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幼女「とうもろこし、いる?」2

幼女「とうもろこし、いる?」
の続き

347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:37:23.96 ID:MSADbkGP0 [47/70]

男「……はぁ……。あの子、一体どこに行ってしまったんだ……」

男「私さえもっとしっかりしていれば……」

男「……だから、文章も書けなくなってしまったんだろうな……」

男「いや、今は弱音を吐いている場合じゃない」

男「まだ探していないところがあるはずだ」

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:41:31.84 ID:MSADbkGP0 [48/70]
先生「あのっ!」

男「あ、先生」

先生「警備員の人にも協力してもらいましたが、1階と2階には居ませんでした」

男「となると、3.4.5階ですか」

先生「それと、あと屋上ですね」

男「屋上?」

先生「えぇ、子供があそべる、ちょっとした遊園地みたいなのがあるらしいですよ」

男「遊園地?」

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:42:18.62 ID:MSADbkGP0 [49/70]
男『隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう』

幼女『ゆうえんち?』

男『ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ』

幼女『う~~~~、たのしみ!』


男「まさか……」

先生「あ、っと。どこ行くんですかっ?」

男「屋上です! たぶんそこにっ」 

351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:51:47.83 ID:MSADbkGP0 [50/70]
先生「……居ませんね」

男「くっそ! 私は……、私は一体何をやっているんだ……」

先生「諦めないでください!」

男「っ」

先生「私達が諦めて、どうするんですか」

男「……」

先生「大丈夫です、きっと」

男「えぇ、すみません。ちょっと頭に血が昇っていました」

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:53:16.99 ID:MSADbkGP0 [51/70]
先生「きっと、きっと……お腹がすいたらもどってきますっ」

男「どういう理論ですか、それ──」


ピンポンパンポーン

「迷子センターです。白のワンピースに、貝のネックレスをした4歳の女の子を預かっております」

「繰り返します、迷子センターです──」

「──、2階の管理事務局までお越しください」

ピンポンパンポン


先生「ね?」

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 20:57:04.46 ID:MSADbkGP0 [52/70]
男「すみません、さっきの放送の子。私の家族かもしれないのですが」

「はい、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」

幼女「あ、おじさん!」

トコトコ

幼女「わ~、おじさんだ~!」

男「まったく……、急に居なくなるから、びっくりしたぞ」

幼女「ごめんなさい」

男「こわかったか?」

幼女「ううん、こわくなかったよ!」

男「そうか、よかった……本当に、よかった」

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:01:43.32 ID:MSADbkGP0 [53/70]
「しっかりしたお子さんですね。泣きもせず自分から’迷子です’って尋ねてきましたよ」

男「そうなのか?」

幼女「うんっ」

男「はは、こいつは参ったな」

「これからはちゃんと見ていてくださいね」

男「はい、ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ」

356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:08:50.25 ID:MSADbkGP0 [54/70]
幼女「あ、せんせ~」

先生「良かった、ちゃんと見つかったんですね」

男「えぇ、本当に色々協力していただいてありがとうございました」

先生「そんな、頭を上げてください。私は何も……」

男「いえ、感謝してもしきれないくらいです」

先生「いえいえ、それじゃあ私はこれで……」

男「一度きちんと御礼をさせてください」

先生「え?」

357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:09:31.59 ID:MSADbkGP0 [55/70]
男「次の休みの日にでも、私でよければご飯でもご馳走させてください」

先生「……」

男「先生?」

先生「へ?」

男「どうでしょうか?」

先生「え? あぁ、もう全然、全然オッケーです!」

男「でしたらまた詳しい事は後でご連絡致しますね」

先生「はひっ!」


360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:12:20.31 ID:MSADbkGP0 [56/70]
幼女「せんせ~、何かヘンだったね?」

男「そうか?」

幼女「む~~~~」

男「さあ、帰って晩御飯を食べようか」

幼女「とうもろこし!」

男「パスタな」

幼女「とうもころし!」

男「とうもろこし、な。ん? ちょっと待ちなさい、口の周りに何かついてるぞ」

幼女「えっと、これはね。ア」

男「あ?」

幼女「あ~~、なんでもなーい」

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:16:09.53 ID:MSADbkGP0 [57/70]
ワイワイ

ガヤガヤ


男の子「んだよお前、迷子になったのか?」

女の子「えぇ? そうなの?」

幼女「うんっ」

女の子「だいじょうぶだったの? ヘンな人に連れていかれたりしなかった?」

幼女「ヘーキだよ!」

男の子「だっせーな、俺だったら絶対迷子なんかになんねーし!」

女の子「わたしだったら……、どうなるんだろう」

男の子「お前だったらぴーぴー泣いてそうだな!」

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:18:20.04 ID:MSADbkGP0 [58/70]
女の子「なっ、なんですって!」

男の子「ひえっ?」

ポーン

幼女「あ、ボールが」

男の子「やべっ、また雷ジジイの畑に……」

女の子「ふん、ジゴウジトクよ」

男の子「く……」


「こらー、誰っすかー。あっしの畑にボール蹴りいれたのはー、ダメっすよー」


三人「ご、ごめんなさーい」


369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:34:47.50 ID:MSADbkGP0 [59/70]
保護者『失敗! 失敗ですの! あんな子供如きに諭されてどうするんですの! 連れ去って近くの公園に放置する契約でしたの!』

『奥さん、あっしはお金よりももっと大切な事を教えてもらいましたぜ』

保護者『むきーーーーーーーー! 何を生意気な! 世の中金、金、金ですの!』

『貰った金は返すっす、そんなに金が好きならもっていきやがれ』

保護者『べ・ん・り・や・ふ・ぜ・い・がぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!』

『あっしはもう店をたたみますぜ、仕事なら他を当たってくれ』

保護者『むきーーーーーーーー!』

保護者『おさまらない! このままでは腹の虫がおさまりませんの!』

保護者『このままでは終わりませんの!』

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 21:40:56.85 ID:MSADbkGP0 [60/70]
たぶんこの後すぐさるさんになるからこの辺りでちょっと休憩します
風呂入って11時くらいにまた戻ってきます



383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:04:20.55 ID:MSADbkGP0 [61/70]
◇ ◇ ◇ ◇



キュキュ


ゴクゴクゴク


男の子「……、ぷはー! 生き返るぜ!」

女の子「もう、水道水がぶ飲みなんてはしたないわね」

男の子「こまけぇことはいいんだよ!」

女の子「まったく……おおざっぱなんだから。そう思わない?」

幼女「うん、おおざっぱ」

女の子「ほら、2対1よ?」

男の子「ぐ……」

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:07:14.07 ID:MSADbkGP0 [62/70]
男の子「2対1がなんだ、すーてきふりでも突破しなきゃゴールはうばえないだぜ!」

女の子「数的不利なんて難しい言葉よくしってるわね、意味わかってんの?」

男の子「もっちろん!」

女の子「どうだか、怪しいもんね」

男の子「あ、カアちゃんだ! おーーーーーーーーーーーーーーい!」

「かえるわよー」

男の子「じゃあな二人とも! まった明日~」

幼女「ばいばい」

女の子「またあしたね」

男の子「じゃあな~!」

385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:14:39.45 ID:MSADbkGP0 [63/70]
女の子「それじゃあ次は何してあそぼっか?」

幼女「んーとね」

女の子「あやとりする?」

幼女「うんっ」

女の子「じゃあ取ってくるね」

幼女「あ、おじさんだ!」

男「おーい、迎えにきたぞ」

幼女「おじさーん!」

男「今日も楽しかったか?」

幼女「うんっ、あのねっ、今日はね──」

男「そうかそうか、帰ったら詳しく聞かせてくれ」

幼女「うんっ! それじゃああたし、帰るねっ」

女の子「あっ、うん……ばいばい」

幼女「ばいば~い!」

386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:23:21.21 ID:MSADbkGP0 [64/70]
保護者「あーーーーーーーーーーーーーら?」

男「?」

保護者「ごきげんあそばせ」

男「保護者さん、こんにちは」

保護者「男性が毎日こんな時間に送り迎えって大変じゃあーーりませんの?」

男「いえ、私は自由業ですので時間の融通はきくんですよ」

保護者「まっ、まままままままま。定職には就かれてませんの?」

男「えぇまあ」

保護者「そのお年で定職に就かれてない……不憫、不憫ですの。わたくし、涙がほろりほろりとこぼれてしまいますの」

男「はぁ……」

保護者「知り合いの会社を紹介してあげてもいいですの。ちょーっと1年くらい遠い海での仕事ですの、オーッホッホ」

男「せっかくのお話ですが謹んでお断り致します」

保護者「まっ、人の厚意を無下にするなんて……ひどい人ですの」


388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:28:09.25 ID:MSADbkGP0 [65/70]
男「私は今の生活に満足していますから」

保護者「後で後悔しても遅いですのよ」

男「えぇ、ありがとうございます」

保護者「……ふん」


女の子「……」

幼女「おじさんたち、むつかしいおはなししてるね」

女の子「ごめんね」

幼女「え?」

女の子「おかあさん、……ああいう人だから」

保護者「帰りますのよ!」

女の子「はい」

幼女「ばいばい」

女の子「ばいば──」

保護者「ほら! さっさと行きますの!」


390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:39:33.47 ID:MSADbkGP0 [66/70]
男「私達も帰ろうか」

幼女「あのね、おじさん」

男「なんだ?」

幼女「あたしのおかあさんって、どんなひと?」

男「……ん」

幼女「おとうさんは?」

男「……」

幼女「どこに居るの?」

男「お前の両親は」

幼女「うん」

391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:41:15.32 ID:MSADbkGP0 [67/70]
男「……すまん、今は話せない」

幼女「む~~~」

男「すまない……」

幼女「それじゃあ」

男「ん?」

幼女「さんたさんに聞いてみるね」

男「あ……あぁ、そうだな」

393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:46:56.08 ID:MSADbkGP0 [68/70]

幼女「おやすみなさーい」


スヤスヤ

スヤスヤ


パタン


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr......


男「姉さん?」

『よー、元気してるか弟よ』

395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:52:52.30 ID:MSADbkGP0 [69/70]

男「元気さ、相変わらずだよ」

『相変わらず暗い声してるなー!』

男「姉さんに似て暗い声してるよ」

『あっそ』

男「そっちはどう?」

『さっむい、昨日から雪ふってる』

男「こっちはまだ暑いよ」

『日本の夏は世界で一番蒸し暑いわ、誇って良いわよ』

男「あんまり誇らしげに思えないんだけど」

397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/27(月) 23:57:26.42 ID:MSADbkGP0 [70/70]
男「それで、今日はどうしたのさ。声がいつにも増して弾んでる気がするけど」

『捜査に進展があったの』

男「へぇ」

『これであの人の冤罪を証明できるかもしれない』

男「……姉さん」

『なによ』

男「その台詞、聞いたの5回目だよ」

398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:00:58.27 ID:6NeKsvfc0 [1/78]
『捜査にはね、現場100回っていう言葉があるの』

男「うん」

『まだ5回目よ』

男「……101回になったら?」

『そんなの決まってるわ』

男「?」

『102回目になるだけよ』

男「いつになるんだよ、それまで」

『いつまでもよ』

399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:03:56.40 ID:6NeKsvfc0 [2/78]
男「今日、あの子に言われたよ」

『何て?』

男「お母さんはどんな人かって」

『……そう』

男「なぁ姉さん、そろそろ帰ってこいよ、一回でいいから会ってやれよ」

『だめ、まだだめ。もう少し』

男「あの子の子供時代は一回しか無いんだぞ」

『わかってる』

男「わかってない」

『わかってるわ』

男「わかってないよ……」

『……そうね、ごめん』

401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:14:24.24 ID:6NeKsvfc0 [3/78]
男「姉さんにとって大事なものは何か、もう一度かんがえなよ」

『……』

男「旦那さんの事、諦めろって言ってるんじゃないよ。ただ、自分の娘と顔を合わせるくらい……」

『怖いの』

男「怖い、ね」

『あの事件の後、あたしは夫を選んだ。……この手は二つあるのにね』

男「あの子は姉さんを待ってる」

『あたしがあの子の立場だったら母親の事、きっと憎んでると思う』

男「姉さん」

『自分を捨てて外国で旦那の冤罪を証明する事が生き甲斐のバカな女、それがあたしよ』

男「あんまり自分の子供を見くびらない方が良い」

『──っ』

男「あの子は、姉さんが思ってるよりずっと強いよ」

402 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:17:10.15 ID:6NeKsvfc0 [4/78]
『はっ、だったらなおさらよ』

男「……姉さん」

『……もう切るわね』

男「クリスマス、あの子が楽しみにしてる」

『クリスマス?』

男「サンタさんがモンブランを持ってきてくれるってな」

『そう』

男「姉さん」

『切るわよ』

男「姉さん!」


プツッ

ツーツー……ツーツー……

404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:32:12.58 ID:6NeKsvfc0 [5/78]

男「アメリカ合衆国と日本か」

男「絶望的な距離だな……物理的にも精神的にも」

男「いっそのこと、こちらから乗り込むか?」

男「いや、……それじゃあ意味がないんだよな」

男「姉さんが、ちゃんとあの子を受け入れる事ができなきゃいけないんだ」


男「その時が来たら……」


男「その時が来たら、私は喜べばいいんだろうか?」

男「はっ、何を」

男「そんなの喜ばしいに決まってる」


男「……喜ばしいに、決まってる」

406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:36:20.95 ID:6NeKsvfc0 [6/78]
チュン……

チュンチュン


幼女「おじさーん、朝だよー!」

男「ん……、あぁ、おはよう」

幼女「おはよー!」

男「随分はやいな」

幼女「えへへ、早起きしちゃった」

男「偉いな、早起きは三文の得と言うからね」

幼女「さーもん?」

408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:42:18.54 ID:6NeKsvfc0 [7/78]
男「……プ」

幼女「?」

男「……ク、あはははは」

幼女「おじさん?」

男「いや、すまない。……ははは、さーもん、そうか。サーモンか」

幼女「おじさんがおかしいー」

男「はぁ笑った、ありがとう。暗い気持ちも吹き飛んだよ」

幼女「う~~~~」

男「ん?」

幼女「おじさんばっかりわらってずるい!」

男「あはは」

幼女「う~~~~、またわらった~!」

410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:58:38.37 ID:6NeKsvfc0 [8/78]
男「よーし、それじゃ着替えて朝ごはんだ」

幼女「うんっ」

男「今日のお弁当は気合を入れて作ってあげるよ」

幼女「えーっ、なになに?」

男「そうだな、トウモロコシとタコさんウインナーと、あとそれから──」

幼女「やったぁ!」

411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:03:51.06 ID:6NeKsvfc0 [9/78]
とりあえず今夜はここまで、
また明日午後から書きます。



449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:10:35.66 ID:6NeKsvfc0 [10/78]
ただいま
保守感謝



450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:11:32.67 ID:6NeKsvfc0 [11/78]
幼女「う~~~~~」

「わん!」

幼女「わんわん!」

「う~~~~~~」

幼女「う~~~~」

「わん! わん!」

幼女「わん!」

「う~~~~」



男「どっちが犬だ」


452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:19:09.05 ID:6NeKsvfc0 [12/78]
「わん! わん!」

幼女「このこ、どうしたの?」

男「お隣さんが旅行に行くみたいでな、預かってきたんだ」

幼女「へぇ~」

男「こわいか?」

幼女「ううん」

男「実を言うとな」

幼女「うん?」

男「私は……その、すこし」

幼女「どうしたの、おじさん?」

男「犬が、怖いんだ……」

「わん!」

男「……」ビクッ

454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:23:02.35 ID:6NeKsvfc0 [13/78]
幼女「こわくないよー?」

男「そ、そうか?」

幼女「あたまなでなでしてあげると喜ぶよ?」

男「頭……噛まれないか?」

幼女「だいじょうぶ、ほら」

「くぅ~ん……」

幼女「ね?」

男「む……」

幼女「ほらほら」

男「……ぐっ」

「わん!」

男「ひっ?」


455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:25:05.76 ID:6NeKsvfc0 [14/78]
幼女「……」

男「……」

幼女「……おじさん」

男「あー……ゴホゴホ。おかしいな、風邪か? すこしうがいをしてこよう」

スタスタ

幼女「おじさん、君がこわいんだって」

「わん!」

幼女「こんなにかわいいのにねー」

「わんわん!」

456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:26:14.91 ID:6NeKsvfc0 [15/78]
幼女「お名前はなんていうの?」

「わん!」

幼女「んー?」

「わん! わん!」

幼女「あ! ワンちゃんね?」

「わん!」

幼女「よろしくね、ワンちゃん」


457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:31:45.18 ID:6NeKsvfc0 [16/78]
男「エサは……、貰ったドッグフードでいいんだよな」

男「お手、伏せ、おかわり、待て……」

男「ちょっと難易度高すぎやしませんか?」


幼女「おじさーーん」

男「ん? なんだ?」

幼女「ワンちゃん、おなかすいたみたい?」

「くぅ~ん……」


男「そ、そうか」

458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:34:12.14 ID:6NeKsvfc0 [17/78]
男「このお皿に盛って……と」

「わん!」

男「う……さすがにゴールデンレトリバー、……でかいな」

幼女「よかったね、ごはんだよー?」

「わん! わん!」

459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:37:01.54 ID:6NeKsvfc0 [18/78]
幼女「さあお食べ~」

男「ちょ、ちょっと待て」

幼女「なーに?」

男「なんでもこの’大型犬の育て方’という本によるとだな……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「ふせ」

「くぅ~ん……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「まて」

「くぅ~ん……」

幼女「よくできました~、たべていいよ」

「わん!」

男「なん……だと……」

461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 15:43:44.04 ID:6NeKsvfc0 [19/78]
幼女「つぎはどうするの?」

男「え~とな、ちょっと待て」

幼女「わくわく♪」

男「ええっと、なになに? ’一日一度は適度な散歩に連れていくべし’?」

幼女「わ~、おさんぽ!」

「わん!」

幼女「わ、すっごくよろこんでるよワンちゃん」

男「尻尾がふりふりだな」

幼女「散歩に行けるのがうれしいんだねっ」

463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:02:44.42 ID:6NeKsvfc0 [20/78]
男「次は散歩か……幸い晴れてるし。となると問題は……首輪にこの紐を引っ掛けないといけないのか」

「わん!」

男「……」

「わん?」

男「……お、おとなしくしててくれよ……」

「くぅ~ん?」

男「よし……良い子だ、そのまま、そのまま……」

「わん!」

男「ひえっ?!」

幼女「も~、おじさんこわがりなんだから」

男「不甲斐ない……」


464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:04:36.52 ID:6NeKsvfc0 [21/78]
幼女「ほ~ら、散歩いこうね~」

ヒョイ

カチ

「わん!」

男「この手際の良さ……私よりデキる……」


男「いかんいかん……気を取り直して。それじゃあ近くの公園でも回っていこうか」

幼女「うんっ」

男「こうして見ると同じくらいの身長だなあ」

幼女「背中に乗れそう?」

男「はは、まさかそんな事──」

「わん!」

幼女「わーい」

男「──ちょっとパワフルすぎるんじゃないかあの犬……」

465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:05:58.60 ID:6NeKsvfc0 [22/78]
幼女「おじさんおじさん」

男「ん?」

幼女「なんだかもっと遊んで欲しそうだよ?」

「わん!」

男「ええっと? ’ボールやフリスビーで遊んであげてください’って書いてあるな」

幼女「ぼーる?」

男「あぁ、たしかお隣さんから預かっていたものが……」

ガサゴソ

男「あった、これか」

幼女「これをどうするの?」

男「投げるらしい」

幼女「投げてどうするの?」

男「とってきてくれるみたいだぞ?」

幼女「え~! かしこい!」


466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:07:07.93 ID:6NeKsvfc0 [23/78]
男「よし、まず私が手本を見せてやろう」

「わん!」

男「いくぞ」

「わん! わん!」


ポーン

テンテンテン……

コロコロコロコロ……


「くぅ~ん?」


男「なぜだ……なぜ動かん……」

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:10:31.52 ID:6NeKsvfc0 [24/78]
幼女「おじさん」

男「うん?」

幼女「つぎあたしが投げてみるね」

男「あ……ああ、そうだね」

幼女「ワンちゃん投げるよ~」

「わん!」

幼女「えいっ」

ポーン

「わんっ」

パクッ

幼女「きゃ! すご~い!」

テクテクテク

幼女「ちゃんと持ってかえってきて、えらいねぇ」

「わん! わん!」

469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:21:12.16 ID:6NeKsvfc0 [25/78]
男「はは、すごいな。子供は」

男「なんでも吸収して、素直で」

男「それに引き換え、私ときたら……」


「くぅ~ん?」

男「ん?」

「くぅ~ん」

男「なんだ? ひょっとして心配してくれているのか?」

「わん!」

男「……」ビクッ

幼女「お~じ~さんっ。こわくない、こわくないよ?」

男「あ、あぁ……」

471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:26:39.09 ID:6NeKsvfc0 [26/78]
────────
────
──


姉『こわくない、こわくないってば』

『でもさっきこいつ、俺の事噛んだもん!』

姉『ちょっとじゃれてただけじゃない、大げさな』

『血! 血がでたよ!』

姉『あー、はいはい。青い血じゃなくて良かったねえ』

わん!

『ひえぇ?!』

姉『おー、じゃれてるじゃれてる』

『姉ちゃん助けて!』

姉『はっはっは~! あんたこいつに相当気に入られたねぇ』

『嫌だっ、こわいよ』

姉『だから怖くないって』

472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:29:43.34 ID:6NeKsvfc0 [27/78]
『う~~~~』

姉『よかったねぇ、一日遊んでもらえて』

『……もう犬なんか大っ嫌いだ!』

姉『あらそう』

『きらいきらいっ、大っ嫌い! 噛んでくるし、のしかかってくるし、吠えるし怖いし』

わん!

『ひあっ?!』

姉『あっはははははは、あんた面白すぎ!』


477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:36:28.84 ID:6NeKsvfc0 [28/78]
姉『あのね』

『なんだよ』

姉『こっちが怖い怖いって思ってたら向こうもそう思っちゃうの』

『だから何だよ』

姉『まず心を開かないとね、人間関係も一緒なのよ?』

『むつかしい話はわかんねーよ』

姉『そうね、おこちゃまにはちょーーーっと早かったかなーーー?』

『バカにすんな!』



男「心を、開く……ね」


478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 16:40:05.49 ID:6NeKsvfc0 [29/78]
幼女「おじさーーーん」

男「ん? どうした?」

幼女「そろそろかえろっ」

男「あぁ、そうだな。日も暮れてきたからね」

「わん!」

幼女「えへへ、いっぱい遊んだね?」

「わん! わん!」

幼女「わわっ、くすぐったいよう」

「くぅ~ん」

幼女「も~」

男「はは、すっかり仲良しだな」

幼女「うんっ!」

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:06:02.91 ID:6NeKsvfc0 [30/78]
幼女「ただいまっ」

「わん!」

男「さて、晩御飯つくるか」

幼女「今日はなに~?」

男「今日は肉じゃがだ」

幼女「わ~い!」

男「すぐ作るからリビングで待っててくれ」

幼女「うんっ」

「わん!」

幼女「いこっ、ワンちゃん!」

「わん!」

483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:08:42.43 ID:6NeKsvfc0 [31/78]
幼女「その前にワンちゃんもご飯だべようねっ」

男「ちょっといいか?」

幼女「うん?」

男「あの、その」

幼女「どうしたの?」

男「わ、私にやらせてくれないか?」

幼女「うんっ!」

男「ありがとう」

幼女「おじさん、がんばって!」

男「あぁ、やってみるよ」

484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:11:13.98 ID:6NeKsvfc0 [32/78]
「わん!」

男「だいじょうぶ……こわくない、こわくない」

「くぅ~ん?」

男「お、おぉお、お手」

「わん」

男「ふ、せ」

「わんっ」

男「おかわり」

「わん!」

男「ま、待て」

「くぅ~ん……」

男「よしっ、食べていいぞ」

「わん!」


485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:13:33.19 ID:6NeKsvfc0 [33/78]
幼女「わ~、食べてる食べてる」

男「上手くいった……」

幼女「ねえおじさん」

男「うん?」

幼女「こわくなかったでしょ?」

男「あぁ……そうだな」

幼女「ねっ!」



男「よーし、じゃあもう一回だ!」

「わん!」

幼女「うんっ」

「わん! わん!」


486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:16:52.80 ID:6NeKsvfc0 [34/78]
幼女「たくさん食べてるねっ」

「わん!」

男「……なんだ、こんなに簡単な事だったんじゃないか」

「わん!」

幼女「そうだよ? かんたんかんたん♪」

男「……最初の一回を踏み出す勇気が、私には足りなかったのかもな」

幼女「ゆーきゆーき」

男「はは」

幼女「わたしもおなかすいた~」

男「おっと、ごめんごめん。もう出来てるよ」

幼女「わーい」


488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:19:20.37 ID:6NeKsvfc0 [35/78]
幼女「いただきますっ」

「わん!」

男「ゆっくり噛んでたべなさい」

幼女「……」コクコク

幼女「……」モグモグ

幼女「……」ゴックン

幼女「おいしいっ!」

「わん!」


489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:24:03.11 ID:6NeKsvfc0 [36/78]




「すみませんね、旅行中この子を預かってもらっちゃって」

男「いえいえ、お役に立てて光栄ですよ」

「今度お菓子でもお作りしますね」

幼女「わ~い、おかしおかし♪」

「ほら~、ポチ。かえるわよ」

「わん!」

「あら? ポチったらちょっとおデブちゃんになったかしら~? 明日からダイエットしましょうね~」

「くぅ~ん……」




男「ポチよ……すまん……、ついつい食べさせすぎてしまった……」

幼女「またおいで~」

「わん!」

490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 17:32:01.63 ID:6NeKsvfc0 [37/78]
とりあえずポチ編はここまで。
また晩御飯たべたら戻ってきます。



505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:58:24.70 ID:6NeKsvfc0 [38/78]
ただいま、保守ありがとうございます。
今夜はエビチリソースでした。

さるにならない程度で投下していきます。


506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:07:26.19 ID:6NeKsvfc0 [39/78]
ワイワイ

ガヤガヤ


先生「ごっめんね、みんな。このプリント、ほんとは先週渡すはずだったんだけど……先生ちょっと忘れてて」

男の子「しっかりしろよー!」

先生「ごめんごめん、おうちの人に渡してね」

幼女「はーい」


507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:10:46.54 ID:6NeKsvfc0 [40/78]
先生「それから、最近物騒な事件が増えてるらしいわ。みんなも気をつけてね」

「事件?」

「ほらコナソくん、さっさと帰るでやんす」

女の子「事件ってなーに?」

先生「えーっと」

幼女「?」

先生「なんだっけ……」

男の子「ほんっと、先生しっかりしろよー」

先生「とにかくっ、みなさん無事でいてください!」

「はーい」

先生「それじゃあ今日は終わります、さようなら」

「せんせー、さようならー! みなさん、さようならー!」


508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:14:07.85 ID:6NeKsvfc0 [41/78]
保護者「迎えに来ましたの」

女の子「おかあさん」

保護者「かえりますのよ」

女の子「あのね、えっと。さっき先生が」

保護者「なんですの? わたくしは忙しいんですの、さっさと帰りますのよ」

女の子「あ……うん」

保護者「ほら、さっさと車に乗りますのっ」

509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:16:50.09 ID:6NeKsvfc0 [42/78]
女の子「おかあさん、おやすみ」

保護者「まったくあの人ったら今日も帰ってこないんですのっ!」

女の子「おかあさん」

保護者「まったく何を考えて……、ん? どうしましたの?」

女の子「おやすみなさい」

保護者「ん? もうこんな時間ですの?」

パタン

女の子「……はぁ」

510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:18:21.25 ID:6NeKsvfc0 [43/78]
保護者「まったく、……あの人の事だけでも忙しいのに」

保護者「あのクソ生意気な若造を思い出すだけで虫唾が走りますの」

保護者「何かないですの?」

保護者「あのクソ生意気な青二才に一泡拭かせる方法は無いですの?」

保護者「……やはり私が直々に」

保護者「いや、それじゃあバレバレですの」

保護者「かといってまた誰かに任せて失敗したら……」

511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:20:48.60 ID:6NeKsvfc0 [44/78]
ピラ

保護者「ん? このプリントは……学費の納付のお知らせですの?」

保護者「げ、明日までじゃありませんの!」

保護者「まったく、もっと早く知らせて欲しいですの。仕方ない、明日の帰りにでも銀行に……」

保護者「!」

保護者「良い事を思いつきましたの」

保護者「この方法ならわたくしがその場に居てもなんら不思議ではありませんの」

保護者「あの男の吠え面をリアルタイムで拝むことができますの!」

514 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:27:56.20 ID:6NeKsvfc0 [45/78]

保護者「ふっふーん♪」

保護者「そうと決まればさっそく準備ですの!」

保護者「必要なものは、覆面とあとモデルガンもあればリアリティが増しますの」

保護者「ちょっとびっくりさせてあげますの」

保護者「あの青二才の恐怖に怯える面が思い浮かびますの、きひひっ」


516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:39:53.80 ID:6NeKsvfc0 [46/78]
幼女「おじさん、これ。先生が渡してって」

男「ん? なんだ?」

『お食事のお誘い、待ってます』

男「うげ、忘れてた」

幼女「なんて書いてるのー?」

男「先生、怒ってたか?」

幼女「ううん、ご機嫌だったよ?」

男「そっか……、後で電話するか」

幼女「あとこれ渡してって言われたの」

男「ん? 学費の納入か、明日にでも銀行いくか」

幼女「ぎんこー?」

男「ああ、帰りに寄ってもいいかい?」

幼女「いいよー!」


519 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:09:35.87 ID:6NeKsvfc0 [47/78]
ワイワイ

ガヤガヤ


保護者「あら?」

男「どうも」

保護者「あなたも学費の納付に?」

男「えぇ、まぁ」

保護者「奇遇ですの、わたくしもですのよ」

男「そうですか」

521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:17:32.35 ID:6NeKsvfc0 [48/78]
「3番でお待ちのお客様──」

保護者「そういえば今日は比較的空いてますのね」

男「そうなんですか?」

保護者「えぇ」

男「こんなもんじゃないんですか? 銀行って」

保護者「おかしいですの」

男「なにがです?」

保護者「他の親御さん達も納付のプリントを貰ってるはずですの、なぜこんなに少ないんですの?」

男「先生が渡すのを忘れてたって聞いてますけど」

保護者「まぁ、そうですの? まったく、若い先生はこれだから困りますのね」

男「はぁ……」

522 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:19:43.69 ID:6NeKsvfc0 [49/78]
「4番でお待ちのお客様──」

男「そういえばお子さんはどうしたんですか?」

保護者「車で待たせてますの、振込みが終わったらすぐ帰りますの」

男「そうですか」

保護者「あなたこそ連れ子ちゃんはどこに居ますの?」

男「退屈だって言うんで横の公園で遊ばせてますよ」

保護者「あらそうですの?」

男「ええ」

525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:29:46.26 ID:6NeKsvfc0 [50/78]
「5番でお待ちのお客様──」

保護者「あなた、作家先生って聞きましたの」

男「ええまあ」

保護者「どんな本を書かれてますの? 参考までに教えて欲しいですの」

男「どんな……と言われましても」

保護者「まっ。まさか人様には言えない様な恥ずかしいものですの? ああいやですの」

男「よければ贈呈しましょうか?」

保護者「いりませんの、興味がありませんの」

男「そうですか」


526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:33:26.16 ID:6NeKsvfc0 [51/78]
ザワザワ

ザワザワ

保護者「それより──」

男「なんだか騒がしいですね」

保護者「そうですの?」

男「なんでしょうか?」




「全員静かにしろ!」


528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:37:28.51 ID:6NeKsvfc0 [52/78]
銀行員「ひっ?!」

「こいつが何だか分かるよな。おねーさんよお、風穴を開けられたくなかったら大人しく言う事を聞いてもらおうか」

銀行員「け……拳銃っ?」

「このバッグに有り金全部入れろ、全部な」

銀行員「ひっ」

「はやくしろ!」


530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:42:51.57 ID:6NeKsvfc0 [53/78]
「あー、人質のみなさん。誠に残念なお知らせだがよ、今からこの銀行は俺たちが占拠した」

「大人しくしてろよ、騒いだり暴れたりしたら手が滑ってコイツの引き金を引いちまうからよ」

「俺も本当はそんな事したかないが、不幸な事故が起こらないとも限らないからな……へっへ」

「まだ五体満足で居たいだろ? そうだろ? ケガはしたくないもんな、わかったら一箇所に固まれ」


保護者「ちょっと! どういう事ですの! 話とちが──」

「あぁ?! なんだこのババア!」

ドガッ!

保護者「きゃっ?」

男「……女性に暴行を加えるのは感心しませんね」

「なんだお前! この銃が見えないのか! 大人しくしてないと──」

男「わかりました、大人しくします」

「……っち、わかればいいんだよ。はやくあっちに行けっ」

男「保護者さん、大丈夫ですか?」

保護者「え……えぇ、大丈夫ですの……でもあなた」

男「これくらいなんでもないです、平気ですよ」

531 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:45:55.12 ID:6NeKsvfc0 [54/78]
「おい! まだか!」

銀行員「ひっ」

「はやくしてくれよ、俺は急いでるんだよ。わかるか? 早くしないと車に乗ったこわーいおじさん達が俺を追っ掛けにきちまうからよ、へっへ」

銀行員「あの……でも……」

「口ごたえしてる暇があったらとっとと手を動かしやがれ!」

銀行員「ひぃ」

533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:49:59.22 ID:6NeKsvfc0 [55/78]
保護者「ご、強盗ですの……ほ、本物、本物の」

男「静かにしていましょう、彼らを刺激するのはあまり得策ではないです」

保護者「……彼ら? 犯人は一人ですのよ?」

男「最初に’この銀行は俺たちが占拠した’って言ってたじゃないですか。少なくともあと1人は実行犯がどこかに潜んでいるはずです」

保護者「そんな……」

男「とにかく今は静かに──」


「はやくしろっていってんだろうが!」


保護者「ひっ」ビクン

男「……」


535 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:53:35.72 ID:6NeKsvfc0 [56/78]

ザワ

ザワ


「ねーねー、なんか騒がしくない?」

「見て見て、パトカーがいっぱいきてるよ」

「事件とか?」

「まさか銀行強盗だったりして」


幼女「……ぎんこー?」


「やだー、こっわーい」

「ちょっと聞いた? 拳銃もって立てこもりだって!」


幼女「……おじさん?」

537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:00:02.42 ID:6NeKsvfc0 [57/78]
「はい、ここから立ち入らないでください」

「危険ですので、みなさんは下がってください~」



警部「……状況は?」

「従業員、客を合わせて少なくとも15人以上が内部に取り残されたままです」

警部「犯人の人数は? 要求は?」

「確認されているのは1名、要求などは現在届いておりません」

警部「……ふむ」

「いかがいたしましょう、警部」

警部「何か要求があった場合は最大限譲歩しつつ人名の救出が最優先だ」

「はっ」

警部「隙があればいつでも制圧できる準備を整えておけ、いいな」

539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:06:06.79 ID:6NeKsvfc0 [58/78]



「あーあーあーあー、まったく。ねーちゃんがトロトロしてるから車に乗ったこわーいおじさん達が到着しちゃってくれやがったじゃねえの」




銀行員「そんな……、私は何もっ」

「お前、通報しやがったな?」

銀行員「ひっ?」

「死ぬか?」

銀行「……いや……いや……」

「はっは、嫌だよな。そうだよな、よーし、それじゃあ今から言う番号に電話をかけろ」

540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:11:37.43 ID:6NeKsvfc0 [59/78]
男(あの男、……巧妙だな)

男(もう一人犯人がいる事をちらつかせて私達を動かせないように仕向けた)

男(潜んでいるとしたらこの、人質の中に紛れ込んでいるのだろう)

男(……、もし騒いだり暴れたりした場合、最悪射殺……)


男(だが、あの言葉が嘘だったら?)

男(実行犯は一人だとすれば、上手く隙をつければ……)

男(いや、……何をバカな、危険が大きすぎる)

男(くそ、打つ手がないな)

542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:21:00.40 ID:6NeKsvfc0 [60/78]
『よーーーーーーう、俺が誰だかわかってるよな?』

警部「あぁ、だいたいな」

『だったら話は早い、早速逃走経路を用意してもらおうか』

警部「そんな要求がのめると思っているのか?」

『あらー? そんな事言っていいのかな? こっちには人質が居るんだよ? 俺と違って善良な一般市民がよ、へっへ』

警部「く……」

『15分後にまた連絡する』

544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:27:32.85 ID:6NeKsvfc0 [61/78]
「ち、話のわからねぇおっさんだぜ」


子供「えっ……えっ、びえぇぇぇぇぇぇ~~~ん!」

母親「こらっ、静かにしてなさい」

子供「えぇぇぇぇ~~~ん!!」

母親「お願いだから静かにしてちょうだいっ」


「あー? なんか騒がしいなあ」


母親「……」

「お前が親か」

母親「……はい」

「黙らせろ」

母親「……、はい……」


545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:31:43.34 ID:6NeKsvfc0 [62/78]
男「ちょっと待ってくれ」

「なんだぁ?!」

男「子供に手を出すなんて最低だぞ」

「あんだと?!」


ザワザワ

ヒソヒソ

ソウヨネ

「お前ら黙れっ!」

ザワザワ

546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:33:35.35 ID:6NeKsvfc0 [63/78]
男「まだこんなに小さいんだ。お腹が空いたら泣く、お漏らしをしたら泣く、当たり前だろ」

「うるせえ、黙れっ!」

男「その子に手を出して見ろ、私が許さないぞ」

「く、……言わせておけば! 撃てるんだぞ、お前なんか簡単に──!」

男「撃てるものなら撃ってみろ、本当に撃てるのならな」

「なめやがって……!」


犯人B「待て、熱くなるな」

547 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:37:41.48 ID:6NeKsvfc0 [64/78]
犯人B「無駄弾を撃つんじゃない」

犯人A「でもよっ」

犯人B「黙れ」

犯人A「……っち」


犯人B「おいお前」

男「はい?」

犯人B「お前の首に俺が当ててるモノ、何かわかるな?」

男「……」

犯人B「こいつはただの包丁だが、昨日俺が丹精込めて磨いたものでね。さて、どんな切れ味なのか試してみたい気分だ」

男「そいつで料理を作れば最高に美味しいんだろうな」

犯人B「まだディナーの一品にはなりたくないだろ? 大人しく座っていろ」

男「……わかった」

548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:45:26.31 ID:6NeKsvfc0 [65/78]
犯人B「そろそろ時間だな、もう一度電話をかける」


警部「……俺だ」

『やあ』

警部「……さっきの声と違うな」

『そこは今気にしなくても良い』

警部「……なんだ」

『要求は聞き入れられましたか? 警部さん』

警部「いま上と相談中だ」

『随分と悠長なんですね、あまりに遅いとあらぬ行動を取ってしまうかもしれませんよ?』

警部「まて! はやまるな!」

『なーんてね、冗談ですよ』

警部「……く」

『5分後、水と食料を寄越してください。正面玄関前に警部さん、あなたが一人で置きに来るんだ。こちらは私が受け取りにいきましょう、もちろん、妙な真似をすれば……わかってますね?』

549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:49:22.43 ID:6NeKsvfc0 [66/78]
犯人A「ほらよ、水だ。飲ませろ」

母親「……」

犯人A「……っち」



男「すみません」

犯人A「またお前か! なんだ!」

男「その子、随分と苦しそうにしてると思いませんか?」

犯人A「あぁ?!」

男「頬も随分赤い、熱があるみたいだ」

犯人A「だから何だって言うんだよ!」

551 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:51:35.75 ID:6NeKsvfc0 [67/78]
男「人質なら私が請け負う、だから女性と子供達を開放してほしい」

犯人A「お前、何を勝手な事を──」

犯人B「まて」

犯人A「でもよ、こいつ生意気だぜ?」

犯人B「確かにこれだけの人数を俺ら二人で見るのはあまり現実的じゃない、こいつの言うとおり人質は少ないほうが良い」

犯人A「……っち」

男「どうなんだ」

犯人B「いいだろう、その通りにしよう」

男「ありがたい」

犯人B「ただし──」

552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:00:40.37 ID:6NeKsvfc0 [68/78]



「ちょ、ちょっと。だめですよ、入ったら!」



幼女「おじさん、おじさんが中に!」

「警察に任せて、下がっててください」

幼女「いやっ、離してっ! 助けにいくの!」

警部「どうした?」

「いや、この子が……」

警部「ん~? お嬢さん、どうしたのかな?」

幼女「おじさんが、中にいるの」

警部「おじさん?」

幼女「あたしのおじさん!」


553 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:01:39.25 ID:6NeKsvfc0 [69/78]
警部「そうか、君のおじさんは必ず私達が助けるからね」

幼女「う~~~~~」

警部「市民を守るのが警察の仕事だ、任せてくれ。お嬢さん」

幼女「む~~~~~」

警部「約束しよう、必ず助け出してみせる」

幼女「……わかった、よ」

警部「誰か、この子を頼む」



「警部、犯人から連絡です」

警部「わかった」

554 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:03:17.80 ID:6NeKsvfc0 [70/78]
『よーーーーーーーーーう、俺だ。逃げ道作ってくれた?』

警部「今、調整中だ」

『調整中ね、言葉をコロコロ変えちゃって役者だねえ? そんなに自分の首が大事?』

警部「何を……」

『良い知らせをくれてやる』

警部「何だね?」

『いまから女と子供を解放する』

556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:10:01.95 ID:6NeKsvfc0 [71/78]
保護者「……どうしてあたくしだけ……」

男「すみませんね、てっきり私以外は解放してくれると思ってたんですが」

保護者「……いえ」

男「幸い水も食料も届いています、じっくり助けを待つことにしましょう」

保護者「あの」

男「はい?」

保護者「どうして、あなたはそんなに平然としてますの?」

男「昔ね」

保護者「?」

男「ちょっと……色々ありまして」

保護者「何ですの?」

男「姉が──」



犯人A「よーーーーーーーーーう、楽しくお話してるところ悪いな。どうやら警察はお前ら救う気は無いらしいぜ?」

557 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:13:14.45 ID:6NeKsvfc0 [72/78]
保護者「なっ? そんな事ありませんのよ!」

犯人A「せっかく人質を一部解放してやったのによ、俺らの要求に応える気は無し」

保護者「それはっ」

犯人A「お前らの命なんざ、結局あいつらには関係ねーって事だ」

保護者「そんな……そんなはず……」

犯人A「へっへ、お前も哀れだよなぁ」

保護者「……く」

犯人A「おっと、あんまり動かないこった。こいつが火を噴くぜ?」

保護者「……」

560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:17:15.96 ID:6NeKsvfc0 [73/78]
男「それくらいにしないか」

犯人A「あぁ?!」

男「あまり人をからかうもんじゃない」

犯人A「ったくよ! お前、ほんっとに生意気だよなあ! 居たぜ、俺の知り合いにもお前みたいなやつがよ! あーもう思い出しただけでも反吐がでそうな程良い人ぶったヤツがな!」

男「それは良い、その人とぜひ知り合いになりたいものだな」

犯人A「残念ながらお前はここでお終いだけどな」

犯人B「やめろ、バカ」

犯人A「……っち」

犯人B「つまらない事で熱くなるな、目的を忘れるな」

犯人A「わーったよ」


565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:25:31.87 ID:6NeKsvfc0 [74/78]
ザワ

ザワ


先生「……ハァ……ハァ」

幼女「あ、先生」

先生「……ハァ……、無事?」

幼女「あたしは、外で遊んでたから……でもおじさんがまだ中に居るの」

先生「そんなっ、さっきニュースで人質は解放されたって」

幼女「おじさんが……がんばってるみたいなの」

先生「え?」

幼女「おじさんが、みんなを助けたんだって。けーぶさんが言ってた」

先生「そうなの?」

幼女「だから、あたしも、がんばっておじさんを待つの」

先生「……そう、でもこのままだと風邪をひいてしまうわ」


566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:28:34.03 ID:6NeKsvfc0 [75/78]
幼女「へーき」

先生「でも」

幼女「へーき」

先生「……じゃあ先生もここで待つわ」

幼女「せんせ?」

先生「無事くらい祈らせてもらってもバチは当たらないでしょ?」

幼女「うんっ」

先生「お願い……無事で居てっ」

567 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:32:15.52 ID:6NeKsvfc0 [76/78]
女の子「おかあさん……遅いなあ」

女の子「でも車から出ちゃいけないって言われてるし……」

女の子「もうかなり経つよね」

女の子「……ちょっと、ちょっとだけなら良いよね?」

女の子「出ちゃえ」

パタン

女の子「うぅ、さむいなぁ」

女の子「はぁ……おかあさん、なにやってんだろ」

569 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:35:12.99 ID:6NeKsvfc0 [77/78]
ザワ

ザワ

女の子「なんだろこの人だかり……」

女の子「う~ん、背伸びしても見えないや」

女の子「すみません、とおして……」

女の子「ぷは」

女の子「やっと出た」

女の子「あれ、……あそこに居るのって」

幼女「……」

先生「……」

女の子「二人してなにやってるんだろ? おーい」

575 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:02:10.59 ID:itsA5ADt0 [1/93]
先生「────というわけなの」

女の子「え?」

先生「あなたのお母さんは、あの中よ」

女の子「そん……な……」

先生「辛いでしょうけれど、今は待つしか……」

女の子「……うそ、うそだ……」

女の子「おかあさん、さっきまで、そばにいたのに」

女の子「ねえ、なんで?」

女の子「なんで?」

女の子「わたしがおかあさんの言う事守らなかったから?」

女の子「わたし……わた……たしがっ」

576 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:03:15.33 ID:6NeKsvfc0 [78/78]
幼女「大丈夫だよ」

女の子「おかあさん、ほんとはね、ほんとは、いい人なんだよっ」

幼女「大丈夫」

女の子「本当はずっと怖がりで、いつも誰かにかまって欲しくて、寂しがりやさんなのっ」

幼女「うん」

女の子「ちょっと……お父さんとケンカしちゃって……最近はずっと大変で……でもっ、でもっ」

幼女「うん、わかるよ。大丈夫」

女の子「わたしが、わたしが……うぅ……」

幼女「大丈夫だよ、おじさんが何とかしてくれるよ」

女の子「うぅ”……う~、うえぇぇええええ~~~ん、おかあさあああああん」

幼女「よしよし、こわくない。こわくないよ」

577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:08:37.90 ID:itsA5ADt0 [2/93]



幼女「おじさん、……大丈夫だよね?」



保護者「ちょっと、大丈夫ですの?」

犯人A「るっせぇ! ほっとけ! こんなのかすり傷だ! 畜生、バリケード張るのも一苦労だぜ」

保護者「いいから見せますの!」

犯人A「……なんでもねぇっていってんだろ」

保護者「確か絆創膏が……ありましたの、これを張っておきますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「ふん、大人しく言う事を聞きますの」

579 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:12:38.31 ID:itsA5ADt0 [3/93]
男「おい、これはこっちで良いのか?」

犯人B「ああ」

男「よ……っしょっと」

犯人A「……良いのかよ」

男「何がだ?」

犯人A「俺らはお前らを人質に取ってるんだぜ? なんつーか、そのよ、なんで協力的なんだ?」

男「これから共同生活が始まるわけだしな、仲が悪くてはお互い損しかしないだろ?」

犯人A「……」

男「そういう事だよ」

580 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:20:08.90 ID:itsA5ADt0 [4/93]
保護者「そういう事ですの」

犯人A「……っち」

保護者「わかったらさっさと絆創膏を張りますのよ」

犯人A「あーもう、わかった。わーったよ!」


犯人B「……」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「あんた、子供がいるのか?」

犯人B「……なぜそんな事を聞く?」

男「子供が泣いた時、水を要求してたから。優しい人だと思ったよ」

犯人B「はっ、強盗に優しいもクソもないだろう」

男「ははは、そりゃそうだ。言えてる」

犯人B「……ガキが、一人」

男「そうか、元気で?」

犯人B「さあな、別れた嫁についていったよ。もう10年以上会ってない」

581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:24:24.20 ID:itsA5ADt0 [5/93]
男「10年か、そしたらもうかなり大きくなってるんじゃないか?」

犯人B「もう……見てもわかんねえよ」

男「実は私も今、子育て真っ最中なんだが」

犯人B「お前が……?」

男「なかなかどうして、手間がかかるものだな。子供というのは」

犯人B「そりゃそうだ、腹が減ったら泣くし、小便を漏らしただけで泣く。夜はうるさくてかないやしねぇ」

男「まったくだ」

犯人B「まぁ……悪くはなかったがよ」

男「そうだろ? そういうもんだよな」

犯人B「ふ」

男「会いたいとは思わないのか?」

犯人B「思ったさ」

男「なら」

犯人B「今更こんな親父に会ってどうする、わざわざ失望させてやることはないさ」

582 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:28:44.50 ID:itsA5ADt0 [6/93]
男「そうかい」

犯人B「……時間だ、電話をする」




犯人A「どわっ」

保護者「もう! 何をやってますの! 殺人的に不器用ですの!」

犯人A「さっきからうるせぇんだよ! 何様のつもりだよ!」

保護者「いいから貸しますの!」

犯人A「あ、ちょ」

保護者「こんなもの、こうすれば」

犯人A「……この女……瞬間接着剤、鍵穴にぶちこみやがった」

保護者「何を言ってますの、あなたがあまりに下手糞だから代わりにやっただけですの!」

583 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:31:41.38 ID:itsA5ADt0
ザワ

ザワ


警部「内部の様子はどうだ?」

「人影が動いているのが確認できますが、それ以外は……遮蔽物が邪魔をしています」

警部「くそ! あまり長引くと人質にも悪影響が出る……」

「警部、どうされますか?」

警部「ぐ……、上からは待てと言われている……」

「ですが!」

警部「わかっている! このまま長引けば長引くほど我々は不利だ……」

「だったら」

警部「軽率な行動に出て人命が失われたらどうする!」

「っ」

警部「耐えるんだ、機会を待て」

「はっ」

584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:38:27.93 ID:itsA5ADt0 [8/93]



保護者(……これでいいんですのね?)



男『ちょっといいですか?』

保護者『なんですの?』

男『し、あまり声を大きくしないで聞いてください。犯人達に聞かれたくない』

保護者『……はい』

男『リマ症候群という言葉に聞き覚えは?』

保護者『ありませんの』

男『なら、今から極力犯人側に協力的な態度をとってください』

保護者『なっ』


585 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:41:34.70 ID:itsA5ADt0 [9/93]
保護者『そんな事……危険ですの』

男『大丈夫、彼らも罪を大きくはしたくない様ですし。我々を傷つける事は考えにくい、大切な人質ですからね』

保護者『でも……そんな事をしてどうなりますの?』

男『少なくとも、このまま膠着しているよりはマシな程度です』

保護者『そんなっ』

男『でも。そこからなにか糸口をつかんでみせます、必ず』

保護者『……わかりましたの』

男『生きて帰りましょう』

保護者『当たり前、ですの』

589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:01:36.90 ID:itsA5ADt0
さるさん解けたかな?

すいません今日はここまでという事で。
また明日午後に戻ってきます。
もう少しだけお付き合いいただけたら幸いです。

635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:10:50.83 ID:itsA5ADt0 [11/93]
ただいま
いつも保守ありがとうございます。



636 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:12:23.79 ID:itsA5ADt0 [12/93]
TV『さて、続きまして昨日からお伝えしているニュースですが……○○市の銀行に強盗二人が立てこもる事件が発生しています』

TV『現場からお伝えします、そちらの様子はどうですか?』


『はい、現場です。時折中で人影が動いているのがこちらからは確認できますが、警察側と犯人側で膠着状態が続いております』

『冬空の下、現場には緊張と疲労の色が見て取れます』

『情報によりますとまだ人質二名が中に取り残されたままという事で、安否が心配されます』

『事件発生から36時間、一向に解決の糸口が見出せないまま、事態は平行線を辿っております。現場からは以上です』


TV『ありがとうございました。捕らわれている二名は子供を近くの幼稚園に通わせている親という事で、子供達も相当心配されているのではないでしょうか』

TV『なお、この実行犯は先月のショッピングモールへの強盗事件、先々月のATM襲撃事件と同一犯かと目されており────』

TV『────続きまして専門家の方の意見を聞いてみましょう』


プチン

637 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:13:59.74 ID:itsA5ADt0 [13/93]
──フッ


男「ん……? 電気が」

犯人A「消えた?」

男「停電か?」

犯人A「ブレーカーを見てくる、妙なマネはするなよ」

男「わかったよ、懐中電灯をもらってもいいかな?」

犯人A「あぁ、ほら。つかえ、お前も」

ポイ

保護者「わ、わ。いきなり投げるなんて危ないじゃないですの!」

犯人A「ったく、うるさい人質だぜ」

保護者「ふん」

638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:14:41.35 ID:itsA5ADt0
カチ

カチカチ

カチ


男「ん? ちょっと壊れてるのかな?」


カチ

カチ


男「あ、ついた」

保護者「わたしくのと交換しますの?」

男「いや、いいですよ」

保護者「ああはやく明るくなって欲しいですの」

男「大丈夫ですよ」

保護者「……」

男「きっとね」


640 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:20:49.15 ID:itsA5ADt0 [15/93]
ゴト

保護者「ひっ」

男「大丈夫、怖くないですよ」

保護者「はぁ……、なんだかどっと疲れましたの」

男「ちょうど外も暗いですし、少し睡眠を取られては?」

保護者「あなたが起きているのにわたくしだけ眠るわけにはいきませんの」

男「そうですか」

保護者「そうですのよ」


641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:23:50.38 ID:itsA5ADt0 [16/93]
保護者「それにしても、ただでさえこんな状況で停電とか……勘弁願いたいですのよ」

男「大丈夫ですか? お手洗いとか」

保護者「……」

男「あまり我慢なさらない方が……」

保護者「……そうですのね」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「女性がお手洗いに行きたいそうだ」

犯人B「……好きにしろ」

男「わかった。ほら、立てますか?」

保護者「ありがとう、ですの」

643 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:37:00.20 ID:itsA5ADt0
保護者「大丈夫、一人で行けますのよ。懐中電灯もあることですし」

男「わかりました、お気をつけて」



犯人B「……」

男「エアコンも切れたみたいで、少し寒いですね」

犯人B「……あぁ」

男「ついてませんね、停電なんて。向こうの仕業ですか?」

犯人B「これが計画的な停電なら警察がこの隙に突入してるだろ、そうじゃないってことはどっかに落雷でも落ちたか」

男「あるいはケーブルが焼ききれたか」

犯人B「……どっちにしろ、状況は変わらんさ」

男「そうですか」

644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:42:17.05 ID:itsA5ADt0 [18/93]
犯人B「お前も……子供が居るんだったな」

男「そうですね」

犯人B「すまないな」

男「何を?」

犯人B「……いや、あの時間お前がここに居なければ、巻き込む事もなかったと思ってな」

男「あの子は、強い」

犯人B「?」

男「子供ってのは、大人が思うよりも、もっとずっと強いものですよ」

犯人B「あ? ……あぁ、そうだな」

男「きっと今も私の無事を祈ってくれていると思いますよ」

犯人B「はっ、それはそれは」

男「あなたのお子さんも、……同じ気持ちなんじゃないでしょうか?」

645 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:45:51.00 ID:itsA5ADt0 [19/93]
犯人B「さあな」

男「……」

犯人B「もう顔も思い出せないんだ、何を考えているかなんてわからねえよ」

男「どんなお子さんだったんですか?」

犯人B「……そうだな、子供のくせにやけに強気で、よく転んで、よく泣いて、よく喋る……どこにでもいる子供だな」

男「特別ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたにとっては、ね」

犯人B「……」

646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 13:50:52.69 ID:itsA5ADt0


ドン!



犯人A「いてっ?」

保護者「いったたたたたた。もう! どこを見てますの!」

犯人A「あぁ?! お前こそ何勝手にほっつき歩いてんだよ!」

保護者「お手洗いですの、許可はいただいてますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「停電、直りそうですの?」

犯人A「ちょろいもんだぜ、これをこうして、こうして……」

保護者「随分慣れた手つきですのね」

犯人A「昔、仕事でな」

保護者「まぁ! 昔から強盗を?」

犯人A「バカ、ちげーよ。ちゃんと給料もらって働いてたさ」

保護者「そんな真面目な人がどうしてこんな事を?」

647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:00:32.93 ID:itsA5ADt0
犯人A「……」

保護者「わたくしで良ければ聞きますのよ」

犯人A「……友人を一人、だましたんだよ。俺は」

保護者「ご友人を?」

犯人A「儲け話──、まぁ。金がすぐ手に入るから協力してくれっていったらホイホイ付いてきやがってよ」

保護者「まぁ」

犯人A「その時俺はギャンブルで作った借金でヤキが回っててな、どうしても金が欲しかったんだよ」

保護者「お金……」

犯人A「まったくバカなヤツだ。今思い出しても笑えるくらいにな」

保護者「でも、素敵なご友人ですのね」

犯人A「……バカだよ、あいつは最後の瞬間まで自分が騙されてるなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった」

保護者「それは、あなたを信じていたからでは無いですの?」

648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:01:43.27 ID:itsA5ADt0 [22/93]
犯人A「……信じていた、か」

保護者「そうですのよ、世の中そんな人はあまり居ないですのよ?」

犯人A「……」

保護者「それだけあなたとその人の間に絆があったんじゃありませんの?」

犯人A「……ずっと、後悔してるんだ」

保護者「?」

犯人A「どれだけ悪い事をしたかわかってる、これが成功したら海外でやり直すつもりなんだ。時期がきたらちゃんと償いだってする」

保護者「それなら……」

犯人A「ただ」

保護者「?」

犯人A「俺はあいつになんて顔して会えばいいか、わからねえんだ……」

650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:11:32.10 ID:itsA5ADt0 [23/93]
「お嬢ちゃーーーーーん!」

幼女「あ、お兄さん!」

「ハァ……ハァ……テレビで見やしたよ!」

幼女「すごい汗、大丈夫?」

「いやもう、居ても立ってもいられなくなって走ってきたんすよ。お嬢ちゃんこそ、ずっとここに?」

幼女「……うん」


先生「あの、どちら様で?」

「おっと、申し遅れやした」

「あっしは、幼稚園のお隣で農家をやっとるもんでさあ。以後お見知りおきを」

先生「あ、雷さんのところの?」

「へいそうです、いつも父がお世話になってます」

先生「いえ、いつも新鮮な野菜を届けてくださってありがとうございます」

畑の兄さん「へへっ、お役に立てて光栄ですぜ」

651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:23:21.26 ID:itsA5ADt0 [24/93]
キキーー

バタン


畑の兄さん「父ちゃん!」

「バカ息子が一人で先に突っ走りよってからに! 老人に運転させよって!」

畑の兄さん「で、でもよ」

「なにをボサっと突っ立っとるんじゃ?」

畑の兄さん「え?」

「さっさと手伝うんじゃ、新鮮な野菜のカレーを作って皆さんに体力をつけてもらうぞい」

畑の兄さん「合点承知だ!」

652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:28:56.58 ID:itsA5ADt0 [25/93]
先生「あの、私も手伝います」

幼女「あたしも!」

女の子「わたしも!」

畑の兄さん「よーし、全員協力してやるっすよー!」


「おー!」




653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:34:21.43 ID:itsA5ADt0 [26/93]
幼女「けーぶさん、これたべて」

警部「ん? カレーかい?」

幼女「みんなでつくったの」

警部「ありがとう、いただくよ」



「警部っ、中の様子がっ」

警部「……ん? 電気が消えたな」

「どうします?」

警部「待て、なんだ……? 光が……?」

654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:40:28.42 ID:itsA5ADt0 [27/93]
--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「……」


--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「メッセージだ……人質は二人とも無事だっ」

幼女「おじさん!」

女の子「おかあさん!」

657 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 14:48:44.69 ID:itsA5ADt0 [28/93]
男(さて……、私にできる限りの事はした)

男(子供を上手に使って人質を解放して、犯人のもう一人を炙り出した)

男(犯人側からある程度の信頼を得る事もできた、少なくともトイレに行くくらいの自由を勝ち取った)

男(電気を落としてこちらの意思も外に伝えた)

男(だが……まだ向こうには拳銃がある)

男(……くそ)

男(あと一手で良い、突入の機会を作りさえすれば……)

男(……何か、何かないのか……?)

660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 15:01:39.19 ID:itsA5ADt0 [29/93]
パ


保護者「あ、電気が付きましたの」

男「ほんとですね」

犯人A「ちょろいもんよ」

犯人B「……」

保護者「おなか空きましたの……」

犯人A「あいつら、何か美味そうなモン食ってやがるな」

保護者「この香り……カレーですの?」

犯人A「ったく、暢気なもんだぜ」

661 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 15:07:51.01 ID:itsA5ADt0
犯人B「そういやあいつも……カレーが好きだったな……」

保護者「ま、そうですの?」

犯人B「嫁が入院してた時な、俺が作ったカレーをうめえうめえって食いやがるんだよ」

男「当たり前ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたが丹精込めて作ったカレーが不味いわけありません」

犯人B「……」

男「子供は意外と、そういうところに敏感なんですよ」

犯人B「そうか……、そうだったのか……」

幼女「とうもろこし、いる?」3
へ続きます

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