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唯・律「大学落ちた…」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 00:34:40.84 ID:tq6sLSPWO [1/78]
大学に落ちてから一年
私とりっちゃんはここボロアパートで二人暮らしをしている。いわゆるルームシェア。というやつだ
そして生計をたてる為、内職やバイトを繰り返し、時間の空きを見つけては二人でストリートライブを行い実力を磨き続けていた
みたいなの頼んだ
大学に落ちてから一年
私とりっちゃんはここボロアパートで二人暮らしをしている。いわゆるルームシェア。というやつだ
そして生計をたてる為、内職やバイトを繰り返し、時間の空きを見つけては二人でストリートライブを行い実力を磨き続けていた
みたいなの頼んだ
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:13:59.77 ID:tq6sLSPWO
唯「ただいま~」
律「おかえり」
玄関をくぐるとりっちゃんの声といい匂いが私を迎えてくれた。この匂いは…
唯「今日はシチューだね!?」
律「隠し味は愛情ですわよ奥さん」
唯「わ~い」
日に日に上達するりっちゃん。イイ奥さんになれそうだなぁ
唯「りっちゃんホント凄いよ。イイお嫁さんになれるね」
律「よせやい。…まぁ何だ、本気でミュージシャンを目指そうって言い出したのは私だし。…責任感じてんだぜこれでも」
唯「りっちゃん…」
律「だから、さ。私に出来る事は可能な限りやりたいんだよ」
唯「…だめ!」
律「…え?」
唯「一人で背負い込んじゃ駄目だよ!りっちゃん!」
律「唯……へへ。ありがと」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:19:33.20 ID:tq6sLSPWO
唯「あわわ」
居間の中心に寂しく置かれたちゃぶ台。その上には恐らく内職の物であろう何かが乱雑に放置されていた
唯「りっちゃーん。これ、腕の関節を繋げばいいのぉ?」
右腕の無いお人形を掴み取る
律「そだよー」
唯「ふふん。簡単だね」
パキッ
唯「……」
律「ふー。出来たぞ」
二人分のシチューを持ちながらりっちゃんが居間までやってきた
律「唯、その人形が入ったダンボールどかして」
唯「…」
律「唯?」
唯「はっ!あ、アイアイサー!」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:26:02.83 ID:tq6sLSPWO
律「あらら、壊しちゃったのか」
隠し事はよくないよね…
律「ま、仕方ねーよ。次から気、つけてな」
唯「あぐあぐ…ぁい」
律「食べながらしゃべらない。ほら、ほっぺにシチューついてる」
どこから取り出したか、ハンカチで私のほっぺをスリスリするりっちゃん
唯「…ぁう」
律「ははは、全く、唯はいつまでたっても子供みたいだよな」
りっちゃんは日に日にイケメンになってくね
唯「むー」
律「むくれるな、むくれるな。そこが唯のイイところでもあるんだし」
唯「…えっ」
律「可愛いって事だよ」
唯「あ…あ…ぅ」
はい来ましたいただきました!!天然!天然ジゴロ!
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:32:17.69 ID:tq6sLSPWO
唯「私が洗うよ」
食べ終わった食器に腕を伸ばそうとした時、りっちゃんが同じように腕を伸ばして、割に入った
律「いいよ、唯はバイトで疲れてるんだし」
唯「駄目だよ。りっちゃんは炊事洗濯、内職までやってるじゃんか。それだって疲れるでしょ」
律「むむぅ。あ……じゃあ、さ」
唯「はい」
律「一緒にやろうぜ」
唯「むー。少しは楽、してほしいんだけどなぁ…」
律「そこは譲れない。楽しい事も、辛い事も、その他全部、半分こだ」
唯「……」
顔が火照ってくのが自分でもわかる。あぁだめだ。りっちゃん最高やで
律「唯?」
唯「はいぃ!?」
律「どうしたんだよ…まぁいいや。皿洗い終わったら、一緒に風呂はいろーぜ!」
唯「イエス」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:38:11.64 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん肌綺麗だね…ハァハァ」
視界いっぱいに広がるりっちゃんの背中。これはたまりませんね
律「唯には負けるよ~。てなんか鼻息荒くないか」
唯「ハァハはっ!き、気のせい気のせい」
律「そか」
唯「あーん手が滑った~」
私の手がりっちゃんのわき腹を通り胸へと動く。ふっ、貰った…
律「あっ」
唯「!!」
たまりません。お母さんお父さんごめんなさい。唯は変態でした
律「やったなぁ~」
そして計算通り。こうすればりっちゃんは仕返しとばからに私の胸を揉んでくる。これで合法的(?)にちちくりあうことが出来るのだ
唯(エヘヘ…)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:47:11.68 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん寝た~?」
背中越しに伝わる大好きな人の温もり
りっちゃんは布団をもう一人分買おうと言ったのだが、私が頑なに断ったのだ
「私は別に一緒で平気だよ。それに置き場所にも困るし、ね」と言った具合。
まぁ本音としては「りっちゃんと…毎日添い寝!!」なのだが。そんな事言えるはずもなく
律「ん~おきてるー」
眠そうに返事をするりっちゃん
唯「…ねぇりっちゃん」
律「んぁ」
唯「て、てて…て、手を、手を繋いでも…い、いいかな?」
律「なんだー、怖い夢でも見たか…」
唯「う、うん」
返事と同時に布団の中がもぞもぞと動く
身体ごと振り向くとりっちゃんがこっちを向いた状態だった
唯「あ…」
そして、手に暖かい感触
律「おやすみ…んが」
唯「うん…おやすみ」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:56:36.27 ID:tq6sLSPWO
唯「んが」
目を開けるとまぶしい光が私を襲った
唯「朝……む」
同時にいい匂い。そしてリズミカルなトントントンという音
律「起きたか。おはよう」
唯「りっちゃん。えへへ、おはよう」
律「そろそろ朝ご飯出来るからな」
唯「ぁい」
上体を起こし背を伸ばす
唯「んーっ。今日は何時からバイトだったかなぁ」
律「10時。あと二時間はあるな」
トレイを2つ持ったりっちゃんが視界に映った
唯(エプロン可愛い…)
唯「ライブは今週末だよね」
律「そだよ。許可貰ったのはその日。はい、唯の分」
味噌汁に焼き魚に漬け物にご飯にお茶…りっちゃん、完璧やで!
唯「ありがとう。よーし、がんばるぞぉ!」
律「その意気だ、唯!!」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:59:39.74 ID:tq6sLSPWO
唯「ごちそうさまでした」
律「お粗末さま。まだバイトまで時間あるな。どうする?」
唯「えーと…あっ」
律「?」
唯「ブラブラしようよ!りっちゃん!」
律「あはは、唯らしいな」
唯「そうと決まればさっさとお片付けだよ!」
トレイを勢いよく持ち上げる
律「元気だなぁ」
唯(デートっデートっ、りっちゃんとデート~)
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:05:24.57 ID:tq6sLSPWO
律「何だか視線を感じるな。それも複数」
唯「りっちゃんがイケメンだからじゃない?」
律「あんまり嬉しくねぇな…」
今りっちゃんの頭にあれ…(名称なんだっけ忘れた)がついていない。髪を全部おろした状態になっている
律「唯が可愛いからじゃないか?なーんてな」
唯「て、照れるぜ…」
律「あはは」
りっちゃん、そんな何気ない言葉でも私には大ダメージだからね。気をつけてね。いやまぁ嬉しいんですけどね!!!
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:08:52.11 ID:tq6sLSPWO
律「あ…唯、時間だ」
携帯を開いていたりっちゃんが言う。そう…もう0時の金が鳴るのね…なーんてね
唯「ハニー、行ってくるよ」
律「ダーリン!気をつけて!」
唯「…ぷっ」
律「…ぷっ」
あはははと二人して笑う
唯「じゃあ行ってくるね、りっちゃん」
律「おう。行ってら」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:11:49.95 ID:tq6sLSPWO
律「さて」
家に帰るか。と、そう思った時だった
「律先輩!」
懐かしい声が私を引き止めた。振り向く。そこにはかつての部活仲間がいた
梓「お久しぶりです、律先輩!」
梓だ――――――
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:18:31.28 ID:tq6sLSPWO
梓「お邪魔します」
律「おう」
立ち話もなんだし、家も近かったので、招き入れる事に。何よりも梓が行きたいですオーラを醸し出していた
梓「生活してるって感じですね」
律「そらな。それより…いつ以来だ。卒業して以来かな?」
梓「はい。澪先輩やムギ先輩には結構会ったりしているんですが…お二人は忙しそうだったので声、かけづらかったです」
律「んな寂しい事言うなよなぁ~。可愛い後輩が会いたがってたら会うよ、ちゃんと」
梓「…何だか律先輩、変わりましたね」
律「ん、そう?」
梓「はい。なんだか大人っぽく」
律「そりゃどうも」
そう言ったと同時に、梓のお腹が悲鳴をあげる
梓「そう言えばお昼まだでした」
照れながら、そう言った
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:22:59.54 ID:tq6sLSPWO
梓「先輩、凄いですね」
律「へ?」
面食らったような顔で梓が言う
梓「とっても美味しいです」
律「そりゃどうも」
梓「唯先輩毎日こんなの食べれるなんて…しかも律先輩の手料理ブツブツ」
律「?」
小声でブツブツ呟く梓。よく聞き取れなかった
唯「どーん!!」
律「わっ」
梓「きゃっ」
突然勢いよく開かれる玄関
律「ゆ、唯?!あれ?バイトは?」
唯「クビになりました!」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:03:23.23 ID:tq6sLSPWO
梓「く、クビ!?」
唯「あれ?あずにゃん?」
律「また落ちたのか~?」
梓「ま、また!?二度目なんですか!?」
唯「ごめんね、りっちゃん。また、すぐ新しいバイト先探すから…」
律「んー。とりあえず落ち着こう。唯、こっち来て座れよ」
唯「う、うん」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:09:14.01 ID:tq6sLSPWO
唯「最近失敗続きで…『平沢!お前もう来なくていいよ!』って言われちゃった…」
律「そ、か…」
梓「…」
律「まぁ、あれだ。多分、唯、疲れてるんだよ。慣れない生活だし。そろそろ一年経つだろ?溜まっていた疲れが今になって出てきたんだよ」
唯「そう…なのかなぁ……よくわかんないや。あはは…」
梓「…す」
律「え?」
梓「…じゃだめです」
唯「あ、あずにゃん?」
梓「こんなんじゃダメですーっ!!」
律・唯「わっ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:11:13.45 ID:tq6sLSPWO
梓「私から見れば律先輩も疲れているように見えます!」
律「え…そうか?」
梓「何でそんなに2人だけで頑張っていたんですか!?何で…何で少しくらい頼ったりしてくれなかったんですか!?」
梓「私は…私はそんなに頼りない後輩でしたかっ…!」
突然立ち上がった梓は身体を震わせながら泣きそうな…いや、泣きながら私たちに訴えかけていた
唯「あずにゃん…」
律「悪い…でもな、梓。これは2人で決めた事なんだ」
梓「え……」
律「ムギや澪、2人には勉強を沢山見てもらって…澪なんか推薦蹴ってまで同じ大学を選んでくれたのに…」
律「そんな2人に、これ以上迷惑はかけられない…」
梓「そんな!迷惑だなんて…思うわけがーーー
唯「ダメなんだよ。あずにゃん。私たちが耐えれないんだ。その優しさに、ね」
唯「だから、2人で決めたんだ。当分は…誰の手も借りずに頑張ろうって…」
梓「…先輩…」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:21:01.43 ID:tq6sLSPWO
梓「……わかりました」
梓「今日はもう…帰ります」
律「あ、送ってくよ」
梓「いえ。大丈夫です。…それより」
律「…ああ…。…本当に困ったら頼るよ。梓にも。澪やムギにも、な」
梓「ふふ。ならイイんです」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:22:14.18 ID:tq6sLSPWO
唯「あ、あずにゃん!」
梓「はい?」
唯「今度ね、私たち路上ライブするんだ!!良かったら見に来てよ!」
梓「路上…ライブ!?そんな事してたんですか!?」
律「まぁ、ちょいちょいな。場所は×××の××でやるんだ。今週末」
梓「えっっ」
律「ん?」
場所と時間を伝えると梓が驚きを見せた。と思いきや直後に不適な笑みを浮かべる梓
律「?…梓?」
梓「ふふふ。路上ライブ。楽しみにしていますね。でわっ!」
律「あ、おい!ムギや澪には言うなよ!?まだあいつらには会いづらいんだ」
梓「は~い!」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:29:39.75 ID:tq6sLSPWO
律「ふぅ…ふぅ…」
唯「はぁ…はぁ……。…あー~~~っ!…ふぅ」
律「だー~~っっ!…ふぅ」
・・・少しの沈黙の後
唯「前より人、増えてたね!りっちゃん!!」
唯が破顔しながらこちらに振り向いた。そりゃそうだろう私だって嬉し。前の倍くらいは居たんじゃないだろうか
律「あぁ!口コミで広がったんだろうな。とりあえず、すげぇ嬉しい!としか言いようがないぜ」
唯「見て見てりっちゃん!おひねりの中に野口さんがいっぱい!」
マジか!と飛びつこうとしたが、一応周りの目もある
律「ごほん。…唯、そういうのは後にしなさい」
唯「は~い」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:36:00.07 ID:tq6sLSPWO
律「とりあえず急いで片付けるぞ」
唯「え?なにかあるの?」
律「次にここ使う奴が来るんだよ。そろそろ」
唯「あ、そうなんだ~。じゃあ急がないとね!」
律「だからそう言ってるジャナイカ・・・」
「先輩!」
律「ん」
唯「お」
梓「こんにちは、唯先輩、律先輩」
声がするほうに振り向くと梓が立っていた。さらにその後ろには誰か2人。なんだ?どこかで見た事あるような…
律「おお。よう、あず……
ムギ「…」
澪「…」
律「さ……」
ムギと澪だった
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:41:29.49 ID:tq6sLSPWO
ツカツカツカツカと幼なじみが迫ってくる
律「あ、あの…みおしゃはぶっっ!!」
額に広がる痛み。懐かしの澪チョップ
澪「これで許してやる」
ぷいっと明後日の方向に顔を背けながら言った。顔が赤かったのは気のせいか…
唯「澪ちゃん…ムギちゃん…」
ムギ「2人とも…久し…ぶり…ね…うっ」
律「む、むぎぃっ?」
唐突に涙を浮かべるムギ。よせやい。つられて泣きそうなになるだろーが
澪「…全く、朝から梓の機嫌が異常に良かったらのはこれか」
梓「えへへ」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:51:15.25 ID:tq6sLSPWO
それから色々話した…私たちの事。澪やムギ、梓は同じ大学で、共に軽音楽を続けていた事…。
そしてお互いにあったわだかまり
律「そういえば、三人しかいないのか?他の大学仲間とかは?」
澪「バカ。…ずっと空けてあるんだよ」
唯「空けてあるって…」
ムギ「大学でね。私たち三人と一緒にバンドしたいって人達は沢山いたわ」
ムギ「でもね」
ムギ「放課後ティータイムのメンバーは…もう決まっているから…」
律・唯「あ…」
その時、まだ始まらないのか!とか、早くしろ!などのヤジが飛んだ
澪「久しぶりの5人だけど……いけるよな?」
不適に澪が笑う。お前、そんなキャラだったっけ
律「……」
唯「りっちゃん…」
不安そうに唯が私の名を呼ぶ。それに応えるようにして唯の手を強く握った
唯「あ…」澪「む」梓「ぬ」ムギ「あら…」
律「大丈夫。…へへ、よし!始めよう!!放課後ティータイム、再結成最初のバンドだ!!」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:00:28.02 ID:tq6sLSPWO
律「だはぁ~っ!イイ汗かいたぜ!やっぱり5人揃うと何か違うな!」
路上ライブを終えた私たちは全員揃ってファミレスへ来ていた
唯「だねー。なんというかテンションの上がり具合がもう、こう、イイ感じなんだよね!」
澪「お前たちがそれを言うのか!今まで私たちを避けていたお前たちがっ!」
律・唯「あぅ」
澪「まったく…」
ムギ「まぁまぁ。澪ちゃん落ち着いて。そんなに照れ隠ししなくても」
澪「照れっ!?照れ隠しなんてしていないぞ!」
梓「でも嬉しいんですよね?大学で、いつも言ってますもんね。律先輩どうの唯先輩どうのって」
澪「あずさぁああああっ!少し黙っててくれ!」
律「みおしゃん…」
唯「えへへ。そんなに私たちの事思ってくれてたなんて」
澪「や、やめっ!もうこの話題終わりっ!」
律・唯・ムギ・梓「え~」
澪「お!わ!り!なの!」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:13:49.53 ID:tq6sLSPWO
梓「ところで」
律「ん」
梓「これからは5人でしていくんですよね?路上ライブ」
律「まぁ、こうなった以上はな」
唯「えへへ。楽しみだね~」
澪「全く最初からこうしていればよかったんだ」
ムギ「まぁまぁ」
律「…だな。本当にその通りだ」
唯「…りっちゃん?」
律「みんな、ごめん」
ムギ「そ、そんなっ、頭をあげて、りっちゃん」
唯「…。…私もごめん」
澪「…唯……。いや私
ガタッ
梓「私たちの方こそごめんなさい。です。先輩」
澪(梓それ私の台詞)
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:17:49.80 ID:tq6sLSPWO
その日から5人で路上ライブを行う日々が始まった。
そして、たまにみんなが家に遊びにきたり…
とにかく、お互いにあったわだかまりが消えたのが大きかった
私と唯は今まで以上に笑う事が多くなった。その事をムギに話すと
「私たちもよ」
何て言うので、ちょっと照れ臭かった
そして…
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:21:39.02 ID:tq6sLSPWO
律「ふぅ」
澪「今日もイイ調子だったな」
唯「ん~っ。ふぅ」
ムギ「唯ちゃん、肩、揉んであげようか?」
唯「わ、ホント?お願いお願いっ」
梓「また人が増えてましたね」
律「だな」
さわ子「そんなあなた達に朗報よ」
律「え?朗報?…って、うわっ!!!さわちゃん!??」
さわ子「なによ。化け物でも見たみたいに驚いて」
律「いや、化け物よりこe
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:27:01.84 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん…大丈夫?」
律「み、みぞおち…」
澪「それにしても久しぶりですね。先生」
さわ子「ほんとに、ね~。みんな会いに来ないから死んだのかと思ってたわ」
一同「・・・」
さわ子「冗談よ☆」
梓「…そ、それよりも先生、朗報って?」
律「ああ、そういえばそんな事言ってたな」
さわ子「ああ、それはね」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:31:36.62 ID:tq6sLSPWO
さわ子「うちの生徒がね。あなた達を目撃したって言うから来てみれば」
さわ子「とんでもなく上手くなってるじゃない。って驚いたのよ」
さわ子「そ!こ!で!よ」
さわ子「ここからが朗報なんだけど」
さわ子「私の知人に…まぁ、小さなコンサートを開いている人がいてね」
さわ子「そこにあなた達を出そうかなあと」
律「そんな権限あるの?」
さわ子「まぁ、私の昔馴染みだし…」
律「ああ、あの黒歴s
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:36:34.06 ID:tq6sLSPWO
唯「…りっちゃん、大丈夫?」
律「…ウン。タブン」
さわ子「お偉いさんも来るから」
さわ子「もしかしたら…があるかもしれないわよ」
梓「それって…デビューって事ですか!?」
ムギ「わぁ、凄い凄い」
澪「デビュー…かぁ…」
さわ子「ちなみに一週間後だからね」
律「ぶふっ!すぐじゃん!」
唯「れ、練習する間もないね」
さわ子「まぁ、今のあなた達なら大丈夫なんじゃない?詳しい時間や場所は後で連絡するわ。りっちゃんでいいかしら」
律「うん」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:43:58.98 ID:tq6sLSPWO
律「いやぁ~、それにしても腕がなるなぁオイ」
澪「何だか、夢みたいだよ」
梓「澪先輩、まだ早いですよその感想は」
澪「そ、そうだった」
ムギ「うふふ」
唯「………私…」
律「…唯?」
唯「軽音部に入って良かったよ!」
律「……へへ。そっか」
ムギ「唯ちゃん……うん。そうだね。…私も、軽音部に…みんなに会えて良かったわ…」
梓「私もですよ」
澪「ふふ。だな。みんなに会えて良かったよ」
そう、澪がそう言い終えた時だった。唯が陽気に、鼻歌を歌いながら一歩ステップを踏んで信号を渡る
まさにその時だった。気づけば私は身を乗り出していた
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:48:03.41 ID:tq6sLSPWO
一瞬何が起こったのかわからなかった
気づけば私の視界には……私の…私の一番大切な人が……
ぐったりと横たわっていた――――――――
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:56:38.98 ID:tq6sLSPWO
澪「…」
ムギ「…」
梓「…」
唯「…」
律「お、おいおい、皆元気出せよ。何で事故にあった私よりへこんでんだよ!あはは」
唯「…りっちゃん……ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい!!!私がぁっ…わ、わたっわたしわ、ああ、あ…あぁあっ!」
律「唯、落ち着けって!誰もお前を責めてねーんだ!居眠り運転。向こうが悪い。なっ!」
唯「りっ、りつ…りっちゃ…ううっひっく、うぐっ、あっあっあうっあ…ひっ」
律「お~よしよし。…あでで。腕動かすといてぇなこれ」
澪「りつ…」
律「おーまえらまでンな顔すんなって!私は生きてる!死んでないんだ。ならイイじゃんか」
澪「ばっ!縁起でも無いこと…っ」
医者「すみません。少し、重要な話しがあるので、席を外してもらえませんか?」
ムギ「あ……はい。いこ?唯ちゃん」
唯「…ぅん…」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:00:58.27 ID:tq6sLSPWO
後日
律「えーと。だな。皆に集まって貰ったのは他でもない、コンサートの事なんだけど…」
さわ子「…間に合いそうに無いのね?」
律「……うん」
唯「…りっちゃ
律「ストーーップ!唯は喋らなくてイイ!お前絶対泣くだろ?」
唯「う、うぅ…」
澪「仕方ないさ。また次の機会を狙おう」
律「いや、そこで…提案なんだが」
ムギ「?」
梓「何かあるんですか?」
律「え~っとな、さわちゃんと話し合った結果…な」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:07:09.02 ID:tq6sLSPWO
梓「先生がドラム!?」
さわ子「頼まれちゃったし…一応人並みには出来るから…ね」
唯「…」
澪「……律は……律は、それでいいのか?」
律「………ぁあ」
ムギ「…りっちゃん…」
「…めだよ…」
律「?」
唯「ダメだよ!!」
律「唯?」
唯「放課後ティータイムのドラムは…りっちゃんじゃなきゃ…田井中律じゃなきゃダメだよっっ!!」
律「唯…」
梓「唯先輩…」
澪「………同感だ。先生を入れるくらいなら…先生には悪いけど、ドラム無しで演奏した方がイイ」
律「澪…」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:12:42.35 ID:tq6sLSPWO
さわ子「…あ~もうハイハイ」
唯「っ?…さわちゃん?」
さわ子「お熱いのはそれくらいにさない。イイじゃない、それで。ドラム無しで」
さわ子「一応向こうにはそれで話しをつけておくわ」
澪「先生…。…ありがとうございます」
さわ子「うん。それと、一応私もドラムの練習しておくから。必要だと思ったら、声をかけなさい。ま、必要ないと思うけどね」
律「さわちゃん…ありがと」
さわ子「いいのいいの。まったく…あんた達見てたら私の若い頃を思い出すわホント…」
さわ子「じゃあ、とりあえずまた今度ね」
一同「はいっ」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:15:39.83 ID:tq6sLSPWO
その日から…ドラム無しの練習が始まった。
さわちゃんは、「練習くらい入れてくれてもイイじゃない…」
とか言っていたような気がする。ごめんねさわちゃん。譲れないんだ。そのドラムの席だけは…
そして…
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:23:04.01 ID:tq6sLSPWO
澪「レベル、高いな…」
唯「うん…」
自分達の番が来るまでまだ時間があったので、客席からコンサートを眺めていた。
でもそれは間違いだったのかも知れない。みんな、自信を失っていく…
こんな時、ムードメーカーが居れば、全然違ったのだろうか
唯「りっちゃん…」
誰にも聞こえないように呟く。大好きな人の名前を声に出すと不思議と勇気を得られる。
このおまじないを、私は毎回、ライブ前に行っていた
でも
唯「…」
今回ばかりはダメだった。呟いて得られるのは悲しみだけ。勇気の欠片もない
梓「だ、大丈夫ですよ皆さん!私たちの方が上です!そうに決まってます!」
ムギ「梓ちゃん…」
さわ子「みんな、そろそろよ。支度するからこっち来て」
澪「あ、はい」
梓「やってやるです!」
唯「…」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:27:26.21 ID:tq6sLSPWO
唯「…」
澪「う、う…何だか気分が…」
ムギ「澪ちゃん大丈夫??」
梓「ふぅー。ふぅー。深呼吸深呼吸」
さわ子「みんな、着替えたわね?」
澪「は、はいっ!!」
さわ子「……ふふ」
梓「?…どうかしたんですか?」
さわ子「ここで、スペシャルゲストの登場です」
唯「え」
澪「な」
梓「ま、まさか…」
ムギ「うそ…」
さわ子「嘘よ」
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:32:59.80 ID:tq6sLSPWO
ムギ「なっ」
唯「っ!」
澪「せ、先生!こんな時にそんな嘘つかないで下さい!」
さわ子「…」
梓「せ、先生?」
さわ子「今のみんなの表情で、今抱えてる不安や気持ちがわかったわ」
さわ子「みんな、りっちゃんの事が大好きなのね。……でもね、みんな」
さわ子「りっちゃん抜きでライブをする。そう言いだしたのは、あなた達よ」
澪「っ…!」
さわ子「このライブが失敗して一番悲しむのは誰…?」
さわ子「……これ以上は…野暮ね。…みんな、頑張ってね」
唯「……先生!」
さわ子「…なぁに?」
唯「ありがとう…ございます」
さわ子「…私は何もしていないわ。…客席から、見てるからね。じゃあ」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:40:48.52 ID:tq6sLSPWO
唯「行こう。みんな」
澪「ああ」
ムギ「ええ」
梓「はい!!」
ありがとう、さわちゃん。本調子とはいかないけれど、何とか頑張れそうだよ。
りっちゃん……見守っていてね
唯「…」
舞台袖へと続く扉。そのドアノブに手を伸ばした
扉は古いのか、独特な音をたてながら開いていく
唯「……」
梓「先輩?早く進んで下さい」
唯「りっ………りっちゃ…ん?」
そこには紛れもない、見間違うハズのない、あの見慣れた後ろ姿があった
扉が開く音に気付いたのか、その姿がこちらに振り向く
律「…よう。遅かったな、お前ら」
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:49:50.60 ID:tq6sLSPWO
澪「律!」
梓「先輩!」
ムギ「りっちゃん…!」
唯「…」
みんなが駆け寄る中、一人呆然と立ち尽くす私
律「…」
りっちゃんと、目が合う
律「遅くなったな。田井中律、ただいま帰還しました!!」
唯「りっちゃ……りっちゃああああっん!!」
駆け寄り、抱きつく。ああ、これだ…私が欲しかった安らぎが、今、目の前にある
唯「りっちゃんりっちゃん!りっちゃぁああん!!」
律「こらこら、泣くな泣くな。そろそろ幕開くぞ」
澪「と、いうか、律。大丈夫なのか?その、色々と」
律「はは、無理言って抜け出してきたんだよ。少しくらいなら大丈夫なんだってさ」
澪「そうか、ならいいんだ」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:53:50.96 ID:tq6sLSPWO
司会「次は、放課後ティータイムによる」
ムギ「あっ、みんな!始まるわよ!」
律「よし!…唯、やれるか?」
唯「ぐすっ…ずびっ…。モチロンだよ!!」
律「…よし!梓!」
梓「やってやるです!!」
律「澪!」
澪「大丈夫!」
律「ムギ!」
ムギ「いつでもオッケ~よ~」
律「よし!聴かせてやろうぜ!見せてやろうぜ!私たち、放課後ティータイムをさ!!」
唯「うん!」 澪「ああ!」 ムギ「ええ!」 梓「はいです!」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:04:33.89 ID:tq6sLSPWO
幕が…開く
観客の視線が、私たちに集中する
さっきまでの私なら、この状況でもう参っていただろう。けれど、今はもう違う
後ろに…居てくれている
安心を…くれる人がいる。だから…もう大丈夫
唯「…あー…コホン」
唯「ここに来るまで、とても長い道のりでした」
唯「楽しい事や嬉しい事。もちろん、辛い事や苦しい事もありました。もうダメだと、何度か諦めかける時もありました」
唯「けど、私はこうして、ここに、立っています」
唯「それは…みんなが……仲間が支えてくれたおかげです」
唯「こんな…こんな喜びを皆さんにも知ってほしい…そんな気持ちを込めて、歌います」
澪ちゃんを見る。ニコッと、頷いてくれた
あずにゃんとムギちゃんの方を見る。ニコッと、頷いてくれた
最後に、後ろに振り向く。ニコッと、頷いてくれた
唯「…」
唯「聴いてください。放課後ティータイム、曲は―――――――
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:08:41.55 ID:tq6sLSPWO
さわ子「…」
「凄い子たちだねぇ。アレ、みんな君の教え子?」
さわ子「あらアナタ…。…ふふん、凄いでしょ」
「伝わってくるものが違うよ。他とはね」
さわ子「…決めた?」
「あぁ。決まりだ」
さわ子「そう…。あの子たちも喜ぶわ」
「だといいね」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:14:32.90 ID:tq6sLSPWO
唯「ふぅ…ふぅ…」
歌い終わると同時に大きな歓声。鳴り止む気配がない。それがとても心地よく感じられた
梓「…い、今までで、一番…イイ演奏が出来た気がします…」
澪「はは、梓、泣いてるぞ」
梓「えっええっ!?そ、そういう澪先輩だって泣いてます!」
澪「な、なにぃっ!本当か!?」
ムギ「はいはいそういうのは幕がおりてからね」
唯「あはは」
相変わらずだなぁ、みんな
幕がおりる。その時だった
りっちゃんが一言も喋っていない事に気付く
唯「りっちゃん?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:17:51.18 ID:tq6sLSPWO
私の声に反応する事はなく、視界には、横たわったりっちゃんが、そこにいた
唯「ーーっ!りっちゃん!!!!」
さわ子「みんな!」
唯「さわちゃん!りっちゃんがっっ!!」
さわ子「とにかく落ち着いて!今医者が来てるから!みんなは後片付けを!」
梓「は、はいっ」
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:21:48.23 ID:tq6sLSPWO
病院にて
律「…」
りっちゃんはすぐに意識を取り戻し、面会可能という事になったので、病室にみんなが集まる事になった
医者「…私はダメだと言ったんですがね」
澪「あの…どういう事ですか?」
医者「…田井中さん」
律「いいです、先生。私から言います」
唯「…」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:31:25.94 ID:tq6sLSPWO
医者「それじゃあ私は退室するよ。何かあったら呼んでくれたまえ」
さわ子「ありがとうございます」
律「・・・・・腕…」
唯「え?」
律「腕が…弱ってるらしいんだ」
梓「ど、どういう事ですか?」
律「腕に負担をかけると…事故の時の痛みが再発して…まともに動かせなるんだ。私生活では問題ないけど」
律「…負担っていうのはまぁ…ドラム…くらいのレベルな訳で…」
律「それに、もしかしたら将来的には、もっと弱まるかもしれないって」
唯「…りっちゃん…まさか……」
律「うん。だから、この腕がまともに動かなくなる前に、放課後ティータイムの…最後のドラムを…やりたかったんだ」
律「だから、無理に病院を抜け出したんだ。たはは」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:39:13.05 ID:tq6sLSPWO
唯「わたしの――
律「唯」
律「唯のせいじゃない。気にするなよ」
澪「待て。待ってくれ。じゃあ放課後ティータイムのドラムはどうなるんだ!?」
ムギ「澪ちゃん!落ち着いて!」
澪「これが落ち着いていられるか!なぁ律、冗談なんだろ?冗談って…冗談っていってくれよ!なぁ!!」
梓「先輩!!」
澪「っ!あ…ごめ…わたし…さ、最低だ…なにやって…」
ムギ「澪ちゃん…」
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:41:08.21 ID:tq6sLSPWO
律「澪」
澪「なん…だよ…」
律「あ、いや。やっぱ後で」
澪「…お前、今、私放課後ティータイムを抜けるよ。とか言おうとしてただろ」
律「え、いや、あの…えと…」
澪「そんなの絶対に許さないからなっ!!」
ムギ「澪ちゃん、ここ病院だからっ」
澪「あ、ごめん…」
ムギ「…ちょっと外に出よ?ここじゃ冷静で居られないでしょう?」
澪「うん、そうする…ごめん、律、ムギ…」
律「あ、ああ」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:43:58.94 ID:tq6sLSPWO
ムギ「りっちゃん」
律「ん」
ムギ「私も、りっちゃんが抜けるなんて、絶対に認めないからね」
律「ムギ…」
梓「…律先輩、私もですよ」
律「梓…」
ムギ「さ、澪ちゃん」
澪「ん…」
梓「何か、冷たいもの買ってきますね、私」
律「あ、ああ。ありがとう」
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:51:56.10 ID:tq6sLSPWO
さわ子「私はお邪魔みたいだし…じゃあね☆」バタン
こうして、室内に取り残された私と唯
重たい雰囲気の中、先に口を開いたのは
律「いやぁそれにしてもあれだな」
私だった
律「腹へったなぁ…」
唯「………ねぇ、りっちゃん」
律「唯…どうした?」
唯「ドラムはダメなんだよね…?」
律「あ、ああ?」
唯「ギターは、どうなの?」
律「ぎ、ギター?ああ、ギターなら多分大丈夫だよ。先生が言ってたんだよ」
律「誠に残念です。まさかドラムとは…ギターやベース、キーならまだ何とかなったのに…ってな」
唯「じゃありっちゃん!!」
私が言い終える前に、笑みを浮かべた唯が顔を近づけてきた
律「お、おう。どうした」
唯「ギターやろうよ!!」律「は?」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:01:13.14 ID:tq6sLSPWO
律「なに言って…」
唯「それでね!私がドラムをするの!!そうすれば全部解決だよ!」
律「…あのな、唯。お前がどれだけ練習したか私は知ってる。ボーカルもギターも。それを全部壊す事何て私には出来ないよ…」
唯「りっちゃんが壊すんじゃないよ。私が壊すんだ」
律「へ、屁理屈を…」
唯「それに、私は」
律「?」
唯「ギターやボーカルがしたいんじゃない」
律「…唯?」
唯「りっちゃんと…みんなとバンドがしたいの!!」
律「……唯…」
唯「待ってて!」
律「あ、おい」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:04:11.83 ID:tq6sLSPWO
律「これ…」
唯「ギー太だよ!」
律「…ダメだ、受け取れないよ…」
唯「むー……」
律「第一、そんな大切なもの、他人に簡単に譲渡しちゃいけません」
唯「りっちゃんだからだよ」
律「えっ」
唯「他の誰でもない…りっちゃんだから」
唯「だから、渡せるんだ」
律「唯……」
唯「だから受け取って、りっちゃん」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:12:44.46 ID:tq6sLSPWO
これを受け取れば私は…
ダメだ…受け取れない…
唯の頑張りを知っているからこそ…受け取る事なんてできない…
唯「りっちゃん」
律「なん…だよ…」
唯「本当ならそこには…私が座っていたハズなんだよ」
律「!」
唯「これはその…ほんの少しの恩返しで…」
唯「それに…りっちゃんは言ってくれたよね…」
唯「楽しい事も、辛い事も…半分こ…ぜん…ぶ…半分こっ…て…」
律「っ…!」
唯は泣いていた。多分、私も泣いてる
唯「全部背負わないで……私、りっちゃんの事…大好き…だから…。少しでも力になりたくて…うぐっ」
私は…馬鹿だ。こんなにも近くで、すぐ傍で、私を思っていてくれてたのに
律「唯…ごめんな。そしてありがとう」
ベッドからおりて、唯と向き合う。もう逃げないよ
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:17:04.40 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん…」
律「唯の気持ち…全部、貰う事にするよ」
唯「りっちゃん…!」
律「唯…」
唯「うん。ギー太をよろしくね」
律「うん」
ギー太を受け取る。重いなぁ。きっと色んなモノが詰まってるんだろう
唯「私がい~っぱい、色んな事教えてあげるからね!」
律「うん。私も…ドラム、教えるよ」
唯「うん!」
律「……」
唯「りっちゃん?」
律「えーっと…だな」
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:18:37.49 ID:tq6sLSPWO
律「あ、唯。顔にゴミついてるぞ」
唯「へっ?どこどこ?」
律「あぁ待って、ちょっと顔近づけて」
唯「う、うん」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:24:44.82 ID:tq6sLSPWO
言われるがままにりっちゃんに顔を近づける
その時だった。唇にやわらかな感触
唯「…へ?」
律「へへ。ついていたのは可愛い唇でした!なーんてな。びっくりした?」
唯「……・・・・・ーー~~っ!!!?~~○×△□!?!」
律「お、おいおい唯、落ち着けって」
唯「りりりりり、りっちゃん!これはそのあのあ、あ、あれ、えと、そういう意味で捉えてもイイのでしょうか!!」
律「……ふふ。うんっ」
唯「り、り、りっちゃぁああああああん」ガバッ
律「お、おわっ!唯っ!?」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:31:23.73 ID:tq6sLSPWO
廊下にて
「りっちゃあああああんっ!」
梓「…入りづらいです」
澪「…私なんてあんな事言っちゃったんだぞ。もっと入りづらいんだぞ」
ムギ「まぁまぁ」
さわ子「あ、そうだ皆、デビューが決まったわよ」
梓「へ~…ってえええ!?」
ムギ「あらあら」
澪「ホントですか!?」
さわ子「うん」
梓「軽っ!って、そうなると大学にもあまり行ってられませんね」
ムギ「私、一度大学を中退するのが夢だったの~」
澪「どうしてそうなる!というか何だその夢は!」
「院内ではお静かに!」
澪「はひっ、す、すみません!」
さわ子「…(デビューを推したのは私だけど…何だか不安になってきたわ…)」
おしまい
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:33:12.81 ID:tq6sLSPWO [75/78]
みんな、こんな独りよがりなSSに付き合ってくれてありがとう
唯「ただいま~」
律「おかえり」
玄関をくぐるとりっちゃんの声といい匂いが私を迎えてくれた。この匂いは…
唯「今日はシチューだね!?」
律「隠し味は愛情ですわよ奥さん」
唯「わ~い」
日に日に上達するりっちゃん。イイ奥さんになれそうだなぁ
唯「りっちゃんホント凄いよ。イイお嫁さんになれるね」
律「よせやい。…まぁ何だ、本気でミュージシャンを目指そうって言い出したのは私だし。…責任感じてんだぜこれでも」
唯「りっちゃん…」
律「だから、さ。私に出来る事は可能な限りやりたいんだよ」
唯「…だめ!」
律「…え?」
唯「一人で背負い込んじゃ駄目だよ!りっちゃん!」
律「唯……へへ。ありがと」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:19:33.20 ID:tq6sLSPWO
唯「あわわ」
居間の中心に寂しく置かれたちゃぶ台。その上には恐らく内職の物であろう何かが乱雑に放置されていた
唯「りっちゃーん。これ、腕の関節を繋げばいいのぉ?」
右腕の無いお人形を掴み取る
律「そだよー」
唯「ふふん。簡単だね」
パキッ
唯「……」
律「ふー。出来たぞ」
二人分のシチューを持ちながらりっちゃんが居間までやってきた
律「唯、その人形が入ったダンボールどかして」
唯「…」
律「唯?」
唯「はっ!あ、アイアイサー!」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:26:02.83 ID:tq6sLSPWO
律「あらら、壊しちゃったのか」
隠し事はよくないよね…
律「ま、仕方ねーよ。次から気、つけてな」
唯「あぐあぐ…ぁい」
律「食べながらしゃべらない。ほら、ほっぺにシチューついてる」
どこから取り出したか、ハンカチで私のほっぺをスリスリするりっちゃん
唯「…ぁう」
律「ははは、全く、唯はいつまでたっても子供みたいだよな」
りっちゃんは日に日にイケメンになってくね
唯「むー」
律「むくれるな、むくれるな。そこが唯のイイところでもあるんだし」
唯「…えっ」
律「可愛いって事だよ」
唯「あ…あ…ぅ」
はい来ましたいただきました!!天然!天然ジゴロ!
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:32:17.69 ID:tq6sLSPWO
唯「私が洗うよ」
食べ終わった食器に腕を伸ばそうとした時、りっちゃんが同じように腕を伸ばして、割に入った
律「いいよ、唯はバイトで疲れてるんだし」
唯「駄目だよ。りっちゃんは炊事洗濯、内職までやってるじゃんか。それだって疲れるでしょ」
律「むむぅ。あ……じゃあ、さ」
唯「はい」
律「一緒にやろうぜ」
唯「むー。少しは楽、してほしいんだけどなぁ…」
律「そこは譲れない。楽しい事も、辛い事も、その他全部、半分こだ」
唯「……」
顔が火照ってくのが自分でもわかる。あぁだめだ。りっちゃん最高やで
律「唯?」
唯「はいぃ!?」
律「どうしたんだよ…まぁいいや。皿洗い終わったら、一緒に風呂はいろーぜ!」
唯「イエス」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:38:11.64 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん肌綺麗だね…ハァハァ」
視界いっぱいに広がるりっちゃんの背中。これはたまりませんね
律「唯には負けるよ~。てなんか鼻息荒くないか」
唯「ハァハはっ!き、気のせい気のせい」
律「そか」
唯「あーん手が滑った~」
私の手がりっちゃんのわき腹を通り胸へと動く。ふっ、貰った…
律「あっ」
唯「!!」
たまりません。お母さんお父さんごめんなさい。唯は変態でした
律「やったなぁ~」
そして計算通り。こうすればりっちゃんは仕返しとばからに私の胸を揉んでくる。これで合法的(?)にちちくりあうことが出来るのだ
唯(エヘヘ…)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:47:11.68 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん寝た~?」
背中越しに伝わる大好きな人の温もり
りっちゃんは布団をもう一人分買おうと言ったのだが、私が頑なに断ったのだ
「私は別に一緒で平気だよ。それに置き場所にも困るし、ね」と言った具合。
まぁ本音としては「りっちゃんと…毎日添い寝!!」なのだが。そんな事言えるはずもなく
律「ん~おきてるー」
眠そうに返事をするりっちゃん
唯「…ねぇりっちゃん」
律「んぁ」
唯「て、てて…て、手を、手を繋いでも…い、いいかな?」
律「なんだー、怖い夢でも見たか…」
唯「う、うん」
返事と同時に布団の中がもぞもぞと動く
身体ごと振り向くとりっちゃんがこっちを向いた状態だった
唯「あ…」
そして、手に暖かい感触
律「おやすみ…んが」
唯「うん…おやすみ」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:56:36.27 ID:tq6sLSPWO
唯「んが」
目を開けるとまぶしい光が私を襲った
唯「朝……む」
同時にいい匂い。そしてリズミカルなトントントンという音
律「起きたか。おはよう」
唯「りっちゃん。えへへ、おはよう」
律「そろそろ朝ご飯出来るからな」
唯「ぁい」
上体を起こし背を伸ばす
唯「んーっ。今日は何時からバイトだったかなぁ」
律「10時。あと二時間はあるな」
トレイを2つ持ったりっちゃんが視界に映った
唯(エプロン可愛い…)
唯「ライブは今週末だよね」
律「そだよ。許可貰ったのはその日。はい、唯の分」
味噌汁に焼き魚に漬け物にご飯にお茶…りっちゃん、完璧やで!
唯「ありがとう。よーし、がんばるぞぉ!」
律「その意気だ、唯!!」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 01:59:39.74 ID:tq6sLSPWO
唯「ごちそうさまでした」
律「お粗末さま。まだバイトまで時間あるな。どうする?」
唯「えーと…あっ」
律「?」
唯「ブラブラしようよ!りっちゃん!」
律「あはは、唯らしいな」
唯「そうと決まればさっさとお片付けだよ!」
トレイを勢いよく持ち上げる
律「元気だなぁ」
唯(デートっデートっ、りっちゃんとデート~)
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:05:24.57 ID:tq6sLSPWO
律「何だか視線を感じるな。それも複数」
唯「りっちゃんがイケメンだからじゃない?」
律「あんまり嬉しくねぇな…」
今りっちゃんの頭にあれ…(名称なんだっけ忘れた)がついていない。髪を全部おろした状態になっている
律「唯が可愛いからじゃないか?なーんてな」
唯「て、照れるぜ…」
律「あはは」
りっちゃん、そんな何気ない言葉でも私には大ダメージだからね。気をつけてね。いやまぁ嬉しいんですけどね!!!
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:08:52.11 ID:tq6sLSPWO
律「あ…唯、時間だ」
携帯を開いていたりっちゃんが言う。そう…もう0時の金が鳴るのね…なーんてね
唯「ハニー、行ってくるよ」
律「ダーリン!気をつけて!」
唯「…ぷっ」
律「…ぷっ」
あはははと二人して笑う
唯「じゃあ行ってくるね、りっちゃん」
律「おう。行ってら」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:11:49.95 ID:tq6sLSPWO
律「さて」
家に帰るか。と、そう思った時だった
「律先輩!」
懐かしい声が私を引き止めた。振り向く。そこにはかつての部活仲間がいた
梓「お久しぶりです、律先輩!」
梓だ――――――
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:18:31.28 ID:tq6sLSPWO
梓「お邪魔します」
律「おう」
立ち話もなんだし、家も近かったので、招き入れる事に。何よりも梓が行きたいですオーラを醸し出していた
梓「生活してるって感じですね」
律「そらな。それより…いつ以来だ。卒業して以来かな?」
梓「はい。澪先輩やムギ先輩には結構会ったりしているんですが…お二人は忙しそうだったので声、かけづらかったです」
律「んな寂しい事言うなよなぁ~。可愛い後輩が会いたがってたら会うよ、ちゃんと」
梓「…何だか律先輩、変わりましたね」
律「ん、そう?」
梓「はい。なんだか大人っぽく」
律「そりゃどうも」
そう言ったと同時に、梓のお腹が悲鳴をあげる
梓「そう言えばお昼まだでした」
照れながら、そう言った
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 02:22:59.54 ID:tq6sLSPWO
梓「先輩、凄いですね」
律「へ?」
面食らったような顔で梓が言う
梓「とっても美味しいです」
律「そりゃどうも」
梓「唯先輩毎日こんなの食べれるなんて…しかも律先輩の手料理ブツブツ」
律「?」
小声でブツブツ呟く梓。よく聞き取れなかった
唯「どーん!!」
律「わっ」
梓「きゃっ」
突然勢いよく開かれる玄関
律「ゆ、唯?!あれ?バイトは?」
唯「クビになりました!」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:03:23.23 ID:tq6sLSPWO
梓「く、クビ!?」
唯「あれ?あずにゃん?」
律「また落ちたのか~?」
梓「ま、また!?二度目なんですか!?」
唯「ごめんね、りっちゃん。また、すぐ新しいバイト先探すから…」
律「んー。とりあえず落ち着こう。唯、こっち来て座れよ」
唯「う、うん」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:09:14.01 ID:tq6sLSPWO
唯「最近失敗続きで…『平沢!お前もう来なくていいよ!』って言われちゃった…」
律「そ、か…」
梓「…」
律「まぁ、あれだ。多分、唯、疲れてるんだよ。慣れない生活だし。そろそろ一年経つだろ?溜まっていた疲れが今になって出てきたんだよ」
唯「そう…なのかなぁ……よくわかんないや。あはは…」
梓「…す」
律「え?」
梓「…じゃだめです」
唯「あ、あずにゃん?」
梓「こんなんじゃダメですーっ!!」
律・唯「わっ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:11:13.45 ID:tq6sLSPWO
梓「私から見れば律先輩も疲れているように見えます!」
律「え…そうか?」
梓「何でそんなに2人だけで頑張っていたんですか!?何で…何で少しくらい頼ったりしてくれなかったんですか!?」
梓「私は…私はそんなに頼りない後輩でしたかっ…!」
突然立ち上がった梓は身体を震わせながら泣きそうな…いや、泣きながら私たちに訴えかけていた
唯「あずにゃん…」
律「悪い…でもな、梓。これは2人で決めた事なんだ」
梓「え……」
律「ムギや澪、2人には勉強を沢山見てもらって…澪なんか推薦蹴ってまで同じ大学を選んでくれたのに…」
律「そんな2人に、これ以上迷惑はかけられない…」
梓「そんな!迷惑だなんて…思うわけがーーー
唯「ダメなんだよ。あずにゃん。私たちが耐えれないんだ。その優しさに、ね」
唯「だから、2人で決めたんだ。当分は…誰の手も借りずに頑張ろうって…」
梓「…先輩…」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:21:01.43 ID:tq6sLSPWO
梓「……わかりました」
梓「今日はもう…帰ります」
律「あ、送ってくよ」
梓「いえ。大丈夫です。…それより」
律「…ああ…。…本当に困ったら頼るよ。梓にも。澪やムギにも、な」
梓「ふふ。ならイイんです」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:22:14.18 ID:tq6sLSPWO
唯「あ、あずにゃん!」
梓「はい?」
唯「今度ね、私たち路上ライブするんだ!!良かったら見に来てよ!」
梓「路上…ライブ!?そんな事してたんですか!?」
律「まぁ、ちょいちょいな。場所は×××の××でやるんだ。今週末」
梓「えっっ」
律「ん?」
場所と時間を伝えると梓が驚きを見せた。と思いきや直後に不適な笑みを浮かべる梓
律「?…梓?」
梓「ふふふ。路上ライブ。楽しみにしていますね。でわっ!」
律「あ、おい!ムギや澪には言うなよ!?まだあいつらには会いづらいんだ」
梓「は~い!」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:29:39.75 ID:tq6sLSPWO
律「ふぅ…ふぅ…」
唯「はぁ…はぁ……。…あー~~~っ!…ふぅ」
律「だー~~っっ!…ふぅ」
・・・少しの沈黙の後
唯「前より人、増えてたね!りっちゃん!!」
唯が破顔しながらこちらに振り向いた。そりゃそうだろう私だって嬉し。前の倍くらいは居たんじゃないだろうか
律「あぁ!口コミで広がったんだろうな。とりあえず、すげぇ嬉しい!としか言いようがないぜ」
唯「見て見てりっちゃん!おひねりの中に野口さんがいっぱい!」
マジか!と飛びつこうとしたが、一応周りの目もある
律「ごほん。…唯、そういうのは後にしなさい」
唯「は~い」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:36:00.07 ID:tq6sLSPWO
律「とりあえず急いで片付けるぞ」
唯「え?なにかあるの?」
律「次にここ使う奴が来るんだよ。そろそろ」
唯「あ、そうなんだ~。じゃあ急がないとね!」
律「だからそう言ってるジャナイカ・・・」
「先輩!」
律「ん」
唯「お」
梓「こんにちは、唯先輩、律先輩」
声がするほうに振り向くと梓が立っていた。さらにその後ろには誰か2人。なんだ?どこかで見た事あるような…
律「おお。よう、あず……
ムギ「…」
澪「…」
律「さ……」
ムギと澪だった
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:41:29.49 ID:tq6sLSPWO
ツカツカツカツカと幼なじみが迫ってくる
律「あ、あの…みおしゃはぶっっ!!」
額に広がる痛み。懐かしの澪チョップ
澪「これで許してやる」
ぷいっと明後日の方向に顔を背けながら言った。顔が赤かったのは気のせいか…
唯「澪ちゃん…ムギちゃん…」
ムギ「2人とも…久し…ぶり…ね…うっ」
律「む、むぎぃっ?」
唐突に涙を浮かべるムギ。よせやい。つられて泣きそうなになるだろーが
澪「…全く、朝から梓の機嫌が異常に良かったらのはこれか」
梓「えへへ」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 18:51:15.25 ID:tq6sLSPWO
それから色々話した…私たちの事。澪やムギ、梓は同じ大学で、共に軽音楽を続けていた事…。
そしてお互いにあったわだかまり
律「そういえば、三人しかいないのか?他の大学仲間とかは?」
澪「バカ。…ずっと空けてあるんだよ」
唯「空けてあるって…」
ムギ「大学でね。私たち三人と一緒にバンドしたいって人達は沢山いたわ」
ムギ「でもね」
ムギ「放課後ティータイムのメンバーは…もう決まっているから…」
律・唯「あ…」
その時、まだ始まらないのか!とか、早くしろ!などのヤジが飛んだ
澪「久しぶりの5人だけど……いけるよな?」
不適に澪が笑う。お前、そんなキャラだったっけ
律「……」
唯「りっちゃん…」
不安そうに唯が私の名を呼ぶ。それに応えるようにして唯の手を強く握った
唯「あ…」澪「む」梓「ぬ」ムギ「あら…」
律「大丈夫。…へへ、よし!始めよう!!放課後ティータイム、再結成最初のバンドだ!!」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:00:28.02 ID:tq6sLSPWO
律「だはぁ~っ!イイ汗かいたぜ!やっぱり5人揃うと何か違うな!」
路上ライブを終えた私たちは全員揃ってファミレスへ来ていた
唯「だねー。なんというかテンションの上がり具合がもう、こう、イイ感じなんだよね!」
澪「お前たちがそれを言うのか!今まで私たちを避けていたお前たちがっ!」
律・唯「あぅ」
澪「まったく…」
ムギ「まぁまぁ。澪ちゃん落ち着いて。そんなに照れ隠ししなくても」
澪「照れっ!?照れ隠しなんてしていないぞ!」
梓「でも嬉しいんですよね?大学で、いつも言ってますもんね。律先輩どうの唯先輩どうのって」
澪「あずさぁああああっ!少し黙っててくれ!」
律「みおしゃん…」
唯「えへへ。そんなに私たちの事思ってくれてたなんて」
澪「や、やめっ!もうこの話題終わりっ!」
律・唯・ムギ・梓「え~」
澪「お!わ!り!なの!」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:13:49.53 ID:tq6sLSPWO
梓「ところで」
律「ん」
梓「これからは5人でしていくんですよね?路上ライブ」
律「まぁ、こうなった以上はな」
唯「えへへ。楽しみだね~」
澪「全く最初からこうしていればよかったんだ」
ムギ「まぁまぁ」
律「…だな。本当にその通りだ」
唯「…りっちゃん?」
律「みんな、ごめん」
ムギ「そ、そんなっ、頭をあげて、りっちゃん」
唯「…。…私もごめん」
澪「…唯……。いや私
ガタッ
梓「私たちの方こそごめんなさい。です。先輩」
澪(梓それ私の台詞)
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:17:49.80 ID:tq6sLSPWO
その日から5人で路上ライブを行う日々が始まった。
そして、たまにみんなが家に遊びにきたり…
とにかく、お互いにあったわだかまりが消えたのが大きかった
私と唯は今まで以上に笑う事が多くなった。その事をムギに話すと
「私たちもよ」
何て言うので、ちょっと照れ臭かった
そして…
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:21:39.02 ID:tq6sLSPWO
律「ふぅ」
澪「今日もイイ調子だったな」
唯「ん~っ。ふぅ」
ムギ「唯ちゃん、肩、揉んであげようか?」
唯「わ、ホント?お願いお願いっ」
梓「また人が増えてましたね」
律「だな」
さわ子「そんなあなた達に朗報よ」
律「え?朗報?…って、うわっ!!!さわちゃん!??」
さわ子「なによ。化け物でも見たみたいに驚いて」
律「いや、化け物よりこe
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:27:01.84 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん…大丈夫?」
律「み、みぞおち…」
澪「それにしても久しぶりですね。先生」
さわ子「ほんとに、ね~。みんな会いに来ないから死んだのかと思ってたわ」
一同「・・・」
さわ子「冗談よ☆」
梓「…そ、それよりも先生、朗報って?」
律「ああ、そういえばそんな事言ってたな」
さわ子「ああ、それはね」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:31:36.62 ID:tq6sLSPWO
さわ子「うちの生徒がね。あなた達を目撃したって言うから来てみれば」
さわ子「とんでもなく上手くなってるじゃない。って驚いたのよ」
さわ子「そ!こ!で!よ」
さわ子「ここからが朗報なんだけど」
さわ子「私の知人に…まぁ、小さなコンサートを開いている人がいてね」
さわ子「そこにあなた達を出そうかなあと」
律「そんな権限あるの?」
さわ子「まぁ、私の昔馴染みだし…」
律「ああ、あの黒歴s
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:36:34.06 ID:tq6sLSPWO
唯「…りっちゃん、大丈夫?」
律「…ウン。タブン」
さわ子「お偉いさんも来るから」
さわ子「もしかしたら…があるかもしれないわよ」
梓「それって…デビューって事ですか!?」
ムギ「わぁ、凄い凄い」
澪「デビュー…かぁ…」
さわ子「ちなみに一週間後だからね」
律「ぶふっ!すぐじゃん!」
唯「れ、練習する間もないね」
さわ子「まぁ、今のあなた達なら大丈夫なんじゃない?詳しい時間や場所は後で連絡するわ。りっちゃんでいいかしら」
律「うん」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:43:58.98 ID:tq6sLSPWO
律「いやぁ~、それにしても腕がなるなぁオイ」
澪「何だか、夢みたいだよ」
梓「澪先輩、まだ早いですよその感想は」
澪「そ、そうだった」
ムギ「うふふ」
唯「………私…」
律「…唯?」
唯「軽音部に入って良かったよ!」
律「……へへ。そっか」
ムギ「唯ちゃん……うん。そうだね。…私も、軽音部に…みんなに会えて良かったわ…」
梓「私もですよ」
澪「ふふ。だな。みんなに会えて良かったよ」
そう、澪がそう言い終えた時だった。唯が陽気に、鼻歌を歌いながら一歩ステップを踏んで信号を渡る
まさにその時だった。気づけば私は身を乗り出していた
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:48:03.41 ID:tq6sLSPWO
一瞬何が起こったのかわからなかった
気づけば私の視界には……私の…私の一番大切な人が……
ぐったりと横たわっていた――――――――
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 19:56:38.98 ID:tq6sLSPWO
澪「…」
ムギ「…」
梓「…」
唯「…」
律「お、おいおい、皆元気出せよ。何で事故にあった私よりへこんでんだよ!あはは」
唯「…りっちゃん……ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい!!!私がぁっ…わ、わたっわたしわ、ああ、あ…あぁあっ!」
律「唯、落ち着けって!誰もお前を責めてねーんだ!居眠り運転。向こうが悪い。なっ!」
唯「りっ、りつ…りっちゃ…ううっひっく、うぐっ、あっあっあうっあ…ひっ」
律「お~よしよし。…あでで。腕動かすといてぇなこれ」
澪「りつ…」
律「おーまえらまでンな顔すんなって!私は生きてる!死んでないんだ。ならイイじゃんか」
澪「ばっ!縁起でも無いこと…っ」
医者「すみません。少し、重要な話しがあるので、席を外してもらえませんか?」
ムギ「あ……はい。いこ?唯ちゃん」
唯「…ぅん…」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:00:58.27 ID:tq6sLSPWO
後日
律「えーと。だな。皆に集まって貰ったのは他でもない、コンサートの事なんだけど…」
さわ子「…間に合いそうに無いのね?」
律「……うん」
唯「…りっちゃ
律「ストーーップ!唯は喋らなくてイイ!お前絶対泣くだろ?」
唯「う、うぅ…」
澪「仕方ないさ。また次の機会を狙おう」
律「いや、そこで…提案なんだが」
ムギ「?」
梓「何かあるんですか?」
律「え~っとな、さわちゃんと話し合った結果…な」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:07:09.02 ID:tq6sLSPWO
梓「先生がドラム!?」
さわ子「頼まれちゃったし…一応人並みには出来るから…ね」
唯「…」
澪「……律は……律は、それでいいのか?」
律「………ぁあ」
ムギ「…りっちゃん…」
「…めだよ…」
律「?」
唯「ダメだよ!!」
律「唯?」
唯「放課後ティータイムのドラムは…りっちゃんじゃなきゃ…田井中律じゃなきゃダメだよっっ!!」
律「唯…」
梓「唯先輩…」
澪「………同感だ。先生を入れるくらいなら…先生には悪いけど、ドラム無しで演奏した方がイイ」
律「澪…」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:12:42.35 ID:tq6sLSPWO
さわ子「…あ~もうハイハイ」
唯「っ?…さわちゃん?」
さわ子「お熱いのはそれくらいにさない。イイじゃない、それで。ドラム無しで」
さわ子「一応向こうにはそれで話しをつけておくわ」
澪「先生…。…ありがとうございます」
さわ子「うん。それと、一応私もドラムの練習しておくから。必要だと思ったら、声をかけなさい。ま、必要ないと思うけどね」
律「さわちゃん…ありがと」
さわ子「いいのいいの。まったく…あんた達見てたら私の若い頃を思い出すわホント…」
さわ子「じゃあ、とりあえずまた今度ね」
一同「はいっ」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:15:39.83 ID:tq6sLSPWO
その日から…ドラム無しの練習が始まった。
さわちゃんは、「練習くらい入れてくれてもイイじゃない…」
とか言っていたような気がする。ごめんねさわちゃん。譲れないんだ。そのドラムの席だけは…
そして…
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:23:04.01 ID:tq6sLSPWO
澪「レベル、高いな…」
唯「うん…」
自分達の番が来るまでまだ時間があったので、客席からコンサートを眺めていた。
でもそれは間違いだったのかも知れない。みんな、自信を失っていく…
こんな時、ムードメーカーが居れば、全然違ったのだろうか
唯「りっちゃん…」
誰にも聞こえないように呟く。大好きな人の名前を声に出すと不思議と勇気を得られる。
このおまじないを、私は毎回、ライブ前に行っていた
でも
唯「…」
今回ばかりはダメだった。呟いて得られるのは悲しみだけ。勇気の欠片もない
梓「だ、大丈夫ですよ皆さん!私たちの方が上です!そうに決まってます!」
ムギ「梓ちゃん…」
さわ子「みんな、そろそろよ。支度するからこっち来て」
澪「あ、はい」
梓「やってやるです!」
唯「…」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:27:26.21 ID:tq6sLSPWO
唯「…」
澪「う、う…何だか気分が…」
ムギ「澪ちゃん大丈夫??」
梓「ふぅー。ふぅー。深呼吸深呼吸」
さわ子「みんな、着替えたわね?」
澪「は、はいっ!!」
さわ子「……ふふ」
梓「?…どうかしたんですか?」
さわ子「ここで、スペシャルゲストの登場です」
唯「え」
澪「な」
梓「ま、まさか…」
ムギ「うそ…」
さわ子「嘘よ」
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:32:59.80 ID:tq6sLSPWO
ムギ「なっ」
唯「っ!」
澪「せ、先生!こんな時にそんな嘘つかないで下さい!」
さわ子「…」
梓「せ、先生?」
さわ子「今のみんなの表情で、今抱えてる不安や気持ちがわかったわ」
さわ子「みんな、りっちゃんの事が大好きなのね。……でもね、みんな」
さわ子「りっちゃん抜きでライブをする。そう言いだしたのは、あなた達よ」
澪「っ…!」
さわ子「このライブが失敗して一番悲しむのは誰…?」
さわ子「……これ以上は…野暮ね。…みんな、頑張ってね」
唯「……先生!」
さわ子「…なぁに?」
唯「ありがとう…ございます」
さわ子「…私は何もしていないわ。…客席から、見てるからね。じゃあ」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:40:48.52 ID:tq6sLSPWO
唯「行こう。みんな」
澪「ああ」
ムギ「ええ」
梓「はい!!」
ありがとう、さわちゃん。本調子とはいかないけれど、何とか頑張れそうだよ。
りっちゃん……見守っていてね
唯「…」
舞台袖へと続く扉。そのドアノブに手を伸ばした
扉は古いのか、独特な音をたてながら開いていく
唯「……」
梓「先輩?早く進んで下さい」
唯「りっ………りっちゃ…ん?」
そこには紛れもない、見間違うハズのない、あの見慣れた後ろ姿があった
扉が開く音に気付いたのか、その姿がこちらに振り向く
律「…よう。遅かったな、お前ら」
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:49:50.60 ID:tq6sLSPWO
澪「律!」
梓「先輩!」
ムギ「りっちゃん…!」
唯「…」
みんなが駆け寄る中、一人呆然と立ち尽くす私
律「…」
りっちゃんと、目が合う
律「遅くなったな。田井中律、ただいま帰還しました!!」
唯「りっちゃ……りっちゃああああっん!!」
駆け寄り、抱きつく。ああ、これだ…私が欲しかった安らぎが、今、目の前にある
唯「りっちゃんりっちゃん!りっちゃぁああん!!」
律「こらこら、泣くな泣くな。そろそろ幕開くぞ」
澪「と、いうか、律。大丈夫なのか?その、色々と」
律「はは、無理言って抜け出してきたんだよ。少しくらいなら大丈夫なんだってさ」
澪「そうか、ならいいんだ」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 20:53:50.96 ID:tq6sLSPWO
司会「次は、放課後ティータイムによる」
ムギ「あっ、みんな!始まるわよ!」
律「よし!…唯、やれるか?」
唯「ぐすっ…ずびっ…。モチロンだよ!!」
律「…よし!梓!」
梓「やってやるです!!」
律「澪!」
澪「大丈夫!」
律「ムギ!」
ムギ「いつでもオッケ~よ~」
律「よし!聴かせてやろうぜ!見せてやろうぜ!私たち、放課後ティータイムをさ!!」
唯「うん!」 澪「ああ!」 ムギ「ええ!」 梓「はいです!」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:04:33.89 ID:tq6sLSPWO
幕が…開く
観客の視線が、私たちに集中する
さっきまでの私なら、この状況でもう参っていただろう。けれど、今はもう違う
後ろに…居てくれている
安心を…くれる人がいる。だから…もう大丈夫
唯「…あー…コホン」
唯「ここに来るまで、とても長い道のりでした」
唯「楽しい事や嬉しい事。もちろん、辛い事や苦しい事もありました。もうダメだと、何度か諦めかける時もありました」
唯「けど、私はこうして、ここに、立っています」
唯「それは…みんなが……仲間が支えてくれたおかげです」
唯「こんな…こんな喜びを皆さんにも知ってほしい…そんな気持ちを込めて、歌います」
澪ちゃんを見る。ニコッと、頷いてくれた
あずにゃんとムギちゃんの方を見る。ニコッと、頷いてくれた
最後に、後ろに振り向く。ニコッと、頷いてくれた
唯「…」
唯「聴いてください。放課後ティータイム、曲は―――――――
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:08:41.55 ID:tq6sLSPWO
さわ子「…」
「凄い子たちだねぇ。アレ、みんな君の教え子?」
さわ子「あらアナタ…。…ふふん、凄いでしょ」
「伝わってくるものが違うよ。他とはね」
さわ子「…決めた?」
「あぁ。決まりだ」
さわ子「そう…。あの子たちも喜ぶわ」
「だといいね」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:14:32.90 ID:tq6sLSPWO
唯「ふぅ…ふぅ…」
歌い終わると同時に大きな歓声。鳴り止む気配がない。それがとても心地よく感じられた
梓「…い、今までで、一番…イイ演奏が出来た気がします…」
澪「はは、梓、泣いてるぞ」
梓「えっええっ!?そ、そういう澪先輩だって泣いてます!」
澪「な、なにぃっ!本当か!?」
ムギ「はいはいそういうのは幕がおりてからね」
唯「あはは」
相変わらずだなぁ、みんな
幕がおりる。その時だった
りっちゃんが一言も喋っていない事に気付く
唯「りっちゃん?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:17:51.18 ID:tq6sLSPWO
私の声に反応する事はなく、視界には、横たわったりっちゃんが、そこにいた
唯「ーーっ!りっちゃん!!!!」
さわ子「みんな!」
唯「さわちゃん!りっちゃんがっっ!!」
さわ子「とにかく落ち着いて!今医者が来てるから!みんなは後片付けを!」
梓「は、はいっ」
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:21:48.23 ID:tq6sLSPWO
病院にて
律「…」
りっちゃんはすぐに意識を取り戻し、面会可能という事になったので、病室にみんなが集まる事になった
医者「…私はダメだと言ったんですがね」
澪「あの…どういう事ですか?」
医者「…田井中さん」
律「いいです、先生。私から言います」
唯「…」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:31:25.94 ID:tq6sLSPWO
医者「それじゃあ私は退室するよ。何かあったら呼んでくれたまえ」
さわ子「ありがとうございます」
律「・・・・・腕…」
唯「え?」
律「腕が…弱ってるらしいんだ」
梓「ど、どういう事ですか?」
律「腕に負担をかけると…事故の時の痛みが再発して…まともに動かせなるんだ。私生活では問題ないけど」
律「…負担っていうのはまぁ…ドラム…くらいのレベルな訳で…」
律「それに、もしかしたら将来的には、もっと弱まるかもしれないって」
唯「…りっちゃん…まさか……」
律「うん。だから、この腕がまともに動かなくなる前に、放課後ティータイムの…最後のドラムを…やりたかったんだ」
律「だから、無理に病院を抜け出したんだ。たはは」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:39:13.05 ID:tq6sLSPWO
唯「わたしの――
律「唯」
律「唯のせいじゃない。気にするなよ」
澪「待て。待ってくれ。じゃあ放課後ティータイムのドラムはどうなるんだ!?」
ムギ「澪ちゃん!落ち着いて!」
澪「これが落ち着いていられるか!なぁ律、冗談なんだろ?冗談って…冗談っていってくれよ!なぁ!!」
梓「先輩!!」
澪「っ!あ…ごめ…わたし…さ、最低だ…なにやって…」
ムギ「澪ちゃん…」
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:41:08.21 ID:tq6sLSPWO
律「澪」
澪「なん…だよ…」
律「あ、いや。やっぱ後で」
澪「…お前、今、私放課後ティータイムを抜けるよ。とか言おうとしてただろ」
律「え、いや、あの…えと…」
澪「そんなの絶対に許さないからなっ!!」
ムギ「澪ちゃん、ここ病院だからっ」
澪「あ、ごめん…」
ムギ「…ちょっと外に出よ?ここじゃ冷静で居られないでしょう?」
澪「うん、そうする…ごめん、律、ムギ…」
律「あ、ああ」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:43:58.94 ID:tq6sLSPWO
ムギ「りっちゃん」
律「ん」
ムギ「私も、りっちゃんが抜けるなんて、絶対に認めないからね」
律「ムギ…」
梓「…律先輩、私もですよ」
律「梓…」
ムギ「さ、澪ちゃん」
澪「ん…」
梓「何か、冷たいもの買ってきますね、私」
律「あ、ああ。ありがとう」
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 21:51:56.10 ID:tq6sLSPWO
さわ子「私はお邪魔みたいだし…じゃあね☆」バタン
こうして、室内に取り残された私と唯
重たい雰囲気の中、先に口を開いたのは
律「いやぁそれにしてもあれだな」
私だった
律「腹へったなぁ…」
唯「………ねぇ、りっちゃん」
律「唯…どうした?」
唯「ドラムはダメなんだよね…?」
律「あ、ああ?」
唯「ギターは、どうなの?」
律「ぎ、ギター?ああ、ギターなら多分大丈夫だよ。先生が言ってたんだよ」
律「誠に残念です。まさかドラムとは…ギターやベース、キーならまだ何とかなったのに…ってな」
唯「じゃありっちゃん!!」
私が言い終える前に、笑みを浮かべた唯が顔を近づけてきた
律「お、おう。どうした」
唯「ギターやろうよ!!」律「は?」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:01:13.14 ID:tq6sLSPWO
律「なに言って…」
唯「それでね!私がドラムをするの!!そうすれば全部解決だよ!」
律「…あのな、唯。お前がどれだけ練習したか私は知ってる。ボーカルもギターも。それを全部壊す事何て私には出来ないよ…」
唯「りっちゃんが壊すんじゃないよ。私が壊すんだ」
律「へ、屁理屈を…」
唯「それに、私は」
律「?」
唯「ギターやボーカルがしたいんじゃない」
律「…唯?」
唯「りっちゃんと…みんなとバンドがしたいの!!」
律「……唯…」
唯「待ってて!」
律「あ、おい」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:04:11.83 ID:tq6sLSPWO
律「これ…」
唯「ギー太だよ!」
律「…ダメだ、受け取れないよ…」
唯「むー……」
律「第一、そんな大切なもの、他人に簡単に譲渡しちゃいけません」
唯「りっちゃんだからだよ」
律「えっ」
唯「他の誰でもない…りっちゃんだから」
唯「だから、渡せるんだ」
律「唯……」
唯「だから受け取って、りっちゃん」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:12:44.46 ID:tq6sLSPWO
これを受け取れば私は…
ダメだ…受け取れない…
唯の頑張りを知っているからこそ…受け取る事なんてできない…
唯「りっちゃん」
律「なん…だよ…」
唯「本当ならそこには…私が座っていたハズなんだよ」
律「!」
唯「これはその…ほんの少しの恩返しで…」
唯「それに…りっちゃんは言ってくれたよね…」
唯「楽しい事も、辛い事も…半分こ…ぜん…ぶ…半分こっ…て…」
律「っ…!」
唯は泣いていた。多分、私も泣いてる
唯「全部背負わないで……私、りっちゃんの事…大好き…だから…。少しでも力になりたくて…うぐっ」
私は…馬鹿だ。こんなにも近くで、すぐ傍で、私を思っていてくれてたのに
律「唯…ごめんな。そしてありがとう」
ベッドからおりて、唯と向き合う。もう逃げないよ
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:17:04.40 ID:tq6sLSPWO
唯「りっちゃん…」
律「唯の気持ち…全部、貰う事にするよ」
唯「りっちゃん…!」
律「唯…」
唯「うん。ギー太をよろしくね」
律「うん」
ギー太を受け取る。重いなぁ。きっと色んなモノが詰まってるんだろう
唯「私がい~っぱい、色んな事教えてあげるからね!」
律「うん。私も…ドラム、教えるよ」
唯「うん!」
律「……」
唯「りっちゃん?」
律「えーっと…だな」
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:18:37.49 ID:tq6sLSPWO
律「あ、唯。顔にゴミついてるぞ」
唯「へっ?どこどこ?」
律「あぁ待って、ちょっと顔近づけて」
唯「う、うん」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:24:44.82 ID:tq6sLSPWO
言われるがままにりっちゃんに顔を近づける
その時だった。唇にやわらかな感触
唯「…へ?」
律「へへ。ついていたのは可愛い唇でした!なーんてな。びっくりした?」
唯「……・・・・・ーー~~っ!!!?~~○×△□!?!」
律「お、おいおい唯、落ち着けって」
唯「りりりりり、りっちゃん!これはそのあのあ、あ、あれ、えと、そういう意味で捉えてもイイのでしょうか!!」
律「……ふふ。うんっ」
唯「り、り、りっちゃぁああああああん」ガバッ
律「お、おわっ!唯っ!?」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:31:23.73 ID:tq6sLSPWO
廊下にて
「りっちゃあああああんっ!」
梓「…入りづらいです」
澪「…私なんてあんな事言っちゃったんだぞ。もっと入りづらいんだぞ」
ムギ「まぁまぁ」
さわ子「あ、そうだ皆、デビューが決まったわよ」
梓「へ~…ってえええ!?」
ムギ「あらあら」
澪「ホントですか!?」
さわ子「うん」
梓「軽っ!って、そうなると大学にもあまり行ってられませんね」
ムギ「私、一度大学を中退するのが夢だったの~」
澪「どうしてそうなる!というか何だその夢は!」
「院内ではお静かに!」
澪「はひっ、す、すみません!」
さわ子「…(デビューを推したのは私だけど…何だか不安になってきたわ…)」
おしまい
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/25(土) 22:33:12.81 ID:tq6sLSPWO [75/78]
みんな、こんな独りよがりなSSに付き合ってくれてありがとう
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