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唯「時をかける長女」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:01:46.32 ID:K6tYb50/O [1/40]
唯「まずはそっと目を閉じる」
唯「そして、時を跳びたいと強く願って」
唯「目を開けたら、そこは憂の行きたい時間だよ」
同時進行
憂「時をかける長女」
唯「まずはそっと目を閉じる」
唯「そして、時を跳びたいと強く願って」
唯「目を開けたら、そこは憂の行きたい時間だよ」
同時進行
憂「時をかける長女」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:04:28.59 ID:K6tYb50/O [2/40]
憂「うーん……」
唯「……だめっぽいね」
憂「うん。できないや……」パチッ
憂「別の時間には用事がないから……時間を跳びたいって気持ちが足らないのかも」
唯「でも面白いよ? 憂も一緒にいろいろイタズラしようよー」
憂「イタズラって……もっと良いことに使おうよ」
唯「良いこと?」
憂「そうだよ。たとえば、困ってる人を助けるとか」
憂「お姉ちゃんにしかできないことだよ!」
唯「おぉ。私にしかできない、私だけが出来ること」フム
唯「でも、具体的に何をしたらいいんだろう……」
憂「それは……困ってる人に会ったら考えればいいよ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:08:20.54 ID:K6tYb50/O
唯「そっか。確かにそうだね」
憂「だからあんまりイタズラに使っちゃだめだよ?」
唯「楽しいのに……」
唯「ケーキだって倍も食べられるんだよ!」
憂「お姉ちゃん?」
唯「う……分かったよう。ある程度自粛って事で、ね?」
憂「まあ、お姉ちゃんがもらった力だから自由にしていいんだけど」
憂「とにかく、人を困らせる使い方はだめだからね!」
唯「むー、憂が言うならしょうがないな。変な使い方はやめるよ」
唯「けど、ムギちゃんのケーキだけは絶対領域だから!」
憂「うん、いい子いい子」ナデナデ
唯「むふん」
6 名前:>>5は誤爆[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:13:36.68 ID:K6tYb50/O
翌朝 唯の部屋
唯「とはいえ……イタズラってのはやめられないんだよ憂」
唯「まずは10日後にリープして……」フワッ
ギシッ
唯「おろ?」ガチッ
唯「手足が動かない? 何かに固定されて……」
唯「うい、ういー!?」
ガチャ
唯「あ、ういー! 助けてー!」
憂「どうしたの、お姉ちゃん?」
唯「ほら、これ何とかしてよー」ガチャガチャ
唯「これじゃ動けないよー……」
憂「……ふふっ」
唯「ういー?」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:16:35.50 ID:K6tYb50/O
憂「お姉ちゃん、まだそんなこと言うんだ?」
唯「へっ?」
憂「イケない子だね、お姉ちゃん。お仕置きしてあげなきゃ」
唯「え……え?」
憂「いいかげん、立場をわかってもらわないとね……」ズルッ
唯「なんでズボン脱がすの? 鎖を外してよう、憂」
憂「えへへ……お姉ちゃん」サワッ
唯「ちょ、憂……なに?」
憂「……私のオモチャなんだって分かってもらわないと」グニッ
唯「痛あっ! やめて、憂……」
憂「まだ生意気……」グリグリグリ
唯「かっ、は!」ギリッ
唯(に、逃げなきゃ……)ガチガチ
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:20:32.23 ID:K6tYb50/O
唯「跳ん、で……」ギュッ
憂「むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから」
唯「跳べない? そんなはずないよ……」ググッ
憂「あれ……お姉ちゃん?」
唯(大丈夫……跳んでる。跳べてる)フワッ
――――
本来の時間 唯の部屋
唯「はあ、はあ……」
唯「戻って来れたぁ……」クテッ
唯(憂はどうしてあんなこと……それに、私が跳べなくなったって?)
唯「はぁ……すごい痛かったよ」
唯「跳んだら痛いのはすぐおさまってくれたけど……あれはもう嫌だよ」
唯「……未来に跳ぶのはやめよう」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:24:37.24 ID:K6tYb50/O
コンコン
憂「お姉ちゃん、そろそろ起きなよー!」
唯「お、起きてるってば!」
唯(忘れよ……)
唯「はぁ……」
唯(でも、10日後……ううん、憂の話を踏まえればもっと早く。あんなことになるんだとしたら)
唯(なんとしても回避しなきゃ)
チク
唯「ん?」
唯(何だろ、今の。……右腕?)チラッ
唯(なんか変な……アザかな。こんな目立つ所に付いちゃってやだなぁ)
唯「数字に見える……02?」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:28:16.60 ID:K6tYb50/O
――――
1ヵ月前 職員室
唯「タイムリープ?」
さわ子「そう。日本語で言ったら時間跳躍ね」
唯「それが私の時間が飛び飛びになってる理由なの?」
さわ子「恐らくそうね。時間が飛ぶだけならともかく、戻るとなると流石にね……」
唯「さわちゃん先生、私どうしたらいいんだろう……」
さわ子「タイムリープは一般的に有名な現象ではあるけど……実際に直面するのは私も初めてなのよ」
さわ子「どうするべきか、なんてのは分からないわ」
さわ子「ただ、タイムリープは自分でコントロールできるものらしいわ。今後のためにその方法を習得する必要があると思うわよ」
唯「ふむ。コントロール……」
唯「確かにそうだね。けっこう色んな人に迷惑もかけちゃたし」
唯「ありがとう、さわちゃん先生」ニコ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:32:43.72 ID:K6tYb50/O
さわ子「いいのよ。……あ、それと」
唯「はい?」
さわ子「コントロールできるようになっても、あんまり過去には戻らないほうがいいわよ。……老けるから」
唯「やだなぁ、大丈夫だよさわちゃん先生」
さわ子「どういう意味の大丈夫なのかしら?」
唯「と、特に意味はありませんとも……失礼しましたっ!」ダダッ
――――
現在 唯の部屋
唯(そっか。さわちゃんに相談したらいいんだ)
唯(色々詳しかったもんね。このアザのことも何か知ってるかもしれない。そもそもこれが跳ぶのに関係してるのかどうかもわかんないけど)
憂「お姉ちゃん? そろそろ起きないと……」ガチャ
唯「起きる、起きるからっ!」バタバタ
トテテテ…
憂「なんで急いでるんだろ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:36:08.44 ID:K6tYb50/O
朝 職員室
唯「さわちゃん先生……どうかな?」
さわ子「……これに気付いたのは、つい今朝なのよね?」
唯「うん。朝見てたらついてて……何か分かる?」
さわ子「02、って書いてあるわね」
唯「あの……タイムリープに関係ある事だと思ったんだけど」
さわ子「あら、どうして?」
唯「分かんないけど……跳んだ後に、このアザのある辺りがチクッて痛んだんだ」
唯「たったそれだけなんだけどね」
さわ子「んー……流石に判断しかねるわね」
さわ子「私の想像に過ぎないものになるけど、言ってみてもいいかしら」
唯「解るの!? 教えて、さわちゃん先生!」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:40:01.92 ID:K6tYb50/O
さわ子「……」
さわ子「これはね、唯ちゃんが跳べる残り回数よ」
唯「跳べるって……!」
さわ子「つまり、タイムリープね……その数字がゼロになれば、唯ちゃんはタイムリープができなくなる」
さわ子「……跳べなくなるのよ」
憂『むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから』
唯「……」
唯「さわちゃん先生。……きっと、それで間違いないよ」
さわ子「……」
唯「未来で聞かされたんだ。私の跳ぶ力はなくなるって」
さわ子「唯ちゃん……」
唯「……あはは」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:44:10.51 ID:K6tYb50/O
さわ子「……それで、どうするのかしら?」
唯「どうするって……?」
さわ子「跳ぶ力よ。残りの2回、大事に取っておくのか……使い果たして普通の人間に戻るのか」
さわ子「……それは唯ちゃんが考えて決めるべきことじゃないかしら」
唯「私は……」
唯(跳ぶ力が無くなったら、憂に痛いことされた時に逃げられなくなる)
唯(だめだ……まだ失くしちゃいけない)
唯「残り2回……持っておくよ」
さわ子「そう。……それなら、大切に使いなさいね」
唯「はいっ」
唯(でも……)
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:48:09.24 ID:K6tYb50/O
放課後 音楽準備室
律「で、しょうがないからって和がメガネを外したんだけどさ……」
律「目が……3にならなかったんだ」
唯「そりゃならないでしょ」
紬「も、もうりっちゃんたら! そんな冗談は笑えないわよ……」
紬「って、あら?」
澪「どうした、唯? なんか今日元気ないけど……」
唯「へっ? そんなこと無いよ……」
律「んー?」ジー
唯「なんでもないってば……」
澪「じー」
紬「じーっ!」
唯「……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:52:04.08 ID:K6tYb50/O
唯「ごめん……ちょっと体調悪いかも」
澪「だと思ったよ……唯、今日は帰っておけ」
唯「けど」
紬「唯ちゃん、体は大事にしないと。……ほんとにひどい顔色よ?」
律「しっかり治してまた明日来い。ムギのおやつは食ってやるから」
唯「ん……わかったよ」
律「スルーか?」
唯「よいしょっと……じゃあまた明日ね」
澪「ああ。お大事に。一人で大丈夫か?」
唯「だいじょうぶだよ。ありがと澪ちゃん」ガチャ
律「アイウォントユアツッコーミ。唯?」
唯「じゃあね」バタン
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:56:04.02 ID:K6tYb50/O
桜ケ丘高校 1階廊下
唯「……」フラフラ
梓「あ、唯先輩」
唯「……」
梓「……唯先輩? 大丈夫ですか?」ポン
唯「む、あずにゃん28号……」
梓「そんなにいません。ていうか2号すらいませんから」
梓「それより……今日の練習は休まれるんですか?」
唯「うん、体調悪くてね。明日までには治すから」
梓「そうですか……お大事にです」
唯「じゃね、あずにゃん……」フラフラ
梓「あ……あの、唯先輩」
唯「なぁに? あずにゃん」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:00:00.22 ID:K6tYb50/O
梓「やっぱり送っていきますよ。唯先輩、そんなふらふらじゃ事故に遭いそうです」
唯「心配し過ぎだよーあずにゃん」
梓「唯先輩がそれぐらい危なっかしいのは事実ですけど」
唯「うぐっ! ま、まぁそこまで言うなら一緒に帰ってもいいかなぁ?」
梓「ふふ……それじゃあ私も掃除終わった所なんで、帰りましょうか」
カチャ パタン
唯(あずにゃん優しいなぁ……)フラフラ
梓「ほら唯先輩、危ないので手を繋ぎますよ」スッ
唯「ほいほーい」ニギッ
テクテク テクテク
梓「歩きながら寝ないでくださいね」
唯「いくら私でもそれはありえないよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:04:13.59 ID:K6tYb50/O
テクテク テクテク
唯「ねぇ、あずにゃん」
梓「はい?」
唯「あずにゃんはさ、2回だけ時間を移動できるとしたら……どうする?」
梓「タイムスリップですか?」
唯「違うよ。自分の意図した時間に移動できるから、タイムリープ」
梓「あ、そうですね。そしたら私は……」
梓「きょ、恐竜時代とか行ってみたいです」
唯「……くすっ」
梓「笑わないでくださいっ!」
唯「あずにゃん可愛いのう……でへへ」ナデナデ
梓「やめてくださいよ、こんな道の真ん中で……」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:08:26.37 ID:K6tYb50/O
唯「よーしよーし……」ワシャワシャ
梓「もう……聞いてるんですか、唯先輩?」
唯「これがもうほんと、ひとつも聞いてないんだな」
梓「はぁ……ダメな先輩」
唯「あずにゃんが完全に見下した目をしてる……」
梓「いいから行きますよ、唯せんぱ……」ハッ
梓「先輩っ!」ドンッ
唯「うわっ! 何、あずにゃ……」
唯「あ……」
唯「え……あず、にゃん? どこ行ったの?」
唯(地面が赤い。何、怖いよ……)
唯「あずにゃーん? 返事してよ……」
唯(このべしゃべしゃの車……邪魔だよぅ)ググッ
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:12:18.08 ID:K6tYb50/O
唯(……動かせないか)
唯「……」
ガヤガヤ…
唯(あ。人が集まってきた)
唯(みんなで車をどかしてくれてる。私もやらなきゃ……)
唯「う……ン」ググッ
ニチャ
唯(動いた……けど)
唯(あずにゃんはどこなの?)
ズルッ
唯(……これ?)
唯(……まさか)
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:16:35.26 ID:K6tYb50/O
唯(でも、血でべとべとになっても綺麗な髪とか)
唯(小さな体とか、ひんやりしたほっぺとか)
唯(やっぱりあずにゃん?)
唯「あずにゃん、あずにゃーん?」パシャパシャ
唯「返事してよー。……ねぇっ!」
唯「何か喋ってよ……お返事じゃなくていいから……」
唯「あずにゃん、呼吸しないと死んじゃうよ……?」
唯「やだよ、あずにゃん……無視しないで」
唯「だらしない先輩なことも、あずにゃんのロマンを笑ったことも謝るから」
唯「だからお願い……死なないでよぉ」
唯「……」
唯「……ダメ?」
唯「ん。じゃあ……やるしかないね」フワッ
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:20:10.07 ID:K6tYb50/O
――――
桜ケ丘高校 1階廊下
梓「……唯先輩? 大丈夫ですか?」ポン
唯「あずにゃん……」
唯「……」ギュッ
梓「わっ……どうしたんですか急に……」
唯「……なんでもないよ。ちょっとね」
唯(本人には言えないよね、あずにゃんが車につぶされて死んじゃってたなんて)
梓「もう、こんな所で……離れて下さいよ」グイッ
唯「ご、ごめんね……」
梓「いえ、いいんですけど。それより唯先輩、もう帰られるんですか?」
唯「うん。調子悪いから……ばいばい、あずにゃん」
梓「そうですか……お大事に」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:24:25.21 ID:K6tYb50/O
唯(さて……帰ろう)
梓「あのっ、唯先輩!」
唯「うん?」
梓「やっぱり私も一緒に帰りますよ。体調悪いんですから、一人じゃ危ないです」
唯「だめだめ。あずにゃんは練習してなきゃ!」
梓「ですけど……」
唯「ん……あれー? あずにゃん、もしかして部活サボろうとしてる?」
梓「なっ! そんなことないです!」
梓「ああもう……分かりましたよ、一人で帰ってくださいです!」ダダッ
唯「あ……」
唯(怒らせちゃったかな)
唯(でもあずにゃん、私と一緒に帰ったら死んじゃうんだもん。しょうがないよね)
唯(背に腹は代えられないってやつだよ)
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:29:44.05 ID:K6tYb50/O
テクテク
唯(……)
唯(あずにゃん、生きてたね)
唯(……そういえば、腕のアザは)クイッ
唯(01になってる。やっぱり残りの回数を表してるんだね)
唯(でも……私の力であずにゃんの命を助けられたんだ)
唯(……最後の一回、大事にしなきゃ)フンス
唯(私は何されてもいい。みんなを助けるんだ)
テクテク
唯(……このへんであずにゃんが事故に遭ったんだよね)
唯(このお店に車が突っ込んで、壁との間であずにゃんのお腹が潰れちゃったんだ)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:33:49.21 ID:K6tYb50/O
唯(私もそろそろ行かないと、同じ目に遭っちゃうかもね)
唯(……想像したくないな、それは)
唯(よし、行こう……)スック
ガタンッ
唯「えっ?」クルッ
唯(車……さっきの車がこっちに来てる)
唯(なんで、こんなに早く……)
唯(私も死ぬの? あずにゃんみたく?)
唯(まだりっちゃんにツッコミあげてないのに!)
唯「嫌あああぁぁっ!!」ダダッ
唯(……)
唯(……痛い)ガクッ
唯「うぐ、えおっ」ゴボッ
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:37:26.19 ID:K6tYb50/O
――――
一週間後
唯「……う」パチッ
唯(私、死んだはずじゃ)
唯(……病院?)
唯(なんか体がうまく動かない……)
梓「すー、すー……」
唯(……ああ、あずにゃんが乗っかってるからか)
唯(私、助かったんだ。事故には遭ったけど……生きてるんだ)
唯(……良かった)
唯「あずにゃん、あずにゃん」
梓「ん……あ?」ムクッ
唯「えへへ……おはよう」ニコッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:42:04.99 ID:K6tYb50/O
梓「唯……先輩」
唯「よいしょ。いつつ……よしよし、看病ありがとうね」ナデナデ
梓「ゆいせんぱぁい!」ヒシッ
梓「バカぁ……目を覚ますのが遅すぎです!」
唯「ごめんね、あずにゃん……心配かけちゃって」ギュ
唯「ん、あれ?」クイッ クイッ
唯「あずにゃん……私の左手は……?」
唯「ねぇ、あずにゃん?」
梓「ごめんなさい唯先輩。ごめんなさい……」
唯「答えてよ、あずにゃん」
唯「私の左手……付け根からみんな、どこ行っちゃったの……?」
梓「ごめんなさい、ごめんなさい……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:46:08.91 ID:K6tYb50/O
唯「……」サワッ
唯「……足も」
梓「……」ピク
唯「ごめん、あずにゃん。今日はもう帰ってくれない?」
梓「一人にはしません」
唯「帰ってよ。お願いだから……」
唯「こんな姿……見られたくないの」
梓「……分かりました。外に出ています」
梓「でも、憂と先輩たちにだけは……唯先輩が目を覚ましたことを伝えますからね」
唯「良いよ……けど、明日までは来ないように言って。でないとみんなのことも傷つけちゃうから」
唯「明日になったら、元に戻ってるから……お願い」
梓「はい。……待っていますね」
ガララ パタン
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:50:28.42 ID:K6tYb50/O
唯「……」
バサッ
唯「半分だけしかない」
唯(……すごい事故だったんだね)
唯(生き残れただけでも、幸せなんだろうね)
唯(……でも、足はまだいいよ)
唯(この、なんにもない左手……)チラ
唯(これじゃあ……なにも出来ないよ)
唯(……私……ギター弾けなくなっちゃった)
唯(あずにゃんを抱きしめられなくなっちゃった……)
唯(ビーチバレーをトスできない。玉ねぎを切れない)
唯(私にできることは、ケーキを食べることと線香花火を持つことだけだね)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:54:10.59 ID:K6tYb50/O
唯(……跳ぼうかな)
唯(跳べば、私の体も元通りになるよね……)
唯(……でも、これから先みんなの命を脅かすようなことがあったら?)
唯(もう止めよう。私は生きてるんだ)
唯(これはみんなを助けるための力を……イタズラなんかに使っちゃった私への報い)
唯(ほんと馬鹿だな。憂の言うことをちゃんと聞いてたらよかった……)
唯(……)サスッ…
唯(私の左手……)
唯(ギー太を弾くために必要な腕……)
唯(……欲しい)
ガラララ
唯「!」
唯「……誰? あずにゃん?」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:58:01.83 ID:K6tYb50/O
さわ子「やっほ、唯ちゃん」ヒョコ
唯「さわちゃん先生……」
唯「あ、やだっ」バサッ
唯「……」
さわ子「そんなに慌てて隠さなくても知ってるわよ」パタン
さわ子「唯ちゃん、一週間も眠ってたんだから。私がひん剥いてないとでも思った?」
唯「……思わないけど」
さわ子「だったら良いじゃない。……唯ちゃん、ちょっと右手を見せて」
唯「……」スッ
さわ子「包帯ずらすわよ」グッ
唯「いたっ……」
さわ子「うーん、01……なんだ、まだ残ってるじゃない」
さわ子「……どうして戻らないのかしら?」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:02:01.41 ID:K6tYb50/O
唯「これは……私のために使う能力じゃないから」
さわ子「あら、昔はケーキを食べるためにさえタイムリープしていたのに?」
唯「今回あずにゃんの命を助けて、わかったんだ。そんなチンケな力じゃないって」
唯「だから私は、もう自分を助けないよ。大切なみんなのための力で……」
さわ子「……おかしな子」
さわ子「価値観の違いかしらね。命ってそんなに尊大なもの?」
唯「……そりゃそうだよ。命がなかったら何もできないもん」
さわ子「命なんて、ただの猶予期間じゃない。60年あったら無条件で消えるものよ?」
さわ子「はっきり言ってグダグダね。ロクなもんじゃないわ」
唯「さわちゃん先生は充実してないからだよ」
さわ子「してるわよ。でも80年も必要ない……要るのは輝いてる日々だけ」
さわ子「先達として言わせてもらうけど、楽しい時間なんてそう長くないわよ」
唯「……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:06:33.72 ID:K6tYb50/O
さわ子「ま、唯ちゃんの考え方しだいよね……」
さわ子「あなた達5人の人生60年分が、唯ちゃんの五体満足を支払う程の価値があるものか……」
さわ子「今の唯ちゃんに正常な判断が出来るかどうかは微妙だけど、しっかり考えてみなさい?」
唯「さわちゃん先生……」
唯「でも、もし私たちの輝いてる日々のうちに、誰かが死んじゃったら……?」
唯「私が時間を戻してまたギターを弾けるようになっても、もっかいあずにゃんが死んじゃったら、やっぱりそこは楽しい時間じゃなくなるよ」
さわ子「……そんなことは心配いらないわよ」
唯「なんで……」
さわ子「もう分かってるんじゃない? 唯ちゃん」
さわ子「これまでタイムリープに関して、私の言ったことは全て当たってきたわよね」
唯「……もしかして、さわちゃんって」
さわ子「ふふっ。見えるかしら、この肩の所……」グイッ
唯「28……だね」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:10:02.18 ID:K6tYb50/O
さわ子「年齢じゃないからね?」
唯「分かってるよ」
さわ子「そうね。とにかく安心して」
さわ子「唯ちゃんたちが高校にいる間に何かあったら、私が教師としての責務を果たすわ」
さわ子「だからね、唯ちゃん。あなたはもうその力を失くしなさい」
唯「……さわちゃん。でも良いの?」
さわ子「何がよ?」
唯「あんまり過去に跳ぶと老けるよ?」
さわ子「なめてもらっちゃ困るわね。未来のアンチエイジングはすごいのよ?」
唯「……」ジトッ
さわ子「い、いいじゃない! 残り回数にはちゃんと気を遣ってるんだから!」
唯「不安だなぁ……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:12:06.32 ID:K6tYb50/O
唯「でも……さわちゃん先生に任せるよ」
唯「私たちの顧問だもんね。それくらい働いてくれないと!」ムフン
さわ子「人づかいが荒いんだから、もう……いいから早く跳びなさい」
唯「うん。またねさわちゃん。ありがとう」
唯「……」フワッ
――――
唯(……)
唯(大人って、すごいな)
唯(私みたいな子供には、過ぎたおもちゃだったみたい)
唯(……00。さようならだね、タイムリープ)
唯(……)ストッ
唯の部屋
唯(さ、みんな忘れよう)
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:18:03.69 ID:K6tYb50/O
職員室
律「廃部……?」
さわ子「正確には、廃部寸前ね」
さわ子「昨年度までいた部員は全員卒業しちゃって、今月中に四人部員が集まらないと廃部になっちゃうの」
ガチャ
唯「せんせー」
さわ子「はい、今行くわね。……ごめんなさい。次、音楽の授業あるから」
さわ子「頑張ってね、軽音部」ニコ
律「……はあ」
コツコツ
唯「……」ボー
さわ子「それじゃ、行きましょ」
唯「あの……」
澪「ん?」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:25:18.81 ID:K6tYb50/O
唯「さっき話してた、軽音部って……」
律「お、軽音部に興味あるのか?」パアッ
唯「どんなのかなぁって」
律「よし、お姉さまがいろいろ教えてやろう!」
唯「ひいぃ~」ズルズル
さわ子「……」クスッ
コツ コツ…
さわ子「唯ちゃん、やっぱり職員室に呼ばれた理由忘れてたわね」
さわ子「ま、そんなもの無いに等しいのだけど」
さわ子「……フフ」
さわ子「また楽しい3年間を期待してるわよ」
おわり。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:52:46.98 ID:K6tYb50/O [40/40]
ちなみに同時進行でやってるスレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285219065/l50
こっちの内容を何度か誤爆しました。わりい
憂「うーん……」
唯「……だめっぽいね」
憂「うん。できないや……」パチッ
憂「別の時間には用事がないから……時間を跳びたいって気持ちが足らないのかも」
唯「でも面白いよ? 憂も一緒にいろいろイタズラしようよー」
憂「イタズラって……もっと良いことに使おうよ」
唯「良いこと?」
憂「そうだよ。たとえば、困ってる人を助けるとか」
憂「お姉ちゃんにしかできないことだよ!」
唯「おぉ。私にしかできない、私だけが出来ること」フム
唯「でも、具体的に何をしたらいいんだろう……」
憂「それは……困ってる人に会ったら考えればいいよ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:08:20.54 ID:K6tYb50/O
唯「そっか。確かにそうだね」
憂「だからあんまりイタズラに使っちゃだめだよ?」
唯「楽しいのに……」
唯「ケーキだって倍も食べられるんだよ!」
憂「お姉ちゃん?」
唯「う……分かったよう。ある程度自粛って事で、ね?」
憂「まあ、お姉ちゃんがもらった力だから自由にしていいんだけど」
憂「とにかく、人を困らせる使い方はだめだからね!」
唯「むー、憂が言うならしょうがないな。変な使い方はやめるよ」
唯「けど、ムギちゃんのケーキだけは絶対領域だから!」
憂「うん、いい子いい子」ナデナデ
唯「むふん」
6 名前:>>5は誤爆[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:13:36.68 ID:K6tYb50/O
翌朝 唯の部屋
唯「とはいえ……イタズラってのはやめられないんだよ憂」
唯「まずは10日後にリープして……」フワッ
ギシッ
唯「おろ?」ガチッ
唯「手足が動かない? 何かに固定されて……」
唯「うい、ういー!?」
ガチャ
唯「あ、ういー! 助けてー!」
憂「どうしたの、お姉ちゃん?」
唯「ほら、これ何とかしてよー」ガチャガチャ
唯「これじゃ動けないよー……」
憂「……ふふっ」
唯「ういー?」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:16:35.50 ID:K6tYb50/O
憂「お姉ちゃん、まだそんなこと言うんだ?」
唯「へっ?」
憂「イケない子だね、お姉ちゃん。お仕置きしてあげなきゃ」
唯「え……え?」
憂「いいかげん、立場をわかってもらわないとね……」ズルッ
唯「なんでズボン脱がすの? 鎖を外してよう、憂」
憂「えへへ……お姉ちゃん」サワッ
唯「ちょ、憂……なに?」
憂「……私のオモチャなんだって分かってもらわないと」グニッ
唯「痛あっ! やめて、憂……」
憂「まだ生意気……」グリグリグリ
唯「かっ、は!」ギリッ
唯(に、逃げなきゃ……)ガチガチ
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:20:32.23 ID:K6tYb50/O
唯「跳ん、で……」ギュッ
憂「むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから」
唯「跳べない? そんなはずないよ……」ググッ
憂「あれ……お姉ちゃん?」
唯(大丈夫……跳んでる。跳べてる)フワッ
――――
本来の時間 唯の部屋
唯「はあ、はあ……」
唯「戻って来れたぁ……」クテッ
唯(憂はどうしてあんなこと……それに、私が跳べなくなったって?)
唯「はぁ……すごい痛かったよ」
唯「跳んだら痛いのはすぐおさまってくれたけど……あれはもう嫌だよ」
唯「……未来に跳ぶのはやめよう」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:24:37.24 ID:K6tYb50/O
コンコン
憂「お姉ちゃん、そろそろ起きなよー!」
唯「お、起きてるってば!」
唯(忘れよ……)
唯「はぁ……」
唯(でも、10日後……ううん、憂の話を踏まえればもっと早く。あんなことになるんだとしたら)
唯(なんとしても回避しなきゃ)
チク
唯「ん?」
唯(何だろ、今の。……右腕?)チラッ
唯(なんか変な……アザかな。こんな目立つ所に付いちゃってやだなぁ)
唯「数字に見える……02?」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:28:16.60 ID:K6tYb50/O
――――
1ヵ月前 職員室
唯「タイムリープ?」
さわ子「そう。日本語で言ったら時間跳躍ね」
唯「それが私の時間が飛び飛びになってる理由なの?」
さわ子「恐らくそうね。時間が飛ぶだけならともかく、戻るとなると流石にね……」
唯「さわちゃん先生、私どうしたらいいんだろう……」
さわ子「タイムリープは一般的に有名な現象ではあるけど……実際に直面するのは私も初めてなのよ」
さわ子「どうするべきか、なんてのは分からないわ」
さわ子「ただ、タイムリープは自分でコントロールできるものらしいわ。今後のためにその方法を習得する必要があると思うわよ」
唯「ふむ。コントロール……」
唯「確かにそうだね。けっこう色んな人に迷惑もかけちゃたし」
唯「ありがとう、さわちゃん先生」ニコ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:32:43.72 ID:K6tYb50/O
さわ子「いいのよ。……あ、それと」
唯「はい?」
さわ子「コントロールできるようになっても、あんまり過去には戻らないほうがいいわよ。……老けるから」
唯「やだなぁ、大丈夫だよさわちゃん先生」
さわ子「どういう意味の大丈夫なのかしら?」
唯「と、特に意味はありませんとも……失礼しましたっ!」ダダッ
――――
現在 唯の部屋
唯(そっか。さわちゃんに相談したらいいんだ)
唯(色々詳しかったもんね。このアザのことも何か知ってるかもしれない。そもそもこれが跳ぶのに関係してるのかどうかもわかんないけど)
憂「お姉ちゃん? そろそろ起きないと……」ガチャ
唯「起きる、起きるからっ!」バタバタ
トテテテ…
憂「なんで急いでるんだろ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:36:08.44 ID:K6tYb50/O
朝 職員室
唯「さわちゃん先生……どうかな?」
さわ子「……これに気付いたのは、つい今朝なのよね?」
唯「うん。朝見てたらついてて……何か分かる?」
さわ子「02、って書いてあるわね」
唯「あの……タイムリープに関係ある事だと思ったんだけど」
さわ子「あら、どうして?」
唯「分かんないけど……跳んだ後に、このアザのある辺りがチクッて痛んだんだ」
唯「たったそれだけなんだけどね」
さわ子「んー……流石に判断しかねるわね」
さわ子「私の想像に過ぎないものになるけど、言ってみてもいいかしら」
唯「解るの!? 教えて、さわちゃん先生!」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:40:01.92 ID:K6tYb50/O
さわ子「……」
さわ子「これはね、唯ちゃんが跳べる残り回数よ」
唯「跳べるって……!」
さわ子「つまり、タイムリープね……その数字がゼロになれば、唯ちゃんはタイムリープができなくなる」
さわ子「……跳べなくなるのよ」
憂『むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから』
唯「……」
唯「さわちゃん先生。……きっと、それで間違いないよ」
さわ子「……」
唯「未来で聞かされたんだ。私の跳ぶ力はなくなるって」
さわ子「唯ちゃん……」
唯「……あはは」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:44:10.51 ID:K6tYb50/O
さわ子「……それで、どうするのかしら?」
唯「どうするって……?」
さわ子「跳ぶ力よ。残りの2回、大事に取っておくのか……使い果たして普通の人間に戻るのか」
さわ子「……それは唯ちゃんが考えて決めるべきことじゃないかしら」
唯「私は……」
唯(跳ぶ力が無くなったら、憂に痛いことされた時に逃げられなくなる)
唯(だめだ……まだ失くしちゃいけない)
唯「残り2回……持っておくよ」
さわ子「そう。……それなら、大切に使いなさいね」
唯「はいっ」
唯(でも……)
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:48:09.24 ID:K6tYb50/O
放課後 音楽準備室
律「で、しょうがないからって和がメガネを外したんだけどさ……」
律「目が……3にならなかったんだ」
唯「そりゃならないでしょ」
紬「も、もうりっちゃんたら! そんな冗談は笑えないわよ……」
紬「って、あら?」
澪「どうした、唯? なんか今日元気ないけど……」
唯「へっ? そんなこと無いよ……」
律「んー?」ジー
唯「なんでもないってば……」
澪「じー」
紬「じーっ!」
唯「……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:52:04.08 ID:K6tYb50/O
唯「ごめん……ちょっと体調悪いかも」
澪「だと思ったよ……唯、今日は帰っておけ」
唯「けど」
紬「唯ちゃん、体は大事にしないと。……ほんとにひどい顔色よ?」
律「しっかり治してまた明日来い。ムギのおやつは食ってやるから」
唯「ん……わかったよ」
律「スルーか?」
唯「よいしょっと……じゃあまた明日ね」
澪「ああ。お大事に。一人で大丈夫か?」
唯「だいじょうぶだよ。ありがと澪ちゃん」ガチャ
律「アイウォントユアツッコーミ。唯?」
唯「じゃあね」バタン
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 17:56:04.02 ID:K6tYb50/O
桜ケ丘高校 1階廊下
唯「……」フラフラ
梓「あ、唯先輩」
唯「……」
梓「……唯先輩? 大丈夫ですか?」ポン
唯「む、あずにゃん28号……」
梓「そんなにいません。ていうか2号すらいませんから」
梓「それより……今日の練習は休まれるんですか?」
唯「うん、体調悪くてね。明日までには治すから」
梓「そうですか……お大事にです」
唯「じゃね、あずにゃん……」フラフラ
梓「あ……あの、唯先輩」
唯「なぁに? あずにゃん」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:00:00.22 ID:K6tYb50/O
梓「やっぱり送っていきますよ。唯先輩、そんなふらふらじゃ事故に遭いそうです」
唯「心配し過ぎだよーあずにゃん」
梓「唯先輩がそれぐらい危なっかしいのは事実ですけど」
唯「うぐっ! ま、まぁそこまで言うなら一緒に帰ってもいいかなぁ?」
梓「ふふ……それじゃあ私も掃除終わった所なんで、帰りましょうか」
カチャ パタン
唯(あずにゃん優しいなぁ……)フラフラ
梓「ほら唯先輩、危ないので手を繋ぎますよ」スッ
唯「ほいほーい」ニギッ
テクテク テクテク
梓「歩きながら寝ないでくださいね」
唯「いくら私でもそれはありえないよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:04:13.59 ID:K6tYb50/O
テクテク テクテク
唯「ねぇ、あずにゃん」
梓「はい?」
唯「あずにゃんはさ、2回だけ時間を移動できるとしたら……どうする?」
梓「タイムスリップですか?」
唯「違うよ。自分の意図した時間に移動できるから、タイムリープ」
梓「あ、そうですね。そしたら私は……」
梓「きょ、恐竜時代とか行ってみたいです」
唯「……くすっ」
梓「笑わないでくださいっ!」
唯「あずにゃん可愛いのう……でへへ」ナデナデ
梓「やめてくださいよ、こんな道の真ん中で……」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:08:26.37 ID:K6tYb50/O
唯「よーしよーし……」ワシャワシャ
梓「もう……聞いてるんですか、唯先輩?」
唯「これがもうほんと、ひとつも聞いてないんだな」
梓「はぁ……ダメな先輩」
唯「あずにゃんが完全に見下した目をしてる……」
梓「いいから行きますよ、唯せんぱ……」ハッ
梓「先輩っ!」ドンッ
唯「うわっ! 何、あずにゃ……」
唯「あ……」
唯「え……あず、にゃん? どこ行ったの?」
唯(地面が赤い。何、怖いよ……)
唯「あずにゃーん? 返事してよ……」
唯(このべしゃべしゃの車……邪魔だよぅ)ググッ
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:12:18.08 ID:K6tYb50/O
唯(……動かせないか)
唯「……」
ガヤガヤ…
唯(あ。人が集まってきた)
唯(みんなで車をどかしてくれてる。私もやらなきゃ……)
唯「う……ン」ググッ
ニチャ
唯(動いた……けど)
唯(あずにゃんはどこなの?)
ズルッ
唯(……これ?)
唯(……まさか)
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:16:35.26 ID:K6tYb50/O
唯(でも、血でべとべとになっても綺麗な髪とか)
唯(小さな体とか、ひんやりしたほっぺとか)
唯(やっぱりあずにゃん?)
唯「あずにゃん、あずにゃーん?」パシャパシャ
唯「返事してよー。……ねぇっ!」
唯「何か喋ってよ……お返事じゃなくていいから……」
唯「あずにゃん、呼吸しないと死んじゃうよ……?」
唯「やだよ、あずにゃん……無視しないで」
唯「だらしない先輩なことも、あずにゃんのロマンを笑ったことも謝るから」
唯「だからお願い……死なないでよぉ」
唯「……」
唯「……ダメ?」
唯「ん。じゃあ……やるしかないね」フワッ
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:20:10.07 ID:K6tYb50/O
――――
桜ケ丘高校 1階廊下
梓「……唯先輩? 大丈夫ですか?」ポン
唯「あずにゃん……」
唯「……」ギュッ
梓「わっ……どうしたんですか急に……」
唯「……なんでもないよ。ちょっとね」
唯(本人には言えないよね、あずにゃんが車につぶされて死んじゃってたなんて)
梓「もう、こんな所で……離れて下さいよ」グイッ
唯「ご、ごめんね……」
梓「いえ、いいんですけど。それより唯先輩、もう帰られるんですか?」
唯「うん。調子悪いから……ばいばい、あずにゃん」
梓「そうですか……お大事に」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:24:25.21 ID:K6tYb50/O
唯(さて……帰ろう)
梓「あのっ、唯先輩!」
唯「うん?」
梓「やっぱり私も一緒に帰りますよ。体調悪いんですから、一人じゃ危ないです」
唯「だめだめ。あずにゃんは練習してなきゃ!」
梓「ですけど……」
唯「ん……あれー? あずにゃん、もしかして部活サボろうとしてる?」
梓「なっ! そんなことないです!」
梓「ああもう……分かりましたよ、一人で帰ってくださいです!」ダダッ
唯「あ……」
唯(怒らせちゃったかな)
唯(でもあずにゃん、私と一緒に帰ったら死んじゃうんだもん。しょうがないよね)
唯(背に腹は代えられないってやつだよ)
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:29:44.05 ID:K6tYb50/O
テクテク
唯(……)
唯(あずにゃん、生きてたね)
唯(……そういえば、腕のアザは)クイッ
唯(01になってる。やっぱり残りの回数を表してるんだね)
唯(でも……私の力であずにゃんの命を助けられたんだ)
唯(……最後の一回、大事にしなきゃ)フンス
唯(私は何されてもいい。みんなを助けるんだ)
テクテク
唯(……このへんであずにゃんが事故に遭ったんだよね)
唯(このお店に車が突っ込んで、壁との間であずにゃんのお腹が潰れちゃったんだ)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:33:49.21 ID:K6tYb50/O
唯(私もそろそろ行かないと、同じ目に遭っちゃうかもね)
唯(……想像したくないな、それは)
唯(よし、行こう……)スック
ガタンッ
唯「えっ?」クルッ
唯(車……さっきの車がこっちに来てる)
唯(なんで、こんなに早く……)
唯(私も死ぬの? あずにゃんみたく?)
唯(まだりっちゃんにツッコミあげてないのに!)
唯「嫌あああぁぁっ!!」ダダッ
唯(……)
唯(……痛い)ガクッ
唯「うぐ、えおっ」ゴボッ
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:37:26.19 ID:K6tYb50/O
――――
一週間後
唯「……う」パチッ
唯(私、死んだはずじゃ)
唯(……病院?)
唯(なんか体がうまく動かない……)
梓「すー、すー……」
唯(……ああ、あずにゃんが乗っかってるからか)
唯(私、助かったんだ。事故には遭ったけど……生きてるんだ)
唯(……良かった)
唯「あずにゃん、あずにゃん」
梓「ん……あ?」ムクッ
唯「えへへ……おはよう」ニコッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:42:04.99 ID:K6tYb50/O
梓「唯……先輩」
唯「よいしょ。いつつ……よしよし、看病ありがとうね」ナデナデ
梓「ゆいせんぱぁい!」ヒシッ
梓「バカぁ……目を覚ますのが遅すぎです!」
唯「ごめんね、あずにゃん……心配かけちゃって」ギュ
唯「ん、あれ?」クイッ クイッ
唯「あずにゃん……私の左手は……?」
唯「ねぇ、あずにゃん?」
梓「ごめんなさい唯先輩。ごめんなさい……」
唯「答えてよ、あずにゃん」
唯「私の左手……付け根からみんな、どこ行っちゃったの……?」
梓「ごめんなさい、ごめんなさい……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:46:08.91 ID:K6tYb50/O
唯「……」サワッ
唯「……足も」
梓「……」ピク
唯「ごめん、あずにゃん。今日はもう帰ってくれない?」
梓「一人にはしません」
唯「帰ってよ。お願いだから……」
唯「こんな姿……見られたくないの」
梓「……分かりました。外に出ています」
梓「でも、憂と先輩たちにだけは……唯先輩が目を覚ましたことを伝えますからね」
唯「良いよ……けど、明日までは来ないように言って。でないとみんなのことも傷つけちゃうから」
唯「明日になったら、元に戻ってるから……お願い」
梓「はい。……待っていますね」
ガララ パタン
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:50:28.42 ID:K6tYb50/O
唯「……」
バサッ
唯「半分だけしかない」
唯(……すごい事故だったんだね)
唯(生き残れただけでも、幸せなんだろうね)
唯(……でも、足はまだいいよ)
唯(この、なんにもない左手……)チラ
唯(これじゃあ……なにも出来ないよ)
唯(……私……ギター弾けなくなっちゃった)
唯(あずにゃんを抱きしめられなくなっちゃった……)
唯(ビーチバレーをトスできない。玉ねぎを切れない)
唯(私にできることは、ケーキを食べることと線香花火を持つことだけだね)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:54:10.59 ID:K6tYb50/O
唯(……跳ぼうかな)
唯(跳べば、私の体も元通りになるよね……)
唯(……でも、これから先みんなの命を脅かすようなことがあったら?)
唯(もう止めよう。私は生きてるんだ)
唯(これはみんなを助けるための力を……イタズラなんかに使っちゃった私への報い)
唯(ほんと馬鹿だな。憂の言うことをちゃんと聞いてたらよかった……)
唯(……)サスッ…
唯(私の左手……)
唯(ギー太を弾くために必要な腕……)
唯(……欲しい)
ガラララ
唯「!」
唯「……誰? あずにゃん?」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 18:58:01.83 ID:K6tYb50/O
さわ子「やっほ、唯ちゃん」ヒョコ
唯「さわちゃん先生……」
唯「あ、やだっ」バサッ
唯「……」
さわ子「そんなに慌てて隠さなくても知ってるわよ」パタン
さわ子「唯ちゃん、一週間も眠ってたんだから。私がひん剥いてないとでも思った?」
唯「……思わないけど」
さわ子「だったら良いじゃない。……唯ちゃん、ちょっと右手を見せて」
唯「……」スッ
さわ子「包帯ずらすわよ」グッ
唯「いたっ……」
さわ子「うーん、01……なんだ、まだ残ってるじゃない」
さわ子「……どうして戻らないのかしら?」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:02:01.41 ID:K6tYb50/O
唯「これは……私のために使う能力じゃないから」
さわ子「あら、昔はケーキを食べるためにさえタイムリープしていたのに?」
唯「今回あずにゃんの命を助けて、わかったんだ。そんなチンケな力じゃないって」
唯「だから私は、もう自分を助けないよ。大切なみんなのための力で……」
さわ子「……おかしな子」
さわ子「価値観の違いかしらね。命ってそんなに尊大なもの?」
唯「……そりゃそうだよ。命がなかったら何もできないもん」
さわ子「命なんて、ただの猶予期間じゃない。60年あったら無条件で消えるものよ?」
さわ子「はっきり言ってグダグダね。ロクなもんじゃないわ」
唯「さわちゃん先生は充実してないからだよ」
さわ子「してるわよ。でも80年も必要ない……要るのは輝いてる日々だけ」
さわ子「先達として言わせてもらうけど、楽しい時間なんてそう長くないわよ」
唯「……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:06:33.72 ID:K6tYb50/O
さわ子「ま、唯ちゃんの考え方しだいよね……」
さわ子「あなた達5人の人生60年分が、唯ちゃんの五体満足を支払う程の価値があるものか……」
さわ子「今の唯ちゃんに正常な判断が出来るかどうかは微妙だけど、しっかり考えてみなさい?」
唯「さわちゃん先生……」
唯「でも、もし私たちの輝いてる日々のうちに、誰かが死んじゃったら……?」
唯「私が時間を戻してまたギターを弾けるようになっても、もっかいあずにゃんが死んじゃったら、やっぱりそこは楽しい時間じゃなくなるよ」
さわ子「……そんなことは心配いらないわよ」
唯「なんで……」
さわ子「もう分かってるんじゃない? 唯ちゃん」
さわ子「これまでタイムリープに関して、私の言ったことは全て当たってきたわよね」
唯「……もしかして、さわちゃんって」
さわ子「ふふっ。見えるかしら、この肩の所……」グイッ
唯「28……だね」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:10:02.18 ID:K6tYb50/O
さわ子「年齢じゃないからね?」
唯「分かってるよ」
さわ子「そうね。とにかく安心して」
さわ子「唯ちゃんたちが高校にいる間に何かあったら、私が教師としての責務を果たすわ」
さわ子「だからね、唯ちゃん。あなたはもうその力を失くしなさい」
唯「……さわちゃん。でも良いの?」
さわ子「何がよ?」
唯「あんまり過去に跳ぶと老けるよ?」
さわ子「なめてもらっちゃ困るわね。未来のアンチエイジングはすごいのよ?」
唯「……」ジトッ
さわ子「い、いいじゃない! 残り回数にはちゃんと気を遣ってるんだから!」
唯「不安だなぁ……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:12:06.32 ID:K6tYb50/O
唯「でも……さわちゃん先生に任せるよ」
唯「私たちの顧問だもんね。それくらい働いてくれないと!」ムフン
さわ子「人づかいが荒いんだから、もう……いいから早く跳びなさい」
唯「うん。またねさわちゃん。ありがとう」
唯「……」フワッ
――――
唯(……)
唯(大人って、すごいな)
唯(私みたいな子供には、過ぎたおもちゃだったみたい)
唯(……00。さようならだね、タイムリープ)
唯(……)ストッ
唯の部屋
唯(さ、みんな忘れよう)
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:18:03.69 ID:K6tYb50/O
職員室
律「廃部……?」
さわ子「正確には、廃部寸前ね」
さわ子「昨年度までいた部員は全員卒業しちゃって、今月中に四人部員が集まらないと廃部になっちゃうの」
ガチャ
唯「せんせー」
さわ子「はい、今行くわね。……ごめんなさい。次、音楽の授業あるから」
さわ子「頑張ってね、軽音部」ニコ
律「……はあ」
コツコツ
唯「……」ボー
さわ子「それじゃ、行きましょ」
唯「あの……」
澪「ん?」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:25:18.81 ID:K6tYb50/O
唯「さっき話してた、軽音部って……」
律「お、軽音部に興味あるのか?」パアッ
唯「どんなのかなぁって」
律「よし、お姉さまがいろいろ教えてやろう!」
唯「ひいぃ~」ズルズル
さわ子「……」クスッ
コツ コツ…
さわ子「唯ちゃん、やっぱり職員室に呼ばれた理由忘れてたわね」
さわ子「ま、そんなもの無いに等しいのだけど」
さわ子「……フフ」
さわ子「また楽しい3年間を期待してるわよ」
おわり。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/23(木) 19:52:46.98 ID:K6tYb50/O [40/40]
ちなみに同時進行でやってるスレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285219065/l50
こっちの内容を何度か誤爆しました。わりい
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