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唯「あずにゃんと付き合うことになったの!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:40:29.85 ID:c7dYnFAc0 [1/65]
夜。

平沢家。

憂「…………へ?」

憂はその言葉の意味が、わからなかった。

憂「……どういうこと?」

唯「だから! 私ね、あずにゃんとカップルになったんだよ!」

憂「……………………嘘」

唯「ほんとだよ!」

唯「今日、告白してくれたの! 『唯先輩のこと、大好きです』って! 私、OKしちゃったよ」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:41:37.74 ID:c7dYnFAc0
唯はえへへー、と幸せそうに頭をかく。

憂(嘘嘘嘘嘘嘘!!! ありえない!)

憂(なんで梓ちゃん? なんで私じゃないの? 告白したって……、私がお姉ちゃん好きなこと、梓ちゃん知ってるはずなのに……)

憂(そうか……)

憂(横取り、された…………)

憂(あの泥棒猫……おとなしそうな顔しやがって……)

憂(………………………………小ざかしい)ギリリッ

唯「憂! 包丁をなんでそんなに強く握り締めてるの!? こわいよ!」

憂「え、ああ。なんでもないよ。それより、ご飯もう少しで出来るから、待っててね」

唯「う、うん……」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:43:01.91 ID:c7dYnFAc0
憂「あ、お味噌汁が沸騰してる! 火止めなきゃ!」

憂は火の元をとめようと――。

唯「今度、デートする約束してるんだー」

ぐゎら ぐゎら ぐゎら …… と、なべの蓋がおちた。

煮えくり返った。

煮えたぎっている味噌汁が、なべの外に出ようとしている。

憂(……………………デート?)

憂(あの女、そこまで手を回して…………)

沸騰しきった味噌汁が、なべの外に押し出される。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:43:37.75 ID:c7dYnFAc0
憂(………………悔しい)

憂(なんで、梓ちゃんが…………)

唯「ごはんまだー?」

憂「…………あ」

ようやく、味噌汁が駄目になっていることに気づく。

憂「作り直さなきゃ…………」

憂ははあ、とため息をついた。

****************************************

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:44:34.18 ID:c7dYnFAc0
翌日、学校

梓「憂、おはよう」

憂「…………………………」

梓「? どうしたの?」

憂「話しかけないで?」

梓「え? 何で?」

憂「…………………………」

梓「あー、わかった。好きな人とられて悔しいんでしょ」

憂は歯噛みした。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:45:14.11 ID:c7dYnFAc0
梓「ごめんねー。うふふ」

憂「…………チッ」

梓「へえ。憂が舌打ちするの、始めてみたよ」

憂「黙れ」

梓「はいはい」

何だか馬鹿にされてるようで、憂は机に突っ伏した。

梓「あら。いじけちゃった?」

憂「……………………」

梓「………………子供みたい」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:46:03.95 ID:c7dYnFAc0
憂「……………………」

梓に殺意を覚える。

その感情を、必死に押しとどめる。

憂(殺しちゃ駄目。お姉ちゃんが悲しんじゃう)

憂(お姉ちゃんが幸せならいいの。梓ちゃんと付き合っても)

憂(お姉ちゃんが、幸せなら……)

憂(…………寂しい)

憂(…………何で、何で、なんでなんでなんで!?)

憂(…………何で、私じゃないの?)

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:46:41.15 ID:c7dYnFAc0
純「おはよー」

梓「あ。純、おはー」

純「おやぁ? 梓、ご機嫌ですな。何かあった?」

梓「えへへへ。ちょっとね」

純「何々?」

梓「ひみつー」

純「えー、教えてよー」

梓「やだー」

憂はその二人の会話を聞きながら、そっと眼を閉じた。

総てが夢だったらいいな、そう思いながら。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:47:18.01 ID:c7dYnFAc0


平沢家

唯「今日はね、デートする日にち決めたんだ」

憂「…………そうなんだ」

唯「うん! 今週の土曜日!」

憂は思い出す。たしか、今日は水曜日だ。あと3日後か。

憂「…………楽しみ?」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:48:00.20 ID:c7dYnFAc0
唯「うん! だって、初めてのデートだもの!」

憂「…………そっか」

憂(お姉ちゃんが、楽しめたらそれで…………)

憂(お姉ちゃんが、お姉ちゃんが、幸せなら…………それ、で…………)

唯「あれ? 憂どうして泣いてるの?」

憂「……へ?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:49:07.58 ID:c7dYnFAc0
>>15 エリだ

憂は目を擦る。

涙が付く。

憂「本当だ。私、泣いてる……」

唯「大丈夫?」

憂「……うん。気にしないで」

唯「う、うん…………」

何で泣いてるのだろう。

憂(お姉ちゃんが幸せなら、笑わなければいけないのに)

本当に、何で泣いてるのだろう。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:49:56.83 ID:c7dYnFAc0
土曜日!

唯は早朝から家を出た。

憂一人が、家に残った。

憂「……暇だな」

憂「お姉ちゃん、楽しんでくるかな」

憂「お姉ちゃん、梓ちゃんと仲良くやれるかな」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:50:41.48 ID:c7dYnFAc0
憂「お姉ちゃん………………」

憂「…………何か、家が広くなったみたい」

憂「お姉ちゃんが、修学旅行行ってるみたいだよ」

憂「…………暇だな」

憂「ういー、アイスー」

憂「………………」

憂「何やってんだろ、私」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:51:23.36 ID:c7dYnFAc0
憂「……………………寂しいな」

呟くと同時、頬に暖かいものが伝った。

憂「…………このごろ、泣いてばかりいるなぁ」

憂「どうしちゃったんだろ、私」

憂「お姉ちゃんが幸せなら、それでいいのに…………」

憂「何で、こんなに悲しいのかな?」

答える声は、もちろんない。

憂の独白は、えんえんと続いた。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:52:08.32 ID:c7dYnFAc0
同日、夜

唯「ただいまー! うい!」

憂「お姉ちゃん、お帰り」

唯「じゃあ、荷物ここに置いとくね」

憂「…………え?」

唯「梓ちゃんに誘われたんだよー。明日も休みだし、私の家に泊まっていきませんかって」

唯「じゃ、行ってくるねー!」

憂「ま、待って!」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:53:12.04 ID:c7dYnFAc0
>>20 悪いがヤンデレじゃない
>>21 エリのスレってそんなにあったっけ?

憂の制止を無視して、唯は梓の家へ向かう。

ぱたん、と玄関のドアが閉まる音がした。

憂「…………お姉ちゃん」

その呟きは、決して誰にも聞こえない。

唯の置いていった、お土産の入っている袋が、くしゃり、と音を立ててくずれた。

中から出てきたのは、可愛らしい人形。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:53:54.51 ID:c7dYnFAc0
憂はそれを一瞥した後。

思いっきり、蹴り飛ばした。

人形が、玄関と衝突する。

憂は息を荒げる。

憂(お姉ちゃんが、幸せなら…………っ)

憂は壁を殴りつけた。

どめりっ、という音がして、壁が拳大に凹む。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:55:07.57 ID:c7dYnFAc0
憂(………………梓ちゃんに、バージンまで奪われるんだね)

憂(もういい)

憂(もうわかった)

憂(こんな家、出てってやる)

憂(もうお姉ちゃんにも未練はない)

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:55:57.75 ID:c7dYnFAc0
憂(こんな家、出てってやる!)

憂(お姉ちゃんなんか、もう知らない!)

憂(もう、本当に、知らないんだから!)

完全に、頭に血が上っていた。

憂は何の準備もせず、着の身着のまま家から飛び出した。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:56:54.01 ID:c7dYnFAc0
>>28 姫子の方が好きだ

同日、街中

行くあてはなかった。

ただ、放浪しているうちに、自分の家への帰り道がわからなくなった。

憂(まあ、いっか)

憂(もう、帰らないんだし)

憂(明日、帰ってきたら驚くだろうな、お姉ちゃん)

憂(何しろ、私がいないんだもの)

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:57:41.24 ID:c7dYnFAc0
憂(餓死しちゃうんじゃないかな? あはは!)

憂(ははは…………)

憂(………………はあ)

憂(どこに行こう)

憂のお腹が、ぐうと鳴る。

憂(何か、食べたいな)

憂(あ)

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:58:17.57 ID:c7dYnFAc0
憂(お財布、持ってきてないや)

憂(どうしよう…………)

憂は自販機の前を通りすぎようと、――――思わず自販機の前で、足が止まった。

憂(飲みたいな…………)

憂(お金、ないしな…………)

憂(私が、餓死するんじゃないかな、はは、そんな)

憂(…………やだよぅ)

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:58:51.67 ID:c7dYnFAc0
?「何飲みたいの?」

突然、背後から声をかけられて驚いた。

サイドテールの人が、いた。

桜高の制服を着ている。リボンの色から三年生だ、とわかった。

憂「え?あ、あの?」

?「飲みたいんでしょ?」

憂「あ、はい」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 19:59:52.16 ID:c7dYnFAc0
>>37 何のことだ?

?「どれ?」

憂「え、いいんですか?」

?「うん。おごりだよ」

憂「え、じゃあ、コーラで……」

?「うん。わかった」

サイドテールの人はお金を入れて、『コーラ』を選択し、下の取出し口からコーラを手に取った。

?「はい、あげる」

憂「あ、ありがとうございます」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:00:41.66 ID:c7dYnFAc0
憂はコクコクとコーラを飲む。

と、視線に気づいた。

憂「何ですか?」

サイドテールの人が、憂を見てくるのだ。

?「え、いや、何か似てるなーって」

憂「誰にですか?」

?「私のクラスのね、平沢唯って子。知ってる? 知らないよね」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:02:06.81 ID:c7dYnFAc0
>>41 レズよりはいいだろ。いや個人の価値観だけど

憂は驚いた。まさか、唯のクラスメートとは思わなかった。

憂「……知ってます」

言うのはすこし、躊躇ってしまった。

?「え、本当?」

憂「はい。だって――」

憂「私、妹なんです」

?「あ、もしかしてういちゃんっていう子?」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:03:02.25 ID:c7dYnFAc0
憂「知ってるんですか?」

?「うん。唯ちゃんがね、よく出来た妹だって、いっつも言ってるよ」

?「へー君がういちゃんかー。なんて漢字書くの? ういって」

憂「憂慮の憂です」

?「へー。あ、私は瀧エリって言うんだ。エリって言ってね」

憂「は、はい……エリ、さん」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:03:44.84 ID:c7dYnFAc0
エリ「エリだけでいいよ、ま、いっか。それより、唯ちゃん家って、こっちだっけ?」

憂「いえ、もっと向こうです。どこにあるのかは、わかりませんけど」

エリ「えー? じゃあ、何でこんなとこに……、道に迷ったの?」

憂「そ、それもありますけど……」

エリ「けど?」

憂「私、家出してきたんです」

エリ「家出!?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:04:27.56 ID:c7dYnFAc0
憂「は、はい」

エリ「親御さん心配してるんじゃないの?」

憂「いえ。両親はめったに帰ってきませんし……お姉ちゃんもいません」

エリ「泥棒入っちゃうよ」

憂「……いいんです。あんな家」

エリ「駄目だよ。家族ってのは大切にしなきゃ」

憂「……………………」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:05:13.73 ID:c7dYnFAc0
エリ「多少、嫌なところがあってもさ、それを認め合って、そして付き合っていくんだよ。それが家族でしょ」

憂「…………お姉ちゃんが」

エリ「お姉ちゃんが?」

憂は家出した理由を話した。

唯に対する鬱屈と、梓への嫉妬を語った。

エリ「……そんなのが、家出の理由?」

憂「そんなのって……」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:05:48.18 ID:c7dYnFAc0
エリ「そんなのはそんなのだよ。ただの我が侭じゃない」

憂「…………そうかも、しれません」

エリ「お姉ちゃんが――唯ちゃんが幸せならいいんでしょ?」

憂「…………はい」

エリ「なら、なおさら喜ばなきゃ。バージン卒業! ってことでお赤飯でも炊いて上げなよ」

憂「………………」

エリ「少なくとも、憂ちゃんが家出してたら、誰も幸せになれないよ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:06:28.28 ID:c7dYnFAc0
エリ「皆、悲しむだけだよ」

憂「………………はい」

エリ「家まで、送ってってあげようか?」

憂「…………いいんですか?」

エリ「うん。いいよ」

憂「……ありがとうございます」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:07:24.19 ID:c7dYnFAc0
エリ「気にしないで。まず、桜高に向かおうか、そこから唯ちゃん家に行こう」

憂「…………はい」

エリ「あれ、憂ちゃん泣いてるよ?」

憂「え?」

エリ「ほら、可愛い顔なんだから、泣き顔は似合わないよ」

エリは憂の目元をぬぐう。

やわらかくて、あったかい。そんな指先の感触が、憂の頬を赤らめさせた。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:08:08.06 ID:c7dYnFAc0
****************************************

同日! 

平沢家玄関前!

エリ「やっと付いたね」

憂「はい。ありがとうございました」

エリ「いやいや、お礼なんか要らないよ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:09:06.18 ID:c7dYnFAc0
憂「あの、あがってきませんか?」

エリ「え? いいの?」

憂「はい。何かご馳走します」

エリ「うーん、じゃあ、焼きそばがいいな」

憂「焼きそば、ですか?」

エリ「うん…………駄目?」

憂「いいえ。作れますよ。あ。あがって待っててください」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:09:56.46 ID:c7dYnFAc0
エリ「うん。わかったー」

エリは平沢家に入った。

エリ「…………なんで壁が凹んでるの?」

憂「あ! 気にしないでください!」

エリ「人形も綿がはみ出てるし…」

憂「気にしないでください!」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:11:06.36 ID:c7dYnFAc0
平沢家内!

数分して、焼きそばがエリの前に運ばれた。

エリ「うわー、香ばしい匂い! プロを感じるね!」

憂「ありがとうございます」

モグモグ エリ「うん、味も絶品!」 モグモグ

憂「えへへ」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:11:51.76 ID:c7dYnFAc0
エリ「すごいね、どこかでお料理習ったの?」

憂「いえ。自然と身に付きました」

エリ「へー。才能だねえ」

憂「エリ先輩は、お料理しますか?」

エリ「うん。私は一人暮らしだからね」

憂「そうなんですか?」

エリ「うん。だから、私も自然と身に付いたね」

憂「何のお料理が自信ありますか?」

エリ「焼きそば、と言いたいとこなんだけど……豚肉の洋風旨煮、かな」

憂「何でですか?」

エリ「一番初めに作った料理なんだよ、だからかな」

エリはふと、目を細めた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:12:35.90 ID:c7dYnFAc0
数分後

エリ「……、よし、完食! 美味しかったよ!」

憂「ありがとうございます」

エリ「また食べたいなー。今度、来てもいい?」

憂「はい。もちろんです」

エリ「ありがとー。流石、唯ちゃんが出来た妹、と褒めただけあるよ」

憂「…………はい」

気恥ずかしくなった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:13:46.92 ID:c7dYnFAc0
エリ「じゃ、そろそろ私は帰るかな」

憂「あ、はい! 今日はありがとうございました!」

エリ「いやいやこちらこそー」

そして、エリは外に向かう。

憂は玄関から、エリの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

また会いたいな。そう思った。

****************************************


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:14:27.72 ID:c7dYnFAc0
翌日、朝!

平沢家!

唯「ただいまー。お泊り、楽しかったよー」

憂「お帰り。どうだった?」

唯「修学旅行みたいな感じだよー」

憂「……あ、あのさ、え、えっちぃこと、した?」

唯は首をかしげる。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:15:14.52 ID:c7dYnFAc0
憂(な、なあんだ。考えすぎだったかぁ)

憂(よく考えたら、付き合って間もないもんね)

憂(でも、良かった)

憂は安堵の息を漏らした。

唯「どうしたの?」

憂「何でもないよ」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:15:57.22 ID:c7dYnFAc0
唯「あ、私ね、朝ごはん食べてないんだ」

憂「あ、丁度良かった! 今出来たとこ!」

唯「え! 何? 今日は?」

あのね、と憂は語を継ぐ。

憂「――お赤飯だよ!」

                               終わり

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:16:46.77 ID:c7dYnFAc0
番外編      梓と憂と

教室

憂「おはよう! 梓ちゃん」

憂は読んでいた本から眼を離すと、教室に入ってきた梓に挨拶してきた。

梓「……何よ、憂。気味が悪いほど元気ね」

憂「うん。土曜日にいいことあったんだ!」

梓「あ、その日なら唯先輩と私が……」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:17:22.92 ID:c7dYnFAc0
憂「うん、知ってるよ」

梓「悔しくないの?」

憂「ううん。むしろ、梓ちゃんたちを応援してるよ!」

梓「……何なのよ、数日前とは別人じゃない」

憂「達観したんだよ」

梓「本当に、何があったの?」

憂「へへ、秘密」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:18:15.15 ID:c7dYnFAc0
と、そこに純がやってきた。

純「おはよー、みんな」

梓「あ、純。お早う。髪切った?」

純「あ、わかる?」

憂「うん、わかるよ。とても似合ってるよ」

純「へへー。ありがとう」

純は鼻を掻いた。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:19:23.24 ID:c7dYnFAc0
>>67 紬のほうは入れたんだけどね…

純「あれ? 憂何読んでるの?」

憂「え、これ? これは――」

憂は本の表紙を見せて、答える。

憂「美味しい焼きそばの作り方って本なんだ」
                               終わり

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:20:05.23 ID:c7dYnFAc0
番外編 ある火曜日の放課後

唯は梓に、放課後講堂に来てください、と言われていた。

講堂は、放課後は使われない。そのせいか、幽霊が出る、という噂を聞いたことがある。

唯は若干それにおびえながらも、講堂の扉を開いた。

梓がいた。

凛、とした雰囲気を漂わせていた。

梓「――唯、先輩」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:20:55.21 ID:c7dYnFAc0
梓が唯に詰め寄ってくる。

唯「ど、どうしたの? あずにゃん」

梓「私、唯先輩に言いたいことがあったんです……」

唯「な、何?」

梓「はい、それは――」

梓の頬は、柔らかな朱色。

白い肌に美しく、赤が映えていた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:21:49.91 ID:c7dYnFAc0
なぜだか唯まで、緊張してしまう。

梓は深呼吸をして、そして。

梓「私、唯先輩のこと大好きなんですっ!!」

まくし立てるように、言った。

唯「へ?」

混乱していた。

梓「な、何度も言わせないでください! 私、唯先輩のことが、大好きで仕方ないんです!」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:22:35.96 ID:c7dYnFAc0
唯「それって、つまり……」

ごくり、と唯はつばを飲み込む。

唯「……告白、だよね」

梓「……はい」

唯はなんというべきか迷った。

梓「……駄目、ですか?」

梓が何かを懇願するみたいに、見上げてくる。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:23:25.93 ID:c7dYnFAc0
唯は

唯「いいよ」

明確な意思を持って、答えた。

梓を、かなしませたくなかった。

梓の不安げな表情を、見たくなかった。

唯「付き合おう」

梓「いいん、ですか?」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:24:14.47 ID:c7dYnFAc0
唯「うん。実は私も、……私も、あずにゃんが好きなんだ」

本音だ。一片の嘘のない、事実だ。

梓「…………嬉しいです」

梓は唯に、ぎゅっと抱きついてきた。

唯「あずにゃん……」

唯は梓を、抱き返す。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:25:03.83 ID:c7dYnFAc0
梓「……梓って、言ってください」

唯「え?」

梓「梓って、一度でいいから呼んでください」

唯「じゃ、じゃあ……。私のことも、唯って言ってくれない? 一度だけでいいから」

梓「はい。…………唯、大好きです」

唯はすこし、新鮮に感じた。

唯「私も、大好きだよ。……梓」

そう言って、再び熱く抱擁する。

梓の柔らかさを、心地よく感じていた。
                           終わり

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:25:45.20 ID:c7dYnFAc0
番外編    ひとりずもう

憂(エリ先輩のために、家で作ってきたお弁当……渡すの、恥ずかしいな)

三年二組の教室の前、平沢憂は葛藤していた。

憂(お弁当、早く渡したいんだけどな……)

憂は教室をちらり、とのぞき見る。

憂(楽しく談笑してるし、邪魔するのもな……)

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:26:22.78 ID:c7dYnFAc0
憂(いや、でも先輩は焼きそばパンしか食べてないから。お腹はすいているはずだ)

憂(だから、渡したほうがいい)

憂(でもなあ。教室に入ったら、お姉ちゃんにも見られちゃうし……)

憂(でも、早く渡さないと、お昼休み終わっちゃうよ)

憂(そうだ、渡さなきゃ! そのために朝早くから起きて、作ったんだもん!)

憂(お姉ちゃんに見つかっても、そんなの気にしなければいいんだ! だって、私はエリ先輩に用事があるんだから!)

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:27:06.30 ID:c7dYnFAc0
憂(………………………………でもなぁ)

憂(はずかしいなあ)

憂(三年生のクラス行くだけでも一杯一杯なのに)

憂(その上、お弁当渡すなんて…………絶対変な人だって思われる…………)

憂(どうしよう…………)

エリ「あれ、憂ちゃん?」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:27:59.03 ID:c7dYnFAc0
憂「うっひゃあ!?」

エリ「あ、やっぱ、憂ちゃんだ。どうしたの? こんなとこで」

憂「あ、あのそれは」(もう吹っ切れて、言ってしまえ!)「え、エリ先輩に、お弁当渡しに
来たんです!)

エリ「え? 渡しに? 私に?」

憂「はい!」

エリ「いいの?」

憂「はい! これどうぞ!」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:28:41.94 ID:c7dYnFAc0
憂はお弁当の小包を渡す。

エリは受け取る。

エリ「ありがとう。味わって食べるよ」

憂「―――はい!」

エリ「………………」じーっ

エリは憂を見つめている。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:29:35.29 ID:c7dYnFAc0
憂「え、へ、何ですか?」

エリ「そうやって赤くなっている憂ちゃんて、可愛いなあって」

憂「え、え、え」

ぼんっ、と憂の顔がますます紅潮する。

エリ「じゃあね。お礼に今度、私も弁当作ってくるよ」

憂「え、そんな、悪いです」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:30:16.44 ID:c7dYnFAc0
エリ「いいっていいって。」

憂は少しばかり悪いなあ、とか思いながらも。

密かに、エリの作ってくる弁当を期待していた。

憂(エリ先輩のお弁当、どんなのだろう……?)

今からわくわくしていた。

****************************************


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:30:55.16 ID:c7dYnFAc0
エリ「はい。憂ちゃん」

後日、エリ先輩が弁当を渡してきた。

梓たちのところに戻って、弁当をあける。

中身は――。

梓「…………焼きそばだけ?」


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:31:52.82 ID:c7dYnFAc0
憂「うん、焼きそば、だけ……だね」

憂は、焼きそばのびっしりと詰め込まれた弁当箱を見ながら、エリ先輩らしいなあ、と思った。

焼きそばを口に運ぶ。

憂「美味しい……」

エリ先輩の、味がした。ような気がする。

憂は意識せず、顔を綻ばせていた。
                               終わり

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/06(月) 20:33:34.18 ID:c7dYnFAc0 [64/65]
終わり。

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