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翠星石「やい、無表情人間!」御坂妹「・・・」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:01:57.32 ID:Vj+EPeWm0
翠星石「・・・ここは?」

翠星石はふと気づき、辺りを見回した。
何だかふわふわとした、よく分からない箇所に立っていた。
翠星石あこのような現象には何度も立ち会ってるので慌てはしなかったが。

翠星石「あぁ、翠星石は夢を見てるのですね」

夢。誰もが見る、深い眠りの中の夢。
夢の庭師である翠星石はいろんな人物の夢の世界を行き来したことがあるし、自身の夢の世界も十分把握していた。

翠星石「最近はあんまり見なくなってて少し焦ってたんでしたっけ、夢の庭師なのに」

そのまま翠星石はふらふらと飛んでいった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:07:08.13 ID:Vj+EPeWm0
いつもなら一緒に住んでいるチビの薔薇乙女や、心の樹がチビサイズのチビ人間の夢にお邪魔し、色々と悪戯をやってる翠星石は今回もそうしようと考えていた。
ストレス解消法と言うわけだ。もちろん、本人の精神に影響がない程度に。

翠星石「こないだのチビチビの夢を弄繰り回したのは快感でしたねぇ・・・プククッ」

今回もチビの薔薇乙女の夢で遊んでやろう、と扉を探す。
しかし・・・どれだけ探しても見つからない。

夢の扉の箇所は基本的には変わらない。
つまり、チビの薔薇乙女は・・・

翠星石「ち、夢を見ていないようですね。つまんないヤツですぅ」

そうと分かると翠星石はやる気をなくした。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:11:28.79 ID:Vj+EPeWm0
>>2
俺はどっちでもいいけど・・・じゃあ消しとく


「どうしましょうか、素直に自分の夢の世界に戻って・・・」

仕方がない、と翠星石は戻ろうと振り返る。
・・・が、何か一瞬だけ変なものが見えた。

「・・・ん?」

本当に一瞬だけだけど、確かに何かが存在した。
ただ今は見えない。うーんと目を細めても、何も見えない。

「さっきのは・・・何なんですかね?」

翠星石は無性に気になり、その何かを探して前へと進む。
自信の夢へと戻るのは後回しにした。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:16:10.93 ID:Vj+EPeWm0
非常に曖昧な夢の世界はひたすら真っ直ぐ進む。
途中には無数の扉が待ち構えている。他に人間の夢の世界への入り口。

「今日は無視無視。構ってる暇は・・・」

翠星石の足が止まる。
その表情は戸惑いを隠すことができないようだった。

翠星石がたどり着いたのは1つの扉。
それは別に何も構わない。問題はそのサイズだ。
普通の夢の扉よりも遥かに、小さかった。

「何ですか・・・こんな小さな扉初めて見たです!」

夢の庭師を永い事やってきたが、このような扉は初めてだった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:21:01.73 ID:Vj+EPeWm0
普通はどの扉も、人間がゆうに通れるようなサイズとなっている。
が、この扉は翠星石がギリギリ通れる位のサイズしか無いのだ。

「・・・ちょっと興味がありますね」

翠星石は自分のウエストに両手を合わせ、サイズを測って扉にが入れるか確認する。
少しだけ苦い顔をした。

「ギリギリですか・・・もしかして太った?」

趣味のお菓子作りがこんなに響いてたのか、と落胆する。
もっとも人形なので太ることはありえないのだが。

「・・・よし、お邪魔するです」

意を決して、翠星石は扉を開ける。
キィ、と可愛らしい音がした。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:28:11.55 ID:Vj+EPeWm0
「あ、あだだだだだだ!!!」

案の定、つっかえた。
その絵面は非常に間抜けで滑稽。薔薇乙女とは到底思えない光景であった。

「うぅ、翠星石がデブだと言いたいんですかこの扉は!ポッチャリとかなら許せるですけどデブは許さんです!!」

気合を入れて、そのままゴリ押しで扉を通過する。
あまりの痛みにおもわず半泣きになりながら腰をさすった。

「チクショウ・・・まぁいいです。ヘッ、ざまあみやがれです!」

悪態をつきながらふと前を見る。

「さて、この夢はどんな人間の夢なんでしょうかね?」

そこで翠星石が見たものは・・・何も無かった。

「・・・へ?」

何も、無かった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/23(火) 12:35:32.70 ID:Vj+EPeWm0
夢の世界とは、本人の現実世界での精神や記憶、願望が大きく影響される。
その過程で心の樹が成長し、自分だけの夢の世界が生まれる。
どんなに荒んだ生活を送ろうとも、どんなに廃人じみた生活を送ろうとも夢の世界は形成される。

だが、ここには何も無いのだ。
真っ白で、息が詰まりそうで、夢のかけらも無いような世界。
翠星石は混乱した。

「な・・・これが夢の世界!?」

翠星石は自身の手を前に突き出す。
だが、その手が霞む事はない。つまり・・・

「・・・霧などでは無い、という事ですか。霧ならこの手は霞んで見えるはず・・・」

本当に何も無いだけの世界の様だった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:42:24.66 ID:Vj+EPeWm0
「少し散策しても構わない・・・ですよね?」

自身に言い聞かせ、翠星石はこの世界へと足を踏み入れる。
特に意味はないが、このような世界を形成する人間に少し興味があったから。

「しかし、これじゃどっちが前でどっちが後ろかが分からないですね」

幸いにも扉が見えなくなることは無かったので安心して散策することが出来る。
まあ自分が目覚めればこの世界からも強制的に脱出できるのであまり関係ないことではあったが。

「おーい、誰かいるのなら出てきやがれですー!」

ぶらぶら歩きながら翠星石は声をだし、主の存在を探す。

「スィドリームが居るのならもう少し早く見つけられそうなんですがねぇ。まったく使えん人工精霊です」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:52:41.85 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

「お・・・お~い・・・だぁれか・・・ハァ」

もうどれくらい歩いただろうか、流石に心が折れそうだ。
自然と発する声のトーンも小さくなっていく。

「誰も居ないんですかね・・・骨折り損です。もう帰りたい・・・お?」

翠星石がブルーになりながら足を進めると、なにやら人影を見つけた。

「ん!?あれはもしや・・・もしやがあるですね!」

目を細め、その遠くにいる人物を確認する。
その場に座り込んで全く動かないが、一応人間のようだ。

「ようやく見つけたです!さんざん探させやがって呑気なもんですねぇ・・・」

少しだけ元気を取り戻し、翠星石はズカズカとその人物に近づいていった。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:03:18.06 ID:Vj+EPeWm0
「やいやい人間!」

人見知りの翠星石だが、この時ばかりは掴みかからん勢いで吠える。
疲れもあったせいなのだろうか、どこか吹っ切れてるようだった。

「・・・」

「・・・聞いてるですか?」

何の反応もないので流石に焦る。
一応こちらを見てはいるようだが。

「・・・私でしょうか?」

「聞いてるのなら返事くらいしやがれです!」

その人物・・・もとい少女は、マイペースで淡々と答える。

「覚悟しやがれです。いろいろと聞きたいことがあるんです・・・!」



そういった途端、翠星石の視界は急に暗転した。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:08:11.53 ID:Vj+EPeWm0
>>12
蒼星石はまだ出てないけどね。

ガバッ、と勢い良く翠星石は起き上がる。
思いっきりカバンに頭をぶつけてしまった。

「あっ!!・・・いたたた」

折角のところで目が覚めてしまった。
いまから色々聞きたいことがあったのに、と翠星石はため息を付いた。

「おーい、大丈夫か?」

「・・・ハイ?」

翠星石がカバンを開け、その声の主の顔を確認する。

「・・・今日は珍しく早起きなんですね、チビ人間」

「そうか?」

翠星石のマスターである桜田ジュン、声の主はこの人間だった。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:18:26.16 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

その少女は、なんとなくベンチに腰掛けていた。
やることといえば外部での研修。ある程度の纏まったデータが欲しいと言うことで、数週間の研修期間が与えられた。

「といっても、ミサカは優秀なのでそんなに研修期間は必要ないのですが、とミサカは自身の優秀っぷりを呟きます」

ポケットに手を入れ、財布の中身を確認する。
幸いにも小銭があったので、これでなにか買おうかと考えた。

「そういえば・・・喉がかわいてますね。とミサカは若干の疲労を隠せないでいます」

自身のデータにはこの辺に自動販売機があったはず。
少女・・・御坂妹は喉を潤わせるために自動販売機を探す。
実際にはすぐ近くにあったのだが。

「流石ミサカ、とミサカは自分の完璧な情報に少々酔いしれます」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:27:51.95 ID:Vj+EPeWm0
財布から120円を取り出し、投入する。

(きなこ練乳?変な飲み物もあるんですね)

御坂妹はきなこ練乳を買おうとボタンを押す。
・・・が、何の反応も見せない。
よく見るとボタンが光ってないのだ。

「おかしいですね、とミサカは多少疑問を感じながらもう一度お金を入れます」

再び120円を入れる。が、またもや反応無し。

「・・・こ、このような事態は想定されてません、とミサカは動揺を隠せません・・・」

流石の御坂妹も不測の事態には対応が難しいようであった。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:34:16.32 ID:Vj+EPeWm0
「も、もう一度だけ・・・とミサカは再チャレンジに前向きな姿勢を見せます」

再び120円を入れる、反応なし。

「・・・成程」

「何が成程よ」

「!」

御坂妹が振り返ると、そこには自身によく似た容姿をもつ少女が立っていた。
御坂妹の姉、オリジナルである御坂美琴が。

「アンタね、そうやってぶらぶらして・・・変な噂が立つとか考えたことある?」

「お姉様、ミサカは今それどころじゃないのです、とミサカは緊急事態をアピールします」

「緊急事態・・・この自販機で?」

「はい」

「・・・プッ」

いきなり笑われ、御坂妹はほんのちょっと怒りを覚えた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:50:20.82 ID:Vj+EPeWm0
緊急の用事が出来た。
もし落ちたら後日立て直す。すんません

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:08:22.27 ID:Vj+EPeWm0
ただいま

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:20:26.00 ID:Vj+EPeWm0
「・・・申し訳ありませんが、ミサカは割と真剣なのです、とミサカは・・・」

「この自販機、お金を飲み込んじゃうのよ。知らなかった?」

「・・・へ?」

珍しくポカンとする御坂妹を他所に、美琴は静かに構え・・・

「よっしゃああああああああ!!!」

ガン!という鈍い音と共に美琴の足蹴りが見事にヒットし、ガコンと小気味の良い音が聞こえた。

「ねぇアンタ、何を買おうとしたの?」

「・・・きなこ練乳です、とミサカはお姉様に正直に報告します」

「ふぅん・・・」

美琴が自販機に手を突っ込み、そのままジュースを手にとり確認した。

「きなこ練乳じゃない。アンタ得してるわね」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:34:03.95 ID:Vj+EPeWm0
「・・・ありがとうございます、とミサカは乱暴なお姉様は見なかったことにして漢書の言葉を述べます」

「余計なお世話よ」

そう言いつつもう一回蹴りを入れ、美琴もジュースを手にとる。
御坂妹と同じきなこ練乳のようだった。

「・・・で、アンタは何でこんなの所に居るの?」

「研修中です、とミサカは間髪入れずに答えます」

「研修ぅ~?・・・妹たちはみんな研修ばっかやってるの?」

「いえ、ミサカだけ特別に数週間の研修期間が設けてあります。実験はその後です」

実験、と言われて美琴の顔は少しだけ曇る。
だがそれを悟られないように美琴は俯き、会話を続ける。

「・・・研修って何をやるのよ?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:43:47.47 ID:Vj+EPeWm0
「知りたいのですか?とミサカは焦らします」

「さっさと話しなさい」

「・・・分かりました。と言っても研修というのはいろいろな情報を集めるだけのものです」

「情報ねぇ・・・何の?」

「些細なものです。色々なものを見て、触って、覚えていくのが今回の研修の内容です、とミサカは曖昧に答えます」

なるほどね、と美琴はきなこ練乳を口に含む。
あんまり美味しくないのか、美琴は少しだけ苦い顔をした。

「じゃあ、このきなこ練乳の味も覚えたの?」

「はい。なかなかきなこと練乳のコラボレーションが次世代の味を演出し、美味だと感じます。とミサカは評論家気取りでお姉様に報告します」

「・・・アンタ、ちょっと味覚おかしいんじゃないの?」

「そうでしょうか?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:52:31.72 ID:Vj+EPeWm0
ーーーー・・・

「ねぇねぇジュン、遊ぼ?」

「やだよめんどくさい。翠星石と遊べばいいだろ」

ジュンは雛苺の誘いを軽くあしらい、PCへと没頭する。
以前よりだいぶマシになったが、やはり通販のHPを観るのはやめられない。

「ヒナも最初は翠星石と遊ぼうと思ったの」

「最初は?」

「なんだか、翠星石の様子がおかしいの・・・」

「・・・どういう事だ?」

ジュンが雛苺の方を向く。
一旦PCは中断し、雛苺から話を聞こうとする。

「うゆ・・・ちょっと一階まで来て欲しいの」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:13:29.58 ID:Vj+EPeWm0
ジュンは言われるがままに一階に降りる。
どうやら翠星石はリビングに居るらしい、と言うことなのでそっとドアの影から確認する。

「・・・翠星石はどこだ?」

「あそこ、テーブルのところなの」

目を追いやると、確かに翠星石はそこにいた。
ただ・・・

「はぁ・・・ズズズ」

「翠星石ちゃん、もう紅茶何杯目かしら・・・やめた方がいいわよぅ」

ジュンの姉である桜田のりが、ただひたすら台所でオロオロしていた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:27:52.88 ID:Vj+EPeWm0
(あの真っ白な世界・・・なんなんでしょうか?)

翠星石は考える。
夢の世界にあんな何も無い世界はない・・・ハズだ。

(せめてあの人間から話が聞けたら良かったんですがねぇ・・・失敗したです)

別にこんなに深入りする理由はない。
だが、夢の庭師としてのプライドがそれを許さなかった。

(記憶がない?それか心を極端に閉ざしてる?)

紅茶を飲もうと手を伸ばす。
が、すでにカップの中身は空だった。

「のり、おかわりです」

「えぇ、また・・・!?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:40:16.88 ID:Vj+EPeWm0
(また夢の世界に・・・いや、あまり行き過ぎると相手の精神に干渉してしまう恐れが・・・)

「おい」

(蒼星石・・・はアテにならないですね。第一対立してるわけですし)

「おい!!!!」

「ふぇっ!?」

ジュンが目の前で叫んでいるのにようやく気づき、間抜けな声を出す。
水銀燈に聞かれていたら馬鹿にされるだろうな、と思いながらジュンに向き合った。

「な・・・何ですか。やかましい野郎ですね」

「いや、柄になく悩んでるなぁと思って」

「失礼ですね、翠星石だって考え事くらいするですよ」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:57:34.12 ID:Vj+EPeWm0
「おいお茶漬けのり、僕にも紅茶だ」

「はぁ~い」

のりが慌ててやかんの水を増やす。
ついでに茶葉の缶を開け、中身を確認している。

「翠星石、それで結局何を考えてるんだ?」

「・・・夢」

「はぁ?」

「夢の世界・・・ジュンだって知ってるですよね?」

夢の世界。
確かに一度、翠星石の力で自らの夢の世界にジュンは行った。

「あぁ、たしか出会ってすぐの頃だったよな?なんか懐かしいな・・・」

「問題はそこじゃないです!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:03:22.61 ID:Vj+EPeWm0
「なんだよ、そこじゃないって」

「夢というのは、それぞれ一人ひとりが形成する自らの世界。nのフィールドに近いものなのです」

「そうだな、たしか飛ぶこともできるし・・・」

「じゃあ・・・仮にですよ?夢の世界が何も無い世界だとしたら?」

「何もない?夢の世界なのに?矛盾してないか?」

「だから仮にだと言ってるじゃないですか」

翠星石はあくまで落ち着いてジュンに問いかける。
テーブルに置いてある鈴カステラを数個自分の近くにキープし、1つだけ頬張った。
ほんのりとした甘さが、少しだけ心を落ち着かせる。

「・・・僕はお前ほど夢に詳しくないぞ?」

「構わないです。素人なりに何かいいやがれです」

「そうだな・・・」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:09:44.89 ID:Vj+EPeWm0
「やっぱり・・・人間は生きている以上夢をみると思うんだ。ただ単にこれまでの経験や、理想や、挫折・・・色々な思いが夢を作る」

「・・・だいたいあってるです」

「つまり、その何も無い世界の主は・・・人生経験に非常に乏しいとか、何も考えてないとか・・・」

あとは・・・とジュンは少し頭を捻らせる。
翠星石それを黙って待つ。

「・・・あぁ、赤ん坊!」

「成程・・・言いたいことは分かるです」

翠星石はまた紅茶を飲もうとするが空っぽだったのを思い出し、仕方なく鈴カステラを頬張る。

「でも、その世界の主は・・・雛苺の元マスターより少しだけオトナっぽい感じでした、と言ったら?」

「じゃあ赤ん坊でもないのか?」

「そういう事です」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:17:45.74 ID:Vj+EPeWm0
「・・・それなら、もうこれくらいしか思い浮かばないぞ?」

ジュンはそこまで言うと一旦間をおき、そのまま考えを述べた。

「夢をみたことが無い人、とか?」

「・・・」

沈黙。
やっぱちょっと極端すぎたか?とジュンは冷や汗をかいた。

「プッ・・・あっははははは!!!!」

「な、何だよ!!」

いきなり爆笑され、ジュンは身を乗り出し怒号を上げる。
と言っても何となくは予想していたし、仕方が無いことではあったが

「はぁはぁ・・・なかなか面白い事言うですね、ジュン」

「・・・ほっとけ」

そうこうしてるうちに、のりが新しい紅茶を運んできた。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:27:11.78 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

「ふぅ」

翠星石は再び夢の世界に入り込む。
今度はスィドリームの力を用いり、自らの夢の扉を開いたのだ。

目的はただ1つ、もう一度あの夢の世界へ潜り込むだめだ。

「何で翠星石はこんなに深入りしようとしているんですかね・・・?」

自分に問いかける。答えは当然帰ってこない。

「・・・さて、探さなきゃいけないですね」

翠星石はあの小さな扉を探しに歩き出した。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:32:43.28 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

「・・・ここは?」

少女は辺りを見回す。
ここは何処だろうと考える・・・が

「思い出せません。公園?」

人っ子一人いないみたいだが、どうやら公園のようだった。

「あれ?私はどうしてこんなところにいるんでしょうか?」

少女は再び考える。しかし答えがでない。
なんだか頭に靄がかかったみたいで何も思い出せない。

「・・・困りましたね」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:37:40.16 ID:Vj+EPeWm0
もう少し考えて、何も思い出せない。

「・・・座りましょうか」

すぐそこのベンチに腰をかけ、一息つく。
ポケットに手を入れると財布が入っていた。

「・・・私の、ですよね?」

中身を確認すると360円しか入ってない。
もう少し入っててもいいのになぁと溜息をつく。

「・・・そうだ、ジュースでも買いましょう」

少女は立ち上がり、何かを探す。
・・・何を?

「えっと・・・自動販売機?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:42:44.05 ID:Vj+EPeWm0
幸いにもすぐそこにお目当ての自動販売機はあった。
だがどうにもおかしい。

「きなこ練乳・・・しかない」

その自動販売機にはきなこ練乳がぎっしり詰まっていた。
とても異様な光景で、なんだか寒気がするくらいだった。

「・・・とりあえず、120円を」「ああーーーーーーーーー!!」

財布から小銭を出そうとすると、どこからとも無く叫び声が聞こえる。
思わず振り返ると、そこには小さな小さな女の子が居た。

「人がさんざん探してるのにジュース?何様ですか!!」

「・・・私でしょうか?」

「そう、おめーです人間!!」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:55:11.40 ID:Vj+EPeWm0
翠星石は扉を見つけた時、少しだけ戸惑った。

「昨日より・・・扉が大きくなってる?」

昨日よりも扉が明らかに大きくなっていた。
少なくとも、翠星石の体くらいは余裕で通れるくらいに。

「・・・まぁ、痛い思いをして扉を通過するよりマシですね」

翠星石が扉を開く。
するとそこに広がっていたのは昨日のような白い世界ではなく・・・

「・・・ノイズ?」

砂嵐のような、昨日とは一転して前が良く見えない不思議な世界になっていた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:56:28.68 ID:Vj+EPeWm0
めし。
需要とか気にしない

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:57:40.78 ID:Vj+EPeWm0
ただいまかしらー

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:07:30.95 ID:Vj+EPeWm0
ザザッ、という不気味な音をたて、翠星石の視界を狭ませる。
いつかテレビで見た、あの砂嵐にそっくりだった。

「昨日と全く違う・・・?もう翠星石を小馬鹿にしてるとしか思えないです」

今まで培ってきた庭師としての全てが否定される世界。
最早笑うしか無かった。

「・・・いや、前に進むですよ。あの人間を探し出すです」

翠星石は覚悟を決め、一歩前に踏み出した。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:19:31.81 ID:Vj+EPeWm0
「くぅぅ・・・前は見えないし、音はうるさいし・・・ろくな世界じゃないですね」

いくら進んでも相変わらずノイズだらけで前が見えない。
だが昨日もこんな感じだったので慌てはしなかった。

「ふん、まぁノイズがあるかないかってだけですね・・・」

ある程度の道順は覚えている。
ひたすら前に進むと、徐々にノイズが止んできた。

「ほら、少し明るくなってきたですね・・・え?」

おかしい。
少なくとも昨日はただ何も無いだけだったはずなのに。

「・・・ノイズが消えてきたですね。ここは?」

翠星石はきょろきょろと辺りを見回した。

「公園?」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:30:33.81 ID:Vj+EPeWm0
そこにあったのは小奇麗な公園だった。
何処にもあるような、そんな公園。

「へぇ・・・いい場所ですね。じゃなくて!!!」

見とれてる場合じゃない。
あの少女を探さなければ、と翠星石は走り出す。
この夢の世界は常識が通用しない。
あの少女が無事なのかが保証出来ない。

「おーい、人間、何処に居やがるんですかぁーーー!!」

叫びながら少女を探す。
すると少し先に自動販売機と・・・

「きなこ練乳・・・しかない」

翠星石は一気に力が抜け、そのまま今までの怒りが爆発した。

「人がさんざん探してるのにジュース?何様ですか!!」

翠星石は、吠えた。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:43:47.24 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

「あなたは・・・誰でしょうか?」

「はぁ?人に名前を聞くときはまずは自分から、じゃないんですか?」

ちょっぴり意地悪っぽい笑顔で少女に質問で返してみる。
コレくらいの悪戯なら許してくれるはずだ。
少なくともいつも雛苺にやってる悪戯より幾分マシだ。

「申し訳ありませんでした。私の名前・・・」

そこで少女は動きを止める。

「私の名前・・・何でしたっけ?」

「翠星石が知る訳ないです・・・!」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:52:45.82 ID:Vj+EPeWm0
「そうでした、さっきから思い出せないのを忘れてました」

「・・・マイペースですね」

翠星石はあきれ返っていた。
必死の思いで探しだすた少女がこんな抜けている正確だなんて思いもしなかったから。

「・・・ちょいと待つです、記憶が無いのですか!?」

「・・・ハイ、恐らくそうなのだろうと思われます」

記憶がない?それはおかしい。
もしかして現実の世界でも記憶喪失なのか?

「いいですか、人間。これはおめーの夢の世界です」

「・・・夢ですか?」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:03:16.59 ID:Vj+EPeWm0
「そう、基本的には夢を夢と自覚しないもんです。特別に教えてやってるんだから感謝するですよ?」

「夢・・・ゆめ・・・不思議な響きです」

少女は呆けたように空をを見上げる。
まるで夢と言う単語を始めて聞いたのかのように不思議がっていた。

「私は・・・夢というものを見たことが無いような気がします」

「まさか!人間生きていれば夢は必ず見るのですよ。」

赤ん坊でも、老人でも、だれでも必ず夢を見る。
例外は・・・無いはずだ。
そこまで考えると、翠星石の脳裏にあのジュンの言葉が蘇る。

―夢をみたことが無い人、とか?

(まさか本当に・・・?)

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:16:39.32 ID:Vj+EPeWm0
「・・・私の名前は翠星石です」

「翠星石・・・ですか?」

「そう、不思議な名前ですか?」

少女は少し考えて、不思議な名前ですね。と答えた。

「ホントはおめーの名前も聞きたいのですが・・・思い出せないのなら仕方が無いです」

翠星石はちょっとだけ残念そうに、自動販売機に近づく。
・・・が、高さが合ってないので肝心の製品が見えなかった。

「ちょいと人間、商品が見えないから翠星石を抱えるです!」

「え!?・・・わかりました」

言われるがまま、少女は翠星石を抱いた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:55:37.13 ID:Vj+EPeWm0
「・・・これでいいですか?」

「ふむふむ、抱き方も合格です。何処ぞのチビ人間とは大違いですね」

「チビ人間・・・とは?」

「こちらの話です。えーと・・・」

翠星石が自動販売機の商品を見る。
しかしどう見ても1つの商品しか無い。

「・・・なんですかコレは。きなこ練乳?」

「どうやらそれしか無いようですね・・・」

「こんなの普通はないですよ!ああもう、なんて世界ですか・・・!」

「・・・これはおかしい事なんでしょうか?」

「凄くおかしいです!」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:08:23.92 ID:Vj+EPeWm0
「・・・聞きやがれです人間」

「何でしょうか?」

「夢の世界とは、現実の世界の影響を多少なり受けるものです。・・・必ず」

「?」

「翠星石は昨日もおめーの夢の世界に来たんですが、その時は真っ白な世界でした。で、今日はこんな世界。つまり・・・」

「・・・これは、私の記憶の断片、という事ですか!?」

「正解です。おそらくは、昨日の日中の記憶・・・おめーはここに昨日実際に来てるんです!」

現実の世界・・・
自分の記憶がないところで、色々と行動しているものなのか、と少女はちょっとだけ驚いた。

「ここまで喋ったんです。・・・何か思い出したですか?」

「現実・・・夢・・・私の記憶・・・」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:15:08.92 ID:Vj+EPeWm0
翠星石が問だすと、急に世界が揺らぎ始める。
公園そのものがノイズにのみ込まれる。

「!?に、人間・・・!!」

「私・・・私は・・・誰・・・!?」

世界が不安定になる。
翠星石も弾き飛ばされるような感覚に襲われる。
慣れない夢の世界でもこの感覚までは例外では無かった。

(ち・・・深い眠りから覚めるようですね)

「聞くです!私の名前は翠星石!!」

「すい・・・せいせき・・・」

「そうです!それだけしっかり覚えてるですよ!!」


―また来るです!!


そして、翠星石はノイズに飲み込まれ、少女の夢から弾き出された。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:25:17.68 ID:Vj+EPeWm0
「・・はっ・・・はっ・・・!」

目が覚めると、御坂妹は自分の額を拭う。
柄にも無く汗をかいていたようだった。

「・・・朝ですか」

御坂妹の体内時計は正確そのもの、1秒たりとも狂うことはない。
就寝時間もきっちり6時間と決めてある。

「しかし、今日はなんだか疲れてるような気が・・・とミサカはいつもと違う感覚に少々戸惑います」

きっかり6時間寝たにも関わらず、この疲労感はなんだろう、とはっきりしない頭を振る回転させようとする。
・・・すると、部屋にノックの音が響く。

「10032号、定期検診の時間よ」

「・・・了解しました、とミサカは頷きます」

とりあえず顔を洗おう、そう思い御坂妹は洗面台へと向かった。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:35:38.19 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

「よし、本日も特に問題は無しね」

「はい」

「あ、そうそう・・・あなたの実験の日付が決まったわよ・・・今日から6日後だそうよ」

「・・・了解しました」

長かった研修も終わりを見せる。
約1ヶ月、長いようで短かった。

「大分いろんなデータが取れたみたいだからねぇ・・・いい経験になったでしょう?」

「・・・はい、とミサカは少々残念そうに答えます」

「でも仕方が無いことだしね、それがあなたたち妹達の生まれた理由ですもの」

そんなことは分かってる。
自分はただの使い捨て人形。実験で殺されるためだけの・・・

「ま、実験までいろいろ学んできなさい」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:50:40.86 ID:Vj+EPeWm0
-----・・・

御坂妹はいつも通り常盤台の制服に着替え、研究所を出る。
今日も研修・・・さて、今日は何処に行こうか、と御坂妹は考える。

「・・・とりあえず、何か飲みたいですね、とミサカはカフェを探します」

よく考えたらカフェでコーヒーを飲んだことが無いと考えたので、近くにカフェが無いか探し出す。
・・・が、どうやら近所には無いみたいだった。

「仕方ありません・・・とミサカは当てもなく歩き出します」

とりあえず、コーヒーを飲もう。御坂妹はそう思った。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:58:57.91 ID:Vj+EPeWm0
「わぁ・・・美味しそうです~」

「そう?私今日はビターなコーヒーって感じかな?」

「私は苦いのはちょっと・・・」

ある中学生がカフェの席でお喋りをしている。
中学生なのにあんなブラックはキツイんじゃないのか?と店員は思ったが止めるようなこともせず、商品を手渡した。

「ういはる~ん、食べようよ!」

「はいはい。いっただっきま~す!」

初春と佐天。二人は休日ということもあって遊びに出かける約束をしていた。
幸いにもジャッジメントからの呼び出しは無いようで、ひとまず安心して遊びに出かけることが出来た。

「しっかし・・・白井さんは今日は用事があるんだってね。御坂さんも」

「用事は人それぞれ。仕方がないですって」

佐天がコーヒーを啜る。
良い香りが鼻腔を突き抜け、脳を活性化させていく。

「・・・ような気がする」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:06:07.40 ID:Vj+EPeWm0
「今日は何処に行こうか?」

「そうですね・・・あ!」

そういうと初春は自身のバッグからあるチラシを取り出す。
どうやらとあるケーキ屋のチラシのようだ。

「この駅前のケーキ屋さん、このクーポン持っていけば半額なんですよ!?」

「食べ物の事ばかりじゃん。お相撲さんになっちゃうよ?」

「む・・・良いじゃないですか。食べたいんです!」

「むくれないでも分かってるって。いいよ、後でそこに行こう?」

「うわぁ・・・佐天さん好きですぅ!!」

「私にそっちの気は・・・お?」

佐天の手が止まる。
初春も気がつき、佐天の目線の先を確認すると、何処かで見たような格好の人物が居た。
手にはドリンクとマフィンを持ち、キョロキョロと辺りを見回している。

「「御坂さんだ!」」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:12:21.36 ID:Vj+EPeWm0
「席が空いてないですね・・・とミサカは己の席を確保するために周囲に気を配ります」

折角買ったコーヒーにマフィン。冷めてしまっては勿体無いと席を探す。
・・・が、休日と言うこともあって満席状態。座る場所なんか何処にも見当たらない。

(最悪、相席で座るしか無いですね、とミサカは不安の色を隠せないでいます)

そして、ある一箇所が目に入る。
二人の女子中学生が・・・手招きをしていた。

御坂妹はきょとんとしていた。
何故、見ず知らずの私を招いているのだろう、考える。

「・・・お姉様の知り合いでしょうか?」

御坂妹は、手招きされるがままにその席に向かった。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:20:20.59 ID:Vj+EPeWm0
「御坂さん、今日は用事じゃなかったんですか?」

「私は白井さんとてっきり・・・デートかなぁ!?な~んて・・・」

「申し訳ありませんが、ミサカはあなた方とは初対面だと思われます」

「・・・初対面?」

「わ、私ですよ!初春飾利です!」

思わず初春が叫ぶ。
少しだけ周囲の人がこちらに注目した。

「店内ではお静かに・・・とミサカは店員のモノマネで場を落ち着かせようとします」

「は、はぁ・・・??」

「おそらくあなた方が仰る御坂さんとは、お姉様である御坂美琴のことを言ってるのではないですか?とミサカは妥当な推理を展開します」

「「・・・妹さんですか!?」」

はい、と御坂妹は小さく頷いた。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:32:15.87 ID:Vj+EPeWm0
「・・・お、お名前は?」

「ミサカです」

「いや、だから下の・・・」

「ミサカの名前はミサカです。とミサカはミサカであることを強調します」

(・・・何だか変な子だなぁ)

いつもの活発な美琴と違い、少し冷静で喋り方が独特な御坂妹に佐天は違和感を覚える。
見た目がそっくりなので余計に混乱を招いてしまう。

「じゃ、じゃあ妹さんって呼べばいいんですね?」

「それでも構いません、とミサカはその名前で呼ばれることを了承します」

「じゃあ妹さん、一緒に食べようよ。席空いてないんでしょ?」

「いいのですか?」

「御坂さんの妹さんですから悪い人ではないですよ。ね?」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:39:48.51 ID:Vj+EPeWm0
>>88
あれ、そんな描写あったっけ?恥ずかしいぜ・・・

-----・・・

「う~ん・・・」

翠星石は唸る。
昨日と同じようにまた悩んでいる。

(昨日の今日であんなに夢の世界がコロッと変わる・・・不思議なもんです)

この二日で自分ではよく分からないことを連続で体験している。
真っ白な夢が次の日は公園?

(・・・恐らく、あの人間の夢の世界で形として現れているのはあの公園だけだったみたいですね。何があったんでしょうか?)

現実の世界であの少女がどんな生活を送っているのか、そこが分からないと話が綺麗に纏まらない。
少し考えて、すぐ煮詰まり・・・の繰り返しだ。

「翠星石、また考え事なの?」

見かねたのか、雛苺が翠星石に話しかける。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:47:16.99 ID:Vj+EPeWm0
「・・・翠星石はそんなに考え事をしてるように見えるですか?」

「うん・・・あ、あのね!考えすぎは体に毒なのよ・・・のりが言ってたの・・・」

なんて事だ。
雛苺とのりにまで悟られていたとは思いもしなかった。
そんなに顔に出やすかったっけ・・・と翠星石は首を傾げる。

「・・・大したことじゃないです。チビには分かんないでしょうけどねぇ~?」

「む、心配してるのにヒドイのー!」

「・・・ふふ、チビチビもなかなか言うじゃないですか」

「うゆ?」

翠星石はソファーから立ち上がり、そのままチャンネルを変えようとする。
どこからとも無く、くんくんの再放送が始まるから変えないで頂戴!と怒られ、むくれながら再びソファーに座り込んだ。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:01:36.06 ID:/h5HBjD60
-----・・・

「・・・美味しいです、とミサカは素直に、かつ最小限の言葉で感想を述べます」

「あ、妹さんのモンブラン美味しそう!」

「佐天涼子、あなたも一口いかがですか?とミサカはさりげない優しさを演出します」

「わーい、いっただきます~よ~」

「え!?私も食べたいです!佐天さんずるい・・・」

あの後、御坂妹の予定がないと知るやいなや、佐天と初春は御坂妹に遊ぼうと持ちかけた。
断る理由もなく、御坂妹はそのまま二人に同行したのだが・・・

(・・・研修が始まって、このように誰かと遊びにいくなんて初めてです、とミサカは戸惑いを隠せません)

今まで味わったことの無いこの感覚に少し混乱していた。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:07:09.82 ID:/h5HBjD60
「そういや妹さんって何歳?常盤台の制服を着てるんだから・・・私たちと同学年?」

「私とお姉様は双子です、とミサカは衝撃の新事実を発表します」

「双子・・・えっ、年上なんですかぁ!?」

思わず初春が手で口を隠す。
佐天もすこしばかり動揺する。

「あ・・・年上なのに、タメ口聞いちゃってた。ごめん・・・・すみませんでした!」

「ミサカは気にしません、お好きなようにお話下さい、とミサカは己の寛大さに惚れ惚れします」

「・・・え?タメ口聞いてもいいんですか?」

「だからお好きなように」

「・・・ふぅ、じゃあやっぱタメ口でお願いします妹さん!」

「双子ですか・・・あれ?常盤台に通ってるんですか?」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:24:33.79 ID:/h5HBjD60
「・・・実は学園都市の外から遊びに来ているのです、とミサカは秘密の話を暴露しちゃいます」

「へぇ~、どうりで妹さんの話は聞かないわけだ」

「私も初耳です・・・」

「この制服もお姉様の寮でこっそり拝借させてもらったものです。ナイショですよ?」

これでいい。
とりあえずは言い訳もできるし、この二人は黙っていてくれるだろう、と御坂妹は考える。

「あ!妹さん、お返しに私のチーズケーキあげる!」

「・・・いいのですか?」

「ほれ、あーん」

「・・・あーん、とミサカは・・・むぐっ!?」

「やかましい」

佐天は無理やり御坂妹の口にチーズケーキをねじ込む。
初春もその光景を見てニコニコしていた。

「・・・美味しいですね」

「でしょ~?」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:26:49.58 ID:/h5HBjD60
明日仕事なんでここまで。
まぁ原作のパラレルワールドとか考えて読んだらおkです。
残ってたら続き書きます。恐らく残業ないので・・・

ひとまず乙でした!

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