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幼なじみ「お、こんなところに魔法使いが」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:33:37.34 ID:bTau4vPoP [1/78]
男「あ?」
幼なじみ「ニフラムニフラム」
男「?」
幼なじみ「レムオルレムオル」
男「なにしてんのお前?」
幼なじみ「トヘロストヘロス」
男「……」
幼なじみ「三十路童貞」
男「しね」
男「あ?」
幼なじみ「ニフラムニフラム」
男「?」
幼なじみ「レムオルレムオル」
男「なにしてんのお前?」
幼なじみ「トヘロストヘロス」
男「……」
幼なじみ「三十路童貞」
男「しね」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:37:58.05 ID:bTau4vPoP [2/78]
幼なじみ「いい加減彼女でも作れば」
男「うるせぇできたら作ってるよ」
幼なじみ「選り好みしすぎなんじゃない」
男「それはお前だろ。俺には選ることすらできないんだよ」
幼なじみ「顔はいいのにね」
男「……そうでもないだろ」
幼なじみ「うんお世辞」
男「しね」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:42:23.07 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「あれだよ、合コンとか行けば」
男「お前俺のコミュ力知ってて言ってるだろ?」
幼なじみ「あれはひどかったなー」
男「おいやめろ」
幼なじみ「成人式の後に仲いい人で集まってさ」
男「やめてくれ」
幼なじみ「『あれ? 男くん、なんでいるの?』」
男「……」
幼なじみ「私が慰めてやったじゃないか」
男「大笑いしてたのは誰だ」
幼なじみ「男が帰った後、誰も男について触れてなかったよ」
男「……」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:47:52.95 ID:bTau4vPoP
男「なんなのお前俺を自殺させたいの?」
幼なじみ「なに物騒な事言ってるんだよ、引きこもりがちな幼馴染の様子を見に来ただけじゃないか」
男「お前のせいで余計引きこもりそうだよ」
幼なじみ「そんなこと言いながら、久々に話す異性にドキドキしてるんだろ?」
男「……三十路じゃなぁ」
幼なじみ「そんないつまでも高望みしてるから童貞なんだよ」
男「歳をとるたびに理想が高くなっていく」
幼なじみ「悲しいね」
男「哀しいよ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:53:40.94 ID:bTau4vPoP
男「で、マジで何の用? お前に会うのそれこそ年単位ぶりな気がするんだが」
幼なじみ「=年単位男は異性と話していなかったんだな」
男「……否定はしない」
幼なじみ「おや、やけに素直だね」
男「反論してたら話が進まんからだろうが!」
幼なじみ「やれやれ、これだから魔法使いは余裕がなくていけない」
男「あんだよ!」
幼なじみ「まぁまぁ、落ち着いて」
男「誰のせいだ!」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:58:57.96 ID:bTau4vPoP
男「……で?」
幼なじみ「お茶が飲みたいなぁ」
男「へいへい」
幼なじみ「悪いね、催促したみたいで」
男「最速で話して頂きたいね、個人的には」
幼なじみ「私は君を離したくないんだよ」
男「気味が悪いことを言うな。ほら、麦茶だ」
幼なじみ「ばいばい」
男「帰るのかよ!」
幼なじみ「はい、お前の負け」
男「いや脈絡なさすぎだろ!」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:03:46.58 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ふー」
男「おいおい寝っ転がるな汚いぞ」
幼なじみ「それもそうだな」
男「ふぅ」
幼なじみ「で、だ」
男「ああ」
幼なじみ「泊めてくれ」
男「……やっぱそれか」
幼なじみ「私が君を頼るなんてこれくらいしかないだろ」
男「まぁそうなんだが」
幼なじみ「私の布団はどこだ」
男「あっちの押し入れ」
幼なじみ「ほいきた」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:09:33.92 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「おはよう」
男「おう、じゃあ俺は仕事行ってくるから」
幼なじみ「いや私もなんだが」
男「え、お前有給取ってたんじゃないのかよ」
幼なじみ「切れた」
男「そりゃあれだけ休めばなぁ」
幼なじみ「ちょっと待っててくれ。着替える」
男「お前荷物持ってきてなかったんじゃ……あれ」
幼なじみ「どうした」
男「どうしてここにお前のスーツが」
幼なじみ「気づかなかったのか?」
男「しかもこれ、定期的にクリーニング出してるだろ」
男「ああ、だからたまに部屋の配置変わってたんだな……」
幼なじみ「惚けてるな、行くぞ」
男「はいはい」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:13:13.41 ID:bTau4vPoP
男「あー、疲れた。いつの間にか俺以外の同期はみんな出世しちまったなぁ」
男「……まぁ交流ないんだけど」
男「ん、また結婚しましたってハガキか……」
男「結婚式には呼ばないんだよな」
男「まぁ、呼ばれても行きたくないけど」
男「……」
男「あれ、あいつまだ帰ってないんだ」
男「……」
男「風呂入るか」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:14:56.94 ID:bTau4vPoP
男「……」
男「帰ってこないな」
男「……」
男「いやいやなんで俺があいつを待つ必要があるんだよ」
男「もう寝るか」
男「……」
男「もう少しだけ」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:19:25.71 ID:bTau4vPoP
男「朝か……」
男「あ、携帯の電池切れてやがる」
男「充電器充電器」
男「あった」
男「……」
男「ん、新着メール」
『送信者:幼なじみ』
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:22:49.86 ID:bTau4vPoP
『件名:なし』
『本文:昨日はありがとう。もう、大丈夫だから』
男「……」
男「そうか、もう、大丈夫なんだ」
男「……」
男「くそっ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:28:20.13 ID:bTau4vPoP
妹「おっす、お兄ちゃん」
男「お、久しぶりだな」
妹「お兄ちゃんは相変わらずだね」
男「うっせ」
妹「立ち話もなんだから、部屋に入りましょうか」
男「俺ん家だ」
妹「きったねー」
男「おい、触るな。弄るな。あ、あ、ああー」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:32:46.36 ID:bTau4vPoP
妹「お兄ちゃん、もういい歳なんだからこんなのばっか買ってないでさ」
男「あ、あ、おい、これ、プレミア。あ、これは、ヤフオクで……ああああ」
妹「もっとさ、外を見ようってあたしは言いたかったわけよ」
男「え、おい、これはあれだぞ、カズフサ先生のサイン本で、え?」
妹「だからさ、一度真っさらにしちゃえばいいかなーって」
男「……」
妹「……」
男「……」
妹「ごめんなさい」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:37:04.73 ID:bTau4vPoP
男「いや、いいんだ……こんなとこに置いてた俺が悪いんだ」
妹「ほんとーにごめんね」
男「いくら妹でも、コップ片手にこれらのものを弄るとは思ってなかった……」
妹「ごめん」
男「うん全然妹は悪くない。悪くない。悪いのは全て俺の」
妹「ごめんって言ってるでしょぉ!」
男「お前は悪くないって言ってるだろぉ!」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:46:23.23 ID:bTau4vPoP
男「ふぅ……ふぅ……」
妹「はぁ……はぁ……」
男「ヘイマイシスター、ちょっと落ち着こうぜ」
妹「あ、あたし……は……はぁ、はぁ……落ち着いて、るよ」
男「それならお前のその手にしているメガネを離せぇぇぇ!!!」
妹「いくらあたしでも自分からアドバンテージを手放すような愚行はできないかな?」
男「わかった、わかったから。レンズに指を近づけるなぁぁぁ!!!」
妹「そいつはお兄ちゃんによるんじゃないかな……」
男「よし、よし、そのままだ。お前の要求を聞こう」
妹「いっぱいのお茶と、ささやかなお茶菓子。ただそれだけだよ、お兄ちゃん?」
男「ただちに用意いたしまする!」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:54:43.75 ID:bTau4vPoP
妹「うーん、マカロンおいしーいー」
男「とっときだったのに……」
妹「でもこの紅茶は減点だね」
男「一人暮らしの家にティーバッグ以外の紅茶があるかってんだ」
妹「む」
男「ったく、我慢しろよ」
妹「まったく、モノ質がなくなったら強気なんだから」
男「メガネはモノじゃねぇ! 体の一部だ!」
妹「コンタクトにすればいいのにー」
男「めどい」
妹「そういうところ適当だからモテないんだよ」
男「……」
妹「あ、ごめん、うそ。うそだってばー、本気で落ち込まないでよ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 17:52:33.43 ID:bTau4vPoP
妹「いやーお兄ちゃん。変わらないねー」
男「お前もな」
妹「まだ引きこもってんの?」
男「うるさいわ」
妹「出かけようよ」
男「仕事で外でてる」
妹「仕事以外でもさー」
男「別に行きたいところないんだよ」
妹「だから腐っちゃうんだよ」
男「腐ってるか? 俺」
妹「むしろ臭い」
男「あ?」
妹「こりゃ失敬」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 17:59:44.15 ID:bTau4vPoP
男「……」
妹「だから落ち込まないでよー。臭いのはうそだってー」
男「落ち込んどらんわ」
妹「ならいいんだけど」
男「……」
妹「ねぇねぇ」
男「あん?」
妹「実際のところ、彼女とかできてないの?」
男「あー」
妹「お、その反応は、なんかあった?」
男「いや、別に」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:04:13.67 ID:bTau4vPoP
妹「とか言っちゃって、なんかあったんでしょー?」
男「なんでそんなに絡んでくるんだよ……」
妹「自分の肉親の恋愛事情ってやっぱ気になるもんでしょー」
男「親でもか?」
妹「うぇ」
男「な?」
妹「……きょうだいと親は違うでしょ」
男「まぁな」
妹「お兄ちゃん今までそんな話まったくなかったしねー」
男「……まぁな」
妹「で、で、どうなの?」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:06:49.29 ID:bTau4vPoP
男「なんもねぇよ」
妹「……ふーん」
男「なんだよその顔は」
妹「べっつにー」
男「なんか文句あるなら言えよ」
妹「ないよー」
男「ふん」
妹「そっかー、なんもないんだ?」
男「何も無い」
妹「残念。あ、お兄ちゃんが前読んでた漫画、新刊出てる?」
男「ん、そっちの本棚」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:10:15.01 ID:bTau4vPoP
妹「あはははは」
妹「ぷっ……くくっ……」
妹「あひゃひゃひゃ」
男「漫画くらい静かに読め」
妹「だって面白いんだもーん」
男「ったくいい歳して」
妹「お兄ちゃんがそれを言う?」
男「人の振り見て我が振り直せ、だ」
妹「それこそお返しするよ」
妹「……」
妹「あはははは」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:12:03.52 ID:bTau4vPoP
妹「そいじゃ、またねー」
妹「引きこもってないで、ちゃんと外出るんだよー?」
男「おう、じゃーなー」
男「帰ったか」
男「あいつといい、なんで急に俺ん家に来るんだ?」
男「そんなに家から出なかったかな……」
男「たまには出かけてみるか……」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:19:00.80 ID:bTau4vPoP
男「とは言っても仕事が忙しいわけで」
男「家に引きこもってるというか仕事場に引きこもってるよなぁ」
上司「何ぶつぶつ言ってるの?」
男「あ、すまん」
上司「……」
男「なに?」
上司「一応、私、上司。あんた、部下」
男「どこのインディアンだよ」
上司「まぁいいんだけどさ、いい加減男も真面目に仕事しなさいよ」
男「自分としては真面目にやってるつもりなんだがなー」
上司「真面目……? あんた、自分のPCにどれだけ隠しフォルダ作ってるのよ」
男「息抜きがなきゃやってられねーんだよ」
上司「隠しフォルダなんかさ、管理権限上の私のPCからとか丸見えなんですけど」
男「げ、マジで?」
上司「気付かなかったの? アホじゃないの?」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:22:19.30 ID:bTau4vPoP
男「俺、PC詳しくねーんだよ」
上司「じゃあなんでこの仕事やってのよバカ」
男「就活氷河期でさ、仕方なくここに」
上司「そういうことは思ってても言うな」
男「すまん」
社員「あのー上司さん」
上司「ん、どうしたの」
社員「少しお聞きしたいことが」
上司「わかった。男、ちゃんと仕事しなさいよ」
男「はい」
男「ふー、やっと行ったか」
男「さて、このUSBメモリを……」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:24:33.70 ID:bTau4vPoP
男「昼休み、暇だなぁ」
男「あれ、タバコ切れた」
男「コンビニ行くか……」
男「……」
男「ん、あれは」
男「幼なじみ……」
男「やっぱり、そういうことか」
男「……会社もどろ」
男「……」
男「あ、タバコ忘れた」
男「……くそっ」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:30:03.14 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ということで」
男「……」
幼なじみ「ヨリ、戻しましたー」
男「……はぁ」
幼なじみ「なんだよその溜息は。もっと喜べよ」
男「喧嘩するたびに、俺ん家来るもんなぁお前」
幼なじみ「……いーじゃん」
男「中学生の時の、お前の初彼氏の時からそうだったもんなー」
幼なじみ「いやー、あいつは嫉妬深かったな。マジで」
男「そんな彼も今や二児の父か」
幼なじみ「シングルファザーだけどな」
男「ああ、あん時はひどかったらしいな」
幼なじみ「まぁでも立派にやってるみたいだぞ」
男「ならよかった」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:33:10.17 ID:bTau4vPoP
男「んで、今日はなんだよ。ヨリ戻したんだろ?」
幼なじみ「いや、男に迷惑かけちゃったかなって思ってさ」
男「そんなのいつものことだろ」
幼なじみ「おっしゃる通り」
男「早くだぁのとこにでも戻ってらっしゃい」
幼なじみ「だぁ言うな」
男「でもあれだな、よく仲直りできたな」
幼なじみ「それは、あれよ、私の愛というか」
男「どうせ、お前がつまらない誤解をしたんだろ?」
幼なじみ「……」
男「なんだよ」
幼なじみ「べっつにー」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:35:56.66 ID:bTau4vPoP
男「はーん、そりゃ、彼のほうが悪いかもな」
幼なじみ「だろ? そこを私の深い愛というか慈愛の心でだな」
男「お前は自愛じゃなくて自愛だろ」
幼なじみ「そして男は自慰」
男「黙れ」
幼なじみ「そんなわけで、私はだぁのところに戻ります」
男「……」
幼なじみ「黙るなよ! 恥ずかしいだろ!」
男「そういやさ」
幼なじみ「なに」
男「お前の……」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:38:18.76 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「……」
男「お前の」
幼なじみ「あ、ごめん電話」
男「……」
幼なじみ「うん、うん、そう」
幼なじみ「え、うん、わかった」
幼なじみ「ちょっと、急用」
幼なじみ「ごめんね、また今度」
男「おう」
幼なじみ「じゃあね」
男「おう」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:44:13.06 ID:bTau4vPoP
男「……」
上司「おい、男。静かだと思ったらまた居眠り……ん?」
男「……」
上司「男が真面目に仕事をしている……」
男「なんですか」
上司「敬語!? ど、どうしたの、男。風邪? 下痢? 口蹄疫?」
男「口蹄疫は人間に感染しません。多分」
上司「どうしたのよ急に真面目に仕事して……」
男「上司さんが真面目にやれって言ったんじゃないですか……」
上司「うん、真面目にやるのはいいんだけど……」
男「ならいいじゃないですか」
上司「そこ、L23から2つずつ、ずれてる」
男「あ」
上司「今日、残業ね……」
男「ああ……」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:47:26.05 ID:bTau4vPoP
男「うまくいかないな……」
後輩「男さん、残業ですかー?」
男「ああ、君もかい」
後輩「いえいえ、私はもうとっくに終わっちゃいましたよー」
男「ああ、そうかい。じゃあなんで残ってるの?」
後輩「ちょーっと野暮用がありましてねー」
男「あー、そう」
後輩「はいー」
男「……」
後輩「……」
男「帰らないの?」
後輩「ちょっと野暮用がありましてー」
男「……?」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:50:44.37 ID:bTau4vPoP
男「……」
後輩「……」
男「あの」
後輩「はいー」
男「野暮用って、なんだい……?」
後輩「あのですねー、ちょっと男さんに聞きたいことがあるんですよー」
男「……うん」
後輩「……妹ちゃん、元気ですか?」
男「……妹? 元気だけど、君、連絡取ってないの? 君ら、大学の同級生だっただろ?」
後輩「いやー、取ってるんですけどー」
男「??」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:57:26.71 ID:bTau4vPoP
後輩「妹ちゃんの旦那さんいるじゃないですかー」
男「あ、ああ、旦那くんね」
後輩「その旦那さんがー。ちょっとー」
男「……言いたいことがあるなら、はっきり言え」
後輩「私、その旦那さんと寝ちゃったんですよー」
男「!!」
後輩「あっちが迫ってくるからー。どうしてもって言うんでしょうがなくー」
男「それを俺に報告して……どうするつもりだ?」
後輩「いえー、べつにー。なんでもないんですけどー」
男「そうか……ならさっさとどこかに消えてくれ」
後輩「はーい。消えまーす」
男「……」
男「くそっ!」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:04:54.79 ID:bTau4vPoP
はは、そういうことか。
幼なじみも妹も、俺ん家に来たのは自分の男への当て付けか。
そうだよな、そんなこともなけりゃ俺になんて会いに来る理由なんてない。
俺は場の空気というものが読めないし、人を楽しませることもできない。
顔も良くないし、加えて金もないし経験もないしの余裕もないときたもんだ。
今だって、妹の心配をしなければいけないはずなのに、妹の旦那に嫉妬すらしている。
妬み嫉み僻み恨み辛み苦しみ憎しみで心が張り裂けそうだ。
誰か
助けてくれ
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:09:04.61 ID:bTau4vPoP
女「……」
男「……」
女「こんなところで、何をやっているの?」
男「……別に」
女「そんな姿で、……うっ」
男「……」
女「くさいわ」
男「そりゃゲロまみれだからな」
女「……」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:12:11.07 ID:bTau4vPoP
男「……行けよ」
女「……」
男「俺を見るなよ」
女「……」
男「消えろよぉ!」
女「……」
男「みんな消えろよぉ!」
女「合格」
男「……あ?」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:15:59.84 ID:bTau4vPoP
女「行きましょう」
男「お、おい」
女「あなたの望む世界へ」
男「え?」
女「あなたも、魔法使いなんでしょう?」
男「え? いや、え?」
女「さぁ、あなたの人生は今から始まるのよ」
男「な、なに言ってるんだ? あんた?」
女「ブツブツブツ」
男「お、おい」
女「さぁ、始めましょう」
男「う、うわぁぁぁぁぁ!? と、飛んでる!?」
女「この世界を根本から揺るがす旅を」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:22:56.67 ID:bTau4vPoP
女「ここが、魔法世界─マジックワールド─よ」
男「……まんまじゃねーか」
女「何か言った?」
男「いえ、行ってません! だから落とさないで!」
女「そう。おほん、あなたは魔法使いの素質はあるみたいだけど今まで何も学んできていないのね」
男「いや、魔法使いってのは、隠語、っていうか……ぶっちゃけどうて」
女「え? 魔法使いじゃないの?」
男「魔法使いです魔法使いです! 揺らさないで!」
女「そう、ならいいのだけど。あなたはここで魔法についていろいろ学んでもらうことになります」
男「いったいどうなってるんだ……」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:43:32.58 ID:bTau4vPoP
男「ここが、魔法世界……」
男「……魔法世界ってなんだよ」
男「いったい何がどうなってるってんだ」
男「あー」
男「牛だ……」
男「羽が生えてる……」
男「なんで牛に……」
男「鶏が飛んでる……」
男「……」
?「あら?」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:49:15.25 ID:bTau4vPoP
男「うおっ! 小人?」
?「小人(ホビット)とは失礼ですね。私(わたくし)は妖精(フェアリー)です」
男「フェアリー……」
妖精「見ない顔ですね」
男「……」
妖精「どうしてあなたのようなしょぼくれた中年がこんなところに?」
男「しょぼっ……いや、自分でもよくわからないんだが……」
妖精「そうですか」
男「うん……あの、ここはいったいどんなところなん」
妖精「それでは、ごきげんよう。見窄らしい殿方様」
男「……妖精は気まぐれ、か」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:52:44.69 ID:bTau4vPoP
女「あら、こんなところにいたの」
男「落としたのはあんたでしょーが!」
女「さぁ、こちらへいらっしゃい」
男「うおっ、一瞬で景色が変わった!?」
女「これが移動─ムーヴ─の魔法です」
男「まんまじゃん、ってか最初から使えよ」
女「なにか?」
男「うっ、すみません……で、ここどこですか」
女「ここは、魔法学校─マジックスクール─です」
男「……」
女「なにか」
男「いいいいえ!」
女「今日からあなたはここで学んでもらうことになります」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:57:32.76 ID:bTau4vPoP
男「え?」
女「聞こえなかったのですか。あなたは今日から──」
男「いや、聞こえましたけど、でもあの、ここって学校ですよね?」
女「そうです」
男「えっと、僕、あれなんですけど、しょぼくれた中年というか」
女「わかっています」
男「あ、あー、あれですか、いろんな年代が通ってる定時制高校みたいな」
女「定時制がよくわかりませんが、ここに通っている生徒はみな十代の子供たちです」
男「じゃあ俺はどうすればいいんですかぁ!」
女「教師をしてもらいます」
男「え」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:59:51.51 ID:bTau4vPoP
男「先生、ですか?」
女「はい」
男「いや無理ですって! 僕、教員免許とか持ってませんし!」
女「特例で私が発行しましょう」
男「そういう問題でもなくて、そもそも魔法のことまったくわかりませんし!」
女「生徒と一緒に学んでいきましょう」
男「ええー……マジすか」
女「まじっくです」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:03:17.93 ID:bTau4vPoP
女「ここが教員寮です。詳しいことは明日話します」
男「は、はぁ……」
女「明日に備えてよく眠るように。では」
男「……」
男「……」
男「勢いのあるおばあちゃんだ……」
男「無理やり流されてしまった……」
男「今日はもう疲れた。寝よう……」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:07:16.80 ID:bTau4vPoP
幼女「おはようございます」
男「うん……朝か……」
男「やべっ、仕事」
幼女「はい、仕事ですね」
男「……」
幼女「急いでください。着替えはそちらです」
男「あの」
幼女「はい」
男「どなたですか」
幼女「女ですが」
男「え」
幼女「え」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:11:23.30 ID:bTau4vPoP
男「なるほど、外に行く時はお婆さんの格好をしていると」
幼女「ええ、外ではこの格好だと怪しまれますので」
男「なるほどー。……なるほどですませられるようになっている自分は怖い」
幼女「普段は、というかこの格好が私本来の姿ですのでお間違えのないよう」
男「……ちなみにおいくつで」
幼女「なにか?」
男「いえ」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:15:25.22 ID:bTau4vPoP
幼女「こちらが職員室です」
教師男「学園長! 今までどちらにお出かけになっていたんですか!」
教師女「仕事が溜まってるんですよ!」
教師男「ほら、早くしてください!」
教師女「その放浪癖、改めてくださいね!」
教師男「さあ!」
教師女「さあ!」
男「……大人気ですね」
幼女「ふぇ~」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:20:37.45 ID:bTau4vPoP
?「こんにちは」
男「あ、はい、こんにちは」
教頭「わたくし、当学園の教頭でございます。以後お見知りおきを……」
男「ど、どうも……」
教頭「あなたが噂の新任教師ですかな?」
男「え? あ、はい、どうやらそうらしいです」
教頭「ははは、面白いお方だ」
男「あ、あはは」
教頭「ここはそんな大きな学園ではありませんが、その分、生徒一人ひとりに真摯に対応するようにしています」
教頭「是非、生徒たちの力になってやってください」
男「は、はい。がんばります……」
教頭「では、また会いましょう」
男「……」
男「熱いおっさんだ……」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:26:10.74 ID:bTau4vPoP
男「え、えーとあのー幼女、先生?」
幼女「なんですか。いまいそがしいのですが」
男「僕は、えーっと何をすればよろしいのでしょう?」
幼女「え? えーっと、そうですね」
教師女「はい、書類追加です!」
教師男「特盛一丁ー!」
幼女「ふぇぇぇ! お、男、あなたは学校を見回ってきてください」
男「は、はい!」
教師女「さあ!」
教師男「さあ!」
幼女「ほぇぇぇ~」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:30:25.48 ID:bTau4vPoP
男「見回るっつったって、この学園のこと、よくわからんしなぁ」
男「うーん、魔法学校といっても中は普通の学校と変わらんように見えるなぁ」
男「リノリウム、っていうんだっけか、この床は。懐かしいなぁ」
男「きゅっきゅっ、って鳴るんだよな」
男「しかし、教室らしき部屋はいくつもあるんだが、授業をやってる様子がないな……?」
男「移動教室なんだろうか……」
男「お、階段下のスペース発見」
男「はは、こんなところで飯を食ったこともあったなぁ」
男「あれは確か、幼なじみに初めて彼氏ができて……」
男「……あいつら、何やってるんだろうな」
男「むしろ俺が何やってるんだって感じだけどな」
男「あっはっは! 笑うしかねぇ!」
?「きゃっ」
男「えっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:33:40.46 ID:bTau4vPoP
少女「……」
男「……」
少女「あの、どなたですか」
男「一応、ここの教師……らしいです」
少女「そうですか……」
男「……」
少女「……」
男「君、もしかして、ぼっち飯」
少女「ぼっちじゃない! 一人が好きなだけなの!」
男「ひっ、すいません!」
少女「……」
男「……」
少女「うっ……」
男「泣くなよ……」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:38:56.67 ID:bTau4vPoP
少女「じゃあ、先生も、ぼっち飯してたんですか」
男「ぼっちじゃねぇ!」
少女「……」
男「うん、ごめん」
男「少ないながらも友達はいたんだけどな、そいつに恋人ができてさ」
男「そいつがそっちを優先するようになって、気づいたら俺は一人だったんだ」
男「俺がどれだけあいつに頼ってたかって思い知ったね」
男「その友達は俺に色んな事をしてくれたんだ」
男「毎朝起こしてくれたり、料理を作ってくれたり、一緒に登下校したりさ」
男「でも俺はあいつに何もしてやらなかった。やれなかった」
男「あれは俺の報いだったんだ、きっと」
男「って、ごめん、全然関係ない話しになっちゃって」
少女「ううん。私、先生の気持ちわかる」
少女「辛かったんだね。先生」
男「……ありがとう」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:47:30.36 ID:bTau4vPoP
男「あれ、でも今授業中じゃないの?」
少女「私は、落ちこぼれだから……」
男「どういうこと?」
少女「授業に出ることが、できないの」
男「そんなことがあるのか? この学園は」
少女「今私達がやっている授業はね、使い魔について扱っているの」
男「使い魔……サーヴァントか」
少女「先生、学園長先生みたい」
男「……」
少女「でもね、私、要領悪いから……使い魔を見つけることができなかったんだ」
男「だから、授業に出られない?」
少女「うん。見つけられなかったのは私だけなの。だからしょうがないの」
少女「落ちこぼれだから、友達もいないし、私なんて魔法使いになんか──」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:55:57.33 ID:bTau4vPoP
男「君は、それでいいのか?」
少女「……」
男「あきらめるのか?」
少女「あきらめたくない!」
少女「でも、しょうがないの! 何をやってもうまくいかない! みんなはできるのに! 私だけがうまくいかない!」
少女「みんなが羨ましいの! どうして私だけこんな思いをしなきゃいけないの! おかしいよ!」
少女「私だって……私だって……みんなみたいに、ううん、みんなよりもすごい魔法使いになりたいのに!」
少女「おかしいでしょ、落ちこぼれの私がこんな……」
男「わかった」
少女「なにが!」
男「俺が君を一人前の、いや、百人前の魔法使いにしてやる」
少女「そんなこと、できるはずがない」
男「できるさ」
少女「どうして!」
男「だって俺は、とびっきりの魔法使いなんだぜ」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:00:29.59 ID:bTau4vPoP
少女「うそ……」
男「本当だよ」
少女「本当に? 先生、私に、魔法、教えてくれるの?」
男「ああ、勿論さ」
少女「でも、私なんか」
男「君にはできる!」
少女「!」
男「魔法使いの俺が宣言する! 君は絶対に立派な魔法使いになれる!」
少女「ほんと……?」
男「俺を信じてくれ」
少女「うん、わかった、私、先生を信じる」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:04:15.75 ID:bTau4vPoP
─教師寮─
男「……」
男「どうしてこうなった」
男「なんで俺はあんなことを言ってしまったんだ……」
男「なんもわかんねぇよ。どうすりゃいいんだ」
男「……あの子は昔の俺に似ていたから」
男「だから、元気付けてあげたかった」
男「これで俺が何もできないってわかったら……失望するよなぁ」
男「どうしよう……」
男「……ん? あれは、何か光っている?」
男「そうか!」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:09:59.96 ID:bTau4vPoP
─魔法世界・森─
男「確かここらへんで……」
妖精「~♪」
男「いた! おい、聞こえるか」
妖精「何かしら、この薄汚い人間は。私に馴れ馴れしく話しかけないでほしいわ」
男「なんか扱いひどくなってないか? ちょっと、頼みがあるんだが、聞いてくれないか」
妖精「なんなのかしら、この浮浪者は……」
男「頼む! なんでもする! 話を聞いてくれ!」
妖精「……今、なんでもと仰いましたか?」
男「あ、ああ。だから頼みたいことが」
妖精「そう……なんでも……」
男「なんか嫌な予感が……」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:22:17.84 ID:bTau4vPoP
妖精「私たち妖精はここの森でいつも戯れているのですが」
男「俺はお前だけしか見えないけど」
妖精「……」
男「あれ、もしかして」
妖精「さようなら」
男「ごめんなさいすいません申し訳ありません」
妖精「次はありませんよ。……そんな私の憩いの森を荒らす化物がいるのです」
男「あ、一人って認め、ごほん。ということは、もしかして……」
妖精「そう、その化物を退治して頂きたいのですわ」
男「えええええ!!」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:26:40.97 ID:bTau4vPoP
妖精「なんでも、とおっしゃいましたよね」
男「で、でも、俺、ただのみすぼらしい中年で……」
妖精「あら、とびっきりの魔法使いなんでしょう?」
男「!」
男「聞いていたのか」
妖精「妖精はいつでもどこでも潜んでいるものですわ」
男「黒いアレみたいだ……」
妖精「では、今すぐ退治してくださいませ。魔法使いさん」
男「うっ」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:28:40.41 ID:bTau4vPoP
妖精「ふふふ」
男「わ、わーったよ! やってやらぁ!」
妖精「それでこそ魔法使いさんです」
男「で、その、ば、化物ってのはどんなやつなんだよ」
妖精「あなたの後ろにいますわ」
男「え」
羽牛「ブモォー!」
男「うわああああ」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:32:36.03 ID:bTau4vPoP
妖精「きゃははは。滑稽ですわ、無様ですわ」
男「なっ、おい、お前、これどういうことだよ!」
妖精「さぁさぁ魔法使い様、早く化物牛を退治くださいな。私はいつまでも待っておりますわ」
男「くそっ、うおっ! 逃げるしか、ねぇ!」
羽牛「ブモモモモモモ」
男「うおおおおおおおおおおお」
男「いてっ、角が! 痛い! 尻が! 尻たぶが!」
妖精「もっともっと、私に楽しいワルツをお見せくださいな」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:38:35.90 ID:bTau4vPoP
男「なんで、はっ、こんな歳になって、はっ、長距離走をしなきゃいけないんだ」
男「はっ、はっ、撒いた……か?」
男「ふぅ……」
男「森でよかった、いくらでも隠れる場所がある……」
男「しかも夜だからな、視界も悪い」
男「しかし、あの牛を退治するなんて……俺にできるわけが」
男「……どうすれば」
男「方針を練りなおすか……?」
男「……」
男「ここ、どこだ?」
男「あれ」
男「俺、寮に戻れなくね?」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:52:54.95 ID:bTau4vPoP
男「おいおいマジかよ」
男「森だから、どこがどこだかまったくわからんし……」
男「しかも夜だからな、視界も悪い」
男「最悪だ!」
ブモォォォー!
男「ひっ」
男「牛の鳴き声に怯える日がこようとは……」
男「あ、雨まで降ってきやがった」
男「ちくしょう、どこか雨宿りできる場所を」
男「! あんなとこに洞穴が!」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:57:47.29 ID:bTau4vPoP
男「ふぃー、助かった」
男「ここなら、牛(あいつ)にもばれないだろうし……」
妖精「ちょっと、なにをしているの? 魔法使いさん」
男「わっ」
妖精「わっ、じゃないですわ。あなたは牛さんと遊んでらっしゃったのではなくて?」
男「お、お前こそ牛を煽りやがって……。いつの間にこんなところに」
妖精「飽きましたの」
男「……お前、やっぱり友達いないだろ」
妖精「……妖精はみんなこんなものですわ」
男「そうなのかぁ? あれ、この洞穴結構深いんだな」
妖精「ちょ、それ以上奥には……」
?「どうしたの?」
?「なにごとですか?」
?「なんだなんだ」
男「なんかワラワラ出てきた?」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:02:27.99 ID:bTau4vPoP
フェアリー「人間だ」
フェアリー「ほんとだー」
フェアリー「めずらしー」
フェアリー「たべちゃう?」
フェアリー「捕まえましょう」
フェアリー「めんどくさい」
フェアリー「お前は黙ってろ」
フェアリー「なんだとー」
フェアリー「ねぇたべちゃおうよ」
フェアリー「おやすみー」
男「お、お前の仲間か?」
妖精「……」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:07:19.29 ID:bTau4vPoP
フェアリー「わー」
フェアリー「人間人間、おはなししよー」
フェアリー「ぼくがはなすのー」
フェアリー「たべちゃおうよ」
フェアリー「わたしがー」
フェアリー「あれ?」
フェアリー「そこにいるのは」
フェアリー「れっとうしゅだー」
フェアリー「わーい、らくだいせー」
フェアリー「げんきだったー? おちこぼれー」
妖精「!」
男「え?」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:10:06.72 ID:bTau4vPoP
フェアリー「なんでもどってきたの?」
フェアリー「おまえのせきねーからー。きゃはは」
フェアリー「しんじゃえー」
フェアリー「たべちゃうぞー」
フェアリー「ばーか」
妖精「……」
男「お、おい、やめろよ」
フェアリー「人間のぶんざいでなにをいってるんですか?」
フェアリー「人間もしぬ?」
フェアリー「たべちゃう?」
フェアリー「消えてなくなっちゃう?」
フェアリー「ばいばーい」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:16:01.59 ID:bTau4vPoP
男「うわっ、なんだこれは……火? こいつら……魔法を……!」
フェアリー「もえろー」
フェアリー「やけろー」
フェアリー「こんがりきつねいろー」
フェアリー「たそがれよりもくらきものー」
男「うわわっ、あちっ! おい妖精、お前もなんか魔法を」
妖精「……せんの」
男「え?」
妖精「できませんの! この私は、魔法が使えない落ちこぼれのクソ妖精なんですの!」
男「なっ、なっ」
妖精「だから私はあんなところで、独りで、まるで道化者の哀しきワルツ」
男「そういうのいいから! とりあえずここから出るぞ!」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:24:36.92 ID:bTau4vPoP
男「はぁっ、はぁっ、雨はまだ強いが……これで火は消えそうだな……」
妖精「……」
男「おい、大丈夫か」
妖精「……ええ」
男「とりあえず、あの木の下に移動しよう。多少雨は防げそうだ……」
妖精「……」
男「あの、さ」
妖精「……なに」
男「俺、寮まで、戻りたいんだけど」
妖精「戻れば」
男「道がわからないんだけど」
妖精「……」
男「おーい」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:28:48.93 ID:bTau4vPoP
妖精「……あっち」
男「え?」
妖精「あっちに真っ直ぐ行けば」
男「寮につくのか?」
妖精「……」
男「そ、そっか。ありがとな」
男「とりあえず、今日は俺、帰るわ」
男「じゃ、じゃあまたな」
妖精「……」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:32:21.17 ID:bTau4vPoP
男「……」
男「なんか……さらに道が険しくなった気がするんだが……」
男「雨は止まないし……」
男「ああ……」
男「本当にこっちで合ってるのか?」
ブモォォォー!!!
男「うおっ!」
男「あ、足がっすべっ」
男「なっ、ここ、崖っ?」
男「おちっ!」
妖精「……」
妖精「ばーか」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:35:43.95 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ねぇ、いっしょにあそぼうよ」
男「……きみ、だれ?」
幼なじみ「おさななじみっていうの! あなたのおとなりさん!」
男「おとなりさん?」
幼なじみ「うん、おとなりさん!」
男「おとなりさんって、なに?」
幼なじみ「しらない!」
男「へんなの」
幼なじみ「なかよくしなさいってままがいってた!」
男「ふーん」
幼なじみ「ねぇ、あなたのおなまえは?」
男「ぼくのなまえは──」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:49:05.89 ID:bTau4vPoP
男「……夢?」
男「ここは……森か」
男「これが夢だったらよかったのにな……」
ブモォォォー!
男「しつこいな……あの牛」
ブモォォォー!!
キャー!!
男「ん?」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:50:17.51 ID:bTau4vPoP [78/78]
男「あ、あの妖精、襲われてやがる」
男「お前がけしかけたんじゃなかったのかよ……」
男「俺を落とした罰だ……」
男「いい気味だ」
男「……」
男「くそっ!」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:11:55.49 ID:bk0cymgWP [1/11]
男「おい、くそ牛!」
羽牛「ブモッ」
妖精「あ、あなた……」
男「こいつを見やがれ!」
羽牛「ブモォ!?」
男「いくぜ! 俺の魔法を見せてやる!」
妖精「そんな木の棒で何ができるというのです!」
男「着火ぁ!」
羽牛「ブモォォォォォ!」
妖精「そ、そんな……あの男の手から……火が……!?」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:13:41.44 ID:bk0cymgWP [2/11]
ライターと紙と乾いた木の棒。
ただその3つがそこにあっただけだった。
ライターはポケットに。タバコは買い忘れたままだけど。
紙はポケットティッシュ。駅前に配っていたお兄さんに感謝だ。
乾いた木の棒は運良く雨を避けた場所にあっただけだ。
これらはすべてたまたま揃っただけ。
それがこの俺の魔法の正体だった。
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:14:35.28 ID:bk0cymgWP [3/11]
男「はっはー! 動物は火を恐れるんだろ! これでどうだ」
羽牛「ブモッ! ブモッ!」
男「よっしゃあ、苦しんでやがる!
羽牛「ブモォォォォォォォォォォ!!!!!」
男「ってこっちに来たぁ!???」
羽牛「ブッモォォォォォォォ!」
男「ひ、ひぃぃぃぃ! 飛んだぁ!」
羽牛「ブモッフ!」
男「来るなぁぁぁ!」
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:15:54.27 ID:bk0cymgWP [4/11]
男「はぁ……はぁ……」
男「あの牛、崖から落ちやがった……」
男「飛んで、こないな……?」
妖精「……羽牛は、自重が大きすぎるため、この崖のような高度な距離は登ることができませんの」
男「お前……」
妖精「だからここにいれば安心ですわ」
男「そうか」
妖精「あなた、本当に魔法使いでしたのね?」
男「……え?」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:17:35.57 ID:bk0cymgWP [5/11]
妖精「先程の火の魔法、見事でしたわ。木という触媒を用いて、手中に出した小さな火を増幅させる……私には到底不可能でした」
男「あ、ああ……」
妖精「あなたを崖から落としたこの卑しくも卑劣な下等妖精の私。それでもあなたは華麗に助けてくださったのですね……」
男「(こ、こいつ、人に向けても自分に向けても言葉が悪いな……)」
妖精「この私、あなたに従います」
男「……へ?」
妖精「私は只今をもって、あなた様のしもべとなります。なんなりとご命令くださいませ」
男「ちょ、ちょっとどういうこと?」
妖精「私は感激いたしました。あなたの器の大きさにです。私のような役立たず、ご迷惑というのは理解できます。でも、私は、あなたのために役に立ちたいのです!」
男「え、えーと」
妖精「大魔法使い様。よろしければ私めにあなた様のお名前をお教えくださいまし」
男「お、俺の名前は──」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:22:52.93 ID:bk0cymgWP [6/11]
男「よぉ」
少女「あ、男先生」
男「またここか」
少女「しょうがないんです……。? なんでそんなに包帯巻いてるんです?」
男「……気にすんな」
少女「それで、何か?」
男「お前にいいものを持ってきた」
少女「?」
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:27:28.39 ID:bk0cymgWP [7/11]
妖精「……」
少女「わっ、こ、これって……」
男「妖精だ。こいつは立派な使い魔だろう?」
少女「す、すごいです。妖精なんて高度な種族を使い魔にしてるなんて……さすが男先生!」
男「何言ってるんだ」
少女「え?」
男「これはお前の使い魔だぞ?」
少女「え、えぇぇぇ!??」
男「そのために連れてきたんだ」
少女「で、でもでも、私なんか」
男「こら」
少女「わっ」
男「魔法使いへのレッスンその1だ。『私なんか』なんて言葉を使うんじゃない。すごい魔法使いの俺が言ってるんだぜ」
少女「はっ、はいっ」
妖精「……ちょっと」
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:31:55.52 ID:bk0cymgWP [8/11]
男「どうした?」
妖精「私、このオボコの使い魔になるんですの?」
男「そうだ」
妖精「嫌ですわ! こんないかにも才能のなさそうな子の使い魔なんて!」
少女「きゃっ」
妖精「私は男様、あなた様だけのモノでありたいんです!」
男「(俺はまったく才能ないけどな)」
男「いいか、妖精」
妖精「はい」
男「この子、少女は俺の──そう、弟子だ」
妖精「……はい」
男「だから、お前が俺の……えーっと、モノであることには変わりがないんだよ」
妖精「むーっ」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:41:21.70 ID:bk0cymgWP [9/11]
妖精「……わかりました。あなたの言葉は絶対ですものね。従いますの」
男「そ、そうか。よかった。ありがとう」
妖精「(ただし、あとでご褒美を頂きますのよ)」
妖精「チュッ」
男「わっ、お前、頬に」
妖精「ふふ、契約ですの」
少女「むっ」
妖精「妖精と申します。しぶしぶですが、あなたの使い魔になってあげますの」
少女「……うん。よろしくね。私の名前は少女だよ」
少女「あの……」
妖精「何ですの」
少女「……私の使い魔になってくれて、ありがとう」
妖精「!」
妖精「……どういたしまして」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:56:35.04 ID:bk0cymgWP [10/11]
次回予告
妖精は男の布団に潜り込み、ついに秘境にたどり着く
一方少女は新たに芽生えた気持ちに戸惑い、男に個人面談を依頼する
学園に襲い来る幼女の群れ
たった一人で立ち向かう童貞の新任教師
男は学園の深部にたどり着き、チャーム(魅了魔法)を手に入れる
男と妖精と少女の3人がベッドの上に集うとき、そこでいったい何が起きるのか
次回、寝台の戦場
この次も、サービスサービスゥ!
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:02:29.82 ID:bk0cymgWP [11/11]
あ、さるってました
残ってたら明日書きます
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:59:42.60 ID:iHPwWBgs0 [3/4]
つかお前何回か見たことある希ガス
>>138
最後にスレ立てたのは2年くらい前ですが
その頃は結構立ててました
続きます
幼なじみ「いい加減彼女でも作れば」
男「うるせぇできたら作ってるよ」
幼なじみ「選り好みしすぎなんじゃない」
男「それはお前だろ。俺には選ることすらできないんだよ」
幼なじみ「顔はいいのにね」
男「……そうでもないだろ」
幼なじみ「うんお世辞」
男「しね」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:42:23.07 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「あれだよ、合コンとか行けば」
男「お前俺のコミュ力知ってて言ってるだろ?」
幼なじみ「あれはひどかったなー」
男「おいやめろ」
幼なじみ「成人式の後に仲いい人で集まってさ」
男「やめてくれ」
幼なじみ「『あれ? 男くん、なんでいるの?』」
男「……」
幼なじみ「私が慰めてやったじゃないか」
男「大笑いしてたのは誰だ」
幼なじみ「男が帰った後、誰も男について触れてなかったよ」
男「……」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:47:52.95 ID:bTau4vPoP
男「なんなのお前俺を自殺させたいの?」
幼なじみ「なに物騒な事言ってるんだよ、引きこもりがちな幼馴染の様子を見に来ただけじゃないか」
男「お前のせいで余計引きこもりそうだよ」
幼なじみ「そんなこと言いながら、久々に話す異性にドキドキしてるんだろ?」
男「……三十路じゃなぁ」
幼なじみ「そんないつまでも高望みしてるから童貞なんだよ」
男「歳をとるたびに理想が高くなっていく」
幼なじみ「悲しいね」
男「哀しいよ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:53:40.94 ID:bTau4vPoP
男「で、マジで何の用? お前に会うのそれこそ年単位ぶりな気がするんだが」
幼なじみ「=年単位男は異性と話していなかったんだな」
男「……否定はしない」
幼なじみ「おや、やけに素直だね」
男「反論してたら話が進まんからだろうが!」
幼なじみ「やれやれ、これだから魔法使いは余裕がなくていけない」
男「あんだよ!」
幼なじみ「まぁまぁ、落ち着いて」
男「誰のせいだ!」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 14:58:57.96 ID:bTau4vPoP
男「……で?」
幼なじみ「お茶が飲みたいなぁ」
男「へいへい」
幼なじみ「悪いね、催促したみたいで」
男「最速で話して頂きたいね、個人的には」
幼なじみ「私は君を離したくないんだよ」
男「気味が悪いことを言うな。ほら、麦茶だ」
幼なじみ「ばいばい」
男「帰るのかよ!」
幼なじみ「はい、お前の負け」
男「いや脈絡なさすぎだろ!」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:03:46.58 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ふー」
男「おいおい寝っ転がるな汚いぞ」
幼なじみ「それもそうだな」
男「ふぅ」
幼なじみ「で、だ」
男「ああ」
幼なじみ「泊めてくれ」
男「……やっぱそれか」
幼なじみ「私が君を頼るなんてこれくらいしかないだろ」
男「まぁそうなんだが」
幼なじみ「私の布団はどこだ」
男「あっちの押し入れ」
幼なじみ「ほいきた」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:09:33.92 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「おはよう」
男「おう、じゃあ俺は仕事行ってくるから」
幼なじみ「いや私もなんだが」
男「え、お前有給取ってたんじゃないのかよ」
幼なじみ「切れた」
男「そりゃあれだけ休めばなぁ」
幼なじみ「ちょっと待っててくれ。着替える」
男「お前荷物持ってきてなかったんじゃ……あれ」
幼なじみ「どうした」
男「どうしてここにお前のスーツが」
幼なじみ「気づかなかったのか?」
男「しかもこれ、定期的にクリーニング出してるだろ」
男「ああ、だからたまに部屋の配置変わってたんだな……」
幼なじみ「惚けてるな、行くぞ」
男「はいはい」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:13:13.41 ID:bTau4vPoP
男「あー、疲れた。いつの間にか俺以外の同期はみんな出世しちまったなぁ」
男「……まぁ交流ないんだけど」
男「ん、また結婚しましたってハガキか……」
男「結婚式には呼ばないんだよな」
男「まぁ、呼ばれても行きたくないけど」
男「……」
男「あれ、あいつまだ帰ってないんだ」
男「……」
男「風呂入るか」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:14:56.94 ID:bTau4vPoP
男「……」
男「帰ってこないな」
男「……」
男「いやいやなんで俺があいつを待つ必要があるんだよ」
男「もう寝るか」
男「……」
男「もう少しだけ」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:19:25.71 ID:bTau4vPoP
男「朝か……」
男「あ、携帯の電池切れてやがる」
男「充電器充電器」
男「あった」
男「……」
男「ん、新着メール」
『送信者:幼なじみ』
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:22:49.86 ID:bTau4vPoP
『件名:なし』
『本文:昨日はありがとう。もう、大丈夫だから』
男「……」
男「そうか、もう、大丈夫なんだ」
男「……」
男「くそっ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:28:20.13 ID:bTau4vPoP
妹「おっす、お兄ちゃん」
男「お、久しぶりだな」
妹「お兄ちゃんは相変わらずだね」
男「うっせ」
妹「立ち話もなんだから、部屋に入りましょうか」
男「俺ん家だ」
妹「きったねー」
男「おい、触るな。弄るな。あ、あ、ああー」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:32:46.36 ID:bTau4vPoP
妹「お兄ちゃん、もういい歳なんだからこんなのばっか買ってないでさ」
男「あ、あ、おい、これ、プレミア。あ、これは、ヤフオクで……ああああ」
妹「もっとさ、外を見ようってあたしは言いたかったわけよ」
男「え、おい、これはあれだぞ、カズフサ先生のサイン本で、え?」
妹「だからさ、一度真っさらにしちゃえばいいかなーって」
男「……」
妹「……」
男「……」
妹「ごめんなさい」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:37:04.73 ID:bTau4vPoP
男「いや、いいんだ……こんなとこに置いてた俺が悪いんだ」
妹「ほんとーにごめんね」
男「いくら妹でも、コップ片手にこれらのものを弄るとは思ってなかった……」
妹「ごめん」
男「うん全然妹は悪くない。悪くない。悪いのは全て俺の」
妹「ごめんって言ってるでしょぉ!」
男「お前は悪くないって言ってるだろぉ!」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:46:23.23 ID:bTau4vPoP
男「ふぅ……ふぅ……」
妹「はぁ……はぁ……」
男「ヘイマイシスター、ちょっと落ち着こうぜ」
妹「あ、あたし……は……はぁ、はぁ……落ち着いて、るよ」
男「それならお前のその手にしているメガネを離せぇぇぇ!!!」
妹「いくらあたしでも自分からアドバンテージを手放すような愚行はできないかな?」
男「わかった、わかったから。レンズに指を近づけるなぁぁぁ!!!」
妹「そいつはお兄ちゃんによるんじゃないかな……」
男「よし、よし、そのままだ。お前の要求を聞こう」
妹「いっぱいのお茶と、ささやかなお茶菓子。ただそれだけだよ、お兄ちゃん?」
男「ただちに用意いたしまする!」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 15:54:43.75 ID:bTau4vPoP
妹「うーん、マカロンおいしーいー」
男「とっときだったのに……」
妹「でもこの紅茶は減点だね」
男「一人暮らしの家にティーバッグ以外の紅茶があるかってんだ」
妹「む」
男「ったく、我慢しろよ」
妹「まったく、モノ質がなくなったら強気なんだから」
男「メガネはモノじゃねぇ! 体の一部だ!」
妹「コンタクトにすればいいのにー」
男「めどい」
妹「そういうところ適当だからモテないんだよ」
男「……」
妹「あ、ごめん、うそ。うそだってばー、本気で落ち込まないでよ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 17:52:33.43 ID:bTau4vPoP
妹「いやーお兄ちゃん。変わらないねー」
男「お前もな」
妹「まだ引きこもってんの?」
男「うるさいわ」
妹「出かけようよ」
男「仕事で外でてる」
妹「仕事以外でもさー」
男「別に行きたいところないんだよ」
妹「だから腐っちゃうんだよ」
男「腐ってるか? 俺」
妹「むしろ臭い」
男「あ?」
妹「こりゃ失敬」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 17:59:44.15 ID:bTau4vPoP
男「……」
妹「だから落ち込まないでよー。臭いのはうそだってー」
男「落ち込んどらんわ」
妹「ならいいんだけど」
男「……」
妹「ねぇねぇ」
男「あん?」
妹「実際のところ、彼女とかできてないの?」
男「あー」
妹「お、その反応は、なんかあった?」
男「いや、別に」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:04:13.67 ID:bTau4vPoP
妹「とか言っちゃって、なんかあったんでしょー?」
男「なんでそんなに絡んでくるんだよ……」
妹「自分の肉親の恋愛事情ってやっぱ気になるもんでしょー」
男「親でもか?」
妹「うぇ」
男「な?」
妹「……きょうだいと親は違うでしょ」
男「まぁな」
妹「お兄ちゃん今までそんな話まったくなかったしねー」
男「……まぁな」
妹「で、で、どうなの?」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:06:49.29 ID:bTau4vPoP
男「なんもねぇよ」
妹「……ふーん」
男「なんだよその顔は」
妹「べっつにー」
男「なんか文句あるなら言えよ」
妹「ないよー」
男「ふん」
妹「そっかー、なんもないんだ?」
男「何も無い」
妹「残念。あ、お兄ちゃんが前読んでた漫画、新刊出てる?」
男「ん、そっちの本棚」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:10:15.01 ID:bTau4vPoP
妹「あはははは」
妹「ぷっ……くくっ……」
妹「あひゃひゃひゃ」
男「漫画くらい静かに読め」
妹「だって面白いんだもーん」
男「ったくいい歳して」
妹「お兄ちゃんがそれを言う?」
男「人の振り見て我が振り直せ、だ」
妹「それこそお返しするよ」
妹「……」
妹「あはははは」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:12:03.52 ID:bTau4vPoP
妹「そいじゃ、またねー」
妹「引きこもってないで、ちゃんと外出るんだよー?」
男「おう、じゃーなー」
男「帰ったか」
男「あいつといい、なんで急に俺ん家に来るんだ?」
男「そんなに家から出なかったかな……」
男「たまには出かけてみるか……」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:19:00.80 ID:bTau4vPoP
男「とは言っても仕事が忙しいわけで」
男「家に引きこもってるというか仕事場に引きこもってるよなぁ」
上司「何ぶつぶつ言ってるの?」
男「あ、すまん」
上司「……」
男「なに?」
上司「一応、私、上司。あんた、部下」
男「どこのインディアンだよ」
上司「まぁいいんだけどさ、いい加減男も真面目に仕事しなさいよ」
男「自分としては真面目にやってるつもりなんだがなー」
上司「真面目……? あんた、自分のPCにどれだけ隠しフォルダ作ってるのよ」
男「息抜きがなきゃやってられねーんだよ」
上司「隠しフォルダなんかさ、管理権限上の私のPCからとか丸見えなんですけど」
男「げ、マジで?」
上司「気付かなかったの? アホじゃないの?」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:22:19.30 ID:bTau4vPoP
男「俺、PC詳しくねーんだよ」
上司「じゃあなんでこの仕事やってのよバカ」
男「就活氷河期でさ、仕方なくここに」
上司「そういうことは思ってても言うな」
男「すまん」
社員「あのー上司さん」
上司「ん、どうしたの」
社員「少しお聞きしたいことが」
上司「わかった。男、ちゃんと仕事しなさいよ」
男「はい」
男「ふー、やっと行ったか」
男「さて、このUSBメモリを……」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:24:33.70 ID:bTau4vPoP
男「昼休み、暇だなぁ」
男「あれ、タバコ切れた」
男「コンビニ行くか……」
男「……」
男「ん、あれは」
男「幼なじみ……」
男「やっぱり、そういうことか」
男「……会社もどろ」
男「……」
男「あ、タバコ忘れた」
男「……くそっ」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:30:03.14 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ということで」
男「……」
幼なじみ「ヨリ、戻しましたー」
男「……はぁ」
幼なじみ「なんだよその溜息は。もっと喜べよ」
男「喧嘩するたびに、俺ん家来るもんなぁお前」
幼なじみ「……いーじゃん」
男「中学生の時の、お前の初彼氏の時からそうだったもんなー」
幼なじみ「いやー、あいつは嫉妬深かったな。マジで」
男「そんな彼も今や二児の父か」
幼なじみ「シングルファザーだけどな」
男「ああ、あん時はひどかったらしいな」
幼なじみ「まぁでも立派にやってるみたいだぞ」
男「ならよかった」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:33:10.17 ID:bTau4vPoP
男「んで、今日はなんだよ。ヨリ戻したんだろ?」
幼なじみ「いや、男に迷惑かけちゃったかなって思ってさ」
男「そんなのいつものことだろ」
幼なじみ「おっしゃる通り」
男「早くだぁのとこにでも戻ってらっしゃい」
幼なじみ「だぁ言うな」
男「でもあれだな、よく仲直りできたな」
幼なじみ「それは、あれよ、私の愛というか」
男「どうせ、お前がつまらない誤解をしたんだろ?」
幼なじみ「……」
男「なんだよ」
幼なじみ「べっつにー」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:35:56.66 ID:bTau4vPoP
男「はーん、そりゃ、彼のほうが悪いかもな」
幼なじみ「だろ? そこを私の深い愛というか慈愛の心でだな」
男「お前は自愛じゃなくて自愛だろ」
幼なじみ「そして男は自慰」
男「黙れ」
幼なじみ「そんなわけで、私はだぁのところに戻ります」
男「……」
幼なじみ「黙るなよ! 恥ずかしいだろ!」
男「そういやさ」
幼なじみ「なに」
男「お前の……」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:38:18.76 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「……」
男「お前の」
幼なじみ「あ、ごめん電話」
男「……」
幼なじみ「うん、うん、そう」
幼なじみ「え、うん、わかった」
幼なじみ「ちょっと、急用」
幼なじみ「ごめんね、また今度」
男「おう」
幼なじみ「じゃあね」
男「おう」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:44:13.06 ID:bTau4vPoP
男「……」
上司「おい、男。静かだと思ったらまた居眠り……ん?」
男「……」
上司「男が真面目に仕事をしている……」
男「なんですか」
上司「敬語!? ど、どうしたの、男。風邪? 下痢? 口蹄疫?」
男「口蹄疫は人間に感染しません。多分」
上司「どうしたのよ急に真面目に仕事して……」
男「上司さんが真面目にやれって言ったんじゃないですか……」
上司「うん、真面目にやるのはいいんだけど……」
男「ならいいじゃないですか」
上司「そこ、L23から2つずつ、ずれてる」
男「あ」
上司「今日、残業ね……」
男「ああ……」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:47:26.05 ID:bTau4vPoP
男「うまくいかないな……」
後輩「男さん、残業ですかー?」
男「ああ、君もかい」
後輩「いえいえ、私はもうとっくに終わっちゃいましたよー」
男「ああ、そうかい。じゃあなんで残ってるの?」
後輩「ちょーっと野暮用がありましてねー」
男「あー、そう」
後輩「はいー」
男「……」
後輩「……」
男「帰らないの?」
後輩「ちょっと野暮用がありましてー」
男「……?」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:50:44.37 ID:bTau4vPoP
男「……」
後輩「……」
男「あの」
後輩「はいー」
男「野暮用って、なんだい……?」
後輩「あのですねー、ちょっと男さんに聞きたいことがあるんですよー」
男「……うん」
後輩「……妹ちゃん、元気ですか?」
男「……妹? 元気だけど、君、連絡取ってないの? 君ら、大学の同級生だっただろ?」
後輩「いやー、取ってるんですけどー」
男「??」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 18:57:26.71 ID:bTau4vPoP
後輩「妹ちゃんの旦那さんいるじゃないですかー」
男「あ、ああ、旦那くんね」
後輩「その旦那さんがー。ちょっとー」
男「……言いたいことがあるなら、はっきり言え」
後輩「私、その旦那さんと寝ちゃったんですよー」
男「!!」
後輩「あっちが迫ってくるからー。どうしてもって言うんでしょうがなくー」
男「それを俺に報告して……どうするつもりだ?」
後輩「いえー、べつにー。なんでもないんですけどー」
男「そうか……ならさっさとどこかに消えてくれ」
後輩「はーい。消えまーす」
男「……」
男「くそっ!」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:04:54.79 ID:bTau4vPoP
はは、そういうことか。
幼なじみも妹も、俺ん家に来たのは自分の男への当て付けか。
そうだよな、そんなこともなけりゃ俺になんて会いに来る理由なんてない。
俺は場の空気というものが読めないし、人を楽しませることもできない。
顔も良くないし、加えて金もないし経験もないしの余裕もないときたもんだ。
今だって、妹の心配をしなければいけないはずなのに、妹の旦那に嫉妬すらしている。
妬み嫉み僻み恨み辛み苦しみ憎しみで心が張り裂けそうだ。
誰か
助けてくれ
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:09:04.61 ID:bTau4vPoP
女「……」
男「……」
女「こんなところで、何をやっているの?」
男「……別に」
女「そんな姿で、……うっ」
男「……」
女「くさいわ」
男「そりゃゲロまみれだからな」
女「……」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:12:11.07 ID:bTau4vPoP
男「……行けよ」
女「……」
男「俺を見るなよ」
女「……」
男「消えろよぉ!」
女「……」
男「みんな消えろよぉ!」
女「合格」
男「……あ?」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:15:59.84 ID:bTau4vPoP
女「行きましょう」
男「お、おい」
女「あなたの望む世界へ」
男「え?」
女「あなたも、魔法使いなんでしょう?」
男「え? いや、え?」
女「さぁ、あなたの人生は今から始まるのよ」
男「な、なに言ってるんだ? あんた?」
女「ブツブツブツ」
男「お、おい」
女「さぁ、始めましょう」
男「う、うわぁぁぁぁぁ!? と、飛んでる!?」
女「この世界を根本から揺るがす旅を」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 19:22:56.67 ID:bTau4vPoP
女「ここが、魔法世界─マジックワールド─よ」
男「……まんまじゃねーか」
女「何か言った?」
男「いえ、行ってません! だから落とさないで!」
女「そう。おほん、あなたは魔法使いの素質はあるみたいだけど今まで何も学んできていないのね」
男「いや、魔法使いってのは、隠語、っていうか……ぶっちゃけどうて」
女「え? 魔法使いじゃないの?」
男「魔法使いです魔法使いです! 揺らさないで!」
女「そう、ならいいのだけど。あなたはここで魔法についていろいろ学んでもらうことになります」
男「いったいどうなってるんだ……」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:43:32.58 ID:bTau4vPoP
男「ここが、魔法世界……」
男「……魔法世界ってなんだよ」
男「いったい何がどうなってるってんだ」
男「あー」
男「牛だ……」
男「羽が生えてる……」
男「なんで牛に……」
男「鶏が飛んでる……」
男「……」
?「あら?」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:49:15.25 ID:bTau4vPoP
男「うおっ! 小人?」
?「小人(ホビット)とは失礼ですね。私(わたくし)は妖精(フェアリー)です」
男「フェアリー……」
妖精「見ない顔ですね」
男「……」
妖精「どうしてあなたのようなしょぼくれた中年がこんなところに?」
男「しょぼっ……いや、自分でもよくわからないんだが……」
妖精「そうですか」
男「うん……あの、ここはいったいどんなところなん」
妖精「それでは、ごきげんよう。見窄らしい殿方様」
男「……妖精は気まぐれ、か」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:52:44.69 ID:bTau4vPoP
女「あら、こんなところにいたの」
男「落としたのはあんたでしょーが!」
女「さぁ、こちらへいらっしゃい」
男「うおっ、一瞬で景色が変わった!?」
女「これが移動─ムーヴ─の魔法です」
男「まんまじゃん、ってか最初から使えよ」
女「なにか?」
男「うっ、すみません……で、ここどこですか」
女「ここは、魔法学校─マジックスクール─です」
男「……」
女「なにか」
男「いいいいえ!」
女「今日からあなたはここで学んでもらうことになります」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:57:32.76 ID:bTau4vPoP
男「え?」
女「聞こえなかったのですか。あなたは今日から──」
男「いや、聞こえましたけど、でもあの、ここって学校ですよね?」
女「そうです」
男「えっと、僕、あれなんですけど、しょぼくれた中年というか」
女「わかっています」
男「あ、あー、あれですか、いろんな年代が通ってる定時制高校みたいな」
女「定時制がよくわかりませんが、ここに通っている生徒はみな十代の子供たちです」
男「じゃあ俺はどうすればいいんですかぁ!」
女「教師をしてもらいます」
男「え」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 20:59:51.51 ID:bTau4vPoP
男「先生、ですか?」
女「はい」
男「いや無理ですって! 僕、教員免許とか持ってませんし!」
女「特例で私が発行しましょう」
男「そういう問題でもなくて、そもそも魔法のことまったくわかりませんし!」
女「生徒と一緒に学んでいきましょう」
男「ええー……マジすか」
女「まじっくです」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:03:17.93 ID:bTau4vPoP
女「ここが教員寮です。詳しいことは明日話します」
男「は、はぁ……」
女「明日に備えてよく眠るように。では」
男「……」
男「……」
男「勢いのあるおばあちゃんだ……」
男「無理やり流されてしまった……」
男「今日はもう疲れた。寝よう……」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:07:16.80 ID:bTau4vPoP
幼女「おはようございます」
男「うん……朝か……」
男「やべっ、仕事」
幼女「はい、仕事ですね」
男「……」
幼女「急いでください。着替えはそちらです」
男「あの」
幼女「はい」
男「どなたですか」
幼女「女ですが」
男「え」
幼女「え」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:11:23.30 ID:bTau4vPoP
男「なるほど、外に行く時はお婆さんの格好をしていると」
幼女「ええ、外ではこの格好だと怪しまれますので」
男「なるほどー。……なるほどですませられるようになっている自分は怖い」
幼女「普段は、というかこの格好が私本来の姿ですのでお間違えのないよう」
男「……ちなみにおいくつで」
幼女「なにか?」
男「いえ」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:15:25.22 ID:bTau4vPoP
幼女「こちらが職員室です」
教師男「学園長! 今までどちらにお出かけになっていたんですか!」
教師女「仕事が溜まってるんですよ!」
教師男「ほら、早くしてください!」
教師女「その放浪癖、改めてくださいね!」
教師男「さあ!」
教師女「さあ!」
男「……大人気ですね」
幼女「ふぇ~」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:20:37.45 ID:bTau4vPoP
?「こんにちは」
男「あ、はい、こんにちは」
教頭「わたくし、当学園の教頭でございます。以後お見知りおきを……」
男「ど、どうも……」
教頭「あなたが噂の新任教師ですかな?」
男「え? あ、はい、どうやらそうらしいです」
教頭「ははは、面白いお方だ」
男「あ、あはは」
教頭「ここはそんな大きな学園ではありませんが、その分、生徒一人ひとりに真摯に対応するようにしています」
教頭「是非、生徒たちの力になってやってください」
男「は、はい。がんばります……」
教頭「では、また会いましょう」
男「……」
男「熱いおっさんだ……」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:26:10.74 ID:bTau4vPoP
男「え、えーとあのー幼女、先生?」
幼女「なんですか。いまいそがしいのですが」
男「僕は、えーっと何をすればよろしいのでしょう?」
幼女「え? えーっと、そうですね」
教師女「はい、書類追加です!」
教師男「特盛一丁ー!」
幼女「ふぇぇぇ! お、男、あなたは学校を見回ってきてください」
男「は、はい!」
教師女「さあ!」
教師男「さあ!」
幼女「ほぇぇぇ~」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:30:25.48 ID:bTau4vPoP
男「見回るっつったって、この学園のこと、よくわからんしなぁ」
男「うーん、魔法学校といっても中は普通の学校と変わらんように見えるなぁ」
男「リノリウム、っていうんだっけか、この床は。懐かしいなぁ」
男「きゅっきゅっ、って鳴るんだよな」
男「しかし、教室らしき部屋はいくつもあるんだが、授業をやってる様子がないな……?」
男「移動教室なんだろうか……」
男「お、階段下のスペース発見」
男「はは、こんなところで飯を食ったこともあったなぁ」
男「あれは確か、幼なじみに初めて彼氏ができて……」
男「……あいつら、何やってるんだろうな」
男「むしろ俺が何やってるんだって感じだけどな」
男「あっはっは! 笑うしかねぇ!」
?「きゃっ」
男「えっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:33:40.46 ID:bTau4vPoP
少女「……」
男「……」
少女「あの、どなたですか」
男「一応、ここの教師……らしいです」
少女「そうですか……」
男「……」
少女「……」
男「君、もしかして、ぼっち飯」
少女「ぼっちじゃない! 一人が好きなだけなの!」
男「ひっ、すいません!」
少女「……」
男「……」
少女「うっ……」
男「泣くなよ……」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:38:56.67 ID:bTau4vPoP
少女「じゃあ、先生も、ぼっち飯してたんですか」
男「ぼっちじゃねぇ!」
少女「……」
男「うん、ごめん」
男「少ないながらも友達はいたんだけどな、そいつに恋人ができてさ」
男「そいつがそっちを優先するようになって、気づいたら俺は一人だったんだ」
男「俺がどれだけあいつに頼ってたかって思い知ったね」
男「その友達は俺に色んな事をしてくれたんだ」
男「毎朝起こしてくれたり、料理を作ってくれたり、一緒に登下校したりさ」
男「でも俺はあいつに何もしてやらなかった。やれなかった」
男「あれは俺の報いだったんだ、きっと」
男「って、ごめん、全然関係ない話しになっちゃって」
少女「ううん。私、先生の気持ちわかる」
少女「辛かったんだね。先生」
男「……ありがとう」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:47:30.36 ID:bTau4vPoP
男「あれ、でも今授業中じゃないの?」
少女「私は、落ちこぼれだから……」
男「どういうこと?」
少女「授業に出ることが、できないの」
男「そんなことがあるのか? この学園は」
少女「今私達がやっている授業はね、使い魔について扱っているの」
男「使い魔……サーヴァントか」
少女「先生、学園長先生みたい」
男「……」
少女「でもね、私、要領悪いから……使い魔を見つけることができなかったんだ」
男「だから、授業に出られない?」
少女「うん。見つけられなかったのは私だけなの。だからしょうがないの」
少女「落ちこぼれだから、友達もいないし、私なんて魔法使いになんか──」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 21:55:57.33 ID:bTau4vPoP
男「君は、それでいいのか?」
少女「……」
男「あきらめるのか?」
少女「あきらめたくない!」
少女「でも、しょうがないの! 何をやってもうまくいかない! みんなはできるのに! 私だけがうまくいかない!」
少女「みんなが羨ましいの! どうして私だけこんな思いをしなきゃいけないの! おかしいよ!」
少女「私だって……私だって……みんなみたいに、ううん、みんなよりもすごい魔法使いになりたいのに!」
少女「おかしいでしょ、落ちこぼれの私がこんな……」
男「わかった」
少女「なにが!」
男「俺が君を一人前の、いや、百人前の魔法使いにしてやる」
少女「そんなこと、できるはずがない」
男「できるさ」
少女「どうして!」
男「だって俺は、とびっきりの魔法使いなんだぜ」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:00:29.59 ID:bTau4vPoP
少女「うそ……」
男「本当だよ」
少女「本当に? 先生、私に、魔法、教えてくれるの?」
男「ああ、勿論さ」
少女「でも、私なんか」
男「君にはできる!」
少女「!」
男「魔法使いの俺が宣言する! 君は絶対に立派な魔法使いになれる!」
少女「ほんと……?」
男「俺を信じてくれ」
少女「うん、わかった、私、先生を信じる」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:04:15.75 ID:bTau4vPoP
─教師寮─
男「……」
男「どうしてこうなった」
男「なんで俺はあんなことを言ってしまったんだ……」
男「なんもわかんねぇよ。どうすりゃいいんだ」
男「……あの子は昔の俺に似ていたから」
男「だから、元気付けてあげたかった」
男「これで俺が何もできないってわかったら……失望するよなぁ」
男「どうしよう……」
男「……ん? あれは、何か光っている?」
男「そうか!」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:09:59.96 ID:bTau4vPoP
─魔法世界・森─
男「確かここらへんで……」
妖精「~♪」
男「いた! おい、聞こえるか」
妖精「何かしら、この薄汚い人間は。私に馴れ馴れしく話しかけないでほしいわ」
男「なんか扱いひどくなってないか? ちょっと、頼みがあるんだが、聞いてくれないか」
妖精「なんなのかしら、この浮浪者は……」
男「頼む! なんでもする! 話を聞いてくれ!」
妖精「……今、なんでもと仰いましたか?」
男「あ、ああ。だから頼みたいことが」
妖精「そう……なんでも……」
男「なんか嫌な予感が……」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:22:17.84 ID:bTau4vPoP
妖精「私たち妖精はここの森でいつも戯れているのですが」
男「俺はお前だけしか見えないけど」
妖精「……」
男「あれ、もしかして」
妖精「さようなら」
男「ごめんなさいすいません申し訳ありません」
妖精「次はありませんよ。……そんな私の憩いの森を荒らす化物がいるのです」
男「あ、一人って認め、ごほん。ということは、もしかして……」
妖精「そう、その化物を退治して頂きたいのですわ」
男「えええええ!!」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:26:40.97 ID:bTau4vPoP
妖精「なんでも、とおっしゃいましたよね」
男「で、でも、俺、ただのみすぼらしい中年で……」
妖精「あら、とびっきりの魔法使いなんでしょう?」
男「!」
男「聞いていたのか」
妖精「妖精はいつでもどこでも潜んでいるものですわ」
男「黒いアレみたいだ……」
妖精「では、今すぐ退治してくださいませ。魔法使いさん」
男「うっ」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:28:40.41 ID:bTau4vPoP
妖精「ふふふ」
男「わ、わーったよ! やってやらぁ!」
妖精「それでこそ魔法使いさんです」
男「で、その、ば、化物ってのはどんなやつなんだよ」
妖精「あなたの後ろにいますわ」
男「え」
羽牛「ブモォー!」
男「うわああああ」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:32:36.03 ID:bTau4vPoP
妖精「きゃははは。滑稽ですわ、無様ですわ」
男「なっ、おい、お前、これどういうことだよ!」
妖精「さぁさぁ魔法使い様、早く化物牛を退治くださいな。私はいつまでも待っておりますわ」
男「くそっ、うおっ! 逃げるしか、ねぇ!」
羽牛「ブモモモモモモ」
男「うおおおおおおおおおおお」
男「いてっ、角が! 痛い! 尻が! 尻たぶが!」
妖精「もっともっと、私に楽しいワルツをお見せくださいな」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:38:35.90 ID:bTau4vPoP
男「なんで、はっ、こんな歳になって、はっ、長距離走をしなきゃいけないんだ」
男「はっ、はっ、撒いた……か?」
男「ふぅ……」
男「森でよかった、いくらでも隠れる場所がある……」
男「しかも夜だからな、視界も悪い」
男「しかし、あの牛を退治するなんて……俺にできるわけが」
男「……どうすれば」
男「方針を練りなおすか……?」
男「……」
男「ここ、どこだ?」
男「あれ」
男「俺、寮に戻れなくね?」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:52:54.95 ID:bTau4vPoP
男「おいおいマジかよ」
男「森だから、どこがどこだかまったくわからんし……」
男「しかも夜だからな、視界も悪い」
男「最悪だ!」
ブモォォォー!
男「ひっ」
男「牛の鳴き声に怯える日がこようとは……」
男「あ、雨まで降ってきやがった」
男「ちくしょう、どこか雨宿りできる場所を」
男「! あんなとこに洞穴が!」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 22:57:47.29 ID:bTau4vPoP
男「ふぃー、助かった」
男「ここなら、牛(あいつ)にもばれないだろうし……」
妖精「ちょっと、なにをしているの? 魔法使いさん」
男「わっ」
妖精「わっ、じゃないですわ。あなたは牛さんと遊んでらっしゃったのではなくて?」
男「お、お前こそ牛を煽りやがって……。いつの間にこんなところに」
妖精「飽きましたの」
男「……お前、やっぱり友達いないだろ」
妖精「……妖精はみんなこんなものですわ」
男「そうなのかぁ? あれ、この洞穴結構深いんだな」
妖精「ちょ、それ以上奥には……」
?「どうしたの?」
?「なにごとですか?」
?「なんだなんだ」
男「なんかワラワラ出てきた?」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:02:27.99 ID:bTau4vPoP
フェアリー「人間だ」
フェアリー「ほんとだー」
フェアリー「めずらしー」
フェアリー「たべちゃう?」
フェアリー「捕まえましょう」
フェアリー「めんどくさい」
フェアリー「お前は黙ってろ」
フェアリー「なんだとー」
フェアリー「ねぇたべちゃおうよ」
フェアリー「おやすみー」
男「お、お前の仲間か?」
妖精「……」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:07:19.29 ID:bTau4vPoP
フェアリー「わー」
フェアリー「人間人間、おはなししよー」
フェアリー「ぼくがはなすのー」
フェアリー「たべちゃおうよ」
フェアリー「わたしがー」
フェアリー「あれ?」
フェアリー「そこにいるのは」
フェアリー「れっとうしゅだー」
フェアリー「わーい、らくだいせー」
フェアリー「げんきだったー? おちこぼれー」
妖精「!」
男「え?」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:10:06.72 ID:bTau4vPoP
フェアリー「なんでもどってきたの?」
フェアリー「おまえのせきねーからー。きゃはは」
フェアリー「しんじゃえー」
フェアリー「たべちゃうぞー」
フェアリー「ばーか」
妖精「……」
男「お、おい、やめろよ」
フェアリー「人間のぶんざいでなにをいってるんですか?」
フェアリー「人間もしぬ?」
フェアリー「たべちゃう?」
フェアリー「消えてなくなっちゃう?」
フェアリー「ばいばーい」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:16:01.59 ID:bTau4vPoP
男「うわっ、なんだこれは……火? こいつら……魔法を……!」
フェアリー「もえろー」
フェアリー「やけろー」
フェアリー「こんがりきつねいろー」
フェアリー「たそがれよりもくらきものー」
男「うわわっ、あちっ! おい妖精、お前もなんか魔法を」
妖精「……せんの」
男「え?」
妖精「できませんの! この私は、魔法が使えない落ちこぼれのクソ妖精なんですの!」
男「なっ、なっ」
妖精「だから私はあんなところで、独りで、まるで道化者の哀しきワルツ」
男「そういうのいいから! とりあえずここから出るぞ!」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:24:36.92 ID:bTau4vPoP
男「はぁっ、はぁっ、雨はまだ強いが……これで火は消えそうだな……」
妖精「……」
男「おい、大丈夫か」
妖精「……ええ」
男「とりあえず、あの木の下に移動しよう。多少雨は防げそうだ……」
妖精「……」
男「あの、さ」
妖精「……なに」
男「俺、寮まで、戻りたいんだけど」
妖精「戻れば」
男「道がわからないんだけど」
妖精「……」
男「おーい」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:28:48.93 ID:bTau4vPoP
妖精「……あっち」
男「え?」
妖精「あっちに真っ直ぐ行けば」
男「寮につくのか?」
妖精「……」
男「そ、そっか。ありがとな」
男「とりあえず、今日は俺、帰るわ」
男「じゃ、じゃあまたな」
妖精「……」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:32:21.17 ID:bTau4vPoP
男「……」
男「なんか……さらに道が険しくなった気がするんだが……」
男「雨は止まないし……」
男「ああ……」
男「本当にこっちで合ってるのか?」
ブモォォォー!!!
男「うおっ!」
男「あ、足がっすべっ」
男「なっ、ここ、崖っ?」
男「おちっ!」
妖精「……」
妖精「ばーか」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:35:43.95 ID:bTau4vPoP
幼なじみ「ねぇ、いっしょにあそぼうよ」
男「……きみ、だれ?」
幼なじみ「おさななじみっていうの! あなたのおとなりさん!」
男「おとなりさん?」
幼なじみ「うん、おとなりさん!」
男「おとなりさんって、なに?」
幼なじみ「しらない!」
男「へんなの」
幼なじみ「なかよくしなさいってままがいってた!」
男「ふーん」
幼なじみ「ねぇ、あなたのおなまえは?」
男「ぼくのなまえは──」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:49:05.89 ID:bTau4vPoP
男「……夢?」
男「ここは……森か」
男「これが夢だったらよかったのにな……」
ブモォォォー!
男「しつこいな……あの牛」
ブモォォォー!!
キャー!!
男「ん?」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/13(火) 23:50:17.51 ID:bTau4vPoP [78/78]
男「あ、あの妖精、襲われてやがる」
男「お前がけしかけたんじゃなかったのかよ……」
男「俺を落とした罰だ……」
男「いい気味だ」
男「……」
男「くそっ!」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:11:55.49 ID:bk0cymgWP [1/11]
男「おい、くそ牛!」
羽牛「ブモッ」
妖精「あ、あなた……」
男「こいつを見やがれ!」
羽牛「ブモォ!?」
男「いくぜ! 俺の魔法を見せてやる!」
妖精「そんな木の棒で何ができるというのです!」
男「着火ぁ!」
羽牛「ブモォォォォォ!」
妖精「そ、そんな……あの男の手から……火が……!?」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:13:41.44 ID:bk0cymgWP [2/11]
ライターと紙と乾いた木の棒。
ただその3つがそこにあっただけだった。
ライターはポケットに。タバコは買い忘れたままだけど。
紙はポケットティッシュ。駅前に配っていたお兄さんに感謝だ。
乾いた木の棒は運良く雨を避けた場所にあっただけだ。
これらはすべてたまたま揃っただけ。
それがこの俺の魔法の正体だった。
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:14:35.28 ID:bk0cymgWP [3/11]
男「はっはー! 動物は火を恐れるんだろ! これでどうだ」
羽牛「ブモッ! ブモッ!」
男「よっしゃあ、苦しんでやがる!
羽牛「ブモォォォォォォォォォォ!!!!!」
男「ってこっちに来たぁ!???」
羽牛「ブッモォォォォォォォ!」
男「ひ、ひぃぃぃぃ! 飛んだぁ!」
羽牛「ブモッフ!」
男「来るなぁぁぁ!」
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:15:54.27 ID:bk0cymgWP [4/11]
男「はぁ……はぁ……」
男「あの牛、崖から落ちやがった……」
男「飛んで、こないな……?」
妖精「……羽牛は、自重が大きすぎるため、この崖のような高度な距離は登ることができませんの」
男「お前……」
妖精「だからここにいれば安心ですわ」
男「そうか」
妖精「あなた、本当に魔法使いでしたのね?」
男「……え?」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:17:35.57 ID:bk0cymgWP [5/11]
妖精「先程の火の魔法、見事でしたわ。木という触媒を用いて、手中に出した小さな火を増幅させる……私には到底不可能でした」
男「あ、ああ……」
妖精「あなたを崖から落としたこの卑しくも卑劣な下等妖精の私。それでもあなたは華麗に助けてくださったのですね……」
男「(こ、こいつ、人に向けても自分に向けても言葉が悪いな……)」
妖精「この私、あなたに従います」
男「……へ?」
妖精「私は只今をもって、あなた様のしもべとなります。なんなりとご命令くださいませ」
男「ちょ、ちょっとどういうこと?」
妖精「私は感激いたしました。あなたの器の大きさにです。私のような役立たず、ご迷惑というのは理解できます。でも、私は、あなたのために役に立ちたいのです!」
男「え、えーと」
妖精「大魔法使い様。よろしければ私めにあなた様のお名前をお教えくださいまし」
男「お、俺の名前は──」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:22:52.93 ID:bk0cymgWP [6/11]
男「よぉ」
少女「あ、男先生」
男「またここか」
少女「しょうがないんです……。? なんでそんなに包帯巻いてるんです?」
男「……気にすんな」
少女「それで、何か?」
男「お前にいいものを持ってきた」
少女「?」
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:27:28.39 ID:bk0cymgWP [7/11]
妖精「……」
少女「わっ、こ、これって……」
男「妖精だ。こいつは立派な使い魔だろう?」
少女「す、すごいです。妖精なんて高度な種族を使い魔にしてるなんて……さすが男先生!」
男「何言ってるんだ」
少女「え?」
男「これはお前の使い魔だぞ?」
少女「え、えぇぇぇ!??」
男「そのために連れてきたんだ」
少女「で、でもでも、私なんか」
男「こら」
少女「わっ」
男「魔法使いへのレッスンその1だ。『私なんか』なんて言葉を使うんじゃない。すごい魔法使いの俺が言ってるんだぜ」
少女「はっ、はいっ」
妖精「……ちょっと」
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:31:55.52 ID:bk0cymgWP [8/11]
男「どうした?」
妖精「私、このオボコの使い魔になるんですの?」
男「そうだ」
妖精「嫌ですわ! こんないかにも才能のなさそうな子の使い魔なんて!」
少女「きゃっ」
妖精「私は男様、あなた様だけのモノでありたいんです!」
男「(俺はまったく才能ないけどな)」
男「いいか、妖精」
妖精「はい」
男「この子、少女は俺の──そう、弟子だ」
妖精「……はい」
男「だから、お前が俺の……えーっと、モノであることには変わりがないんだよ」
妖精「むーっ」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:41:21.70 ID:bk0cymgWP [9/11]
妖精「……わかりました。あなたの言葉は絶対ですものね。従いますの」
男「そ、そうか。よかった。ありがとう」
妖精「(ただし、あとでご褒美を頂きますのよ)」
妖精「チュッ」
男「わっ、お前、頬に」
妖精「ふふ、契約ですの」
少女「むっ」
妖精「妖精と申します。しぶしぶですが、あなたの使い魔になってあげますの」
少女「……うん。よろしくね。私の名前は少女だよ」
少女「あの……」
妖精「何ですの」
少女「……私の使い魔になってくれて、ありがとう」
妖精「!」
妖精「……どういたしまして」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:56:35.04 ID:bk0cymgWP [10/11]
次回予告
妖精は男の布団に潜り込み、ついに秘境にたどり着く
一方少女は新たに芽生えた気持ちに戸惑い、男に個人面談を依頼する
学園に襲い来る幼女の群れ
たった一人で立ち向かう童貞の新任教師
男は学園の深部にたどり着き、チャーム(魅了魔法)を手に入れる
男と妖精と少女の3人がベッドの上に集うとき、そこでいったい何が起きるのか
次回、寝台の戦場
この次も、サービスサービスゥ!
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:02:29.82 ID:bk0cymgWP [11/11]
あ、さるってました
残ってたら明日書きます
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 00:59:42.60 ID:iHPwWBgs0 [3/4]
つかお前何回か見たことある希ガス
>>138
最後にスレ立てたのは2年くらい前ですが
その頃は結構立ててました
続きます
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