スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
今日は何の日? ―11月22日―
328 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/23(火) 15:51:50.10 ID:VpWTiZM0 [1/7]
11月22日ネタでヴィリアン×ウィリアムです
1日遅れ? 何それ分からない
11月22日ネタでヴィリアン×ウィリアムです
1日遅れ? 何それ分からない
329 名前:今日は何の日? ―11月22日―[] 投稿日:2010/11/23(火) 15:52:59.66 ID:VpWTiZM0 [2/7]
夜。
バッキンガム宮殿内にあるとある一室。
テニスコートの半分ほどの広さを持つその部屋に、二人はいた。
「あー、疲れましたー」
「姫、いくら私室とはいえ部屋に入るなり早々にベッドに身を投げ出すというのはいかがなものかと」
ベッドの側に佇む屈強な男――ウィリアムは、表情を変えぬままそう言った。
彼女は、ベッドの上で寝転がりながら、脚をバタバタさせている。
私室であろうとどこであろうと、常にどこか怯えた様子だったかつての彼女からは想像もできない姿だった。
どうやら、彼女はこの数年で"息を抜く"ということを覚えたらしい。
それは自分に甘くなったわけではなく、あらゆる障害を乗り越えられるしなやかな強さを身に着けたということだ。
ここ数年の間ずっと彼女の側にいたウィリアムには分かる。
姫としての品格を身に着けつつ彼女を守ることが出来ることを、ウィリアムは誇りに思っていた。
「別にいいじゃないですか。母上はいつもジャージで宮殿内をうろうろしてますよ」
「あれを参考にされては困ります」
緑色のドレスを着た女性――ヴィリアンは、バタバタさせていた脚をとめると、ベッドの上に座りなおした。
ウィリアムを軽く睨みつける。
むくれながら睨むその姿からは刺々しさなどは感じらられない。
もともと幼い顔立ちだったこともあってか、子猫のような、どこか微笑ましい雰囲気をだしていた。
330 名前:今日は何の日? ―11月22日― 2/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 15:53:53.85 ID:VpWTiZM0 [3/7]
「……何か」
「敬語」
「?」
「せめて二人でいるときぐらいは敬語はやめてくださいって何度も言ってるのに」
その台詞に、ウィリアムの顔が僅かに困った顔になる。
彼が彼女に誓いを立ててから――つまりはプロポーズをしてから――彼女は何度もそう言っていた。
ウィリアムにとっては、いくら婚約をしようと姫が姫であることに変わりはなかったので、
敬語を使わず話すのにはいまだに抵抗があった。
「いや、しかし……。それを言うなら姫も同じでは?」
「私はいいんです。クセみたいなものですから。でも、あなたは違うでしょう? あなたには敬語は似合いません」
「……そう、であるか」
「そう、それでいいんです」
そう言うと、ヴィリアンは満足げに微笑んだ。
ヴィリアンはベッドの端のほうに寄ってくると、自分の隣のほうをポンポンとたたいた。
「さあ、ここに座ってください」
「……」
「さあ」
そういってもう一度ポンポンとたたく。
ヴィリアンは微笑んだままだったが、その雰囲気から有無を言わせぬものをウィリアムは感じ取った。
ウィリアムはほんの一瞬考えるそぶりを見せ、そして、ヴィリアンの横に腰を下ろした。
331 名前:今日は何の日? ―11月22日― 3/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 15:55:34.46 ID:VpWTiZM0 [4/7]
いきなり、ヴィリアンがウィリアムの方に倒れ掛かってきた。
ウィリアムの心臓が高鳴った。
ヴィリアンはいたずらが成功した少女のように笑うと、さらに体を密着させてくる。
ヴィリアンとくっついているほうの体が熱くなるのが分かる。
そんな意外にウブなウィリアムの心境を知ってか知らずか、ヴィリアンはしがみつくような形のまま、唐突にこんなことを言ってきた。
「ウィリアム、今日は何の日か分かりますか?」
「いきなりなんであるか」
「いいから」
「うーむ……」
ヴィリアンは相変わらず少女のような笑顔を浮かべている。
なぜいきなりそんなことを聞いてきたのか、ウィリアムにはさっぱり分からなかったが、とりあえず考えてみることにした。
(こういうのは誕生日というのがありがちではあるが、ヴィリアン様の誕生日ではない)
(王室の誰かの誕生日というのも聞いたことがないのである)
(聖シンマクスがローマ教皇に即位した日、というのは少々マニアックすぎるか)
(アメリカのケネディが暗殺された日、だとして私にそれを聞く理由が分からない)
(まさか本当に分からないから聞いてきたなんてことはありえないであろうし……)
ウィリアムはアレコレ考えてみるものの、彼女が望んでいるような答えは何一つ浮かんでこなかった。
ウィリアムは小さく首を振ると、素直に告げた。
「分からないのである。正解はなんなんだ?」
332 名前:今日は何の日? ―11月22日― 4/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 16:00:10.19 ID:VpWTiZM0 [5/7]
「ふふっ、今日はですね、『いい夫婦の日』らしいですよ」
ウィリアムは首をかしげた。
今日ががそんな日だなんてきいたことがない。
ウィリアムがそう言うと、ヴィリアンは小さく笑った。
「まあ日本特有の日ですからね」
「日本? ……なるほど、11月22日で『いい夫婦』か。ジャパニーズジョークというやつであるな」
ウィリアムはうなずく。
多分違うと思いますよ? とヴィリアンは困ったように笑った。
「なかなか素敵じゃないですか? そんな日があるなんて」
「……そうであるな」
夫婦、か。
なぜか気恥ずかしくなって、ウィリアムは頬をかいた。
333 名前:今日は何の日? ―11月22日― 5/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 16:01:16.47 ID:VpWTiZM0 [6/7]
ウィリアムの顔を見上げていたヴィリアンは、ふと、口元に笑みを浮かべた。
それは、今までの少女のようなそれではなかった。
どこか色気のある、大人の女のそれだった。
ウィリアムもその様子に気付く。
上目遣いで見つめてくる瞳。わずかに上気した頬。
普段のおとなしい彼女とは違うその表情に、ウィリアムは思わず後ずさった。
どんな障害を前にしても決して退かぬ普段のこの男を知っているものが、今の状況を見たならばどう思うのだろうか。
この顔は、自分だけが知っているものだ。
ウィリアムがらしくない反応をするたびに、ヴィリアンの中にある何かがざわつく。
「姫、な、何を」
「いいじゃないですか。なんてったって今日は『いい夫婦の日』なんですから」
「いや、いきなりすぎて心の準備が」
「たまには攻められるのも悪くないですよ?」
「何を言って! ちょっ、姫!!」
その夜、バッキンガム宮殿に、獣のように図太い叫び声が響いたという。
終わり
334 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/23(火) 16:03:28.38 ID:VpWTiZM0 [7/7]
以上です
昨日中に書き終わるつもりが、気付けばこんな時間に……
台本書きなら早く書けるんだが
ホント速筆の人が羨ましい
夜。
バッキンガム宮殿内にあるとある一室。
テニスコートの半分ほどの広さを持つその部屋に、二人はいた。
「あー、疲れましたー」
「姫、いくら私室とはいえ部屋に入るなり早々にベッドに身を投げ出すというのはいかがなものかと」
ベッドの側に佇む屈強な男――ウィリアムは、表情を変えぬままそう言った。
彼女は、ベッドの上で寝転がりながら、脚をバタバタさせている。
私室であろうとどこであろうと、常にどこか怯えた様子だったかつての彼女からは想像もできない姿だった。
どうやら、彼女はこの数年で"息を抜く"ということを覚えたらしい。
それは自分に甘くなったわけではなく、あらゆる障害を乗り越えられるしなやかな強さを身に着けたということだ。
ここ数年の間ずっと彼女の側にいたウィリアムには分かる。
姫としての品格を身に着けつつ彼女を守ることが出来ることを、ウィリアムは誇りに思っていた。
「別にいいじゃないですか。母上はいつもジャージで宮殿内をうろうろしてますよ」
「あれを参考にされては困ります」
緑色のドレスを着た女性――ヴィリアンは、バタバタさせていた脚をとめると、ベッドの上に座りなおした。
ウィリアムを軽く睨みつける。
むくれながら睨むその姿からは刺々しさなどは感じらられない。
もともと幼い顔立ちだったこともあってか、子猫のような、どこか微笑ましい雰囲気をだしていた。
330 名前:今日は何の日? ―11月22日― 2/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 15:53:53.85 ID:VpWTiZM0 [3/7]
「……何か」
「敬語」
「?」
「せめて二人でいるときぐらいは敬語はやめてくださいって何度も言ってるのに」
その台詞に、ウィリアムの顔が僅かに困った顔になる。
彼が彼女に誓いを立ててから――つまりはプロポーズをしてから――彼女は何度もそう言っていた。
ウィリアムにとっては、いくら婚約をしようと姫が姫であることに変わりはなかったので、
敬語を使わず話すのにはいまだに抵抗があった。
「いや、しかし……。それを言うなら姫も同じでは?」
「私はいいんです。クセみたいなものですから。でも、あなたは違うでしょう? あなたには敬語は似合いません」
「……そう、であるか」
「そう、それでいいんです」
そう言うと、ヴィリアンは満足げに微笑んだ。
ヴィリアンはベッドの端のほうに寄ってくると、自分の隣のほうをポンポンとたたいた。
「さあ、ここに座ってください」
「……」
「さあ」
そういってもう一度ポンポンとたたく。
ヴィリアンは微笑んだままだったが、その雰囲気から有無を言わせぬものをウィリアムは感じ取った。
ウィリアムはほんの一瞬考えるそぶりを見せ、そして、ヴィリアンの横に腰を下ろした。
331 名前:今日は何の日? ―11月22日― 3/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 15:55:34.46 ID:VpWTiZM0 [4/7]
いきなり、ヴィリアンがウィリアムの方に倒れ掛かってきた。
ウィリアムの心臓が高鳴った。
ヴィリアンはいたずらが成功した少女のように笑うと、さらに体を密着させてくる。
ヴィリアンとくっついているほうの体が熱くなるのが分かる。
そんな意外にウブなウィリアムの心境を知ってか知らずか、ヴィリアンはしがみつくような形のまま、唐突にこんなことを言ってきた。
「ウィリアム、今日は何の日か分かりますか?」
「いきなりなんであるか」
「いいから」
「うーむ……」
ヴィリアンは相変わらず少女のような笑顔を浮かべている。
なぜいきなりそんなことを聞いてきたのか、ウィリアムにはさっぱり分からなかったが、とりあえず考えてみることにした。
(こういうのは誕生日というのがありがちではあるが、ヴィリアン様の誕生日ではない)
(王室の誰かの誕生日というのも聞いたことがないのである)
(聖シンマクスがローマ教皇に即位した日、というのは少々マニアックすぎるか)
(アメリカのケネディが暗殺された日、だとして私にそれを聞く理由が分からない)
(まさか本当に分からないから聞いてきたなんてことはありえないであろうし……)
ウィリアムはアレコレ考えてみるものの、彼女が望んでいるような答えは何一つ浮かんでこなかった。
ウィリアムは小さく首を振ると、素直に告げた。
「分からないのである。正解はなんなんだ?」
332 名前:今日は何の日? ―11月22日― 4/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 16:00:10.19 ID:VpWTiZM0 [5/7]
「ふふっ、今日はですね、『いい夫婦の日』らしいですよ」
ウィリアムは首をかしげた。
今日ががそんな日だなんてきいたことがない。
ウィリアムがそう言うと、ヴィリアンは小さく笑った。
「まあ日本特有の日ですからね」
「日本? ……なるほど、11月22日で『いい夫婦』か。ジャパニーズジョークというやつであるな」
ウィリアムはうなずく。
多分違うと思いますよ? とヴィリアンは困ったように笑った。
「なかなか素敵じゃないですか? そんな日があるなんて」
「……そうであるな」
夫婦、か。
なぜか気恥ずかしくなって、ウィリアムは頬をかいた。
333 名前:今日は何の日? ―11月22日― 5/5[] 投稿日:2010/11/23(火) 16:01:16.47 ID:VpWTiZM0 [6/7]
ウィリアムの顔を見上げていたヴィリアンは、ふと、口元に笑みを浮かべた。
それは、今までの少女のようなそれではなかった。
どこか色気のある、大人の女のそれだった。
ウィリアムもその様子に気付く。
上目遣いで見つめてくる瞳。わずかに上気した頬。
普段のおとなしい彼女とは違うその表情に、ウィリアムは思わず後ずさった。
どんな障害を前にしても決して退かぬ普段のこの男を知っているものが、今の状況を見たならばどう思うのだろうか。
この顔は、自分だけが知っているものだ。
ウィリアムがらしくない反応をするたびに、ヴィリアンの中にある何かがざわつく。
「姫、な、何を」
「いいじゃないですか。なんてったって今日は『いい夫婦の日』なんですから」
「いや、いきなりすぎて心の準備が」
「たまには攻められるのも悪くないですよ?」
「何を言って! ちょっ、姫!!」
その夜、バッキンガム宮殿に、獣のように図太い叫び声が響いたという。
終わり
334 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/23(火) 16:03:28.38 ID:VpWTiZM0 [7/7]
以上です
昨日中に書き終わるつもりが、気付けばこんな時間に……
台本書きなら早く書けるんだが
ホント速筆の人が羨ましい
Tag : とあるSS総合スレ
<<唯「う~い~、おなかすいたよ~」 | ホーム | アイテムと猫>>
コメント
No title
ファンタジーっていいよねぇ
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |