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憂「おーい、クソメガネ~」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:00:17.97 ID:D2P/LPVb0 [1/94]
和「ちょっと……学校ではそう呼ばないでって言ってるでしょ」
憂「あれれー、それが人にモノを頼む態度?」
和「え……」
憂「人にお願いするときは、なんて言えばいいのかな?
頭のいいクソメガネさんなら分かるよね?」
和「が……学校では、その呼び方はやめてください……
お願いします……」
憂「うーん、言葉だけじゃなあ……態度がなぁ」
和「え、ど、どうしたら……」
憂「土・下・座……」
和「っ……」
和「ちょっと……学校ではそう呼ばないでって言ってるでしょ」
憂「あれれー、それが人にモノを頼む態度?」
和「え……」
憂「人にお願いするときは、なんて言えばいいのかな?
頭のいいクソメガネさんなら分かるよね?」
和「が……学校では、その呼び方はやめてください……
お願いします……」
憂「うーん、言葉だけじゃなあ……態度がなぁ」
和「え、ど、どうしたら……」
憂「土・下・座……」
和「っ……」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:04:44.74 ID:D2P/LPVb0
憂「ほらぁ早くしなよ。人来ちゃうよ?」
和「でも、こんなとこで……
せめて人の来ないような場所で」
憂「別にどこだって一緒でしょ。
ホラ早く土下座しなよ、いつもみたいにさぁ」
和「きょろきょろ」
憂「誰もいないからとっととやれっつってんの」
和「……」
憂「ほら、早く……」
和「う……」
澪「あれ、憂ちゃんに和。何やってんだ?」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:09:45.84 ID:D2P/LPVb0
憂「あ、澪さ~ん!
実は今、和さんに相談聞いてもらってたんですー」
澪「相談?」
憂「あーいや大したことじゃないんで気にしないでください!
和さん、朝早くから呼び出したりしてごめんなさい、
相談乗ってもらえてとっても助かりました!」
和「あ、ええ……
相談くらいなら、またいつでも乗るわ……」
憂「ほんとですか、ありがとうございますー」
キーンコーンカーンコーン
澪「あ、やばチャイム鳴った」
憂「私教室戻りますね、失礼します」たたっ
澪「おう、急がないと遅刻になっちゃうぞー」
和「それは私たちも同じよ……
さ、早く教室に行きましょう」
澪「うん」
和「……」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:14:46.53 ID:D2P/LPVb0
昼休み。
澪「和ー、お昼食べよ」
和「ええ」
澪「今日のお弁当はサンドイッチなんだー。和は?」
和「なにかしらね……」ぱかっ
澪「何?」
和「……」
澪「どうした? 何が入ってたんだよ」
和「ごめんなさい、ちょっと用事思い出したわ。
生徒会室行ってくるね」たたっ
澪「えっ、ちょっと和……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:19:47.38 ID:D2P/LPVb0
生徒会室。
ガラッ
和「……」
憂「あ、やっと来た。待ちくたびれたよ」
和「お弁当……あれ憂がやったの?」
憂「そうだよ。どうだった、砂弁当の味は」
和「食べられるわけないでしょ……」
憂「えー、どうして?
せっかくお母さんが朝早く起きて作ってくれたお弁当だよ?
食べなきゃもったいないじゃん」
和「……」
憂「あのお弁当はどうしたの?」
和「捨てたわよ……お弁当箱も洗った」
憂「へー、捨てたんだー。
じゃあお母さんに言ってあげないとね。
和さんはお弁当を捨ててまーす、って」
和「お、親は関係ないじゃない……」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:24:50.54 ID:D2P/LPVb0
憂「関係ありありだよ。
お母さんが作ったお弁当なんだからさ」
和「……」
憂「ああ、どう思うかなー……
娘のために一生懸命作ったお弁当を
毎日毎日ゴミ箱に捨ててた、ってお母さんが知ったら」
和「やめて……」
憂「『やめてくださいお願いします』……でしょ」
和「……やめてください、お願いします」どげざっ
憂「へえ、今度は素直に土下座するんだね。
やっぱり私たち以外に誰もいないから?」
和「……」
憂「ていうかムカツクんだよねー、そういうの。
土下座さえすれば見逃してもらえると思ってる感じがさー」
和「そ、そんなこと……」
憂「いやいや、そう思ってるでしょ。
だから私が何も言わなくても自発的に土下座したんでしょ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:29:52.77 ID:D2P/LPVb0
和「……」
憂「安いんだよねー、あんたの土下座は」
和「じゃ、じゃあどうすれば……」
憂「まだ頭上げていいって言ってないでしょ」ふみつけっ
和「あぐっ……」
憂「どうすれば許してもらえるかは自分で考えれば?
頭いいんでしょ?
この前の模試でも全国の成績上位者にランクインしてたんでしょ」ぐりぐり
和「あ、ぅぅ……」
憂「それとも教科書の問題しか解けないのかな、
この脳みそは」ガッ
和「痛っ!」
憂「はーあ、まったくもう……顔上げていいよ」
和「う……」↑
憂「ああやっぱり上げないで。
あんたの顔見てると腹立ってくるから」
和「……」↓
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:34:52.20 ID:D2P/LPVb0
憂「あ、そうだ、お金貸してよ。
10000円でいいからさー」
和「そ、そんなに持ってない……」
憂「はあ? いつも2、3万は持ち歩いとけっていったでしょ?」
和「もう口座のお金もなくなっちゃって……」
憂「えー、もうシケてんなー。
じゃあ良いよ、あるだけでいいから」
和「……今3000円しかないわ」
憂「それでいいから早くよこせって言ってんの」
和「わ、分かってるわよ……はい」
憂「ふん、まあ今日は3000円でいいけど……
ちゃんと金の工面しといてよ、親の財布からパクるとかさー」
和「そ、そんなことできないわ」
憂「できるかできないかじゃないの。やるの。
分かった?」
和「……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:39:53.66 ID:D2P/LPVb0
憂「返事は?」
和「わかったわ……できるだけ努力してみる……」
憂「じゃあそういうことで頼むよ。
今日はもういいあらさっさと教室戻りなよ。
今度は今日足りなかった分もあわせて3万ね」
和「えっ、そ、そんなに……」
憂「3万ね!」
和「……分かった」
憂「分かったらとっとと帰ってよ。
私はここでお昼食べてから教室戻るから」
和「ええ……じゃあね」
ガチャバタン
和「はあ……」
澪「……和」
和「っ!」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:44:54.29 ID:D2P/LPVb0
澪「ごめん……盗み聞きなんてして……」
和「な、なんで……」
澪「様子がおかしかったから、心配でついていったんだ……
そしたらお弁当捨てたりお弁当箱洗ったりしてるし、
これはタダゴトじゃないなって思って」
和「……」
澪「生徒会室にいたの……憂ちゃんだよな」
和「ええ」
澪「和のお弁当にいたずらしたのも憂ちゃん……」
和「……そうよ」
澪「もしかして今朝のも……」
和「ご明察ね……おかしいでしょ、
私、年下の幼馴染にいじめられてるのよ……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:49:55.16 ID:D2P/LPVb0
澪「……なんで、こんなこと」
和「こっちが聞きたいくらいよ」
澪「え……
理由は分からない、のか」
和「分からない……いや、存在しないんでしょうね。
いじめなんてそんなものじゃないかしら……
ただ気に食わないから、あいつは自分より弱いから……
そんな単純な理由よ、きっと」
澪「……」
和「理由もきっかけもない……
ずっと昔から私たちはこういう関係だったの」
澪「そ、そんなの酷すぎるよ」
和「もう仕方ないわ……
私では憂に対して何もできない。諦めたからもういいの」
澪「あ、諦めちゃダメだ……!」
和「澪……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:54:55.54 ID:D2P/LPVb0
澪「私も……いじめられたことあるから分かるんだ。
諦めるのは一番ダメな選択肢だって」
和「……」
澪「諦めるってのは耐えるってことじゃない。
耐えることすら放棄して、
自分の心を殺すってことなんだ」
和「心を殺す?」
澪「そう、心だけが死んだ……いわば『半分死人』。
なんかのアニメでやってた」
和「なにそれ。
私冗談を聞きたいんじゃないんだけど」
澪「い、いや冗談なんかじゃないって……
とにかくそんな状態になる前にどうにかしようよ、
私も力になるからさ」
和「力になるって……どうやって?
いじめられたことがあるんなら分かるでしょ?
第三者にどうにか出来ることじゃない、って」
澪「そ、それは確かにそうかも知れないけど……
でもとにかく独りで耐えるなんてダメだよ、
何か私に出来ることがあったら……」
和「……ありがとう、その気持ちだけでも嬉しいわ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:59:56.92 ID:D2P/LPVb0
澪「和……」
和「大丈夫よ。私は澪が思ってるほど弱くはないわ。
いつかこれが終わる時まで耐え切ってみせるから」
澪「そ、そんなの……」
和「私のことを心配してくれるなら余計なことはしないで。
これだけはお願いよ」
澪「わ、分かった……
でも耐えきれなくなったらいつでも言ってくれ」
和「ええ……」
キーンコーンカーンコーン
和「チャイムが鳴ったわ。
そろそろ戻りましょう」
澪「ああ……」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:05:01.58 ID:D2P/LPVb0
放課後。
澪「じゃあ、私軽音部行くね」
和「ええ、また明日」
澪「あの……憂ちゃんのこと……」
和「大丈夫よ、心配しないで。
今はまだ耐えていられるから……」
澪「う、うん……」
和「ほら、早く行きなさい。
みんな待ってるんじゃない?」
澪「うん、じゃあまた明日。ばいばい」
和「ばいばい」
和「……」
和「……」
唯「♪~」
和「おいちょっとそこの池沼」
唯「ひっ」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:10:02.06 ID:D2P/LPVb0
和「いつ見てもアホ丸出しの顔してるわね」
唯「ご……ごめん」
和「何その口の聞き方。
『申し訳ありません』……でしょ」
唯「も、もうしわけありません……」
和「まったく、これだから池沼は。
あんたもう帰るの?」
唯「いや、これから……部活」
和「あっそう。じゃあその前にちょっとツラ貸しなさいよ」
唯「は、はい……」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:15:02.61 ID:D2P/LPVb0
体育館裏。
和「……」
唯「あ、あの……私、早く部活行かなきゃ」
和「なに? 私より部活の方が大事なわけ?
あんた自分の立場わかってんの?」
唯「あう……」
和「実は今月ちょっと金欠なのよね。
金貸してくれない?」
唯「ええ、でも……私ももうお金ないよ……」
和「はあ? いつも2、3万は持ち歩いとけっていったでしょ?」
唯「ご、ごめ……もうしわけありません」
和「はあ、じゃあもういいからあるだけちょうだい」
唯「ほ、ほんとにもうなくって……
今500円しか持ってない……」
和「500円ってガキじゃないんだから……
まあ池沼にはお似合いかしらね」
唯「う……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:20:03.27 ID:D2P/LPVb0
和「まあ、足りない分は体で払ってもらうことにするわ」
唯「か、からだでって、どういうこと……」
和「こういうことよっ!」ボカッ
唯「あ、ぐっ……!」
和「うずくまるんじゃないわよ!」ドスッ
唯「ぐぇぁ」
和「ほらもう一発!」ドゴッ
唯「うげっ……うげええええろげろげろ」
和「うわ、ゲロ吐くとか最低……
ちゃんと掃除しときなさいよ」
唯「うえっ……げほ、げほ……」
和「まだ終わってないわよ」ゲシッ
唯「あだっ!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:25:04.42 ID:D2P/LPVb0
和「この池沼、池沼~」ゲシッ ゲシッ
唯「いたい、いたいよぉ、やめてえ……」
和「オラァ!」ボカーン
唯「いぎゃっ……ううう……」
和「はー、スッキリした。
これがないと毎日やってらんないわねー。
ストレス解消にはもってこいだわ」
唯「ううぅ」
和「じゃあ私、生徒会室行くから。
明日はちゃんとお金持ってくるのよ。分かった?」
唯「は、はい……」
唯(毎日毎日カツアゲに暴力……
もう耐えられないよ……)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:30:05.87 ID:D2P/LPVb0
その夜、平沢家。
憂「おねえちゃーん、晩ご飯できたよー。
今日はお姉ちゃんの好きなイワシの梅しょうが煮込みだよー。
デザートはココアのシュークリームだよ」
唯「うん……」
憂「どうしたの、お姉ちゃん。元気ないね」
唯「そ、そんなことないよお……
わーおいしそーだなーいただきまーすー」
憂「お姉ちゃん、なんか変だよ?
何かあった?」
唯「な、なにもないよ」
憂「そう……?」
唯(憂に相談してみようと思ったけど……
いざしようとするとなかなか切り出せないなぁ……
ていうか和ちゃんと憂は幼馴染で友達なんだし、
私がこんなこと言ったら二人の仲も壊れちゃうよね)
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:35:06.98 ID:D2P/LPVb0
唯「あ、そうだ憂」
憂「なに?」
唯「お金……くれないかな」
憂「また? この前もあげなかったっけ」
唯「こ、この前のはあれだよぉ……軽音部でお金が要ったから……」
憂「今度のは?」
唯「えと、家庭科の調理実習の……」
憂「分かったよ、あとであげるね。いくらいるの?」
唯「さんまn……3000円でいいや」
憂「3000円?
調理実習でそんなに必要なの?」
唯「あーいやあれだよ、私が班のリーダーでさぁ、
最初に私が一括で払ってあとからみんなに返してもらうっていう……」
憂「ふうん……」
唯(あっ疑われてる……)
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:40:08.28 ID:D2P/LPVb0
憂「お姉ちゃん、ほんとに何も無いの?
なんか最近おかしいよ?」
唯「ほ、ほんとに何もないってばぁー……
調理実習あるんだって、ほんとにほんと」
憂「じゃあメールで律さんに聞いていい?
調理実習あるかどうか」
唯「えっ」
憂「あるんなら聞いても問題ないよね?」
唯「う……」
憂「メール送るね」ぴっぴっぴっ
唯「あ、だ、ダメ……!」がたっ
憂「なんで止めるの?」
唯「うう、ごめんなさい……
調理実習は嘘なの」
憂「お姉ちゃん……
じゃあどうしてお金なんか」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:45:10.03 ID:D2P/LPVb0
唯「それは……、…………」
憂「言えない理由なの?」
唯「う、うう」
憂「お姉ちゃん」
唯「うっ、ひっぐ……ごめんなさい、ごめんなさい……
毎日お金持って来いって言われててぇ……」
憂「な、なにそれ、どういうこと?」
唯「持ってかなかったら……
蹴られたり殴られたりして……もうやだよぉ、助けて憂……」
憂「お……お姉ちゃん……」
唯「ぐすっひっぐ」
憂「ごめんね、気づいてあげられなくて……
お姉ちゃんがそんな酷い目にあってたなんて……」
唯「ううう……」
憂「誰にやられたの? 同じクラスの人?」
唯「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:50:10.86 ID:D2P/LPVb0
憂「言えないの?」
唯「い、言えないよ……」
憂「お願い、言って。
私が何とかしてあげるから」
唯「で、でもぉ……」
憂「お姉ちゃんだってもうこんなの嫌なんでしょ。
ほら……」
唯「う……」
憂「……」
唯「……」
憂「……」
唯「……和ちゃん」
憂「の、和さん?
和さんにカツアゲされてたの!?」
唯「うん……」
憂「あんのクソメガネ……!」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:55:11.28 ID:D2P/LPVb0
唯「う、うい?」
憂「ああいやなんでもないよー。
でも和さんがお姉ちゃんにそんなことしてたなんて……
いつから始まったの?」
唯「高校入った頃くらいかな……
そのときはまだ要求される金額は少なかったし
落とし玉貯金を切り崩して払ってたんだけど……」
憂「そ、そんなに前から……
気づけなくてごめんなさい、お姉ちゃん……
つらかったよね……」ぎゅっ
唯「うう……」
憂「でももう大丈夫……私がついてるから。
明日、私が和さんと話つけてくるから」
唯「だ、だめだよぅ……
そんなことしたら私、余計にヒドイことされちゃう……」
憂「大丈夫だって言ったでしょ。私に任せて。
お姉ちゃんが安心して学校行けるようにしたげるから」
唯「う、うん……」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:00:11.83 ID:D2P/LPVb0
翌日、学校、校舎裏。
憂「あ、やっと来た……遅いよ」
和「ごめんなさい、日直の仕事があって」
憂「私より日直のほうが大事なんだ?」
和「いや、そういうわけじゃ……」
憂「で、今日はお金持ってきたの?」
和「持ってきたわ……親の目を盗んで財布から抜いてきた」
憂「うっわー、ホントにやったんだー。
親の金盗むとか人として最低だね……」
和「……」
憂「じゃあ早く頂戴」
和「……はい、3万円」
憂「3万? 足りないよ」
和「えっ……でも昨日は3万って」
憂「あんたが今までお姉ちゃんから巻き上げたお金……
それも全部返してくれないかな?」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:05:12.13 ID:D2P/LPVb0
和「な……なんでそれを」
憂「お姉ちゃんから聞いたよ?
毎日のようにカツアゲしては暴力を振るってたんだって?」
和「そ、そんなの……唯のでまかせよ」
憂「ふーん……お姉ちゃんの体見たら
いっぱいアザとか付いてたんだけど」
和「……」
憂「ふふ……ねえ、このこと先生に言ったらどうなると思う?」
和「や、やめて……!」
憂「『やめて下さいお願いします』……でしょうが」
和「や、やめて下さい……お願いします……」どげざ
憂「ふん、無様……無様すぎるよ。
まーあんたにはその格好がお似合いだよね。
私に何もやり返せないで
お姉ちゃんに八つ当たりするようなゴミクズさんにはさ」ぐりぐり
和「あ、うぐ……」
憂「で、お姉ちゃんからいくら巻き上げたの?」
和「覚えてない……」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:10:11.96 ID:D2P/LPVb0
憂「はあ? 頭いいんでしょ?
それくらい覚えときなさいよ!」ガッ
和「あだっ……」
憂「お姉ちゃんを今まで何発殴ったの?」
和「分からない……」
憂「あーもう、さっきから覚えてないだの分からないだの……
じゃあこの頭はなんのためについてんのさっ!」ドカッ
和「ぐぎゃっ!」
憂「ったく、胸糞悪いな……
いい? 次お姉ちゃんに手出したら……どうなるかわかってるよね」
和「う……」
憂「じゃあ私もう教室いくから。
また、放課後にね」
和「……」
キーンコーンカーンコーン
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:15:11.96 ID:D2P/LPVb0
教室。
和(まさか唯が憂にチクるとは思わなかった)
澪「あ、和。おはよう」
和(クソ……唯の前じゃ私と憂は普通の幼なじみの関係だし
憂のことを想って黙っているだろうと踏んだけど……甘かったか。
所詮池沼は池沼ね……)
澪「和? おーい」
和(もうこれで唯を殴ることは出来ない……
ったく、どうやってストレス発散しろっていうのよ)
澪「どうした? 具合悪いの?」
和(あの憂も今以上に私に対しての暴力や嫌がらせを
激しくしてくることは目に見えてる……
あいつさえいなけりゃ……クソ、クソッ)
澪「のーどーかぁー」
和(うっせーな聞こえてるっての)
「ああごめんなさい、澪。ちょっと考え事してて」
澪「あ、そうだったんだ。
ごめんね邪魔して」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:20:11.56 ID:D2P/LPVb0
和「で、何?」
澪「ああ、一時間目移動教室だよ。
みんなもう行っちゃったぞ」
和「あら、ほんとね……気付かなかったわ」
澪「私たちも早く行こう、和」
和「ええ、そうね……」
澪「和?」
和「……」
澪「どうしたんだよ、和……
まさかまた憂ちゃんに」
和「……ええ、まあね。
まあいつものことだし……」
澪「和……」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:25:12.61 ID:D2P/LPVb0
和「澪は別に心配してくれなくていいわよ」
澪「いや心配だよ……
昨日も言ったけどさ、私に出来ることなら力になるから。
遠慮せず、何でも言ってくれ」
和「ほんとに?
ほんとになんでもしてくれる?」
澪「もちろんだよ、トモダチじゃないか」
和「ほんとにいいのね?」
澪「ああ、和のためならなんでもするよ」
和「じゃあ一発殴らせて」
澪「は?
……え?」
和「聞こえなかった?
一発殴らせて欲しい、って言ったんだけど」
澪「いや聞こえたけど……意味が分からない……
なんで殴るんだ、和が、私を」
和「力になってくれるんじゃないの?」
澪「で、でも……そんなこと」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:30:14.03 ID:D2P/LPVb0
和「トモダチっていうのは嘘なの?」
澪「そ、そんなことないけど……
なんで殴るなんてことになるんだよ、意味が分かんないよ」
和「いいからおとなしく殴られなさいよ!」
澪「ひっ」
和「そう、そんなふうにおとなしくしてればいいのよ。
じゃあいくわよ」
澪「や、やめ……」
和「ふん!」ボコッ
澪「うっ、ごぇっ……くはっ」
和「ふう……大体あんたウザイのよね……
力になる、とかトモダチだとか綺麗事ばっか言って……」
澪「ううっ、かはぁ、はぁ」
和「自分もイジメられた経験あるから、ってことで
仲間意識持たれてもキモいだけなのよね」
澪「の、ど、か……」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:35:15.78 ID:D2P/LPVb0
和「何よ、その目……
生意気ね、在日のくせに」
澪「なっ……なんでそれを」
和「ふん、先生に頼まれて書類を整理してたときに見ちゃったのよ。
秋山澪が在日だったなんて……
ファンの子たちや、軽音部のみんなが知ったらどう思うかしらね」
澪「や、やめて……
それだけは……言わないで……」
和「言わないでください、でしょ!」ガスッ
澪「ぐはっ!」
和「ふふ、初めて唯を殴った日を思い出すわ」ボカッ
澪「唯にも……こんなことを」
和「ええ、高校入ってすぐだったかしら。
でも唯はもう使えなくなっちゃったから」ドカッ
澪「いだっ」
和「代わりに澪を使うことにするわ」バコッ
澪「ぐっ……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:40:16.75 ID:D2P/LPVb0
和「さて、そろそろ移動しないと1時間目に間に合わないわね」
澪「うう……」
和「いい? このことを誰かに漏らしたりしたら……
澪が在日だってのを証拠付きで全校生徒にばらすわよ」
澪「……」
和「じゃあ私移動教室行くね」
澪「の、和……」
和「何?」
澪「その……憂ちゃんのことは」
和「私の前でその話をしないで!」バチコーン
澪「ぶぎゃぁ!」
和「そうだ、昼休み、生徒会室に来なさい。
今の続きをしてあげるから」
澪「っ……」
和「返事は?」
澪「はい……」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:45:21.52 ID:D2P/LPVb0
放課後、音楽室。
ガチャ
澪「ごめん、遅れちゃって……」
律「遅いぞ澪ー」
紬「すぐお茶入れるわね」
梓「練習しないんですかあーぁ」
唯「あー澪ちゃん、お昼休みどこ行ってたの?
みんなでお昼ごはん食べよーねって昨日約束したじゃん!」
澪「え、あ、昼休みな……ごめん、
ちょっと急に先生に呼ばれちゃってさ……」
律「そうだったのか?
それじゃー仕方ないな」
紬「明日は一緒に食べましょうね」
澪「うん……」
唯「約束だよー」
澪(ごめん……多分明日も無理だ)
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:50:16.74 ID:D2P/LPVb0
澪(和……友達だと思ってたのに……
ただ力になりたかっただけなのに……)
澪(私が間違っていたのかな……
和は私がウザイって……)
澪(和にあんなに殴られるなんて……
怖かった……殺されるかと思った……
でも私が怒らせちゃったから……)
澪(誰かに言ったら私が在日だってこと
みんなにバラされちゃう……
そんなことになったら、
軽音部はもう今までみたいにやっていけないよな……)
梓「……澪先輩、どうしたんですか?」
澪「え、いや、なにが?」
梓「なにが、じゃないですよ。
澪先輩……泣いてるじゃないですか」
澪「え……」
唯「あ、ほんとだー。澪ちゃん泣いてる」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:55:17.06 ID:D2P/LPVb0
律「な、なんだよ。
何があったんだよ、澪」
紬「悲しいことでもあったの……?
良かったら話してくれないかしら」
澪「あ……み、みんな……ぐすっ」
(……おかしいな、泣いてるって自覚したら
急に喉の奥が熱くなってきた……)
唯「よしよし」
澪「うう、ゆい~……うええぇぇぇん、びええぇぇぇん」
梓「ただごとじゃない泣きっぷりですね」
律「ほんとになにがあったんだ」
澪「ううううう、ひっぐぐすん」
紬「話してくれるのは
ゆっくり落ち着いてからでいいから……
今は私の胸で泣きなさい!」
澪「うう、むぎぃぃぃ!」
紬「澪ちゃん!」ひっし
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:00:21.28 ID:D2P/LPVb0
数分後。
律「泣き止んだか?」
澪「うぅ……うん」
紬「どうして急に泣き出したり……」
澪「な、なんでもないよ……
ごめんな、心配かけて。ほんとになんでもないから」
律「バーカ、なんでもない奴がいきなり泣いたりするかよ」
梓「そうですよ澪先輩、
なんでもないなんてことないくらい見たら分かります」
律「私たちに話してくれよ。
何か悩んでるんなら、力になるからさ」
紬「そうよ澪ちゃん、私たち友達じゃない」
澪「……」
(和『ふう……大体あんたウザイのよね……
力になる、とかトモダチだとか綺麗事ばっか言って……』)
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:05:20.48 ID:D2P/LPVb0
澪「いいよ、ほんとに……大丈夫だから……」
律「バカ澪!」
澪「!」
律「私たちは友達だぞ、親友だぞ。
親友が泣いててほっとけるわけないだろ。
私たちはお前のこと本当に心配してるんだからな。
『大丈夫だから』なんて言われてハイソウデスカってわけにいくかよ」
紬「そうよ、澪ちゃん。
遠慮なんかしないで私たちを頼っていいのよ」
澪「で……でも」
(和『秋山澪が在日だったなんて……
ファンの子たちや、軽音部のみんなが知ったらどう思うかしらね』)
梓「そんなに言えないようなことなんですか」
澪(言えるわけがない……
ここで全部打ち明けてしまったら、
みんなと和との仲は壊れてしまうし……
それに私が在日だってことも……)
唯「……」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:10:20.60 ID:D2P/LPVb0
唯「澪ちゃん」
澪「なに?」
唯「もしかして和ちゃんのこと……?」
澪「!」
律「のどか? 和がどうかしたのか?」
澪「ゆ、唯……なんで、知って……」
唯「なんとなく重なって見えたから……
私と、今の澪ちゃんが」
澪「あっ……そうか、唯も……和に」
唯「……うん」
梓「なんなんですか?
話がぜんぜん見えませんよ」
唯「……みんな、聞いて。
実は、和ちゃんは……」
澪「や、やめてくれ!」
唯「澪ちゃん?」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:15:22.26 ID:D2P/LPVb0
澪「い、言わないでくれ……
もしみんなにバラしたら、私は……」
唯「もしかして和ちゃんに脅されてるの?」
律「脅されてる? どういうことだ?」
紬「和ちゃんと何があったの?」
澪「う……」
唯「言おう、澪ちゃん。
このままじゃなにも変わらない……
ただ耐えるだけの毎日を送ることになる」
澪「でもっ」
唯「澪ちゃんには私と同じような道を歩んでほしくない……
それに、和ちゃんに何かされても、酷い目にあわされても、
私が……いや、私たちが守ってあげるから」
律「そうだよ、澪。
何があっても私たちは澪の味方だ」
紬「親友のためなら何だってするわよ」
澪「み、みんな……」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:20:23.63 ID:D2P/LPVb0
梓「それで和先輩と何が……」
唯「……澪ちゃんは和ちゃんにいじめられてた。
そうだよね、澪ちゃん」
澪「うん……
いじめられてたって言っても
今日初めてだったんだけど」
律「い、いじめられてたって……」
唯「実は私も高校入った時からずっと
和ちゃんにいじめられてたんだ。
毎日のように蹴られ殴られ金を取られ……」
澪「私も似たようなことされたよ」
梓「そんな、ひどい……」
紬「どうして言ってくれなかったの?」
唯「言ってもしょうがないと思ったから……
でももう大丈夫だよ、
憂が話つけてくれたみたいだから」
梓「でも……それでいいんですか?」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:25:23.84 ID:D2P/LPVb0
律「そうだ、梓の言うとおりだ……
私は今ハラワタが煮えくりかえっている。
唯や澪の言ったことが本当なら、
私は和のことを一生許さねえ!」
紬「私も同意見よ、りっちゃん!」
梓「私もです!」
律「よし、今から和んとこ殴り込みに行くぞ!」
紬梓「おう!」
澪「ええっ!」
律「澪はここで待ってろ、
私たちがきっちり話つけてきてやるから」
澪「いやいやいやマズイからそういうの……」
律「いくぞみんな!」だだっ
紬梓「おー!」だだっ
澪「ちょ、ま、待ってぇー!」
唯「私も行くよ」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:30:26.85 ID:D2P/LPVb0
生徒会室。
ガチャ
律「おう、和いるか?」
和「いるけど」
律「お前一人だけか、都合いいな」
梓「ですね」
紬「ね」
和「……軽音部全員で、何か用?」
律「何か用、だと?
お前、澪に酷いことしてくれたらしいな」
和「…………」じろり
澪「ひっ」
梓「どうなんですかっ、和先輩」
和「ええ、したけど?
殴ったり、蹴ったり、踏みつけたり。
あとはお金を持ってくるようにも言ったわね」
律「お前……!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:35:31.06 ID:D2P/LPVb0
唯「和ちゃん……」
和「澪はあなたたちに全部言っちゃったのね。
ならいいわ、こっちにも考えがあるもの」
律「なんだよ、考えって」
和「実は澪はね……」
澪「や、やめてくれ和、それだけは……やめて……」
和「なんで?
誰かに言ったら私はあなたの秘密をばらす……
そういう約束だったわよね?
ばらされたくなかったら黙ってればよかったのに」
紬「それはただの脅迫よ。正当な取引とは言えないわ」
和「そうね、取引が正当じゃないなら
私は初めから黙ってなくても良かったってことよね」
澪「なっ……」
和「ふふ、みんな、よく聞きなさい」
澪「やめっ……やめてっ」
和「澪はね……なんと在日朝鮮人なのよーっ!!」ズババーン
澪「やめてくれええぇぇぇっ!」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:40:33.45 ID:D2P/LPVb0
唯「……」
律「………」
紬「…………」
梓「……………」
和「ふふっ、あははっ」
澪「うう、うぁぁ……」
律「で……それがどうしたんだ?」
和澪「えっ?」
律「澪が在日朝鮮人だからどうしたんだって聞いてんだよ」
紬「在日だろうがなんだろうが、
澪ちゃんは私たちの大事な友達よ」
梓「そうです! 澪先輩が澪先輩で在ることに、
在日かどうかなんて関係ありません!」
澪「み、みんな……」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:45:34.31 ID:D2P/LPVb0
和「な、何を言ってるのよ……
在日よ、朝鮮人なのよ? 気持ち悪いでしょう?」
梓「今は和先輩のほうが気持ち悪いです!」
和「なっ……」
律「ああ、梓に同意だ。
和がそんなやつだとは思わなかったよ」
和「……澪が在日だってこと、全校生徒にばらすわよ。
あなたたちはオトモダチだからそうして澪を庇っているけど
赤の他人から見たらどうかしらね……
澪が在日だってことにショックを受ける人も
少なからずいるんじゃないかしら」
澪「……」
和「そして私以外の悪意ある人間から
いじめの標的にされちゃうでしょうね。
澪なら分かると思うけど
見えない悪意、差別心からくるいじめは解決しようがないのよ」
澪「う……」
律「バラしたきゃバラせばいい」
澪「えっ」
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:50:36.33 ID:D2P/LPVb0
律「それでもし澪がいじめられるようなことがあったら、
私たちがどんなことをしてでも守ってやる!」
紬「ええ、澪ちゃんは親友だもの」
澪「律、ムギ……ありがとう」
和「し、親友……っ」
梓「それより和先輩こそバラされたらマズイんじゃないんですか」
和「な、なんのこと?」
梓「このことに決まってるじゃないですか。
唯先輩や澪先輩をいじめていたことですよ」
和「っ……バラすつもりなの?」
梓「さあ、どうしましょうかね」
和「ふん……無理よ。
こっちには澪が在日だっていう証拠があるけど、
あなたたちにはないでしょう?
私が澪や唯をいじめていた証拠が。
あなたたちの証言だけじゃ誰も信じないわよ」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:55:38.33 ID:D2P/LPVb0
梓「証拠なら有りますよ」
和「えっ?」
梓「さっきからずっと録音してたんです、会話を」カチッ
『ええ、したけど?
殴ったり、蹴ったり、踏みつけたり。
あとはお金を持ってくるようにも言ったわね』
梓「……どうですか?」
和「う、や、やめてよ……
澪が在日だってことも黙っておいてあげるから……
このことは……誰にも」
唯「……」
和「お、お願い……
もうこんなことしないから、ね。
私たち友達じゃない」
律「ダメだよ、もうお前なんか友達じゃない。
罰を受けろ。罪を償え、和」
紬「そうよ……あなたがやったことは
黙っておくには重すぎるわ」
和「くっ……」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:00:42.04 ID:D2P/LPVb0
唯「和ちゃん……」
律「さあ、職員室に行こう、和」がしっ
和「触らないで!」ばっ
律「いたっ」
和「なんで私がそんな扱い受けなきゃいけないのよ……
そうよ、私は悪くない……
元はといえばすべて憂がいけないのよ」
梓「なんでそこで憂が出てくるんですか」
律「今度は他人のせいにするのか?」
和「ち、違う、本当に憂が……
そうだ、澪なら知ってるでしょ!?
私と憂がどういう関係だったかを……」
澪「……」
和「澪!」
澪「しっ…………知らないっ」
和「!!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:05:42.43 ID:D2P/LPVb0
律「ほら、知らないって言ってるぞ」
梓「くだらない嘘つかないでくださいよ」
和「な、なんで……澪こそ嘘つかないでよ……
力になるって言ってくれたでしょう!? ねえ!!」
澪「……」
律「いいかげんにしろ、和!」
紬「そうよ、澪ちゃん怯えてるじゃない」
和「な、なんで……
なんで私を裏切るのよ……
なんで私の言うことは信じてくれないのよ……
どうして……」
律「ほら和、もう悪あがきはよせって」がしっ
和「触らないでって言ったでしょっ……
もういい、告げ口でもなんでも勝手にすればいいわ……
よってたかって私のことバカにして……!」たたっ
律「おい、どこ行くんだ」
和「うるさいわね!
どこだっていいでしょうが!」
ガチャバタン
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:12:43.23 ID:D2P/LPVb0
和(なんで、なんでよっ……
どこで間違ったって言うのよっ……)
和(私はただ憂にされたことをそのまま
他の人にやっていただけなのに……
それなのになんで私だけがこんな目に……)
和(いやっ間違ってるのは私じゃない……
澪が悪いんだ、
澪がみんなにチクったりするから……)
和(でももうこれで澪は使えない……
唯もダメになっちゃったし……
くそ、これから何でストレスを発散すれば……
誰かを的にしないと……
あの憂のいじめには到底耐えられない)
憂「おーい、クソメガネ~」
和「!!」
憂「何やってるの? こんな物陰で」
和「なっ……何だって良いでしょう」
憂「ふーん、隠すんだ……」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:19:44.21 ID:D2P/LPVb0
憂「まあ私は全部知ってるからいいんだけどね」
和「! ……まさかあれは全部……」
憂「ふふ、違うよぉ。
たまたま生徒会室前を通りかかったら
中の話が聞こえてきただけ。
あんたが澪さんをイジメてこうなったのは
全部あんたの自業自得だよ」
和「っ……」
憂「それにしてもバカだよね、あんたは。
いじめる相手はちゃんと選ばないと。
あんたみたいに力はないけど芯の強いヤツが丁度いいんだよ」
和「……」
憂「澪さんみたいに力も心も弱い人間じゃあ
ああなるのは目に見えてるって。
ほんとにそういうとこ頭回んないんだね、優等生のくせに」
和「……」
憂「なんとか言いなよ」げしっ
和「あぅっ」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:26:44.70 ID:D2P/LPVb0
憂「てゆーかこのままでいいの?」
和「えっ、何が……」
憂「だからー、このままじゃあの5人は
間違いなく先生のところにあんたのやったことを
チクリに行っちゃうよ、ってこと」
和「あ……」
憂「あーあ、そしたらどうなるかな……
お姉ちゃんに毎日のようにやっていた暴力、カツアゲ……
そして今回の澪さんの件……
まあ良くて停学、悪くて退学……ってことかな」
和「……」
憂「ふふふん、小学校の時から今まで
すーっと優等生で通してきた真鍋和が
イジメをやって高校退学って……情けないね」
和「……」
憂「親はどう思うかなー。
かわいい娘がこんなふうに育ってしまって」
和「っ……」
憂「……助けてあげようか?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:33:45.91 ID:D2P/LPVb0
和「えっ」
憂「どうする?
私が説得すれば5人を止められるかも。
あんたのことも救ってあげられるし、
またあの5人と仲良く学校生活を送らせてあげるよ」
和「で、できるの……?
そんなこと本当に……」
憂「そりゃあやってみなけりゃ分からないけど……
決断は早いほうがいいよ、
もたもたしてるとチクられちゃうし」
和「あっ、じゃあお願い……
お願いします、お願いします!」どげざどげざ
憂「ふふ、分かった。
じゃあ行ってくるから、あんたはここで待ってて」
和「あ、ありがとう……ございます。
あの、ひとついい……?」
憂「何?」
和「どうして、私のためにそこまで……」
憂「ふふ」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:40:47.92 ID:D2P/LPVb0
憂「ふふふふ、あはははは……
ほんっとこういうことに関しては頭回んないね」
和「えっ」
憂「ただでこんなことやってやるわけないじゃん……
これは貸しだよ、私からあんたへの」
和「それは、どういう……」
憂「これであんたは、永遠に私のおもちゃだってこと!」
和「なっ……!」
憂「じゃあ行ってくるから、ここでおとなしく待っててね。
絶対に……逃げちゃだめだからね」
和「は……はい」
憂「あはは、これからも末永くよろしくね、私のクソメガネ!」
第一部 完
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:43:58.03 ID:D2P/LPVb0
ちょっとウンコしたいんで第二部は七時くらいからやりましゅ
あと実話ではない
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:51:14.64 ID:D2P/LPVb0
第二部予告
「綺麗な腕だね、焼き甲斐があるよぉー」
「真鍋さん何言ってるの?」
「まだあと4匹残ってるんだからさ!」
「チェケラッ……チョイ」
「私もあなたには期待してるんだから、頑張ってね」
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:01:44.71 ID:D2P/LPVb0
あれから半年が過ぎた。
季節は移り春がきて和は3年生になった。
唯「おはよう、和ちゃん!」
澪「おー和、朝会うなんて珍しいな」
和「おはよ、みんな」
軽音部の5人は和のした行いを忘れたかのように
和と普通の友達として接している。
そして和は停学も退学も受けずに済み、
今も無事に学校へと通うことが出来ている。
すべて憂の根回しがあったからこそである。
憂のおかげで和のやったことは明るみに出ることはなく
友人関係の中で孤立することもなく
見かけの上では和はごくごく平凡な学校生活を送っていた。
ただ一つ、憂のいじめがさらに過激化したことを除いては。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:07:42.73 ID:D2P/LPVb0
昇降口。
唯「あ、ういー。もう学校着いてたんだー」
憂「うふふ、私の方が先に出たのに。
お姉ちゃんたらまた澪さんたちとおしゃべりしながら
のんびり歩いてたんでしょー」
唯「えへへー」
澪「まあ確かに喋りながら歩いてると遅くなっちゃうな」
和「そうね」
憂「あっそうだ、和さん。ちょっと来てもらっていいですか?」
和「…………ええ、いいわよ」
憂は事あるごとに和を校舎裏へと呼び出していた。
それは今朝も例外ではなかった。
和は唯たちに一刻の別れを告げ、
憂のうしろについて校舎裏へと向かう。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:14:30.86 ID:D2P/LPVb0
校舎裏。
ここは昼間でも薄暗く、
学校の隅っこに位置しているため
誰かがやってくることはめったに無い。
憂「ふふ、おともだちと楽しくやってるみたいだね」
和「ええ……おかげさまで」
憂「ほんとに感謝してるの?
全然そういう感じが伝わってこないんだけど……」
和「し、してるわよ……」
憂「ふーん……
じゃあ感謝してるって証拠を見せてよ」
そう言って憂はブレザーの内ポケットから
タバコとライターを取り出した。
和「ちょっ……タバコなんて」
憂「違うよ、吸うんじゃないよ」
憂はタバコを1本抜き出して火をつける。
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:17:06.46 ID:D2P/LPVb0
憂「うん、吸うんだよ」
憂はタバコを1本抜き出して吸いながら火をつける。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:21:39.83 ID:D2P/LPVb0
憂「私、タバコって結構好きなんだよねー。
お父さんがよくタバコ吸うからかなー……
このタバコもライターもお父さんのなんだよ」
煙を吹き上げるタバコをうっとりとした表情で見つめる憂。
対する和は「一体何をされるのか」と
わずかに身構えて慎重に相手の出方をうかがっている。
憂「ねえ……制服の袖まくって」
和「えっ」
憂「ほら、早く」
和「まさか……」
憂「そのまさかだよ」
和「ひっ……! や、やめっ……」
憂「あんたに拒否権があると思ってるの?
ほら、早く袖まくらないと制服の上からやっちゃうよ?」
和「い、いや……」
憂「腕じゃなくて顔にやってもいいんだよ?」
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:27:11.62 ID:D2P/LPVb0
和「あ、あ、あ……」
和は震える手で制服の袖をまくっていく。
白く細い腕が顕わになる。
憂「綺麗な腕だね、焼き甲斐があるよぉー」
和「ひ、いや、いや……」
憂「ふふふ……」
憂は微笑みながらじりじりとタバコを和の腕に近づける。
和は恐怖のあまり涙を流し、
腕をガクガクと痙攣させている。
その腕を憂が空いている方の手で掴む。
憂「ちょっと熱いけど逃げないでねー」
和「あ、ああああ」
憂「じゃあいくよおー……えいっ☆」
憂の可愛い掛け声と共に
タバコが和の腕に押し付けられた。
和「ぎやああああああああっ!!」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:32:37.35 ID:D2P/LPVb0
憂「今日からあんたの腕は私の灰皿ね」
そう笑いながら憂はタバコを腕にねじこむようにぐりぐりと。
和「いだいあついいだいあつい!
もうやめて! もうやめてよおおお!」
憂「だーめ、まだ19本残ってるんだから」
和「いや、いや、もうやめて、許してぇ……」
憂「あははは、その顔最高だよー。
てゆーかあんたが許されるわけないじゃん、
あんたはそれだけのことをしたんだからさ」
和「謝る、謝るからァ……」
憂「私に謝ってもしょうがないでしょ。
だいたい謝ったところであんたの罪は消えないんだよ。
そしてこれは烙印なの、
あんたが罪人だっていう証なの」
憂は2本目のタバコに火をつけて
再び和の腕に押し付ける。
和「あんぎええええええええええ!」
その朝は1時間目が始まるまでに
全部で20本のタバコを使い切ったのであった。
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:38:26.67 ID:D2P/LPVb0
和の精神は疲弊しきっていた。
今までならば唯をいじめることで
溜まったストレスを発散できていたので
憂のいじめにも耐えることができた。
しかし今はもう和にいじめる相手はおらず、
そのうえ憂のいじめはパワーアップしている。
このままではいつかいじめ殺されてしまうのではないかとさえ
和は思い始めていた。
そしていじめ以外にも和の精神を蝕むものがあった。
それは生徒会長としての仕事であった。
和は生徒会長に立候補する気などさらさらなかったのだが
周りからの強い推薦を断り切ることが出来ずしぶしぶ立候補、
選挙活動には特に力を入れていなかったのだが
なんと108人の候補者を差し置いて当選してしまったのだ。
和がいかに生徒たちからの信頼を集めているかがよく分かる結果だが、
それだけに和は重いプレッシャーを感じていた。
「会長、次回の会議で必要な書類なんですけど」
和「ああ、あとで見るからそこに置いといて」
「会長、チベット文化研究部が部費の増額を要求していますが」
和「そうね、部としての結果は出ているから要検討ね」
「会長、不良生徒から没収したゲーム機はどうすれば」
和「担任の先生に返しておきなさい」
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:44:59.00 ID:D2P/LPVb0
ヤル気がないのならば適当にやればいいのだが
和としてはそういうわけにもいかなかった。
108人を蹴落としてトップの座についたこと、
生徒の信頼に応え生徒のために働く立場にいること、
そのことが和に立派に生徒会長を務めねばならないという
義務感を生じさせていた。
和「はあ、最近は特に忙しいわね」
「そうですねー、疲れてますね会長」
和「ええ、疲れてるわ、とてもね……
ああ今度の全校集会で喋る文面考えとかなきゃ」
「文化祭実行委員会の人員募集の呼びかけですね」
和「そう、それよ。なんて話せばいいのかしらね……」
「……会長てすごいですね。疲れてるのに、
いつも生徒会の仕事のことばかり考えて」
和「そりゃそうよ、生徒会長だもの」
「立派です。尊敬します」
束の間の休息、和が後輩となごやかに語り合っていると、
生徒会室の扉がひらいた。
憂「あのー、真鍋さんいますか?」
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:50:48.45 ID:D2P/LPVb0
和はまたも校舎裏に連れてこられた。
グラウンドで部活をしている運動部の掛け声も
音楽室で演奏している吹奏楽部の楽器の音も
ここではかすかにしか聞こえてこない。
憂「たいへんみたいだねー、生徒会長の仕事」
和「ええ、とても大変よ……」
憂「ちょっと話を聞かせてもらったけど、
今度の全校集会でなんか喋るんだって?」
和「ええ……そうだけど」
憂「じゃーさ、明日喋るときに
語尾に『チェケラッチョイ』ってつけてよ」
和「はっ……?」
憂「はっ、じゃないよ。チェケラッチョイ。
ほら言ってみて」
和「チェケラッ……チョイ」
憂「うんそう、いい感じだね。
今度の全校集会で、それを語尾につけて喋ってね」
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:56:02.16 ID:D2P/LPVb0
和「ええっ、そんなこと無理よ……
全校生徒の前よ……?
先生たちだって見てるのに」
憂「別に無理じゃないよぉ、
今だってちゃんとチェケラッチョイって言えてたし」
和「そういう問題じゃなくて……」
憂「こーゆうオチャメな一面も見せといたほうが、
生徒会長として慕われるよ?」
和「でも、そんな……」
しぶる和のスネに憂は思いっきり蹴りを入れた。
和「あだっ!」
憂「や・る・の……分かった?」
和「は……はい」
憂「ふふ、最初からおとなしくそう言えばよかったのに」
和「ごめんなさい……じゃあ私、生徒会室戻るから」
憂「待ってよ、まだ用は終わってないよ」
197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:01:23.56 ID:D2P/LPVb0
和「えっ」
憂「チェケラッチョイはちょっと思いついたから言っただけ。
本当の用事はこっち」
そう言うと憂はカバンからタッパーを取り出した。
憂「生徒会の仕事で疲れてるでしょ?
おやつの差し入れだよ」
和「……」
差し出されたタッパーを受け取る和。
和はもう嫌な予感しかしていなかった。
一体何が入っているのだろうか……と
恐る恐るタッパーをひらく。
和「……ひっ!」
憂「どうかな、美味しそうでしょ?」
和「これこれ、これって……」
憂「うん、ごきぶりだよー」
タッパーの中には生きたゴキブリ5匹が
テープで留められていた。
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:06:25.30 ID:D2P/LPVb0
憂「あんたのために捕まえてきたんだよ。
全部残さず食べてねっ」
和「無理無理無理、ほんとに無理!
知ってるでしょっ、私が虫嫌いなのっ」
憂「知ってるよぉ、だから捕ってきたの」
和「いやほんと無理だから、これ食べるなんて……」
憂「せっかく捕ってきたんだから食べてよ。
もったいないじゃん、残しちゃうなんて」
和「これだけは無理、もうほんと無理!
根性焼きいくらしてもいいから、
チェケラッチョイ何度でも言うから、
これだけはやめて、ほんとに、お願いします……!」
憂「あーもう、面倒くさいなあ……」
泣きじゃくる和のみぞおちに
憂は膝蹴りをぶちかました。
和「あぐぇ!」
そして憂は菜箸で生きたゴキブリを掴むと、
無理やり和の口を開かせてそこに突っ込んだ。
和「もぎゃあああああああああ!」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:11:26.19 ID:D2P/LPVb0
すかさず憂は和の口を押さえつける。
和「んー! んーんんんんんんん!!!」
涙をボロボロと零し全身を震わせながら
声にならない叫びを上げる和。
口の中でゴキブリが這い回る感触を
いやというほど味わって、
もはや発狂一歩手前といった様相である。
憂「早く噛むか飲み込むかしなよ」
和「んんんんーんんー!!!」
憂「まだあと4匹残ってるんだからさ!」
和「んんんんんんんんんんんんんんん!!!」
憂「そっか、泣くほど嬉しいんだ……
じゃあ明日もいっぱいゴキブリ捕まえてきてあげるね、あははは」
和「んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!」
その後、和は何度も何度も嘔吐しながらも
なんとか5匹の生きたゴキブリを完食した。
食べ終えたあとの和は顔面蒼白、汗だくだく、
制服はゲロまみれで下半身は小便でびしょびしょだった。
209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:16:29.06 ID:D2P/LPVb0
憂はその後も毎日ゴキブリを生け捕りにしては
学校に持ってきて和に食べさせた。
虫が嫌いな和にとって
これは今までされたどんな仕打ちよりもつらいものであった。
いくら和の精神がタフだとは言っても
こんなことが毎日続いては流石に限界がくる。
そしてさらに忙しくなっていく生徒会の仕事が
和の精神の疲弊に拍車を掛ける。
和はもう憂のいじめに耐えること、
生徒会長の仕事を続けることを両立するのは不可能だと判断した。
そこで和は担任のさわ子に生徒会長を辞めさせてもらえないかと
相談することにしたのであった。
さわ子「え、生徒会長を辞めたい?」
和「はい」
さわ「どうしたのよ、急に。何かあったの?」
和「いえ、なんていうか……
思ったよりつらくて、自分には出来ないなって」
さ「真鍋さん……」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:21:31.98 ID:D2P/LPVb0
和「無理なお願いだってことは分かっています。
でも……もうこれ以上は続けられません」
さ「うーん……真鍋さんがそんな弱音を吐くなんて珍しいわね。
よっぽど参っちゃってる感じなのかしら?」
和「……はい」
さ「そっか……でも、辞めるのは良くないわ。
生徒会長職を途中で放棄した人なんてのも前例がないし」
和「……」
さ「あなたは108人の候補者から、
全校生徒の信頼を得て生徒会長になったのよ。
勝手に辞めちゃうのは、みんなへの裏切りにもなると思うな」
和「……」
さ「せめて任期を全うするまでは、ね。
頑張って続けられないかな」
和「……まだ、耐えろと」
さ「ん?」
和「まだ耐え続けろとおっしゃるのですか」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:26:32.26 ID:D2P/LPVb0
さ「耐えるだなんて、大げさね……
またつらくなったときは、
周りの人や先生に助けてもらいなさい。
あなた独りですべてを抱え込むことなんてないのよ」
和「……」
さ「じゃあ私、会議があるからこれで行くわね。
私もあなたには期待してるんだから、頑張ってね」
さわ子はさっさと話を切り上げ、
相談室から出ていってしまった。
あとに残された和はひとり、考える。
和(生徒が頼るべき教師も、
私にただ耐えることを押し付けるだけだった……
でももう本当にこれ以上は無理……自分でわかる)
和(今みたいな生活……
生徒会長の仕事に忙殺され、
憂からは暴力を受けゴキブリを食べさせられ……
こんなことを続けていたらもう私がもたない)
和(心も体も……
私という存在が壊れてしまうまでは……
耐え続けるしかない……
諦めるしかないというの?)
そのとき、和の脳裏に澪の言葉が蘇った。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:31:32.24 ID:D2P/LPVb0
澪『私も……いじめられたことあるから分かるんだ。
諦めるのは一番ダメな選択肢だって』
澪『諦めるってのは耐えるってことじゃない。
耐えることすら放棄して、
自分の心を殺すってことなんだ』
澪『そう、心だけが死んだ……いわば半分死人』
和(ああ、そうか……
耐えることさえ放棄してしまえば楽になるんだ)
和(心だけを殺す……)
和(何も感じずに体だけが生きていく……
それが……半分死人)
和(半分死人……)
和(生徒会長も、憂のいじめも)
和(もう耐えなくていい)
和(ただ生きているだけでいいんだ……)
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:36:33.13 ID:D2P/LPVb0
私は、心を殺しました。
だから、私の名前は、
半分死人です。
心だけ、半分だけ死んでるからです
心が生きてると、もう耐えられないから
これ以上は心を殺さないと、
私は耐えられません
だから私は心を殺しています
次の人が、
ターゲットになるのを
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:41:34.86 ID:D2P/LPVb0
さわ子に相談をした日の翌日が全校集会だった。
5時間目、生徒たちは講堂に集められて
新しく代わった校長の挨拶に耳を傾けていた。
校長「えー前校長はご病気のため引退なされたということで
本日より私がこの桜が丘高校の校長に就任いたしました。
でーありますからーえーなんだっけーあー
それでーあのーうんぬんかんぬんでーえーとまーそのー」
梓「話長いね、この新校長」
純「前のも大概長かったけどまた格別だね……
しかも眠気を誘うような話し方でぐうすかぴいすか」
梓「寝るな寝るな」
憂「そうだよぉ、寝ちゃだめだよ。
今日はこのあと面白いものが見られるんだからさっ」
純「面白いもの? なにそれ」
憂「ふふ、それは見てからのお楽しみ☆」
校長「えーではこれで挨拶を終わります。
皆様これからよろしくお願いいたします」
「校長先生、ありがとうございました。
次は生徒会長の真鍋和さんからお話があります」
憂「きたきた」
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:46:36.04 ID:D2P/LPVb0
司会の生徒会役員に呼ばれ、
和は壇上へと上がっていく。
新校長の話で眠りかけていた生徒たちが目を覚まし、
和のほうへと視線を注ぐ。
和「こんにちは。ご紹介にあずかりました
生徒会長の真鍋チェケラッチョイです」
舞台中央のマイクに向かい、和は話し始めた。
同時に生徒や教師の間に動揺が広がる。
「え?何?」
「チェケ?」
「ふざけてるのかな?」
「え、今の笑うとこ?」
「真鍋さん何言ってるの?」
和「現在生徒会では文化祭実行委員会に
参加する人を募集してチェケラッチョイ。
まだ1学期ではありますが
10月の学園祭にむけて私たちと一緒に
頑張ってくれる人は是非チェケラッチョイ」
講堂は水を打ったように静まり返った。
表情を一切変えずに淡々と語り続ける和に、
生徒や教師たちはどう反応して良いのか判断がつかなかったのだ。
ただ憂だけは必死に笑いを堪えていた。
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:51:37.10 ID:D2P/LPVb0
放課後、和は憂に呼び出された。
今回は校舎裏ではなくトイレだった。
憂「ぶはっはははは、あんた最高!
無表情でチェケラッチョイとか言ってんだもん、
もう笑い堪えるの大変だったよー!」
和「そう」
憂「でもほんと面白かったわー。
いいもん見られたよ、あはははは」
和「そう」
憂「なに? 反応悪いな。
ああ、さすがに恥ずかしかったの?」
和「べつに」
憂「ふうん……? まあいいけど。
それよりさ、今日トイレ掃除しなきゃいけないんだよね」
和「へえ」
憂「でさ、一緒に掃除する班の人がみんな帰っちゃって。
あんたに手伝ってもらおうと思って」
和「そう」
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:56:38.02 ID:D2P/LPVb0
そう言われた和はロッカーから掃除用具を取り出そうとする。
が、憂に阻まれてしまった。
憂「ダメだよ、誰が道具使って良いって言った?」
和「でも道具がなきゃ掃除ができないわ」
憂「はあ、これだから現代っ子は……
すぐ道具に頼ろうとしちゃだめだよ。
まず自分の力で掃除しよう、って思わなきゃ」
和「どういうこと?」
憂「だからー、自分の体を使って、
トイレを掃除しろってことだよ」
和「どうやって?」
憂「じゃあまず、全部の便器を
舌で舐めて綺麗にしてもらおうかな」
和「わかったわ」
憂「え?」
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:01:38.29 ID:D2P/LPVb0
和は命令に逆らおうともせず、
素直に床に四つん這いになって
和式便器をぺろぺろと舐め始めた。
憂「うっわ、マジで舐めてるよ、きもー。
頭おかしいんじゃないの? あはははは」
和は10分間かけて一つの便器を隅々まで舐め上げた。
そして隣の個室に移って、再び便器を舐めまわす。
憂「あっはは、無様ー。きもー」
憂は最初こそ笑いながら和の便器舐めを見物していたが
和が3つ目の便器を舐め終えたところで
いつもとは様子が違うということに気がついた。
和があまりにも素直すぎるのだ。
今まで和をいじめたとき、
和はいつも憂に抵抗していた。
泣き出したり、逃げようとしたり、
許しを乞おうとしたりして、
憂のやろうとすることを素直に受け入れることなどなかった。
しかし今はどうだ。
憂の命令に即答で従い、
文句一つ言わず無表情のまま黙々と便器を舐め続けている。
憂(抵抗は無駄だと悟ったっていうこと……?
ちっ、ならこっちも考えがある)
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:06:38.96 ID:D2P/LPVb0
その日以降、憂のいじめはさらに激しさを増した。
憂は和が憎くていじめているわけではない。
ただ己の内から湧き上がる暴力衝動を
自分よりも弱い人間にぶつけて発散しているだけなのだ。
そしてそのためには「暴力を振るう」という行動だけでは意味が無い。
「自分の暴力であいてを苦しめる」ことによって
初めて衝動の発散が達成されるのである。
だが和はもう憂の暴力に苦しまなくなった。
無表情で無抵抗でされるがままにしているだけだ。
そのため憂は暴力衝動を発散させきれず、いらいらを募らせる。
そしてさらに和に過激ないじめをおこなう。
でも和はそれを無抵抗で受け入れ……
という悪循環が発生してしまっていた。
そのせいでいじめの過激化は留まるところを知らなかった。
ある時は和の頭をバリカンで五分刈りにした。
またある時は和を全裸にして街中を歩かせた。
別の日には授業中に教卓の上でウンコをさせた。
バールのようなものでタコ殴りにしたこともあった。
ゴミ焼却炉に顔を突っ込ませた。
背中に裁縫針を何十本も刺した。
一日中逆立ちで過ごさせた日もあった。
援助交際もさせた。万引きもさせた。
それでも和は全くへたばらず、
ただ憂のいじめを黙々と受け入れていた。
和のいじめ甲斐が無くなったことで逆に憂が
発散されないストレスを抱え込むことになった。
242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:12:21.07 ID:D2P/LPVb0
和の奇行は全校生徒の知るところとなっていった。
このことについて生徒たちは
「生徒会や受験勉強が大変でノイローゼにでもなつたのだらう。
優等生といふのも色々あるのだな」
などといった無責任な感想しか持たなかったが、
ただ一人、憂と和の関係に気づいた者がいた。
誰あろう中野梓であった。
梓は放課後、教室に憂を残らせ、
自身の内に沸き起こった疑惑を憂にぶつけた。
梓「ねえ、憂。
最近の和先輩がおかしいのって、
憂が何か関係あるんじゃないの?」
憂「は……? 何でそう思うわけ?」
この頃になると、憂はもうイライラしているのを
隠そうともしなくなっていた。
梓「和先輩が何か問題行動を起こした日……
決まって憂はイライラしてて、私や純に当り散らしてくるでしょ」
憂「それだけで私のせいだって決め付けるの?」
梓「他にも全校集会の日、憂は和先輩が変なこと言うのを
知ってたみたいだったし、それを面白がってる感じだった。
……もっとも、こんなことは想像でしかないし証拠にはならないけど」
247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:17:07.53 ID:D2P/LPVb0
憂「ふん、バカバカしい」
梓「まだあるよ。和先輩が澪先輩をいじめていたこと……
知ってるよね」
憂「ああ、お姉ちゃんも被害者だったね」
梓「うん、その澪先輩のいじめが判明したとき、
私たちは生徒会室で和先輩を問い詰めた。
そうすると和先輩はあっさりと自分がやったって認めたんだよ」
憂「で?」
梓「そしてその後……和先輩は憂のことを言っていた。
憂が全部悪い、澪なら私と憂の関係を知ってるはずだ……って」
憂「……」
梓「そのときはただヤケクソになって嘘を付いてるんだと思ってた。
でも最近……あれが本当だったんじゃないかって……」
憂「……」
梓「憂は……本当に和先輩とは何もないの?」
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:22:09.87 ID:D2P/LPVb0
憂「……」
梓「私、今から部活行って澪先輩に尋ねてみる。
憂と和先輩の関係について……」
憂「……」
梓「もし、もし本当に……憂が和先輩に対して
なにか酷いことをしてるなら……
私は憂を許さない」
憂「……」
梓「でも憂が無実なら、
親友を疑った罰を受けるよ」
憂「罰、ね……」
梓「罰の内容は憂が自由に考えてくれて良い。
じゃあ私、軽音部行ってくる」
憂「考える必要なんてないよ」
梓「えっ」
振り向いた梓の顔に、
憂は渾身の力を込めてグーパンチをぶちかました。
梓はバランスを崩しその場に倒れる。
憂「全部私がやったんだもん」
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:29:10.90 ID:D2P/LPVb0
梓「ぐ……な、なんで」
憂「別に理由なんてないよ。
ただあいつがウザイから、キモイから。
そしてサンドバッグに最適だったから」
憂は話しながら床にうずくまる梓に
蹴りを食らわせる。
憂「でもあいつはもう使えないよ。
サンドバッグであることを受け入れてしまった。
自分で自分の心を壊してしまった。
だから今度はあんたを私のおもちゃにしてあげるよっ」
容赦なく腹を蹴り上げる。
梓「あぐっ……!」
憂「ふふ、ふふふ、でもその前に……
あのクソメガネを、心だけじゃなくて
全部ぶっ壊してやらないとね……
いらなくなったおもちゃはちゃんと処理しなきゃね」
そう言うと憂は懐からカッターナイフを取り出し、
梓の目の前にちらつかせた。
憂「えへへ、梓ちゃんも同じ目にあいたくなかったら……
私の言うことはちゃんと聞くんだよ……?」
梓「っ……」
260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:35:55.06 ID:D2P/LPVb0
翌日、放課後。
和は憂に校舎裏に呼び出された。
和「……」
和は拷問にも近いいじめを連日のように受けて
何年も風雨に晒された人形のようになっていた。
眼に光はなく、髪は乱雑に切られ、歯は何本も折れて、
スカートから伸びる脚にはいくつも生傷があった。
制服はボロボロであちこち破れている。
メガネはレンズが割れ、フレームが曲がり、
かろうじて耳に掛かっているといった具合だ。
親はもう和を勘当していた。
教師は和を腫れ物のように扱っていた。
友人たちはみな去っていった。
和を救うものはいなかった。
憂「おまたせぇ」
和「……」
憂「今日はなんで呼び出されたか分かる?」
和「……」
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:40:54.78 ID:D2P/LPVb0
憂「実はお別れを言おうと思って」
和「……」
憂「違うおもちゃを見つけたから。
もうあんたは要らない」
和「……」
憂「私はもうあんたをいじめないよ。
どう? 嬉しいでしょ?」
その問いかけにも和は力なく頷くだけであった。
憂「で、要らなくなったおもちゃって、
どうなるか分かる?」
和「……」
憂「捨てるんだよ」
和「……」
憂「でもまずは捨てるために」
和「……」
憂「その体を壊さなきゃね」
カッターナイフを手に取る憂。
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:45:25.15 ID:D2P/LPVb0
憂「私の言ってる意味、分かる?」
和は首を横に振った。
憂「殺す――ってことだよ」
和「っ!」
憂「あっはは……さすがに表情かえたね……
あんたも殺されるのは嫌なんだ、へぇー……」
和「や、やめて……」
憂「やめるわけないでしょ!
今までさんざん私をコケにしてきて……!
クソメガネの分際で……!」
和「ひ、いや……」
憂「もういじめとか生ぬるいことはしない!
ブッ殺してやるから!」
和「い、いやぁぁぁぁぁっ!」
「やめなさあああああああい!」
277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:51:37.23 ID:D2P/LPVb0
和の体にカッターナイフが振り下ろされんとするまさにその時であった。
梓が教師を引き連れて校舎裏へとやってきたのだ。
「何をしているんだ、平沢!」
「無駄な抵抗はやめろ!」
「そのカッターナイフを離しなさい!」
憂「なっ……なんでっ……
梓ちゃんっ……!!」
梓「バカだよね、憂は。
いじめる相手はちゃんと選ばないと」
憂「くっ……!」
「平沢! おとなしくしろ!」
「さあ職員室に行くぞ」
「話はちゃんと聞かせてもらうからな!」
憂「な、なんで……
ふざけるなっ、みんなで私をバカにしてっ……
みんな死ね! 死んでしまえ!」
死ね、死ねと喚きちらしながら
憂は教師に抱えられて連れ去られていった。
校舎裏に残されたのは和と梓。
282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:58:07.88 ID:D2P/LPVb0
数分間の沈黙が流れたのち、
和が口を開いた。
和「……ありがとう」
梓「別にお礼なんていりません。
あのままだと、私がいじめのターゲットになってましたから。
ただ自分の身を守っただけですよ」
和「自分の身を守る……か。
私には……そんなことさえできなかった」
梓「あなたと私じゃ違いますから」
和「……強いのね」
その和の言葉を聞くと、梓は和を一瞥し
踵を返して立ち去っていった。
かくして憂の和に対するいじめは終わった。
突然かつあっけない幕引きであったが
元々大した理由のもとに始まったいじめでもないのだから
終わるときにも唐突なのが自然な形であろう。
和は親と復縁し
教師たちから土下座で謝られた。
学校が費用を負担して制服とメガネを買い直し、
傷も髪の毛も元通りになるのを待って
和は再び学校へと通い始めた。
291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:07:29.51 ID:D2P/LPVb0
憂は退学になった。
その後の憂の行方は、和には知らされていない。
おそらく少年院にでも入れられたのだろう、と和は勝手に想像していた。
生徒たちは和を暖かく迎え入れてくれた。
教壇の上でウンコしたり
体育の時間に裸踊りをしたり
家庭科の調理実習で生の肉を食べたりしたときは
みんなキチガイを見るかのような眼で和のことを見ていたのだが
それらすべて憂が元凶であり和は何も悪くないのだと分かると
あっさりと態度を変え、
普段のとおりに優しく和に接してくるようになった。
教師たちは和にやたらと優しくなった。
きっといじめを放置していたことへの後ろめたさ、
そして和がこのことを外部に漏らさないように……
との打算的な面もあっただろうが、
ともかく和は心地良く学校生活を送ることができた。
和(高校生活がこんなに楽しいなんて知らなかった……
あと1年もないなんて……もったいないな)
晴れやかな朝、
すがすがしい表情で登校する和。
もういじめられていた頃の面影はない。
和が残り少ない高校生活に想いを馳せていると、
後ろから聞き慣れたセリフが聞こえてきた。
唯「おーい、クソメガネ~」
304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:15:16.35 ID:D2P/LPVb0
澪「おはよう、クソメガネ。
朝一緒になるなんて、珍しいな」
律「クソメガネと登校なんて初めてだな。
いやーたまには早起きしてみるもんだ」
紬「クソメガネは今日私と日直だったわよね。
1日よろしくね」
和「…………」
唯「日直もいいけどさ、
とりあえず学校に着いたら、
あの校舎裏に来てくれないかな、クソメガネ!」
和はすっかり忘れていた。
あの和による澪いじめ以降、軽音部5人と和の仲は、
憂の存在によって保たれていたのだ。
その憂がいなくなればこうなることは必然だった。
今度のいじめは憂とは違い、
純粋な憎しみの感情から生まれたものだ。
憂のようにただ暴力を振るいたいだけのものとは違い、
こちらは根深く、そして飽きるということがない。
いつか憎しみの感情が消え去るまで、永遠に続けられるのである。
果たして和は卒業まで耐えられるのであろうか。
がんばれ、和。負けるな、和。
君の戦いは、まだ始まったばかりなのだから。
お わ り
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:16:35.21 ID:D2P/LPVb0 [94/94]
これでおしまい
お望みの復讐エンドだぜ
「半分死人」はシゴフミから拝借
憂「ほらぁ早くしなよ。人来ちゃうよ?」
和「でも、こんなとこで……
せめて人の来ないような場所で」
憂「別にどこだって一緒でしょ。
ホラ早く土下座しなよ、いつもみたいにさぁ」
和「きょろきょろ」
憂「誰もいないからとっととやれっつってんの」
和「……」
憂「ほら、早く……」
和「う……」
澪「あれ、憂ちゃんに和。何やってんだ?」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:09:45.84 ID:D2P/LPVb0
憂「あ、澪さ~ん!
実は今、和さんに相談聞いてもらってたんですー」
澪「相談?」
憂「あーいや大したことじゃないんで気にしないでください!
和さん、朝早くから呼び出したりしてごめんなさい、
相談乗ってもらえてとっても助かりました!」
和「あ、ええ……
相談くらいなら、またいつでも乗るわ……」
憂「ほんとですか、ありがとうございますー」
キーンコーンカーンコーン
澪「あ、やばチャイム鳴った」
憂「私教室戻りますね、失礼します」たたっ
澪「おう、急がないと遅刻になっちゃうぞー」
和「それは私たちも同じよ……
さ、早く教室に行きましょう」
澪「うん」
和「……」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:14:46.53 ID:D2P/LPVb0
昼休み。
澪「和ー、お昼食べよ」
和「ええ」
澪「今日のお弁当はサンドイッチなんだー。和は?」
和「なにかしらね……」ぱかっ
澪「何?」
和「……」
澪「どうした? 何が入ってたんだよ」
和「ごめんなさい、ちょっと用事思い出したわ。
生徒会室行ってくるね」たたっ
澪「えっ、ちょっと和……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:19:47.38 ID:D2P/LPVb0
生徒会室。
ガラッ
和「……」
憂「あ、やっと来た。待ちくたびれたよ」
和「お弁当……あれ憂がやったの?」
憂「そうだよ。どうだった、砂弁当の味は」
和「食べられるわけないでしょ……」
憂「えー、どうして?
せっかくお母さんが朝早く起きて作ってくれたお弁当だよ?
食べなきゃもったいないじゃん」
和「……」
憂「あのお弁当はどうしたの?」
和「捨てたわよ……お弁当箱も洗った」
憂「へー、捨てたんだー。
じゃあお母さんに言ってあげないとね。
和さんはお弁当を捨ててまーす、って」
和「お、親は関係ないじゃない……」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:24:50.54 ID:D2P/LPVb0
憂「関係ありありだよ。
お母さんが作ったお弁当なんだからさ」
和「……」
憂「ああ、どう思うかなー……
娘のために一生懸命作ったお弁当を
毎日毎日ゴミ箱に捨ててた、ってお母さんが知ったら」
和「やめて……」
憂「『やめてくださいお願いします』……でしょ」
和「……やめてください、お願いします」どげざっ
憂「へえ、今度は素直に土下座するんだね。
やっぱり私たち以外に誰もいないから?」
和「……」
憂「ていうかムカツクんだよねー、そういうの。
土下座さえすれば見逃してもらえると思ってる感じがさー」
和「そ、そんなこと……」
憂「いやいや、そう思ってるでしょ。
だから私が何も言わなくても自発的に土下座したんでしょ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:29:52.77 ID:D2P/LPVb0
和「……」
憂「安いんだよねー、あんたの土下座は」
和「じゃ、じゃあどうすれば……」
憂「まだ頭上げていいって言ってないでしょ」ふみつけっ
和「あぐっ……」
憂「どうすれば許してもらえるかは自分で考えれば?
頭いいんでしょ?
この前の模試でも全国の成績上位者にランクインしてたんでしょ」ぐりぐり
和「あ、ぅぅ……」
憂「それとも教科書の問題しか解けないのかな、
この脳みそは」ガッ
和「痛っ!」
憂「はーあ、まったくもう……顔上げていいよ」
和「う……」↑
憂「ああやっぱり上げないで。
あんたの顔見てると腹立ってくるから」
和「……」↓
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:34:52.20 ID:D2P/LPVb0
憂「あ、そうだ、お金貸してよ。
10000円でいいからさー」
和「そ、そんなに持ってない……」
憂「はあ? いつも2、3万は持ち歩いとけっていったでしょ?」
和「もう口座のお金もなくなっちゃって……」
憂「えー、もうシケてんなー。
じゃあ良いよ、あるだけでいいから」
和「……今3000円しかないわ」
憂「それでいいから早くよこせって言ってんの」
和「わ、分かってるわよ……はい」
憂「ふん、まあ今日は3000円でいいけど……
ちゃんと金の工面しといてよ、親の財布からパクるとかさー」
和「そ、そんなことできないわ」
憂「できるかできないかじゃないの。やるの。
分かった?」
和「……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:39:53.66 ID:D2P/LPVb0
憂「返事は?」
和「わかったわ……できるだけ努力してみる……」
憂「じゃあそういうことで頼むよ。
今日はもういいあらさっさと教室戻りなよ。
今度は今日足りなかった分もあわせて3万ね」
和「えっ、そ、そんなに……」
憂「3万ね!」
和「……分かった」
憂「分かったらとっとと帰ってよ。
私はここでお昼食べてから教室戻るから」
和「ええ……じゃあね」
ガチャバタン
和「はあ……」
澪「……和」
和「っ!」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:44:54.29 ID:D2P/LPVb0
澪「ごめん……盗み聞きなんてして……」
和「な、なんで……」
澪「様子がおかしかったから、心配でついていったんだ……
そしたらお弁当捨てたりお弁当箱洗ったりしてるし、
これはタダゴトじゃないなって思って」
和「……」
澪「生徒会室にいたの……憂ちゃんだよな」
和「ええ」
澪「和のお弁当にいたずらしたのも憂ちゃん……」
和「……そうよ」
澪「もしかして今朝のも……」
和「ご明察ね……おかしいでしょ、
私、年下の幼馴染にいじめられてるのよ……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:49:55.16 ID:D2P/LPVb0
澪「……なんで、こんなこと」
和「こっちが聞きたいくらいよ」
澪「え……
理由は分からない、のか」
和「分からない……いや、存在しないんでしょうね。
いじめなんてそんなものじゃないかしら……
ただ気に食わないから、あいつは自分より弱いから……
そんな単純な理由よ、きっと」
澪「……」
和「理由もきっかけもない……
ずっと昔から私たちはこういう関係だったの」
澪「そ、そんなの酷すぎるよ」
和「もう仕方ないわ……
私では憂に対して何もできない。諦めたからもういいの」
澪「あ、諦めちゃダメだ……!」
和「澪……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:54:55.54 ID:D2P/LPVb0
澪「私も……いじめられたことあるから分かるんだ。
諦めるのは一番ダメな選択肢だって」
和「……」
澪「諦めるってのは耐えるってことじゃない。
耐えることすら放棄して、
自分の心を殺すってことなんだ」
和「心を殺す?」
澪「そう、心だけが死んだ……いわば『半分死人』。
なんかのアニメでやってた」
和「なにそれ。
私冗談を聞きたいんじゃないんだけど」
澪「い、いや冗談なんかじゃないって……
とにかくそんな状態になる前にどうにかしようよ、
私も力になるからさ」
和「力になるって……どうやって?
いじめられたことがあるんなら分かるでしょ?
第三者にどうにか出来ることじゃない、って」
澪「そ、それは確かにそうかも知れないけど……
でもとにかく独りで耐えるなんてダメだよ、
何か私に出来ることがあったら……」
和「……ありがとう、その気持ちだけでも嬉しいわ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 13:59:56.92 ID:D2P/LPVb0
澪「和……」
和「大丈夫よ。私は澪が思ってるほど弱くはないわ。
いつかこれが終わる時まで耐え切ってみせるから」
澪「そ、そんなの……」
和「私のことを心配してくれるなら余計なことはしないで。
これだけはお願いよ」
澪「わ、分かった……
でも耐えきれなくなったらいつでも言ってくれ」
和「ええ……」
キーンコーンカーンコーン
和「チャイムが鳴ったわ。
そろそろ戻りましょう」
澪「ああ……」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:05:01.58 ID:D2P/LPVb0
放課後。
澪「じゃあ、私軽音部行くね」
和「ええ、また明日」
澪「あの……憂ちゃんのこと……」
和「大丈夫よ、心配しないで。
今はまだ耐えていられるから……」
澪「う、うん……」
和「ほら、早く行きなさい。
みんな待ってるんじゃない?」
澪「うん、じゃあまた明日。ばいばい」
和「ばいばい」
和「……」
和「……」
唯「♪~」
和「おいちょっとそこの池沼」
唯「ひっ」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:10:02.06 ID:D2P/LPVb0
和「いつ見てもアホ丸出しの顔してるわね」
唯「ご……ごめん」
和「何その口の聞き方。
『申し訳ありません』……でしょ」
唯「も、もうしわけありません……」
和「まったく、これだから池沼は。
あんたもう帰るの?」
唯「いや、これから……部活」
和「あっそう。じゃあその前にちょっとツラ貸しなさいよ」
唯「は、はい……」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:15:02.61 ID:D2P/LPVb0
体育館裏。
和「……」
唯「あ、あの……私、早く部活行かなきゃ」
和「なに? 私より部活の方が大事なわけ?
あんた自分の立場わかってんの?」
唯「あう……」
和「実は今月ちょっと金欠なのよね。
金貸してくれない?」
唯「ええ、でも……私ももうお金ないよ……」
和「はあ? いつも2、3万は持ち歩いとけっていったでしょ?」
唯「ご、ごめ……もうしわけありません」
和「はあ、じゃあもういいからあるだけちょうだい」
唯「ほ、ほんとにもうなくって……
今500円しか持ってない……」
和「500円ってガキじゃないんだから……
まあ池沼にはお似合いかしらね」
唯「う……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:20:03.27 ID:D2P/LPVb0
和「まあ、足りない分は体で払ってもらうことにするわ」
唯「か、からだでって、どういうこと……」
和「こういうことよっ!」ボカッ
唯「あ、ぐっ……!」
和「うずくまるんじゃないわよ!」ドスッ
唯「ぐぇぁ」
和「ほらもう一発!」ドゴッ
唯「うげっ……うげええええろげろげろ」
和「うわ、ゲロ吐くとか最低……
ちゃんと掃除しときなさいよ」
唯「うえっ……げほ、げほ……」
和「まだ終わってないわよ」ゲシッ
唯「あだっ!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:25:04.42 ID:D2P/LPVb0
和「この池沼、池沼~」ゲシッ ゲシッ
唯「いたい、いたいよぉ、やめてえ……」
和「オラァ!」ボカーン
唯「いぎゃっ……ううう……」
和「はー、スッキリした。
これがないと毎日やってらんないわねー。
ストレス解消にはもってこいだわ」
唯「ううぅ」
和「じゃあ私、生徒会室行くから。
明日はちゃんとお金持ってくるのよ。分かった?」
唯「は、はい……」
唯(毎日毎日カツアゲに暴力……
もう耐えられないよ……)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:30:05.87 ID:D2P/LPVb0
その夜、平沢家。
憂「おねえちゃーん、晩ご飯できたよー。
今日はお姉ちゃんの好きなイワシの梅しょうが煮込みだよー。
デザートはココアのシュークリームだよ」
唯「うん……」
憂「どうしたの、お姉ちゃん。元気ないね」
唯「そ、そんなことないよお……
わーおいしそーだなーいただきまーすー」
憂「お姉ちゃん、なんか変だよ?
何かあった?」
唯「な、なにもないよ」
憂「そう……?」
唯(憂に相談してみようと思ったけど……
いざしようとするとなかなか切り出せないなぁ……
ていうか和ちゃんと憂は幼馴染で友達なんだし、
私がこんなこと言ったら二人の仲も壊れちゃうよね)
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:35:06.98 ID:D2P/LPVb0
唯「あ、そうだ憂」
憂「なに?」
唯「お金……くれないかな」
憂「また? この前もあげなかったっけ」
唯「こ、この前のはあれだよぉ……軽音部でお金が要ったから……」
憂「今度のは?」
唯「えと、家庭科の調理実習の……」
憂「分かったよ、あとであげるね。いくらいるの?」
唯「さんまn……3000円でいいや」
憂「3000円?
調理実習でそんなに必要なの?」
唯「あーいやあれだよ、私が班のリーダーでさぁ、
最初に私が一括で払ってあとからみんなに返してもらうっていう……」
憂「ふうん……」
唯(あっ疑われてる……)
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:40:08.28 ID:D2P/LPVb0
憂「お姉ちゃん、ほんとに何も無いの?
なんか最近おかしいよ?」
唯「ほ、ほんとに何もないってばぁー……
調理実習あるんだって、ほんとにほんと」
憂「じゃあメールで律さんに聞いていい?
調理実習あるかどうか」
唯「えっ」
憂「あるんなら聞いても問題ないよね?」
唯「う……」
憂「メール送るね」ぴっぴっぴっ
唯「あ、だ、ダメ……!」がたっ
憂「なんで止めるの?」
唯「うう、ごめんなさい……
調理実習は嘘なの」
憂「お姉ちゃん……
じゃあどうしてお金なんか」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:45:10.03 ID:D2P/LPVb0
唯「それは……、…………」
憂「言えない理由なの?」
唯「う、うう」
憂「お姉ちゃん」
唯「うっ、ひっぐ……ごめんなさい、ごめんなさい……
毎日お金持って来いって言われててぇ……」
憂「な、なにそれ、どういうこと?」
唯「持ってかなかったら……
蹴られたり殴られたりして……もうやだよぉ、助けて憂……」
憂「お……お姉ちゃん……」
唯「ぐすっひっぐ」
憂「ごめんね、気づいてあげられなくて……
お姉ちゃんがそんな酷い目にあってたなんて……」
唯「ううう……」
憂「誰にやられたの? 同じクラスの人?」
唯「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:50:10.86 ID:D2P/LPVb0
憂「言えないの?」
唯「い、言えないよ……」
憂「お願い、言って。
私が何とかしてあげるから」
唯「で、でもぉ……」
憂「お姉ちゃんだってもうこんなの嫌なんでしょ。
ほら……」
唯「う……」
憂「……」
唯「……」
憂「……」
唯「……和ちゃん」
憂「の、和さん?
和さんにカツアゲされてたの!?」
唯「うん……」
憂「あんのクソメガネ……!」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 14:55:11.28 ID:D2P/LPVb0
唯「う、うい?」
憂「ああいやなんでもないよー。
でも和さんがお姉ちゃんにそんなことしてたなんて……
いつから始まったの?」
唯「高校入った頃くらいかな……
そのときはまだ要求される金額は少なかったし
落とし玉貯金を切り崩して払ってたんだけど……」
憂「そ、そんなに前から……
気づけなくてごめんなさい、お姉ちゃん……
つらかったよね……」ぎゅっ
唯「うう……」
憂「でももう大丈夫……私がついてるから。
明日、私が和さんと話つけてくるから」
唯「だ、だめだよぅ……
そんなことしたら私、余計にヒドイことされちゃう……」
憂「大丈夫だって言ったでしょ。私に任せて。
お姉ちゃんが安心して学校行けるようにしたげるから」
唯「う、うん……」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:00:11.83 ID:D2P/LPVb0
翌日、学校、校舎裏。
憂「あ、やっと来た……遅いよ」
和「ごめんなさい、日直の仕事があって」
憂「私より日直のほうが大事なんだ?」
和「いや、そういうわけじゃ……」
憂「で、今日はお金持ってきたの?」
和「持ってきたわ……親の目を盗んで財布から抜いてきた」
憂「うっわー、ホントにやったんだー。
親の金盗むとか人として最低だね……」
和「……」
憂「じゃあ早く頂戴」
和「……はい、3万円」
憂「3万? 足りないよ」
和「えっ……でも昨日は3万って」
憂「あんたが今までお姉ちゃんから巻き上げたお金……
それも全部返してくれないかな?」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:05:12.13 ID:D2P/LPVb0
和「な……なんでそれを」
憂「お姉ちゃんから聞いたよ?
毎日のようにカツアゲしては暴力を振るってたんだって?」
和「そ、そんなの……唯のでまかせよ」
憂「ふーん……お姉ちゃんの体見たら
いっぱいアザとか付いてたんだけど」
和「……」
憂「ふふ……ねえ、このこと先生に言ったらどうなると思う?」
和「や、やめて……!」
憂「『やめて下さいお願いします』……でしょうが」
和「や、やめて下さい……お願いします……」どげざ
憂「ふん、無様……無様すぎるよ。
まーあんたにはその格好がお似合いだよね。
私に何もやり返せないで
お姉ちゃんに八つ当たりするようなゴミクズさんにはさ」ぐりぐり
和「あ、うぐ……」
憂「で、お姉ちゃんからいくら巻き上げたの?」
和「覚えてない……」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:10:11.96 ID:D2P/LPVb0
憂「はあ? 頭いいんでしょ?
それくらい覚えときなさいよ!」ガッ
和「あだっ……」
憂「お姉ちゃんを今まで何発殴ったの?」
和「分からない……」
憂「あーもう、さっきから覚えてないだの分からないだの……
じゃあこの頭はなんのためについてんのさっ!」ドカッ
和「ぐぎゃっ!」
憂「ったく、胸糞悪いな……
いい? 次お姉ちゃんに手出したら……どうなるかわかってるよね」
和「う……」
憂「じゃあ私もう教室いくから。
また、放課後にね」
和「……」
キーンコーンカーンコーン
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:15:11.96 ID:D2P/LPVb0
教室。
和(まさか唯が憂にチクるとは思わなかった)
澪「あ、和。おはよう」
和(クソ……唯の前じゃ私と憂は普通の幼なじみの関係だし
憂のことを想って黙っているだろうと踏んだけど……甘かったか。
所詮池沼は池沼ね……)
澪「和? おーい」
和(もうこれで唯を殴ることは出来ない……
ったく、どうやってストレス発散しろっていうのよ)
澪「どうした? 具合悪いの?」
和(あの憂も今以上に私に対しての暴力や嫌がらせを
激しくしてくることは目に見えてる……
あいつさえいなけりゃ……クソ、クソッ)
澪「のーどーかぁー」
和(うっせーな聞こえてるっての)
「ああごめんなさい、澪。ちょっと考え事してて」
澪「あ、そうだったんだ。
ごめんね邪魔して」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:20:11.56 ID:D2P/LPVb0
和「で、何?」
澪「ああ、一時間目移動教室だよ。
みんなもう行っちゃったぞ」
和「あら、ほんとね……気付かなかったわ」
澪「私たちも早く行こう、和」
和「ええ、そうね……」
澪「和?」
和「……」
澪「どうしたんだよ、和……
まさかまた憂ちゃんに」
和「……ええ、まあね。
まあいつものことだし……」
澪「和……」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:25:12.61 ID:D2P/LPVb0
和「澪は別に心配してくれなくていいわよ」
澪「いや心配だよ……
昨日も言ったけどさ、私に出来ることなら力になるから。
遠慮せず、何でも言ってくれ」
和「ほんとに?
ほんとになんでもしてくれる?」
澪「もちろんだよ、トモダチじゃないか」
和「ほんとにいいのね?」
澪「ああ、和のためならなんでもするよ」
和「じゃあ一発殴らせて」
澪「は?
……え?」
和「聞こえなかった?
一発殴らせて欲しい、って言ったんだけど」
澪「いや聞こえたけど……意味が分からない……
なんで殴るんだ、和が、私を」
和「力になってくれるんじゃないの?」
澪「で、でも……そんなこと」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:30:14.03 ID:D2P/LPVb0
和「トモダチっていうのは嘘なの?」
澪「そ、そんなことないけど……
なんで殴るなんてことになるんだよ、意味が分かんないよ」
和「いいからおとなしく殴られなさいよ!」
澪「ひっ」
和「そう、そんなふうにおとなしくしてればいいのよ。
じゃあいくわよ」
澪「や、やめ……」
和「ふん!」ボコッ
澪「うっ、ごぇっ……くはっ」
和「ふう……大体あんたウザイのよね……
力になる、とかトモダチだとか綺麗事ばっか言って……」
澪「ううっ、かはぁ、はぁ」
和「自分もイジメられた経験あるから、ってことで
仲間意識持たれてもキモいだけなのよね」
澪「の、ど、か……」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:35:15.78 ID:D2P/LPVb0
和「何よ、その目……
生意気ね、在日のくせに」
澪「なっ……なんでそれを」
和「ふん、先生に頼まれて書類を整理してたときに見ちゃったのよ。
秋山澪が在日だったなんて……
ファンの子たちや、軽音部のみんなが知ったらどう思うかしらね」
澪「や、やめて……
それだけは……言わないで……」
和「言わないでください、でしょ!」ガスッ
澪「ぐはっ!」
和「ふふ、初めて唯を殴った日を思い出すわ」ボカッ
澪「唯にも……こんなことを」
和「ええ、高校入ってすぐだったかしら。
でも唯はもう使えなくなっちゃったから」ドカッ
澪「いだっ」
和「代わりに澪を使うことにするわ」バコッ
澪「ぐっ……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:40:16.75 ID:D2P/LPVb0
和「さて、そろそろ移動しないと1時間目に間に合わないわね」
澪「うう……」
和「いい? このことを誰かに漏らしたりしたら……
澪が在日だってのを証拠付きで全校生徒にばらすわよ」
澪「……」
和「じゃあ私移動教室行くね」
澪「の、和……」
和「何?」
澪「その……憂ちゃんのことは」
和「私の前でその話をしないで!」バチコーン
澪「ぶぎゃぁ!」
和「そうだ、昼休み、生徒会室に来なさい。
今の続きをしてあげるから」
澪「っ……」
和「返事は?」
澪「はい……」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:45:21.52 ID:D2P/LPVb0
放課後、音楽室。
ガチャ
澪「ごめん、遅れちゃって……」
律「遅いぞ澪ー」
紬「すぐお茶入れるわね」
梓「練習しないんですかあーぁ」
唯「あー澪ちゃん、お昼休みどこ行ってたの?
みんなでお昼ごはん食べよーねって昨日約束したじゃん!」
澪「え、あ、昼休みな……ごめん、
ちょっと急に先生に呼ばれちゃってさ……」
律「そうだったのか?
それじゃー仕方ないな」
紬「明日は一緒に食べましょうね」
澪「うん……」
唯「約束だよー」
澪(ごめん……多分明日も無理だ)
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:50:16.74 ID:D2P/LPVb0
澪(和……友達だと思ってたのに……
ただ力になりたかっただけなのに……)
澪(私が間違っていたのかな……
和は私がウザイって……)
澪(和にあんなに殴られるなんて……
怖かった……殺されるかと思った……
でも私が怒らせちゃったから……)
澪(誰かに言ったら私が在日だってこと
みんなにバラされちゃう……
そんなことになったら、
軽音部はもう今までみたいにやっていけないよな……)
梓「……澪先輩、どうしたんですか?」
澪「え、いや、なにが?」
梓「なにが、じゃないですよ。
澪先輩……泣いてるじゃないですか」
澪「え……」
唯「あ、ほんとだー。澪ちゃん泣いてる」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:55:17.06 ID:D2P/LPVb0
律「な、なんだよ。
何があったんだよ、澪」
紬「悲しいことでもあったの……?
良かったら話してくれないかしら」
澪「あ……み、みんな……ぐすっ」
(……おかしいな、泣いてるって自覚したら
急に喉の奥が熱くなってきた……)
唯「よしよし」
澪「うう、ゆい~……うええぇぇぇん、びええぇぇぇん」
梓「ただごとじゃない泣きっぷりですね」
律「ほんとになにがあったんだ」
澪「ううううう、ひっぐぐすん」
紬「話してくれるのは
ゆっくり落ち着いてからでいいから……
今は私の胸で泣きなさい!」
澪「うう、むぎぃぃぃ!」
紬「澪ちゃん!」ひっし
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:00:21.28 ID:D2P/LPVb0
数分後。
律「泣き止んだか?」
澪「うぅ……うん」
紬「どうして急に泣き出したり……」
澪「な、なんでもないよ……
ごめんな、心配かけて。ほんとになんでもないから」
律「バーカ、なんでもない奴がいきなり泣いたりするかよ」
梓「そうですよ澪先輩、
なんでもないなんてことないくらい見たら分かります」
律「私たちに話してくれよ。
何か悩んでるんなら、力になるからさ」
紬「そうよ澪ちゃん、私たち友達じゃない」
澪「……」
(和『ふう……大体あんたウザイのよね……
力になる、とかトモダチだとか綺麗事ばっか言って……』)
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:05:20.48 ID:D2P/LPVb0
澪「いいよ、ほんとに……大丈夫だから……」
律「バカ澪!」
澪「!」
律「私たちは友達だぞ、親友だぞ。
親友が泣いててほっとけるわけないだろ。
私たちはお前のこと本当に心配してるんだからな。
『大丈夫だから』なんて言われてハイソウデスカってわけにいくかよ」
紬「そうよ、澪ちゃん。
遠慮なんかしないで私たちを頼っていいのよ」
澪「で……でも」
(和『秋山澪が在日だったなんて……
ファンの子たちや、軽音部のみんなが知ったらどう思うかしらね』)
梓「そんなに言えないようなことなんですか」
澪(言えるわけがない……
ここで全部打ち明けてしまったら、
みんなと和との仲は壊れてしまうし……
それに私が在日だってことも……)
唯「……」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:10:20.60 ID:D2P/LPVb0
唯「澪ちゃん」
澪「なに?」
唯「もしかして和ちゃんのこと……?」
澪「!」
律「のどか? 和がどうかしたのか?」
澪「ゆ、唯……なんで、知って……」
唯「なんとなく重なって見えたから……
私と、今の澪ちゃんが」
澪「あっ……そうか、唯も……和に」
唯「……うん」
梓「なんなんですか?
話がぜんぜん見えませんよ」
唯「……みんな、聞いて。
実は、和ちゃんは……」
澪「や、やめてくれ!」
唯「澪ちゃん?」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:15:22.26 ID:D2P/LPVb0
澪「い、言わないでくれ……
もしみんなにバラしたら、私は……」
唯「もしかして和ちゃんに脅されてるの?」
律「脅されてる? どういうことだ?」
紬「和ちゃんと何があったの?」
澪「う……」
唯「言おう、澪ちゃん。
このままじゃなにも変わらない……
ただ耐えるだけの毎日を送ることになる」
澪「でもっ」
唯「澪ちゃんには私と同じような道を歩んでほしくない……
それに、和ちゃんに何かされても、酷い目にあわされても、
私が……いや、私たちが守ってあげるから」
律「そうだよ、澪。
何があっても私たちは澪の味方だ」
紬「親友のためなら何だってするわよ」
澪「み、みんな……」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:20:23.63 ID:D2P/LPVb0
梓「それで和先輩と何が……」
唯「……澪ちゃんは和ちゃんにいじめられてた。
そうだよね、澪ちゃん」
澪「うん……
いじめられてたって言っても
今日初めてだったんだけど」
律「い、いじめられてたって……」
唯「実は私も高校入った時からずっと
和ちゃんにいじめられてたんだ。
毎日のように蹴られ殴られ金を取られ……」
澪「私も似たようなことされたよ」
梓「そんな、ひどい……」
紬「どうして言ってくれなかったの?」
唯「言ってもしょうがないと思ったから……
でももう大丈夫だよ、
憂が話つけてくれたみたいだから」
梓「でも……それでいいんですか?」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:25:23.84 ID:D2P/LPVb0
律「そうだ、梓の言うとおりだ……
私は今ハラワタが煮えくりかえっている。
唯や澪の言ったことが本当なら、
私は和のことを一生許さねえ!」
紬「私も同意見よ、りっちゃん!」
梓「私もです!」
律「よし、今から和んとこ殴り込みに行くぞ!」
紬梓「おう!」
澪「ええっ!」
律「澪はここで待ってろ、
私たちがきっちり話つけてきてやるから」
澪「いやいやいやマズイからそういうの……」
律「いくぞみんな!」だだっ
紬梓「おー!」だだっ
澪「ちょ、ま、待ってぇー!」
唯「私も行くよ」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:30:26.85 ID:D2P/LPVb0
生徒会室。
ガチャ
律「おう、和いるか?」
和「いるけど」
律「お前一人だけか、都合いいな」
梓「ですね」
紬「ね」
和「……軽音部全員で、何か用?」
律「何か用、だと?
お前、澪に酷いことしてくれたらしいな」
和「…………」じろり
澪「ひっ」
梓「どうなんですかっ、和先輩」
和「ええ、したけど?
殴ったり、蹴ったり、踏みつけたり。
あとはお金を持ってくるようにも言ったわね」
律「お前……!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:35:31.06 ID:D2P/LPVb0
唯「和ちゃん……」
和「澪はあなたたちに全部言っちゃったのね。
ならいいわ、こっちにも考えがあるもの」
律「なんだよ、考えって」
和「実は澪はね……」
澪「や、やめてくれ和、それだけは……やめて……」
和「なんで?
誰かに言ったら私はあなたの秘密をばらす……
そういう約束だったわよね?
ばらされたくなかったら黙ってればよかったのに」
紬「それはただの脅迫よ。正当な取引とは言えないわ」
和「そうね、取引が正当じゃないなら
私は初めから黙ってなくても良かったってことよね」
澪「なっ……」
和「ふふ、みんな、よく聞きなさい」
澪「やめっ……やめてっ」
和「澪はね……なんと在日朝鮮人なのよーっ!!」ズババーン
澪「やめてくれええぇぇぇっ!」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:40:33.45 ID:D2P/LPVb0
唯「……」
律「………」
紬「…………」
梓「……………」
和「ふふっ、あははっ」
澪「うう、うぁぁ……」
律「で……それがどうしたんだ?」
和澪「えっ?」
律「澪が在日朝鮮人だからどうしたんだって聞いてんだよ」
紬「在日だろうがなんだろうが、
澪ちゃんは私たちの大事な友達よ」
梓「そうです! 澪先輩が澪先輩で在ることに、
在日かどうかなんて関係ありません!」
澪「み、みんな……」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:45:34.31 ID:D2P/LPVb0
和「な、何を言ってるのよ……
在日よ、朝鮮人なのよ? 気持ち悪いでしょう?」
梓「今は和先輩のほうが気持ち悪いです!」
和「なっ……」
律「ああ、梓に同意だ。
和がそんなやつだとは思わなかったよ」
和「……澪が在日だってこと、全校生徒にばらすわよ。
あなたたちはオトモダチだからそうして澪を庇っているけど
赤の他人から見たらどうかしらね……
澪が在日だってことにショックを受ける人も
少なからずいるんじゃないかしら」
澪「……」
和「そして私以外の悪意ある人間から
いじめの標的にされちゃうでしょうね。
澪なら分かると思うけど
見えない悪意、差別心からくるいじめは解決しようがないのよ」
澪「う……」
律「バラしたきゃバラせばいい」
澪「えっ」
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:50:36.33 ID:D2P/LPVb0
律「それでもし澪がいじめられるようなことがあったら、
私たちがどんなことをしてでも守ってやる!」
紬「ええ、澪ちゃんは親友だもの」
澪「律、ムギ……ありがとう」
和「し、親友……っ」
梓「それより和先輩こそバラされたらマズイんじゃないんですか」
和「な、なんのこと?」
梓「このことに決まってるじゃないですか。
唯先輩や澪先輩をいじめていたことですよ」
和「っ……バラすつもりなの?」
梓「さあ、どうしましょうかね」
和「ふん……無理よ。
こっちには澪が在日だっていう証拠があるけど、
あなたたちにはないでしょう?
私が澪や唯をいじめていた証拠が。
あなたたちの証言だけじゃ誰も信じないわよ」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 16:55:38.33 ID:D2P/LPVb0
梓「証拠なら有りますよ」
和「えっ?」
梓「さっきからずっと録音してたんです、会話を」カチッ
『ええ、したけど?
殴ったり、蹴ったり、踏みつけたり。
あとはお金を持ってくるようにも言ったわね』
梓「……どうですか?」
和「う、や、やめてよ……
澪が在日だってことも黙っておいてあげるから……
このことは……誰にも」
唯「……」
和「お、お願い……
もうこんなことしないから、ね。
私たち友達じゃない」
律「ダメだよ、もうお前なんか友達じゃない。
罰を受けろ。罪を償え、和」
紬「そうよ……あなたがやったことは
黙っておくには重すぎるわ」
和「くっ……」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:00:42.04 ID:D2P/LPVb0
唯「和ちゃん……」
律「さあ、職員室に行こう、和」がしっ
和「触らないで!」ばっ
律「いたっ」
和「なんで私がそんな扱い受けなきゃいけないのよ……
そうよ、私は悪くない……
元はといえばすべて憂がいけないのよ」
梓「なんでそこで憂が出てくるんですか」
律「今度は他人のせいにするのか?」
和「ち、違う、本当に憂が……
そうだ、澪なら知ってるでしょ!?
私と憂がどういう関係だったかを……」
澪「……」
和「澪!」
澪「しっ…………知らないっ」
和「!!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:05:42.43 ID:D2P/LPVb0
律「ほら、知らないって言ってるぞ」
梓「くだらない嘘つかないでくださいよ」
和「な、なんで……澪こそ嘘つかないでよ……
力になるって言ってくれたでしょう!? ねえ!!」
澪「……」
律「いいかげんにしろ、和!」
紬「そうよ、澪ちゃん怯えてるじゃない」
和「な、なんで……
なんで私を裏切るのよ……
なんで私の言うことは信じてくれないのよ……
どうして……」
律「ほら和、もう悪あがきはよせって」がしっ
和「触らないでって言ったでしょっ……
もういい、告げ口でもなんでも勝手にすればいいわ……
よってたかって私のことバカにして……!」たたっ
律「おい、どこ行くんだ」
和「うるさいわね!
どこだっていいでしょうが!」
ガチャバタン
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:12:43.23 ID:D2P/LPVb0
和(なんで、なんでよっ……
どこで間違ったって言うのよっ……)
和(私はただ憂にされたことをそのまま
他の人にやっていただけなのに……
それなのになんで私だけがこんな目に……)
和(いやっ間違ってるのは私じゃない……
澪が悪いんだ、
澪がみんなにチクったりするから……)
和(でももうこれで澪は使えない……
唯もダメになっちゃったし……
くそ、これから何でストレスを発散すれば……
誰かを的にしないと……
あの憂のいじめには到底耐えられない)
憂「おーい、クソメガネ~」
和「!!」
憂「何やってるの? こんな物陰で」
和「なっ……何だって良いでしょう」
憂「ふーん、隠すんだ……」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:19:44.21 ID:D2P/LPVb0
憂「まあ私は全部知ってるからいいんだけどね」
和「! ……まさかあれは全部……」
憂「ふふ、違うよぉ。
たまたま生徒会室前を通りかかったら
中の話が聞こえてきただけ。
あんたが澪さんをイジメてこうなったのは
全部あんたの自業自得だよ」
和「っ……」
憂「それにしてもバカだよね、あんたは。
いじめる相手はちゃんと選ばないと。
あんたみたいに力はないけど芯の強いヤツが丁度いいんだよ」
和「……」
憂「澪さんみたいに力も心も弱い人間じゃあ
ああなるのは目に見えてるって。
ほんとにそういうとこ頭回んないんだね、優等生のくせに」
和「……」
憂「なんとか言いなよ」げしっ
和「あぅっ」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:26:44.70 ID:D2P/LPVb0
憂「てゆーかこのままでいいの?」
和「えっ、何が……」
憂「だからー、このままじゃあの5人は
間違いなく先生のところにあんたのやったことを
チクリに行っちゃうよ、ってこと」
和「あ……」
憂「あーあ、そしたらどうなるかな……
お姉ちゃんに毎日のようにやっていた暴力、カツアゲ……
そして今回の澪さんの件……
まあ良くて停学、悪くて退学……ってことかな」
和「……」
憂「ふふふん、小学校の時から今まで
すーっと優等生で通してきた真鍋和が
イジメをやって高校退学って……情けないね」
和「……」
憂「親はどう思うかなー。
かわいい娘がこんなふうに育ってしまって」
和「っ……」
憂「……助けてあげようか?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:33:45.91 ID:D2P/LPVb0
和「えっ」
憂「どうする?
私が説得すれば5人を止められるかも。
あんたのことも救ってあげられるし、
またあの5人と仲良く学校生活を送らせてあげるよ」
和「で、できるの……?
そんなこと本当に……」
憂「そりゃあやってみなけりゃ分からないけど……
決断は早いほうがいいよ、
もたもたしてるとチクられちゃうし」
和「あっ、じゃあお願い……
お願いします、お願いします!」どげざどげざ
憂「ふふ、分かった。
じゃあ行ってくるから、あんたはここで待ってて」
和「あ、ありがとう……ございます。
あの、ひとついい……?」
憂「何?」
和「どうして、私のためにそこまで……」
憂「ふふ」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:40:47.92 ID:D2P/LPVb0
憂「ふふふふ、あはははは……
ほんっとこういうことに関しては頭回んないね」
和「えっ」
憂「ただでこんなことやってやるわけないじゃん……
これは貸しだよ、私からあんたへの」
和「それは、どういう……」
憂「これであんたは、永遠に私のおもちゃだってこと!」
和「なっ……!」
憂「じゃあ行ってくるから、ここでおとなしく待っててね。
絶対に……逃げちゃだめだからね」
和「は……はい」
憂「あはは、これからも末永くよろしくね、私のクソメガネ!」
第一部 完
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:43:58.03 ID:D2P/LPVb0
ちょっとウンコしたいんで第二部は七時くらいからやりましゅ
あと実話ではない
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 17:51:14.64 ID:D2P/LPVb0
第二部予告
「綺麗な腕だね、焼き甲斐があるよぉー」
「真鍋さん何言ってるの?」
「まだあと4匹残ってるんだからさ!」
「チェケラッ……チョイ」
「私もあなたには期待してるんだから、頑張ってね」
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:01:44.71 ID:D2P/LPVb0
あれから半年が過ぎた。
季節は移り春がきて和は3年生になった。
唯「おはよう、和ちゃん!」
澪「おー和、朝会うなんて珍しいな」
和「おはよ、みんな」
軽音部の5人は和のした行いを忘れたかのように
和と普通の友達として接している。
そして和は停学も退学も受けずに済み、
今も無事に学校へと通うことが出来ている。
すべて憂の根回しがあったからこそである。
憂のおかげで和のやったことは明るみに出ることはなく
友人関係の中で孤立することもなく
見かけの上では和はごくごく平凡な学校生活を送っていた。
ただ一つ、憂のいじめがさらに過激化したことを除いては。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:07:42.73 ID:D2P/LPVb0
昇降口。
唯「あ、ういー。もう学校着いてたんだー」
憂「うふふ、私の方が先に出たのに。
お姉ちゃんたらまた澪さんたちとおしゃべりしながら
のんびり歩いてたんでしょー」
唯「えへへー」
澪「まあ確かに喋りながら歩いてると遅くなっちゃうな」
和「そうね」
憂「あっそうだ、和さん。ちょっと来てもらっていいですか?」
和「…………ええ、いいわよ」
憂は事あるごとに和を校舎裏へと呼び出していた。
それは今朝も例外ではなかった。
和は唯たちに一刻の別れを告げ、
憂のうしろについて校舎裏へと向かう。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:14:30.86 ID:D2P/LPVb0
校舎裏。
ここは昼間でも薄暗く、
学校の隅っこに位置しているため
誰かがやってくることはめったに無い。
憂「ふふ、おともだちと楽しくやってるみたいだね」
和「ええ……おかげさまで」
憂「ほんとに感謝してるの?
全然そういう感じが伝わってこないんだけど……」
和「し、してるわよ……」
憂「ふーん……
じゃあ感謝してるって証拠を見せてよ」
そう言って憂はブレザーの内ポケットから
タバコとライターを取り出した。
和「ちょっ……タバコなんて」
憂「違うよ、吸うんじゃないよ」
憂はタバコを1本抜き出して火をつける。
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:17:06.46 ID:D2P/LPVb0
憂「うん、吸うんだよ」
憂はタバコを1本抜き出して吸いながら火をつける。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:21:39.83 ID:D2P/LPVb0
憂「私、タバコって結構好きなんだよねー。
お父さんがよくタバコ吸うからかなー……
このタバコもライターもお父さんのなんだよ」
煙を吹き上げるタバコをうっとりとした表情で見つめる憂。
対する和は「一体何をされるのか」と
わずかに身構えて慎重に相手の出方をうかがっている。
憂「ねえ……制服の袖まくって」
和「えっ」
憂「ほら、早く」
和「まさか……」
憂「そのまさかだよ」
和「ひっ……! や、やめっ……」
憂「あんたに拒否権があると思ってるの?
ほら、早く袖まくらないと制服の上からやっちゃうよ?」
和「い、いや……」
憂「腕じゃなくて顔にやってもいいんだよ?」
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:27:11.62 ID:D2P/LPVb0
和「あ、あ、あ……」
和は震える手で制服の袖をまくっていく。
白く細い腕が顕わになる。
憂「綺麗な腕だね、焼き甲斐があるよぉー」
和「ひ、いや、いや……」
憂「ふふふ……」
憂は微笑みながらじりじりとタバコを和の腕に近づける。
和は恐怖のあまり涙を流し、
腕をガクガクと痙攣させている。
その腕を憂が空いている方の手で掴む。
憂「ちょっと熱いけど逃げないでねー」
和「あ、ああああ」
憂「じゃあいくよおー……えいっ☆」
憂の可愛い掛け声と共に
タバコが和の腕に押し付けられた。
和「ぎやああああああああっ!!」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:32:37.35 ID:D2P/LPVb0
憂「今日からあんたの腕は私の灰皿ね」
そう笑いながら憂はタバコを腕にねじこむようにぐりぐりと。
和「いだいあついいだいあつい!
もうやめて! もうやめてよおおお!」
憂「だーめ、まだ19本残ってるんだから」
和「いや、いや、もうやめて、許してぇ……」
憂「あははは、その顔最高だよー。
てゆーかあんたが許されるわけないじゃん、
あんたはそれだけのことをしたんだからさ」
和「謝る、謝るからァ……」
憂「私に謝ってもしょうがないでしょ。
だいたい謝ったところであんたの罪は消えないんだよ。
そしてこれは烙印なの、
あんたが罪人だっていう証なの」
憂は2本目のタバコに火をつけて
再び和の腕に押し付ける。
和「あんぎええええええええええ!」
その朝は1時間目が始まるまでに
全部で20本のタバコを使い切ったのであった。
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:38:26.67 ID:D2P/LPVb0
和の精神は疲弊しきっていた。
今までならば唯をいじめることで
溜まったストレスを発散できていたので
憂のいじめにも耐えることができた。
しかし今はもう和にいじめる相手はおらず、
そのうえ憂のいじめはパワーアップしている。
このままではいつかいじめ殺されてしまうのではないかとさえ
和は思い始めていた。
そしていじめ以外にも和の精神を蝕むものがあった。
それは生徒会長としての仕事であった。
和は生徒会長に立候補する気などさらさらなかったのだが
周りからの強い推薦を断り切ることが出来ずしぶしぶ立候補、
選挙活動には特に力を入れていなかったのだが
なんと108人の候補者を差し置いて当選してしまったのだ。
和がいかに生徒たちからの信頼を集めているかがよく分かる結果だが、
それだけに和は重いプレッシャーを感じていた。
「会長、次回の会議で必要な書類なんですけど」
和「ああ、あとで見るからそこに置いといて」
「会長、チベット文化研究部が部費の増額を要求していますが」
和「そうね、部としての結果は出ているから要検討ね」
「会長、不良生徒から没収したゲーム機はどうすれば」
和「担任の先生に返しておきなさい」
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:44:59.00 ID:D2P/LPVb0
ヤル気がないのならば適当にやればいいのだが
和としてはそういうわけにもいかなかった。
108人を蹴落としてトップの座についたこと、
生徒の信頼に応え生徒のために働く立場にいること、
そのことが和に立派に生徒会長を務めねばならないという
義務感を生じさせていた。
和「はあ、最近は特に忙しいわね」
「そうですねー、疲れてますね会長」
和「ええ、疲れてるわ、とてもね……
ああ今度の全校集会で喋る文面考えとかなきゃ」
「文化祭実行委員会の人員募集の呼びかけですね」
和「そう、それよ。なんて話せばいいのかしらね……」
「……会長てすごいですね。疲れてるのに、
いつも生徒会の仕事のことばかり考えて」
和「そりゃそうよ、生徒会長だもの」
「立派です。尊敬します」
束の間の休息、和が後輩となごやかに語り合っていると、
生徒会室の扉がひらいた。
憂「あのー、真鍋さんいますか?」
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:50:48.45 ID:D2P/LPVb0
和はまたも校舎裏に連れてこられた。
グラウンドで部活をしている運動部の掛け声も
音楽室で演奏している吹奏楽部の楽器の音も
ここではかすかにしか聞こえてこない。
憂「たいへんみたいだねー、生徒会長の仕事」
和「ええ、とても大変よ……」
憂「ちょっと話を聞かせてもらったけど、
今度の全校集会でなんか喋るんだって?」
和「ええ……そうだけど」
憂「じゃーさ、明日喋るときに
語尾に『チェケラッチョイ』ってつけてよ」
和「はっ……?」
憂「はっ、じゃないよ。チェケラッチョイ。
ほら言ってみて」
和「チェケラッ……チョイ」
憂「うんそう、いい感じだね。
今度の全校集会で、それを語尾につけて喋ってね」
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:56:02.16 ID:D2P/LPVb0
和「ええっ、そんなこと無理よ……
全校生徒の前よ……?
先生たちだって見てるのに」
憂「別に無理じゃないよぉ、
今だってちゃんとチェケラッチョイって言えてたし」
和「そういう問題じゃなくて……」
憂「こーゆうオチャメな一面も見せといたほうが、
生徒会長として慕われるよ?」
和「でも、そんな……」
しぶる和のスネに憂は思いっきり蹴りを入れた。
和「あだっ!」
憂「や・る・の……分かった?」
和「は……はい」
憂「ふふ、最初からおとなしくそう言えばよかったのに」
和「ごめんなさい……じゃあ私、生徒会室戻るから」
憂「待ってよ、まだ用は終わってないよ」
197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:01:23.56 ID:D2P/LPVb0
和「えっ」
憂「チェケラッチョイはちょっと思いついたから言っただけ。
本当の用事はこっち」
そう言うと憂はカバンからタッパーを取り出した。
憂「生徒会の仕事で疲れてるでしょ?
おやつの差し入れだよ」
和「……」
差し出されたタッパーを受け取る和。
和はもう嫌な予感しかしていなかった。
一体何が入っているのだろうか……と
恐る恐るタッパーをひらく。
和「……ひっ!」
憂「どうかな、美味しそうでしょ?」
和「これこれ、これって……」
憂「うん、ごきぶりだよー」
タッパーの中には生きたゴキブリ5匹が
テープで留められていた。
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:06:25.30 ID:D2P/LPVb0
憂「あんたのために捕まえてきたんだよ。
全部残さず食べてねっ」
和「無理無理無理、ほんとに無理!
知ってるでしょっ、私が虫嫌いなのっ」
憂「知ってるよぉ、だから捕ってきたの」
和「いやほんと無理だから、これ食べるなんて……」
憂「せっかく捕ってきたんだから食べてよ。
もったいないじゃん、残しちゃうなんて」
和「これだけは無理、もうほんと無理!
根性焼きいくらしてもいいから、
チェケラッチョイ何度でも言うから、
これだけはやめて、ほんとに、お願いします……!」
憂「あーもう、面倒くさいなあ……」
泣きじゃくる和のみぞおちに
憂は膝蹴りをぶちかました。
和「あぐぇ!」
そして憂は菜箸で生きたゴキブリを掴むと、
無理やり和の口を開かせてそこに突っ込んだ。
和「もぎゃあああああああああ!」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:11:26.19 ID:D2P/LPVb0
すかさず憂は和の口を押さえつける。
和「んー! んーんんんんんんん!!!」
涙をボロボロと零し全身を震わせながら
声にならない叫びを上げる和。
口の中でゴキブリが這い回る感触を
いやというほど味わって、
もはや発狂一歩手前といった様相である。
憂「早く噛むか飲み込むかしなよ」
和「んんんんーんんー!!!」
憂「まだあと4匹残ってるんだからさ!」
和「んんんんんんんんんんんんんんん!!!」
憂「そっか、泣くほど嬉しいんだ……
じゃあ明日もいっぱいゴキブリ捕まえてきてあげるね、あははは」
和「んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!」
その後、和は何度も何度も嘔吐しながらも
なんとか5匹の生きたゴキブリを完食した。
食べ終えたあとの和は顔面蒼白、汗だくだく、
制服はゲロまみれで下半身は小便でびしょびしょだった。
209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:16:29.06 ID:D2P/LPVb0
憂はその後も毎日ゴキブリを生け捕りにしては
学校に持ってきて和に食べさせた。
虫が嫌いな和にとって
これは今までされたどんな仕打ちよりもつらいものであった。
いくら和の精神がタフだとは言っても
こんなことが毎日続いては流石に限界がくる。
そしてさらに忙しくなっていく生徒会の仕事が
和の精神の疲弊に拍車を掛ける。
和はもう憂のいじめに耐えること、
生徒会長の仕事を続けることを両立するのは不可能だと判断した。
そこで和は担任のさわ子に生徒会長を辞めさせてもらえないかと
相談することにしたのであった。
さわ子「え、生徒会長を辞めたい?」
和「はい」
さわ「どうしたのよ、急に。何かあったの?」
和「いえ、なんていうか……
思ったよりつらくて、自分には出来ないなって」
さ「真鍋さん……」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:21:31.98 ID:D2P/LPVb0
和「無理なお願いだってことは分かっています。
でも……もうこれ以上は続けられません」
さ「うーん……真鍋さんがそんな弱音を吐くなんて珍しいわね。
よっぽど参っちゃってる感じなのかしら?」
和「……はい」
さ「そっか……でも、辞めるのは良くないわ。
生徒会長職を途中で放棄した人なんてのも前例がないし」
和「……」
さ「あなたは108人の候補者から、
全校生徒の信頼を得て生徒会長になったのよ。
勝手に辞めちゃうのは、みんなへの裏切りにもなると思うな」
和「……」
さ「せめて任期を全うするまでは、ね。
頑張って続けられないかな」
和「……まだ、耐えろと」
さ「ん?」
和「まだ耐え続けろとおっしゃるのですか」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:26:32.26 ID:D2P/LPVb0
さ「耐えるだなんて、大げさね……
またつらくなったときは、
周りの人や先生に助けてもらいなさい。
あなた独りですべてを抱え込むことなんてないのよ」
和「……」
さ「じゃあ私、会議があるからこれで行くわね。
私もあなたには期待してるんだから、頑張ってね」
さわ子はさっさと話を切り上げ、
相談室から出ていってしまった。
あとに残された和はひとり、考える。
和(生徒が頼るべき教師も、
私にただ耐えることを押し付けるだけだった……
でももう本当にこれ以上は無理……自分でわかる)
和(今みたいな生活……
生徒会長の仕事に忙殺され、
憂からは暴力を受けゴキブリを食べさせられ……
こんなことを続けていたらもう私がもたない)
和(心も体も……
私という存在が壊れてしまうまでは……
耐え続けるしかない……
諦めるしかないというの?)
そのとき、和の脳裏に澪の言葉が蘇った。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:31:32.24 ID:D2P/LPVb0
澪『私も……いじめられたことあるから分かるんだ。
諦めるのは一番ダメな選択肢だって』
澪『諦めるってのは耐えるってことじゃない。
耐えることすら放棄して、
自分の心を殺すってことなんだ』
澪『そう、心だけが死んだ……いわば半分死人』
和(ああ、そうか……
耐えることさえ放棄してしまえば楽になるんだ)
和(心だけを殺す……)
和(何も感じずに体だけが生きていく……
それが……半分死人)
和(半分死人……)
和(生徒会長も、憂のいじめも)
和(もう耐えなくていい)
和(ただ生きているだけでいいんだ……)
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:36:33.13 ID:D2P/LPVb0
私は、心を殺しました。
だから、私の名前は、
半分死人です。
心だけ、半分だけ死んでるからです
心が生きてると、もう耐えられないから
これ以上は心を殺さないと、
私は耐えられません
だから私は心を殺しています
次の人が、
ターゲットになるのを
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:41:34.86 ID:D2P/LPVb0
さわ子に相談をした日の翌日が全校集会だった。
5時間目、生徒たちは講堂に集められて
新しく代わった校長の挨拶に耳を傾けていた。
校長「えー前校長はご病気のため引退なされたということで
本日より私がこの桜が丘高校の校長に就任いたしました。
でーありますからーえーなんだっけーあー
それでーあのーうんぬんかんぬんでーえーとまーそのー」
梓「話長いね、この新校長」
純「前のも大概長かったけどまた格別だね……
しかも眠気を誘うような話し方でぐうすかぴいすか」
梓「寝るな寝るな」
憂「そうだよぉ、寝ちゃだめだよ。
今日はこのあと面白いものが見られるんだからさっ」
純「面白いもの? なにそれ」
憂「ふふ、それは見てからのお楽しみ☆」
校長「えーではこれで挨拶を終わります。
皆様これからよろしくお願いいたします」
「校長先生、ありがとうございました。
次は生徒会長の真鍋和さんからお話があります」
憂「きたきた」
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:46:36.04 ID:D2P/LPVb0
司会の生徒会役員に呼ばれ、
和は壇上へと上がっていく。
新校長の話で眠りかけていた生徒たちが目を覚まし、
和のほうへと視線を注ぐ。
和「こんにちは。ご紹介にあずかりました
生徒会長の真鍋チェケラッチョイです」
舞台中央のマイクに向かい、和は話し始めた。
同時に生徒や教師の間に動揺が広がる。
「え?何?」
「チェケ?」
「ふざけてるのかな?」
「え、今の笑うとこ?」
「真鍋さん何言ってるの?」
和「現在生徒会では文化祭実行委員会に
参加する人を募集してチェケラッチョイ。
まだ1学期ではありますが
10月の学園祭にむけて私たちと一緒に
頑張ってくれる人は是非チェケラッチョイ」
講堂は水を打ったように静まり返った。
表情を一切変えずに淡々と語り続ける和に、
生徒や教師たちはどう反応して良いのか判断がつかなかったのだ。
ただ憂だけは必死に笑いを堪えていた。
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:51:37.10 ID:D2P/LPVb0
放課後、和は憂に呼び出された。
今回は校舎裏ではなくトイレだった。
憂「ぶはっはははは、あんた最高!
無表情でチェケラッチョイとか言ってんだもん、
もう笑い堪えるの大変だったよー!」
和「そう」
憂「でもほんと面白かったわー。
いいもん見られたよ、あはははは」
和「そう」
憂「なに? 反応悪いな。
ああ、さすがに恥ずかしかったの?」
和「べつに」
憂「ふうん……? まあいいけど。
それよりさ、今日トイレ掃除しなきゃいけないんだよね」
和「へえ」
憂「でさ、一緒に掃除する班の人がみんな帰っちゃって。
あんたに手伝ってもらおうと思って」
和「そう」
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:56:38.02 ID:D2P/LPVb0
そう言われた和はロッカーから掃除用具を取り出そうとする。
が、憂に阻まれてしまった。
憂「ダメだよ、誰が道具使って良いって言った?」
和「でも道具がなきゃ掃除ができないわ」
憂「はあ、これだから現代っ子は……
すぐ道具に頼ろうとしちゃだめだよ。
まず自分の力で掃除しよう、って思わなきゃ」
和「どういうこと?」
憂「だからー、自分の体を使って、
トイレを掃除しろってことだよ」
和「どうやって?」
憂「じゃあまず、全部の便器を
舌で舐めて綺麗にしてもらおうかな」
和「わかったわ」
憂「え?」
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:01:38.29 ID:D2P/LPVb0
和は命令に逆らおうともせず、
素直に床に四つん這いになって
和式便器をぺろぺろと舐め始めた。
憂「うっわ、マジで舐めてるよ、きもー。
頭おかしいんじゃないの? あはははは」
和は10分間かけて一つの便器を隅々まで舐め上げた。
そして隣の個室に移って、再び便器を舐めまわす。
憂「あっはは、無様ー。きもー」
憂は最初こそ笑いながら和の便器舐めを見物していたが
和が3つ目の便器を舐め終えたところで
いつもとは様子が違うということに気がついた。
和があまりにも素直すぎるのだ。
今まで和をいじめたとき、
和はいつも憂に抵抗していた。
泣き出したり、逃げようとしたり、
許しを乞おうとしたりして、
憂のやろうとすることを素直に受け入れることなどなかった。
しかし今はどうだ。
憂の命令に即答で従い、
文句一つ言わず無表情のまま黙々と便器を舐め続けている。
憂(抵抗は無駄だと悟ったっていうこと……?
ちっ、ならこっちも考えがある)
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:06:38.96 ID:D2P/LPVb0
その日以降、憂のいじめはさらに激しさを増した。
憂は和が憎くていじめているわけではない。
ただ己の内から湧き上がる暴力衝動を
自分よりも弱い人間にぶつけて発散しているだけなのだ。
そしてそのためには「暴力を振るう」という行動だけでは意味が無い。
「自分の暴力であいてを苦しめる」ことによって
初めて衝動の発散が達成されるのである。
だが和はもう憂の暴力に苦しまなくなった。
無表情で無抵抗でされるがままにしているだけだ。
そのため憂は暴力衝動を発散させきれず、いらいらを募らせる。
そしてさらに和に過激ないじめをおこなう。
でも和はそれを無抵抗で受け入れ……
という悪循環が発生してしまっていた。
そのせいでいじめの過激化は留まるところを知らなかった。
ある時は和の頭をバリカンで五分刈りにした。
またある時は和を全裸にして街中を歩かせた。
別の日には授業中に教卓の上でウンコをさせた。
バールのようなものでタコ殴りにしたこともあった。
ゴミ焼却炉に顔を突っ込ませた。
背中に裁縫針を何十本も刺した。
一日中逆立ちで過ごさせた日もあった。
援助交際もさせた。万引きもさせた。
それでも和は全くへたばらず、
ただ憂のいじめを黙々と受け入れていた。
和のいじめ甲斐が無くなったことで逆に憂が
発散されないストレスを抱え込むことになった。
242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:12:21.07 ID:D2P/LPVb0
和の奇行は全校生徒の知るところとなっていった。
このことについて生徒たちは
「生徒会や受験勉強が大変でノイローゼにでもなつたのだらう。
優等生といふのも色々あるのだな」
などといった無責任な感想しか持たなかったが、
ただ一人、憂と和の関係に気づいた者がいた。
誰あろう中野梓であった。
梓は放課後、教室に憂を残らせ、
自身の内に沸き起こった疑惑を憂にぶつけた。
梓「ねえ、憂。
最近の和先輩がおかしいのって、
憂が何か関係あるんじゃないの?」
憂「は……? 何でそう思うわけ?」
この頃になると、憂はもうイライラしているのを
隠そうともしなくなっていた。
梓「和先輩が何か問題行動を起こした日……
決まって憂はイライラしてて、私や純に当り散らしてくるでしょ」
憂「それだけで私のせいだって決め付けるの?」
梓「他にも全校集会の日、憂は和先輩が変なこと言うのを
知ってたみたいだったし、それを面白がってる感じだった。
……もっとも、こんなことは想像でしかないし証拠にはならないけど」
247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:17:07.53 ID:D2P/LPVb0
憂「ふん、バカバカしい」
梓「まだあるよ。和先輩が澪先輩をいじめていたこと……
知ってるよね」
憂「ああ、お姉ちゃんも被害者だったね」
梓「うん、その澪先輩のいじめが判明したとき、
私たちは生徒会室で和先輩を問い詰めた。
そうすると和先輩はあっさりと自分がやったって認めたんだよ」
憂「で?」
梓「そしてその後……和先輩は憂のことを言っていた。
憂が全部悪い、澪なら私と憂の関係を知ってるはずだ……って」
憂「……」
梓「そのときはただヤケクソになって嘘を付いてるんだと思ってた。
でも最近……あれが本当だったんじゃないかって……」
憂「……」
梓「憂は……本当に和先輩とは何もないの?」
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:22:09.87 ID:D2P/LPVb0
憂「……」
梓「私、今から部活行って澪先輩に尋ねてみる。
憂と和先輩の関係について……」
憂「……」
梓「もし、もし本当に……憂が和先輩に対して
なにか酷いことをしてるなら……
私は憂を許さない」
憂「……」
梓「でも憂が無実なら、
親友を疑った罰を受けるよ」
憂「罰、ね……」
梓「罰の内容は憂が自由に考えてくれて良い。
じゃあ私、軽音部行ってくる」
憂「考える必要なんてないよ」
梓「えっ」
振り向いた梓の顔に、
憂は渾身の力を込めてグーパンチをぶちかました。
梓はバランスを崩しその場に倒れる。
憂「全部私がやったんだもん」
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:29:10.90 ID:D2P/LPVb0
梓「ぐ……な、なんで」
憂「別に理由なんてないよ。
ただあいつがウザイから、キモイから。
そしてサンドバッグに最適だったから」
憂は話しながら床にうずくまる梓に
蹴りを食らわせる。
憂「でもあいつはもう使えないよ。
サンドバッグであることを受け入れてしまった。
自分で自分の心を壊してしまった。
だから今度はあんたを私のおもちゃにしてあげるよっ」
容赦なく腹を蹴り上げる。
梓「あぐっ……!」
憂「ふふ、ふふふ、でもその前に……
あのクソメガネを、心だけじゃなくて
全部ぶっ壊してやらないとね……
いらなくなったおもちゃはちゃんと処理しなきゃね」
そう言うと憂は懐からカッターナイフを取り出し、
梓の目の前にちらつかせた。
憂「えへへ、梓ちゃんも同じ目にあいたくなかったら……
私の言うことはちゃんと聞くんだよ……?」
梓「っ……」
260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:35:55.06 ID:D2P/LPVb0
翌日、放課後。
和は憂に校舎裏に呼び出された。
和「……」
和は拷問にも近いいじめを連日のように受けて
何年も風雨に晒された人形のようになっていた。
眼に光はなく、髪は乱雑に切られ、歯は何本も折れて、
スカートから伸びる脚にはいくつも生傷があった。
制服はボロボロであちこち破れている。
メガネはレンズが割れ、フレームが曲がり、
かろうじて耳に掛かっているといった具合だ。
親はもう和を勘当していた。
教師は和を腫れ物のように扱っていた。
友人たちはみな去っていった。
和を救うものはいなかった。
憂「おまたせぇ」
和「……」
憂「今日はなんで呼び出されたか分かる?」
和「……」
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:40:54.78 ID:D2P/LPVb0
憂「実はお別れを言おうと思って」
和「……」
憂「違うおもちゃを見つけたから。
もうあんたは要らない」
和「……」
憂「私はもうあんたをいじめないよ。
どう? 嬉しいでしょ?」
その問いかけにも和は力なく頷くだけであった。
憂「で、要らなくなったおもちゃって、
どうなるか分かる?」
和「……」
憂「捨てるんだよ」
和「……」
憂「でもまずは捨てるために」
和「……」
憂「その体を壊さなきゃね」
カッターナイフを手に取る憂。
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:45:25.15 ID:D2P/LPVb0
憂「私の言ってる意味、分かる?」
和は首を横に振った。
憂「殺す――ってことだよ」
和「っ!」
憂「あっはは……さすがに表情かえたね……
あんたも殺されるのは嫌なんだ、へぇー……」
和「や、やめて……」
憂「やめるわけないでしょ!
今までさんざん私をコケにしてきて……!
クソメガネの分際で……!」
和「ひ、いや……」
憂「もういじめとか生ぬるいことはしない!
ブッ殺してやるから!」
和「い、いやぁぁぁぁぁっ!」
「やめなさあああああああい!」
277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:51:37.23 ID:D2P/LPVb0
和の体にカッターナイフが振り下ろされんとするまさにその時であった。
梓が教師を引き連れて校舎裏へとやってきたのだ。
「何をしているんだ、平沢!」
「無駄な抵抗はやめろ!」
「そのカッターナイフを離しなさい!」
憂「なっ……なんでっ……
梓ちゃんっ……!!」
梓「バカだよね、憂は。
いじめる相手はちゃんと選ばないと」
憂「くっ……!」
「平沢! おとなしくしろ!」
「さあ職員室に行くぞ」
「話はちゃんと聞かせてもらうからな!」
憂「な、なんで……
ふざけるなっ、みんなで私をバカにしてっ……
みんな死ね! 死んでしまえ!」
死ね、死ねと喚きちらしながら
憂は教師に抱えられて連れ去られていった。
校舎裏に残されたのは和と梓。
282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:58:07.88 ID:D2P/LPVb0
数分間の沈黙が流れたのち、
和が口を開いた。
和「……ありがとう」
梓「別にお礼なんていりません。
あのままだと、私がいじめのターゲットになってましたから。
ただ自分の身を守っただけですよ」
和「自分の身を守る……か。
私には……そんなことさえできなかった」
梓「あなたと私じゃ違いますから」
和「……強いのね」
その和の言葉を聞くと、梓は和を一瞥し
踵を返して立ち去っていった。
かくして憂の和に対するいじめは終わった。
突然かつあっけない幕引きであったが
元々大した理由のもとに始まったいじめでもないのだから
終わるときにも唐突なのが自然な形であろう。
和は親と復縁し
教師たちから土下座で謝られた。
学校が費用を負担して制服とメガネを買い直し、
傷も髪の毛も元通りになるのを待って
和は再び学校へと通い始めた。
291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:07:29.51 ID:D2P/LPVb0
憂は退学になった。
その後の憂の行方は、和には知らされていない。
おそらく少年院にでも入れられたのだろう、と和は勝手に想像していた。
生徒たちは和を暖かく迎え入れてくれた。
教壇の上でウンコしたり
体育の時間に裸踊りをしたり
家庭科の調理実習で生の肉を食べたりしたときは
みんなキチガイを見るかのような眼で和のことを見ていたのだが
それらすべて憂が元凶であり和は何も悪くないのだと分かると
あっさりと態度を変え、
普段のとおりに優しく和に接してくるようになった。
教師たちは和にやたらと優しくなった。
きっといじめを放置していたことへの後ろめたさ、
そして和がこのことを外部に漏らさないように……
との打算的な面もあっただろうが、
ともかく和は心地良く学校生活を送ることができた。
和(高校生活がこんなに楽しいなんて知らなかった……
あと1年もないなんて……もったいないな)
晴れやかな朝、
すがすがしい表情で登校する和。
もういじめられていた頃の面影はない。
和が残り少ない高校生活に想いを馳せていると、
後ろから聞き慣れたセリフが聞こえてきた。
唯「おーい、クソメガネ~」
304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:15:16.35 ID:D2P/LPVb0
澪「おはよう、クソメガネ。
朝一緒になるなんて、珍しいな」
律「クソメガネと登校なんて初めてだな。
いやーたまには早起きしてみるもんだ」
紬「クソメガネは今日私と日直だったわよね。
1日よろしくね」
和「…………」
唯「日直もいいけどさ、
とりあえず学校に着いたら、
あの校舎裏に来てくれないかな、クソメガネ!」
和はすっかり忘れていた。
あの和による澪いじめ以降、軽音部5人と和の仲は、
憂の存在によって保たれていたのだ。
その憂がいなくなればこうなることは必然だった。
今度のいじめは憂とは違い、
純粋な憎しみの感情から生まれたものだ。
憂のようにただ暴力を振るいたいだけのものとは違い、
こちらは根深く、そして飽きるということがない。
いつか憎しみの感情が消え去るまで、永遠に続けられるのである。
果たして和は卒業まで耐えられるのであろうか。
がんばれ、和。負けるな、和。
君の戦いは、まだ始まったばかりなのだから。
お わ り
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:16:35.21 ID:D2P/LPVb0 [94/94]
これでおしまい
お望みの復讐エンドだぜ
「半分死人」はシゴフミから拝借
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