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少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」第三部
少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」第二部
続きです
続きです
466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 12:59:05.46 ID:kbBBO15UO [10/15]
妖精「♪」パタパタ
侍女「お祭りのようだ、と言っているようです。
確かに、もし今この付近にいる人間がみな町民なら、
ここ一帯は人間界最大規模の城下町になりますね」
術師「しかも人間界……で一番多国籍……かつ多文明……の魔導都市」
魔女「どっちかっつーと、今すぐ世界大戦がおっ始まりそうな雰囲気だけどな。
っつーかなんでてめぇーがここに居んだよ」
術師「屍霊術師……としては地獄と言う場所に興味……がある」
魔女「あーそーかい。じゃあ今度連れてってやんよ」
術師「……わくわく」
少女「あぁ、もう……なんでこんな事に……」ガクッ
470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:15:09.17 ID:kbBBO15UO [11/15]
侍女「! どうやら外で動きがあったようです」
魔女「おおッ、ドンパチか?」
術師「ここで大戦勃発……したらコレが仕掛け人……歴史に残る。汚点として」
魔女「うッせぇー。戦場のど真ん中に投げ込むぞ」
術師「そもそもコレ……があっちこっちで弟子自慢をしたせい……
どの国も魔王の後継ぎと同盟……を結びたいのが本音」
侍女「勇者派遣協約もすっかり形骸化しつつありますしね」
少女「協約?」
侍女「東西南北の四帝国で結ばれた一つの国際協約でございます。
魔王討伐による世界平和の維持のため、
定期的に各帝国から有能な戦士や魔導師を派遣して、
この任務に当たらせると言うものです」
魔女「まぁ表向きはそうなってるが、実際は魔王退治で人材を『消耗』させて、
それぞれの帝国が互いの戦力が強くなりすぎないようにするための一種の軍縮協約だな。
もし討伐に成功したら、それはそれでえれぇーアドバンテージになるから
どこも文句は言わねぇーけどよー」
術師「派遣されるパーティー……はたまったものじゃあ……ない」
魔女「しかしそう考えると、あの勇者は結構骨のあるやつだったんだなぁ」
471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:31:12.31 ID:kbBBO15UO [12/15]
侍女「しかし……魔王様がお亡くなりに……
と言うより地獄に移住されたので、事情が変わったのでございます」
魔女「人間のてめぇーなら同盟交渉の余地があるって思われたんだろ」
少女「……同盟交渉って、いきなり軍隊を派遣してするようなものなんですか?」
術師「それがコレ……のせい。
四帝国での『魔王後継者』の評価……これ」ペラッ
【魔王後継者について】
……人間族の少女であるが、魔王の魔力を受け継いでおり、
魔王以上の比類無き才覚を有し、魔導・魔術・人外外法に通じ、
一国を易々と滅ぼす地獄の氷竜を従え、
しかもその氷竜を一瞬で葬り去るほどの力を有する……
少女「頭が痛くなって来ました……」
術師「……誉めすぎ」
魔女「その方が師匠の僕に箔が付くだろうが」
侍女「だから使節団ではなく、軍隊を派遣して来たのですね」
魔女「しかも四帝国が同じタイミングで来たもんだから、
睨み合いになってるわけだ」
術師「それで小競り合い……が起きてる……」
少女「はぁ……とりあえず、様子を見て来ますよ」
侍女「お供致します」
魔女「ちゃんと全面衝突の総力戦に持ってけよな」
472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:42:04.18 ID:kbBBO15UO [13/15]
侍女「どこから交渉に行かれますか?」
少女「まずはあの小競り合いを止めます。
まったくもう……」パリッ、バチチッ
バキィィイイインッ!
氷竜「フュウゥウヴ……」ズゥウウゥン
ウ……ウワァアアアアアア
侍女「両国の兵士が散り散りに逃げて行きましたね。
争っていたのは西の帝国と北の帝国のようです」
少女「これでよし。
別にどこからでもいいんだけど、西の帝国から行ってみようかな……」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:01:20.82 ID:q/igm2keO [1/14]
ガチャ
少女「ただいま帰りました」
術師「おかえり……どうだった?」
魔女「全面戦争かッ」
少女「同盟を結ぶとすれば、四帝国それぞれと同時だと言っておきましたが……
どうにも頭の固い人達ばかりでしたね」
魔女「なんだつまんねぇーな。
見た目で舐められてんじゃねぇーの」
術師「わかる人……にはわかる……もの」
少女「はぁ。ありがとうございます」
妖精「!」パタパタ
魔女「ん?
あ、そうそう。てめぇーらが出かけてる間に、こっちにも客が来たぜ」
少女「そうなんですか?」
魔女「妖精界対人間界、全面戦争のお知らせだ。
そっちでバトらねぇーならこっちを頑張ってくれよ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:08:55.59 ID:q/igm2keO [2/14]
侍女「妖精界……でございますか?」
魔女「おうよ。連中の特使が来てな。
さすがに目ぇ付けられてるよ、僕らは。
そこらの帝国よりよっぽど危険な障害だと思われてるらしいぜ。
留守だっつったら、また来るってさ」
術師「前途多難……がんばって」
魔女「てめぇーも僕らの勢力の一人として数えられてただろうが」
術師「……満更でもない」
魔女「そーかい。そりゃ結構」
少女「また頭痛の種が増えた……」ガクッ
妖精「?」サスサス
侍女「どうかお気を確かに」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:19:01.61 ID:q/igm2keO [3/14]
少女「……今日はもう休みます」
侍女「今すぐ寝室の準備を」
魔女「多分明日また来るだろうから、徹底抗戦、見敵必殺の旨をきっちり伝えろよ」
術師「相変わらず……魔王より魔王っぽい……」
……バタン。
術師「……でも、どうして……妖精界が?」
魔女「さぁ。暇だったんじゃねぇーの」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 13:46:37.82 ID:q/igm2keO [5/14]
少女「おはようございます」
妖精「!」パタパタ
術師「おはよう……よく眠れた?」
少女「おかげさまで、それなりには……」
術師「昼前には特使……がまた来る」
少女「あぁ、そんな話でしたね……」
侍女「おはようございます。
朝食の準備ができました」ペコリ
少女「魔女さんは?」
術師「昨日夜更かし……してたからまだ寝てる」
少女「そうですか。
じゃあ先に食べちゃいましょう」
術師「いただき……ます」
侍女「どうぞこちらの部屋へ」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:06:13.67 ID:q/igm2keO [6/14]
少女「特使って、どんな方でした?」
術師「少しの間……しか居なかったからよくわからない……
……けど、かなり強烈な魔力……を纏ってた……つまり臨戦態勢」
少女「やっぱり警戒してたんでしょうか?
軍隊で来られなかっただけよかったのかな……」
術師「妖精界の軍隊……は滅多に妖精界から外に出ない……
……大概の場合、魔導砲術団……が妖精界から一発……打ち込むだけで、
戦争……は終わる。防御結界に特化した要塞……でもないと、
一瞬で辺り一帯が灰……になるから」
少女「物騒ですね……」
術師「妖精は魔導工学にも、魔導そのもの……にもずば抜けて秀でてる……強敵」
リンリンリン、リンリンリン、
術師「噂をすれば……」
侍女「どういたしましょう?」
少女「とりあえず、応接室に通してください」
侍女「かしこまりました」
少女「術師さんも来てもらえますか?」
術師「わかった……行く」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:28:16.88 ID:q/igm2keO [7/14]
ガチャ、
侍女「どうぞこちらへ」
特使「……」
少女「初めまして。
一応魔王代理をやってる者です」ペコリ
術師「その師匠の知り合い……」
特使「お初にお目に掛かる。
私は妖精界第二魔導工学研究室の副室長をやっている者だ」
少女「この度はわざわざどうも。
昨日は留守にしてて申し訳ありません」
特使「いや、それは一向に構わない。
それより、本題に移ろう。時間が惜しい」
少女「はぁ」
術師「せっかち……」
特使「妖精界は、人間界に対し間も無く宣戦布告を行う。
これは王室の決定であり、恐らく覆されることは無い」
少女「……いきなりですね」
術師「ね……」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:53:21.24 ID:q/igm2keO [8/14]
特使「この宣戦布告には、勿論それなりの理由がある。
まずはそれについて簡単に説明したい」
少女「……」
特使「主には二つある。
一つは、現王権に反駁する者を黙らせる、もしくは炙り出すためだ」
術師「それ、言っちゃって……いいの?」
特使「もう一つは……人工妖精の問題がある」
少女「!」
侍女「……」
特使「妖精族、特に王家の血筋に近い者は、自らの血に大きな誇りを持っている。
実際に妖精族の中でも魔力的に特に優れた者を多く輩出しているからだ。
しかし、人間界の何名かの魔導師は、この『王家の血』に模した、
極めて精密精緻な人工妖精を生成し、これを使役する技術を持っている」
術師「……話が見えて来た」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:56:54.16 ID:q/igm2keO [9/14]
特使「現に、そこにいる侍女もそうだ。
……素体は妖魔大戦当時の第二皇女であろう。
彼女は少し特殊な血筋ではあったが……
いずれにせよ、王家の者にはそれが許せないのだ。
王家の血が人間に隷属するなどあってはならないと考えている」
少女「……」
特使「そして、人工妖精を使役する人間、
退いては人間に隷属する全ての人工妖精を、
この上なく嫌悪し、憎悪しているのだ。
なので、今回の宣戦布告と相成った」
侍女「……」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:15:07.70 ID:q/igm2keO [10/14]
魔女「要するに、てめぇーんとこのくっだらねぇー選民意識が原因なわけだな。
どこでも戦争の原因ってのは、暇潰しか、差別か、もしくはそのどっちもかのどれかだ」
少女「魔女さん……」
術師「大体、妖精界……にもホムンクルスの生成技術……があるはず。
それも原理的……には人工妖精の生成技術と同じ」
魔女「大方、僕らのサンプルでもこっそり持って帰って、
早速ホムンクルス作る気だったんじゃねぇーの?」
特使「……」
少女「本当に、この戦争は避けられないんですか?」
特使「……一研究者には判断しかねる」
魔女「けっ。こう言う時だけ研究者面かよ」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:31:19.76 ID:q/igm2keO [11/14]
特使「……伝えるべきことは以上だ」ガタンッ
少女「特使さん」
特使「……なんだ」
少女「例えばですが、侍女さんには、拘束術式は施されていません」
侍女「……」
妖精「!」パタパタ
少女「この子もです。
侍女さんもこの子も、自分の意思でわたしと共に歩んでくれています」
特使「……自分も魔導研究者の端くれだ。
その位は最初からわかっている」
侍女「……では、僭越ながら申し上げます。
王家には王家の誇りがあるのかも知れませんが、
わたくし達にはわたくし達の自由意思と誇りがあるのです。
わたくしの誇りは、この城に、この方に使えることです。
何人たりとも、この誇りを陰らせることはできません」
術師「かっこいい……」パチパチ
少女「あなたにも、あなたの誇りがあるでしょう。
それをよく考えてみてください」
特使「……失礼する」
……バタン。
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:42:18.03 ID:q/igm2keO [12/14]
魔女「いけ好かねぇーやつだな」
術師「妖精界……では魔導技術の研究……は完全に王権の管理下……にある。
こちらとは文化……も価値観……も違うからある意味……しょうがない」
少女「あの人なら、きっとわかってくれますよ」
侍女「わたくしも、そう思います」
妖精「!」コクコク
魔女「ま、話が通じたところでどうしようもねぇーけどな。
僕は工房に戻るぜ。色々準備があるし」
術師「……あなた……はどうするの?」
少女「わたしは、四帝国で同盟を結ぶように説得して来ます。
人間同士で争っている場合ではないと。
……それが終わったら、妖精界に行きます」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 16:11:26.53 ID:q/igm2keO [13/14]
魔女「っつーわけで、はるばる来たぜ妖精界!」ドーン
術師「工房に帰る……んじゃなかったの?」
魔女「何言ってんだよ。
『ハイパーかっこいい魔女と不愉快な仲間達の冒険・妖精界征服編』に
主人公が居ないわけにはいかないだろーが。
だからこないだの『門』だって妖精界仕様に改造してやったんだろ」
術師「自己顕示欲……のかたまり」
魔女「うるせぇー!」
少女「とにかく、とりあえず首都を目指しましょう。
あまり目立たないように……ってもう手遅れかな……」
侍女「以前より更に荘厳で巨大な造形になっていますね、あの門」
魔女「階段も13段まで減らした改良型だぜ。
妖精界にも似たようなもんはあるだろうが、
地獄にも竜界深部にも対応してるやつはそうそう無いな」
術師「すぐ張り合いたがる……お子ちゃま」
魔女「お前だけ今から地獄行くか? あ?」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 22:14:21.23 ID:GsBlRFawO [1/7]
少女「侍女さん、地図を」
侍女「はい。すぐに用意いたします」ガサゴソ…
バサッ、
侍女「こちらが妖精界の地図です。
書庫にあったものですが、これはかなり正確なものかと思われます」
魔女「お、僕の持ってるやつより細かいな」
術師「魔導式……が施されてる」
侍女「暦に従った回路に魔力を流せば、
その年月日時点での移動地形や浮島の座標も厳密に表示されます」ポゥ…
ジジッ…ザザザザ……
魔女「おー、地図が書き換わったな」
侍女「便利……」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 22:26:14.04 ID:GsBlRFawO [2/7]
少女「今いる場所もこの印を見れば一目瞭然ですね」
術師「首都は……これ?」
少女「それですね。
ここからだとそんなに距離は無いはずです」
魔女「そうなるように設定したからな。
……まぁ問題と言えば、僕が使ってた地図はそんなハイカラなもんじゃなかったから、
移動地形に乗った妖精軍哨戒基地がすぐそばに来てたってのを知らなかったっつーことだ」
術師「三方向から多数……の魔力源の移動……を感じる」
魔女「早速お出迎えか」
侍女「どういたしましょう?」
少女「ここで捕まるわけにはいきません」パリッ、パキキッ
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/28(日) 22:58:16.59 ID:GsBlRFawO [4/7]
「目標消失しました!」「機器系統は全て異常無しを示しています……」
「探せ。まだこの付近にいるはずだ」「はッ! 直ちに!」
「ここに足跡が……」「結界解析班が到着……」
魔女「なんだ、腕慣らしに一発かましてやろうと思ったのによー」
術師「目と鼻の先……なのに全然気付かれない……」
少女「『門』の構造を応用した術式です。
魔導的存在階層を僅かにずらしたことで、
わたし達は通常階層からは魔力質量ゼロとしてしか認識されません」
侍女「つまり、彼らから見れば完全に『消失』したと言うわけでございますね」
魔女「なるほどなー。術式の痕跡も残らないから追跡も難しいってことか」
術師「しかも全員分……無駄魔力垂れ流し……してるコレまで……すごい」
少女「あまり長くは保ちませんけどね」
魔女「一々喧嘩売りつけないと喋れねぇーのかてめぇーは」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:17:35.99 ID:GsBlRFawO [5/7]
少女「では、このまま首都の王宮まで行きましょう」パキッ、パリッ……
魔女「そんなに保たないんじゃねぇーのか?
あの門を連続稼働させてるようなもんなんだろ?」
少女「そうですね。
大体この人数だと三日間ぐらいかな」
術師「それでも三日……」
魔女「改めて、大概規格外だなてめぇーも」
侍女「しかし、近いとは言ってもここから首都までは大河を越えなければなりませんし、
三日で歩ききれる距離でしょうか?」
少女「大丈夫ですよ。
わたしに考えがあります」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:31:15.30 ID:GsBlRFawO [6/7]
皇帝「……わかった、下がって良いぞ」
大臣「失礼致します」
……バタン。
皇帝「やれやれ……戦争か……」
――――バキンッ
少女「どうも初めまして、皇帝さん」ペコリ
術師「ここが……執務室……すごい結界装置……」
魔女「お疲れ気味の所申し訳ねぇーけど、お茶でも淹れてくんない?」
侍女「では、わたくしめが」カチャカチャ
妖精「♪」パタパタ
皇帝「……は?」ガタンッ
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:47:40.63 ID:GsBlRFawO [7/7]
術師「まさか氷竜……ごとあの術式……を施して首都まで飛ぶなんて……」
少女「さすがに半日弱しか保たなくなりますけど、間に合ったでしょう?」
魔女「都市の周りを雲の上まで貫いてた結界も完全スルーだったしな」
侍女「王宮の結界もまた同様です。
どんなに堅牢でも、そこに存在しない者の侵入は拒めない」トポポポ……
魔女「おー、いい香りだな」
侍女「携帯型魔導ティーセットでございます。
どうぞお熱いのでお気を付けて」カチャ、
魔女「ちょっと防犯対策考え直した方がいいんじゃねぇーの?
さっきここの裏庭に氷竜が着陸したんだぜ」ズズッ
術師「これが戦争……だったらチェックメイト」
皇帝「……何が望みだ?」
少女「対話ですよ、皇帝さん。
お茶、こっちにも頂けますか?」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:16:43.56 ID:RjlMA036O [1/7]
侍女「お待たせいたしました」カチャカチャ、
少女「ありがとうございます。
……さて、では、とりあえず自己紹介からですね。
わたしは人間界四帝国同盟監査調停役の者です。
あ、魔王代理もやってます」
皇帝「……第五八代妖精界皇帝だ。
君達の噂はよく聞いている」
魔女「光栄なもんだぜ。
これなんだ?」ツンツン
術師「それ……は魔導天秤……妖精界の魔導工学で用いる複合実験機……
……今はこの部屋の結界……を維持、調整してる」
魔女「ふーん。他にも色々あるな」
少女「あんまり暴れないで下さいね」
魔女「わかってるっつーの。
さすがに敵陣のど真ん中で面倒事は御免だ」
皇帝「……どうしてここに?」
少女「あなたに皇帝として、一つ意見を伺いに来ました」
皇帝「……」
少女「あなたは人間を憎んでいるのですか?」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:31:37.26 ID:RjlMA036O [2/7]
少女「特使さんの説明では、どうしても納得できなかったんです。
もし妖精界全体が人間を憎んでいるなら、色々な矛盾が生じるはずです」
術師「……妖精と人間が結ばれ……その子孫……が活躍する伝説は、
妖精界……でも人間界……でも無数にある」
魔女「古い魔導書の中では、人工妖精やホムンクルスの由来はそこにあるってことになってるしな」
少女「それどころか、妖精界の王家にも人間と結ばれた人や、
その子供が玉座についた記録もあります」
皇帝「……その通りだ。
太古の昔、人間が妖精を異世界の住人として特別視していたように、
妖精もまた人間を特別な存在だと考えいた。
まだ今ほど魔導が発達しておらず、互いに素朴な暮らしを営んでいた頃はな」
魔女「王権に説得力を持たせるために、人間との混血も大いに歓迎されたわけだ」
術師「歴史上の偉大な魔導師……は、その多くが異種族との混血……」
皇帝「ある意味で、我々が人間界と密接に繋がっていた時期が、
最も妖精界が繁栄した時期であると言える……
妖精界の優れた魔導工学技術も、その時代に生み出されたものだ」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:42:32.24 ID:RjlMA036O [3/7]
魔女「えらくあっさり認めるじゃねぇーか」
術師「人工妖精の話……は戦争と関係……ない?」
皇帝「いや、人間や人工妖精を忌み嫌っている者も相当数いるのは事実だ。
……しかし、さっき言ったように、それは現王権の否定にもなる」
少女「では、一体何が原因なんです?
なぜ突然妖精界は人間界と断絶して、今度は戦争まで起こそうとしているのですか?」
皇帝「……」
侍女「お茶のおかわりはいかがですか?」カチャ、
術師「気が利く……ありがとう」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:06:17.97 ID:RjlMA036O [4/7]
皇帝「……妖魔大戦の折り、魔王に引き渡された第二皇女。
あの子は……この五八代皇帝の実の娘だ。
まさに、その侍女はあの子の生き写しだ……母親にも良く似ている」
侍女「……」
皇帝「第一皇女の母親は純粋な妖精族の貴族出身の者だったが、
第二皇女の母親は人間と交わった血流を持つ有能な魔導技師だった。
……しかし妖魔大戦終結時には、彼女らの血筋は完全に途絶えたのだ」
術師「第一皇女……とその母親たる現王妃……が皆殺しにした。
……ま、コレもそれ……に荷担してたわけだけど」
魔女「なんだよ、昔の話だろ?
そんな事情知らねぇーよ」
皇帝「……王妃とその一族は、純粋な妖精族のみが妖精界を束ねるべきだと考えている。
第一皇女にも、人間の血は流れていない」
少女「つまり……あなたの娘では無い?」
皇帝「そうだ。
地位の関係で第一継承権を持ってはいるが……」
術師「……その理屈……で考えると、皇帝もまた憎むべき血――――」
――――ドゴォォォオオオン……
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:24:18.18 ID:RjlMA036O [5/7]
ゴゴゴゴゴゴ……
皇帝「……始まったようだな」
魔女「なんだなんだぁ?」
術師「恐らく皇帝を……人間の血筋を王権から排除……する計画……」
少女「王権の乗っ取り……これが特使さんの言ってた炙り出しですね」
侍女「すでにここは囲まれていると見てよろしいかと」
皇帝「軍は王妃側に付いたようだ……」
魔女「どうする?
正規の妖精魔導軍が相手だと、正面突破はさすがに厳しいぞ」
少女「あの術式もまだしばらくは使えませんし、氷竜の召還もまだ厳しいですね」
侍女「このペースで砲台が放火を続ければ、ここの陥落も時間の問題でございます」
妖精「!」パタパタ
術師「……と言うわけで、ついに出番到来……」オォン…
魔女「そう言えば一応てめぇーも術師だったなぁ」
少女「お願いします、術師さん」
侍女「さぁ、あなたもこちらへ」
皇帝「す、すまない……」
術師「……呪術精霊召還……」
オォンオォンオォンオォンオォンオォン……
186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:39:14.76 ID:RjlMA036O [6/7]
術師「……、…、……、……、」ブツブツブツブツ……
魔女「今更だが……あいつの本業は召還術と呪術だ。
見ろ、あのキモい光ってる線。
全身に魔導式やら魔法陣やらを埋め込んでるんだよな」
少女「なんと言うか……禍々しい魔導回路ですね」
魔女「僕はよく魔族より魔族っぽいとか言われるが、
僕に言わせればあいつは地獄の怨霊より怨霊っぽいぞ」
侍女「……多数の精霊がこの周囲一帯に呪術を媒介しています」
魔女「下手な結界はあの精霊が全部突き破っていくわけだ。
連中は完全に包囲戦のつもりで来てただろうし、ドンピシャだな。
守りはてんで薄い」
少女「ところで、一体どんな呪術を……?」
魔女「あんまり考えたくないね」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:23:19.69 ID:7BjQiiB3O [1/16]
少女「……砲撃が止みましたね」
侍女「周囲の魔力反応が消えて行きます」
術師「……さぁ、これで……脱出できる」オォン……
魔女「一体どんな手品を使ったんだ?」
術師「色々……戦意喪失するようなもの……術式自体はすごく……簡単」
魔女「例えば?」
術師「もしこの王宮……の壁に、自分の歯の神経……が繋がってたらどうする?」
魔女「相変わらず果てしなく趣味悪ぃーな」
術師「コレに言われたら……おしまい」
少女「とにかく、この隙に安全な所に行きましょう」
皇帝「……第二研究室の室長なら、我々を匿ってくれる」
侍女「第二研究室……副室長が特使の方でございましたね」
魔女「そこが既に抑えられてるって可能性は?」
皇帝「それは考えられるが、そう簡単には陥落しないだろう。
あそこの研究員は皆、人間の血筋を汲んでいる」
魔女「あの特使を含めて、全員相当な火力を持ってるってことだな」
少女「わたし達も戦力になります。
なんとか拮抗状態を作りましょう」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:38:34.82 ID:7BjQiiB3O [2/16]
ガシャンッ
皇帝「この地下通路を通れば、安全に研究室まで辿り着けるはずだ」
魔女「安全? それマジで言ってんの? なんかの冗談だろ」
少女「この地下通路の存在を知っているのは、あなただけですか?」
皇帝「……いや、確かに向こうにも漏れていると考えるべきだったな」
術師「壁面に施された位相転移術式……から補助魔導式に偽装した撹乱魔導回路……を検出」
侍女「魔導式修正を妨害する結界もあるようです」
少女「ただちにその結界ごと上書きします。
かなり大掛かりな魔導回路なので、侍女さんと術師さんは補助に回ってください」パキキッ
侍女「はい」ビリッ
術師「了解……した」オォン…
魔女「僕は再起動スイッチ役かよ。地味だなー」
妖精「!」パタパタ
魔女「わーってるよ、心配しなくてもちゃんとやるっつーの」
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:53:24.42 ID:7BjQiiB3O [3/16]
皇帝「……しかしこれは第一、第三研究室の研究員が総出で十日掛かって施工した魔導装置だぞ。
援軍がここに突入するまでに間に合うのか?」
……バキンッ!
少女「上書き終わりました。
魔女さん、お願いします」
魔女「あいよ」バチバチバチッ
術師「この子……はひとりで魔導工学……を52世代分ぐらい進めちゃう……
……そう言う子だから。魔王後継者は伊達じゃあ……ない」
魔女「いつまでも妖精界の王立十二研究室が首位独走してるとか勘違いしてたら、
そのうち痛ーい目見ることになるぜ、おっさん。
そら、トンネル開通だ」バチンッ
侍女「最終点検を行います。今しばしお待ちを」ヴゥン…
魔女「しっかりやれよ。
暗黒空間にばらまかれるのは御免だからな」
皇帝「……確かに色々と認識を改める必要がありそうだ」
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 18:06:56.27 ID:7BjQiiB3O [4/16]
ガチャッ、
室長「皇帝! よくぞ御無事で!」
皇帝「何とかな。この者らのおかげだ」
特使「……また会ったな。増援なら歓迎する」
魔女「ついこないだ宣戦布告したばっかだろーがよぉー。
張り合いがねぇーな」
術師「ともあれ……人間界と妖精界、それぞれ……最高戦力の即席魔導師連合……ここに結成」
侍女「魔王様なら『敵に回さなくてよかった』と仰るところでしょう」
室長「勝ち馬に乗れて幸運だと喜ぶべきかね?」
魔女「お、なかなか言うじゃねぇーか。
妖精にも話のわかるやつがいるんだなー」
219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 18:26:06.60 ID:7BjQiiB3O [5/16]
少女「戦況は?」
特使「この研究室は既に包囲されている。
今はまだ結界を保てているが、突破工作隊が到着するとさすがに厳しいだろう」
魔女「迎撃はできねぇーのか?」
室長「実はこの間、王宮命令で魔導弾薬をほとんど全て徴発されたばかりでねぇ」
侍女「予め弱体化を図っていたわけでございますね」
特使「新たに精製するにも時間が足りなかった。
少ない弾薬で下手に挑発すれば、戦略魔導砲台の砲門をこちらに向けられかねない」
室長「だが、それは相手方が圧倒的有利な状況に胡座をかいて油断していると言うことでもある。
我々とて、ただ座して弾薬が運び出されるのを見ていたわけでは無い」
術師「秘策……あり?」
特使「この研究室は移動地形に乗っている。
つまり、妖精界の地脈の上に建っているわけだ」
室長「その地脈に秘密裏に細工をして置いた。
特定の座標で魔導式を起動すれば、この研究施設ごと人間界に位相跳躍できる」
魔女「そりゃ……えらい派手な亡命方法だな」
室長「この研究室は捨てるには惜しくてね」
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 19:43:01.39 ID:7BjQiiB3O [6/16]
少女「その座標に到達するまで、何とか結界を保たせればいい、と」
室長「そう言うことですな。
工作隊の制圧が早いか、座標への到着が早いか、際どい賭けになる」
侍女「その座標にはあとどれくらいで?」
特使「あと……半日ほどだ」
術師「王宮に工作隊……っぽい部隊が居た。
あそこ……からここまで、普通……に移動したらどのくらい掛かる?」
皇帝「元々そんなには離れていない。
半日は掛からないだろう」
魔女「てめぇーのぶっかけた呪いはどうなったんだ?」
術師「解呪はそう……難しくない。
ちょっとした……時間稼ぎだけ」
侍女「工作隊のみなら少数でしょうし、移動も迅速かと」
特使「……どうにも、相手の油断を差し引いても部が悪いようだな」
妖精「!」グイグイ
少女「え? 何?」
侍女「妖精界の地図を出せ、と言っているようです」
少女「……地図を広げて見てください」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 20:23:19.73 ID:7BjQiiB3O [7/16]
バサッ、
妖精「!」ツンツン
侍女「これは……この研究室の乗った移動地形ですね」
妖精「ーっ! ーっ!」パタパタパタッ
魔女「この移動地形の進路か?」
妖精「ッ!」ズビシッ
少女「わたし?」
妖精「!」コクコク
魔女「どう言う暗号だこりゃ」
術師「……難解」
室長「ちょっと我々にはわからないね」
特使「うむ……」
侍女「どうでしょうか?」
少女「……やってみましょう。
室長さん、この移動地形のより詳細な地図と、
地脈の流れや魔力的な性質をまとめた書類などがあったら見せてもらえますか?」
室長「なにやら勝算があるようだね」
魔女「よくわからんが、えらいことをやらかしそうな気配がするぞ」
術師「……わくわく」
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 20:55:28.37 ID:7BjQiiB3O [8/16]
少女「……」ペラ…ペラ…
侍女「……」
特使「工作隊が結界突破の準備を始め出しだぞ」
室長「まだ目標の座標に到達するまでしばらく時間が掛かる。
このままでは間に合わないな」
少女「……大丈夫です。
必ず間に合わせて見せますので、術式起動の用意をしてください」バサッ
特使「……わかった。
室長、行きましょう」
室長「あぁ、任せたぞ」
……バタン。
魔女「で、どーするつもりだ?
例の透明化で魔力すっからかんなんだろ?」
少女「いえ、術式演算能力の回復にはまだ少し時間がいりますが、
単純な魔力ならまだまだ残ってます。
今回必要なのは、この魔力だけですから」
術師「魔王の後継者……本領発揮」
魔女「底無しの化け物だな」
少女「では、少し行ってきますね」
侍女「わたくしもお供いたします」
妖精「!」フリフリ
231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 21:05:34.48 ID:7BjQiiB3O [9/16]
ザッ、
少女「この地点ですね」
侍女「間違いございません」
少女「では、中のことは彼らに任せましょう。
……行きます」パリッ……
侍女「いつでもどうぞ」パキッ……
――――ドゴォォォォォオオオオオオッ!!
魔女「うおぉっ!」グラッ
術師「地震……?」グラグラ
魔女「あいつら外で何やってんだ?!」
術師「とんでもない魔力……津波のような魔力の流れ……を感じる」
妖精「!」パタパタ
特使「室長、地形の移動速度が……!」
室長「うむ。術式起動用意ッ!」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 21:22:25.75 ID:7BjQiiB3O [10/16]
ゴゴゴゴゴ……
特使「全員無事か?」
術師「……なんとか」
魔女「いってぇー……頭打ったぞ畜生」
室長「転移はなんとか成功した。
強力な魔力爆発の余波で、目標からは少しだけずれてしまったがな」
特使「まさか地脈に魔力を流し込んで、強引に移動速度を上げるとは……」
室長「一個体の持つ魔力量の常識を鼻で笑うような凄まじい力業だ」
魔女「やっぱり無茶苦茶やりやがって……」
術師「さすが……コレの弟子……」
特使「それで、その魔王代理はどこに?」
侍女「ここです」
少女「……すぅ……すぅ……」
魔女「のんきな奴だなぁオイ。戦争中だぞー」
術師「魔力を全力で放出し切った……から、無意識の……安全装置が発動した」
室長「ともあれ、ここまで来ればまだしばらく妖精界の連中も手を出せまい。
寝かせてあげよう」
特使「研究室の寝室を貸そう。こっちだ」
侍女「ありがとうございます」ペコリ
少女「……すぅ……んん……すぅ……すぅ……」
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:20:21.70 ID:7BjQiiB3O [11/16]
皇帝「さて、これからどうしたものか……」
侍女「四帝国同盟に、反王妃側の妖精族を加えれば、かなりの抑止力になるかと」
室長「暫定的にでも人間界に領土を認めてもらえればありがたいねぇ」
魔女「まぁこんだけ差し迫った状況があれば大概なんとかなるだろ」
侍女「冥王にも支援を要請してみましょう」
術師「それで向こう……と互角以上の交渉ができる」
特使「よし、ならばできるだけ早く体勢を立て直して――――」
……ゴゴゴゴゴ……
魔女「……なにやら不吉な予感がするんだが」
侍女「これは……強大な魔力の急速な接近を感じます」
室長「まさかこちらが体勢を整える前に、一発ぶち込んじまおうって腹か?」
特使「……間違いない、戦略魔導砲だ!
距離500!」
魔女「てめぇーコラッ、しばらくは大丈夫だっつっただろオイ!」
室長「いやはや……弱ったね。
どうやらいよいよ王妃の逆鱗に触れたようだ」
術師「結界は間に合わない……絶体絶命」
魔女「たッはー、なんてこったい!」
特使「距離150! これはもう……ッ」
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:22:59.11 ID:7BjQiiB3O [12/16]
魔女「こうなったら僕だけでも門で逃げる!」
術師「ずるい……連れてって」ガシッ
魔女「離せこのバカッ! お前は地獄行きたがってただろうがッ!」グイッグイッ
術師「やーだー……」グググッ
魔女「えぇい、ひっつくな気持ち悪い!
人間諦めが肝心なんだよッ!」
特使「距離50……室長」
室長「あぁ……どうやらここまでのようだな」
皇帝「これで終わりか……」
妖精「……」
侍女「魔王様……」
少女「……魔王……さん……」
「寝る子は育つってなぁ。
っつーかもう私よりかなり強くなってんじゃね?」ナデナデ
少女「……ん……」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:24:12.13 ID:7BjQiiB3O [13/16]
ヒュゥゥゥ……ゥゥゥウウウウッ
ズドンッ!!
魔女「今度はなんだ!?」
術師「……あれは、水晶……?」
特使「な、なんと巨大な……」
室長「空から降って来たぞ!」
侍女「……炎獄の水晶!
あれならどんな巨大な魔力でも吸収できます!」
魔女「炎獄だぁッ?
っつーことは――――」
――――カッ!!
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:27:58.32 ID:7BjQiiB3O [14/16]
――――この後、人間界四帝国と妖精界共存派、更には冥界を加えた、
魔導史上初の異世界間大同盟が結ばれた。
妖精界純潔派は程なく降伏し、王権そのものは共存派の皇帝が握ることとなった。
皇帝はすぐさま魔王城のすぐそばに共存派、人工妖精、ホムンクルスなどが暮らす都市を建設し、
それぞれの立場や今後について対話して行く姿勢を示した。
また、四帝国の数多くの魔導師達も妖精界の魔導技術を求めて魔王城のそばに移住して来たため、
魔王城下は本当に全世界最大の魔導都市となったのだった。
ちなみに、出現位置のズレた王立第二研究室は見事に魔女の工房を踏み潰していた。
しかし、愛しの人(?)との思わぬ再会に狂喜乱舞し、
早速嬉々として殺し合いに興じる魔女は特に気に留める様子も無かったので、
術師の提案からその地区はそのまま人間界初の総合魔導研究室兼魔導教育機関にしてしまった。
人間や妖精だけでなく、魔族や竜族の留学生も徐々に増加してゆき、
ここもやはり全世界最大の施設となる。
……そんな様々なゴタゴタを経て、少女はまた少し、成長したのだった。
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:30:20.43 ID:7BjQiiB3O [15/16]
と言うわけでまさかの第三部終わり。
妖精「♪」パタパタ
侍女「お祭りのようだ、と言っているようです。
確かに、もし今この付近にいる人間がみな町民なら、
ここ一帯は人間界最大規模の城下町になりますね」
術師「しかも人間界……で一番多国籍……かつ多文明……の魔導都市」
魔女「どっちかっつーと、今すぐ世界大戦がおっ始まりそうな雰囲気だけどな。
っつーかなんでてめぇーがここに居んだよ」
術師「屍霊術師……としては地獄と言う場所に興味……がある」
魔女「あーそーかい。じゃあ今度連れてってやんよ」
術師「……わくわく」
少女「あぁ、もう……なんでこんな事に……」ガクッ
470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:15:09.17 ID:kbBBO15UO [11/15]
侍女「! どうやら外で動きがあったようです」
魔女「おおッ、ドンパチか?」
術師「ここで大戦勃発……したらコレが仕掛け人……歴史に残る。汚点として」
魔女「うッせぇー。戦場のど真ん中に投げ込むぞ」
術師「そもそもコレ……があっちこっちで弟子自慢をしたせい……
どの国も魔王の後継ぎと同盟……を結びたいのが本音」
侍女「勇者派遣協約もすっかり形骸化しつつありますしね」
少女「協約?」
侍女「東西南北の四帝国で結ばれた一つの国際協約でございます。
魔王討伐による世界平和の維持のため、
定期的に各帝国から有能な戦士や魔導師を派遣して、
この任務に当たらせると言うものです」
魔女「まぁ表向きはそうなってるが、実際は魔王退治で人材を『消耗』させて、
それぞれの帝国が互いの戦力が強くなりすぎないようにするための一種の軍縮協約だな。
もし討伐に成功したら、それはそれでえれぇーアドバンテージになるから
どこも文句は言わねぇーけどよー」
術師「派遣されるパーティー……はたまったものじゃあ……ない」
魔女「しかしそう考えると、あの勇者は結構骨のあるやつだったんだなぁ」
471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:31:12.31 ID:kbBBO15UO [12/15]
侍女「しかし……魔王様がお亡くなりに……
と言うより地獄に移住されたので、事情が変わったのでございます」
魔女「人間のてめぇーなら同盟交渉の余地があるって思われたんだろ」
少女「……同盟交渉って、いきなり軍隊を派遣してするようなものなんですか?」
術師「それがコレ……のせい。
四帝国での『魔王後継者』の評価……これ」ペラッ
【魔王後継者について】
……人間族の少女であるが、魔王の魔力を受け継いでおり、
魔王以上の比類無き才覚を有し、魔導・魔術・人外外法に通じ、
一国を易々と滅ぼす地獄の氷竜を従え、
しかもその氷竜を一瞬で葬り去るほどの力を有する……
少女「頭が痛くなって来ました……」
術師「……誉めすぎ」
魔女「その方が師匠の僕に箔が付くだろうが」
侍女「だから使節団ではなく、軍隊を派遣して来たのですね」
魔女「しかも四帝国が同じタイミングで来たもんだから、
睨み合いになってるわけだ」
術師「それで小競り合い……が起きてる……」
少女「はぁ……とりあえず、様子を見て来ますよ」
侍女「お供致します」
魔女「ちゃんと全面衝突の総力戦に持ってけよな」
472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/24(水) 13:42:04.18 ID:kbBBO15UO [13/15]
侍女「どこから交渉に行かれますか?」
少女「まずはあの小競り合いを止めます。
まったくもう……」パリッ、バチチッ
バキィィイイインッ!
氷竜「フュウゥウヴ……」ズゥウウゥン
ウ……ウワァアアアアアア
侍女「両国の兵士が散り散りに逃げて行きましたね。
争っていたのは西の帝国と北の帝国のようです」
少女「これでよし。
別にどこからでもいいんだけど、西の帝国から行ってみようかな……」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:01:20.82 ID:q/igm2keO [1/14]
ガチャ
少女「ただいま帰りました」
術師「おかえり……どうだった?」
魔女「全面戦争かッ」
少女「同盟を結ぶとすれば、四帝国それぞれと同時だと言っておきましたが……
どうにも頭の固い人達ばかりでしたね」
魔女「なんだつまんねぇーな。
見た目で舐められてんじゃねぇーの」
術師「わかる人……にはわかる……もの」
少女「はぁ。ありがとうございます」
妖精「!」パタパタ
魔女「ん?
あ、そうそう。てめぇーらが出かけてる間に、こっちにも客が来たぜ」
少女「そうなんですか?」
魔女「妖精界対人間界、全面戦争のお知らせだ。
そっちでバトらねぇーならこっちを頑張ってくれよ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:08:55.59 ID:q/igm2keO [2/14]
侍女「妖精界……でございますか?」
魔女「おうよ。連中の特使が来てな。
さすがに目ぇ付けられてるよ、僕らは。
そこらの帝国よりよっぽど危険な障害だと思われてるらしいぜ。
留守だっつったら、また来るってさ」
術師「前途多難……がんばって」
魔女「てめぇーも僕らの勢力の一人として数えられてただろうが」
術師「……満更でもない」
魔女「そーかい。そりゃ結構」
少女「また頭痛の種が増えた……」ガクッ
妖精「?」サスサス
侍女「どうかお気を確かに」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 01:19:01.61 ID:q/igm2keO [3/14]
少女「……今日はもう休みます」
侍女「今すぐ寝室の準備を」
魔女「多分明日また来るだろうから、徹底抗戦、見敵必殺の旨をきっちり伝えろよ」
術師「相変わらず……魔王より魔王っぽい……」
……バタン。
術師「……でも、どうして……妖精界が?」
魔女「さぁ。暇だったんじゃねぇーの」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 13:46:37.82 ID:q/igm2keO [5/14]
少女「おはようございます」
妖精「!」パタパタ
術師「おはよう……よく眠れた?」
少女「おかげさまで、それなりには……」
術師「昼前には特使……がまた来る」
少女「あぁ、そんな話でしたね……」
侍女「おはようございます。
朝食の準備ができました」ペコリ
少女「魔女さんは?」
術師「昨日夜更かし……してたからまだ寝てる」
少女「そうですか。
じゃあ先に食べちゃいましょう」
術師「いただき……ます」
侍女「どうぞこちらの部屋へ」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:06:13.67 ID:q/igm2keO [6/14]
少女「特使って、どんな方でした?」
術師「少しの間……しか居なかったからよくわからない……
……けど、かなり強烈な魔力……を纏ってた……つまり臨戦態勢」
少女「やっぱり警戒してたんでしょうか?
軍隊で来られなかっただけよかったのかな……」
術師「妖精界の軍隊……は滅多に妖精界から外に出ない……
……大概の場合、魔導砲術団……が妖精界から一発……打ち込むだけで、
戦争……は終わる。防御結界に特化した要塞……でもないと、
一瞬で辺り一帯が灰……になるから」
少女「物騒ですね……」
術師「妖精は魔導工学にも、魔導そのもの……にもずば抜けて秀でてる……強敵」
リンリンリン、リンリンリン、
術師「噂をすれば……」
侍女「どういたしましょう?」
少女「とりあえず、応接室に通してください」
侍女「かしこまりました」
少女「術師さんも来てもらえますか?」
術師「わかった……行く」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:28:16.88 ID:q/igm2keO [7/14]
ガチャ、
侍女「どうぞこちらへ」
特使「……」
少女「初めまして。
一応魔王代理をやってる者です」ペコリ
術師「その師匠の知り合い……」
特使「お初にお目に掛かる。
私は妖精界第二魔導工学研究室の副室長をやっている者だ」
少女「この度はわざわざどうも。
昨日は留守にしてて申し訳ありません」
特使「いや、それは一向に構わない。
それより、本題に移ろう。時間が惜しい」
少女「はぁ」
術師「せっかち……」
特使「妖精界は、人間界に対し間も無く宣戦布告を行う。
これは王室の決定であり、恐らく覆されることは無い」
少女「……いきなりですね」
術師「ね……」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:53:21.24 ID:q/igm2keO [8/14]
特使「この宣戦布告には、勿論それなりの理由がある。
まずはそれについて簡単に説明したい」
少女「……」
特使「主には二つある。
一つは、現王権に反駁する者を黙らせる、もしくは炙り出すためだ」
術師「それ、言っちゃって……いいの?」
特使「もう一つは……人工妖精の問題がある」
少女「!」
侍女「……」
特使「妖精族、特に王家の血筋に近い者は、自らの血に大きな誇りを持っている。
実際に妖精族の中でも魔力的に特に優れた者を多く輩出しているからだ。
しかし、人間界の何名かの魔導師は、この『王家の血』に模した、
極めて精密精緻な人工妖精を生成し、これを使役する技術を持っている」
術師「……話が見えて来た」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 14:56:54.16 ID:q/igm2keO [9/14]
特使「現に、そこにいる侍女もそうだ。
……素体は妖魔大戦当時の第二皇女であろう。
彼女は少し特殊な血筋ではあったが……
いずれにせよ、王家の者にはそれが許せないのだ。
王家の血が人間に隷属するなどあってはならないと考えている」
少女「……」
特使「そして、人工妖精を使役する人間、
退いては人間に隷属する全ての人工妖精を、
この上なく嫌悪し、憎悪しているのだ。
なので、今回の宣戦布告と相成った」
侍女「……」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:15:07.70 ID:q/igm2keO [10/14]
魔女「要するに、てめぇーんとこのくっだらねぇー選民意識が原因なわけだな。
どこでも戦争の原因ってのは、暇潰しか、差別か、もしくはそのどっちもかのどれかだ」
少女「魔女さん……」
術師「大体、妖精界……にもホムンクルスの生成技術……があるはず。
それも原理的……には人工妖精の生成技術と同じ」
魔女「大方、僕らのサンプルでもこっそり持って帰って、
早速ホムンクルス作る気だったんじゃねぇーの?」
特使「……」
少女「本当に、この戦争は避けられないんですか?」
特使「……一研究者には判断しかねる」
魔女「けっ。こう言う時だけ研究者面かよ」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:31:19.76 ID:q/igm2keO [11/14]
特使「……伝えるべきことは以上だ」ガタンッ
少女「特使さん」
特使「……なんだ」
少女「例えばですが、侍女さんには、拘束術式は施されていません」
侍女「……」
妖精「!」パタパタ
少女「この子もです。
侍女さんもこの子も、自分の意思でわたしと共に歩んでくれています」
特使「……自分も魔導研究者の端くれだ。
その位は最初からわかっている」
侍女「……では、僭越ながら申し上げます。
王家には王家の誇りがあるのかも知れませんが、
わたくし達にはわたくし達の自由意思と誇りがあるのです。
わたくしの誇りは、この城に、この方に使えることです。
何人たりとも、この誇りを陰らせることはできません」
術師「かっこいい……」パチパチ
少女「あなたにも、あなたの誇りがあるでしょう。
それをよく考えてみてください」
特使「……失礼する」
……バタン。
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 15:42:18.03 ID:q/igm2keO [12/14]
魔女「いけ好かねぇーやつだな」
術師「妖精界……では魔導技術の研究……は完全に王権の管理下……にある。
こちらとは文化……も価値観……も違うからある意味……しょうがない」
少女「あの人なら、きっとわかってくれますよ」
侍女「わたくしも、そう思います」
妖精「!」コクコク
魔女「ま、話が通じたところでどうしようもねぇーけどな。
僕は工房に戻るぜ。色々準備があるし」
術師「……あなた……はどうするの?」
少女「わたしは、四帝国で同盟を結ぶように説得して来ます。
人間同士で争っている場合ではないと。
……それが終わったら、妖精界に行きます」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/27(土) 16:11:26.53 ID:q/igm2keO [13/14]
魔女「っつーわけで、はるばる来たぜ妖精界!」ドーン
術師「工房に帰る……んじゃなかったの?」
魔女「何言ってんだよ。
『ハイパーかっこいい魔女と不愉快な仲間達の冒険・妖精界征服編』に
主人公が居ないわけにはいかないだろーが。
だからこないだの『門』だって妖精界仕様に改造してやったんだろ」
術師「自己顕示欲……のかたまり」
魔女「うるせぇー!」
少女「とにかく、とりあえず首都を目指しましょう。
あまり目立たないように……ってもう手遅れかな……」
侍女「以前より更に荘厳で巨大な造形になっていますね、あの門」
魔女「階段も13段まで減らした改良型だぜ。
妖精界にも似たようなもんはあるだろうが、
地獄にも竜界深部にも対応してるやつはそうそう無いな」
術師「すぐ張り合いたがる……お子ちゃま」
魔女「お前だけ今から地獄行くか? あ?」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 22:14:21.23 ID:GsBlRFawO [1/7]
少女「侍女さん、地図を」
侍女「はい。すぐに用意いたします」ガサゴソ…
バサッ、
侍女「こちらが妖精界の地図です。
書庫にあったものですが、これはかなり正確なものかと思われます」
魔女「お、僕の持ってるやつより細かいな」
術師「魔導式……が施されてる」
侍女「暦に従った回路に魔力を流せば、
その年月日時点での移動地形や浮島の座標も厳密に表示されます」ポゥ…
ジジッ…ザザザザ……
魔女「おー、地図が書き換わったな」
侍女「便利……」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 22:26:14.04 ID:GsBlRFawO [2/7]
少女「今いる場所もこの印を見れば一目瞭然ですね」
術師「首都は……これ?」
少女「それですね。
ここからだとそんなに距離は無いはずです」
魔女「そうなるように設定したからな。
……まぁ問題と言えば、僕が使ってた地図はそんなハイカラなもんじゃなかったから、
移動地形に乗った妖精軍哨戒基地がすぐそばに来てたってのを知らなかったっつーことだ」
術師「三方向から多数……の魔力源の移動……を感じる」
魔女「早速お出迎えか」
侍女「どういたしましょう?」
少女「ここで捕まるわけにはいきません」パリッ、パキキッ
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/28(日) 22:58:16.59 ID:GsBlRFawO [4/7]
「目標消失しました!」「機器系統は全て異常無しを示しています……」
「探せ。まだこの付近にいるはずだ」「はッ! 直ちに!」
「ここに足跡が……」「結界解析班が到着……」
魔女「なんだ、腕慣らしに一発かましてやろうと思ったのによー」
術師「目と鼻の先……なのに全然気付かれない……」
少女「『門』の構造を応用した術式です。
魔導的存在階層を僅かにずらしたことで、
わたし達は通常階層からは魔力質量ゼロとしてしか認識されません」
侍女「つまり、彼らから見れば完全に『消失』したと言うわけでございますね」
魔女「なるほどなー。術式の痕跡も残らないから追跡も難しいってことか」
術師「しかも全員分……無駄魔力垂れ流し……してるコレまで……すごい」
少女「あまり長くは保ちませんけどね」
魔女「一々喧嘩売りつけないと喋れねぇーのかてめぇーは」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:17:35.99 ID:GsBlRFawO [5/7]
少女「では、このまま首都の王宮まで行きましょう」パキッ、パリッ……
魔女「そんなに保たないんじゃねぇーのか?
あの門を連続稼働させてるようなもんなんだろ?」
少女「そうですね。
大体この人数だと三日間ぐらいかな」
術師「それでも三日……」
魔女「改めて、大概規格外だなてめぇーも」
侍女「しかし、近いとは言ってもここから首都までは大河を越えなければなりませんし、
三日で歩ききれる距離でしょうか?」
少女「大丈夫ですよ。
わたしに考えがあります」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:31:15.30 ID:GsBlRFawO [6/7]
皇帝「……わかった、下がって良いぞ」
大臣「失礼致します」
……バタン。
皇帝「やれやれ……戦争か……」
――――バキンッ
少女「どうも初めまして、皇帝さん」ペコリ
術師「ここが……執務室……すごい結界装置……」
魔女「お疲れ気味の所申し訳ねぇーけど、お茶でも淹れてくんない?」
侍女「では、わたくしめが」カチャカチャ
妖精「♪」パタパタ
皇帝「……は?」ガタンッ
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/28(日) 23:47:40.63 ID:GsBlRFawO [7/7]
術師「まさか氷竜……ごとあの術式……を施して首都まで飛ぶなんて……」
少女「さすがに半日弱しか保たなくなりますけど、間に合ったでしょう?」
魔女「都市の周りを雲の上まで貫いてた結界も完全スルーだったしな」
侍女「王宮の結界もまた同様です。
どんなに堅牢でも、そこに存在しない者の侵入は拒めない」トポポポ……
魔女「おー、いい香りだな」
侍女「携帯型魔導ティーセットでございます。
どうぞお熱いのでお気を付けて」カチャ、
魔女「ちょっと防犯対策考え直した方がいいんじゃねぇーの?
さっきここの裏庭に氷竜が着陸したんだぜ」ズズッ
術師「これが戦争……だったらチェックメイト」
皇帝「……何が望みだ?」
少女「対話ですよ、皇帝さん。
お茶、こっちにも頂けますか?」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:16:43.56 ID:RjlMA036O [1/7]
侍女「お待たせいたしました」カチャカチャ、
少女「ありがとうございます。
……さて、では、とりあえず自己紹介からですね。
わたしは人間界四帝国同盟監査調停役の者です。
あ、魔王代理もやってます」
皇帝「……第五八代妖精界皇帝だ。
君達の噂はよく聞いている」
魔女「光栄なもんだぜ。
これなんだ?」ツンツン
術師「それ……は魔導天秤……妖精界の魔導工学で用いる複合実験機……
……今はこの部屋の結界……を維持、調整してる」
魔女「ふーん。他にも色々あるな」
少女「あんまり暴れないで下さいね」
魔女「わかってるっつーの。
さすがに敵陣のど真ん中で面倒事は御免だ」
皇帝「……どうしてここに?」
少女「あなたに皇帝として、一つ意見を伺いに来ました」
皇帝「……」
少女「あなたは人間を憎んでいるのですか?」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:31:37.26 ID:RjlMA036O [2/7]
少女「特使さんの説明では、どうしても納得できなかったんです。
もし妖精界全体が人間を憎んでいるなら、色々な矛盾が生じるはずです」
術師「……妖精と人間が結ばれ……その子孫……が活躍する伝説は、
妖精界……でも人間界……でも無数にある」
魔女「古い魔導書の中では、人工妖精やホムンクルスの由来はそこにあるってことになってるしな」
少女「それどころか、妖精界の王家にも人間と結ばれた人や、
その子供が玉座についた記録もあります」
皇帝「……その通りだ。
太古の昔、人間が妖精を異世界の住人として特別視していたように、
妖精もまた人間を特別な存在だと考えいた。
まだ今ほど魔導が発達しておらず、互いに素朴な暮らしを営んでいた頃はな」
魔女「王権に説得力を持たせるために、人間との混血も大いに歓迎されたわけだ」
術師「歴史上の偉大な魔導師……は、その多くが異種族との混血……」
皇帝「ある意味で、我々が人間界と密接に繋がっていた時期が、
最も妖精界が繁栄した時期であると言える……
妖精界の優れた魔導工学技術も、その時代に生み出されたものだ」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 01:42:32.24 ID:RjlMA036O [3/7]
魔女「えらくあっさり認めるじゃねぇーか」
術師「人工妖精の話……は戦争と関係……ない?」
皇帝「いや、人間や人工妖精を忌み嫌っている者も相当数いるのは事実だ。
……しかし、さっき言ったように、それは現王権の否定にもなる」
少女「では、一体何が原因なんです?
なぜ突然妖精界は人間界と断絶して、今度は戦争まで起こそうとしているのですか?」
皇帝「……」
侍女「お茶のおかわりはいかがですか?」カチャ、
術師「気が利く……ありがとう」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:06:17.97 ID:RjlMA036O [4/7]
皇帝「……妖魔大戦の折り、魔王に引き渡された第二皇女。
あの子は……この五八代皇帝の実の娘だ。
まさに、その侍女はあの子の生き写しだ……母親にも良く似ている」
侍女「……」
皇帝「第一皇女の母親は純粋な妖精族の貴族出身の者だったが、
第二皇女の母親は人間と交わった血流を持つ有能な魔導技師だった。
……しかし妖魔大戦終結時には、彼女らの血筋は完全に途絶えたのだ」
術師「第一皇女……とその母親たる現王妃……が皆殺しにした。
……ま、コレもそれ……に荷担してたわけだけど」
魔女「なんだよ、昔の話だろ?
そんな事情知らねぇーよ」
皇帝「……王妃とその一族は、純粋な妖精族のみが妖精界を束ねるべきだと考えている。
第一皇女にも、人間の血は流れていない」
少女「つまり……あなたの娘では無い?」
皇帝「そうだ。
地位の関係で第一継承権を持ってはいるが……」
術師「……その理屈……で考えると、皇帝もまた憎むべき血――――」
――――ドゴォォォオオオン……
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:24:18.18 ID:RjlMA036O [5/7]
ゴゴゴゴゴゴ……
皇帝「……始まったようだな」
魔女「なんだなんだぁ?」
術師「恐らく皇帝を……人間の血筋を王権から排除……する計画……」
少女「王権の乗っ取り……これが特使さんの言ってた炙り出しですね」
侍女「すでにここは囲まれていると見てよろしいかと」
皇帝「軍は王妃側に付いたようだ……」
魔女「どうする?
正規の妖精魔導軍が相手だと、正面突破はさすがに厳しいぞ」
少女「あの術式もまだしばらくは使えませんし、氷竜の召還もまだ厳しいですね」
侍女「このペースで砲台が放火を続ければ、ここの陥落も時間の問題でございます」
妖精「!」パタパタ
術師「……と言うわけで、ついに出番到来……」オォン…
魔女「そう言えば一応てめぇーも術師だったなぁ」
少女「お願いします、術師さん」
侍女「さぁ、あなたもこちらへ」
皇帝「す、すまない……」
術師「……呪術精霊召還……」
オォンオォンオォンオォンオォンオォン……
186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:39:14.76 ID:RjlMA036O [6/7]
術師「……、…、……、……、」ブツブツブツブツ……
魔女「今更だが……あいつの本業は召還術と呪術だ。
見ろ、あのキモい光ってる線。
全身に魔導式やら魔法陣やらを埋め込んでるんだよな」
少女「なんと言うか……禍々しい魔導回路ですね」
魔女「僕はよく魔族より魔族っぽいとか言われるが、
僕に言わせればあいつは地獄の怨霊より怨霊っぽいぞ」
侍女「……多数の精霊がこの周囲一帯に呪術を媒介しています」
魔女「下手な結界はあの精霊が全部突き破っていくわけだ。
連中は完全に包囲戦のつもりで来てただろうし、ドンピシャだな。
守りはてんで薄い」
少女「ところで、一体どんな呪術を……?」
魔女「あんまり考えたくないね」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:23:19.69 ID:7BjQiiB3O [1/16]
少女「……砲撃が止みましたね」
侍女「周囲の魔力反応が消えて行きます」
術師「……さぁ、これで……脱出できる」オォン……
魔女「一体どんな手品を使ったんだ?」
術師「色々……戦意喪失するようなもの……術式自体はすごく……簡単」
魔女「例えば?」
術師「もしこの王宮……の壁に、自分の歯の神経……が繋がってたらどうする?」
魔女「相変わらず果てしなく趣味悪ぃーな」
術師「コレに言われたら……おしまい」
少女「とにかく、この隙に安全な所に行きましょう」
皇帝「……第二研究室の室長なら、我々を匿ってくれる」
侍女「第二研究室……副室長が特使の方でございましたね」
魔女「そこが既に抑えられてるって可能性は?」
皇帝「それは考えられるが、そう簡単には陥落しないだろう。
あそこの研究員は皆、人間の血筋を汲んでいる」
魔女「あの特使を含めて、全員相当な火力を持ってるってことだな」
少女「わたし達も戦力になります。
なんとか拮抗状態を作りましょう」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:38:34.82 ID:7BjQiiB3O [2/16]
ガシャンッ
皇帝「この地下通路を通れば、安全に研究室まで辿り着けるはずだ」
魔女「安全? それマジで言ってんの? なんかの冗談だろ」
少女「この地下通路の存在を知っているのは、あなただけですか?」
皇帝「……いや、確かに向こうにも漏れていると考えるべきだったな」
術師「壁面に施された位相転移術式……から補助魔導式に偽装した撹乱魔導回路……を検出」
侍女「魔導式修正を妨害する結界もあるようです」
少女「ただちにその結界ごと上書きします。
かなり大掛かりな魔導回路なので、侍女さんと術師さんは補助に回ってください」パキキッ
侍女「はい」ビリッ
術師「了解……した」オォン…
魔女「僕は再起動スイッチ役かよ。地味だなー」
妖精「!」パタパタ
魔女「わーってるよ、心配しなくてもちゃんとやるっつーの」
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 17:53:24.42 ID:7BjQiiB3O [3/16]
皇帝「……しかしこれは第一、第三研究室の研究員が総出で十日掛かって施工した魔導装置だぞ。
援軍がここに突入するまでに間に合うのか?」
……バキンッ!
少女「上書き終わりました。
魔女さん、お願いします」
魔女「あいよ」バチバチバチッ
術師「この子……はひとりで魔導工学……を52世代分ぐらい進めちゃう……
……そう言う子だから。魔王後継者は伊達じゃあ……ない」
魔女「いつまでも妖精界の王立十二研究室が首位独走してるとか勘違いしてたら、
そのうち痛ーい目見ることになるぜ、おっさん。
そら、トンネル開通だ」バチンッ
侍女「最終点検を行います。今しばしお待ちを」ヴゥン…
魔女「しっかりやれよ。
暗黒空間にばらまかれるのは御免だからな」
皇帝「……確かに色々と認識を改める必要がありそうだ」
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 18:06:56.27 ID:7BjQiiB3O [4/16]
ガチャッ、
室長「皇帝! よくぞ御無事で!」
皇帝「何とかな。この者らのおかげだ」
特使「……また会ったな。増援なら歓迎する」
魔女「ついこないだ宣戦布告したばっかだろーがよぉー。
張り合いがねぇーな」
術師「ともあれ……人間界と妖精界、それぞれ……最高戦力の即席魔導師連合……ここに結成」
侍女「魔王様なら『敵に回さなくてよかった』と仰るところでしょう」
室長「勝ち馬に乗れて幸運だと喜ぶべきかね?」
魔女「お、なかなか言うじゃねぇーか。
妖精にも話のわかるやつがいるんだなー」
219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 18:26:06.60 ID:7BjQiiB3O [5/16]
少女「戦況は?」
特使「この研究室は既に包囲されている。
今はまだ結界を保てているが、突破工作隊が到着するとさすがに厳しいだろう」
魔女「迎撃はできねぇーのか?」
室長「実はこの間、王宮命令で魔導弾薬をほとんど全て徴発されたばかりでねぇ」
侍女「予め弱体化を図っていたわけでございますね」
特使「新たに精製するにも時間が足りなかった。
少ない弾薬で下手に挑発すれば、戦略魔導砲台の砲門をこちらに向けられかねない」
室長「だが、それは相手方が圧倒的有利な状況に胡座をかいて油断していると言うことでもある。
我々とて、ただ座して弾薬が運び出されるのを見ていたわけでは無い」
術師「秘策……あり?」
特使「この研究室は移動地形に乗っている。
つまり、妖精界の地脈の上に建っているわけだ」
室長「その地脈に秘密裏に細工をして置いた。
特定の座標で魔導式を起動すれば、この研究施設ごと人間界に位相跳躍できる」
魔女「そりゃ……えらい派手な亡命方法だな」
室長「この研究室は捨てるには惜しくてね」
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 19:43:01.39 ID:7BjQiiB3O [6/16]
少女「その座標に到達するまで、何とか結界を保たせればいい、と」
室長「そう言うことですな。
工作隊の制圧が早いか、座標への到着が早いか、際どい賭けになる」
侍女「その座標にはあとどれくらいで?」
特使「あと……半日ほどだ」
術師「王宮に工作隊……っぽい部隊が居た。
あそこ……からここまで、普通……に移動したらどのくらい掛かる?」
皇帝「元々そんなには離れていない。
半日は掛からないだろう」
魔女「てめぇーのぶっかけた呪いはどうなったんだ?」
術師「解呪はそう……難しくない。
ちょっとした……時間稼ぎだけ」
侍女「工作隊のみなら少数でしょうし、移動も迅速かと」
特使「……どうにも、相手の油断を差し引いても部が悪いようだな」
妖精「!」グイグイ
少女「え? 何?」
侍女「妖精界の地図を出せ、と言っているようです」
少女「……地図を広げて見てください」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 20:23:19.73 ID:7BjQiiB3O [7/16]
バサッ、
妖精「!」ツンツン
侍女「これは……この研究室の乗った移動地形ですね」
妖精「ーっ! ーっ!」パタパタパタッ
魔女「この移動地形の進路か?」
妖精「ッ!」ズビシッ
少女「わたし?」
妖精「!」コクコク
魔女「どう言う暗号だこりゃ」
術師「……難解」
室長「ちょっと我々にはわからないね」
特使「うむ……」
侍女「どうでしょうか?」
少女「……やってみましょう。
室長さん、この移動地形のより詳細な地図と、
地脈の流れや魔力的な性質をまとめた書類などがあったら見せてもらえますか?」
室長「なにやら勝算があるようだね」
魔女「よくわからんが、えらいことをやらかしそうな気配がするぞ」
術師「……わくわく」
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 20:55:28.37 ID:7BjQiiB3O [8/16]
少女「……」ペラ…ペラ…
侍女「……」
特使「工作隊が結界突破の準備を始め出しだぞ」
室長「まだ目標の座標に到達するまでしばらく時間が掛かる。
このままでは間に合わないな」
少女「……大丈夫です。
必ず間に合わせて見せますので、術式起動の用意をしてください」バサッ
特使「……わかった。
室長、行きましょう」
室長「あぁ、任せたぞ」
……バタン。
魔女「で、どーするつもりだ?
例の透明化で魔力すっからかんなんだろ?」
少女「いえ、術式演算能力の回復にはまだ少し時間がいりますが、
単純な魔力ならまだまだ残ってます。
今回必要なのは、この魔力だけですから」
術師「魔王の後継者……本領発揮」
魔女「底無しの化け物だな」
少女「では、少し行ってきますね」
侍女「わたくしもお供いたします」
妖精「!」フリフリ
231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 21:05:34.48 ID:7BjQiiB3O [9/16]
ザッ、
少女「この地点ですね」
侍女「間違いございません」
少女「では、中のことは彼らに任せましょう。
……行きます」パリッ……
侍女「いつでもどうぞ」パキッ……
――――ドゴォォォォォオオオオオオッ!!
魔女「うおぉっ!」グラッ
術師「地震……?」グラグラ
魔女「あいつら外で何やってんだ?!」
術師「とんでもない魔力……津波のような魔力の流れ……を感じる」
妖精「!」パタパタ
特使「室長、地形の移動速度が……!」
室長「うむ。術式起動用意ッ!」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 21:22:25.75 ID:7BjQiiB3O [10/16]
ゴゴゴゴゴ……
特使「全員無事か?」
術師「……なんとか」
魔女「いってぇー……頭打ったぞ畜生」
室長「転移はなんとか成功した。
強力な魔力爆発の余波で、目標からは少しだけずれてしまったがな」
特使「まさか地脈に魔力を流し込んで、強引に移動速度を上げるとは……」
室長「一個体の持つ魔力量の常識を鼻で笑うような凄まじい力業だ」
魔女「やっぱり無茶苦茶やりやがって……」
術師「さすが……コレの弟子……」
特使「それで、その魔王代理はどこに?」
侍女「ここです」
少女「……すぅ……すぅ……」
魔女「のんきな奴だなぁオイ。戦争中だぞー」
術師「魔力を全力で放出し切った……から、無意識の……安全装置が発動した」
室長「ともあれ、ここまで来ればまだしばらく妖精界の連中も手を出せまい。
寝かせてあげよう」
特使「研究室の寝室を貸そう。こっちだ」
侍女「ありがとうございます」ペコリ
少女「……すぅ……んん……すぅ……すぅ……」
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:20:21.70 ID:7BjQiiB3O [11/16]
皇帝「さて、これからどうしたものか……」
侍女「四帝国同盟に、反王妃側の妖精族を加えれば、かなりの抑止力になるかと」
室長「暫定的にでも人間界に領土を認めてもらえればありがたいねぇ」
魔女「まぁこんだけ差し迫った状況があれば大概なんとかなるだろ」
侍女「冥王にも支援を要請してみましょう」
術師「それで向こう……と互角以上の交渉ができる」
特使「よし、ならばできるだけ早く体勢を立て直して――――」
……ゴゴゴゴゴ……
魔女「……なにやら不吉な予感がするんだが」
侍女「これは……強大な魔力の急速な接近を感じます」
室長「まさかこちらが体勢を整える前に、一発ぶち込んじまおうって腹か?」
特使「……間違いない、戦略魔導砲だ!
距離500!」
魔女「てめぇーコラッ、しばらくは大丈夫だっつっただろオイ!」
室長「いやはや……弱ったね。
どうやらいよいよ王妃の逆鱗に触れたようだ」
術師「結界は間に合わない……絶体絶命」
魔女「たッはー、なんてこったい!」
特使「距離150! これはもう……ッ」
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:22:59.11 ID:7BjQiiB3O [12/16]
魔女「こうなったら僕だけでも門で逃げる!」
術師「ずるい……連れてって」ガシッ
魔女「離せこのバカッ! お前は地獄行きたがってただろうがッ!」グイッグイッ
術師「やーだー……」グググッ
魔女「えぇい、ひっつくな気持ち悪い!
人間諦めが肝心なんだよッ!」
特使「距離50……室長」
室長「あぁ……どうやらここまでのようだな」
皇帝「これで終わりか……」
妖精「……」
侍女「魔王様……」
少女「……魔王……さん……」
「寝る子は育つってなぁ。
っつーかもう私よりかなり強くなってんじゃね?」ナデナデ
少女「……ん……」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:24:12.13 ID:7BjQiiB3O [13/16]
ヒュゥゥゥ……ゥゥゥウウウウッ
ズドンッ!!
魔女「今度はなんだ!?」
術師「……あれは、水晶……?」
特使「な、なんと巨大な……」
室長「空から降って来たぞ!」
侍女「……炎獄の水晶!
あれならどんな巨大な魔力でも吸収できます!」
魔女「炎獄だぁッ?
っつーことは――――」
――――カッ!!
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:27:58.32 ID:7BjQiiB3O [14/16]
――――この後、人間界四帝国と妖精界共存派、更には冥界を加えた、
魔導史上初の異世界間大同盟が結ばれた。
妖精界純潔派は程なく降伏し、王権そのものは共存派の皇帝が握ることとなった。
皇帝はすぐさま魔王城のすぐそばに共存派、人工妖精、ホムンクルスなどが暮らす都市を建設し、
それぞれの立場や今後について対話して行く姿勢を示した。
また、四帝国の数多くの魔導師達も妖精界の魔導技術を求めて魔王城のそばに移住して来たため、
魔王城下は本当に全世界最大の魔導都市となったのだった。
ちなみに、出現位置のズレた王立第二研究室は見事に魔女の工房を踏み潰していた。
しかし、愛しの人(?)との思わぬ再会に狂喜乱舞し、
早速嬉々として殺し合いに興じる魔女は特に気に留める様子も無かったので、
術師の提案からその地区はそのまま人間界初の総合魔導研究室兼魔導教育機関にしてしまった。
人間や妖精だけでなく、魔族や竜族の留学生も徐々に増加してゆき、
ここもやはり全世界最大の施設となる。
……そんな様々なゴタゴタを経て、少女はまた少し、成長したのだった。
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 22:30:20.43 ID:7BjQiiB3O [15/16]
と言うわけでまさかの第三部終わり。
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