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唯「11月13日、あずにゃんの誕生日」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:17:53.54 ID:7R329z0p0 [1/20]
音楽室。
唯「あれっ、あずにゃんの誕生日っていつだっけ?」
紬「さあ……?」
澪「梓の誕生日がどうかしたか?」
唯「確か11月だったと思うんだけど……何日だったかなあ」
律「へー、今月なのか。
じゃあなんかお祝いしてやらねーとな」
唯「うーん、でも何日だったか思い出せないんだよ」
紬「梓ちゃんに聞いてみれば?」
唯「だめだよ、そんなことしたら如何にも『祝いたい』みたいに思われちゃうじゃん。
こういうのはサプライズが大事なんだよ~」
音楽室。
唯「あれっ、あずにゃんの誕生日っていつだっけ?」
紬「さあ……?」
澪「梓の誕生日がどうかしたか?」
唯「確か11月だったと思うんだけど……何日だったかなあ」
律「へー、今月なのか。
じゃあなんかお祝いしてやらねーとな」
唯「うーん、でも何日だったか思い出せないんだよ」
紬「梓ちゃんに聞いてみれば?」
唯「だめだよ、そんなことしたら如何にも『祝いたい』みたいに思われちゃうじゃん。
こういうのはサプライズが大事なんだよ~」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:21:37.00 ID:7R329z0p0 [2/20]
律「サプライズっつっても肝心の何日かが分からないんじゃアレだろ」
唯「うーん、そうなんだよね……」
澪「あ、そういえば梓が入部したときにプロフ書いてもらったんだ。
確かアレに誕生日の欄もあったはず」
唯「おっ、でかした澪ちゃん。
果たしてそのプロフは今どこに?」
澪「手帳に挟んであるよ。
えーと……あ、あったあった。はい」
唯「ふむふむ、どれどれ……あずにゃんの誕生日は……
…………
…………」
澪「…………」
律「おい、何黙ってるんだ。何日だったのか教えろよな」
唯「……11日」
紬「えっ?」
澪「昨日…………だな」
律「えっ……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:26:21.92 ID:7R329z0p0
唯「……」
澪「……」
紬「……」
律「そういえば昨日……
すげーそわそわしてたよな、梓のヤツ……」
澪「言われてみれば、確かに……」
紬「期待してたのね……
私たちはその梓ちゃんの純粋な気持ちを踏みにじって……」
律「最低な先輩だな、私たちは……」
唯「そうかなー、そんなに深刻に考えなくてもいいじゃん。
わざとすっぽかしたんじゃなくて、覚えてなかっただけなんだしさー。
まだ取り返しはつくよぉー」
律「つくわけないだろ!
梓の誕生日はもうあと364日後にしかこねーんだぞ!」
唯「大丈夫、私にいい考えがありまーす」
澪「唯のいい考えが本当にいい考えだった試しがないんだが」
唯「あずにゃんの誕生日が明日だったということにすればいいんだよー」
律「はあ?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:32:19.06 ID:7R329z0p0
唯「つまり、11月13日があずにゃんの誕生日!」
律「何いってんだよ、人の誕生日が動くわけ無いだろ」
唯「大丈夫!
あずにゃんはマジメだし、空気も読んでくれる!
私たちに合わせて13日を誕生日だってことにしてくれるはず!」
律「え、ええー……」
紬「まあそれなら、梓ちゃんを悲しませずに
誕生日を祝ってあげることもできるけど……」
澪「ていうか誕生日を祝うことじゃなくて
自分たちが悪者にならないことが目的になってないか、それ」
唯「するどいね、澪ちゃん。
りっちゃんも言ったように後輩の誕生日を忘れるなんて
最低の先輩がやることだよ。
でも私たちは13日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげられる。
私たちは罪から逃れることができるのだよ」
澪「本当の誕生日を忘れたっていう事実はくつがえらないと思うんだが」
唯「あーあー聞こえなーい」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:36:31.26 ID:7R329z0p0
紬「まあ、やってみる価値はあるんじゃないかしら……
このままだと梓ちゃんも誕生日を祝ってもらえないままだし」
律「ホンキかよ」
紬「唯ちゃん、要するに私たちは
梓ちゃんの誕生日が13日だって思い込めばいいってことね?」
唯「そうだよー。
私たちが13日ってことで押し切れば、
あずにゃんも空気読んでこっちに合わせてくれるだろうし」
律「……どうする、澪」
澪「……いや、まあ……
誕生日を祝ってやれないのはアレだし、
誕生日そのものを忘れてた、って言うのはもっとアレだし……」
律「まあ、そうだな……」
唯「よしっ、じゃあ決まりだね。
あとはあずにゃんが来るまで
『明日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげたいムード』を盛り上げておこう」
律「ムードメーカーを自負してはいるが
そんな高度なムードメイキング技術は持ってないよ私は」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:42:02.20 ID:7R329z0p0
ガチャ
梓「こんにちはー……」
唯(あっ、もう来た! ほら盛り上げて盛り上げて)
律(ええー……)
「あー、梓、明日……暇か?」
梓「え、はあ、暇ですけど」
紬「そう、良かったわー。
私たち、明日梓ちゃんの誕生日パーティを開こうと思ってて!」
梓「えっ……!?
私の誕生日、覚えててくれたんですか?」
澪「ははは、もろちんだよ。
大事な後輩の誕生日を忘れるわけ無いだろ」
梓「嬉しいです、てっきり忘れられてるものだと思ってました!」
唯「やだなーあずにゃん、ちゃんと覚えてたよ、
11月13日があずにゃんの誕生日だってね!」
梓「えっ!?」
唯「11月13日が、あずにゃんの誕生日だよね!」
梓「えっ、えっ、えー……っと……
…………」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:47:37.07 ID:7R329z0p0
梓「そ、そうですよー、13日が私の誕生日です!
あははは、覚えててくれてありがとうございます……」
唯(よし、うまくいった!)
紬(ミッションコンプリートね)
澪(すまん梓、許せ……)
律(哀れになるくらいイイ子だな梓は)
唯「で、どこでパーティやる?
あずにゃんの家でやっていい?」
梓「あ、はい、いいですよ……親もいませんし」
唯「よーし、じゃあ決まりだね!
明日のあずにゃんの誕生日、盛大に祝ってあげるからね!」
紬「色々用意しとかなくちゃ、
明日の梓ちゃんの誕生日のために!」
澪「律、今日の帰りに
明日の梓の誕生日のためにプレゼント買いに行こうぜ」
律「おう、
明日の梓の誕生日のために」
梓「……………………」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:55:17.75 ID:7R329z0p0
翌日、中野家。
唯「あずにゃん、誕生日オメデトー!」
澪「おめでとーう!」
律「めでたいなぁ」
紬「おめでとう梓ちゃん」
梓「あ、ありがとうございます。
こんな盛大に祝ってもらえるなんて……」
紬「今日は特別に作らせたケーキを持ってきたのー」ででーん
律「おー、でかい!」
澪「あっ、真ん中に梓の砂糖人形が乗ってる」
唯「わー、かわいー!
あずにゃんの誕生日を祝うにふさわしいケーキだねっ」
梓「ありがとうございます、ムギ先輩。
こんな凄いケーキ、食べたことないです!」
紬「うふふ、どういたしまして」
澪(梓はもうすっかり13日誕生日設定を受け入れてるな)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:03:39.18 ID:7R329z0p0
唯「はい、私からのプレゼントはこれだよ、あずにゃん」
梓「わっ、なんですか?」
唯「あずにゃんが欲しがってた某バンドのライブDVDだよ!」
梓「え、ほんとだ!
わー、これずっと欲しかったんです!
ありがとうございます、でも高かったんじゃないんですか?」
唯「大事な後輩のためなら身銭を切ることなど厭いませんて!」
梓「ありがとうございます、唯先輩……!」
律「私と澪からはこれだ」
澪「昨日二人でお金を出しあって買ったんだ。
このまえみんなで買い物行ったとき、これ欲しがってただろ。
キョウアニーブランドのテディベア」
梓「わああ、ありがとうございます!
ていうかよく覚えてましたね、私がコレ欲しかったこと!」
律「あったりまえだろ、後輩のことなら何でも覚えてるって!
なー、澪」
澪「あ、ははは、そうだな!」
梓「……」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:07:58.04 ID:7R329z0p0
唯「ケーキ美味しー」
澪「ほんと、いつも食べてるのも美味しいけど
これはまた格別だな」
律「食い過ぎると太るぞー」
澪「コレ食べて太るなら本望だわ」
梓「ほんとに美味しいです、ありがとうございますムギ先輩」
紬「うふふ、どういたしまして。
梓ちゃんの誕生日だもの、おかかえのパティシエに
気合入れて作ってもらったのよ」
律「梓の誕生日さまさまだな!」
梓「あはは……」
唯「いやーでもあずにゃんの誕生日が土曜日でよかったよ。
一日中こうやってパーティできるもんね」
澪「そうだなー、平日だと放課後だけだもんな」
梓「……」
律「そういや唯の誕生日も今月じゃなかったっけ」
唯「そだよー、27日」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:12:36.75 ID:7R329z0p0
澪「唯の誕生日は何曜日だ?」
唯「えーっと、何曜日だったかなー。
あれ、あずにゃんカレンダーどこー?」
梓「カレンダーはそこの机の上に……あ゛っ」
唯「あ、これか」
梓「あああああっ、駄目です! 見ちゃ駄目です!!」
唯「えー、なんで? いいじゃんカレンダーくらい」
梓「駄目です、とにかく駄目です!!
見ると地球連邦政府がひっくり返ります」
律「何を言ってんだ」
唯「もう、日付確認するだけだからいいでしょっ」ひょいっ
梓「あああああああああああっ!!!」
唯たちは4人でカレンダーを覗き込む。
そのカレンダーの11月11日のところが、
ピンクの蛍光ペンで書かれた花丸で囲まれ、
そしてその下には可愛らしい字で「☆誕生日☆」…………
4人「…………」
梓「…………」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:16:00.31 ID:7R329z0p0
唯「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
梓「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
梓「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
唯「あはは、あずにゃんったら自分の誕生日間違えるー!」
澪「えっ!?」
律(そうくるか……)
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:23:00.61 ID:7R329z0p0
梓「あ、あははは、そうですね、
私ったら間違っちゃってました!」
唯「あっ、この間違いを見られるのが恥ずかしかったから
必死に隠してたんだね?」
梓「そうなんですよ、あはは、
唯先輩のせいでバレちゃったじゃないですかぁー、
恥ずかしいなーもー」
唯「えっへへー、ごめんごめん!
でもあずにゃんったら可愛いね、
誕生日が楽しみすぎて2日も前にチェックしちゃったの?」
梓「はい、もう楽しみで仕方なくって!
無意識のうちに11日に印つけちゃってました、あはは」
澪(切り抜けられた……のか?)
紬(どうやらそのようね……すごいわ唯ちゃん)
律(私はもういたたまれないよ……)
唯「さっ、気を取りなおしてパーティの続きしよう!
次は一発芸大会だよー、まずはりっちゃんから」
律「はいはい。
じゃあ一番手田井中律、回ってる扇風機を指で止めまーす」
その後も夜遅くまで楽しい誕生日パーティは続いたのだった。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:28:13.41 ID:7R329z0p0
帰り道。
唯「いやー、楽しいパーティだったね!」
澪「ははは……もう開き直って楽しまないと
良心の呵責が半端なかったわ……」
律「だな……」
紬「あのー、来年からどうするの?
来年以降もずっと13日に梓ちゃんの誕生日を祝うの?」
唯「大丈夫大丈夫、今回と同じ作戦で行けばいいよ」
紬「同じ作戦?」
唯「そう、13日が誕生日だって押し切ったように、
来年は11日が誕生日だって押し切ってしまえばいいんだよー」
澪「うわぁ……」
律「不憫だな、梓……」
唯「だってこうでもしないと私たちは後輩の誕生日を忘れてしまった
最低最悪のゴミ先輩だよ? そんなのやだよー」
律「誰もゴミとまでは言わねえよ」
唯「とにかく、来年からは11日に祝ってあげることにしよう。
あずにゃんも今回みたいにちゃんと受け入れてくれるはずだよ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:33:10.12 ID:7R329z0p0
そして翌年、11月11日。
音楽室では梓の誕生日パーティの準備が進んでいた。
唯「飾り付けOK?」
律「ばっちりだ!」
唯「クラッカーの用意は?」
澪「完璧だ!」
唯「ケーキとご馳走は揃ってる?」
紬「ええ、あとは梓ちゃんが来るのを待つだけよ」
唯「うん、これ以上はないってくらい誕生日パーティの雰囲気だね。
これで今年はちゃんと11日に祝ってあげられるよー」
澪「ああ、去年は酷かったな……色々と」
律「一番酷い思いをしたのは梓だろうけどな」
唯「だからその罪滅ぼしも兼ねて、
今年は去年よりも盛大に祝ってあげようよ」
紬「そうね、もうあんな気まずい誕生日パーティはイヤだわ」
唯「あずにゃん、早くこないかなー」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:34:17.19 ID:7R329z0p0
>>71
回ってる扇風機のスイッチを指で押して止める
「なんだよそれー」という失笑を誘う一発芸です
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:37:57.46 ID:7R329z0p0
ガチャ
梓「こんにちはー」
唯「お、あずにゃんキター!」
梓「わっ、なんですかこれー。
部屋中こんなに飾りつけて……
それにこんな大きなケーキも」
律「ははは、とぼけるなよ。
今日は何の日か、忘れてるわけじゃないだろ?」
梓「今日? 何の日でしたっけ」
紬「またまたー、知らない振りしちゃって。
今日は梓ちゃんの誕生日じゃない!」
梓「は?
私の誕生日は明後日、13日ですけど……」
唯「もー、いいよそういうの。今日があずにゃんの誕生日だよっ」
梓「いえ13日ですけど」
唯「11日だよ、11日。つまり今日。
今日11日があずにゃんの誕生日!」
梓「いや、13日って言ってるじゃないですか……
もしかしてみなさん……私の誕生日覚えててくれてないんですか!?」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:42:33.62 ID:7R329z0p0
梓「ひどい、ひどいです……
私、明後日の誕生日楽しみにしてたのに……
こんなんじゃぶち壊しですよ」
律「あ、いやこれはその……」
梓「早く片付けてください、そのクラッカーも、
飾り付けも、ケーキも……!
最低です……みなさん……」
唯「ええっ、せっかく準備したのに!?」
梓「人の誕生日間違えたくせに
せっかくもクソもないですよっ!!
とっとと全部片付けてくださいっ!!!」
唯「ひ、ひええ~」
梓「律先輩たちもっ!!」
律「はいいいっ!!
ただちに全て撤去いたしますっ!!」
澪「なあムギ……もしかしてこれは」
紬「梓ちゃんなりの復讐でしょうね……1年越しの」
澪「……」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:48:30.37 ID:7R329z0p0
澪「もしかして13日に誕生日を祝おうとして
パーティの準備なんかしたりしたら……」
紬「結果は見えてるわ……」
澪「はは、そうだな……」
梓「人の誕生日忘れてんじゃねーです、
この最低最悪のゴミ先輩どもー!」
唯「ひ~、しーましぇーん!」
誰も祝わないままに誕生日パーティの片付けが終わったあと、
4人は梓に土下座で去年やったことを謝り、
そして二度と梓を怒らせまいと心に誓ったのであった。
お わ り
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:50:06.53 ID:7R329z0p0 [20/20]
これでおしまい
約1時間半もの長きに渡る保守支援ありがとうございました
こんな長編を書いたのは久々なので疲れました
律「サプライズっつっても肝心の何日かが分からないんじゃアレだろ」
唯「うーん、そうなんだよね……」
澪「あ、そういえば梓が入部したときにプロフ書いてもらったんだ。
確かアレに誕生日の欄もあったはず」
唯「おっ、でかした澪ちゃん。
果たしてそのプロフは今どこに?」
澪「手帳に挟んであるよ。
えーと……あ、あったあった。はい」
唯「ふむふむ、どれどれ……あずにゃんの誕生日は……
…………
…………」
澪「…………」
律「おい、何黙ってるんだ。何日だったのか教えろよな」
唯「……11日」
紬「えっ?」
澪「昨日…………だな」
律「えっ……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:26:21.92 ID:7R329z0p0
唯「……」
澪「……」
紬「……」
律「そういえば昨日……
すげーそわそわしてたよな、梓のヤツ……」
澪「言われてみれば、確かに……」
紬「期待してたのね……
私たちはその梓ちゃんの純粋な気持ちを踏みにじって……」
律「最低な先輩だな、私たちは……」
唯「そうかなー、そんなに深刻に考えなくてもいいじゃん。
わざとすっぽかしたんじゃなくて、覚えてなかっただけなんだしさー。
まだ取り返しはつくよぉー」
律「つくわけないだろ!
梓の誕生日はもうあと364日後にしかこねーんだぞ!」
唯「大丈夫、私にいい考えがありまーす」
澪「唯のいい考えが本当にいい考えだった試しがないんだが」
唯「あずにゃんの誕生日が明日だったということにすればいいんだよー」
律「はあ?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:32:19.06 ID:7R329z0p0
唯「つまり、11月13日があずにゃんの誕生日!」
律「何いってんだよ、人の誕生日が動くわけ無いだろ」
唯「大丈夫!
あずにゃんはマジメだし、空気も読んでくれる!
私たちに合わせて13日を誕生日だってことにしてくれるはず!」
律「え、ええー……」
紬「まあそれなら、梓ちゃんを悲しませずに
誕生日を祝ってあげることもできるけど……」
澪「ていうか誕生日を祝うことじゃなくて
自分たちが悪者にならないことが目的になってないか、それ」
唯「するどいね、澪ちゃん。
りっちゃんも言ったように後輩の誕生日を忘れるなんて
最低の先輩がやることだよ。
でも私たちは13日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげられる。
私たちは罪から逃れることができるのだよ」
澪「本当の誕生日を忘れたっていう事実はくつがえらないと思うんだが」
唯「あーあー聞こえなーい」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:36:31.26 ID:7R329z0p0
紬「まあ、やってみる価値はあるんじゃないかしら……
このままだと梓ちゃんも誕生日を祝ってもらえないままだし」
律「ホンキかよ」
紬「唯ちゃん、要するに私たちは
梓ちゃんの誕生日が13日だって思い込めばいいってことね?」
唯「そうだよー。
私たちが13日ってことで押し切れば、
あずにゃんも空気読んでこっちに合わせてくれるだろうし」
律「……どうする、澪」
澪「……いや、まあ……
誕生日を祝ってやれないのはアレだし、
誕生日そのものを忘れてた、って言うのはもっとアレだし……」
律「まあ、そうだな……」
唯「よしっ、じゃあ決まりだね。
あとはあずにゃんが来るまで
『明日のあずにゃんの誕生日を祝ってあげたいムード』を盛り上げておこう」
律「ムードメーカーを自負してはいるが
そんな高度なムードメイキング技術は持ってないよ私は」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:42:02.20 ID:7R329z0p0
ガチャ
梓「こんにちはー……」
唯(あっ、もう来た! ほら盛り上げて盛り上げて)
律(ええー……)
「あー、梓、明日……暇か?」
梓「え、はあ、暇ですけど」
紬「そう、良かったわー。
私たち、明日梓ちゃんの誕生日パーティを開こうと思ってて!」
梓「えっ……!?
私の誕生日、覚えててくれたんですか?」
澪「ははは、もろちんだよ。
大事な後輩の誕生日を忘れるわけ無いだろ」
梓「嬉しいです、てっきり忘れられてるものだと思ってました!」
唯「やだなーあずにゃん、ちゃんと覚えてたよ、
11月13日があずにゃんの誕生日だってね!」
梓「えっ!?」
唯「11月13日が、あずにゃんの誕生日だよね!」
梓「えっ、えっ、えー……っと……
…………」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:47:37.07 ID:7R329z0p0
梓「そ、そうですよー、13日が私の誕生日です!
あははは、覚えててくれてありがとうございます……」
唯(よし、うまくいった!)
紬(ミッションコンプリートね)
澪(すまん梓、許せ……)
律(哀れになるくらいイイ子だな梓は)
唯「で、どこでパーティやる?
あずにゃんの家でやっていい?」
梓「あ、はい、いいですよ……親もいませんし」
唯「よーし、じゃあ決まりだね!
明日のあずにゃんの誕生日、盛大に祝ってあげるからね!」
紬「色々用意しとかなくちゃ、
明日の梓ちゃんの誕生日のために!」
澪「律、今日の帰りに
明日の梓の誕生日のためにプレゼント買いに行こうぜ」
律「おう、
明日の梓の誕生日のために」
梓「……………………」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:55:17.75 ID:7R329z0p0
翌日、中野家。
唯「あずにゃん、誕生日オメデトー!」
澪「おめでとーう!」
律「めでたいなぁ」
紬「おめでとう梓ちゃん」
梓「あ、ありがとうございます。
こんな盛大に祝ってもらえるなんて……」
紬「今日は特別に作らせたケーキを持ってきたのー」ででーん
律「おー、でかい!」
澪「あっ、真ん中に梓の砂糖人形が乗ってる」
唯「わー、かわいー!
あずにゃんの誕生日を祝うにふさわしいケーキだねっ」
梓「ありがとうございます、ムギ先輩。
こんな凄いケーキ、食べたことないです!」
紬「うふふ、どういたしまして」
澪(梓はもうすっかり13日誕生日設定を受け入れてるな)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:03:39.18 ID:7R329z0p0
唯「はい、私からのプレゼントはこれだよ、あずにゃん」
梓「わっ、なんですか?」
唯「あずにゃんが欲しがってた某バンドのライブDVDだよ!」
梓「え、ほんとだ!
わー、これずっと欲しかったんです!
ありがとうございます、でも高かったんじゃないんですか?」
唯「大事な後輩のためなら身銭を切ることなど厭いませんて!」
梓「ありがとうございます、唯先輩……!」
律「私と澪からはこれだ」
澪「昨日二人でお金を出しあって買ったんだ。
このまえみんなで買い物行ったとき、これ欲しがってただろ。
キョウアニーブランドのテディベア」
梓「わああ、ありがとうございます!
ていうかよく覚えてましたね、私がコレ欲しかったこと!」
律「あったりまえだろ、後輩のことなら何でも覚えてるって!
なー、澪」
澪「あ、ははは、そうだな!」
梓「……」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:07:58.04 ID:7R329z0p0
唯「ケーキ美味しー」
澪「ほんと、いつも食べてるのも美味しいけど
これはまた格別だな」
律「食い過ぎると太るぞー」
澪「コレ食べて太るなら本望だわ」
梓「ほんとに美味しいです、ありがとうございますムギ先輩」
紬「うふふ、どういたしまして。
梓ちゃんの誕生日だもの、おかかえのパティシエに
気合入れて作ってもらったのよ」
律「梓の誕生日さまさまだな!」
梓「あはは……」
唯「いやーでもあずにゃんの誕生日が土曜日でよかったよ。
一日中こうやってパーティできるもんね」
澪「そうだなー、平日だと放課後だけだもんな」
梓「……」
律「そういや唯の誕生日も今月じゃなかったっけ」
唯「そだよー、27日」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:12:36.75 ID:7R329z0p0
澪「唯の誕生日は何曜日だ?」
唯「えーっと、何曜日だったかなー。
あれ、あずにゃんカレンダーどこー?」
梓「カレンダーはそこの机の上に……あ゛っ」
唯「あ、これか」
梓「あああああっ、駄目です! 見ちゃ駄目です!!」
唯「えー、なんで? いいじゃんカレンダーくらい」
梓「駄目です、とにかく駄目です!!
見ると地球連邦政府がひっくり返ります」
律「何を言ってんだ」
唯「もう、日付確認するだけだからいいでしょっ」ひょいっ
梓「あああああああああああっ!!!」
唯たちは4人でカレンダーを覗き込む。
そのカレンダーの11月11日のところが、
ピンクの蛍光ペンで書かれた花丸で囲まれ、
そしてその下には可愛らしい字で「☆誕生日☆」…………
4人「…………」
梓「…………」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:16:00.31 ID:7R329z0p0
唯「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
梓「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
梓「…………」
澪「…………」
律「…………」
紬「…………」
唯「あはは、あずにゃんったら自分の誕生日間違えるー!」
澪「えっ!?」
律(そうくるか……)
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:23:00.61 ID:7R329z0p0
梓「あ、あははは、そうですね、
私ったら間違っちゃってました!」
唯「あっ、この間違いを見られるのが恥ずかしかったから
必死に隠してたんだね?」
梓「そうなんですよ、あはは、
唯先輩のせいでバレちゃったじゃないですかぁー、
恥ずかしいなーもー」
唯「えっへへー、ごめんごめん!
でもあずにゃんったら可愛いね、
誕生日が楽しみすぎて2日も前にチェックしちゃったの?」
梓「はい、もう楽しみで仕方なくって!
無意識のうちに11日に印つけちゃってました、あはは」
澪(切り抜けられた……のか?)
紬(どうやらそのようね……すごいわ唯ちゃん)
律(私はもういたたまれないよ……)
唯「さっ、気を取りなおしてパーティの続きしよう!
次は一発芸大会だよー、まずはりっちゃんから」
律「はいはい。
じゃあ一番手田井中律、回ってる扇風機を指で止めまーす」
その後も夜遅くまで楽しい誕生日パーティは続いたのだった。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:28:13.41 ID:7R329z0p0
帰り道。
唯「いやー、楽しいパーティだったね!」
澪「ははは……もう開き直って楽しまないと
良心の呵責が半端なかったわ……」
律「だな……」
紬「あのー、来年からどうするの?
来年以降もずっと13日に梓ちゃんの誕生日を祝うの?」
唯「大丈夫大丈夫、今回と同じ作戦で行けばいいよ」
紬「同じ作戦?」
唯「そう、13日が誕生日だって押し切ったように、
来年は11日が誕生日だって押し切ってしまえばいいんだよー」
澪「うわぁ……」
律「不憫だな、梓……」
唯「だってこうでもしないと私たちは後輩の誕生日を忘れてしまった
最低最悪のゴミ先輩だよ? そんなのやだよー」
律「誰もゴミとまでは言わねえよ」
唯「とにかく、来年からは11日に祝ってあげることにしよう。
あずにゃんも今回みたいにちゃんと受け入れてくれるはずだよ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:33:10.12 ID:7R329z0p0
そして翌年、11月11日。
音楽室では梓の誕生日パーティの準備が進んでいた。
唯「飾り付けOK?」
律「ばっちりだ!」
唯「クラッカーの用意は?」
澪「完璧だ!」
唯「ケーキとご馳走は揃ってる?」
紬「ええ、あとは梓ちゃんが来るのを待つだけよ」
唯「うん、これ以上はないってくらい誕生日パーティの雰囲気だね。
これで今年はちゃんと11日に祝ってあげられるよー」
澪「ああ、去年は酷かったな……色々と」
律「一番酷い思いをしたのは梓だろうけどな」
唯「だからその罪滅ぼしも兼ねて、
今年は去年よりも盛大に祝ってあげようよ」
紬「そうね、もうあんな気まずい誕生日パーティはイヤだわ」
唯「あずにゃん、早くこないかなー」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:34:17.19 ID:7R329z0p0
>>71
回ってる扇風機のスイッチを指で押して止める
「なんだよそれー」という失笑を誘う一発芸です
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:37:57.46 ID:7R329z0p0
ガチャ
梓「こんにちはー」
唯「お、あずにゃんキター!」
梓「わっ、なんですかこれー。
部屋中こんなに飾りつけて……
それにこんな大きなケーキも」
律「ははは、とぼけるなよ。
今日は何の日か、忘れてるわけじゃないだろ?」
梓「今日? 何の日でしたっけ」
紬「またまたー、知らない振りしちゃって。
今日は梓ちゃんの誕生日じゃない!」
梓「は?
私の誕生日は明後日、13日ですけど……」
唯「もー、いいよそういうの。今日があずにゃんの誕生日だよっ」
梓「いえ13日ですけど」
唯「11日だよ、11日。つまり今日。
今日11日があずにゃんの誕生日!」
梓「いや、13日って言ってるじゃないですか……
もしかしてみなさん……私の誕生日覚えててくれてないんですか!?」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:42:33.62 ID:7R329z0p0
梓「ひどい、ひどいです……
私、明後日の誕生日楽しみにしてたのに……
こんなんじゃぶち壊しですよ」
律「あ、いやこれはその……」
梓「早く片付けてください、そのクラッカーも、
飾り付けも、ケーキも……!
最低です……みなさん……」
唯「ええっ、せっかく準備したのに!?」
梓「人の誕生日間違えたくせに
せっかくもクソもないですよっ!!
とっとと全部片付けてくださいっ!!!」
唯「ひ、ひええ~」
梓「律先輩たちもっ!!」
律「はいいいっ!!
ただちに全て撤去いたしますっ!!」
澪「なあムギ……もしかしてこれは」
紬「梓ちゃんなりの復讐でしょうね……1年越しの」
澪「……」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:48:30.37 ID:7R329z0p0
澪「もしかして13日に誕生日を祝おうとして
パーティの準備なんかしたりしたら……」
紬「結果は見えてるわ……」
澪「はは、そうだな……」
梓「人の誕生日忘れてんじゃねーです、
この最低最悪のゴミ先輩どもー!」
唯「ひ~、しーましぇーん!」
誰も祝わないままに誕生日パーティの片付けが終わったあと、
4人は梓に土下座で去年やったことを謝り、
そして二度と梓を怒らせまいと心に誓ったのであった。
お わ り
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:50:06.53 ID:7R329z0p0 [20/20]
これでおしまい
約1時間半もの長きに渡る保守支援ありがとうございました
こんな長編を書いたのは久々なので疲れました
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