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右方→前方
428 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:39:57.84 ID:ZALabYAO [2/6]
右方→前方のほのぼの
フィアンマを無意識に弟扱いするお姉さんヴェントとか可愛いと思ったんだ
右方→前方のほのぼの
フィアンマを無意識に弟扱いするお姉さんヴェントとか可愛いと思ったんだ
429 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:40:49.90 ID:ZALabYAO [3/6]
飴色の光沢に薄く覆われた扉は、素材のせいか裁判官が叩く木槌のような明朗な音でノックを報せてくれる。
「……」
暇潰し程度に文字を追っかけてた本の頁を記憶してから閉じて、窓枠に蒼々と降りしきっている月の角度で時間を確認。
椅子の座面に馴染んでいた腰を上げると、そのまま誰何もない侭にドアへと歩いた。
鍵など最初から下ろしてないので、紙に脂を吸われてかさつく指で真鍮製のノブを軽く捻る。
わざわざ俺様の自室まで好きこのんで訪問しにくる人物は少なく、また限定されてる客の中でも無言を貫く奴は決まっていた。
なので、問い掛ける必要などない。
視界の拡大化と共に予想通りの女の姿が其処には立っていた。
遅かったなとその小さめな後頭部を撫でたくなる思いを抑えながら、
喉仏のないすっとした細首の白い肌の奥にある僅かな火照りと髪の艶めきに気付いて眉を顰める。
「あぁ、ちょっとシャワーを浴びてきた。それよりほら、これ」
それでも足元から洗濯物を満載した篭を抱えあげて渡してくるヴェントは今日も可愛くてしょうがない。
説教するよりひとまず道を譲ってやって中へ通す方が先だった。本人が言うとおり。
430 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:41:51.18 ID:ZALabYAO [4/6]
「ほら。さっさと退け、邪魔。入れろ」
「あぁ、礼をいう」
「……どういたしまして」
因みにヴェントが妙に甲斐甲斐しく世話してくれるのは弟を彷彿とさせるからだと、テッラが憶測していた。
所詮はまだそのレベルを出ないという訳だが、最初から壁一枚分は警戒心が薄いという利点は遠慮なく使わせてもらっている。
これだってそのひとつだ。
「悪いないつも。手が空いてるようなら服を畳むところまでやってくれると更に嬉しいんだが」
「それくらいは別に構わないけど、アンタは?」
「俺様は濡れ髪でほっついてる同僚殿の後始末だ」
「結構よ」
「いいから座れ、ヴェント」
風と天日に晒されたタオルを抜きとり、ベッドの端で眉を寄せている女の背に膝をつく。
自分がやりたいという意志を明確に現せば、戯れに等しい行為は殆ど許可された。
細い髪は洗いたて特有の清潔な香で飾られている。
来訪者は素直な物腰で項を萎れさせると、バスケットに山盛りの衣類からシャツを懐に一枚たぐりよせていた。
割と女らしい器用な仕草で俺の為に働いてくれる指を凝視する内に、妻とか新婚とか脳味噌が願望的な単語の羅列を始める、
が―――それはそうと、部下に風邪などひかせるのは俺様の沽券に関わるだろう。
下心は否定しないが、行動するべし。
「痛くないな?」
「……まぁ」
431 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:42:20.58 ID:ZALabYAO [5/6]
かさねる掌でタオルの繊維に髪をくしゃくしゃ万遍なく絡めてやって、
嗚呼、俺様の大事なものが傷まないよう腐心する日常は幸福だとひっそり思う。
「アンタの指、太陽の匂いがするわね。似合わない」
「そうか。ヴェントの髪もフローラルな香だな。たべたくなる」
「喉詰まらせろ」
「食べていいのか?」
「やったらこれからアンタの洗濯物なんか畳まないから、そのつもりで」
両腕に閉じこめようとしたがヴェントのつれない言葉にまだ駄目だとブレーキ。
あと少し、もう少しだけ、距離が遠い。
まぁ、自室で二人きりになるまでは我慢出来たのだから頑張ってみせよう。
「わかった」
もう随分と水滴を吸収したのか、タオルはしっとり重かった。
それを脇に退けると一気に手持ち無沙汰になってしまい、我が儘な弟の面倒を見る姉の顔になった彼女を眺めていたが、
一枚の服を畳み終えたところで微かな吐息を零して薄い微笑を唇に乗せる様子に、此方こそ笑ってしまった。
平和なものだ。
「なにか、こう。……いいな」
自分でほろりと零した口溶けのいい言葉が一粒、眼下の光景を幸福なカラメル色に煮つめた。
432 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:43:58.01 ID:ZALabYAO [6/6]
終わり
平和な右席とかもいいよなぁ……
飴色の光沢に薄く覆われた扉は、素材のせいか裁判官が叩く木槌のような明朗な音でノックを報せてくれる。
「……」
暇潰し程度に文字を追っかけてた本の頁を記憶してから閉じて、窓枠に蒼々と降りしきっている月の角度で時間を確認。
椅子の座面に馴染んでいた腰を上げると、そのまま誰何もない侭にドアへと歩いた。
鍵など最初から下ろしてないので、紙に脂を吸われてかさつく指で真鍮製のノブを軽く捻る。
わざわざ俺様の自室まで好きこのんで訪問しにくる人物は少なく、また限定されてる客の中でも無言を貫く奴は決まっていた。
なので、問い掛ける必要などない。
視界の拡大化と共に予想通りの女の姿が其処には立っていた。
遅かったなとその小さめな後頭部を撫でたくなる思いを抑えながら、
喉仏のないすっとした細首の白い肌の奥にある僅かな火照りと髪の艶めきに気付いて眉を顰める。
「あぁ、ちょっとシャワーを浴びてきた。それよりほら、これ」
それでも足元から洗濯物を満載した篭を抱えあげて渡してくるヴェントは今日も可愛くてしょうがない。
説教するよりひとまず道を譲ってやって中へ通す方が先だった。本人が言うとおり。
430 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:41:51.18 ID:ZALabYAO [4/6]
「ほら。さっさと退け、邪魔。入れろ」
「あぁ、礼をいう」
「……どういたしまして」
因みにヴェントが妙に甲斐甲斐しく世話してくれるのは弟を彷彿とさせるからだと、テッラが憶測していた。
所詮はまだそのレベルを出ないという訳だが、最初から壁一枚分は警戒心が薄いという利点は遠慮なく使わせてもらっている。
これだってそのひとつだ。
「悪いないつも。手が空いてるようなら服を畳むところまでやってくれると更に嬉しいんだが」
「それくらいは別に構わないけど、アンタは?」
「俺様は濡れ髪でほっついてる同僚殿の後始末だ」
「結構よ」
「いいから座れ、ヴェント」
風と天日に晒されたタオルを抜きとり、ベッドの端で眉を寄せている女の背に膝をつく。
自分がやりたいという意志を明確に現せば、戯れに等しい行為は殆ど許可された。
細い髪は洗いたて特有の清潔な香で飾られている。
来訪者は素直な物腰で項を萎れさせると、バスケットに山盛りの衣類からシャツを懐に一枚たぐりよせていた。
割と女らしい器用な仕草で俺の為に働いてくれる指を凝視する内に、妻とか新婚とか脳味噌が願望的な単語の羅列を始める、
が―――それはそうと、部下に風邪などひかせるのは俺様の沽券に関わるだろう。
下心は否定しないが、行動するべし。
「痛くないな?」
「……まぁ」
431 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:42:20.58 ID:ZALabYAO [5/6]
かさねる掌でタオルの繊維に髪をくしゃくしゃ万遍なく絡めてやって、
嗚呼、俺様の大事なものが傷まないよう腐心する日常は幸福だとひっそり思う。
「アンタの指、太陽の匂いがするわね。似合わない」
「そうか。ヴェントの髪もフローラルな香だな。たべたくなる」
「喉詰まらせろ」
「食べていいのか?」
「やったらこれからアンタの洗濯物なんか畳まないから、そのつもりで」
両腕に閉じこめようとしたがヴェントのつれない言葉にまだ駄目だとブレーキ。
あと少し、もう少しだけ、距離が遠い。
まぁ、自室で二人きりになるまでは我慢出来たのだから頑張ってみせよう。
「わかった」
もう随分と水滴を吸収したのか、タオルはしっとり重かった。
それを脇に退けると一気に手持ち無沙汰になってしまい、我が儘な弟の面倒を見る姉の顔になった彼女を眺めていたが、
一枚の服を畳み終えたところで微かな吐息を零して薄い微笑を唇に乗せる様子に、此方こそ笑ってしまった。
平和なものだ。
「なにか、こう。……いいな」
自分でほろりと零した口溶けのいい言葉が一粒、眼下の光景を幸福なカラメル色に煮つめた。
432 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/11/08(月) 17:43:58.01 ID:ZALabYAO [6/6]
終わり
平和な右席とかもいいよなぁ……
Tag : とあるSS総合スレ
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