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一方通行「帰ンぞ」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/31(水) 00:55:49.98 ID:63z2IdMX0 [1/50]


一方通行の自宅からそう離れていない小汚い路地裏。
昼間でも、よほどの理由がない限り好き好んで通る人間などいないであろう路地。
そこに一方通行はいた。

「俺もさァ、この立場があるから別に誰が見張っていようが気にしねェンだけどよォ
 今はちょいとばかりナイーブになってンだわ」

四肢をつき倒れ伏す男を見下ろし、一方通行は続ける。

「オマエ、何が目的だァ?」





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 00:58:46.57 ID:63z2IdMX0 [2/50]

「オマエ、何が目的だァ?」

「…」

男は答えない。倒れ伏す男を一方通行は見据えた。
ラフな格好に身を包み、年齢は20代半場といったところか。
ピアスや首筋から見える刺青など、一見するとただのゴロツキだが。連中とは明らかに違っている点があった。
男の纏っている空気が、どれだけ偽装しようとも隠し通せない匂いが男にはあった。
こいつは平然と人を殺せる類の人間だと、一方通行は理解する。

「いやいや、大したもンだぜェ? この状況で答えないなンて選択するたァ」

「…化け物が」

おや、と一方通行は哂う。男が初めて言葉を口にした。
一度口を開いたらあとは容易い。死なないように壊すだけだ。それだけでイカれたスピーカーが出来上がるのだから。

「最終警告だぜェ? 吐いた内容によっちゃァ全殺し確定なンだけどよォ。
 欠伸がでるほど緩い告白なら、神の気まぐれってヤツを期待できンぞォ?」

「…」

「今ならまだ即死コースが提供できンぜェ? そうでなけりゃ―――」

「―ッ! ……がぁ…ぃ」



    次から製作に移行しやす 

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 00:59:27.65 ID:63z2IdMX0


一方通行は無造作に男の頭を掴み、頭皮を髪の毛ごと焼く。
肉の焦げる匂いが鼻を付く。
手を離すと男の頭部には、一方通行が掴んだ部分だけ髪が燃え尽き、くっきりと手形の火傷ができた。

「悪ィ、これじゃあ色男が台無しになっちまったなァ」

「……ぐぅ……っ…」

「あンまり頑張ンなよォ? 俺も楽しくなってきちまうだろうがァ」

一方通行はククッ、とくぐもった哂い浮かべ男を睥睨する。
地に付いた男の両の手が先ほどまでと違った形をしていることに気付いた。それなりに効いているようだ。
顔を伏せたまま、男は一方通行に聞こえる程度の声量で吐き棄てた。

「………………死ねクソガキ」

その言葉に一方通行は顔を歪め哂う。
まだまだ足りないようだ。まだまだ楽しめるようだ。この狂った時間を。
舌で唇を軽く舐め、一方通行は次の行動に移る。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:00:29.32 ID:63z2IdMX0


「こンなのはどォよ?」

そう言って男の右肩に指を突きたる。
グチュリ、と音を立ててあっさりと男の肩に指が入り込んだ。
呻き声をあげて男は姿勢を崩す。指が刺さった方の腕が体を支えきれずに重心が崩れ倒れ伏した。

「おいおいおい、ここからが面白いンだぜェ? 超頑張れよオッサン」

突き立てる指をもう一本増やし、肉の中で指先を繋げ輪を作る。

「…ぁ……ぐぉっ………」

「イイ感じのピアス穴の出来上がりってわけだァ。どォよ、素敵だろォ?」

「……はぁ、はぁ…」

男は息が乱れてきたが、まだやる気十分といったところだろう。
一方通行が肩から指を荒々しく引き抜くと、男は呻き声を挙げ荒く息を吐いた。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:04:04.35 ID:63z2IdMX0

一方通行は軽く哂うと、男の顔面を予備動作などなしに、まるでゴムボールを蹴るかのように軽く足を振り上げた。
たったそれだけで男は2,3メートルも吹き飛ばされ壁面に激突する。

「よく飛ンだなァおい、ちっと記録更新とか狙ってみるかァ?」

「…っ………ごふっ…」

男は足に力が入らないのか、壁にもたれる様にしてずるずると腰を落とした。
右肩は骨が見えるほど肉が抉られ、頭部には火傷を負い額からは蹴られたさいに出来た傷口から
ダラダラと血が溢れ顔面が血まみれになったいた。
壁に激突した衝撃で背中の感覚はなく、首の骨にも異常があるのかもしれない。
動くだけの余力は最早ないだろう。

「しぶといねェ、さっさとお喋りしてくンないかなァ。俺も心が痛いんだぜェ?」

「…はぁ………はぁ…」

男からの返事はない。
男は地面を見据え荒い呼吸を繰り返す。

「オマエ今右腕に力が入らないだろォ? ついつい指突っ込ンだときに神経ぶち切っちゃってさァ」

「…っ」

                    >>3 一方×9982×打ち止め?ですお 一応続き物

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:06:01.48 ID:63z2IdMX0

「あァ、悪い。余計なこと言っちまったァ。気付いてなかったンなら黙っときゃよかったぜェ」

「……くっ」

「いやでも、オマエ頑張っちゃうからさァ、俺も楽しくなってきちまってよォ。本当は辛いンだぜェ?」

一方通行はそう吐き棄てて、狂ったような哂った。
そしてこう続ける。

「実はもう一個、とびきり愉快なプレゼントがあンだけど、聞くかァ?」

「……だま、れ」

「まァそう言うなよォ、俺とオマエの仲じゃねェか遠慮すンじゃねェよ。
 それによォ、自分でしといて何だがぶっ壊しちゃったからもう戻らねェンだわ。
 でもまァ、最近はそういう人間にも世間の理解っつーの? そういうのあるから頑張れると思うぜェ?」

オマエ、頑張り屋さんだしなァ、と男に聞こえるように優しく呟く一方通行。
男は一方通行と会ってから初めて体を震わし、顔を上げ目の前にいる怪物を見た。
男の反応に一方通行はにやりと哂い言い放つ。

「オマエ、もう二度とチンコ勃たねェからァ……ック、クハハハハハッハッハッハッ!!」

「…き、貴様ぁっ!」

狂ったような体を震わせ哂う一方通行。
激昂した男が一方通行に飛び掛ろうとするが足が動かない。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:11:57.14 ID:63z2IdMX0


「悪ィ、足ももう動かせないって言うの忘れてたわァ」

悪びれなく男へ伝える一方通行。
まるで、店員に追加の注文を頼むかのような気軽さで。
男は今までの姿が嘘だったかのように、鬼の形相を浮かべ罵詈雑言を一方通行へ浴びせる。
まだかろうじて動く上半身をつかい右腕を無茶苦茶に振り回した。

「なンだよォ、お互い様だぜェ? オマエが狡いこと狙ってるから付き合ってやったンだろゥ?」

一方通行は、やれやれと溜息を吐きながら言葉を続ける。

「時間、気にしてンだろゥ?」

そこに腕時計でもあるかのように、一方通行は左手で右手首をトントン、と叩き男へ言う。

「ダメだぜェ? 奇跡の演出に凝っちまうのはいいンだがよォ。下を向いてたら見えないだろォ?」





「俺が―――スイッチ切り替えてンのをさァ」





10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:13:43.90 ID:63z2IdMX0



「―――ッ!?」

「気がつかねェとでも思ってたのかァ? 相当愉快だぜェオマエの頭」

一方通行はそう言うとチョーカーのスイッチを切って、男から奪った拳銃を取り出す。

「まァ、事情を聞き出せなかったから、オマエの勝ちってことにしてやンぜェ?
 大金星じゃねェか、この俺に勝つなンてお友達に自慢ができンぞォ
 安心しろよォ、お友達はすぐにそっちに送ってやるから―――――」

「呪ワれろォッ!! クそガ」


「――――死ンどけよ」





死体を漁るが身分証明などを、男は一切所持していなかった。
一方通行は舌打ちし、携帯電話を取り出しリダイヤルから目的の人物の番号を見つけ電話を掛ける。
コール音続き、中々相手が出ないことに悪態をつきながら待った。
十数回コールした後にようやく出た相手と一方通行は2、3やり取りをして電話を切る。
面倒くせェ、と呟くいて一方通行は路地から姿を消した。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:19:14.73 ID:63z2IdMX0


前々々作 
http://asagikk.blog.2nt.com/blog-entry-541.html
前々作
http://asagikk.blog.2nt.com/blog-entry-569.html
前作
http://asagikk.blog.2nt.com/blog-entry-597.html#more

※前々々作は一方さんがでるまで流し読みでいいと思うんだよ

投下続けやす  見てたら支援頼む



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:20:17.40 ID:63z2IdMX0

――― 『再会』 ―――


「あいつ、どこ行ったの?」

「さぁ? あの人は唐突に居なくなったりするから、ってミサカはミサカは経験に裏打ちされた事実を語ってみたり」

小さな先輩同居人は頼りにならなかった。
困った、と唸り欠陥電気は壁に掛けられた時計を見た。シンプルなデザインのアナログ時計の短い針は3を指している。
夕食の買出しには早いが、やや遠くまで出掛けようと思っていたので早めに家をでたいのだが、お金がない。
一方通行から与えられた、生活費の入った財布はすでに小銭しかなかった。
昨日のファミレスの支払い、帰りがけにコンビニによったことで打撃を受けたのに補充をすっかり忘れていたのだ。
中身の寂しい財布に、スーパーの特売品を生活の糧にしていた少年の姿が欠陥電気の頭をよぎる。

「はぁ…、あいつに共感する日が来るとはね…」

「どうしたの? ってミサカはミサカはため息を吐くあなたに聞いてみたり」

最近買い与えられた色鉛筆で、形容しがたい絵をチラシの裏に描きながら打ち止めは言う。
立っていても仕方がないと、一方通行御用達のソファーに腰を掛け欠陥電気は返す。

「お金がないから買い物にいけないのよ」

「そっかー、じゃあ待つしかないね、ってミサカはミサカは言ってみる」

「…他人事なのがなんかムカつくけど。はぁ…、待つしかないか」

欠陥電気はため息を吐いて、テレビのスイッチを入れ適当なニュース番組にチャンネルを合わせる。
画面に映るニュースキャスターの声を聞き流しながら、欠陥電気は時間を潰すことにした。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:22:42.96 ID:63z2IdMX0


―――同時刻―――


佐天涙子とその親友、初春飾利は指定された場所へと走っていた。
スカートが捲れようが通行人とぶつかろうがお構いなしで全力で目的の場所へと向かう。
二人は、息が上がり苦しくなっても決して足を止めようとしなかった。


その日二人はいつものように学校の授業を済ませ、習慣となっている校門でおち合う。
初春は風紀委員の仕事があり途中で別れるので短い時間ではあるが、二人は一緒に帰っていた。

「んあー、疲れたー」

「佐天さんは、いっつもそれですね」

腕をあげて伸びをする佐天の言葉に、初春は苦笑する。
佐天は、学校が終ると決まってこの台詞を言っていたから。

「あはは。ねえ初春、帰りにファミレスでも寄らない?」

「す、すみません今日は風紀委員の…」

「うん知ってる。言ってみただけ」

佐天はそう言って笑った。佐天はこうやっていつも初春をからかった。
初春もそんな佐天に、仕方ないですね、と笑って答える。
いつものやりとりにいつもの下校風景。
彼女たちは別れるまでのつかの間の時間を、こんなふうに過ごしていた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:25:13.24 ID:63z2IdMX0

「そういやさ、白井さんから連絡あった?」

「まだ、ですね…」

黒子から連絡があれば、初春はすぐにでも佐天に伝えているだろう。
佐天もそれは分かっているのだが、ついつい聞いてしまう。
この会話はここ最近二人の中でよくある話題だった。

「そっか。御坂さんからも、まだあの話がないしなあ…」

「佐天さん、気持ちは分かりますけど約束したんですよ?」

「ううー、分かってるってば…。初春、怖ーい」

初春の言葉に恨めしそうな顔で佐天が呟いた。
彼女たちの言う、あの話とは二日前にした奇妙な約束だった。

その日は学校が早く終った佐天と初春は下校途中にファミレスへ寄った。
そこで美琴と、そのさらに先日出会った白いお兄さん(一方通行)と一緒になる。
不思議なことに美琴は制服を着ておらず、さらに別れるときに美琴は二人にこう言った。
今日会ったことは私に黙っていて欲しいと。実に奇妙なお願いである。

本人が目の前にいるのに、それを本人に黙っていて欲しいなんて。
佐天がその問いにどう返していいのか迷っていたら、なんと初春がその話を受け入れた。
慌てて佐天も負けられぬと、その話に乗り約束した。

ここで会った本人に、そのことを話さないと。
一応期限が決められていて、そのことを本人が二人に言ったらその話をしてもいいと言うものだった。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:28:27.11 ID:63z2IdMX0

「それにしてもさ、あのときの御坂さん……なんか違ったなあ」

「佐天さん、まさかあの話を…」

「ち、違うって! いくら私だってあんな『噂』を信じたりしないってば」

「はぁ…、だといいんですが」

初春はそう言ってため息をつく。
親友である佐天の暴走に、度々被害を被ってきた彼女は横目で佐天を見やり呟いた。

「軍事目的のクローンなんて、SFもいいところですよ?」

「だから信じてないってばっ! もう! 最近の初春は冷たいんだから……」

初春の言葉に、頬を膨らませ分かりやすい抗議する佐天。
そんなバカげた話はいくら私でも信じない、と言いたいのだろう。
だが、彼女はこうも続けた。




ちょwwwwwヒドスwwwwwwwwwでもまあ頑張るわ もやすみ     

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:30:16.63 ID:63z2IdMX0

「…たださ、そう考えると話が繋がるんだよね。そりゃ嘘くさい話になるけどさ」

「…」

否定の言葉は出なかった。
佐天の話には頷けるところがあると、そんなことを考え納得してしまう自分がいることを初春は否定できなかったから。
あのとき会った美琴は間違いなく、御坂美琴だった。
だが、その後はどうだ。どんな理由があれば本人に本人のことを黙っておく必要があるのか。
黒子のことで余裕のなかった筈の彼女が、一緒に居るところを見たこともない人と何故一緒にいたのか。
常盤台の制服ではなく、どうして私服を着ていたのか。

あのとき会った美琴は、はっきり言ってしまえば本人であることを除けばおかしなことだらけだ。
だけど―――

「…あのときの御坂さん、とても辛そうでした」

「…」

「それに…約束、しましたから」

「あはは、初春には勝てないな。うん…、そうだねっ!! とりゃ!」

重い空気吹き飛ばすかのように、初春のスカートを捲りあげる佐天。
それに真っ赤になって怒りながらも、初春の顔は笑っていた。
そんなときだ、初春の携帯にメールの着信を告げる音が鳴ったのは。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:32:04.31 ID:63z2IdMX0

荒い息をつきながら二人は目的地の、あの美琴と会ったファミレスまでもう少しのところまできていた。
二人が走ることになったメールの送信者は黒子だった。
時間の指定はなく、待ち合わせの場所だけが書かれた素っ気無いものだったが、二人が走るには十分なものだった。
ファミレスの前に人影が見える。

「白井さーんっ!」

初春は疲れた体にムチを打って叫ぶ。同僚で友達で放って置けない相棒の名前を。

「う、初春っ!?」

顔を真っ赤にして涙目になりながら走り寄ってくる初春の様子に思わず驚く黒子。
かなりの距離を相当なペースで走ったであろう初春の足取りはかなり危い。
それでも黒子まで走りきった彼女は、そのまま何日も連絡が取れなかった少女に抱きついた。

「しんぱい、……したん、ですよ……っ」

そう言うと初春は黒子を強く抱きしめて、ぐすぐすと泣き出した。
そんな初春を見て、黒子は自分がどれだけの人に迷惑をかけ、心配させてしまったのだろうと反省した。

「心配かけましたわ、初春。わたくしはもう、大丈夫ですから」

「…っ………あまり、しんぱいさせないで、ください…」

                                            全俺が感動した あり

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:34:21.38 ID:63z2IdMX0

最後のスパートで初春に置いていかれ、ようやく追いついた佐天は息を整えながら抱き合う二人を見る。
全く、心配させないでくださいよ白井さん、という言葉を口中で呟き佐天は微笑んだ。
そんな佐天に横から声がかかる。

「お疲れ様。ごめんね、心配かけちゃって」

「御坂さん…」

佐天が声の方へ振り向くと、そこには苦笑を浮かべた美琴がいた。
常盤台の制服に身を包んだ御坂美琴が。

「いやー、久々に全力疾走しましたよ。もう喉が渇いて渇いて」

佐天は喉を押さえわざとらしいリアクションをして言う。

「いいわ、お詫びもかねて何でも奢っちゃうわよ」

「おお! さっすがっ!!」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:36:11.25 ID:63z2IdMX0


美琴の返答に佐天は満面の笑みで喜ぶ。
佐天の喜びように、やれやれ、とため息を吐きながら、美琴はいつまでも抱き合っている二人に声をかけようと振り向く。

「佐天さん」

佐天に背を向けたまま美琴は佐天の名を呼ぶ。

「なんですか?」

美琴の態度を怪訝に思いながらも、佐天は返事を返した。

「ありがとう」

そう言うと美琴は抱き合っている二人に近づき、行くわよ、と声をかける。
佐天は、分かりやすすぎて何か逆に恥ずかしいなあと思いながら、美琴に続いて二人を茶化すべく駆け寄った。




>>23
終らないwwwwww欠陥電気の処遇が決まって一方さんとラブするまで終らないww  上条先生パートに変更加えたね実際

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:38:47.22 ID:63z2IdMX0


―――同日 午前―――


「お腹へったかも…」

「多分そりゃ気のせいだ」

「…本当にお腹がへってるのかもしれないよ?」

「減ってない可能性もあるだろ…」

「むむ。でもでもへってない場合はそう問題でもないけど、へっているとしたら問題だよね?」

「…つーか、まだ朝飯食ってから1時間も経って」

「この場合最悪の事態を考慮しつつ事態を可及的速やかに解決するのが人の道じゃないかなとうま。
 うんきっと主もそうおっしゃっていらっしゃる気がするんだよっ!!」

上条の言葉を遮り、そうまくし立てる少女、インデックス。
そのインデックスの言葉に、はぁ、と深いため息を吐くツンツン頭の少年、上条当麻。
お決まりの不幸だ…、と口内で呟いて、横を歩くインデックスをみた。
インデックスは実に楽しそうだ。彼女は忘れてしまったのだろうか、今こうして歩いている理由を。
少なくとも厳しい家計に打撃を与える外食などをするためではなかった筈だと、上条はまた深いため息を吐いた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:39:56.47 ID:63z2IdMX0

「うー、そこはかとなくバカにされた気がするんだよ?」

「そりゃ気のせいじゃないな………って、いてーよインデックスっ! ちょ、やめ…いててててててっ!!」

上条の言葉に目を光らせたインデックスは、見た目からは想像もできない俊敏さで上条の頭にかじりつく。
インデックスの攻撃に涙目になって抗議する上条。
一通り上条をかじり倒して満足したのか、インデックスはようやく上条を解放した。

「おま……やりすぎ、だろ…」

「ふん、とうまが悪いんだからね」

「不幸だ…」

ぷい、と上条から目をそらすインデックス。
そんな彼女に同調するかのように、彼女が胸元に抱えたスフィンクスがにゃぁと鳴いた。

「まあ、あの子を見つけるのが先だから、特別に許してあげる」

「あ、一応覚えてたんだな。てっきり忘れてるかと…」

「…とうまが私をどう思ってるのか、わかった気がするんだよ」

上条の言葉にインデックスは頬を膨らませて拗ねる。
てっきりまた噛まれるかと思っていた上条は、彼女の思わぬリアクションに慌てて宥めつつ目的を果たすべく歩き出した。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:41:45.04 ID:63z2IdMX0


大通りの繁華街を抜け、比較的人通りの少ない道を歩く上条とインデックス。
時刻はそろそろお昼を告げる正午前。
家を出てから3時間ほど経とうとしていた。

「とうま、ここどこ?」

「俺に聞くな」

「…とうま、もしかして当てもなく歩き回っていたの?」

「なんだ、今ごろ気付いたのか」

インデックスの問いに何故か胸を張って答える上条。その上条をみて激しく脱力するインデックス。
もしかして彼はちょっと頭がアレな可哀想な人だったのだろうかと、内心呟く。

「…ひょっとして、昨日も一昨日もその前からずーっとこんな感じだったりしたのかな?」

「ああ、それがどうかしたか?」

「…」

彼の答えに激しく不安になるインデックス。こんなことで大丈夫なのだろうかと。
このツンツン頭の少年は、向こう見ずで直情的で色んな意味で真っ直ぐな人間だけど、ここは違うだろと。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:43:26.02 ID:63z2IdMX0

「とうま、それはあまりにも非効率的じゃないかな」

「…仕方ないだろ。これ以外方法がないんだから」

上条も自分がかなり無駄なことをしている自覚はあった。一応。
だが少女の手掛かりが全くなく、かといって風紀委員や公共機関に頼めるわけもない。
自力で歩いて探すしか方法が思いつかなかった。

「そりゃ俺だってバカな事やってんなあ、とか思っちまうときもあるけどさ
 だからと言ってやめるわけにはいかないだろ? ジッと待っとくなんてできねえよ」

「…」

「お前との約束、破っちまったしさ」

上条はそう言って、自嘲気味な笑みを浮かべる。
少女のことは任せておけと少女が居なくなった夜、上条はインデックスに言ったのだ。
結果はこの有様。
少女を探すことを言い訳に、美琴を犠牲にし続けぎりぎりまで追い込んだ。
だと言うのに少女を見つけるどころか、手掛かりすら掴めていない。

勿論全て上条に責任があるはずもない、少女が消えたときに一緒にいたのはインデックスであり
美琴を追い込んだのは他ならぬ美琴自身である。
一介の学生に過ぎない上条に、消えた少女の行方を見つけることは厳しいと言わざる得ない。
だが、それでも上条は自分を責めずにはいられなかった。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:46:26.77 ID:63z2IdMX0

「…とうま、そのことはもういいって言ったんだよ?」

「分ってるけど、そう簡単に、はいそうですかって思えないだろ」

「あの子のことを、とうま一人で抱えるのはずるいんだよ」

「…」

上条は気負いすぎているとインデックスは心配する。
約束したのは事実で、上条は少女を見つけることができなかった。
それどころか、彼女が死んだかもしれないと、送り出して2時間もしないうちに戻ってきてインデックスに告げた。
それを知ったときは、文字通りインデックスは絶句した。
たった数時間前まで一緒にいた少女が死んだなど信じられなかった。
だけどそれが嘘だとはインデックスには思えなかった。他ならぬ上条の口から教えられたから。

ただ、同時に感謝もしていた。
誤魔化すことなく、自分に少女の結末を教えてくれたことに。
それは、上条が自分を信頼し、頼ってくれたということ他ならない。
上条はその事実をインデックスに伝えるべきか、1時間もドアの前で悩んでいたらしい。
もっともその事実は次の日には撤回され、そのときは噛み付いたわけだが。

「あの子とずっと一緒にいたのはわたしなんだよ? とうまは短髪ばっか構ってたし」

「…ビリビリには冷たいよなお前」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:47:48.94 ID:63z2IdMX0


やれやれと、小さくため息を吐きながら上条は携帯を取り出す。
携帯を開くとディスプレイには素っ気無い待ち受け画面が映しだされる。上条は画面右上の数字を読んだ。
(12時03分か…)
そろそろ隣を歩く少女から抗議の声が上がるだろうな、と上条は考えた。
先ほどから少女のお腹の辺りから、何やら低音の唸り声のようなものが聞こえているのだから上条の予感は確実に当たるだろう。
むしろ少女にしてはよく我慢している。普段の行いからは想像できないあり様だ。

「なぁ、インデックス」

「なに、とうま?」

「そろそろ飯でも食うか」

携帯をポケットにしまいながら上条が前を向いたままそう呟くと、少女は分かりやすい程テンションを上げ返事をした。




37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:52:03.36 ID:63z2IdMX0


二人は、近くにあった適当な店に入り食事を済ませるとまた歩き始める。
通りを抜け坂を下り階段をのぼって小奇麗な並木通りを黙々と進む。
普段行かないような学区に足を伸ばし、見慣れない景色の中を二人は歩いた。

道すがら、インデックスが近代占星術だとかタロットカードがどうだとか科学側も大したことないね、などと言って上条を困らせる。
上条はいつの間にか科学側代表として、魔術側の圧倒的知識を持つインデックスにけちょんけちょんにされていた。
だったら、占星術でもタロットでも水晶でも何でもいいから少女を見つけてくれよと、喉から出掛かった言葉を上条は何とか飲み込む。
それが可能ならとうの昔にやっている筈だから。インデックスの言葉は、何もできない自分を責める言葉でもあったから。
横を歩く少女の愚痴に適当な相槌を返しながら、上条は歩き続けた。

日が傾き始め、青かった空が少しずつ赤に変わっていく。
上条とインデックスは、学園都市が一望できる小高い丘を通っている道にいた。
少女は見つからない。今日も手掛かりなしか、と上条は内心呟き、隣を歩くインデックスを見る。
途中やたら元気のよかった彼女も、いまは口も閉ざし黙々と足を動かしていた。
その様子に上条は苦笑する。仕方もないことだと。

「疲れたか、インデックス?」

「大丈夫だよ、まだまだこれからなんだよ」

上条の問いにインデックスは笑顔で答えるが、その笑顔はやはり精彩さを欠いていた。
特別に体力に自信があるわけではないが、男子高校生である上条と、その上条よりもずっと身長も低く幼い彼女は比べるまでもない。
上条はそう考えると、インデックスに切り上げようと提案する。
しかしインデックスは首を縦に振らない。
彼女の返事は上条の予測どおりであった。だがこのまま無理をさせるわけにはいかない。
明日もあるから無理はよくないと上条はインデックスを説得する。
長いやり取りの末、渋々インデックスは承諾した。日が落ちるまで探すことと、豪華な夜ご飯を条件に。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:54:15.08 ID:63z2IdMX0


「決まりだな。よし、もうちょっと頑張るかっ!」

「俄然やる気が出てきたんだよっ! とうま、あっちはまだ行ってないからあっちに行こう!」

「へいへい、って、急に走り出すな手を引っ張るな危ないだろっ!」

「とうまが遅いからいけないんだよっ!」

インデックスの変わり様に、頬を引きつらせつつ歩き出す上条。
彼女の言うところの豪華なご飯というものが、どの程度のものなのか上条は心配になってきた。
スーパーの特売で買えるものであればいいなぁとか考えながら、上条はインデックスについて歩き出す。

そして上条は見つける。
太陽が半分ほど地面に隠れ、すっかり赤く染まった空の下で。





40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:57:51.25 ID:63z2IdMX0

―――同日―――


その日、御坂妹こと10032号はいつものように研究施設で退屈な調整を受けたあと散歩に出掛けた。
このところの彼女のマイブームは、モールやショッピング街の散策である。
同じ道を歩いているのにも関わらず日々変わる商品のディスプレイや、変わった人間などを見かけ実に興味深かった。

「ミサカにこのような嗜好があったとは驚きです、とミサカはひとり言を呟きます」

彼女は、通りを通るたくさんの人の合間を器用に縫っていく。
街を歩いていると時折街頭で売り子をしているアルバイトに声を掛けらることがある。
慣れない内は戸惑い、上手な受け答えができなかった御坂妹だが、今ではすっかり慣れスムーズに断りをいれ先に進む。
(特定のコミュニティに属し、狭い人間関係の中にいるミサカにとってこれは貴重な経験を積める場であると、ミサカは判断します)
ファーストフードの注文方法から、キャッチセールスの断り方まで知識があり、既に習得していると自信があったのだが。
得てして、現実は中々思うようにいかなかった。
断っても断っても粘り付きまとう男、昼時の混雑時の苛立ちを接客で晴らすアルバイトの女、などなど。
彼女は、自身の選択が有益であったと再確認すると、気持ち胸を張りやや軽くなった足取りで歩を進めた。

(あれは……何でしょうか?)
中央に噴水のある広場で、なにやら人だかりが出来ていることに御坂妹は気付く。
興味をそそられ近づいてみると、高校生と思われる生徒数名が楽器をもって歌を歌っていた。
(これが噂に聞く路上ライブというものでしょうか、とミサカは知識と照らし合わせ推測します)
周りを見ると、人だかりは広場のあちこちに見られた。
どうやらここは路上ライブの宝庫らしい、と御坂妹は納得する。
特に路上ライブなる現象には興味がなかったので、彼女は横目で見ながら広場をあとにした。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:01:57.00 ID:63z2IdMX0


施設をでて1時間、空が赤く染まる頃。
御坂妹は、そろそろ予定していた距離も歩き終わることに気付いた。
普段ならこのまま引き返し戻るのだが、この日は予定と違う行動をとった。
それが何故なのか、どういった理由で予定を破り散歩を続行したのか御坂妹にも分からなかった。
ただ、何となくそう思ったのだ。
何となく、帰りたくないと。
それは、彼女にとって理解できない概念だ。
確固たる理由があるわけでもなく、それに至る明確な過程も判明しない。
ただ、何となく彼女はそう思ったのだ。

理解できない、不可解な答え。
何となく、そうする。
そういった現象は、ある少年に救われてから起こるようになったことだ。
最近では特によく見られる事象である。

上位個体との約束を曲解し少年に話したこと。
それ以来、散歩のコースを変えて少年を避けるようになったこと。
たった今、予定を変えて散歩を続けていること。

そう御坂妹が反芻したとき、声が聞こえた。
安堵するような女性の声が。
御坂妹が声の方を見やると、女性がその女性の子供と思われる少女に声を掛け抱きしめていた。
少女は女性の態度に、曖昧な笑みを浮かべ女性の抱擁を受け入れている。
それから女性は少女の手をとり去っていった。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:04:15.21 ID:63z2IdMX0

唐突に、御坂妹は理解した。
自身の不明な行動理由を。
自分は後ろめさから少年を避けるようになったのだと。
そして、その少年に会いたいからこうして歩き続けることにしたのだと。
今、少年に会ってしまえば少年はこう御坂妹に問うだろう。
『打ち止め』はどこにいるか、と。
それに答えてしまえば、上位個体との約束は完全に意味を成さなくなる。
すでに一度約束を曲げて、少年に助力してしまっているのだ。
これ以上の助力は、上位個体を完全に裏切る行為になる。
あの約束は、命令ではなく打ち止め個人のお願い。
だからこそ、彼にそう問われて黙っていられる自信が御坂妹にはなかった。黙っていることが最善であると判断できなかった。

だから御坂妹は揺れた。
なんとなく、そう思って行動してしまったのだ。
はぁ、と御坂妹はため息をつく。
理解不能で原因不明な行動理由は実に幼稚で単純なものだった。
(これでは、お姉さまのことを言えませんね…)
明確な好意を持っているのに、態度がまるで逆な自身のオリジナルである少女のことを思い出す。
御坂妹は小さく笑うと、空を見上げた。
日が傾き、すっかり赤く染まってしまった空を見上げ、こう決めた。
これから日が落ちるまでの間に、少年と出会うことがあれば全て話そうと。

あの少年に任せたらきっと全てうまくいくと、根拠もないがそう思えた。
そう思えたなら、きっとその判断は正しいのだと御坂妹は考え歩き始める。少年と出会うために。
上位個体から恨めしい目で見られるだろうが、モールで散々奢ってやったのだ。
これで貸し借りなしだろうと、そう勝手に納得することにした。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:06:35.23 ID:63z2IdMX0



横を歩く少女と早まった約束をしたのではないか、と自問自答する上条。
よく考えれば、あんな約束をする必要はなかったのではないかと。
どうせ腹が空けば自分から言い出した筈だと、上条は今更ながら考えてしまっていた。

「とうま、さっきからなに唸ってるの? お腹すいたの?」

インデックスの言葉に、そりゃおまえだろ、と言い返すのをグッと押さえる上条。
さっきからひたすらファミレスのメニューを読み上げるかのように、一人で食べ物しりとりを始めたインデックス。
こいつ絶対に目的忘れてるだろ、と上条は内心で突っ込む。

「なに食べ……………ゴホン、あ、あの子どこにいるのかなあ、とうまはどう思う?」

インデックスの分かりやすすぎる言葉をスルーして、どこだろうな、と返事を返す上条。
上条のその投げやりな返事に、インデックスは憤慨し文句を言い出す。実に身勝手である。
頭の中で耳を押さえるアクションをとりながらインデックスの言葉を無視し、ちらりと道路を挟んだ向かいの歩道に目を向け上条は見つける。
太陽が半分ほど地面に隠れ、すっかり赤く染まった空の下で。
伸びきった自分の影の延長上に居る少女を。

「見つけたぞ、インデックス!」

「え!? うそうそ、どこにっ!?」

突然の上条の言葉に混乱するインデックス。
上条はインデックスを置いて少女へと走る。

「見つけたぞ、御坂妹っ!!」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:09:30.14 ID:63z2IdMX0

道路を走る車の合間を縫って全力疾走であろう速度で掛けてくる上条の姿に、やや驚いた表情を浮かべる御坂妹。
上条は、常盤台中学の制服を着る少女の前で足をとめ、逸る気持ちを抑えこう言った。

「探したぜ、御坂妹」

「なにやら運命的な出会いですね、とミサカはあなたと出会えたことに驚きながら、臭い言葉を口にします」

「なんだそれ」

「いえ、こちらのことです、とミサカはもしかしたら運命の赤い糸は実在するのかもしれないと推測しながら答えます」

「…、で、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」

「その微妙な間が気に掛かりますが、なんですか? とミサカは言います」

御坂妹の相変わらずな唐突な会話に、脱力する上条。
必死で探し回り、ようやく見つけたと思えばこの会話。
これまでの努力は報われ、目的の人物の一人を見つけたのにも関わらず。上条はどうにも釈然としなかった。
頬をやや引きつらせながら上条は疲れを無視し口を開いた。

「…前に、お前が言ってた上位個体って奴がどこに居るのか教えてくれ」

「ストライクど真ん中ですね、とミサカは赤い糸の存在に確信を抱きます」

「いや、意味がわかんねえし…」


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:11:51.85 ID:63z2IdMX0


御坂妹は表情を変えないまま言い放つ。
そんな外面とは裏腹に、出会うどころか推測通りの上条の言葉に御坂妹は想定外の喜びを感じていた。
さてはて、上条当麻とこうして出会ってしまったのだ。
先ほど決めたとおりに素直に打ち止めの居場所を上条に言えばいいのだが、御坂妹はこうも考えた。
教えてしまえば、目の前の少年はとっとと行ってしまうだろう。
打ち止めを裏切ってまで上条の味方をするのに、それではあんまりだ。
もっとこの秘密を有効に使い、この時間を少しでも長くしたいと。

「分かりました、とミサカは了承します」

「マジか! じゃあ早く…」

言ったらお前は消えるだろ、と御坂妹は内心毒づきながらプランを練る。
運命は存在したのだ。赤い糸も然り。ならば焦る必要もないのだが、如何せん赤い糸がお一人様一本だとは限らない。
目の前の少年に、何本の赤い糸が存在するのか分からない以上手を抜くことはできないのだ。
手持ちは多くない、幸が薄いこの少年に期待するのは酷だろうし、どうしたものかと御坂妹は考えた。
そして悩ましい甘美な時間は唐突に終わりを告げる。

「とうまー! 置いていくなんて酷いんだよっ!!」

「悪い、まあでも大した距離じゃなかっただろ、インデックス」

運命の糸も運命の悪戯には逆らえないらしい。また一つ御坂妹は経験を持ってして学習した。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:14:46.04 ID:63z2IdMX0



「で、なんでこんなところに上条さんはいるのでせう?」

「その問いは納得できませんね、とミサカは憮然と答えます。
 ミサカとしてももう少しランクの高いお店に行きたかったんですが…、とミサカは暗に責めます」

「悪かったなっ!! 金欠なの苦学生なんだよ生活が厳しいんですっ!! ってそっちじゃねーよっ!」

「んー、まあまあだけどいっぱい食べれるし…。これで許してあげるんだよ、とうま」

「はぁ、そもそもコブ付きというのが…、ミサカはあなたのデリカシーの無さに失望します」

「どういう話になってるんだよっ!」

三人は学園都市でもっとも多くチェーン店を出しているファミリーレストランにいた。
店内は仕事帰りの人間や学生たちで賑わっている。
インデックスはカレー、ハンバーグ、ピザと修行中の身であるわりには随分なものを注文していた。
いつだったか、嗜好品の摂取を一切禁じているだとか寝言をほざいていた頃が懐かしいと、上条は肉うどんを啜りながら思った。
御坂妹はカルボナーラを注文し、フォークを器用につかって上品に食べている。

「それで、答えてもらえるのか?」

「…食事中に野暮ですね、とミサカは不満を伝えます」

「っていうかさ、とうま。探してたのって、この子のことだったの?」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:17:54.67 ID:63z2IdMX0

インデックスと御坂妹は面識があった。
ただ、友達と呼べるほど付き合いがあるわけではなく、外をぶらついているときに顔をあわせる程度の仲だ。
当然インデックスは、妹達のことなど知らない。
インデックスも、御坂妹と美琴の間に普通ではない何かがあると感じていたが、特に事情を聞こうとも思わなかった。
頼られれば事情など関係なく許しを与え、包み込むことこそが主の教えであり、インデックスのスタンスだから。
何より、その辺りの事情はツンツン頭の少年が上手いことやっているだろうと、当たりをつけていた。

「いや、なんていうかどっちも探してた」

「果てしなくやる気が削がれる言葉ですね、とミサカは肩を落として言います」

「ふーん、でもなんで短髪にこの子と聞かなかったの?」

インデックスとしては当然の疑問である。
美琴の関係者と思われる御坂妹を探しているなら、美琴に連絡先でも聞けばいいだけだ。
なにも学園都市を探し回る必要はない。

「お姉さまに勘付かれないためではありませんか? と勘のいいミサカは言います」

「短髪に?」

「はい。恐らくというかもう確信しましたが、あなたはお姉さまにあの時話したことを黙っていますね?」

そう言って御坂妹は上条を見る。
上条は観念したかのように、大きくため息を吐いた。

「とうま、短髪に黙ってたの?」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:22:31.21 ID:63z2IdMX0

横に座る上条に半眼でジロリ、と視線を向け責めるようにインデックスは言った。
インデックスの視線と言葉にまた上条はため息をつく。

「事実が確定するまでは、お姉さまに黙っていようと考えていたのでは? とミサカは推測します」

「なんで考えてることを、そうスパスパ当てれるんだよお前は…」

「…とうまの考えそうなことだね」

やれやれ、と言葉が聞こえてきそうなジェスチャーで呆れるインデックス。
食事の手をとめ、相変わらずやる気のなさそうな顔で上条をじっと見つめる御坂妹。

「…そうだよ、そうですよそうなんですよ! 何だよ悪いかよっ!!」

「うわ、開き直った…」

「これはうざい、とミサカは呆れます」

美琴に一切の事情を上条は説明しなかった。
少女は消えた次の日の夜、美琴と会ったときに少女が去ったとしか彼女に伝えなかった。
上条には言えなかった。

いつか妹達が実験で犠牲になっていたときに見た美琴の姿がフラッシュバックする。
あの陸橋で、いまにも壊れそうな儚い美琴の姿を。
だから黙っていた。
ありもしない現実を不用意な事実を美琴に伝えて悲しませたくなかった。
御坂妹の場所を美琴に聞けなかったのはこのためだ。
下手なことを聞けば美琴に勘ぐられてしまうから、上条は御坂妹を自力で探すしかなかった。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:25:07.39 ID:63z2IdMX0

「とうま、とうまの考えてることは大体わかるんだよ?」

「他人のことばかり気に掛けるのはあまり感心しません、とミサカはため息を吐きます」

「…悪かったな」

横から前から責められ、上条はふて腐れた返事をする。

「まあ、とうまらしいよ」

インデックスはそう言って諦めたような呆れたような笑みを浮かべ上条をみる。

「そうですね、とミサカは同意します」

御坂妹はそうこぼし、彼女にしては珍しく小さく笑った。
見慣れたものでないと分らないくらいの変化だったが、確かに笑った。
結局この二人も過去、そんな上条に救われたから。
そんな上条だったからこそ救えたのだから。

「…なにやら生暖かい視線を感じるのですが」

「気のせいだよとうま」

「早く食べないと麺が伸びますよ? とミサカは忠告します」

「へ? あ、あぁっ!! ―――不幸だ…」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:36:09.72 ID:63z2IdMX0


伸びきった麺は不味かった。何故自分は肉うどんを頼んだのであろうかと上条は悔やむ。
話をすることが分っていたのだから、せめて伸びないパスタでも…、と考えたところで値段を思い出し落ち込んだ。
最初から自分には選択肢などなかったことに気が付いたから。

「はぁ、もういいや。で、そろそろいいか?」

「もう少し食後の時間を堪能したかったのですが…、まあいいでしょう、とミサカは名残惜しさを感じつつ話を切り出します
 打ち止め。それが上位個体の呼称です、とミサカは言います」

「らすとおーだー?」

「打ち止めか」

「打ち止めは、ミサカたち妹達の上位の存在にあたり、MNWの総括です。
 簡単に言えってしまえば、上司です、とミサカはバカでも分る例をあげます」

「…なにかひっかかるんだけど」

「気にするな、俺もだ。で、そいつはどこにいるんだ?」

「口でいうのもアレなので、携帯電話を貸してください、とミサカは言います」

上条は携帯をポケットから取り出して御坂妹へ渡す。
御坂妹は受け取った携帯を器用に操作して何かを打ち込んでいく。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:37:34.67 ID:63z2IdMX0

「ここです、とミサカは受け取った携帯の番号を控えつつ伝えます」

「ん…、って第七学区じゃねーかっ!!」

「だいなながっく?」

「おま…、自分が住んでいるところくらい分っとけよ」

「…言い返せないのが、ムカつくかも」

「ふぅ、とミサカは一仕事を終えたあとの紅茶を楽しみます」

目の前の騒がしい二人を尻目に、御坂妹は紅茶を一口飲み、言った。

「待ってください、とミサカは先手をとります」

「よし行くぞっ! イン――――なんだよ、御坂妹?」

「あれ? なんかすごくイラっとしたような…」

予想通り、今にも走り出しそうな上条を引き止める御坂妹。
急かす上条の視線を受けながら、平然と紅茶を飲み終えてから御坂妹は言った。

「伝え忘れていたのですが、今回ミサカがとった行動は独断です、とミサカは付け加えます」

「独断?」


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:39:15.85 ID:63z2IdMX0

「はい、そもそもあの時話したことも上位個体、打ち止めから黙っているように言われていました、とミサカは言います」

「え…、お前の上司なんだよな? 大丈夫なのか…」

「あまり大丈夫ではありませんね、とミサカは観念したように呟きます」

「えーっと、ようするに大ピンチってことなのかな?」

「身も蓋もありませんが、その通りです、とミサカは肯定します」

空気が沈む。先ほどまであったクライマックスへ向けての疾走感はすっかり消えてしまった。
(またやっちまったな…)
と上条は、自分の頭を殴ると御坂妹に言う。

「悪い…こっちの都合ばっか押し付けちまって」

「いえ、気になさらずに。これはミサカが選んだことですから、とミサカは自分の意思を強調します」

上条の言葉になんでもないと言った風に返す御坂妹。
言葉の通りこれは彼女の意思で上条に託すと決めたことだから、上条が謝る必要はない。
これは謝罪を求める言葉ではなく、忠告なのだから。

「うー、でもなんでそのらすとおーだーは、あの子のことを内緒にしてるの?」

「推測でよろしければ話しましょうか? とミサカは提案します」

「頼む」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:45:05.50 ID:63z2IdMX0

上条は真剣な表情で御坂妹に短く言った。
御坂妹は上条を見返し一呼吸おくと、こう切り出す

「まず、勘違いしないで下さい。打ち止めの行動は彼女を思っての行動だと理解してください、とミサカは前もって言います」

「…あの子のことを?」

「…」

「続けます。恐らくですが、彼女に時間をあげたかったのだと、ミサカは推測します」

「時間?」

「…考える、落ち着くための時間だね」

インデックスは御坂妹の言葉に、悲しそうな笑みを浮かべ少女と出会った日のことを思いだした。
出会ったときの少女は酷く不安定で、まるで自身の置かれた状況を把握していなかった。
突然自分が偽者だと残酷な事実を突きつけられ、帰る場所も頼れる人もなく彼女は彷徨っていた。
インデックスが少女と出会ったのはそんなときだ。

「その通りです、とミサカは呟きます」

「…、突っ走って取り返しのつかないことを、するところだったんだな俺は…」

「とうま…」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:48:47.61 ID:63z2IdMX0

上条は懺悔するかのように吐き棄てた。
少女を見つけることばかり優先し、事態の進展ばかり追い求めた結果。
渦中の少女のことをまるで考えていなかった自分に気付いたから。
見つけて終り、ではないのだ。見つけたところで少女自身の問題は何一つ解決しないのだから。

「やめてください、とミサカはやや語尾を強めて言います。
 少なくとも、ミサカがあなたにこの事を伝えたのは、それが最善だと判断したからです、とミサカは念を押します」

「…」

「話を戻します、とミサカは仕切りなおします」

「悪い、続けてくれ」

「状況を整理します。彼女の生存は間違いありませんが彼女の置かれている状況はいまだ不明あり
 前に話したと思いますが、彼女の記憶はそのままです」

「記憶? どういうこなのかな?」

インデックスが分らないといった顔で御坂妹に聞き返す。
上条もそこが気に掛かった。大体の事情は飲み込めたが、そこに違和感を感じた。
それこそが、この状況の真相に深く関わると上条の直感が告げていた。

「そうですね、ついでと言ってはなんですが言っておきます、とミサカは前置きします」

御坂妹の言葉に二人は喉を鳴らし言葉を待つ。



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:52:17.22 ID:63z2IdMX0

「大よその検討はついていると思いますが、彼女はお姉さま、御坂美琴の記憶をもつ妹達の一人です、とミサカは告白します」

「…」

「短髪の…」

分りきっていたことだ。少女の言動をみればそんなことはとうの昔に分っていたことなのだ。
だがそんな考えとは違って、上条の胸に受けた衝撃はとても大きかった。
上条は返す言葉を失う。

「定義にもよりますが、ミサカは彼女がお姉さまであると断言します、とミサカは本心を告げます」

「…、そっか、だからあの子は不安だったんだね」

クローン技術、記憶、人格の完全移植。
それはもう神の領域ではないのかと上条は思った。
こうしている間にも自分のクローンが造られ、自身のことを上条当麻と思っているクローンがいるかもしれない。
上条は世界が反転し気持ちの悪いナニかが頭の中を蠢いている、そんな感覚に陥った。
あの少女は美琴と自分を見比べる上条をみてなにを思ったのだろうか。
自分自身と出会い、出会ってしまってからなにを考えていたのだろうか。

上条はそんなことを、少女の気持ちなど全く考えていなかった。想像していなかった。
少し考えれば思いつく、これに至るピースはすでに上条の中にあったのだ。

ふと、隣にいるインデックスに目を向ける。
インデックスはこの事実を知ってなお、少女のことを真剣に想っている。それだけしか考えていないのだろう。
だが自分はどうだと上条は自問する。
すでに打ちのめされている。少女の身に降りかかった現実に。自分ではない少女の現実にだ。
強く、強く手を握り締め。上条はすぐ近くにいるであろう少女のことを想う。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:55:39.34 ID:63z2IdMX0

インデックスは先ほどから黙っている上条に、とうま? と呟き視線を向ける。
上条は俯いたまま拳を握り締め動かない。
そんな上条を見たインデックスは、優しい笑顔を浮かべ上条に言った。

「とうまがいまなに考えてるかわかるよ? でもね、自分を責めたってあの子の現実は何一つ変わらないよ」

「…インデックス、俺」

「だから、受け止めてあげよう? きっとあの子もそれを望んでるよ」

あの子は優しい子だから、とインデックスは呟いて上条の頭を撫でた。
上条は無言で頷くと、頬を強く叩いてインデックスに目を合わせ力強く頷く。
インデックスは上条の様子に満足し小さく笑った。

「ミサカのことが完全忘却されているようで納得できません、とミサカは半眼で訴えます」

「うおっ! わ、悪い御坂妹…」

「そ、そんなことないんだよ」

二人の取って付けたようなフォローに、御坂妹は嘆息しながら言葉を続ける。

「後は特に言うことはありません。あくまでこれはミサカの独断であることを忘れないで下さい、とミサカは再度念を押します」

「そのらすとおーだーが邪魔するかもってこと?」

「その可能性は否定できませんが、大した邪魔にはならないのでご心配なく、とミサカは上位個体に思いを馳せながら答えます」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:57:14.69 ID:63z2IdMX0

まぁ幼女だし、と御坂妹は内心呟きながら、もう一つの懸念については黙ることにした。
自身の言葉に?な顔を浮かべる二人を置いて御坂妹は立ち上がる。
自分の役割はこれで終りだと二人に告げた。

「これで全てです。投げっぱなしのようで申し訳ないんですが、ミサカに言えることはもうありません、とミサカは言いきります
 最後にもう一度言います。これはミサカの意思で最善だと考えた上で行動です、とミサカは断言します」

「ああ、分った。助かったぜ」

「あとのことは任せるんだよ! またねクールヴューティーっ!」

「それでは、とミサカは挨拶をします」

そう言うと、御坂妹は二人に頭を下げ帰っていった。
御坂妹を見送ったインデックスは、上条の名を呼び言う。

「とうま、わたしたちも出よ。これからのこと決めなくっちゃね」

インデックスはそれだけ言うとさっさと店の外へ向かった。
上条は慌ててインデックスの後を追おうとするが、領収書がテーブルの上にあることに気付く。
そういえば、御坂妹は帰るときに手に何も持っていなかったなと思い返し呟いた。

「あ…え? これ全部俺が払うの?」

当然返事は無い。

「ふ、不幸だぁああああああああああああっ!!」



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:59:26.57 ID:63z2IdMX0




気が付いたら外は薄暗くなっており、窓から見える景色はすっかり暗く夜であることを告げていた。
欠陥電気は壁にかけられた時計を見て驚き、思わず声をあげる。

「えっ!? もう8時なのっ!?」

黄緑の蛍光色で光る時計の針と数字が、午後8時を知らせている。
いつもならもう夕食を食べ終わっている時間だ。
自分は一体何をしていたのか、寝ていたには違いないが。
んー、と唸りながら欠陥電気は額に指を当て記憶を遡ってみる。
(えーっと、たしか…)
買い物に行こうとしてお金が無いことに気付いた。
一方通行がいなかったので待つことにして…。

「あー、そのまま寝ちゃったのか…」

テレビを眺めてて、そのまま寝てしまったのだろう。
自分はなんて迂闊なことをしてしまったのかと欠陥電気はため息を吐いた。
同居人の少年が顔を歪めて楽しそうに笑いながら小言を言う様が、容易に想像できた。
そういえば、その同居人の姿が見えない。
そもそも部屋の電気がついていない。
はて、と思いながら欠陥電気は薄暗い部屋を慎重に歩き、電気をつけ部屋を見回すと打ち止めがソファーで寝ていることに気付いた。
(だから静かだったのね…)
打ち止めが起きていたら、欠陥電気がこんな時間まで惰眠を貪れなかっただろう。
どうしてか。それは打ち止めが6時過ぎには夕食の催促を欠陥電気にしている筈だから。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:06:38.77 ID:63z2IdMX0

そこまで考えて、一方通行が居ないことに欠陥電気は気付く。
彼は一体どこにいるのだろうかと首を捻った。
一方通行は所謂夜遊びをするような人種ではない。少なくとも欠陥電気はそんな彼を見たことがなかった。
基本、一日中家にいてソファーでぐーたらしており必要なときだけ出掛け、そうでなければ家に居た。
(ああ、そう言えば打ち止めが言ってたっけ)
昼間、打ち止めが言っていたことを思い出す欠陥電気。

『さぁ? あの人は唐突に居なくなったりするから―――』

これがそうなのかと納得して、欠陥電気は頭を抱えた。
これでは問題の解決になっていない。まさか夜になっても帰ってこないとは想定外である。
夕食はどうしようと欠陥電気が悩んでいると、ふいにインターホンが鳴った。

「客? あいつの家に?」

そう呟いて訝しげな表情を浮かべる欠陥電気。
居候となってから早4日。正確には5日だが、その間に客の訪問はおろか郵便物の配達すらない。当然セールスもなしだ。
生活を始めての4日間、一方通行の友人を名乗る人間にも、彼の知り合いにも会っていないことに改めて気付いた。
もしかしてすげーボッチなのか。と、そこまで考えて流石に失礼だなと思いつつも彼の人となりを思い出し納得した。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:09:21.78 ID:63z2IdMX0

再度インターホンが鳴り、ドアをノックする音が聞こえた。
どうやら考え事をして相手を待たせてしまったようだ。
まあ普通に考えて、宅急便かなにかだろう。セールスにしては時間が遅いし、と考えながら欠陥電気はドアへ向かう。
その途中、再びインターホンが鳴った。
どうやら相手はかなり焦れているようだ。欠陥電気は、はいはい、と呟きながらドアを開け

「はいはい、いま……―――――――――――――え?」

ドアの向こうに立っていた人に驚いた。
欠陥電気が今、一番会いたくて一番会いたくない人物がそこにいたから。




「―――――――――よぉ、ビリビリ」




少し悩んでいるような嬉しいような顔をして、上条当麻はそこに立っていた。






75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:13:14.71 ID:63z2IdMX0
ここまで
なんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
支援ありあした!!
ここで『再会』は終わり、『変化』に入る

次からは 製作 に投下するので
そのときは、地の文が入った4日前の朝から投下する予定

っていうかどんだけ人がいるんだよwwwww10人いねえだろwwwwオナニーすぎて俺が死ぬwww
つーか、コレかいてて思ったが、今ならギアーズネタを速攻書けるかもしれんwww会話だけだしwwwwでも無理…

VIP最後だし上条先生登場シーン投下するわww改定前の


>>71
お前いいやつすぐるwwwwwwww全俺が感動したwwww



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:16:41.70 ID:63z2IdMX0


「もうやめだ、死ねよお前」

発火能力者が両腕を突き上げる。
ゴオゥッ、という大気を揺るがす轟音とともに巨大な炎の塊が誕生した。

「あばよ、実験動物―――」

発火能力者はそう言うと、獰猛な笑みを浮かべ無慈悲に両腕を振り下ろし炎の塊を欠陥電気に向け放った。
人の軽く飲み込むほどの巨大な炎が欠陥電気に迫る。

アレを避けることは最早不可能だと欠陥電気は悟った。
どれだけ抗おうとも最悪の結末は回避でなきないと、そう考えて、少し笑いがこみ上げた。
あの少年ならこの絶望的な状況でもきっと、最後の最後まで諦めないで戦うだろう。

「あははははははっ!! 塵になって消えちまえよっ!!」

本物の経験はなくとも、その少年に救ってもらった自分が諦めてしまったら少年を侮辱するかのように思えた。
だからせめて最後まで戦おうと思った。徹底的に、抗おうと決めた。
そして少女は最後に、少年のことを思い出して小さく笑った。
真っ赤に燃え上がった炎が迫る。すべてを蹂躙する絶対的な死が少女を襲う――――――その瞬間に少年は間に合った。




「―――遅くなっちまったな」




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:19:54.17 ID:63z2IdMX0
「え?」

少女を飲み込まんとする炎の塊に、無造作に突き出された腕。
少女の顔のすぐ横から、巨大な暴力に対し反逆するかのように真っ直ぐ伸ばされた、見慣れた右腕が見えた。

「全く、一人で抱え込んでじゃねーよ」

「…っ…」

少女を絶望の底から救い上げてみせた少年は、当たり前かのように少女のすぐ後ろに立っていた。
パキンッ、という音とともに炎の塊が消える。

「改めて言うぜ。一人で何でもしようとするなよ、お前は一人じゃないんだから」

「……ひっ…………」

突き出された腕はそのままに、上条は言った。
嗚咽がもれる。なぜ泣きだしたのか少女には分からなかった。

「無理してんじゃねえよ」

「……っく……………ひっく…」

涙が溢れてくる。
張り詰めていた緊張がとけ、抑えていた感情をもうとめることはできなかった。

「気付くのが遅くなっちまった分の借りはきっちり返す。だから悪いけどそれで勘弁してくれ、ビリビリ」

上条はそう言うと、少女を守るように眼前の敵に立ちはだかった。

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