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女「君はだぁれ?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:10:18.00 ID:tjFGxLSQO [1/37]
女「誰なの?」

鏡「……」

女「おーい」

鏡「……」

女「どうして私の真似をするの?」

鏡「……」

女「ねぇ、聞いてる?」

鏡「……」

女「……おーい」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:13:04.00 ID:tjFGxLSQO
女「お腹空いた」

鏡「……」

女「ここに閉じ込められてからどれだけ経ったっけ……?」

鏡「……」

女「……君、顔色悪いよ? 大丈夫?」

鏡「……」

女「何か答えてよ」

鏡「……」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:15:30.96 ID:tjFGxLSQO
女「あれ……ここに来る前、私、どこにいたっけ?」

鏡「……」

女「私、誰だっけ?」

鏡「……」

女「ねぇ、そろそろ答えてよ。君は誰?」

鏡「……」

女「……誰なの?」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:17:05.51 ID:tjFGxLSQO
女「どうして君は泣きそうな顏をしているの?」

鏡「……」

女「そんな顏されると、私も悲しくなっちゃうよ」

鏡「……」

女「お願い、泣かないで」

鏡「……」

女「……お願いだから」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:19:57.58 ID:tjFGxLSQO
女「ほら、これで涙を拭いて」

鏡「……」

女「あれ?」

鏡「……」

女「君もおんなじハンカチ持ってるんだね」

鏡「……」

女「どうして私に差し出してるの?」

鏡「……」

女「泣いているのは君でしょう?」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:23:40.58 ID:tjFGxLSQO
女「泣き止まないね」

鏡「……」

女「君は泣き虫さんなのか」

鏡「……」

女「よしよし、泣かない泣かな……」

鏡「……」

女「ねぇ」

鏡「……」

女「どうして私を撫でようとするの?」

鏡「……」

女「どうして君に手が届かないの?」

鏡「……」

女「……どうして?」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:26:10.65 ID:tjFGxLSQO
女「そうか。君はガラス越しにいるんだね」

鏡「……」

女「だから触れないのか」ペタペタ

鏡「……」

女「うふふ。同じことしてる。君もようやく気がついたの?」

鏡「……」

女「あ」

女「……笑った」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:29:18.47 ID:tjFGxLSQO
女「私、とても寂しかったような気がするの」

鏡「……」

女「君はどうやら、口がきけないようだね」

鏡「……」

女「どういうわけか分からないけど、君はそっちの部屋から出られないんでしょう」

鏡「……」

女「奇遇だけど、私もこの部屋から出られないんだっ」

鏡「……」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:33:01.18 ID:tjFGxLSQO
女「とりあえず一人きりじゃなくて良かった」

鏡「……」

女「こんな狭苦しい部屋に一人だけなんて……」

鏡「……」

女「……想像しただけで気が狂ってしまいそう」

鏡「……」

女「ふふ。君がいてくれて良かった」

鏡「……」

女「君も、私と同じ気持ちだと良いな」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:36:28.74 ID:tjFGxLSQO
女「せめて、君の名前が分かればなぁ」

鏡「……」

女「私の名前? 私は……」

鏡「……」

女「あれ? 私は……」

鏡「……」

女「まぁ、名前なんてどうでも良いや」

鏡「……」

女「どうでも、良いもん……」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:39:23.76 ID:tjFGxLSQO
女「……外から足音が聞こえる」

女「それに、話し声も……」

女「……っ」

女「怖い、怖い、怖い!」

 「     」

女「来るな! 来ないでぇ!」

 「    」

女「いやああああああ!」

 「  」

 「……」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:41:57.49 ID:tjFGxLSQO
女「はっ、はっ、はぁ……っ」ブルブル

鏡「……」

女「あは……は、君も、怖いの?」

鏡「……」

女「外の誰かが、怖いの?」

鏡「……」

女「情けないよね、私たち」

鏡「……」

女「……大丈夫。私は、貴方の味方だから」

鏡「……」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:44:47.67 ID:tjFGxLSQO
女「どうしてだろう、君は怖くないんだ」

鏡「……」

女「君も私は怖くないみたいだね」

鏡「……」

女「君だけだよ、私の味方は」

鏡「……」

女「このガラスがなかったら、君のそばへ行けるのに」

鏡「……」

女「……行けるのに、ねぇ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:47:54.80 ID:tjFGxLSQO

……

女「君は、どんどんやつれていくね」

鏡「……」

女「何か、してあげたいよ」

鏡「……」

女「ねぇ。……お願い、死なないで」

鏡「……」

女「君が死んだら私は独りになっちゃうの」

鏡「……」

女「独りなんて、たえられないよ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:53:08.66 ID:tjFGxLSQO
女「そうだ。助けてあげる」

鏡「……」

女「そこから出してあげるよ」

鏡「……」

女「待っててね。ガラスを割れそうな物……ここにあったかなぁ?」キョロキョロ

鏡「……」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:56:37.25 ID:tjFGxLSQO
女「これなんか、どうかな? 小さいけど、結構固いみたいだし」

鏡「……」

女「あれ? どうして君もその白いの持ってるの?」

鏡「……」

女「君のいる場所とここは似ている上に、置かれてる物も同じみたいだね」

鏡「……」

女「私たち、境遇や環境は良く似ているみたいだね」

鏡「……」

女「まぁ、私は君ほど泣き虫じゃないけれど」

鏡「……」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 21:59:03.68 ID:tjFGxLSQO
女「じゃあ行く……よ?」

鏡「……」

女「どうして君もそれを振り上げるの」

鏡「……」

女「危ないから下がってて」

鏡「……」

女「……下がってよ」

鏡「……」

女「これじゃあ、助けてあげられないよぉ……」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:03:48.49 ID:tjFGxLSQO
女「もしかして、君も私を助けるつもりなの?」

鏡「……」

女「あぁ……ああ、そうか」

鏡「……」

女「このガラスを割れても、この区切られた空間からは出られないじゃないか!」

女「君を、助けることなんて……できないじゃない……」ペタン…

鏡「……」

女「あはは、君もこのことに気づいたみたいだね」

鏡「……」

女「……そんな顔、しないで?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:10:22.63 ID:tjFGxLSQO
女「でも」

女「それでも、君に触れてみたい」

鏡「……」

女「……この隔たりがなくなれば、君に触れられるんだ」

鏡「……」

女「助けられないけど、触れることができるんだ」

鏡「……」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:12:39.78 ID:tjFGxLSQO
女「君は、それを望んでる?」

鏡「……」

女「私と触れることを望んでいるの?」

鏡「……」

女「ねぇ、いい加減に答えてよ」

鏡「……」

女「答えて……答えてよおおお!」

鏡「……」

女「お願いだから……答えて……」

鏡「……」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:14:30.21 ID:tjFGxLSQO
女「また泣くんだね」

鏡「……」

女「何も答えないのに泣くんだね」

鏡「……」

女「嫌だ。君なんて、嫌いだ」

鏡「……」

女「……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:17:19.78 ID:tjFGxLSQO
女「……前にも」

鏡「……」

女「ずっと前にも、君に同じようなことを言ったような気がする」

鏡「……」

女「嫌いって、大嫌い……って」

鏡「……」

女「……ごめんね」

鏡「……」

女「君がそんな顔をしているのを見るのは、やっぱり、つらい」

鏡「……」

女「……つらいの」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:20:27.49 ID:tjFGxLSQO
女「ここから出してあげる」

鏡「……」

女「君の答えなんて聞かない」

鏡「……」

女「どうせ答えないでしょう?」

鏡「……」

女「ほら、そうやって困った顔をするだけじゃない」

鏡「……」

女「……じゃあ、やるよ」スッ

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:21:11.74 ID:tjFGxLSQO



 ――がしゃん。





33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:26:46.56 ID:tjFGxLSQO
女「……え」

女「き、消えた……?」

女「君、君。どこにいるの?」

女「何で、どうして?」

女「ガラスを割ったのに」

女「君と触れ合える筈なのに」

女「君と、君と一緒に……そんな、どうして……」

女「……あぁ」

女「あぁあぁあぁぁあぁっ!!」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:29:43.16 ID:tjFGxLSQO
女(寂しい)

女(君がいない。いなくなった)

女(触れたいなんて思わなければ良かった)

女(会いたいなんて思わなければ良かった)

女(ガラス越しに話すだけで満足すれば、良かった)

女(……会いたい)

女(ガラス越しで良い。触れられなくても良い)

女(会いたいよ)

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:35:18.84 ID:tjFGxLSQO
女「いたい……」

女(割れたガラスで、手首がぱっくりだ)

女(この赤くてぬるぬるした水は何だろう)

女(……何だか、ぼんやりする)

女(悪い気は、しない)

女(怖くも、何ともない)

女(……ただ、寂しいだけだよ)

女「君、どこにいったの?」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:38:57.58 ID:tjFGxLSQO
女(変なの。ふわふわするよ)

女(それに、何か忘れている気がする)

女(忘れていることも、忘れそうだ)

女(君のことも、忘れるのかな)

女(それは、少し、嫌だなぁ)

女(今気がついたの。私ね、あなたのことが好きだったの)

女(嫌いになったつもりだったけど、好きだったの)

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:42:26.63 ID:tjFGxLSQO
女「……」ドサ…ッ

女(なんとなくだけど、分かるよ。君のこと)

女(結局、会話はできなかったけれど)

女(君はね)

女(寂しがり屋で)

女(泣き虫で)

女(弱くて)

女(まるで――私みたいに)

女(あぁ、そっか)

女(私は、私だったんだ)

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:45:51.07 ID:tjFGxLSQO
女(赤いの、いっぱい流れてる)

女(ずっとずっと、ずっと前にもさ。同じようなことがあったような気がする)

女「あ……」

女(床に散らばったガラスの欠片が、きれい)

女「……へへ、からだ、うまくうごかない」ズル…ッ ズル…

女「きれい」

女「……あ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:47:38.97 ID:tjFGxLSQO
女(床に散らばったガラスの破片)

女(粉々になったそこに)

女(小さな君がいた)

女(無数の君がいた)

女(沢山になった君は、みんなこっちを見ている)

女(赤く濡れながら、こちらを見ている)

女「えへへ……」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:51:17.92 ID:tjFGxLSQO
女「きみ、たくさんにふえたねぇ」

鏡「……」

女(私は君たちを掻き抱く)

女(なんだか、手が痛い気もするけど……気のせいだろう)

女(君はやっぱり喋らない)

女「でも……」

女「……ようやく君を抱き締められたよ」

鏡「……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:53:12.72 ID:tjFGxLSQO
女「……ね……君は……」

鏡「……」

女「ふふ……。……っと……だよ?」

鏡「……」

女「ありが……と……」

鏡「……」

女「ばい……ばい……」

鏡「……」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:54:51.24 ID:tjFGxLSQO
女「……」

鏡「……」

女「……」

君「……」

女「……」

君「…………」
君「………」
君「……」
君「 」



君「」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/18(水) 22:57:13.94 ID:tjFGxLSQO




―おわり―




47 名前:>>1[] 投稿日:2010/08/18(水) 23:01:09.82 ID:tjFGxLSQO [36/37]
短くまとめようとしたら、怪文みたいになってしまった。

読んでくれてる人がちょっといて嬉しい。ありがとう。

51 名前:>>1[sage] 投稿日:2010/08/18(水) 23:18:10.46 ID:tjFGxLSQO [37/37]
読み返してみてあまりにも意味不明だったので、軽い解説蛇足を一つ

・鏡を割った白くて固い物は女自身の骨

コメント

No title

不思議な感じだ

なにこれ
何か怖い

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