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ご都合主義的褐色ショタ
175 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:34:11.63 ID:8x6EsyIo [1/11]
だれもいない時間帯にこっそりと。9レスほどお借り。
あわきん×エツァリを目指したつもりが、あわきん→エツァリになっていたお話。
だれもいない時間帯にこっそりと。9レスほどお借り。
あわきん×エツァリを目指したつもりが、あわきん→エツァリになっていたお話。
176 名前:ご都合主義的褐色ショタ 1/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:35:26.32 ID:8x6EsyIo [2/11]
グループの休憩所。
そのなかでも比較的小さな、ひっそりとした隠れ家のような場所で、結標淡希はひとりソファーに腰掛けていた。
いつもは小学生にしか見えない年齢不詳の教師の家に住まわせてもらっている結標。
今日はグループの仕事があるためこうしているのだが、
(……ほんっとに……遅いわね)
待てども、待てども。待ち人は来ず。
午前1時と足す5分。もう規定の時刻から2時間はかるーく経過しているだろう。
時間にルーズなのはどうでもいい、たとえ来なくとも良いだろう。
内容を聞く限りでは、そう難しい案件ではなかったはずだ。
だが、指名されたのはあくまでも2人。
打ち合わせをせずに、即興でコンビネーションが出来るほどお互いに人間は出来てない。
実行時の安全を考えると、待って簡単な確認程度でも行うべき。
だから、待たないという選択肢はなかったのである。
「……あぁ!! もう!」
ソファーから立ち上がり、近くに置かれた冷蔵庫の扉を開ける。
苛立って熱くなった心を冷やすよう、取り出したペットボトルの緑茶に口を着けた。
ちょうどそのとき、
ギィ。
鉄の扉が音を立て、開いた。
ようやく来たのかこのやろう。
結標は、とりあえずコレを飲んでから事情を聞いてやろう。ついでにそのあとぶん殴ろう。
そう心に決めて、ペットボトルを傾け、あぁなんかこのお茶ちょっと渋すぎねなんて思いながら横目でチラリと侵入者を見ておもいっきり吹き出した。
177 名前:ご都合主義的褐色ショタ 2/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:36:13.85 ID:8x6EsyIo [3/11]
「ガ、ゲホッ……な、え? あ、う、な、誰?」
口から垂れた液体を服の袖で拭いつつも、結標は『彼』から目を離さない。
身長は、120cmか130cmくらいだろう。細身で、たぶん小学生3年生くらい。
絶対に身長に見合っていない丈の服をダボ付かせて、足元など、何回程折り返しているのだろうか?
理性的な顔つきで、浅黒い肌に、男の子にしては少し長い黒髪のクセッ毛。
そんな、きっと日本人ではないどこかの少年。
当然、結標に見覚えはなかった。
「えと、ん、んん、ほんとに、どうしたの?」
少しずつ、混乱から立ち直り、扉を閉めて中に入ってしまった少年に、やさしく問いかける。
だって、ここはほとんど廃墟になったビルの一室。この年の小学生が来るような場所ではない。
人より(ほんのちょっと、ほんとにほんのちょっとだけ)少年という生き物が好きな結標としては、本心からの心配の言葉。
なんだかこの子、可愛いし。
なぜか口から垂れてきたお茶ではない液体をもう一度袖でぬぐって、ペットボトルを冷蔵庫の上へ置く。
結標は少年に近づき膝を曲げ目線を合わせた。
「どうやって、ここへ来たの? ……ん、それはまぁ、イイんだけど、帰りたい? ひとりで帰れるかしら?」
グループの面々絶対見せられない様な表情と、聞かれてはならない話し方。
そんな優しい問いに、少年はぼそぼそ、ごにょごにょと呟くように言った。
その音は結標の耳に届いたが、届いた内容は『ぼそぼそ、ごにょごにょ』。
結局、言葉は何も伝わらなかった。
「えっと、ごめんなさい。ちょっと聞き取れなかったわ。もう一回おねがい」
結標がそういって近づくと、少年は小さくブルリ。
ああ、緊張して怖がっているのね、と結標は解釈して、少年が話しだすのを待つ。
ややあって、どうにかなんとか頑張ってます。そんな雰囲気全開で、少年は先程よりも少し大きく、はっきりした声で、
「……僕です、海原光貴です」
結標の、開いてもない口が開いてしまって塞がらなかった。
178 名前:ご都合主義的褐色ショタ 3/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:37:06.45 ID:8x6EsyIo [4/11]
1、2、3、4、5。
たっぷりじっくり5秒かけて、結標はようやく再起動。
「ぇぇぇぇえええええええええええええええ!?」
ずざざざざっ!! 地面に着いたお尻が汚れるのも気にせず音を立てながら激しく後退。
だって、この反応は仕方ないだろう。えっと? うん? あんだって?
「なんで、え? そんなことになってんのよ!!」
言いながら、そういえばなんか海原には他人へ変装というか、もはや変態する力があったことを想起した。
理屈はよくわからないが、対象の皮膚を10cmほど切り取ったら良いらしい。
初めて聞いたとき、なんとなく自分のトラウマが、こう、その、おぅぇえ。となったものだ。
……ん? いや、ということは?
今度は後退した距離を戻すように四つん這いでおもいっきり前進して、
「ちょ、え? なに!? あなたそんな小さい子の皮膚剥ぎとったっていうの!? なによそれ!! そんな小さな子が痛みを背負うべき責任なんてどこにあるっていうの!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください。ひとりで勝手にエキサイトされても僕は対応できませんからっ」
少年もとい海原光貴に両手で制されて、むぅ、と押し黙る。
たとえ、それが海原であっても、かわいらしい少年に結標は弱かった。
「とりあえず、ソファーもある事ですし、あそこに座りましょう。話すのに、落ち着いた場が欲しいです」
そう言って、海原少年がソファーへと歩き出す。
結標は無意識に、そのおしりを追いかけるように四つん這いで着いて行ったが、海原に「なにやってるんですか?」と突っ込まれ、ハッと立ち上がった。
179 名前:ご都合主義的褐色ショタ 4/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:38:55.07 ID:8x6EsyIo [5/11]
「はい、こんなのしかなかったけどとりあえずどうぞ」
「いえ、あぁどうも。喉が乾いていたので助かります」
にっこりどきゅんな破壊力。
そんななんでもないやりとりをしてから、結標はL字のソファーで海原が座っているところと対象になるような場所に腰を下ろした。
「で、どうしてそんなことになっているのか説明を頂戴」
深すぎるソファーの端に座ってもまだ足が届かないくらいの背丈で、プラプラした足が、ああちくしょうかわええなぁ。
そんなことを思いつつ、でもどうにか顔には出さずに結標は聞いた。
海原は、ひとまず喉を潤そうと、受け取ったペットボトルが飲みかけなのをいぶかしみながらも口を付けた。
子供の味覚に渋めのお茶は合わなかったのか、眉間に浅いシワを作りながらもゴクリと飲みこんで話し始める。
「ええと、ですね、ここに来る前に少し彼らと会ってたんです」
「土御門と一方通行?」
「ええ」
言いながら、海原は口に合わないお茶の蓋をキュッと締め、苦く笑って「飲みます?」。
「ひゅえ?」
「はぁ?」
予想外、というか期待外、つまりは期待以上の申し出に驚いた結標の口からはいかんとも妙な言葉が飛び出てたらしい。
不思議がる海原をごまかしつつ、受け取ったペットボトルに口を付けようとして、
(あっはぁ……褐色系美ショタと間接キスなんて……って、いやいや! あれば海原!! 海原光貴……だけどぉ、かわいいわよねぇ……)
しばしの逡巡の後、心を決めた結標はペットボトルの口をくわえ込み一気にお茶を煽った。
「っ、ぷはぁ!!」
唇のペットボトルの口に接触した辺りを舌でれろっと舐めとっててから、結標は座標移動でペットボトルを直接ごみ箱に叩き込み、炸裂したテンションで、
「よっしゃあ! お姉さんに何でも話しなさい!!」
海原は、なんとなく背筋に寒いものを感じたような気がした。
180 名前:ご都合主義的褐色ショタ 5/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:41:41.01 ID:8x6EsyIo [6/11]
――――――
――――
――
『一方通行が三次世界対戦で魔術的な何かの力を得た』
↓
『土御門にいっしょに調べて欲しいと呼ばれる』
↓
『原典とソレが共鳴したのか一方通行の能力が一部暴走』
↓
『変身術式壊れた+ちっちゃくなっちゃった』
「と、まぁそういうワケでして」
「うぅん…………わかったような、わからないような」
海原の話をじっくり聞いても、魔術的なことに対する経験値の低い結標は全てを理解できるわけでなかった。
なので途中からは、ほとんどボディランゲージを加えながら話すショタっ子にひたすた萌えていただけだ。
しかしまあ、とりあえず一方通行がどうにかなったのだということだけは理解。
「でも、なんであなたがここに来たのよ? 御世辞にも治安が良いとは言えないような場所よ、ここ」
これだけ可愛かったら襲われないなんてことないだろうなぁ。なんて考える結標の頭の中、世界はショタコンに満ちていた。
「ああ、まぁくさっても暗部の人間ですから。裏路地にいるやから相手にどうこうされませんよ」
「ふぅん……で、あいつらは? まさか遊んでるわけじゃないでしょう?」
「土御門さんはこの件に関して上層部の方と掛けあっています。小さくなった旨は伏せて、『海原が使えない場合どうするのか』まぁ、そんな感じで」
結標は、ん、と相槌を打った。
「一方通行さんは今回の現象を解析していますね。まぁ、解析できないことはないとおっしゃってたので、今回はそれを信じるしかないでしょう」
「んぅ……なるほどね。じゃあ結局私たちは待ちしかないの?」
そうみたいですね、と海原が口を動かそうとしたとき、プルルルルッと、おそらくデフォルトのままであろう着信音が鳴った。
「お、っと……、土御門さんですね。上層部から返答があったんでしょう」
181 名前:ご都合主義的褐色ショタ 6/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:43:32.05 ID:8x6EsyIo [7/11]
『海原か?』
「はい、海原です。それで、上層部はなんと?」
『ああ、上層部からは、問題なく任務が遂行できるのなら編成はこちらに任せるそうだ』
「では?」
『今回は俺と一方通行で行かせてもらおう。魔術師の視点からもアイツの能力を調べたい。まあ結標の座標移動があれば楽なのは確かだが、無ければ不可能な案件というわけではないからな』
その言葉を少しだけ頭の中で考えて、まあ一番妥当だろうと海原はうなづいた。
「ええ、わかりました」
海原の中では聞くべきは今回の依頼に関することだけだったので、土御門の返答を待って電話を切ろうとすると、
『ああ、それとオマエのことだがな』
「はい?」
いったいなんだろうか、ああ、この体型で行動できるような服を支給してもらえるのか?
そう、『軽く』考えていた海原だったが、
『しばらく結標と一緒にそこ住んどけ』
え? と、海原が予想外の言葉に呆けていると、
『オマエの素の容姿はいくらなんでも学園都市で目立ちすぎるからな、かといって変身術式を組み直すのは手間だろ。だからしばらくはそこから出歩かないようにしてろ』
「え、だって、そ」
『結標はどうせ了承するだろう。一応こちらからもメールを送らせてもらった。……まぁよーするに出歩かなきゃナニナニしちゃってもいいんだにゃー!! んじゃ! グッドラックだぜい!』
プツッ。プープー。
何も言わせず一方的に電話を切った土御門。ああ、電話の向こうで
海原は柄にもなく舌打ち一つ。
ちくしょうアイツこの状況楽しんでやがる。
182 名前:ご都合主義的褐色ショタ 7/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:44:03.80 ID:8x6EsyIo [8/11]
「……終わった?」
ストレート型の仕事用携帯をダボついたズボンのポケットにしまうと、結標が問いかけてきた。
「……ええ、まぁ、はい。終わりましたよ。いろいろと」
「? いろいろって何よ」
妙な様子の海原に、具体的に何があったのか問おうとすると、今度は結標の携帯が音を鳴らした。
「っと」
最近流行ってる女性アーティストの音楽を中断し、明かりの灯った携帯の画面を操作。
そんな結標を見て、海原は力のこもらない声で、
「それが、『いろいろ』ですよ、いろいろ」
海原の言ってる意味がわからない結標は、とりあえず、映しだされた文面を読む。
差出人は、『土御門元春』。内容は、
『明日の依頼は俺と一方通行に変更。お前はしばらくそこで縮んでる海原の世話をしてやれ。
あの容姿だと何かと目立つからな、名目上学園都市にいない人間だ。人目に付くのは避けたい。
PS:ぞんぶんにたのしむといいにゃー』
「な、は、にゃぁぁぁぁあああああ!?」
「ね? 終わったでしょう? いろいろと。くやしいのが筋は通ってるところですよ。グループの『中』で起こった、外に漏らしてはならないことですから、内々に処理するのが筋ってものです」
あはは、と乾いた笑いを上げて、海原少年は大きくバンザイ。お手上げである。
男として、大事な大事な諸々の尊厳が奪われつつあるという、しかし、逃れることは出来ない。回りこまれてしまったのだ。
「ほんっと……『ありえない』わよね、こんなの……」
しかし、そんなあきらめを通り越して一種の悟りに入った海原とは『対照的』に。
「ぅ、ふふ」
結標の頬は、緩むのであった。
183 名前:ご都合主義的褐色ショタ 8/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:45:21.12 ID:8x6EsyIo [9/11]
「えっと、どうかしました?」
そんな様子を不気味に思って、褐色の少年は結標に問いかける。
「ぇ? ああいやいや、なんでもないわ。うん、ほんとに迷惑ね。ほんと、うんほんと」
うんうんと、自分に自分でうなづいて、納得。ほんと迷惑。うん……ほんとだよ?
誰への言い訳か分からないことを心で呟いて、どうにか顔のニヤケを抑えてみる。
「ですよね……しかし、これからどうしましょう。とりあえずここで暮らすのなら、最低限の『モノ』を揃えなければ」
海原は殺風景な、良くいえばこざっぱりとした部屋を見渡した。
一応、キッチンや風呂、トイレなど、最低限の『施設』は揃っているらしい。
しかし、ベッドは小さな、1人用のものが1つだけ。
もちろんトイレットペーパー等の消耗品の数は多くないし、海原の服だっていま来ている『大人用』のものだけで、モノが全然足りなかった。
「そうだけど……今の時間に日用品やベットやらを買い出せるなんてないわよ」
学園都市とはその名の通り、学生のための街と言っても良い。
そんな街で、深夜まで空いてる店などそうはないのだ。
「たしかに、困りましたね……」
うーん、と右手を顎に当てて悩む海原。たぶん、服とか、風呂とか、ベッドとか諸々の事に頭を悩ませているのだろう。
しかし、深夜褐色ショタと二人きりでベットが一つ。このシチュエーションで、人よりほんっっっの少し男の子好きな女は、ちょおっと、我慢ならなかった。
「でも、でも。今はどうすることも出来ないし、もう寝ましょう?」
「……ん、まぁそうするしかないのでしょうか……」
「ええ、そうよ、そう」
そう言って、結標は海原の手を取り、ベッドへとテクテク。
ここで行ってはならぬと、海原の頭が警鐘を鳴らした。
「あ、な? ちょっと待ってください!! なんで一緒にベッドへ!?」
「そんなの決まってるじゃない。寝るためよ!」
「いいですよ! 僕はソファーでも貸していただければ勝手に寝ますから!」
184 名前:ご都合主義的褐色ショタ 9/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:46:20.20 ID:8x6EsyIo [10/11]
海原のその、必至に抵抗する言葉は、結標の何かのスイッチを押してしまったらしい。
結標は振り返って、海原の両肩に手を乗せ、
「そんなこと許さないわ!!」
意味のわからない急な激昂に、海原の小さな体は、ビクっと、大きく震えた。
至極当然なその反応も、『また』、結標の別の部分に触れたのだろう。
「あ……、あぁごめんなさい。大丈夫、怒ってないからね」
我に返った、というよりも、さらにトリップした結標は、肩から手を離し海原の顔をぎゅぅっとその自慢の胸に押し付けた。
「んむぅっ。ん!? ん、んー!!」
あなたの言葉は全部私が胸で受け止めてあげる。
結標はそんな事を考えつつ。ただ、それが精神的な意味でなく、物理的な意味になっていることまで考えが至らない。
「夜ってね、冷えるの。あなたが病気にかかるのは嫌なのよ」
すっかり、お姉さん気分な結標は、もう止まらなかった。
「それじゃあ、行きましょうね」
海原少年をヒョイっと抱き上げて移動。
体格的に劣る海原の抵抗の効果の程は虚しく、そのままスムーズにベットインした。
流石に胸に顔が当たるのでは苦しいだろう。そんな根本的なところでズレている気遣いを受けて、海原は結標のおっぱいを後頭部から背中に感じながら眠ることを強制された。
「おやすみなさい、また明日ね」
そうして結標は海原のクセッ毛を抑えつけるように何度か頭を撫でた。
その折、ときおり頭の後ろから聞こえる、じゅるとか、うふふとかそういう『音』を気にしないよう、海原はかたーく目を閉じる。
(一方通行さん……お願いします。お願いしますからから……早く僕を助けて下さい)
切なる願いが届くのはいつになるのか、検討もつかぬ今は、ただひたすらに、祈り続けた。祈り続けるしか、できなかった。
――――――
――――
――
185 名前:ご都合主義的褐色ショタ end[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:49:30.46 ID:8x6EsyIo [11/11]
終われ。っつーことで終わりです。
総合スレは初めてだから妙に緊張。人が少ない時間を選んだのは正解かも。
短編で綺麗に纏めたかったのに、なぜか長編のプロローグ見たいな感じになってしまった。
だから長編のプロローグみたいな短編ということで、この物語は続きません。
エロいの書けない自分に絶望しつつ、それでは。
グループの休憩所。
そのなかでも比較的小さな、ひっそりとした隠れ家のような場所で、結標淡希はひとりソファーに腰掛けていた。
いつもは小学生にしか見えない年齢不詳の教師の家に住まわせてもらっている結標。
今日はグループの仕事があるためこうしているのだが、
(……ほんっとに……遅いわね)
待てども、待てども。待ち人は来ず。
午前1時と足す5分。もう規定の時刻から2時間はかるーく経過しているだろう。
時間にルーズなのはどうでもいい、たとえ来なくとも良いだろう。
内容を聞く限りでは、そう難しい案件ではなかったはずだ。
だが、指名されたのはあくまでも2人。
打ち合わせをせずに、即興でコンビネーションが出来るほどお互いに人間は出来てない。
実行時の安全を考えると、待って簡単な確認程度でも行うべき。
だから、待たないという選択肢はなかったのである。
「……あぁ!! もう!」
ソファーから立ち上がり、近くに置かれた冷蔵庫の扉を開ける。
苛立って熱くなった心を冷やすよう、取り出したペットボトルの緑茶に口を着けた。
ちょうどそのとき、
ギィ。
鉄の扉が音を立て、開いた。
ようやく来たのかこのやろう。
結標は、とりあえずコレを飲んでから事情を聞いてやろう。ついでにそのあとぶん殴ろう。
そう心に決めて、ペットボトルを傾け、あぁなんかこのお茶ちょっと渋すぎねなんて思いながら横目でチラリと侵入者を見ておもいっきり吹き出した。
177 名前:ご都合主義的褐色ショタ 2/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:36:13.85 ID:8x6EsyIo [3/11]
「ガ、ゲホッ……な、え? あ、う、な、誰?」
口から垂れた液体を服の袖で拭いつつも、結標は『彼』から目を離さない。
身長は、120cmか130cmくらいだろう。細身で、たぶん小学生3年生くらい。
絶対に身長に見合っていない丈の服をダボ付かせて、足元など、何回程折り返しているのだろうか?
理性的な顔つきで、浅黒い肌に、男の子にしては少し長い黒髪のクセッ毛。
そんな、きっと日本人ではないどこかの少年。
当然、結標に見覚えはなかった。
「えと、ん、んん、ほんとに、どうしたの?」
少しずつ、混乱から立ち直り、扉を閉めて中に入ってしまった少年に、やさしく問いかける。
だって、ここはほとんど廃墟になったビルの一室。この年の小学生が来るような場所ではない。
人より(ほんのちょっと、ほんとにほんのちょっとだけ)少年という生き物が好きな結標としては、本心からの心配の言葉。
なんだかこの子、可愛いし。
なぜか口から垂れてきたお茶ではない液体をもう一度袖でぬぐって、ペットボトルを冷蔵庫の上へ置く。
結標は少年に近づき膝を曲げ目線を合わせた。
「どうやって、ここへ来たの? ……ん、それはまぁ、イイんだけど、帰りたい? ひとりで帰れるかしら?」
グループの面々絶対見せられない様な表情と、聞かれてはならない話し方。
そんな優しい問いに、少年はぼそぼそ、ごにょごにょと呟くように言った。
その音は結標の耳に届いたが、届いた内容は『ぼそぼそ、ごにょごにょ』。
結局、言葉は何も伝わらなかった。
「えっと、ごめんなさい。ちょっと聞き取れなかったわ。もう一回おねがい」
結標がそういって近づくと、少年は小さくブルリ。
ああ、緊張して怖がっているのね、と結標は解釈して、少年が話しだすのを待つ。
ややあって、どうにかなんとか頑張ってます。そんな雰囲気全開で、少年は先程よりも少し大きく、はっきりした声で、
「……僕です、海原光貴です」
結標の、開いてもない口が開いてしまって塞がらなかった。
178 名前:ご都合主義的褐色ショタ 3/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:37:06.45 ID:8x6EsyIo [4/11]
1、2、3、4、5。
たっぷりじっくり5秒かけて、結標はようやく再起動。
「ぇぇぇぇえええええええええええええええ!?」
ずざざざざっ!! 地面に着いたお尻が汚れるのも気にせず音を立てながら激しく後退。
だって、この反応は仕方ないだろう。えっと? うん? あんだって?
「なんで、え? そんなことになってんのよ!!」
言いながら、そういえばなんか海原には他人へ変装というか、もはや変態する力があったことを想起した。
理屈はよくわからないが、対象の皮膚を10cmほど切り取ったら良いらしい。
初めて聞いたとき、なんとなく自分のトラウマが、こう、その、おぅぇえ。となったものだ。
……ん? いや、ということは?
今度は後退した距離を戻すように四つん這いでおもいっきり前進して、
「ちょ、え? なに!? あなたそんな小さい子の皮膚剥ぎとったっていうの!? なによそれ!! そんな小さな子が痛みを背負うべき責任なんてどこにあるっていうの!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください。ひとりで勝手にエキサイトされても僕は対応できませんからっ」
少年もとい海原光貴に両手で制されて、むぅ、と押し黙る。
たとえ、それが海原であっても、かわいらしい少年に結標は弱かった。
「とりあえず、ソファーもある事ですし、あそこに座りましょう。話すのに、落ち着いた場が欲しいです」
そう言って、海原少年がソファーへと歩き出す。
結標は無意識に、そのおしりを追いかけるように四つん這いで着いて行ったが、海原に「なにやってるんですか?」と突っ込まれ、ハッと立ち上がった。
179 名前:ご都合主義的褐色ショタ 4/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:38:55.07 ID:8x6EsyIo [5/11]
「はい、こんなのしかなかったけどとりあえずどうぞ」
「いえ、あぁどうも。喉が乾いていたので助かります」
にっこりどきゅんな破壊力。
そんななんでもないやりとりをしてから、結標はL字のソファーで海原が座っているところと対象になるような場所に腰を下ろした。
「で、どうしてそんなことになっているのか説明を頂戴」
深すぎるソファーの端に座ってもまだ足が届かないくらいの背丈で、プラプラした足が、ああちくしょうかわええなぁ。
そんなことを思いつつ、でもどうにか顔には出さずに結標は聞いた。
海原は、ひとまず喉を潤そうと、受け取ったペットボトルが飲みかけなのをいぶかしみながらも口を付けた。
子供の味覚に渋めのお茶は合わなかったのか、眉間に浅いシワを作りながらもゴクリと飲みこんで話し始める。
「ええと、ですね、ここに来る前に少し彼らと会ってたんです」
「土御門と一方通行?」
「ええ」
言いながら、海原は口に合わないお茶の蓋をキュッと締め、苦く笑って「飲みます?」。
「ひゅえ?」
「はぁ?」
予想外、というか期待外、つまりは期待以上の申し出に驚いた結標の口からはいかんとも妙な言葉が飛び出てたらしい。
不思議がる海原をごまかしつつ、受け取ったペットボトルに口を付けようとして、
(あっはぁ……褐色系美ショタと間接キスなんて……って、いやいや! あれば海原!! 海原光貴……だけどぉ、かわいいわよねぇ……)
しばしの逡巡の後、心を決めた結標はペットボトルの口をくわえ込み一気にお茶を煽った。
「っ、ぷはぁ!!」
唇のペットボトルの口に接触した辺りを舌でれろっと舐めとっててから、結標は座標移動でペットボトルを直接ごみ箱に叩き込み、炸裂したテンションで、
「よっしゃあ! お姉さんに何でも話しなさい!!」
海原は、なんとなく背筋に寒いものを感じたような気がした。
180 名前:ご都合主義的褐色ショタ 5/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:41:41.01 ID:8x6EsyIo [6/11]
――――――
――――
――
『一方通行が三次世界対戦で魔術的な何かの力を得た』
↓
『土御門にいっしょに調べて欲しいと呼ばれる』
↓
『原典とソレが共鳴したのか一方通行の能力が一部暴走』
↓
『変身術式壊れた+ちっちゃくなっちゃった』
「と、まぁそういうワケでして」
「うぅん…………わかったような、わからないような」
海原の話をじっくり聞いても、魔術的なことに対する経験値の低い結標は全てを理解できるわけでなかった。
なので途中からは、ほとんどボディランゲージを加えながら話すショタっ子にひたすた萌えていただけだ。
しかしまあ、とりあえず一方通行がどうにかなったのだということだけは理解。
「でも、なんであなたがここに来たのよ? 御世辞にも治安が良いとは言えないような場所よ、ここ」
これだけ可愛かったら襲われないなんてことないだろうなぁ。なんて考える結標の頭の中、世界はショタコンに満ちていた。
「ああ、まぁくさっても暗部の人間ですから。裏路地にいるやから相手にどうこうされませんよ」
「ふぅん……で、あいつらは? まさか遊んでるわけじゃないでしょう?」
「土御門さんはこの件に関して上層部の方と掛けあっています。小さくなった旨は伏せて、『海原が使えない場合どうするのか』まぁ、そんな感じで」
結標は、ん、と相槌を打った。
「一方通行さんは今回の現象を解析していますね。まぁ、解析できないことはないとおっしゃってたので、今回はそれを信じるしかないでしょう」
「んぅ……なるほどね。じゃあ結局私たちは待ちしかないの?」
そうみたいですね、と海原が口を動かそうとしたとき、プルルルルッと、おそらくデフォルトのままであろう着信音が鳴った。
「お、っと……、土御門さんですね。上層部から返答があったんでしょう」
181 名前:ご都合主義的褐色ショタ 6/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:43:32.05 ID:8x6EsyIo [7/11]
『海原か?』
「はい、海原です。それで、上層部はなんと?」
『ああ、上層部からは、問題なく任務が遂行できるのなら編成はこちらに任せるそうだ』
「では?」
『今回は俺と一方通行で行かせてもらおう。魔術師の視点からもアイツの能力を調べたい。まあ結標の座標移動があれば楽なのは確かだが、無ければ不可能な案件というわけではないからな』
その言葉を少しだけ頭の中で考えて、まあ一番妥当だろうと海原はうなづいた。
「ええ、わかりました」
海原の中では聞くべきは今回の依頼に関することだけだったので、土御門の返答を待って電話を切ろうとすると、
『ああ、それとオマエのことだがな』
「はい?」
いったいなんだろうか、ああ、この体型で行動できるような服を支給してもらえるのか?
そう、『軽く』考えていた海原だったが、
『しばらく結標と一緒にそこ住んどけ』
え? と、海原が予想外の言葉に呆けていると、
『オマエの素の容姿はいくらなんでも学園都市で目立ちすぎるからな、かといって変身術式を組み直すのは手間だろ。だからしばらくはそこから出歩かないようにしてろ』
「え、だって、そ」
『結標はどうせ了承するだろう。一応こちらからもメールを送らせてもらった。……まぁよーするに出歩かなきゃナニナニしちゃってもいいんだにゃー!! んじゃ! グッドラックだぜい!』
プツッ。プープー。
何も言わせず一方的に電話を切った土御門。ああ、電話の向こうで
海原は柄にもなく舌打ち一つ。
ちくしょうアイツこの状況楽しんでやがる。
182 名前:ご都合主義的褐色ショタ 7/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:44:03.80 ID:8x6EsyIo [8/11]
「……終わった?」
ストレート型の仕事用携帯をダボついたズボンのポケットにしまうと、結標が問いかけてきた。
「……ええ、まぁ、はい。終わりましたよ。いろいろと」
「? いろいろって何よ」
妙な様子の海原に、具体的に何があったのか問おうとすると、今度は結標の携帯が音を鳴らした。
「っと」
最近流行ってる女性アーティストの音楽を中断し、明かりの灯った携帯の画面を操作。
そんな結標を見て、海原は力のこもらない声で、
「それが、『いろいろ』ですよ、いろいろ」
海原の言ってる意味がわからない結標は、とりあえず、映しだされた文面を読む。
差出人は、『土御門元春』。内容は、
『明日の依頼は俺と一方通行に変更。お前はしばらくそこで縮んでる海原の世話をしてやれ。
あの容姿だと何かと目立つからな、名目上学園都市にいない人間だ。人目に付くのは避けたい。
PS:ぞんぶんにたのしむといいにゃー』
「な、は、にゃぁぁぁぁあああああ!?」
「ね? 終わったでしょう? いろいろと。くやしいのが筋は通ってるところですよ。グループの『中』で起こった、外に漏らしてはならないことですから、内々に処理するのが筋ってものです」
あはは、と乾いた笑いを上げて、海原少年は大きくバンザイ。お手上げである。
男として、大事な大事な諸々の尊厳が奪われつつあるという、しかし、逃れることは出来ない。回りこまれてしまったのだ。
「ほんっと……『ありえない』わよね、こんなの……」
しかし、そんなあきらめを通り越して一種の悟りに入った海原とは『対照的』に。
「ぅ、ふふ」
結標の頬は、緩むのであった。
183 名前:ご都合主義的褐色ショタ 8/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:45:21.12 ID:8x6EsyIo [9/11]
「えっと、どうかしました?」
そんな様子を不気味に思って、褐色の少年は結標に問いかける。
「ぇ? ああいやいや、なんでもないわ。うん、ほんとに迷惑ね。ほんと、うんほんと」
うんうんと、自分に自分でうなづいて、納得。ほんと迷惑。うん……ほんとだよ?
誰への言い訳か分からないことを心で呟いて、どうにか顔のニヤケを抑えてみる。
「ですよね……しかし、これからどうしましょう。とりあえずここで暮らすのなら、最低限の『モノ』を揃えなければ」
海原は殺風景な、良くいえばこざっぱりとした部屋を見渡した。
一応、キッチンや風呂、トイレなど、最低限の『施設』は揃っているらしい。
しかし、ベッドは小さな、1人用のものが1つだけ。
もちろんトイレットペーパー等の消耗品の数は多くないし、海原の服だっていま来ている『大人用』のものだけで、モノが全然足りなかった。
「そうだけど……今の時間に日用品やベットやらを買い出せるなんてないわよ」
学園都市とはその名の通り、学生のための街と言っても良い。
そんな街で、深夜まで空いてる店などそうはないのだ。
「たしかに、困りましたね……」
うーん、と右手を顎に当てて悩む海原。たぶん、服とか、風呂とか、ベッドとか諸々の事に頭を悩ませているのだろう。
しかし、深夜褐色ショタと二人きりでベットが一つ。このシチュエーションで、人よりほんっっっの少し男の子好きな女は、ちょおっと、我慢ならなかった。
「でも、でも。今はどうすることも出来ないし、もう寝ましょう?」
「……ん、まぁそうするしかないのでしょうか……」
「ええ、そうよ、そう」
そう言って、結標は海原の手を取り、ベッドへとテクテク。
ここで行ってはならぬと、海原の頭が警鐘を鳴らした。
「あ、な? ちょっと待ってください!! なんで一緒にベッドへ!?」
「そんなの決まってるじゃない。寝るためよ!」
「いいですよ! 僕はソファーでも貸していただければ勝手に寝ますから!」
184 名前:ご都合主義的褐色ショタ 9/9[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:46:20.20 ID:8x6EsyIo [10/11]
海原のその、必至に抵抗する言葉は、結標の何かのスイッチを押してしまったらしい。
結標は振り返って、海原の両肩に手を乗せ、
「そんなこと許さないわ!!」
意味のわからない急な激昂に、海原の小さな体は、ビクっと、大きく震えた。
至極当然なその反応も、『また』、結標の別の部分に触れたのだろう。
「あ……、あぁごめんなさい。大丈夫、怒ってないからね」
我に返った、というよりも、さらにトリップした結標は、肩から手を離し海原の顔をぎゅぅっとその自慢の胸に押し付けた。
「んむぅっ。ん!? ん、んー!!」
あなたの言葉は全部私が胸で受け止めてあげる。
結標はそんな事を考えつつ。ただ、それが精神的な意味でなく、物理的な意味になっていることまで考えが至らない。
「夜ってね、冷えるの。あなたが病気にかかるのは嫌なのよ」
すっかり、お姉さん気分な結標は、もう止まらなかった。
「それじゃあ、行きましょうね」
海原少年をヒョイっと抱き上げて移動。
体格的に劣る海原の抵抗の効果の程は虚しく、そのままスムーズにベットインした。
流石に胸に顔が当たるのでは苦しいだろう。そんな根本的なところでズレている気遣いを受けて、海原は結標のおっぱいを後頭部から背中に感じながら眠ることを強制された。
「おやすみなさい、また明日ね」
そうして結標は海原のクセッ毛を抑えつけるように何度か頭を撫でた。
その折、ときおり頭の後ろから聞こえる、じゅるとか、うふふとかそういう『音』を気にしないよう、海原はかたーく目を閉じる。
(一方通行さん……お願いします。お願いしますからから……早く僕を助けて下さい)
切なる願いが届くのはいつになるのか、検討もつかぬ今は、ただひたすらに、祈り続けた。祈り続けるしか、できなかった。
――――――
――――
――
185 名前:ご都合主義的褐色ショタ end[saga] 投稿日:2010/12/06(月) 01:49:30.46 ID:8x6EsyIo [11/11]
終われ。っつーことで終わりです。
総合スレは初めてだから妙に緊張。人が少ない時間を選んだのは正解かも。
短編で綺麗に纏めたかったのに、なぜか長編のプロローグ見たいな感じになってしまった。
だから長編のプロローグみたいな短編ということで、この物語は続きません。
エロいの書けない自分に絶望しつつ、それでは。
Tag : とあるSS総合スレ
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コメント
No title
褐色ショタ かわいすぎるwww 結標ェ・・・
No title
素晴らしいわ。直ちに続きを書くべきね。書けないなんて言っちゃダメよ?
私に第五位の能力があれば好きなだけ書かせてあげられるのに……お互い不運ね
私に第五位の能力があれば好きなだけ書かせてあげられるのに……お互い不運ね
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