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麦野「・・・浜面が入院?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:26:39.30 ID:jlblck4U0

―――――


「で、浜面の退院祝いはどうすんのよ、昨日も同じような話した気がするけどさ。」

「どうするもこうするも、特に何もやらなくて良いんじゃないですか?」

「結局、食べて飲んでの大騒ぎに仕方なく浜面を参加させてあげる、っていうスタンスで良いんじゃない?」

「・・はまづら、喜んでくれるかな。」


いつものファミレスに開店時刻と同時に入った「アイテム」は、浜面の退院祝いを議題に緊急会議を開いていた。

ちなみに、前日の夜に健康ランドから帰ったあと、「アイテム」の隠れ家で考える予定だったのだが、

お菓子パーティーが予想以上に盛り上がってしまった挙句、寝落ちしてしまったため、今日になって話し合っているらしい。


「結局さ、浜面はいつ病院出れるの?」

「本人に聞いた話によると、今日の夕方・・、5時くらいでしょうか?」

「何でまたそんな半端な時間に・・、普通は朝とかじゃないの?」

「さぁ、私に聞かれても超分かりません。」

「とりあえず・・、何か頼む?」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:31:24.50 ID:jlblck4U0


開店時からファミレスに居るにも関わらず、未だに何も注文していなかったので、店員からの視線が微妙に痛かった。

いつも同じ席に座る奇抜な女の子四人組なので、もうすっかり顔は覚えられてしまっただろう。

だからこそ、なかなか口出しすることができないのだろうか。

滝壺が、テーブルの端にあるメニューの冊子を向かい側と自分側に配る。


「ここのメニューってほとんど食べちゃったのよねぇ・・、そろそろダベる拠点変える?」

「いえ、私はここのイカスミパイナップルパフェを超気に入っているので、その話は白紙にしてください、麦野。」

「結局、私は缶詰の持ち込みをOKしてくれるところなら、何処でも良いけど~♪」

「たぶん、容認してくれているわけじゃないと思いますよ、それ。」

「私も、ぐっすり眠れるところなら、何処でも良いかな。」

「・・寝るのは、隠れ家に帰ってからにしてもらえますか、滝壺さん。」

「・・ん?」


麦野の目があるメニューに留まった。

生クリームがたっぷり塗られ、かなりの数のイチゴが乗った、大き目のバースデーケーキ。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:33:22.47 ID:jlblck4U0


「これ!」

「・・なに超寝言を言ってるんですか、今ここでこれを食べる気ですか?」

「結局、そんな食生活を送ってるから、2キロ太るんだよー。」

「大丈夫だよ、むぎの。私はそんなポッチャリなむぎのを応援してる。」

「・・そうじゃねぇッ!! 浜面の退院祝いにケーキを作ろうかな、って言ってるのよっ!」

「「な・・!?」」


絹旗とフレンダが同時に驚嘆の声をあげる。

しかし、この二人がそれに込めた感情は、それぞれ違うものであったが。

嘲笑と困惑。


「こんなものをあの浜面に作ってあげようだなんて、随分可愛らしくなっちゃましたねぇ、もしかして、寝たんですか?」

「ね、寝た!? って、ば、バッカじゃないの、気まぐれよ、気まぐれ!」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:37:15.12 ID:jlblck4U0


平静を装うように、自慢の長髪を思い切りかき上げる麦野。

大袈裟にかき上げすぎて、逆にぐしゃぐしゃになってしまっていた。

絹旗は、口元に手を押さえ、ニヤニヤしている。

浜面が入院している間、麦野にちょくちょくちょっかいを出しているうちに、

彼女もなかなかにイジり甲斐があるということに気づいたのだろうか。


「結局、麦野、どの口がケーキ作ろうって・・?」

「・・どの口って、それどういう意味よ。」


絹旗と滝壺は知らないかもしれないが、麦野は超が付くほどの、極度の料理下手である。

砂糖と塩を間違えるのは当たり前、マーガリンが何かも分からず、卵すらまともに割れない。

浜面のお見舞いの際に、一緒にマフィンを作ったフレンダだからこそ、ここまで困惑しているのだ。

絹旗が言った、麦野が浜面にプレゼントするのが意外だとか何だとか、そういうこと以前の問題なのである。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:40:23.43 ID:jlblck4U0


「浜面、入院してるときに甘いもの食べたい、って言ってたしねー。」

「・・作るにしても、結局、火事とか起こさないでよ?」

「そんなことするわけないじゃない、アンタ、マフィンのとき何を見てたのよ。」

「いや、まぁ・・ねぇ。」


とはいえ、あの時のフレンダと麦野の共作のマフィンは、最後の最後で黒焦げになって失敗した。

その後、麦野はやり方を思い出しながら、再び一人で何とかマフィンを作り上げたはずなので、

そこまで心配する必要もないか、と考えるフレンダ。


「で、それを四人で作ろう、って話ですか?」

「んー、まぁ、皆に手伝ってもらった方がはかどるわよねぇ。」

「別に私は構いませんよ、何か超ビッグなものがあった方が退院祝いって感じも出ますし。」

「・・私もケーキ作りたいな。」

「結局、後悔しないようにね・・。」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:45:28.19 ID:jlblck4U0


絹旗と滝壺はサラリと承諾したが、フレンダだけは依然ゲンナリしたままだった。

三人の承諾を得られたため、満足そうに頷く麦野。


「じゃ、早速、材料買いに行くわよ。」

「え、何も頼まないんですか?」

「良いわよ、別に。善は超急げなんでしょ。」


ファミレスに開店と同時に入ったくせに、何も頼まないという暴挙をした「アイテム」は、

浜面の退院祝いを盛り上げるためのケーキを買いに、足早にファミレスを出て行った。

フレンダが食い散らかした大量の空の缶詰だけを放置して。






16 名前:>>15 大丈夫です。[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:47:57.52 ID:jlblck4U0

―――――


「アイテム」が何も頼まずにファミレスを出てから数分、時刻は9時30分を回っていた。

平日なら、学園都市の人口の大半を占める学生たちは学校へ行っている時間だが、

今日は土曜日なので、休みの日を思う存分に満喫しようと外出している少年少女の往来が際立っていた。

もし、これが平日になると、街中にはびこる学生の数は極端に少ないので、

見た目は学生同然の女の子たちである「アイテム」はかなり目立つのだが、今日はそれほどでもないようだ。

フレンダは女子高生とはいえ、土曜にも関わらず、なぜか制服を着ているが、

部活や補修に行く途中と考えれば、ごく自然の光景だろう。

さて、一行の目的は、ケーキの材料と二夜連続となるお菓子パーティーの食べ物の買い漁りである。


「結局、ケーキって言っても何のケーキを作るの?」

「え、何のケーキ・・、ってどういうこと?」

「チョコレートケーキとかチーズケーキとか・・、色々あるじゃない?」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:50:25.30 ID:jlblck4U0


この子はそんなことも考えないで、見切り発車でケーキを作ろうなどと言い始めたのだろうか、と頭を抱えるフレンダ。

それを見た絹旗も、フレンダと同じタイミングで同じようなアクションをしていた。

慌てて、麦野が言葉を返そうと口を開いた。


「あ、ああ! なるほどっ、そういうこと!

 ・・そうねぇ、浜面の好みなんて知るわけもないんだけど。」

「結局さ、甘いものが食べたいって言ってたなら、何でも良いんじゃない、私たちが決めちゃえば。」

「そうですね、製作者の権利の超行使、ということで。」


そもそも、浜面にはシークレットでケーキを作る予定なので、彼に好みのケーキなど聞いてしまっては本末転倒である。


「・・私、さっきのファミレスのメニューにあったみたいな、イチゴの乗った可愛いケーキを作りたいな。」


えへへ、と少し照れつつ、微笑む滝壺。

それを見た他の三人は、初恋の瞬間のような心持ち、思わずキュンとなる。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:53:12.63 ID:jlblck4U0


「(滝壺さんがこんな風に自然に微笑むのは、超珍しいですね。)」

「(ぐっ・・麦野と言う心に決めた人が居ながら、少し軸がブレるところだった・・。)」

「(やっぱり、浜面が絡んでくると滝壺は積極的になるわね・・、少しキャラ崩壊してるし、この子。)」


純粋系少女として売る滝壺に対し、メラメラと対抗心を燃やす、巷で話題のヤンデレ系少女・麦野。

どれだけ辛辣な視線を送っても、ド天然の滝壺の前では、のれんに腕押し、ぬかに釘であるのだが。

そんな麦野に対しても、熱い視線を送ったりしているのがフレンダ。

浜面を交えた三角関係+レズのおかげで、「アイテム」内部の恋愛事情はかなり複雑になっている。

そのうち、痴情のもつれから誰かが誰かを刺しそうで怖いと思っているのは、それらとは若干の距離がある絹旗。

ちなみに、彼女も浜面のことを好いている節がある。

LoveかLikeかでいえば、どちらかと言えば、まだ後者なのだが。

妹タイプで特攻をしかければ、案外、浜面はあっさり陥落しそうな気がしないでもない。

そうなると、麦野辺りが刺しに来るという強制不可避イベントが発生するだろうが。

兎にも角にも、彼女たちを相手に上手く遣り繰りすれば、ほぼ完璧な浜面ハーレム王国の完成するのではないだろうか。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:55:28.31 ID:jlblck4U0

「そうですね、ここは滝壺さんの言うとおり、王道のイチゴケーキで超攻めてみましょう。」

「・・イチゴ、たくさん乗せようね。」

「もしかして、乗せたいだけですか・・?」


えへへ、とさっきの使いまわしのような微笑を浮かべる滝壺。

それでも、同姓から見ても、かなりの可愛さであるのが悔しいばかりだった。

やはり、念願の浜面とゴールインするにあたっての、麦野にとっての最大の障害は滝壺だろう。

横からちょっかい出してくるレズビアンだの、最近よく生意気にイジってくる小学生だのは大した壁ではない。


「よーし、じゃあ決まり。とりあえず近場のデパートの食品売り場に攻め込むわよ。」


「「 らじゃ~。 」」


リーダー・麦野の掛け声に合わせ、両拳を突き上げる絹旗とフレンダ、目的地はすぐそこだ。


「・・滝壺さんも行くんですよ。」

「・・・・イチゴ。」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 21:58:13.54 ID:jlblck4U0

―――――


さて、「アイテム」一行が到着したのは、同じ第七学区の人気デパート。

五階建てで、食品、服、本、音楽、ゲームセンター、宝石類、眼鏡、レストラン、映画など、

ほぼすべてのジャンルを完璧に網羅した、同学区でも有名なデパートである。

服を買うのであれば、学生に最も知名度のあるセブンスミストが王道だが、

圧倒的なオールマイティーさを誇るのが、このデパートだ。

ある目的の物を買いに来たとしても、ついつい他の物も買っていってしまいそうになる。

ちなみに、彼女たちが今居るのは、デパートの入り口、巨大な自動ドアの前。

買い物客が次々と入ってくるのを気にせず、四人で固まって打ち合わせをしている。


「よっし、必要なものは今、言ったとおりよ。

 絹旗、アンタは夜食べるお菓子おおつまみの調達、多いに越したことはないから、なるたけジャンジャン買ってきなさいっ。」

「超任せてください、完璧にこなしてみせます。」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:04:07.29 ID:jlblck4U0


「んで、私はお酒ね、アンタたち、好みは適当で良いわね?」

「結局、私はチューハイなら何でも良いよー。でも、麦野が私を酔わせたいなら強力なの買ってくると良いよ!」

「私はアルコール超控えめでお願いしますね、恥ずかしながら、まだ慣れてないので。」

「・・梅酒。」

「アンタ、いつから梅酒マニアになったのよ、滝壺・・。」


三者三様のお願いを聞き、それぞれを頭の中にインプットする麦野。

それに浜面の分も追加する、退院早々にお酒を飲ませるのもどうかと思われるが。

ちなみに、お酒を買うときに店員に年齢の確認をされても、

例の浜面が麦野に作ってあげた偽造の運転免許証を提示すれば、事足りることだろう。

麦野がお酒の調達を請け負ったのは、不本意だが、「アイテム」の中では一番年上に見えるためである。

絹旗は見た目的に論外、滝壺もかなり厳しい線を行っている、フレンダは外国人なので、年齢が分かりにくいが、

制服を着てしまっている上、うっかり自分から未成年であることを漏らしてしまいそうなので。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:09:37.85 ID:jlblck4U0


「あ。あと余計なものは買ってくるんじゃないわよ。」

「・・結局、何で私を見るの?」

「だってアンタ、買い物行くと絶対缶詰買ってくるじゃない。」

「べ、別に良いじゃん! 私のお金で買ってるんだしさー!」


服屋に買い物に行ったはずが、いつの間にか缶詰を大量に持っていたこともあった。

ちなみに、昨日の健康ランドの帰りにも、なぜか缶詰を大量購入しており、

しかも、昨日の夜のお菓子パーティーのうちに食べ切ってしまうという離れ業をやってのけた。

食べるのは良いが、隠れ家に大量の空の缶詰を放置しているせいで、部屋中がサバ臭くなってしまうのが傷だが。

ともかく、フレンダには缶詰購入に関して前科がある。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:13:54.22 ID:jlblck4U0

「でも今回は、割り勘なんだから、そこんとこよろしく頼むわよ。」

「ケッキョク、ワタシ、ニホンゴワカリマセーン。」

「絹旗、コイツを一発殴りなさい。」

「超お任せ。」

「ちょ、分かった分かった! ちゃんと言われたものだけを買ってくるって!」

「最初からそう言えば良いのよ。じゃ、十分くらいしたら、またここで。」


「解散!」


それぞれが、自分に任された役割を全うするため、散り散りになって行った。

無論、彼らの買い物が上手くいくようにはなっていないが。





31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:17:06.24 ID:jlblck4U0

―――――


「今日の昼飯は何にするかな~♪」

「ご機嫌だね、とうま。 今更だけど、今日はいつものスーパーじゃないんだね?」

「おーう、昨日の健康ランドで悪運は全部吐き出したからな~。

 今日は昼間から遠出して、一日の飯の材料を買いに来ちゃったりするわけよー。」

「わーう、今日はとびっきりのお昼ご飯とお夕食が出てくる予感かも!」


原価100万ドルの笑顔を浮かべる銀髪のシスター。

「アイテム」が浜面の退院祝いパーティーのための、効率の良い買い物を始めて離散した頃、

同じ1階の食品売り場では、お馴染みの上条当麻とインデックスのコンビが居た。

カートを押しながら、今日の昼飯と晩飯を考える上条はいささか主婦のようにも見える。

その専業主夫の横を、初めてデパートの食品売り場に来た子供のようについて回るインデックス。

いつもと違うスーパーなので、置いてある食品の質や数も違うのか、思わず目移りしてしまっていた。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:21:01.62 ID:jlblck4U0

ちなみに、彼女は試食コーナーがあれば、問答無用で食い荒らしに行くため、

上条は彼女に首輪を付け、手綱をしっかり持つように、インデックスから目を離さないようにしている。

彼女は試食荒らしとしての前科があり、一部地域ではかなり名を馳せているようで、

そのせいで、近辺のスーパーから試食コーナーが一時的に消えたくらいだ。


「そうだなー、今日は何が食べたいインデックス?」

「んー、ビフテキにしゃぶしゃぶ、とんこつラーメンに冷やし中華、卵かけご飯にカレーライスに麻婆豆腐、

 おでんも良いな~、 あっ、バランスも考えて、ヘルシーな野菜サラダも食べなきゃかも!」

「・・・上条さん、インデックスがいつも通りで安心したよ。」

「?」


聞いたところで、決壊したダムのように止め処なく食べたいものが彼女の口から出てくるのは分かっていたこと。

それに、彼女は今言ったものを出されたとしても、喜んでペロリと平らげるだろう。

一時の冗談ではなく、心の底からそれだけの量の料理を食べたいと思っているのだ。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:26:09.92 ID:jlblck4U0


彼女のランチスケジュールに合わせると、どんな資産家でも一週間も持たずに破産させられるだろう。

ステイルやアウレオルスは、彼女と一緒に居たとき、どのようにこの問題を切り抜けていたのだろうかと疑問に思ってしまう。

やはり、自分でメニューを考えるべきだ、と強く決意した上条。

しかし、料理を作る側からすれば、毎日のメニューを考えるだけでも一苦労なのである。

何を出しても、インデックスは美味しそうに食べきってくれるので、作り甲斐はあるのだが。


「・・とうまー、お菓子買ってきても良い?」

「なッ! いくら俺の機嫌が良いからってそんな勝手にバカスカ買ってこられても困るんだぞッ!?」

「ぶー、ケチー。」

「・・・、分かった分かった、今日の上条さんは優しいんだ、少しだけだったら許してやる。」

「わーい!さすが当麻なんだよー!」

「少しだけ、だぞ!!」


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:29:55.90 ID:jlblck4U0


上条が許可の言葉を発した瞬間には、もう一歩目が出ていた。

一目散にお菓子コーナーがあると思われる方へ走っていくインデックス。

すれ違う人たちが、変なものを見るような顔をして彼女のことを目で追っているのが分かる。

アイツは単純で良いな、とそれなりに失礼なことを思う上条。

メニューは一人で考えた方がちょうど良いと思ったために、インデックスを追い払ったので、さらに失礼なことをしているが。

それに、彼女が試食コーナーに飛びつかないように目を光らせながら、考え事をするのは不可能だったわけで。

一応、お菓子コーナーには試食する場所はないだろうから、大丈夫だと踏んだのだろう。

さすがに売られているお菓子の袋を開けて食べたりするほど、常識から外れた子ではないはずだ、恐らく。


「さってとー・・・・・ん、あれは・・?」


上条が見つめる先に、豊富な種類の飲み物が陳列された一角に、見覚えのある少女が立っていた。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:34:12.30 ID:jlblck4U0

遠くから見ても分かるような、かなり目立つ長い金髪に、可愛らしい、何処かの私立高校のような制服。

女子高生であるとはいえ、上条よりも背が低く、外国人とはいえ、実年齢よりも幼く見える女の子は、

身体を一切動かさず、色んな牛乳に視線だけを移し、手に取っては、その度に見つめたままになっている。

上条は、真横からカートを押しつつ、相手の顔色を伺うように、慎重に話しかけてみた。


「あのー、もしかして、昨日の・・?」

「んー? あ、暴食シスターの飼い主。」


そんな認識されてるのかよ・・、と思わず言葉を詰まらせた上条。

しかも、その見方は大方当たっているのが、笑いどころだ。

その少女も、どうやら上条のことを覚えていたらしい。

それもそのはず、上条は、前日に食べ放題選手権という死闘を繰り広げた相手でもある。


「ああ、飼い主っていうか・・まぁ、少しは当たってるんですけど。」

「んじゃぁ、何よ・・まさかあの子の彼氏? あんなのと付き合ったら食費がバカにならないと思うんだけど・・。」

「いや、そんなんじゃないですけど・・一緒に住んではいるから、その恐ろしさは身に染みてるですけどね。」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:39:48.71 ID:jlblck4U0


インデックスの食べっぷりを間近で見たフレンダがそう言うのも無理はなかった。

口に出すこともおぞましいほどの、上条家の家計の飛びっぷりは、火の車というレベルではない。

恐らく、彼の半分以上の貯蓄が彼女の食費に使われているんじゃないだろうか、と思えるほどの消費っぷりだ。


「よく分かんないけど、かなり不幸な目に遭ってるみたいだねー。」

「・・おっしゃる通りでございます。」


「不幸」という言葉を自分で言うことはよくあることなのだが、人に言われてみても、あまりいい感じではなかった。

自分が不幸であることを再確認してしまうため、ある意味、悪化しているような気もする。


「っていうか、結局、敬語とか使わなくて良いよ、固っくるしいだけだし。」

「ああ、どうも。 ・・口調といえば、随分、日本語ペラペラなんだな。」


完璧バッチリ外国人の少女、欧米辺りの生まれだろうか、なんとなく北欧のイメージが合う。

そんな彼女が日本語を得意としているのは、失礼ながら、上条から見てもかなり不自然に映った。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:43:38.32 ID:jlblck4U0


ましてや、高校生くらいで外国語を自在に喋ることができるというのは、

ハーフか、その外国語を母語としている国や地域に住んでいる子供くらいだ。

この少女は、恐らくは後者だろう、と上条は判断した。


「んー、まぁね。結局、今の日本人の若者の偏った日本語遣いよりも正確。って自負してるね。」

「すごいんだなー、学園都市に来てまで日本語学校にでも通ってたりしたのか?」

「いやー、まぁ、色々あったんだけどねぇ・・。」


言葉を濁らすフレンダ。

女子高生とはいえ、彼女は、一応は学園都市の暗部組織「アイテム」の構成員。

一般人らしい少年に自分の素性をペラペラと話すほど、フレンダも馬鹿ではないようだ。

単純に、一から説明するのが面倒だっただけかもしれないが。


「あ、それ・・!」

「え?」


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:48:11.69 ID:jlblck4U0


唐突にフレンダが指差したのは、大量の食材が入れられている上条のカートの買い物カゴ、その中にある缶詰だった。

それらは「カレー」やら「シチュー」やらの缶詰らしく、フレンダが目を輝かせている。


「あの・・、」

「アンタも缶詰好きなの!? 私はねぇ、大好きなんだよー、缶詰!

 最近は断然『カレー』! 『カレー』がすっごい来てるよねー! よく分かってんじゃんー、アンタ!」


上条が言葉を返す間もなく、すごい力で背中をバンバンと叩かれる。

外国人とはいえ、今時の女子高生が缶詰トークに興奮するとは、少し意外だった。

意外を通り越して、ドン引きである。

フレンダは、困惑する上条を気にせず、話し続ける。


「缶詰の何が良いって、長期間の保存が効くし、手軽に食べられるし、味もどんどん進化していったるんだよー、

 学園都市は一般的なものから、すっごい過激で奇抜な缶詰まで勢揃いしてるしさー、あ、あとねー、

 日本人がよくするお歳暮とかさー、そういう形式的な行事のときにも、贈り物として使えるし、超万能だよねー!」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:51:18.96 ID:jlblck4U0


物凄い勢いで缶詰マシンガントークを展開するフレンダに、たじたじの上条。

昨日も少し思ったことだが、かなりの変人なのではないか、という疑惑が浮かぶ。


「そ、その割に、今日は缶詰買わないのか、好きなんじゃないのか・・?」

「んー、私だってねぇ、缶詰買いたいよ、食材買いに来る度に。っていうか外に出る度に買いたいもん。

 私の原動力と生きる意味の半分は、缶詰にあると言っても過言じゃないからねー。

 つまり、缶詰がなくなったら、私はもう半死人だよ、半死人。それだけ缶詰への愛は深いワケ、どう?」

「(どう? って何がだよ・・。)」


ついていけない、というかこのまま話していたら、自分まで缶詰に染められそうだ。

そうなれば、世にも珍しい缶詰星人のできあがりである。

ついでに、インデックスも染めてしまえば、そっちの方が家計的に楽かもしれないが。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:56:17.21 ID:jlblck4U0


「(と、とりあえず・・話題を変えよう。)」

「でねー、結局さー、缶詰の何が良いって言うとねー、」

「きょ、今日! 今日は誰かと一緒に来たのか?」

「・・・・んー? ああ、いつもつるんでる知り合いとねー。」

「もしかして、昨日一緒に居た3人か?」

「うん、そーだよ。 ああ・・、言っておくけどねぇ、誰であっても私らを狙おうとするのは止めておいた方が良いよ。

 命がいくつあっても足りないからね、特にあの茶髪ロングは。」


別に彼女たちを特別に意識したわけではないのだが、

上条の頭の中に、昨日のギャーギャーわめいていた、目の前の少女を含む四人が浮かんできた。

黒髪の子以外はみんな気が強そうだったし、小柄な茶髪と目の前の金髪は、食べ放題でめちゃくちゃに食い荒らしてた。

インデックスまでとは言わないが、食費がかなりかかりそうだ(誤解)。

黒髪の子が一番まともそうに見えたが、ああいうのが一番変わっているパターンが多い。

それに、彼女は上条の知り合いの少しズレた巫女さんと似たような匂いがする。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 22:58:23.06 ID:jlblck4U0


そして、茶髪ロングの大人っぽいお姉さん系が、ぶっちゃけると上条にとってのドストライクの絶好球だったのだが、

この金髪少女が言うには、彼女が最も危ない牌らしい。

ただでさえ、頭のおかしいこの少女が念を押して忠告しているのだ、ただものではないだろう。

全員が全員、なかなかの美少女であることが惜しまれるばかりである。


「あ、ちなみに、私は心に決めた人が居るからダメだからねー!」


キャピッ♪ とお菓子人形のように、舌を出すフレンダ。

それが女性だとは、誰も分かるはずはないだろうが。


「(アンタみたいな缶詰オタクと誰も付き合いたいとは思わねぇって・・!)」


どうして自分の周りに居る女の子は皆こう変人が多いのだろうか。

気落ちした上条は思わず深い溜め息をついてしまう。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:03:59.92 ID:jlblck4U0


「ちょ、ちょっと。結局、私の顔見て溜め息つくってどういうことよ。」

「いや、ちょっと嫌なこと思ってただけです・・。」

「・・ああ、そう。結局、アンタは誰かと一緒に来たわけ?

 まさか、土曜だっていうのに男一人で食材調達? 寂しい少年だねぇー。」

「いや、件のシスターと・・。」

「うわ、ご愁傷様。結局、首に縄つけとかなくて良いの? 辺りには見当たんないけど。」

「大丈夫だろ・・、たぶん。」


たぶんかよ・・、と同情の気持ちを見せるフレンダ。

同情するなら、ぜひお金をください、100円でも・・、切実なる願いを託す上条だった。


「牛乳なら、武蔵野牛乳ってのがオススメだぞ。」

「え、何よいきなり。」

「ああ、俺の知り合いから聞いた話なんだけどな。それを愛飲してる女の人は、胸が大きいらしいんだよ。」

「へー・・ぇーと、コレね。」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:08:42.69 ID:jlblck4U0


青と白のパッケージの平凡な牛乳だった。

側面にはデカデカと『武蔵野牛乳』と記載されている。

昼間にも関わらず、数本しか残っていないのは、大人気の証拠だろうか。


「ふぅーん、結局、普通の牛乳とあんまり変わらない気がするけど・・。」

「一応、飲んでみれば良いと思うぜ、値段も他のと変わり映えしないだろ?」

「結局、牛乳にこだわりなんてないから何でもいいけどねー、良い機会だからコレにするわ。」


ガコッと、空の買い物カゴの中に武蔵野牛乳を入れる。

上条の話に信憑性はないし、どこかの子供と違って、自分の胸に対して、それほどコンプレックスのないフレンダは、

特にそれを買う必要はなかったのだが、自分が好きな牛乳もなかったため、大人しく従った。

女の子に自分が好きな牛乳を勧め、満足そうな爽やかな笑みを浮かべる好青年、上条当麻。

牛乳会社の回し者か何かだろうか、とちょっぴり思ってしまうフレンダ。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:17:32.52 ID:jlblck4U0


「おう、上条さんオススメだぞ、あの馬鹿食いシスターも毎日グイグイ飲んでるからなッ!」

「その割に、あの子、控えめなバストじゃない?」

「まぁ、胸が出るより先に腹が出ると思うけどな・・あいつの場合。」

「・・まぁ、そこはアンタが体調管理してやんなよ、普通は、女の子はそういうのって敏感なモンだけどねー。」


彼女はダイエットをするくらいだったら、食べ過ぎで死んだ方が本望だろう、あくまで上条の推測だが。

しかし、彼女のそういう面の管理もきちんとしなければ、どこかの不良神父に焼き殺される可能性がある。

それに、久しぶりに会ったインデックスが相撲取りみたいな体型になっていたら、

あの神父は卒倒したあとに、精神的ショックの大きさから、首をくくるかもしれない。


「つーか、女の子四人で昼間から食材調達なんて、そっちこそ・・、何か・・。」

「結局、惨めってかー?」

「いや、そこまでは言わないけどよ・・。」

「私たちは今からケーキを作るのよー、とびっきり大きい奴をね!」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:24:55.89 ID:jlblck4U0


とびっきり大きい、というのはフレンダがこの場で脚色したに過ぎないが、

「アイテム」に浜面を加えると5人になってしまい、それなりの大きさにはなるため、あながち嘘でもなかった。


「ケーキって・・、昨日ダイエットのために健康ランドに来てたくせに、翌日になったらもうケーキを食い荒らすのかよ。」

「だ、べ、別に! ダイエットしに健康ランドに行ったわけじゃないっつーの!」

「うっ!?」


背伸びするように上条を見上げ、両手を振り上げながら、頬を風船のよう膨らませるフレンダ。

間近で見ても、やはりこの少女は可愛らしかった。

欧米人独特というべきか、その澄んだ肌の白さに、パッチリとした目は、日本人では有り得ないライトブルーの瞳。

上条がパッと見た感じでは、スタイルもそれほど悪い方ではなく、

女子高生という枠組み、つまり、制服が彼女の魅力を最大限に引き出しているようでもあった。

頭にチョコンと置いてあるような藍色の制帽も女の子らしくて良い。

缶詰缶詰うるさくなければ、普通にお近づきになりたい種の女の子である。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:30:45.56 ID:jlblck4U0


「あらあら~、どうした少年、顔が赤いぞ~、このフレンダ様の魅力にやられちゃったのかな~?」

「・・こんな食品売り場で、女の子の誘惑に負けるほど、上条さんは弱くありませんっ。」


その割に、頭の中はそれなりにヒートアップしていたが。

浜面をイジっているときのように、ニヤニヤし続けるフレンダ。


「っていうか、フレンダっていうのか名前。やっぱり日本人じゃなかったんだな。」

「ん、あ~、言ってなかったっけ、っていうか、よくもまぁ、名前も知らない女の子に話かけられるよねー。」

「べ、別に良いだろ、男女問わずに顔見知りが居たら話しかけたくなるのは普通だろっ。」


恋愛経験のない上条は、押しの強い積極的なタイプの女の子に弱い。

こういう面では、意外と浜面とも共通するところがあった。

だからこそ、フレンダは彼に少し惹かれたのかもしれない。

よく考えてみれば、恋愛の方面で積極的な女の子は、彼の周囲には居ないような気もする。

それは彼が女の子泣かせなほど、鈍感であることに原因があるのだが。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:36:04.48 ID:jlblck4U0


「フフ~ン、気に入った、アンタ。イジってて面白いわ。名前なんてゆーの?」

「名前・・、俺のか?」

「アンタ以外に誰の名前を聞いてると思ってんのよ・・。」

「俺は上条当麻。そういや、昨日の食べ放題大会は匿名だったしな、知らないのも無理ないか。」

「結局、同じ食べ放題のイバラを進んだ間柄だし、仲良くしましょー?」

「そうだな、俺は第七学区に住んでるし。ちょくちょく会うかもな、今日ここに来たのは気まぐれだったけどよ。」


その後の、アンタも第七学区に住んでるのか? という問いには曖昧な返答をするフレンダ。

あまり自分のことについては言いたくない、ついうっかり口を滑らせてしまいそうだからだ。

暗部組織というものは、ついうっかり、というのは死に繋がる。


「そろそろ、あの子を探しに行かないとやばいんじゃない、事が起こってからじゃ手遅れよん。」

「あー、否定できねぇのが怖いんだよな・・。」


後頭部をポリポリと掻く上条、思い当たる節でもあるのだろうか。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:43:46.34 ID:jlblck4U0


「意外とこのデパート広いしな・・、うっかり上の階とか行ったりして迷子になられちゃ、たまらないしな。」

「結局、彼氏っていうよりも、お父さんみたいだね。」

「・・それはあんまり褒められている気がしません。」


ここは近所のスーパーとは違うので、色々と勝手が違う上、試食コーナーが置いてある可能性も捨てきれない。

彼女はそれを見つけた瞬間に、チーターのような速度で飛びかかり、クジラの如き胃袋を持ち、

ライオンのように喰らいつき、そして、ハイエナにすら食べ残しを譲ることはない。

そんな彼女を他人に見られたくないし、それを引っ張り出していく自分もなんだか空しい。


「ま、次会ったときは私のオススメの缶詰を教えてあげるよー、今言っても私のあり余る缶詰への愛は、語りきれないからねー。」

「あ、ああ・・楽しみにしてるよ・・。」


上条にとっては、できれば二度とお目にかかりたくないかもしれない。

フレンダとしては、制限時間がなければもう少し話していたかったな、と名残惜しくもあったが。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:48:58.62 ID:jlblck4U0

―――――

「さて・・、一括りにお菓子やら食べ物やらと言っても、超種類がありますからねー・・。」


身体に微妙に似つかない大きさの買い物カゴを持ち、お菓子コーナーで立ちすくむ絹旗。

他人から見ると、ウキウキしながらお菓子選びをする子供のようだ。

忘れがちかもしれないが、絹旗は小学6年生、贔屓目に見ても、中学1,2年生程度の見た目なのである。


「お菓子よりも、おつまみ的なものからあたった方が良いでしょうかねぇ・・。」


なかなか決まらないため、ブツブツ独り言を呟きながら、お菓子コーナーを出ようとする絹旗。

そこで、前から覚えのある白い物体がズンズンと近づいてきていた、視線を向けると、それは昨日の・・、


「「ああァッッッッッー!!!!」」


向かい合った二人が、素っ頓狂な声をあげる。

絹旗にとっては、フルーツ温泉の静寂を打ち砕かれ、食べ放題選手権では圧倒的な差を見せ付けられ惨敗した相手。

インデックスにとっては、特に何もなく、因縁らしい因縁もないはずだが、なぜか苦い顔をしている。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:52:40.56 ID:jlblck4U0


「ふぅー、やれやれ、君は子供だねー、お菓子コーナーに入り浸るなんてさー。」

「なッ・・、そういう貴方こそ、ここに何の用になんです?」

「わ、私は別にお菓子になんか興味はないんだよ! 子供じゃあるまいし~、ね。」

「ふん、あれだけ超食い意地の張っていた人が、お菓子になんか興味がないとは、超笑わせてくれますね。」


会って早々に睨み合いを始める両者は、傍から見れば、愛らしい子供二人が喧嘩しているようにしか見えなかった。

片方は奇抜な白い修道服、片方は優秀な能力者ですごい怪力を持っている、ということを除けば。


「あ、あれは・・、とうまが出たい、っていうから仕方なく人肌脱いだだけなんだよ!」

「二秒でバレるような嘘をつかないでください、

 私が、貴方が参加したいと言ったときの場に居たことをもうお忘れですか?」

「うぅ~・・、敗北者が私にあーだこーだ言う権利はないんだよ!」

「それだけ食べておいて、成長の兆しが超見られない勝利者になるくらいなら、私は負けていても超構いませんがね。」

「うぐッ!?」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:56:24.20 ID:jlblck4U0


図星を突かれたのか、後ずさるインデックス。

人をイジるということに関しては、場慣れしている絹旗の方が一枚上手のようだ。


「だいたい、貴方は日頃からかなりの量を食べているようですが、その食費は何処から出てるんです?」

「う・・、と、とうまが出してくれてるんだよ・・。」


インデックスは膨大な量の食べ物をブラックホールか四次元ポケットのように食べ続けている。

しかし、それと代価になるお金も、ナイアガラの滝の勢いで落ちているのだ。

それを払ってくれているのは、もちろん居候先の主人である、上条当麻。

彼が日頃から困窮する生活費に頭を抱えていることを、彼女は知らないわけではない。

それでも、彼女は食べ続けているのだ、別にそうしなければ生きていけないわけでもないのに。


「ほら見なさい、自分で稼いだわけでもないのに、食べ物を食べさせてもらっている、

 ということに対する感謝が、貴方には少しでもあるんですか?」


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:57:21.07 ID:jlblck4U0


ビシィッと、インデックスに指を突きつける絹旗。

暗部組織として働き、稼いで、食べ物やら映画観賞やらを楽しんでいる絹旗には、

不労飲食?をしているインデックスを責める権利があった。

人の家の事情に彼女が口を出すのは、少々ご法度気味ではあるが。

しかし、インデックスに対して、上条以外が食生活を正すように忠告したのは彼女が初めてかもしれない。

インデックスの何かを堪えるような表情が、それを顕著に証明していた。


「だいたい、シスターなら、神様への祈りも大事なことですが、隣人へ敬意を振舞うことも超大切だと思いますが。」

「わ、私だって・・とうまに対する感謝の意くらいあるんだよ・・。」

「そういうのは、意思だけでなく、行動で表すべきだと思いますね。」

「こ、行動・・?」

「はい。例えば、皿を超洗うとか、料理を超手伝うとか・・、別に料理関係である必要もないでしょう。

 疲れきったその人の身体を超マッサージしてあげるとか、そんな些細な事で大丈夫なんです。」


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:58:32.74 ID:jlblck4U0

「・・とうまは、勉強とかも大変っぽい、かなー、課題とか補習とかいうのでいつも悩んでるみたいだし。」

「ぇーと、とうま、というのは昨日一緒に居た男の子のことで良いんですか?

 学生なら、英語の勉強を見てあげる、とかも効果的ではないでしょうか。」


インデックスはイギリス出身のため、多少の地域の差異はあるとはいえ、英語は堪能だ。

古典や数学ではあまり力になれないかもしれないが、英語なら即戦力だろう。


「どうやら、貴方は日頃から、そういう恩返しの行動が超足りていないように見えます。

 だからこそ、小さなことをやっただけでも、とうまという人は超有り難いと感じるはずです。

 それにより、貴方への対応も今よりも超優しくなるかもしれませんよ?」

「な、なるほど・・、たまには人の言うことに耳を傾けるのも、タメになるんだよ・・。」


かくいう絹旗も、知り合いに依存するタイプ、と言われたこともあった。

しかし、この年齢にも関わらず、しっかり自立しているのは、悲しいかな、能力や環境のせいだろう。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:59:16.77 ID:jlblck4U0


「ですから、まずは、今日はお菓子をねだるのはやめておくべきでしょう、小さなことからコツコツと、です。」

「・・そうだね、よく分かったんだよ。」

「でしたら、その手にあるポテトチップスをすべて棚に戻すべきだと思いますが。」

「・・・う、うん。」


いつの間にか、絹旗の説教の最中に5袋ものチップスを抱え込んでいたようだ。

仕方なく、4袋だけ戻すインデックス。


「全部、です。」

「・・ぅぅ。」


名残惜しいように、最後の1袋も棚に戻す彼女の姿を、満足そうに見届ける絹旗。

今日も良いことをした。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:00:42.00 ID://n6ezIT0

「・・貴方の名前は何て言うの?」

「ぇーと・・私は絹旗と言います。貴方は確か・・イ、インテグラルでしたっけ?」

「私の名前はインデックスなんだよ! 車みたいな名前じゃないんだよ!」

「ああ・・、すみません、特徴的な名前なので、もう間違えないと思いますが。」


必死に訂正を求めたインデックスを見て、この人はそんなにも名前を覚えてもらえないんだろうか、と少し同情する絹旗。

まぁ、何処の誰が付けた名前なのかは知らないが、確かに変わった名前である。


「じゃぁ・・、私、とうまに良いことしてくるよ!」

「そうです、超ご奉仕してくるんですよ!」


手を振って走っていくインデックスの姿を目で追いながら、

彼女が先ほど戻したポテトチップスに手を伸ばす絹旗。

彼女に説教している最中から、目をつけていたものの、

なかなか手を出せないまま、彼女に取られてしまっていた。

すべては計算通りである。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:05:25.29 ID://n6ezIT0


「・・・・あー!? ちょ、ちょっと待つんだよ! それ! 今、私が戻したお菓子なんだよ!!」

「(ちっ・・、超はやる気持ちを抑えられませんでしたか・・、私としたことがッ・・!)」


最後にインデックスが振り向いたとき、自分が戻したチップスに絹旗が手をつけていたのが見えてしまったらしく、

超特急で元の場所に戻ってくる、やはり食べ物のことになると馬力が増すらしい。


「それが欲しかったためだけに、私にそれっぽい説教してたんだね!」

「い、いえ! 私の言っていることが間違っていたわけではありませんから!」

「うー! やっぱりそれ、持っていくからねっ!」

「んな・・っ! 超やめてください!」


他にも同じものが置いてあるにもかかわらず、一袋のポテトチップスを取り合う絹旗とインデックス。

さすがに絹旗は能力を使わなかったが、そうなるとインデックスの食欲からの脊髄反射のような力強さは圧倒的である。


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 00:08:36.40 ID://n6ezIT0


「んぎぎぎ・・・ッ」

「む~~ッ!!」


パァァァァァァァァァン!!!!!


と、無残にもはじけ飛び、パラパラと二人の頭に降り注ぐチップス。

桜が舞い散るようにヒラヒラと落ちていくそれらは、どこか哀愁すら漂わせていた。


「「・・・・・・・。」」


駆け寄ってくる店員の足音がする。

二人の逃走劇が始まった。

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