2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

唯「あずにゃ……うえっぷ……」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:51:43.06 ID:nl4ksKOu0 [1/30]
梓に抱きつこうとした唯の足が唐突に止まった。


梓「唯先輩?どうしたんしたんですか?気分悪いんですか?」

唯「ち、近づかないで!」

梓「えっ…?」

唯「あずにゃん……なんでそんな臭いを出してるの?」

梓「ニオイ?」

唯「腐りきったチーズみたいな臭いしてるよ!」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:52:37.60 ID:nl4ksKOu0
梓「そんな臭い出してないですよ!」

唯「だ、だから、近づかないで……ゲホッゲホ」

梓「ひ、ひどいです!唯先輩!」


その時、部室の扉が開いて律が入ってきた。

律「あれ?唯と梓だけか、他の二人はまだ来て………
  って、なんだこの臭いは!?」

梓「え!?」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:53:41.64 ID:nl4ksKOu0
律「というか、梓から臭うぞ!真夏の剣道部を3倍きつくしたような臭いが…」

梓「り、律先輩まで!?」

律「ちょっ……こっち来ないでくれ……ゲホッゲホッゲホ」

唯「あずにゃん!やめて!りっちゃんが呼吸困難で死んじゃうよ!」

梓「二人共ひどいですよ!冗談でも言って悪いことがあるんですよ!?」

律「いや、冗談じゃなくてマジで臭いんだけど……」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:54:26.14 ID:nl4ksKOu0
その時、部室の扉が開いた。
澪だった。

梓「あっ澪先輩!聞いてくださいよ!唯先輩と律先輩が――」

澪「……………」

澪「あはは……どうやら音楽室と下水道を間違えてしまったみたいだな……」

澪はゆっくりと扉を閉めた。

梓「間違えてないです!戻ってきてください!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:55:01.93 ID:nl4ksKOu0
………


律「梓、お前、肥溜めの中でクロールの練習でもしてきたのか?」

梓「そんなことしてないですよ!」

澪(おい、律!失礼なこと言うなよ!梓がかわいそうだろ!)

律(でも、本当にひどい臭いだぞこれ…。音楽室の外に避難したいんだけど…)

唯(そんなことしたら、あずにゃんが可哀相だよぉ…)

澪(そうだ。梓を傷つけるようなことは私が許さないぞ)

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:56:45.21 ID:nl4ksKOu0
梓「私……そんなに臭いですか…?」

唯「はは…全然臭くないよ……」

律「そうそう、さっきのは何か気のせいだったわ!むしろ、いい匂いかもしれない!」

梓「本当ですか…?」

唯「う、うん!なんというか上品な香りが漂ってるよ!」

澪「ああ、17世紀頃のパリって感じだよな」

梓「それ最悪に臭いって事じゃないですか!!」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:57:35.27 ID:nl4ksKOu0
律「おい澪!梓泣いちゃったぞ!」

澪「うわああ!ごめん梓!!!」

梓「うう……ぐすっ…」

唯「で、でも何でこんな臭いになっちゃったの…?」

梓「分からないです…」

律「分からないって……これ街に出たら公害訴訟起きるレベルだろ……。
  クラスメートは何も言わなかったのか?」

梓「いえ…特に何も…」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 19:59:12.23 ID:nl4ksKOu0
澪「常識的に考えて、この悪臭の中で普通に勉強出来る訳がないよな…」

律「ということは、放課後から今までの間に何かあったということか…」

唯「あずにゃんは何か心当たりある?」

梓「ないですね……そんな17世紀頃のパリの臭いになるようなことは…」

律(おい澪。根にもたれてるみたいだぞ)

澪(ごめんよ…梓……ううっ…)

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:00:31.32 ID:nl4ksKOu0
唯(うっ……なんか吐きそうになってきた…)

律(お、おい!やめろ!今この状況で吐いたりなんかしたら臭いがさらにすごいことになるだろ!)

澪(我慢だ!なんとか我慢するんだ!)

唯(うん……がんばるよ私……)

律(くそ、こんな時にムギがいればなぁ……)

澪(ああ…ムギならお得意の名推理で梓の臭いの原因を解明してくれるのに…)

唯(ムギちゃんが来るまでなんとか持ちこたえなきゃ…)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:01:49.45 ID:nl4ksKOu0
唯達がそんなことを話していると、部室の扉が開いて紬が入ってきた。

紬「みんなお待たせ~掃除当番が思いのほか長引いちゃって………って何この臭いオエエッエエ」ビシャビシャビシャ

律「うわああ!ムギが吐いた!」

唯「ううっ……オエエエッエエ」ビシャビシャァ

澪「唯もつられて吐いてしまったぞ!」

梓「私も……オエエエッエエ」ビシャシャア

律「おい待て!お前は吐くな!」

澪「もうやだぁ…」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:02:53.42 ID:nl4ksKOu0
…………

音楽室はまさに地獄絵図と化していた。


紬「なんで…梓ちゃんから産業廃棄物の臭いがしてるの…?」

梓「私にも何がなんだか……」

梓の目には涙が浮かんでいた。無理もない。
臭いと言われて傷つかない女の子はいないのだ。

律「まじで原因はなんなんだろうなぁ…」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:04:34.74 ID:nl4ksKOu0
唯「ムギちゃんはどう思う?」

紬「そういえば、体臭がものすごくキツクなる薬があるとか聞いたことが…」

澪「!!」

律「それを知らないうちに飲んだ……いや、飲まされた!?」

澪「梓、朝から今までに口にしたものを思い返してみるんだ!」

梓「朝は……ケロッグのチョコクリスピーを牛乳につけて…」

律(ちょっ……ケロッグのチョコクリスピーって……)

唯(小学生みたい……ぷっ…)

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:06:18.47 ID:nl4ksKOu0
澪「おいちょっと待てお前ら、まるでケロッグが子供向けの食べ物みたいな言い草だな」

律「え?だって、そうだろ?」

唯「流石の私もチョコクリスピー(笑)はちょっと……」

紬「フルーツグラノーラまだ分かるけどねぇ…」

梓「……」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:08:05.19 ID:nl4ksKOu0
澪「ふざけるな!お前らケロッグの食品の栄養価の高さを知ってて言ってるのか!?」

唯「あれ…?もしかして、澪ちゃんもケロッグのコーンフレーク食べてるの?」

澪「ああ、毎日チョコワを朝ごはんに食べている」

律「チョコワwwwwww」

紬「それ本気で言ってるの…澪ちゃん…?」

澪「もちろんだ」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:09:35.98 ID:nl4ksKOu0
唯「何……澪ちゃん、色の変わるスプーンでも集めてるの?」

律「グゥレイト(笑)!!」

澪「おい!ケロッグを馬鹿にするな!!!」

梓「そうです!チョコクリスピーは日本人に不足しがちな栄養素をバランスよく補ってくれるんですよ!」

律「はいはい、お子様でちゅね~」

唯「コーンフレークが許されるのは小学生までだよね」

澪「そこに座れ!私がケロッグの素晴らしさを教え込んでやる!」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:11:13.77 ID:nl4ksKOu0
~1時間後~

律「すまなかった…ケロッグのコーンフレークがそれほど栄養価に優れていたとはな…」

唯「ごめんね…私もケロッグを甘く見てたよ…」

澪「いや、分かればいいんだよ。お前らもチョコワを食べてでっかくなれよ」

紬「それで、何の話してたんだっけ…?」

梓「なんでしたっけ?」

律「お前の臭いの原因だよ!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:11:55.12 ID:nl4ksKOu0
澪「梓はチョコクリスピーの次に何食べたんだ?」

梓「次はお弁当ですね…自分で作った奴です。飲み物はコンビニで買った苺オレを飲みました」

紬「うんうん」

梓「あとは憂と純とお弁当のおかずの交換……これはいつものことですね」

唯「ふんふん」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:12:46.08 ID:nl4ksKOu0
梓「昼休みに、純が南アジアから取り寄せたっていうサプリメントをくれたので飲みました」

律「なんだよそれ怪しすぎるだろ!」

紬「というより、なんでそんなもの飲もうと思ったの…?」

澪「原因はそれで間違いなさそうだな」

律「あの糞モブ、うちの梓に変なもん飲ませやがって…
  ちょっとジャズ研に殴りこんでくる」

律はそう言って音楽室を出て行った。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:14:17.23 ID:nl4ksKOu0
澪「しかし、その臭いはいつになったら抜けるんだろうな…」

梓「二度と戻らなかったらどうしよう……ううっ…」

唯「大丈夫だよあずにゃん…」ギュッ

唯は梓を抱きしめた。

梓「ゆ、唯先輩!そんなに近づいちゃダメです!臭いですよ!」

唯「ううん、どんなに臭くても私の大好きなあずにゃんだから…」

梓「唯先輩……」キュン

唯「ごめんやっぱ無理……オエエエッエエエ」ビシャビシャビシャ

梓「ぎゃあああ!!!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:16:56.55 ID:nl4ksKOu0
唯の吐瀉物を全身に浴びた梓はこの世のものとは思えないほどの悪臭を放っていた。

唯「あずにゃん…ごめんよ…」

梓「ひ、ひどいです!最悪ですよ!」

唯「ね、ねえ澪ちゃん!どうすればいいかな…?」

澪「そういえば、たまごっちを寝かせておくの忘れてたよ……家に帰らないと…」

唯「澪ちゃん逃げないで!!」

澪「もう帰してくれ!頭がおかしくなりそうなんだ!」

部室の扉が開いて、律が中に入ってきた。

律「純から解毒剤を奪い取ってきたぞ!これでもう大丈……なんだこの臭いオエエエェェ」ビシャビシャ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:18:13.14 ID:nl4ksKOu0
………

律「解毒剤は効いたみたいだな。腐敗したカラスの死体みたいな臭いしなくなったし」

梓「でも、唯先輩の嘔吐物が……」

唯「本当にごめんね…」

澪「でも、さっきまでのが強烈すぎて何の臭いも感じ無いな」

律「たしかにそうだな」

紬「むしろ、フルーティでいい香りだわ」

唯「あはは~なんか照れるなぁ」

梓「ちょっ…ちょっと待ってください!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:20:04.07 ID:nl4ksKOu0
梓「その臭いを全く感じてなかった私は今最悪な気分なんですよ!」

唯「そ、そうだよね……」

律「ということは、それが気にならないくらいの悪臭を出せば解決ということか…」

澪(今日の律はいつになく冴えてるな…)

唯「あっそれならいいものがあるよ!」

 唯は物置に行き、ビニール袋を取って戻ってきた。

梓「それ何ですか?」

唯「2年前のカレーパンだよ!」

澪「捨てろよ!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:22:11.77 ID:nl4ksKOu0
唯「ほらっあずにゃん!腐りきったカレーパンの臭いだよ!」

 唯がビニール袋の封を切ると、中から悪夢のような腐敗臭が立ち込めてきた。


梓「うっ……」

律「なんだ、腐ったカレーパンって大した事ないんだな」

紬「全然普通よね」

澪「カレーパン見てたらなんかお腹空いてきたよ」

梓「私どんだけ臭かったんですか!?」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:23:52.23 ID:nl4ksKOu0
唯「うーん、2年前のカレーパンでもダメかぁ…」

紬「それ以上に臭いものって言ったらなかなか思いつかないよねぇ…」

律「澪の口臭はどうだ?」

梓「!!」

澪「えっ…?」

唯「そうか!澪ちゃんの口臭ならいけるかも」

紬「確かに澪ちゃんの口臭なら腐ったカレーパンを上回りそうね」

澪「お、おい!ちょっと待ってくれ!」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:25:33.51 ID:nl4ksKOu0
澪「まるで、私が口から腐敗臭をまき散らしているかのような言い方じゃないか」

律「………えっ、今更何言ってるんだ?」

唯「澪ちゃんが口を開くたびに、私たちが嫌な顔してたの気づいてなかったの?」

紬「私、澪ちゃんに出すお菓子には密かにブレスケア混ぜてたのよ」

澪「嘘だろ……?」

梓「私嫌ですよ!澪先輩の口臭を直に嗅ぐだなんて!」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:28:52.66 ID:nl4ksKOu0
紬「梓ちゃん、これは試練なのよ…」

律「ああ、私たち――いや、放課後ティータイムが前に進むにはこれしかないんだよ…」


律は梓の頭を掴むと、澪の顔の前まで押しやった。

梓「―――――っ」

梓「うっ…ううっ…うえええ…マジで死ぬ!死にます!」

唯「が、がんばってあずにゃん!」

澪「………」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:32:37.11 ID:nl4ksKOu0
梓「ゲホッゲホッ……もうダメ!新鮮な酸素が吸いたい!」

 梓は澪の顔から離れて、深呼吸をした。

梓「ふぅ………って、あれっ、唯先輩のゲロの臭いが気にならなくなりました」

律「!」

紬「やったわね梓ちゃん!」

唯「よかったよあずにゃん!」ギュッ

梓「えへへ…」


梓達は抱き合って笑った。
そして、みんなで笑いあう中、梓はふと思った。こんな楽しい時間がいつまでも続けばいいのに、と。
部室に集まって、お茶を飲みながら冗談言って笑って、たまに練習して、ライブやって――
しかし、そんな楽しい時間もいつかは終わりが来てしまう。時間は私たちを押し出すように大人にしていく。
いつまでも子供のままではいられないのだ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:33:46.60 ID:nl4ksKOu0
………

 卒業式の日、唯達は学校の帰り道をいつもの5人で歩いていた。


唯「私たちももう大学生かぁ」

律「高校三年間、本当に楽しかったな」

澪「ああ、忘れられない思い出だよ」

梓「……」

唯「あずにゃんとはちょっと会いづらくなっちゃうね…」

律「休みの日には梓も一緒に練習しような」

紬「大学でも私たちは放課後ティータイムだからね!」

梓「………嫌です」

唯「あずにゃん…?」

梓「そんなの嫌です!」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:35:11.73 ID:nl4ksKOu0
梓「先輩達と離れ離れになるだなんて嫌です!」

律「……」

唯「あずにゃん、ワガママ言っちゃダメだよ」

梓「なんでですか……なんで楽しい時間は終わっちゃうんですか…
  私はずっと先輩たちと居たいです。ずっと高校生のままで居たいです!
  大人になんかなりたくないです!」

澪「梓…」

梓「そ、そうだ…これは夢なんです。何もかも夢なんです!
  あはは…先輩たちが卒業するだなんて悪い夢でしたよ
  それじゃ今からみんなで部室に行きま――」

律「バカヤロウ!!」

律は梓の肩を掴んだ。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/04(土) 20:37:16.56 ID:nl4ksKOu0 [30/30]
律「思い返してみろよ!本当に楽しい時間だったか!?」

梓「えっ…?」

律「私たちはやる気なくて、ただお茶飲んでるだけ。
  唯にはゲロをぶっかけられて、澪の口臭は最悪
  そんな軽音部が本当に楽しかったか!?」

梓「……本当だ、よく考えたら全然楽しくありませんでした」



終わり

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)