スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」
108 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:26:14.67 ID:gMIj/oI0 [1/7]
>>93-94です。
数レスお借りします。
とあるSSの導入だけ試験的に投下させてください。
>>93-94です。
数レスお借りします。
とあるSSの導入だけ試験的に投下させてください。
109 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:28:35.27 ID:gMIj/oI0 [2/7]
夏の夜風が、湿った音を響かせる。夜といっても、もうすぐ丑三つ時だ。
例年にも勝る猛暑が続くなか、もちろん今宵も違わず熱帯夜だった。
あるいは、その風は乾いていたのか。だからこんなにも、喉が渇くのか。
否、そう感じさせるのは少年の心境がゆえだった。
抱えたコンビニ袋がゆらゆらと揺れる。
(……こうやって、何回この道を行き来するんだろう)
うんざりだった。デジャヴならまだいい。
これは正真正銘、少年が歩む現実世界の出来事。
頬をつねっても、地団駄を踏んでも、どうやら錯覚でも幻覚でもないらしい。
どうにかして背筋を伸ばそうとするのだが、気がついたときにはいつもの猫背に戻っている。
そうして、密度の高い息をここぞとばかりに吐き出すのだ。
(――――僕が学園都市、なんて)
柄じゃなかったんだと思う。思わなきゃやってられない。
こうした自問自答さえも、やっぱり同じようにうんざりした。
変わらない景色、変わらない自分。食べるものまで変わらない。
(この年で、挫折か)
自分でも、年齢にそぐわない台詞だと感じながら、いつもの帰り道を歩いていた。
110 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:29:16.20 ID:gMIj/oI0 [3/7]
誰しも。
人は、誰しも夢を見る。
たとえば――――それは生まれ持った右手の力で、困難に立ち向かう正義感溢れるヒーロー。
あるいは――――過去の傷に苛まれながらも、それを乗り越えて正しき道を歩もうとするヒーロー。
そうでなければ――――能力がないにしても、技術と気概で胸を張り、大切なもののために命を賭けるヒーロー。
自分はそのいずれでもない。少年は確信していた。
どう考えても、自分にはできやしない。自分には生まれ持った才も、火事場の根性もない。
『彼ら』はあくまで妄想の中の英雄ではあったが、それでも羨望と嫉妬の念は隠せなかった。
(くそっ)
落ちていた缶を蹴ってみた。なんとなくだ。
少年のつま先にその胴体を打たれたコーヒー缶は、同じく乾いた音を立てて路地を跳ねる。
思ったより大きな音が出たが、別段誰に迷惑をかけたわけではない。
………からん、からんっ………。
何か寂しさを漂わせるその音が止んだ後、またしても静寂が夜を包んだ。
数メートル先に転がった缶を見て、少年は立ち止まる。
(へこめよ、缶のくせに……)
非力なわけではない。今のは単純に力を入れて蹴らなかったのだ。
スチール缶というのは思ったよりも頑丈にできている。
つま先で蹴ったくらいでは、もしかしたらへこまないことだってあるかもしれない。
そんな言い訳じみたことを頭で考えてるうち、思考回路はどんどん右下へと落ちていった。
――――自分は、持たざる者だ。
いつしかそれは少年の口癖になっていた。
持てる者は幸せだ。磨く努力ができるから。磨いたら輝くとわかっているから。
人生はマラソンだと誰かが言った。
多分当たってるんだと思う。致命的なのは、自分にはランニングシューズさえ買う権利がないこと。
はぁ。
残りの重たい空気を肺から練りだすと、いつもの暗い路地裏を家に向けて歩き出した。
………と、そのとき。
111 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:29:53.30 ID:gMIj/oI0 [4/7]
「超、危ないっ!」
雷のように鋭い声が、道の傍ら、ビルの間から響く。女性のそれだと分かる頃には、少年は並行感覚を失っていた。
次には夏の夜のアスファルトが、容赦なく少年の体に叩きつけられる。
交通事故に遭ったのかと思った。衝撃の後に認識したのは、深い黒。漆黒の闇。
救いがあったとしたら、自分は何やら暖かくて、いい匂いがする何かに抱かれていたことだった。
「絹旗っ! 何してんのっ!?」
今度はまた別の声。足音がしたかと思うと、自分の周りにあるいくつかの気配に少年の神経は注がれた。
ほとんどは女性だったが、闇に紛れて男の声も聞こえてくる。おそらく二~三人。多くても四人。
やがて少年がゆっくりと目を開けたその先には、『持てる者』が、いた。
自分を包む小さな女の子は、すでにこちらのことは見ていなかったが、
体はしっかりと密着していて、服装はウール地のワンピースを着ている。
……石鹸の匂いだ。少年はひそかに想った。
「すいません、超一般人が」
「そんなのに構ってる余裕はない訳よっ! 結局やつら、まだ追ってくるっての!」
「まずいわね、ここは一旦引くわよ。この追っ手は殺れたけど……。浜面がこっちに車を回してくるはず」
何者だろう。少年はまた、思った。
いやその前に――――ここはどこだろう?
自分はさっきまで、変化のない毎日、そして自分にうんざりしていたはず。それが何だ? この非日常は。
とたんに今歩いてきた道が、見知らぬ土地の見知らぬ場所に思えてくる。
「……逃げてください。今すぐに」
耳元で声がしたかと思うと、柔らかな感触を備えたその生き物は体を離れた。
次には唸るようなタイヤの音、猛スピードで道を駆けてくる車が視界にうつる。
ライトが夜の闇を切り裂き、轟音をあげて走り狂う車。
その姿はまるでライオンのように見えた。
――――アクションモノの映画を見ているような臨場感。
いや、実際に自分が今経験しているのだと気づくときには、言われたとおりに走り出していた。
112 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:30:39.99 ID:gMIj/oI0 [5/7]
少年は一瞬だけ振り向いた。
矢先、先ほどまで自分を抱えていた生き物が、車に乗り込む瞬間を目にする。
それだけなら何もなかった。おそらく。
ドアを開けて乗り込む際、その女性は自分と目が合ったのだ。確かに。
少年にはその瞳が、どうにも幻想的で、儚げに見えた。
「あ、あのっ」
それがどこから発せられた言葉かはわからなかった。
もちろんそれは少年の口から出たのだが、そういうことではなく、意思が形となって言葉に至るまでの過程の話だ。
混乱する頭を整理して、少年は叫ぶ。
「あ、ありがとうございましたっ!」
「………出してください」
その言葉と共に、車はやはり轟音を発してその場から走り去った。
哀愁に浸る時間もなく、少年は走り出す。
いつもと変わらない道を。
家までの、うんざりする道を。
――――はっ。はっ。
彼女から返事はなかった。意思の疎通も。
それでも、少年の心拍数が上がっているのは、運動不足だからだというだけでは片付けられそうにない。
少なくとも、この夏の間は。
――――絹旗、さん。
湿った風はいつしか止み、別の何かが静かに、産声をあげた。
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/09/07(火) 19:31:39.39 ID:gMIj/oI0 [6/7]
ってゆー絹旗のを書いてみたいんだな、うん。
失礼しました
夏の夜風が、湿った音を響かせる。夜といっても、もうすぐ丑三つ時だ。
例年にも勝る猛暑が続くなか、もちろん今宵も違わず熱帯夜だった。
あるいは、その風は乾いていたのか。だからこんなにも、喉が渇くのか。
否、そう感じさせるのは少年の心境がゆえだった。
抱えたコンビニ袋がゆらゆらと揺れる。
(……こうやって、何回この道を行き来するんだろう)
うんざりだった。デジャヴならまだいい。
これは正真正銘、少年が歩む現実世界の出来事。
頬をつねっても、地団駄を踏んでも、どうやら錯覚でも幻覚でもないらしい。
どうにかして背筋を伸ばそうとするのだが、気がついたときにはいつもの猫背に戻っている。
そうして、密度の高い息をここぞとばかりに吐き出すのだ。
(――――僕が学園都市、なんて)
柄じゃなかったんだと思う。思わなきゃやってられない。
こうした自問自答さえも、やっぱり同じようにうんざりした。
変わらない景色、変わらない自分。食べるものまで変わらない。
(この年で、挫折か)
自分でも、年齢にそぐわない台詞だと感じながら、いつもの帰り道を歩いていた。
110 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:29:16.20 ID:gMIj/oI0 [3/7]
誰しも。
人は、誰しも夢を見る。
たとえば――――それは生まれ持った右手の力で、困難に立ち向かう正義感溢れるヒーロー。
あるいは――――過去の傷に苛まれながらも、それを乗り越えて正しき道を歩もうとするヒーロー。
そうでなければ――――能力がないにしても、技術と気概で胸を張り、大切なもののために命を賭けるヒーロー。
自分はそのいずれでもない。少年は確信していた。
どう考えても、自分にはできやしない。自分には生まれ持った才も、火事場の根性もない。
『彼ら』はあくまで妄想の中の英雄ではあったが、それでも羨望と嫉妬の念は隠せなかった。
(くそっ)
落ちていた缶を蹴ってみた。なんとなくだ。
少年のつま先にその胴体を打たれたコーヒー缶は、同じく乾いた音を立てて路地を跳ねる。
思ったより大きな音が出たが、別段誰に迷惑をかけたわけではない。
………からん、からんっ………。
何か寂しさを漂わせるその音が止んだ後、またしても静寂が夜を包んだ。
数メートル先に転がった缶を見て、少年は立ち止まる。
(へこめよ、缶のくせに……)
非力なわけではない。今のは単純に力を入れて蹴らなかったのだ。
スチール缶というのは思ったよりも頑丈にできている。
つま先で蹴ったくらいでは、もしかしたらへこまないことだってあるかもしれない。
そんな言い訳じみたことを頭で考えてるうち、思考回路はどんどん右下へと落ちていった。
――――自分は、持たざる者だ。
いつしかそれは少年の口癖になっていた。
持てる者は幸せだ。磨く努力ができるから。磨いたら輝くとわかっているから。
人生はマラソンだと誰かが言った。
多分当たってるんだと思う。致命的なのは、自分にはランニングシューズさえ買う権利がないこと。
はぁ。
残りの重たい空気を肺から練りだすと、いつもの暗い路地裏を家に向けて歩き出した。
………と、そのとき。
111 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:29:53.30 ID:gMIj/oI0 [4/7]
「超、危ないっ!」
雷のように鋭い声が、道の傍ら、ビルの間から響く。女性のそれだと分かる頃には、少年は並行感覚を失っていた。
次には夏の夜のアスファルトが、容赦なく少年の体に叩きつけられる。
交通事故に遭ったのかと思った。衝撃の後に認識したのは、深い黒。漆黒の闇。
救いがあったとしたら、自分は何やら暖かくて、いい匂いがする何かに抱かれていたことだった。
「絹旗っ! 何してんのっ!?」
今度はまた別の声。足音がしたかと思うと、自分の周りにあるいくつかの気配に少年の神経は注がれた。
ほとんどは女性だったが、闇に紛れて男の声も聞こえてくる。おそらく二~三人。多くても四人。
やがて少年がゆっくりと目を開けたその先には、『持てる者』が、いた。
自分を包む小さな女の子は、すでにこちらのことは見ていなかったが、
体はしっかりと密着していて、服装はウール地のワンピースを着ている。
……石鹸の匂いだ。少年はひそかに想った。
「すいません、超一般人が」
「そんなのに構ってる余裕はない訳よっ! 結局やつら、まだ追ってくるっての!」
「まずいわね、ここは一旦引くわよ。この追っ手は殺れたけど……。浜面がこっちに車を回してくるはず」
何者だろう。少年はまた、思った。
いやその前に――――ここはどこだろう?
自分はさっきまで、変化のない毎日、そして自分にうんざりしていたはず。それが何だ? この非日常は。
とたんに今歩いてきた道が、見知らぬ土地の見知らぬ場所に思えてくる。
「……逃げてください。今すぐに」
耳元で声がしたかと思うと、柔らかな感触を備えたその生き物は体を離れた。
次には唸るようなタイヤの音、猛スピードで道を駆けてくる車が視界にうつる。
ライトが夜の闇を切り裂き、轟音をあげて走り狂う車。
その姿はまるでライオンのように見えた。
――――アクションモノの映画を見ているような臨場感。
いや、実際に自分が今経験しているのだと気づくときには、言われたとおりに走り出していた。
112 名前:少年「これで、さよならだね」絹旗「……大好きですよ。超、大好きです」[saga] 投稿日:2010/09/07(火) 19:30:39.99 ID:gMIj/oI0 [5/7]
少年は一瞬だけ振り向いた。
矢先、先ほどまで自分を抱えていた生き物が、車に乗り込む瞬間を目にする。
それだけなら何もなかった。おそらく。
ドアを開けて乗り込む際、その女性は自分と目が合ったのだ。確かに。
少年にはその瞳が、どうにも幻想的で、儚げに見えた。
「あ、あのっ」
それがどこから発せられた言葉かはわからなかった。
もちろんそれは少年の口から出たのだが、そういうことではなく、意思が形となって言葉に至るまでの過程の話だ。
混乱する頭を整理して、少年は叫ぶ。
「あ、ありがとうございましたっ!」
「………出してください」
その言葉と共に、車はやはり轟音を発してその場から走り去った。
哀愁に浸る時間もなく、少年は走り出す。
いつもと変わらない道を。
家までの、うんざりする道を。
――――はっ。はっ。
彼女から返事はなかった。意思の疎通も。
それでも、少年の心拍数が上がっているのは、運動不足だからだというだけでは片付けられそうにない。
少なくとも、この夏の間は。
――――絹旗、さん。
湿った風はいつしか止み、別の何かが静かに、産声をあげた。
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/09/07(火) 19:31:39.39 ID:gMIj/oI0 [6/7]
ってゆー絹旗のを書いてみたいんだな、うん。
失礼しました
Tag : とあるSS総合スレ
<<フィアンマ「それ何だ?」 ヴェント「へ?」 | ホーム | 対アウレオルス聖人>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |