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戦士「お仕事決まらない…」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:06:46.36 ID:MTcoz5ds0 [1/46]
失業者対策のため新しく設立された職安にて。
戦士「キャラバンの護衛…要実戦経験」
戦士「富豪の用心棒…要実戦経験」
戦士「やっぱこのご時世、新卒でもないのに戦闘系の仕事はムリなのね」
戦士「おまけに、軍縮でリストラされた兵隊さんが真っ先に採用されちゃうし」
失業者対策のため新しく設立された職安にて。
戦士「キャラバンの護衛…要実戦経験」
戦士「富豪の用心棒…要実戦経験」
戦士「やっぱこのご時世、新卒でもないのに戦闘系の仕事はムリなのね」
戦士「おまけに、軍縮でリストラされた兵隊さんが真っ先に採用されちゃうし」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:11:10.67 ID:MTcoz5ds0 [2/46]
ほかにもたくさんの人が、浮かない顔して求人票貼られた掲示板を眺めていた。
僧侶「要コミュ力…ただ回復呪文使えるだけじゃなく、うまいこと檀家を言いくるめてお布施巻き上げられないとダメなのかよ」
魔法使い「これまた要コミュ力…くそ、童貞のまま30超えたらこうなるなんて都市伝説のせいで恋愛経験ゼロってみなされ人間的に欠陥ありって見なされてるのにどうしろと」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:14:52.76 ID:MTcoz5ds0 [3/46]
盗賊「戦時中ならいざしらず、平和な時は俺のスキルなんて全部犯罪じゃないか、親父の奴、こんな仕事継いでどうしろっていうんだ」
遊び人「考えが甘かった…戦時中なら、どんなに寒いネタでもとにかく人を楽しませようって気持ちそのものがありがたがられてたんだろうけど、平和な今じゃ相当な才能がないと食っていけねー」
全員「「「「「魔王がいてくれれば…」」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:20:19.27 ID:MTcoz5ds0 [4/46]
戦士「戦中戦後の混乱期なら不器用なわたし達でもどうにか職にありつけたんだろうけどなぁ…」
僧侶「その混乱期にどうにかやってこれた世代が偉そうに俺らに説教しやがる、糞が」
魔法使い「やる気があればとかいうけど、それだけでどうにかなる時代じゃないんだよな」
盗賊「えり好みしなけりゃ、そりゃ仕事はあるけど」
遊び人「昇給もボーナスもなし、当然ながら結婚して子供作って学校行かせてやれる収入にはならないし」
全員「「「「「魔王がいてくれれば…」」」」」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:29:29.66 ID:MTcoz5ds0
戦士「不謹慎な話だけど、魔王を生かさず殺さずで戦争状態続けてくれれば私のような経歴にブランクあいた人でも社会に居場所あったのかな」
魔法使い「…? なんか、君の認識ってズレてるような」
戦士「やっぱり? その、わたし、いじめられて登校拒否してたから世間知らずな所あって。恥かくの怖くてなかなか外に出られなかったの」
魔法使い「そんなんでどうして戦士に?」
戦士「…剣術身につけていじめっ子に復讐しようと考えて」
魔法使い「で、復讐はした?」
戦士「ううん。わたしが引きこもって形だけ学校卒業して新卒のカードも無駄にした一方で、あいつは要領よく商人になって出世して結婚して子供もいて、そんなのに切りかかったって誰も同情してくれないってわかったらなんか虚しくなった」
魔法使い「…そうか」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:45:31.22 ID:MTcoz5ds0
職安の職員「今日も一日お疲れ様ー。手当の支給です」
ワラワラ ワラワラ
戦士「ここに待機して成果はどうあれ就活してれば生活保護を貰える」
魔法使い「面接行くための服がないなんて言い訳もなりたたないんだが」
職安の職員「これより翌朝まで酒場として営業しまーす。さあさあ、どんどん飲んでけー」
ガヤガヤ ノマズニヤッテラレルカー グビグビ
戦士「経費節減のためとはいえ、日中は活用されてないルイーダの酒場に間借りして職安を設立するなんて」
魔法使い「酒場に失業者を集めてはした金支給すりゃこうなるよな…」
一般市民A「働かずに飲む酒は旨いか?」
一般市民B「俺らが汗水たらして働いて納めた税金でな」
戦士「まっとうに働いてる人からこんな風に煽られるし」
魔法使い「ほかの皆もスルーできず乱闘おっぱじめるし」
戦士「国はこうやって、ルイーダに来る失業者は救済の価値もないダメ人間って偏見植え付けて見捨てようって考えなのかな」
魔法使い「たぶん正解」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:56:50.73 ID:MTcoz5ds0
翌朝。
宿屋の店主「ゆうべは お楽しみでしたね」(嘲る口調)
そんな声と共に目を覚ました。
戦士「あいたたた…頭痛い、二日酔いか」
魔法使い「あれから俺らも酔いつぶれちまったか」
戦士「うぅっ…掃除しにきた人らの視線が痛い」
魔法使い「ここで見慣れた顔もあるな。掃除夫として就職したのか」
戦士「わたしは受けなかった求人だったな、あれ」
魔法使い「…このままじゃ、ダメだよな」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:09:57.46 ID:MTcoz5ds0
そんなわけで、ここでくすぶって生活保護貰ってたほうがマシな条件であってもまずは働こうと決意し、改めて求人を見直した。
戦士「急募、経験不問、誰にでもできる仕事、家族的でいい環境、人間性を重視する、女性活躍中、頑張りが評価されます…」
そんなブラック臭がプンプン漂う求人ではあったが、内定貰えたのは結局これだけだった。
戦士「求人枠は3名、採用されたのは私と魔法使いさん、そして…」
武道家「武道家です、よろしく」
戦士「戦士です、よろしく」
武道家「…戦士!?」
戦士「? なにか?」
武道家「××年に○○小学校の●年□組にいた戦士!?」
戦士「そ、そうですけd」
武道家「積年の恨み!!」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:18:34.66 ID:MTcoz5ds0
武道家の攻撃。
戦士に10ポイントのダメージを与えた!
戦士「わ、何するの!?」
武道家「アンタが登校拒否したせいでアタシが次のイジメのターゲットにされたのよ!」
戦士「ちょ、逆恨み!」
戦士は逃げ出した!
だが回り込まれてしまった!
武道家「逆恨みでも恨みは恨み!!」
戦士「そんなんだからイジメられたんじゃ、というかハブられただけなんじゃないの?」
痛恨の一撃!
武道家に精神的に100ポイントのダメージを与えた!
武道家「うぎぃいいいいいい!!!」
魔法使い「あーあ、図星だったか。このまま騒ぎ続けてたら迷惑になるな。マヌーサでもかけとくか」
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家「うぎぃいいいいいい!!!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:31:06.12 ID:MTcoz5ds0
戦士「た、助かった…ありがとね」
魔法使い「君も悪いよ。イジメられた側に問題あるといった理屈は禁句、ああやってたちまち火病るんだから。君だってイジメられてたんだからわかるでしょ」
戦士「…すみません」
魔法使い「彼女も戦闘系でここに来たんだから、たぶん経歴は君と似たようなものだろうね、責任とって説得してごらん。多少は説得力あると思うから」
そんなわけで、底辺の人が強行に及んだ挙句にたどるであろう世間の扱いについて説き、どうにか復讐は断念してもらえた。
こうしてどうにか騒ぎは沈静化し、私たちは求人広告を出した人の到着を待つことになった。
戦士「本当に、ごめんね」
武道家「もういい。確かにアタシのほうが悪い」
魔法使い「さて、お二人さん。どうやら求人出した人が来たみたいだよ」
職員「お待たせしました。ほら挨拶挨拶」
??「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
??の妹「あ…兄を…よろしくお願い…します…ぐふっ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:34:51.48 ID:MTcoz5ds0
こうして同伴してきた妹さんがわたし達の前でぶっ倒れ、挨拶や引き継ぎも満足になされないうちに、仕事は始まった。
ほかにマシな選択肢がないから仕方ないとはいえ、それでも自分の意志で選択した仕事。
それが…。
『勇者』のお供だった。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:35:55.16 ID:MTcoz5ds0
ちょいとメシ喰ってくる。
宜しければ保守お願いします。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:00:40.05 ID:MTcoz5ds0
食ってきた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:08:15.19 ID:MTcoz5ds0
ノコノコ ウロウロ
キラーン
ダカダカダカ
勇者「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
一般市民C「え? わ? えっと…」
戦士「すみません、こいつ『勇者』でして。すみませんが、このリストから適当にセリフ選んで返事してください」
一般市民C「あー、勇者か。どれどれ…」
ジロジロ パラリ ジロジロ
一般市民C「この城下町から出て北に向かえばカザーブの村です」
勇者「うぇへwwwきたwwwかざーぶwwwww」
ダカダカダカ
一般市民C「ふぅ…びっくりした」
戦士「すみません」
一般市民C「しかたないさ、勇者だし。お仕事がんばってね」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:14:25.72 ID:MTcoz5ds0
一般市民D「おーい、勇者がウチのタンス漁ってるぞー! 何とかしてくれー!!」
武道家「あ、すみませんすみません!」
勇者「あうあうwwwめだるwwww」
ゴクリ
武道家「道具袋じゃなく胃袋にしまいやがった」
魔法使い「申し訳ありません、この書類に被害について記入して役所に提出してください」
一般市民D「到底補償しきれるもんじゃないよ。あのメダル、レア物だったのにorz」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:17:19.35 ID:MTcoz5ds0
ヒトという生物の器に収まりきらない戦闘能力と引き換えに、ヒトとして社会生活を営む知恵を失ってしまった存在。
古の世ではチテキショウガイシャと呼ばれていたソレは、妙な団体の横やりで呼び名が二転三転し、今では『勇者』と呼ばれるようになっていた。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:33:46.33 ID:MTcoz5ds0
勇者「うぁああーんwwwあぁーんwwwあぁーんあああんwww」
戦士「やっと町の外に連れ出せた…」
武道家「町の人にそれらしいセリフ言ってもらって誘導して、どうしてこんな回りくどいことしなきゃならないの?」
魔法使い「職員さんに渡されたマニュアルによると、勇者ってのは悪意とか疎んじる気持ちには人一倍敏感なんだと。だから無理やり追い出そうとすると癇癪起こして手がつけられなくなるらしい」
戦士「世界を救う冒険をしてるとでも思いこませて町の外を徘徊させときゃ害が少なくて済むんだろうけど」
武道家「しんどいわ、この仕事」
魔法使い「おっと、前方に旅人らしい一行発見。子供もいるな。戦士、勇者の興味引かないよう前衛に出て視界塞げ」
戦士「りょ、了解!」
勇者「おぎゃ? …うへぇwww」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:51:03.89 ID:MTcoz5ds0
武道家「もっと給料貰わないとやってられないわ」
魔法使い「そうは言うけど、勇者がらみの福祉の予算だって有限だからね。それにいくらでも勇者はいる。誰かがやらなくちゃならないんだ」
戦士「その誰かってのを、これまでは妹さんがやってたんだよね。私たちよりずっと小さな女の子が」
魔法使い「ああ。なんでも、親は自分たちが年老いたときに勇者の面倒見させるためにあの子を作ったそうだ。それから数年前に母親は死亡。そして父親は行方をくらましたそうだ」
武道家「それからずっと、アタシ達がしてることをしてきたわけ!?」
魔法使い「ああ、代わりに世話してくれる人が現れるまで、ずっと」
戦士/武道家「」
勇者「うぁああーんwwwあぁーんwwwあぁーんあああんwww」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:12:41.93 ID:MTcoz5ds0
勇者「ぅえ? うばああぁwww」
武道家「げ、何かに興味もった、視線の先は…魔物の群れ!?」
魔法使い「こちらから手出ししなければやり過ごせそうだけど」
ダカダカダカ
戦士「はぁ…手遅れだね」
武道家「ぼやいてても仕方ないよ」
魔法使い「そういうこと、先手必勝! ギラ!」
おおがらすAに10のダメージをあたえた!
おおがらすBに9のダメージをあたえた!
おおがらすCに12のダメージをあたえた!
おおがらすDに8のダメージをあたえた!
おおがらすEに10のダメージをあたえた!
武道家「よし! 次はアタシ!」
武道家のこうげき!
おおがらすDに15のダメージを与えた!
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:12:53.88 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「ダメダメ! やるならその一撃でトドメ刺せる奴狙わなきゃ」
武道家「そんなの見極めてる余裕ないってば!」
勇者「おぎゃwww」
勇者の攻撃!
おおがらすDに18のダメージを与えた!
おおがらすDを倒した!
戦士「うんせっ…と」
戦士の攻撃!
おおがらすDに17のダメージを与えた!
魔法使い「君もだよ!」
戦士「私だって見極めてなんかいられないってば!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:22:00.51 ID:MTcoz5ds0
勇者「おぎゃwwwおぎゃwww」
ドカ ザク グシャ
武道家「その見極め、勇者はうまくこなせてるみたいね」
魔法使い「かしこさが高いと、HPが低くなってる敵を優先して狙うらしいんだけど」
戦士「かしこさというより動物的なカンだよね、絶対」
まもののむれをやっつけた!
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:34:09.39 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「どうにか倒せたけど」
戦士「あいたたた…」
武道家「僧侶はいないから回復は薬草で…げ」
勇者「うまうまwww」
戦士「全部食ってるしorz」
武道家「どうしよう? せっかく苦労して連れ出したけど、町に戻って宿屋で回復する?」
戦士「うーん、なんとか野営で回復できないかな。どうせこのままじゃ棍棒なんか振り回せないし」
武道家「どうしてそんなショボい装備なのよ」
戦士「この仕事引き受けた時、職員さんに宛がわれたのよ。当座の金と一緒に」
武道家「どう見てもこれ、軍縮で余剰になった旧式の武器を押し付けられただけだと思う」
戦士「だからかー。マシな武器に買い替えようと思って武器屋のおじさんに査定頼んだら憐れみの目で見られたのは」
魔法使い「ああ。ダブついてるからもう買い値はつかない、それどころか業者に金出して引き取ってもらわなきゃならないんだ」
戦士「じゃあここで捨て…」
ここにすてるなんてとんでもない!
戦士「ちゃダメなんだねorz 野営のときに薪にするか」
魔法使い「ダメダメ、そんなのでも強度を増すため薬品やら呪術やらがかけられてる。技術も設備もない素人が燃やしたら大悪鬼神という恐ろしい化け物を呼び出してしまうぞ」
武道家「だからお金払って引き取ってもらわないとならないのね」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:49:38.62 ID:MTcoz5ds0
勇者「Zzz…」
武道家「満腹になって寝てるし。あ、一応食べ残しの薬草があるけどどうする? 使う?」
戦士「涎べっとり付いてるorz そんなの使ったら傷口からなんか入って勇者が伝染しそう」
武道家「だよねーorz」
魔法使い「あー、一応俺、回復呪文使えるけど」
戦士「え? 魔法使いなのに? 前職は僧侶だったの?」
魔法使い「いや、違うけど。女性は嫌かもしれないけど…」
武道家「ああもう! じれったいわね! さっさと回復してあげなさいよ! そんなだから30超えても童貞なのよ!」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない。勇者が起きる前にお願い」
魔法使い「わ、わかった」
ガサゴソガサゴソ
魔法使い「あれ? 無い」
武道家「何探してるの? 薬草ならもうないんだってば」
魔法使い「いやその、あの…」
武道家「ああもう! 煮え切らないわね! さっさとしてあげなさいよ! そんなだから30超えても童貞なのよ!」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない」
魔法使い「その…悟りの書がなくなってるんだよ」
武道家「悟りの書!? もしかして」
魔法使い「…知ってるの?」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:56:39.51 ID:MTcoz5ds0
武道家「ところどころページがバリバリに張り付いて開かなくなってた春画集のこと?」
戦士「」
魔法使い「それのことなんだけど」
武道家「いやー、ここに来る途中で転んだ拍子に道具袋の中身ぶちまけちゃってさ。場所が河原だったからてっきり近所の青少年が使用して放置したものだとばかり思ってたんだけど、あの本のことみたいだね」
戦士「」
魔法使い「つまり、そこにそのまま捨てて行ってしまったと?」
武道家「ごめん。えっと、責任とって、アタシが代わりになる?」
魔法使い「え?」
武道家「載ってた春画、どれもこれもおっぱい大きいのばっかりだったし。戦士じゃぁ…代わりにならないんじゃない?」
戦士「」
魔法使い「代わりって、その」
武道家「ほらほら、戦士のダメージ、ほっとくわけにもいかないでしょ」
グイグイ(草むらに連行)
ボインッ(御開帳)
戦士「」
武道家「おー、これが童貞の」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
武道家「ほらほら、さっさと回復してあげなさいよ」
魔法使い「…ふぅ」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:10:56.36 ID:MTcoz5ds0
(一時的に)賢者「お待たせ、じゃあ回復しようか」
戦士「うわぁ」
(一時的に)賢者「だから言ったでしょ。まあとにかく、背に腹は代えられないから行くよ、ベホマ」
戦士のダメージは回復した!
戦士「うわぁ」
(一時的に)賢者「これからはケガに気をつけてね」
戦士「わかりましたorz」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:27:25.24 ID:MTcoz5ds0
そんなこんなで勇者が人様に迷惑かけないようお守りをする日々が続く。
町の外に勇者を連れ出すのは一苦労なのだが、それでも補給のため町に入らざるを得ないことがある。
とりあえず勇者のお守りはほかの二人に任せて私だけ買い物していると…。
職員「お久しぶりです。あれから調子はどうですか?」
戦士「あ…お久しぶりです。いいように見えます?」
職員「なんというか、典型的な介護うつの状態に見えます」
戦士「ですよね。でも対策はこの仕事辞めるほかないんだろうけど、ほかにマシな仕事あります?」
職員「申し訳ないんですが景気は相変わらずで、あなたや武道家さんや魔法使いさんのスキルではほかの仕事も似たりよったりです」
戦士「ですか…」
職員「でもこれからは景気も良くなると思いますよ。ほら、魔王が発生したんですよ」
戦士「え? 発生?」
職員「…魔王の定義についてはご存じですか?」
戦士「え? 魔王ってぐらいだから魔の王、つまり怪物たちのボスでしょ? もういなくなったけど」
職員「…詳しいことは魔法使いさんに聞いてください。この改訂版のマニュアル読んでもらえればわかると思いますんで。では」
職員はキメラの翼を放り投げた!
職員はいずこかへと去って行った!
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:35:42.55 ID:MTcoz5ds0
パラリ パラリ パラリ
戦士「というわけで、それが新しいマニュアル」
魔法使い「そうか」
戦士「で、魔王って結局何なの?」
魔法使い「そこらへん、君たちが登校拒否してから学校で教えていたみたいだな」
戦士/武道家「「すみませんね」」
魔法使い「ごめん、別にバカにしたり責めるつもりじゃなかった。とにかく、話すとちょいと長くなる。おいおい説明するから、まずは勇者を町の人と会話させよう」
勇者「おぎゃ?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:47:54.68 ID:MTcoz5ds0
こうして、勇者に話しかけられた一般市民に新しいマニュアルの返答リストを見せることになった。
その返答はやたらと魔王の所業と居場所といった情報が多くなり、その誘導に沿って勇者はかつてルイーダの酒場があった街へと向かった。
戦士「街が破壊されてる…これ、魔王がやったことなの?」
魔法使い「ああ、これが魔王だ」
勇者「おぎゃwwwうへぇwwww」
武道家「わかってんのかなコイツ」
誘導された勇者は廃墟となった街を突き進み、その先にあった古びたアパートのある部屋で立ち止った。
戦士「なんかどんよりとしたオーラを感じるけど、これが魔王の居城?」
魔法使い「そうだ。行くぞ!」
勇者「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
武道家「はぁ…人様の家に不法侵入してタンスとか漁るときと同じノリだコイツ」
そこにいたのは…。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:59:01.58 ID:MTcoz5ds0
僧侶「…俺を受け入れようともせず、ただ排除するだけか、糞が」
戦士「え?」
僧侶「見覚えあると思ったら、あんたらはルイーダでくすぶってた人たちか」
戦士「あー、あの時の僧侶さんか」
僧侶「勇者を連れてるってことは、アンタはあんな条件で仕事引き受けたんだな」
戦士「そりゃあ、このご時世じゃ給料出す側だって限界あるんだし仕方ないじゃない」
僧侶「そうやって引き受けちまうから足元見られていつまでたっても状況が変わらないんだよ」
戦士「だからって、働かないわけにもいかないじゃない」
僧侶「このご時世じゃ、働いたら負けなんだよ!」
ウダウダ
グチグチ
武道家「ちょっと…なんなのよこの言い訳ばかりのニート」
僧侶「ニートって言うなぁあああ!! イオナズン!」
戦士「きゃあ! な、なんで? 僧侶なのに」
魔法使い「そいつが魔王なんだ、もう僧侶じゃない」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:10:26.62 ID:MTcoz5ds0
戦士「え? え? よくわからないけど、魔王だったらやっぱわたし達が倒さなきゃ」
魔法使い「あー、そこだけでも先に説明しとくべきだったか。魔王といっても名目上の話で、法的には俺らと同じ人間だ。だから殺したら罪に問われる」
武道家「え? でもこんな攻撃どうやってしのげっての。正当防衛よ!」
魔法使い「司法の連中に現場の都合なんて通用しない。魔王は心神喪失で無罪って片づけられ過剰防衛と見なされるのがオチだ」
戦士「じゃあどうすんのよ!?」
魔法使い「そのための勇者だ。ホラホラ、お前の好物の薬草だぞ~♪」
勇者「やくそうwwwあびゃwww」
魔法使い「ホラ取ってこ~い」
ポイ
バシッ
魔王「俺にこんなもの投げつけてどういうつもりだ? バカにしてんのか?」
踏み
グリグリ
勇者「あ゛…やくそう…」
魔王「なんだよ、こんなものどうでもいいだろうが」
勇者「や゛く゛そ゛う゛…」
魔王「しつこいよお前…どう言えば消えてくれるかなコイツ」
勇者「う゛~」
魔王「おーい、こいつをどうにかするのがお前らの仕事だろ、何とかしろよ」
勇者「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
魔王「ひっ!?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:23:04.75 ID:MTcoz5ds0
グジャ バキ ドスッ
戦士「うわ、勇者が怒った」
武道家「一般市民の前であんな癇癪起こされたらとんでもないことになるわね…」
魔法使い「毒をもって毒を制す。心神喪失者は心神喪失者をもって制すってことだ」
魔王「た、たすけて…アンタら、何放置してるんだよ」
魔法使い「すまないねー。拘束とかしたら益々機嫌悪くなって暴れるんだわ、それに拘束自体が暴行に問われちまうんでね」
魔王「じゃあ、アンタらは一体何のために」
グシャ
戦士「…殺っちゃった」
武道家「ほんと、アタシ達の仕事って何の意味があるんだろ。魔王がいなくなったらまたこれまで通り?」
魔法使い「そうとも限らないさ。まあとにかく事後処理と行こうか。さて帰るぞ勇者」
勇者「」
魔法使い「おーい」
勇者「」
戦士「また何かに興味引かれてるのかな」
勇者「」
武道家「あれ? コイツ…死んでる!?」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:36:32.72 ID:MTcoz5ds0
『勇者、ここに眠る』
魔法使い「さて、埋葬も終わったし、遺品の回収も済んだし、あとは事後報告だけだな」
戦士「あの、どうして死んじゃったの? そりゃ魔王の抵抗は凄かったけど」
魔法使い「勇者ってのはさ、痛みとか疲れとか恐怖といった感覚がマヒしてしまってるんだ」
武道家「だからあんな無茶苦茶な戦いができたんだ」
魔法使い「そういうこと。だから痛い思いをしても懲りることがない、つまり学習もしない」
戦士「でも、それは命を維持するためなくてはならないものだった?」
魔法使い「そういうこと。常人なら体の悲鳴で戦闘をやめて逃走図るなり回復するような場面でも戦いを続けてしまう。そして敵に勝ち、自分は死ぬ」
武道家「あんな言い訳ばかりのニートやハタ迷惑な勇者を生かし続けるよりぶつけて相討ちにさせたほうが無駄がないってことなのね」
魔法使い「そういうことなんだろうな。とりあえず報告は明日にして、今夜は途中の森で野営するか」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:49:21.34 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「火起こしお疲れさま。うー暖けぇ」
戦士「どういたしまして。それよりさ、仕事ひと段落しちゃったんだしいい加減教えてよ」
魔法使い「? ああ、魔王のことか」
戦士「そう。あの強力な魔法を見たら、町破壊したのはあいつだって信じられなくもないけどさ」
武道家「でもあいつのグチ、働かない言い訳も凄かったけど」
戦士「努力しない言い訳も相当なものだった。魔法って相当な修行が必要なんでしょ?」
武道家「色恋にうつつを抜かして童貞散らす機会を失うくらいに」
魔法使い「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:04:46.04 ID:MTcoz5ds0
武道家「話がそれたけど、あいつがどうやったらそんな魔法使えるようになったのか不思議なんだよね。あのグチ聞いてたら、違う意味で童貞散らす機会はなさそうだけど」
魔法使い「それについては、学校でも魔導工業科に進まないと教えないから仕方ないか。そもそも、魔法、俺が呪文で呼び起こしてた炎とかはどうやって発生したと思う?」
戦士「え? そりゃあMP、つまり術者の精神力が元になるんでしょ」
魔法使い「ところがそうでも無かったりする。今こうして野営して、戦士が起こしてくれた焚き火に当たってるわけだけど、これは君自身が炎を出してるわけじゃないだろう?」
戦士「当り前じゃない」
魔法使い「そう。炎は拾い集めてきた枯れ枝が出している。君がしたことはそれを集めてまとめ、火種をつけたにすぎない」
戦士「で、それと魔法とどう関係が?」
魔法使い「焚き火と枯れ枝ほど単純じゃないし目に見え触れられるものじゃないけど、俺が魔法で呼び出す炎とかの源になるものはそこらへんに満ち溢れているんだ」
戦士「え?」
魔法使い「魔法ってのは、それをいかにして必要な分だけ抽出してまとめ、望む形に変化させるかにかかってる。君が使った火種同様に、術者が消費する精神力も魔法の総エネルギーから見れば微々たるものなんだ」
武道家「それでも、その技術を学ぶだけでも大変なんでしょ? 童て」
戦士「それもういいから。しかしやっぱり、あのニートができるとは思えないんだけど」
魔法使い「肝心なのは術者の人格でね。君が火を起こすとき、燃え広がらないよう下草を取り除いたりしていただろう?」
戦士「そりゃあ、そうしないと山火事になっちゃうじゃない」
魔法使い「その通り。逆に言えば、君にだって山火事クラスの炎を生み出すのは可能なわけだ。でもそれをしないのは?」
戦士「そんなことすれば被害は馬鹿にならないし罪に問われるし…!?」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:15:13.73 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「そういうこと。その後も社会で生きていくことを考えたら、放火のようなマネはできない。その後のことを考えていたならね」
戦士「簡単なものでも魔法使えるヤツが自暴自棄になったら…後先考えず何もかもぶち壊すようになる?」
魔法使い「それが、魔王だ。自棄になった社会不適格者を昔話になぞらえそう呼ぶようになったのか、昔話自体がその社会不適格者を始末した記録なのかはわからないがね」
武道家「あんな凶悪なイオナズンより、きちんとコントロールされたギラのほうがずっと難しいってこと?」
魔法使い「正解。だからこそ魔法使いの修行は、魔法を放つことそのものよりも力を行使する誘惑に打ち勝つことに重点を置くんだ。奴の教育にかかわった人はそこんとこ失敗したようだけど」
武道家「誘惑に打ち勝つ修行を頑張ったからアンタは童て」
戦士「だからそれもういいから」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:29:37.79 ID:MTcoz5ds0
魔王は破壊活動の一方で魔物も多数召喚していた。
奴は魔王と呼ばれてはいるものの魔族の王たる器じゃなかったせいか、奴が死んでも呼び出された魔物たちはやりたい放題やっていた。
そんなわけで魔王を倒した帰りの野営でも魔物の襲撃に備え、寝ずの見張りが必要だった。
戦士(で、今は私のターン)
パチッ… パチッ…
戦士(暇だ…)
パチッ… パチッ…
戦士(これからどうなるのかな…)
パチッ… パチッ…
戦士(そう言えばあの子、勇者の妹もどうなるのかな…)
パチッ… パチッ…
戦士(あんなのでも、唯一の肉親だったんだもんね)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:38:05.28 ID:MTcoz5ds0
武道家「戦士、ちゃんと起きてる?」
戦士「え? あ、うん」
武道家「ホントに? アンタ、学校でも先生に居眠り注意されてた時は考えごとしてただけだって言い訳してたけど」
戦士「う~、ホントに考え事してただけだってば」
武道家「ホントに? まあいいか。で、何考えてたわけ?」
戦士「ん? あの子、勇者の妹のこと」
武道家「あー、遺族ってことになるから訴えられるかもね」
戦士「あ、それもあったか」
武道家「それ以外に何があるのよ」
戦士「あの子、これからどうやって生きていくのかなって」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:52:15.88 ID:MTcoz5ds0
武道家「どうやってって、あんなお荷物がなくなったんだからなんとかやっていけるでしょ」
戦士「お荷物って」
武道家「違うっていうの? そりゃあアタシ達はそれが仕事だからいいけど、あの子はどう? あれの面倒見たうえで、自分のこともしなきゃならない」
戦士「でも、きょうだいなんだよ?」
武道家「…アタシにも、兄さんがいたんだ」
戦士「え? だったらなおさら」
武道家「お母さんが病気で死んで、お父さんが再婚して、その再婚相手の連れ子だった」
戦士「え」
武道家「お父さんがお母さんを裏切ってるような気がして、当然ながら再婚相手のことも避けて、その連れ子も一緒に避けて」
戦士「え」
武道家「それからお父さんも再婚相手も流行り病で死んじゃって、お互い親戚が全然いないから頼れる人いなくて」
戦士「え」
武道家「連れ子だったあの人が、兄なんだからって学校辞めて働いて、アタシの面倒見て、学校にも行かせてくれて」
戦士「…」
武道家「学校でイジメられてるって知ったら我がことのように怒って、加害者や教師に掛け合って」
戦士「…」
武道家「イジメの首謀者はある部活に属してて○○王子なんてもてはやされてる人だったから顧問の教師や他の部員やファンまで敵に回して」
戦士「…」
武道家「激しくバッシングされて、仕事の疲労も重なって倒れて、そのまま死んじゃった」
戦士「…」
武道家「あのとき初めて、兄さんって呼んだ。もう届かないのに」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:00:10.30 ID:MTcoz5ds0
武道家「話が思いっきりそれたけど、要するに、ただ兄だ妹だ家族だきょうだいだといった枠組みに押し込んだからって自動的にそういった情が沸くわけじゃない、それなりの蓄積が必要だって事」
戦士「…」
武道家「アタシの兄さんほど献身的になる必要なんてないけどさ、お互い子供なんだし。だけど勇者とその妹の間では、そういうのあったのかな?」
戦士「…」
武道家「一緒に遊んだ思い出、あったのかな?」
戦士「…」
武道家「介護の延長で遊び相手というかオモチャになるんじゃなく、一緒に楽しんだ思い出、あったのかな?」
戦士「…」
武道家「そういうわけだから、あの子が悲しまなかったとしても責めちゃダメだよ?」
戦士「…」
武道家「これまで、自分の手足も時間も全て勇者のために使うよう定められてたんだ。せめて、似た苦しみを知ったアタシ達だけでも、あの子が苦しんだことを認め、労わってあげようよ」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:14:26.04 ID:MTcoz5ds0
戦士「…」
武道家「それにアタシが担任に相談したとき…って、ちゃんと起きてるの?」
戦士「…え? あ、うん、相談したときになに?」
武道家「ホントに起きてたんだ。まあいいか。でさ、あの担任、ただ我慢しろって言ったんだよね。長い人生から見ればあのクラスで過ごす時間なんてほんの一時だって」
戦士「あー、わたしのときもそうだった」
武道家「…あのクソ教師。まあとにかく、今のアタシ達ってあの担任と同じくらいのトシになっちゃったんだけど、どう? 時間の間隔」
戦士「え?」
武道家「ここ最近の一年と、あの頃の一年、同じ長さと思える?」
戦士「思えない、子供のころのほうがずっと長く感じた」
武道家「でしょ? だからね、辛い思いしてる子供の時間を大人の感覚で測っちゃダメなんだよ」
戦士「…わかった」
武道家「よろしい。じゃ、いい加減アタシ寝るから。交代までちゃんと起きてるのよ?」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:20:39.40 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(ホントに寝ちゃってる)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(また暇になっちゃったな)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「兄さん…」グスッ
戦士(!? 本当に寝てるの?)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:20:54.81 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(…寝言か)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(…ゴメンね。辛いこと思い出させて)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「ダ、だめ、アタシ達きょうだいなんだから…」
戦士「ちょw」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:32:04.14 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
戦士(さて、面倒見るべき勇者が死んじゃって、これからどうなるのかな)
パチッ… パチッ…
戦士(勇者は他にもいるんだし、当然ながらその身内だっているんだからこの仕事の需要もある)
パチッ… パチッ…
戦士(魔王が呼び出した魔物は結構いるから戦闘系の仕事の需要もしばらくはあるだろう)
パチッ… パチッ…
戦士(壊された街の復興でしばらくは建設ラッシュが続くだろうし)
パチッ… パチッ…
戦士(人死にがたくさん出たから欠員もでて、これまで門前払いだった業種にも潜りこめるかもしれない)
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:40:22.30 ID:MTcoz5ds0
戦士(死んでいった人らには悪いけど、少しは希望が見えてきたかな)
戦士(…って、まさに戦中戦後の混乱期じゃない、今って)
戦士(そう言えば魔王がまだ僧侶でルイーダでくすぶっていた時、こう愚痴ってたっけ)
『その混乱期にどうにかやってこれた世代が偉そうに俺らに説教しやがる、糞が』
戦士(わたし達は自分の世代のことだけ考るんじゃなく、次の世代のことも真剣に考えなきゃね)
戦士(そうしないとまた、魔王が発生する)
戦士(魔王にぶち壊しにされることで開ける未来なんて間違ってる)
ブスブス…
戦士(…って、まずは次の世代、つまり子作りを考えなきゃならないか。つまりは結婚のこと)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:44:21.78 ID:MTcoz5ds0 [45/46]
戦士(結婚、か。相手、見つかるかな)
戦士(そう言えば、お爺ちゃんとお婆ちゃんの馴れ初めって自警団の仕事だって言ってたな)
戦士(一緒にパーティ組んで仕事してるうちにくっついたとか)
戦士(今のわたしもパーティ組んでて、そこにも男の人がいて…)
魔法使い「Zzz」ブォッ
戦士(これは、無い。な)
戦士「…って、焚き火に薪を補充しなきゃ」
完
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:46:04.39 ID:MTcoz5ds0 [46/46]
以上。
勇者の設定やら何やらを考え、書いてみたわけですが…。
基本的に会話分のみ、それをリアルタイムで投下していくって想像以上に難しかった。
もしこの駄文に最後まで付き合ってくれた人がいたなら最大限の感謝を。
ほかにもたくさんの人が、浮かない顔して求人票貼られた掲示板を眺めていた。
僧侶「要コミュ力…ただ回復呪文使えるだけじゃなく、うまいこと檀家を言いくるめてお布施巻き上げられないとダメなのかよ」
魔法使い「これまた要コミュ力…くそ、童貞のまま30超えたらこうなるなんて都市伝説のせいで恋愛経験ゼロってみなされ人間的に欠陥ありって見なされてるのにどうしろと」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:14:52.76 ID:MTcoz5ds0 [3/46]
盗賊「戦時中ならいざしらず、平和な時は俺のスキルなんて全部犯罪じゃないか、親父の奴、こんな仕事継いでどうしろっていうんだ」
遊び人「考えが甘かった…戦時中なら、どんなに寒いネタでもとにかく人を楽しませようって気持ちそのものがありがたがられてたんだろうけど、平和な今じゃ相当な才能がないと食っていけねー」
全員「「「「「魔王がいてくれれば…」」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:20:19.27 ID:MTcoz5ds0 [4/46]
戦士「戦中戦後の混乱期なら不器用なわたし達でもどうにか職にありつけたんだろうけどなぁ…」
僧侶「その混乱期にどうにかやってこれた世代が偉そうに俺らに説教しやがる、糞が」
魔法使い「やる気があればとかいうけど、それだけでどうにかなる時代じゃないんだよな」
盗賊「えり好みしなけりゃ、そりゃ仕事はあるけど」
遊び人「昇給もボーナスもなし、当然ながら結婚して子供作って学校行かせてやれる収入にはならないし」
全員「「「「「魔王がいてくれれば…」」」」」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:29:29.66 ID:MTcoz5ds0
戦士「不謹慎な話だけど、魔王を生かさず殺さずで戦争状態続けてくれれば私のような経歴にブランクあいた人でも社会に居場所あったのかな」
魔法使い「…? なんか、君の認識ってズレてるような」
戦士「やっぱり? その、わたし、いじめられて登校拒否してたから世間知らずな所あって。恥かくの怖くてなかなか外に出られなかったの」
魔法使い「そんなんでどうして戦士に?」
戦士「…剣術身につけていじめっ子に復讐しようと考えて」
魔法使い「で、復讐はした?」
戦士「ううん。わたしが引きこもって形だけ学校卒業して新卒のカードも無駄にした一方で、あいつは要領よく商人になって出世して結婚して子供もいて、そんなのに切りかかったって誰も同情してくれないってわかったらなんか虚しくなった」
魔法使い「…そうか」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:45:31.22 ID:MTcoz5ds0
職安の職員「今日も一日お疲れ様ー。手当の支給です」
ワラワラ ワラワラ
戦士「ここに待機して成果はどうあれ就活してれば生活保護を貰える」
魔法使い「面接行くための服がないなんて言い訳もなりたたないんだが」
職安の職員「これより翌朝まで酒場として営業しまーす。さあさあ、どんどん飲んでけー」
ガヤガヤ ノマズニヤッテラレルカー グビグビ
戦士「経費節減のためとはいえ、日中は活用されてないルイーダの酒場に間借りして職安を設立するなんて」
魔法使い「酒場に失業者を集めてはした金支給すりゃこうなるよな…」
一般市民A「働かずに飲む酒は旨いか?」
一般市民B「俺らが汗水たらして働いて納めた税金でな」
戦士「まっとうに働いてる人からこんな風に煽られるし」
魔法使い「ほかの皆もスルーできず乱闘おっぱじめるし」
戦士「国はこうやって、ルイーダに来る失業者は救済の価値もないダメ人間って偏見植え付けて見捨てようって考えなのかな」
魔法使い「たぶん正解」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 13:56:50.73 ID:MTcoz5ds0
翌朝。
宿屋の店主「ゆうべは お楽しみでしたね」(嘲る口調)
そんな声と共に目を覚ました。
戦士「あいたたた…頭痛い、二日酔いか」
魔法使い「あれから俺らも酔いつぶれちまったか」
戦士「うぅっ…掃除しにきた人らの視線が痛い」
魔法使い「ここで見慣れた顔もあるな。掃除夫として就職したのか」
戦士「わたしは受けなかった求人だったな、あれ」
魔法使い「…このままじゃ、ダメだよな」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:09:57.46 ID:MTcoz5ds0
そんなわけで、ここでくすぶって生活保護貰ってたほうがマシな条件であってもまずは働こうと決意し、改めて求人を見直した。
戦士「急募、経験不問、誰にでもできる仕事、家族的でいい環境、人間性を重視する、女性活躍中、頑張りが評価されます…」
そんなブラック臭がプンプン漂う求人ではあったが、内定貰えたのは結局これだけだった。
戦士「求人枠は3名、採用されたのは私と魔法使いさん、そして…」
武道家「武道家です、よろしく」
戦士「戦士です、よろしく」
武道家「…戦士!?」
戦士「? なにか?」
武道家「××年に○○小学校の●年□組にいた戦士!?」
戦士「そ、そうですけd」
武道家「積年の恨み!!」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:18:34.66 ID:MTcoz5ds0
武道家の攻撃。
戦士に10ポイントのダメージを与えた!
戦士「わ、何するの!?」
武道家「アンタが登校拒否したせいでアタシが次のイジメのターゲットにされたのよ!」
戦士「ちょ、逆恨み!」
戦士は逃げ出した!
だが回り込まれてしまった!
武道家「逆恨みでも恨みは恨み!!」
戦士「そんなんだからイジメられたんじゃ、というかハブられただけなんじゃないの?」
痛恨の一撃!
武道家に精神的に100ポイントのダメージを与えた!
武道家「うぎぃいいいいいい!!!」
魔法使い「あーあ、図星だったか。このまま騒ぎ続けてたら迷惑になるな。マヌーサでもかけとくか」
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家の攻撃!
ミス! ダメージを与えられない!
武道家「うぎぃいいいいいい!!!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:31:06.12 ID:MTcoz5ds0
戦士「た、助かった…ありがとね」
魔法使い「君も悪いよ。イジメられた側に問題あるといった理屈は禁句、ああやってたちまち火病るんだから。君だってイジメられてたんだからわかるでしょ」
戦士「…すみません」
魔法使い「彼女も戦闘系でここに来たんだから、たぶん経歴は君と似たようなものだろうね、責任とって説得してごらん。多少は説得力あると思うから」
そんなわけで、底辺の人が強行に及んだ挙句にたどるであろう世間の扱いについて説き、どうにか復讐は断念してもらえた。
こうしてどうにか騒ぎは沈静化し、私たちは求人広告を出した人の到着を待つことになった。
戦士「本当に、ごめんね」
武道家「もういい。確かにアタシのほうが悪い」
魔法使い「さて、お二人さん。どうやら求人出した人が来たみたいだよ」
職員「お待たせしました。ほら挨拶挨拶」
??「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
??の妹「あ…兄を…よろしくお願い…します…ぐふっ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:34:51.48 ID:MTcoz5ds0
こうして同伴してきた妹さんがわたし達の前でぶっ倒れ、挨拶や引き継ぎも満足になされないうちに、仕事は始まった。
ほかにマシな選択肢がないから仕方ないとはいえ、それでも自分の意志で選択した仕事。
それが…。
『勇者』のお供だった。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 14:35:55.16 ID:MTcoz5ds0
ちょいとメシ喰ってくる。
宜しければ保守お願いします。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:00:40.05 ID:MTcoz5ds0
食ってきた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:08:15.19 ID:MTcoz5ds0
ノコノコ ウロウロ
キラーン
ダカダカダカ
勇者「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
一般市民C「え? わ? えっと…」
戦士「すみません、こいつ『勇者』でして。すみませんが、このリストから適当にセリフ選んで返事してください」
一般市民C「あー、勇者か。どれどれ…」
ジロジロ パラリ ジロジロ
一般市民C「この城下町から出て北に向かえばカザーブの村です」
勇者「うぇへwwwきたwwwかざーぶwwwww」
ダカダカダカ
一般市民C「ふぅ…びっくりした」
戦士「すみません」
一般市民C「しかたないさ、勇者だし。お仕事がんばってね」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:14:25.72 ID:MTcoz5ds0
一般市民D「おーい、勇者がウチのタンス漁ってるぞー! 何とかしてくれー!!」
武道家「あ、すみませんすみません!」
勇者「あうあうwwwめだるwwww」
ゴクリ
武道家「道具袋じゃなく胃袋にしまいやがった」
魔法使い「申し訳ありません、この書類に被害について記入して役所に提出してください」
一般市民D「到底補償しきれるもんじゃないよ。あのメダル、レア物だったのにorz」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:17:19.35 ID:MTcoz5ds0
ヒトという生物の器に収まりきらない戦闘能力と引き換えに、ヒトとして社会生活を営む知恵を失ってしまった存在。
古の世ではチテキショウガイシャと呼ばれていたソレは、妙な団体の横やりで呼び名が二転三転し、今では『勇者』と呼ばれるようになっていた。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:33:46.33 ID:MTcoz5ds0
勇者「うぁああーんwwwあぁーんwwwあぁーんあああんwww」
戦士「やっと町の外に連れ出せた…」
武道家「町の人にそれらしいセリフ言ってもらって誘導して、どうしてこんな回りくどいことしなきゃならないの?」
魔法使い「職員さんに渡されたマニュアルによると、勇者ってのは悪意とか疎んじる気持ちには人一倍敏感なんだと。だから無理やり追い出そうとすると癇癪起こして手がつけられなくなるらしい」
戦士「世界を救う冒険をしてるとでも思いこませて町の外を徘徊させときゃ害が少なくて済むんだろうけど」
武道家「しんどいわ、この仕事」
魔法使い「おっと、前方に旅人らしい一行発見。子供もいるな。戦士、勇者の興味引かないよう前衛に出て視界塞げ」
戦士「りょ、了解!」
勇者「おぎゃ? …うへぇwww」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 15:51:03.89 ID:MTcoz5ds0
武道家「もっと給料貰わないとやってられないわ」
魔法使い「そうは言うけど、勇者がらみの福祉の予算だって有限だからね。それにいくらでも勇者はいる。誰かがやらなくちゃならないんだ」
戦士「その誰かってのを、これまでは妹さんがやってたんだよね。私たちよりずっと小さな女の子が」
魔法使い「ああ。なんでも、親は自分たちが年老いたときに勇者の面倒見させるためにあの子を作ったそうだ。それから数年前に母親は死亡。そして父親は行方をくらましたそうだ」
武道家「それからずっと、アタシ達がしてることをしてきたわけ!?」
魔法使い「ああ、代わりに世話してくれる人が現れるまで、ずっと」
戦士/武道家「」
勇者「うぁああーんwwwあぁーんwwwあぁーんあああんwww」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:12:41.93 ID:MTcoz5ds0
勇者「ぅえ? うばああぁwww」
武道家「げ、何かに興味もった、視線の先は…魔物の群れ!?」
魔法使い「こちらから手出ししなければやり過ごせそうだけど」
ダカダカダカ
戦士「はぁ…手遅れだね」
武道家「ぼやいてても仕方ないよ」
魔法使い「そういうこと、先手必勝! ギラ!」
おおがらすAに10のダメージをあたえた!
おおがらすBに9のダメージをあたえた!
おおがらすCに12のダメージをあたえた!
おおがらすDに8のダメージをあたえた!
おおがらすEに10のダメージをあたえた!
武道家「よし! 次はアタシ!」
武道家のこうげき!
おおがらすDに15のダメージを与えた!
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:12:53.88 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「ダメダメ! やるならその一撃でトドメ刺せる奴狙わなきゃ」
武道家「そんなの見極めてる余裕ないってば!」
勇者「おぎゃwww」
勇者の攻撃!
おおがらすDに18のダメージを与えた!
おおがらすDを倒した!
戦士「うんせっ…と」
戦士の攻撃!
おおがらすDに17のダメージを与えた!
魔法使い「君もだよ!」
戦士「私だって見極めてなんかいられないってば!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:22:00.51 ID:MTcoz5ds0
勇者「おぎゃwwwおぎゃwww」
ドカ ザク グシャ
武道家「その見極め、勇者はうまくこなせてるみたいね」
魔法使い「かしこさが高いと、HPが低くなってる敵を優先して狙うらしいんだけど」
戦士「かしこさというより動物的なカンだよね、絶対」
まもののむれをやっつけた!
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:34:09.39 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「どうにか倒せたけど」
戦士「あいたたた…」
武道家「僧侶はいないから回復は薬草で…げ」
勇者「うまうまwww」
戦士「全部食ってるしorz」
武道家「どうしよう? せっかく苦労して連れ出したけど、町に戻って宿屋で回復する?」
戦士「うーん、なんとか野営で回復できないかな。どうせこのままじゃ棍棒なんか振り回せないし」
武道家「どうしてそんなショボい装備なのよ」
戦士「この仕事引き受けた時、職員さんに宛がわれたのよ。当座の金と一緒に」
武道家「どう見てもこれ、軍縮で余剰になった旧式の武器を押し付けられただけだと思う」
戦士「だからかー。マシな武器に買い替えようと思って武器屋のおじさんに査定頼んだら憐れみの目で見られたのは」
魔法使い「ああ。ダブついてるからもう買い値はつかない、それどころか業者に金出して引き取ってもらわなきゃならないんだ」
戦士「じゃあここで捨て…」
ここにすてるなんてとんでもない!
戦士「ちゃダメなんだねorz 野営のときに薪にするか」
魔法使い「ダメダメ、そんなのでも強度を増すため薬品やら呪術やらがかけられてる。技術も設備もない素人が燃やしたら大悪鬼神という恐ろしい化け物を呼び出してしまうぞ」
武道家「だからお金払って引き取ってもらわないとならないのね」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:49:38.62 ID:MTcoz5ds0
勇者「Zzz…」
武道家「満腹になって寝てるし。あ、一応食べ残しの薬草があるけどどうする? 使う?」
戦士「涎べっとり付いてるorz そんなの使ったら傷口からなんか入って勇者が伝染しそう」
武道家「だよねーorz」
魔法使い「あー、一応俺、回復呪文使えるけど」
戦士「え? 魔法使いなのに? 前職は僧侶だったの?」
魔法使い「いや、違うけど。女性は嫌かもしれないけど…」
武道家「ああもう! じれったいわね! さっさと回復してあげなさいよ! そんなだから30超えても童貞なのよ!」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない。勇者が起きる前にお願い」
魔法使い「わ、わかった」
ガサゴソガサゴソ
魔法使い「あれ? 無い」
武道家「何探してるの? 薬草ならもうないんだってば」
魔法使い「いやその、あの…」
武道家「ああもう! 煮え切らないわね! さっさとしてあげなさいよ! そんなだから30超えても童貞なのよ!」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない」
魔法使い「その…悟りの書がなくなってるんだよ」
武道家「悟りの書!? もしかして」
魔法使い「…知ってるの?」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 16:56:39.51 ID:MTcoz5ds0
武道家「ところどころページがバリバリに張り付いて開かなくなってた春画集のこと?」
戦士「」
魔法使い「それのことなんだけど」
武道家「いやー、ここに来る途中で転んだ拍子に道具袋の中身ぶちまけちゃってさ。場所が河原だったからてっきり近所の青少年が使用して放置したものだとばかり思ってたんだけど、あの本のことみたいだね」
戦士「」
魔法使い「つまり、そこにそのまま捨てて行ってしまったと?」
武道家「ごめん。えっと、責任とって、アタシが代わりになる?」
魔法使い「え?」
武道家「載ってた春画、どれもこれもおっぱい大きいのばっかりだったし。戦士じゃぁ…代わりにならないんじゃない?」
戦士「」
魔法使い「代わりって、その」
武道家「ほらほら、戦士のダメージ、ほっとくわけにもいかないでしょ」
グイグイ(草むらに連行)
ボインッ(御開帳)
戦士「」
武道家「おー、これが童貞の」
魔法使い「 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
武道家「ほらほら、さっさと回復してあげなさいよ」
魔法使い「…ふぅ」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:10:56.36 ID:MTcoz5ds0
(一時的に)賢者「お待たせ、じゃあ回復しようか」
戦士「うわぁ」
(一時的に)賢者「だから言ったでしょ。まあとにかく、背に腹は代えられないから行くよ、ベホマ」
戦士のダメージは回復した!
戦士「うわぁ」
(一時的に)賢者「これからはケガに気をつけてね」
戦士「わかりましたorz」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:27:25.24 ID:MTcoz5ds0
そんなこんなで勇者が人様に迷惑かけないようお守りをする日々が続く。
町の外に勇者を連れ出すのは一苦労なのだが、それでも補給のため町に入らざるを得ないことがある。
とりあえず勇者のお守りはほかの二人に任せて私だけ買い物していると…。
職員「お久しぶりです。あれから調子はどうですか?」
戦士「あ…お久しぶりです。いいように見えます?」
職員「なんというか、典型的な介護うつの状態に見えます」
戦士「ですよね。でも対策はこの仕事辞めるほかないんだろうけど、ほかにマシな仕事あります?」
職員「申し訳ないんですが景気は相変わらずで、あなたや武道家さんや魔法使いさんのスキルではほかの仕事も似たりよったりです」
戦士「ですか…」
職員「でもこれからは景気も良くなると思いますよ。ほら、魔王が発生したんですよ」
戦士「え? 発生?」
職員「…魔王の定義についてはご存じですか?」
戦士「え? 魔王ってぐらいだから魔の王、つまり怪物たちのボスでしょ? もういなくなったけど」
職員「…詳しいことは魔法使いさんに聞いてください。この改訂版のマニュアル読んでもらえればわかると思いますんで。では」
職員はキメラの翼を放り投げた!
職員はいずこかへと去って行った!
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:35:42.55 ID:MTcoz5ds0
パラリ パラリ パラリ
戦士「というわけで、それが新しいマニュアル」
魔法使い「そうか」
戦士「で、魔王って結局何なの?」
魔法使い「そこらへん、君たちが登校拒否してから学校で教えていたみたいだな」
戦士/武道家「「すみませんね」」
魔法使い「ごめん、別にバカにしたり責めるつもりじゃなかった。とにかく、話すとちょいと長くなる。おいおい説明するから、まずは勇者を町の人と会話させよう」
勇者「おぎゃ?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:47:54.68 ID:MTcoz5ds0
こうして、勇者に話しかけられた一般市民に新しいマニュアルの返答リストを見せることになった。
その返答はやたらと魔王の所業と居場所といった情報が多くなり、その誘導に沿って勇者はかつてルイーダの酒場があった街へと向かった。
戦士「街が破壊されてる…これ、魔王がやったことなの?」
魔法使い「ああ、これが魔王だ」
勇者「おぎゃwwwうへぇwwww」
武道家「わかってんのかなコイツ」
誘導された勇者は廃墟となった街を突き進み、その先にあった古びたアパートのある部屋で立ち止った。
戦士「なんかどんよりとしたオーラを感じるけど、これが魔王の居城?」
魔法使い「そうだ。行くぞ!」
勇者「おぎゃwwwおぎゃwwwぱしろへんだすwwww」
武道家「はぁ…人様の家に不法侵入してタンスとか漁るときと同じノリだコイツ」
そこにいたのは…。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 17:59:01.58 ID:MTcoz5ds0
僧侶「…俺を受け入れようともせず、ただ排除するだけか、糞が」
戦士「え?」
僧侶「見覚えあると思ったら、あんたらはルイーダでくすぶってた人たちか」
戦士「あー、あの時の僧侶さんか」
僧侶「勇者を連れてるってことは、アンタはあんな条件で仕事引き受けたんだな」
戦士「そりゃあ、このご時世じゃ給料出す側だって限界あるんだし仕方ないじゃない」
僧侶「そうやって引き受けちまうから足元見られていつまでたっても状況が変わらないんだよ」
戦士「だからって、働かないわけにもいかないじゃない」
僧侶「このご時世じゃ、働いたら負けなんだよ!」
ウダウダ
グチグチ
武道家「ちょっと…なんなのよこの言い訳ばかりのニート」
僧侶「ニートって言うなぁあああ!! イオナズン!」
戦士「きゃあ! な、なんで? 僧侶なのに」
魔法使い「そいつが魔王なんだ、もう僧侶じゃない」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:10:26.62 ID:MTcoz5ds0
戦士「え? え? よくわからないけど、魔王だったらやっぱわたし達が倒さなきゃ」
魔法使い「あー、そこだけでも先に説明しとくべきだったか。魔王といっても名目上の話で、法的には俺らと同じ人間だ。だから殺したら罪に問われる」
武道家「え? でもこんな攻撃どうやってしのげっての。正当防衛よ!」
魔法使い「司法の連中に現場の都合なんて通用しない。魔王は心神喪失で無罪って片づけられ過剰防衛と見なされるのがオチだ」
戦士「じゃあどうすんのよ!?」
魔法使い「そのための勇者だ。ホラホラ、お前の好物の薬草だぞ~♪」
勇者「やくそうwwwあびゃwww」
魔法使い「ホラ取ってこ~い」
ポイ
バシッ
魔王「俺にこんなもの投げつけてどういうつもりだ? バカにしてんのか?」
踏み
グリグリ
勇者「あ゛…やくそう…」
魔王「なんだよ、こんなものどうでもいいだろうが」
勇者「や゛く゛そ゛う゛…」
魔王「しつこいよお前…どう言えば消えてくれるかなコイツ」
勇者「う゛~」
魔王「おーい、こいつをどうにかするのがお前らの仕事だろ、何とかしろよ」
勇者「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
魔王「ひっ!?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:23:04.75 ID:MTcoz5ds0
グジャ バキ ドスッ
戦士「うわ、勇者が怒った」
武道家「一般市民の前であんな癇癪起こされたらとんでもないことになるわね…」
魔法使い「毒をもって毒を制す。心神喪失者は心神喪失者をもって制すってことだ」
魔王「た、たすけて…アンタら、何放置してるんだよ」
魔法使い「すまないねー。拘束とかしたら益々機嫌悪くなって暴れるんだわ、それに拘束自体が暴行に問われちまうんでね」
魔王「じゃあ、アンタらは一体何のために」
グシャ
戦士「…殺っちゃった」
武道家「ほんと、アタシ達の仕事って何の意味があるんだろ。魔王がいなくなったらまたこれまで通り?」
魔法使い「そうとも限らないさ。まあとにかく事後処理と行こうか。さて帰るぞ勇者」
勇者「」
魔法使い「おーい」
勇者「」
戦士「また何かに興味引かれてるのかな」
勇者「」
武道家「あれ? コイツ…死んでる!?」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:36:32.72 ID:MTcoz5ds0
『勇者、ここに眠る』
魔法使い「さて、埋葬も終わったし、遺品の回収も済んだし、あとは事後報告だけだな」
戦士「あの、どうして死んじゃったの? そりゃ魔王の抵抗は凄かったけど」
魔法使い「勇者ってのはさ、痛みとか疲れとか恐怖といった感覚がマヒしてしまってるんだ」
武道家「だからあんな無茶苦茶な戦いができたんだ」
魔法使い「そういうこと。だから痛い思いをしても懲りることがない、つまり学習もしない」
戦士「でも、それは命を維持するためなくてはならないものだった?」
魔法使い「そういうこと。常人なら体の悲鳴で戦闘をやめて逃走図るなり回復するような場面でも戦いを続けてしまう。そして敵に勝ち、自分は死ぬ」
武道家「あんな言い訳ばかりのニートやハタ迷惑な勇者を生かし続けるよりぶつけて相討ちにさせたほうが無駄がないってことなのね」
魔法使い「そういうことなんだろうな。とりあえず報告は明日にして、今夜は途中の森で野営するか」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 18:49:21.34 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「火起こしお疲れさま。うー暖けぇ」
戦士「どういたしまして。それよりさ、仕事ひと段落しちゃったんだしいい加減教えてよ」
魔法使い「? ああ、魔王のことか」
戦士「そう。あの強力な魔法を見たら、町破壊したのはあいつだって信じられなくもないけどさ」
武道家「でもあいつのグチ、働かない言い訳も凄かったけど」
戦士「努力しない言い訳も相当なものだった。魔法って相当な修行が必要なんでしょ?」
武道家「色恋にうつつを抜かして童貞散らす機会を失うくらいに」
魔法使い「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
戦士「ああもう、話が進まない」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:04:46.04 ID:MTcoz5ds0
武道家「話がそれたけど、あいつがどうやったらそんな魔法使えるようになったのか不思議なんだよね。あのグチ聞いてたら、違う意味で童貞散らす機会はなさそうだけど」
魔法使い「それについては、学校でも魔導工業科に進まないと教えないから仕方ないか。そもそも、魔法、俺が呪文で呼び起こしてた炎とかはどうやって発生したと思う?」
戦士「え? そりゃあMP、つまり術者の精神力が元になるんでしょ」
魔法使い「ところがそうでも無かったりする。今こうして野営して、戦士が起こしてくれた焚き火に当たってるわけだけど、これは君自身が炎を出してるわけじゃないだろう?」
戦士「当り前じゃない」
魔法使い「そう。炎は拾い集めてきた枯れ枝が出している。君がしたことはそれを集めてまとめ、火種をつけたにすぎない」
戦士「で、それと魔法とどう関係が?」
魔法使い「焚き火と枯れ枝ほど単純じゃないし目に見え触れられるものじゃないけど、俺が魔法で呼び出す炎とかの源になるものはそこらへんに満ち溢れているんだ」
戦士「え?」
魔法使い「魔法ってのは、それをいかにして必要な分だけ抽出してまとめ、望む形に変化させるかにかかってる。君が使った火種同様に、術者が消費する精神力も魔法の総エネルギーから見れば微々たるものなんだ」
武道家「それでも、その技術を学ぶだけでも大変なんでしょ? 童て」
戦士「それもういいから。しかしやっぱり、あのニートができるとは思えないんだけど」
魔法使い「肝心なのは術者の人格でね。君が火を起こすとき、燃え広がらないよう下草を取り除いたりしていただろう?」
戦士「そりゃあ、そうしないと山火事になっちゃうじゃない」
魔法使い「その通り。逆に言えば、君にだって山火事クラスの炎を生み出すのは可能なわけだ。でもそれをしないのは?」
戦士「そんなことすれば被害は馬鹿にならないし罪に問われるし…!?」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:15:13.73 ID:MTcoz5ds0
魔法使い「そういうこと。その後も社会で生きていくことを考えたら、放火のようなマネはできない。その後のことを考えていたならね」
戦士「簡単なものでも魔法使えるヤツが自暴自棄になったら…後先考えず何もかもぶち壊すようになる?」
魔法使い「それが、魔王だ。自棄になった社会不適格者を昔話になぞらえそう呼ぶようになったのか、昔話自体がその社会不適格者を始末した記録なのかはわからないがね」
武道家「あんな凶悪なイオナズンより、きちんとコントロールされたギラのほうがずっと難しいってこと?」
魔法使い「正解。だからこそ魔法使いの修行は、魔法を放つことそのものよりも力を行使する誘惑に打ち勝つことに重点を置くんだ。奴の教育にかかわった人はそこんとこ失敗したようだけど」
武道家「誘惑に打ち勝つ修行を頑張ったからアンタは童て」
戦士「だからそれもういいから」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:29:37.79 ID:MTcoz5ds0
魔王は破壊活動の一方で魔物も多数召喚していた。
奴は魔王と呼ばれてはいるものの魔族の王たる器じゃなかったせいか、奴が死んでも呼び出された魔物たちはやりたい放題やっていた。
そんなわけで魔王を倒した帰りの野営でも魔物の襲撃に備え、寝ずの見張りが必要だった。
戦士(で、今は私のターン)
パチッ… パチッ…
戦士(暇だ…)
パチッ… パチッ…
戦士(これからどうなるのかな…)
パチッ… パチッ…
戦士(そう言えばあの子、勇者の妹もどうなるのかな…)
パチッ… パチッ…
戦士(あんなのでも、唯一の肉親だったんだもんね)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:38:05.28 ID:MTcoz5ds0
武道家「戦士、ちゃんと起きてる?」
戦士「え? あ、うん」
武道家「ホントに? アンタ、学校でも先生に居眠り注意されてた時は考えごとしてただけだって言い訳してたけど」
戦士「う~、ホントに考え事してただけだってば」
武道家「ホントに? まあいいか。で、何考えてたわけ?」
戦士「ん? あの子、勇者の妹のこと」
武道家「あー、遺族ってことになるから訴えられるかもね」
戦士「あ、それもあったか」
武道家「それ以外に何があるのよ」
戦士「あの子、これからどうやって生きていくのかなって」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 19:52:15.88 ID:MTcoz5ds0
武道家「どうやってって、あんなお荷物がなくなったんだからなんとかやっていけるでしょ」
戦士「お荷物って」
武道家「違うっていうの? そりゃあアタシ達はそれが仕事だからいいけど、あの子はどう? あれの面倒見たうえで、自分のこともしなきゃならない」
戦士「でも、きょうだいなんだよ?」
武道家「…アタシにも、兄さんがいたんだ」
戦士「え? だったらなおさら」
武道家「お母さんが病気で死んで、お父さんが再婚して、その再婚相手の連れ子だった」
戦士「え」
武道家「お父さんがお母さんを裏切ってるような気がして、当然ながら再婚相手のことも避けて、その連れ子も一緒に避けて」
戦士「え」
武道家「それからお父さんも再婚相手も流行り病で死んじゃって、お互い親戚が全然いないから頼れる人いなくて」
戦士「え」
武道家「連れ子だったあの人が、兄なんだからって学校辞めて働いて、アタシの面倒見て、学校にも行かせてくれて」
戦士「…」
武道家「学校でイジメられてるって知ったら我がことのように怒って、加害者や教師に掛け合って」
戦士「…」
武道家「イジメの首謀者はある部活に属してて○○王子なんてもてはやされてる人だったから顧問の教師や他の部員やファンまで敵に回して」
戦士「…」
武道家「激しくバッシングされて、仕事の疲労も重なって倒れて、そのまま死んじゃった」
戦士「…」
武道家「あのとき初めて、兄さんって呼んだ。もう届かないのに」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:00:10.30 ID:MTcoz5ds0
武道家「話が思いっきりそれたけど、要するに、ただ兄だ妹だ家族だきょうだいだといった枠組みに押し込んだからって自動的にそういった情が沸くわけじゃない、それなりの蓄積が必要だって事」
戦士「…」
武道家「アタシの兄さんほど献身的になる必要なんてないけどさ、お互い子供なんだし。だけど勇者とその妹の間では、そういうのあったのかな?」
戦士「…」
武道家「一緒に遊んだ思い出、あったのかな?」
戦士「…」
武道家「介護の延長で遊び相手というかオモチャになるんじゃなく、一緒に楽しんだ思い出、あったのかな?」
戦士「…」
武道家「そういうわけだから、あの子が悲しまなかったとしても責めちゃダメだよ?」
戦士「…」
武道家「これまで、自分の手足も時間も全て勇者のために使うよう定められてたんだ。せめて、似た苦しみを知ったアタシ達だけでも、あの子が苦しんだことを認め、労わってあげようよ」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:14:26.04 ID:MTcoz5ds0
戦士「…」
武道家「それにアタシが担任に相談したとき…って、ちゃんと起きてるの?」
戦士「…え? あ、うん、相談したときになに?」
武道家「ホントに起きてたんだ。まあいいか。でさ、あの担任、ただ我慢しろって言ったんだよね。長い人生から見ればあのクラスで過ごす時間なんてほんの一時だって」
戦士「あー、わたしのときもそうだった」
武道家「…あのクソ教師。まあとにかく、今のアタシ達ってあの担任と同じくらいのトシになっちゃったんだけど、どう? 時間の間隔」
戦士「え?」
武道家「ここ最近の一年と、あの頃の一年、同じ長さと思える?」
戦士「思えない、子供のころのほうがずっと長く感じた」
武道家「でしょ? だからね、辛い思いしてる子供の時間を大人の感覚で測っちゃダメなんだよ」
戦士「…わかった」
武道家「よろしい。じゃ、いい加減アタシ寝るから。交代までちゃんと起きてるのよ?」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:20:39.40 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(ホントに寝ちゃってる)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(また暇になっちゃったな)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「兄さん…」グスッ
戦士(!? 本当に寝てるの?)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:20:54.81 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(…寝言か)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「Zzz」
戦士(…ゴメンね。辛いこと思い出させて)
パチッ… パチッ…
魔法使い「Zzz」
武道家「ダ、だめ、アタシ達きょうだいなんだから…」
戦士「ちょw」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:32:04.14 ID:MTcoz5ds0
パチッ… パチッ…
戦士(さて、面倒見るべき勇者が死んじゃって、これからどうなるのかな)
パチッ… パチッ…
戦士(勇者は他にもいるんだし、当然ながらその身内だっているんだからこの仕事の需要もある)
パチッ… パチッ…
戦士(魔王が呼び出した魔物は結構いるから戦闘系の仕事の需要もしばらくはあるだろう)
パチッ… パチッ…
戦士(壊された街の復興でしばらくは建設ラッシュが続くだろうし)
パチッ… パチッ…
戦士(人死にがたくさん出たから欠員もでて、これまで門前払いだった業種にも潜りこめるかもしれない)
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:40:22.30 ID:MTcoz5ds0
戦士(死んでいった人らには悪いけど、少しは希望が見えてきたかな)
戦士(…って、まさに戦中戦後の混乱期じゃない、今って)
戦士(そう言えば魔王がまだ僧侶でルイーダでくすぶっていた時、こう愚痴ってたっけ)
『その混乱期にどうにかやってこれた世代が偉そうに俺らに説教しやがる、糞が』
戦士(わたし達は自分の世代のことだけ考るんじゃなく、次の世代のことも真剣に考えなきゃね)
戦士(そうしないとまた、魔王が発生する)
戦士(魔王にぶち壊しにされることで開ける未来なんて間違ってる)
ブスブス…
戦士(…って、まずは次の世代、つまり子作りを考えなきゃならないか。つまりは結婚のこと)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:44:21.78 ID:MTcoz5ds0 [45/46]
戦士(結婚、か。相手、見つかるかな)
戦士(そう言えば、お爺ちゃんとお婆ちゃんの馴れ初めって自警団の仕事だって言ってたな)
戦士(一緒にパーティ組んで仕事してるうちにくっついたとか)
戦士(今のわたしもパーティ組んでて、そこにも男の人がいて…)
魔法使い「Zzz」ブォッ
戦士(これは、無い。な)
戦士「…って、焚き火に薪を補充しなきゃ」
完
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/04(土) 20:46:04.39 ID:MTcoz5ds0 [46/46]
以上。
勇者の設定やら何やらを考え、書いてみたわけですが…。
基本的に会話分のみ、それをリアルタイムで投下していくって想像以上に難しかった。
もしこの駄文に最後まで付き合ってくれた人がいたなら最大限の感謝を。
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