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男「例えば仮にさ、僕の手首がいきなり無くなるとするじゃない?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:04:12.55 ID:+Bzj/Qpw0 [1/31]
男「例えば仮にさ、僕の手首がいきなり無くなるとするじゃない?」

女「うん」

男「そうするとさ、僕きっと思うんだ。嫌だ。困ったなって。あった時は色々出来たのに、もう何も出来ないんじゃないかって」

女「・・・うん」

男「でも手首はもう無くなってしまってる訳じゃない?もうどうしようもないじゃない?
  この先考えるべきなのは、手首が無くなった状態でどう過ごしていくかじゃない?
  もう本当にどうしようもなければ、その先を前向きに、建設的に考えるべきじゃない?」

女「・・・うん」

男「でも僕は思うんだ。嫌だ。困ったなって。あった時は色々出来たのに、もう何も出来ないんじゃないかって」

女「・・・そうだね」

男「でもおかしくない?もうどうしようもないんだよ?」

女「・・・」




女「・・・・」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:06:48.71 ID:+Bzj/Qpw0
男「じゃあ話を変えよう」

女「私、バカだから難しい話解らないよ」

男「でも聞くんだ。これから話すから」

女「う・・・・うん」

男「じゃあ話すよ?」

男「例えば仮にさ、明日死ぬとするじゃない?」

女「だ、・・・誰が?」

男「君が」

女「・・・・うん」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:09:53.67 ID:+Bzj/Qpw0
男「君はきっと色々考える」

女「・・・そうだね」

男「やり残したことはないか、とか、誰と、どう過ごそう、とか」

女「うん」

男「でも君は死んでしまう。これは確定」

女「う、・・・うん」

男「だけどやっぱり君は考えてしまう。やり残したことはないか、とか、誰と、どう過ごそう、とか」

女「そ、そうだね」

男「?」

女「・・・・?」

男「・・・おかしいと思わない?」

女「え?」



女「・・・・え?」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:12:29.92 ID:+Bzj/Qpw0
男「だってそうじゃない」

女「な、何が?」

男「君は死んでしまうんだよ?明日」

女「うん」

男「明日」

女「わ、わかってるってば」

男「ならなんでやり残したことはないか、なんて考えるの?」

女「そ、それは、死ぬ前に良い気持ちで死にたいかr」

男「でも死んだら何にもないでしょ?」

女「それは・・・・そうだけど・・・」

男「ねえ」

男「手首と似てない?」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:15:07.40 ID:+Bzj/Qpw0
女「ちょっとまって?」

男「話を変えるよ?」

女「まってってば」

男「例えば

女「まって!」

男「・・・・ごめん」

女「手首って、さっき話した事?」

男「そうだよ?」

女「おんなじなの?」

男「?」

女「だから、明日死ぬのと」

男「え?そうじゃない?」

女「よく」


女「・・・よくわかんないよ」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:18:26.46 ID:+Bzj/Qpw0
女「だって逆じゃない?」

男「?」

女「手首がなくなったら、前向きに考えなきゃなのに、後ろ向きになっちゃう」

男「うん」

女「明日死ぬなら、後ろ向きに考えずに、真っ先に何かしようとする」

男「うん」

女「逆じゃないの?」

男「うん」

女「え?」

男「話を戻すよ?」

女「・・・え?」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:21:16.92 ID:+Bzj/Qpw0
男「例えば仮に、の話をしてるよね?」

女「ねえ・・・」

男「してるよね?」

女「・・・うん」

男「してるよね?」

女「・・・してるってば」

男「今この瞬間、例えば仮に、って話をしてる」

女「いい加減にしてよ・・・」

男「?おかしいと思わないの?」

女「・・・・何が?」

男「たらればの話って事だよ?」

女「ねえ・・・だから何が?」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:23:23.77 ID:+Bzj/Qpw0
男「起こって無い事、起こるはずがない事の話をしてるってことだよ?」

女「それは分るよ」

男「じゃあなんで解らないの?」

女「何が・・・?」

男「たらればの

女「いい加減にしてよ!」

男「ねえ」



男「手首と一緒だってば」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:27:24.74 ID:+Bzj/Qpw0
女「・・・訳わからないよ」

男「どうしてかな?」

女「私が馬鹿だからよ・・・それでいいでしょもう」

男「どうしてかなー?」

女「あなた、変よ・・・もうやめよう?」

男「どうしてかなー?どうして解らないのかなー?」

女「ねえってば!」

男「どうしてかなどうしてかなどうしてかなどうしてかn」

女「・・・・」

男「ねえ!!!」

女「!」

男「・・・気にならないの?」


男「自分の解らない所」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:29:37.05 ID:+Bzj/Qpw0
女「・・・・」

女「・・・ねえ」

男「?」

女「ちゃんと・・・教えて?」

男「うーん」

女「ね、ねえ」

男「うーーーーーーーーん」

女「ねえ・・・お願い・・・お、教えてよ・・・」

男「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーmんn」

女「ねえ・・・おねがい・・・よお・・・」



女「おし、えて、よお・・・」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:31:52.03 ID:+Bzj/Qpw0
男「いいよ!!」

女「! あ、ありがと! あ、ありがとう!」

男「いいよ!!!」

女「ありがとお・・・・」

男「じゃあ、ちゃんと聞いてね?」

女「うん・・・うん・・・!」

男「一字一句、聞き逃したら駄目だよ?絶対だよ?」

女「絶対!守る!聞き逃さない!」

男「うん!!!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:36:58.05 ID:+Bzj/Qpw0
男「じゃあ話すね!」

女「・・・うん!!」

男「例えば仮にさ、k

女「え?」

男「ねえ!!!!!!!!」

女「!!!」

男「聞き逃しちゃ駄目だってば!!!!!!!!!」

女「あ、・・・ご、ごめ

男「ねえったら!!!!!!!!」

女「ど、怒鳴ら・・ない・・・で・・・」

男「駄目だってばあ!!!!!!!」

女「ご、ごめ・・・」


女「ごめ・・んな・・さい・・・ごめ・・・な・・さ」


女「ごめん、な、さい い」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:38:28.46 ID:+Bzj/Qpw0
男「いいよ!!!!!」

女「あ、あり・・」

男「次は駄目だからね!!!」

女「h・・は、1い」

男「うん!!!!」

男「じゃあ戻すね!?」

女「うん・・・!うん・・・・!」





男「例えば仮にさ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:42:38.51 ID:+Bzj/Qpw0
男「例えば仮に、君が死にたいと思ってしまったとする」

女「・・はい!」

男「そうだな、両親が死んだ事にしよう」

女「・・・や、やだ」

男「もっと!もっとにしよう!君の大切な友だちも親戚も死んだ!」

女「や、です・・やです・・」

男「君はお金もない!どうやって生活したらいいか!そもそももう生活なんて出来ない!!」

女「や、やだ、・・・よ」

男「そんな君の前に沢山の道具がある!!縄にナイフに薬に縄に!」

女「・・・あ、あ、」

男「もちろん!!!」


男「例えば!仮にだよ!!!!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:44:56.94 ID:+Bzj/Qpw0
男「君はきっとそれら道具の中からひとつ選び、ひとつ、選ぶんだ!!」

女「あ・・・」

男「君なら何を選ぶ!?」

女「く、くすr

男「当然縄だよね!!!!」

女「は、はい!」

男「縄を選ぶ!!」

男「縄を選ぶ!!!!!!!」



男「縄を選ぶんだ。きっとね」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:48:33.60 ID:+Bzj/Qpw0
女「縄・・・たぶん、なわ

男「絶対!!!」

女「は・・・い・・・」

男「それを君は木の枝にかける!!折れる事無い、丈夫な鉄だ!!」

女「木・・?鉄・・・?」

男「そう!!しっかり縛り、絶対ほどけない!!!」

女「ほどけない・・・」

男「そして君は縄のわっか、縄のわっかを首にかけるの!!とうとう!!」

女「ひ・・・」

男「絶対ほどけないんだ!!!!」


男「ぜっっったいに!!!!!」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:53:12.78 ID:+Bzj/Qpw0
女「や・・・」

男「絶対折れないし、絶対ほどけない!!」

女「や、や・・・だ・・」

男「何!?聞こえない!!そして君は!!!」

女「や・・・!だ、だ・・・・!!」

男「首を、体を!!!」

女「やだ!!!!やだ!!!!!」

男「聞こえないってば!!!!体が宙に浮く!!!」

女「やめて!!!!やめて!!!!!」

男「首が、体が!!!! 命が!!!!!」

女「いやあああああああああああああああああ!!!!!!」

男「なんで!!!!!!!!!!!」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:56:52.60 ID:+Bzj/Qpw0
女「あ・・・・」

女「ああ・・・・あ」

男「ねえ、」

女「・・・・あ・・・」

男「なんで?」


男「君は死ぬしかなかったんじゃないの?」

男「もう何にも頼れずに、希望も無くて」


男「君は死ぬしかなかったはずじゃないの?」

女「なん・・・・で?」

男「なのになんで?」

女「・・・なん・・・で?」

女「なん、で、」

男「そう」


男「例えば、そう。仮に」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 17:59:14.43 ID:+Bzj/Qpw0
男「一緒だって、わかった?」

女「・・・・・」

男「全ては、仮にだ。安心して」

女「あ、・・・ああ」

男「君は選んだんだ」

男「どうしようもなく、どうしようもなく、どうしようもなくなった時」


男「それでも嫌だ、って。選んだんだ」





男「選んだんだよ」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:01:27.60 ID:+Bzj/Qpw0
女「・・・・」

女「・・・・そっか」

男「うん」

女「嫌だったんだ」

男「・・・そうだね」

女「手首が無くなった時も、明日死ぬって決まった時も、死ぬしかなくなってしまった時も」

男「うん」

女「嫌、   だったんだ」


男「・・・・」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:04:06.99 ID:+Bzj/Qpw0
女「私、やっぱり馬鹿だったんだ」

男「だから、・・・昔から、そう言ってたじゃない」

女「私馬鹿だったけど」

男「うん」

女「ちょっと遅かったけど」

男「そんなことないよ」

女「わかって、」

男「・・・うん」


女「解って、よかったあ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:06:53.24 ID:+Bzj/Qpw0
女「ごめんね?」

男「なにも」

女「時間、かかっちゃってさ」

男「馬鹿なんだからさ、しょうがないよ」

女「ふふ・・・酷いな。でもごめん、ね?」

男「なにも、だよ」

女「・・・ねえ」

男「うん?」




女「ありがとう」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:09:08.40 ID:+Bzj/Qpw0
看護師「やっと、ですね」

男「はい」

看護師「・・・・やっと、でしたね」

男「・・・・はい」

看護師「○○さん、全部、

男「はい・・・」

看護師「戻って、これましたねえ」

男「・・・・・・・・はい」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:10:39.73 ID:+Bzj/Qpw0
男「全部って訳じゃ、ないかもです」

看護師「全部、ですよ」

男「そう、ですかね・・・」

看護師「あなたも、10年間」

男「?」

看護師「よく、頑張ったわね」

男「はは・・・・」


男「なにも、です」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:15:50.55 ID:+Bzj/Qpw0
男「気付いたのは、彼女です」

男「例えば仮に、死んでしまう絶望が、立て続けに起こったとして」

男「誰が、彼女の様な行動をして、彼女の様になってしまう事を、非難できたでしょう」

看護師「そうですね・・・」

男「でも彼女は、たまたま運がよく助かって、けれどたまたまそのせいで心を止めて、」

男「けれど彼女は、自分で気付いて、戻ってきたんです」

看護師「けれど彼女だけでは無理だったでしょう」

男「僕は」


男「僕は、当時何もしてあげられませんでしたから」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:19:25.38 ID:+Bzj/Qpw0
男「彼女がああなってから、やっと動き出せた」

男「あんなに好きだったって言うのに。ああなってから、やっとです」

男「仮に僕が何かしたとして、それは」

男「きっかけを、やっと作ってあげられただけです」

看護師「ふふ・・・あの時の泣き虫の子が」

看護師「・・・ねえ?」

男「?」




看護師「・・・ありがとう」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:28:27.55 ID:+Bzj/Qpw0
男「・・・・」

男「例えば仮に」

男「僕があの時に戻れたとしましょう」

看護師「・・・・ええ」

男「きっと僕は、それでも彼女に何も、出来なかったでしょう」

看護師「・・・そうかもしれませんね・・・」

男「けど、実際、例えば仮に、なんて、彼女のを取り戻すために使った方便で」

男「たらればの話なんて、ひとつも無いのでしょうね。きっと」

男「きっとあるのは、起こっていく、起こっていった事実だけだ」

看護師「・・・・」

看護師「・・・先生。着きました」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:31:56.88 ID:+Bzj/Qpw0
男「き、緊張するなあ」

看護師「もう彼女も、大丈夫ですよ。起こった事、現状を説明しましたそして」

看護師「そして彼女は、それをきちんと受け止められましたから」

男「・・・ありがとうございます」

看護師「彼女が、言ってましたよ、s

男「待った」

看護師「?」

男「その先は、」

男「・・・・僕が、自分で聞いてきます」

看護師「・・・・ふふ。」


看護師「そう、ね」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:35:57.39 ID:+Bzj/Qpw0
看護師「先生、さっきおっしゃいましたよね?」

男「?」

看護師「例えば仮になんて無くて、ただの方便だって」

男「・・・・そうですね」

看護師「けどきっと、それは同時に希望でもあると思います」

男「そう・・・かな?」

看護師「そうですとも」


看護師「だから、例えば仮に、この扉の向こうで」

看護師「彼女が笑っていたなら、それは幸せなことだと思いません?よっと」


男「!」

男「・・・・ええ」

男「・・・・それは、



男「それは、素敵ですね」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/18(土) 18:36:27.46 ID:+Bzj/Qpw0
異常



お終いです


ではさようなら

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