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梓「伝えたい想い」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 00:44:28.25 ID:cB5Hcun00 [1/12]
梓「先輩は塾とか行かなくていいんですか!?」
唯「なんで?」
梓「なんでって、受験生だからですよ!」
放課後ティータイムとしての最後の学園祭が終わってから、先輩たちは本格的に受験勉強に打ち込み始め、寒い季節になるほどに部室にはあまり顔を出さなくなっていた。
唯「だって私ここの方が落ち着くんだもん」
梓「心配にならないんですか! ほかの人と差がついてもしりませんからね」
もう唯先輩はマイペースにもほどがありすぎ! 勉強し始めたのはいいけど、毎日部室じゃ……
梓「先輩は塾とか行かなくていいんですか!?」
唯「なんで?」
梓「なんでって、受験生だからですよ!」
放課後ティータイムとしての最後の学園祭が終わってから、先輩たちは本格的に受験勉強に打ち込み始め、寒い季節になるほどに部室にはあまり顔を出さなくなっていた。
唯「だって私ここの方が落ち着くんだもん」
梓「心配にならないんですか! ほかの人と差がついてもしりませんからね」
もう唯先輩はマイペースにもほどがありすぎ! 勉強し始めたのはいいけど、毎日部室じゃ……
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:00:37.36 ID:cB5Hcun00 [2/12]
唯「あずにゃんはギター弾いてていいよ~、お邪魔してるの私だし」
梓「いえ、私も期末試験近いですし勉強します、あっ、そうだムギ先輩のほどじゃないですけどお菓子もってきました」
唯「えっ~、本当に!? あっーカントリーマームだぁ! 私これ大好きなんだよね」モフモフ
梓「お口にあって良かったです」
唯先輩だけは毎日この部室で会っている、聞く話によると塾もいっていないらしい、平気なんだろうか、私としてはとても心配だ。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:02:47.14 ID:cB5Hcun00 [3/12]
唯「ねぇあずにゃん?」
梓「なんですか?」
唯「二人だと部室って広いね」
それからも毎日唯先輩は部室にきた、今日もくるのだろうか、私は階段を上がり、部室のドアを開ける。
唯「やっほー、あずにゃん」
梓「今日は随分と早いですね」
唯「みんな急がないと塾の授業遅れちゃうんだって、一人になっちゃったから部室きたんだ」
――次の日
今日も唯先輩は早めにいるのだろうか、毎日の習慣のようにまた部室のドアを開ける。
梓「あれ? ……いない」
二人でも広いと思った部室により、私の存在が小さく感じられた。
外の部活の掛け声が聞こえる。
校内からの吹奏楽部の練習音。
部室には多くの音が響いていた、私は今まで気づかなかった、いつもの笑い声がこの部室のメロディーだと思っていたから、部室が違う部屋に感じられ、私にたった一つの事実を教えてくれた、そうそれは――
一人ぼっちだということ、先輩たちはもう卒業するんだ。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:06:17.97 ID:cB5Hcun00
唯「あーずにゃん!」ダキッ
梓「ちょっとやめてください!」
唯「えっ~、あずにゃんのいけずぅ」
梓「そんなことより勉強しないと、唯先輩は受験生なんですから!」
唯「今日は生き抜きだよ、毎日勉強じゃ死んじゃいますよ~」
梓「本当に毎日してるんですか? まぁたまにならいいですけど」
唯「さすがあずにゃん! じゃあ一緒に何か弾こうか」
そう言いながら唯先輩はギターを取り出す、誰かと合わせるのは私も久々だ、正直楽しみだ、そして私もギターを取り出す。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:07:18.09 ID:cB5Hcun00
梓「何笑ってるんですか?」
唯「ううん、ただこうやって二人で合わせるのってユイアズ以来かなって」
梓「確かにそうですね」
唯「あずにゃんさんは厳しいですかなぁ~」
梓「何ですかそれ?」
唯「懐かしいなぁって」
梓「唯先輩が怠け者なだけです、そういえば、もうあれから随分たちますね」
帰り道、唯先輩と別れて一人になると、私の中に先ほどとは違う多くの音が響く。
これからは一人なんだ、軽音部を、先輩たちとの大切な場所を守るためにも私は頑張らなければいけない、私は『私』に言い聞かせる。
梓「部長として頑張らなきゃいけない!」
一人だって強くなれる。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:08:22.66 ID:cB5Hcun00
いつもの休み時間、唯先輩と澪先輩を見つける。
何してるんだろ? 私は近づいて声を掛けようとする。
唯「どう? 澪ちゃん勉強はかどってる?」
澪「まぁそれなりにな、唯、お前はどうなんだ? いつも部室行ってるみたいじゃないか」
唯「うん、そうだよ、でも勉強はちゃんとやっています」フンス
澪「それならいいけど、あまり梓に迷惑かけるなよ」
私が近づくににつれて、先輩たちの声が聞こえる。
唯「そんなことないよ、それに私がいなかったら、あずにゃん寂しいよ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:09:15.74 ID:cB5Hcun00
その一言が私への言葉だと理解したとき、心が何かに吸い込まれ、それを補うようにドロリとした黒いものが私を埋める。
そんなんじゃない! 私は違う! これからは一人だってわかっていた、そんなこと覚悟していた! 来年へ向けて私は頑張るんだ、弱くなんてないんだ……
何も…………何も……
梓「何も唯先輩はわかってない!」
気づいたら私は廊下中に響く大きな声を出していた。
後ろからの大きな声に驚いたように先輩たちは振り向く。
唯「ちっ、違うんだよ! あず――」
先輩は何か言っていたみたいだけど、私は堪えきれず走り出す、追いかけてきてるのかな? そんなのもわからない、ただわかるのは強くなろうとしてる私への否定。
寂しくなんてない! 私はこれから一人なんだ! そんなの新入部員を諦めた時点でわかっていたんだ! 唯先輩は同情したんだ……私に。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:17:04.44 ID:cB5Hcun00
その日から唯先輩は部室に来なくなった、そのおかげで私は来年の新入生歓迎会の計画を練ることができた、守らなきゃいけないんだ私は。
それでも先輩たちは私のことが心配らしくたまには部室に来てくれた、唯先輩もいたが、いつも通りだった、それが先日の言葉を強調するようで辛かった。
先輩たちは無事大学に合格し晴れてから春には、大学生だ。
卒業式の放課後、軽音部メンバーで最後のお茶会をしていた、今日のデザートはいつもより豪華だった、ムギ先輩が最後だからそうしたのだろうか。
先輩たちはしんみりとしながらも三年間を懐かしむように笑いながら話していた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:18:27.80 ID:cB5Hcun00
律「これで梓も三年生か、軽音部のことは任したぞ!」
梓「もちろんです! 任してください!」
澪「梓なら心配ないな、誰かさんと違って」
律「何をー!」
沢庵「ふふ、頑張ってね、梓ちゃん」
唯「あずにゃんは平気? その……私たちがいなくても」
梓「大丈夫です! 軽音部は私が守ります!」
唯「……そっか、頑張ってね! あずにゃん!」
律「よく言った! さすが部長!」
そして私たちは笑いながら帰った、先輩たちと帰った二年間のこの道を、一つずつ――
思い出すように――
確かめるように――――
忘れないように――――――
でもそこには私と唯先輩との見えない壁があった気がする。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:19:38.67 ID:cB5Hcun00
家に帰るとドッと疲れすぐにベッドに倒れた。
そしたら身体はもう動かなかった、意識はある……気がする、瞼を閉じて暗いのか、世界全体が暗いのか私にはわからなかった。
ただ一つ私にわかることは、これは夢だということ。
だってそこには『私』がいるから。
「ねぇなんで泣いているの?」
私の声は『私』に届かない、近づこうとしても距離は縮まらない、果たして私は歩いているのだろうか? それさえもわからない。
もう一人の『私』は泣き止むことはなかった。
その時声が聞こえた。
?「「あ……にゃ……」
梓「誰?」
?「ごめんね、あずにゃん」
梓「……唯先輩?」
唯「ごめんね、私素直じゃないね」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:20:56.30 ID:cB5Hcun00
唯「あれはね、恥ずかしかったんだ」
唯先輩の声を聞くたび私と『私』の距離は近づく。
唯「あずにゃんが寂しいんじゃなかったんだよね、本当は私が寂しかっただけ」
私が近づいているのか『私』が近づいているのかわからない。
唯「学園祭が終わって、部活にいかなくなって、私とあずにゃんの距離が遠くなるのが嫌だったの」
また一歩近づく。
唯「でも、みんなにそんなこと言うの恥ずかしかった、だって私三年生だもん! だから建前であずにゃんのせいにしちゃった」
もう手が届く。
唯「あずにゃんは寂しくなかったのかもしれないけど、私は辛かった、だから二人きりだったけどそんな部活も楽しかったよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:21:51.28 ID:cB5Hcun00 [12/12]
私の前に『私』がいなくなる、ううん、違う、私と『私』が重なったんだ!
唯「もしもそんな私を許してくれるな、あずにゃん顔を上げて、もう泣くのなんてやめて、私は応援してるよ」
「唯先輩! 私も話したいことがあります! だから――」
顔を上げると、そこは部室だった、律先輩がいて、澪先輩がいて、沢庵がいた。
あれ? 唯先輩は?
律「おっ、お目覚めかぁ?」
梓「私どうしてたんですか?」
先輩たちの胸には造花がついていた、ということは今日は卒業式?
沢庵「最後の下校だから、梓ちゃんと帰りたくて起きるの待ってたの」
澪「みんなと話したいこともあったから、起こすのも悪いし待ってたんだよ」
なにがなんだかわからなかった、さっきまでのは夢? 違うそんなことじゃない、私が今やらなきゃいけないことは――
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:23:43.55 ID:cB5Hcun00
梓「唯先輩はっ!? 唯先輩はどこですか!?」
律「唯なら帰ったぞ~」
沢庵「せっかくだから皆で帰ろうって言ったんだけど」
澪「なんか用事があるらしいんだ」
梓「いつ帰ったんですか!?」
律「今さっきだぞ」
それを聞いた途端、私は走りだし、部室のドアを開けていた。
「唯先輩! 私はまだ何も伝えていません!」
階段を駆け下りる、わき腹が痛いがそれでも走る。
「寂しかったのは私のほう! 弱い自分じゃいけなかったから! 守れないから、軽音部の思い出を! 唯先輩との思い出を!」
膝が痛い、こけて擦り剥いたのかな、それでも私は走らなきゃいけない、伝えなきゃいけない。
私は唯先輩がいたからここまで来れたんです、だから沢山の思い出と一緒に
一緒にいてくれてありがとう
抱きしめてくれてありがとう
下駄箱を越えて、玄関を走る、そして中庭を歩いている――そう、あれは唯先輩だ!
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:25:34.06 ID:cB5Hcun00
「唯先輩!」
私は腹のそこから声を出す、みんなが見てる、そんなの知ったことじゃない。
あのままじゃ後悔したから、だから今の私がいるんだ!
唯先輩が振り向く、その瞬間に私は抱きついた、すごい勢いだったんだろう、唯先輩が後ろに転びそうになる。
唯「あ……ずにゃん」
梓「唯先輩! 唯先輩! 唯先輩! 卒業なんてしないでよ、私本当は寂しい」
私は泣いて唯先輩に抱きつく、だから先輩が今どんな顔をしているかはわからない、だけど先輩は優しく私を抱きしめてくれた。
私も唯先輩も何も言わない、きっとこの気持ちは、言葉に表すことはできなくて、口にだしたら想いを伝えられないから、だから私も唯先輩もただ優しく抱きしめあった。
唯「ありがとう、でもあずにゃんは一人じゃないよ」
唯「もちろん私もそばにいるし、それにほら後ろを見て」
私は涙を袖で拭き後ろを振り向く、そこには軽音部の先輩たちがいて、憂や純もいた。
唯「ねっ、あずにゃん」
梓「……はい! そうですね」
私は唯先輩から離れ、憂と純のところへ向かう。
そうだ唯先輩はいつでもそばにいるんだ、一人じゃない、寂しくなったら電話すればいい、辛くなったら会いに行けばいい、先輩と私は繋がっている!
梓「憂ー! 純ー!」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:26:40.98 ID:cB5Hcun00
私は二人のもとへ走る、私わかったんだ! そんなふうに叫びたかった。
梓「私わかったんだ! あれ? 二人ともどうしたの?」
二人が何かに驚いてる、ん? 私なのかな? でも私のこと見てるし、いや、これは違う……私の後ろ?
激しい足音と共に何かに後ろから抱きつかれる。
唯「あーーーーーずにゃん! やっぱりあずにゃん分補給しないと私ダメだぁ」スリスリ
梓「ちょっ、ちょっとやめてください、唯先輩!」
唯「さっきはあずにゃんから抱きついてきたよ~、そのお返し」
梓「みんな見てて恥ずかしいですから!」
さっきは驚いていた二人も今は笑ってこっちを見ている、軽音部の先輩たちも呆れているのか、笑っているのかよくわからない、でも私は唯先輩に言わなければいけないことがある、それは――
梓「今日だけは特別ですよ」
おしまい
唯「あずにゃんはギター弾いてていいよ~、お邪魔してるの私だし」
梓「いえ、私も期末試験近いですし勉強します、あっ、そうだムギ先輩のほどじゃないですけどお菓子もってきました」
唯「えっ~、本当に!? あっーカントリーマームだぁ! 私これ大好きなんだよね」モフモフ
梓「お口にあって良かったです」
唯先輩だけは毎日この部室で会っている、聞く話によると塾もいっていないらしい、平気なんだろうか、私としてはとても心配だ。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:02:47.14 ID:cB5Hcun00 [3/12]
唯「ねぇあずにゃん?」
梓「なんですか?」
唯「二人だと部室って広いね」
それからも毎日唯先輩は部室にきた、今日もくるのだろうか、私は階段を上がり、部室のドアを開ける。
唯「やっほー、あずにゃん」
梓「今日は随分と早いですね」
唯「みんな急がないと塾の授業遅れちゃうんだって、一人になっちゃったから部室きたんだ」
――次の日
今日も唯先輩は早めにいるのだろうか、毎日の習慣のようにまた部室のドアを開ける。
梓「あれ? ……いない」
二人でも広いと思った部室により、私の存在が小さく感じられた。
外の部活の掛け声が聞こえる。
校内からの吹奏楽部の練習音。
部室には多くの音が響いていた、私は今まで気づかなかった、いつもの笑い声がこの部室のメロディーだと思っていたから、部室が違う部屋に感じられ、私にたった一つの事実を教えてくれた、そうそれは――
一人ぼっちだということ、先輩たちはもう卒業するんだ。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:06:17.97 ID:cB5Hcun00
唯「あーずにゃん!」ダキッ
梓「ちょっとやめてください!」
唯「えっ~、あずにゃんのいけずぅ」
梓「そんなことより勉強しないと、唯先輩は受験生なんですから!」
唯「今日は生き抜きだよ、毎日勉強じゃ死んじゃいますよ~」
梓「本当に毎日してるんですか? まぁたまにならいいですけど」
唯「さすがあずにゃん! じゃあ一緒に何か弾こうか」
そう言いながら唯先輩はギターを取り出す、誰かと合わせるのは私も久々だ、正直楽しみだ、そして私もギターを取り出す。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:07:18.09 ID:cB5Hcun00
梓「何笑ってるんですか?」
唯「ううん、ただこうやって二人で合わせるのってユイアズ以来かなって」
梓「確かにそうですね」
唯「あずにゃんさんは厳しいですかなぁ~」
梓「何ですかそれ?」
唯「懐かしいなぁって」
梓「唯先輩が怠け者なだけです、そういえば、もうあれから随分たちますね」
帰り道、唯先輩と別れて一人になると、私の中に先ほどとは違う多くの音が響く。
これからは一人なんだ、軽音部を、先輩たちとの大切な場所を守るためにも私は頑張らなければいけない、私は『私』に言い聞かせる。
梓「部長として頑張らなきゃいけない!」
一人だって強くなれる。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:08:22.66 ID:cB5Hcun00
いつもの休み時間、唯先輩と澪先輩を見つける。
何してるんだろ? 私は近づいて声を掛けようとする。
唯「どう? 澪ちゃん勉強はかどってる?」
澪「まぁそれなりにな、唯、お前はどうなんだ? いつも部室行ってるみたいじゃないか」
唯「うん、そうだよ、でも勉強はちゃんとやっています」フンス
澪「それならいいけど、あまり梓に迷惑かけるなよ」
私が近づくににつれて、先輩たちの声が聞こえる。
唯「そんなことないよ、それに私がいなかったら、あずにゃん寂しいよ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:09:15.74 ID:cB5Hcun00
その一言が私への言葉だと理解したとき、心が何かに吸い込まれ、それを補うようにドロリとした黒いものが私を埋める。
そんなんじゃない! 私は違う! これからは一人だってわかっていた、そんなこと覚悟していた! 来年へ向けて私は頑張るんだ、弱くなんてないんだ……
何も…………何も……
梓「何も唯先輩はわかってない!」
気づいたら私は廊下中に響く大きな声を出していた。
後ろからの大きな声に驚いたように先輩たちは振り向く。
唯「ちっ、違うんだよ! あず――」
先輩は何か言っていたみたいだけど、私は堪えきれず走り出す、追いかけてきてるのかな? そんなのもわからない、ただわかるのは強くなろうとしてる私への否定。
寂しくなんてない! 私はこれから一人なんだ! そんなの新入部員を諦めた時点でわかっていたんだ! 唯先輩は同情したんだ……私に。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:17:04.44 ID:cB5Hcun00
その日から唯先輩は部室に来なくなった、そのおかげで私は来年の新入生歓迎会の計画を練ることができた、守らなきゃいけないんだ私は。
それでも先輩たちは私のことが心配らしくたまには部室に来てくれた、唯先輩もいたが、いつも通りだった、それが先日の言葉を強調するようで辛かった。
先輩たちは無事大学に合格し晴れてから春には、大学生だ。
卒業式の放課後、軽音部メンバーで最後のお茶会をしていた、今日のデザートはいつもより豪華だった、ムギ先輩が最後だからそうしたのだろうか。
先輩たちはしんみりとしながらも三年間を懐かしむように笑いながら話していた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:18:27.80 ID:cB5Hcun00
律「これで梓も三年生か、軽音部のことは任したぞ!」
梓「もちろんです! 任してください!」
澪「梓なら心配ないな、誰かさんと違って」
律「何をー!」
沢庵「ふふ、頑張ってね、梓ちゃん」
唯「あずにゃんは平気? その……私たちがいなくても」
梓「大丈夫です! 軽音部は私が守ります!」
唯「……そっか、頑張ってね! あずにゃん!」
律「よく言った! さすが部長!」
そして私たちは笑いながら帰った、先輩たちと帰った二年間のこの道を、一つずつ――
思い出すように――
確かめるように――――
忘れないように――――――
でもそこには私と唯先輩との見えない壁があった気がする。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:19:38.67 ID:cB5Hcun00
家に帰るとドッと疲れすぐにベッドに倒れた。
そしたら身体はもう動かなかった、意識はある……気がする、瞼を閉じて暗いのか、世界全体が暗いのか私にはわからなかった。
ただ一つ私にわかることは、これは夢だということ。
だってそこには『私』がいるから。
「ねぇなんで泣いているの?」
私の声は『私』に届かない、近づこうとしても距離は縮まらない、果たして私は歩いているのだろうか? それさえもわからない。
もう一人の『私』は泣き止むことはなかった。
その時声が聞こえた。
?「「あ……にゃ……」
梓「誰?」
?「ごめんね、あずにゃん」
梓「……唯先輩?」
唯「ごめんね、私素直じゃないね」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:20:56.30 ID:cB5Hcun00
唯「あれはね、恥ずかしかったんだ」
唯先輩の声を聞くたび私と『私』の距離は近づく。
唯「あずにゃんが寂しいんじゃなかったんだよね、本当は私が寂しかっただけ」
私が近づいているのか『私』が近づいているのかわからない。
唯「学園祭が終わって、部活にいかなくなって、私とあずにゃんの距離が遠くなるのが嫌だったの」
また一歩近づく。
唯「でも、みんなにそんなこと言うの恥ずかしかった、だって私三年生だもん! だから建前であずにゃんのせいにしちゃった」
もう手が届く。
唯「あずにゃんは寂しくなかったのかもしれないけど、私は辛かった、だから二人きりだったけどそんな部活も楽しかったよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 01:21:51.28 ID:cB5Hcun00 [12/12]
私の前に『私』がいなくなる、ううん、違う、私と『私』が重なったんだ!
唯「もしもそんな私を許してくれるな、あずにゃん顔を上げて、もう泣くのなんてやめて、私は応援してるよ」
「唯先輩! 私も話したいことがあります! だから――」
顔を上げると、そこは部室だった、律先輩がいて、澪先輩がいて、沢庵がいた。
あれ? 唯先輩は?
律「おっ、お目覚めかぁ?」
梓「私どうしてたんですか?」
先輩たちの胸には造花がついていた、ということは今日は卒業式?
沢庵「最後の下校だから、梓ちゃんと帰りたくて起きるの待ってたの」
澪「みんなと話したいこともあったから、起こすのも悪いし待ってたんだよ」
なにがなんだかわからなかった、さっきまでのは夢? 違うそんなことじゃない、私が今やらなきゃいけないことは――
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:23:43.55 ID:cB5Hcun00
梓「唯先輩はっ!? 唯先輩はどこですか!?」
律「唯なら帰ったぞ~」
沢庵「せっかくだから皆で帰ろうって言ったんだけど」
澪「なんか用事があるらしいんだ」
梓「いつ帰ったんですか!?」
律「今さっきだぞ」
それを聞いた途端、私は走りだし、部室のドアを開けていた。
「唯先輩! 私はまだ何も伝えていません!」
階段を駆け下りる、わき腹が痛いがそれでも走る。
「寂しかったのは私のほう! 弱い自分じゃいけなかったから! 守れないから、軽音部の思い出を! 唯先輩との思い出を!」
膝が痛い、こけて擦り剥いたのかな、それでも私は走らなきゃいけない、伝えなきゃいけない。
私は唯先輩がいたからここまで来れたんです、だから沢山の思い出と一緒に
一緒にいてくれてありがとう
抱きしめてくれてありがとう
下駄箱を越えて、玄関を走る、そして中庭を歩いている――そう、あれは唯先輩だ!
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:25:34.06 ID:cB5Hcun00
「唯先輩!」
私は腹のそこから声を出す、みんなが見てる、そんなの知ったことじゃない。
あのままじゃ後悔したから、だから今の私がいるんだ!
唯先輩が振り向く、その瞬間に私は抱きついた、すごい勢いだったんだろう、唯先輩が後ろに転びそうになる。
唯「あ……ずにゃん」
梓「唯先輩! 唯先輩! 唯先輩! 卒業なんてしないでよ、私本当は寂しい」
私は泣いて唯先輩に抱きつく、だから先輩が今どんな顔をしているかはわからない、だけど先輩は優しく私を抱きしめてくれた。
私も唯先輩も何も言わない、きっとこの気持ちは、言葉に表すことはできなくて、口にだしたら想いを伝えられないから、だから私も唯先輩もただ優しく抱きしめあった。
唯「ありがとう、でもあずにゃんは一人じゃないよ」
唯「もちろん私もそばにいるし、それにほら後ろを見て」
私は涙を袖で拭き後ろを振り向く、そこには軽音部の先輩たちがいて、憂や純もいた。
唯「ねっ、あずにゃん」
梓「……はい! そうですね」
私は唯先輩から離れ、憂と純のところへ向かう。
そうだ唯先輩はいつでもそばにいるんだ、一人じゃない、寂しくなったら電話すればいい、辛くなったら会いに行けばいい、先輩と私は繋がっている!
梓「憂ー! 純ー!」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/03(木) 01:26:40.98 ID:cB5Hcun00
私は二人のもとへ走る、私わかったんだ! そんなふうに叫びたかった。
梓「私わかったんだ! あれ? 二人ともどうしたの?」
二人が何かに驚いてる、ん? 私なのかな? でも私のこと見てるし、いや、これは違う……私の後ろ?
激しい足音と共に何かに後ろから抱きつかれる。
唯「あーーーーーずにゃん! やっぱりあずにゃん分補給しないと私ダメだぁ」スリスリ
梓「ちょっ、ちょっとやめてください、唯先輩!」
唯「さっきはあずにゃんから抱きついてきたよ~、そのお返し」
梓「みんな見てて恥ずかしいですから!」
さっきは驚いていた二人も今は笑ってこっちを見ている、軽音部の先輩たちも呆れているのか、笑っているのかよくわからない、でも私は唯先輩に言わなければいけないことがある、それは――
梓「今日だけは特別ですよ」
おしまい
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