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唯「サイレンが鳴ってる・・・」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:44:45.90 ID:1jx+DhWRO [3/47]
きっと……
きっと迎えに来るから─────。
だから、待ってて……
絶対に……戻って来るから……。
きっと……
きっと迎えに来るから─────。
だから、待ってて……
絶対に……戻って来るから……。
─────────。
唯「むにゃあ……」
和「唯、ホームルーム終わったわよ」
唯「くぴー……」
和「はあ…、唯~部室にケーキが待ってるわよー」
唯「ッ!? ケーキ!!? どこ!?」くわっ
和「ケーキって単語に反応しすぎよ…。みんな先行っちゃったわよ?」
唯「なんですとっ! 酷いっ! 私達友達じゃなかったんだ…」
和「唯が掃除当番だからでしょ……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:45:43.27 ID:1jx+DhWRO [4/47]
そそくさと掃除を終え部室へと向かう。
唯「今日のケーキはな~にかな~♪」
それにしてもさっきの夢なんだったろう。何だか懐かしい様な気が……。
唯「そんなことより今はケーキケーキ♪」
忘れかけた内容の夢を思い出すことやめ、現実のケーキにスイッチする。
唯「たのもー! 私のケーキは何処にありまするかぁー!?」
紬「お掃除お疲れ様。ちゃんと唯ちゃんの分もあるわよ」
唯「えへへケ~キィ~」
紋白蝶でも追いかけているウブな少女の様な顔つきでケーキを見据え席につく。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:46:34.20 ID:1jx+DhWRO [5/47]
律「唯はほんとケーキ好きだよな~」
唯「りっちゃんは嫌いなの?!」
律「いや好きだけどさ。唯の好きとはレベルが違う気がするんだよね~」
唯「そうかなぁ?」
律「じゃあギー太とケーキどっちが大切?」
唯「それはギー太だよぅ」
律「じゃあ憂ちゃんとギー太は?」
唯「ういだよ~ギー太も大切だけどね」
律「じゃあ憂ちゃんと私は?」
唯「う~ん……選べないよ。どっちも大切だから」
律「じゃあギー太と私なら!?」
唯「りっちゃん!」
律「おーイェス!」ダキッ
唯「れっつかもんっ」ダキッ
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:47:34.81 ID:1jx+DhWRO [6/47]
澪「ケーキ関係なくなってないか?」
律「細かいこと気にすんなって~」
梓「唯先輩のケーキの話じゃないですけど、物事の優先順位って決めるの難しいですよね。私もこないだギターの雑誌選ぶのに迷っちゃって…結局1つは立ち読みしちゃいました」
澪「あるある。私も作詞の時にどっちのフレーズがいいかな~とかで迷ったりするよ」
紬「私もどっちのお菓子を持って行こう~とかあるわ」
唯「みんな優柔不断さんなんだね~」
澪「唯は違うのか?」
唯「私は物に関してはあんまり迷ったことないかなぁ」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:49:10.26 ID:1jx+DhWRO [7/47]
紬「ケーキ見た時にどれにするか一番早く決めるのいつも唯ちゃんだもんね」
唯「えっへん!」
澪「こっちを食べたい、でもこっちも食べたら美味しいだろうな~とか考えないの?」
唯「考える前に決めちゃうからわかんないやぁ」
梓「羨ましいです」
澪「律もそういうこと悩んでなさそうだよな」
律「何かびみょ~にグサッと来たんだけど」
澪「気のせいだろ。で、どうなんだ?」
律「う~ん確かに迷ったりはしないな。ドラムやってるからか細々考えるのは苦手なんだよ」
澪「私もドラム叩いたら優柔不断治るかな……」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:51:03.09 ID:1jx+DhWRO [8/47]
紬「ドラム治療法ね!」
梓「わ、私も叩きます!」
律「とうとうドラムに日の目が当たったか! よぅしみんな順番に並べーぃ! ドラム講義だ!」
10分後────
紬「私には無理みたい…」
澪「手に豆が出来そう…」
梓「う、腕がぁ……」
律「えぇい情けないなお前達! そんなことじゃいつまでたっても優柔不断は治らないぞっ!?」
澪「優柔不断でいいよ…もう」
梓「ちょっと迷うぐらいの方が楽しいってこともありますしね」
澪「梓良いこと言った!」
律「諦めはやっ」
唯「練習しないの~?」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:52:59.11 ID:1jx+DhWRO [9/47]
そんなこんなで結局練習はドラムの練習だけとなり部活は終わった。
まだ残る暑さの中帰路につく。みんなでドラムを練習したのが嬉しいのかテンションそのままに律は熱くドラムを語っている。
律「ドラムって凄いよなぁ! この感じだと他にも効果がありそうだよな!」
紬「今日のりっちゃんはいつも以上にドラムスね」
澪「結局練習出来なかったな」
唯「私はやろうって言ったのに~」
律「まあまあ。いつも脚光を浴びない後ろのドラムにもたまには水をやってくださいな唯さん」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:54:24.58 ID:1jx+DhWRO [10/47]
あどけた笑顔で嬉しそうに笑う律。その顔を見て、ふと、過るものがあった。
唯「(なんだろ……いつもと同じなのに……なんだか)」
その時だった。同じくその笑顔を見ていた梓がこんなことを漏らす。
梓「本当に大切なもの同士どうしても比べなきゃならない時……皆さんならどうしますか?」
声色が真面目だったのを瞬時に読み取った澪がいち早く返す。
澪「どうした梓、そんなこと急に言い出すなんて」
梓「先輩達はもう決めてるんですか…? 音楽をこれからも続けるかそうじゃないか…」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:56:16.25 ID:1jx+DhWRO [11/47]
澪「私は大学でもやるつもりだよ。まあまずは推薦もらえるかどうかだけど」
梓「貰えるといいですね、推薦」
澪「ああ。ムギは女子大だろ? あっちじゃやらないのか?」
紬「元々合唱部に入ろうって思ってたから…。お父様開く食事会とかで歌ったりしたくて入ろうと思ったの。今は家でボイストレーニング受けたりしているけど…やっぱり一人でやるのは寂しいから」
澪「そっか……ごめんな。無理矢理入れちゃったりしちゃって。今更言うのもどうかと思うけどさ」
紬「ううん。私、ほんとに軽音部に入って良かったって思ってるの。こんな楽しかった三年間初めてだったわ。だから謝ったりしないで澪ちゃん」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:59:46.44 ID:1jx+DhWRO [13/47]
紬「軽音部でなくなるのは寂しいけど、これでみんなとの関係がなくなるなんて思ってないから」
澪「ムギ……」
梓「律先輩と唯先輩はどうするんですか?」
律「き、来たぞ唯」
唯「き、来ちゃったねりっちゃん」
澪「まさかまだ決めてないなんてことないだろ? もう9月だぞ」
紬「さすがに決めないとさわ子先生も心配するんじゃない?」
律「と言ってもな~……私の頭じゃ澪やムギみたいにいいとこ行けないだろうし? だからって遊ぶ為にとりあえず大学行っとこう~ってのも親に迷惑だと思うし。でも今は就職難だしなぁ」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:00:38.67 ID:1jx+DhWRO [14/47]
唯「全く同じ意見でビックリだよりっちゃん!」
律「我々はー!」
唯「ニートでいいやー!」
澪「おいおい…」
和「全く、まだそんなこと言ってたのね」
唯「和ちゃん! 生徒会終わったの~? お疲れ様!」
和「ありがとう。じゃなくて唯、さすがに決めないと不味いわよ? 大学行くならそれに似合った勉強していかないと。
テスト勉強みたいに全員一緒にやるってわけにもいかないからね受験勉強は」
唯「そ、そうなの?」
和「ある程度なら出来るけど…その大学によって問題の出し方の傾向とかあるから」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:02:47.25 ID:1jx+DhWRO [15/47]
律「澪~。私達友達だよな!」
澪「私は推薦もらうから…」
律「澪先生捨てないでおくんなましぃぃ」
澪「暑いから離れろよ~」
和「とにかく進路は早く決めときなさい。学園祭のこともいいけど将来のこともそろそろちゃんと見据えないと。今が楽しいってだけじゃ駄目よ。じゃあ私塾があるから」
唯「あれ? 和ちゃん塾なんて行ってたの?」
和「私は国立行こうと思ってたんだけど今の成績じゃちょっと不安だから最近行くようにしたの。○○塾ってとこ」
澪「それって東大とか排出してる有名塾じゃないか! 和は凄いな…」
和「私もついていくのがやっとよ。じゃあねみんな」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:03:54.63 ID:1jx+DhWRO [16/47]
みんなに手を振りながらそそくさと帰る和。
澪「○○塾ってここからだと遠いのに頑張るな…。それに比べて……」
唯「りっちゃん! アリさんがいっぱい行列作ってるよ!」
律「この先には巣穴があるハズだー追うぞ唯ー!」
唯「はいっ! りっちゃん隊員!」
梓「現実逃避ですね…。さっきは優柔不断がどうとか言ってたメンバーと真逆になっちゃいましたね」
澪「そう言えばそうだな」
梓「……律先輩と唯先輩は結局のところ何も考えてないんですよ。だから本当に決めないと駄目な大切なことをいつまでも後回しにしてるんです」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:05:51.87 ID:1jx+DhWRO [17/47]
紬「梓ちゃん、それはちょっと言い方が悪くないかしら?」
梓「そう聞こえたなら謝ります。けどあんなに私達のこと優柔不断だって言ってた二人が一番大切なことを決めれてないなんておかしいなって思っただけです」
律「……なんだよ、その言い方。私も唯もそんなキツい言い方してないだろ? そんなに揚げ足とって嬉しいのか?」
紬「りっちゃん、落ち着いて。梓ちゃんも、ね?」
梓「私はただ二人のことが心配なだけで……」
律「ああ確かに進路なんて決めてないよ。私にとって一番大切なことは学園祭だからな!」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:07:45.92 ID:1jx+DhWRO [18/47]
律「もっとも梓にとってはそうじゃなかったみたいだけどさ」
梓「っ…そんなこと言ってなっ…!」
澪「二人ともやめろ! こんなことで喧嘩してどうするんだよ? 律、進路のことで悩んでるのはわかるけど梓に当たるなよ」
律「なんだよ澪まで梓の仲間かよ? 優柔不断チーム結成ってか?」
紬「りっちゃん!」
律「唯も何か言ってやれよ」
唯「……違う」
律「…唯?」
唯「みんな…おかしいよ。いつもはこんなことじゃ喧嘩になんかならなかったよ…?」
律「こんなことってなんだよ…。お前のことだって入ってるんだぞ!」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:09:27.53 ID:1jx+DhWRO [19/47]
ふと蘇る情景、
みんなが笑って、みんなが楽しかった記憶。
それは今なのか、何時なのか。
唯「違う……違うよ……」
澪「唯、どうかしたのか?」
紬「唯ちゃん……?」
優しく差し伸べられる手が、今は自分を突き落とす様に思えた。
拒む様に後ずさる唯。さすがに異常を感じ取ったのか澪や紬の表情も真剣になっている。
澪が唯の元へ走って近づき、両肩に手を遣りながら宥める。
澪「唯……震えてるぞ。寒いのか?」
夏明けの9月に言う台詞ではないが、それほど唯の体は冷たかった。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:10:21.72 ID:1jx+DhWRO [20/47]
紬「保健室で見てもらった方がいいんじゃない?」
澪「そうだな…。唯、歩けるか?」
頭を抱え震えるに優しく付き添う澪。
憂「あれ? お姉ちゃん?」
遠くから見知った声が聞こえる。
梓「あれ? 憂、まだいたんだ」
憂「うん。純ちゃんにジャズ研で作った曲聴いて欲しいって言われて。それよりお姉ちゃんどうしたの? 具合悪そうだけど…」
澪「ちょっとさっき色々あってさ…。それで唯が癇癪気味になって…」
憂「そうなんですか!? お姉ちゃんっ! 大丈夫?」
すぐさま駆け寄る憂。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:11:21.94 ID:1jx+DhWRO [21/47]
憂「お姉ちゃん……」
唯「うい……?」
憂「うん。大丈夫?」
憂が声をかけてくれた瞬間震えも消え、落ち着きを取り戻す。
唯「うん。ちょっと暑さにやられちゃったかな」テヘヘ
憂「でも心配だから一応保健室で見てもらおっか」
唯「うん…ごめんね、憂」
憂「ううん。いいよ、お姉ちゃん」
憂は唯に寄り添うと保健室の方へと一緒に歩き出す。
澪「私達も……」
唯「ううん、大丈夫だから。先に帰ってて」
紬「唯ちゃん…」
律「……」
梓「……」
澪「…わかった。唯をよろしく。憂ちゃん」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:13:04.76 ID:1jx+DhWRO [22/47]
憂「はい」
そう言うと校舎の中に消えて行く二人。残されたメンバーにはさっきの気まずい空気が流れたままだ。
澪「唯……大丈夫かな」
紬「さっきの唯ちゃん…ちょっと変だったから。心配ね…」
澪「律、梓。明日唯に会ったらちゃんと謝るんだぞ」
律「…ああ。唯にはな」
梓「唯先輩には謝ります」
律「ふんっ」
梓「ふんっ」
澪「お前らまだそんなこと…!」
紬「澪ちゃん、放って置きましょう。これ以上話してもまた言い合いになりそうだから…」
澪「……ああ」
噛み合わない歯車の様にバラバラだった。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:15:23.11 ID:1jx+DhWRO [23/47]
律「私寄りたいとこあるから」
澪「律……」
スタスタと歩いて行く律を見ることしか出来ない歯痒さに顔を少し歪める澪。
紬「梓ちゃん。確かにりっちゃんも悪いけどあなたも悪いと思うわ。二人を心配してるのはわかるけど、今は学園祭前と受験生ってことでナイーブになってるんだから…」
梓「そうやって私だけ叱るんですね、ムギ先輩は」
紬「梓ちゃん…」
梓「帰ります…」
澪「おい梓っ」
逃げる様に駆け足で帰る梓。
澪「何でこんなことに…」
紬「澪ちゃん…。私達も帰ろ。きっと明日にはみんな仲直り出来るわ」
澪「…うん」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:23:11.32 ID:1jx+DhWRO [25/47]
保健室──
憂「お姉ちゃん大丈夫?」
唯「うん…だいぶ楽になったよ」
憂「…みんなと何かあったの?」
唯「…わかんないや。でも…何だか嫌だった。何が嫌なのか…わからなくて…段々頭が痛くなって」
憂「そっか…。大丈夫だよ…お姉ちゃん」よしよし
唯「うん…ありがと」
憂に撫でられると何故か落ち着く…。
憂「あっ、いけない! 買い物しないと商店街のお店閉まっちゃう!」
唯「私はもう少し寝てるから憂は行きなよ」
憂「でも…」
唯「大丈夫だから、ね?」
憂「うん…。じゃあねお姉ちゃん。一人で帰るのが辛かったら電話してね!」
唯「うん。わかった」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:30:54.29 ID:1jx+DhWRO [27/47]
───??? PM18:00:00
始まる……。
いよいよ……。
もう戻れない。
だけど……やらなくちゃ。
仇を取るんだ…私が。
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:38:07.69 ID:1jx+DhWRO [28/47]
───桜ヶ丘 大手スーパー 内部本屋
律「きゃふは、やっぱりマンガタイムキララは面白いよな~」
律「…梓のやつ勝手なこと言ってさ。私だってちゃんと……。この先か……」
考えてみたら軽音部のことだけでその先なんて考えてなかったな…。
いや、考えたくなかったんだ…きっと。
律「このまま時間が止まればいいのに…」
グラッ…
律「えっ…」
ゴオオオッ────
律「じしっ…」
少し揺れた後に訪れる強烈な縦揺。
次第に立っていられなくなり必死に何かに捕まる。
怒号さえ遠くなるような揺れの中で……
私は聴いた。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:44:24.11 ID:1jx+DhWRO [29/47]
澪「律…、梓…」
心配だ。今まであんな険悪な空気は中々ないだけに心配だ。
手にしている勉強もままならないまま私はただヘッドホンから流れる音楽に身を任せていた。
澪「明日…ちゃんと話し合わないとな。律と唯の進路のことも考えないと」
そう切り分けて勉強に集中し直し、ノートの上に転がっているシャーペンを手に取ろうととした時だった。
ガタタ……
澪「ん…?」
勝手に揺れるシャーペン。
ガタタタタタタ…
それは次第に自らをも震わす振動に変化していく────
澪「じ、地震!? 隠れなきゃ……ッ」
急いで机の下に隠れる。
しかし更に揺れ続ける地震に私は段々気が遠くなり……そして、
聴いた。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:54:47.58 ID:1jx+DhWRO [31/47]
──琴吹邸
紬「はあ…」
斎藤「お嬢様。どうなされましたか? 溜め息なんてらしくないですよ」
紬「ごめんなさい。ちょっと考え事を…ね」
斎藤「左様ですか。では、下がった方がよろしいでしょうか?」
紬「……あなたは機械みたいな人ね」
斎藤「よく琴吹様に言われます。自分の父親とは正反対だと」
紬「あなたの父親もここで?」
斎藤「そうらしいですね。もっともかなり前のことなので存じてませんが」
紬「そ…。じゃあいいわ。下がって」
斎藤「はい、お嬢様。何かありましたらまたお呼びください」
そう言い扉を閉める前に一礼。本当に機械の様な人、でもそれが一番楽なのかもしれない…。
何も考えなければ…こんな苦しむことも…。
紬「何考えてるのかしら…私は。軽音部のみんなは何よりも大事で…」
大事? 何よりも? 何で?
……わからない。
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 21:57:21.88 ID:1jx+DhWRO [32/47]
宮田とか出した方がいいのか迷うな
サイレン知らない人の為にけいおんだけのサイレンでやりたいけど
>>71
ネタバレワロタwww
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:04:29.46 ID:1jx+DhWRO [33/47]
紬「りっちゃんと梓ちゃん…仲直りするといいな」
そうじゃないといけない気がする。
軽音部はみんなが仲良しで、みんなが一人一人を大切にしなきゃいけない。
紬「澪ちゃんに電話してみようかな…」
携帯を手に取り、アドレス帳から澪ちゃんの名前を探しだし…かける。
…………。
紬「あれ…? 繋がらない…」
グラッ…
紬「きゃあっ」
突然の揺れに椅子から崩れ落ちる。
紬「地震…! 斎藤! 地震よ! 斎藤!」
返事はない…。
次第に強くなる揺れの中で私はただ床に這いつくばったまま、あの音を聴いた。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:14:38.63 ID:1jx+DhWRO [35/47]
──中野宅
梓「何であんなこと言っちゃったんだろ…」
梓「私はただあの二人に早くこの先のことを決めてもらいたくて…」
梓「ただそれだけだったのに…」
明日謝ろう。
梓「音楽続けて欲しいな…」
バラバラの道を選んだとしても…音楽だけは続けて欲しい。
音楽は、私達が繋がってる証だから。
梓「…勉強しよ」
リビングから階段に上ろうとした時、世界が揺れた。
梓「地震…」
すぐ止むと思い階段の手すり掴まるも一向に止まず、
梓「ダメ…………、謝りたいの! お願いだから…………!」
もう自分が立ってるのかどうかもわからなくなった頃に、響き渡る音。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:17:11.29 ID:1jx+DhWRO [36/47]
──保健室
夢を見ていた。
いつのことだろう。
私達みんなでただ遊んでる。
みんな楽しそう。
なのに…………
あの音が、全てを奪い去ったんだ────
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:19:04.01 ID:1jx+DhWRO [37/47]
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ────────
唯「サイレンが鳴ってる・・・」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:30:19.22 ID:1jx+DhWRO [38/47]
桜ヶ丘高校 保健室 PM19:00:01
平沢唯
終了条件1 学校からの脱出
──────────
唯「さっきの音…何だったんだろう」
私はいつまで寝てたのか…いつの間にか外も暗くなっていた。
唯「帰らなきゃ…憂が心配してる」
ゆっくりと慣らすように地面に足をつけ、立ち上がる。
──【ギェギェ…】──
唯「うっ……何……今の」
頭に一瞬過ったそれはまるで誰かの目線を自分が見たような様だった。
唯「…さっき保健室って見え…」
「ハヘァハアッヘーヘッヘッへ!!! ネテナキャダメデスヨオオオオ!!!!!」
唯「ひいっっっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:37:45.56 ID:1jx+DhWRO [39/47]
カッターナイフを持った白衣の女の人が危なげな表情で近寄ってくる…!
唯「先生…だよね? 危ないよぉ…そんなもの…」
「ゆいチャンハは病気ダカラ手術シナイトイケナイノヨォ?」
カチッ、カチッ、とカッターの刃を出し、それを楽しそうにしてる先生。
顔も真っ青で唇も青白い……とてもじゃないけど正気だとは思えなかった。
唯「わ、私帰ります!」
脇を抜けて帰ろうとした時────
「アアアアアッ!」
ザクッ────
唯「い、あっ……」
振られたカッターナイフで右腕に浅い切傷をつけられる。
唯「あ、ああ……」
本気だ。この人は本気で私を殺すつもりだ。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:27:42.47 ID:1jx+DhWRO [42/47]
唯「……あっ…あああ!!!!」
脱兎の様に逃げ出す。人間の本能、一番奥にある死と云う恐怖から逃れる為に。
「ハヤクこっちにおいでエエエエエエエ」
体を反りながら吠える様に鳴いた後、唯の追跡を開始する。
その足取りはもはや人間のもではなく、一歩一歩歩く度に血の様なものが目から流れ出ている。
「ユイチャアアアアアアン!!! ヒャッエッハア」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:33:32.79 ID:1jx+DhWRO [43/47]
夢中になって走る…。
誰か…人を見つけて助けてもらおう。
足は自然と職員室に向かっていた。
職員室ならさわちゃんが…!
勢いよく扉をスライドさせ、
唯「さわちゃん! 助けて!!!」
…………
唯「嘘…………」
誰もいない。
電気もついてない薄暗い職員室は奇妙な程に静かだった。
トントン、
唯「えっ」
肩を叩かれ、不意に振り返る。
校長「ヤァ」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:39:41.08 ID:1jx+DhWRO [44/47]
唯「校長先生…………も」
校長「コワクナイ…………こっちはスバラシイ世界ダヨ」
目から赤い血を流し、ニコニコと笑っている。
手には自分のものだろうか、ゴルフクラブを握っている。
唯「やめて…………よぉ……」
泣き出しそうな心を抑えつけながら後退る。死にたくない……その一心で体は逃げ場を模索していた。
校長「コッチニオイデェェェェ!!!」
振りかぶられたゴルフクラブを見てようやく私の体は動き出した。
唯「ひゃうっ」
ガシャアアンッ
咄嗟に避けたのが効をそうしたのかゴルフクラブは空を切り、誰かの机を粉砕した。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:47:16.71 ID:1jx+DhWRO [45/47]
校長「アヘへ…………ウヒャアアアア!!!」
ブンッ! と目の前をゴルフクラブが通過、
ガシャアンッ───
職員室のガラスが派手に割れる。
唯「ひぃぃっ」
尻餅をつくような体制でなんとかかわす、も、それはかわしたと言うよりただ腰が抜けてしまったと解釈した方が自然だろう。
校長「ウヘアッ………ウウ?」
またゴルフクラブを唯に定めようとするも職員室の窓に引っかかり中々抜けずにいる。
唯「(今の内に……!)」
尻餅をついたまま下がって行くと立ち上がり、職員室を抜け出す。
校長「待てエエエエエエエエエエ」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:54:41.08 ID:1jx+DhWRO [46/47]
唯「はあ…はあ…どうなってるの……」
走りながらこの全くわからない状況を整理してみる。
唯「みんな目から血を流してた……考えたくないけど感染病とかかな……」
そう考えた瞬間キュッと胸を締め上げるものがきた。
友達のこと、家族のこと、憂のこと……。
まるで迷ってしまって家がどこかわからなくなったような不安感が押し寄せてくる。
誰もいない、いるのは私を殺そうとするわけのわからない人達だけ。
この世界は一体なんだ。私は……一体どこへ来てしまったのだろう。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:59:52.78 ID:1jx+DhWRO [47/47]
駄目……。ここで挫けたら私は多分死んでしまう。
そしたらもうみんなにも会えない……。
唯「……」
思いついたように携帯を開く。
圏外
その二文字に心を折られそうになる。
でも…待ち受けのみんなで撮った写真を眺めていると自然とさっきまでの不安は幾らか和らいでくる。
唯「みんなを探そう…」
生きてる保証はない。だけど生きているのならみんなも同じことを考える筈だ。
唯「まずは学校を出よう」
買い物に行った憂も心配だ。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:08:00.23 ID:aaTgFN2yO [1/96]
──【ドコダー??】──
唯「うっ……」
また頭に過る映像。さっき見たのとは違って職員室辺りが映し出されていた。
唯「あの声……もしかして校長先生の目から見えてる景色が私に見えた……?」
何故かはわからない、けれどやってみる価値はあるだろう。
目を閉じ、意識を集中する……。
──【手術シマショウネー】──
これはさっきの保健の先生…。
何を切り刻んでるんだろうか、人形のようなものがズタズタになっている。
更に頭を別のチャンネルに切り替えてみる。
テレビに映っている番組を変える様なイメージ。
──【オーーーーーーイ】──
いた、校長先生だ。さっきよりこっちに近づいて来てる…。
間違いない、これは相手の視界に割り込む能力…!
唯「言うなら視界ジャック…!!!」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:15:03.78 ID:aaTgFN2yO [2/96]
唯「これを利用したら上手く逃げられるかも…」
校長先生は今一階の職員室前…、保健室の先生は保健室。
校長先生は動き回ってるから注意しとかないと。
学校を出るだけなら色々道はあるけど…他の先生達もああなってるかもしれない。
なるべく見つからない様に正門は避けよう。
裏門から脱出だ。
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:23:23.75 ID:aaTgFN2yO [3/96]
どうやら他にはいないようであっさりと裏門にまで辿りついた。
唯「後はここを出て…あっ」
裏門には金色の錠がかかっていた。
唯「もうっ!」
こんな大事な時なんだから鍵ぐらい外しておいてほしいよ!
ここで苛立っても仕方ないので危険を承知で体育館の裏を抜け、正門の方を覗き込む。
唯「誰かいる…」
体育教師「遅刻するヒトはユルシマセン」
木刀のようなものを持ちながら正門のど真ん中に立っている。
唯「正門は抜けれない…」
唯「壁は私じゃ乗り越えられそうにないし…」
私は鍵探しを開始した。
小目的 裏門の鍵の入手
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:30:15.02 ID:aaTgFN2yO [4/96]
再び職員室の近くのトイレまで戻って来るも……。
──【ウヒャッヒャア】──
唯「どこか行ってよ校長先生!」
トイレの一室で一人作戦会議なのです。
唯「鍵は職員室にかかってる……それは校長先生の視界から確認したけど…」
職員室を出たり入ったし続ける校長先生を何とかしない限り鍵は手に入らない…。
唯「何とか注意を引けないかな…」
唯「……何か音が出せれば…そうだ!」
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:40:30.76 ID:aaTgFN2yO [5/96]
「来週のゴルフタノシミダナァ……」
ゴルフクラブをひたすら磨いている校長先生。
ガタンッ───
「アヒャッ!?」
隣の教室で大きな音が鳴り響いた。
それを聴いた校長先生は餌の臭いを嗅ぎ付けた野犬のようなスピードで早歩きで音の発信源へ向かう。
「みいいいいいつけたァァァァァァ」
ガラッ
教室の中はただ机が散乱しているだけで、中には誰もいない。
「いるノハワカッテルンダ」
「デテキナサイ」
そのまま扉を閉め、教室の中を物色し始めた。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:49:41.91 ID:aaTgFN2yO [6/96]
唯「上手く行った…!」
唯は仕掛けを打っていた。隣の教室に静かに入りこんだ後、机や椅子を重ねる。
なるべく入口近くにして音が響く様に窓も開けておく。
教室を調べビニールの紐の様なものを入手した後、その机の足にビニールの紐を結ぶ。
それをトイレまで引っ張り込み、一気に引っ張た。
重ねた机や椅子は見事に崩れ、盛大に音が響いたのだ。
視界ジャックで校長先生が教室に入った所を確認してからトイレから職員室へ。
唯「かぎぃ~かぎぃ…あった!」
裏門の鍵を見つけると一目散に職員室を脱出した。
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:56:44.31 ID:aaTgFN2yO [7/96]
カチャリと音を立てて錠が落ちる。
唯「開いた! とりあえず憂を……」
でも闇雲に探して見つかるかな…入れ違いになるのも怖いし…。
唯「家で待とう…。それにもう帰ってるかもしれないし」
そう決めると私は学校を飛び出して自分の家を目指した。
終了条件達成
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:06:05.85 ID:aaTgFN2yO [8/96]
桜ヶ丘 大手スーパー 本屋
PM18:30:30
田井中律
終了条件1 スーパーからの脱出
小目的 武器の入手
──────────
律「う…なんだ?」
生きてる…?
律「さっきのサイレンは何なんだ…」
──【フッヒャア】──
律「うっ…頭が痛い」
さっきのは…?
わからないことづくめだ。
ともかくみんなが心配だ。
律「……圏外ね」
地震の影響だろうか。携帯は使えそうにない。
律「直接確かめに行くしかないか」
周りを見回しながら私は携帯をポケットにし舞い込み、ここを出る為に動き出した。
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:15:00.58 ID:aaTgFN2yO [9/96]
「うああああああああ」
律「なんだ!?」
下の方から叫び声が聞こえると、直ぐ様下を覗き込んだ。
吹き抜けになっている二階から一階の様子はよく見えた。
律「おいおい嘘だろ……」
「アヒャッヘハァ!!!」
「助けてく……」
グチャリ……
律「うっ……」
思わず目を背けてしまう。こんなの澪じゃなくても怖いっての……!
……男が持っていた包丁が他の人の心臓に刺さり込んでた……。
つまり……殺してたってことか。
律「地震に乗じたにしてはタチが悪すぎんだろ……!」
自分の身にも危険を感じつつ、私はその場を後にする。
律「武器がいる……自分を守るための武器が」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:20:25.73 ID:aaTgFN2yO [10/96]
隠れつつ、何とかスポーツコーナーまで辿りつけた。
律「思ったらスポーツコーナーって武器の宝庫だよな」
バットにゴルフクラブ、テニスラケット……はちょっと威力がないか。
さて、どれにしようかな。
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:26:58.83 ID:aaTgFN2yO [12/96]
律「ゴルフクラブにしよう」
ドライバーはすぐ折れそうだからアイアンにしよっかな。
適当に一本引き抜くと軽くスイングしてみる。
ブンッ!!!
律「ナイショット」
ゴルフなんてしたことはないけど自分を守るためだ。
律「後で返せたら返しに来ます!」
誰もいないカウンターに一礼した後スポーツコーナーを出る。
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:32:45.96 ID:aaTgFN2yO [13/96]
──【コッチニオイデ~】──
律「うっ……またかよ」
誰かの目線が頭に過る。
律「地震のせいで超能力に目覚めちゃったのか私」
試しに目を瞑り、一階にいるであろうさっきの男の視界を見ようとしてみる。
──【ケェッケェッケェッ……】──
律「見えた……本当に」
何でかはわからないけどどうやら他人の視界を盗み見ることが出来るらしい。
律「一体どうなってんだよ……」
律「澪……みんな」
無事でいてくれよ……!
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:40:02.40 ID:aaTgFN2yO [14/96]
それからも隠れながら何人もさっきの様な男を見た。
警察は何やってんだ! こんな時の為の警察だろ!
律「って言っても電話も出来ないし…いざとなったら私も…」
やるしかない。
殺されるなんてごめんだ。
でも命乞いをして……変なことされるのも嫌だ。
私だってただの女子高生だ、みんなの前では強がってるけどやっぱり怖いものは怖い。
体が無意識に震える…けど、
それでも怖がってたらいいようにされるだけだ…。
律「来るなら来い…私も容赦しない」
ゴルフクラブを握る手が一段と強くなった。
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:47:33.26 ID:aaTgFN2yO [15/96]
律「エレベーターは…まずいか」
音がなるし…下に参りまーすって言ってるようなもんだしな。
律「ということはエスカレーター…または階段だけど」
エスカレーターは中央にありすぎて降りた時に目立ち過ぎる。
なら階段か…。
律「階段は…こっちか」
どうやら二階にはいないらしく一階から見えないよう二階の吹き抜け部分にかけられている手刷りから離れて少し屈みながら歩く。
手刷りの下は白いガラスになっている為あっちから見られることはないだろう。
律「……」ビクッ
律「なんだ……」
階段に差し掛かった時、一瞬体が震えた。
律「もしかして……」
私は静かに目を閉じる。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:54:20.69 ID:aaTgFN2yO [16/96]
──【ハア……ハア……また怒らレチャッタ……死ねばイイノに……あんなヤツ】──
律「いる…」
目線から階段が見えた…ってことは多分正面のレジ辺りにいるのだろう。
言葉を聞く限り正気とは思いづらい。というよりここにいる人達はみんな信用出来ない。
下に居たってことはさっきの叫び声も聴いてるはずなのに…何の焦りも感じられない。
ってことは奴らの仲間か……。
律「わかんないけど早く逃げた方がいいな…。警察とかにこの事を伝えないと」
このスーパーの近くに交番があった筈。
まずはそこに駆け込もう。
律「さて…下のやつをどうするか」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:02:42.71 ID:aaTgFN2yO [17/96]
女店員「服をタタミマショウネーイソガシイイソガシイ」
ウイーーーーン
女店員「!!!?」
エレベーターが動いているのに気付いたのか急いで駆け寄る。
女店員「降りてラッシャアアアアアアアい」
↓のボタンを狂うように連打しまくる女店員。
上の文字盤は2から1へ。そしてつきましたよと言う合図、ポーンという間抜けな音がした後、ゆっくりと扉が開いた。
女店員「アハハハハハ!!!」
勢い良く乗り込むものの、そこには誰もいない。
しかし、エレベーターの鏡に写った自分を他の誰かと勘違いしたのだろうか、ハンガーを振りかぶり襲いかかる。
女店員「キャエエエイ!!!」
バリンッ
ガチャン───
そうしてエレベーターの扉は閉まり、上に向かった。
律「行ってらっしゃい」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:08:31.39 ID:aaTgFN2yO [18/96]
律「さて、早く行かないと。しかし便利だな~これ」
律は片目を瞑ったままでいる。
その瞑った片目にはさっきの女店員の視界がジャックされていた。
こうすることにより動きながら視界をジャック出来ると律は気付いたのだ。
それを利用し、女店員の様子を見ながら階段を降り、階段の隣のエレベーターに夢中になってるのを見て扉を閉めたのだ。
律「あはははバカだな~それじゃ上がっちゃうだろ」
ひたすら上のボタンを連打している女店員を後目に、律は出口を目指した。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:16:29.26 ID:aaTgFN2yO [19/96]
それからも視界ジャックを駆使し、相手が見てない内に後ろを通ったりを繰り返した。
律「何人いるんだよ……しかも全員目から……あれ血か?」
信じられないけど……どうやらとんでもないことになってるのは確かみたいだ。
律「まともな人間はいない……いたらさっきみたいに殺されてる? 何かの病気か……映画じゃあるまいし」
いくら考えても答えは出ない。たかだか十数年生きただけの私には引き出しが少なすぎる。
律「勉強しとくんだったな……」
こんな時に思い出すのはやはりみんなの顔だった。
律「梓の言う通りだよな……」
「ウヒャアアアアアアアアア!!!!!!」
律「しまっ……」
見つかった!!!
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:26:31.79 ID:aaTgFN2yO [20/96]
凄い速度でこっちに来る!
よく見るとそれはさっきの包丁を持った男だった。
律「クソッ」
自分のノロマさに悪態をつきながら出入口に走る。
騒ぎを聞き付けた同じような奴等が次々と追いかけるのに参加しているようだ。
視界を盗み見るまでもない。後ろに感じる気配でわかる。
律「ヤバいヤバいヤバいヤバい」
前からも来たッ!
「サカナァ……」
律「ど……、けえええっ!」
魚を持ったおじさんを容赦なくゴルフクラブで殴りつける。
律「正当防衛ってことでよろしく!」
そのまま出口から一目散にスーパーを出ると私は急いで交番に走り込んだ。
終了条件達成
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:41:55.05 ID:aaTgFN2yO [22/96]
桜ヶ丘 秋山宅 澪の部屋
PM18:30:00
秋山澪
終了条件1 秋山宅からの脱出
──────────
澪「おさまった…?」
机の下からひょこっと顔を出すと辺りをリスの様に軽快に確認する。
澪「凄い地震だったな…。ああっ、本棚がぐちゃぐちゃ…」
澪「ってそんなことよりみんなが無事かを確かめるのが先だろう!」
散乱した本を退かしやっとの思いで携帯を見つけるも圏外。
澪「こんな時は災害コールセンターに電話だ!」
プープープー
澪「その災害地の真っ只中にいるの忘れてた…。かけられる側だろ私は」
地震の時に聴こえたあのサイレンの音…何だったんだろう。
──【フフ、澪ちゃんゴハン作らなきゃ……】──
澪「な、なに? ママの声が……」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:51:56.02 ID:aaTgFN2yO [23/96]
──【ダンッ! ダンッ! ダンッ! 中々切ナイいわねぇ…………】──
澪「なに…………これ……」
──【澪ちゃんが待ってルノニ……】──
澪「ママ……何切ってるの……」
──【キレナイワネェ……】──
それが何かわかった瞬間に胃から吐瀉物が逆流してきた
澪「オェ…………」
間違いない…………ママが切ってるのは…………
あれは…………パパの手だ
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:57:35.59 ID:aaTgFN2yO [24/96]
澪「ゴホッ……アッ……ア…ア…アッ!」
これは夢だ。
澪「ママがそんなことするわけ…」
でも……あの薬指にあった指輪はパパの……。
澪「パパとママが愛し合った記念のものなのに……」
喧嘩になってママが勢い余って殺して……、
澪「ううん……家の家族は仲が良かった。それだけは間違いない。殺すだなんて……」
そもそもさっき見えたのはなんだ?
ママがいるのは一階なのにどうしてそれが見えたんだ?
それに地震があったって言うのに暢気にご飯……それもパパの手を……。
澪「考えちゃダメだ…! 頭がおかしくなる…」
こんな時、頭に浮かんだのは律の顔だ。
澪「助けて…律…」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:03:54.88 ID:aaTgFN2yO [25/96]
──【後はコレヲ煮込んで……】──
目を閉じると自然に浮かぶこの光景。
──【出来たら澪ちゃんに持って行ってアゲナキャ……】──
もう理性のブレーカーが飛んでいるのか私はその光景を黙って眺めていた。
澪「パパ……ママ……律……」
会いたい。律に。
怖かったろ? って慰めてもらいたい。
澪「逃げなきゃ……。そして律のとこに行くんだ」
そう決めた瞬間、頭のブレーカーを入れ直し、物事を冷静に考える。
律に会うためにはここで死ぬわけにはいかない。
澪「あのママはもう……ママじゃない!」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:15:34.69 ID:aaTgFN2yO [28/96]
しかしこの能力は便利だ。相手の視界を盗み見ることが出来るらしい。
だがこんなアニメじみた能力があること自体異常だ。
つまり……
澪「もしかしたらもう……私は……」
よそう、そんなことを考えるのは。今はとにかく律やみんなの安否が心配だ。
携帯が使えない今直接会いに行くしかない。
澪「家を出るには下を抜けなきゃ……でも下には包丁を持ったマ……人がいる」
澪「窓からは……無理だ。とてもじゃないけど降りられない」
澪「下を抜けるしかない……」
ゆっくりと部屋のドアを開けると、階段を覗き込む。
澪「……」
そして目を静かに閉じた。
180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:21:13.72 ID:aaTgFN2yO [29/96]
──【ウフフ……出来タ……ハヤク澪チャンに持っテ行っテアゲナイト……】──
鍋で煮た腕をお椀によそいおぼんの上に置いている。
澪「まさか……こっちに来る?!」
慌てて隠れる場所を探す。
いっそのこと飛び降りた方が助かる見込みはあるか、元はママなんだから話せばわかってくれるんじゃないか、なんてバカみたいな提案が頭の中で立案されては却下されて行く。
トス……トス……トス……
スリッパが階段を噛む音が聞こえる……!
澪「ここしかない……!」
私は一番隠れられそうな所に身を滑らせた。
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:27:22.12 ID:aaTgFN2yO [30/96]
澪ママ「澪ちゃん、ゴハンよ」
シーン────
澪ママ「オカシイワネェ……ドコに行っタノカシラ」
澪ママ「ヨイショ…………」
おぼんを机の上に置くママ。
澪「(うっ…………)」
ママの手には………包丁が握られていた。
澪ママ「ハヤクコッチニ来レバイイノにネー…………リッチャンと一緒ニ」
澪「(律………)」
澪ママ「遊ビニ来ナイカシラネー…………リッチャン。ソシタラ一緒ニコッチニ来サセテアゲルノニ」
ガタッ…………
澪ママ「アラ……」
澪「(しまった……ッ!)」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:31:11.07 ID:aaTgFN2yO [31/96]
澪ママ「澪チャンイルノー?」
澪ママがクローゼットを覗き込むようにして見ている。
澪「ッ…………!」
心臓はもう耳障りな程に脈を打っている。
澪ママ「かくれんぼカシラ? 澪チャンったら子供ネー…………」
澪ママ「ミ~ツケタ」
澪ママは両手でクローゼットを開け放つとそのまま一気に包丁を中に突き立てた。
ザクッ─────
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:36:41.73 ID:aaTgFN2yO [32/96]
澪ママ「…………」
澪「…………」
澪ママ「澪ちゃんの服ヤブイチャッタわー…………後で縫ワナイト…………」
澪「(…………ほっ)」
その破いた服を持ったまま澪ママは下へ降りて行った。
それを視界ジャックで確認した後、澪がベッドの下から出てくる。
澪「クローゼットに隠れてたら死んでたかな……」
これでしばらくは上には来ないだろう。考える時間が出来た。
澪「酷い臭い……」
机に置かれたそれを鼻をつまみながらゴミ箱に入れた。
そしてすかさずその周りに消臭剤を振りかけた。
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:49:15.28 ID:aaTgFN2yO [34/96]
澪「今は……ご丁寧にさっき破いた服を縫ってる……。ママなのかママじゃないのか……」
さっき殺そうとしたんだ、ママだろうがママじゃなかろうが危険には変わりないか…。
澪「台所じゃなくなったぶん逃げやすくなったな……」
台所の勝手口から逃げればすぐ外だ。
澪「これで準備はよし……!」
鞄に食べ物や飲み物を詰めておく。きっと律は何も考えなしに外に飛び出してるだろうからな。
お腹が減ってたりしたら大変だ。
澪「…………」
念入りにママの視界を盗み見る。
──【澪ちゃんの服カワイイワァ………】──
相変わらずミシンで私の服を縦横無尽に縫っている。こうなるともう頭がどうかしたとしか思えない。
澪「夢なら覚めてよ……」
そう呟いた後、私は静かに階段を下った。
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:55:17.64 ID:aaTgFN2yO [35/96]
階段の壁際から肉眼で覗き見る。
ママは背を向けたままリビングでミシンを縫っている。
澪「(よし……)」
今だとばかりにゆっくりと屈みながら台所に行き、勝手口に手をかける。
澪「(あれ……スリッパがない。いつもならここにあるはずなのに…)」
こんな非常自体だ、靴下だけでも何とかなるだろうとドアノブを回そうと……
ガチャ
澪「えっ」
澪パパ「タダイマァァァ」
澪「パ…パ…?」
目の前に立つのは片腕のない私のパパだった。
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 04:05:38.11 ID:aaTgFN2yO [36/96]
澪パパ「ウヒャッヒャヒャッ」
澪ママ「アラァ澪ちゃん……帰ってタナライッテクレナイト」
挟まれた……。
澪パパ「コッチハスバラシイゾ~澪」
澪ママ「コッチニオイデ……澪ちゃん」
澪「あ、ああ……」
そうだ……これは夢なんだ。
きっと悪い夢で……起きたらまたあの楽しい日々が待ってるんだ。
目を瞑る。
澪ママ「澪チャアアアアアアアアアアアアアアン」
覚めたらきっと……会いに行くから、律。
斎藤「そんなんじゃ生き残れませんよ、澪さん」
この声の後、銃声が二つ響いた。
終了条件達成
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:08:24.16 ID:aaTgFN2yO [40/96]
桜ヶ丘 琴吹邸
PM??:??:??
琴吹紬
終了条件1 琴吹邸からの脱出
終了条件2 斎藤を倒す
紬「ここは……」
見渡せばそこは私の部屋だった。
紬「地震があって……その後……」
どれぐらい私は気を失ってたんだろう。辺りはもう真っ暗で夜と言うことだけしかわからない。
紬「携帯…、駄目ね。壊れてる」
地震のせいでクローゼットが倒れて携帯を踏み潰したのだろう。画面は無惨にひび割れている。
自分がこうなっていないだけでもよしとしておこう。
紬「お父様は出張で遠くに行かれてるから大丈夫だけど…他のみんなが心配ね」
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:09:58.80 ID:aaTgFN2yO [41/96]
耐震設備が完璧なこの家でさえこの有り様だ。一般家庭の家がどうなっているか…なんて考えたくもない。
紬「とにかく斎藤に車か何かを出してもらってみんなの安否を確かめに行きましょう」
着替えようと思ったけどクローゼットから服を出すのは一苦労だろう。
ネグリジェのまま彷徨くのも恥ずかしいけど事が事だけにそんな場合ではない。
紬「斎藤…無事かしら」
部屋を出ようとドアノブに手を回した時だった。
──【琴吹家は……オワリダ…】──
紬「何…さっきの」
一瞬頭に浮かんだのは猟銃の様なものを構えた誰かだった。
254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:11:38.84 ID:aaTgFN2yO [42/96]
紬「あの声は……斎藤?」
もう一度見れないか試みるも、見えない。
紬「……気のせいにしては鮮明だった気がする…」
それにあれはエントランスの二階から見た私の部屋じゃなかった…?
私の部屋の扉を猟銃で狙いを定めてた…?
なんで……?
紬「琴吹家は…終わりだって言ってた…」
もしかしたらこの地震に便乗して私を殺して財産を盗みだそう…とか。
紬「斎藤は信用してるけど…あり得ない話じゃないわ…」
どうしよう…。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:28:32.48 ID:aaTgFN2yO [44/96]
紬「やっぱり危険だわ。この部屋から何とか脱出出来ないかしら…」
そう言えば昔お父様がもし火事になってこの部屋から出られなくなったりした場合に使いなさいって言われてたものが…。
紬「え~と…確かここに」
お父様が買ってくださった絵画を外すの何種類ものボタンが現れる。
紬「確か…」
その中の赤いボタンを押すと何やら窓の下から何かが勢いよく中庭に降り、固定される。
スロープ状に伸びたそれはまるでプールのスライダーのようになっている。
紬「わぁ…」
楽しそう…。
紬「家にこんな滑り台が…ずっと隠しておくなんてお父様も意地悪だわ」
ゆっくりとクリーム色のそれに体を預けてみる。
紬「1.2.3…ッ!」
手を離し、私は滑降を開始した。
終了条件達成
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:40:33.76 ID:aaTgFN2yO [45/96]
桜ヶ丘 中野宅
PM19:15:44
中野梓
終了条件1 侵入した屍人を倒す
──────────
梓「う…ううん」
梓「……はっ」
梓「地震……はもう止まってる」
梓「凄い地震だったけどどれぐらいの震度だったんだろう」
散乱している物の中からテレビのリモコンを探しだしてつけてみる。
ザアーーーーー
砂嵐。
梓「お父さんとお母さんは大丈夫かな? 仕事先で怪我とかしてなきゃいいけど…」
梓「唯先輩達にも電話してみよ……」
圏外。
梓「はあ……」
携帯やテレビがないだけでこれ程まで何も出来なくてわからないなんて……ちょっと自分が嫌になる。
ガタタッ……
梓「何…? リビングの方からだ…」
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:50:23.59 ID:aaTgFN2yO [46/96]
「ウヒャアッヒャアッハァ」
グチャグチャ……
梓「(何…あれ……)」
冷蔵庫のものをひたすら口に運んでいる…。
強盗…?
梓「(どうしよう!!! とりあえず警察に……って電話使えないんだったよぉ!)」
「タリナイータリナイイイイイ」
グチャクチャグェップブチャ
梓「(自分の身は自分で守らなきゃ…。追い払ってやるです!)」
そそくさと部屋に戻ると武器になりそうなものを探す。
梓「後ろから思いっきり殴って気絶するぐらいのものがいいかな…」
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:01:28.95 ID:aaTgFN2yO [47/96]
梓「ギターケースなら思いっきり殴っても死んじゃったりしないよね」
ムッタンは外に出して置き、空のギターケースを両手で担ぐ。
梓「……」
恐る恐る覗いて見ると……。
「ウメエ……ウメエ……」
まだお食事中のようだ。冷蔵庫の方を向いたままひたすら口に物を運んでいる。
梓「(よっぽどお腹がすいてたのかな…。でも強盗は良くないですよ!)」
正面から行けば何されるかわからないのは明白だ。そして力のない私はただそれに従うしかなくなる。
そうならないようにこの一撃を見舞ってやるです!
梓「……」
「クヒャッヒャ」
梓「このっ!!!」
ガツーーーーン
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:07:06.78 ID:aaTgFN2yO [48/96]
「ウア……?」
梓「ひいっ……」
ギョロリと瞳だけが動き蒼白の男がこちらを見据える。
「邪魔スルナアアアアアアア」
梓「あっ……あ……」
食事を邪魔されたのがよっぽど気に障ったのか物凄い力で私の首を締め上げてく……る……。
梓「あ……うあ……」
両手で……何とか……振りほどこうとしても……全く……動かな……。
「コッチニオイデ……」
梓「(こっちって……どこ……?)」
もう何も……見えない……よ。
284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:14:54.43 ID:aaTgFN2yO [49/96]
意識が遠くなって行く。
梓「…………」
もう腕にも力が入らない。元々こんな細い腕じゃ敵いっこない……。
私は余りにも無力だ……。
梓「…………」
涙が溢れた。
悔しくて、こんな所で死んじゃう自分が情けなくて。
「ウヒャアッヒャアッハァ!!!!」
ギリギリ……と首を圧迫していく。
もう折れてしまいそう……。
285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:16:06.94 ID:aaTgFN2yO [50/96]
梓「…………」
言葉も出せない。
そのまま、目を閉じた。最後くらいこんな奴の顔じゃなくて……私の大好きなみんなの顔を思い浮かべながら死にたい。
──【はっ……はっ……】──
何だろう……この景色は。私の家?
──【っつはっ……はっ……!】──
中に入って来た……。走馬灯かな……?
──【このっ……!】──
あれ……私が見える……。
純「梓を離せっ!!! この化け物!!!!!」
ガスンッ!!!
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:24:32.81 ID:aaTgFN2yO [51/96]
「ゴオッ………」
純の振りかぶったバットが屍人の脳天にクリティカルヒットした。
余りの威力にそのまま土下座するように地に伏した。
純「梓っ!」
梓「ゲホッゲホッ……ゴホ…ッ……あ、純」
純「命がけで助けに来た友達に向かって第一声がそれ!?」
梓「ごめん……何だか夢みたいで。ほんとにもう死んだかなって思ってから」
純「私のウルトラCがなかったら間違いなく絞め殺されてたよ! 立てる?」
梓「……無理っぽい」
純「全く……。よいしょっと」
純に肩を貸してもらい立ち上がる。
純「とにかくここを出よう。またこいつが起きる前に」
梓「でも……さすがにあれじゃ…」
バットで思いきり殴ったのだ。幾ら女の力でも…。
純「…こいつらは死なないんだよ。どういうわけか知らないけど」
292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:31:06.34 ID:aaTgFN2yO [52/96]
梓「死なない…?」
純「そ。多分後10分もすればまた起き上がるよそいつも」
梓「そんな…」
純「詳しい話は車でしよう。そっちの方が安全だから」
梓「車?」
純「乗ってきたの」
梓「純って運転出来たっけ…? そもそも免許は…?」
純「あんなの簡単簡単。こうやってぐわーってやった後、ぶしゃーって踏んで後は曲がりたい方にハンドルを切るだけ」
幾ら非常時? といっても正直……
梓「………乗りたくないなぁ」
純「つべこべあべこべ言わずに来るのっ!」
梓「あっ、ちょっと! 純! バットは?」
純「いいのいいの。また探せばいいから(……間に合って良かった……)」
終了条件達成?
298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:43:52.43 ID:aaTgFN2yO [53/96]
桜ヶ丘 平沢宅
PM19:30:33
平沢唯
終了条件1 わかりやすい置き手紙を書き残す
唯「隠れながら帰ったから時間かかっちゃった…」
もう辺りは真っ暗で、ちらほら街灯が灯り初めている。
唯「憂~いる~?」
家に入ると一目散に憂を呼びながら部屋に行く。
唯「憂~」
そこには憂の姿はなく、ただ可愛らしい部屋が薄暗く映し出されていただけだった。
唯「まだ帰ってないんだ…憂」
心配だ。
もしも憂があの変な人達に襲われたのかもしれないと思うと心臓がキュッと締め付けられる。
待ってられないっ!
唯「探しに行こう…!」
300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:48:38.52 ID:aaTgFN2yO [54/96]
唯「でも入れ違いになったら困るなぁ……。携帯も使えないし」
唯「う~ん……」
唯「!」
唯「そうだ! 置き手紙をしておこう!」
何て書こうかな~。これを見たら家にいなさい! とかかな~?
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:59:12.72 ID:aaTgFN2yO [56/96]
憂が家にいないので外に探しにいっています。
20:30までには私も帰ります。
もしも20:30までに私が帰ってこなかったらあずにゃん達と一緒に隠れてて!
唯「……と、これで完璧!」
唯「よし! 探しに行こっと!」
手紙をわかりやすくリビングの机の上に置くと着替えるのも忘れて再び真っ暗闇へと体を投じる。
唯「憂……みんな……無事でいてね」
終了条件達成
置き手紙の内容◎
318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:22:49.99 ID:aaTgFN2yO [60/96]
桜ヶ丘 大手スーパー前の交番
PM19:10:00
田井中律
終了条件1 警察官からの逃亡
──────────
律「大変なんだよお巡りさん!!! スーパーの中がもうてんやわんやで…」
警察官「……」
律「聞いてんのかよ!!! 早くしないとあいつらが……」
ジリリリ……
ジリリリ……
時代に似つかわしくない黒電話が鳴り響く。その音に一旦間を取られた私は仕方なくその電話が終わるのを待つことにした。
警察官「もしもし…………」
律「(早くしろよな~……)」イライラ
警察官「……了解…射殺します…」
律「は…?」
320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:32:55.60 ID:aaTgFN2yO [61/96]
律「何言って……」
カチャリ……カチャリ……
律「なんで弾なんて込めて……」
そうか……、
警察官「イイアーッ」
こいつもか。
踵を返すと急いで交番を出る。
律「銃なんて卑怯だろ!!」
走りながら片目を閉じ視界をジャック。
──【無駄ナ抵抗ハやめなさい】──
照準が見事に私の背中を捉えてるのを見て、
律「くっ……!」
思いきり体を揺さぶりながらジグザグに走る。
パァンッ
パァンッ
二発の銃弾はどちらも私を捉える事なくどこかへ消えていく。
律「相手が狙ってる場所がわかるなら避けるのも意外と簡単だな…」
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:37:29.98 ID:aaTgFN2yO [62/96]
上手くやれば拳銃を奪えるかもしれない…。
律「どうする……」
拳銃があればこの先楽になるかもしれないけど……その分リスクはあるか。
327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:49:24.07 ID:aaTgFN2yO [63/96]
律「危険は承知の上だ!」
またまた踵を返すと来た道を逆走する。
視界ジャックで相手の手の位置、指のかかり具合などを見ていつ撃つかなども見落とさないようにする。
警察官「アファアアアアア」
パンッ──
律「(よし!)」
小刻みに動いてる為か相手の狙いは定まってない。
しかし近づくほどどんど的は大きくなる為油断は出来ない。
律「(もうちょい…!)」
パンッ──
5発目も何とかわきに逸れてくれた。
律「もらったあああああっ!!!」
329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:50:39.22 ID:aaTgFN2yO [64/96]
パンッ──
律「…………あれ?」
警察官「アッヒャハッヒャッハァ!!!!」
よろよろと崩れ落ちる体。
律「おっかしいな~……何か体に……力が入らないや」
ゴルフクラブが手から滑り落ち、赤い何かが私の胸辺りから沸き出ている。
律「ああ……血か……」
撃たれたんだな……私。
そう気付いた時にはもう意識は遠退いていた。
終了条件未達成
339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:57:38.61 ID:aaTgFN2yO [65/96]
桜ヶ丘 秋山宅
PM19:30:00
秋山澪
終了条件1
──────────
澪「あ、あの…助けてもらってありがとうございました」
斎藤「別にいいさ。探し物のついでだしな。あんたは確か琴吹嬢の友達だろ? どこ行ったか知らないか? てかここどこ?」
澪「ムギの知り合いなんですか!?」
斎藤「おっ、おお……まあな。あそこの執事だよ俺は」
澪「家にいなかったんですか?」
斎藤「いなかったから探しに来てるんだろうが。全くどこほっつき歩いてんのやら。おてんばの世話はこれだから…」
澪「おてんば…?(ムギが?)」
344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:08:25.15 ID:aaTgFN2yO [66/96]
斎藤「そんじゃあ悪いけど探しに行くから」
澪「わ、私も行きます!」
斎藤「……そいつは無理だ。二度は助けない主義なんでね。それに足手まといにしかならい」
澪「そんな…」
斎藤「澪さん、誰かに助けてもらおうなんて思わない方がいい。じゃあな」
背中を向けたままひらひらと手を振る。
斎藤「ちなみに、この家は出た方がいい。多分そいつらは時期に起き上がってくる。そうしたら次こそあんたは死ぬ」
澪「……」
斎藤「じゃあな」
バタンッ
閉められた扉が……まるで私を拒絶しているように思えた。
345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:13:41.95 ID:aaTgFN2yO [67/96]
澪「ここは……どこだろう」
家を出た方がいいと言われただ闇雲に歩き回った。
律には……会えなかった。
他のみんなにも。
どれぐらい歩いただろうか……。
数時間かもしれないし……数十秒かもしれない。
そしてたどり着いた場所は……崖だった。
まるで街がくり貫かれたようにそこで終わっている。
そしてそこから下は……一面の赤い海。
澪「……」
私は静かに崖の縁に腰を下ろすと、それをぼんやりと眺めていた。
347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:19:54.86 ID:aaTgFN2yO [68/96]
澪「綺麗だな……まるで夕陽が落ちたみたいに真っ赤だ……」
いい詞が浮かびそうだな……。
澪「あれ……?」
よく見ると遠くの方に何やら人影が見える。
それは群れをなして赤い海を渡っていた。
澪「!?」
その中に見知った顔があった。
澪「律……やっと……やっと見つけた」
あの黄色いカチューシャ……間違いなく律だ。
澪「おーい律。今そっちに行くからなー」
山彦を呼ぶように両手で口周りを塞ぎ大声でそう行った。
澪「よっと」
私はそのまま、赤い海に飛び降りた。
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────────
359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:31:12.64 ID:aaTgFN2yO [69/96]
桜ヶ丘高校
PM20:00:00
琴吹紬
終了条件1 追跡者を倒す
──────────
紬「どこにもいない……」
いるのは死んだような顔をしてる人達だけ。あれは多分人間じゃない…。
紬「ここはどこなの!!!? 私達の日常を返してよ!!!」
紬「はあ…はあ…」
避けんでも誰もいない。
唯ちゃんもりっちゃんも澪ちゃんも梓ちゃんもみんないなくなっちゃったの?
紬「後いるとしたらもう…ここしかない」
学校…もしかしたらみんなここに
バンッ───カァンッ───
紬「ひっ…」
校門に銃弾が当たり火花が散る。
追ってきた…!?
362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:46:29.89 ID:aaTgFN2yO [70/96]
すぐさま正門から校庭に入り、職員室の窓から学校の中に入る。
紬「信じてたのに…!」
溢れそうになる涙を堪えながら職員室を出る。目指すのは勿論軽音部の部室。
校長「ゴルフ楽シミダナァ……」
紬「(校長先生も……)」
職員室の外を徘徊している校長先生がゴルフクラブを磨いている間に後ろを抜けていく。何故かはわからないがこの人達はかなり注意力が散漫だ。
なので足音を立てずゆっくりと歩けば大抵はバレずに済む。
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:54:54.68 ID:aaTgFN2yO [71/96]
紬「あれは保健の先生…………」
保健の先生「ハァーイ唯ちゃん内臓カエマショウネー」
人形になりやら詰め込んでるみたい……ここからじゃよく見えないわ。
紬「唯ちゃん……無事かしら」
何人もの人をやり過ごし、ようやく部室にたどり着いた。
紬「お願い…誰か居て」
祈る思いで扉を開ける───
紬「……ふふ、遅れてごめんね。すぐにお茶入れるから」
紬「唯ちゃん」
377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:05:19.28 ID:aaTgFN2yO [72/96]
紬「みんな見つからないから心配したんだから」
紬「今日はね、ローズティーにしたの。とっても香りがいいのよ?」
紬「お菓子はね~……なんと飴玉!」
紬「ごめんね、急いでてこれしか持って来れなかったの」
紬「美味しい……? ねえ……唯ちゃん……」
コロン…………
口から転げ落ちる飴玉。
紬「返事してよ…………唯ちゃん………」
部室に血だらけで横たわっていた唯を抱きしめる。
強く……強く……。
紬「唯……ぢゃん゛……一緒にお菓子食べようよ……」
返事はない。
紬「唯ちゃん冷たいね……ほら、私の手……暖かいでしょう?」
唯の頬に両手を当てる紬。
383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:13:48.17 ID:aaTgFN2yO [73/96]
紬「唯ちゃんが寒くならないように……ずっと……ずっと暖めてあげるから……」
何にも思えない。
もう声にもならない。
ただあの元気で明るかった唯ちゃんがこんなに冷たくなって横たわっているのを受け止められない。
寝てるんじゃないかな……?
なんて思ったりもする。
紬「唯ちゃん……」
頭を撫でると、可愛らしい唯ちゃんの顔が少しだけ微笑んだように見えた。
そんな筈……ないのに。
384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:15:16.60 ID:aaTgFN2yO [74/96]
ドンッ──
ドンッ────
ドンッ──────
部室のドアが叩かれる。
多分あいつだろう。
紬「邪魔しないでよ……!」
私はそこら辺にあるものを武器として使うために掴み上げた。
391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:24:28.26 ID:aaTgFN2yO [75/96]
怒りに任せて掴みあげる。
入って来たらこれで……
「スイースイー」
紬「あ……」
唯『可愛いね~トンちゃ~ん』
「スイースイー」
梓『飼うからにはちゃんと面倒みてくださいね!』
紬「あ……あ……」
ガチャン……
紬「駄目……このままじゃみんなが大切にしてたトンちゃんが……」
ダァンッ───
紬「ヅッ────」
体に風穴が開く。
糸が切れたマリオネットみたいに膝から崩れ落ちた。
バシャアアアアア
水槽が派手にひっくり返りその勢いでトンちゃんも床に投げ出された。
トン「パタパタ……パタパタ……」
仰向けになったまま動けないでいるトンちゃんに最後の力を振り絞って手を伸ばす。
400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:29:09.40 ID:aaTgFN2yO [76/96]
紬「はい……これで……だいじょうゲフッ……」
トン「…………」
そのままトンちゃんはどこを目指しているのか這って進み始めた。
紬「ごめんね……トンちゃん……ごめんね……みんな」
最後に私が見たのは……この軽音部であった色々な出来事だった。
終了条件未達成
446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:24:50.43 ID:aaTgFN2yO [81/96]
桜ヶ丘 住宅街
PM19:45:45
中野梓
終了条件1 屍人を10体以上倒す
──────────
梓「わあっ純!!! ぶつかるうううっ」
純「大丈夫大丈夫~」
キキィ~!!!ドンッ
梓「!?」
純「……でさあ~」
梓「今なんかはねたよね!?」
純「えっ? 気のせいじゃない?」
梓「気のせいじゃないよ!!!」
純「まあまあ。で、これからどうする?」
梓「いいからせめて前見て運転して!」
純「はいはい」
449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:32:48.98 ID:aaTgFN2yO [83/96]
梓「とりあえずみんなを探さない?」
純「みんなって言うとー軽音部の?」
梓「うん」
ドンッ
純「……生きてるのかな」
梓「……わかんない」
純「私の親は駄目だったよ。私を見て化け物!化け物! って言いながら襲って来てさ。どっちが化け物だってーの」
ドドンッ
梓「もしかして……」
純「そ。殺したの。両親を…。けど…また起き上がって来てさ」
梓「……そっか」
ドンッ───
451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:38:12.28 ID:aaTgFN2yO [84/96]
ドンッ
純「それで梓が心配になって来たってわけ」
ドンッ
梓「ありがとね、純」
ドンッ
純「気にしないでよ。友達じゃない」
梓「純『ドンッ』……」
純「……」
梓「純!!! 前見て運転してって言ったでしょ!! もし唯先輩達だったら…」
純「大丈夫大丈夫」
ドンッ──
純「ちゃんと確認してからはね飛ばしてるから」
梓「そういう問題じゃなーーーい!!!」
終了条件達成
466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:52:52.31 ID:aaTgFN2yO [85/96]
桜ヶ丘 国道
PM21:00:00
中野梓
終了条件1 二人でこの世界を脱出する。
──────────
純「いないね~」
梓「うん……」
街をひたすら走ってみるもいるのはあの頭のおかしい人達ばかりだ。
純「まるで屍人だよね」
梓「屍人……?」
純「昔どっかの本で読んだことがあるんだよね~…タイトル何だったかな~。羽がどうのことのだったような。まあそれに書いてた屍人って奴らに似てるな~って」
梓「ふーん…」
純「あっ、ガソリン無くなりそう。ちょっとガソスタ寄るね」
梓「なんかもう手慣れてて怖い」
472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:01:30.65 ID:aaTgFN2yO [86/96]
純「あ~お金ないや。ちょっとスタンドの中から拝借してくるよ」
梓「えっ、ちょっと! 純!」
一人でそそくさと行ってしまう。
全く頼りなるんだかならないんだか。
梓「不思議だな…」
こんな恐ろしい世界に来てるのに…自然と怖くなかった。
誰かが側に居てくれる、ただそれだけでこんなにも違うんだ…。
純もそう思ってくれてるのかな?
純「ヘイッお姉ちゃんガソリン何オクだい!? 今ならレギュラーもついてくるよ!!!」
梓「ふふ、混ぜちゃダメでしょ」
純も笑ってる。
だから私も笑うんだ。
こんな世界でも。
479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:07:43.76 ID:aaTgFN2yO [87/96]
純「ハイオクの方がよく走るかなー?」
梓「わかんない。レギュラーでいいんじゃない?」
純「梓がそういうならレギュラーにしとくよ。お金もあんまりないしねー」
あの時…律先輩に酷いこと言ったのを今頃思い出した。
本当に大切なものと本当に大切なものを比べなきゃいけない場合どうするか……なんてそんなの決まってる。
どっちも守ろうとするだろう。
きっと律先輩も唯先輩もそうしてる筈だ。
だから私もそうしよう。
純「お待たせ~」
梓「うん」
純のこと、守ろう。
死ぬ間際まで……。
487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:14:22.00 ID:aaTgFN2yO [88/96]
どれくらい純と走っただろう。
私達は一向に誰も見つけられず、そしてとうとう……。
見てしまった。
梓「……」
純「……行き止まり…だね」
梓「そうみたい…」
純「……実は薄々気づいてたんだよね。こんなオチじゃないかって…」
梓「……私も。だってここ…おかしいもん」
純「だね」
梓「……」
純「多分どこもこうなってると思う。ここは現実世界じゃないんだよ…多分。あの地震か…」
梓「サイレンのせい?」
純「梓も聴いたんだ」
梓「うん。地震の最中に…ね」
純「そっか…」
梓「降りてみない?」
純「ん」
489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:22:36.87 ID:aaTgFN2yO [89/96]
純「な~んにも見えないね」
梓「そうだね…」
純「これ海? 何で真っ赤なのさ」
梓「知らないよ」
純「だよね…」
立ち上がって眺めていた純も飽きたのか私の隣に座り込む。
純「どっこらしょっと」
梓「ぷぷ。おばさんくさいよ純」
純「なんだとー!? 花の女子高生捕まえてその言い種はなんだー!」
梓「あはは、ごめんごめん。純は可愛らしいよ」
純「わかればよろしい」
梓「……純、ありがとね」
純「ん」
梓「純だけは生きて」
純「何言ってんの梓。生きるのも死ぬのも一緒だよ。ここまで来たら」
梓「うん……そうだね」
「ウアアアアアアアアア」「ウヒャアッヒャアッハァ」「クヒョアアアア」「コッチニオイデエエエエエ」「タノシイヨオオオオ」「キッキャッキャッ」
491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:27:58.07 ID:aaTgFN2yO [90/96]
純「さて、やりますか」
梓「武器は?」
純「ほら、車に積んであった角材」
梓「はねた方が早くない?」
純「あの数じゃ車が止まっちゃうでしょ」
梓「そっか」
純「ここで死んだら私達…どこに行くんだろうね」
梓「わかんない。普通に天国とか地獄とか?」
純「じゃあ梓とは会えないか~私殺しまくっちゃったし」ニヒッ
梓「私もこれからそうなるから一緒だよ。純」
神様、どうかいるのであれば……彼女だけは助けてあげてください。
私は一生ここに閉じ込められてもいいから…
純「桜ヶ丘軽音部~~~」
梓「ファイトッーーー!」
純は軽音部じゃないでしょってツッコミは、次に会った時にしよう。
終了条件未達成
500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:37:33.24 ID:aaTgFN2yO [91/96]
桜ヶ丘高校
PM19:45:00
平沢唯
終了条件1 憂をみつける
──────────
唯「はあ…はあ…商店街も通りながら来たけどすれ違わなかった…」
もしかしたらまだ私が寝てると思って学校に来てるかもしれない。そう思い私は学校の前にいる。
唯「視界……」ピシッ
唯「ジャック!!!」
まるで正義のヒーローの変身の様な動作をつけながら目を瞑る。
唯「……保健の先生は……と」
──【ゴルフ~……】──
唯「これは校長先生だ!」
唯「もうちょっとあっちかな?」
──【唯ちゃん手術シマショウネー】──
唯「まだやってる…。人形に私の名前までつけるなんて…。好かれてるのかな…」ブルブル
唯「憂はいないみたい…もしかしたら部室かな?」
504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:43:58.29 ID:aaTgFN2yO [92/96]
唯「体育の先生がいない……忍び込むならイマノウチ」
辺りを見回しながら学校の中へ。
唯「そう言えば学校のみんなはどこに行ったのかな? あの時私と保健の先生と校長先生と体育の先生だけしか学校いなかったのかな~」
唯「それで巻き込まれちゃったんだね…きっと」
唯「?? 巻き込まれる?? 何に?」
わかんない。
唯「それより憂だよ! 先生達に見つかってないといいけど…」
508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:49:55.41 ID:aaTgFN2yO [93/96]
唯「え~と…見つからないように部室に行くにはと」
保健室と職員室には先生達がいるから通りたくないんだけど……あそこ通らないと部室に行けないから…。
唯「バレないように行かなきゃ!」
「オーイ……遅刻はダメヨー」
唯「えっ……あっ」
しまった…!
まさか体育の先生が学校の中に居たなんて!
見つかった…。早く逃げないと!!!
「ウフフー」
唯「あれ?」
「体育ハタノシイヨー」
唯「襲ってこない?」
何で?
顔は相変わらず怖いままだけど…あっ! そっか!
唯「体育タノシイヨネー」オメメツリアゲ
仲間だと思われてるんだ!
509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:53:14.30 ID:aaTgFN2yO [94/96]
唯「ジャア私ハコレデー」トッタッタ
唯「何だかよくわかんないけど良かった!」
多分保健の先生も校長先生もこれで行けば私のことを仲間だと思って何もしてこないはず!
唯「フンスッ!」オメメツリアゲ
唯「憂~!!! 待っててねーーーー!!!」
513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:56:03.25 ID:aaTgFN2yO [95/96]
とうとう部室までやって来ました。
唯「いるかな…憂。いなかったらどうしよう…。まあその時はその時だよね」
書き置きもしてるしいなかったら一回家に帰ればいいか。
ガチャン
いつものように軽くノブを捻る。
唯「憂~いる~?」
憂「……お姉ちゃん?」
516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:59:59.51 ID:aaTgFN2yO [96/96]
唯「憂っ!!!!」
憂「お姉ちゃん……どうしてここに?」
唯「どうしてじゃないよ! 憂を探しに来たんだよ! 心配したんだからね!」
憂「うん……書き置き見たよ。ありがとうお姉ちゃん」
唯「見たのにここにいるなんて、も~憂ったら! 世話がかかる妹なんだから」
憂「妹……」
唯「無事で良かったよぉ……憂」
優しく抱きしめる、
憂「お姉ちゃん……血が」
唯「えっ? ああこれはちょっと擦りむいちゃって」エヘヘ
とても擦りむいたと云うレベルの血の量じゃないが……それでも唯は笑みを絶やさなかった。
523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:07:25.62 ID:BPpZnIIJO [1/90]
憂「……」
唯「憂~……よしよし」
抱き締めながらよしよしと撫でる。憂はこれが大好きなのだ。
憂「お姉ちゃん……ごめんね」
唯「いいんだよ。謝らなくて」
憂「ううん…違うの。私は…わたしは…!」
唯「憂……?」
憂「……ゴメンナサイ……オネェチャン……」
グサッ─────
唯「えっ……」
お腹が熱い。
まるでインフルエンザにかかった時のおでこ……みたい……。
ああ……刺されたんだ……わたし。
唯「憂……」
それでも……
憂「ごめんね……ごめんね……」
唯「……私は憂を信じてるから」
大丈夫だよ、憂。
終了条件達成?
527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:13:26.34 ID:BPpZnIIJO [2/90]
??? ???
PM$%?`_=^);<<=_<
平沢憂
終了条件????????
──────────
憂「…………」
憂が家にいないので外に探しにいっています。
20:30までには私も帰ります。
もしも20:30までに私が帰ってこなかったらあずにゃん達と一緒に隠れてて!
憂「お姉ちゃん……」
532 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:17:41.83 ID:BPpZnIIJO [3/90]
唯「憂っ!!!!」
憂「お姉ちゃん……どうしてここに?」
来ると思ってた…多分お姉ちゃんが一番大事に思ってる場所がここだから。
唯「どうしてじゃないよ! 憂を探しに来たんだよ! 心配したんだからね!」
憂「うん……書き置き見たよ。ありがとうお姉ちゃん」
唯「見たのにここにいるなんて、も~憂ったら! 世話がかかる妹なんだから」
憂「妹……」
妹……。お姉ちゃんはいつだって私に優しかった……。
唯「無事で良かったよぉ……憂」
優しく抱きしめる、
憂「お姉ちゃん……血が」
唯「えっ? ああこれはちょっと擦りむいちゃって」エヘヘ
やっぱり……手遅れなんだね……お姉ちゃん。
534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:22:21.44 ID:BPpZnIIJO [4/90]
憂「……」
唯「憂~……よしよし」
だから……私も…。
憂「お姉ちゃん……ごめんね」
唯「いいんだよ。謝らなくて」
嫌われてもいいから…。
憂「ううん…違うの。私は…わたしは…!」
唯「憂……?」
536 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/15(金) 00:23:36.04 ID:BPpZnIIJO [5/90]
こうするしかないんだ。大好きなお姉ちゃんを守るために。
憂「……ゴメンナサイ……オネェチャン……」
548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:30:02.31 ID:BPpZnIIJO [6/90]
グサッ─────
唯「えっ……」
ごめんね……ごめんね……
唯「憂……」
痛いよね……痛いよね……
憂「ごめんね……ごめんね……」
きっと憎んでるよね……私のこと……
唯「……私は憂を信じてるから」
えっ……
そのまま目を瞑るように息を引き取る。
憂「こんなことになっても……信じてる……?」
何で……何で……
憂「わからないよ……お姉ちゃん。わからないおおおっ」
終了条件1 お姉ちゃん刺す
終了条件達成
552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:33:49.94 ID:BPpZnIIJO [7/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
律「どこだろ…ここ」
桜ヶ丘…じゃないよな?
こんな田舎じゃないし。
律「それにしても……綺麗だな……ここ」
空は赤くて夕焼けみたいで、周りには蛍のような光が舞っている。
わたしはここがどこかわからないままとりあえず歩き始めた。
555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:37:21.90 ID:BPpZnIIJO [8/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
澪「どこだろ…ここ」
気づけば川原の様な所で素足を水に晒していた。
澪「でも……綺麗なとこ」
こんな世界があったんだ……知らなかった。
律「お~い、澪」
澪「律。律も来てたんだな」
律「ああ、いつの間にかな」
澪「私も。綺麗だよな…ここ」
律「ああ。凄い綺麗だ」
澪「他のみんなも来てるのかな?」
律「かもな」
「りっちゃん~澪ちゃ~ん」
558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:39:40.47 ID:BPpZnIIJO [9/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
紬「ここは……」
気づいたら田んぼの真ん中で大の字になって眠っていたようだ。
紬「いい風……」
まるで撫でるような……。
ゆっくりと体を起き上げると、そこには何だか懐かしい顔が見えた。
紬「りっちゃん~澪ちゃ~ん」
563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:43:00.28 ID:BPpZnIIJO [10/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
うーん…。
梓「純……」
ゴツ。
梓「あいたっ」
梓「なんでこんな所に岩が……って……ここどこ?」
梓「純~? どこ~?」
何だか頭がモヤモヤする。私何でここにいるんだっけ……。
梓「忘れちゃった」
胸がいっぱいになるくらい大きく息を吸い込んでみる。
梓「気持ちいい……」
今までこんな気持ち、感じたことなかった。
「お~い梓~」
568 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:49:11.19 ID:BPpZnIIJO [11/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
律「他のやつらは…いないみたいだな」
紬「そうね~。来るのが遅れてるのかも」
澪「待ってたらきっと来るさ」
梓「ですね」
律「綺麗だよな…ここ」
澪「ああ……」
紬「ええ…」
梓「はい…」
梓「まだ覚えてる内に謝っときます。律先輩」
律「いいよ。気にしてないから」
澪「大人げないよな律は」
紬「ね~」
律「ほっとけいっ!」
梓「もう一回、聞いてもいいですか? 澪先輩もムギ先輩も答えてください」
律「ん?」澪「ああ」紬「どうしたの? 梓ちゃん」
570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:52:51.04 ID:BPpZnIIJO [12/90]
梓「本当に大切なもの同士どうしても比べなきゃならない時……皆さんならどうしますか?」
律「そんなもん決まってるだろ。なあ?」
澪「ああ」
紬「ええ」
全員一緒に、答えた。
律「どっちも助ける」
澪「どっちも助けてみせるよ」
紬「どっちも助けなきゃね」
梓「どっちも助けます!」
そう、例えそれで自分の命がなくなったとしても。
次に……そんな機会があれば。
私達は必ずそうするだろう。
572 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:55:15.75 ID:BPpZnIIJO [13/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
犬屍人「……アガア……」
犬屍人「ウギャウ……」
頭脳屍人「ブルウウウウ……」
羽根屍人「ウキャキャキャ……」
屍人END
唯「むにゃあ……」
和「唯、ホームルーム終わったわよ」
唯「くぴー……」
和「はあ…、唯~部室にケーキが待ってるわよー」
唯「ッ!? ケーキ!!? どこ!?」くわっ
和「ケーキって単語に反応しすぎよ…。みんな先行っちゃったわよ?」
唯「なんですとっ! 酷いっ! 私達友達じゃなかったんだ…」
和「唯が掃除当番だからでしょ……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:45:43.27 ID:1jx+DhWRO [4/47]
そそくさと掃除を終え部室へと向かう。
唯「今日のケーキはな~にかな~♪」
それにしてもさっきの夢なんだったろう。何だか懐かしい様な気が……。
唯「そんなことより今はケーキケーキ♪」
忘れかけた内容の夢を思い出すことやめ、現実のケーキにスイッチする。
唯「たのもー! 私のケーキは何処にありまするかぁー!?」
紬「お掃除お疲れ様。ちゃんと唯ちゃんの分もあるわよ」
唯「えへへケ~キィ~」
紋白蝶でも追いかけているウブな少女の様な顔つきでケーキを見据え席につく。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:46:34.20 ID:1jx+DhWRO [5/47]
律「唯はほんとケーキ好きだよな~」
唯「りっちゃんは嫌いなの?!」
律「いや好きだけどさ。唯の好きとはレベルが違う気がするんだよね~」
唯「そうかなぁ?」
律「じゃあギー太とケーキどっちが大切?」
唯「それはギー太だよぅ」
律「じゃあ憂ちゃんとギー太は?」
唯「ういだよ~ギー太も大切だけどね」
律「じゃあ憂ちゃんと私は?」
唯「う~ん……選べないよ。どっちも大切だから」
律「じゃあギー太と私なら!?」
唯「りっちゃん!」
律「おーイェス!」ダキッ
唯「れっつかもんっ」ダキッ
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:47:34.81 ID:1jx+DhWRO [6/47]
澪「ケーキ関係なくなってないか?」
律「細かいこと気にすんなって~」
梓「唯先輩のケーキの話じゃないですけど、物事の優先順位って決めるの難しいですよね。私もこないだギターの雑誌選ぶのに迷っちゃって…結局1つは立ち読みしちゃいました」
澪「あるある。私も作詞の時にどっちのフレーズがいいかな~とかで迷ったりするよ」
紬「私もどっちのお菓子を持って行こう~とかあるわ」
唯「みんな優柔不断さんなんだね~」
澪「唯は違うのか?」
唯「私は物に関してはあんまり迷ったことないかなぁ」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:49:10.26 ID:1jx+DhWRO [7/47]
紬「ケーキ見た時にどれにするか一番早く決めるのいつも唯ちゃんだもんね」
唯「えっへん!」
澪「こっちを食べたい、でもこっちも食べたら美味しいだろうな~とか考えないの?」
唯「考える前に決めちゃうからわかんないやぁ」
梓「羨ましいです」
澪「律もそういうこと悩んでなさそうだよな」
律「何かびみょ~にグサッと来たんだけど」
澪「気のせいだろ。で、どうなんだ?」
律「う~ん確かに迷ったりはしないな。ドラムやってるからか細々考えるのは苦手なんだよ」
澪「私もドラム叩いたら優柔不断治るかな……」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:51:03.09 ID:1jx+DhWRO [8/47]
紬「ドラム治療法ね!」
梓「わ、私も叩きます!」
律「とうとうドラムに日の目が当たったか! よぅしみんな順番に並べーぃ! ドラム講義だ!」
10分後────
紬「私には無理みたい…」
澪「手に豆が出来そう…」
梓「う、腕がぁ……」
律「えぇい情けないなお前達! そんなことじゃいつまでたっても優柔不断は治らないぞっ!?」
澪「優柔不断でいいよ…もう」
梓「ちょっと迷うぐらいの方が楽しいってこともありますしね」
澪「梓良いこと言った!」
律「諦めはやっ」
唯「練習しないの~?」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:52:59.11 ID:1jx+DhWRO [9/47]
そんなこんなで結局練習はドラムの練習だけとなり部活は終わった。
まだ残る暑さの中帰路につく。みんなでドラムを練習したのが嬉しいのかテンションそのままに律は熱くドラムを語っている。
律「ドラムって凄いよなぁ! この感じだと他にも効果がありそうだよな!」
紬「今日のりっちゃんはいつも以上にドラムスね」
澪「結局練習出来なかったな」
唯「私はやろうって言ったのに~」
律「まあまあ。いつも脚光を浴びない後ろのドラムにもたまには水をやってくださいな唯さん」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:54:24.58 ID:1jx+DhWRO [10/47]
あどけた笑顔で嬉しそうに笑う律。その顔を見て、ふと、過るものがあった。
唯「(なんだろ……いつもと同じなのに……なんだか)」
その時だった。同じくその笑顔を見ていた梓がこんなことを漏らす。
梓「本当に大切なもの同士どうしても比べなきゃならない時……皆さんならどうしますか?」
声色が真面目だったのを瞬時に読み取った澪がいち早く返す。
澪「どうした梓、そんなこと急に言い出すなんて」
梓「先輩達はもう決めてるんですか…? 音楽をこれからも続けるかそうじゃないか…」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:56:16.25 ID:1jx+DhWRO [11/47]
澪「私は大学でもやるつもりだよ。まあまずは推薦もらえるかどうかだけど」
梓「貰えるといいですね、推薦」
澪「ああ。ムギは女子大だろ? あっちじゃやらないのか?」
紬「元々合唱部に入ろうって思ってたから…。お父様開く食事会とかで歌ったりしたくて入ろうと思ったの。今は家でボイストレーニング受けたりしているけど…やっぱり一人でやるのは寂しいから」
澪「そっか……ごめんな。無理矢理入れちゃったりしちゃって。今更言うのもどうかと思うけどさ」
紬「ううん。私、ほんとに軽音部に入って良かったって思ってるの。こんな楽しかった三年間初めてだったわ。だから謝ったりしないで澪ちゃん」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 20:59:46.44 ID:1jx+DhWRO [13/47]
紬「軽音部でなくなるのは寂しいけど、これでみんなとの関係がなくなるなんて思ってないから」
澪「ムギ……」
梓「律先輩と唯先輩はどうするんですか?」
律「き、来たぞ唯」
唯「き、来ちゃったねりっちゃん」
澪「まさかまだ決めてないなんてことないだろ? もう9月だぞ」
紬「さすがに決めないとさわ子先生も心配するんじゃない?」
律「と言ってもな~……私の頭じゃ澪やムギみたいにいいとこ行けないだろうし? だからって遊ぶ為にとりあえず大学行っとこう~ってのも親に迷惑だと思うし。でも今は就職難だしなぁ」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:00:38.67 ID:1jx+DhWRO [14/47]
唯「全く同じ意見でビックリだよりっちゃん!」
律「我々はー!」
唯「ニートでいいやー!」
澪「おいおい…」
和「全く、まだそんなこと言ってたのね」
唯「和ちゃん! 生徒会終わったの~? お疲れ様!」
和「ありがとう。じゃなくて唯、さすがに決めないと不味いわよ? 大学行くならそれに似合った勉強していかないと。
テスト勉強みたいに全員一緒にやるってわけにもいかないからね受験勉強は」
唯「そ、そうなの?」
和「ある程度なら出来るけど…その大学によって問題の出し方の傾向とかあるから」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:02:47.25 ID:1jx+DhWRO [15/47]
律「澪~。私達友達だよな!」
澪「私は推薦もらうから…」
律「澪先生捨てないでおくんなましぃぃ」
澪「暑いから離れろよ~」
和「とにかく進路は早く決めときなさい。学園祭のこともいいけど将来のこともそろそろちゃんと見据えないと。今が楽しいってだけじゃ駄目よ。じゃあ私塾があるから」
唯「あれ? 和ちゃん塾なんて行ってたの?」
和「私は国立行こうと思ってたんだけど今の成績じゃちょっと不安だから最近行くようにしたの。○○塾ってとこ」
澪「それって東大とか排出してる有名塾じゃないか! 和は凄いな…」
和「私もついていくのがやっとよ。じゃあねみんな」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:03:54.63 ID:1jx+DhWRO [16/47]
みんなに手を振りながらそそくさと帰る和。
澪「○○塾ってここからだと遠いのに頑張るな…。それに比べて……」
唯「りっちゃん! アリさんがいっぱい行列作ってるよ!」
律「この先には巣穴があるハズだー追うぞ唯ー!」
唯「はいっ! りっちゃん隊員!」
梓「現実逃避ですね…。さっきは優柔不断がどうとか言ってたメンバーと真逆になっちゃいましたね」
澪「そう言えばそうだな」
梓「……律先輩と唯先輩は結局のところ何も考えてないんですよ。だから本当に決めないと駄目な大切なことをいつまでも後回しにしてるんです」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:05:51.87 ID:1jx+DhWRO [17/47]
紬「梓ちゃん、それはちょっと言い方が悪くないかしら?」
梓「そう聞こえたなら謝ります。けどあんなに私達のこと優柔不断だって言ってた二人が一番大切なことを決めれてないなんておかしいなって思っただけです」
律「……なんだよ、その言い方。私も唯もそんなキツい言い方してないだろ? そんなに揚げ足とって嬉しいのか?」
紬「りっちゃん、落ち着いて。梓ちゃんも、ね?」
梓「私はただ二人のことが心配なだけで……」
律「ああ確かに進路なんて決めてないよ。私にとって一番大切なことは学園祭だからな!」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:07:45.92 ID:1jx+DhWRO [18/47]
律「もっとも梓にとってはそうじゃなかったみたいだけどさ」
梓「っ…そんなこと言ってなっ…!」
澪「二人ともやめろ! こんなことで喧嘩してどうするんだよ? 律、進路のことで悩んでるのはわかるけど梓に当たるなよ」
律「なんだよ澪まで梓の仲間かよ? 優柔不断チーム結成ってか?」
紬「りっちゃん!」
律「唯も何か言ってやれよ」
唯「……違う」
律「…唯?」
唯「みんな…おかしいよ。いつもはこんなことじゃ喧嘩になんかならなかったよ…?」
律「こんなことってなんだよ…。お前のことだって入ってるんだぞ!」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:09:27.53 ID:1jx+DhWRO [19/47]
ふと蘇る情景、
みんなが笑って、みんなが楽しかった記憶。
それは今なのか、何時なのか。
唯「違う……違うよ……」
澪「唯、どうかしたのか?」
紬「唯ちゃん……?」
優しく差し伸べられる手が、今は自分を突き落とす様に思えた。
拒む様に後ずさる唯。さすがに異常を感じ取ったのか澪や紬の表情も真剣になっている。
澪が唯の元へ走って近づき、両肩に手を遣りながら宥める。
澪「唯……震えてるぞ。寒いのか?」
夏明けの9月に言う台詞ではないが、それほど唯の体は冷たかった。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:10:21.72 ID:1jx+DhWRO [20/47]
紬「保健室で見てもらった方がいいんじゃない?」
澪「そうだな…。唯、歩けるか?」
頭を抱え震えるに優しく付き添う澪。
憂「あれ? お姉ちゃん?」
遠くから見知った声が聞こえる。
梓「あれ? 憂、まだいたんだ」
憂「うん。純ちゃんにジャズ研で作った曲聴いて欲しいって言われて。それよりお姉ちゃんどうしたの? 具合悪そうだけど…」
澪「ちょっとさっき色々あってさ…。それで唯が癇癪気味になって…」
憂「そうなんですか!? お姉ちゃんっ! 大丈夫?」
すぐさま駆け寄る憂。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:11:21.94 ID:1jx+DhWRO [21/47]
憂「お姉ちゃん……」
唯「うい……?」
憂「うん。大丈夫?」
憂が声をかけてくれた瞬間震えも消え、落ち着きを取り戻す。
唯「うん。ちょっと暑さにやられちゃったかな」テヘヘ
憂「でも心配だから一応保健室で見てもらおっか」
唯「うん…ごめんね、憂」
憂「ううん。いいよ、お姉ちゃん」
憂は唯に寄り添うと保健室の方へと一緒に歩き出す。
澪「私達も……」
唯「ううん、大丈夫だから。先に帰ってて」
紬「唯ちゃん…」
律「……」
梓「……」
澪「…わかった。唯をよろしく。憂ちゃん」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:13:04.76 ID:1jx+DhWRO [22/47]
憂「はい」
そう言うと校舎の中に消えて行く二人。残されたメンバーにはさっきの気まずい空気が流れたままだ。
澪「唯……大丈夫かな」
紬「さっきの唯ちゃん…ちょっと変だったから。心配ね…」
澪「律、梓。明日唯に会ったらちゃんと謝るんだぞ」
律「…ああ。唯にはな」
梓「唯先輩には謝ります」
律「ふんっ」
梓「ふんっ」
澪「お前らまだそんなこと…!」
紬「澪ちゃん、放って置きましょう。これ以上話してもまた言い合いになりそうだから…」
澪「……ああ」
噛み合わない歯車の様にバラバラだった。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:15:23.11 ID:1jx+DhWRO [23/47]
律「私寄りたいとこあるから」
澪「律……」
スタスタと歩いて行く律を見ることしか出来ない歯痒さに顔を少し歪める澪。
紬「梓ちゃん。確かにりっちゃんも悪いけどあなたも悪いと思うわ。二人を心配してるのはわかるけど、今は学園祭前と受験生ってことでナイーブになってるんだから…」
梓「そうやって私だけ叱るんですね、ムギ先輩は」
紬「梓ちゃん…」
梓「帰ります…」
澪「おい梓っ」
逃げる様に駆け足で帰る梓。
澪「何でこんなことに…」
紬「澪ちゃん…。私達も帰ろ。きっと明日にはみんな仲直り出来るわ」
澪「…うん」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:23:11.32 ID:1jx+DhWRO [25/47]
保健室──
憂「お姉ちゃん大丈夫?」
唯「うん…だいぶ楽になったよ」
憂「…みんなと何かあったの?」
唯「…わかんないや。でも…何だか嫌だった。何が嫌なのか…わからなくて…段々頭が痛くなって」
憂「そっか…。大丈夫だよ…お姉ちゃん」よしよし
唯「うん…ありがと」
憂に撫でられると何故か落ち着く…。
憂「あっ、いけない! 買い物しないと商店街のお店閉まっちゃう!」
唯「私はもう少し寝てるから憂は行きなよ」
憂「でも…」
唯「大丈夫だから、ね?」
憂「うん…。じゃあねお姉ちゃん。一人で帰るのが辛かったら電話してね!」
唯「うん。わかった」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:30:54.29 ID:1jx+DhWRO [27/47]
───??? PM18:00:00
始まる……。
いよいよ……。
もう戻れない。
だけど……やらなくちゃ。
仇を取るんだ…私が。
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:38:07.69 ID:1jx+DhWRO [28/47]
───桜ヶ丘 大手スーパー 内部本屋
律「きゃふは、やっぱりマンガタイムキララは面白いよな~」
律「…梓のやつ勝手なこと言ってさ。私だってちゃんと……。この先か……」
考えてみたら軽音部のことだけでその先なんて考えてなかったな…。
いや、考えたくなかったんだ…きっと。
律「このまま時間が止まればいいのに…」
グラッ…
律「えっ…」
ゴオオオッ────
律「じしっ…」
少し揺れた後に訪れる強烈な縦揺。
次第に立っていられなくなり必死に何かに捕まる。
怒号さえ遠くなるような揺れの中で……
私は聴いた。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:44:24.11 ID:1jx+DhWRO [29/47]
澪「律…、梓…」
心配だ。今まであんな険悪な空気は中々ないだけに心配だ。
手にしている勉強もままならないまま私はただヘッドホンから流れる音楽に身を任せていた。
澪「明日…ちゃんと話し合わないとな。律と唯の進路のことも考えないと」
そう切り分けて勉強に集中し直し、ノートの上に転がっているシャーペンを手に取ろうととした時だった。
ガタタ……
澪「ん…?」
勝手に揺れるシャーペン。
ガタタタタタタ…
それは次第に自らをも震わす振動に変化していく────
澪「じ、地震!? 隠れなきゃ……ッ」
急いで机の下に隠れる。
しかし更に揺れ続ける地震に私は段々気が遠くなり……そして、
聴いた。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 21:54:47.58 ID:1jx+DhWRO [31/47]
──琴吹邸
紬「はあ…」
斎藤「お嬢様。どうなされましたか? 溜め息なんてらしくないですよ」
紬「ごめんなさい。ちょっと考え事を…ね」
斎藤「左様ですか。では、下がった方がよろしいでしょうか?」
紬「……あなたは機械みたいな人ね」
斎藤「よく琴吹様に言われます。自分の父親とは正反対だと」
紬「あなたの父親もここで?」
斎藤「そうらしいですね。もっともかなり前のことなので存じてませんが」
紬「そ…。じゃあいいわ。下がって」
斎藤「はい、お嬢様。何かありましたらまたお呼びください」
そう言い扉を閉める前に一礼。本当に機械の様な人、でもそれが一番楽なのかもしれない…。
何も考えなければ…こんな苦しむことも…。
紬「何考えてるのかしら…私は。軽音部のみんなは何よりも大事で…」
大事? 何よりも? 何で?
……わからない。
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 21:57:21.88 ID:1jx+DhWRO [32/47]
宮田とか出した方がいいのか迷うな
サイレン知らない人の為にけいおんだけのサイレンでやりたいけど
>>71
ネタバレワロタwww
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:04:29.46 ID:1jx+DhWRO [33/47]
紬「りっちゃんと梓ちゃん…仲直りするといいな」
そうじゃないといけない気がする。
軽音部はみんなが仲良しで、みんなが一人一人を大切にしなきゃいけない。
紬「澪ちゃんに電話してみようかな…」
携帯を手に取り、アドレス帳から澪ちゃんの名前を探しだし…かける。
…………。
紬「あれ…? 繋がらない…」
グラッ…
紬「きゃあっ」
突然の揺れに椅子から崩れ落ちる。
紬「地震…! 斎藤! 地震よ! 斎藤!」
返事はない…。
次第に強くなる揺れの中で私はただ床に這いつくばったまま、あの音を聴いた。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:14:38.63 ID:1jx+DhWRO [35/47]
──中野宅
梓「何であんなこと言っちゃったんだろ…」
梓「私はただあの二人に早くこの先のことを決めてもらいたくて…」
梓「ただそれだけだったのに…」
明日謝ろう。
梓「音楽続けて欲しいな…」
バラバラの道を選んだとしても…音楽だけは続けて欲しい。
音楽は、私達が繋がってる証だから。
梓「…勉強しよ」
リビングから階段に上ろうとした時、世界が揺れた。
梓「地震…」
すぐ止むと思い階段の手すり掴まるも一向に止まず、
梓「ダメ…………、謝りたいの! お願いだから…………!」
もう自分が立ってるのかどうかもわからなくなった頃に、響き渡る音。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:17:11.29 ID:1jx+DhWRO [36/47]
──保健室
夢を見ていた。
いつのことだろう。
私達みんなでただ遊んでる。
みんな楽しそう。
なのに…………
あの音が、全てを奪い去ったんだ────
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:19:04.01 ID:1jx+DhWRO [37/47]
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ────────
唯「サイレンが鳴ってる・・・」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:30:19.22 ID:1jx+DhWRO [38/47]
桜ヶ丘高校 保健室 PM19:00:01
平沢唯
終了条件1 学校からの脱出
──────────
唯「さっきの音…何だったんだろう」
私はいつまで寝てたのか…いつの間にか外も暗くなっていた。
唯「帰らなきゃ…憂が心配してる」
ゆっくりと慣らすように地面に足をつけ、立ち上がる。
──【ギェギェ…】──
唯「うっ……何……今の」
頭に一瞬過ったそれはまるで誰かの目線を自分が見たような様だった。
唯「…さっき保健室って見え…」
「ハヘァハアッヘーヘッヘッへ!!! ネテナキャダメデスヨオオオオ!!!!!」
唯「ひいっっっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 22:37:45.56 ID:1jx+DhWRO [39/47]
カッターナイフを持った白衣の女の人が危なげな表情で近寄ってくる…!
唯「先生…だよね? 危ないよぉ…そんなもの…」
「ゆいチャンハは病気ダカラ手術シナイトイケナイノヨォ?」
カチッ、カチッ、とカッターの刃を出し、それを楽しそうにしてる先生。
顔も真っ青で唇も青白い……とてもじゃないけど正気だとは思えなかった。
唯「わ、私帰ります!」
脇を抜けて帰ろうとした時────
「アアアアアッ!」
ザクッ────
唯「い、あっ……」
振られたカッターナイフで右腕に浅い切傷をつけられる。
唯「あ、ああ……」
本気だ。この人は本気で私を殺すつもりだ。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:27:42.47 ID:1jx+DhWRO [42/47]
唯「……あっ…あああ!!!!」
脱兎の様に逃げ出す。人間の本能、一番奥にある死と云う恐怖から逃れる為に。
「ハヤクこっちにおいでエエエエエエエ」
体を反りながら吠える様に鳴いた後、唯の追跡を開始する。
その足取りはもはや人間のもではなく、一歩一歩歩く度に血の様なものが目から流れ出ている。
「ユイチャアアアアアアン!!! ヒャッエッハア」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:33:32.79 ID:1jx+DhWRO [43/47]
夢中になって走る…。
誰か…人を見つけて助けてもらおう。
足は自然と職員室に向かっていた。
職員室ならさわちゃんが…!
勢いよく扉をスライドさせ、
唯「さわちゃん! 助けて!!!」
…………
唯「嘘…………」
誰もいない。
電気もついてない薄暗い職員室は奇妙な程に静かだった。
トントン、
唯「えっ」
肩を叩かれ、不意に振り返る。
校長「ヤァ」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:39:41.08 ID:1jx+DhWRO [44/47]
唯「校長先生…………も」
校長「コワクナイ…………こっちはスバラシイ世界ダヨ」
目から赤い血を流し、ニコニコと笑っている。
手には自分のものだろうか、ゴルフクラブを握っている。
唯「やめて…………よぉ……」
泣き出しそうな心を抑えつけながら後退る。死にたくない……その一心で体は逃げ場を模索していた。
校長「コッチニオイデェェェェ!!!」
振りかぶられたゴルフクラブを見てようやく私の体は動き出した。
唯「ひゃうっ」
ガシャアアンッ
咄嗟に避けたのが効をそうしたのかゴルフクラブは空を切り、誰かの机を粉砕した。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:47:16.71 ID:1jx+DhWRO [45/47]
校長「アヘへ…………ウヒャアアアア!!!」
ブンッ! と目の前をゴルフクラブが通過、
ガシャアンッ───
職員室のガラスが派手に割れる。
唯「ひぃぃっ」
尻餅をつくような体制でなんとかかわす、も、それはかわしたと言うよりただ腰が抜けてしまったと解釈した方が自然だろう。
校長「ウヘアッ………ウウ?」
またゴルフクラブを唯に定めようとするも職員室の窓に引っかかり中々抜けずにいる。
唯「(今の内に……!)」
尻餅をついたまま下がって行くと立ち上がり、職員室を抜け出す。
校長「待てエエエエエエエエエエ」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:54:41.08 ID:1jx+DhWRO [46/47]
唯「はあ…はあ…どうなってるの……」
走りながらこの全くわからない状況を整理してみる。
唯「みんな目から血を流してた……考えたくないけど感染病とかかな……」
そう考えた瞬間キュッと胸を締め上げるものがきた。
友達のこと、家族のこと、憂のこと……。
まるで迷ってしまって家がどこかわからなくなったような不安感が押し寄せてくる。
誰もいない、いるのは私を殺そうとするわけのわからない人達だけ。
この世界は一体なんだ。私は……一体どこへ来てしまったのだろう。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/13(水) 23:59:52.78 ID:1jx+DhWRO [47/47]
駄目……。ここで挫けたら私は多分死んでしまう。
そしたらもうみんなにも会えない……。
唯「……」
思いついたように携帯を開く。
圏外
その二文字に心を折られそうになる。
でも…待ち受けのみんなで撮った写真を眺めていると自然とさっきまでの不安は幾らか和らいでくる。
唯「みんなを探そう…」
生きてる保証はない。だけど生きているのならみんなも同じことを考える筈だ。
唯「まずは学校を出よう」
買い物に行った憂も心配だ。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:08:00.23 ID:aaTgFN2yO [1/96]
──【ドコダー??】──
唯「うっ……」
また頭に過る映像。さっき見たのとは違って職員室辺りが映し出されていた。
唯「あの声……もしかして校長先生の目から見えてる景色が私に見えた……?」
何故かはわからない、けれどやってみる価値はあるだろう。
目を閉じ、意識を集中する……。
──【手術シマショウネー】──
これはさっきの保健の先生…。
何を切り刻んでるんだろうか、人形のようなものがズタズタになっている。
更に頭を別のチャンネルに切り替えてみる。
テレビに映っている番組を変える様なイメージ。
──【オーーーーーーイ】──
いた、校長先生だ。さっきよりこっちに近づいて来てる…。
間違いない、これは相手の視界に割り込む能力…!
唯「言うなら視界ジャック…!!!」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:15:03.78 ID:aaTgFN2yO [2/96]
唯「これを利用したら上手く逃げられるかも…」
校長先生は今一階の職員室前…、保健室の先生は保健室。
校長先生は動き回ってるから注意しとかないと。
学校を出るだけなら色々道はあるけど…他の先生達もああなってるかもしれない。
なるべく見つからない様に正門は避けよう。
裏門から脱出だ。
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:23:23.75 ID:aaTgFN2yO [3/96]
どうやら他にはいないようであっさりと裏門にまで辿りついた。
唯「後はここを出て…あっ」
裏門には金色の錠がかかっていた。
唯「もうっ!」
こんな大事な時なんだから鍵ぐらい外しておいてほしいよ!
ここで苛立っても仕方ないので危険を承知で体育館の裏を抜け、正門の方を覗き込む。
唯「誰かいる…」
体育教師「遅刻するヒトはユルシマセン」
木刀のようなものを持ちながら正門のど真ん中に立っている。
唯「正門は抜けれない…」
唯「壁は私じゃ乗り越えられそうにないし…」
私は鍵探しを開始した。
小目的 裏門の鍵の入手
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:30:15.02 ID:aaTgFN2yO [4/96]
再び職員室の近くのトイレまで戻って来るも……。
──【ウヒャッヒャア】──
唯「どこか行ってよ校長先生!」
トイレの一室で一人作戦会議なのです。
唯「鍵は職員室にかかってる……それは校長先生の視界から確認したけど…」
職員室を出たり入ったし続ける校長先生を何とかしない限り鍵は手に入らない…。
唯「何とか注意を引けないかな…」
唯「……何か音が出せれば…そうだ!」
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:40:30.76 ID:aaTgFN2yO [5/96]
「来週のゴルフタノシミダナァ……」
ゴルフクラブをひたすら磨いている校長先生。
ガタンッ───
「アヒャッ!?」
隣の教室で大きな音が鳴り響いた。
それを聴いた校長先生は餌の臭いを嗅ぎ付けた野犬のようなスピードで早歩きで音の発信源へ向かう。
「みいいいいいつけたァァァァァァ」
ガラッ
教室の中はただ机が散乱しているだけで、中には誰もいない。
「いるノハワカッテルンダ」
「デテキナサイ」
そのまま扉を閉め、教室の中を物色し始めた。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:49:41.91 ID:aaTgFN2yO [6/96]
唯「上手く行った…!」
唯は仕掛けを打っていた。隣の教室に静かに入りこんだ後、机や椅子を重ねる。
なるべく入口近くにして音が響く様に窓も開けておく。
教室を調べビニールの紐の様なものを入手した後、その机の足にビニールの紐を結ぶ。
それをトイレまで引っ張り込み、一気に引っ張た。
重ねた机や椅子は見事に崩れ、盛大に音が響いたのだ。
視界ジャックで校長先生が教室に入った所を確認してからトイレから職員室へ。
唯「かぎぃ~かぎぃ…あった!」
裏門の鍵を見つけると一目散に職員室を脱出した。
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 00:56:44.31 ID:aaTgFN2yO [7/96]
カチャリと音を立てて錠が落ちる。
唯「開いた! とりあえず憂を……」
でも闇雲に探して見つかるかな…入れ違いになるのも怖いし…。
唯「家で待とう…。それにもう帰ってるかもしれないし」
そう決めると私は学校を飛び出して自分の家を目指した。
終了条件達成
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:06:05.85 ID:aaTgFN2yO [8/96]
桜ヶ丘 大手スーパー 本屋
PM18:30:30
田井中律
終了条件1 スーパーからの脱出
小目的 武器の入手
──────────
律「う…なんだ?」
生きてる…?
律「さっきのサイレンは何なんだ…」
──【フッヒャア】──
律「うっ…頭が痛い」
さっきのは…?
わからないことづくめだ。
ともかくみんなが心配だ。
律「……圏外ね」
地震の影響だろうか。携帯は使えそうにない。
律「直接確かめに行くしかないか」
周りを見回しながら私は携帯をポケットにし舞い込み、ここを出る為に動き出した。
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:15:00.58 ID:aaTgFN2yO [9/96]
「うああああああああ」
律「なんだ!?」
下の方から叫び声が聞こえると、直ぐ様下を覗き込んだ。
吹き抜けになっている二階から一階の様子はよく見えた。
律「おいおい嘘だろ……」
「アヒャッヘハァ!!!」
「助けてく……」
グチャリ……
律「うっ……」
思わず目を背けてしまう。こんなの澪じゃなくても怖いっての……!
……男が持っていた包丁が他の人の心臓に刺さり込んでた……。
つまり……殺してたってことか。
律「地震に乗じたにしてはタチが悪すぎんだろ……!」
自分の身にも危険を感じつつ、私はその場を後にする。
律「武器がいる……自分を守るための武器が」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:20:25.73 ID:aaTgFN2yO [10/96]
隠れつつ、何とかスポーツコーナーまで辿りつけた。
律「思ったらスポーツコーナーって武器の宝庫だよな」
バットにゴルフクラブ、テニスラケット……はちょっと威力がないか。
さて、どれにしようかな。
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:26:58.83 ID:aaTgFN2yO [12/96]
律「ゴルフクラブにしよう」
ドライバーはすぐ折れそうだからアイアンにしよっかな。
適当に一本引き抜くと軽くスイングしてみる。
ブンッ!!!
律「ナイショット」
ゴルフなんてしたことはないけど自分を守るためだ。
律「後で返せたら返しに来ます!」
誰もいないカウンターに一礼した後スポーツコーナーを出る。
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:32:45.96 ID:aaTgFN2yO [13/96]
──【コッチニオイデ~】──
律「うっ……またかよ」
誰かの目線が頭に過る。
律「地震のせいで超能力に目覚めちゃったのか私」
試しに目を瞑り、一階にいるであろうさっきの男の視界を見ようとしてみる。
──【ケェッケェッケェッ……】──
律「見えた……本当に」
何でかはわからないけどどうやら他人の視界を盗み見ることが出来るらしい。
律「一体どうなってんだよ……」
律「澪……みんな」
無事でいてくれよ……!
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:40:02.40 ID:aaTgFN2yO [14/96]
それからも隠れながら何人もさっきの様な男を見た。
警察は何やってんだ! こんな時の為の警察だろ!
律「って言っても電話も出来ないし…いざとなったら私も…」
やるしかない。
殺されるなんてごめんだ。
でも命乞いをして……変なことされるのも嫌だ。
私だってただの女子高生だ、みんなの前では強がってるけどやっぱり怖いものは怖い。
体が無意識に震える…けど、
それでも怖がってたらいいようにされるだけだ…。
律「来るなら来い…私も容赦しない」
ゴルフクラブを握る手が一段と強くなった。
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:47:33.26 ID:aaTgFN2yO [15/96]
律「エレベーターは…まずいか」
音がなるし…下に参りまーすって言ってるようなもんだしな。
律「ということはエスカレーター…または階段だけど」
エスカレーターは中央にありすぎて降りた時に目立ち過ぎる。
なら階段か…。
律「階段は…こっちか」
どうやら二階にはいないらしく一階から見えないよう二階の吹き抜け部分にかけられている手刷りから離れて少し屈みながら歩く。
手刷りの下は白いガラスになっている為あっちから見られることはないだろう。
律「……」ビクッ
律「なんだ……」
階段に差し掛かった時、一瞬体が震えた。
律「もしかして……」
私は静かに目を閉じる。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 01:54:20.69 ID:aaTgFN2yO [16/96]
──【ハア……ハア……また怒らレチャッタ……死ねばイイノに……あんなヤツ】──
律「いる…」
目線から階段が見えた…ってことは多分正面のレジ辺りにいるのだろう。
言葉を聞く限り正気とは思いづらい。というよりここにいる人達はみんな信用出来ない。
下に居たってことはさっきの叫び声も聴いてるはずなのに…何の焦りも感じられない。
ってことは奴らの仲間か……。
律「わかんないけど早く逃げた方がいいな…。警察とかにこの事を伝えないと」
このスーパーの近くに交番があった筈。
まずはそこに駆け込もう。
律「さて…下のやつをどうするか」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:02:42.71 ID:aaTgFN2yO [17/96]
女店員「服をタタミマショウネーイソガシイイソガシイ」
ウイーーーーン
女店員「!!!?」
エレベーターが動いているのに気付いたのか急いで駆け寄る。
女店員「降りてラッシャアアアアアアアい」
↓のボタンを狂うように連打しまくる女店員。
上の文字盤は2から1へ。そしてつきましたよと言う合図、ポーンという間抜けな音がした後、ゆっくりと扉が開いた。
女店員「アハハハハハ!!!」
勢い良く乗り込むものの、そこには誰もいない。
しかし、エレベーターの鏡に写った自分を他の誰かと勘違いしたのだろうか、ハンガーを振りかぶり襲いかかる。
女店員「キャエエエイ!!!」
バリンッ
ガチャン───
そうしてエレベーターの扉は閉まり、上に向かった。
律「行ってらっしゃい」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:08:31.39 ID:aaTgFN2yO [18/96]
律「さて、早く行かないと。しかし便利だな~これ」
律は片目を瞑ったままでいる。
その瞑った片目にはさっきの女店員の視界がジャックされていた。
こうすることにより動きながら視界をジャック出来ると律は気付いたのだ。
それを利用し、女店員の様子を見ながら階段を降り、階段の隣のエレベーターに夢中になってるのを見て扉を閉めたのだ。
律「あはははバカだな~それじゃ上がっちゃうだろ」
ひたすら上のボタンを連打している女店員を後目に、律は出口を目指した。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:16:29.26 ID:aaTgFN2yO [19/96]
それからも視界ジャックを駆使し、相手が見てない内に後ろを通ったりを繰り返した。
律「何人いるんだよ……しかも全員目から……あれ血か?」
信じられないけど……どうやらとんでもないことになってるのは確かみたいだ。
律「まともな人間はいない……いたらさっきみたいに殺されてる? 何かの病気か……映画じゃあるまいし」
いくら考えても答えは出ない。たかだか十数年生きただけの私には引き出しが少なすぎる。
律「勉強しとくんだったな……」
こんな時に思い出すのはやはりみんなの顔だった。
律「梓の言う通りだよな……」
「ウヒャアアアアアアアアア!!!!!!」
律「しまっ……」
見つかった!!!
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:26:31.79 ID:aaTgFN2yO [20/96]
凄い速度でこっちに来る!
よく見るとそれはさっきの包丁を持った男だった。
律「クソッ」
自分のノロマさに悪態をつきながら出入口に走る。
騒ぎを聞き付けた同じような奴等が次々と追いかけるのに参加しているようだ。
視界を盗み見るまでもない。後ろに感じる気配でわかる。
律「ヤバいヤバいヤバいヤバい」
前からも来たッ!
「サカナァ……」
律「ど……、けえええっ!」
魚を持ったおじさんを容赦なくゴルフクラブで殴りつける。
律「正当防衛ってことでよろしく!」
そのまま出口から一目散にスーパーを出ると私は急いで交番に走り込んだ。
終了条件達成
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:41:55.05 ID:aaTgFN2yO [22/96]
桜ヶ丘 秋山宅 澪の部屋
PM18:30:00
秋山澪
終了条件1 秋山宅からの脱出
──────────
澪「おさまった…?」
机の下からひょこっと顔を出すと辺りをリスの様に軽快に確認する。
澪「凄い地震だったな…。ああっ、本棚がぐちゃぐちゃ…」
澪「ってそんなことよりみんなが無事かを確かめるのが先だろう!」
散乱した本を退かしやっとの思いで携帯を見つけるも圏外。
澪「こんな時は災害コールセンターに電話だ!」
プープープー
澪「その災害地の真っ只中にいるの忘れてた…。かけられる側だろ私は」
地震の時に聴こえたあのサイレンの音…何だったんだろう。
──【フフ、澪ちゃんゴハン作らなきゃ……】──
澪「な、なに? ママの声が……」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:51:56.02 ID:aaTgFN2yO [23/96]
──【ダンッ! ダンッ! ダンッ! 中々切ナイいわねぇ…………】──
澪「なに…………これ……」
──【澪ちゃんが待ってルノニ……】──
澪「ママ……何切ってるの……」
──【キレナイワネェ……】──
それが何かわかった瞬間に胃から吐瀉物が逆流してきた
澪「オェ…………」
間違いない…………ママが切ってるのは…………
あれは…………パパの手だ
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 02:57:35.59 ID:aaTgFN2yO [24/96]
澪「ゴホッ……アッ……ア…ア…アッ!」
これは夢だ。
澪「ママがそんなことするわけ…」
でも……あの薬指にあった指輪はパパの……。
澪「パパとママが愛し合った記念のものなのに……」
喧嘩になってママが勢い余って殺して……、
澪「ううん……家の家族は仲が良かった。それだけは間違いない。殺すだなんて……」
そもそもさっき見えたのはなんだ?
ママがいるのは一階なのにどうしてそれが見えたんだ?
それに地震があったって言うのに暢気にご飯……それもパパの手を……。
澪「考えちゃダメだ…! 頭がおかしくなる…」
こんな時、頭に浮かんだのは律の顔だ。
澪「助けて…律…」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:03:54.88 ID:aaTgFN2yO [25/96]
──【後はコレヲ煮込んで……】──
目を閉じると自然に浮かぶこの光景。
──【出来たら澪ちゃんに持って行ってアゲナキャ……】──
もう理性のブレーカーが飛んでいるのか私はその光景を黙って眺めていた。
澪「パパ……ママ……律……」
会いたい。律に。
怖かったろ? って慰めてもらいたい。
澪「逃げなきゃ……。そして律のとこに行くんだ」
そう決めた瞬間、頭のブレーカーを入れ直し、物事を冷静に考える。
律に会うためにはここで死ぬわけにはいかない。
澪「あのママはもう……ママじゃない!」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:15:34.69 ID:aaTgFN2yO [28/96]
しかしこの能力は便利だ。相手の視界を盗み見ることが出来るらしい。
だがこんなアニメじみた能力があること自体異常だ。
つまり……
澪「もしかしたらもう……私は……」
よそう、そんなことを考えるのは。今はとにかく律やみんなの安否が心配だ。
携帯が使えない今直接会いに行くしかない。
澪「家を出るには下を抜けなきゃ……でも下には包丁を持ったマ……人がいる」
澪「窓からは……無理だ。とてもじゃないけど降りられない」
澪「下を抜けるしかない……」
ゆっくりと部屋のドアを開けると、階段を覗き込む。
澪「……」
そして目を静かに閉じた。
180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:21:13.72 ID:aaTgFN2yO [29/96]
──【ウフフ……出来タ……ハヤク澪チャンに持っテ行っテアゲナイト……】──
鍋で煮た腕をお椀によそいおぼんの上に置いている。
澪「まさか……こっちに来る?!」
慌てて隠れる場所を探す。
いっそのこと飛び降りた方が助かる見込みはあるか、元はママなんだから話せばわかってくれるんじゃないか、なんてバカみたいな提案が頭の中で立案されては却下されて行く。
トス……トス……トス……
スリッパが階段を噛む音が聞こえる……!
澪「ここしかない……!」
私は一番隠れられそうな所に身を滑らせた。
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:27:22.12 ID:aaTgFN2yO [30/96]
澪ママ「澪ちゃん、ゴハンよ」
シーン────
澪ママ「オカシイワネェ……ドコに行っタノカシラ」
澪ママ「ヨイショ…………」
おぼんを机の上に置くママ。
澪「(うっ…………)」
ママの手には………包丁が握られていた。
澪ママ「ハヤクコッチニ来レバイイノにネー…………リッチャンと一緒ニ」
澪「(律………)」
澪ママ「遊ビニ来ナイカシラネー…………リッチャン。ソシタラ一緒ニコッチニ来サセテアゲルノニ」
ガタッ…………
澪ママ「アラ……」
澪「(しまった……ッ!)」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:31:11.07 ID:aaTgFN2yO [31/96]
澪ママ「澪チャンイルノー?」
澪ママがクローゼットを覗き込むようにして見ている。
澪「ッ…………!」
心臓はもう耳障りな程に脈を打っている。
澪ママ「かくれんぼカシラ? 澪チャンったら子供ネー…………」
澪ママ「ミ~ツケタ」
澪ママは両手でクローゼットを開け放つとそのまま一気に包丁を中に突き立てた。
ザクッ─────
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:36:41.73 ID:aaTgFN2yO [32/96]
澪ママ「…………」
澪「…………」
澪ママ「澪ちゃんの服ヤブイチャッタわー…………後で縫ワナイト…………」
澪「(…………ほっ)」
その破いた服を持ったまま澪ママは下へ降りて行った。
それを視界ジャックで確認した後、澪がベッドの下から出てくる。
澪「クローゼットに隠れてたら死んでたかな……」
これでしばらくは上には来ないだろう。考える時間が出来た。
澪「酷い臭い……」
机に置かれたそれを鼻をつまみながらゴミ箱に入れた。
そしてすかさずその周りに消臭剤を振りかけた。
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:49:15.28 ID:aaTgFN2yO [34/96]
澪「今は……ご丁寧にさっき破いた服を縫ってる……。ママなのかママじゃないのか……」
さっき殺そうとしたんだ、ママだろうがママじゃなかろうが危険には変わりないか…。
澪「台所じゃなくなったぶん逃げやすくなったな……」
台所の勝手口から逃げればすぐ外だ。
澪「これで準備はよし……!」
鞄に食べ物や飲み物を詰めておく。きっと律は何も考えなしに外に飛び出してるだろうからな。
お腹が減ってたりしたら大変だ。
澪「…………」
念入りにママの視界を盗み見る。
──【澪ちゃんの服カワイイワァ………】──
相変わらずミシンで私の服を縦横無尽に縫っている。こうなるともう頭がどうかしたとしか思えない。
澪「夢なら覚めてよ……」
そう呟いた後、私は静かに階段を下った。
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 03:55:17.64 ID:aaTgFN2yO [35/96]
階段の壁際から肉眼で覗き見る。
ママは背を向けたままリビングでミシンを縫っている。
澪「(よし……)」
今だとばかりにゆっくりと屈みながら台所に行き、勝手口に手をかける。
澪「(あれ……スリッパがない。いつもならここにあるはずなのに…)」
こんな非常自体だ、靴下だけでも何とかなるだろうとドアノブを回そうと……
ガチャ
澪「えっ」
澪パパ「タダイマァァァ」
澪「パ…パ…?」
目の前に立つのは片腕のない私のパパだった。
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 04:05:38.11 ID:aaTgFN2yO [36/96]
澪パパ「ウヒャッヒャヒャッ」
澪ママ「アラァ澪ちゃん……帰ってタナライッテクレナイト」
挟まれた……。
澪パパ「コッチハスバラシイゾ~澪」
澪ママ「コッチニオイデ……澪ちゃん」
澪「あ、ああ……」
そうだ……これは夢なんだ。
きっと悪い夢で……起きたらまたあの楽しい日々が待ってるんだ。
目を瞑る。
澪ママ「澪チャアアアアアアアアアアアアアアン」
覚めたらきっと……会いに行くから、律。
斎藤「そんなんじゃ生き残れませんよ、澪さん」
この声の後、銃声が二つ響いた。
終了条件達成
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:08:24.16 ID:aaTgFN2yO [40/96]
桜ヶ丘 琴吹邸
PM??:??:??
琴吹紬
終了条件1 琴吹邸からの脱出
終了条件2 斎藤を倒す
紬「ここは……」
見渡せばそこは私の部屋だった。
紬「地震があって……その後……」
どれぐらい私は気を失ってたんだろう。辺りはもう真っ暗で夜と言うことだけしかわからない。
紬「携帯…、駄目ね。壊れてる」
地震のせいでクローゼットが倒れて携帯を踏み潰したのだろう。画面は無惨にひび割れている。
自分がこうなっていないだけでもよしとしておこう。
紬「お父様は出張で遠くに行かれてるから大丈夫だけど…他のみんなが心配ね」
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:09:58.80 ID:aaTgFN2yO [41/96]
耐震設備が完璧なこの家でさえこの有り様だ。一般家庭の家がどうなっているか…なんて考えたくもない。
紬「とにかく斎藤に車か何かを出してもらってみんなの安否を確かめに行きましょう」
着替えようと思ったけどクローゼットから服を出すのは一苦労だろう。
ネグリジェのまま彷徨くのも恥ずかしいけど事が事だけにそんな場合ではない。
紬「斎藤…無事かしら」
部屋を出ようとドアノブに手を回した時だった。
──【琴吹家は……オワリダ…】──
紬「何…さっきの」
一瞬頭に浮かんだのは猟銃の様なものを構えた誰かだった。
254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:11:38.84 ID:aaTgFN2yO [42/96]
紬「あの声は……斎藤?」
もう一度見れないか試みるも、見えない。
紬「……気のせいにしては鮮明だった気がする…」
それにあれはエントランスの二階から見た私の部屋じゃなかった…?
私の部屋の扉を猟銃で狙いを定めてた…?
なんで……?
紬「琴吹家は…終わりだって言ってた…」
もしかしたらこの地震に便乗して私を殺して財産を盗みだそう…とか。
紬「斎藤は信用してるけど…あり得ない話じゃないわ…」
どうしよう…。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:28:32.48 ID:aaTgFN2yO [44/96]
紬「やっぱり危険だわ。この部屋から何とか脱出出来ないかしら…」
そう言えば昔お父様がもし火事になってこの部屋から出られなくなったりした場合に使いなさいって言われてたものが…。
紬「え~と…確かここに」
お父様が買ってくださった絵画を外すの何種類ものボタンが現れる。
紬「確か…」
その中の赤いボタンを押すと何やら窓の下から何かが勢いよく中庭に降り、固定される。
スロープ状に伸びたそれはまるでプールのスライダーのようになっている。
紬「わぁ…」
楽しそう…。
紬「家にこんな滑り台が…ずっと隠しておくなんてお父様も意地悪だわ」
ゆっくりとクリーム色のそれに体を預けてみる。
紬「1.2.3…ッ!」
手を離し、私は滑降を開始した。
終了条件達成
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:40:33.76 ID:aaTgFN2yO [45/96]
桜ヶ丘 中野宅
PM19:15:44
中野梓
終了条件1 侵入した屍人を倒す
──────────
梓「う…ううん」
梓「……はっ」
梓「地震……はもう止まってる」
梓「凄い地震だったけどどれぐらいの震度だったんだろう」
散乱している物の中からテレビのリモコンを探しだしてつけてみる。
ザアーーーーー
砂嵐。
梓「お父さんとお母さんは大丈夫かな? 仕事先で怪我とかしてなきゃいいけど…」
梓「唯先輩達にも電話してみよ……」
圏外。
梓「はあ……」
携帯やテレビがないだけでこれ程まで何も出来なくてわからないなんて……ちょっと自分が嫌になる。
ガタタッ……
梓「何…? リビングの方からだ…」
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 17:50:23.59 ID:aaTgFN2yO [46/96]
「ウヒャアッヒャアッハァ」
グチャグチャ……
梓「(何…あれ……)」
冷蔵庫のものをひたすら口に運んでいる…。
強盗…?
梓「(どうしよう!!! とりあえず警察に……って電話使えないんだったよぉ!)」
「タリナイータリナイイイイイ」
グチャクチャグェップブチャ
梓「(自分の身は自分で守らなきゃ…。追い払ってやるです!)」
そそくさと部屋に戻ると武器になりそうなものを探す。
梓「後ろから思いっきり殴って気絶するぐらいのものがいいかな…」
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:01:28.95 ID:aaTgFN2yO [47/96]
梓「ギターケースなら思いっきり殴っても死んじゃったりしないよね」
ムッタンは外に出して置き、空のギターケースを両手で担ぐ。
梓「……」
恐る恐る覗いて見ると……。
「ウメエ……ウメエ……」
まだお食事中のようだ。冷蔵庫の方を向いたままひたすら口に物を運んでいる。
梓「(よっぽどお腹がすいてたのかな…。でも強盗は良くないですよ!)」
正面から行けば何されるかわからないのは明白だ。そして力のない私はただそれに従うしかなくなる。
そうならないようにこの一撃を見舞ってやるです!
梓「……」
「クヒャッヒャ」
梓「このっ!!!」
ガツーーーーン
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:07:06.78 ID:aaTgFN2yO [48/96]
「ウア……?」
梓「ひいっ……」
ギョロリと瞳だけが動き蒼白の男がこちらを見据える。
「邪魔スルナアアアアアアア」
梓「あっ……あ……」
食事を邪魔されたのがよっぽど気に障ったのか物凄い力で私の首を締め上げてく……る……。
梓「あ……うあ……」
両手で……何とか……振りほどこうとしても……全く……動かな……。
「コッチニオイデ……」
梓「(こっちって……どこ……?)」
もう何も……見えない……よ。
284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:14:54.43 ID:aaTgFN2yO [49/96]
意識が遠くなって行く。
梓「…………」
もう腕にも力が入らない。元々こんな細い腕じゃ敵いっこない……。
私は余りにも無力だ……。
梓「…………」
涙が溢れた。
悔しくて、こんな所で死んじゃう自分が情けなくて。
「ウヒャアッヒャアッハァ!!!!」
ギリギリ……と首を圧迫していく。
もう折れてしまいそう……。
285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:16:06.94 ID:aaTgFN2yO [50/96]
梓「…………」
言葉も出せない。
そのまま、目を閉じた。最後くらいこんな奴の顔じゃなくて……私の大好きなみんなの顔を思い浮かべながら死にたい。
──【はっ……はっ……】──
何だろう……この景色は。私の家?
──【っつはっ……はっ……!】──
中に入って来た……。走馬灯かな……?
──【このっ……!】──
あれ……私が見える……。
純「梓を離せっ!!! この化け物!!!!!」
ガスンッ!!!
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:24:32.81 ID:aaTgFN2yO [51/96]
「ゴオッ………」
純の振りかぶったバットが屍人の脳天にクリティカルヒットした。
余りの威力にそのまま土下座するように地に伏した。
純「梓っ!」
梓「ゲホッゲホッ……ゴホ…ッ……あ、純」
純「命がけで助けに来た友達に向かって第一声がそれ!?」
梓「ごめん……何だか夢みたいで。ほんとにもう死んだかなって思ってから」
純「私のウルトラCがなかったら間違いなく絞め殺されてたよ! 立てる?」
梓「……無理っぽい」
純「全く……。よいしょっと」
純に肩を貸してもらい立ち上がる。
純「とにかくここを出よう。またこいつが起きる前に」
梓「でも……さすがにあれじゃ…」
バットで思いきり殴ったのだ。幾ら女の力でも…。
純「…こいつらは死なないんだよ。どういうわけか知らないけど」
292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:31:06.34 ID:aaTgFN2yO [52/96]
梓「死なない…?」
純「そ。多分後10分もすればまた起き上がるよそいつも」
梓「そんな…」
純「詳しい話は車でしよう。そっちの方が安全だから」
梓「車?」
純「乗ってきたの」
梓「純って運転出来たっけ…? そもそも免許は…?」
純「あんなの簡単簡単。こうやってぐわーってやった後、ぶしゃーって踏んで後は曲がりたい方にハンドルを切るだけ」
幾ら非常時? といっても正直……
梓「………乗りたくないなぁ」
純「つべこべあべこべ言わずに来るのっ!」
梓「あっ、ちょっと! 純! バットは?」
純「いいのいいの。また探せばいいから(……間に合って良かった……)」
終了条件達成?
298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:43:52.43 ID:aaTgFN2yO [53/96]
桜ヶ丘 平沢宅
PM19:30:33
平沢唯
終了条件1 わかりやすい置き手紙を書き残す
唯「隠れながら帰ったから時間かかっちゃった…」
もう辺りは真っ暗で、ちらほら街灯が灯り初めている。
唯「憂~いる~?」
家に入ると一目散に憂を呼びながら部屋に行く。
唯「憂~」
そこには憂の姿はなく、ただ可愛らしい部屋が薄暗く映し出されていただけだった。
唯「まだ帰ってないんだ…憂」
心配だ。
もしも憂があの変な人達に襲われたのかもしれないと思うと心臓がキュッと締め付けられる。
待ってられないっ!
唯「探しに行こう…!」
300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:48:38.52 ID:aaTgFN2yO [54/96]
唯「でも入れ違いになったら困るなぁ……。携帯も使えないし」
唯「う~ん……」
唯「!」
唯「そうだ! 置き手紙をしておこう!」
何て書こうかな~。これを見たら家にいなさい! とかかな~?
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 18:59:12.72 ID:aaTgFN2yO [56/96]
憂が家にいないので外に探しにいっています。
20:30までには私も帰ります。
もしも20:30までに私が帰ってこなかったらあずにゃん達と一緒に隠れてて!
唯「……と、これで完璧!」
唯「よし! 探しに行こっと!」
手紙をわかりやすくリビングの机の上に置くと着替えるのも忘れて再び真っ暗闇へと体を投じる。
唯「憂……みんな……無事でいてね」
終了条件達成
置き手紙の内容◎
318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:22:49.99 ID:aaTgFN2yO [60/96]
桜ヶ丘 大手スーパー前の交番
PM19:10:00
田井中律
終了条件1 警察官からの逃亡
──────────
律「大変なんだよお巡りさん!!! スーパーの中がもうてんやわんやで…」
警察官「……」
律「聞いてんのかよ!!! 早くしないとあいつらが……」
ジリリリ……
ジリリリ……
時代に似つかわしくない黒電話が鳴り響く。その音に一旦間を取られた私は仕方なくその電話が終わるのを待つことにした。
警察官「もしもし…………」
律「(早くしろよな~……)」イライラ
警察官「……了解…射殺します…」
律「は…?」
320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:32:55.60 ID:aaTgFN2yO [61/96]
律「何言って……」
カチャリ……カチャリ……
律「なんで弾なんて込めて……」
そうか……、
警察官「イイアーッ」
こいつもか。
踵を返すと急いで交番を出る。
律「銃なんて卑怯だろ!!」
走りながら片目を閉じ視界をジャック。
──【無駄ナ抵抗ハやめなさい】──
照準が見事に私の背中を捉えてるのを見て、
律「くっ……!」
思いきり体を揺さぶりながらジグザグに走る。
パァンッ
パァンッ
二発の銃弾はどちらも私を捉える事なくどこかへ消えていく。
律「相手が狙ってる場所がわかるなら避けるのも意外と簡単だな…」
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:37:29.98 ID:aaTgFN2yO [62/96]
上手くやれば拳銃を奪えるかもしれない…。
律「どうする……」
拳銃があればこの先楽になるかもしれないけど……その分リスクはあるか。
327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:49:24.07 ID:aaTgFN2yO [63/96]
律「危険は承知の上だ!」
またまた踵を返すと来た道を逆走する。
視界ジャックで相手の手の位置、指のかかり具合などを見ていつ撃つかなども見落とさないようにする。
警察官「アファアアアアア」
パンッ──
律「(よし!)」
小刻みに動いてる為か相手の狙いは定まってない。
しかし近づくほどどんど的は大きくなる為油断は出来ない。
律「(もうちょい…!)」
パンッ──
5発目も何とかわきに逸れてくれた。
律「もらったあああああっ!!!」
329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:50:39.22 ID:aaTgFN2yO [64/96]
パンッ──
律「…………あれ?」
警察官「アッヒャハッヒャッハァ!!!!」
よろよろと崩れ落ちる体。
律「おっかしいな~……何か体に……力が入らないや」
ゴルフクラブが手から滑り落ち、赤い何かが私の胸辺りから沸き出ている。
律「ああ……血か……」
撃たれたんだな……私。
そう気付いた時にはもう意識は遠退いていた。
終了条件未達成
339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 19:57:38.61 ID:aaTgFN2yO [65/96]
桜ヶ丘 秋山宅
PM19:30:00
秋山澪
終了条件1
──────────
澪「あ、あの…助けてもらってありがとうございました」
斎藤「別にいいさ。探し物のついでだしな。あんたは確か琴吹嬢の友達だろ? どこ行ったか知らないか? てかここどこ?」
澪「ムギの知り合いなんですか!?」
斎藤「おっ、おお……まあな。あそこの執事だよ俺は」
澪「家にいなかったんですか?」
斎藤「いなかったから探しに来てるんだろうが。全くどこほっつき歩いてんのやら。おてんばの世話はこれだから…」
澪「おてんば…?(ムギが?)」
344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:08:25.15 ID:aaTgFN2yO [66/96]
斎藤「そんじゃあ悪いけど探しに行くから」
澪「わ、私も行きます!」
斎藤「……そいつは無理だ。二度は助けない主義なんでね。それに足手まといにしかならい」
澪「そんな…」
斎藤「澪さん、誰かに助けてもらおうなんて思わない方がいい。じゃあな」
背中を向けたままひらひらと手を振る。
斎藤「ちなみに、この家は出た方がいい。多分そいつらは時期に起き上がってくる。そうしたら次こそあんたは死ぬ」
澪「……」
斎藤「じゃあな」
バタンッ
閉められた扉が……まるで私を拒絶しているように思えた。
345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:13:41.95 ID:aaTgFN2yO [67/96]
澪「ここは……どこだろう」
家を出た方がいいと言われただ闇雲に歩き回った。
律には……会えなかった。
他のみんなにも。
どれぐらい歩いただろうか……。
数時間かもしれないし……数十秒かもしれない。
そしてたどり着いた場所は……崖だった。
まるで街がくり貫かれたようにそこで終わっている。
そしてそこから下は……一面の赤い海。
澪「……」
私は静かに崖の縁に腰を下ろすと、それをぼんやりと眺めていた。
347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:19:54.86 ID:aaTgFN2yO [68/96]
澪「綺麗だな……まるで夕陽が落ちたみたいに真っ赤だ……」
いい詞が浮かびそうだな……。
澪「あれ……?」
よく見ると遠くの方に何やら人影が見える。
それは群れをなして赤い海を渡っていた。
澪「!?」
その中に見知った顔があった。
澪「律……やっと……やっと見つけた」
あの黄色いカチューシャ……間違いなく律だ。
澪「おーい律。今そっちに行くからなー」
山彦を呼ぶように両手で口周りを塞ぎ大声でそう行った。
澪「よっと」
私はそのまま、赤い海に飛び降りた。
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────────
359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:31:12.64 ID:aaTgFN2yO [69/96]
桜ヶ丘高校
PM20:00:00
琴吹紬
終了条件1 追跡者を倒す
──────────
紬「どこにもいない……」
いるのは死んだような顔をしてる人達だけ。あれは多分人間じゃない…。
紬「ここはどこなの!!!? 私達の日常を返してよ!!!」
紬「はあ…はあ…」
避けんでも誰もいない。
唯ちゃんもりっちゃんも澪ちゃんも梓ちゃんもみんないなくなっちゃったの?
紬「後いるとしたらもう…ここしかない」
学校…もしかしたらみんなここに
バンッ───カァンッ───
紬「ひっ…」
校門に銃弾が当たり火花が散る。
追ってきた…!?
362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:46:29.89 ID:aaTgFN2yO [70/96]
すぐさま正門から校庭に入り、職員室の窓から学校の中に入る。
紬「信じてたのに…!」
溢れそうになる涙を堪えながら職員室を出る。目指すのは勿論軽音部の部室。
校長「ゴルフ楽シミダナァ……」
紬「(校長先生も……)」
職員室の外を徘徊している校長先生がゴルフクラブを磨いている間に後ろを抜けていく。何故かはわからないがこの人達はかなり注意力が散漫だ。
なので足音を立てずゆっくりと歩けば大抵はバレずに済む。
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 20:54:54.68 ID:aaTgFN2yO [71/96]
紬「あれは保健の先生…………」
保健の先生「ハァーイ唯ちゃん内臓カエマショウネー」
人形になりやら詰め込んでるみたい……ここからじゃよく見えないわ。
紬「唯ちゃん……無事かしら」
何人もの人をやり過ごし、ようやく部室にたどり着いた。
紬「お願い…誰か居て」
祈る思いで扉を開ける───
紬「……ふふ、遅れてごめんね。すぐにお茶入れるから」
紬「唯ちゃん」
377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:05:19.28 ID:aaTgFN2yO [72/96]
紬「みんな見つからないから心配したんだから」
紬「今日はね、ローズティーにしたの。とっても香りがいいのよ?」
紬「お菓子はね~……なんと飴玉!」
紬「ごめんね、急いでてこれしか持って来れなかったの」
紬「美味しい……? ねえ……唯ちゃん……」
コロン…………
口から転げ落ちる飴玉。
紬「返事してよ…………唯ちゃん………」
部室に血だらけで横たわっていた唯を抱きしめる。
強く……強く……。
紬「唯……ぢゃん゛……一緒にお菓子食べようよ……」
返事はない。
紬「唯ちゃん冷たいね……ほら、私の手……暖かいでしょう?」
唯の頬に両手を当てる紬。
383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:13:48.17 ID:aaTgFN2yO [73/96]
紬「唯ちゃんが寒くならないように……ずっと……ずっと暖めてあげるから……」
何にも思えない。
もう声にもならない。
ただあの元気で明るかった唯ちゃんがこんなに冷たくなって横たわっているのを受け止められない。
寝てるんじゃないかな……?
なんて思ったりもする。
紬「唯ちゃん……」
頭を撫でると、可愛らしい唯ちゃんの顔が少しだけ微笑んだように見えた。
そんな筈……ないのに。
384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:15:16.60 ID:aaTgFN2yO [74/96]
ドンッ──
ドンッ────
ドンッ──────
部室のドアが叩かれる。
多分あいつだろう。
紬「邪魔しないでよ……!」
私はそこら辺にあるものを武器として使うために掴み上げた。
391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:24:28.26 ID:aaTgFN2yO [75/96]
怒りに任せて掴みあげる。
入って来たらこれで……
「スイースイー」
紬「あ……」
唯『可愛いね~トンちゃ~ん』
「スイースイー」
梓『飼うからにはちゃんと面倒みてくださいね!』
紬「あ……あ……」
ガチャン……
紬「駄目……このままじゃみんなが大切にしてたトンちゃんが……」
ダァンッ───
紬「ヅッ────」
体に風穴が開く。
糸が切れたマリオネットみたいに膝から崩れ落ちた。
バシャアアアアア
水槽が派手にひっくり返りその勢いでトンちゃんも床に投げ出された。
トン「パタパタ……パタパタ……」
仰向けになったまま動けないでいるトンちゃんに最後の力を振り絞って手を伸ばす。
400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 21:29:09.40 ID:aaTgFN2yO [76/96]
紬「はい……これで……だいじょうゲフッ……」
トン「…………」
そのままトンちゃんはどこを目指しているのか這って進み始めた。
紬「ごめんね……トンちゃん……ごめんね……みんな」
最後に私が見たのは……この軽音部であった色々な出来事だった。
終了条件未達成
446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:24:50.43 ID:aaTgFN2yO [81/96]
桜ヶ丘 住宅街
PM19:45:45
中野梓
終了条件1 屍人を10体以上倒す
──────────
梓「わあっ純!!! ぶつかるうううっ」
純「大丈夫大丈夫~」
キキィ~!!!ドンッ
梓「!?」
純「……でさあ~」
梓「今なんかはねたよね!?」
純「えっ? 気のせいじゃない?」
梓「気のせいじゃないよ!!!」
純「まあまあ。で、これからどうする?」
梓「いいからせめて前見て運転して!」
純「はいはい」
449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:32:48.98 ID:aaTgFN2yO [83/96]
梓「とりあえずみんなを探さない?」
純「みんなって言うとー軽音部の?」
梓「うん」
ドンッ
純「……生きてるのかな」
梓「……わかんない」
純「私の親は駄目だったよ。私を見て化け物!化け物! って言いながら襲って来てさ。どっちが化け物だってーの」
ドドンッ
梓「もしかして……」
純「そ。殺したの。両親を…。けど…また起き上がって来てさ」
梓「……そっか」
ドンッ───
451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:38:12.28 ID:aaTgFN2yO [84/96]
ドンッ
純「それで梓が心配になって来たってわけ」
ドンッ
梓「ありがとね、純」
ドンッ
純「気にしないでよ。友達じゃない」
梓「純『ドンッ』……」
純「……」
梓「純!!! 前見て運転してって言ったでしょ!! もし唯先輩達だったら…」
純「大丈夫大丈夫」
ドンッ──
純「ちゃんと確認してからはね飛ばしてるから」
梓「そういう問題じゃなーーーい!!!」
終了条件達成
466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 22:52:52.31 ID:aaTgFN2yO [85/96]
桜ヶ丘 国道
PM21:00:00
中野梓
終了条件1 二人でこの世界を脱出する。
──────────
純「いないね~」
梓「うん……」
街をひたすら走ってみるもいるのはあの頭のおかしい人達ばかりだ。
純「まるで屍人だよね」
梓「屍人……?」
純「昔どっかの本で読んだことがあるんだよね~…タイトル何だったかな~。羽がどうのことのだったような。まあそれに書いてた屍人って奴らに似てるな~って」
梓「ふーん…」
純「あっ、ガソリン無くなりそう。ちょっとガソスタ寄るね」
梓「なんかもう手慣れてて怖い」
472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:01:30.65 ID:aaTgFN2yO [86/96]
純「あ~お金ないや。ちょっとスタンドの中から拝借してくるよ」
梓「えっ、ちょっと! 純!」
一人でそそくさと行ってしまう。
全く頼りなるんだかならないんだか。
梓「不思議だな…」
こんな恐ろしい世界に来てるのに…自然と怖くなかった。
誰かが側に居てくれる、ただそれだけでこんなにも違うんだ…。
純もそう思ってくれてるのかな?
純「ヘイッお姉ちゃんガソリン何オクだい!? 今ならレギュラーもついてくるよ!!!」
梓「ふふ、混ぜちゃダメでしょ」
純も笑ってる。
だから私も笑うんだ。
こんな世界でも。
479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:07:43.76 ID:aaTgFN2yO [87/96]
純「ハイオクの方がよく走るかなー?」
梓「わかんない。レギュラーでいいんじゃない?」
純「梓がそういうならレギュラーにしとくよ。お金もあんまりないしねー」
あの時…律先輩に酷いこと言ったのを今頃思い出した。
本当に大切なものと本当に大切なものを比べなきゃいけない場合どうするか……なんてそんなの決まってる。
どっちも守ろうとするだろう。
きっと律先輩も唯先輩もそうしてる筈だ。
だから私もそうしよう。
純「お待たせ~」
梓「うん」
純のこと、守ろう。
死ぬ間際まで……。
487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:14:22.00 ID:aaTgFN2yO [88/96]
どれくらい純と走っただろう。
私達は一向に誰も見つけられず、そしてとうとう……。
見てしまった。
梓「……」
純「……行き止まり…だね」
梓「そうみたい…」
純「……実は薄々気づいてたんだよね。こんなオチじゃないかって…」
梓「……私も。だってここ…おかしいもん」
純「だね」
梓「……」
純「多分どこもこうなってると思う。ここは現実世界じゃないんだよ…多分。あの地震か…」
梓「サイレンのせい?」
純「梓も聴いたんだ」
梓「うん。地震の最中に…ね」
純「そっか…」
梓「降りてみない?」
純「ん」
489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:22:36.87 ID:aaTgFN2yO [89/96]
純「な~んにも見えないね」
梓「そうだね…」
純「これ海? 何で真っ赤なのさ」
梓「知らないよ」
純「だよね…」
立ち上がって眺めていた純も飽きたのか私の隣に座り込む。
純「どっこらしょっと」
梓「ぷぷ。おばさんくさいよ純」
純「なんだとー!? 花の女子高生捕まえてその言い種はなんだー!」
梓「あはは、ごめんごめん。純は可愛らしいよ」
純「わかればよろしい」
梓「……純、ありがとね」
純「ん」
梓「純だけは生きて」
純「何言ってんの梓。生きるのも死ぬのも一緒だよ。ここまで来たら」
梓「うん……そうだね」
「ウアアアアアアアアア」「ウヒャアッヒャアッハァ」「クヒョアアアア」「コッチニオイデエエエエエ」「タノシイヨオオオオ」「キッキャッキャッ」
491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:27:58.07 ID:aaTgFN2yO [90/96]
純「さて、やりますか」
梓「武器は?」
純「ほら、車に積んであった角材」
梓「はねた方が早くない?」
純「あの数じゃ車が止まっちゃうでしょ」
梓「そっか」
純「ここで死んだら私達…どこに行くんだろうね」
梓「わかんない。普通に天国とか地獄とか?」
純「じゃあ梓とは会えないか~私殺しまくっちゃったし」ニヒッ
梓「私もこれからそうなるから一緒だよ。純」
神様、どうかいるのであれば……彼女だけは助けてあげてください。
私は一生ここに閉じ込められてもいいから…
純「桜ヶ丘軽音部~~~」
梓「ファイトッーーー!」
純は軽音部じゃないでしょってツッコミは、次に会った時にしよう。
終了条件未達成
500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:37:33.24 ID:aaTgFN2yO [91/96]
桜ヶ丘高校
PM19:45:00
平沢唯
終了条件1 憂をみつける
──────────
唯「はあ…はあ…商店街も通りながら来たけどすれ違わなかった…」
もしかしたらまだ私が寝てると思って学校に来てるかもしれない。そう思い私は学校の前にいる。
唯「視界……」ピシッ
唯「ジャック!!!」
まるで正義のヒーローの変身の様な動作をつけながら目を瞑る。
唯「……保健の先生は……と」
──【ゴルフ~……】──
唯「これは校長先生だ!」
唯「もうちょっとあっちかな?」
──【唯ちゃん手術シマショウネー】──
唯「まだやってる…。人形に私の名前までつけるなんて…。好かれてるのかな…」ブルブル
唯「憂はいないみたい…もしかしたら部室かな?」
504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:43:58.29 ID:aaTgFN2yO [92/96]
唯「体育の先生がいない……忍び込むならイマノウチ」
辺りを見回しながら学校の中へ。
唯「そう言えば学校のみんなはどこに行ったのかな? あの時私と保健の先生と校長先生と体育の先生だけしか学校いなかったのかな~」
唯「それで巻き込まれちゃったんだね…きっと」
唯「?? 巻き込まれる?? 何に?」
わかんない。
唯「それより憂だよ! 先生達に見つかってないといいけど…」
508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:49:55.41 ID:aaTgFN2yO [93/96]
唯「え~と…見つからないように部室に行くにはと」
保健室と職員室には先生達がいるから通りたくないんだけど……あそこ通らないと部室に行けないから…。
唯「バレないように行かなきゃ!」
「オーイ……遅刻はダメヨー」
唯「えっ……あっ」
しまった…!
まさか体育の先生が学校の中に居たなんて!
見つかった…。早く逃げないと!!!
「ウフフー」
唯「あれ?」
「体育ハタノシイヨー」
唯「襲ってこない?」
何で?
顔は相変わらず怖いままだけど…あっ! そっか!
唯「体育タノシイヨネー」オメメツリアゲ
仲間だと思われてるんだ!
509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:53:14.30 ID:aaTgFN2yO [94/96]
唯「ジャア私ハコレデー」トッタッタ
唯「何だかよくわかんないけど良かった!」
多分保健の先生も校長先生もこれで行けば私のことを仲間だと思って何もしてこないはず!
唯「フンスッ!」オメメツリアゲ
唯「憂~!!! 待っててねーーーー!!!」
513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:56:03.25 ID:aaTgFN2yO [95/96]
とうとう部室までやって来ました。
唯「いるかな…憂。いなかったらどうしよう…。まあその時はその時だよね」
書き置きもしてるしいなかったら一回家に帰ればいいか。
ガチャン
いつものように軽くノブを捻る。
唯「憂~いる~?」
憂「……お姉ちゃん?」
516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/14(木) 23:59:59.51 ID:aaTgFN2yO [96/96]
唯「憂っ!!!!」
憂「お姉ちゃん……どうしてここに?」
唯「どうしてじゃないよ! 憂を探しに来たんだよ! 心配したんだからね!」
憂「うん……書き置き見たよ。ありがとうお姉ちゃん」
唯「見たのにここにいるなんて、も~憂ったら! 世話がかかる妹なんだから」
憂「妹……」
唯「無事で良かったよぉ……憂」
優しく抱きしめる、
憂「お姉ちゃん……血が」
唯「えっ? ああこれはちょっと擦りむいちゃって」エヘヘ
とても擦りむいたと云うレベルの血の量じゃないが……それでも唯は笑みを絶やさなかった。
523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:07:25.62 ID:BPpZnIIJO [1/90]
憂「……」
唯「憂~……よしよし」
抱き締めながらよしよしと撫でる。憂はこれが大好きなのだ。
憂「お姉ちゃん……ごめんね」
唯「いいんだよ。謝らなくて」
憂「ううん…違うの。私は…わたしは…!」
唯「憂……?」
憂「……ゴメンナサイ……オネェチャン……」
グサッ─────
唯「えっ……」
お腹が熱い。
まるでインフルエンザにかかった時のおでこ……みたい……。
ああ……刺されたんだ……わたし。
唯「憂……」
それでも……
憂「ごめんね……ごめんね……」
唯「……私は憂を信じてるから」
大丈夫だよ、憂。
終了条件達成?
527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:13:26.34 ID:BPpZnIIJO [2/90]
??? ???
PM$%?`_=^);<<=_<
平沢憂
終了条件????????
──────────
憂「…………」
憂が家にいないので外に探しにいっています。
20:30までには私も帰ります。
もしも20:30までに私が帰ってこなかったらあずにゃん達と一緒に隠れてて!
憂「お姉ちゃん……」
532 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:17:41.83 ID:BPpZnIIJO [3/90]
唯「憂っ!!!!」
憂「お姉ちゃん……どうしてここに?」
来ると思ってた…多分お姉ちゃんが一番大事に思ってる場所がここだから。
唯「どうしてじゃないよ! 憂を探しに来たんだよ! 心配したんだからね!」
憂「うん……書き置き見たよ。ありがとうお姉ちゃん」
唯「見たのにここにいるなんて、も~憂ったら! 世話がかかる妹なんだから」
憂「妹……」
妹……。お姉ちゃんはいつだって私に優しかった……。
唯「無事で良かったよぉ……憂」
優しく抱きしめる、
憂「お姉ちゃん……血が」
唯「えっ? ああこれはちょっと擦りむいちゃって」エヘヘ
やっぱり……手遅れなんだね……お姉ちゃん。
534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:22:21.44 ID:BPpZnIIJO [4/90]
憂「……」
唯「憂~……よしよし」
だから……私も…。
憂「お姉ちゃん……ごめんね」
唯「いいんだよ。謝らなくて」
嫌われてもいいから…。
憂「ううん…違うの。私は…わたしは…!」
唯「憂……?」
536 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/15(金) 00:23:36.04 ID:BPpZnIIJO [5/90]
こうするしかないんだ。大好きなお姉ちゃんを守るために。
憂「……ゴメンナサイ……オネェチャン……」
548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:30:02.31 ID:BPpZnIIJO [6/90]
グサッ─────
唯「えっ……」
ごめんね……ごめんね……
唯「憂……」
痛いよね……痛いよね……
憂「ごめんね……ごめんね……」
きっと憎んでるよね……私のこと……
唯「……私は憂を信じてるから」
えっ……
そのまま目を瞑るように息を引き取る。
憂「こんなことになっても……信じてる……?」
何で……何で……
憂「わからないよ……お姉ちゃん。わからないおおおっ」
終了条件1 お姉ちゃん刺す
終了条件達成
552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:33:49.94 ID:BPpZnIIJO [7/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
律「どこだろ…ここ」
桜ヶ丘…じゃないよな?
こんな田舎じゃないし。
律「それにしても……綺麗だな……ここ」
空は赤くて夕焼けみたいで、周りには蛍のような光が舞っている。
わたしはここがどこかわからないままとりあえず歩き始めた。
555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:37:21.90 ID:BPpZnIIJO [8/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
澪「どこだろ…ここ」
気づけば川原の様な所で素足を水に晒していた。
澪「でも……綺麗なとこ」
こんな世界があったんだ……知らなかった。
律「お~い、澪」
澪「律。律も来てたんだな」
律「ああ、いつの間にかな」
澪「私も。綺麗だよな…ここ」
律「ああ。凄い綺麗だ」
澪「他のみんなも来てるのかな?」
律「かもな」
「りっちゃん~澪ちゃ~ん」
558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:39:40.47 ID:BPpZnIIJO [9/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
紬「ここは……」
気づいたら田んぼの真ん中で大の字になって眠っていたようだ。
紬「いい風……」
まるで撫でるような……。
ゆっくりと体を起き上げると、そこには何だか懐かしい顔が見えた。
紬「りっちゃん~澪ちゃ~ん」
563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:43:00.28 ID:BPpZnIIJO [10/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
うーん…。
梓「純……」
ゴツ。
梓「あいたっ」
梓「なんでこんな所に岩が……って……ここどこ?」
梓「純~? どこ~?」
何だか頭がモヤモヤする。私何でここにいるんだっけ……。
梓「忘れちゃった」
胸がいっぱいになるくらい大きく息を吸い込んでみる。
梓「気持ちいい……」
今までこんな気持ち、感じたことなかった。
「お~い梓~」
568 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:49:11.19 ID:BPpZnIIJO [11/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
律「他のやつらは…いないみたいだな」
紬「そうね~。来るのが遅れてるのかも」
澪「待ってたらきっと来るさ」
梓「ですね」
律「綺麗だよな…ここ」
澪「ああ……」
紬「ええ…」
梓「はい…」
梓「まだ覚えてる内に謝っときます。律先輩」
律「いいよ。気にしてないから」
澪「大人げないよな律は」
紬「ね~」
律「ほっとけいっ!」
梓「もう一回、聞いてもいいですか? 澪先輩もムギ先輩も答えてください」
律「ん?」澪「ああ」紬「どうしたの? 梓ちゃん」
570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:52:51.04 ID:BPpZnIIJO [12/90]
梓「本当に大切なもの同士どうしても比べなきゃならない時……皆さんならどうしますか?」
律「そんなもん決まってるだろ。なあ?」
澪「ああ」
紬「ええ」
全員一緒に、答えた。
律「どっちも助ける」
澪「どっちも助けてみせるよ」
紬「どっちも助けなきゃね」
梓「どっちも助けます!」
そう、例えそれで自分の命がなくなったとしても。
次に……そんな機会があれば。
私達は必ずそうするだろう。
572 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/15(金) 00:55:15.75 ID:BPpZnIIJO [13/90]
??? ???
PM──:──:──
???
──────────
犬屍人「……アガア……」
犬屍人「ウギャウ……」
頭脳屍人「ブルウウウウ……」
羽根屍人「ウキャキャキャ……」
屍人END
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