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和「そうなんだ。じゃあ、私鬼ヶ島行くね」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:11:10.38 ID:0AxRAezQ0 [1/34]

遠い昔、遥か銀河の彼方――――

あるところに紬ちゃんと梓ちゃんがいました
2人は小さな家の中、仲睦まじく暮らしていました

梓「私たちおじいさんとおばあさんみたいですよ」

紬「へぇー」

梓「私最年少キャラなのにどうして最年長キャラを振られたんですかね」

紬「行動が大人っぽいからじゃないかしら? 軽音部の中では真面目だし」

梓「なるほど」

紬「そういえば、まだ仲睦まじい老夫婦らしい会話ができてないわ」

梓「ホントですね。じゃあ……」

梓「ムギ先輩大好き!」

紬「まあ素敵☆」

2人は極めて仲睦まじく暮らしていました

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:14:07.90 ID:0AxRAezQ0
そんなある日
紬ちゃんは山へ芝刈りに、梓ちゃんは川へ洗濯に行きました

ジャブジャブ

梓「情熱のぉ、赤いばらぁ〜」

梓「そしてぇ、ジェラシィ〜」

ドンブラコ

梓「ん?」

ドンブラコ

梓「あれ? 川上から……」

ドンブラコ ドンブラコ

梓「……桃?」



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:17:15.66 ID:0AxRAezQ0
梓「うーん……」

梓「ムギ先輩甘いもの好きだし、持って帰ったらいいお土産になるかも」

チャプン

梓「わっ、冷た! 秋の川の水冷たっ!」

梓「えいっ……たぁっ……」

ザブン!

梓「わっ、深い! 川の真ん中らへんすごい深い!」

ザブザブ

梓「……ほっ……とりゃっ!」

ザブザブ

梓「……取った!」キャッチ!


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:19:35.82 ID:0AxRAezQ0
家に帰った梓ちゃん
大きな桃を目の前にして正座で紬ちゃんを待っています

梓「ムギ先輩遅いなぁ……」

梓「はぁ……」

ガララッ

梓「!」

紬「ただいまー。今日も大変だったわ」

梓「ムギ先輩、おかえりなさい!」

紬「? どうしたの梓ちゃん、なんか嬉しそ……あら、この桃は?」

梓「えへへ。実はかくかくしかじかで―――」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:22:49.84 ID:0AxRAezQ0
紬「川で桃を拾ってくるなんて梓ちゃんは偉いわね」ナデナデ

梓「えへへ」ニマニマ

紬「じゃあさっそく桃を切って2人で食べましょ」

梓「はい!」

紬「いくわよー……えいっ」

―――スパッ!

幼女「あっ、どうもこんにちは」バーン

紬「」

梓「」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:24:59.07 ID:0AxRAezQ0
かくして紬ちゃんと梓ちゃんは小さな女の子を授かったのでした
長らく子宝に恵まれなかった2人はたいそう喜んだそうです

そして

梓「あ」

紬「どうしたの?」

梓「この子の名前、どうしますか?」

幼女「確かに名無しの権兵衛のままじゃあんまりね」

梓(なんか他人事だな)

紬「そうねぇ……」

紬「うーん……。桃から生まれたから和ちゃんなんてどうかしら」

梓「おぉー」

幼和「いいわね、和」

女の子は和と名付けられました

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:27:16.12 ID:0AxRAezQ0
2人は幼い和ちゃんに目一杯の愛情を注いであげました

幼和「お腹空いた」

紬「とりあえずウィダーインゼリーでつないでて♪」

梓「すぐにフランス料理のフルコースを取り寄せますからね!」ピポパ

幼和「本が読みたい」

紬「国会図書館を貸切るよう手配したわ」

梓「私はipad買ってきました!」

というよりむしろ甘やかしました


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:30:17.19 ID:0AxRAezQ0
和ちゃんは不思議な子でした
ものの3ヶ月程度でロリ時代を抜け立派な娘になったのです

かくのごとく甘やかされていましたがとてもしっかりした子に育ちました
ついでに眼鏡もかけました

そんなわけである日の夜中

和「……」カタカタ

和「……」カタカタ

和「ふぅ。株って意外と簡単なのね」

和「……って、もうこんな時間」

和「トイレ行って寝よう」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:33:11.27 ID:0AxRAezQ0
ジャー

和「さ、あとは寝るだけね」

――ギシギシ

和「!」

和「い、今なにか物音が……」

ガヤガタ

和「やっぱり!」

和「……ひょっとして」

ギシギシガタガタ

和「……泥棒!?」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:36:12.42 ID:0AxRAezQ0
ギシギシアンアン

和「……怪しい物音はこの部屋からね」

和「ふすまが空いてる……」

和「……ジー 」
 

梓「あっ……そ、そこは汚いですよぉ!」

紬「ふふふ。梓ちゃんに汚いところなんてあるわけないじゃない♪」
 

和「……」

和「……なんだレズセックスじゃない。心配して損したわ」

和ちゃんはクールでした

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:39:09.91 ID:0AxRAezQ0
和「はぁ……。お盛んね」

和「……あら?」

梓「ギシギギシ 」

紬「アンアアン」

和「?」

和「なんか……布団がボロっちいわ」

和「私の部屋には高級ベットがおいてあるのに……」

和「……」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:42:49.84 ID:0AxRAezQ0
ガララッ

和「プロレスごっこに熱中してるところ悪いけどちょっとお邪魔するわね」

紬「ひゃっ!?」

梓「にゃっ!?」

和「ちょっと2人に聞きたいことがあるんだけど」

紬「な、なにっ♪……かしら?」ギシギシ

梓「なんでも答えますよんっ♪」アンアン

和「とりあえず腰を振るのを止めて」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:45:28.16 ID:0AxRAezQ0
和「あのね」

和「私の部屋に比べてこっちの部屋がボロ過ぎると思うの」

紬「!」

梓「そ、そんなことありませんよ! 気のせいですよ、気のせい」

和「じゃあムギ、その藁の束はなに?」

紬「えっ? あっ……そ、その」

和「……やっぱり」

和「私がふかふかベットで寝てる隣で2人は藁の上で寝てたのね」

紬「ち、違うの和ちゃん!」

梓「そうですよ! こ、これは最近流行りのハイジごっこです!」

和「苦しい言い訳はいいから」

梓「あっ、いや……」

和「それで、これはいったいどういうことなの?」

紬「……そ、それは―――

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:49:03.47 ID:0AxRAezQ0
紬ちゃんの説明は要点残してはしょっちゃうと一言でまとまってしまいました

鬼に財産をとられた
 
この地域は基本的に富裕層の居住区でしたが
2ヶ月ほど前、鬼ヶ島から鬼がやって来て人々から金品をせしめあげたのです
そのため 、この地域は貧民街と化し、もれなく紬梓家の家計も火の車となりました

しかし、2人には幼い和ちゃんがいました

和ちゃんには辛い思いをしてほしくないという1つの願いのために
紬ちゃんと梓ちゃんは自らの生活を切り詰めることにしたのです

倹約に倹約を重ね、和ちゃんに贅沢をさせてあげました
影で自分たちが極貧の生活を送っていることを気取られることのないように
 
 
紬ちゃんの説明を聞いて、和ちゃんは黙っていました

肩を震わせることも
唇を噛み締めることも
手のひらを握りしめることもせず
ただただ黙っていました

そんな風に一切の感情を見せることなくたった一言だけを言いました
 
 
    「そうなんだ。じゃあ私、鬼ヶ島行くね」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:52:17.08 ID:0AxRAezQ0
三日後
 
 
 
紬「和ちゃん、本当に行っちゃうの?」

和「ええ」

梓「……グスッ」

和「泣かないで、梓ちゃん。私は必ず帰って来るから」

梓「……は、はい!」ポロポロ

紬「これ道中お腹が空かないように。マドレーヌと紅茶よ」

紬「それとこれも持って行って」

和「これは……」

紬「名刀"笹錦"。なんとあのドラゴンボールで使われたという名刀中の名刀よ」

和「ありがとう、ムギ」

紬「気を付けてね」

和「うん。それじゃあ……いってきます!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:55:47.72 ID:0AxRAezQ0
テクテク

和「油断したわ」

和「1人旅って結構暇なのね」

和「……そもそも私1人だけで鬼退治っていうのもなかなか無謀よね」

和「たった1人の最終決戦ってのも少年ジャンプ的で悪くはないけど、私きららの看板娘だし……」

和「……」

和「はぁ……」

和「どこかその辺にお供になってくれそうな黒髪ロングの女の子が転がってないかしら」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 17:58:39.38 ID:0AxRAezQ0
グー

澪「はぁ……」

澪「お腹空いたなぁ……」

澪「鬼が来てからろくな物食べてないもんな……」

澪「昨日はそうめん、一昨日がもずく、その前は……ビックマックか」

澪「一昨々日は贅沢だったな…… 」

澪「はぁ……」

澪「どっかその辺にマドレーヌとか恵んでくれそうな生徒会長っぽい女の子転がってないかなぁ」

澪「……」

澪「?」

澪「……」

澪「!」

澪「こ、この匂いは……」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:01:05.52 ID:0AxRAezQ0
和「はぁ……」

和「……」

ガサガサッ!

和「誰!」

澪「わん」バーン

和「…」

澪「わんわん」

和「こ、こんにちは」

澪「こんにちわん」

和「……」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:03:43.45 ID:0AxRAezQ0
和「どうかしたの?」

澪「わん」

和「何か用?」

澪「わんわん」

和「八丈島の?」

澪「きょん」

和「……」

澪「わん」

和「……犬?」

澪「あ、うん。そうなんだよ」

和「あ、しゃべった」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:14:41.60 ID:0AxRAezQ0
和「犬さん、ここでは仮に澪とでもしときましょうか」

澪「…」

和「澪、なんの用?」

澪「……コホン」

和「?」

澪「せーのっ」

〜♪
和ちゃん 和ちゃん
お腰に付けたマドレーヌ
ひとつ私にくださいな
〜♪

和「……よく私がマドレーヌ持ってるなんて見抜けたわね」

澪「そりゃまあ犬だから。鼻が利くんだよ」

和「なるほど」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:17:41.49 ID:0AxRAezQ0
澪「はい次、和の番ね」

和「あ、うん」

和「……コホン」

〜♪
あげましょう あげましょう
これから鬼の征伐に
ついて行くならあげましょう
〜♪

澪「うん、いいよ。ついて行くからマドレーヌちょうだい」

和「ええ、よろしく」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:20:22.51 ID:0AxRAezQ0
テクテク

和「お手」

澪「それオプションだから。マドレーヌ追加ね」モグモグ

和「えー」

ガサガサッ

和澪「!」

律「うきーっ!」

あっ! やせいの りつが あらわれた! ▼

澪「あれは……」

和「……猿?」

律「うきっ」

りつは なかまに なりたそうなめで こっちを みている! ▼

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:23:10.73 ID:0AxRAezQ0
律「うきっ!」

 
りっちゃん
ひとがたポケモソ
たかさ 1.5m おもさ ないしょ☆
けいおんぶの げんきっこ
げんきが ありあまっているので ドラムは たいてい はしりぎみ
トレードマークの カチューシャを こよなく あいしている

 
和「へぇー」

のどかは どうする? ▼
>こうげき どうぐ
 ひかえ   にげる

和「どうする?」

澪「攻撃でいいんじゃない?」

和「そうね」

律「ちょ、ちょっとちょっとお!」

りつは さわいでいる! ▼

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:25:39.98 ID:0AxRAezQ0
和「どうかしたの?」

律「和さっき澪にお菓子あげてたじゃん。私にもマドレーヌちょうだい!」

和「いや」

律「私も鬼ヶ島行くから!」

和「別にいいわ」

律「私は強いぞお。アルミ缶くらいなら片手でかるーく握りつぶしちゃうんだ!」

和「……」

律「あ。あと一昨年近所の相撲大会で堂々の8位入賞したりしたし!」

和「行こう、澪。お猿役の代わりならいくらでもいるわ、2年生のあの子とか」

澪「ああ、純ちゃんね」

律「うお―――い!!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:28:49.18 ID:0AxRAezQ0
和「なに?」

律「いやいや私の扱いあんまりじゃないか!?」

和「妥当よ」

澪「妥当だな」

律「くううううう!!」

律「私も連れてってよー! もうマドレーヌなんかいらないからさー!」

和「そんなに行きたいの?」

律「あったり前だ! 私に息づく正義の心が鬼を倒せと叫んでいるからな!」

和「本音は?」

律「出番をくださいお願いします」

和「……いいわ。仲間に入れてあげる」

律「やっほぅ!」

りっちゃんゲットだぜ!

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:31:09.11 ID:0AxRAezQ0
テクテク

和「犬」

澪「わん」

和「猿」

律「うきっ」

和「次は雉かしらね」

律「ふーん」

ガサガサッ

澪「お、噂をすれば……」

唯「にゃーん」バーン

和「えっ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:34:04.60 ID:0AxRAezQ0
和「えっ? 雉じゃないの?」

唯「猫だよー」

和「でも次は雉って…

唯「にゃあ」

和「…」

唯「にゃー」

和「……雉ってけーんって鳴くのよ」

唯「へぇー」

和「唯は雉よ」

唯「ええっ!?」

和「雉」

唯「にゃーん」

和「き、じ」

唯「……けーん」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:38:34.93 ID:0AxRAezQ0
和「それで、唯はなんの用なの?」

唯「うん。……コホン 」

〜♪
和ちゃん 和ちゃん
お腰に付けたマドレーヌ
ひとつ私にくださいな
〜♪

唯「というわけです!」モグモグ

和「……今食べてるマドレーヌはどこから?」

唯「和ちゃんのリュックに入ってたやつだよー」モグモグ

和「……」

 
1つのマドレーヌと3つのげんこつをもらって、唯ちゃんが仲間に加わりました

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:40:10.96 ID:0AxRAezQ0
テクテク

唯「ねえ、和ちゃん」

和「なに?」

唯「鬼ヶ島ってどこにあるの?」

和「Googleマップによれば」

和「この先5kmくらい進んだところにある浜辺の沖に浮かんでるそうよ」

唯「ぐーぐる?」

和「Google」

唯「ぐーるぐる?」

和「Google」

唯「魔法陣?」

和「Google」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:42:46.77 ID:0AxRAezQ0
テクテク

律「あと5kmだってさ」

澪「ふーん」

律「って徒歩には遠すぎるだろ!」

澪「いやいや、マドレーヌもらったんだからちゃんとお供しなくちゃ」

律「……忠実だなぁ。さすが犬」

澪「ほっとけ」

律「あ。犬といえば」

澪「ん?」

律「犬猿の仲って言うよな」

澪「それがどーした」

律「でも喧嘩するほど仲がいいんだよな」

澪「うん」

律「もしかして私たちすっごい仲良しさん?」

澪「……さーてね」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:44:13.82 ID:0AxRAezQ0
ザザーン

唯「浜辺だ!」

澪「やっと着いたな」

律「浜辺に来たからには!」

唯「泳ごう、りっちゃん!」

律唯「やっほ――っ!」

和「行かせない」ガシッ

律唯「ほああー……」ズルズル

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:46:21.19 ID:0AxRAezQ0
和「まったく…」

和「私たちがここに何をしに来たのかわかってるの?」

唯律「鬼退治!」

澪「元気はいいんだな」

和「じゃあ遊んでる暇なんてないでしょ」

律「でもさー」

和「なに?」

律「鬼ヶ島までどうやって行くんだよ。さすがに海の向こうまでは泳げないよ」

和「あ」

澪「えっ、まさかの無策?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:48:59.02 ID:0AxRAezQ0
唯「えー! じゃあどうやって鬼ヶ島行くつもりだったの?」

和「あ、いや。浜辺に来れば亀かなにかがいじめられてるものだとばかり……」

澪「おい」

律「唯ー、雉なら私たちを乗せて飛んでったりできないのか?」

唯「無理だよー。だって私、ねk

和「……」

唯「……き、雉の私でも飛んでくにはちょっと重量オーバーかなー」

唯「あ。逆に澪ちゃんならみんなを引っ張っていけるんじゃない? 犬掻きで」

澪「む、無理無理。海で泳いだらお肌がべたついちゃうじゃないか」

唯「えー」

律「どうするんだよ、和」

和「……ちょっと待ってて。すぐ戻るから」

唯律澪「?」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/07(火) 18:51:04.57 ID:0AxRAezQ0
和「お待たせ」

唯「なにしてたの?」

和「これよ」ジャーン

律「電話? 誰に?」

和「ムギに」

律「ムギに?」

バババババババ

澪「?」

唯「なんの音?」

ババババババババババババババ

律「わっ! うるさっ!」

和「ふふっ」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 18:53:05.53 ID:0AxRAezQ0
ババババババババババババババ

律「お、おいあれを見ろ!」

澪「鳥だ!」

律「猫だ!」

唯「たこ焼きだ!」

和「どう見てもヘリコプターじゃない」

ヒューン

唯「あ、なんか落としたよ」

――――バシャーン!!


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 18:55:17.97 ID:0AxRAezQ0
律「クルーザーだ!」

澪「なんだってこんなものが空から……」

和「私がムギに頼んだのよ。海を渡りたいわって」

律「なんですと!?」

唯「さっすがムギちゃん!」

澪「……」

澪(……あれ?)

澪(ムギって鬼に財産むしられて貧しい暮らしを強いられてたんだよな……)

澪(貧乏人がクルーザーを空輸?)

澪(……あれ?)

気にしてはいけない
紬ちゃんの考える貧乏とはスネ夫んちくらいの生活のことなのだ


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 18:57:09.22 ID:0AxRAezQ0
そして鬼ヶ島
 
 
 
律「みなさーん」

律「えー。こちらが鬼さん討伐ツアーの目的地、鬼ヶ島でございまーす」

唯「バスガイドさんだ!」

律「右手に見えますのが鬼ヶ岳。あそこが鬼たちがふんぞり返ってる根城でーす」

澪「そうだったんだ」

律「左手に見えますのが鬼。おそらく親分だと思われまーす」

和「えっ」

さわ子「オオオオオオオオオオ!!!」

和唯律澪「わああああああああ!!!」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 18:59:10.99 ID:0AxRAezQ0
澪「お、鬼だあああ!!」

さわ子「ぶるらああああああああああ!!!」ガオー!

澪「いやあああああああああ!!」

律「ってビビってる場合じゃないぞ!」

和「そ、そうね。私たちはこの鬼を退治しに来たんだから!」

和「覚悟しなさい、親分鬼! 今からこの名刀"笹錦"のサビにしてあげるわ」

唯「おぉー! 和ちゃんかっこいい!!」

和「カイチョースラ――ッシュ!!」ブンッ

さわ子「ふんっ」

パキーン

和「さ、笹錦が……折れた!?」

唯律「弱っ!?」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:03:07.20 ID:0AxRAezQ0
さわ子「オオオオオオオオ!!」

澪「きゃあああああ!!」

唯「の、和ちゃん、3本目はないの?」

和「……ないわ。残念だけど」

律「じゃどうすんだよ!」

和「……」

唯「?」

和「……パス1」

唯律「」


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:05:13.84 ID:0AxRAezQ0
さわ子「あっはっはっ! 早くも万策尽きたようね!」

和「くっ……」

さわ子「だいたい私に逆らおうなんてちゃんちゃらおかしいのよ!」

さわ子「さあ、これでトドメ

律「さ、さわちゃん!!」

さわ子「……なによ。今私が最高にかっこいいシーンなのに」

律「あ、あのさー」

律「い、今おいしい紅茶が水筒に入ってるんだけどさ、飲みたくない?」

さわ子「紅茶?」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:07:08.39 ID:0AxRAezQ0
律「ムギ特製の高級紅茶だよ! ほっぺが落ちるって評判なんだ!」

さわ子「紅茶ねぇ……」

唯「そ、そうそう! 今ならお茶請けにマドレーヌも付いてくるよ! お得だよ!」

さわ子「うーん……。でも今私ミルクティーが飲みたい気分なのよねぇ」

唯「え」

律「み、澪。出番だぞ! 乳出せ、乳!」

澪「で、出るわけないだろぉ……」

和(恐怖のせいで突っ込みに覇気がないわ。18点ね)アチャー


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:11:12.56 ID:0AxRAezQ0
さわ子「なに? ミルクティーはないの?」

唯「うぅっ……」

さわ子「なら仕方ないわね。死になさい」

澪「ひ、ひいっ! 死にたくないよお!」

さわ子「泣きわめいても無駄よ。頼りの和ちゃんだってぐぅの音も出ないほど完敗だったじゃないの」

和「ぐぅ」

さわ子「黙らっしゃい」

さわ子「ふっふっふっ。この金棒を使うのも久しぶりね」ブルンブルン

澪「ひいっ!」

さわ子「覚悟しなさい。あっという間にこの金棒の染みにしてあげるわ」

律「ちくしょう……!」

さわ子「次の一撃で今度こそあなたたちは……」

さわ子「木っ端微塵

唯「……私、こんな年増に殺されるなんて嫌だよお!」

さわ子「は?」ピタッ


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:12:59.69 ID:0AxRAezQ0
さわ子「ゆ、唯ちゃん? 今なんて言っ

律「……そうだよ。鬼の女の子って若くてかわいいのが普通じゃないのか……?」

さわ子「……」ビキッ

澪「……わ、私もどうせならラムちゃんとか眠鬼みたいなかわいいやつが良かった……」ブルブル

さわ子「……」ガタガタ

和「確かにこの鬼がビキニ姿で『ダーリン愛してるっちゃ』とか」

和「下半身裸で『私のパンツを知らないか?』とか言い出すかと思うとぞっとするわね」

さわ子「……ガフッ」

和「?」

―――バタリ

さわ子「」

和唯律澪「……あれっ?」

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:16:05.07 ID:0AxRAezQ0
テクテク

律「ようやく一件落着だなー」

唯「ねー」

律「早くみんなの喜ぶ顔がみたいなー」

唯「ねー」

トコトコ

澪「なあ、和」

和「なに?」

澪「ごめんな」

和「えっ?」

――――グサッ!

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:17:06.29 ID:0AxRAezQ0
唯律「!」

和「あっ……あ、あ……ああ」

バタリ

唯「和ちゃん!!」

律「おい、澪! お前

ザクッ!

律「ぎっ」

バタリ

澪「……は、は、はははははは」

唯「りっちゃん!!」

澪「あははははははははははは!!!」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:18:05.84 ID:0AxRAezQ0
唯「澪ちゃん、な、何を!」

澪「あはははははははははははは!! 死んじゃえ死んじゃえ!!」

澪「和も、律も、唯もみーんな死んじゃえばいいんだ!!」

澪「あはははははははははははは!!」

唯「……!」ゾクッ

澪「みんな死ねば鬼の財宝は、ぜーんぶ私のものだ!!」

澪「一生遊んで暮らせるんだ! もうマドレーヌなんか恵んでもらわなくたっていいんだ!!」

唯「そ、そんなことのためにみんなを……!」

澪「あはははははははははははは!!」

澪「私の愉快な人生に比べたら……お前らの命なんか紙風船より軽いんだよお!!」

唯「ひっ」ガタガタ

澪「じゃあな、唯!!」

――――ザクッ


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:19:08.16 ID:0AxRAezQ0
澪「うあ゛っ!」

ガクッ

唯「……あははっ♪ 太ももザックリ。もう二度と歩けないねー」

澪「ぅあ、ああ……なんで……」ガクガク

唯「残念でしたー。実は私も財宝を狙っていたんだよねー」

澪「なっ……」

唯「私、猫だったの覚えてる?」

唯「"猫かぶり"なんて指先ひとつでちょちょいのちょいに決まってるじゃん♪」

澪「あ……ああ……」

唯「それじゃあ……、バイバイ♪」

澪「……ああ……あ、あ、うわあああああああああああああああああああああ!!!」

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――――――――――
――――――


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/07(火) 19:20:22.82 ID:0AxRAezQ0
かくして
唯ちゃんが鬼の財宝を持ち逃げ
和ちゃんとその仲間たちが再び故郷の土を踏むことはありませんでした
 
 
一方、澪ちゃんに刺された和ちゃんは
自身から溢れ出るおびただしい量の血を目の前にしてその意識をゆっくりと手放そうとしていました
しかし、薄れゆく意識の中和ちゃんはひとつのことを悟ります

鬼とは、虎柄衣装に身を包み角を生やした彼らのことなんかじゃない
人の心にこびりついた薄汚くて最も卑しい穢れたモノこそが
紛れもない"鬼"なのだ、と

残念ながら、息も絶え絶えな和ちゃんにはその事実を誰かに伝えることはできません
結果、人類は内に潜む"鬼"に気付けず終いとなりました

ですから
今日もまたどこかで誰かが私利私欲を振りかざす欲深な"鬼"に、その姿を変えているのでしたとさ

めでたしめでたし



コメント

なんぞこれ

おちが面白ぇ

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