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少女「わぁ、すごい。辺り一面お花畑ですね」 祖母「…そうか」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/14(日) 22:25:51.45 ID:z5REQedO0 [1/16]


人気のない寂れた山道を、1人の女性と1人の少女が歩いていました

殺風景な山道を越えた先には

少女「わぁ……すごい」

辺り一面、見渡す限りのお花畑が広がっていました



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/14(日) 22:26:35.52 ID:z5REQedO0 [2/16]

厳密に言えばお花"畑"ではありません

まとまって自生しているだけの花達なのでしょうから

しかし、地平線の先まで広がる白一色の花のカーペットを目にして

少女「まるで、天国みたい」

少女は息を漏らしました

祖母は短く「…そうか」とだけ返事します




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:27:33.13 ID:z5REQedO0 [3/16]

興奮冷めやらぬ少女はさらに言葉を繋ぎます

孫「一目惚れです。私、一瞬でこの場所が好きになりました」

祖母はたっぷり間を置き、

祖母「ここに訪れる人が、全てお前と同じでいてくれればありがたいな」

少女「大丈夫です。きっと同じように好きなりますよ」

とびきりの笑顔を浮かべ、

少女「だって、こんなに綺麗な場所なんだもの」

祖母「……そうか」

泣きそうな苦虫を噛み潰したような祖母の表情に少女は疑問を抱きますが、聞くことは躊躇われました



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:29:26.36 ID:z5REQedO0

どれだけの時間そうしていたでしょうか

突然、祖母が少女に問いかけます

祖母「この景色をどう思う?」

質問の意味を計りかねましたが、少女は素直に答えました

少女「先ほども申し上げましたが、素晴らしい景色だと思います」

少女「大地を純白の花が敷き詰め、地平線の先まで白一色」

少女「一切の悲しみのない、童話に出てくる楽園のような場所だと感じました」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:31:41.32 ID:z5REQedO0

祖母「………………そうか」

少女「このような回答でよろしかったでしょうか?」

祖母「ありがとう。充分だよ」

祖母「時間を取らせてしまったね。さぁ、先を急ごうか」

こうして、一人の女性と一人の少女は"楽園"を抜け、その場を後にしました



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:32:46.96 ID:z5REQedO0


――― 40年も昔のことでした





――― この"楽園"があった場所には1つの村がありました




.

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:33:39.79 ID:z5REQedO0


それは政府に歯向かう人々の村、ゲリラが潜むと判断された村でした

この帝国の政府は、反逆罪に対して非常に厳格で残酷です

政府が下した指令はいつも通りのものでした

航空機を使用した焼夷弾撒布(しょういだんさんぷ)による、村単位での殲滅




10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:35:15.80 ID:z5REQedO0


その作戦に従事する兵士の中には、ありし日の祖母の姿がありました

彼女にとって、それは士官学校を出て初めての実戦でした

初めての虐殺で、初めての殺人で、初めての……



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:37:47.36 ID:z5REQedO0
>>9
孫=少女でお願いします
>>3の孫は誤字です
二人で一緒に旅をしています

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:38:44.36 ID:z5REQedO0

上官に任された調査は手に付かず、ぼぅっとした頭のまま、焼け野原を眺めていると

一人の兵士が何かを蒔いています

何をしているのですか?

尋ねたところでようやく彼女の存在に気が付いたようです




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:39:51.69 ID:z5REQedO0


兵士は答えました。「花の種を蒔いています」

「花の種?」

彼女は思わず、オウム返しに聞き返しました



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:41:01.93 ID:z5REQedO0

視線を落とし、兵士は答えます

兵士「私はこういう任務に何度か従事しています」

兵士「兵隊が思うことではありませんが、こういう光景を見るたび心を痛めます」

兵士が視線を上げ、困ったような照れたような表情を浮かべ

兵士「何も残らない焼け野原。痛々しい荒野」

兵士「寒々しいこの大地を、いつか誰かが目にして心を痛めないように」

兵士「花の種を蒔くことにしました」






17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:42:23.79 ID:z5REQedO0 [13/16]

兵士「いつか花が咲き、少しづつでいい。大地が癒されるように」

兵士「花の種を蒔くことにしました」

兵士「ただの感傷です。笑われたっていい」

兵士「やりたいからやっている。それだけのことです」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:44:03.22 ID:z5REQedO0 [14/16]


しばらくの間、その兵士の姿を眺めていた彼女でしたが、やがて兵士と共に花の種を撒きはじめました

いつの日にか、誰かが心を痛めないように。ささやかな願いを込めて………





おわり

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:47:11.28 ID:z5REQedO0 [15/16]
短いですが、これでおわりです
5、11、14さんありがとう

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/14(日) 22:54:48.06 ID:z5REQedO0 [16/16]
ありがとうございます
ネタ自体はもう一つあるので、忘れた頃にまた書かせていただくかもしれません

コメント

導入がキノの旅を連想した

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