木炭を使うと、不思議なことにお米が白くなるだけじゃなく、
更に味も美味しくなるんだよ」

唯「本当に白くなるの?」

憂「うん。しかも普段から木炭は使ってるからね」

唯「ええええぇぇっっ!! そうだったんだ……」
憂「何でそんなガッカリするのか私にはよくわからないよお姉ちゃん」


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 20:36:27.89 ID:VQD/2T5JO
唯「じゃあ一通り終わったんでお風呂入ります!」

憂「うん、その間にカレンー作っておくね」

お姉ちゃんがお風呂に入っている間に、素早くカレーを作ってしまいます。明日は
和さんのお手伝いをする関係で遅くにしか帰れなさそうです。こういう時、二日目
も続けて食べられるカレーが重宝します。

隠し味に鷹の爪を仕込んでおきます。更に今日は豚のひき肉を使用しているので
明日には更に美味しくなったカレーをお姉ちゃんに食べてもらえるはずです。

圧力鍋にかけたカレーができたところで、味を引き締めるために外に出しておき、
その間にサラダを切り盛りします。


唯「うーいー、リンス切れてる~」

憂「今詰め替えるの持ってくねー」


お姉ちゃんのお世話をしながら、自分のことをこなすのは結構大変でした。

それでもやっぱり私はお姉ちゃんが大好きだから、全然苦にはなりませんでした。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 20:55:51.13 ID:VQD/2T5JO
♪次の日・学校・昼休み!

憂「今日純ちゃん休んでるけど、理由知ってる?」

梓「ううん、知らないよ。どうしたんだろう?」

憂「純ちゃん、高校に入ってから一度も休んだことなかったのにね」

梓「少し心配だね。昨日あんなに元気だっただけに余計にね」


もちろん純ちゃんのことは私も心配です。ただ、昨日のことを思い出して、背筋
の震える私がいるのもまた、事実でした。

梓「ところで話が全然変わるけど、憂ってお菓子は作らないの?」

憂「お菓子……ブラウニーとか?ううん、あんまり作らないね。お姉ちゃんが
高校に入ってからはより一層作らなくなったし」

梓「どうして?」



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 21:14:42.60 ID:VQD/2T5JO
悪い。飯食うで保守頼む。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 21:45:37.81 ID:VQD/2T5JO
保守ありがとう

今から続き書く

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 21:56:01.59 ID:VQD/2T5JO
憂「ほら、お姉ちゃん、軽音部に入ってからは紬さんが持ってくる美味しいお菓子
を毎日食べてるでしょ?」

梓「そっか。そうだよね。昨日のムギ先輩が持ってきたフォンダンショコラも絶品
だったもんね……」

どこかアンニュイな表情を浮かべ、梓ちゃんは視線を窓側に向けました。

まるで恋に悩む乙女のようで、溜息をつくその姿は僅かではありましたが、色気を漂わ
せていました。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 22:17:51.43 ID:VQD/2T5JO
梓「ごめん。食欲湧かないからこの卵焼き食べてほしいんだけど、いい?」

憂「構わないけど……どうしたの?」

箸をわざわざ上下逆にして卵焼きを私のお弁当に移す梓ちゃん。

たぶん彼女なりに気を遣ったのでしょうが、返し箸という立派なマナー違反です。

一々注意はしませんけど。

憂「何か悩みがあるなら相談にのるよ」

梓「うん……」

憂「もしかしてバレンタインデーに誰かにチョコを渡したい、とかそんな感じの悩み?」

私の言葉に、いたぶって殺したはずのゴキブリが突然動き出すのを見た猫のように
梓ちゃんは瞠目しました。


梓「なんでわかったの!?」

憂「いや、時期的にそろそろだし……そんなに驚かなくても」


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 22:33:02.64 ID:VQD/2T5JO
憂「バレンタインって結構男子って意識してるよね」

梓「わかるかも。なんか別に『オレチョコなんかいらねーよ』って言ってる人に
限ってすごい意識してるよね」

憂「アレ、男子は気づかれてないつもりかもしれないけど私たちからするとバレバレ
だよね」

梓「私の中学じゃバレンタインの日は、男子全員みんな休み時間が始まると同時に
教室から出て、休み時間が終わると戻ってきて机の中確かめてたりしてたよ」

憂「それ面白いね。でもうちの学校は女子校だから、バレンタインデーも渡すのは
友チョコぐらいしかないし気が楽だよね」

梓「そう。そのはずだったんだけど……はぁ、唯先輩」

憂「え?」

梓「え?」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 23:06:31.33 ID:VQD/2T5JO
♪放課後・生徒会室

梓『その……本当のことを言うと誰にも話したくなかったんだ。でも誰にも話さない
で自分一人で抱えこむのもすごく辛い……』

憂『梓ちゃん。話したくないなら無理に話す必要なんてないよ。でも私も梓ちゃんが
苦しんでいるのに何もできないのは辛いよ』

梓『自分でも明らかにおかしいっていうのは自覚してる。それに、はっきりして
ないんだ。何て言うのか、自分でも上手く言葉にできない。できないんだけど……』

憂『……うん』

梓『その、つまり、んと………………………………唯先輩のこと、スキカモシレナイ』

憂『うん……うん!?うんんんんんんんん!?えーうん落ち着いて今梓ちゃんはなんて
言ったのもう一度口を開けて大きくはっきりした声で言ってごらん恥ずかしがらず』

梓『唯先輩のことが好きかもしれないのっっ!!!!!』


昼休み。
本来一般生徒が足を踏み入れるのは禁止されているはずの屋上で、お姉ちゃんへの
想いを、梓ちゃんは赤裸々に告白しました。その告白を聞いている間どういうワケか
背中が無性にかゆくなり仕舞いには私まで顔を赤くしながら、梓ちゃんの言葉一つ一つに
耳を傾けながら相槌を打ったのでした。


結局今の今まで、否、今もまだ梓ちゃんの告白の内容が頭の中をぐるぐる渦巻いていて、
当事者でないにも関わらず私は妙に辟易としていました。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 23:23:53.77 ID:VQD/2T5JO
和「わざわざ悪いわね。今日は私以外の執行部の人間がそれぞれ用事で出かけていて」

憂「気にしないで下さい。和さんにはいつもお世話になっていますし。それで、
お用事って何ですか?」

和「ごく簡単なものよ。生徒会のほうで発行しているこのタイムズをホッチキスで
止めて欲しいの。頼める?」

憂「任せて下さい」


和「ところで唯のほうは順調?」

憂「予想より結構手こずりそうです。でもお姉ちゃんもお姉ちゃんなりに頑張って
ますから」

和「急いだほうがいいわよ。鉄は熱いうちに叩けって言うし」

憂「……そうですね」

和「そんな顔をしないで。特に今の言葉に深い意味はないから」

憂「ないんですか?」


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 23:42:56.58 ID:VQD/2T5JO
和「実はというとこの「急いだほうがいい」って台詞が後々伏線になるから」

憂「話題変えていいですか?」

和「どうぞご自由に」

憂「和さんは同性の恋愛についてどう思いますか?」

和「興味深い質問ね……ってまさか、あなた唯に……!」

憂「違います。和さんの予想していることは絶対
に違います!」

和「そう。同性愛に近親相姦とか、とんでもないジャンルを現実に開拓するのかと
思ったわ。憂ほどのスペックなら十分にこなしてしまう可能があるから、ちょっと
暴走しそうになったわ」

憂「ちょっとどころじゃないですよ。それにかなり真面目に質問してるんですけど」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/05(月) 23:55:53.89 ID:VQD/2T5JO
和「私は基本、いつだって真面目よ……そうね、ミミズ」

憂「はい?」

和「カタツムリでもいいわね」

憂「あの、和さん」


和「雌雄同体って知ってる?」

憂「ええ、知ってます」

和「今言ったミミズやカタツムリていうのがまさにそれなの」

憂「何が言いたいんですか?」

和「この雌雄同体って人間に置き換えたら相当気持ち悪いと思わない?
オスとメスがくっついて混同しているのよ。人間で言えばずっとイチャイチャして、
セックスしてるって言っても過言じゃないわ。気持ち悪いとかそういう次元じゃない。
少なくとも私にはできないわね」


正直色々とツッコミたくなりましたけど、ここは我慢します。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 00:15:09.63 ID:IoTgz5OoO [1/58]
和「でもね、彼等は人間なら絶対にしない愛しかただって平気で貫こうとするの。

なぜって?

本能で彼等は愛しあってるいるからよ。
周りのことなんて何にも考えず、互いにひたすら愛を貪っているのよ。
体面や沽券なんかを気にする人間の恋愛なんて彼等の愛の
前では、比べるのもおこがましいほど下らないものよ。

言語の壁、年齢の壁、性別の壁とか言ってその恋に挫折する人間が世の中にはごまんと
いるけど、壁を作るのはいつだって自分よ。

そしてその勝手に作った壁相手に苦労するのも自分。

人間と人間の間に壁なんてない……私はそう信じてる。

それに自分で勝手に作った壁と格闘するくらいなら自分を磨いたほうがはるかに
有意義よ。
好きな人がいるなら、愛する人がいるなら、周りなんて気にせず、一心不乱に自分の
想いを貫き通せばいい。

後悔するぐらいなら、同性愛でも種族を越えた恋愛でも何でもしなさい。


恋っていうのは、自分の全てを賭けて挑むものよ」

憂「和さん……」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 00:41:03.24 ID:IoTgz5OoO [2/58]
和さんの言葉は私の胸を打つには十分すぎるものでした。

梓ちゃんがこの場にいないことが悔やまれます。

憂「和さん……本当にありがとうございました」

和「何か吹っ切れた顔してるわね」

憂「はい……!」

和「私も応援してるわ。あなたと……唯の恋を」

最後の最後で締まらない和さんでした。



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 00:53:52.96 ID:IoTgz5OoO [3/58]
ちょうど玄関で靴を履き代えようとした直前に和さんが声をあげました。

和「私、もう一個頼まれていた仕事があったんだ。憂は先帰ってて」

そう言って颯爽と去っていく和さんをしばらく眺めていましたが、


「憂……」

自分を呼ぶ声が聞こえて、そちらを見ました。
梓ちゃんでした。

なぜ梓ちゃんがいるのでしょう。今日の軽音部は理由は知りませんが、お休みに
なっていると私はお姉ちゃんから聞いていました。

当然軽音部の一員である梓ちゃんも既に学校にはいないはずですが……まあ、私のように
何か用事があっただけなのかもしれません。

梓「今日ね。憂の家に行こうと思って……私から言ったんだ。唯先輩の家に行かせて
下さいって。突然ごめんね」

私は自分の恋愛のために自らの力で道を切り開こうとする梓ちゃんをもちろん、
応援するつもりです。



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 01:13:48.38 ID:IoTgz5OoO [4/58]
憂「ううん、全然いいよっ」

私は俯いたままでいる梓ちゃんの小さな両肩に手を置きました。

憂「私も梓ちゃんの恋を応援するからね」

梓「本当にごめんね……」

憂「だから気にしないでよ。梓ちゃん」

梓「ホントにゴメンね」

憂「梓、ちゃん?」

梓「ホントニゴメンネ」



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 02:05:55.36 ID:IoTgz5OoO [5/58]
いかん、寝かかっていた




嫌な予感が汗となって首筋ら背中を伝ったのを感じたのと梓ちゃんが顔を上げたのは
ほとんど同時だったと思います。

真っ先に浮かんだのは昨日の狂気に取り付かれた純ちゃんでした。

死んだ魚の目。ではなく梓ちゃんの目は泥水そっくりに濁っていて、私を見ている
ようで私を見ていませんでした。

梓「お詫びにゴキブリの交尾の話しを聞かせてあげる。感謝してよっ!」

憂「言ってることが支離滅裂だよ梓ちゃん!ていうか謝罪を要求します!」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 02:18:16.39 ID:IoTgz5OoO [6/58]
梓「ゴキブリって言えばみんな嫌いだよね?でも人間と意外と似ている部分も
あるんだよ。人間ってほらエッチするときその……ええと、前戯っていうのをするでしょ?
ゴキブリも実はというとそれをするんだよ。具体的にどんなことするかと……(以下略)」

手振り身振りまでつけて梓ちゃんはゴキブリの交尾について語りだしました。

揺れるツインテールがだんだんゴキブリの触角に見えてきて軽く吐き気を催しました。

梓「ゴキブリの求愛行動って知ってる?足や羽を使って音を出したりする求愛もある
んだけど、中にはお尻から空気を出して求愛するゴキブリもいるんだよ」

憂「それってオナ……」

梓「ん?」

女子高生が高校の玄関でゴキブリの話に花を咲かせていました。
咲かせた花にまでゴキブリの卵が植えつけられそうです。

というかこの梓ちゃん誰も得しません。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 02:32:39.49 ID:IoTgz5OoO [7/58]
不意に梓ちゃんは口を閉ざしました。

梓「ねえ、憂」

憂「あ、梓ちゃん?」

何の前触れもなければ予告もなく梓ちゃんは私の頬を両手で包みました。

ひんやりとした感触に一瞬、思考までもが凍りつきます。

え?なんですかこの状況!?



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 03:00:28.29 ID:IoTgz5OoO [8/58]
今日はここまでにして一旦寝ますすんません





梓ちゃんの薄くも瑞々しい唇がいかなる理由か私に近づいてきます。
心なしか上気した頬の肌のキメの細かさに思わず目を奪われて、溜息が漏れてしまい
ます。

思春期の男子だったらこの状況の時点で昇天してしまうかもしれません。

憂「あっ、あ、ああ梓ちゃんにはお姉ちゃんがいるんじゃ……」

梓「それとこれとは別だよ」

私と梓ちゃんの物理的距離はもうほとんどありませんでした。

僅かに震える睫毛から彼女の緊張が伝わってきて、私の心臓の鼓動も釣られて
早鐘のようにビートを刻みはじめました。

もうこのまま状況に流されて接吻してもいいのではないのかという気になってきました。

濃厚なのしちゃってもいいですか?





133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 03:38:15.59 ID:IoTgz5OoO [9/58]
寝れない

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 10:29:28.20 ID:IoTgz5OoO [10/58]
保守ありがとう

今からまた続き書く

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 10:57:40.03 ID:IoTgz5OoO [11/58]
不意に脳裏に閃く光景ぐありました。

未だ見たことのないはずのゴキブリ同士の交尾――執拗に絡み交わり合い子作りに励む――
の光景が想像でしかないのに網膜に焼き付いて私は図らずも梓ちゃんの右頬を
ぶっ叩いていました。

憂「いやあああああぁっ!!」

梓「のっほうぉおおおっ!?」

零距離からの見事な平手打ちに梓ちゃんは奇声をあげながら勢いよく吹っ飛びました。

沸騰した思考が緩やかに冷えてようやく私は正常な判断力を取り戻しました。


いったい全体どうして女の子同士でこんなことをしようとしているんでしょうか。

危うく流されて大事な何かを失うところでした。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 11:13:17.64 ID:IoTgz5OoO [12/58]
梓ちゃんのお姉ちゃんへの想いを否定する気はさらさらありませんが、私も普通の
人間の例に漏れず、同性愛については正直ちょっとって感じなんで……


お姉ちゃんのことはもちろん大好きだし愛していますけどね。

梓「いたたた……って、あれ? 私なんでこんなとこに……憂?」

梓ちゃんが目をしばたたかせます。

光を取り戻した双眸が私を不思議そうに見つめました。

憂「梓ちゃん大丈夫?」

梓「うん……うん? 憂にほっぺを思いっきりはたかれた気がしたけど……気のせいかな?」

憂「気のせい。風のせい」

え……今度はなんですか?

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 11:39:59.14 ID:IoTgz5OoO [13/58]
どうも私にとって運のいいことに梓ちゃんは今の今の記憶を無くしてしまった
みたいです。

いや、梓ちゃん的にもゴキブリについて喜々として語っていたことなんて思い出したくも
ないことでしょう。女子高生的に考えて。

梓「今日憂の家に行くって……話したっけ?」

憂「う、うん。どっかで聞いたかも」

良心の呵責に押し潰されそうになってとりあえず謝っておこうかと思いましたが
よくよく考えれば、被害者はむしろ私のような気がしないこともないので、結局何も
言いませんでした。

和「あなたたちこんなところで何やってるの?」

まさか今の私の犯行の場面を見られた――そう思ってギョッとして和さんの方を
見ました。




147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 12:25:27.35 ID:IoTgz5OoO [14/58]
和「どうかした?私の顔に何かついてる?」

逆に不思議そうな顔で見返されました。

どうやら犯行の瞬間は見られていないようです。

和「何かあった?」

憂「い、いえ、何も」

和「そう……ふぅ」

出し抜けに和さんは溜息をつきました。

額には僅かに汗が浮いています。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 12:31:10.79 ID:IoTgz5OoO [15/58]
憂「和さん、力仕事でもしたんですか?」

和「卒業式が近づいているからその関係で色々と仕事が回ってくるのよ」

憂「大変ですね」

梓「よかったらハンカチどうぞ」

和「わざわざ悪いわね。明日には返すわね」

梓「そんなに気を遣わないで下さい」


しかし、ゴキブリについて舌に油でも塗りたくったかのようにまくし立てる梓ちゃん
はいったい何だったのか結局わからないままでした。

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 12:37:07.53 ID:IoTgz5OoO [16/58]
♪平沢家!

憂「ただいまー」

唯「おかえりー憂。よかった~早く帰ってこれたんだね。もうすぐ雨が降るって言って
たから心配してたんだよ」

憂「うん、思ってたより早く頼まれた仕事が終わったから」

唯「あれ? あずにゃんは?」

憂「梓ちゃんは、一旦着替えてから家に来るって」

唯「そうだ憂、聞いて聞いて」

憂「なに、お姉ちゃん?」

唯「わたし、自分でお米を炊いたんだあ」

憂「なんだ……って?」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 12:44:37.18 ID:IoTgz5OoO [17/58]
憂「…………」

炊飯器を開けて私は絶句しました。私の鼻腔を刺激したのは普段とは違うにおいを放つ
お米でした。

憂「米研ぎが全然できていないよ」

それだけではありません。

水の量。本来であれば今日のカレーにあわせて水の量は通常よりも少なくしなければ
いけません。しかし、お姉ちゃんの炊いたお米はほんどお粥に近い状態でした。


憂「ていうかよりによって何で五合も炊いたんだろう……」

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 12:56:35.44 ID:IoTgz5OoO [18/58]
仮にお姉ちゃんが美味しくお米を炊いていたなら私は喜んで梓ちゃんにこの
カレーライスを食べさせてあげたでしょう。


梓『カレー美味しい!』

憂『このカレーライスのお米はお姉ちゃんが研いで炊いたんだよ』

梓『さすがは唯先輩!好きですチューしてくださいっ』

唯『あずにゃんカレー臭いよ~』



……的な展開も望めたかもしれませんが、このお粥では、

梓『これ、唯先輩のゲロですか』

唯『一生懸命作ったのにひどいよあずにゃん!』

梓『ゲロと見間違えるようなものを出すほうが悪いに決まってるでしょうっ!』

唯『ぷんぷん!あずにゃんなんてだいっきらいぃうええええん』


……ダメです。悪い想像しかできません。

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:11:33.31 ID:IoTgz5OoO [19/58]
憂「カレーのお米は固いほうがいいです。ええなぜかっていうとカレーライスには
当然カレールーをかけますよね。ですからそのカレールーによってお米は柔らかく
なるので、柔らかいお米でカレーをすると柔らかくなりすぎて美味しくないです。
ええではそんな美味しくないお米はいったいどうしたらいいのか?」

……あれ?私何言ってるんでしょう?もしかしてこれは古畑任三郎の真似ですか?

憂「簡単です。カレーとご飯を分けて食べればいいんです、或いは、ルーがほとんど
ないのならそのルーの入った鍋にお米をつっこんでカレーチャーハンにすれば
いいんです。んふふそうすることでお米の水分を弾き更に隅にまで残ったカレールー
もええぇ美味しく完食できるのです」

いや、こんなことを言っている暇はないはずなんですけど。
意外とこのモノマネ楽しいかもしれません。


「ええ、しかしさすがにお粥はどうしようもありません。風邪を引いた人か、
もしくは、ご老人にでも食べてもらうしかありません。ふふふ、平沢憂でした」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:22:21.13 ID:IoTgz5OoO [20/58]
憂「こうなったら――」

私のこの時の思考は非常に奇妙でした。冷静に振り返ってみれば、あまりに
おかしすぎていっそのこと滑稽とすら言えたでしょう。

憂「いただきます」


大きな皿を二つ用意してお米五合をその二つの皿に移し終えると、私はおもむろにお粥
を貪り食いだしました。

自分でもビックリの奇行です。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:32:01.19 ID:IoTgz5OoO [21/58]
頭に血が上っているのか、脳みそから変な分泌液でも放出しているのか、ただひたすら
私はご飯を口に放り込む作業に没頭しました。

流し台でね立ち食いとは、行儀の悪いことこの上ありませんでしたが、そんな
ことを気にかける余裕も思慮もありませんでした。


憂「……うげっ、食べれちゃった」


何とご飯五合――しかもお粥を――私は完璧に平らげてしまいました。

完食するのに十五分もかかっていません。ご飯五合です。

言うまでもなく、平沢憂はただの女子高生であっても、お相撲さんではありません。

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:40:50.07 ID:IoTgz5OoO [22/58]
ただ単にお米を捨てて、次のものを炊けばそれで終わったのに……私は茨の道を選択して
しまったのでした。

その代償はあまりに大きかったようです。

憂「…………っ?」

お腹に違和を感じたと思った次の瞬間には、耐え難いほどの激痛が襲ってきました。

それでも何とか最後の力を振り絞って私は、ソファーに辿り着くことができました。


唯「結構雨が本降りになってきたね、あずにゃん。おーい憂帰ってきたよ~
早くカレーライス食べようよ」

梓「おじゃまします」


――ちょうどその時、お姉ちゃんが帰ってきました。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:57:43.85 ID:IoTgz5OoO [23/58]
唯「――、――ぅい、うい、憂!」


憂「!!」


目を開くとお姉ちゃんの泣き顔が視界いっぱいに広がっていました。


憂「お姉……ちゃん?」

唯「憂っ……よかったあ!」

梓「唯先輩、そんな風に抱き着くと憂が苦しそうですよ。大丈夫、憂?」

憂「うん、何とかね」

唯「本当に本当に大丈夫?」

憂「うん、心配かけてごめんねお姉ちゃんに梓ちゃん」


律「どうやら憂ちゃんは大丈夫みたいだな」

首にしがみついているお姉ちゃんの背中を撫でつつ、視線を後ろへ移すとそこには
律さん、いえ、軽音部の皆さんと和さんがいました。

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 13:59:22.19 ID:IoTgz5OoO [24/58]
ちょい飯食いに行ってくる。後ちょっとで終わる。

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 15:08:49.01 ID:IoTgz5OoO [25/58]
戻ってきた。保守ありがとう。



憂「……っていうわけなんです」

何だか新手の罰ゲームを受けているような、そんな羞恥心を感じつつ、私は皆さんに
細かい部分――流し台で立ち食いしたとか――は省いて皆さんに告白しました。


私が意識を失った直後にお姉ちゃんがとった行動は救急車を呼ぶ、ではなく自分の
友達を呼ぶでした。

結果から見れば正解と言える選択でした。もし、救急車を呼ばれてたら色々とまずい
ことになっていたでしょう。

お腹は相変わらず妊娠八ケ月の奥様みたいに事故主張していましたが、痛みが治まった
だけでも幸いです。

今日私の人生の手帳に要らぬ武勇伝が印されてしまいました。

言わずもがなこんなのは誰にも知られたくないことで、胸のうちにそっと閉まっておきたい
というのが本音なのですが、普段から真面目でいい娘で通ってきた私の奇行はしばらく
は話の種になるでしょう。



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 15:12:16.18 ID:IoTgz5OoO [26/58]
世の中には思春期を迎えるにあたり、自分ではカッコイイと思いつつも第三者の視点
で見ると非常に痛々しい行動を起こしてしまい、後に自らその行動を思い返すと無性
に自殺したくなる死に至る病があるそうですが、もしかしたら今の私もそれに感染
しているのかもしれません。

紬「憂ちゃんは恥ずかしがることないと思う。あなたは姉である唯ちゃんのために
頑張ってお米五合も完食したんだから」

和「そうね。胸を張っていいと思うわ」

憂「今は無意味にお腹だけ張ってます」



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 15:19:54.25 ID:IoTgz5OoO [27/58]
憂「今は無意味にお腹だけ張ってます」

唯「そうだ!みんなまだご飯食べてないでしょ?今日は家で食べてってよ」

澪「急な話だな……いいのか?」

憂「ええ、皆さんには普段からお世話になってますし、今日は迷惑もかけてしまったんで。
差し支えがなければ是非家で食べてって下さい」

律「さっすが憂ちゃん『太っ腹ぁ』っていってえええええっ!何すんだ澪!」

澪「ごめん、何だか殴らないとダメな気がして……」

唯「とこれで、何たべようか?私はうどんすきに一票!」

律「いややっぱ皆でするって言ったら焼肉だろ!」

澪「ちじみとかヘルシーだしよくないか?」

紬「だったらお好み焼きとかは?」

梓「じゃあすき焼きをプッシュします」

和「しゃぶしゃぶなんか手がかからなくて私的にオススメなんだけど……」

憂「今のうちにトイレ行っておこう」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 15:29:26.19 ID:IoTgz5OoO [28/58]
♪二十分後

梓「……で結局意見がまとまらないので簡単なゲームをして決めることになったんですが……」

律「じゃあいよいよ私とムギで決勝戦だな!」

紬「ええ、望むところよりっちゃん。私は私のお好み焼きの夢のために勝たせてもらうわ」

唯「おお!普段穏やかなムギちゃんが珍しく燃えてるよっ」

律「そこまで言うならムギに次の勝負のゲームを選ばせてやるぜっ」

紬「じゃあお言葉に甘えて。『イっちゃダメゲーム』をしましょ」

律「……なんだそれ?」

和「明らかに字を間違っている気がするんだけど?」



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 15:44:06.92 ID:IoTgz5OoO [29/58]
澪「何となく知ってる気がする」

律「どういうゲームなんだ?」

紬「極めてシンプルなゲームよ。一つの単語を選んで、その選んだ言葉をお互いに
言ってはダメというゲームよ」

律「なーる。つまり逆にその単語を相手に言わせたら勝ちってわけか」

紬「ええ。言葉は私が選んでいいかしら?」

律「いいよん」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 16:09:14.78 ID:IoTgz5OoO [30/58]
♪律VS紬!

紬「じゃあ言葉は黒にしましょ」

律「ふんふん、黒ね」

紬「ゲームスタート――じゃあ私からの質問。ゴキブリの色は何でしょう?」

唯「何かムギちゃんじゃないみたいな質問だね。ていうか答えたら負けるしね
これは答えなきゃダメなのかな?」

梓「どうなんでしょうね」

律「甘い、甘すぎだムギ。スガキヤのソフトクリームより甘いぜ。
答えはブラックだ!」

紬「さすがりっちゃん……そのたとえは私には全くわからないけど。そもそも私、
ゴキブリを見たことがないからゴキブリを見るのが夢なんだけれど」

和「何その夢」

唯「何だか熱くなってまいりましたー」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 16:20:41.32 ID:IoTgz5OoO [31/58]
紬「じゃあ、これはどうかしら……私の髪の色はなんでしょう?」

律「地味に難しいな。茶色ではないし……うーん」

憂「ふうースッキリした」

律「金っていうにはちょっと……」

紬「はい今りっちゃん『金』って言ったわね。私の勝ち」

律「な、なに言ってんだよっ?ムギが選んだ言葉は『黒』だろ!?」

唯「あっ、言っちゃった」

律「!!」

紬「私の勝ち、ね」

律「くっそー、やるなあムギー」

♪紬、勝利!

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 16:35:14.98 ID:IoTgz5OoO [32/58]
♪食後!

唯「お腹いっぱいだよ~」

律「ああ、お好み焼きだけじゃなく手羽先のコーラ煮にタコのおすいもの、ほうれん草
のおひたし
さらには、サケのムニエル!」

唯「いやあ、憂はSS内じゃハンバーグかカレーしか作れないと
思ってたのに……」

澪「空腹も手伝ってとっても美味しかったな」

和「空腹は最高のスパイスって言うものね」

梓「あ、今とっておきの名台詞が浮かびました」

唯「おお!なんですかいあずにゃん!?」

梓「『満腹は最高の贅沢』」

唯「あずにゃんカックイイいいぃっ!」

梓「苦しいです。そんなに抱き着かないで下さい」

唯「えへへへ」

和「でも今のは不覚にもにうまいと思ったわ」

唯「詩人だねあずにゃんは!」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 16:50:03.06 ID:IoTgz5OoO [33/58]
♪帰宅!

和「まあ、あんまり長居するのも迷惑だろうしそろそろ帰るわね」

唯「そんなことないよっ。もうちょっとくらいいてもいいのに」

澪「唯。明日も学校があるってこと忘れてないか?」

梓「そうですよ、唯先輩」

唯「もちろん忘れてないよっ。あずにゃんっ。明日も部活楽しみだもん」

律「いやあ、憂ちゃんホントにありがとう、ごっつぁんです」

憂「そんなに頭を下げなくても……むしろこちらこそご迷惑をおかけしてしまって。
今日はありがとうございました。また、皆さんいつでもいらして下さいね」

紬「今度来る時には何か持ってくるわね」

唯「ムギちゃんもいつもありがとね」

紬「どういたしまして」

和「また雨が降り出してきそうだし、皆も寄り道せずに帰るのよ」

律「よし、じゃあ明日も学校へ元気に登校することを誓って、解散!」



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 17:08:37.05 ID:IoTgz5OoO [34/58]
唯「楽しかったね、憂」

皆が帰った後お姉ちゃんは本当に嬉しそうに言いました。

憂「うん、またみんなでご飯食べたいね」


この数日間でお姉ちゃんは少し、成長しました。それはあまりにも小さな成長で
注意深く見なければ、きっと誰も気づかないだらうし、案外私しか気づいていない
かもしれません。

けれども。確かにお姉ちゃんは確実に一歩ずつ進んで前に向かっています。

憂「今日はお洗濯に風呂洗いにご飯に色々とありがとね」

唯「ううん、憂はいつもいっぱいいっぱい家事をやってくれるんだから、こんなの
何でもないよ。わたしは憂のお姉ちゃんなんだから。それに……」

最後の言葉はお姉ちゃんが俯いたせいなのか、語尾が掠れたせいなのか聞き取れ
ませんでした。

どうしたの、と尋ねると、

唯「今日、わたしが米研ぎを失敗しちゃったせいで憂があんなことになっちゃって……
ごめんね」



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 17:21:41.42 ID:IoTgz5OoO [35/58]
憂「……ふふ」

唯「?」

私は自分の行動を思い出して、笑ってしまいました。
さっきまでなんであんなことをしてしまったのか頭を抱えそうになっていたのに。

憂「でもそれで今日、こんな楽しい時間を過ごせたなら決して悪くないとも思ったんだ」

唯「憂……」

憂「明日からも頑張ろうね、お姉ちゃん」

唯「まかせて!もうすぐ三年生になるし、勉強に家事に部活に全部ガンバるよ。
あっ、新曲の練習もしなきゃっ」



ああ神様。どうかこれからも、こんな素敵な日々が続いてくれますように。


唯「今日は久々に一緒に寝よっか?」

憂「うんっ」



♪おわり?

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 17:24:08.45 ID:IoTgz5OoO [36/58]
見ててくれた人はどうもありがとうございました

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:05:42.47 ID:IoTgz5OoO [37/58]
肝心の話を書くのを忘れてたああああああああ

続きっていうかオマケ書いていい?

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:13:27.14 ID:IoTgz5OoO [38/58]
ありがとう!

♪オマケ

梓「ねえ、4月になって私たちも二年生になったわけだけど……」

憂「純ちゃん学校に来ないね」

梓「…………今日何日だっけ?」

憂「四月六日だね」

梓「今日来ないとさすがにまずいよね?」

憂「うーん、まあ純ちゃんの一話に場合確実に出番があるかと言えば必ずしもそうでもないし」

梓「微妙に失礼だよ、憂。それに一話だよ?一話って言ったら脇役が唯一出れる
回でしょ?」

憂「梓ちゃんもそれ、相当失礼だよ」


208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:16:52.34 ID:IoTgz5OoO [39/58]
梓「電話しても出ないし、困ったなあ」

憂「よし、梓ちゃん。それじゃあ私に任せて」

梓「家にでも行くの?」

憂「ううん、ある人に頼む。ところで梓ちゃんは和さんに貸したハンカチ返してもらった?」

梓「うん、返してもらったよ。というか新品になってた」

憂「ありがとう。それだけわかれば十分」

梓「?」



210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:27:00.05 ID:IoTgz5OoO [40/58]
♪三年二組

唯「あれ、憂?どうしたの」

憂「うん、ちょっと用事があってきたんだけど……」

紬「キョロキョロしてるけど、誰か探してるの?」

憂「はい、簡単に言うと犯人を」

澪「ん?何かあったのか?」

憂「いえ、既に事後です」

律「いやあ、購買は相変わらず混んでた……って憂ちゃん、どうしたの?」


211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:36:42.85 ID:IoTgz5OoO [41/58]
憂「ある人に用事があったんですけど……」

唯「それより憂!もうすぐだよ、もうすぐっ」

律「そうそう、そうだぜ!私らがまた大活躍して画面をところ狭しと暴れ回るんだからなあ

澪「捏造するなっ」ドスッ
律「ぐえっ!」

紬「でも最初の『けいおん!』と二期の『けいおん!!』って何が違うのかしらね?」

唯「なんだろうね?」

律「うーん、案外前回と同じで何も変わらないんじゃない?」

澪「というか変えようがないしなあ」



213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:51:52.69 ID:IoTgz5OoO [42/58]
憂「より正確に言うなら変えちゃダメなんですよね」

律「まあ、コンセプトがゆるーい女子高生の日常を描く、だもんな」

澪「まあみんなもそう言うのを求めてるしな」

唯「はいはい!りっちゃん隊員!いい案があります!」

律「ほほう?」

唯「ライブシーンを迫力満点にすればいいんだよっ!」

紬「たとえば?」

唯「こんな感じに」




214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 19:56:08.19 ID:IoTgz5OoO [43/58]


唯『放課後ティータイムのライブにようこそー!!』

唯『ふわっふわた~いむっ』

澪『ふわっふわた~いむっ』

ジャジャン、ジャジャン、ジャ-ン、ドっカーン!!

唯『どうもありがとおおおおおっっっ!!』

ドドドドドドドドカンドカ-ンドカ-ン!!!!

観客『うおおおおっ!!』




唯「……みたいな?」

澪「……どうやってその大量の火薬を用意する気だ?」

紬「私のほうでよければ」ニコ


律「……いや、違うな。こんなのじゃダメだ」

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 20:06:17.67 ID:IoTgz5OoO [44/58]
律「けいおん二期は一期よりも放送される地方が格段に増えたんだから、もっと
ファン層を増やすべきだろ」

憂「たとえば?」

律「たとえば床の間の奥様方を味方につけるべくミステリーものとかどう?」

澪「……それはサスペンスって言うんじゃないのか?」

律「似たようなもんだろ?」

紬「でもそんなシリアスな話をやったらもとの視聴者がいなくなっちゃうんじゃ……」

律「そこはミステリーもんでも、『けいおん』風にアレンジするんだよ
こんな感じに」




217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 20:19:22.18 ID:IoTgz5OoO [45/58]


和『律、今度は校長先生が殺されたみたいよっ』

律『あちゃーついにさわちゃんまでやられたかあ』

梓『今日こそ事件を解決しに行きましょうよっ』

澪『梓の言うとおりだっ!いい加減犯人を捕まえないと』

律『えーまだティータイムの最中じゃん。なあ唯?』

唯『うん、もっとティータイムしてたーい』

梓『ダメったらダメです!』

律『よし、そこまで言うなら民主的に多数決で決めようぜ!行かない!』



219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 20:27:27.34 ID:IoTgz5OoO [46/58]
唯『行かないっ』

澪『行く』

梓『澪先輩に同じく……ムギ先輩は?』

紬『じゃあ……行かないの方向で』

澪『なっ……まさかの裏切り!?』

紬『事件現場に行くよりもさわこ先生のお墓参りに行きましょ。私、子供の頃から
みんなでお墓参りに行くのが夢だったの』


唯『うん、じゃあそうしよっか』

紬『今から楽しみね♪』



律「……どうよ?」

梓「……シュールというか、もはや視聴者を馬鹿にしてますね」

澪「こんなの放送したら色んなところから苦情が来そうで恐い……」


憂「あの……ところで」


220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 20:45:31.60 ID:IoTgz5OoO [47/58]
♪職員室

憂「失礼します」

さわ子「あら、憂ちゃん。どうしたの?キョロキョロしちゃって」

憂「……いないなあ」

さわ子「?」

憂「いえ、こちらの話なんです」

さわ子「もしかして用事のある先生でもいる?」

憂「違います……って先生なんだかお疲れですね」

さわ子「ちょっとね……」

憂「そういえばもうすぐ『けいおん!!』が始まりますけど……」

さわ子「ああーぶっちゃけどうでもいいわね。つうか二期の出番より彼氏の欲しいわ。
ここをウロチョロとしてる連中は唯ちゃんのことを狙ってるみたいだけどね、たくっ
だいたいこの学校は生徒の数に対して教師少ないわクーラーかからんわ、いった(以下略)」

憂「先生……素が出てます」

さわ子「あら、ヤダ。いけないいけない。それで憂ちゃんは何しに職員室に来たの?」

憂「実はというと……」

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 20:53:33.80 ID:IoTgz5OoO [48/58]
飯くってくるすまん

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 22:09:51.19 ID:IoTgz5OoO [49/58]
お待たせ

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 22:14:26.32 ID:IoTgz5OoO [50/58]
♪屋上

憂「教室にもいなくて、職員室にもいなくて生徒会室にもいなかったらもう、ここにしか
いないと思っていました」

和「……来ると思ってたわ。何か私に用事があるんでしょ?」

憂「ええ。率直に言います。純ちゃんをもとに戻して下さい」

和「……言ってる意味がわからないわね」

憂「あの皆さんとご飯を食べた日からずって考えていたんです」

和「…………」

憂「それで気づいたんです。梓ちゃんと純ちゃんの二人の共通点に」

和「そもそもその二人についても詳しく知らないし、その二人に何が起きたのかも
知らないのに急にそんな話をされても困るわね」

憂「いいえ、そんなはずはありません。和さん、あなたは知ってたんですその二人の
ことについては何も知らなくてもその二人が私に対して交尾の話を延々としていたのはね」

和「話だけは聞いてあげる」



231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 22:22:03.63 ID:IoTgz5OoO [51/58]
憂「最初の事件。純ちゃんが私に対して交尾の話をしまくった。これ、私は途中で
嫌になって逃げたんです。

和「それで?」

憂「廊下を全力で走って、私は和さんに注意された……」

和「生徒会執行部としては当然の行いね」

憂「私が廊下の角を曲がる前にね」

和「……!」

憂「そう。おかしいんですよね和さん。和さんは廊下の角に隠れてたんだから
見えてるはずがないのに」

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 22:32:04.30 ID:IoTgz5OoO [52/58]
憂「次に梓ちゃん。これもまたおかしい点が一つ」

和「……」

憂「私、あの時梓ちゃんがあんまりにも交尾の話をするから、悲鳴をあげたんです。
しかし、和さん。あなたはまるで何も聞こえなかったみたいに振る舞った」

和「それだけ?それだけかしら。なら教室に戻らせてもらうわ」

憂「そして最後。最後は私のことです。覚えてますよね?私がご飯五合を一人で食べたこと」

和「後、半世紀は忘れられそうにないわ」

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 22:55:24.65 ID:IoTgz5OoO [53/58]
和「何せ女子高生が、ご飯五合も食べたとかギャグ以外のなんでもないわ」

憂「そうですね」


和「その上立ち食いまでして……」


憂「……意外ですね。こんな簡単に和さんがボロを出すなんて」

和「……え?」

憂「今、和さんは少なくともご飯を食べていたときの私を見ていたことを認めたんです」

和「どういうこと?」

236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 23:03:04.61 ID:IoTgz5OoO [54/58]
憂「だって私、一言も言いませんでしたから」

和「自分で説明しておいてよく言えるわね」

憂「確かに私は自分でご飯を食べたことを説明しました。でも立ち食いをしたことについて
は一言も言ってないんですよ」

和「!」

憂「こうもあっさりボロを出すとは思いませんでした」

和「……」

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 23:16:40.47 ID:IoTgz5OoO [55/58]
憂「それと、和さん。梓ちゃんにハンカチを借りたことは覚えてますか?」

和「覚えてるわ。当然きちんと返したわ」

憂「新品を、でしょう。梓ちゃんが本来使っていたハンカチと同じ種類のものを買って
返したんでしょう?」

和「それが何か意味があるとでも言うの?」

憂「はい。なんでわざわざ新品のものを買ったのか……どこかで無くしてしまったからでしょう?」

和「……ええ、そうよ」

憂「ついでに、そのハンカチっていうのはこれですね」

和「どこでそれを……?」

憂「家の勝手口付近です。あそこからなら、流し台の前でご飯を食べる私を
見れますよね」

和「……っ」

憂「もう一つ。このハンカチを発見したのは皆さんが帰ってからすぐです。あの日は雨が
降ったり止んだりしてましたね、覚えてますか?」

和「……」

憂「このハンカチ濡れてたんです。そして私がご飯を食べていた時、雨が降っていました」



239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 23:30:20.75 ID:IoTgz5OoO [56/58]
憂「私の推理は全て、和さんがその場にいた、ということを証明していてめ決して
和さんが犯行をしたというのを証明しているわけではありません」

和「……そうね」

憂「でも、そのことを隠してたんだから疑う余地は十分にあります。
……どうですか?間違ってますか、私の考え」


和「…………いいわ、認める。認めます。あなたやその二人を操ったのは私、真鍋和よ」

憂「どうしてこんなことしたんですか?」

和「交尾」

憂「はい?」



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 23:45:52.29 ID:IoTgz5OoO [57/58]
和「誰でもよかった。交尾を、交尾について熱く語れる人間なら」

憂「……話が見えないです」

和「だから、交尾について語れる友達がほしかった……」

憂「それで、純ちゃんや梓ちゃんを?」

和「ええ。でも所詮、操り人形。彼女たちと語り合っても全然ときめかなっかった」

憂「……あの、じゃあ私はなんで?」

和「うん?えーとうーん」

憂「ぶっちゃけ理由無いみたいな?」

和「まあぶっちゃけちゃうと、ね。何となく自分の能力を試したくなっただけって感じね」

憂「酷い言い草ですね」

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/06(火) 23:55:44.17 ID:IoTgz5OoO [58/58]
和「まあ、純ちゃんについては戻すの忘れてただけだから……戻しておくわね」

憂「あの……結局その和さんの力って何なんですか?」

和「二期で教えてあげる」

憂「…………」

和「…………」

憂「…………」

和「私、アニメは闘ってなんぼだと思ってるから。ちなみに一番好きなアニメは
マシュランボーよ」

憂「聞いてませんし、そんなアニメ知りません。だいたい私たちが闘い出したら
苦情が来て打ち切りになっちゃいますよ」

和「それもマシュランボーみたいでいいわ」

憂「帰っていいですか」

和「もうすぐ始まるんだからここにいなさい。ワンセグあるし」

憂「いいです。家で私はじっくりお姉ちゃんと一緒に見ます」

和「そう、さよなら」

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/07(水) 00:14:34.37 ID:V0WtIPxKO [1/3]
♪次の日!!

『けいおん!!』については皆さんのこれからの楽しみを奪うつもりは無いので何も
語りませんが、とりあえず純ちゃんは無事帰ってきました。

純「次はハエの交尾がいい?それともカメムシ?やっぱクジラ!?なんでも説明してあげるっ」

……はい、無事なんだと思います……。

梓「…………ねえ、どうしちゃったの、この娘?」

憂「知らない……」

和さんの洗脳は解けたのか、純ちゃんの瞳はいつものように輝いていましたが、問題は
そんなことではなく、和さんの洗脳がきっかけでどうやら本格的に交尾について目覚めて
しまったという事実が問題なのです。

憂「よかったですね和さん。語りあえる仲間が見つかって……」

梓「?」

純「なに、二人ともテンション低いなあ。せっかく私が交尾の
話しまくってんのに~」

まあ、何はともあれ今日も平和です、神様。


おしまい!!

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/07(水) 00:16:58.13 ID:V0WtIPxKO [2/3]
今度こそおしまいです。

ほんと二期楽しみです。
まあ、うちの地方は今日じゃないってさっき知ったんですけどね。

さいならー

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