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唯「ブーンブンシャカブブンブーン♪」澪「ひゃぁ!!///」ピクンッ
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:09:20.92 ID:/gJPAVT1O [1/26]
唯「どうしたの、澪ちゃん? 突然大きな声で」
澪「い、いや、何でもない……」
澪(ななな、何が起こったんだ?)
唯「ふーん、変なの~」
唯「ブーンブンシャカブブンブンブーン♪」
澪「ひゃはぁぁっ!!///」ピクピクッ
澪(この感覚、自分の部屋でオn……あ、あんな事してる時と同じだ!)
律「ほほう……」ニヤリ
唯「どうしたの、澪ちゃん? 突然大きな声で」
澪「い、いや、何でもない……」
澪(ななな、何が起こったんだ?)
唯「ふーん、変なの~」
唯「ブーンブンシャカブブンブンブーン♪」
澪「ひゃはぁぁっ!!///」ピクピクッ
澪(この感覚、自分の部屋でオn……あ、あんな事してる時と同じだ!)
律「ほほう……」ニヤリ
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:12:25.11 ID:/gJPAVT1O
唯「もうっ、澪ちゃん!」
澪「うぅ……」
唯「人が気持ちよく歌ってる時に邪魔するのはマナー違反だよ!」プンスカ
澪「す、すまん、唯……」
紬「唯ちゃん、さっきから歌ってるその曲は何なの?」
唯「『ミツバチ』って曲だよ、私のなかで最近のベストヒット!」
紬「なんだか口ずさむだけで楽しくなっちゃう素敵な曲ね!」
梓「……唯先輩、ムギ先輩、それ皮肉じゃなくて本気ですか?」
紬「もちろんよ、ブーンブンシャカブブンブーン♪」
澪「はうんんんんん!!///」ピ-ンッ
澪(とうとう、イってしまった……)ハァハァ
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:14:54.51 ID:/gJPAVT1O
唯「んもうっっ!!」プンスカ
澪「あ、ご、ごめん……」ハァハァ
梓「澪先輩……?」
紬「澪ちゃん……?」
澪「……ちょっと、トイレに行って来る」ガタッ
律「あっ、私も行く~」ガタッ
スタスタ
律「それで、さっきからどうしたんだ、澪?」ニヤニヤ
澪「くそっ、律……」ハァハァ
律「まさかとは思うけど、さっきの呪いが本当に……」ニヤニヤ
澪「そ、そんな訳ないだろっ!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:18:25.38 ID:/gJPAVT1O
昼休み!
律「……あそこにいるの、オカルト研の人じゃないか?」
澪「あっ、本当だ」
律「どーもどーも、学園祭の時はありがとう」
オカ研1「……こんにちは」
律「今は何してんだ?」
オカ研2「世界各地の呪いについての考察、まとめていたところ」
澪「の、呪い!?」ビクッ
律「おー、どうした澪。怖いのか?」
澪「そそそ、そんな訳ないだろ。呪いなんてないさ、呪いなんてうそさ」
律「『おばけなんてないさ』ってか……。さっそく逃避に入ったな」
オカ研1「……嘘、じゃない」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:21:42.02 ID:/gJPAVT1O
律「あー、ごめんな。気を悪くしないでくれ。澪は幼稚園児並みの怖がりだからさ」
澪「何だよ、その言い方! わ、私は別に怖いんじゃなくて、そんなもの信じてないだけで」
オカ研1「……呪いは実在する」
オカ研2「どうしても信じないと言うならば、その存在を証明してみせる」
律「証明するって、どうやって?」
オカ研1「……秋山澪、あなたを呪う」
オカ研2「実際に呪いをかけて、その効力を身をもって知ってもらう」
澪「えぇっ!?」
律「おいおい、大丈夫なのか!?」
オカ研1「……大丈夫」
オカ研2「あなたにかけるのは、一番軽い効力の呪い。魂も穢れないし、すぐに解ける」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:25:06.84 ID:/gJPAVT1O
律「うーん。よくわからないけど、お試し感覚のかる~い呪いなんだな」
オカ研1「……そう」コクリ
律「それならいいんじゃないか、澪。かけてもらおうぜ」
澪「へっ!?」
律「呪いなんて信じないんだから、かけられても平気だろ?」ニヤニヤ
澪「ももも、もちろん! 呪いなんて迷信に決まってる!」
律(こいつはどうしてオカルト研の前でそういう事を言っちゃうかな……)
オカ研1「……そう」ムスッ
オカ研2「わかった。これから実際に呪いをかける」
律「イェーイ、やっちゃってください!」パチパチ
澪(もう、後には引けなくなっちゃったーーー!)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:28:54.44 ID:/gJPAVT1O
オカ研1「汝、悦楽に溺れし弱き者の……」ブツブツ
オカ研2「愚かなる人間の魂を喰らいて……」ブツブツ
律(なんか呪文のようなものを詠唱していらっしゃる……)
澪(さっき髪の毛を抜かれて、ちょっと痛い……)
オカ研1「……ふぅ」
オカ研2「終わった。秋山澪には呪いがかけられた」
澪「ひぇっ!」ビクビク
律「お疲れ様、どんな呪いなんだ~?」
オカ研1「……快楽天と呼ばれる呪い」
オカ研2「言霊によって、秋山澪は悪魔の快楽に身体を蝕まれる」
律「ふむふむ、その言霊ってのは何だ?」
オカ研1「……呪文のようなもの」
オカ研2「ある種の言葉には霊力が宿る。鍵となる言霊は、」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:31:05.33 ID:/gJPAVT1O
再び放課後!
律『Bu~n』
澪「ひぃっ!?///」ピクンッ
律「……って聞くと、全身を快感が駆け巡る。そんな呪い、ある訳ないよな?」ニヤニヤ
澪「……そ、そんなもの、ある訳ないだろっ!」
律『Bu~n』
澪「はぁっ!?///」ピクピク
律「あはははは。澪の反応、面白いなぁ~」ニヤニヤ
澪「く、くそっ……」ハァハァ
律「安心しろよ、10日も経てば自然に呪いが解けるって言ってたし」
澪「10日って、結構長い……」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:34:16.44 ID:/gJPAVT1O
律「さて、トイレに着いた」
澪「……」
律「どうした、早く済ませてこいよ?」
澪「へ、変な事するなよ」
律「何もしないって、さぁさぁ」
澪「うぅ……。大体なんで、トイレまでついて来るんだよ」
バタン
律「……」
澪「……」
律「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
ガチャ
澪「やめろぉっ、その先を歌うなぁっ!!」
律「きゃはっ、冗談だよ、冗談!」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:37:47.88 ID:/gJPAVT1O
紬「……あっ、2人とも帰って来た」
唯「トイレタイムが長すぎだよ~」
律「悪い悪い、澪がすっごい便秘でさ~」
澪「そうやって根も葉もない話ばっかりするな!」ゴチン
律「はべっ!」
梓「それより澪先輩、律先輩。どうか唯先輩とムギ先輩を止めてください」
澪「ん、何かあったのか?」
梓「次のライブで『ミツバチ』を演奏するって言い出して……」
澪「なにぃっ!?」
唯「いいじゃん、やってみようよ~」
紬「他のアーティストの曲をカバーするのも楽しいわよ?」
梓「カバーはいいですけど、よりによってあんな酷い曲じゃなくても!」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:40:39.54 ID:/gJPAVT1O
律「いいんじゃないか、私は賛成~」ニヤニヤ
澪「り、律っ!」
律「実は私もあの曲が大好きなんだよね~」ニヤニヤ
澪「お前、昨日まで『糞曲だ』ってボロクソに批判してたじゃないか!」
唯「りっちゃん隊員もわかってくれますか、この素晴らしさを!」
紬「それじゃあ早速、今日から練習してみましょうか!」
梓「そ、そんな……」
澪「だ……」
律「だ?」
澪「ダメぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」バンッ
律「うわっ、澪がキレた!」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:42:59.47 ID:/gJPAVT1O
澪「ヤダ、ヤダ、ヤダ! 私は絶対に認めない!」ウルウル
律(目に涙を浮かべて、どんだけ必死なんだ……。って、当然か)
唯「えー、いーじゃん、やろうよー。ブーブー」
澪「あふぅ!!///」ピクンッ
律(あっ、唯のブーイングに反応した。不完全でも言霊に認識されるんだな)
紬「私も、ブーブー!」
澪「はぁん!!///」ピクッピクッ
律(ムギ、えらい楽しそうだけど、本当にブーイングの意味わかってるのかな?)
梓「澪先輩、さっきから様子がおかしいですけど、大丈夫ですか?」
澪「と、とにかく、私は反対だからな……」ハァハァ
律(涙目で顔を真っ赤にした澪の表情、エロいなぁ)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:45:58.17 ID:/gJPAVT1O
唯「澪ちゃんがそういう態度なら、私だって意地を張っちゃうよ!」
梓「唯先輩、何をする気ですか?」
唯「これから何の曲をやっても『ミツバチ』の詞で歌うからね、私!」
梓「……はぁ?」
唯「スタンバイOK、行くよギー太!」
澪「……な、何を?」
唯「ブーンブンシャカ、ブーンブンシャカ、ブンブン♪」ジャンカジャンカ
(キミを見てると、いつもハート、DOKI☆DOKI)
澪「あふあぁっ!!///」ピクンピクンッ
唯「ブーリブリチャカ、ブーリブリチャカ、ビガッビガッ♪」ジャンカジャンカ
(揺れる思いは、 マシュマロみたいに、ふわ☆ふわ)
澪「ひゃうんんんっ!!///」ピ-ンッ
律(あっ、澪がまたイったみたいだな)
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:48:05.16 ID:/gJPAVT1O
梓「唯先輩、本当にやめてください。私たちの思い出を汚されたみたいで悲しいです」
唯「だってみんなが賛成してくれないんだもん~」
紬「これ、なんだか斬新で面白いかも!」
唯「でしょでしょ!?」
律「……なぁ、澪」
澪「あ、うー?」ハァハァ
律「まともに喋れないほどイきまくったか」
澪「そ、そんにゃこと」ハァハァ
律「いいか、お前が助かるには、唯たちに本当の事を話すしかないと思うぞ?」
澪「……」ハァハァ
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:50:14.17 ID:/gJPAVT1O
唯「えーと、曲名は『ふわふわ時間 ~ミツバチver.~』かな」
紬「あと『わたしの恋はホッチキス ~ミツバチver.~』もいい感じね」
梓「唯先輩、ムギ先輩、私の話を聞いてましたか!?」
律「……あの調子だと、これから毎日のようにブンシャカ地獄になるぜ」
澪「はうっ」ピクッ
律「素直に呪いの存在を認めて、正直にお願いした方がいいんじゃないか?」
澪「わ、わかったよ……」
律「よしよし、いい子だ」ナデナデ
澪「うぅっ……」
律「さぁさぁ、みんな注目! ちょっと聞いてほしい事があるんだ!」
唯「ほえ?」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:56:20.38 ID:/gJPAVT1O
律「……という訳で、澪には今、呪いがかけられてるんだ」
澪「だからお願いだ、本当に『ミツバチ』だけは勘弁してほしい」グスッ
紬「そういう理由があるなら、無理にとは言えないわね」
唯「えー、でも……」
紬「唯ちゃん!」
唯「……わかったよ。澪ちゃんの呪いが解けるまで我慢する」
澪「ありがとう、みんな……」ホッ
律「これで快感地獄から救われたな、澪」
梓「でも律先輩、澪先輩が悶絶するのを見て楽しんでたんじゃないんですか?」
律「いやー、なんか澪が苦しそうだからさぁ。かわいそうに思えてきちゃって」
梓「……律先輩、手ぬるいです」ボソッ
律「……えっ、何か言った?」
梓「いえ、何も」ニコッ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:59:28.49 ID:/gJPAVT1O
澪「じゃあ練習しようか。『ミツバチ』じゃない、普通の曲な」
律「えーっ、もうちょっと休憩しようぜ。学園祭も終わったんだし」
澪「学園祭が終わっても、卒業しても、このバンドは続いていくんだぞ」
律「……何だよ、そんな普通にいい話しやがって」
澪「こういう時こそ、ちゃんと練習する事が大切なんだ」
紬「うん、わかった。食器を片付けたら練習に入るわ」
澪「ありがとう。私は先に始めてるよ、今日はまだ一度も弾いてないんだ」
ブォ-ン
澪「ひゃぁっ!!///」ピクンッ
紬「澪ちゃん、どうしたの?」
澪「い、いや、何でもない……」
律「今の反応、まさか……」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:04:48.34 ID:/gJPAVT1O
澪「も、もう一回、弾いてみよう……」オソルオソル
ブォ-ン
澪「きゃふぅっ!!///」ピクピク
律「やっぱり、そういう事か」
紬「りっちゃん、何が起こってるの?」
律「どうやらベースの音が『Bu~n』の言霊として認識されちゃうみたいだ」
紬「つ、つまり?」
律「澪がベースを弾くと、澪は限界までイき続けるって事だ!」
澪「そ、そんなぁ……」ヘナヘナ
唯「自分で自分をイかせるなんて、まるでオn」
律「唯、その先は言わない方がいいと思うぞ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:07:56.12 ID:/gJPAVT1O
澪「これじゃ、練習なんてとても出来ないよ」
梓「えっ、練習しないんですか? 澪先輩らしくない」
澪「……梓、一連の流れを踏まえてそれ言ってる?」
律「そうだな、今日はなんか凄くみんなで練習したい気分だ!」ニヤニヤ
澪「律、お前は普段そんな態度じゃないだろ!」
紬「キーボード、準備できました」
唯「こっちもOKだよ、あとは澪ちゃんだけ!」
澪「……う、」
律「……う?」
澪「うわああああああああん!!」ダッ
律「あっ、逃げた」
梓「今日はもう澪先輩で遊べませんね」
律「梓、今『で』って言った?」
梓「いえ、別に」ニコッ
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:12:30.07 ID:/gJPAVT1O
翌朝!
澪「うぅ、昨日は酷い目にあった……」
唯「澪ちゃん、おはよ~」
澪「唯か、おはよう。今朝は遅刻ギリギリじゃないんだな」
唯「その言い方、まるで私がいつも遅刻ギリギリみたいな!」
澪「事実だろ……」
ガラッ
姫子「おはよう」
唯「あっ、姫ちゃんだ。おはよ~」
澪「立花さん、おは……」
唯「朝の掛け声は!?」
姫子「ブーンブンシャカ!!」
唯「ブブンブーン!!」
澪「よおぉぉっっ!?///」ピクンピクンッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:16:57.63 ID:/gJPAVT1O
姫子「澪ちゃん、どうしたの?」
唯「……そっか、澪ちゃんの前でブンシャカしちゃいけないんだった」
澪「はうっ」ピクピク
唯「ごめんね、澪ちゃん」
澪「あぁ、次から気を付けてくれると助かる……」
和「……何なのよ、今の一連のやり取りは」
唯「あっ、和ちゃん!」
和「まず唯と姫子の掛け声は何なのよ」
姫子「えーと、あれは、その」
唯「私と姫ちゃんは『ミツバチ』の絆で結ばれているんだよ!」
姫子「うん、まぁそんな感じ。ハハッ」
和「……もういいわ。姫子も今さら恥ずかしがらないでよ」
姫子「てへへ……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:22:12.95 ID:/gJPAVT1O
和「それと、澪はどうしたのよ。いきなり変な声を出して」
澪「うん、実は昨日……」
カクカクシカジカ
澪「……という訳なんだ」
和「随分とふざけた話ね」
唯「和ちゃんは呪いって信じないの?」
和「まぁ、存在は認めるわ。ただし正体は別のものよ」
澪「別のものって?」
和「霊的な力じゃなくて、一種の催眠術よ。だから安心していいわ」
澪「そうなのか?」
和「澪は思い込みが激しいタイプだから、暗示にかかっちゃったのね」クスッ
唯「ふーん……」
姫子(あっ、唯ちゃんが何か企んでる)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:29:20.78 ID:/gJPAVT1O
昼休み!
「○月×日△曜日、お昼の校内放送を始めます」
澪「さて、お腹が空いちゃったな。お弁当を食べよう」
「今日の1曲目は、3年2組田井中律さんからのリクエスト」
澪「へぇ、律が何かリクエストを出したんだ。海外のロックバンドかな?」
「遊助の新曲『ミツバチ』です。どうぞお聞きください」
澪「……」ガタッ
「38℃の真夏日、夏祭り。こんな日は♪」ワチャカナドゥ
唯「あれ、澪ちゃん。どこに行くの?」
澪「何処か、できるだけ遠く! この放送の届かない場所へ!」
「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
澪「いやあぁぁぁ、ばあぁかあぁりいぃつうぅ!!!」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:31:42.91 ID:/gJPAVT1O
律「あれ、澪がいない。一緒に弁当を食べようと思ったのに。いちご、知らないか?」
いちご「さっき奇声をあげて教室を出て行ったわよ」
律「……はぁ、何だそりゃ?」
いちご「こっちが聞きたいわよ、異様な慌てぶりだったし」
律(例の呪い関連かな?)
いちご「それより、律。軽音部のくせにアンタ、音楽の趣味悪いわね」
律「いきなり失礼な事を言うな、おい!」
いちご「お昼の校内放送に、あんな糞みたいな曲のリクエストを出すなんて……」
律「……んっ、それ何の話?」
いちご「だから、今日の校内放送。律が『ミツバチ』のリクエスト出したんでしょ」
律「いや、私そんなの知らないぞ?」
いちご「……えっ?」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:34:45.22 ID:/gJPAVT1O
その頃!
憂「梓ちゃん、一緒にお昼を食べようか」
梓「うん、いいよ~」
憂「さっき校内放送で流れた曲、最近お姉ちゃんが大好きなんだ~」
梓「あぁ、遊助の『ミツバチ』ね」
憂「そうそう。ちょっと私は歌詞の意味がわからないんだけどね」テヘッ
梓「あの曲、私がリクエスト出したんだ」
憂「えっ、そうなの? でも確か、律さんのリクエストって言ってたような」
梓「私が律先輩の名前でリクエストしたの」
憂「なんでわざわざそんな事を?」
梓「んー、ちょっとしたイタズラ心だよ」
憂「そうなんだ。梓ちゃんがイタズラするなんて、意外かも」
梓「……」ニヤリ
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:43:21.49 ID:NPFDf/9yO [2/45]
澪「はぁ、はぁ、はぁ……」
澪「息が苦しい、校庭まで全力で走って来たからな……」
澪「まぁ、それだけじゃないけど……///」
「次の曲は、3年2組琴吹紬さんからのリクエスト」
「ベートーヴェン、ピアノソナタ第8番『悲愴』より、第一楽章」
澪「スーッ、ハーッ。スーッ、ハーッ」
澪「よし、深呼吸したら落ち着いた」
澪「……落ち着いたら、怒りがこみ上げてきた」
澪「律、絶対に許さないからな。キッチリ仕返ししてやる!」イライラ
澪「そうと決まれば、あの人たちに協力してもらおう!」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:44:40.23 ID:NPFDf/9yO [3/45]
律「もうすぐ昼休みも終わりだというのに、澪が帰って来ない……」
紬「さすがに怒ったんじゃないかな、『ミツバチ』のリクエストは……」
律「だから、あれは私じゃないってば!」
ガラッ
律「あっ、澪!」
澪「おぉ、律か」ニッコリ
律「さっきの校内放送だけど、あれ……」
澪「あぁ、律のリクエストした曲が採用されて良かったな」ニッコリ
律「え、あ、うん……」
ポンポン
律(ひっ、頭!)
澪「おかげで楽しい昼休みを過ごせたよ、ありがとう」ナデナデ
律(……その笑顔が怖すぎます、澪さん)
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:46:11.66 ID:NPFDf/9yO [4/45]
放課後!
澪「あっ、唯」
唯「澪ちゃん、どうしたの?」
澪「私、今日はちょっと部室に行くのが遅くなるから」
唯「うん、わかった」
澪「だからそれまで、好きなだけ『ミツバチ』を歌ってていいからな」
唯「……えっ?」
澪「唯は歌いたくて仕方ないのに、私に気を遣って歌えないだろ?」
唯「う、うん」
澪「私がいない間は、何の遠慮も要らないからな」
唯「……よくわかんないけど、ありがとう澪ちゃん!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:50:21.09 ID:NPFDf/9yO [5/45]
澪「……失礼しまーす」
オカ研1「……どうぞ」
オカ研2「あなたを待っていた。田井中律の毛髪は持って来た?」
澪「はい、これ! 頭を撫でるふりをして採取したんだ」
オカ研2「それは、自然な動作の中で採取できたという意味?」
澪「そうそう。誰が見てもバッチリ自然な、私と律の普段のやり取りだった」
オカ研1「……そういう事にしておく」
オカ研2「では早速、田井中律に呪いをかける」
澪「うん、お願いします。えーと、呪いの種類は確か……」
オカ研1「……エンゼルフェザーと呼ばれる呪い」
オカ研2「言霊によって、田井中律は天使の愛撫に身体を包まれる」
澪「ありがとう。それで、その言霊は……」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:58:37.44 ID:NPFDf/9yO [6/45]
その頃!
律「やっぱり部室は落ち着くなぁ」ダラダラ
唯「卒業してもずっとここに住みたいねぇ」ダラダラ
紬「あっ、それ素敵! 毎日が学園祭の夜みたいになって!」
梓「本当に住み着かないでくださいね……。ところで澪先輩は?」
唯「何か用事があるみたい。遅れて来るって言ってたよ」
梓「へぇ、そうなんですか……」
唯「だから澪ちゃんが来るまでブンシャカやり放題なんだよ!」
紬「ブーンブンシャカブブンブーン♪」
律「ひゃっ!!」ビクッ
唯「りっちゃん、どうしたの?」
律「唯、変なところ触るなよ~」
唯「えっ、私は何もしてないよ?」
律「……あれ、マジで?」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:00:35.22 ID:NPFDf/9yO [7/45]
紬「澪ちゃんが来るの遅くなるなら、先にティータイムを始めちゃおうか」
唯「うん、そうだね。紅茶とお菓子をお願いします、ムギちゃん!」
紬「わかりました~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「きゃははははっっっっ!!!!」ジタバタ
唯「ど、どうしたの、りっちゃん!?」
紬「なんだか楽しそうね~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「ひぃっ、ひぃっ、やめてぇぇっっ!!」ジタバタ
唯「……りっちゃんが笑い転げている」
梓「まるで狂っちゃったみたいな笑い方ですね」
唯「……あずにゃん?」
梓「いや、映画に時々出てくるじゃないですか。ダークナイトみたいな」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:02:34.88 ID:NPFDf/9yO [8/45]
唯「おーい、りっちゃん。狂ったの?」
律「ち、違うっての、バカ……」ハァハァ
梓「顔も真っ赤だし、涙とよだれが溢れてますよ」
律「う、う、うるさい!」フキフキ
紬「紅茶の用意が出来たわよ~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「ム、ム、ムギ! それ、やめて、きゃはははっっっ!!!」ジタバタ
紬「えっ、私?」
律「そう、ムギが歌うと、全身がこそばゆくて仕方ないんだ……」ハァハァ
紬「歌……って、しゃらんら♪の事かな?」
律「そ、それそれぇぇっっ!!」ジタバタ
紬「あっ、ご、ごめん」
律「それを聞くと、まるで、身体中を誰かにくすぐられているような感覚が……」ハァハァ
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:11:54.29 ID:NPFDf/9yO [9/45]
唯「落ち着いてきたら、紅茶でも飲みなよ」
律「あぁ、ありがとう……」ズズッ
唯「ムギちゃん、今日のお菓子は何?」
紬「ラング・ド・シャーよ!」
律「きゃひひひひ、きた、来ちゃったぁぁっっ!!」バチャン
唯「うわっ、いきなり!?」
律「や、や、やめてぇぇっっ、助けてぇぇっっ!!」ジタバタ
梓「紅茶がスカートに溢れて、律先輩がお漏らししたみたいですね」
律「うる、ひゃい……」ハァハァ
紬「私、タオルを持って来るわ!」
律「おっ、お願い、ひまひゅ……」ハァハァ
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:13:19.43 ID:NPFDf/9yO [10/45]
唯「ねぇ、あずにゃん?」
梓「はい」
唯「この症状、やっぱりアレかな?」
梓「……呪いでしょうね。澪先輩の呪いとは、種類が違うみたいですが」
ガチャ
澪「やぁ、遅くなったな」ニッコリ
紬「澪ちゃん、りっちゃんが大変なの!」
澪「という事は、成功したみたいだな」
律「澪、お前、まさか……」ハァハァ
澪「悪いな、律。昼休みの仕返しをさせてもらったぞ」
律「だから私は無実だってばー!」
梓(面白くなってきた……)ニヤリ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:15:04.69 ID:NPFDf/9yO [11/45]
唯「澪ちゃん、これってやっぱり呪いなの?」
澪「その通りだ。私の呪いと同じように、一番軽くてすぐ解けるやつ」
律「すぐって言っても10日くらいだろ、長いって……」
澪「それは私だって一緒だ!」
梓「でも澪先輩の呪いと、効果がちょっと違う?」
澪「あぁ。エンゼルフェザーと言って、全身を天使の羽根で撫でられる感覚だとか」
律「私がくすぐり苦手だって知ってるから、それを選んだだろ!」
澪「あれー、そうだったっけ。忘れてたよ、ハッハッハ」
律「くっそー、澪めっ!」
澪「ちなみに鍵となる言霊は……」
梓「言霊は……」ゴクリ
澪『Sha』
律「また、また、やはははっ、やびゃいぃぃっっ!!」ジタバタ
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:32:06.31 ID:NPFDf/9yO [13/45]
紬「りっちゃん、大丈夫? はい、このタオルを使って」
律「ありがと、ムギは私の天使だよ……」ハァハァ
紬「えへへ、どう致しまして」
律「まぁ今の私にとって、天使の羽根は凶器でしかないんだけど」
紬「えーと、喜んでいいの、私?」
律「このまま、やられっ放しのりっちゃんだと思うなよ?」
梓(律先輩の目に、復讐の炎がメラメラと……)
律「なぁ、唯!」
唯「ほえ?」
律「一番好きなコンビニは?」
唯「んーと、セブンイレブンいい気分♪」
澪「ひゃはぁぁっっ!?///」ピクンッ
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:33:57.78 ID:NPFDf/9yO [14/45]
律「よし、ヒット!」グッ
澪「は、反撃、だと……」ハァハァ
唯「あわわ、やっちゃった。澪ちゃんごめん!」
律「……次は、そうだな、みんなで練習しようぜ!」
澪「なっ!?」
律「もうティータイム終わりだからな、早く準備しろ~」ニヤニヤ
梓(律先輩、普段からそんな姿勢だったらいいのに)
律「さぁ澪、ベースを持て! ドラムは準備万端だぞ!」
ドコドコチンシャ-ン
律「って、きゃはああぁぁっっ!?」ビクンッ
紬「どうしたの、りっちゃん!?」
律「……えっ、何だよ、これ」ハァハァ
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:35:47.64 ID:NPFDf/9yO [15/45]
澪「まさかとは思ったが、本当にそうみたいだな」
唯「えーと、どういう事なの?」
澪「楽器の音でも言霊として認識されるのは、知っての通りだからな」
唯「つまり……」
澪「おそらくシンバルの音が『Sha』の言霊として機能して、律の身体は……」
律「くすぐったひぃぃっっ!!」ジタバタ
澪「私に攻撃するつもりだったんだろ、自業自得だ」
梓「結局、自分だけ苦しい思いをするなんて。間抜けですね」
律「うぅっ、言いたい放題言いやがって……」ハァハァ
梓「それで律先輩、練習を始めるんでしたっけ?」
律「する訳ないだろっ、もう帰るっ!」グスン
梓(あっ、とうとう泣いちゃった)
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:41:22.50 ID:NPFDf/9yO [16/45]
翌日!
律「澪のために新しい曲を作ったぜ!」
唯「えっ、りっちゃんが作ったの?」
律「いや、ムギが前に作った曲に歌詞を付けただけ」
紬「嬉しいわ、歌詞の無いまま放置されてる曲が結構あるから」
澪「それでどんな曲なんだ?」
律「曲名は『Heart Goes Boom!!』だ」
澪「たひゃ!?///」ピクッ
『喜怒哀楽 ジャズベのボディに 全部私が詰まってる
春夏秋冬 二十四時間 うなるハートは無休
Bo Boom Boom Boom Boom!!』
澪「いやっ、ひゃはぅんんんん!!///」ピ-ンッ
律「どうだ、喜んでくれたか?」ニヤニヤ
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:42:28.37 ID:NPFDf/9yO [17/45]
澪「……奇遇だな、私も新曲の歌詞を書いてきたんだ」ハァハァ
唯「澪ちゃんも?」
澪「ほら、この前ムギが作曲して、唯が途中まで歌詞を作ったやつ」
紬「あの曲が完成したのね、嬉しい!」
律「えーと、タイトルは何だっけ?」
澪「『Cagayake! GIRLS』だよ。Cメロから先が未完成だったからな」
『永遠にループする
サイズ down↑ up↓ down↑ up↓
でも気分いつでも
up↑ up↑↑ up↑↑↑ & up↑↑↑』
律「おぉ、なかなかいい感じ……」
『Shining Shiner Shinyest
Girls be ambitious & shine』
律「って、きゃははははぁぁぁぁっっっっ!?」ジタバタ
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:44:20.74 ID:NPFDf/9yO [18/45]
紬「最後のところ、リピート6回も……」
唯「何か凄まじいものを感じるよ、明るい曲と歌詞なのに……」
澪「どうかな、これ?」ニッコリ
律「ぜぇー、ぜぇー、ひゅー、ひゅー」ハァハァ
紬「りっちゃん、呼吸できる?」
律「な、何とか……」ハァハァ
梓「律先輩も澪先輩も、自分は無傷で相手だけ呪いが発動するような歌詞を……」
澪「いやー、そんなつもりは無かったんだけどなー」
律「あぁ、私も、ただ、澪のために、と思って……」ハァハァ
唯「2人とも、にらみ合ってて怖いよぅ」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:45:31.36 ID:NPFDf/9yO [19/45]
梓(片方だけしか発動しないのは、正直まどろっこしい)
紬「りっちゃん、澪ちゃん、動機は何であれありがとう!」
唯「きっかけが何であれ、出来上がったものは本当にいいものだよ!」
梓(2つの言霊を考えると、最も効率的に呪いを発動させるには……)
律「何だよもう、人聞きの悪い言い方しやがって」
澪「まるで私が、のたうちまわる律を見たくて歌詞を作ったみたいじゃないかー」
梓「ブーンブンシャカブブンブーン♪」ボソッ
澪「にゃひぃぃっっ!!///」ピクピクッ
律「あっ、らめ、らぁぁっっ!!」ピクピクッ
紬「梓ちゃん!?」
唯「あずにゃん!?」
梓「あっ、すみません。つい口に出して歌っちゃいました……」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:47:30.02 ID:NPFDf/9yO [21/45]
夜!
律「ただいま~」
聡「姉ちゃん、お帰り」
律「……何してんだ?」
聡「部屋の大掃除したら、色々懐かしいものが出てきた」
律「それ、いつまでも掃除が終わらないパターンだな」
聡「まぁまぁ。昔よく遊んでた、くだらないオモチャなんか眺めるのも楽しいよ」
律「気持ちはわかるけどな。んで、その手に持ってるのは?」
聡「スイッチを入れると、猿がシンバルを鳴らすやつ」
律「……待てっ、そのスイッチを入れるなぁっ!!」
聡「えっ?」カチッ
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:49:19.13 ID:NPFDf/9yO [22/45]
シャンシャンシャンシャン
律「ひゃははははははっっ!!」ジタバタ
シャンシャンシャンシャン
律「きひぃ、きひぃひひっっ!!」ジタバタ
聡「姉ちゃん、そんなに面白いのかよ……」
律「いや、ちが、そうじゃなくてぇぇっっ!!」ジタバタ
聡「気に入ったみたいだし、そのオモチャは姉ちゃんにあげるよ」
律「いら、いらな、ひぃぃっっ!!」ジタバタ
聡「じゃあ俺、部屋の掃除に戻るから」
シャンシャンシャンシャン
律「やっ、せめて、スイッチ切ってぇぇっっ!!」ジタバタ
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:51:05.57 ID:NPFDf/9yO [23/45]
律「……」ハァハァ
律「……笑い死ぬかと思った」
律「聡のやつ、たったひとりの姉を殺す気かよ」
律「……ふぅ」
律「認めたくないけど、ちょっと気持ちよくなってきた///」
律「……」カァッ
律「くすぐられ過ぎて、イカれ始めてるな」
律「……とりあえず」
律「この猿のオモチャは貰っておこう」
律「いや、観賞用、ただ机の上に置いておくだけだから!」
律「……誰に向かって言い訳をしてるんだ、私は」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:54:40.49 ID:NPFDf/9yO [24/45]
翌日!
教師「……そして1912年、中華民国の樹立とともに清は滅亡しました」
澪(世界史は受験で使うから、ちゃんと勉強しないとな)
教師「この時に起こった革命を何と呼ぶか、真鍋さん」
和「はい、辛亥革命です」
教師「正解。では辛亥革命の中心人物で、中華民国を建国したのは……」
澪(孫文か、基礎知識だな。……って、それを発音されると困る!)
教師「後ろの席の、平沢さん」
唯「はい、えーと、そn」
チョンチョン
唯(んっ、どうしたの姫ちゃん?)
姫子(『ぶん』って言ったら、澪ちゃんが困っちゃうよ!)
唯(あっ、そうか!)
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:56:18.97 ID:NPFDf/9yO [25/45]
教師「……平沢さん?」
唯「そ、それじゃなくて、毛沢東かなぁ?」
姫子(ナイス回避だよ、唯ちゃん!)
澪(よくやった、ありがとう唯!)
教師「違います、孫文です」
澪「ん~~~!!!///」ピクンッ
澪(一瞬安心したところに、不意打ちだなんて!)
教師「どうかしましたか、秋山さん?」
澪「いえ、何でもありません……」ハァハァ
唯(結局、回避できなかったよ……)
姫子(仕方ないよ、唯ちゃんは頑張ったって……)
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:58:11.35 ID:NPFDf/9yO [26/45]
教師「毛沢東は、別の革命の中心人物ですね。何だかわかりますか?」
澪(わかるよ、わかるけど、それは言えない!)
教師「騒がしかった秋山さんに答えてもらいましょうか」
澪(ひぇっ、そんな!)
教師「基礎的な知識だから、わかる筈です」
澪「はい、えーと……」ドキドキ
澪(これを言っちゃったら、私、授業中に、みんなの前で!)
澪「ぶ……」ドキドキ
澪(えぇい、仕方ない、もうヤケクソ!)
澪「ぶんか、大かくめぇぇぇっっっ!!!///」ピクンピクンピクン
澪(あぁ、私、文化大革命でイっちゃったよぉ……)
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 15:02:10.43 ID:NPFDf/9yO [27/45]
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
紬「澪ちゃんは頑張った、頑張ったよ!」
澪「うぅ……」
唯「別に誰もおかしく思ってなんかないよ!」
澪「そんな訳ないだろ……」
律「とにかく落ち込むなって、元気を出せよ!」
澪「元気、出せないよ……」
澪(事情を知ってるみんなが優しくしてくれる)
澪(それが余計に惨めな気持ちになるよ)
澪「うぅ、今日はもう帰りたい……」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:06:17.03 ID:NPFDf/9yO [30/45]
昼休み!
純「やっほー!」
梓「あぁ、純か」
純「突然ですが質問です! 梓はS? それともM?」
梓「んー、どっちかと言えばSだね」
純「なぁんちゃって、私は服のサイズを聞いただけでした~」
梓「……」イラッ
純「勘違いして答えてくれちゃったみたいだけどひべぇ!?」ギリッ
梓「うん、わかってたよ。服のサイズでしょ?」ニコッ
純「ほっぺた、ちゅねらにゃいでぇぇっっ!!」ギリギリッ
梓「サドって意味じゃなくてね、身体が小さいからSサイズかな、と思って」ニコニコ
純(サドだよ……。梓、あんたはサドだよ……!!)
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:07:20.94 ID:NPFDf/9yO [31/45]
梓「まったくもう。あんまりふざけた事ばっかりしてると、調教するよ?」
純「……えっ、調教?」
梓「それで、用件は特に無いの? 私、行くところがあるんだけど」
純「あれ、今の発言、サラッと流されちゃうの?」
梓「五秒以内に納得のいく返答が無かったから、もう行くわね」
純「ちょ、ちょっと待って、梓!」
梓「……何よ?」
純「この前の話、憂と相談してみたんだ」
梓「あぁ、そうなんだ。ありがと」
純「それで、結論としては……」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:10:01.23 ID:NPFDf/9yO [32/45]
放課後!
エリ「ねぇねぇ、コーラ飲まない?」
律「おっ、サンキュ。でも珍しいな~」
エリ「えっ、何が?」
律「エリってコーラ大好きだから、手元にあったら全部飲んじゃうイメージ」
エリ「んー、これがペプシだったら自分で全部飲んじゃうな」
律「コカコーラは駄目なのか?」
エリ「駄目って訳じゃないけど、ペプシにこの身を捧げると誓ったからね!」
律「……じゃあなんでコカコーラ買ったんだよ」
エリ「アカネに頼んだら、赤いの買って来ちゃったんだもん」
律「そういう事ね。まぁいいや、ありがたく頂きます」ゴクゴク
澪「律、そろそろ部室に行くぞ」
律「ほいほ~い。エリ、ご馳走様!」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:15:43.50 ID:NPFDf/9yO [33/45]
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「ん?」
唯「今、この部室には私とムギちゃんしかいないよ」
紬「そうね」
唯「……やりますか!」
紬「はいっ!」
唯「ブーン☆ブン☆シャカ!!」
紬「ブブン★ブーン!!」
唯「ブーリ☆ブリ☆チャカ!!」
紬「ビガッ★ビガッ!!」
唯「……ふぅ、スッキリした~」
紬「久しぶりに部室でブンシャカしたわね~」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:17:19.64 ID:NPFDf/9yO [34/45]
唯「澪ちゃんとりっちゃんがいると、こんな事できないからね~」
紬「私たちしかいない時、限定だもんね~」
ガチャ
澪「一体何を隠してるんだ?」
律「最後の方の会話しか聞こえなかったけど、仲間はずれは寂しいぞっ!」
紬「澪ちゃん、りっちゃん!」
唯「違うよ、2人がいない間にブンシャカしてただけだよ」
律「にゃははぁぅん!!」ピクンッ
澪「あふぁぁっっ!!///」ピクンッ
唯「あっ、またやっちゃった」
紬「こうならないように気を付けてたのに……」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:18:52.18 ID:NPFDf/9yO [35/45]
澪「それにしても暇だな」
律「私たち、楽器も弾けない身体だからな」
唯「かと言ってブ……、『ミツバチ』も歌えないし」
紬「紅茶とお菓子でのんびりするくらいしか、やる事がないわね」
律「そうだ、私たちはのんびり紅茶を飲む事しかできない」ズズッ
澪「それって普段とあまり変わらないんじゃないか?」
律「いや、普段ならそろそろ、澪と梓が練習しようって言い出す頃だ」
唯「そう言えば、あずにゃんは?」
紬「まだ来てないみたい……」
ガチャ
梓「遅くなりました、今日はビッグニュースがありますよ!」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:33:16.23 ID:NPFDf/9yO [36/45]
唯「あずにゃん、ビッグニュースって?」
梓「ふふふっ。この軽音部、私以外の皆さんは来年卒業してしまいますよね」
紬「そうね、寂しいけど……」
梓「そしたら部員が私一人になって、廃部になっちゃいますよね」
律「せっかく私たちが廃部寸前から建て直したのにな……」
梓「だから、新しい部員に入ってもらわないといけないですよね」
澪「梓、もしかして……」
梓「そう、軽音部に新しいメンバーの入部が決まったんですっ!」
唯紬律澪「おぉーーっっ!!」
梓「……まぁ、皆さんの予想通りのメンバーかもしれませんが」
律「確かに何となく予想はつくけど、紹介してくれよ!」
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:34:31.71 ID:NPFDf/9yO [37/45]
梓「まずベース担当、鈴木純です!」
純「どーも、失礼します……」テレッ
紬「ジャズ研でベースを弾いてる子よね、本格派じゃない!」
梓「続いてドラム担当、平沢憂です!」
憂「えへへ……」テレテレッ
唯「憂!?」
憂「ごめんね、お姉ちゃん。今日まで秘密にしておこうって約束したから」
唯「そうなんだ。えへへ、嬉しいなぁ、憂が軽音部に入ってくれて」
梓「そしてギター担当、中野梓。ひとまず3人いればバンドは組めます」
純「あとは何とかもう1人、部員を勧誘すれば……」
憂「軽音部は潰れないから、安心してください!」
唯紬律澪「わぁーーっっ!!」パチパチパチパチ
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:36:03.20 ID:NPFDf/9yO [38/45]
梓「じゃあ2人とも、準備して」
純「わかった。私のベースをアンプに繋いで、っと」
憂「律さん、ドラムセットお借りしますね」
唯「あれっ、何をするの?」
梓「入部の挨拶を兼ねて、この場で3人の演奏を披露したいと思います!」
澪「えっ?」
律「えっ?」
憂「お姉ちゃんに見つからないように、こっそりドラムの練習を頑張ったんだよ!」
純「入部するって梓に伝えたのが今日の昼休みだから、まだ3人で合わせてないんだけどね」
梓「まだバラバラかもしれないけど、今の私たちの演奏を聴いてほしいんです」
澪「えっ?」
律「えっ?」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:48:22.11 ID:NPFDf/9yO [39/45]
梓「そろそろ準備は出来た?」
純「いいよ~」
憂「こっちも~」
梓「それじゃ、始めようか」
澪律「ちょっと待ってくれ!!」
梓「……澪先輩、律先輩、どうしたんですか?」
澪「その演奏、今日じゃなきゃダメかな?」
梓「えっ、どうして?」
澪「えーと、できれば10日後くらいにしてくれると嬉しいな、なんて」
律「そうそう、やっぱりこういうのは、3人で練習を積んでからの方が」
梓「今日は私たち3人にとって記念日なんです、今日じゃなきゃ……」ションボリ
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:00:06.76 ID:NPFDf/9yO [40/45]
純「これまでただの友達だった私たちが、一つのバンドになった日なんです」
憂「ご迷惑でなければ、今日、この日の私たちを、皆さんに聴いてほしいんです」
澪「いや、今日はちょっと、ね? 都合が悪いって言うか、ね?」
律「ちょっと色々あって忙しいかな~、みたいな、ね?」
梓「暇そうに紅茶を飲んでたじゃないですか」
澪「うっ!」
律「反論できないところを的確に……」
梓「わかった。きっと先輩たち、突然の事だから、照れちゃってるんだよ」
純「あっ、そういう訳ね」
憂「えへへ。照れなくていいんだよ、お姉ちゃん」
梓「だから私たちで勝手に始めちゃおう、ちゃんと聴いてくれるから」
純憂「おぉーっ!!」
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:06:24.19 ID:NPFDf/9yO [41/45]
梓「それでは聴いてください、『ミツバチ』です」
澪「選曲に悪意を感じるぞ!?」
梓「38℃の真夏日、夏祭り。こんな日は♪」ワチャカナドゥ
律「しかもお前が歌うのかよ、中野!?」
梓「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
純「♪」ブォ-ンブォ-ン
憂「♪」ドコドコシャンシャ-ン
梓「ブーンブンシャカブブンブーン♪」
澪「あぐはふぁぁうんっ!!///」ピクピクッ
律「ふぁ、ひゃぎふぅぅっっ!!///」ジタバタ
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:10:11.28 ID:NPFDf/9yO [42/45]
紬「ベースとドラムの音だけでも呪いが発動しちゃうのに……」
唯「あずにゃんの歌まで加わったら、大変な事に……」
純「♪」ブォ-ンブォ-ン
澪(いっ、イったまま、収まらない、止まらない!?)ピクンピクンッ
澪(あたま、頭が、バカになっちゃう!?)ピクンピクンッ
憂「♪」ドコドコシャンシャ-ン
律(くすぐったい、気持ちいい、身体に、力が、入らない!?)ムズムズ
律(コーラとか、紅茶とか、色々飲んだから、漏れちゃう、かも!?)ムズムズ
梓「ブーンブンシャカブブンブンブーン♪」
澪「あへらああああぁぁぁぁっっっっ!!!!////」ピ-ンッ
律「出ちゃううううぅぅぅぅっっっっ!!!!////」ジョロロロロ
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:15:44.61 ID:NPFDf/9yO [43/45]
ジャジャ-ン
純「……ふぅ」
憂「……ほっ」
梓「どうでしたか、私たちの演奏は!?」
澪「あひゃ、しゅ、しゅごい……」ハァハァ
律「すごすぎて、漏らしちゃった……」ハァハァ
梓「ありがとうございます!!」
紬「いい笑顔ね、梓ちゃん……」
唯「あんなに満足そうなあずにゃん、初めて見たよ……」
梓「それじゃ、明日からもよろしくお願いしますね!!」
唯「……明日からも?」
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:20:32.70 ID:NPFDf/9yO [44/45]
純「これから毎日、先輩たちの前で『ミツバチ』を披露します!」
憂「私たちの成長を、日々見守ってください!」
澪「えっ?」
律「えっ?」
紬「純ちゃんと憂ちゃん、呪いの事は知ってるのかしら?」
唯「知らないんじゃないかな。つまり、容赦ない犯人はただ1人……」
律「……中野!」
澪「……梓!」
梓「という事です、よろしくお願いします!」ニッコリ
澪律「やめてくれぇぇっっ!!」
おわり?
201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/17(火) 22:22:50.01 ID:NPFDf/9yO [45/45]
以上で本編は終わりです、ありがとうございました
この後、番外編(大人向け)があるかもね!
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 11:32:38.99 ID:Y9zNDNHUO [1/37]
という訳で、番外編その1
昨日はさるさんを喰らいまくったから、ゆっくり投下します
※地の文あり注意
242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:35:03.17 ID:Y9zNDNHUO [2/37]
オカルト研の部室のドアは意外にもシンプルで、装飾も何も無い。
内装の禍々しさとは正反対だ。
そのドアの前に、私と和ちゃんが2人で立っている。
「……唯、そろそろ説明してもらえるかしら?
どうして私が、オカルト研の部室に連れて来られたのか」
和ちゃんはいつもの調子で、淡々と私に疑問をぶつけてきた。
だから私もいつもの調子で、それに答える。
「だって和ちゃん、呪いなんて暗示にかかっただけだ、って言ったでしょ。
だから、呪いは本物だって信じてもらうために連れて来ました!」
「どうやって私に信じさせるつもり?」
「実際に和ちゃんが呪われるんだよ」
「……はぁ?」
呆れた表情と声。これも、いつも通りの和ちゃんだ。
「澪ちゃんも最初は疑ってたけど、自分が呪われたら信じるようになったんだよ」
「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
決め台詞を残して、和ちゃんは向こうへ歩き出した。
245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:40:31.00 ID:Y9zNDNHUO [3/37]
「逃がさないよ!」
「……もう、離してよ」
「実は和ちゃん、呪われるって聞いて怖くなった?」
和ちゃんに抱きついて、その歩みを止めて、単刀直入に聞いてみる。
ちょっと今、私の顔はニヤけてるかも。
だって、たぶん、これは和ちゃんの本音だと思うんだ。
「……そんな訳、ないでしょ」
「じゃあ別に構わないよね。和ちゃんは呪いなんて信じてないんだし」
「霊的な力の存在を認めない、って言ってるだけよ」
あれっ、なんか期待してたリアクションと違うような?
本心を言い当てられて、焦っちゃう和ちゃんが見られると思ったのに。
すごく冷静というか、冷酷な態度でビックリしちゃうよ。
「だからって、誰かが私への悪意をもって儀式を執り行うのは、不愉快でしょ。
そんな儀式を目の前で見せられて、笑って許せるほど大人じゃないわ」
「うぅ……」
「もう私、本当に行くからね。用事もあるし」
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:44:03.87 ID:Y9zNDNHUO [4/37]
再びこの場を去ろうとする和ちゃんに、思わず大声で呼び掛けてしまった。
今、焦っているのは、私の方だ。
「の、和ちゃん!
本人がいなくても呪いはかけられるんだよ!」
「……どういう意味よ?」
「和ちゃんの髪の毛、こっそり取っちゃったからね!」
おかしいな、こんな言い方する筈じゃなかったのに。
確かに、念のため、と思って和ちゃんの髪の毛は事前調達しておいた。
けど、こんな脅すような使い方をするためじゃなかった筈だよね。
どうしよう、売り言葉に買い言葉で、思ってもない事が口から出ちゃう。
「……それがあれば、私に呪いをかけられる、って言いたいのね」
「そうだよ!」
「ちょっと理解できないわね。私、そこまで唯に恨まれるような事をしたかな」
「違う、違うよ、そうじゃなくて!」
「わかってる? 今、私、すごく怒ってるのよ」
あっ、なるほど。
空気が凍るって、こういう事を言うんだ。
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:48:34.93 ID:Y9zNDNHUO [5/37]
どうしてこんな事になっちゃったのかな。
和ちゃんは結局、怒って生徒会に行っちゃうし。
オカルト研の部室前で、1人で立ち尽くしていると、ドアが開いた。
「……ごめんなさい、中から話を聞いていた」
「真鍋和は行ってしまったようだけど、どうする?」
出てきたのは、例の怪しい衣装ではなく、制服を着たオカルト研の2人。
今は昼休みだから、制服を着ているのは当たり前なんだけどね。
「もう知らないよ、和ちゃんなんて」
怒りとか、悲しみとか、色々グチャグチャの感情が、そのまま言葉になった。
そして気が付けば私は、恐ろしい事を口に出していた。
「和ちゃんなんか、呪われちゃえばいいんだ!」
「……本当にいいの?」
「いいよ、呪いをかけちゃって!
軽い呪いじゃなくてもいいよ、和ちゃんはどうせ信じないんだから!」
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:52:20.86 ID:Y9zNDNHUO [6/37]
元々の計画では、こうなる筈だった。
1. 和ちゃんをオカルト研に連れて来て「呪いをかける」と伝える
2. 拒否したら「それなら呪いが存在する事を認めて」と迫る
3. 認めなければ、一番軽い呪いをかけて、認めざるを得なくする
そもそも、なんでこんな計画を立てたのか。
呪いで苦しんでる澪ちゃんに、和ちゃんは「そんなの思い込みよ」と言った。
なんだか、すごく澪ちゃんに対して失礼だと思った。
だから、和ちゃんに、呪いが存在する事を信じてほしかった。
それだけ、たったそれだけの話だったんだよ。
別に和ちゃんを苦しめたいとか、和ちゃんが嫌いだとか、そんな訳ないじゃん。
「終わった。真鍋和には『囚われのロキ』という呪いがかけられた」
「言霊によって、真鍋和は拷問の痛みに身体を苛まれる」
「鍵となる言霊は……」
色々な事を考えているうちに、儀式は終わっていた。
オカルト研の2人の説明を、私は半ば放心状態で聞いていた。
256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:57:10.56 ID:Y9zNDNHUO [7/37]
「失礼します」
「はい、……なんだ、唯じゃない」
ちゃんとドアをノックしてから、生徒会室に入る。
この時期の生徒会室にはあまり人がいないから、和ちゃんが1人でいる事が多い。
特に、昼休みにわざわざこの部屋に来るのは、和ちゃんくらいだ。
「何よ、謝りに来たの?」
「謝るのは和ちゃんの方だよ」
私はもう、完全に意固地になっていた。
「澪ちゃんやりっちゃんが苦しんでるのに、そんなの思い込みだって……。
そんな事を言う和ちゃんには、呪いをかけちゃったからね!
自分の身体で、思い知ればいいんだよ!」
涙目で、大声で、私は言霊を叫ぶ。
「ブーリブリチャカ、ビガッビガッ!!
ブーリブリチャカ、ビガッビガッ!!」
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:01:39.93 ID:Y9zNDNHUO [8/37]
その瞬間、和ちゃんの身体が、ビクンと跳ねた。
少し遅れて、生徒会室に悲鳴が轟いた。
「きゃああああっっ!?」
悲痛な叫びに驚いて、私は我に返った。
和ちゃんは椅子から転げ落ちて、床にうずくまっている。
動作は、肩で大きく息をするばかりで、立ち上がる気配すら見せない。
「の、和ちゃん!?」
「……い、痛いよぉ」
絞り出すような声で、和ちゃんが呟いた。
真っ赤な顔で、涙をポロポロと流している。
こんな和ちゃん、見た事がない。
いつもしっかり者で、毅然とした態度の和ちゃんが、こんな……。
ようやく私は、自分が犯した過ちに気付いた。
『囚われのロキ』の効果は、茨のムチに叩かれる痛み。
お尻を叩かれなきゃいけないのは、和ちゃんじゃない。
悪い子は、私だ。平沢唯だ。
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:06:50.21 ID:Y9zNDNHUO [9/37]
午後の授業に、和ちゃんの姿は無かった。
とてもそんな状態ではないと判断して、私が保健室に連れて行った。
たまたま保健の先生がいなかったけど、ベッドだけは使わせてもらえた。
2時間くらい安静にしていれば、きっと快復する。……するよね?
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
放課後になった。
近くにいたムギちゃんに、一言だけ伝えて、私は教室を飛び出す。
「ごめん、今日は遅くなるよ。もしかしたら部活に行けないかも!」
……もちろん、向かう先は保健室だ。
ドアに掛けられたホワイトボードには「本日、保険医不在」の文字。
もしかしたら和ちゃんは、眠っているかもしれない。
そっとドアノブを握って、静かにドアを開けた。
「失礼します……」
途端に、悲鳴のような、和ちゃんの声が聞こえてきた。
「あぁっ、はぁっ、はぁっ……」
まだ痛いんだ。まだ苦しいんだ。
私の心は罪悪感でいっぱいになった。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:10:03.74 ID:Y9zNDNHUO [10/37]
静かに、静かに、和ちゃんのベッドに近づいた。
吐息の多く混じった声が、断続的に聞こえる。
でも、次の瞬間、私は自分の耳を疑った。
「もう一回、だけ……
ブーリブリチャカ、ビガッビガッ……」
えっ、ダメだよ、その言霊を唱えたら……
「あふぁっ、あふぁっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
なんで、なんで自分から言霊を?
和ちゃんは誰に謝ってるの?
訳がわからないまま立ち尽くしていると、寝返りをうった和ちゃんと目があった。
「はぁっ、はぁっ、えっ、ゆっ、唯!?」
息を荒くした和ちゃんは、恋する乙女のようなトロンとした目で、私の顔を見た。
私は何も言えないまま、妙に色っぽい和ちゃんの寝姿を眺めていた。
「ちがっ、これは、違うの、その、えーと……」
慌てて何か言おうとして、和ちゃんはしどろもどろになった。
……と思ったら、急にため息をついて、ムクッと起き上がった。
「はぁっ、誤魔化そうと思っても無駄ね。バッチリ見られちゃってるし。
ねぇ、唯。正直に話すから、私の事を軽蔑しないでね?」
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:16:49.37 ID:Y9zNDNHUO [11/37]
私は黙って、和ちゃんの告白を聞く事にした。
どんな話を聞いたって、私が和ちゃんを軽蔑なんかする訳ない。
「ずっと秘密にしてたんだけどね、私はマゾヒストなのよ。
あっ、マゾヒストって意味、わかるかしら?」
うん、言葉の意味は知ってるよ。
だけど、和ちゃんの言ってる意味が全然わからないよ。
「特定のパートナーがなかなか見つからないから、
ずっと自分で自分を虐めてたんだけど、物足りなくてね。
特にムチ打ちなんて、自分の身体に当てるのは難しいから」
なんか吹っ切れた様子で色々語ってくれるのはいいんだけど、
聞く方にも少しは心の準備をさせてくれないかな?
こう見えて、結構ショックを受けてるんだよ、私。
「でも呪いをかけられて、言霊を唱えれば痛みを感じられるようになった。
しかも外傷が残らないから、後処理の必要も無い。
最初こそ驚いたけど、そう気付いたら嬉しくなっちゃってね。
保健室で何十回も、セルフスパンキングしちゃった。ふふっ」
こんな和ちゃんの素顔、知りたくなかったなぁ。
スパンキングって言葉は意味がわからないけど、
出来れば知らないままでいた方が、いいような気がするよ……。
273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:21:15.51 ID:Y9zNDNHUO [12/37]
「そうだ、唯。ひとつ謝らせてもらうわ」
「えっ、何を?」
「呪いは確かに実在するのね。疑って悪かったわ。
この身体で体感してみるまで、イメージだけで語っていた自分が恥ずかしいわ。
澪や律も、素敵な呪い体験ができて良かったわね」
そう言って和ちゃんは、ニッコリと笑った。
私も笑顔で返そうとしたけど、絶対に引きつってるよね、これ。
「わ、私こそ、ごめんね。和ちゃんの気持ちを考えないで、勝手に呪いをかけちゃって」
「唯は謝る必要なんて無いわ。
だって私、呪われて、むしろ感謝してるもの!」
えーっと、今回の目的は、和ちゃんに呪いが存在する事を認めさせる。
だから目的は達成。……達成でいいのかな、本当に?
最初の計画と、だいぶ違う結末を迎えたような気がするけど……。
あー、もういいや。これでOKって事にします!
おわり?
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 12:24:07.56 ID:Y9zNDNHUO [13/37]
番外編その2は、夕方以降だよ!
>>264
同じ人です
本編は台本形式、番外編は地の文形式でお送りします
301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 18:53:07.49 ID:Y9zNDNHUO [14/37]
やべっ、もうこんな時間だ…
…
という訳で番外編その2、前半だけですがどうぞ
302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:54:54.50 ID:Y9zNDNHUO [15/37]
真っ白なテーブルクロスの上に、幾つもの綺麗な皿が並んでいる。
もちろん皿だけじゃなくて、料理も美味しいものばかり。
私がグラスを空けると、メイドがすぐにフレッシュジュースを注ぎに来た。
「お父様、お仕事の調子はどう?
最近、海外に出掛けられる事も少なくなったわね」
「若手の部下が育ってきたから、仕事を任せられるようになったのさ。
紬も近い将来、その一員として活躍してもらわないとな」
お父様はそう言って、ワインを飲み干した。
間髪入れずにメイドがボトルを持って来たが、それを柔らかく断る。
メイドは頭を下げて、元の場所へ戻っていった。
私のお父様は、琴吹グループの実質的な最高責任者だ。
その一人娘である私には、後継者としての役割が期待されている。
とはいえ、能力の無い者に世襲を認めるほど、世間は甘くない。
一日も早く、琴吹グループのトップにふさわしい人物となるために、
私には普通の高校生よりも高いハードルが設定されている。
304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:56:53.39 ID:Y9zNDNHUO [16/37]
「……お父様。実はまた、素晴らしい逸材を見つけたのよ」
「……ほう、今度はどんな人だい?
また先日のように、単なる勘違いじゃないだろうね?」
「前回はごめんなさい。でも、今度こそ本物よ。
いとも簡単に呪術を使いこなす、才気に溢れる2人組を紹介したいの」
「呪術、か。詳しく話を聞かせてもらおうか?」
お父様は身を乗り出して、私の話に興味を示した。
権力者になるほど、科学で説明できない、オカルト的なものを信じる割合が増えるという。
きっと、お父様もその1人なんだ。
桜ヶ丘高校の卒業生には、どういう訳か、大きな成功を収める女性が多い。
学力偏差値だけで見れば、決して全国トップクラスの進学校ではないのに。
お父様はそれを知ってか、私が桜高に入学するとき、一つの課題を与えた。
「将来、琴吹グループの戦力となるような、金の卵を探すんだ。
これは、と思う才能の持ち主がいたら、私に直接紹介してほしい」
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:59:03.09 ID:Y9zNDNHUO [17/37]
入学直後、私は立て続けに『才能の持ち主』と出会う事ができた。
1人は澪ちゃん。
ファンクラブを擁するほどの美貌と人徳、そして他に類を見ない言語感覚。
圧倒的なカリスマとなる素質を、澪ちゃんは持っていた。
1人は唯ちゃん。
やる気を出した途端に、凡人の数年間の努力を、あっという間に追い抜いてしまう。
天才としか形容できない、特別なものを持っていた。
当時はまだ中学生だったけど、憂ちゃんも金の卵の1人。
一点集中型の唯ちゃんに対して、万能型の憂ちゃん。
どちらも琴吹グループに欲しい人材だと、お父様も太鼓判を押した。
あっ、りっちゃんには何の才能も無かったみたい。
ごめんなさい、でも平凡は悪い事じゃないの。
どこにでもある平和な家庭を築いて、幸せに過ごしていけるって事なんだから。
306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:02:06.87 ID:Y9zNDNHUO [18/37]
でも、それ以降はなかなか『才能の持ち主』を見つける事ができなかった。
次第に私は焦り始めて、だんだん選球眼が鈍ってきてしまった。
つい先日も、同じクラスのエリちゃんをお父様に紹介したところ、
「日本の伝統工芸を守り抜くほどの人物と聞いたが……。
ただのにわか仏像ファンじゃないか、勘違いも甚だしい」
と、お叱りを受けてしまった。
そんな訳で今回、オカルト研の2人をお父様に紹介するのは、
私にとって名誉挽回・一発逆転の大チャンス!
「呪い、か……。その話が本当なら、彼女たちの力は非常に有用だね」
「この目で実際に見たのよ、すごい効果だったわ」
「よし、その子たちに一度会ってみたいな。
ただし、その時に呪いの効果も一緒に見せてほしい」
「わかった、そのように手配しておくわね!」
久々にお父様に認められるチャンスを迎え、私は浮かれていた。
ここで軽率に、その条件を受け入れてしまった事が、後々で悩みの種となった。
308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:05:31.75 ID:Y9zNDNHUO [19/37]
「……それは光栄な話」
「私たちは喜んで、琴吹の剣となり盾となる」
オカルト研の2人にこの話をしたところ、快諾してもらう事ができた。
普通、お父様に紹介する前に趣旨を伝える事は滅多にない。
事前に伝えておきながら、お父様のお眼鏡に適わなかった場合、とても失礼になってしまうから。
でも今回の場合、そうしないと、呪いの実演なんて出来ないからね。
「……ところで、ひとつ疑問がある」
「呪いの効果を見せるとは、どのようにすればいいだろう」
「えーと、そうね。お父様の目の前で、誰かに呪いをかけてくれないかしら?」
「……つまり、ターゲットもその場にいる必要がある」
「既に呪いのかかった秋山澪、田井中律、真鍋和を除く誰かを、そこに連れて行かなければ」
「その通りね。安心して、ターゲットの手配は私に任せてちょうだい!」
とは言ったものの、そんな依頼を誰にしようか?
呪われてください、と頼まれて、はいそうですか、と引き受けてくれる人なんて……。
校内の友達を、ひとりひとり思い浮かべてみる。
うーん、こんな事、どんなに仲の良い子でも頼みづらい。
ならば、屋敷の使用人やメイド?
いや、立場的に断れない人に、こんな役を押し付けるなんて非道すぎる。
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:08:52.69 ID:Y9zNDNHUO [20/37]
色々と考えるうちに、ふと気付いた。人に呪いをかけるには、それなりの大義名分が必要だ。
強い恨みや憎しみであったり、あるいは、誰かを守るためであったり。
そんな大義名分の成り立つターゲットならば、本人の承諾がなくても、遠慮なく呪いをかけられる。
「まったく……。酷い目にあったな、律」
「ちょっとイタズラにしちゃ度が過ぎてるよな。澪もそう思うだろ?」
ちょうど私がそんな事を考えている時に、澪ちゃんとりっちゃんが話し合っていた。
数日前、梓ちゃん・純ちゃん・憂ちゃんによる演奏のせいで、2人とも大変な事になった。
演奏後まともに歩けるようになるまで、確か30分くらいかかったっけ?
「さすがに我慢の限界だ。梓にお灸を据えてやらないと」
「おうっ。ビシッと仕返ししてやらないと、ますます調子に乗るからな!」
……見つけた、大義名分。
「ねぇ、澪ちゃん、りっちゃん」
私は、トーンを抑えた声色と、溢れんばかりの笑顔で話した。
新しい提案をする時は、謙虚かつ自信満々の態度で臨まなければならない。
「その手配、私に任せてくれない? いい考えがあるの」
311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 19:10:24.99 ID:Y9zNDNHUO [21/37]
後半はもうちょっと待って
338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 23:02:35.99 ID:Y9zNDNHUO [22/37]
本当にお待たせしました。投下を始めます。
341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:04:29.64 ID:Y9zNDNHUO [23/37]
土曜日の早朝、私の家の最寄り駅に、梓ちゃんがやって来た。
斉藤の運転する車の窓から、チョイチョイと手招きする。
「おはようございます、ムギ先輩」
「おはよう、梓ちゃん。こんな早い時間から来てもらっちゃって、ありがとう」
「いえ、ムギ先輩のお宅にお邪魔できるなんて嬉しいですから」
梓ちゃんの笑顔に、一瞬だけ胸が痛んだ。
でも澪ちゃんやりっちゃんへの狼藉を思い返すと、情状酌量の余地は無し。
心を鬼にするのよ、私、ファイト!
「もうすぐ着くわ、ここが私の家よ」
「うわぁ、大きいですね……」
車窓から母屋を見上げて、梓ちゃんはぽかんと口を開けた。
澪ちゃんを連れて来た時も、唯ちゃんと憂ちゃんを連れて来た時も、
こんな感じのリアクションだった事を思い出す。
いつか、りっちゃんも家に来てほしいなぁ……。
梓ちゃんの右肩には、ギターケースが掛かっている。
今日は一応、練習の名目で梓ちゃんを呼び出しているからね。
343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:07:36.74 ID:Y9zNDNHUO [24/37]
「大きな音を出すから、地下の部屋を使おうか。こっちに来てね」
「地下室まで備わってるんですね、本当に凄い……」
階段を下りて、廊下の奥の小部屋まで歩く。
教室よりちょっと狭いくらいの小部屋は、防音設備が万全になっている。
窓も無いし、出入り口の扉は一つだけ。おまけに携帯電話も通じない。
これだけ聞くと、都市部の貸しスタジオみたいだけど、ちょっと違う。
「この部屋よ。梓ちゃん、どうぞ」
「わぁ、広々としてますね。あれっ、でも……」
「どうかしたの?」
「なんでベッドがあるんですか。トイレも剥き出しで置いてあるし」
私に促されるまま部屋に入った梓ちゃんは、簡素なベッドと洋式トイレをすぐ発見した。
何も無い空間に、その二つだけ置かれていれば、当然目に付くんだけどね。
「……ムギ先輩。なんかこの部屋、スタジオというよりも、まるで監獄みたいな」
ガチャン
「えっ、ムギ先輩?」
部屋の中にいた梓ちゃんと、部屋の外にいた私は、強化ガラスの扉で隔てられた。
きょとん、とした表情でガラス越しに私を見つめる梓ちゃん。
閉じ込められた、という現状を把握するまで、もう少し時間がかかりそうだ。
344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:11:05.22 ID:Y9zNDNHUO [25/37]
「ごめんね、梓ちゃん」
それだけ言い残して、私は小部屋の前から去った。
強化ガラス越しに、この声は梓ちゃんに届いたのかな?
こちら側からは、ドンドン、と内側から扉を叩く音しか聞こえない。
梓ちゃんは、何やら叫んでいるみたいだったけどね。
「皆さん、お待たせしました」
リビングではお父様と、先に来ていたオカルト研の2人が待っていた。
「やっと来たか、紬。お客様を待たせてしまったぞ」
「……大丈夫」
「それで、うまくいったの?」
「えぇ。ちょっとモニターを付けてくれる?」
モニターの電源を入れると、複数の角度から撮影された、小部屋の様子が映し出された。
梓ちゃんは相変わらず、強化ガラスの扉を叩いていた。
「……小部屋には現在ターゲットが一人だけ。
今からこの小部屋に音楽を流すから、変化を観察してみてね」
346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:13:25.09 ID:Y9zNDNHUO [26/37]
ブーンブンシャカブブンブーン♪
聞き慣れたフレーズを耳にして、梓ちゃんはキョロキョロと辺りを見回した。
もっとも、スピーカーは壁に埋め込まれているから、見つけられないと思うけど。
「目立った変化は無いようだが?」
「えぇ、お父様。だってターゲットは『まだ』呪いにかけられていないから」
「……なるほど。こちらの2人が、今から呪いをかけてくれるのか」
「そういう事よ。じゃあ、お願いしていいかしら?」
オカルト研の2人が、スッと立ち上がった。
けれども、その表情には、まだ若干の躊躇いがあった。
「……最後に確認したい」
「本当に、三種の呪いを複合させてもいいのか」
思わず私は微笑んでしまった。
無感情な人たちだと思っていたけれど、意外に人間らしいところがある。
でも、その覚悟の壁を越えて来てくれないと、琴吹グループの戦力にはなれないの。
「……構わないわ。あなた達の、ベストパフォーマンスを見せて!」
347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:18:07.56 ID:Y9zNDNHUO [27/37]
儀式が始まった。3種類分だから、とても時間がかかる。
意味不明な呪文を唱えるオカルト研の2人を、お父様は真剣な表情で眺めていた。
私はリビングの椅子に座って、紅茶に口を付けた。少しだけ、ぬるい。
ブーンブンシャカブブンブーン♪
「ふにゃぁっ、ひゃぁぁぁぁっ!?」
……どうやら、一つ目の呪いが発動し始めたらしい。
梓ちゃんの様子から察するに『快楽天』かしら。
ブーンブンシャカブブンブンブーン♪
「きゃはははっ、ひゃっ、きゃははははははっっ!?」
……続いて『エンゼルフェザー』も。
二つ目の呪いが、一つ目の呪いを上書きする事はないらしい。
つまり今、梓ちゃんの身体には『悪魔の快楽』と『天使の愛撫』が共存している。
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
「ぎゃはああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……最後は『囚われのロキ』。
しばらく痛いかもしれないけど、すぐに慣れると思うから頑張ってね、梓ちゃん!
350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:21:02.88 ID:Y9zNDNHUO [28/37]
「……終わった」
「中野梓には、三種の呪いがかけられた」
オカルト研の2人は、かなり消耗した様子だった。
呪いを1つかけるだけでも、たぶん相当な体力と精神力を使うはず。
本当に、頑張ってくれた2人に、拍手を送りたい。
「明らかにターゲットの様子が変わったようだね」
「えぇ、お父様。それぞれの呪いについては、そちらの書類に詳しくまとめてあるわ」
「ふふっ。手際が良くなったね、紬。
では申し訳ないが、そろそろ私は行かなければならないので、失礼させてもらうよ」
お父様はこれから泊まりがけで仕事に出掛ける。
帰宅するのは、明日、日曜の夜だ。
「2人とも、本当に素晴らしい才能をお持ちのようだ。
今後ともお付き合いをさせて頂きたい。どうぞ、よろしく」
「……ありがとう」
「こちらこそ、よろしく」
「では、明日の夜に結果を確認させてくれ。頼んだぞ、紬」
352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:24:19.96 ID:Y9zNDNHUO [29/37]
お父様が出掛けた後、役目を終えたオカルト研の2人も帰ってしまった。
帰り際に見た2人の表情から、迷いは消えていた。
依頼された仕事に対する、冷酷なまでの責任感。
琴吹グループに貢献するために、最も必要なものを、わかってくれたんだと思う。
「……さて、梓ちゃんの様子はどうかな?」
モニターを覗き込むと、梓ちゃんは小部屋の真ん中でのたうち回っていた。
エンドレスリピートの『ミツバチ』は、着実に梓ちゃんにダメージを与えているみたい。
特に『囚われのロキ』の痛さは、なかなか耐え難いものかもしれない。
でもね、安心して。その痛さは単独じゃないから。
『快楽天』の気持ちよさと、『エンゼルフェザー』のくすぐったさと、セットなの。
次第に、痛さを感じれば、同時に気持ちよさを感じるような回路が出来上がる。
そうすれば、ずっとずっと気持ちいい、最高の状態になっちゃうわ!
……本音を言うとね。
それくらい壊れてくれないと、困っちゃうの。
お父様は、まだ完全には満足していない様子だった。
お父様は、もっと強烈な効果を呪いに求めているみたい。
だから明日の夜、お父様が帰って来るまでに、もっとグチャグチャになってほしいの。
私も全力で梓ちゃんを壊してあげるから、よろしくね♪
355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:27:25.97 ID:Y9zNDNHUO [30/37]
携帯電話の着信音が鳴った。相手は澪ちゃんだ。
「いや~、ムギ。順調みたいだな!」
「うん、バッチリよ! オカルト研の2人には感謝しなきゃ」
「律なんか興奮しちゃって、呪いも発動してないのに笑いが止まらないみたい」
「あははっ、りっちゃんも喜んでくれてるのね」
澪ちゃんとりっちゃんは、別の場所でモニターの映像を見ている。
音声を流すと大変な事になっちゃうから、もちろんミュートでね。
「ところでムギ、梓の様子を見て、ひとつ気付いた事があるんだ。
ビクンビクン跳ね上がってる時と、わりと落ち着いてる時と、両極端じゃないか?」
指摘を受けて改めてモニターを見ると、確かにその通り。
曲のサビの部分には言霊が多く含まれているから、呪いも多く発動する。
でも、それ以外の部分には言霊がほとんど無いから、何も起こらない。
私は澪ちゃんにお礼を言って、すぐに斉藤を呼んだ。
「『ミツバチ』のCDを10枚と、CDプレーヤーを10個用意して!」
解決策は、至極単純だ。
タイミングをズラして、何重にも曲を流せばいい。
357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:30:03.26 ID:Y9zNDNHUO [31/37]
ブーンブンシャカブブンブーン♪
超マニアック 特攻隊長 本日も絶好調♪
ブーンブンシャカブブンブンブーン♪
胸ドキドキワクワク体ノリノリ♪
ガンバンベ! 踊れミツバチ♪
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
ダッセー飛び方でもいいから上へ飛べデッケー夢持って♪
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
ブーンブンシャカブブンブーン♪
草食系とかマジ勘弁♪
「ぎにゃあああっっっ、ぎにゃあああっっっ!!!
あふぅ、あひゃぅぅ、たしゅけてぇぇぇっっっ!!!
やっ、やすみぃ、なしぃ、わっ、むりぃぃぃっっっ!!!」
362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:33:40.65 ID:Y9zNDNHUO [32/37]
10個の音源から『ミツバチ』を流し始めてから、梓ちゃんは一切の休憩なく、
気持ちよさと、くすぐったさと、痛さを感じ続ける事になった。
でも、この状態があんまり長く続くと、ショックで本当に死んでしまうかもしれない。
「……そろそろ、いいかしらね。音楽を全部止めて!」
私の合図から数秒と経たずに、すべての音源のスイッチが落とされた。
私はメイドを一人携えて、地下の小部屋へと向かう。
「梓ちゃん、調子はどう?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
梓ちゃんの身体は軽い痙攣を続けていた。
医者を呼ぶような症状でない事を確認して、メイドに水分と糖分を補給させる。
口の中に押し込まれたものを飲み込むくらいの力は、まだまだ残っている。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって。そろそろ練習を始めましょうか?」
「はぁっ、はぁっ、……えっ?」
メイドが梓ちゃんのギターケースからムスタングを取り出した。
放心状態の梓ちゃんを立ち上がらせ、ストラップを肩に掛けさせる。
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:37:32.99 ID:Y9zNDNHUO [33/37]
「どうしてキョトンとした顔をしてるの、梓ちゃん?
今日は元々、練習するために、私の家に来たんでしょ?」
「えっ、あっ、はい……」
「実は梓ちゃんのために、用意しておいたものがあるの。
純ちゃんのベースと、憂ちゃんのドラムを録音した、練習用テープ!」
「あっ、えーと、ありがとう、ございます……」
梓ちゃんの思考は、まともに働かなくなっているみたい。
それだけ『ミツバチ』10重奏は過酷だったのね。
「今からこのテープを流すから、梓ちゃんはギターとボーカルで合わせるのよ?」
「わ、わかりました……」
「それじゃ、始めるわね。曲は『ミツバチ』よ!」
「……えっ?」
367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:40:22.51 ID:Y9zNDNHUO [34/37]
カンッカンッカンッカンッ
憂ちゃんがスティックを鳴らす音。
この曲は出だしからボーカルが入るから、梓ちゃんは最初から歌わないといけない。
「梓ちゃん、ボーッとしてる間に曲が始まっちゃったわよ?」
「あっ、すみません……」
そうこうしている間にイントロ部分が終わり、ベースとドラムの音がテープから流れた。
この音だけでも呪いが発動して、梓ちゃんの身体はピクピクと反応する。
でも今は練習なんだから。梓ちゃんはギターを弾いて、歌わなきゃ、ダメだよ?
「ほら、ギターボーカル、しっかり頑張って!」
「うぅ……、行き先イケメン、ハイビスカス♪ うぅ……」
「ちゃんと全部の歌詞を言わなきゃ!」
「ブ……、ブーリブリチャカビガッビガッ!!」
自分で発した言霊によって、梓ちゃんの身体はピクンと跳ね上がった。
これに耐えるのも練習のうちだから、仕方ないわね。
368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:43:27.65 ID:Y9zNDNHUO [35/37]
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「情けないわね、梓ちゃん。たった一回、通しで練習しただけじゃない」
「だっ、だって、ムギ先輩……」
「言い訳をするような子は、武道館に行けないよ?
さぁ、もう一回、通しでいきましょうか?」
梓ちゃんの表情は、次第に絶望的なものに変わっていた。
私はそれに気付かないふりをして、練習用テープを再生した。
「38℃の真夏日、うぅっ……。夏祭り、ぐすっ……。こんな日は♪」
「ほらほら、明るい曲なんだから、泣きながら歌っちゃダメよ」
「ひぐっ、ガンバンベ! 踊れミツバチ♪」
「そうそう、その調子よ!」
「ブーンブンシャカ、はぐぅ、ブブンブーン♪」
「もっと笑顔で歌って!」
370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:46:04.61 ID:Y9zNDNHUO [36/37]
およそ30分の練習を終えて、私はリビングに戻って来た。
5分ほど休憩を与えられた梓ちゃんは、床に寝転がって、微動だにしない。
せっかくだからベッドの上で寝ればいいのに。
そして再び、10個の音源から『ミツバチ』が流れ始めた。
梓ちゃんの絶叫が、マイク越しに聞こえる。
大体30分くらいこのまま放置しておいて、その後また練習にしよう。
……30分練習、30分鑑賞。
『ミツバチ』尽くしの素敵なサイクルが完成した。
よし、日曜の夜まで、このサイクルを延々と繰り返す事にしよう。
そうすればお父様が帰って来る頃には、梓ちゃんもすっかり素敵な状態になっているはず。
きっとお父様も喜んでくれるわね!
次の日は月曜だから、学校か。
澪ちゃんとりっちゃんに、イタズラしてごめんなさい、って謝ってもらわないと。
その後、純ちゃんと憂ちゃんと一緒に演奏して、練習の成果を見せてもらおう。
耳栓をするから音は聞こえないだろうけど、澪ちゃんとりっちゃんも喜んでくれるわ!
「だから、頑張ってね、梓ちゃん♪」
「にゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
おわり!
371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 23:49:59.32 ID:Y9zNDNHUO [37/37]
これで本当に終わり!
本編、番外編ともに支援ありがと!
ドM和ちゃんまで書いて終わらせる筈だったのに、みんな梓に仕返ししろって言うから続けてみたら、えらい鬼畜になってしまった
唯「もうっ、澪ちゃん!」
澪「うぅ……」
唯「人が気持ちよく歌ってる時に邪魔するのはマナー違反だよ!」プンスカ
澪「す、すまん、唯……」
紬「唯ちゃん、さっきから歌ってるその曲は何なの?」
唯「『ミツバチ』って曲だよ、私のなかで最近のベストヒット!」
紬「なんだか口ずさむだけで楽しくなっちゃう素敵な曲ね!」
梓「……唯先輩、ムギ先輩、それ皮肉じゃなくて本気ですか?」
紬「もちろんよ、ブーンブンシャカブブンブーン♪」
澪「はうんんんんん!!///」ピ-ンッ
澪(とうとう、イってしまった……)ハァハァ
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:14:54.51 ID:/gJPAVT1O
唯「んもうっっ!!」プンスカ
澪「あ、ご、ごめん……」ハァハァ
梓「澪先輩……?」
紬「澪ちゃん……?」
澪「……ちょっと、トイレに行って来る」ガタッ
律「あっ、私も行く~」ガタッ
スタスタ
律「それで、さっきからどうしたんだ、澪?」ニヤニヤ
澪「くそっ、律……」ハァハァ
律「まさかとは思うけど、さっきの呪いが本当に……」ニヤニヤ
澪「そ、そんな訳ないだろっ!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:18:25.38 ID:/gJPAVT1O
昼休み!
律「……あそこにいるの、オカルト研の人じゃないか?」
澪「あっ、本当だ」
律「どーもどーも、学園祭の時はありがとう」
オカ研1「……こんにちは」
律「今は何してんだ?」
オカ研2「世界各地の呪いについての考察、まとめていたところ」
澪「の、呪い!?」ビクッ
律「おー、どうした澪。怖いのか?」
澪「そそそ、そんな訳ないだろ。呪いなんてないさ、呪いなんてうそさ」
律「『おばけなんてないさ』ってか……。さっそく逃避に入ったな」
オカ研1「……嘘、じゃない」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:21:42.02 ID:/gJPAVT1O
律「あー、ごめんな。気を悪くしないでくれ。澪は幼稚園児並みの怖がりだからさ」
澪「何だよ、その言い方! わ、私は別に怖いんじゃなくて、そんなもの信じてないだけで」
オカ研1「……呪いは実在する」
オカ研2「どうしても信じないと言うならば、その存在を証明してみせる」
律「証明するって、どうやって?」
オカ研1「……秋山澪、あなたを呪う」
オカ研2「実際に呪いをかけて、その効力を身をもって知ってもらう」
澪「えぇっ!?」
律「おいおい、大丈夫なのか!?」
オカ研1「……大丈夫」
オカ研2「あなたにかけるのは、一番軽い効力の呪い。魂も穢れないし、すぐに解ける」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:25:06.84 ID:/gJPAVT1O
律「うーん。よくわからないけど、お試し感覚のかる~い呪いなんだな」
オカ研1「……そう」コクリ
律「それならいいんじゃないか、澪。かけてもらおうぜ」
澪「へっ!?」
律「呪いなんて信じないんだから、かけられても平気だろ?」ニヤニヤ
澪「ももも、もちろん! 呪いなんて迷信に決まってる!」
律(こいつはどうしてオカルト研の前でそういう事を言っちゃうかな……)
オカ研1「……そう」ムスッ
オカ研2「わかった。これから実際に呪いをかける」
律「イェーイ、やっちゃってください!」パチパチ
澪(もう、後には引けなくなっちゃったーーー!)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:28:54.44 ID:/gJPAVT1O
オカ研1「汝、悦楽に溺れし弱き者の……」ブツブツ
オカ研2「愚かなる人間の魂を喰らいて……」ブツブツ
律(なんか呪文のようなものを詠唱していらっしゃる……)
澪(さっき髪の毛を抜かれて、ちょっと痛い……)
オカ研1「……ふぅ」
オカ研2「終わった。秋山澪には呪いがかけられた」
澪「ひぇっ!」ビクビク
律「お疲れ様、どんな呪いなんだ~?」
オカ研1「……快楽天と呼ばれる呪い」
オカ研2「言霊によって、秋山澪は悪魔の快楽に身体を蝕まれる」
律「ふむふむ、その言霊ってのは何だ?」
オカ研1「……呪文のようなもの」
オカ研2「ある種の言葉には霊力が宿る。鍵となる言霊は、」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:31:05.33 ID:/gJPAVT1O
再び放課後!
律『Bu~n』
澪「ひぃっ!?///」ピクンッ
律「……って聞くと、全身を快感が駆け巡る。そんな呪い、ある訳ないよな?」ニヤニヤ
澪「……そ、そんなもの、ある訳ないだろっ!」
律『Bu~n』
澪「はぁっ!?///」ピクピク
律「あはははは。澪の反応、面白いなぁ~」ニヤニヤ
澪「く、くそっ……」ハァハァ
律「安心しろよ、10日も経てば自然に呪いが解けるって言ってたし」
澪「10日って、結構長い……」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:34:16.44 ID:/gJPAVT1O
律「さて、トイレに着いた」
澪「……」
律「どうした、早く済ませてこいよ?」
澪「へ、変な事するなよ」
律「何もしないって、さぁさぁ」
澪「うぅ……。大体なんで、トイレまでついて来るんだよ」
バタン
律「……」
澪「……」
律「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
ガチャ
澪「やめろぉっ、その先を歌うなぁっ!!」
律「きゃはっ、冗談だよ、冗談!」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:37:47.88 ID:/gJPAVT1O
紬「……あっ、2人とも帰って来た」
唯「トイレタイムが長すぎだよ~」
律「悪い悪い、澪がすっごい便秘でさ~」
澪「そうやって根も葉もない話ばっかりするな!」ゴチン
律「はべっ!」
梓「それより澪先輩、律先輩。どうか唯先輩とムギ先輩を止めてください」
澪「ん、何かあったのか?」
梓「次のライブで『ミツバチ』を演奏するって言い出して……」
澪「なにぃっ!?」
唯「いいじゃん、やってみようよ~」
紬「他のアーティストの曲をカバーするのも楽しいわよ?」
梓「カバーはいいですけど、よりによってあんな酷い曲じゃなくても!」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:40:39.54 ID:/gJPAVT1O
律「いいんじゃないか、私は賛成~」ニヤニヤ
澪「り、律っ!」
律「実は私もあの曲が大好きなんだよね~」ニヤニヤ
澪「お前、昨日まで『糞曲だ』ってボロクソに批判してたじゃないか!」
唯「りっちゃん隊員もわかってくれますか、この素晴らしさを!」
紬「それじゃあ早速、今日から練習してみましょうか!」
梓「そ、そんな……」
澪「だ……」
律「だ?」
澪「ダメぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」バンッ
律「うわっ、澪がキレた!」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:42:59.47 ID:/gJPAVT1O
澪「ヤダ、ヤダ、ヤダ! 私は絶対に認めない!」ウルウル
律(目に涙を浮かべて、どんだけ必死なんだ……。って、当然か)
唯「えー、いーじゃん、やろうよー。ブーブー」
澪「あふぅ!!///」ピクンッ
律(あっ、唯のブーイングに反応した。不完全でも言霊に認識されるんだな)
紬「私も、ブーブー!」
澪「はぁん!!///」ピクッピクッ
律(ムギ、えらい楽しそうだけど、本当にブーイングの意味わかってるのかな?)
梓「澪先輩、さっきから様子がおかしいですけど、大丈夫ですか?」
澪「と、とにかく、私は反対だからな……」ハァハァ
律(涙目で顔を真っ赤にした澪の表情、エロいなぁ)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:45:58.17 ID:/gJPAVT1O
唯「澪ちゃんがそういう態度なら、私だって意地を張っちゃうよ!」
梓「唯先輩、何をする気ですか?」
唯「これから何の曲をやっても『ミツバチ』の詞で歌うからね、私!」
梓「……はぁ?」
唯「スタンバイOK、行くよギー太!」
澪「……な、何を?」
唯「ブーンブンシャカ、ブーンブンシャカ、ブンブン♪」ジャンカジャンカ
(キミを見てると、いつもハート、DOKI☆DOKI)
澪「あふあぁっ!!///」ピクンピクンッ
唯「ブーリブリチャカ、ブーリブリチャカ、ビガッビガッ♪」ジャンカジャンカ
(揺れる思いは、 マシュマロみたいに、ふわ☆ふわ)
澪「ひゃうんんんっ!!///」ピ-ンッ
律(あっ、澪がまたイったみたいだな)
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:48:05.16 ID:/gJPAVT1O
梓「唯先輩、本当にやめてください。私たちの思い出を汚されたみたいで悲しいです」
唯「だってみんなが賛成してくれないんだもん~」
紬「これ、なんだか斬新で面白いかも!」
唯「でしょでしょ!?」
律「……なぁ、澪」
澪「あ、うー?」ハァハァ
律「まともに喋れないほどイきまくったか」
澪「そ、そんにゃこと」ハァハァ
律「いいか、お前が助かるには、唯たちに本当の事を話すしかないと思うぞ?」
澪「……」ハァハァ
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:50:14.17 ID:/gJPAVT1O
唯「えーと、曲名は『ふわふわ時間 ~ミツバチver.~』かな」
紬「あと『わたしの恋はホッチキス ~ミツバチver.~』もいい感じね」
梓「唯先輩、ムギ先輩、私の話を聞いてましたか!?」
律「……あの調子だと、これから毎日のようにブンシャカ地獄になるぜ」
澪「はうっ」ピクッ
律「素直に呪いの存在を認めて、正直にお願いした方がいいんじゃないか?」
澪「わ、わかったよ……」
律「よしよし、いい子だ」ナデナデ
澪「うぅっ……」
律「さぁさぁ、みんな注目! ちょっと聞いてほしい事があるんだ!」
唯「ほえ?」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:56:20.38 ID:/gJPAVT1O
律「……という訳で、澪には今、呪いがかけられてるんだ」
澪「だからお願いだ、本当に『ミツバチ』だけは勘弁してほしい」グスッ
紬「そういう理由があるなら、無理にとは言えないわね」
唯「えー、でも……」
紬「唯ちゃん!」
唯「……わかったよ。澪ちゃんの呪いが解けるまで我慢する」
澪「ありがとう、みんな……」ホッ
律「これで快感地獄から救われたな、澪」
梓「でも律先輩、澪先輩が悶絶するのを見て楽しんでたんじゃないんですか?」
律「いやー、なんか澪が苦しそうだからさぁ。かわいそうに思えてきちゃって」
梓「……律先輩、手ぬるいです」ボソッ
律「……えっ、何か言った?」
梓「いえ、何も」ニコッ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 21:59:28.49 ID:/gJPAVT1O
澪「じゃあ練習しようか。『ミツバチ』じゃない、普通の曲な」
律「えーっ、もうちょっと休憩しようぜ。学園祭も終わったんだし」
澪「学園祭が終わっても、卒業しても、このバンドは続いていくんだぞ」
律「……何だよ、そんな普通にいい話しやがって」
澪「こういう時こそ、ちゃんと練習する事が大切なんだ」
紬「うん、わかった。食器を片付けたら練習に入るわ」
澪「ありがとう。私は先に始めてるよ、今日はまだ一度も弾いてないんだ」
ブォ-ン
澪「ひゃぁっ!!///」ピクンッ
紬「澪ちゃん、どうしたの?」
澪「い、いや、何でもない……」
律「今の反応、まさか……」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:04:48.34 ID:/gJPAVT1O
澪「も、もう一回、弾いてみよう……」オソルオソル
ブォ-ン
澪「きゃふぅっ!!///」ピクピク
律「やっぱり、そういう事か」
紬「りっちゃん、何が起こってるの?」
律「どうやらベースの音が『Bu~n』の言霊として認識されちゃうみたいだ」
紬「つ、つまり?」
律「澪がベースを弾くと、澪は限界までイき続けるって事だ!」
澪「そ、そんなぁ……」ヘナヘナ
唯「自分で自分をイかせるなんて、まるでオn」
律「唯、その先は言わない方がいいと思うぞ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:07:56.12 ID:/gJPAVT1O
澪「これじゃ、練習なんてとても出来ないよ」
梓「えっ、練習しないんですか? 澪先輩らしくない」
澪「……梓、一連の流れを踏まえてそれ言ってる?」
律「そうだな、今日はなんか凄くみんなで練習したい気分だ!」ニヤニヤ
澪「律、お前は普段そんな態度じゃないだろ!」
紬「キーボード、準備できました」
唯「こっちもOKだよ、あとは澪ちゃんだけ!」
澪「……う、」
律「……う?」
澪「うわああああああああん!!」ダッ
律「あっ、逃げた」
梓「今日はもう澪先輩で遊べませんね」
律「梓、今『で』って言った?」
梓「いえ、別に」ニコッ
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:12:30.07 ID:/gJPAVT1O
翌朝!
澪「うぅ、昨日は酷い目にあった……」
唯「澪ちゃん、おはよ~」
澪「唯か、おはよう。今朝は遅刻ギリギリじゃないんだな」
唯「その言い方、まるで私がいつも遅刻ギリギリみたいな!」
澪「事実だろ……」
ガラッ
姫子「おはよう」
唯「あっ、姫ちゃんだ。おはよ~」
澪「立花さん、おは……」
唯「朝の掛け声は!?」
姫子「ブーンブンシャカ!!」
唯「ブブンブーン!!」
澪「よおぉぉっっ!?///」ピクンピクンッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:16:57.63 ID:/gJPAVT1O
姫子「澪ちゃん、どうしたの?」
唯「……そっか、澪ちゃんの前でブンシャカしちゃいけないんだった」
澪「はうっ」ピクピク
唯「ごめんね、澪ちゃん」
澪「あぁ、次から気を付けてくれると助かる……」
和「……何なのよ、今の一連のやり取りは」
唯「あっ、和ちゃん!」
和「まず唯と姫子の掛け声は何なのよ」
姫子「えーと、あれは、その」
唯「私と姫ちゃんは『ミツバチ』の絆で結ばれているんだよ!」
姫子「うん、まぁそんな感じ。ハハッ」
和「……もういいわ。姫子も今さら恥ずかしがらないでよ」
姫子「てへへ……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:22:12.95 ID:/gJPAVT1O
和「それと、澪はどうしたのよ。いきなり変な声を出して」
澪「うん、実は昨日……」
カクカクシカジカ
澪「……という訳なんだ」
和「随分とふざけた話ね」
唯「和ちゃんは呪いって信じないの?」
和「まぁ、存在は認めるわ。ただし正体は別のものよ」
澪「別のものって?」
和「霊的な力じゃなくて、一種の催眠術よ。だから安心していいわ」
澪「そうなのか?」
和「澪は思い込みが激しいタイプだから、暗示にかかっちゃったのね」クスッ
唯「ふーん……」
姫子(あっ、唯ちゃんが何か企んでる)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:29:20.78 ID:/gJPAVT1O
昼休み!
「○月×日△曜日、お昼の校内放送を始めます」
澪「さて、お腹が空いちゃったな。お弁当を食べよう」
「今日の1曲目は、3年2組田井中律さんからのリクエスト」
澪「へぇ、律が何かリクエストを出したんだ。海外のロックバンドかな?」
「遊助の新曲『ミツバチ』です。どうぞお聞きください」
澪「……」ガタッ
「38℃の真夏日、夏祭り。こんな日は♪」ワチャカナドゥ
唯「あれ、澪ちゃん。どこに行くの?」
澪「何処か、できるだけ遠く! この放送の届かない場所へ!」
「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
澪「いやあぁぁぁ、ばあぁかあぁりいぃつうぅ!!!」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:31:42.91 ID:/gJPAVT1O
律「あれ、澪がいない。一緒に弁当を食べようと思ったのに。いちご、知らないか?」
いちご「さっき奇声をあげて教室を出て行ったわよ」
律「……はぁ、何だそりゃ?」
いちご「こっちが聞きたいわよ、異様な慌てぶりだったし」
律(例の呪い関連かな?)
いちご「それより、律。軽音部のくせにアンタ、音楽の趣味悪いわね」
律「いきなり失礼な事を言うな、おい!」
いちご「お昼の校内放送に、あんな糞みたいな曲のリクエストを出すなんて……」
律「……んっ、それ何の話?」
いちご「だから、今日の校内放送。律が『ミツバチ』のリクエスト出したんでしょ」
律「いや、私そんなの知らないぞ?」
いちご「……えっ?」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/16(月) 22:34:45.22 ID:/gJPAVT1O
その頃!
憂「梓ちゃん、一緒にお昼を食べようか」
梓「うん、いいよ~」
憂「さっき校内放送で流れた曲、最近お姉ちゃんが大好きなんだ~」
梓「あぁ、遊助の『ミツバチ』ね」
憂「そうそう。ちょっと私は歌詞の意味がわからないんだけどね」テヘッ
梓「あの曲、私がリクエスト出したんだ」
憂「えっ、そうなの? でも確か、律さんのリクエストって言ってたような」
梓「私が律先輩の名前でリクエストしたの」
憂「なんでわざわざそんな事を?」
梓「んー、ちょっとしたイタズラ心だよ」
憂「そうなんだ。梓ちゃんがイタズラするなんて、意外かも」
梓「……」ニヤリ
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:43:21.49 ID:NPFDf/9yO [2/45]
澪「はぁ、はぁ、はぁ……」
澪「息が苦しい、校庭まで全力で走って来たからな……」
澪「まぁ、それだけじゃないけど……///」
「次の曲は、3年2組琴吹紬さんからのリクエスト」
「ベートーヴェン、ピアノソナタ第8番『悲愴』より、第一楽章」
澪「スーッ、ハーッ。スーッ、ハーッ」
澪「よし、深呼吸したら落ち着いた」
澪「……落ち着いたら、怒りがこみ上げてきた」
澪「律、絶対に許さないからな。キッチリ仕返ししてやる!」イライラ
澪「そうと決まれば、あの人たちに協力してもらおう!」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:44:40.23 ID:NPFDf/9yO [3/45]
律「もうすぐ昼休みも終わりだというのに、澪が帰って来ない……」
紬「さすがに怒ったんじゃないかな、『ミツバチ』のリクエストは……」
律「だから、あれは私じゃないってば!」
ガラッ
律「あっ、澪!」
澪「おぉ、律か」ニッコリ
律「さっきの校内放送だけど、あれ……」
澪「あぁ、律のリクエストした曲が採用されて良かったな」ニッコリ
律「え、あ、うん……」
ポンポン
律(ひっ、頭!)
澪「おかげで楽しい昼休みを過ごせたよ、ありがとう」ナデナデ
律(……その笑顔が怖すぎます、澪さん)
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:46:11.66 ID:NPFDf/9yO [4/45]
放課後!
澪「あっ、唯」
唯「澪ちゃん、どうしたの?」
澪「私、今日はちょっと部室に行くのが遅くなるから」
唯「うん、わかった」
澪「だからそれまで、好きなだけ『ミツバチ』を歌ってていいからな」
唯「……えっ?」
澪「唯は歌いたくて仕方ないのに、私に気を遣って歌えないだろ?」
唯「う、うん」
澪「私がいない間は、何の遠慮も要らないからな」
唯「……よくわかんないけど、ありがとう澪ちゃん!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:50:21.09 ID:NPFDf/9yO [5/45]
澪「……失礼しまーす」
オカ研1「……どうぞ」
オカ研2「あなたを待っていた。田井中律の毛髪は持って来た?」
澪「はい、これ! 頭を撫でるふりをして採取したんだ」
オカ研2「それは、自然な動作の中で採取できたという意味?」
澪「そうそう。誰が見てもバッチリ自然な、私と律の普段のやり取りだった」
オカ研1「……そういう事にしておく」
オカ研2「では早速、田井中律に呪いをかける」
澪「うん、お願いします。えーと、呪いの種類は確か……」
オカ研1「……エンゼルフェザーと呼ばれる呪い」
オカ研2「言霊によって、田井中律は天使の愛撫に身体を包まれる」
澪「ありがとう。それで、その言霊は……」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 00:58:37.44 ID:NPFDf/9yO [6/45]
その頃!
律「やっぱり部室は落ち着くなぁ」ダラダラ
唯「卒業してもずっとここに住みたいねぇ」ダラダラ
紬「あっ、それ素敵! 毎日が学園祭の夜みたいになって!」
梓「本当に住み着かないでくださいね……。ところで澪先輩は?」
唯「何か用事があるみたい。遅れて来るって言ってたよ」
梓「へぇ、そうなんですか……」
唯「だから澪ちゃんが来るまでブンシャカやり放題なんだよ!」
紬「ブーンブンシャカブブンブーン♪」
律「ひゃっ!!」ビクッ
唯「りっちゃん、どうしたの?」
律「唯、変なところ触るなよ~」
唯「えっ、私は何もしてないよ?」
律「……あれ、マジで?」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:00:35.22 ID:NPFDf/9yO [7/45]
紬「澪ちゃんが来るの遅くなるなら、先にティータイムを始めちゃおうか」
唯「うん、そうだね。紅茶とお菓子をお願いします、ムギちゃん!」
紬「わかりました~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「きゃははははっっっっ!!!!」ジタバタ
唯「ど、どうしたの、りっちゃん!?」
紬「なんだか楽しそうね~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「ひぃっ、ひぃっ、やめてぇぇっっ!!」ジタバタ
唯「……りっちゃんが笑い転げている」
梓「まるで狂っちゃったみたいな笑い方ですね」
唯「……あずにゃん?」
梓「いや、映画に時々出てくるじゃないですか。ダークナイトみたいな」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:02:34.88 ID:NPFDf/9yO [8/45]
唯「おーい、りっちゃん。狂ったの?」
律「ち、違うっての、バカ……」ハァハァ
梓「顔も真っ赤だし、涙とよだれが溢れてますよ」
律「う、う、うるさい!」フキフキ
紬「紅茶の用意が出来たわよ~。しゃらんら、しゃらんら♪」
律「ム、ム、ムギ! それ、やめて、きゃはははっっっ!!!」ジタバタ
紬「えっ、私?」
律「そう、ムギが歌うと、全身がこそばゆくて仕方ないんだ……」ハァハァ
紬「歌……って、しゃらんら♪の事かな?」
律「そ、それそれぇぇっっ!!」ジタバタ
紬「あっ、ご、ごめん」
律「それを聞くと、まるで、身体中を誰かにくすぐられているような感覚が……」ハァハァ
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:11:54.29 ID:NPFDf/9yO [9/45]
唯「落ち着いてきたら、紅茶でも飲みなよ」
律「あぁ、ありがとう……」ズズッ
唯「ムギちゃん、今日のお菓子は何?」
紬「ラング・ド・シャーよ!」
律「きゃひひひひ、きた、来ちゃったぁぁっっ!!」バチャン
唯「うわっ、いきなり!?」
律「や、や、やめてぇぇっっ、助けてぇぇっっ!!」ジタバタ
梓「紅茶がスカートに溢れて、律先輩がお漏らししたみたいですね」
律「うる、ひゃい……」ハァハァ
紬「私、タオルを持って来るわ!」
律「おっ、お願い、ひまひゅ……」ハァハァ
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:13:19.43 ID:NPFDf/9yO [10/45]
唯「ねぇ、あずにゃん?」
梓「はい」
唯「この症状、やっぱりアレかな?」
梓「……呪いでしょうね。澪先輩の呪いとは、種類が違うみたいですが」
ガチャ
澪「やぁ、遅くなったな」ニッコリ
紬「澪ちゃん、りっちゃんが大変なの!」
澪「という事は、成功したみたいだな」
律「澪、お前、まさか……」ハァハァ
澪「悪いな、律。昼休みの仕返しをさせてもらったぞ」
律「だから私は無実だってばー!」
梓(面白くなってきた……)ニヤリ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 01:15:04.69 ID:NPFDf/9yO [11/45]
唯「澪ちゃん、これってやっぱり呪いなの?」
澪「その通りだ。私の呪いと同じように、一番軽くてすぐ解けるやつ」
律「すぐって言っても10日くらいだろ、長いって……」
澪「それは私だって一緒だ!」
梓「でも澪先輩の呪いと、効果がちょっと違う?」
澪「あぁ。エンゼルフェザーと言って、全身を天使の羽根で撫でられる感覚だとか」
律「私がくすぐり苦手だって知ってるから、それを選んだだろ!」
澪「あれー、そうだったっけ。忘れてたよ、ハッハッハ」
律「くっそー、澪めっ!」
澪「ちなみに鍵となる言霊は……」
梓「言霊は……」ゴクリ
澪『Sha』
律「また、また、やはははっ、やびゃいぃぃっっ!!」ジタバタ
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:32:06.31 ID:NPFDf/9yO [13/45]
紬「りっちゃん、大丈夫? はい、このタオルを使って」
律「ありがと、ムギは私の天使だよ……」ハァハァ
紬「えへへ、どう致しまして」
律「まぁ今の私にとって、天使の羽根は凶器でしかないんだけど」
紬「えーと、喜んでいいの、私?」
律「このまま、やられっ放しのりっちゃんだと思うなよ?」
梓(律先輩の目に、復讐の炎がメラメラと……)
律「なぁ、唯!」
唯「ほえ?」
律「一番好きなコンビニは?」
唯「んーと、セブンイレブンいい気分♪」
澪「ひゃはぁぁっっ!?///」ピクンッ
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:33:57.78 ID:NPFDf/9yO [14/45]
律「よし、ヒット!」グッ
澪「は、反撃、だと……」ハァハァ
唯「あわわ、やっちゃった。澪ちゃんごめん!」
律「……次は、そうだな、みんなで練習しようぜ!」
澪「なっ!?」
律「もうティータイム終わりだからな、早く準備しろ~」ニヤニヤ
梓(律先輩、普段からそんな姿勢だったらいいのに)
律「さぁ澪、ベースを持て! ドラムは準備万端だぞ!」
ドコドコチンシャ-ン
律「って、きゃはああぁぁっっ!?」ビクンッ
紬「どうしたの、りっちゃん!?」
律「……えっ、何だよ、これ」ハァハァ
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:35:47.64 ID:NPFDf/9yO [15/45]
澪「まさかとは思ったが、本当にそうみたいだな」
唯「えーと、どういう事なの?」
澪「楽器の音でも言霊として認識されるのは、知っての通りだからな」
唯「つまり……」
澪「おそらくシンバルの音が『Sha』の言霊として機能して、律の身体は……」
律「くすぐったひぃぃっっ!!」ジタバタ
澪「私に攻撃するつもりだったんだろ、自業自得だ」
梓「結局、自分だけ苦しい思いをするなんて。間抜けですね」
律「うぅっ、言いたい放題言いやがって……」ハァハァ
梓「それで律先輩、練習を始めるんでしたっけ?」
律「する訳ないだろっ、もう帰るっ!」グスン
梓(あっ、とうとう泣いちゃった)
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:41:22.50 ID:NPFDf/9yO [16/45]
翌日!
律「澪のために新しい曲を作ったぜ!」
唯「えっ、りっちゃんが作ったの?」
律「いや、ムギが前に作った曲に歌詞を付けただけ」
紬「嬉しいわ、歌詞の無いまま放置されてる曲が結構あるから」
澪「それでどんな曲なんだ?」
律「曲名は『Heart Goes Boom!!』だ」
澪「たひゃ!?///」ピクッ
『喜怒哀楽 ジャズベのボディに 全部私が詰まってる
春夏秋冬 二十四時間 うなるハートは無休
Bo Boom Boom Boom Boom!!』
澪「いやっ、ひゃはぅんんんん!!///」ピ-ンッ
律「どうだ、喜んでくれたか?」ニヤニヤ
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:42:28.37 ID:NPFDf/9yO [17/45]
澪「……奇遇だな、私も新曲の歌詞を書いてきたんだ」ハァハァ
唯「澪ちゃんも?」
澪「ほら、この前ムギが作曲して、唯が途中まで歌詞を作ったやつ」
紬「あの曲が完成したのね、嬉しい!」
律「えーと、タイトルは何だっけ?」
澪「『Cagayake! GIRLS』だよ。Cメロから先が未完成だったからな」
『永遠にループする
サイズ down↑ up↓ down↑ up↓
でも気分いつでも
up↑ up↑↑ up↑↑↑ & up↑↑↑』
律「おぉ、なかなかいい感じ……」
『Shining Shiner Shinyest
Girls be ambitious & shine』
律「って、きゃははははぁぁぁぁっっっっ!?」ジタバタ
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:44:20.74 ID:NPFDf/9yO [18/45]
紬「最後のところ、リピート6回も……」
唯「何か凄まじいものを感じるよ、明るい曲と歌詞なのに……」
澪「どうかな、これ?」ニッコリ
律「ぜぇー、ぜぇー、ひゅー、ひゅー」ハァハァ
紬「りっちゃん、呼吸できる?」
律「な、何とか……」ハァハァ
梓「律先輩も澪先輩も、自分は無傷で相手だけ呪いが発動するような歌詞を……」
澪「いやー、そんなつもりは無かったんだけどなー」
律「あぁ、私も、ただ、澪のために、と思って……」ハァハァ
唯「2人とも、にらみ合ってて怖いよぅ」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 10:45:31.36 ID:NPFDf/9yO [19/45]
梓(片方だけしか発動しないのは、正直まどろっこしい)
紬「りっちゃん、澪ちゃん、動機は何であれありがとう!」
唯「きっかけが何であれ、出来上がったものは本当にいいものだよ!」
梓(2つの言霊を考えると、最も効率的に呪いを発動させるには……)
律「何だよもう、人聞きの悪い言い方しやがって」
澪「まるで私が、のたうちまわる律を見たくて歌詞を作ったみたいじゃないかー」
梓「ブーンブンシャカブブンブーン♪」ボソッ
澪「にゃひぃぃっっ!!///」ピクピクッ
律「あっ、らめ、らぁぁっっ!!」ピクピクッ
紬「梓ちゃん!?」
唯「あずにゃん!?」
梓「あっ、すみません。つい口に出して歌っちゃいました……」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:47:30.02 ID:NPFDf/9yO [21/45]
夜!
律「ただいま~」
聡「姉ちゃん、お帰り」
律「……何してんだ?」
聡「部屋の大掃除したら、色々懐かしいものが出てきた」
律「それ、いつまでも掃除が終わらないパターンだな」
聡「まぁまぁ。昔よく遊んでた、くだらないオモチャなんか眺めるのも楽しいよ」
律「気持ちはわかるけどな。んで、その手に持ってるのは?」
聡「スイッチを入れると、猿がシンバルを鳴らすやつ」
律「……待てっ、そのスイッチを入れるなぁっ!!」
聡「えっ?」カチッ
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:49:19.13 ID:NPFDf/9yO [22/45]
シャンシャンシャンシャン
律「ひゃははははははっっ!!」ジタバタ
シャンシャンシャンシャン
律「きひぃ、きひぃひひっっ!!」ジタバタ
聡「姉ちゃん、そんなに面白いのかよ……」
律「いや、ちが、そうじゃなくてぇぇっっ!!」ジタバタ
聡「気に入ったみたいだし、そのオモチャは姉ちゃんにあげるよ」
律「いら、いらな、ひぃぃっっ!!」ジタバタ
聡「じゃあ俺、部屋の掃除に戻るから」
シャンシャンシャンシャン
律「やっ、せめて、スイッチ切ってぇぇっっ!!」ジタバタ
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:51:05.57 ID:NPFDf/9yO [23/45]
律「……」ハァハァ
律「……笑い死ぬかと思った」
律「聡のやつ、たったひとりの姉を殺す気かよ」
律「……ふぅ」
律「認めたくないけど、ちょっと気持ちよくなってきた///」
律「……」カァッ
律「くすぐられ過ぎて、イカれ始めてるな」
律「……とりあえず」
律「この猿のオモチャは貰っておこう」
律「いや、観賞用、ただ机の上に置いておくだけだから!」
律「……誰に向かって言い訳をしてるんだ、私は」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:54:40.49 ID:NPFDf/9yO [24/45]
翌日!
教師「……そして1912年、中華民国の樹立とともに清は滅亡しました」
澪(世界史は受験で使うから、ちゃんと勉強しないとな)
教師「この時に起こった革命を何と呼ぶか、真鍋さん」
和「はい、辛亥革命です」
教師「正解。では辛亥革命の中心人物で、中華民国を建国したのは……」
澪(孫文か、基礎知識だな。……って、それを発音されると困る!)
教師「後ろの席の、平沢さん」
唯「はい、えーと、そn」
チョンチョン
唯(んっ、どうしたの姫ちゃん?)
姫子(『ぶん』って言ったら、澪ちゃんが困っちゃうよ!)
唯(あっ、そうか!)
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:56:18.97 ID:NPFDf/9yO [25/45]
教師「……平沢さん?」
唯「そ、それじゃなくて、毛沢東かなぁ?」
姫子(ナイス回避だよ、唯ちゃん!)
澪(よくやった、ありがとう唯!)
教師「違います、孫文です」
澪「ん~~~!!!///」ピクンッ
澪(一瞬安心したところに、不意打ちだなんて!)
教師「どうかしましたか、秋山さん?」
澪「いえ、何でもありません……」ハァハァ
唯(結局、回避できなかったよ……)
姫子(仕方ないよ、唯ちゃんは頑張ったって……)
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 14:58:11.35 ID:NPFDf/9yO [26/45]
教師「毛沢東は、別の革命の中心人物ですね。何だかわかりますか?」
澪(わかるよ、わかるけど、それは言えない!)
教師「騒がしかった秋山さんに答えてもらいましょうか」
澪(ひぇっ、そんな!)
教師「基礎的な知識だから、わかる筈です」
澪「はい、えーと……」ドキドキ
澪(これを言っちゃったら、私、授業中に、みんなの前で!)
澪「ぶ……」ドキドキ
澪(えぇい、仕方ない、もうヤケクソ!)
澪「ぶんか、大かくめぇぇぇっっっ!!!///」ピクンピクンピクン
澪(あぁ、私、文化大革命でイっちゃったよぉ……)
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 15:02:10.43 ID:NPFDf/9yO [27/45]
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
紬「澪ちゃんは頑張った、頑張ったよ!」
澪「うぅ……」
唯「別に誰もおかしく思ってなんかないよ!」
澪「そんな訳ないだろ……」
律「とにかく落ち込むなって、元気を出せよ!」
澪「元気、出せないよ……」
澪(事情を知ってるみんなが優しくしてくれる)
澪(それが余計に惨めな気持ちになるよ)
澪「うぅ、今日はもう帰りたい……」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:06:17.03 ID:NPFDf/9yO [30/45]
昼休み!
純「やっほー!」
梓「あぁ、純か」
純「突然ですが質問です! 梓はS? それともM?」
梓「んー、どっちかと言えばSだね」
純「なぁんちゃって、私は服のサイズを聞いただけでした~」
梓「……」イラッ
純「勘違いして答えてくれちゃったみたいだけどひべぇ!?」ギリッ
梓「うん、わかってたよ。服のサイズでしょ?」ニコッ
純「ほっぺた、ちゅねらにゃいでぇぇっっ!!」ギリギリッ
梓「サドって意味じゃなくてね、身体が小さいからSサイズかな、と思って」ニコニコ
純(サドだよ……。梓、あんたはサドだよ……!!)
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:07:20.94 ID:NPFDf/9yO [31/45]
梓「まったくもう。あんまりふざけた事ばっかりしてると、調教するよ?」
純「……えっ、調教?」
梓「それで、用件は特に無いの? 私、行くところがあるんだけど」
純「あれ、今の発言、サラッと流されちゃうの?」
梓「五秒以内に納得のいく返答が無かったから、もう行くわね」
純「ちょ、ちょっと待って、梓!」
梓「……何よ?」
純「この前の話、憂と相談してみたんだ」
梓「あぁ、そうなんだ。ありがと」
純「それで、結論としては……」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:10:01.23 ID:NPFDf/9yO [32/45]
放課後!
エリ「ねぇねぇ、コーラ飲まない?」
律「おっ、サンキュ。でも珍しいな~」
エリ「えっ、何が?」
律「エリってコーラ大好きだから、手元にあったら全部飲んじゃうイメージ」
エリ「んー、これがペプシだったら自分で全部飲んじゃうな」
律「コカコーラは駄目なのか?」
エリ「駄目って訳じゃないけど、ペプシにこの身を捧げると誓ったからね!」
律「……じゃあなんでコカコーラ買ったんだよ」
エリ「アカネに頼んだら、赤いの買って来ちゃったんだもん」
律「そういう事ね。まぁいいや、ありがたく頂きます」ゴクゴク
澪「律、そろそろ部室に行くぞ」
律「ほいほ~い。エリ、ご馳走様!」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:15:43.50 ID:NPFDf/9yO [33/45]
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「ん?」
唯「今、この部室には私とムギちゃんしかいないよ」
紬「そうね」
唯「……やりますか!」
紬「はいっ!」
唯「ブーン☆ブン☆シャカ!!」
紬「ブブン★ブーン!!」
唯「ブーリ☆ブリ☆チャカ!!」
紬「ビガッ★ビガッ!!」
唯「……ふぅ、スッキリした~」
紬「久しぶりに部室でブンシャカしたわね~」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:17:19.64 ID:NPFDf/9yO [34/45]
唯「澪ちゃんとりっちゃんがいると、こんな事できないからね~」
紬「私たちしかいない時、限定だもんね~」
ガチャ
澪「一体何を隠してるんだ?」
律「最後の方の会話しか聞こえなかったけど、仲間はずれは寂しいぞっ!」
紬「澪ちゃん、りっちゃん!」
唯「違うよ、2人がいない間にブンシャカしてただけだよ」
律「にゃははぁぅん!!」ピクンッ
澪「あふぁぁっっ!!///」ピクンッ
唯「あっ、またやっちゃった」
紬「こうならないように気を付けてたのに……」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:18:52.18 ID:NPFDf/9yO [35/45]
澪「それにしても暇だな」
律「私たち、楽器も弾けない身体だからな」
唯「かと言ってブ……、『ミツバチ』も歌えないし」
紬「紅茶とお菓子でのんびりするくらいしか、やる事がないわね」
律「そうだ、私たちはのんびり紅茶を飲む事しかできない」ズズッ
澪「それって普段とあまり変わらないんじゃないか?」
律「いや、普段ならそろそろ、澪と梓が練習しようって言い出す頃だ」
唯「そう言えば、あずにゃんは?」
紬「まだ来てないみたい……」
ガチャ
梓「遅くなりました、今日はビッグニュースがありますよ!」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:33:16.23 ID:NPFDf/9yO [36/45]
唯「あずにゃん、ビッグニュースって?」
梓「ふふふっ。この軽音部、私以外の皆さんは来年卒業してしまいますよね」
紬「そうね、寂しいけど……」
梓「そしたら部員が私一人になって、廃部になっちゃいますよね」
律「せっかく私たちが廃部寸前から建て直したのにな……」
梓「だから、新しい部員に入ってもらわないといけないですよね」
澪「梓、もしかして……」
梓「そう、軽音部に新しいメンバーの入部が決まったんですっ!」
唯紬律澪「おぉーーっっ!!」
梓「……まぁ、皆さんの予想通りのメンバーかもしれませんが」
律「確かに何となく予想はつくけど、紹介してくれよ!」
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:34:31.71 ID:NPFDf/9yO [37/45]
梓「まずベース担当、鈴木純です!」
純「どーも、失礼します……」テレッ
紬「ジャズ研でベースを弾いてる子よね、本格派じゃない!」
梓「続いてドラム担当、平沢憂です!」
憂「えへへ……」テレテレッ
唯「憂!?」
憂「ごめんね、お姉ちゃん。今日まで秘密にしておこうって約束したから」
唯「そうなんだ。えへへ、嬉しいなぁ、憂が軽音部に入ってくれて」
梓「そしてギター担当、中野梓。ひとまず3人いればバンドは組めます」
純「あとは何とかもう1人、部員を勧誘すれば……」
憂「軽音部は潰れないから、安心してください!」
唯紬律澪「わぁーーっっ!!」パチパチパチパチ
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:36:03.20 ID:NPFDf/9yO [38/45]
梓「じゃあ2人とも、準備して」
純「わかった。私のベースをアンプに繋いで、っと」
憂「律さん、ドラムセットお借りしますね」
唯「あれっ、何をするの?」
梓「入部の挨拶を兼ねて、この場で3人の演奏を披露したいと思います!」
澪「えっ?」
律「えっ?」
憂「お姉ちゃんに見つからないように、こっそりドラムの練習を頑張ったんだよ!」
純「入部するって梓に伝えたのが今日の昼休みだから、まだ3人で合わせてないんだけどね」
梓「まだバラバラかもしれないけど、今の私たちの演奏を聴いてほしいんです」
澪「えっ?」
律「えっ?」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 21:48:22.11 ID:NPFDf/9yO [39/45]
梓「そろそろ準備は出来た?」
純「いいよ~」
憂「こっちも~」
梓「それじゃ、始めようか」
澪律「ちょっと待ってくれ!!」
梓「……澪先輩、律先輩、どうしたんですか?」
澪「その演奏、今日じゃなきゃダメかな?」
梓「えっ、どうして?」
澪「えーと、できれば10日後くらいにしてくれると嬉しいな、なんて」
律「そうそう、やっぱりこういうのは、3人で練習を積んでからの方が」
梓「今日は私たち3人にとって記念日なんです、今日じゃなきゃ……」ションボリ
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:00:06.76 ID:NPFDf/9yO [40/45]
純「これまでただの友達だった私たちが、一つのバンドになった日なんです」
憂「ご迷惑でなければ、今日、この日の私たちを、皆さんに聴いてほしいんです」
澪「いや、今日はちょっと、ね? 都合が悪いって言うか、ね?」
律「ちょっと色々あって忙しいかな~、みたいな、ね?」
梓「暇そうに紅茶を飲んでたじゃないですか」
澪「うっ!」
律「反論できないところを的確に……」
梓「わかった。きっと先輩たち、突然の事だから、照れちゃってるんだよ」
純「あっ、そういう訳ね」
憂「えへへ。照れなくていいんだよ、お姉ちゃん」
梓「だから私たちで勝手に始めちゃおう、ちゃんと聴いてくれるから」
純憂「おぉーっ!!」
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:06:24.19 ID:NPFDf/9yO [41/45]
梓「それでは聴いてください、『ミツバチ』です」
澪「選曲に悪意を感じるぞ!?」
梓「38℃の真夏日、夏祭り。こんな日は♪」ワチャカナドゥ
律「しかもお前が歌うのかよ、中野!?」
梓「ガンバンベ! 踊れミツバチ、Hey♪」
純「♪」ブォ-ンブォ-ン
憂「♪」ドコドコシャンシャ-ン
梓「ブーンブンシャカブブンブーン♪」
澪「あぐはふぁぁうんっ!!///」ピクピクッ
律「ふぁ、ひゃぎふぅぅっっ!!///」ジタバタ
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:10:11.28 ID:NPFDf/9yO [42/45]
紬「ベースとドラムの音だけでも呪いが発動しちゃうのに……」
唯「あずにゃんの歌まで加わったら、大変な事に……」
純「♪」ブォ-ンブォ-ン
澪(いっ、イったまま、収まらない、止まらない!?)ピクンピクンッ
澪(あたま、頭が、バカになっちゃう!?)ピクンピクンッ
憂「♪」ドコドコシャンシャ-ン
律(くすぐったい、気持ちいい、身体に、力が、入らない!?)ムズムズ
律(コーラとか、紅茶とか、色々飲んだから、漏れちゃう、かも!?)ムズムズ
梓「ブーンブンシャカブブンブンブーン♪」
澪「あへらああああぁぁぁぁっっっっ!!!!////」ピ-ンッ
律「出ちゃううううぅぅぅぅっっっっ!!!!////」ジョロロロロ
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:15:44.61 ID:NPFDf/9yO [43/45]
ジャジャ-ン
純「……ふぅ」
憂「……ほっ」
梓「どうでしたか、私たちの演奏は!?」
澪「あひゃ、しゅ、しゅごい……」ハァハァ
律「すごすぎて、漏らしちゃった……」ハァハァ
梓「ありがとうございます!!」
紬「いい笑顔ね、梓ちゃん……」
唯「あんなに満足そうなあずにゃん、初めて見たよ……」
梓「それじゃ、明日からもよろしくお願いしますね!!」
唯「……明日からも?」
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/17(火) 22:20:32.70 ID:NPFDf/9yO [44/45]
純「これから毎日、先輩たちの前で『ミツバチ』を披露します!」
憂「私たちの成長を、日々見守ってください!」
澪「えっ?」
律「えっ?」
紬「純ちゃんと憂ちゃん、呪いの事は知ってるのかしら?」
唯「知らないんじゃないかな。つまり、容赦ない犯人はただ1人……」
律「……中野!」
澪「……梓!」
梓「という事です、よろしくお願いします!」ニッコリ
澪律「やめてくれぇぇっっ!!」
おわり?
201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/17(火) 22:22:50.01 ID:NPFDf/9yO [45/45]
以上で本編は終わりです、ありがとうございました
この後、番外編(大人向け)があるかもね!
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 11:32:38.99 ID:Y9zNDNHUO [1/37]
という訳で、番外編その1
昨日はさるさんを喰らいまくったから、ゆっくり投下します
※地の文あり注意
242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:35:03.17 ID:Y9zNDNHUO [2/37]
オカルト研の部室のドアは意外にもシンプルで、装飾も何も無い。
内装の禍々しさとは正反対だ。
そのドアの前に、私と和ちゃんが2人で立っている。
「……唯、そろそろ説明してもらえるかしら?
どうして私が、オカルト研の部室に連れて来られたのか」
和ちゃんはいつもの調子で、淡々と私に疑問をぶつけてきた。
だから私もいつもの調子で、それに答える。
「だって和ちゃん、呪いなんて暗示にかかっただけだ、って言ったでしょ。
だから、呪いは本物だって信じてもらうために連れて来ました!」
「どうやって私に信じさせるつもり?」
「実際に和ちゃんが呪われるんだよ」
「……はぁ?」
呆れた表情と声。これも、いつも通りの和ちゃんだ。
「澪ちゃんも最初は疑ってたけど、自分が呪われたら信じるようになったんだよ」
「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
決め台詞を残して、和ちゃんは向こうへ歩き出した。
245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:40:31.00 ID:Y9zNDNHUO [3/37]
「逃がさないよ!」
「……もう、離してよ」
「実は和ちゃん、呪われるって聞いて怖くなった?」
和ちゃんに抱きついて、その歩みを止めて、単刀直入に聞いてみる。
ちょっと今、私の顔はニヤけてるかも。
だって、たぶん、これは和ちゃんの本音だと思うんだ。
「……そんな訳、ないでしょ」
「じゃあ別に構わないよね。和ちゃんは呪いなんて信じてないんだし」
「霊的な力の存在を認めない、って言ってるだけよ」
あれっ、なんか期待してたリアクションと違うような?
本心を言い当てられて、焦っちゃう和ちゃんが見られると思ったのに。
すごく冷静というか、冷酷な態度でビックリしちゃうよ。
「だからって、誰かが私への悪意をもって儀式を執り行うのは、不愉快でしょ。
そんな儀式を目の前で見せられて、笑って許せるほど大人じゃないわ」
「うぅ……」
「もう私、本当に行くからね。用事もあるし」
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:44:03.87 ID:Y9zNDNHUO [4/37]
再びこの場を去ろうとする和ちゃんに、思わず大声で呼び掛けてしまった。
今、焦っているのは、私の方だ。
「の、和ちゃん!
本人がいなくても呪いはかけられるんだよ!」
「……どういう意味よ?」
「和ちゃんの髪の毛、こっそり取っちゃったからね!」
おかしいな、こんな言い方する筈じゃなかったのに。
確かに、念のため、と思って和ちゃんの髪の毛は事前調達しておいた。
けど、こんな脅すような使い方をするためじゃなかった筈だよね。
どうしよう、売り言葉に買い言葉で、思ってもない事が口から出ちゃう。
「……それがあれば、私に呪いをかけられる、って言いたいのね」
「そうだよ!」
「ちょっと理解できないわね。私、そこまで唯に恨まれるような事をしたかな」
「違う、違うよ、そうじゃなくて!」
「わかってる? 今、私、すごく怒ってるのよ」
あっ、なるほど。
空気が凍るって、こういう事を言うんだ。
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:48:34.93 ID:Y9zNDNHUO [5/37]
どうしてこんな事になっちゃったのかな。
和ちゃんは結局、怒って生徒会に行っちゃうし。
オカルト研の部室前で、1人で立ち尽くしていると、ドアが開いた。
「……ごめんなさい、中から話を聞いていた」
「真鍋和は行ってしまったようだけど、どうする?」
出てきたのは、例の怪しい衣装ではなく、制服を着たオカルト研の2人。
今は昼休みだから、制服を着ているのは当たり前なんだけどね。
「もう知らないよ、和ちゃんなんて」
怒りとか、悲しみとか、色々グチャグチャの感情が、そのまま言葉になった。
そして気が付けば私は、恐ろしい事を口に出していた。
「和ちゃんなんか、呪われちゃえばいいんだ!」
「……本当にいいの?」
「いいよ、呪いをかけちゃって!
軽い呪いじゃなくてもいいよ、和ちゃんはどうせ信じないんだから!」
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:52:20.86 ID:Y9zNDNHUO [6/37]
元々の計画では、こうなる筈だった。
1. 和ちゃんをオカルト研に連れて来て「呪いをかける」と伝える
2. 拒否したら「それなら呪いが存在する事を認めて」と迫る
3. 認めなければ、一番軽い呪いをかけて、認めざるを得なくする
そもそも、なんでこんな計画を立てたのか。
呪いで苦しんでる澪ちゃんに、和ちゃんは「そんなの思い込みよ」と言った。
なんだか、すごく澪ちゃんに対して失礼だと思った。
だから、和ちゃんに、呪いが存在する事を信じてほしかった。
それだけ、たったそれだけの話だったんだよ。
別に和ちゃんを苦しめたいとか、和ちゃんが嫌いだとか、そんな訳ないじゃん。
「終わった。真鍋和には『囚われのロキ』という呪いがかけられた」
「言霊によって、真鍋和は拷問の痛みに身体を苛まれる」
「鍵となる言霊は……」
色々な事を考えているうちに、儀式は終わっていた。
オカルト研の2人の説明を、私は半ば放心状態で聞いていた。
256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 11:57:10.56 ID:Y9zNDNHUO [7/37]
「失礼します」
「はい、……なんだ、唯じゃない」
ちゃんとドアをノックしてから、生徒会室に入る。
この時期の生徒会室にはあまり人がいないから、和ちゃんが1人でいる事が多い。
特に、昼休みにわざわざこの部屋に来るのは、和ちゃんくらいだ。
「何よ、謝りに来たの?」
「謝るのは和ちゃんの方だよ」
私はもう、完全に意固地になっていた。
「澪ちゃんやりっちゃんが苦しんでるのに、そんなの思い込みだって……。
そんな事を言う和ちゃんには、呪いをかけちゃったからね!
自分の身体で、思い知ればいいんだよ!」
涙目で、大声で、私は言霊を叫ぶ。
「ブーリブリチャカ、ビガッビガッ!!
ブーリブリチャカ、ビガッビガッ!!」
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:01:39.93 ID:Y9zNDNHUO [8/37]
その瞬間、和ちゃんの身体が、ビクンと跳ねた。
少し遅れて、生徒会室に悲鳴が轟いた。
「きゃああああっっ!?」
悲痛な叫びに驚いて、私は我に返った。
和ちゃんは椅子から転げ落ちて、床にうずくまっている。
動作は、肩で大きく息をするばかりで、立ち上がる気配すら見せない。
「の、和ちゃん!?」
「……い、痛いよぉ」
絞り出すような声で、和ちゃんが呟いた。
真っ赤な顔で、涙をポロポロと流している。
こんな和ちゃん、見た事がない。
いつもしっかり者で、毅然とした態度の和ちゃんが、こんな……。
ようやく私は、自分が犯した過ちに気付いた。
『囚われのロキ』の効果は、茨のムチに叩かれる痛み。
お尻を叩かれなきゃいけないのは、和ちゃんじゃない。
悪い子は、私だ。平沢唯だ。
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:06:50.21 ID:Y9zNDNHUO [9/37]
午後の授業に、和ちゃんの姿は無かった。
とてもそんな状態ではないと判断して、私が保健室に連れて行った。
たまたま保健の先生がいなかったけど、ベッドだけは使わせてもらえた。
2時間くらい安静にしていれば、きっと快復する。……するよね?
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
放課後になった。
近くにいたムギちゃんに、一言だけ伝えて、私は教室を飛び出す。
「ごめん、今日は遅くなるよ。もしかしたら部活に行けないかも!」
……もちろん、向かう先は保健室だ。
ドアに掛けられたホワイトボードには「本日、保険医不在」の文字。
もしかしたら和ちゃんは、眠っているかもしれない。
そっとドアノブを握って、静かにドアを開けた。
「失礼します……」
途端に、悲鳴のような、和ちゃんの声が聞こえてきた。
「あぁっ、はぁっ、はぁっ……」
まだ痛いんだ。まだ苦しいんだ。
私の心は罪悪感でいっぱいになった。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:10:03.74 ID:Y9zNDNHUO [10/37]
静かに、静かに、和ちゃんのベッドに近づいた。
吐息の多く混じった声が、断続的に聞こえる。
でも、次の瞬間、私は自分の耳を疑った。
「もう一回、だけ……
ブーリブリチャカ、ビガッビガッ……」
えっ、ダメだよ、その言霊を唱えたら……
「あふぁっ、あふぁっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
なんで、なんで自分から言霊を?
和ちゃんは誰に謝ってるの?
訳がわからないまま立ち尽くしていると、寝返りをうった和ちゃんと目があった。
「はぁっ、はぁっ、えっ、ゆっ、唯!?」
息を荒くした和ちゃんは、恋する乙女のようなトロンとした目で、私の顔を見た。
私は何も言えないまま、妙に色っぽい和ちゃんの寝姿を眺めていた。
「ちがっ、これは、違うの、その、えーと……」
慌てて何か言おうとして、和ちゃんはしどろもどろになった。
……と思ったら、急にため息をついて、ムクッと起き上がった。
「はぁっ、誤魔化そうと思っても無駄ね。バッチリ見られちゃってるし。
ねぇ、唯。正直に話すから、私の事を軽蔑しないでね?」
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:16:49.37 ID:Y9zNDNHUO [11/37]
私は黙って、和ちゃんの告白を聞く事にした。
どんな話を聞いたって、私が和ちゃんを軽蔑なんかする訳ない。
「ずっと秘密にしてたんだけどね、私はマゾヒストなのよ。
あっ、マゾヒストって意味、わかるかしら?」
うん、言葉の意味は知ってるよ。
だけど、和ちゃんの言ってる意味が全然わからないよ。
「特定のパートナーがなかなか見つからないから、
ずっと自分で自分を虐めてたんだけど、物足りなくてね。
特にムチ打ちなんて、自分の身体に当てるのは難しいから」
なんか吹っ切れた様子で色々語ってくれるのはいいんだけど、
聞く方にも少しは心の準備をさせてくれないかな?
こう見えて、結構ショックを受けてるんだよ、私。
「でも呪いをかけられて、言霊を唱えれば痛みを感じられるようになった。
しかも外傷が残らないから、後処理の必要も無い。
最初こそ驚いたけど、そう気付いたら嬉しくなっちゃってね。
保健室で何十回も、セルフスパンキングしちゃった。ふふっ」
こんな和ちゃんの素顔、知りたくなかったなぁ。
スパンキングって言葉は意味がわからないけど、
出来れば知らないままでいた方が、いいような気がするよ……。
273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 12:21:15.51 ID:Y9zNDNHUO [12/37]
「そうだ、唯。ひとつ謝らせてもらうわ」
「えっ、何を?」
「呪いは確かに実在するのね。疑って悪かったわ。
この身体で体感してみるまで、イメージだけで語っていた自分が恥ずかしいわ。
澪や律も、素敵な呪い体験ができて良かったわね」
そう言って和ちゃんは、ニッコリと笑った。
私も笑顔で返そうとしたけど、絶対に引きつってるよね、これ。
「わ、私こそ、ごめんね。和ちゃんの気持ちを考えないで、勝手に呪いをかけちゃって」
「唯は謝る必要なんて無いわ。
だって私、呪われて、むしろ感謝してるもの!」
えーっと、今回の目的は、和ちゃんに呪いが存在する事を認めさせる。
だから目的は達成。……達成でいいのかな、本当に?
最初の計画と、だいぶ違う結末を迎えたような気がするけど……。
あー、もういいや。これでOKって事にします!
おわり?
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 12:24:07.56 ID:Y9zNDNHUO [13/37]
番外編その2は、夕方以降だよ!
>>264
同じ人です
本編は台本形式、番外編は地の文形式でお送りします
301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 18:53:07.49 ID:Y9zNDNHUO [14/37]
やべっ、もうこんな時間だ…
…
という訳で番外編その2、前半だけですがどうぞ
302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:54:54.50 ID:Y9zNDNHUO [15/37]
真っ白なテーブルクロスの上に、幾つもの綺麗な皿が並んでいる。
もちろん皿だけじゃなくて、料理も美味しいものばかり。
私がグラスを空けると、メイドがすぐにフレッシュジュースを注ぎに来た。
「お父様、お仕事の調子はどう?
最近、海外に出掛けられる事も少なくなったわね」
「若手の部下が育ってきたから、仕事を任せられるようになったのさ。
紬も近い将来、その一員として活躍してもらわないとな」
お父様はそう言って、ワインを飲み干した。
間髪入れずにメイドがボトルを持って来たが、それを柔らかく断る。
メイドは頭を下げて、元の場所へ戻っていった。
私のお父様は、琴吹グループの実質的な最高責任者だ。
その一人娘である私には、後継者としての役割が期待されている。
とはいえ、能力の無い者に世襲を認めるほど、世間は甘くない。
一日も早く、琴吹グループのトップにふさわしい人物となるために、
私には普通の高校生よりも高いハードルが設定されている。
304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:56:53.39 ID:Y9zNDNHUO [16/37]
「……お父様。実はまた、素晴らしい逸材を見つけたのよ」
「……ほう、今度はどんな人だい?
また先日のように、単なる勘違いじゃないだろうね?」
「前回はごめんなさい。でも、今度こそ本物よ。
いとも簡単に呪術を使いこなす、才気に溢れる2人組を紹介したいの」
「呪術、か。詳しく話を聞かせてもらおうか?」
お父様は身を乗り出して、私の話に興味を示した。
権力者になるほど、科学で説明できない、オカルト的なものを信じる割合が増えるという。
きっと、お父様もその1人なんだ。
桜ヶ丘高校の卒業生には、どういう訳か、大きな成功を収める女性が多い。
学力偏差値だけで見れば、決して全国トップクラスの進学校ではないのに。
お父様はそれを知ってか、私が桜高に入学するとき、一つの課題を与えた。
「将来、琴吹グループの戦力となるような、金の卵を探すんだ。
これは、と思う才能の持ち主がいたら、私に直接紹介してほしい」
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 18:59:03.09 ID:Y9zNDNHUO [17/37]
入学直後、私は立て続けに『才能の持ち主』と出会う事ができた。
1人は澪ちゃん。
ファンクラブを擁するほどの美貌と人徳、そして他に類を見ない言語感覚。
圧倒的なカリスマとなる素質を、澪ちゃんは持っていた。
1人は唯ちゃん。
やる気を出した途端に、凡人の数年間の努力を、あっという間に追い抜いてしまう。
天才としか形容できない、特別なものを持っていた。
当時はまだ中学生だったけど、憂ちゃんも金の卵の1人。
一点集中型の唯ちゃんに対して、万能型の憂ちゃん。
どちらも琴吹グループに欲しい人材だと、お父様も太鼓判を押した。
あっ、りっちゃんには何の才能も無かったみたい。
ごめんなさい、でも平凡は悪い事じゃないの。
どこにでもある平和な家庭を築いて、幸せに過ごしていけるって事なんだから。
306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:02:06.87 ID:Y9zNDNHUO [18/37]
でも、それ以降はなかなか『才能の持ち主』を見つける事ができなかった。
次第に私は焦り始めて、だんだん選球眼が鈍ってきてしまった。
つい先日も、同じクラスのエリちゃんをお父様に紹介したところ、
「日本の伝統工芸を守り抜くほどの人物と聞いたが……。
ただのにわか仏像ファンじゃないか、勘違いも甚だしい」
と、お叱りを受けてしまった。
そんな訳で今回、オカルト研の2人をお父様に紹介するのは、
私にとって名誉挽回・一発逆転の大チャンス!
「呪い、か……。その話が本当なら、彼女たちの力は非常に有用だね」
「この目で実際に見たのよ、すごい効果だったわ」
「よし、その子たちに一度会ってみたいな。
ただし、その時に呪いの効果も一緒に見せてほしい」
「わかった、そのように手配しておくわね!」
久々にお父様に認められるチャンスを迎え、私は浮かれていた。
ここで軽率に、その条件を受け入れてしまった事が、後々で悩みの種となった。
308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:05:31.75 ID:Y9zNDNHUO [19/37]
「……それは光栄な話」
「私たちは喜んで、琴吹の剣となり盾となる」
オカルト研の2人にこの話をしたところ、快諾してもらう事ができた。
普通、お父様に紹介する前に趣旨を伝える事は滅多にない。
事前に伝えておきながら、お父様のお眼鏡に適わなかった場合、とても失礼になってしまうから。
でも今回の場合、そうしないと、呪いの実演なんて出来ないからね。
「……ところで、ひとつ疑問がある」
「呪いの効果を見せるとは、どのようにすればいいだろう」
「えーと、そうね。お父様の目の前で、誰かに呪いをかけてくれないかしら?」
「……つまり、ターゲットもその場にいる必要がある」
「既に呪いのかかった秋山澪、田井中律、真鍋和を除く誰かを、そこに連れて行かなければ」
「その通りね。安心して、ターゲットの手配は私に任せてちょうだい!」
とは言ったものの、そんな依頼を誰にしようか?
呪われてください、と頼まれて、はいそうですか、と引き受けてくれる人なんて……。
校内の友達を、ひとりひとり思い浮かべてみる。
うーん、こんな事、どんなに仲の良い子でも頼みづらい。
ならば、屋敷の使用人やメイド?
いや、立場的に断れない人に、こんな役を押し付けるなんて非道すぎる。
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 19:08:52.69 ID:Y9zNDNHUO [20/37]
色々と考えるうちに、ふと気付いた。人に呪いをかけるには、それなりの大義名分が必要だ。
強い恨みや憎しみであったり、あるいは、誰かを守るためであったり。
そんな大義名分の成り立つターゲットならば、本人の承諾がなくても、遠慮なく呪いをかけられる。
「まったく……。酷い目にあったな、律」
「ちょっとイタズラにしちゃ度が過ぎてるよな。澪もそう思うだろ?」
ちょうど私がそんな事を考えている時に、澪ちゃんとりっちゃんが話し合っていた。
数日前、梓ちゃん・純ちゃん・憂ちゃんによる演奏のせいで、2人とも大変な事になった。
演奏後まともに歩けるようになるまで、確か30分くらいかかったっけ?
「さすがに我慢の限界だ。梓にお灸を据えてやらないと」
「おうっ。ビシッと仕返ししてやらないと、ますます調子に乗るからな!」
……見つけた、大義名分。
「ねぇ、澪ちゃん、りっちゃん」
私は、トーンを抑えた声色と、溢れんばかりの笑顔で話した。
新しい提案をする時は、謙虚かつ自信満々の態度で臨まなければならない。
「その手配、私に任せてくれない? いい考えがあるの」
311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 19:10:24.99 ID:Y9zNDNHUO [21/37]
後半はもうちょっと待って
338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 23:02:35.99 ID:Y9zNDNHUO [22/37]
本当にお待たせしました。投下を始めます。
341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:04:29.64 ID:Y9zNDNHUO [23/37]
土曜日の早朝、私の家の最寄り駅に、梓ちゃんがやって来た。
斉藤の運転する車の窓から、チョイチョイと手招きする。
「おはようございます、ムギ先輩」
「おはよう、梓ちゃん。こんな早い時間から来てもらっちゃって、ありがとう」
「いえ、ムギ先輩のお宅にお邪魔できるなんて嬉しいですから」
梓ちゃんの笑顔に、一瞬だけ胸が痛んだ。
でも澪ちゃんやりっちゃんへの狼藉を思い返すと、情状酌量の余地は無し。
心を鬼にするのよ、私、ファイト!
「もうすぐ着くわ、ここが私の家よ」
「うわぁ、大きいですね……」
車窓から母屋を見上げて、梓ちゃんはぽかんと口を開けた。
澪ちゃんを連れて来た時も、唯ちゃんと憂ちゃんを連れて来た時も、
こんな感じのリアクションだった事を思い出す。
いつか、りっちゃんも家に来てほしいなぁ……。
梓ちゃんの右肩には、ギターケースが掛かっている。
今日は一応、練習の名目で梓ちゃんを呼び出しているからね。
343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:07:36.74 ID:Y9zNDNHUO [24/37]
「大きな音を出すから、地下の部屋を使おうか。こっちに来てね」
「地下室まで備わってるんですね、本当に凄い……」
階段を下りて、廊下の奥の小部屋まで歩く。
教室よりちょっと狭いくらいの小部屋は、防音設備が万全になっている。
窓も無いし、出入り口の扉は一つだけ。おまけに携帯電話も通じない。
これだけ聞くと、都市部の貸しスタジオみたいだけど、ちょっと違う。
「この部屋よ。梓ちゃん、どうぞ」
「わぁ、広々としてますね。あれっ、でも……」
「どうかしたの?」
「なんでベッドがあるんですか。トイレも剥き出しで置いてあるし」
私に促されるまま部屋に入った梓ちゃんは、簡素なベッドと洋式トイレをすぐ発見した。
何も無い空間に、その二つだけ置かれていれば、当然目に付くんだけどね。
「……ムギ先輩。なんかこの部屋、スタジオというよりも、まるで監獄みたいな」
ガチャン
「えっ、ムギ先輩?」
部屋の中にいた梓ちゃんと、部屋の外にいた私は、強化ガラスの扉で隔てられた。
きょとん、とした表情でガラス越しに私を見つめる梓ちゃん。
閉じ込められた、という現状を把握するまで、もう少し時間がかかりそうだ。
344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:11:05.22 ID:Y9zNDNHUO [25/37]
「ごめんね、梓ちゃん」
それだけ言い残して、私は小部屋の前から去った。
強化ガラス越しに、この声は梓ちゃんに届いたのかな?
こちら側からは、ドンドン、と内側から扉を叩く音しか聞こえない。
梓ちゃんは、何やら叫んでいるみたいだったけどね。
「皆さん、お待たせしました」
リビングではお父様と、先に来ていたオカルト研の2人が待っていた。
「やっと来たか、紬。お客様を待たせてしまったぞ」
「……大丈夫」
「それで、うまくいったの?」
「えぇ。ちょっとモニターを付けてくれる?」
モニターの電源を入れると、複数の角度から撮影された、小部屋の様子が映し出された。
梓ちゃんは相変わらず、強化ガラスの扉を叩いていた。
「……小部屋には現在ターゲットが一人だけ。
今からこの小部屋に音楽を流すから、変化を観察してみてね」
346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:13:25.09 ID:Y9zNDNHUO [26/37]
ブーンブンシャカブブンブーン♪
聞き慣れたフレーズを耳にして、梓ちゃんはキョロキョロと辺りを見回した。
もっとも、スピーカーは壁に埋め込まれているから、見つけられないと思うけど。
「目立った変化は無いようだが?」
「えぇ、お父様。だってターゲットは『まだ』呪いにかけられていないから」
「……なるほど。こちらの2人が、今から呪いをかけてくれるのか」
「そういう事よ。じゃあ、お願いしていいかしら?」
オカルト研の2人が、スッと立ち上がった。
けれども、その表情には、まだ若干の躊躇いがあった。
「……最後に確認したい」
「本当に、三種の呪いを複合させてもいいのか」
思わず私は微笑んでしまった。
無感情な人たちだと思っていたけれど、意外に人間らしいところがある。
でも、その覚悟の壁を越えて来てくれないと、琴吹グループの戦力にはなれないの。
「……構わないわ。あなた達の、ベストパフォーマンスを見せて!」
347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:18:07.56 ID:Y9zNDNHUO [27/37]
儀式が始まった。3種類分だから、とても時間がかかる。
意味不明な呪文を唱えるオカルト研の2人を、お父様は真剣な表情で眺めていた。
私はリビングの椅子に座って、紅茶に口を付けた。少しだけ、ぬるい。
ブーンブンシャカブブンブーン♪
「ふにゃぁっ、ひゃぁぁぁぁっ!?」
……どうやら、一つ目の呪いが発動し始めたらしい。
梓ちゃんの様子から察するに『快楽天』かしら。
ブーンブンシャカブブンブンブーン♪
「きゃはははっ、ひゃっ、きゃははははははっっ!?」
……続いて『エンゼルフェザー』も。
二つ目の呪いが、一つ目の呪いを上書きする事はないらしい。
つまり今、梓ちゃんの身体には『悪魔の快楽』と『天使の愛撫』が共存している。
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
「ぎゃはああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……最後は『囚われのロキ』。
しばらく痛いかもしれないけど、すぐに慣れると思うから頑張ってね、梓ちゃん!
350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:21:02.88 ID:Y9zNDNHUO [28/37]
「……終わった」
「中野梓には、三種の呪いがかけられた」
オカルト研の2人は、かなり消耗した様子だった。
呪いを1つかけるだけでも、たぶん相当な体力と精神力を使うはず。
本当に、頑張ってくれた2人に、拍手を送りたい。
「明らかにターゲットの様子が変わったようだね」
「えぇ、お父様。それぞれの呪いについては、そちらの書類に詳しくまとめてあるわ」
「ふふっ。手際が良くなったね、紬。
では申し訳ないが、そろそろ私は行かなければならないので、失礼させてもらうよ」
お父様はこれから泊まりがけで仕事に出掛ける。
帰宅するのは、明日、日曜の夜だ。
「2人とも、本当に素晴らしい才能をお持ちのようだ。
今後ともお付き合いをさせて頂きたい。どうぞ、よろしく」
「……ありがとう」
「こちらこそ、よろしく」
「では、明日の夜に結果を確認させてくれ。頼んだぞ、紬」
352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:24:19.96 ID:Y9zNDNHUO [29/37]
お父様が出掛けた後、役目を終えたオカルト研の2人も帰ってしまった。
帰り際に見た2人の表情から、迷いは消えていた。
依頼された仕事に対する、冷酷なまでの責任感。
琴吹グループに貢献するために、最も必要なものを、わかってくれたんだと思う。
「……さて、梓ちゃんの様子はどうかな?」
モニターを覗き込むと、梓ちゃんは小部屋の真ん中でのたうち回っていた。
エンドレスリピートの『ミツバチ』は、着実に梓ちゃんにダメージを与えているみたい。
特に『囚われのロキ』の痛さは、なかなか耐え難いものかもしれない。
でもね、安心して。その痛さは単独じゃないから。
『快楽天』の気持ちよさと、『エンゼルフェザー』のくすぐったさと、セットなの。
次第に、痛さを感じれば、同時に気持ちよさを感じるような回路が出来上がる。
そうすれば、ずっとずっと気持ちいい、最高の状態になっちゃうわ!
……本音を言うとね。
それくらい壊れてくれないと、困っちゃうの。
お父様は、まだ完全には満足していない様子だった。
お父様は、もっと強烈な効果を呪いに求めているみたい。
だから明日の夜、お父様が帰って来るまでに、もっとグチャグチャになってほしいの。
私も全力で梓ちゃんを壊してあげるから、よろしくね♪
355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:27:25.97 ID:Y9zNDNHUO [30/37]
携帯電話の着信音が鳴った。相手は澪ちゃんだ。
「いや~、ムギ。順調みたいだな!」
「うん、バッチリよ! オカルト研の2人には感謝しなきゃ」
「律なんか興奮しちゃって、呪いも発動してないのに笑いが止まらないみたい」
「あははっ、りっちゃんも喜んでくれてるのね」
澪ちゃんとりっちゃんは、別の場所でモニターの映像を見ている。
音声を流すと大変な事になっちゃうから、もちろんミュートでね。
「ところでムギ、梓の様子を見て、ひとつ気付いた事があるんだ。
ビクンビクン跳ね上がってる時と、わりと落ち着いてる時と、両極端じゃないか?」
指摘を受けて改めてモニターを見ると、確かにその通り。
曲のサビの部分には言霊が多く含まれているから、呪いも多く発動する。
でも、それ以外の部分には言霊がほとんど無いから、何も起こらない。
私は澪ちゃんにお礼を言って、すぐに斉藤を呼んだ。
「『ミツバチ』のCDを10枚と、CDプレーヤーを10個用意して!」
解決策は、至極単純だ。
タイミングをズラして、何重にも曲を流せばいい。
357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:30:03.26 ID:Y9zNDNHUO [31/37]
ブーンブンシャカブブンブーン♪
超マニアック 特攻隊長 本日も絶好調♪
ブーンブンシャカブブンブンブーン♪
胸ドキドキワクワク体ノリノリ♪
ガンバンベ! 踊れミツバチ♪
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
ダッセー飛び方でもいいから上へ飛べデッケー夢持って♪
ブーリブリチャカビガッビガッ♪
ブーンブンシャカブブンブーン♪
草食系とかマジ勘弁♪
「ぎにゃあああっっっ、ぎにゃあああっっっ!!!
あふぅ、あひゃぅぅ、たしゅけてぇぇぇっっっ!!!
やっ、やすみぃ、なしぃ、わっ、むりぃぃぃっっっ!!!」
362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:33:40.65 ID:Y9zNDNHUO [32/37]
10個の音源から『ミツバチ』を流し始めてから、梓ちゃんは一切の休憩なく、
気持ちよさと、くすぐったさと、痛さを感じ続ける事になった。
でも、この状態があんまり長く続くと、ショックで本当に死んでしまうかもしれない。
「……そろそろ、いいかしらね。音楽を全部止めて!」
私の合図から数秒と経たずに、すべての音源のスイッチが落とされた。
私はメイドを一人携えて、地下の小部屋へと向かう。
「梓ちゃん、調子はどう?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
梓ちゃんの身体は軽い痙攣を続けていた。
医者を呼ぶような症状でない事を確認して、メイドに水分と糖分を補給させる。
口の中に押し込まれたものを飲み込むくらいの力は、まだまだ残っている。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって。そろそろ練習を始めましょうか?」
「はぁっ、はぁっ、……えっ?」
メイドが梓ちゃんのギターケースからムスタングを取り出した。
放心状態の梓ちゃんを立ち上がらせ、ストラップを肩に掛けさせる。
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:37:32.99 ID:Y9zNDNHUO [33/37]
「どうしてキョトンとした顔をしてるの、梓ちゃん?
今日は元々、練習するために、私の家に来たんでしょ?」
「えっ、あっ、はい……」
「実は梓ちゃんのために、用意しておいたものがあるの。
純ちゃんのベースと、憂ちゃんのドラムを録音した、練習用テープ!」
「あっ、えーと、ありがとう、ございます……」
梓ちゃんの思考は、まともに働かなくなっているみたい。
それだけ『ミツバチ』10重奏は過酷だったのね。
「今からこのテープを流すから、梓ちゃんはギターとボーカルで合わせるのよ?」
「わ、わかりました……」
「それじゃ、始めるわね。曲は『ミツバチ』よ!」
「……えっ?」
367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:40:22.51 ID:Y9zNDNHUO [34/37]
カンッカンッカンッカンッ
憂ちゃんがスティックを鳴らす音。
この曲は出だしからボーカルが入るから、梓ちゃんは最初から歌わないといけない。
「梓ちゃん、ボーッとしてる間に曲が始まっちゃったわよ?」
「あっ、すみません……」
そうこうしている間にイントロ部分が終わり、ベースとドラムの音がテープから流れた。
この音だけでも呪いが発動して、梓ちゃんの身体はピクピクと反応する。
でも今は練習なんだから。梓ちゃんはギターを弾いて、歌わなきゃ、ダメだよ?
「ほら、ギターボーカル、しっかり頑張って!」
「うぅ……、行き先イケメン、ハイビスカス♪ うぅ……」
「ちゃんと全部の歌詞を言わなきゃ!」
「ブ……、ブーリブリチャカビガッビガッ!!」
自分で発した言霊によって、梓ちゃんの身体はピクンと跳ね上がった。
これに耐えるのも練習のうちだから、仕方ないわね。
368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:43:27.65 ID:Y9zNDNHUO [35/37]
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「情けないわね、梓ちゃん。たった一回、通しで練習しただけじゃない」
「だっ、だって、ムギ先輩……」
「言い訳をするような子は、武道館に行けないよ?
さぁ、もう一回、通しでいきましょうか?」
梓ちゃんの表情は、次第に絶望的なものに変わっていた。
私はそれに気付かないふりをして、練習用テープを再生した。
「38℃の真夏日、うぅっ……。夏祭り、ぐすっ……。こんな日は♪」
「ほらほら、明るい曲なんだから、泣きながら歌っちゃダメよ」
「ひぐっ、ガンバンベ! 踊れミツバチ♪」
「そうそう、その調子よ!」
「ブーンブンシャカ、はぐぅ、ブブンブーン♪」
「もっと笑顔で歌って!」
370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:46:04.61 ID:Y9zNDNHUO [36/37]
およそ30分の練習を終えて、私はリビングに戻って来た。
5分ほど休憩を与えられた梓ちゃんは、床に寝転がって、微動だにしない。
せっかくだからベッドの上で寝ればいいのに。
そして再び、10個の音源から『ミツバチ』が流れ始めた。
梓ちゃんの絶叫が、マイク越しに聞こえる。
大体30分くらいこのまま放置しておいて、その後また練習にしよう。
……30分練習、30分鑑賞。
『ミツバチ』尽くしの素敵なサイクルが完成した。
よし、日曜の夜まで、このサイクルを延々と繰り返す事にしよう。
そうすればお父様が帰って来る頃には、梓ちゃんもすっかり素敵な状態になっているはず。
きっとお父様も喜んでくれるわね!
次の日は月曜だから、学校か。
澪ちゃんとりっちゃんに、イタズラしてごめんなさい、って謝ってもらわないと。
その後、純ちゃんと憂ちゃんと一緒に演奏して、練習の成果を見せてもらおう。
耳栓をするから音は聞こえないだろうけど、澪ちゃんとりっちゃんも喜んでくれるわ!
「だから、頑張ってね、梓ちゃん♪」
「にゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
おわり!
371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 23:49:59.32 ID:Y9zNDNHUO [37/37]
これで本当に終わり!
本編、番外編ともに支援ありがと!
ドM和ちゃんまで書いて終わらせる筈だったのに、みんな梓に仕返ししろって言うから続けてみたら、えらい鬼畜になってしまった
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コメント
ま、中野は調子に乗りすぎだな。
No title
中野ざまあwww
近頃の中野は腹黒な設定だね
No title
「りっちゃんには特別な才能がなかった」ってところが地味にキツいわww
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