2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

浅見光彦「ごはんはおかず殺人事件」けいおん!

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:09:56.46 ID:qsRpQrbG0 [1/23]



「先生、音楽室はここですね?」

男性教諭に先導されて、軽音部の部室に黒い背広を来た男が二人入ってきた。

「平沢唯さんはどなたですか?事件の重要参考人として署までご同行願います。」若い方の男がそう言うと

「えーっ?」そこにいた女子生徒四人が頓狂な声をあげた。

澪などはさしずめ、うっそーとでも言いたそうな顔をしている。

「じゅーよーさんこーにん?」当の平沢唯は首を傾げていた。

「事件について重要な情報を持っていそうな人物のことだ」そう教える長身の娘は秋山澪。

「け、刑事ドラマなんかだとえげつない取調べを受けて容疑者にされちゃうわよね!」

興奮した面持ちで言うのは、琴吹紬だ。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:13:50.70 ID:qsRpQrbG0
「り、律ちゃん、どうしよう!?」

「落ち着け唯!こういうときは黙秘だ!」部長の田井中律が大声で言った。なぜか少し楽しそうだ。

「そうよ!唯ちゃんには黙秘権があるわ!」

「もくひ?」

「罪を認めずに黙っていることだ」澪が説明する。

「わかった!やってみるよ!」

そこへ話を聞きつけた後輩の中野梓が駆け寄ってきた。

「唯先輩!警察の人が探してるって・・・」

「あっ!あずにゃ~ん!なんかね。じゅーよーさんこーにんってのに選ばれちゃったみたい。」

「そんな!嘘です・・・唯先輩が重要参考人なんて・・・」

「大丈夫だよ。あずにゃん。わたし頑張ってモクヒするからね!」

涙ぐむ後輩をなだめながら、唯はパトカーに乗り込んだ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:20:35.82 ID:qsRpQrbG0
取調べに当たったのは、体格のよい強面の隅警部だ。通称クマさん。人情派の警部である。

「実はね。殺人現場からこんなメモが見つかったんだ。『ごはんはおかず』という詩なんだが、心当たりはないかな?」

「モクヒします!」

「あのねぇ。容疑者じゃないんだし、そんなに頑なにならなくても良いんだよ?」

「モクヒします!」

「ケーキ食べるか?銀座の洋菓子店から取り寄せたものだが。」

「モ、モク・・・!?」

「紅茶もあるぞ。私はコーヒーがだめでね。そのかわり紅茶にはちょっとうるさいんだ。」

強面のクマは、そう言ってウインクして見せた。

「・・・おいしい。」上品な生クリームの風味が口いっぱいに広がる。

(モクヒするの、やめようかなぁ。)


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:31:34.78 ID:qsRpQrbG0
どうにか黙秘を通し、帰宅できたのはその日の夜のことだった。

パトカーで家の前まで送ってもらうと、玄関先で妹の憂が待っていた。

「おねぇちゃん大丈夫!?ひどいことされなかった?」今にも泣きそうな顔をしている。

「大丈夫だよ~。うい~」

「本当に?」

「うん。お父さんとお母さんは?」

「海外から戻ってくるけど飛行機の都合で明日になっちゃうって」

「そうなんだ。仕方ないね。」

「・・・おねぇちゃん!私が身代わりになるからその間に高飛びして!」

「あはは。憂、ありがとね。心配しなくて良いよ」

翌日、再び警察に出頭した唯であったが、あまりにも頑なに黙秘するため一日だけ留め置かれることになってしまった。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:40:55.14 ID:qsRpQrbG0



「坊ちゃま、光彦坊ちゃま!起きてください!」

お手伝いの須美子が起こしにやってきた。いつまでたっても坊ちゃま呼ばわりは直らない。

「なんだい、須美ちゃん。徹夜で原稿を仕上げて疲れてるんだ。もう少し寝かせてくれよ。」

「もう、大奥様がお呼びですよ。」

大奥様と聞いたら眠気も覚めてしまった。

三十路過ぎにもなって嫁も貰わず、フリーのルポライターなどやってふらふらしているものだから母君には頭が上がらない。

応接間へ行くと、母の雪江未亡人の隣に、女子高生と思われる金髪の少女が座っていた。

透き通るような白い肌にキラキラとした大きな瞳を携えてこちらを見ている。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:48:16.51 ID:qsRpQrbG0
「光彦、お座りなさい。大事なお話があります。」

「はぁ。こちらのお嬢さんは?」

「こちら、琴吹紬さん、琴吹財閥のお嬢さんよ。くれぐれも失礼のないように。」

琴吹財閥といえば楽器店から製薬、食品、精密機器まで扱う大財閥である。

そのご令嬢がフリーのルポライターなどに何の用事かと思っていると

「浅見光彦さんですね?私の友達を助けてください!」と縋るような目で訴えた。

話を聞いてみると、友人が事件の重要参考人として連れて行かれてしまったのだという。

「光彦、あなたいつも探偵の真似事をしているでしょう?解決して差し上げなさい。」

簡単に言ってくれる。と思ったが雪江未亡人にそんなことが言えるはずもなく

「はぁ、やれるだけやってみます。」

としぶしぶ引き受けることにした。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:54:11.36 ID:qsRpQrbG0
「まず、この新聞記事を見てください。」スクラップブックを取り出して、紬が言った。

東京の郊外で起きた女性の焼死事件の記事である。

この事件なら今朝のニュースで見た。

被害者は淡路島在住の不破 喜美乃。東京に訪れた際に殺害されたらしい。

睡眠薬を盛られ、眠っているところにガソリンをかけて火をつけられたと書かれている。

「しかしなぜ、警察はお友達を重要参考人にしたのでしょうかねぇ」浅見が尋ねる。

「おそらく、これのせいだと思います。」

紬によると、殺人現場にこのようなメモが残されていたそうだ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:55:06.88 ID:qsRpQrbG0
ごはんはおかず

1番

ごはんはすごいよ なんでも合うよ ホカホカ
ラーメン うどんに お好み焼き これこれ
炭水化物と炭水化物の
夢のコラボレーション アツアツ ホカホカ

ごはんはすごいよ ないと困るよ
むしろごはんがおかずだよ
関西人ならやっぱりお好み焼き&ごはん

でも私 関西人じゃないんです どないやねん!

1・2・3・4・GO・HA・N!

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 22:56:43.22 ID:qsRpQrbG0
「なんでしょう。このナンセンスな詩は。」浅見は首を傾げた。

「これは、私たちのバンドの曲の歌詞なんです。」紬がうつむいて言う。

「なるほど、それで、この詩を書いたのが平沢唯さん。というわけですか」

「えぇ・・・」

「でも、だからといって女子高生を重要参考人になどと・・・」

雪江はここまで言ってはっとしたようである。

刑事局長をしている長男の陽一郎の手前、警察の悪口など言ってはいけないと思ったのだろう。

「それじゃあ光彦さん、頼みましたよ。それに、くれぐれもこのことで陽一郎さんの名前を出さないように。」

そう言い残すと応接間を出て行った。。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 23:08:13.90 ID:qsRpQrbG0
勝手なことばかり言って、と内心むっとしたが気を取り直して

「とにかく、まずはこの歌詞を書いたお嬢さんに話をきいてみたいですねぇ」と申し出た。

その数十分後、紬をソアラの助手席に乗せた浅見は警察署へ向かっていた。

面会を申し込んでみるが、今取調べ中だというのでしばらくたってから出直すことになった。

「それまで私の家に寄って行きませんか?」

「しかし、アポなしで伺って、ご迷惑になりませんか?」

「今はちょうど予定が空いていますから。浅見さんでしたら大歓迎です。」

「いや、しかし・・・」

「クッキーとマドレーヌもありますから!」紬の気迫に気圧されてたじたじになった浅見は琴吹家に呼ばれることにした。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 23:19:36.47 ID:qsRpQrbG0
「大きなお屋敷ですねぇ」浅見が感心したように呟くと

「そんなことありませんわ。さぁ、おあがりになって。」とすました顔で答える。

屋敷へ入ると、執事の斉藤が出迎えた。

「お嬢様、お客様をお連れで?」

「えぇ、こちら名探偵の浅見光彦さんよ。応接間は空いている?」名探偵と紹介されて、浅見は大いに恐縮した。

「空いております。ただいまお茶をお持ちしましょう。」胡散臭そうに浅見を一瞥しながら斉藤が言うと

「私がやります。斉藤は浅見さんをご案内してちょうだい。」そういうと紬は勝手のほうへ歩いていった。

「なんだか表が騒がしいようですが」長い廊下を歩きながら、浅見が尋ねると

「殺害された不破夫妻は淡路島にある琴吹財閥所有の別荘の管理人でしてね。こうしてマスコミが嗅ぎ付けてきているのです」

執事の斉藤が答えた。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 23:27:00.15 ID:qsRpQrbG0
ほどなくして、紬がティーセットを盆に載せて持ってきた。

それからふと思い出したように

「斉藤、お父様とお母様はいるかしら?」と尋ねた。

「奥様はお部屋にいらっしゃいます。旦那様は今日は戻られないそうです。」

「そう、お父様は今日もよそにお泊りなの・・・」そう答える紬はなぜか寂しそうだった。

しばらくくつろいだ後、そろそろ取り調べも終わっただろうと琴吹家を後にする。

面会へ行ってみると、平沢唯は以外にも元気そうだった。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 23:31:21.15 ID:qsRpQrbG0
「唯ちゃん大丈夫?ごはんは食べてる?」

「うん、ムギちゃん!来てくれてうれしいよ。あれ?その人は?」

「東京でルポライターをしている、浅見といいます。琴吹紬さんの依頼を受けました。」

「男なのにあさみさん?変なの~」ケラケラ笑っている。これなら心配なさそうだ。

例の詩『ごはんはおかず』について尋ねたが、これといった情報はなかった。

彼女は事件には無関係だ。浅見の探偵の勘がそう言っている。

「すぐに帰れるでしょうから、心配いりませんよ。」そう言い残して面会室を後にした。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/01(金) 23:43:05.17 ID:qsRpQrbG0



紬を家まで送り届けると、話を聞くため警察署に立ち寄った。

琴吹家の依頼で、と告げるとすぐに応接間へ通された。

どうやら紬が警察の方へ手回しをしてくれていたようだ。

沖警部という痩せ型の警部が対応してくれた。非常に迷惑そうな顔をしている。

「琴吹さんの依頼ということでしたな。」

琴吹家の名を出さなければこんな若造など相手にしなかった、とでも言いたげな口ぶりだ。

「はい。東京でルポライターをしている浅見です。」そう言って肩書きのない名刺を手渡した。

沖警部はしばらくその名刺を胡散臭そうに眺めていたが

「不破 喜美乃の焼死事件について、でしたかな?」とめんどくさそうに口を開いた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 00:25:00.18 ID:3AdSGZFx0 [1/16]
「えぇ。なんでも、被害者は琴吹財閥の別荘の管理人らしいですね。」

「ほぅ。よくご存知ですな。」

「えぇ。琴吹家で大体の話は聞いてきましたから。」

「その琴吹家ですがね、一部では琴吹社長を疑うムキもなくはないのです。」沖警部は声を潜めて言った。

「というと、琴吹社長に何か動機があるということですか?」

「ここだけの話、彼は女性に関して手が早いので有名でしてね。

 女優の花瀬ひとみ、アナウンサーの杉美佐なんかとも親密な関係を持っていたようです。」

「はぁ。」浅見はゴシップの類は好きではない。苦い顔をしていると

「実際のところ痴情のもつれで殺害した、と考える人間もいるわけですな。」と沖警部がしたり顔で言った。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 00:28:09.12 ID:3AdSGZFx0 [3/16]
「しかし、被害者の不破 喜美乃さんにはご主人はいらっしゃらないんですか?」

「そこなんですよ。実は夫の不破照人は一ヶ月前に事故死しとるんですな。」

「事故死、ですか?」

「これも一部の連中の話じゃ、琴吹社長と付き合うにあたって邪魔になったから殺害されたのじゃないかという話です。」

推測の話ばかりで、参考になりそうもない。浅見は話を本筋に戻した。

「捜査の進捗はどうですか?何か怪しい人物の目撃情報だとか、重要な証拠品だとかは見つかりました?」

「警察としても手は尽くしとります。捜査というものはそう単純ではないですからな。」

この様子だと、まだ成果は上がっていないのだろう。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 00:34:47.31 ID:3AdSGZFx0 [4/16]
「しかし、犯人はなぜこんな殺害方法を選んだのでしょうかねぇ」浅見が尋ねた。

「現場に残された詩になぞらえたつもりなんでしょう。」沖警部が自信満々に答える。

「しかし、焼き殺すとなれば準備も必要ですし、手間もリスクもかかります。もっと楽な方法がありそうですが。」

「さぁ、人殺しの考えることなど、わからんもんですからな。」そう言ったところで沖警部の携帯が鳴った。

「ちょっと失礼。・・・もしもし、何、淡路島で?同様のメモが?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 00:36:01.50 ID:3AdSGZFx0 [5/16]
今気付いたんだけど、これってけいおん!関係なくないですか?

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 01:19:18.07 ID:3AdSGZFx0 [6/16]
「ひょっとすると、不破照人さんの件ですか?」電話を切った沖警部に、浅見が尋ねる。

「うん、まぁ、そうですな」図星を突かれてたじろいでいる沖に、浅見が続けた。

「同様のメモ、というのは例の詩のことですよね?不破夫妻の一連の死は連続殺人の可能性が出てきたと?」

「参ったなぁ。浅見さん、あなたいったい何者ですか。」矢次ぎ早に繰り出される質問に沖は音を上げた。

「いえ、これはルポライターの勘、というやつでして」浅見は慌ててごまかした。身元を調べられてはかなわない。

「ふ~ん。まぁいいでしょう。まぁここまで知られたら隠しても仕方がない。ただしくれぐれも内密に頼みますよ。」

沖警部の説明によると、不破照人は管理する別荘の煙突内で焼死していたそうだ。

煙突掃除の最中に転落したものと見られている。そこへ妻が暖炉に火をくべてしまったらしい。

これは今まで事故として処理されていたのだが、現場の隅の方に例の詩が落ちているのが見つかっていたらしい。

そのときにはただの落書きだろうと見られていたのだが

今回の事件と照らし合わせると、同一犯の計画的犯行の可能性が出てくる。警察も再捜査をするという。

思わぬ収穫を手にした浅見は警察署を後にした。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 01:20:40.24 ID:3AdSGZFx0 [7/16]
その夜、紬に電話をかけ、今日の報告をした。

「淡路島へ行ってみようかと思います。」浅見は、紬にそう切り出した。

「まぁ、淡路島へ?」紬が意外そうに言う。

「昨日警察へ行って、少し気になることがわかりましてね。」

「もしかして管理人の不破照人さんの事ですか?確かあれは事故だったと」

「いえ、この二つには何かつながりがある。そんな気がするのです。」浅見は、確信にも似た何かを感じていた。

翌日の朝、紬が浅見家を訪ねてきた。なにやら張り切っている。

「プライベートジェットをチャーターしておきました。一緒に参りましょう」

「いや、お気持ちはありがたいんですが。僕は飛行機が大の苦手なのですよ」

「まぁ、意外。飛行機が怖いなんて。」紬は上品にクスクス笑った。

「少し遠いですが、高速に乗れば数時間で着けるでしょうし、一人で行ってきますよ。」

「そんな。私も一緒にドライブしたいです!」紬が唇を尖らせて抗議する。

「情報を得るためには、一人で動く方が都合がいいのです。必ず、いい報告を持って帰りますから。」

そう言うと紬は渋々承知した。

浅見は愛車のソアラを駆って、淡路島へ向かった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 01:25:13.93 ID:3AdSGZFx0 [8/16]
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
俺はけいおんスレを立てたつもりがいつのまにか濃厚な光彦スレになっていた
過疎だとか、不人気だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 01:49:55.38 ID:3AdSGZFx0 [9/16]


淡路島に着くと、早速琴吹家の別荘に向かった。

かなり大きな別荘だ。不破夫妻はここで住み込みの管理人をしていたらしい。

現場には立ち入り禁止のテープが張られていた。

そこにいた若い刑事に声をかける。

琴吹家の依頼で調査をしていることを話すと、簡単に中に入れてくれた。

豪華な家具調度品が並んでいる。

部屋の真ん中には大きな暖炉があり、煙突がまっすぐに伸びていた。

ここが『事故』の現場らしい。

調べてみたが収穫らしい収穫はない。

先ほどの若い刑事に話しかけた。時刑事というらしい。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 01:58:15.04 ID:3AdSGZFx0 [10/16]



淡路島に着くと、早速琴吹家の別荘に向かった。

かなり大きな別荘だ。不破夫妻はここで住み込みの管理人をしていたらしい。

現場には立ち入り禁止のテープが張られていた。

そこにいた若い刑事に声をかける。

琴吹家の依頼で調査をしていることを話すと、簡単に中に入れてくれた。

豪華な家具調度品が並んでいる。

部屋の真ん中には大きな暖炉があり、煙突がまっすぐに伸びていた。

ここが『事故』の現場らしい。

調べてみたが収穫らしい収穫はない。

先ほどの若い刑事に話しかけた。時刑事というらしい。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:01:00.20 ID:3AdSGZFx0 [11/16]
「どうです、何かありましたか?」浅見が尋ねると

「いえ、何しろ一ヶ月前の事故でしょう。証拠も何も残っていないんですよ」

「この事故は殺人の可能性があると言うことでしたが」

「仮にそうだとしても、突き落としの物証なんて残りっこありませんからね。聞き込みをしても、怪しい人物は目撃されていないし・・・」

こんな若い刑事一人で現場の捜査をさせ、一般人を簡単に入れてしまうのだから、再捜査など形ばかりのものだろう。

浅見は、時刑事に名刺を渡すと、運転の疲れを取るためソアラの車内で仮眠を取った。


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:03:28.91 ID:3AdSGZFx0 [12/16]
数時間後淡路署へ行き、受付で時刑事に話があると伝えた。

係のものにここで待つように、と案内されたのは取調室であった。

しばらくして、時刑事の代わりに大柄な刑事が取調室に現れ、宇佐警部と名乗った。

「あんた、事件のことをずいぶん嗅ぎまわっとるそうやな。」

「怪しいものじゃありません。ただ少し興味があっただけで」

「ふん、まぁええ。怪しいかどうかはあんたの素性を調べればすぐわかる。」

「家族は関係ありません。これは僕の個人的な趣味なのです。」

今まで顔色ひとつ変えなかった浅見が急に慌てだしたので大いに興味を引かれたようだ。

「ほう、家へ電話するとなんぞ不都合なことがあるんか」

この若造、なにかあるな、とにやにやしている。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:05:05.59 ID:3AdSGZFx0 [13/16]
そこへ、若い刑事が血相を変えて現れた。

「警部、ちょっと・・・」

「うん、うん・・・何やと!」

「浅見さん、さっきは大変失礼しました。署長のところへご案内します。」

どうやら、家へ電話して陽一郎のことを知ったらしい。

また、雪江未亡人のお叱りを受けることになるな、と思いながら署長室に向かった。

「これは浅見さん。私の部下が失礼しました。事件について調べていらっしゃるそうで」

署長はそう言いながら、後ろに控えていた刑事二人に退出を促す。

先ほどの警部は苦りきったような表情をして出て行った。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:06:53.10 ID:3AdSGZFx0 [14/16]
眠いよパトラッシュ・・・

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:23:04.84 ID:3AdSGZFx0 [15/16]
「さて、あなたは刑事局長の弟君ですからな。事件のことで答えられることでしたら、何でも答えましょう。」

署長は恩着せがましくそう言った。

浅見はそれを遮って

「いえ、もう犯人の目星はついているのです。

 つきましてはある人物の指紋を採取して、詩の書かれた紙と照らし合わせていただきたいのですが。」

「わかりました。ほかならぬ浅見さんの頼みですからな」

署長はまたも恩着せがましくそう言って、浅見の頼みを引き受けた。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/02(土) 02:30:48.86 ID:3AdSGZFx0 [16/16]


翌日、東京に戻った浅見はある人物を呼び出した。

「やはり、あなたが犯人だったのですね」

浅見はほう、とため息をついてそう言った。

呼び出された男・・・執事の斉藤はうなだれたまま、答えようとしない。

「ずっと奇妙に思っていたのです。初めてあなたに会ったとき、あなたは

『殺害された不破夫妻は』とおっしゃいました。その時不破照人さんの死は事故として見られていたのにもかかわらず、です。」

「しかし、現場に同じ詩が残されていたのでしょう?」苦し紛れに斉藤が答えた。

「ええ。でも淡路島の事件では、例のメモのことはまだ一般に公表されていないのですよ」

「・・・・・・」斉藤はうつむいたまま、何も答えない。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 03:06:23.19 ID:3AdSGZFx0
「詩の書かれた紙に付着した指紋が、あなたの指紋と一致したそうです。すぐに警察の取調べを受けることになるでしょう。」

浅見が追い討ちをかけた。

「・・・あの夫婦は旦那様が別荘に女性を連れ込んでいる現場をあらかじめ仕込んでいたCCDで撮影し、それをネタに強請ろうとしたのです」

斉藤は観念したのだろう。そう、ぽつぽつと話し始めた

「私はある男に依頼して、不破夫妻の殺害を依頼しました。

 なるべく自然に、事故に見せかけるようにと。その間のアリバイを作り、不破照人の殺害は成功しました。

 しかし、運悪く不破 喜美乃に逃げられてしまいました。その後、喜美乃はこのことをばらされたくなかったらと強請りをかけてきたのです。

 今度は私の手で葬らなければ、そう思いました。」

「それで、東京でのあの事件ですか。」

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 03:08:22.24 ID:3AdSGZFx0
「ええ。しかし、あの事件では私のアリバイは作れませんでした。」

「そこで、あの詩を置いていったわけですね」

「あの詩は、たまたま屋敷の廊下で拾って、そのままポケットに入れていたのです。これを使わない手はない、そう思いました。」

「あなたがあの妙ちきりんな詩を現場に残したのは二つの意味があったのですねぇ」浅見が言った。

「ひとつは、二つの事件が詩に見立てた同一犯によるものだと錯覚させること。

 もうひとつは事故に見せかけた不破照人さんの死を、殺人だと気付かせること。

 こうすれば、少なくとも照人の事件に関してアリバイのあるあなたが疑われることはなくなると考えたのでしょう。」

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 03:09:37.43 ID:3AdSGZFx0
「私には琴吹家の名誉のためなら何でもする覚悟です。あのような者には当然の報いです。」

「しかし、あなたのやりかたは褒められたものではありません。」

「私にとっては琴吹家が全てなのです。そのためなら殺人も厭いません。」

「しかし、あなたのために何の罪もない娘さんが苦しんだのですよ。」

浅見はきっと相手を見据えてこう言った。

「紬お嬢様のご学友に容疑がかかるようなことがあれば、すぐに自首するつもりでした。」

斉藤はうなだれて答える。

しばらくして、先ほどの警部がやってきた。部下の刑事も一緒だ。

「おい、ワッパをかけておけ。浅見さん、ご苦労様でありました。」そう言って、ものものしく敬礼した。

浅見も敬礼を返したが、その顔は晴れやかなものではない。

閑静な住宅街にパトカーのサイレンだけがいつまでもこだましていた。

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 03:10:26.94 ID:3AdSGZFx0
エピローグ

光彦が桜ヶ丘高校を訪問すると、部室には軽音部の五人が勢ぞろいしていた。

「浅見さん、ですよね?唯先輩を助けていただいてありがとうございました!」中野梓が頭を下げた。

「お礼には及びません。唯さん、その後すぐに釈放されたようでよかったですねぇ」

「えへへ、おかげさまで!ケーキおいしかったなぁ~」本人は事件のことはあまり気にしていないらしい。

「浅見さんのおかげです。本当にありがとう。斉藤のことは残念でしたが・・・」紬は涙ぐんでいる。

琴吹家にはその後いろいろあったようだが、裏で手を回して揉み消したらしい。

「あ、あの、どうもありがとう・・・」秋山澪が恥ずかしそうにこちらを見上げている。

「なんだ?澪のやつモジモジして。もしかして浅見さんに惚れたのか~?」その様子を田井中律が冷やかす。

「バ、バカ!何言って・・・」慌てた澪が律の頭を小突いた。

にぎやかな娘たちだ。この5人なら何があっても大丈夫だろう。

去り際に「あさみさん!ありがと~!」と唯が快活に手を振った。

浅見も笑顔で手を振り返す。うららかな午後だった。

吸いかけたタバコをポケットに押し込むと、唯たちのバンドの演奏を背に、桜ヶ丘をあとにした。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 03:12:42.28 ID:3AdSGZFx0
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
俺は伸びないスレを落とすつもりがいつのまにか書ききっていた
気合だとか、根性だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)