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暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/09/03(金) 19:20:15.91 ID:ZrJVikAo [1/30]
ごめんなさい、八九寺さんは出て来ません。
では始めます。
プロローグ
土曜日朝、目覚めると何やら騒がしかった。
ベッドから抜け出し、階段を下りる。
「おはよう」
「あ、兄ちゃん良いところに来た!」
火憐が僕に話しかける。
「ん?どうしたんだ、朝っぱらから」
「聞いてよ、月火ちゃん今日デートなんだって!」
捲し立てる様に話す火憐。
「いいじゃないか」
「よくないよ!今日は私と映画に行くって言ってたのに!」
「あー、ダブルブッキングか」
「火憐ちゃんごめん、本当に蝋燭沢くんと先に約束してたんだよ」
「そんなの信じらーれーなーいー」
「とりあえず落ちつこうぜ、二人とも」
「この状況が落ちついていられる訳ないじゃん!」
火憐の怒りは収まらない。
2 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/09/03(金) 19:22:21.50 ID:ZrJVikAo
一方、月火ちゃんは
「もう行かないと約束の時間に遅れちゃう」
と、時計を見ながらソワソワしている。
「駄目、今日は私と映画でしょ!」
「なら、お前も彼氏と映画に行けばいいじゃないか」
この時、僕は自分の犯した罪に気付かなかった。
僕の言葉を聞いた火憐が、真っ赤な顔で突進し胴に頭突きを入れる。
「ぐはぁ!」
某フラグメーカーの気分が少し分かった気がする。
「兄ちゃんの馬鹿!」
火憐はそう吐き捨てると、階段を猛ダッシュで上がって行った。
どうせなら「ごるぁ!」言って欲しかったなど、この状況では言えない。
それよりも、僕は何か間違った事を言ったのか?
「どうしたんだ火憐ちゃんは?」
玄関に向かう月火に聞く。
「あのね、お兄ちゃん。火憐ちゃん、彼氏と別れたんだ」
「え?マジで?」
今年一番のビックリニュースだった。
蟹とか猿とか蛇とか猫より。
それぐらい、妹達のニュースには疎かったので……
3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:25:29.15 ID:ZrJVikAo
「うん……だから今日、私が―――」
「ああ、言わなくていい。とりあえず遅れると彼氏に悪いから早く行きなさい」
「あ、うん。火憐ちゃんの事お願いね。あと、母さん達今日遅くなるって」
「ああ、分かった」
「いってきまーす」
月火は元気いっぱいに表へ飛び出した。
直ぐに、車の急ブレーキ音と鈍い音がした。
月火?まさか、車に轢かれる様なドジはしないだろう。
万が一怪我したとしても直ぐに治っちまうから心配は要らない。
「さてと、お姫様のご機嫌でもとりますか」
僕は階段を上がり、妹達の部屋の前に立つ。
ドアをノックしようとしたら、中から声がした。
「いません」
おいおい、まだノックもしてないぞ。
「火憐ちゃん、入るよ」
「居ないって言ってるでしょ!」
「同じ家に住んでいるのに、居るとか居ないとかの問題じゃないだろ」
「じゃあ、入ってこないで」
「ごめん、もう入った」
「フンッ!」と不貞腐れる火憐。
「月火ちゃんに聞いたんだけど……」
「何さ、何を聞いたのよ?」
怒りはそうそう簡単に収まりそうにないと直感した。
4 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:26:58.59 ID:ZrJVikAo
とりあえず何か餌で釣ってみるか。
「あのさ、火憐ちゃん。なんなら僕と一緒に映画でも―――」
「見たくない」
「何か洋服でも買いに行かないか?」
「兄ちゃんの小遣いで買える服に興味なんて無い」
うわー、何このマジ怒りモード、いつもなら
「アレがみたい!」とか「新しいジャージが欲しいんだ」とか言うのに。
埒があかねぇ、こうなったら奥の手だ。
「単刀直入に聞くけど、彼氏と何故別れたんだ?」
我ながら凄い奥の手だと思う。
ジャブやフックが当らない相手に必殺パンチを見舞う、それも大振りで。
「理由なんて覚えてない!」
しかしながら、火憐にはその大振りパンチがヒットする。
「そんな事無いだろ、自分の事じゃないか?」
「思いだしたくない!」
「何か酷い事でもされたのか?彼氏に」
「酷い事したのは兄ちゃんじゃないか!」
「え?」
全く身に覚えが無い。
「兄ちゃんのせいで……」
「僕のせいで?」
5 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:28:34.19 ID:ZrJVikAo
「そうだよ。兄ちゃんが私のファーストキス奪ったから……」
たしかに、そんな事もあった。
火憐が囲い火蜂にやられた時の事だ。
「ああ、あれはおまじない。熱が下がっただろ?風邪は誰かに移すと治るって―――」
「別にそんな事を言ってるじゃないの!」
「じゃあ、なんだよ?言ってみろよ」
「あ、あの……」
急に火憐がモジモジと恥ずかしそうにする。
「あのさ、えっと……この間、彼氏にキスされそうになって―――」
「ほうほう、最近の中学生は進んでるな!」
「でも、急に気持ち悪くなって、突き放しちゃった」
「え?」
「なんか、目瞑って顔近づけられて、鼻息が聞こえたら……気持ち悪くて」
「で、突き飛ばしたと」
相手の男子、瑞鳥君は怪我しなかっただろうか?
「うん……」
「そっか。それで―――」
「『僕の事嫌いなの?』とかナヨい事言うから、別れた」
そこには、僕以上に単細胞な人間がいた。
「まぁ、気持ちは分かるけどさ」
「兄ちゃんが悪いんだよ!あんなカッコいいキスするから……するから」
「僕のせいかよ!そこで!」
「そうだよ!兄ちゃんがあんなカッコいいキスするから他の男となんて出来なくなったんだよ!」
「そうなんだ!!」
6 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:29:54.33 ID:ZrJVikAo
ここは男として喜ぶべきか?
まぁ、普通に考えれば―――
妹にキスし、トラウマを植え付け、恋をぶち壊した『変態鬼畜兄貴』と言う事で、悲しむべき状況だ。(変態は不要か?)
「『そうなんだ!!』じゃないよ!お陰で、休みの日も一人ぼっちじゃん!月火ちゃんも私が別れた途端に彼氏とばっか遊んでさ!」
「まぁまぁ落ちつけよ」
「この状況で落ち着いていられないよ!」
「ほら、考えてみろよ。いや、逆に考えるんだ。新しい恋のチャンスだろ?」
「はぁ?」
「女の数だけ男が居るんだぜ?もっと良い人が見つかるよ」
「あーなんか悔しい、その言い方。兄妹で彼氏彼女が居ないの私だけだし」
言うべきかどうか、一瞬悩んだが、これは言っておくべきである。
「あー、まぁ別に報告する程の事でも無かったんだけど―――僕も彼女と別れた」
「は?はい?ええー!マジ?」
「あ、うん」
「何?なんで?振られたのか?」
「いや、こっちから振った」
「おう兄ちゃん!」
「なんだよ」
「兄ちゃん、馬鹿だろ!」
「は?」
妹に馬鹿扱いされた!
8 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:32:42.15 ID:ZrJVikAo
「なんであんな美人振るんだよ!」
「えっと……キスする時の鼻息が荒くてキモかった」
「はぁ?兄ちゃん馬鹿?たったそれだけの理由?」
「おい、お前と同じ理由で何故僕は馬鹿と言われるんだ!」
「それネタだよね?」
「ああ、ネタだ。スマン」
「ていうか、どこまでネタ?」
「鼻息のところ」
「それ以外はマジなの?」
「ああ、マジだ。本気で」
「うそー!信じられない。次に兄ちゃんがあんな美人と付き合うチャンスが来る確率は、砂漠で落としたダイヤを探し当てるぐらいだろ?」
「そこまで無理難題じゃねーよ!現に今、付き合って欲しいという美人な女子が何人かいる」
「はいはい、妄想はそこまでで結構ですからぁ!」
「いや、これもマジなんだって」
「ホントかよ、兄ちゃん」
「ああ。自分でも疑うぐらいに」
「で、本命は居るの?」
「いや、居ない」
「なんで?」
「いや……まぁ、今ここで言うのは止めておく」
「ケチ」
この理由だけは言えない。
本当の理由は人様に言える事ではない。
9 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:35:55.52 ID:ZrJVikAo
「で、話は戻るけど本当は、なんで別れたの?」
「無表情で可愛くなかったから」
「な?なんと?」
「無表情で可愛くなかったから」
「大事な事なので2回言ったのか?兄ちゃんよ」
「お前が聞き返したんだろ!」
「無表情は分かるけど、可愛くないって……」
「人間ってのは、顔以外でも可愛さが決まるんだよ!」
「で、別れる時はなんて言ったんだよ?」
「別れよう」
「彼女、それで納得した?理由とか聞かなかった?」
「私の事嫌いになったの?ってナヨい事いうから、肯定した」
「兄ちゃんは私か!」
「まぁ、本当の理由は……」
「なんだよ教えろよ兄ちゃん」
「させてくれないし」
「……鬼畜」
「これって普通の理由だろ?」
「変態!スケベ!エロ爺!外道!鬼畜!馬鹿!」
なんか酷い言われようだ。
「まぁ、戦場ヶ原には戦場ヶ原の理由があるのは理解してたんだ。でも、僕も健康な男子だし……」
僕は本当の事が言えず、嘘八百でその場を取り繕った。
「けっ、何が健康な男子だ。男子なんて、みんなエロエロでやる事しか頭にないじゃん」
「そ、そんな事は無いぞ!女子にだってそんな奴はいるぞ」
「いるかぁ!居たら連れてきなよ!私が説教してやるよ」
10 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:37:41.01 ID:ZrJVikAo
「神原」
「え?今なんと?」
「神原駿河」
「マジ?」
火憐は結構この名前に弱い。というか憧れなのだ。前に逢わせた時は、緊張して酷い状態だったしな。
「ああ、本当だ。戦場ヶ原と別れたと聞いた途端、『戦場ヶ原先輩に殺されてもいい、私と付き合ってくれないか?そして今すぐ子作りしよう』と言われた」
「兄ちゃん、なんでそんな作り話するんだよ」
「作ってないって!話も子供も!おまけに勿論断った!」
僕は必死に釈明する。
「くー!マジかよ。よりによって神原先輩に言い寄られるなんて!おまけにそれを断るとか!何か腹立ってきた」
「まぁ、そう怒るな」
「他は誰が居るんだよ」
火憐の頭から湯気が立っているのは気のせいだろうか?
11 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:40:02.93 ID:ZrJVikAo
「羽川」
「ええー!」
「羽川にも告白された」
「嘘つけ!いくら兄ちゃんでもこれ以上私を愚弄したら―――」
この期に及んで嘘など吐く気はないが、やはり火憐はどれも信用できない名前らしい。
「羽川の場合は―――告白と言っても結構遠回しだった」
「どう遠回しか、全部説明しろ、詳細に!」
別れたあと、直ぐに羽川に言われたのが次の様な話。
『戦場ヶ原さん、落ち込んでたわよ。いいの?私は、これはこれで良かったと思うんだけどね。
阿良々木君の為には、この別れは間違ってないと思うの。
戦場ヶ原さんと阿良々木君だと、阿良々木君が委縮して阿良々木君の良いところを引き出せないじゃない。
そうね、阿良々木君の良さを引き出せる相手と言えば……
例えばメガネっ子で巨乳で面倒見のいい優しい子かな?
そんな子を探すと良い事あるかもね』
「って延々と一人演説を聞かされた」
「まんま自分を売り込んでる!」
「だろ?お前もそう思うだろ?ちょっと羽川って―――変ってしまったんだよな」
「で、兄ちゃんなんて言ったんだよ」
「あーちょっと待ってて、喉が渇いた。ジュース入れてくる」
僕は少し冷静さを取り戻す為に、話の腰を折る。
そして、キッチンでオレンジジュースを2杯入れ、戻った。
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:43:19.73 ID:ZrJVikAo
「ほら、飲めよ。お前の分も入れてきた」
「ありがと、兄ちゃん。で、なんて言ったんだ?」
「僕の好みは、細身ですらっとした、少しピーキーな女子が好きだ!と」
「言ったのか」
「言った、言い切った」
「それは宣戦布告だと思うよ、兄ちゃん」
火憐の頭の中では戦闘機がスクランブル準備しているんだろうな、きっと。
若しくは、銅鑼がジャーンジャーンか。
「それがさぁ、そうでもないんだ」
「どうなったんだよ」
『あまり細いのはどうだろうね?色々と出る所は出た方が、男性的には嬉しいんじゃないのかな?
年齢的なものはどうしようもないにしても、性格的特徴は頑張ったら調整出来ちゃうからね。
ピーキーってツンって事でしょ?その後のデレを期待しているのかな?
でも、一番大切なのは、どれだけ愛されているかって事だと思うよ?
それに、爛れた関係は良くないけど、お互いを欲する気持ちは大事にしないとね。
万が一、阿良々木君が彼氏だったら……受け入れちゃうかも知れないわ、私』
「と、追加演説で切り返された」
「うわー、アピール大盛りじゃん」
「でもまぁ、羽川の場合『付き合って』とか言わなかったから放置。保留じゃないぞ」
「やっぱ兄ちゃん鬼畜だな」
「なんでだよ?羽川の場合、僕にも断る理由があってだな……」
「他に誰か居るの?」
(きいちゃぁいねえ!!)
「あー、まぁ居るんだけど、それは僕の勘違いかも知れない」
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:45:22.59 ID:ZrJVikAo
「誰だよ?」
一瞬、躊躇したが僕はその名前を告げた。
「千石。千石撫子」
「月火ちゃんの友達の?」
「ああ。なんか知らないけど手紙とか良く貰う。というか戦場ヶ原と付き合っている時に家に誘われたりしたけどな」
「マジで!?」
「うん。でも、何の関係も持ってないぞ」
「当たり前じゃん!」
「でもなんて言うのかな、その接近の仕方が怖くてさ。ストーキングの一歩手前みたいな」
「あの子、ちょっと暗いもんな」
「まぁ最近は髪型も変えたりして、イメチェンしてたぜ」
「ふーん」
少し疑うかのように火憐は答えた。
「というか、撫子ちゃんの事は兄ちゃんの勘違いだよ、きっと」
「そうだな」
「しかし、神原さんにせよ、羽川さんにせよ、兄ちゃんには勿体ないだろ?」
「そうか?そうでもないだろ」
「どんだけ自分に自信があんだよ!」
「ぐはっ!」
火憐は僕に裏拳を入れた。
そういうのは、開いた手の甲で軽く「なんでやねん!」と言いながら入れるべきだろ!
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:46:38.66 ID:ZrJVikAo
「まぁ、最近まで気が付かなかったけど、僕には人とは違う『魅了する力』があるようだ。全然知らない下級生からも手紙もらったりさ」
「あっそ……熱ないか?」
「ねえよ!」
「兄ちゃんが死んでる!」
「そんなベタな冗談はよせ」
「と言う事は、鬼畜兄ちゃんは言い寄られては断り、蹴り落として楽しんでるんだ?」
「そんな酷い事はしてない!」
「じゃあなんだよ、ハッキリ言えよ兄ちゃん」
「今は一人がいい」
「何それ?」
「色々と恋愛事は疲れるんだよ」
「つい最近まで、女子からハブられる様な人間がよく言うよ」
「ハブられてなんていないから!というか、女子とかもう沢山だし」
「ふーん、兄ちゃんも取り敢えずは苦労してるんだな」
苦労と言うか、苦悩なんだけど……
「だからさ、火憐ちゃん。彼氏彼女が居ない者同士、今日は僕と遊びに行こう」
「は?なんでそうなるんだよ?」
「でも暇だろ?僕も暇なんだよ」と涙目で訴えてみる。
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:49:19.45 ID:ZrJVikAo
「分かったよ。とりあえず準備するから下で待ってて」
「分かった。あと、ハンカチ忘れるなよ」
リビングで待っていると、火憐が降りてきた。いつものジャージ、ライン入りのジャージ姿で。
「なぁ、たまにはおしゃれしろよ」
「え?ご飯や買い物ならこれで充分だろ?」
「じゃ、兄として命令する。月火の服でもいいから、着替えてこい」
「なんでだよ!」
「さっきも言っただろ?チャンスだって。どこかに良い男がいるかも知れないぞ」
「そうか!分かった、着替えてくる」
そういって、火憐はまた階段をドタドタと上がって行った。
あまりにも簡単に人の話に乗り過ぎだ、そんな事だから蜂に刺されるんだよ。
良く言えば素直なんだけどな。
待つ事20分、降りてきた火憐を見て、久々に度肝を抜かれた。
「うわ!」
心臓が飛び出し、床を這いまわる。
「どう兄ちゃん?似あってるか?」
「お前の……久しぶりにそんな格好を見たぞ」
「可愛い?」
「ああ。すげー可愛い」
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:51:06.68 ID:ZrJVikAo
いつかの日の事を思い出す。
月火の服を勝手に着た火憐を。
今日の服装は……前にも増して可愛い。
淡い水色のワンピースが良く似あっている。
おまけに少し化粧を施している。
「じゃ、兄ちゃん行こうぜ!」
が、中身は変わらない。話し方もいつもと同じだった。
「どこに行きたい?」
「んー、兄ちゃんの行きたい所でいいや」
「了解。あと出掛けるのに高い靴は無し。一緒に歩くと僕が―――」
「兄ちゃん、今度の誕生日にはシークレットシューズ買ってやろうか?」
「イラねぇよ!」
「ところで兄ちゃん。私がこれだけ頑張ってるのに、兄ちゃんはパジャマで出掛けるのか?」
あ……うっかりしてた!
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:54:53.95 ID:ZrJVikAo
黒
駒
作者・飯らしい
22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:16:52.28 ID:ZrJVikAo
お出かけ
僕は直ぐに着替え、財布と携帯を確認し、玄関へ向かう。
「なんだ、またそんな格好?」
「僕の正装はパーカーなんだよ!」
「とりあえず、兄ちゃんの服買ってやるよ」
「気前がいいな」
「馬鹿、兄ちゃんの金で買うに決まってるじゃん」
「そういうのは、選んでやるっていうんだ」
朝からドタバタはあったものの、火憐の機嫌は多少良くなった。
僕は火憐を自転車の後ろに『座らせ』、街へ繰り出した。
いつもは立ち乗りをしたがるが、今日は僕が無理やり座らせた。
この格好で後ろに立たれると目立ち過ぎる。
それでなくとも、結構人目を集めるんだよ、うちの火憐は。
街についたら、まずはファーストフードで朝飯を摂る。
僕には朝飯だが、火憐には早い昼飯となる。
「なぁ兄ちゃん。またさっきの話なんだけどさ。本当のところ、兄ちゃん的にはどんな彼女が欲しいんだ?」
「ん?ああ、そうだなぁ―――あれ?どんなのかと聞かれたら良く分かんないや」
「なんだよ、それ」
「イメージというか、ドンピシャこの人ってのなら居るね」
23 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:19:56.04 ID:ZrJVikAo
「誰だよ」
「言わない」
「だから言えってば!」
「言わなきゃならない?」
「言わないと、ゲーセンのパンチングマシン代わりにして、蹴る」
「おい!あのゲームはパンチ用だ!まさか……」
「うん、しょっちゅう蹴ってる。凄いスコアが出るんだ」
「店員に怒られるぞ!」
「ほら、制服で蹴るとパンツがちらっと見えるじゃん。それ見たら店員も文句いわないよ」
「その店員を先に的にしろ!」
「で、そろそろ教えてくれよ、兄ちゃん」
「まぁ、可愛い服が似合う背の高い女の子だな」
「だから誰なんだよ!」
「火憐ちゃん」
「は?」
「火憐ちゃん。阿良々木火憐ちゃんが兄ちゃんの好みだ」
「……本格的に壊れてるね、兄ちゃん」
「何が?」
「どこの世界に自分の妹をタイプだなんて言う奴がいるんだよ!」
「ここに」
24 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:22:51.67 ID:ZrJVikAo
「約一名か?」
「なんで約なんだよ」
「もう人扱いしてあげない」
「うっ……何か知ってる?」
「何を?」
「いや、気にしないでくれ。というか、今のは冗談。好きになったら好みだろ。今、好きな子なんて居ないさ」
「ふーん。贅沢な悩みだな」
「とりあえず、この話はもうやめ!朝からこればっかでループしてるじゃん」
話の腰を折り、僕はテレビの話を火憐に振る。
サクッと食らいつく。
本当に簡単な妹で良かった。いや、素直で。
食事の後、買い物をし火憐に服を選んで貰った。
映画鑑賞は火憐のお勧めの映画。
B級ホラーだったが、正直自分の日常の方が怖い様な気がして・・・・・・途中で寝てしまった。
締めはゲーセンで火憐のハイキックを見せて貰った。
その破壊力は半端無い。
ちなみに、今回は誰にも下着を見られない様に僕がタイミングを教えた。
そろそろ帰ろうか?なんてゲーセンを出たあたりで話していたら、急に火憐が立ち止まったまま動かない。
25 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:24:44.05 ID:ZrJVikAo
「どうした?足でも痛いのか?」
「瑞鳥君」
「え?」
「あそこに瑞鳥くんがいるんだけどぉ」
「どの子?」
「あの青いシャツ」
駅前の噴水前にその男の子は座っていた。
「へー、仲直りして来たら?」
「あの状態のところに私に行けと?流石は鬼畜兄ちゃん」
良く見れば、女の子と話をしている。
「あれ、同じ学年の子だよ」
「そっか……」
「別れたのが十日前だよ?で、もう他の女とデートとか信じられない!二股かけてたんじゃないの!」
その件について、僕は何も言えない。
「男なんて、やれれば誰でもいいんだろ?」
火憐の言葉が僕の胸に突き刺さる。
「ま、そういう男なんだよ。振って良かったじゃないか。火憐ちゃんは見る目があったという事さ」
僕は都合のいい解釈をつらつらと並べ、火憐を落ちつかせる。
26 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:26:31.70 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、手つなごうぜ」
「え?ああ、いいけど」
火憐は僕の手を掴み、半ば強引に腕を組む。
「手を繋ぐんじゃ?」
「いや、こっちの方がいい」
組んだかと思うと、歩き始める。
進行方向は―――さっきから目を離していない彼らの方向へ。
距離にして50mもない。
数十秒でその場に到達する。
「瑞鳥君、結構イケメンじゃないか」
火憐は何も言わない。
「火憐の好みはああいうのか?」
またシカトを食らう。
彼らの前を通り過ぎる手前、火憐が瑞鳥君の方をチラッと見る。
そんな火憐に気付いたか、瑞鳥君が驚く。
突然、別れた彼女が違う男と腕を組んで目の前に現れたからか?それとも私服の火憐を初めて見たのだろうか?
目線の動きからして、多分後者。
「挨拶しなくていいのか?」
僕は小声で話しかけた。
27 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:30:44.46 ID:ZrJVikAo
すると火憐は
「ねぇ、今日はこのまま家に遊びにいっていい?」
と、とち狂った事を言いだした。
相手が僕の事を兄だと知っていたら、その見栄張りはとても恥ずかしいぞ。
が、瑞鳥君は何かショックを受けたかのように放心状態に。
段々と僕の視界から消えてゆく。
「お前、なんて事いうの!」
「いいじゃん、お返し」
「なんの?」
「目には目、歯には歯っていうでしょ。見せつけられたから見せ返しただけ」
「お前、以前は『目には鉄拳、歯にも鉄拳』とか言ってなかったか?」
通り過ぎた後、角を曲がっても火憐は僕の腕から離れようとしない。
「兄ちゃん……」
「なんだ?」
「なんか悔しい」
火憐は目を真っ赤にし、口元を硬く結んでいた。
「そっか。でも泣くな。泣くのは帰ってからにしろ。これも兄としての命令な」
僕は自転車の後ろに火憐を乗せ、帰り道を急いだ。
自転車の荷台に横座りし、僕の腰のあたりに手を廻した火憐が呟く。
「なぁ兄ちゃん」
「なんだ?」
「兄ちゃんみたいな男は、この世に何人いるんだ?」
「ん?さぁどうだろ?星の数ほどいるんじゃないか?」
「星の数ほどいるのに、なんで私の前にそういう男が現れないんだ?」
「時期の問題だろ?というか、僕みたいな男は大した事無いぞ、鬼畜だし」
29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:34:16.32 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、鬼畜って認めたな。それより時期って?」
僕は星座の話を織り交ぜながら火憐に話をする。
「オリオン座が見たいと思っても、今の季節じゃ見えないんだよ」
「なんで?」
「冬の星座だからさ。昼間に星は見えないだろ?」
「うん。で?」
「それと同じで、今の火憐には見えないんだよ」
「いつになったら見えるんだ?」
「それは、火憐が一定の時間を有意義に過ごしたらな」
「どういう意味だよ」
「ただ闇雲に時間を過ごすんじゃなく、色々経験するって事さ」
「経験なのか?兄ちゃん」
「そう、経験。経験を積みながら時を重ねれば、季節も変って見る目も養われる。オリオン座がどれか分からないうちは見てもただの星さ」
「ふーん、だから今は見えないんだ」
「そう言う事、居るんだろうけどさ」
「なんか兄ちゃん、知らない間に大人っぽくなったな」
「そ、そうか?」
「たった一回彼女が出来ただけで、そうも変るなんて凄いよ」
「あはは、別に色恋だけがあった訳じゃない」
「ふーん、色々あったんだ?」
「まぁ、それなりに」
「それなりか。じゃ、私もそれなりにしておくよ」
「そうだな、それがいい」
火憐がとても素直で僕はちょっと安心した。
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:37:31.38 ID:ZrJVikAo
「とりあえず、兄ちゃんみたいな彼氏が見つかるまで、兄ちゃんで我慢するよ」
前言撤回。なんか凄く心配になった。
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな」
「遊びに行くぐらい、いつでも付き合ってやるよ」
「遊びだけ?」
「寝る前に話でもするか?」
「話だけ?」
「それ以上何が事がある?」
「おやすみのキスは?」
「そんなもんねぇよ!」
「なんでだよ!」
「兄妹だから」
「アメリカじゃ親子でするのに」
「日本にそういう習慣は無い」
「じゃ、今日から阿良々木家の習慣にしよう!」
「誰もしてくれないぞ?」
「じゃあ、兄ちゃんがしてくれよ」
「あ?ああ、考えとく。というか考えても駄目だろ。それよりもいい人見つかると良いな」
馬鹿な会話が終わり、二人の間に沈黙が漂う。
それっきり無言になった火憐が僕のパーカーの裾をギュっと強く掴む。
僕は何も言えず、ただ黙々と自転車を走らせた。
夕暮れの中、自転車を漕ぎ家路を急ぐ。
ペダルを踏む音と、火憐のすすり泣く声がシンクロしていた。
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:44:15.37 ID:ZrJVikAo
豫 告
全クケシカラン兄貴ダ
\
_ .. -──- .._ ) 〉
「」'´ `ヽノ / _ .. -──- .. _
r‐(())/ `'´ | `ヽ. \ 〈 ( .ィ´ `ヽ.
/:_::ノ ./ i. | 、 丶 :.、__, ヽ'´ / `ヽ::. .ハ_
. / ::ヽ._ノ .:/ 、/| il: |\,. i 、:.__ノ .′/ ,' :|i |i ハ::( ())
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DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だよ!月火だよ!
作者が今から飲みに行くらしいので、今日はここまでらしいよ!
というか火憐ちゃん、兄萌えなの?
今度、私の彼氏の友達紹介してあげようか?
お兄ちゃんよりカッコいいんだよ!
え?実の兄だから萌える?
妹萌えより酷いね
ではまたー!
40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:46:42.02 ID:ZrJVikAo
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「staple stable」
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西尾維新・アニプレックス・シャフト
*この物語はフィクション(SS)であり、実在する書籍と設定や性格が多少異なる事があります
*作者には校正してくれる編集さんがいませんので、たまに敬が抜けたり等の誤植がありますが、お許しください
*スレタイは殆ど関係ないと言うか、一番最後です
OP終わり
何故飛ばしたし!
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:49:34.29 ID:ZrJVikAo
暦x火憐
家に戻り、いつもの調子に戻った火憐に急かされ着替える。
「ほら、すげー似あってる」
「そうか?」
「私の見立ては間違いないな」
初めてハイネックのセーターを買った。
「この冬はそのカッコ良さで彼女GETだな」
「格好に惑わされる女に興味はねぇよ」
「かっけー!兄ちゃんすげーかっけーよ」
「そ、そうか……」
「じゃ、私とデートな、兄ちゃん」
そのお誘いは少し嬉しかった。
そんな折、ポケットの中の携帯が鳴る。
「もしもし」
母さんだった。
今日は父さんと出掛けていたが、用事が長引き明日まで戻れないらしい。
と言う事は、今日は3人。
42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:52:35.89 ID:ZrJVikAo
「火憐ちゃん、晩ごはんの準備出来る?」
「なんで?」
「母さん達、今日帰れないらしい」
「カップ麺で良ければ作るけど?」
「それは僕でも出来る」
「なぁ兄ちゃん、こういう時の為に料理の出来る彼女を作れよ」
「彼女は家政婦じゃないんだぞ。というか、火憐ちゃんが僕の彼女だと言い張るなら火憐ちゃんが作らなきゃ」
なんて話をしていたら、話の腰を折る様に今度は火憐の携帯が鳴る。
「あ、月火ちゃんだ」
「もしもし?あ、うん、うん」
朝の喧嘩の事なんかすっかり忘れて仲良く電話で話す二人。
とりあえずこれで一件落着だな。
「あー、そうなんだ。ちょっと兄ちゃんに代わる」
「兄ちゃん、月火ちゃんが代わってくれって」
僕は火憐の携帯を受け取り、耳元に当てる。
通話口の辺りから火憐の匂いがした。
少しだけ、大きく息をした。
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:54:48.26 ID:ZrJVikAo
「もしもし」
「あ、お兄ちゃん。今ね、蝋燭沢君と遊んでるけど、このままオールしよって話しになったんだ。
いいかな?それにお母さん達帰ってこないでしょ?」
「駄目。ちゃんと家に帰って来なさい。夜遊びなんて母さんが聞いたら悲しむぞ」
「えー、けち!」
「で、どこに誰といるんだ?」
「クラスの子たちだよ。男子2人女子3人。蝋燭沢君の家。ね、いいでしょ?」
甘い声で妹に強請られると僕は少し弱気になる。
「なら、蝋燭沢君のお母さんに代わりなさい」
「じゃあ、家にかけ直すね」
少しして、蝋燭沢の母と名乗る人から電話が入った。
一応、大人の声。
多分、本物のお母さんだろう。
「ええ、こちらこそ。すみません、大勢で押し掛けているみたいで。騒いだら叱ってやってください」
電話を切った。
これで何か起きれば、両親に叱られるのは僕。
大人の責任を感じた瞬間だった。
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:57:27.92 ID:ZrJVikAo
「月火ちゃん泊まり?」
「ああ、蝋燭沢君の所で遊ぶらしい」
「そっか……いいなぁ」
火憐は少し寂しそうだった。
「じゃあ、晩飯はピザでも取るか?それとも食べに出るか?もしくは二人でコンビニ弁当+カップ麺」
「ピザでいいや」
「よし。好きなモノ頼めよ。食べた後、僕とDVD鑑賞でもしよう」
「どれにしようか?いつも迷うんだよ」
「この半分づつ入ったのは?」
「何となくそういうのって邪道な感じがするじゃん。二股かけてるみたいでさ」
余程、二股疑惑が拭えないらしい。
「じゃ、一番高いのを頼め」
「おー!兄ちゃん太っ腹だな」
「いや、あとで母さんに貰うから大丈夫だ」
「なんかセコいね」
頼んだピザが届く予定は、電話をしてから40分ほどしてから。
その間に、僕は風呂の準備、朝使ったコップを洗ったりする。
「兄ちゃん、家事も出来るんだな」
「おいおい、これぐらいの事、お前も出来なきゃダメなんだぞ」
「分かってるんだけど、手伝うと何故か皿とかグラスを割ってしまうんだ」
「ちゃんと持たないからだ」
「いやちゃんと持って拭いていると、半分に割れた」
どれだけ握力あんだよ!というか、前の喧嘩の時にその強さは身をもって知ったが。
でも、拭きながら割るのは漫画の世界だぞ、火憐。
暫くしてチャイムが鳴り、ピザが届いた。
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:02:27.17 ID:MqTegvQo [2/31]
ピザ屋の配達員は無愛想だった。
あれだけ無愛想なら、戦場ヶ原でも出来るんじゃないか。
あ、戦場ヶ原とか。
何を思いだしているんだ、僕は。
別に嫌いだった訳じゃない、どちらかと言うと好きだった。
いや、本気で好きだったんだけど、耐えられなかった。
『浮気には寛容だけど、本気になったら殺すわよ』ってセリフが僕を苦しめた。
だから別れた。
僕は―――いや、この話は思いだしたくない。
やめておこう。
僕らはリビングでピザの箱を開け、晩飯にする。
テレビからは、大して面白くもない関西芸人の声がする。
「なぁ兄ちゃん」
「ん?」
「なんでピザ屋のピザはメニューと本物の差がこんなにあるんだ?」
「ああ、それは大人の事情だ」
「どんな事情だよ」
「写真だけで美味そうに見せないと売れないだろ?」
「だからって、この差は酷いだろ」
「まぁ、多少の違いは認めてやれ。ここに小さく注意書きもあるだろ?」
「あ、本当だ。書いてある」
「一応、予防線は張ってあるんだよ」
「へー、お殿の情事って凄いな」
「大人の事情だ!どこの大奥の話してんだよ!」
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:04:04.89 ID:MqTegvQo [3/31]
「しかし、大げさなのはJAROに電話だよな、兄ちゃん」
「そ、そうじゃろ」
滑った、思いっきりすべった。
話題を変えなきゃと、テレビに目をやる。
コーヒーの宣伝をしていた。
「このコーヒー、実は醤油とか塩入コーヒーなんだぜ?」
「えーマジで?」
「普通のコーヒーだと、綺麗にミルクが渦を描かないからさ。他に木工ボンドを流したり」
「へー、兄ちゃんは何でも知ってるんだな」
「何でもは知らないさ、知ってる事だけさ」
一度言ってみたかったんだ。
結構かっこいいセリフじゃないか。
羽川か……ああ、また軽く鬱になる。
「兄ちゃんどうした?気分悪いのか?」
「いや、なんでも無い」
「ふーん、ならいいけど)
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:06:19.27 ID:MqTegvQo [4/31]
「それより兄ちゃん、これ何?」
「ピザだろ?」
「じゃあ、ピザって10回言ってみて」
10回クイズか。火憐もまだまだ子供だな。
「ピザ、ピザ―――ピザ!」
さぁ、ヒジを指させ!
「では問題です。これは?」
火憐の指は僕を指していた。
「え?……えっと、ピザ?」
答えた瞬間、火憐がニヤリと笑う。
「ブブー!正解はキザ」
「は?」
「大体、兄ちゃんがピザな訳ないじゃん。ピザってのは羽川さんが不摂生をしたら―――」
「おい、それ以上はいうな。というか、僕のどこがキザなんだよ!」
「ええー!気付いてないの?」
「ああ、自分をキザだなんて思った事は一度もない」
「兄ちゃんって凄いキザだぜ?」
「本当?」
「うん、そりゃもう―――」
「へー、自分では分からなかったよ」
「星座の話を織り交ぜて話すとか、キザ以外の何物でもないよ」
「そ、そうか……すまん」
「別にそんな兄ちゃんがダメだって言ってるんじゃないよ」
火憐は僕の横に座り直し、腕にしがみついてジャレてきた。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:09:07.93 ID:MqTegvQo [5/31]
「そんな兄ちゃんが、私は好きなんだよ」
一瞬、自分の心臓が止まったかと思った。
次の瞬間、蘇った心臓が高速で鼓動を始める。
火憐と僕の距離が少し詰まる。
火憐は物欲しそうな顔で僕を見つめる。
唇の距離が10センチまで来た時、僕は口を開いた。
「駄目だよ、火憐ちゃん」
「何で?」
「ほら、僕達兄妹だし」
「キスぐらいなら……前もしたじゃん」
「前は、ほらさっきも言ったけど、病気をだな―――」
「兄ちゃんは私とするのが嫌なの?」
「いや、そう言う訳ではないけど……」
ピザを食べながら飲んだのは―――間違いなくジュースで、酒ではない。
「それともまだ彼女の事が気になって?」
「あ、いや……そんな事も無いけど」
「分かった……」
火憐はそう言うと急に立ち上がりリビングから出て行ってしまった。
「ああ、怒らせたか。でもそれで良いんだ」
僕は自分に言い聞かせるよう、呟いた。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:11:59.82 ID:MqTegvQo [6/31]
ところが、火憐が右手に歯ブラシを握りしめ戻ってきた!
「兄ちゃん、口がチーズ臭いなら言ってくれよ!」
「あ、いや、そんな訳では―――」
「はい、お願い」
火憐は右手に握りしめていた歯ブラシを僕に渡す。
受け取った僕がうろたえていると、正面に座り口を大きく開けた。
「あーん」
「……」
「ほら、早く磨いてよ!ピザの匂いがしたんだろ?」
「あ、うん、いや……」」
違うんだ!!
なんだ!この状況は!どうすりゃいいんだよ!
自分がした事だが、人に要求されると躊躇する。
でもこの状況で磨かないと言うのは……悩んだ挙句、僕の理性が少し欠けた。
「ほら、もっと大きく開けろよ」
僕は火憐に命令していた。
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:13:54.81 ID:MqTegvQo [7/31]
僕は手に持った歯ブラシを火憐の口にゆっくり挿入する。
「奥歯からな、ふふふ」
僕は奥歯と歯茎の境目を執拗に、そして緩やかに磨く。
ゆっくりと前に、そして反対に、奥へ上へ裏へと。
恍惚とした表情の火憐が堪らない。
大きく開けた口から少し唾液が零れる。
「ひ、ひいちゃん、ま、まら?」
「もう少し我慢だ!」
火憐の肩がプルプルと震えだす。
喉の奥に溜った唾液で咽そうになる火憐。
僕はそこで手を止め、火憐にうがいを勧める。
「はい終わり。うがいしておいで」
洗面台へ向かう火憐。
その足取りは少し重そうだった。
うがいを終わった火憐がリビングに戻ってくる。
また右手に歯ブラシを持ったまま。
が、よく見れば僕の歯ブラシだった。
一瞬、嫌な予感がした。
53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:16:52.16 ID:MqTegvQo [8/31]
「じゃーん!次は兄ちゃんの番な!」
「ぼ、僕は自分で磨く!」
「駄目だよ、はいアーンして。兄ちゃんはバジル臭いからな」
頭部にアイアンクローを決められ、僕は転ばされた。
正座した火憐に膝枕され、上から覗きこまれる。
「いくよ!」
ニヤニヤしながら僕の口の中を歯ブラシで弄る火憐。
さっきに増して、恍惚とした表情だった。
「ふふ、兄ちゃん。奥歯にベーコンが挟まってたぞ」
言葉攻め!
こんな上級攻撃をどこで覚えてきたんだ!。
歯間に挟まっていた物を実況されると言うのは、本当に恥ずかしい。
しかし、歯ブラシの気持ちよさと恥ずかしさの相乗効果だろうか、不覚にも少々股間が熱くなってしまった。
5分ぐらい頑張った所で、僕も唾液が喉に詰まり、咽そうになる。
「よし、兄ちゃん。うがいしてきて」
何とか解放される。
洗面所でうがいし、少し冷静さを取り戻す。
部屋に戻り、何食わぬ顔でソファーに座った。
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:18:07.67 ID:MqTegvQo [9/31]
「あれ?何でそんな所に座るかな?兄ちゃん」
「ん?」
「何か忘れてないか?」
「さぁ?」
「15分前に記憶を戻せよ、兄ちゃん」
「15分前?何かあったか?それより、片づけを……」
不意に袖口を掴まれる。
「兄ちゃん、今日言った事忘れたのかな?」
「どの事?」
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな、の件」
「ああ、いいよ、それで。じゃ、片づけを……」
「だーかーらー」
物凄く強い力で引き寄せられた。
「えっと、何をしたらいいのかな?火憐ちゃん」
「そういう事を女の子に言わせるの?だから兄ちゃんは―――」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:30:40.78 ID:MqTegvQo [10/31]
豫 告
全クケシカラン兄妹ダ
、
}ヽ
_ .. -──- .._ノ,ノ
,.'´ `ヽ /
r‐-:;ィ「l / ,' | ハ 〈 (
/ ::ノ(())/ /'| i |、 i 八 _, >-‐  ̄ ̄ ‐- .
/.:::∠ノ /,`メ、 | | | Χ| _.ノ i / `ヽ
/ .::<.._ ノ,/j/_、|ハ. /'´ヽト、_...> _人_ ′./ ヽ. ハ
/ .::::/ |' j/<弋zリ` j/'-=ニ /'l `Y´ l .' ,' / :l、 」
′ ,':::/ ヽ._、 xxx , xxx ,'_ノ 〃__. ミ ! | | i| l| i l| |i :i| .(())
/ /::/ ` 、 、─ァ ,.′ . |lヨ | L__||_,八__|」|_||_:|| ::|_」
. / l::/ ,r‐;:>:.. __ ..:<ーュ、_ ゞ.|| 彡 | ハ ニ=- '´ヒzリ〉| i: :|
. 〈 ヽ .::〈 ,r'´{ 〈 {::ノ l::} `l 〉`ヽr||、 | i:::.xxx , xxx..| |: :|
ヽ. \:::〉 〈::\ ヽ__\_∠__,.ィ(( ./´ ̄`> )) i. | |:人 、__, .イ| | 八
__ ノ::. / ヽ:::::..、 .____| ̄l´__,ノ′ _人._ | |:::i::;>:.. __ ...::<:::|:| |:: \
r‐、i::../ |:\:::::::::::::::::::::::::::::|_|´. \:ヽ、 `Y´ . | |:::|'::i:::i:;r;〉 j:〉 .ヽ| |::::.. \
l:::{ |:::|、  ̄| ̄l ̄| ̄ |::| \ 丶::\ 〃 ! /| ヾ | |:::|:::|/ |、 // | |`ヽ:::.. \
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ヽ._.> 〉::〉 / | ヽ |::l ,/ /::/ | :| /∨ :,' |// ´ ̄V ,' l:::::. \ ̄ ̄
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〈::〈 ....::\ .:l ..ノ ,|/´ヽ >'´ ミ T |. 彡 |. / / ,'::l .. -─- 、:|  ̄`
}" ─- ヽ-/´-‐:厶 l (( l´ ̄`> )). .:|/ / .::| '´.://///;ハゝ
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/ 〃 i| |i ヽ ~}" |l::::::::l| :::::「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| 人:V//////;ノ
DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だぜー!
月火だよ!
ねぇ火憐ちゃん、このあとどうなっちゃうの?
そ、そんな事私から言えない!兄ちゃんに聞いて!
兄ちゃんなら、さっき戦場ヶ原さんに連れていかれて退場したよ?
まっじでー!まぁ、みんなの期待に応えられる事は無いと思うんだけど……
作者がそろそろ限界なんだって!
というか、この先は同人ネタが織り込まれているとか、作者も馬鹿だね
そうだね!
では、次回!「一線を超えちゃう兄妹の行く末」お楽しみに!
いや、ちがうし、それ。
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:43:59.56 ID:MqTegvQo [11/31]
最前線
越えてはいけない一線がそこにはあった。
が、見えない線を軽々と越してきた妹がいた。
火憐に正面から抱きつかれ、僕が火憐にされた。
されてしまった。
深く、熱く、永く。
「なぁ兄ちゃん。前にも言ったけど、兄ちゃんとなら私―――」
虚ろな目で僕を見る火憐。
「待って火憐ちゃん。ほら彼氏彼女であったとしても、いきなり何でもする訳じゃないだろ?」
苦しい言い訳だった。
無駄な時間稼ぎだった。
というか、『バン!』とドアが開いて、『アイスピック買ってくる!』と月火が言ってくれる事を祈ったがそれは無かった。
影から忍が出てきて、「お前様、何をしておるのか?」と言ってくれてもいい。
しかし、影の中は静まり返ったまま。
ここ最近、ずっとそうだ。
「兄ちゃん。兄ちゃんは私の本気を受け止められないの?」
本気だから困ってるんだよ!
兄妹の荒廃、この一線にあり。
有名な司令官の言葉を真似て見た。
そうした所で、何も救われないのだけど。
「あー分かった!分かったからまずは風呂に入ろう、な?」
「あ、そうか!やっぱ綺麗にしてからじゃないと駄目だもんね」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:48:46.91 ID:MqTegvQo [12/31]
火憐は複雑なのか単純なのか、分からなくなってきた。
僕を解放し、火憐はバスルームへ向かう。
「兄ちゃん、一緒に入る?」と振り返りながら笑顔で声を掛ける火憐。
「いや、結構ですから。お先にどうぞ」
仰々しく答えた僕に笑顔を見せたのち、火憐はそのままバスルームへ消えた。
どうしよう?
誰かに助けを求めるべきか?
こんな時、他人に頼って良いのか?
何をすればいいのか?
家から逃げ出せばいいのか?
でもそれじゃ何の解決にもならないし、火憐一人になってしまう。
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:49:51.79 ID:MqTegvQo [13/31]
悩んで出た答えが『説教』。
泣かせても、嫌われても、説教すれば解決する。
でも、それを望まない自分も居る。
『妹がやろうって言ってんだ、やっちまえよ暦』と放言するブラック阿良々木が居る。
それは僕が戦場ヶ原と別れた少し前から心の中にそれが居る。
いや、ずっと居たんだろうけど、『あの時』以来良く現れる。
言い寄られたら、『やっちまえよ!それでポイだ』と囁く。
それでも僕の理性がそいつを抑え込む。
なのに、今日は無理かもしれない。
戦場ヶ原と別れ、心が寂しくて火憐に優しくした。
お互いに心の隙間を埋め合おうと……
そんな事が間違っているのは百も承知、だが今日は……負けかもしれない。
火憐を可愛く思ったのは事実だ。
でも、こんな関係になりたいなんて願った訳じゃない。
なのに―――願ってない関係に堕ちる。
全ては、あの日が原因だ。
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:57:28.37 ID:MqTegvQo [14/31]
それは、僕が戦場ヶ原と別れた少し前に遡る。
あの前日、夜遅くまで忍とドーナツ談義をして明け方に床に就いた。
ぼんやりした頭で学校に行くと、校門前でメールが着信。
『阿良々木君、体育倉庫で待っています』
羽川からのメールだった。
僕は教室に寄らず、そのまま体育館横の倉庫へ向かう。
中に入り、声を掛ける。
「羽川、居るのか?」
「阿良々木君?」
「ああ、そうだ。どうしたんだ?」
「阿良々木君、助けて」
僕は鞄を放り出し、羽川の元に駆け寄る。
制服姿の羽川がいた。
「どうしたんだ!」
よく見れば、頭に耳が出ていた。
『ブラック羽川』
そう思った刹那、羽川はブラック羽川に変った。
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:59:11.27 ID:MqTegvQo [15/31]
「にゃはは、人間。久しぶりだな」
「お前!羽川に何をした!」
「何もしてないさ、ただご主人様に呼ばれただけにゃ」
「おまえ……」
次の瞬間、猫は僕に襲いかかってきた。
押し倒され、後頭部に激しい衝撃と痛みを感じた。
僕はそのまま、気絶してしまった。
暫くして、体に伝う振動に起こされた。
そして―――悲しい光景を見てしまった。
猫が、僕の身体の上で上下に動いていた。
「よぉ、人間。お目覚めか?どうかね?ご主人様の体は?」
僕はあろうことか、猫と性行為をしていた。
いや、この状況はレイプだと言っても過言ではない。
「なぁ、人間。これで俺は当分はゆっくり休めそうだ。恨むなよ、俺を」
そう言いながら、猫は僕の身体を弄ぶ。
エナジードレインのせいか、体が動かない。
そんな僕の上で猫は―――
血を流しながら、薄ら笑い、そして鋭い目で僕を睨みつけながら動く。
65 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:00:18.58 ID:MqTegvQo [16/31]
忍はどうした?
(すまんな、一瞬の事で。寝こけていて動けんかった)
影から声が聞こえた。
「今すぐ猫を!」
「人間、また吸血鬼もどきを呼ぶのか?そいつが出てくるのと、俺がお前のエナジーを全部吸い取るのとどっちが早いと思う?考えろ人間!」
猫は僕を叱りつける。
(諦めてくれ、お前様)
こうなっては、忍も指を咥え見ている他ないのだろう。
猫はいっそう激しく動き、そして―――僕は猫を睨みながら射精してしまった。
「心配はするな。子供が出来るタイミングではない」
そういうと、猫は段々と影を薄くし、完全に羽川が戻ってきた。
「どうしよう……」
(とりあえず、この場から去れ。その前に―――)
僕は羽川の下腹部を濡らしてきたハンカチで綺麗に拭き下着をはかせ、そのまま倉庫を後にした。
勿論、学校はそのまま休んだ。
いや、逃げだした。
66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:01:37.67 ID:MqTegvQo [17/31]
家に逃げ戻り、忍と話す。
「お前様、今日の事は事故だ。そう思えばいい」
「でも僕は……」
「案ずるな。あの女の記憶には何も残らない。体の痛みは残るかも知れんがのぅ」
「でもそれじゃ……」
「急な生理が来たとでも思うだろう。それに、猫が静まれば彼女も楽であろう」
「でも―――」
「でも?では何か?お前様が犯ったと言えるのか?」
「それは……無理だ」
「だろうな。なら忘れろ。単なる事故だ」
忍に宥められたが、僕は僕が許せなかった。
「さてと、儂は寝る。お前様も休め。そうすれば少しは楽になる」
そう言うと忍は黙り込んでしまった。
多分、忍も悔しかったんだろう。
遣る瀬無さで胸が苦しかった。
色んな人との関係を全てぶち壊された気分、僕にはもう誰も要らないと決めた。
それから数日して、僕は戦場ヶ原に別れを切り出した。
67 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:03:05.66 ID:MqTegvQo [18/31]
「阿良々木君、今なんて?」
「ごめん、僕と別れて」
「あら?高貴な私に何か問題でもあったのかしら?」
「いやそんな訳じゃないんだ」
戦場ヶ原は大きく首を逸らし、僕を一瞥する。
「と言う事は、下衆な阿良々木君に何か問題があったのかしら?」
「何も聞かず別れてくれ」
たとえ意識が別物だったとしても、羽川と交わった自分には戦場ヶ原と付き合う資格は無いと考えた結果が別れ話だった。
「ふーん……そう。分かったわ」
「ありがとう」
「お礼?何故お礼を言われなきゃならないのかしら?それとも何か言えない事情、いえ情事でもあったのかしら?」
「いや……」
「私は浮気には寛大よ。本気だったら殺すって前にも言わなかったかしら?」
本当に戦場ヶ原は鋭い。
こういう所が怖い部分でもあり、惹かれる部分でもある。
「あ、うん。言われた。でも―――」
「あら図星なの?相手は誰かしら?神原?それとも羽川さん?」
「いや……」
68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:05:04.01 ID:MqTegvQo [19/31]
「そう言えば、羽川さんこの間学校休んでたわね、阿良々木君も休んだ日。何かあったのかしら?阿良々木君知ってる?知っている筈よね?」
「いや……」
「ふーん、そう。分かった。あと、前にも言ったけど、怪異がらみの時はお互い話しましょうって言ったわよね、覚えているかしら?」
僕は心臓が止まるかと思った。
「ちなみに私、羽川さんの存在は『怪異』だと思ってるから。
あんなの人間だなんて思わないから。
一応、彼女の前では従順なフリをしているのだけれども、本心からの行動じゃないわ。
もし、羽川さんと何かあったのなら―――ちゃんと話して、阿良々木君」
そう僕に話しかけた戦場ヶ原の顔は、いつの日か星を見た日の顔だった。
でも、僕は自分自身が許せず、結局戦場ヶ原の最後の優しさまで踏みにじった。
完膚なきまでに、雑草を踏みつぶす様に。
そして今に至る。
69 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:06:38.15 ID:MqTegvQo [20/31]
白
駒
自宅リビング回想ヲワリ
70 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:07:54.86 ID:MqTegvQo [21/31]
バスルームから火憐が出てきた。
濡れた髪をタオルで拭きつつ……何故かバスタオル一枚で。
「ちゃんと服着なさい」
「いいじゃん、今からまた裸になるんだし」
「決定事項なのか!」
「え?」
「え?」
「違うのか?兄ちゃん」
「もう一度ゆっくり考えた方がいいぞ、火憐ちゃん」
「女に、女にどこまで恥をかかすのかな?」
「もう一度冷静になろう、な?」
僕の言葉は火憐の耳に届いていない。
もう彼女の中では全ての事が決定事項の様だ。
火憐に引き千切られる様に上着を脱がされ、上半身が裸になった。
それを見つめる火憐。
「入ってくる?それともこのまま?」
このまま押し倒してもいいのかも知れない、いや駄目だろう。
どうすりゃいいんだ!
一歩、火憐が前に出た。
と、その時だった。
71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:27:57.36 ID:MqTegvQo [22/31]
リビングのドアが開き、そこに月火が居た。
「なんですか一体!ちょっと鉈買ってくる!」と月火が叫ぶ。
助かった!いや、これは助からない?
表に飛びだした月火を追う。
「まてよ!」
上半身裸で、中学生を追いかける図。
誰がどう見ても変態の仕業である。
次の瞬間、後ろから後頭部に飛び蹴りを喰らう。
僕はそのまま失神した。
最近、僕の中では失神がマイブームなのか?
目覚めると、そこは自宅、自分のベッドの中だった。
僕を囲むように、火憐と月火、そして神原と戦場ヶ原が居た。
「おお、目覚めた。阿良々木先輩、すまなかった。つい変質者かと思い本気で蹴ってしまった」
「お前か!」
確かに、僕の後頭部に飛び蹴り食らわせられるのは、この町じゃ神原ぐらいだろう。
それはいい、それよりも……何故、戦場ヶ原が居るのか?
何となくバツが悪くて、僕はそのまま布団の中に逃げる様に潜ってしまった。
「あらあら仕方が無いわね。神原、布団を剥ぎとりなさい」
戦場ヶ原に指示された神原は、僕の布団を盛大に捲り上げ、僕はベッドの上で晒し者となった。
72 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:30:48.07 ID:MqTegvQo [23/31]
エピローグ
何故ここに居るのかという問いに、神原は答える。
「夕方、買い物に出かけたら、阿良々木先輩を見かけたんだ。自転車の後ろに可愛い女子を乗せていたので、驚き直ぐに戦場ヶ原先輩に電話したのだ」
「で?」
「勿論、そのまま追跡した」
「お前はストーカーか!」
「やっと追い付いたと思ったら、その女子を家に引き入れたので、これはもしや!と思いずっと表で張り込んでた」
「えー、なんで神原がそこまでする必要がある訳?」
「そ、それは。うん、その子がもしも朝まで出てこなければ諦めようかと……」
「何を諦めようだ!お前とは付き合わないって言っただろ!」
「謙遜するな、先輩」
「勘違いするな!」
「しかし、後ろに乗っていたのが火憐だったとは私も気が付かなかったよ」
「まぁ、見違えるからな私服だと」
そう僕が答えると少し恥ずかしそうにした火憐。
「で、月火は?」
「私は……何となくお兄ちゃんと火憐ちゃん二人だと心配で―――ほら、前の件とか。気になって帰ったらこの惨状だったの」
確かに、そんな事もありました。
「あっそ。でも戻ってきてくれて兄としての威厳は保たれたよ」
「お兄ちゃん、最初から威厳なんて無いよ?」
酷い、酷いよ月火ちゃん。
火憐と僕が過ちを犯しかけた事は二人して認めた。
未遂であり、何もなかった事を強調し。
73 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:33:26.21 ID:MqTegvQo [24/31]
で、その後の戦場ヶ原の尋問。
「ふーん、阿良々木君は妹さんに本気だったの?下衆を通り越して鬼畜ね」
「いや、別に本気と言う訳では。何というか、雰囲気に流されて」
「あっそ。ところで妹さん、あなたはお兄様とどうなりたかった訳?」
「え、その……」
戦場ヶ原に詰問され、火憐は泣きだしそうだった。
「戦場ヶ原、悪いのは僕なんだ。だから火憐を責めないでやって欲しい」
「あら?別に責めてはいないわ。ただ、本気だったか、遊びだったか聞きたかっただけよ」
「ほんの出来心だよ、それに僕達は何もしていない」
「していないじゃなくて、出来なかったの間違いでしょ?どうしてこうも童貞は嘘を並べるのかしら」
「嘘なんて……」
僕の顔をじっと睨みつつ、戦場ヶ原は話を続ける。
「あら?いつもは童貞に反応するのに、今日は……もう捨ててしまったのかしら?ドブの中にでも」
ドブって・・・・・・
「あ、いや、まぁ妹達も居るし」
「まぁ、いいわ。その辺はじっくりと後で聞かせて貰うわ。中学生って色んな事に興味を持つ年頃だし、妹さんは遊びだったのよね?そうよね?」
肯定を要求する戦場ヶ原の質問に、火憐は小さく頷いた。
うん、それでいい。
「で、阿良々木君。今日の事はこれでお仕舞い。あとは……」
「別に話す事なんて何も無いよ」
「そう。では、今日はこの辺でお暇するわ。神原、帰るわよ」
「はい」
戦場ヶ原と神原が徐に立ち上がる。
74 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:37:48.58 ID:MqTegvQo [25/31]
「あ、あのな」
僕は部屋から出ようとした戦場ヶ原を引きとめた。
「何?この期に及んで最後の言い訳?」
「いや、大事な話だ」
「何?」
「僕は……もう……」
意を決し、僕は何があったかを話そうと思った。
が……
「阿良々木君、言わなくても分かってる。貴方が辛い時って顔に書いてあるから直ぐに分かるの。だって、マジックの太字で書いてあるから」
「え?」
一瞬、鏡を探す僕。
「だから、あなたさえ良ければ―――いつでも帰ってきていいのよ。それと体育倉庫の件、怒ってないからね」
知っていた。
戦場ヶ原は全部知っていた。
「戦場ヶ原!」
「ねぇ阿良々木君、私も悔しいのだけれども、だからと言ってこの件で羽川さんを責めるべきかしら?そのウサギ並みの脳で考えても一目瞭然よね?」
「ど、どこまで知っているんだ?」
「全部。で、私に何ができるかしら?」
「出来ればそっとしていて欲しい」
「まぁ、この期に及んでまだ『欲しい』だなんて、なんて欲深い男なの!」
「じゃあ、なんて言えばいいんだよ!」
突然、言葉尻だけを取り豹変する戦場ヶ原には未だに慣れない僕。
75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:40:16.98 ID:MqTegvQo [26/31]
「そうね、―――
『今回の件は事故です。それも物損事故です。人身事故では無いので、示談で済ませます。
誰も怪我しなくて良かったです。どれもこれも戦場ヶ原さんのお陰です』
―――ぐらい言えないかしら?』
僕は素直に復唱した。
そんな僕を見て、火憐と月火がドン引きだった。
そりゃ、自分の兄貴が言葉で責められている訳で、それも激しく厳しく。
「ファイ―――妹さん達、ここからは大人の話をするから部屋から出て貰える?」
火憐と月火は「はい」と答えた後、素早く部屋から出て行ってしまった。
僕には「サーイエッサー」と言った様に見えたが?
「あと神原、あなたも」
「はい」
「その前に。阿良々木君の話だと、二人は付き合う付き合わない等と云う話をしていた訳?」
「あのそれは……」返事に困る神原。
「まぁ今回のお手柄と相殺したところで、私が完全放棄宣言していない所有物に手を出そうとした事は重大な過失よ」
「ご、ご、ごめんなさい」
「ちなみに神原も遊び?それとも本気?」
「あの、その、軽い冗談でした!」
神原は腰を90度に曲げ、戦場ヶ原に頭を下げた。
76 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:42:13.13 ID:MqTegvQo [27/31]
「そう、なら仕方が無いわ。私、浮気には寛大なのよ。だから、阿良々木君が浮気したぐらいじゃ怒らないわ。ただ、本気だとね、分かるでしょ?」
「はい」と神原は小さく返事をした。
「阿良々木君を本気にさせたり、本気で取りにかかる相手は容赦しない。でも遊んでくれる相手には寛容なのよ、分かるでしょ?」
「はい、以後気をつけます」
「神原は物分かりが良くて助かるわ。これからも遊んであげてね。じゃ、出て行ってくれるかしら?」
「はい」
神原も退出し、部屋には僕と戦場ヶ原だけとなった。
「さてと……」
戦場ヶ原は僕が寝ているベッドに腰掛け、小さく頷く。
一体、何が始まるんだ!
77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:46:01.15 ID:MqTegvQo [28/31]
「阿良々木君」
「ひゃ、ひゃい!」
恐ろしさの余り、声が裏返ってしまった。
「本当に今回は御苦労さまでした。あれが怪異であったとしても私に言わないとした阿良々木君の男気に惚れなおしたわ」
「え?」
「惚れなおしたの」
「は、はい」
「はいじゃないでしょ?どうするの?戻ってくる?いいえ、戻ってきてくれる?」
デレた。戦場ヶ原がデレた。
初めてじゃないけど。
「でも本当にいいのか?僕は羽川と―――」
言い訳をする僕の唇を戦場ヶ原の唇が封印する。
「言ったでしょ、物損事故なの。壊れたのは彼女の膜だけ。他は何も壊れていないの。私達の関係も、兄妹の関係も、交友関係も」
「ありがとう」
僕は久しぶりに泣いてしまった。
泣きながら戦場ヶ原を抱きしめた。
抱きしめた戦場ヶ原も泣いていた。
「でも残念だわ」
「何が?」
「童貞って言って虐められないし」
「それか!」
「どうせ、私の事を処女だ処女だと馬鹿にするんでしょ?」
「しねぇよ!」
「そう。よかったわ。私は、変態鬼畜兄様って人前でも罵るわよ?」
「!!!」
78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 08:53:55.12 ID:MqTegvQo [29/31]
今回のオチ
戦場ヶ原は校門前で登校して来た僕に気付き、膝カックンを入れようと背後に立ったら、メールが見えたらしい。
で、僕が走って行ったのを追いかけ、締め忘れたドアの隙間から全部見てしまった
だから全部知ってた訳。
その場で攻撃に移る事も出来たのだが、猫の姿を見て流石に怯んだとか何とか。
僕から事情を聞いた戦場ヶ原は怪異はどうしようもないにしても、その原因の羽川のストレスを解放する為に、戦場ヶ原は羽川に対し、戦略的宣言?なるものをした。
「羽川さんも阿良々木君を彼氏扱いしてもいいのよ?好きなんでしょ阿良々木君の事。
本当は譲っても良いんだけど、そうすると今度は私にストレスが溜まりそうなので、シェアしましょう。
話相手でも夜伽相手でも好きにしていいわ。
将来は、一夫多妻でもいいのよ?
だから、本気で私に挑みなさいよ」
戦場ヶ原に突拍子もない事を言われ、苦笑する羽川。
「なんだ、ばれてたのね。でも、私はそこまで野暮じゃないし、何となく、体の中が幸福感で満たされているから大丈夫。色々気を使わせてごめんね」
と、羽川は笑いながら一蹴した。
こうして、女の水面下?での戦いは終了し、平穏な日々が戻った。
以後、僕はブラック羽川を見る事は無くなった。
妹との関係も概ね良好、ただ僕と火憐が二人っきりで居る事は禁止されてしまった。
なので、休日は月火が一緒に遊びに連れ出している。
全て、元のまま。
ほんの物損事故程度だった……
1年後、僕達は各々の進路に進んだ。
宣言通り、羽川は進学せず―――シングルマザーになっていた!
「猫の嘘つきー!」
おわり
81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:59:58.53 ID:MqTegvQo [30/31]
ここまで読んでいただき、有難うございました。
色々誤字脱字もあると思いますが、何卒平にお願いいたします。
AA板で化AAみて、C78で販売されていた「ホムンクルス・化猫騙」というを同人誌を読んで、書きなぐってしまいました。
今は反省しています。
また何か書く事があれば宜しくお願いいたします。
あと、基本的に全部書いてから投下というスタンス(途中で投下しながら書きなおしはあります)なので、先読校正してくれる読み手さんも大募集中です!
何か物足りない短編になりましたが、今回はこの辺で。
何か面白そうな組み合わせとかシチュがあれば教えてください。
書いてみたいと思います。
ではでは。
hanetsuba
ごめんなさい、八九寺さんは出て来ません。
では始めます。
プロローグ
土曜日朝、目覚めると何やら騒がしかった。
ベッドから抜け出し、階段を下りる。
「おはよう」
「あ、兄ちゃん良いところに来た!」
火憐が僕に話しかける。
「ん?どうしたんだ、朝っぱらから」
「聞いてよ、月火ちゃん今日デートなんだって!」
捲し立てる様に話す火憐。
「いいじゃないか」
「よくないよ!今日は私と映画に行くって言ってたのに!」
「あー、ダブルブッキングか」
「火憐ちゃんごめん、本当に蝋燭沢くんと先に約束してたんだよ」
「そんなの信じらーれーなーいー」
「とりあえず落ちつこうぜ、二人とも」
「この状況が落ちついていられる訳ないじゃん!」
火憐の怒りは収まらない。
2 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/09/03(金) 19:22:21.50 ID:ZrJVikAo
一方、月火ちゃんは
「もう行かないと約束の時間に遅れちゃう」
と、時計を見ながらソワソワしている。
「駄目、今日は私と映画でしょ!」
「なら、お前も彼氏と映画に行けばいいじゃないか」
この時、僕は自分の犯した罪に気付かなかった。
僕の言葉を聞いた火憐が、真っ赤な顔で突進し胴に頭突きを入れる。
「ぐはぁ!」
某フラグメーカーの気分が少し分かった気がする。
「兄ちゃんの馬鹿!」
火憐はそう吐き捨てると、階段を猛ダッシュで上がって行った。
どうせなら「ごるぁ!」言って欲しかったなど、この状況では言えない。
それよりも、僕は何か間違った事を言ったのか?
「どうしたんだ火憐ちゃんは?」
玄関に向かう月火に聞く。
「あのね、お兄ちゃん。火憐ちゃん、彼氏と別れたんだ」
「え?マジで?」
今年一番のビックリニュースだった。
蟹とか猿とか蛇とか猫より。
それぐらい、妹達のニュースには疎かったので……
3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:25:29.15 ID:ZrJVikAo
「うん……だから今日、私が―――」
「ああ、言わなくていい。とりあえず遅れると彼氏に悪いから早く行きなさい」
「あ、うん。火憐ちゃんの事お願いね。あと、母さん達今日遅くなるって」
「ああ、分かった」
「いってきまーす」
月火は元気いっぱいに表へ飛び出した。
直ぐに、車の急ブレーキ音と鈍い音がした。
月火?まさか、車に轢かれる様なドジはしないだろう。
万が一怪我したとしても直ぐに治っちまうから心配は要らない。
「さてと、お姫様のご機嫌でもとりますか」
僕は階段を上がり、妹達の部屋の前に立つ。
ドアをノックしようとしたら、中から声がした。
「いません」
おいおい、まだノックもしてないぞ。
「火憐ちゃん、入るよ」
「居ないって言ってるでしょ!」
「同じ家に住んでいるのに、居るとか居ないとかの問題じゃないだろ」
「じゃあ、入ってこないで」
「ごめん、もう入った」
「フンッ!」と不貞腐れる火憐。
「月火ちゃんに聞いたんだけど……」
「何さ、何を聞いたのよ?」
怒りはそうそう簡単に収まりそうにないと直感した。
4 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:26:58.59 ID:ZrJVikAo
とりあえず何か餌で釣ってみるか。
「あのさ、火憐ちゃん。なんなら僕と一緒に映画でも―――」
「見たくない」
「何か洋服でも買いに行かないか?」
「兄ちゃんの小遣いで買える服に興味なんて無い」
うわー、何このマジ怒りモード、いつもなら
「アレがみたい!」とか「新しいジャージが欲しいんだ」とか言うのに。
埒があかねぇ、こうなったら奥の手だ。
「単刀直入に聞くけど、彼氏と何故別れたんだ?」
我ながら凄い奥の手だと思う。
ジャブやフックが当らない相手に必殺パンチを見舞う、それも大振りで。
「理由なんて覚えてない!」
しかしながら、火憐にはその大振りパンチがヒットする。
「そんな事無いだろ、自分の事じゃないか?」
「思いだしたくない!」
「何か酷い事でもされたのか?彼氏に」
「酷い事したのは兄ちゃんじゃないか!」
「え?」
全く身に覚えが無い。
「兄ちゃんのせいで……」
「僕のせいで?」
5 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:28:34.19 ID:ZrJVikAo
「そうだよ。兄ちゃんが私のファーストキス奪ったから……」
たしかに、そんな事もあった。
火憐が囲い火蜂にやられた時の事だ。
「ああ、あれはおまじない。熱が下がっただろ?風邪は誰かに移すと治るって―――」
「別にそんな事を言ってるじゃないの!」
「じゃあ、なんだよ?言ってみろよ」
「あ、あの……」
急に火憐がモジモジと恥ずかしそうにする。
「あのさ、えっと……この間、彼氏にキスされそうになって―――」
「ほうほう、最近の中学生は進んでるな!」
「でも、急に気持ち悪くなって、突き放しちゃった」
「え?」
「なんか、目瞑って顔近づけられて、鼻息が聞こえたら……気持ち悪くて」
「で、突き飛ばしたと」
相手の男子、瑞鳥君は怪我しなかっただろうか?
「うん……」
「そっか。それで―――」
「『僕の事嫌いなの?』とかナヨい事言うから、別れた」
そこには、僕以上に単細胞な人間がいた。
「まぁ、気持ちは分かるけどさ」
「兄ちゃんが悪いんだよ!あんなカッコいいキスするから……するから」
「僕のせいかよ!そこで!」
「そうだよ!兄ちゃんがあんなカッコいいキスするから他の男となんて出来なくなったんだよ!」
「そうなんだ!!」
6 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:29:54.33 ID:ZrJVikAo
ここは男として喜ぶべきか?
まぁ、普通に考えれば―――
妹にキスし、トラウマを植え付け、恋をぶち壊した『変態鬼畜兄貴』と言う事で、悲しむべき状況だ。(変態は不要か?)
「『そうなんだ!!』じゃないよ!お陰で、休みの日も一人ぼっちじゃん!月火ちゃんも私が別れた途端に彼氏とばっか遊んでさ!」
「まぁまぁ落ちつけよ」
「この状況で落ち着いていられないよ!」
「ほら、考えてみろよ。いや、逆に考えるんだ。新しい恋のチャンスだろ?」
「はぁ?」
「女の数だけ男が居るんだぜ?もっと良い人が見つかるよ」
「あーなんか悔しい、その言い方。兄妹で彼氏彼女が居ないの私だけだし」
言うべきかどうか、一瞬悩んだが、これは言っておくべきである。
「あー、まぁ別に報告する程の事でも無かったんだけど―――僕も彼女と別れた」
「は?はい?ええー!マジ?」
「あ、うん」
「何?なんで?振られたのか?」
「いや、こっちから振った」
「おう兄ちゃん!」
「なんだよ」
「兄ちゃん、馬鹿だろ!」
「は?」
妹に馬鹿扱いされた!
8 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:32:42.15 ID:ZrJVikAo
「なんであんな美人振るんだよ!」
「えっと……キスする時の鼻息が荒くてキモかった」
「はぁ?兄ちゃん馬鹿?たったそれだけの理由?」
「おい、お前と同じ理由で何故僕は馬鹿と言われるんだ!」
「それネタだよね?」
「ああ、ネタだ。スマン」
「ていうか、どこまでネタ?」
「鼻息のところ」
「それ以外はマジなの?」
「ああ、マジだ。本気で」
「うそー!信じられない。次に兄ちゃんがあんな美人と付き合うチャンスが来る確率は、砂漠で落としたダイヤを探し当てるぐらいだろ?」
「そこまで無理難題じゃねーよ!現に今、付き合って欲しいという美人な女子が何人かいる」
「はいはい、妄想はそこまでで結構ですからぁ!」
「いや、これもマジなんだって」
「ホントかよ、兄ちゃん」
「ああ。自分でも疑うぐらいに」
「で、本命は居るの?」
「いや、居ない」
「なんで?」
「いや……まぁ、今ここで言うのは止めておく」
「ケチ」
この理由だけは言えない。
本当の理由は人様に言える事ではない。
9 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:35:55.52 ID:ZrJVikAo
「で、話は戻るけど本当は、なんで別れたの?」
「無表情で可愛くなかったから」
「な?なんと?」
「無表情で可愛くなかったから」
「大事な事なので2回言ったのか?兄ちゃんよ」
「お前が聞き返したんだろ!」
「無表情は分かるけど、可愛くないって……」
「人間ってのは、顔以外でも可愛さが決まるんだよ!」
「で、別れる時はなんて言ったんだよ?」
「別れよう」
「彼女、それで納得した?理由とか聞かなかった?」
「私の事嫌いになったの?ってナヨい事いうから、肯定した」
「兄ちゃんは私か!」
「まぁ、本当の理由は……」
「なんだよ教えろよ兄ちゃん」
「させてくれないし」
「……鬼畜」
「これって普通の理由だろ?」
「変態!スケベ!エロ爺!外道!鬼畜!馬鹿!」
なんか酷い言われようだ。
「まぁ、戦場ヶ原には戦場ヶ原の理由があるのは理解してたんだ。でも、僕も健康な男子だし……」
僕は本当の事が言えず、嘘八百でその場を取り繕った。
「けっ、何が健康な男子だ。男子なんて、みんなエロエロでやる事しか頭にないじゃん」
「そ、そんな事は無いぞ!女子にだってそんな奴はいるぞ」
「いるかぁ!居たら連れてきなよ!私が説教してやるよ」
10 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:37:41.01 ID:ZrJVikAo
「神原」
「え?今なんと?」
「神原駿河」
「マジ?」
火憐は結構この名前に弱い。というか憧れなのだ。前に逢わせた時は、緊張して酷い状態だったしな。
「ああ、本当だ。戦場ヶ原と別れたと聞いた途端、『戦場ヶ原先輩に殺されてもいい、私と付き合ってくれないか?そして今すぐ子作りしよう』と言われた」
「兄ちゃん、なんでそんな作り話するんだよ」
「作ってないって!話も子供も!おまけに勿論断った!」
僕は必死に釈明する。
「くー!マジかよ。よりによって神原先輩に言い寄られるなんて!おまけにそれを断るとか!何か腹立ってきた」
「まぁ、そう怒るな」
「他は誰が居るんだよ」
火憐の頭から湯気が立っているのは気のせいだろうか?
11 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:40:02.93 ID:ZrJVikAo
「羽川」
「ええー!」
「羽川にも告白された」
「嘘つけ!いくら兄ちゃんでもこれ以上私を愚弄したら―――」
この期に及んで嘘など吐く気はないが、やはり火憐はどれも信用できない名前らしい。
「羽川の場合は―――告白と言っても結構遠回しだった」
「どう遠回しか、全部説明しろ、詳細に!」
別れたあと、直ぐに羽川に言われたのが次の様な話。
『戦場ヶ原さん、落ち込んでたわよ。いいの?私は、これはこれで良かったと思うんだけどね。
阿良々木君の為には、この別れは間違ってないと思うの。
戦場ヶ原さんと阿良々木君だと、阿良々木君が委縮して阿良々木君の良いところを引き出せないじゃない。
そうね、阿良々木君の良さを引き出せる相手と言えば……
例えばメガネっ子で巨乳で面倒見のいい優しい子かな?
そんな子を探すと良い事あるかもね』
「って延々と一人演説を聞かされた」
「まんま自分を売り込んでる!」
「だろ?お前もそう思うだろ?ちょっと羽川って―――変ってしまったんだよな」
「で、兄ちゃんなんて言ったんだよ」
「あーちょっと待ってて、喉が渇いた。ジュース入れてくる」
僕は少し冷静さを取り戻す為に、話の腰を折る。
そして、キッチンでオレンジジュースを2杯入れ、戻った。
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:43:19.73 ID:ZrJVikAo
「ほら、飲めよ。お前の分も入れてきた」
「ありがと、兄ちゃん。で、なんて言ったんだ?」
「僕の好みは、細身ですらっとした、少しピーキーな女子が好きだ!と」
「言ったのか」
「言った、言い切った」
「それは宣戦布告だと思うよ、兄ちゃん」
火憐の頭の中では戦闘機がスクランブル準備しているんだろうな、きっと。
若しくは、銅鑼がジャーンジャーンか。
「それがさぁ、そうでもないんだ」
「どうなったんだよ」
『あまり細いのはどうだろうね?色々と出る所は出た方が、男性的には嬉しいんじゃないのかな?
年齢的なものはどうしようもないにしても、性格的特徴は頑張ったら調整出来ちゃうからね。
ピーキーってツンって事でしょ?その後のデレを期待しているのかな?
でも、一番大切なのは、どれだけ愛されているかって事だと思うよ?
それに、爛れた関係は良くないけど、お互いを欲する気持ちは大事にしないとね。
万が一、阿良々木君が彼氏だったら……受け入れちゃうかも知れないわ、私』
「と、追加演説で切り返された」
「うわー、アピール大盛りじゃん」
「でもまぁ、羽川の場合『付き合って』とか言わなかったから放置。保留じゃないぞ」
「やっぱ兄ちゃん鬼畜だな」
「なんでだよ?羽川の場合、僕にも断る理由があってだな……」
「他に誰か居るの?」
(きいちゃぁいねえ!!)
「あー、まぁ居るんだけど、それは僕の勘違いかも知れない」
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:45:22.59 ID:ZrJVikAo
「誰だよ?」
一瞬、躊躇したが僕はその名前を告げた。
「千石。千石撫子」
「月火ちゃんの友達の?」
「ああ。なんか知らないけど手紙とか良く貰う。というか戦場ヶ原と付き合っている時に家に誘われたりしたけどな」
「マジで!?」
「うん。でも、何の関係も持ってないぞ」
「当たり前じゃん!」
「でもなんて言うのかな、その接近の仕方が怖くてさ。ストーキングの一歩手前みたいな」
「あの子、ちょっと暗いもんな」
「まぁ最近は髪型も変えたりして、イメチェンしてたぜ」
「ふーん」
少し疑うかのように火憐は答えた。
「というか、撫子ちゃんの事は兄ちゃんの勘違いだよ、きっと」
「そうだな」
「しかし、神原さんにせよ、羽川さんにせよ、兄ちゃんには勿体ないだろ?」
「そうか?そうでもないだろ」
「どんだけ自分に自信があんだよ!」
「ぐはっ!」
火憐は僕に裏拳を入れた。
そういうのは、開いた手の甲で軽く「なんでやねん!」と言いながら入れるべきだろ!
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:46:38.66 ID:ZrJVikAo
「まぁ、最近まで気が付かなかったけど、僕には人とは違う『魅了する力』があるようだ。全然知らない下級生からも手紙もらったりさ」
「あっそ……熱ないか?」
「ねえよ!」
「兄ちゃんが死んでる!」
「そんなベタな冗談はよせ」
「と言う事は、鬼畜兄ちゃんは言い寄られては断り、蹴り落として楽しんでるんだ?」
「そんな酷い事はしてない!」
「じゃあなんだよ、ハッキリ言えよ兄ちゃん」
「今は一人がいい」
「何それ?」
「色々と恋愛事は疲れるんだよ」
「つい最近まで、女子からハブられる様な人間がよく言うよ」
「ハブられてなんていないから!というか、女子とかもう沢山だし」
「ふーん、兄ちゃんも取り敢えずは苦労してるんだな」
苦労と言うか、苦悩なんだけど……
「だからさ、火憐ちゃん。彼氏彼女が居ない者同士、今日は僕と遊びに行こう」
「は?なんでそうなるんだよ?」
「でも暇だろ?僕も暇なんだよ」と涙目で訴えてみる。
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:49:19.45 ID:ZrJVikAo
「分かったよ。とりあえず準備するから下で待ってて」
「分かった。あと、ハンカチ忘れるなよ」
リビングで待っていると、火憐が降りてきた。いつものジャージ、ライン入りのジャージ姿で。
「なぁ、たまにはおしゃれしろよ」
「え?ご飯や買い物ならこれで充分だろ?」
「じゃ、兄として命令する。月火の服でもいいから、着替えてこい」
「なんでだよ!」
「さっきも言っただろ?チャンスだって。どこかに良い男がいるかも知れないぞ」
「そうか!分かった、着替えてくる」
そういって、火憐はまた階段をドタドタと上がって行った。
あまりにも簡単に人の話に乗り過ぎだ、そんな事だから蜂に刺されるんだよ。
良く言えば素直なんだけどな。
待つ事20分、降りてきた火憐を見て、久々に度肝を抜かれた。
「うわ!」
心臓が飛び出し、床を這いまわる。
「どう兄ちゃん?似あってるか?」
「お前の……久しぶりにそんな格好を見たぞ」
「可愛い?」
「ああ。すげー可愛い」
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:51:06.68 ID:ZrJVikAo
いつかの日の事を思い出す。
月火の服を勝手に着た火憐を。
今日の服装は……前にも増して可愛い。
淡い水色のワンピースが良く似あっている。
おまけに少し化粧を施している。
「じゃ、兄ちゃん行こうぜ!」
が、中身は変わらない。話し方もいつもと同じだった。
「どこに行きたい?」
「んー、兄ちゃんの行きたい所でいいや」
「了解。あと出掛けるのに高い靴は無し。一緒に歩くと僕が―――」
「兄ちゃん、今度の誕生日にはシークレットシューズ買ってやろうか?」
「イラねぇよ!」
「ところで兄ちゃん。私がこれだけ頑張ってるのに、兄ちゃんはパジャマで出掛けるのか?」
あ……うっかりしてた!
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 19:54:53.95 ID:ZrJVikAo
黒
駒
作者・飯らしい
22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:16:52.28 ID:ZrJVikAo
お出かけ
僕は直ぐに着替え、財布と携帯を確認し、玄関へ向かう。
「なんだ、またそんな格好?」
「僕の正装はパーカーなんだよ!」
「とりあえず、兄ちゃんの服買ってやるよ」
「気前がいいな」
「馬鹿、兄ちゃんの金で買うに決まってるじゃん」
「そういうのは、選んでやるっていうんだ」
朝からドタバタはあったものの、火憐の機嫌は多少良くなった。
僕は火憐を自転車の後ろに『座らせ』、街へ繰り出した。
いつもは立ち乗りをしたがるが、今日は僕が無理やり座らせた。
この格好で後ろに立たれると目立ち過ぎる。
それでなくとも、結構人目を集めるんだよ、うちの火憐は。
街についたら、まずはファーストフードで朝飯を摂る。
僕には朝飯だが、火憐には早い昼飯となる。
「なぁ兄ちゃん。またさっきの話なんだけどさ。本当のところ、兄ちゃん的にはどんな彼女が欲しいんだ?」
「ん?ああ、そうだなぁ―――あれ?どんなのかと聞かれたら良く分かんないや」
「なんだよ、それ」
「イメージというか、ドンピシャこの人ってのなら居るね」
23 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:19:56.04 ID:ZrJVikAo
「誰だよ」
「言わない」
「だから言えってば!」
「言わなきゃならない?」
「言わないと、ゲーセンのパンチングマシン代わりにして、蹴る」
「おい!あのゲームはパンチ用だ!まさか……」
「うん、しょっちゅう蹴ってる。凄いスコアが出るんだ」
「店員に怒られるぞ!」
「ほら、制服で蹴るとパンツがちらっと見えるじゃん。それ見たら店員も文句いわないよ」
「その店員を先に的にしろ!」
「で、そろそろ教えてくれよ、兄ちゃん」
「まぁ、可愛い服が似合う背の高い女の子だな」
「だから誰なんだよ!」
「火憐ちゃん」
「は?」
「火憐ちゃん。阿良々木火憐ちゃんが兄ちゃんの好みだ」
「……本格的に壊れてるね、兄ちゃん」
「何が?」
「どこの世界に自分の妹をタイプだなんて言う奴がいるんだよ!」
「ここに」
24 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:22:51.67 ID:ZrJVikAo
「約一名か?」
「なんで約なんだよ」
「もう人扱いしてあげない」
「うっ……何か知ってる?」
「何を?」
「いや、気にしないでくれ。というか、今のは冗談。好きになったら好みだろ。今、好きな子なんて居ないさ」
「ふーん。贅沢な悩みだな」
「とりあえず、この話はもうやめ!朝からこればっかでループしてるじゃん」
話の腰を折り、僕はテレビの話を火憐に振る。
サクッと食らいつく。
本当に簡単な妹で良かった。いや、素直で。
食事の後、買い物をし火憐に服を選んで貰った。
映画鑑賞は火憐のお勧めの映画。
B級ホラーだったが、正直自分の日常の方が怖い様な気がして・・・・・・途中で寝てしまった。
締めはゲーセンで火憐のハイキックを見せて貰った。
その破壊力は半端無い。
ちなみに、今回は誰にも下着を見られない様に僕がタイミングを教えた。
そろそろ帰ろうか?なんてゲーセンを出たあたりで話していたら、急に火憐が立ち止まったまま動かない。
25 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:24:44.05 ID:ZrJVikAo
「どうした?足でも痛いのか?」
「瑞鳥君」
「え?」
「あそこに瑞鳥くんがいるんだけどぉ」
「どの子?」
「あの青いシャツ」
駅前の噴水前にその男の子は座っていた。
「へー、仲直りして来たら?」
「あの状態のところに私に行けと?流石は鬼畜兄ちゃん」
良く見れば、女の子と話をしている。
「あれ、同じ学年の子だよ」
「そっか……」
「別れたのが十日前だよ?で、もう他の女とデートとか信じられない!二股かけてたんじゃないの!」
その件について、僕は何も言えない。
「男なんて、やれれば誰でもいいんだろ?」
火憐の言葉が僕の胸に突き刺さる。
「ま、そういう男なんだよ。振って良かったじゃないか。火憐ちゃんは見る目があったという事さ」
僕は都合のいい解釈をつらつらと並べ、火憐を落ちつかせる。
26 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:26:31.70 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、手つなごうぜ」
「え?ああ、いいけど」
火憐は僕の手を掴み、半ば強引に腕を組む。
「手を繋ぐんじゃ?」
「いや、こっちの方がいい」
組んだかと思うと、歩き始める。
進行方向は―――さっきから目を離していない彼らの方向へ。
距離にして50mもない。
数十秒でその場に到達する。
「瑞鳥君、結構イケメンじゃないか」
火憐は何も言わない。
「火憐の好みはああいうのか?」
またシカトを食らう。
彼らの前を通り過ぎる手前、火憐が瑞鳥君の方をチラッと見る。
そんな火憐に気付いたか、瑞鳥君が驚く。
突然、別れた彼女が違う男と腕を組んで目の前に現れたからか?それとも私服の火憐を初めて見たのだろうか?
目線の動きからして、多分後者。
「挨拶しなくていいのか?」
僕は小声で話しかけた。
27 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:30:44.46 ID:ZrJVikAo
すると火憐は
「ねぇ、今日はこのまま家に遊びにいっていい?」
と、とち狂った事を言いだした。
相手が僕の事を兄だと知っていたら、その見栄張りはとても恥ずかしいぞ。
が、瑞鳥君は何かショックを受けたかのように放心状態に。
段々と僕の視界から消えてゆく。
「お前、なんて事いうの!」
「いいじゃん、お返し」
「なんの?」
「目には目、歯には歯っていうでしょ。見せつけられたから見せ返しただけ」
「お前、以前は『目には鉄拳、歯にも鉄拳』とか言ってなかったか?」
通り過ぎた後、角を曲がっても火憐は僕の腕から離れようとしない。
「兄ちゃん……」
「なんだ?」
「なんか悔しい」
火憐は目を真っ赤にし、口元を硬く結んでいた。
「そっか。でも泣くな。泣くのは帰ってからにしろ。これも兄としての命令な」
僕は自転車の後ろに火憐を乗せ、帰り道を急いだ。
自転車の荷台に横座りし、僕の腰のあたりに手を廻した火憐が呟く。
「なぁ兄ちゃん」
「なんだ?」
「兄ちゃんみたいな男は、この世に何人いるんだ?」
「ん?さぁどうだろ?星の数ほどいるんじゃないか?」
「星の数ほどいるのに、なんで私の前にそういう男が現れないんだ?」
「時期の問題だろ?というか、僕みたいな男は大した事無いぞ、鬼畜だし」
29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:34:16.32 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、鬼畜って認めたな。それより時期って?」
僕は星座の話を織り交ぜながら火憐に話をする。
「オリオン座が見たいと思っても、今の季節じゃ見えないんだよ」
「なんで?」
「冬の星座だからさ。昼間に星は見えないだろ?」
「うん。で?」
「それと同じで、今の火憐には見えないんだよ」
「いつになったら見えるんだ?」
「それは、火憐が一定の時間を有意義に過ごしたらな」
「どういう意味だよ」
「ただ闇雲に時間を過ごすんじゃなく、色々経験するって事さ」
「経験なのか?兄ちゃん」
「そう、経験。経験を積みながら時を重ねれば、季節も変って見る目も養われる。オリオン座がどれか分からないうちは見てもただの星さ」
「ふーん、だから今は見えないんだ」
「そう言う事、居るんだろうけどさ」
「なんか兄ちゃん、知らない間に大人っぽくなったな」
「そ、そうか?」
「たった一回彼女が出来ただけで、そうも変るなんて凄いよ」
「あはは、別に色恋だけがあった訳じゃない」
「ふーん、色々あったんだ?」
「まぁ、それなりに」
「それなりか。じゃ、私もそれなりにしておくよ」
「そうだな、それがいい」
火憐がとても素直で僕はちょっと安心した。
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:37:31.38 ID:ZrJVikAo
「とりあえず、兄ちゃんみたいな彼氏が見つかるまで、兄ちゃんで我慢するよ」
前言撤回。なんか凄く心配になった。
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな」
「遊びに行くぐらい、いつでも付き合ってやるよ」
「遊びだけ?」
「寝る前に話でもするか?」
「話だけ?」
「それ以上何が事がある?」
「おやすみのキスは?」
「そんなもんねぇよ!」
「なんでだよ!」
「兄妹だから」
「アメリカじゃ親子でするのに」
「日本にそういう習慣は無い」
「じゃ、今日から阿良々木家の習慣にしよう!」
「誰もしてくれないぞ?」
「じゃあ、兄ちゃんがしてくれよ」
「あ?ああ、考えとく。というか考えても駄目だろ。それよりもいい人見つかると良いな」
馬鹿な会話が終わり、二人の間に沈黙が漂う。
それっきり無言になった火憐が僕のパーカーの裾をギュっと強く掴む。
僕は何も言えず、ただ黙々と自転車を走らせた。
夕暮れの中、自転車を漕ぎ家路を急ぐ。
ペダルを踏む音と、火憐のすすり泣く声がシンクロしていた。
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 20:44:15.37 ID:ZrJVikAo
豫 告
全クケシカラン兄貴ダ
\
_ .. -──- .._ ) 〉
「」'´ `ヽノ / _ .. -──- .. _
r‐(())/ `'´ | `ヽ. \ 〈 ( .ィ´ `ヽ.
/:_::ノ ./ i. | 、 丶 :.、__, ヽ'´ / `ヽ::. .ハ_
. / ::ヽ._ノ .:/ 、/| il: |\,. i 、:.__ノ .′/ ,' :|i |i ハ::( ())
/ <._,ノj/\|ノ|: |/_ヽト、._..> i :l |i :|i || |l i ::l:: |_」l
l /:.:/ { ハ| ━┳ ゛jノjノ'┳━ |r}′ | :|_」|_,ハ_,ハ__|l__l|_:|:: |
| i: ::| ヽ_l xxx , xxx jノ | :::ハ ━┳` ´┳━ l::. |
。 | 、|: ::| ノ,)_r_-─‐-_、_(.〈_ 。 | i: ::l_xxx , xxx. l_::: |
. | ヽ:.:l /´ r─'-─‐‐-`ーr `ヽ.o 。 | | ::ノ,)_r_-─.-_、_(.〈::::.. |
O |ノ :::::ノ .__ノ-‐'>r--r<ー-ゝ._ .ハ_ o| :/´ r─'-─‐‐-`ーr `ヽ:: |O
. 〈 /´二イ ヽ`ヽ \_/ / / }二二{、゜ |ノ __ノ::::_,>r--r<´_ゝ._ \ o
. ノ .// / ,.イ: \ l<::ィ:i::>l / ,〈 〉:〉 / / |::::l'´\\ // |::::|. \ \
/.:::〈〈 " /|::|:. `|、ニハニ,|' |::l}. "l::l / /- l::::|′ \// |::::|:.. 丶.._)
. 〈::〈 ̄ \__,ノ |::|" ノ:::... i...::| ゛|::|| |::| 〈_.ノ::::/|:::::>. // <:::::> |:::::||
ヽ:\ 〉} 〈:::: | :l ,/:/ヽ.__,ソ ||:::: :/ .∨l:..// j∨ |:::'/
.  ̄ 〈〈 ヽ:. | ノ 〈::{ |ヽ:/ ..:::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |:.. |::/
DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だよ!月火だよ!
作者が今から飲みに行くらしいので、今日はここまでらしいよ!
というか火憐ちゃん、兄萌えなの?
今度、私の彼氏の友達紹介してあげようか?
お兄ちゃんよりカッコいいんだよ!
え?実の兄だから萌える?
妹萌えより酷いね
ではまたー!
40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:46:42.02 ID:ZrJVikAo
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西尾維新・アニプレックス・シャフト
*この物語はフィクション(SS)であり、実在する書籍と設定や性格が多少異なる事があります
*作者には校正してくれる編集さんがいませんので、たまに敬が抜けたり等の誤植がありますが、お許しください
*スレタイは殆ど関係ないと言うか、一番最後です
OP終わり
何故飛ばしたし!
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:49:34.29 ID:ZrJVikAo
暦x火憐
家に戻り、いつもの調子に戻った火憐に急かされ着替える。
「ほら、すげー似あってる」
「そうか?」
「私の見立ては間違いないな」
初めてハイネックのセーターを買った。
「この冬はそのカッコ良さで彼女GETだな」
「格好に惑わされる女に興味はねぇよ」
「かっけー!兄ちゃんすげーかっけーよ」
「そ、そうか……」
「じゃ、私とデートな、兄ちゃん」
そのお誘いは少し嬉しかった。
そんな折、ポケットの中の携帯が鳴る。
「もしもし」
母さんだった。
今日は父さんと出掛けていたが、用事が長引き明日まで戻れないらしい。
と言う事は、今日は3人。
42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:52:35.89 ID:ZrJVikAo
「火憐ちゃん、晩ごはんの準備出来る?」
「なんで?」
「母さん達、今日帰れないらしい」
「カップ麺で良ければ作るけど?」
「それは僕でも出来る」
「なぁ兄ちゃん、こういう時の為に料理の出来る彼女を作れよ」
「彼女は家政婦じゃないんだぞ。というか、火憐ちゃんが僕の彼女だと言い張るなら火憐ちゃんが作らなきゃ」
なんて話をしていたら、話の腰を折る様に今度は火憐の携帯が鳴る。
「あ、月火ちゃんだ」
「もしもし?あ、うん、うん」
朝の喧嘩の事なんかすっかり忘れて仲良く電話で話す二人。
とりあえずこれで一件落着だな。
「あー、そうなんだ。ちょっと兄ちゃんに代わる」
「兄ちゃん、月火ちゃんが代わってくれって」
僕は火憐の携帯を受け取り、耳元に当てる。
通話口の辺りから火憐の匂いがした。
少しだけ、大きく息をした。
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:54:48.26 ID:ZrJVikAo
「もしもし」
「あ、お兄ちゃん。今ね、蝋燭沢君と遊んでるけど、このままオールしよって話しになったんだ。
いいかな?それにお母さん達帰ってこないでしょ?」
「駄目。ちゃんと家に帰って来なさい。夜遊びなんて母さんが聞いたら悲しむぞ」
「えー、けち!」
「で、どこに誰といるんだ?」
「クラスの子たちだよ。男子2人女子3人。蝋燭沢君の家。ね、いいでしょ?」
甘い声で妹に強請られると僕は少し弱気になる。
「なら、蝋燭沢君のお母さんに代わりなさい」
「じゃあ、家にかけ直すね」
少しして、蝋燭沢の母と名乗る人から電話が入った。
一応、大人の声。
多分、本物のお母さんだろう。
「ええ、こちらこそ。すみません、大勢で押し掛けているみたいで。騒いだら叱ってやってください」
電話を切った。
これで何か起きれば、両親に叱られるのは僕。
大人の責任を感じた瞬間だった。
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/03(金) 23:57:27.92 ID:ZrJVikAo
「月火ちゃん泊まり?」
「ああ、蝋燭沢君の所で遊ぶらしい」
「そっか……いいなぁ」
火憐は少し寂しそうだった。
「じゃあ、晩飯はピザでも取るか?それとも食べに出るか?もしくは二人でコンビニ弁当+カップ麺」
「ピザでいいや」
「よし。好きなモノ頼めよ。食べた後、僕とDVD鑑賞でもしよう」
「どれにしようか?いつも迷うんだよ」
「この半分づつ入ったのは?」
「何となくそういうのって邪道な感じがするじゃん。二股かけてるみたいでさ」
余程、二股疑惑が拭えないらしい。
「じゃ、一番高いのを頼め」
「おー!兄ちゃん太っ腹だな」
「いや、あとで母さんに貰うから大丈夫だ」
「なんかセコいね」
頼んだピザが届く予定は、電話をしてから40分ほどしてから。
その間に、僕は風呂の準備、朝使ったコップを洗ったりする。
「兄ちゃん、家事も出来るんだな」
「おいおい、これぐらいの事、お前も出来なきゃダメなんだぞ」
「分かってるんだけど、手伝うと何故か皿とかグラスを割ってしまうんだ」
「ちゃんと持たないからだ」
「いやちゃんと持って拭いていると、半分に割れた」
どれだけ握力あんだよ!というか、前の喧嘩の時にその強さは身をもって知ったが。
でも、拭きながら割るのは漫画の世界だぞ、火憐。
暫くしてチャイムが鳴り、ピザが届いた。
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:02:27.17 ID:MqTegvQo [2/31]
ピザ屋の配達員は無愛想だった。
あれだけ無愛想なら、戦場ヶ原でも出来るんじゃないか。
あ、戦場ヶ原とか。
何を思いだしているんだ、僕は。
別に嫌いだった訳じゃない、どちらかと言うと好きだった。
いや、本気で好きだったんだけど、耐えられなかった。
『浮気には寛容だけど、本気になったら殺すわよ』ってセリフが僕を苦しめた。
だから別れた。
僕は―――いや、この話は思いだしたくない。
やめておこう。
僕らはリビングでピザの箱を開け、晩飯にする。
テレビからは、大して面白くもない関西芸人の声がする。
「なぁ兄ちゃん」
「ん?」
「なんでピザ屋のピザはメニューと本物の差がこんなにあるんだ?」
「ああ、それは大人の事情だ」
「どんな事情だよ」
「写真だけで美味そうに見せないと売れないだろ?」
「だからって、この差は酷いだろ」
「まぁ、多少の違いは認めてやれ。ここに小さく注意書きもあるだろ?」
「あ、本当だ。書いてある」
「一応、予防線は張ってあるんだよ」
「へー、お殿の情事って凄いな」
「大人の事情だ!どこの大奥の話してんだよ!」
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:04:04.89 ID:MqTegvQo [3/31]
「しかし、大げさなのはJAROに電話だよな、兄ちゃん」
「そ、そうじゃろ」
滑った、思いっきりすべった。
話題を変えなきゃと、テレビに目をやる。
コーヒーの宣伝をしていた。
「このコーヒー、実は醤油とか塩入コーヒーなんだぜ?」
「えーマジで?」
「普通のコーヒーだと、綺麗にミルクが渦を描かないからさ。他に木工ボンドを流したり」
「へー、兄ちゃんは何でも知ってるんだな」
「何でもは知らないさ、知ってる事だけさ」
一度言ってみたかったんだ。
結構かっこいいセリフじゃないか。
羽川か……ああ、また軽く鬱になる。
「兄ちゃんどうした?気分悪いのか?」
「いや、なんでも無い」
「ふーん、ならいいけど)
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:06:19.27 ID:MqTegvQo [4/31]
「それより兄ちゃん、これ何?」
「ピザだろ?」
「じゃあ、ピザって10回言ってみて」
10回クイズか。火憐もまだまだ子供だな。
「ピザ、ピザ―――ピザ!」
さぁ、ヒジを指させ!
「では問題です。これは?」
火憐の指は僕を指していた。
「え?……えっと、ピザ?」
答えた瞬間、火憐がニヤリと笑う。
「ブブー!正解はキザ」
「は?」
「大体、兄ちゃんがピザな訳ないじゃん。ピザってのは羽川さんが不摂生をしたら―――」
「おい、それ以上はいうな。というか、僕のどこがキザなんだよ!」
「ええー!気付いてないの?」
「ああ、自分をキザだなんて思った事は一度もない」
「兄ちゃんって凄いキザだぜ?」
「本当?」
「うん、そりゃもう―――」
「へー、自分では分からなかったよ」
「星座の話を織り交ぜて話すとか、キザ以外の何物でもないよ」
「そ、そうか……すまん」
「別にそんな兄ちゃんがダメだって言ってるんじゃないよ」
火憐は僕の横に座り直し、腕にしがみついてジャレてきた。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:09:07.93 ID:MqTegvQo [5/31]
「そんな兄ちゃんが、私は好きなんだよ」
一瞬、自分の心臓が止まったかと思った。
次の瞬間、蘇った心臓が高速で鼓動を始める。
火憐と僕の距離が少し詰まる。
火憐は物欲しそうな顔で僕を見つめる。
唇の距離が10センチまで来た時、僕は口を開いた。
「駄目だよ、火憐ちゃん」
「何で?」
「ほら、僕達兄妹だし」
「キスぐらいなら……前もしたじゃん」
「前は、ほらさっきも言ったけど、病気をだな―――」
「兄ちゃんは私とするのが嫌なの?」
「いや、そう言う訳ではないけど……」
ピザを食べながら飲んだのは―――間違いなくジュースで、酒ではない。
「それともまだ彼女の事が気になって?」
「あ、いや……そんな事も無いけど」
「分かった……」
火憐はそう言うと急に立ち上がりリビングから出て行ってしまった。
「ああ、怒らせたか。でもそれで良いんだ」
僕は自分に言い聞かせるよう、呟いた。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:11:59.82 ID:MqTegvQo [6/31]
ところが、火憐が右手に歯ブラシを握りしめ戻ってきた!
「兄ちゃん、口がチーズ臭いなら言ってくれよ!」
「あ、いや、そんな訳では―――」
「はい、お願い」
火憐は右手に握りしめていた歯ブラシを僕に渡す。
受け取った僕がうろたえていると、正面に座り口を大きく開けた。
「あーん」
「……」
「ほら、早く磨いてよ!ピザの匂いがしたんだろ?」
「あ、うん、いや……」」
違うんだ!!
なんだ!この状況は!どうすりゃいいんだよ!
自分がした事だが、人に要求されると躊躇する。
でもこの状況で磨かないと言うのは……悩んだ挙句、僕の理性が少し欠けた。
「ほら、もっと大きく開けろよ」
僕は火憐に命令していた。
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:13:54.81 ID:MqTegvQo [7/31]
僕は手に持った歯ブラシを火憐の口にゆっくり挿入する。
「奥歯からな、ふふふ」
僕は奥歯と歯茎の境目を執拗に、そして緩やかに磨く。
ゆっくりと前に、そして反対に、奥へ上へ裏へと。
恍惚とした表情の火憐が堪らない。
大きく開けた口から少し唾液が零れる。
「ひ、ひいちゃん、ま、まら?」
「もう少し我慢だ!」
火憐の肩がプルプルと震えだす。
喉の奥に溜った唾液で咽そうになる火憐。
僕はそこで手を止め、火憐にうがいを勧める。
「はい終わり。うがいしておいで」
洗面台へ向かう火憐。
その足取りは少し重そうだった。
うがいを終わった火憐がリビングに戻ってくる。
また右手に歯ブラシを持ったまま。
が、よく見れば僕の歯ブラシだった。
一瞬、嫌な予感がした。
53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:16:52.16 ID:MqTegvQo [8/31]
「じゃーん!次は兄ちゃんの番な!」
「ぼ、僕は自分で磨く!」
「駄目だよ、はいアーンして。兄ちゃんはバジル臭いからな」
頭部にアイアンクローを決められ、僕は転ばされた。
正座した火憐に膝枕され、上から覗きこまれる。
「いくよ!」
ニヤニヤしながら僕の口の中を歯ブラシで弄る火憐。
さっきに増して、恍惚とした表情だった。
「ふふ、兄ちゃん。奥歯にベーコンが挟まってたぞ」
言葉攻め!
こんな上級攻撃をどこで覚えてきたんだ!。
歯間に挟まっていた物を実況されると言うのは、本当に恥ずかしい。
しかし、歯ブラシの気持ちよさと恥ずかしさの相乗効果だろうか、不覚にも少々股間が熱くなってしまった。
5分ぐらい頑張った所で、僕も唾液が喉に詰まり、咽そうになる。
「よし、兄ちゃん。うがいしてきて」
何とか解放される。
洗面所でうがいし、少し冷静さを取り戻す。
部屋に戻り、何食わぬ顔でソファーに座った。
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:18:07.67 ID:MqTegvQo [9/31]
「あれ?何でそんな所に座るかな?兄ちゃん」
「ん?」
「何か忘れてないか?」
「さぁ?」
「15分前に記憶を戻せよ、兄ちゃん」
「15分前?何かあったか?それより、片づけを……」
不意に袖口を掴まれる。
「兄ちゃん、今日言った事忘れたのかな?」
「どの事?」
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな、の件」
「ああ、いいよ、それで。じゃ、片づけを……」
「だーかーらー」
物凄く強い力で引き寄せられた。
「えっと、何をしたらいいのかな?火憐ちゃん」
「そういう事を女の子に言わせるの?だから兄ちゃんは―――」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 00:30:40.78 ID:MqTegvQo [10/31]
豫 告
全クケシカラン兄妹ダ
、
}ヽ
_ .. -──- .._ノ,ノ
,.'´ `ヽ /
r‐-:;ィ「l / ,' | ハ 〈 (
/ ::ノ(())/ /'| i |、 i 八 _, >-‐  ̄ ̄ ‐- .
/.:::∠ノ /,`メ、 | | | Χ| _.ノ i / `ヽ
/ .::<.._ ノ,/j/_、|ハ. /'´ヽト、_...> _人_ ′./ ヽ. ハ
/ .::::/ |' j/<弋zリ` j/'-=ニ /'l `Y´ l .' ,' / :l、 」
′ ,':::/ ヽ._、 xxx , xxx ,'_ノ 〃__. ミ ! | | i| l| i l| |i :i| .(())
/ /::/ ` 、 、─ァ ,.′ . |lヨ | L__||_,八__|」|_||_:|| ::|_」
. / l::/ ,r‐;:>:.. __ ..:<ーュ、_ ゞ.|| 彡 | ハ ニ=- '´ヒzリ〉| i: :|
. 〈 ヽ .::〈 ,r'´{ 〈 {::ノ l::} `l 〉`ヽr||、 | i:::.xxx , xxx..| |: :|
ヽ. \:::〉 〈::\ ヽ__\_∠__,.ィ(( ./´ ̄`> )) i. | |:人 、__, .イ| | 八
__ ノ::. / ヽ:::::..、 .____| ̄l´__,ノ′ _人._ | |:::i::;>:.. __ ...::<:::|:| |:: \
r‐、i::../ |:\:::::::::::::::::::::::::::::|_|´. \:ヽ、 `Y´ . | |:::|'::i:::i:;r;〉 j:〉 .ヽ| |::::.. \
l:::{ |:::|、  ̄| ̄l ̄| ̄ |::| \ 丶::\ 〃 ! /| ヾ | |:::|:::|/ |、 // | |`ヽ:::.. \
. ヽ.\ |:::|:::.. ...:|゛ :i. "|::.....:::|::| 〉 >::::〉 l :| ,ノ_ >'´ | |.// ノ > ハ::::.. ヽ.. `ー─┐
ヽ._.> 〉::〉 / | ヽ |::l ,/ /::/ | :| /∨ :,' |// ´ ̄V ,' l:::::. \ ̄ ̄
/::/ / :| .:〉 l:::<ヽ...イ::/ | :|/ l′/ / /´ |:::::::::lヽ::.\
〈::〈 ....::\ .:l ..ノ ,|/´ヽ >'´ ミ T |. 彡 |. / / ,'::l .. -─- 、:|  ̄`
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DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だぜー!
月火だよ!
ねぇ火憐ちゃん、このあとどうなっちゃうの?
そ、そんな事私から言えない!兄ちゃんに聞いて!
兄ちゃんなら、さっき戦場ヶ原さんに連れていかれて退場したよ?
まっじでー!まぁ、みんなの期待に応えられる事は無いと思うんだけど……
作者がそろそろ限界なんだって!
というか、この先は同人ネタが織り込まれているとか、作者も馬鹿だね
そうだね!
では、次回!「一線を超えちゃう兄妹の行く末」お楽しみに!
いや、ちがうし、それ。
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:43:59.56 ID:MqTegvQo [11/31]
最前線
越えてはいけない一線がそこにはあった。
が、見えない線を軽々と越してきた妹がいた。
火憐に正面から抱きつかれ、僕が火憐にされた。
されてしまった。
深く、熱く、永く。
「なぁ兄ちゃん。前にも言ったけど、兄ちゃんとなら私―――」
虚ろな目で僕を見る火憐。
「待って火憐ちゃん。ほら彼氏彼女であったとしても、いきなり何でもする訳じゃないだろ?」
苦しい言い訳だった。
無駄な時間稼ぎだった。
というか、『バン!』とドアが開いて、『アイスピック買ってくる!』と月火が言ってくれる事を祈ったがそれは無かった。
影から忍が出てきて、「お前様、何をしておるのか?」と言ってくれてもいい。
しかし、影の中は静まり返ったまま。
ここ最近、ずっとそうだ。
「兄ちゃん。兄ちゃんは私の本気を受け止められないの?」
本気だから困ってるんだよ!
兄妹の荒廃、この一線にあり。
有名な司令官の言葉を真似て見た。
そうした所で、何も救われないのだけど。
「あー分かった!分かったからまずは風呂に入ろう、な?」
「あ、そうか!やっぱ綺麗にしてからじゃないと駄目だもんね」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:48:46.91 ID:MqTegvQo [12/31]
火憐は複雑なのか単純なのか、分からなくなってきた。
僕を解放し、火憐はバスルームへ向かう。
「兄ちゃん、一緒に入る?」と振り返りながら笑顔で声を掛ける火憐。
「いや、結構ですから。お先にどうぞ」
仰々しく答えた僕に笑顔を見せたのち、火憐はそのままバスルームへ消えた。
どうしよう?
誰かに助けを求めるべきか?
こんな時、他人に頼って良いのか?
何をすればいいのか?
家から逃げ出せばいいのか?
でもそれじゃ何の解決にもならないし、火憐一人になってしまう。
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:49:51.79 ID:MqTegvQo [13/31]
悩んで出た答えが『説教』。
泣かせても、嫌われても、説教すれば解決する。
でも、それを望まない自分も居る。
『妹がやろうって言ってんだ、やっちまえよ暦』と放言するブラック阿良々木が居る。
それは僕が戦場ヶ原と別れた少し前から心の中にそれが居る。
いや、ずっと居たんだろうけど、『あの時』以来良く現れる。
言い寄られたら、『やっちまえよ!それでポイだ』と囁く。
それでも僕の理性がそいつを抑え込む。
なのに、今日は無理かもしれない。
戦場ヶ原と別れ、心が寂しくて火憐に優しくした。
お互いに心の隙間を埋め合おうと……
そんな事が間違っているのは百も承知、だが今日は……負けかもしれない。
火憐を可愛く思ったのは事実だ。
でも、こんな関係になりたいなんて願った訳じゃない。
なのに―――願ってない関係に堕ちる。
全ては、あの日が原因だ。
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:57:28.37 ID:MqTegvQo [14/31]
それは、僕が戦場ヶ原と別れた少し前に遡る。
あの前日、夜遅くまで忍とドーナツ談義をして明け方に床に就いた。
ぼんやりした頭で学校に行くと、校門前でメールが着信。
『阿良々木君、体育倉庫で待っています』
羽川からのメールだった。
僕は教室に寄らず、そのまま体育館横の倉庫へ向かう。
中に入り、声を掛ける。
「羽川、居るのか?」
「阿良々木君?」
「ああ、そうだ。どうしたんだ?」
「阿良々木君、助けて」
僕は鞄を放り出し、羽川の元に駆け寄る。
制服姿の羽川がいた。
「どうしたんだ!」
よく見れば、頭に耳が出ていた。
『ブラック羽川』
そう思った刹那、羽川はブラック羽川に変った。
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 07:59:11.27 ID:MqTegvQo [15/31]
「にゃはは、人間。久しぶりだな」
「お前!羽川に何をした!」
「何もしてないさ、ただご主人様に呼ばれただけにゃ」
「おまえ……」
次の瞬間、猫は僕に襲いかかってきた。
押し倒され、後頭部に激しい衝撃と痛みを感じた。
僕はそのまま、気絶してしまった。
暫くして、体に伝う振動に起こされた。
そして―――悲しい光景を見てしまった。
猫が、僕の身体の上で上下に動いていた。
「よぉ、人間。お目覚めか?どうかね?ご主人様の体は?」
僕はあろうことか、猫と性行為をしていた。
いや、この状況はレイプだと言っても過言ではない。
「なぁ、人間。これで俺は当分はゆっくり休めそうだ。恨むなよ、俺を」
そう言いながら、猫は僕の身体を弄ぶ。
エナジードレインのせいか、体が動かない。
そんな僕の上で猫は―――
血を流しながら、薄ら笑い、そして鋭い目で僕を睨みつけながら動く。
65 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:00:18.58 ID:MqTegvQo [16/31]
忍はどうした?
(すまんな、一瞬の事で。寝こけていて動けんかった)
影から声が聞こえた。
「今すぐ猫を!」
「人間、また吸血鬼もどきを呼ぶのか?そいつが出てくるのと、俺がお前のエナジーを全部吸い取るのとどっちが早いと思う?考えろ人間!」
猫は僕を叱りつける。
(諦めてくれ、お前様)
こうなっては、忍も指を咥え見ている他ないのだろう。
猫はいっそう激しく動き、そして―――僕は猫を睨みながら射精してしまった。
「心配はするな。子供が出来るタイミングではない」
そういうと、猫は段々と影を薄くし、完全に羽川が戻ってきた。
「どうしよう……」
(とりあえず、この場から去れ。その前に―――)
僕は羽川の下腹部を濡らしてきたハンカチで綺麗に拭き下着をはかせ、そのまま倉庫を後にした。
勿論、学校はそのまま休んだ。
いや、逃げだした。
66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:01:37.67 ID:MqTegvQo [17/31]
家に逃げ戻り、忍と話す。
「お前様、今日の事は事故だ。そう思えばいい」
「でも僕は……」
「案ずるな。あの女の記憶には何も残らない。体の痛みは残るかも知れんがのぅ」
「でもそれじゃ……」
「急な生理が来たとでも思うだろう。それに、猫が静まれば彼女も楽であろう」
「でも―――」
「でも?では何か?お前様が犯ったと言えるのか?」
「それは……無理だ」
「だろうな。なら忘れろ。単なる事故だ」
忍に宥められたが、僕は僕が許せなかった。
「さてと、儂は寝る。お前様も休め。そうすれば少しは楽になる」
そう言うと忍は黙り込んでしまった。
多分、忍も悔しかったんだろう。
遣る瀬無さで胸が苦しかった。
色んな人との関係を全てぶち壊された気分、僕にはもう誰も要らないと決めた。
それから数日して、僕は戦場ヶ原に別れを切り出した。
67 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:03:05.66 ID:MqTegvQo [18/31]
「阿良々木君、今なんて?」
「ごめん、僕と別れて」
「あら?高貴な私に何か問題でもあったのかしら?」
「いやそんな訳じゃないんだ」
戦場ヶ原は大きく首を逸らし、僕を一瞥する。
「と言う事は、下衆な阿良々木君に何か問題があったのかしら?」
「何も聞かず別れてくれ」
たとえ意識が別物だったとしても、羽川と交わった自分には戦場ヶ原と付き合う資格は無いと考えた結果が別れ話だった。
「ふーん……そう。分かったわ」
「ありがとう」
「お礼?何故お礼を言われなきゃならないのかしら?それとも何か言えない事情、いえ情事でもあったのかしら?」
「いや……」
「私は浮気には寛大よ。本気だったら殺すって前にも言わなかったかしら?」
本当に戦場ヶ原は鋭い。
こういう所が怖い部分でもあり、惹かれる部分でもある。
「あ、うん。言われた。でも―――」
「あら図星なの?相手は誰かしら?神原?それとも羽川さん?」
「いや……」
68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:05:04.01 ID:MqTegvQo [19/31]
「そう言えば、羽川さんこの間学校休んでたわね、阿良々木君も休んだ日。何かあったのかしら?阿良々木君知ってる?知っている筈よね?」
「いや……」
「ふーん、そう。分かった。あと、前にも言ったけど、怪異がらみの時はお互い話しましょうって言ったわよね、覚えているかしら?」
僕は心臓が止まるかと思った。
「ちなみに私、羽川さんの存在は『怪異』だと思ってるから。
あんなの人間だなんて思わないから。
一応、彼女の前では従順なフリをしているのだけれども、本心からの行動じゃないわ。
もし、羽川さんと何かあったのなら―――ちゃんと話して、阿良々木君」
そう僕に話しかけた戦場ヶ原の顔は、いつの日か星を見た日の顔だった。
でも、僕は自分自身が許せず、結局戦場ヶ原の最後の優しさまで踏みにじった。
完膚なきまでに、雑草を踏みつぶす様に。
そして今に至る。
69 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:06:38.15 ID:MqTegvQo [20/31]
白
駒
自宅リビング回想ヲワリ
70 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/09/04(土) 08:07:54.86 ID:MqTegvQo [21/31]
バスルームから火憐が出てきた。
濡れた髪をタオルで拭きつつ……何故かバスタオル一枚で。
「ちゃんと服着なさい」
「いいじゃん、今からまた裸になるんだし」
「決定事項なのか!」
「え?」
「え?」
「違うのか?兄ちゃん」
「もう一度ゆっくり考えた方がいいぞ、火憐ちゃん」
「女に、女にどこまで恥をかかすのかな?」
「もう一度冷静になろう、な?」
僕の言葉は火憐の耳に届いていない。
もう彼女の中では全ての事が決定事項の様だ。
火憐に引き千切られる様に上着を脱がされ、上半身が裸になった。
それを見つめる火憐。
「入ってくる?それともこのまま?」
このまま押し倒してもいいのかも知れない、いや駄目だろう。
どうすりゃいいんだ!
一歩、火憐が前に出た。
と、その時だった。
71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:27:57.36 ID:MqTegvQo [22/31]
リビングのドアが開き、そこに月火が居た。
「なんですか一体!ちょっと鉈買ってくる!」と月火が叫ぶ。
助かった!いや、これは助からない?
表に飛びだした月火を追う。
「まてよ!」
上半身裸で、中学生を追いかける図。
誰がどう見ても変態の仕業である。
次の瞬間、後ろから後頭部に飛び蹴りを喰らう。
僕はそのまま失神した。
最近、僕の中では失神がマイブームなのか?
目覚めると、そこは自宅、自分のベッドの中だった。
僕を囲むように、火憐と月火、そして神原と戦場ヶ原が居た。
「おお、目覚めた。阿良々木先輩、すまなかった。つい変質者かと思い本気で蹴ってしまった」
「お前か!」
確かに、僕の後頭部に飛び蹴り食らわせられるのは、この町じゃ神原ぐらいだろう。
それはいい、それよりも……何故、戦場ヶ原が居るのか?
何となくバツが悪くて、僕はそのまま布団の中に逃げる様に潜ってしまった。
「あらあら仕方が無いわね。神原、布団を剥ぎとりなさい」
戦場ヶ原に指示された神原は、僕の布団を盛大に捲り上げ、僕はベッドの上で晒し者となった。
72 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:30:48.07 ID:MqTegvQo [23/31]
エピローグ
何故ここに居るのかという問いに、神原は答える。
「夕方、買い物に出かけたら、阿良々木先輩を見かけたんだ。自転車の後ろに可愛い女子を乗せていたので、驚き直ぐに戦場ヶ原先輩に電話したのだ」
「で?」
「勿論、そのまま追跡した」
「お前はストーカーか!」
「やっと追い付いたと思ったら、その女子を家に引き入れたので、これはもしや!と思いずっと表で張り込んでた」
「えー、なんで神原がそこまでする必要がある訳?」
「そ、それは。うん、その子がもしも朝まで出てこなければ諦めようかと……」
「何を諦めようだ!お前とは付き合わないって言っただろ!」
「謙遜するな、先輩」
「勘違いするな!」
「しかし、後ろに乗っていたのが火憐だったとは私も気が付かなかったよ」
「まぁ、見違えるからな私服だと」
そう僕が答えると少し恥ずかしそうにした火憐。
「で、月火は?」
「私は……何となくお兄ちゃんと火憐ちゃん二人だと心配で―――ほら、前の件とか。気になって帰ったらこの惨状だったの」
確かに、そんな事もありました。
「あっそ。でも戻ってきてくれて兄としての威厳は保たれたよ」
「お兄ちゃん、最初から威厳なんて無いよ?」
酷い、酷いよ月火ちゃん。
火憐と僕が過ちを犯しかけた事は二人して認めた。
未遂であり、何もなかった事を強調し。
73 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:33:26.21 ID:MqTegvQo [24/31]
で、その後の戦場ヶ原の尋問。
「ふーん、阿良々木君は妹さんに本気だったの?下衆を通り越して鬼畜ね」
「いや、別に本気と言う訳では。何というか、雰囲気に流されて」
「あっそ。ところで妹さん、あなたはお兄様とどうなりたかった訳?」
「え、その……」
戦場ヶ原に詰問され、火憐は泣きだしそうだった。
「戦場ヶ原、悪いのは僕なんだ。だから火憐を責めないでやって欲しい」
「あら?別に責めてはいないわ。ただ、本気だったか、遊びだったか聞きたかっただけよ」
「ほんの出来心だよ、それに僕達は何もしていない」
「していないじゃなくて、出来なかったの間違いでしょ?どうしてこうも童貞は嘘を並べるのかしら」
「嘘なんて……」
僕の顔をじっと睨みつつ、戦場ヶ原は話を続ける。
「あら?いつもは童貞に反応するのに、今日は……もう捨ててしまったのかしら?ドブの中にでも」
ドブって・・・・・・
「あ、いや、まぁ妹達も居るし」
「まぁ、いいわ。その辺はじっくりと後で聞かせて貰うわ。中学生って色んな事に興味を持つ年頃だし、妹さんは遊びだったのよね?そうよね?」
肯定を要求する戦場ヶ原の質問に、火憐は小さく頷いた。
うん、それでいい。
「で、阿良々木君。今日の事はこれでお仕舞い。あとは……」
「別に話す事なんて何も無いよ」
「そう。では、今日はこの辺でお暇するわ。神原、帰るわよ」
「はい」
戦場ヶ原と神原が徐に立ち上がる。
74 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:37:48.58 ID:MqTegvQo [25/31]
「あ、あのな」
僕は部屋から出ようとした戦場ヶ原を引きとめた。
「何?この期に及んで最後の言い訳?」
「いや、大事な話だ」
「何?」
「僕は……もう……」
意を決し、僕は何があったかを話そうと思った。
が……
「阿良々木君、言わなくても分かってる。貴方が辛い時って顔に書いてあるから直ぐに分かるの。だって、マジックの太字で書いてあるから」
「え?」
一瞬、鏡を探す僕。
「だから、あなたさえ良ければ―――いつでも帰ってきていいのよ。それと体育倉庫の件、怒ってないからね」
知っていた。
戦場ヶ原は全部知っていた。
「戦場ヶ原!」
「ねぇ阿良々木君、私も悔しいのだけれども、だからと言ってこの件で羽川さんを責めるべきかしら?そのウサギ並みの脳で考えても一目瞭然よね?」
「ど、どこまで知っているんだ?」
「全部。で、私に何ができるかしら?」
「出来ればそっとしていて欲しい」
「まぁ、この期に及んでまだ『欲しい』だなんて、なんて欲深い男なの!」
「じゃあ、なんて言えばいいんだよ!」
突然、言葉尻だけを取り豹変する戦場ヶ原には未だに慣れない僕。
75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:40:16.98 ID:MqTegvQo [26/31]
「そうね、―――
『今回の件は事故です。それも物損事故です。人身事故では無いので、示談で済ませます。
誰も怪我しなくて良かったです。どれもこれも戦場ヶ原さんのお陰です』
―――ぐらい言えないかしら?』
僕は素直に復唱した。
そんな僕を見て、火憐と月火がドン引きだった。
そりゃ、自分の兄貴が言葉で責められている訳で、それも激しく厳しく。
「ファイ―――妹さん達、ここからは大人の話をするから部屋から出て貰える?」
火憐と月火は「はい」と答えた後、素早く部屋から出て行ってしまった。
僕には「サーイエッサー」と言った様に見えたが?
「あと神原、あなたも」
「はい」
「その前に。阿良々木君の話だと、二人は付き合う付き合わない等と云う話をしていた訳?」
「あのそれは……」返事に困る神原。
「まぁ今回のお手柄と相殺したところで、私が完全放棄宣言していない所有物に手を出そうとした事は重大な過失よ」
「ご、ご、ごめんなさい」
「ちなみに神原も遊び?それとも本気?」
「あの、その、軽い冗談でした!」
神原は腰を90度に曲げ、戦場ヶ原に頭を下げた。
76 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:42:13.13 ID:MqTegvQo [27/31]
「そう、なら仕方が無いわ。私、浮気には寛大なのよ。だから、阿良々木君が浮気したぐらいじゃ怒らないわ。ただ、本気だとね、分かるでしょ?」
「はい」と神原は小さく返事をした。
「阿良々木君を本気にさせたり、本気で取りにかかる相手は容赦しない。でも遊んでくれる相手には寛容なのよ、分かるでしょ?」
「はい、以後気をつけます」
「神原は物分かりが良くて助かるわ。これからも遊んであげてね。じゃ、出て行ってくれるかしら?」
「はい」
神原も退出し、部屋には僕と戦場ヶ原だけとなった。
「さてと……」
戦場ヶ原は僕が寝ているベッドに腰掛け、小さく頷く。
一体、何が始まるんだ!
77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:46:01.15 ID:MqTegvQo [28/31]
「阿良々木君」
「ひゃ、ひゃい!」
恐ろしさの余り、声が裏返ってしまった。
「本当に今回は御苦労さまでした。あれが怪異であったとしても私に言わないとした阿良々木君の男気に惚れなおしたわ」
「え?」
「惚れなおしたの」
「は、はい」
「はいじゃないでしょ?どうするの?戻ってくる?いいえ、戻ってきてくれる?」
デレた。戦場ヶ原がデレた。
初めてじゃないけど。
「でも本当にいいのか?僕は羽川と―――」
言い訳をする僕の唇を戦場ヶ原の唇が封印する。
「言ったでしょ、物損事故なの。壊れたのは彼女の膜だけ。他は何も壊れていないの。私達の関係も、兄妹の関係も、交友関係も」
「ありがとう」
僕は久しぶりに泣いてしまった。
泣きながら戦場ヶ原を抱きしめた。
抱きしめた戦場ヶ原も泣いていた。
「でも残念だわ」
「何が?」
「童貞って言って虐められないし」
「それか!」
「どうせ、私の事を処女だ処女だと馬鹿にするんでしょ?」
「しねぇよ!」
「そう。よかったわ。私は、変態鬼畜兄様って人前でも罵るわよ?」
「!!!」
78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 08:53:55.12 ID:MqTegvQo [29/31]
今回のオチ
戦場ヶ原は校門前で登校して来た僕に気付き、膝カックンを入れようと背後に立ったら、メールが見えたらしい。
で、僕が走って行ったのを追いかけ、締め忘れたドアの隙間から全部見てしまった
だから全部知ってた訳。
その場で攻撃に移る事も出来たのだが、猫の姿を見て流石に怯んだとか何とか。
僕から事情を聞いた戦場ヶ原は怪異はどうしようもないにしても、その原因の羽川のストレスを解放する為に、戦場ヶ原は羽川に対し、戦略的宣言?なるものをした。
「羽川さんも阿良々木君を彼氏扱いしてもいいのよ?好きなんでしょ阿良々木君の事。
本当は譲っても良いんだけど、そうすると今度は私にストレスが溜まりそうなので、シェアしましょう。
話相手でも夜伽相手でも好きにしていいわ。
将来は、一夫多妻でもいいのよ?
だから、本気で私に挑みなさいよ」
戦場ヶ原に突拍子もない事を言われ、苦笑する羽川。
「なんだ、ばれてたのね。でも、私はそこまで野暮じゃないし、何となく、体の中が幸福感で満たされているから大丈夫。色々気を使わせてごめんね」
と、羽川は笑いながら一蹴した。
こうして、女の水面下?での戦いは終了し、平穏な日々が戻った。
以後、僕はブラック羽川を見る事は無くなった。
妹との関係も概ね良好、ただ僕と火憐が二人っきりで居る事は禁止されてしまった。
なので、休日は月火が一緒に遊びに連れ出している。
全て、元のまま。
ほんの物損事故程度だった……
1年後、僕達は各々の進路に進んだ。
宣言通り、羽川は進学せず―――シングルマザーになっていた!
「猫の嘘つきー!」
おわり
81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 08:59:58.53 ID:MqTegvQo [30/31]
ここまで読んでいただき、有難うございました。
色々誤字脱字もあると思いますが、何卒平にお願いいたします。
AA板で化AAみて、C78で販売されていた「ホムンクルス・化猫騙」というを同人誌を読んで、書きなぐってしまいました。
今は反省しています。
また何か書く事があれば宜しくお願いいたします。
あと、基本的に全部書いてから投下というスタンス(途中で投下しながら書きなおしはあります)なので、先読校正してくれる読み手さんも大募集中です!
何か物足りない短編になりましたが、今回はこの辺で。
何か面白そうな組み合わせとかシチュがあれば教えてください。
書いてみたいと思います。
ではでは。
hanetsuba
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