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(´・ω・`)彼らは夕陽に消ゆるようです
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:41:44.63 ID:aXM1RmdKO
代理乙です
じゃあ投下はじめます
代理乙です
じゃあ投下はじめます
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:43:52.68 ID:aXM1RmdKO
小さく開いた窓の隙間で、絶えず風が回っている。
それでも、教室の空気はかなり居心地の悪い重みを含んでいた。
日が暮れかけているが、誰も蛍光灯を点けようとはしない。
外から射しこむ朱色の刃が煌めいた。煌めくほどに、教室は静かなバーにミラーボールが踊っているような違和感に包まれていく。
夕陽の持つロマンチシズムは、3つの机に1人ずつ腰かけた少年達が持つ、ごちゃごちゃした感情とは根本的に違うのだ。
丸い時計が4時55分を示す。
それを待っていたかのように、少年の一人が、軽やかに机の上から降りた。
(´・ω・`)「そろそろ時間だな。僕は失礼するよ」
少年は言い放つと、足音もなく廊下のほうへ向かっていく。
だが、背後で机が軋むのが聞こえると、足を止めて振り向いた。
('A`)「いや、その……俺、やっぱりさあ」
教室にいる、二人目の少年が立ち上がっていた。
彼は指先でそわそわ前髪を触りながら口ごもった。
('A`)「……」
そして、それ以上の言葉が出ることはなかった。一人目の少年は、元のように机に座った少年を鼻で笑い、また歩きだす。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:48:12.22 ID:aXM1RmdKO
三人目の少年の前を通るとき、また少年は少しそちらに顔を傾けた。
( ^ω^)「何か言うことがあるのかお?」
嘘くさい笑顔で、三人目の少年は訊いた。
(´・ω・`)「無いけどね、君も何か言うんじゃないかと思って」
( ^ω^)「一緒にされるのは不愉快だお」
('A`)「俺は……」
二人目の少年が、憂鬱そうに俯く。
それを振り向きもせず、一人目の少年は軽く首の運動をしてから、今度こそ止まることなく教室を出た。
廊下の空気は、別世界のように澄んでいた。
しかし少年が呼吸をすると、彼の口から淀みが溢れた。先ほどの教室に充満していた重みと同じものである。
少年はそれをひときわ大きく吐き出すと、暫く動かずに、目をぎゅっと瞑っていた。
なにかを堪えているようなさまであった。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:52:11.08 ID:aXM1RmdKO
やがて、階段を下ってくる足音が聞こえた。
彼は少々はっとして目を開き、急いで隣の教室に駆け込む。
(,,;゚Д゚)「おっと!」
端正な顔だちの少年が、制服の前をはだけた少女といちゃついているところだった。
(,,;゚Д゚)「……ショボンかよ、ノックくらいしてくんないか」
(´・ω・`)「失礼した。ついでにあと10分くらい静かにしててくれるか」
(,,゚Д゚)「あー? 俺はなぁ」
(*゚ー゚)「いいじゃん、ギコくん。なんか面白そうな匂いがするし」
少女は何事もなかったかのように服の乱れを直し、情事に割り込んできた少年の近くに寄ってきた。
(,,;゚Д゚)「あ、おい、しぃってば」
(*゚ー゚)「ねぇショボンくん、そうなんでしょ? ショボンくんにとっては笑えない事態かもだけど」
(´・ω・`)「二人とも、今は特に静かにしてくれ」
(,,;゚Д゚)「む……」
少年がぴしゃりと言うと、二人は即座に口を閉ざした。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:56:03.73 ID:aXM1RmdKO
異常な静寂の中、足音が聞こえ始めた。
足音が大きくなるにつれて、隣で耳をそばだてている少女が興奮していくのがわかる。
少年は、興味を持たれること自体に悪い気はしなかったが、やはり少女の異常性を感じずにはいられなかった。
足音が、すぐ近くで止まった。
そして、教室の戸を開く独特の音。息を呑むのが聞こえてから、再び戸は閉じられた。
隣の教室から女の声が聞こえたが、どのような内容かは聞き取れなかった。
(´・ω・`)「わかった、話すよ」
少年は唐突に言った。
少女は嬉しそうに口唇を舐めたが、恋人の少年のほうは意味を解していないようだった。
(´・ω・`)「今、僕の置かれている状況を説明しよう。……いや、させてくれ」
(*゚ー゚)「ショボンくん病んでるねえ」
(´・ω・`)「そうかな。違うと思うけど」
(,,゚Д゚)「……とりあえず、そんなドアのそばに密集してないで椅子にでも座ったらどうだ」
少年は隣の教室に意識をやりながら立ち上がった。
(´・ω・`)「そうさせてもらおうか」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:59:55.89 ID:aXM1RmdKO
少年はカップルと向かい合う形で座った。
2対1の構図に、少年は奇妙な予言性を感じざるを得なかった。
少年は息を吸うと、他人事のように淡々と語りだした。
(´・ω・`)「事の発端は、1週間ほど前になる」
*
その日はなんでもない平日で、学校の授業があり、放課後があった。
学校が終わった後、示しあわせたわけでもなく、僕らは教室に集まっていた。
僕とドクオと、ブーンの3人だ。
( ^ω^)「なんで二人は教室に残ってるんだお?」
(´・ω・`)「帰った後の予定が何もないからさ。少しでも退屈から逃れようとしてるんだ」
('A`)「俺は家の鍵を忘れたことを既にして気づいているからだ。親が帰るまで時間を潰さなきゃならない」
( ^ω^)「要するに暇なのかお」
(´・ω・`)「まぁ無粋に言ってしまえば」
('A`)「そういうこと」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:04:14.23 ID:aXM1RmdKO
それなら、と言い出したのはブーンだった。
むろん、彼が言わずとも、僕かドクオが同じことを提案していただろう。
それほどに僕ら三人の関係は恒常的だった。
( ^ω^)「それなら、僕んちに行こうじゃないかお」
断る理由はもちろん無く、僕たちはすぐにブーンの家へ行った。
学校から歩いて10分とかからぬ位置にあり、僕らが集うといえば、ほぼ必ずブーンの家に来ることになっている。
そんな慣習が出来上がったのは、ただ近いという以上のメリットがブーンの家にあったからだ。
このメリットについては、また後で話すとしよう。
僕らはいつものようにブーンの家に上がり込んで、2時間ほどテレビゲームに没頭した。
それからは各々が定位置に座して、雑談が始まった。
ブーンがベッドの上、ドクオが勉強机の前のオフィスチェアー、僕はテレビの前の座椅子という位置だ。
('A`)「俺さ、このところブーンに彼女ができないのは何故かってことで、ずっと頭を悩ませてるんだよね」
( ^ω^)「ま た そ の 話 か」
(´・ω・`)「3回目くらいの既視感だ」
('A`)「だってお前、この間クーさんに告白されてたじゃん。なんで付き合ってないの?」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:08:12.44 ID:aXM1RmdKO
(;^ω^)「いや、なんか……」
ブーンは暫く、答えにくそうにまごついた。
(;^ω^)「翌日にオッケーって言ったら『もう嫌い』って言われたんだお」
('A`)「……うん。それは残念だが」
(´・ω・`)「翌日まで持ち込んだ時点で意味がわからん」
('A`)「なぜ即OKしなかったのか」
(´・ω・`)「クーさんを相手に悩む理由がない」
('A`)「そんな優柔不断だからツンをショボンに取られるんだ」
( ^ω^)「おい止めろ」
ここらで人物整理をしておこう。
まず僕がショボン。
我が友人のドクオ。
ドクオとは中学校以来の付き合いをもつブーン。
そしてブーンの幼馴染みであり、それ以上に僕の恋人であるツンだ。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:12:22.68 ID:aXM1RmdKO
( ^ω^)「いいかお? ツンと僕はずっと幼馴染みだったの。恋愛感情さらっさらないの。いつかこうなる運命だったの」
(´・ω・`)「そうだぜドクオ。ツンを俺に紹介したのはブーンなんだぜ」
('A`)「ショボン、お前がその口調で喋るのは気持ち悪い」
( ^ω^)「うん、マジでキモいお」
(´・ω・`)「ショボーン……ってこれあんまりやりたくないんだけど」
僕らの中で恒例となったパターンに、ドクオがヒヒヒッと笑った。
それで一旦、ツンの話には区切りがついた。
それからしばらく、くだらない話に花を咲かせていた。
最近のAV女優は可愛すぎてなんか嫌だ、という話が合意に達したところで、時計の短い針が7時を示した。
それに気付いたドクオが、「そろそろだ」と僕らに呼びかけた。
さっき言った、ブーンの家に集まるメリットが、この時間にあるのだ。
ドクオの呼びかけに、僕ら三人はいっせいにベッドの上にある窓に張りついた。
目の前には、隣家の窓が見える。カーテンはかかっているが、そのファンシーな柄が、まさに女の子の部屋といった風情だ。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:16:30.12 ID:aXM1RmdKO
もはや言うまでもなく、隣の家とはブーンの幼馴染みたるツンの家で、目の前に見える窓は、ツンの部屋の窓だ。
吹奏楽部にいるツンは帰りが遅くなり、周囲の暗くなったこの時間帯に帰ってくる。
そして、カーテンが掛かっているからと高をくくっているのか、ツンは窓のそばで着替えをする。
もちろん、着替えの様子はカーテンに遮られて、直接見ることはできない。
しかし目を凝らして見ると、カーテンに彼女のシルエットが映っていて、ツンの部屋はストリップ小屋の様相を呈してくる。
そう、こんなことがやたらとブーンの家に集うメリットなのだ。
(*^ω^)「来たお!」
カーテンの向こうが明るくなり、ブーンがいきり立った。
特徴的なツーテールの少女のシルエットがカーテンにぼんやりと浮かぶ。
僕とドクオも身を乗り出した。
ふと、右膝に奇妙な感触を覚えたが、気にしないでおく。
その時は、ツンの発育途上の裸身を観察することが何より先決だった。
(;'A`)「おいショボン、そんなに押すなよ。お前いつでも生で見れるだろうが」
(´・ω・`)「お前はエロスってものを何にもわかっちゃいないな。このシルエットこそ最高なんだ」
頭ごなしに否定されたのが癪に触ったか、ドクオは少しばかり表情を凍らせた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:20:07.56 ID:aXM1RmdKO
('A`)「でも実際にするほうが興奮するだろ?」
(´・ω・`)「そりゃ、まあ」
(#'A`)「じゃあ、どけよ!」
ドクオは僕を怒鳴りつけ、肩口で突き飛ばしてきた。
瞬間、僕の膝に奇妙な感覚が走った。
続いて、僕の耳にガラスの割れる音が届く。
(;´・ω・`)「いたたた……?」
ベッドに背中から倒れただけなのに、ほんの少し息苦しくなった。
息苦しさがなくなると、ようやく膝に感じたものの正体がわかった。
制服のズボンを膝まで上げると、小さくて赤いものがまず目に入った。ごく少量の血であった。
(´・ω・`)「おーい、ドクオー。男らしくない怪我しちまったぜぃ」
僕は膝の傷口を指差し、ねちっこく訴えかけた。
ドクオは僕の傷を一瞥して、長いため息を吐くと「救急箱、取ってくる」と呟いて窓のそばを離れた。
救急箱の位置まで分かるようになると、いよいよ客人らしさは無くなってくるな、と僕は彼の後ろ姿を見て思った。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:24:39.30 ID:aXM1RmdKO
ところで、実際の住人たるブーンの方はというと、ちょっとした流血沙汰を気にも留めず、血走った目でカーテンを見つめていた。
幼馴染みの裸身のシルエットを見つめるブーンの瞳には、明らかに病的なものがあったように見えた。
しかし僕は、ブーンを制止せずに放っておき、まず僕の膝を傷つけたものを探し始めた。
それは、さっきまで僕のいたところを見ればすぐに見つかった。
木製風の写真立てが、無造作に放置されていた。
前面のガラスが割れていて、これで怪我をしたのだと分かる。
僕は写真立てを拾い上げてガラスをゴミ箱に流し込んで、それから初めて、飾ってある写真をきちんと見た。
('A`)「よっと、救急箱だぜ……って、どうした、ショボン?」
(´・ω・`)「ドクオ。ちょっとこっちへ来てみろ」
('A`)「何だよ?」
(´・ω・`)「良いから。これを見てみろ」
僕は写真立てをドクオに突きつけた。
救急箱が床に落ち、中身の薬やら絆創膏やらが散らばった。
(´・ω・`)「画質の悪さからいって、盗撮かな」
ドクオが言葉を失うのも無理はなかった。
写真立てには、カーテンの向こうにあるべき、ツンの一糸纏わぬ姿があった。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:28:12.60 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「この部屋にあったのを、僕が踏んで壊してしまったんだ。怪我の原因はそれだよ」
('A`)「そうか、ここに……」
ドクオは長い吐息をついた。
('A`)「それじゃあ……ブーンは盗撮魔なのか」
(´・ω・`)「おそらくね。まぁ間違いないと思うけど」
('A`)「……それで、どうする?」
(´・ω・`)「えっ?」
彼の質問の意図がわからなくて、僕は思わず聞き返した。
('A`)「あれをこのまま許すわけにはいかないだろ? 何かして、奴の罪を分からせなきゃいけない」
(´・ω・`)「そういえばそうか。よく気付いたな、ドクオ」
冗談でなく、心底から出た言葉だった。
その時に、僕は未だあの事態を現実に受け止めていないのだと思った。
(;'A`)「大丈夫か、ショボン? 無理しなくても……」
しばらく考え込んでいると、ドクオが心配そうに覗きこんできた。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:32:12.49 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「いや、やるさ。やるとも。ただこう、どう料理してやろうかと考えててさ」
僕は慌てて両手を振った。
('A`)「そうか。確かにただ追及するだけじゃなんだしな」
ドクオの握り拳が、がくがくと震えた。それを見ていて、僕もようやくその気になってきた。
僕は、まだ幼馴染みのストリップショーに夢中になって、この事態に気付いていないブーンの背中を見た。
つられて、ドクオも彼を見る。
確かに彼を見ていると、怒りのような、体が熱くなる感情が沸いてきた。
目から上は、どれだけ彼の姿を見ても冷たいままだったが。
('A`)「その、ショボン……。俺も済まなかった」
ブーンの丸い背中を見つめ、ドクオはぽつりと言った。
(´・ω・`)「……なぜ謝る?」
('A`)「俺は、いくらショボンが許してくれるからって、こうして覗きをするべきじゃなかったんだって……。
友達の彼女の着替えを覗くなんて最低だって、今更気付いて……お前に申し訳なくなってさ」
(´・ω・`)「あぁ、そういうこと」
その時のブーンの姿を見ていれば、誰でもそんな気持ちになるだろう。
あれは実に醜い豚にしか見えなかった。性欲が不潔なものだという考えに、初めて認めるところがあると思った。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:36:15.33 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「良いんだよ。もともと覗きの発案者はあいつだし、最初はドクオ、乗り気じゃなかっただろ?」
('A`)「そうだったかな……」
(´・ω・`)「そうだったさ。だから気にするな。今の悪はブーンだろ」
ドクオは少し口をもごもごさせたが、ややあって頷いた。
(´・ω・`)「それに、ドクオの話でいいことを思い付いたしな」
('A`)「何?」
そこで、ツンの着替えが終わったらしかった。
ブーンが恵比寿顔でこちらを振り向いた。
(*^ω^)「やー、お前ら途中だってのに何処か行っちゃうから、僕一人占めしちゃったお。
なんでそんな隅っこにいるんだお?」
(´・ω・`)「なに、ちょっとしたくなっちゃってね。ちゃんとティッシュに出したから心配はいらないよ」
僕は後ろ手でポケットティッシュを引き出し、丸めてゴミ箱に捨てた。
(;'A`)「……う、うん」
(;^ω^)「お前ら人ん家でやめろお。まぁ、あれを見てたらしょうがないけどNE」
ブーンは僕の冗談を真に受けたようで、それ以上の追及をしなかった。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:40:12.42 ID:aXM1RmdKO
僕はベッドの影で写真立てを鞄にしまい、つと立ち上がった。
(´・ω・`)「じゃあ見るもの見たし、帰るかな」
( ^ω^)「おう、気を付けろお」
(´・ω・`)「……ドクオ、置いてくよ」
('A`)「ああ、うん、今いく……」
ドクオはちらちらとゴミ箱を見やりながら、僕に着いてブーンの家を出た。
玄関を出るなり、ドクオは小声でこう言い出した。
(;'A`)「ショボン、ゴミ箱の中にガラスが残ってたけど、良いのか?」
僕はふっと笑って、自宅に向かって歩き出す。ドクオも付き従った。
しょぼ「どの道、写真立てを持ってきたから、今晩中にでも気付くだろう。毎晩あれでオナってるはずだからね」
('A`)「……ブーンに気付かせて、そこからどうする?」
(´・ω・`)「月曜日まで待つ。それまでに、ブーンから謝罪がなければ、社会的にやっつけてやる。つまり、復讐をする」
(;'A`)「マジか……いや、そうだな。そのくらいしないと」
僕は立ち止まって、ドクオを見据えた。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:44:19.71 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「怒りが冷めてきて、迷いが生まれたかい?」
(;'A`)「そんなことは……」
ドクオは一瞬否定しかけたが、観念したように目を閉じ、項垂れた。
('A`)「すまん……やっぱり、中学からつるんできた友達、だしさ」
(´・ω・`)「かといって、それではツンは浮かばれないじゃないか。ツンかブーンか、二者択一だ」
(;'A`)「月曜までにブーンが謝ってくれるかもしれないじゃないか」
(´・ω・`)「そう、ドクオとしてはそれを期待するべきだろうね」
(;'A`)「俺としては、って?」
僕はその問いには答えず、早足で歩きだした。
しかし、ドクオも必死で食い下がった。僕の前に立ちふさがって、肩を掴んで離さない。
(;'A`)「ショボン! 待ってくれよ、どういう意味だ!」
(´・ω・`)「……分からないんだ?」
('A`)「何が……」
(´・ω・`)「僕の気持ちが、だよ」
僕はドクオの体を強引に押しのけて、駆け出そうとした。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:48:06.21 ID:aXM1RmdKO
しかし、彼はしつこく僕の脚に抱きついてきた。
(;'A`)「待ってくれ、待ってくれよお」
ドクオは聞くに耐えない悲痛な声で喘いだ。
振り返って見下ろせば、彼の惨めな姿があっただろう。
(;'A`)「おれ、俺だって、ブーンのしたことは許せないさ、けど、さあ」
(´-ω-`)「……」
僕は段々、自分がみっともない気分がしてきた。
(;'A`)「ショボンが怒っちまうのも、無理はねぇと思うよ。もちろん」
必死の過ぎたドクオと共にいることが恥ずかしいのではない。
(;'A`)「けど、それでも、俺たちが忌み合うのだけは、おれ、嫌なんだよ……」
親友にここまでさせるまで、自分の行いがいかに残酷か気づかなかったことが、ひどく情けなく思えたのだ。
(´・ω・`)「……そうかい」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:52:05.33 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「よし。ごめん、ドクオ。もう逃げないから。だから放して」
僕は柔らかに言った。
脚の重りは、すぐに僕を解放して立ち上がった。
(;'A`)「ショボン……」
ドクオは何かを言おうとしたが、僕はその前に喋りはじめた。
(´-ω-`)「ドクオの気持ちはよくわかった」
(´・ω・`)「でも、それは了承できない」
(;'A`)「どうして……」
(´・ω・`)「僕だって、僕らの仲を瓦解させたい訳じゃない。
でも、友達が間違った道に行ってしまったら、それを正すのは友達の役目だろう」
('A`)「うん……それはそうなんだ。けど……」
(´・ω・`)「さっきは言い過ぎた。復讐なんてバカなことはしないさ。ただし、その代わり」
僕は指を立てた。
(´・ω・`)「ブーンには、きちんとツンに対する気持ちをぶちまけてもらった上で、玉砕してもらう」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:56:12.21 ID:aXM1RmdKO
(;'A`)「ええっ?!」
ドクオは90度近くのけぞって、バランスを崩して尻もちをついた。
(´・ω・`)「ツンのやり方はこっぴどいからな。一週間は口を利けなくなるが、その後は完全に吹っ切れる」
(;'A`)「い、いや、それは確かに良いかもしれないけど」
(´・ω・`)「なにか問題があるのかい?」
(;'A`)「それが……その、無いんだが、とにかくそれは駄目だ。それは止そう」
(´・ω・`)「ドクオ、これも駄目だというなら……」
(;'A`)「そんなことはない! そうではないんだが、その方法はまずい!」
ドクオの様子はなかなか鬼気迫っていたが、それでも到底受け入れられる話ではなかった。
(´・ω・`)「わがままは止さないか、ドクオ。それにこれは決して悪い方法じゃない」
(;'A`)「ショボン、違うんだよ。聞いてくれ……」
(´・ω・`)「もう帰るぞ、ドクオ。今夜は雨の予報が出てるんだしさ」
僕はすたすたと歩きだす。
しかし、10歩行ったところで、ドクオが付いてこないことに気づき、また引き返した。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:59:34.95 ID:aXM1RmdKO
ドクオはさっきと同じ場所で、項垂れて立っていた。
僕は軽く肩を叩いてやって促したが、今度はしゃがみこんでしまった。
(´・ω・`)「おいおい、気持ちはわかるがな」
そう言ったが、ドクオは聞いている風でもなかった。
僕はため息をついて、彼の隣に座った。
( A )「ショボン」
そのとたん、ドクオが重い声を発した。
(;´・ω・`)「わっ、脅かすなよ。な、何だい?」
( A )「さっきの写真、少し貸してくれないか。1週間なんだが」
(´・ω・`)「……どうするんだ?」
( A )「どうもしない。約束する。だから、頼む」
僕は少し迷ったが、ドクオが悪い使用法をするとは考えられなかった。
黙って写真立てを渡すと、彼は丁寧に鞄にしまいこんだ。
(´・ω・`)「さぁ、立てよドクオ。雨が降ってくる」
しかし、ドクオはまだ動かない。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:04:05.27 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「まだ何かあるのか?」
( A )「ああ。……さっきの話……それなら、俺もだ」
(´・ω・`)「ドクオもって……何のこと?」
( A )「ツンに……告白するって話だ。俺も、ツンに告白する」
(´・ω・`)「……」
何を言われたか、よく理解できなかった。
どうもとんでもない発言があったのは分かったが、どんな話なのかは頭に届かなかった。
(´・ω・`)「意味がわからん」
率直に言い返した。ドクオは少し僕を見てから、さらにわからないことを言う。
( A )「頼む、やらせてくれ。お前のためなんだ」
(´・ω・`)「なんだよ。……お前もツンが好きなのか?」
( A )「……」
ドクオは舌で口唇を湿らせてから、はっきりと言った。
( A )「そうだ。中学のときからずっと」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:08:47.90 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「ふーん。そうなの」
僕は頭の中が空っぽになって、ずいぶん淡白な反応を返した。
(´・ω・`)「じゃあ、やったらいいじゃん。ブーンと一緒に一週間廃人になったらいい」
( A )「良いのか?」
(´・ω・`)「構わないね。是非ともやってくれ。そんな汚れた気持ちを平気で抱かれているままでは、
こっちだって不快だ。いっぺん粛清されたほうが今後のためだ」
そう言ってやると、ドクオはようやく立ち上がった。
('A`)「済まない。俺も自分を軽蔑するよ。どうかこの気持ちを消し去りたい」
(´・ω・`)「そ」
短く言って、僕は歩き出した。
どんな神経でそんなことをするのか、ドクオもついてきた。
(´・ω・`)「告白のセッティングはしてやるよ。一週間後でいいか? いいな、決まりだ」
('A`)「ああ、うん。いつでも構わない」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:12:13.32 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「めんどくさいからブーンと一緒にやっとけ。ツンを呼び出す場所は後からメールする」
('A`)「ああ、わかった」
(´・ω・`)「あと、な」
僕は語気を強くして、ドクオに指を突きつけた。
(´・ω・`)「ついて来るな。別の道で帰れ」
('A`)「あ……う、うん。悪かった。じゃあ、また」
彼はすばやく別の道に逸れ、夕闇に消えていった。
そしてそれが、彼と帰路をともにした最後の日であった。
*
(*゚ー゚)「それで、それから? それからは?」
少女は鼻を膨らまして、三度も同じ質問を連発した。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:16:22.45 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「奴は、盗撮がばれたことに気づいているのかいないのか、一度も謝ってはこなかった。
ブーンはあっさりとツンを好いていることを認めて、ドクオと一緒に告白することになった。
しぃちゃんはもう察してるだろうけど、今ちょうど、隣の教室でそれが実行されてるところだね」
(,,;゚Д゚)「えっ、マジで?」
(*゚ー゚)「ギコくんは察しが悪すぎかもね?」
(,,;゚Д゚)「いや、展開が早すぎるんだって」
少年と少女は、キャイキャイとなにか言い合った。
ショボンはそれを他所見しながらぼんやり聞いたが、実のある内容はなかった。
(*゚ー゚)「それにしても、すごいねぇ、ドクオくんって」
少女もそんな会話は必要としていないのか、少年の口を塞いでショボンに話しかけてきた。
(´・ω・`)「まぁ、大したもんだよな。普通の神経じゃ、あんなことは言い出せない」
ショボンは思っているままを答えたつもりだった。
しかし少女は、楽しげなものを見つけたいたずらっ子のように、ニンマリと笑った。
(*゚ー゚)「その言い方じゃあ、どうもショボンくん気付いてないねぇ?」
(´・ω・`)「意味がわからん」
これもまた言われた意味をショボンは解せず、こんな反応をすることになった。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:20:06.15 ID:aXM1RmdKO
*
ショボンが出た後の教室には、数秒の静寂を挟んだ後、言葉が生まれていた。
('A`)「なぁ、ブーン……俺、やっぱり止すよ」
ブーンはその言葉を無視したが、彼は語り続けた。
('A`)「中学のときだけどさ、おれ、1回だけ2人きりで、ツンとマックに行ったことがあってさ」
('A`)「そのとき、ツンが俺に言ったんだ。ツンはお前のことがどうしようもなく好きなんだって」
('A`)「俺、ツンのその気持ちは今でも変わってないと思う。
あの時ツンが打ち明けた気持ちの激しさは、時の経過なんかで収まるものとは思えなかった」
('A`)「ショボンと付き合っちゃいるが、ツンはたぶん、お前の気持ちを待ってるはずだ。
だからツンは、ショボンを蹴ったってお前を選ぶと思うんだ。間違いなく俺の出る幕はない」
('A`)「俺は物陰で見守ってるからよ、お前の気持ちをぶつけてやれよ。な?」
ドクオは教卓の下に入ると、息を潜めた。
そして、音を立てぬように懐から写真立てを引き出した。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:24:17.17 ID:aXM1RmdKO
出来ればこれを使いたくはない。
ドクオは、現在のツンの気持ちがショボンに在ることを祈った。
いや、たとえそうでなくても、とにかくブーンの告白を断ってくれたらいい。
もしツンがブーンの告白を受け入れたら。
そんなことになれば、三人の友情は必ず崩壊するに違いなかった。
ドクオはその場合、教卓から現れて、写真立てをツンに見せるつもりでいた。
この写真立ては、ツンが中学生のときにブーンに渡した誕生日プレゼントだった。
写真立てをプレゼントしたことを、ツンが忘れているはずはないと、ドクオはにらんでいた。
どんな大きさの、どんなデザインの写真立てをプレゼントしたかさえ覚えているはすだ。
しかし、この写真立てはガラスが割れている。
それだけでもツンには十分ショックだろうが、さらに飾られている写真は、ブーンが盗撮した自身の裸である。
これを見れば、ツンはきっとブーンと付き合うのを思いとどまるはずだ。
そのはずなのだが、ブーンはドクオを恨むに違いない。
かといってこのカードを使わねば、ショボンがブーンを恨むことになる。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:28:06.10 ID:aXM1RmdKO
果たして、実際にその時になって写真立てをツンに見せられるか、ドクオには自信がなかった。
自分でも、損な役をわざわざ申し出たと思う。
しかしドクオとしては、むろん悪はブーンのほうである。
ブーンが幸福になって崩壊するよりは、ショボンが幸福のまま崩壊したほうがましだと思っている。
それでも、やはりツンがブーンをこっぴどくフってくれれば、全ては安泰に済むのだ。
ドクオは震える体を押さえつけながら、ひたすら願い、かつ覚悟を固めた。
そして、ドアが開いた。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:32:15.09 ID:aXM1RmdKO
*
(*゚ー゚)「ドクオくんとブーンは、中学一緒なんでしょ? だったら、ツンちゃんとも一緒でしょ?
私だったら、ドクオくんがツンちゃんの気持ちのほうに何か心配があるんじゃないかって、疑うけどなぁ」
少女は爛々と輝く瞳で言った。まるでそうであることを期待しているようだった。
(´・ω・`)「中学のころに何かそういう話があったとは聞かないがな」
(,,゚Д゚)「だが、ツンなら口止めがどぎつそうだからな。ドクオが今まで黙っていてもおかしくない」
(;´・ω・`)「ギコまで。やめろよ、くだらない。そんな話があってたまるか」
(,,゚Д゚)「しかし、なんと言っても幼馴染みだからな。そんな話がありそうなんだよ」
(*゚ー゚)「うん、幼馴染みは惹かれ合うんだよ」
少女は「ね」と首を傾げた。少年が「な」と応えた。
(´・ω・`)「……そこまで言うなら、ちょっと確かめてくるよ」
ショボンは席を立ち、足早に隣の教室に向かった。
(*゚ー゚)「お気をつけて」
と少女が言ったのが、彼はいやに癪に障った。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:36:12.00 ID:aXM1RmdKO
ショボンは、ドアの窓から教室の中を確認することもせずに戸を開けた。
それほど彼は気が急いていた。
そして結果、最も見たくないものを見てしまった。
(´・ω・`)「……ツン、何して」
彼が怒鳴りかけた瞬間、教卓の下からドクオが飛びだしてきた。
(;A;)「やめろおおおおぉぉ!! ツン、駄目だその男はああぁ!!」
ドクオは写真立てを、抱きあう二人に向けて突きつけた。
そこに飾られた写真は、両人の目に否応なく飛び込んだ。
(;^ω^)「ど、ドクオ……おまえ、それ」
ξ;゚⊿゚)ξ「何あれ……私!?」
しかし驚いたのはブーンとツンのみならなかった。
(;A;)「あ、あれ、ショボン? どうしてここに……」
(´・ω・`)「……ちょっと不安があってね。杞憂だと思いたかったんだが、そういうわけにはいかなくなった」
ショボンは抱きあっている二人を睨んだ。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:40:07.73 ID:aXM1RmdKO
ξ;゚⊿゚)ξ「は、離れてよ」
ツンは自分の恋人がそこにいることに初めて気づき、慌ててブーンを押しのけた。
夕陽がまた煌めく。
さっき以上に、わざとらしく不似合いな光であった。
(´-ω-`)「……」
誰も口を開かない。
ショボンは目を閉じた。
暖かな光の中、幾つもの視線が交錯しているのが分かった。
それらの視線すべてが、同じ繰り言をつぶやいていた。
(´-ω-`)「違わないさ」
ショボンは首を振り、彼らの言葉に答えた。
ドクオが鼻をすすった。
それっきり、教室は静寂に包まれたまま、暗くなっていくのみだった。
(終)
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:41:36.68 ID:aXM1RmdKO
おわり
またね
小さく開いた窓の隙間で、絶えず風が回っている。
それでも、教室の空気はかなり居心地の悪い重みを含んでいた。
日が暮れかけているが、誰も蛍光灯を点けようとはしない。
外から射しこむ朱色の刃が煌めいた。煌めくほどに、教室は静かなバーにミラーボールが踊っているような違和感に包まれていく。
夕陽の持つロマンチシズムは、3つの机に1人ずつ腰かけた少年達が持つ、ごちゃごちゃした感情とは根本的に違うのだ。
丸い時計が4時55分を示す。
それを待っていたかのように、少年の一人が、軽やかに机の上から降りた。
(´・ω・`)「そろそろ時間だな。僕は失礼するよ」
少年は言い放つと、足音もなく廊下のほうへ向かっていく。
だが、背後で机が軋むのが聞こえると、足を止めて振り向いた。
('A`)「いや、その……俺、やっぱりさあ」
教室にいる、二人目の少年が立ち上がっていた。
彼は指先でそわそわ前髪を触りながら口ごもった。
('A`)「……」
そして、それ以上の言葉が出ることはなかった。一人目の少年は、元のように机に座った少年を鼻で笑い、また歩きだす。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:48:12.22 ID:aXM1RmdKO
三人目の少年の前を通るとき、また少年は少しそちらに顔を傾けた。
( ^ω^)「何か言うことがあるのかお?」
嘘くさい笑顔で、三人目の少年は訊いた。
(´・ω・`)「無いけどね、君も何か言うんじゃないかと思って」
( ^ω^)「一緒にされるのは不愉快だお」
('A`)「俺は……」
二人目の少年が、憂鬱そうに俯く。
それを振り向きもせず、一人目の少年は軽く首の運動をしてから、今度こそ止まることなく教室を出た。
廊下の空気は、別世界のように澄んでいた。
しかし少年が呼吸をすると、彼の口から淀みが溢れた。先ほどの教室に充満していた重みと同じものである。
少年はそれをひときわ大きく吐き出すと、暫く動かずに、目をぎゅっと瞑っていた。
なにかを堪えているようなさまであった。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:52:11.08 ID:aXM1RmdKO
やがて、階段を下ってくる足音が聞こえた。
彼は少々はっとして目を開き、急いで隣の教室に駆け込む。
(,,;゚Д゚)「おっと!」
端正な顔だちの少年が、制服の前をはだけた少女といちゃついているところだった。
(,,;゚Д゚)「……ショボンかよ、ノックくらいしてくんないか」
(´・ω・`)「失礼した。ついでにあと10分くらい静かにしててくれるか」
(,,゚Д゚)「あー? 俺はなぁ」
(*゚ー゚)「いいじゃん、ギコくん。なんか面白そうな匂いがするし」
少女は何事もなかったかのように服の乱れを直し、情事に割り込んできた少年の近くに寄ってきた。
(,,;゚Д゚)「あ、おい、しぃってば」
(*゚ー゚)「ねぇショボンくん、そうなんでしょ? ショボンくんにとっては笑えない事態かもだけど」
(´・ω・`)「二人とも、今は特に静かにしてくれ」
(,,;゚Д゚)「む……」
少年がぴしゃりと言うと、二人は即座に口を閉ざした。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:56:03.73 ID:aXM1RmdKO
異常な静寂の中、足音が聞こえ始めた。
足音が大きくなるにつれて、隣で耳をそばだてている少女が興奮していくのがわかる。
少年は、興味を持たれること自体に悪い気はしなかったが、やはり少女の異常性を感じずにはいられなかった。
足音が、すぐ近くで止まった。
そして、教室の戸を開く独特の音。息を呑むのが聞こえてから、再び戸は閉じられた。
隣の教室から女の声が聞こえたが、どのような内容かは聞き取れなかった。
(´・ω・`)「わかった、話すよ」
少年は唐突に言った。
少女は嬉しそうに口唇を舐めたが、恋人の少年のほうは意味を解していないようだった。
(´・ω・`)「今、僕の置かれている状況を説明しよう。……いや、させてくれ」
(*゚ー゚)「ショボンくん病んでるねえ」
(´・ω・`)「そうかな。違うと思うけど」
(,,゚Д゚)「……とりあえず、そんなドアのそばに密集してないで椅子にでも座ったらどうだ」
少年は隣の教室に意識をやりながら立ち上がった。
(´・ω・`)「そうさせてもらおうか」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:59:55.89 ID:aXM1RmdKO
少年はカップルと向かい合う形で座った。
2対1の構図に、少年は奇妙な予言性を感じざるを得なかった。
少年は息を吸うと、他人事のように淡々と語りだした。
(´・ω・`)「事の発端は、1週間ほど前になる」
*
その日はなんでもない平日で、学校の授業があり、放課後があった。
学校が終わった後、示しあわせたわけでもなく、僕らは教室に集まっていた。
僕とドクオと、ブーンの3人だ。
( ^ω^)「なんで二人は教室に残ってるんだお?」
(´・ω・`)「帰った後の予定が何もないからさ。少しでも退屈から逃れようとしてるんだ」
('A`)「俺は家の鍵を忘れたことを既にして気づいているからだ。親が帰るまで時間を潰さなきゃならない」
( ^ω^)「要するに暇なのかお」
(´・ω・`)「まぁ無粋に言ってしまえば」
('A`)「そういうこと」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:04:14.23 ID:aXM1RmdKO
それなら、と言い出したのはブーンだった。
むろん、彼が言わずとも、僕かドクオが同じことを提案していただろう。
それほどに僕ら三人の関係は恒常的だった。
( ^ω^)「それなら、僕んちに行こうじゃないかお」
断る理由はもちろん無く、僕たちはすぐにブーンの家へ行った。
学校から歩いて10分とかからぬ位置にあり、僕らが集うといえば、ほぼ必ずブーンの家に来ることになっている。
そんな慣習が出来上がったのは、ただ近いという以上のメリットがブーンの家にあったからだ。
このメリットについては、また後で話すとしよう。
僕らはいつものようにブーンの家に上がり込んで、2時間ほどテレビゲームに没頭した。
それからは各々が定位置に座して、雑談が始まった。
ブーンがベッドの上、ドクオが勉強机の前のオフィスチェアー、僕はテレビの前の座椅子という位置だ。
('A`)「俺さ、このところブーンに彼女ができないのは何故かってことで、ずっと頭を悩ませてるんだよね」
( ^ω^)「ま た そ の 話 か」
(´・ω・`)「3回目くらいの既視感だ」
('A`)「だってお前、この間クーさんに告白されてたじゃん。なんで付き合ってないの?」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:08:12.44 ID:aXM1RmdKO
(;^ω^)「いや、なんか……」
ブーンは暫く、答えにくそうにまごついた。
(;^ω^)「翌日にオッケーって言ったら『もう嫌い』って言われたんだお」
('A`)「……うん。それは残念だが」
(´・ω・`)「翌日まで持ち込んだ時点で意味がわからん」
('A`)「なぜ即OKしなかったのか」
(´・ω・`)「クーさんを相手に悩む理由がない」
('A`)「そんな優柔不断だからツンをショボンに取られるんだ」
( ^ω^)「おい止めろ」
ここらで人物整理をしておこう。
まず僕がショボン。
我が友人のドクオ。
ドクオとは中学校以来の付き合いをもつブーン。
そしてブーンの幼馴染みであり、それ以上に僕の恋人であるツンだ。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:12:22.68 ID:aXM1RmdKO
( ^ω^)「いいかお? ツンと僕はずっと幼馴染みだったの。恋愛感情さらっさらないの。いつかこうなる運命だったの」
(´・ω・`)「そうだぜドクオ。ツンを俺に紹介したのはブーンなんだぜ」
('A`)「ショボン、お前がその口調で喋るのは気持ち悪い」
( ^ω^)「うん、マジでキモいお」
(´・ω・`)「ショボーン……ってこれあんまりやりたくないんだけど」
僕らの中で恒例となったパターンに、ドクオがヒヒヒッと笑った。
それで一旦、ツンの話には区切りがついた。
それからしばらく、くだらない話に花を咲かせていた。
最近のAV女優は可愛すぎてなんか嫌だ、という話が合意に達したところで、時計の短い針が7時を示した。
それに気付いたドクオが、「そろそろだ」と僕らに呼びかけた。
さっき言った、ブーンの家に集まるメリットが、この時間にあるのだ。
ドクオの呼びかけに、僕ら三人はいっせいにベッドの上にある窓に張りついた。
目の前には、隣家の窓が見える。カーテンはかかっているが、そのファンシーな柄が、まさに女の子の部屋といった風情だ。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:16:30.12 ID:aXM1RmdKO
もはや言うまでもなく、隣の家とはブーンの幼馴染みたるツンの家で、目の前に見える窓は、ツンの部屋の窓だ。
吹奏楽部にいるツンは帰りが遅くなり、周囲の暗くなったこの時間帯に帰ってくる。
そして、カーテンが掛かっているからと高をくくっているのか、ツンは窓のそばで着替えをする。
もちろん、着替えの様子はカーテンに遮られて、直接見ることはできない。
しかし目を凝らして見ると、カーテンに彼女のシルエットが映っていて、ツンの部屋はストリップ小屋の様相を呈してくる。
そう、こんなことがやたらとブーンの家に集うメリットなのだ。
(*^ω^)「来たお!」
カーテンの向こうが明るくなり、ブーンがいきり立った。
特徴的なツーテールの少女のシルエットがカーテンにぼんやりと浮かぶ。
僕とドクオも身を乗り出した。
ふと、右膝に奇妙な感触を覚えたが、気にしないでおく。
その時は、ツンの発育途上の裸身を観察することが何より先決だった。
(;'A`)「おいショボン、そんなに押すなよ。お前いつでも生で見れるだろうが」
(´・ω・`)「お前はエロスってものを何にもわかっちゃいないな。このシルエットこそ最高なんだ」
頭ごなしに否定されたのが癪に触ったか、ドクオは少しばかり表情を凍らせた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:20:07.56 ID:aXM1RmdKO
('A`)「でも実際にするほうが興奮するだろ?」
(´・ω・`)「そりゃ、まあ」
(#'A`)「じゃあ、どけよ!」
ドクオは僕を怒鳴りつけ、肩口で突き飛ばしてきた。
瞬間、僕の膝に奇妙な感覚が走った。
続いて、僕の耳にガラスの割れる音が届く。
(;´・ω・`)「いたたた……?」
ベッドに背中から倒れただけなのに、ほんの少し息苦しくなった。
息苦しさがなくなると、ようやく膝に感じたものの正体がわかった。
制服のズボンを膝まで上げると、小さくて赤いものがまず目に入った。ごく少量の血であった。
(´・ω・`)「おーい、ドクオー。男らしくない怪我しちまったぜぃ」
僕は膝の傷口を指差し、ねちっこく訴えかけた。
ドクオは僕の傷を一瞥して、長いため息を吐くと「救急箱、取ってくる」と呟いて窓のそばを離れた。
救急箱の位置まで分かるようになると、いよいよ客人らしさは無くなってくるな、と僕は彼の後ろ姿を見て思った。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:24:39.30 ID:aXM1RmdKO
ところで、実際の住人たるブーンの方はというと、ちょっとした流血沙汰を気にも留めず、血走った目でカーテンを見つめていた。
幼馴染みの裸身のシルエットを見つめるブーンの瞳には、明らかに病的なものがあったように見えた。
しかし僕は、ブーンを制止せずに放っておき、まず僕の膝を傷つけたものを探し始めた。
それは、さっきまで僕のいたところを見ればすぐに見つかった。
木製風の写真立てが、無造作に放置されていた。
前面のガラスが割れていて、これで怪我をしたのだと分かる。
僕は写真立てを拾い上げてガラスをゴミ箱に流し込んで、それから初めて、飾ってある写真をきちんと見た。
('A`)「よっと、救急箱だぜ……って、どうした、ショボン?」
(´・ω・`)「ドクオ。ちょっとこっちへ来てみろ」
('A`)「何だよ?」
(´・ω・`)「良いから。これを見てみろ」
僕は写真立てをドクオに突きつけた。
救急箱が床に落ち、中身の薬やら絆創膏やらが散らばった。
(´・ω・`)「画質の悪さからいって、盗撮かな」
ドクオが言葉を失うのも無理はなかった。
写真立てには、カーテンの向こうにあるべき、ツンの一糸纏わぬ姿があった。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:28:12.60 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「この部屋にあったのを、僕が踏んで壊してしまったんだ。怪我の原因はそれだよ」
('A`)「そうか、ここに……」
ドクオは長い吐息をついた。
('A`)「それじゃあ……ブーンは盗撮魔なのか」
(´・ω・`)「おそらくね。まぁ間違いないと思うけど」
('A`)「……それで、どうする?」
(´・ω・`)「えっ?」
彼の質問の意図がわからなくて、僕は思わず聞き返した。
('A`)「あれをこのまま許すわけにはいかないだろ? 何かして、奴の罪を分からせなきゃいけない」
(´・ω・`)「そういえばそうか。よく気付いたな、ドクオ」
冗談でなく、心底から出た言葉だった。
その時に、僕は未だあの事態を現実に受け止めていないのだと思った。
(;'A`)「大丈夫か、ショボン? 無理しなくても……」
しばらく考え込んでいると、ドクオが心配そうに覗きこんできた。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:32:12.49 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「いや、やるさ。やるとも。ただこう、どう料理してやろうかと考えててさ」
僕は慌てて両手を振った。
('A`)「そうか。確かにただ追及するだけじゃなんだしな」
ドクオの握り拳が、がくがくと震えた。それを見ていて、僕もようやくその気になってきた。
僕は、まだ幼馴染みのストリップショーに夢中になって、この事態に気付いていないブーンの背中を見た。
つられて、ドクオも彼を見る。
確かに彼を見ていると、怒りのような、体が熱くなる感情が沸いてきた。
目から上は、どれだけ彼の姿を見ても冷たいままだったが。
('A`)「その、ショボン……。俺も済まなかった」
ブーンの丸い背中を見つめ、ドクオはぽつりと言った。
(´・ω・`)「……なぜ謝る?」
('A`)「俺は、いくらショボンが許してくれるからって、こうして覗きをするべきじゃなかったんだって……。
友達の彼女の着替えを覗くなんて最低だって、今更気付いて……お前に申し訳なくなってさ」
(´・ω・`)「あぁ、そういうこと」
その時のブーンの姿を見ていれば、誰でもそんな気持ちになるだろう。
あれは実に醜い豚にしか見えなかった。性欲が不潔なものだという考えに、初めて認めるところがあると思った。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:36:15.33 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「良いんだよ。もともと覗きの発案者はあいつだし、最初はドクオ、乗り気じゃなかっただろ?」
('A`)「そうだったかな……」
(´・ω・`)「そうだったさ。だから気にするな。今の悪はブーンだろ」
ドクオは少し口をもごもごさせたが、ややあって頷いた。
(´・ω・`)「それに、ドクオの話でいいことを思い付いたしな」
('A`)「何?」
そこで、ツンの着替えが終わったらしかった。
ブーンが恵比寿顔でこちらを振り向いた。
(*^ω^)「やー、お前ら途中だってのに何処か行っちゃうから、僕一人占めしちゃったお。
なんでそんな隅っこにいるんだお?」
(´・ω・`)「なに、ちょっとしたくなっちゃってね。ちゃんとティッシュに出したから心配はいらないよ」
僕は後ろ手でポケットティッシュを引き出し、丸めてゴミ箱に捨てた。
(;'A`)「……う、うん」
(;^ω^)「お前ら人ん家でやめろお。まぁ、あれを見てたらしょうがないけどNE」
ブーンは僕の冗談を真に受けたようで、それ以上の追及をしなかった。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:40:12.42 ID:aXM1RmdKO
僕はベッドの影で写真立てを鞄にしまい、つと立ち上がった。
(´・ω・`)「じゃあ見るもの見たし、帰るかな」
( ^ω^)「おう、気を付けろお」
(´・ω・`)「……ドクオ、置いてくよ」
('A`)「ああ、うん、今いく……」
ドクオはちらちらとゴミ箱を見やりながら、僕に着いてブーンの家を出た。
玄関を出るなり、ドクオは小声でこう言い出した。
(;'A`)「ショボン、ゴミ箱の中にガラスが残ってたけど、良いのか?」
僕はふっと笑って、自宅に向かって歩き出す。ドクオも付き従った。
しょぼ「どの道、写真立てを持ってきたから、今晩中にでも気付くだろう。毎晩あれでオナってるはずだからね」
('A`)「……ブーンに気付かせて、そこからどうする?」
(´・ω・`)「月曜日まで待つ。それまでに、ブーンから謝罪がなければ、社会的にやっつけてやる。つまり、復讐をする」
(;'A`)「マジか……いや、そうだな。そのくらいしないと」
僕は立ち止まって、ドクオを見据えた。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:44:19.71 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「怒りが冷めてきて、迷いが生まれたかい?」
(;'A`)「そんなことは……」
ドクオは一瞬否定しかけたが、観念したように目を閉じ、項垂れた。
('A`)「すまん……やっぱり、中学からつるんできた友達、だしさ」
(´・ω・`)「かといって、それではツンは浮かばれないじゃないか。ツンかブーンか、二者択一だ」
(;'A`)「月曜までにブーンが謝ってくれるかもしれないじゃないか」
(´・ω・`)「そう、ドクオとしてはそれを期待するべきだろうね」
(;'A`)「俺としては、って?」
僕はその問いには答えず、早足で歩きだした。
しかし、ドクオも必死で食い下がった。僕の前に立ちふさがって、肩を掴んで離さない。
(;'A`)「ショボン! 待ってくれよ、どういう意味だ!」
(´・ω・`)「……分からないんだ?」
('A`)「何が……」
(´・ω・`)「僕の気持ちが、だよ」
僕はドクオの体を強引に押しのけて、駆け出そうとした。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:48:06.21 ID:aXM1RmdKO
しかし、彼はしつこく僕の脚に抱きついてきた。
(;'A`)「待ってくれ、待ってくれよお」
ドクオは聞くに耐えない悲痛な声で喘いだ。
振り返って見下ろせば、彼の惨めな姿があっただろう。
(;'A`)「おれ、俺だって、ブーンのしたことは許せないさ、けど、さあ」
(´-ω-`)「……」
僕は段々、自分がみっともない気分がしてきた。
(;'A`)「ショボンが怒っちまうのも、無理はねぇと思うよ。もちろん」
必死の過ぎたドクオと共にいることが恥ずかしいのではない。
(;'A`)「けど、それでも、俺たちが忌み合うのだけは、おれ、嫌なんだよ……」
親友にここまでさせるまで、自分の行いがいかに残酷か気づかなかったことが、ひどく情けなく思えたのだ。
(´・ω・`)「……そうかい」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:52:05.33 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「よし。ごめん、ドクオ。もう逃げないから。だから放して」
僕は柔らかに言った。
脚の重りは、すぐに僕を解放して立ち上がった。
(;'A`)「ショボン……」
ドクオは何かを言おうとしたが、僕はその前に喋りはじめた。
(´-ω-`)「ドクオの気持ちはよくわかった」
(´・ω・`)「でも、それは了承できない」
(;'A`)「どうして……」
(´・ω・`)「僕だって、僕らの仲を瓦解させたい訳じゃない。
でも、友達が間違った道に行ってしまったら、それを正すのは友達の役目だろう」
('A`)「うん……それはそうなんだ。けど……」
(´・ω・`)「さっきは言い過ぎた。復讐なんてバカなことはしないさ。ただし、その代わり」
僕は指を立てた。
(´・ω・`)「ブーンには、きちんとツンに対する気持ちをぶちまけてもらった上で、玉砕してもらう」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:56:12.21 ID:aXM1RmdKO
(;'A`)「ええっ?!」
ドクオは90度近くのけぞって、バランスを崩して尻もちをついた。
(´・ω・`)「ツンのやり方はこっぴどいからな。一週間は口を利けなくなるが、その後は完全に吹っ切れる」
(;'A`)「い、いや、それは確かに良いかもしれないけど」
(´・ω・`)「なにか問題があるのかい?」
(;'A`)「それが……その、無いんだが、とにかくそれは駄目だ。それは止そう」
(´・ω・`)「ドクオ、これも駄目だというなら……」
(;'A`)「そんなことはない! そうではないんだが、その方法はまずい!」
ドクオの様子はなかなか鬼気迫っていたが、それでも到底受け入れられる話ではなかった。
(´・ω・`)「わがままは止さないか、ドクオ。それにこれは決して悪い方法じゃない」
(;'A`)「ショボン、違うんだよ。聞いてくれ……」
(´・ω・`)「もう帰るぞ、ドクオ。今夜は雨の予報が出てるんだしさ」
僕はすたすたと歩きだす。
しかし、10歩行ったところで、ドクオが付いてこないことに気づき、また引き返した。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 18:59:34.95 ID:aXM1RmdKO
ドクオはさっきと同じ場所で、項垂れて立っていた。
僕は軽く肩を叩いてやって促したが、今度はしゃがみこんでしまった。
(´・ω・`)「おいおい、気持ちはわかるがな」
そう言ったが、ドクオは聞いている風でもなかった。
僕はため息をついて、彼の隣に座った。
( A )「ショボン」
そのとたん、ドクオが重い声を発した。
(;´・ω・`)「わっ、脅かすなよ。な、何だい?」
( A )「さっきの写真、少し貸してくれないか。1週間なんだが」
(´・ω・`)「……どうするんだ?」
( A )「どうもしない。約束する。だから、頼む」
僕は少し迷ったが、ドクオが悪い使用法をするとは考えられなかった。
黙って写真立てを渡すと、彼は丁寧に鞄にしまいこんだ。
(´・ω・`)「さぁ、立てよドクオ。雨が降ってくる」
しかし、ドクオはまだ動かない。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:04:05.27 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「まだ何かあるのか?」
( A )「ああ。……さっきの話……それなら、俺もだ」
(´・ω・`)「ドクオもって……何のこと?」
( A )「ツンに……告白するって話だ。俺も、ツンに告白する」
(´・ω・`)「……」
何を言われたか、よく理解できなかった。
どうもとんでもない発言があったのは分かったが、どんな話なのかは頭に届かなかった。
(´・ω・`)「意味がわからん」
率直に言い返した。ドクオは少し僕を見てから、さらにわからないことを言う。
( A )「頼む、やらせてくれ。お前のためなんだ」
(´・ω・`)「なんだよ。……お前もツンが好きなのか?」
( A )「……」
ドクオは舌で口唇を湿らせてから、はっきりと言った。
( A )「そうだ。中学のときからずっと」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:08:47.90 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「ふーん。そうなの」
僕は頭の中が空っぽになって、ずいぶん淡白な反応を返した。
(´・ω・`)「じゃあ、やったらいいじゃん。ブーンと一緒に一週間廃人になったらいい」
( A )「良いのか?」
(´・ω・`)「構わないね。是非ともやってくれ。そんな汚れた気持ちを平気で抱かれているままでは、
こっちだって不快だ。いっぺん粛清されたほうが今後のためだ」
そう言ってやると、ドクオはようやく立ち上がった。
('A`)「済まない。俺も自分を軽蔑するよ。どうかこの気持ちを消し去りたい」
(´・ω・`)「そ」
短く言って、僕は歩き出した。
どんな神経でそんなことをするのか、ドクオもついてきた。
(´・ω・`)「告白のセッティングはしてやるよ。一週間後でいいか? いいな、決まりだ」
('A`)「ああ、うん。いつでも構わない」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:12:13.32 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「めんどくさいからブーンと一緒にやっとけ。ツンを呼び出す場所は後からメールする」
('A`)「ああ、わかった」
(´・ω・`)「あと、な」
僕は語気を強くして、ドクオに指を突きつけた。
(´・ω・`)「ついて来るな。別の道で帰れ」
('A`)「あ……う、うん。悪かった。じゃあ、また」
彼はすばやく別の道に逸れ、夕闇に消えていった。
そしてそれが、彼と帰路をともにした最後の日であった。
*
(*゚ー゚)「それで、それから? それからは?」
少女は鼻を膨らまして、三度も同じ質問を連発した。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:16:22.45 ID:aXM1RmdKO
(´・ω・`)「奴は、盗撮がばれたことに気づいているのかいないのか、一度も謝ってはこなかった。
ブーンはあっさりとツンを好いていることを認めて、ドクオと一緒に告白することになった。
しぃちゃんはもう察してるだろうけど、今ちょうど、隣の教室でそれが実行されてるところだね」
(,,;゚Д゚)「えっ、マジで?」
(*゚ー゚)「ギコくんは察しが悪すぎかもね?」
(,,;゚Д゚)「いや、展開が早すぎるんだって」
少年と少女は、キャイキャイとなにか言い合った。
ショボンはそれを他所見しながらぼんやり聞いたが、実のある内容はなかった。
(*゚ー゚)「それにしても、すごいねぇ、ドクオくんって」
少女もそんな会話は必要としていないのか、少年の口を塞いでショボンに話しかけてきた。
(´・ω・`)「まぁ、大したもんだよな。普通の神経じゃ、あんなことは言い出せない」
ショボンは思っているままを答えたつもりだった。
しかし少女は、楽しげなものを見つけたいたずらっ子のように、ニンマリと笑った。
(*゚ー゚)「その言い方じゃあ、どうもショボンくん気付いてないねぇ?」
(´・ω・`)「意味がわからん」
これもまた言われた意味をショボンは解せず、こんな反応をすることになった。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:20:06.15 ID:aXM1RmdKO
*
ショボンが出た後の教室には、数秒の静寂を挟んだ後、言葉が生まれていた。
('A`)「なぁ、ブーン……俺、やっぱり止すよ」
ブーンはその言葉を無視したが、彼は語り続けた。
('A`)「中学のときだけどさ、おれ、1回だけ2人きりで、ツンとマックに行ったことがあってさ」
('A`)「そのとき、ツンが俺に言ったんだ。ツンはお前のことがどうしようもなく好きなんだって」
('A`)「俺、ツンのその気持ちは今でも変わってないと思う。
あの時ツンが打ち明けた気持ちの激しさは、時の経過なんかで収まるものとは思えなかった」
('A`)「ショボンと付き合っちゃいるが、ツンはたぶん、お前の気持ちを待ってるはずだ。
だからツンは、ショボンを蹴ったってお前を選ぶと思うんだ。間違いなく俺の出る幕はない」
('A`)「俺は物陰で見守ってるからよ、お前の気持ちをぶつけてやれよ。な?」
ドクオは教卓の下に入ると、息を潜めた。
そして、音を立てぬように懐から写真立てを引き出した。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:24:17.17 ID:aXM1RmdKO
出来ればこれを使いたくはない。
ドクオは、現在のツンの気持ちがショボンに在ることを祈った。
いや、たとえそうでなくても、とにかくブーンの告白を断ってくれたらいい。
もしツンがブーンの告白を受け入れたら。
そんなことになれば、三人の友情は必ず崩壊するに違いなかった。
ドクオはその場合、教卓から現れて、写真立てをツンに見せるつもりでいた。
この写真立ては、ツンが中学生のときにブーンに渡した誕生日プレゼントだった。
写真立てをプレゼントしたことを、ツンが忘れているはずはないと、ドクオはにらんでいた。
どんな大きさの、どんなデザインの写真立てをプレゼントしたかさえ覚えているはすだ。
しかし、この写真立てはガラスが割れている。
それだけでもツンには十分ショックだろうが、さらに飾られている写真は、ブーンが盗撮した自身の裸である。
これを見れば、ツンはきっとブーンと付き合うのを思いとどまるはずだ。
そのはずなのだが、ブーンはドクオを恨むに違いない。
かといってこのカードを使わねば、ショボンがブーンを恨むことになる。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:28:06.10 ID:aXM1RmdKO
果たして、実際にその時になって写真立てをツンに見せられるか、ドクオには自信がなかった。
自分でも、損な役をわざわざ申し出たと思う。
しかしドクオとしては、むろん悪はブーンのほうである。
ブーンが幸福になって崩壊するよりは、ショボンが幸福のまま崩壊したほうがましだと思っている。
それでも、やはりツンがブーンをこっぴどくフってくれれば、全ては安泰に済むのだ。
ドクオは震える体を押さえつけながら、ひたすら願い、かつ覚悟を固めた。
そして、ドアが開いた。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:32:15.09 ID:aXM1RmdKO
*
(*゚ー゚)「ドクオくんとブーンは、中学一緒なんでしょ? だったら、ツンちゃんとも一緒でしょ?
私だったら、ドクオくんがツンちゃんの気持ちのほうに何か心配があるんじゃないかって、疑うけどなぁ」
少女は爛々と輝く瞳で言った。まるでそうであることを期待しているようだった。
(´・ω・`)「中学のころに何かそういう話があったとは聞かないがな」
(,,゚Д゚)「だが、ツンなら口止めがどぎつそうだからな。ドクオが今まで黙っていてもおかしくない」
(;´・ω・`)「ギコまで。やめろよ、くだらない。そんな話があってたまるか」
(,,゚Д゚)「しかし、なんと言っても幼馴染みだからな。そんな話がありそうなんだよ」
(*゚ー゚)「うん、幼馴染みは惹かれ合うんだよ」
少女は「ね」と首を傾げた。少年が「な」と応えた。
(´・ω・`)「……そこまで言うなら、ちょっと確かめてくるよ」
ショボンは席を立ち、足早に隣の教室に向かった。
(*゚ー゚)「お気をつけて」
と少女が言ったのが、彼はいやに癪に障った。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:36:12.00 ID:aXM1RmdKO
ショボンは、ドアの窓から教室の中を確認することもせずに戸を開けた。
それほど彼は気が急いていた。
そして結果、最も見たくないものを見てしまった。
(´・ω・`)「……ツン、何して」
彼が怒鳴りかけた瞬間、教卓の下からドクオが飛びだしてきた。
(;A;)「やめろおおおおぉぉ!! ツン、駄目だその男はああぁ!!」
ドクオは写真立てを、抱きあう二人に向けて突きつけた。
そこに飾られた写真は、両人の目に否応なく飛び込んだ。
(;^ω^)「ど、ドクオ……おまえ、それ」
ξ;゚⊿゚)ξ「何あれ……私!?」
しかし驚いたのはブーンとツンのみならなかった。
(;A;)「あ、あれ、ショボン? どうしてここに……」
(´・ω・`)「……ちょっと不安があってね。杞憂だと思いたかったんだが、そういうわけにはいかなくなった」
ショボンは抱きあっている二人を睨んだ。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:40:07.73 ID:aXM1RmdKO
ξ;゚⊿゚)ξ「は、離れてよ」
ツンは自分の恋人がそこにいることに初めて気づき、慌ててブーンを押しのけた。
夕陽がまた煌めく。
さっき以上に、わざとらしく不似合いな光であった。
(´-ω-`)「……」
誰も口を開かない。
ショボンは目を閉じた。
暖かな光の中、幾つもの視線が交錯しているのが分かった。
それらの視線すべてが、同じ繰り言をつぶやいていた。
(´-ω-`)「違わないさ」
ショボンは首を振り、彼らの言葉に答えた。
ドクオが鼻をすすった。
それっきり、教室は静寂に包まれたまま、暗くなっていくのみだった。
(終)
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 19:41:36.68 ID:aXM1RmdKO
おわり
またね
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