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唯「そのときは、また」【前編】

1 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:08:09.03 ID:Tz1MTqc20 [1/74]
夏休みのとある日

その日は部活もなく私はいつも通りだらだらとしていた

「そしてこの蒸し暑さのせいで私こと平沢唯は力尽きようとしていたのだった」

憂「お姉ちゃん誰と喋ってるの!?」


唯「ぅ………憂…いま……までありが………とう」バタッ

憂「えーっ!?お姉ちゃーーーん!!」

憂「あ、そういえばアイス食べる?」

唯「食べる!」ムクッ
憂「今持って来るね!」

2 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:09:45.47 ID:Tz1MTqc20
この世界は平和そのものであり、私には毎日が幸せであったのだ


だけど現実はそうも甘くはなくて、今は高校生3年生の夏休みで、こうもだらだらとはなかなかしていられないのだった

唯「もう最後か…」

ミーンミンミン


来年の今頃なにやってるんだろーなあ…

唯「さてと」

私はムクッと立ち上がり、窓を開け空を見上げた


夏の空ってどうしてこんなに青いんだろう

そういえば和ちゃんが反射がどうのこうのって…まあいいや

そんでもって今日は絶好のお出かけ日和

こんな日に1日中勉強なんてしてられますかって話だよね


4 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:11:33.25 ID:Tz1MTqc20
憂「お姉ちゃんアイス…………」

唯「私の夏はまだ終わってないのさ!」
憂「お、お姉ちゃん?」

唯「ん?」

憂「カレンダー…」

唯「そんな……」


始まったばかりだったの私の夏は


唯「は…8月31日…………?」


すでに終わろうとしていた



唯「えーーーーーっ!?」


5 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:13:31.87 ID:Tz1MTqc20
「おい、唯!」

「唯ちゃーん」

唯「はっ」

夢か…

律「ったく…せっかく図書館まで来て勉強してるんだから寝るなよー」

唯「り、りっちゃん今日何日?」

律「今日?今日は8月2日だけど?」

唯「ぁふーーー」

律「どうした?」

唯「いや夢でね『今日は8月31日だった』って感じの夢見ちゃってさ」

澪「嫌な夢だな」

紬「私も最近ね、変な夢を見るの」

唯「どんなどんなー?」



6 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:16:11.03 ID:Tz1MTqc20
紬「受験に失敗しちゃう夢!」

律「やめろぉ!」

律「ってそんなことはいいからさっさと勉強しようぜ」

澪「せめて机の上になんかそれらしいもの出してから言えよ」

律「頭の中で勉強してるんですー」

唯「りっちゃんスゴい!」

律「えへん!」フンス

その時の自分にとっては1つの日常の風景でしかないのに、ある時それをふと思い出すとなんでかそれがすごく懐かしくなる


思い出はすごくせつないんだ


7 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:17:31.55 ID:Tz1MTqc20
そして私はこんな日がずっとずーっと続けばいいなーなんて考える

律「ゆ、唯、なに1人で笑ってんだ?」
唯「な、なんでもないよぉ」

それが無理なことはわかってるんだけどね


でもまあ今が楽しければそれでいいのかな



時間は午後6時

律「疲れたー」グテー

唯「本当本当~」

澪「久しぶりにお前らちゃんと勉強してたな」

律「やるときはやりますよ、りっちゃんだって!」

唯「おー!さすがだねりっちゃん!」


8 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:18:35.79 ID:Tz1MTqc20
紬「ねーみんな!今日近くで花火大会やってるから行こうよ!」

律「おっいいねー!」

澪「まあたまにはいいか…」

唯「さーんせー!」
律「そうと決まれば!」


会場

ガヤガヤ

律「うわー、人多いなー」

紬「でもこっちの方が花火大会って感じがするわぁ!」

律「こっち?」

紬「私花火をこんな大勢と見るの初めてなのー」

律「へー」

澪(なんという極楽…)



9 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:20:28.89 ID:Tz1MTqc20
澪「…にしても暑いな」

唯「本当……もう溶けちゃ…溶けてる!私溶け始めちゃったよりっちゃん!」

律「お前はアイスクリームか」


澪「お」

ヒュルルルルルルル

パーン

紬「綺麗ね…」

澪「夏って感じするな」

律「本当だな…」


みんなの瞳にはどういう風に写ってるのかな



10 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:26:18.55 ID:Tz1MTqc20
パーン

この一瞬も、あの一瞬もいつかは思い出になっちゃうんだろうな

私たちの高校生活はあの打ち上げ花火みたいに

ヒュルルルルルルル

パーン

儚いのかな


唯「ねえりっちゃん?」

律「ん?」


11 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:28:29.13 ID:Tz1MTqc20
唯「私たちの高校生活ってさ、あの花火と似てるよね」

律「どうした急に」

唯「え?いや、な、なんでもないよ!あはは……」

私がそう言うのをりっちゃんは不思議そうに見ていたが、また視線は花火へと戻った

律「それはちょっと違うかな…」

唯「え?」

パーン


りっちゃんが言いたいことはよくわからなかったけど、その日見た花火は多分私の心で輝き続けるのだろう


12 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:30:17.34 ID:Tz1MTqc20
梓家

梓「先輩達ちゃんと勉強してるかな…」

憂「大丈夫だよ、お姉ちゃん達すごく頑張ってるみたいだから!」

梓「ふーん」

純「私たちも来年受験だ…」

純「嫌だーーー!」

憂「しょうがないよ、こればっかしは…」

純「行かないで私の楽しい時間ーー!」

梓「純も今からちゃんと勉強しておいた方がいいんじゃない?」

純「夏休みくらい遊んだっていいじゃん」

梓「まあそれはそうだけどさ」


13 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:31:46.21 ID:Tz1MTqc20
純「ていうか軽音部って夏休み練習ないの?」

梓「みんな受験勉強忙しいからね…」

純「そうなんだ…」

梓「………」


憂「な、なんか眠くなってきちゃったな」


純「えー、まだ10時だよー?」

憂「あ、まだそんな時間かあ…あははごめんごめん」

梓「………」

憂(梓ちゃん…)


14 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:32:46.69 ID:Tz1MTqc20
律「いやぁ綺麗だったなー!」

澪「本当だな」

紬「本当ねー」

最近になってふと感じるんだけど、やけに時間が早く感じるんだよね

なんでだろう

澪「ゆーいー?」

唯「あ、え?なに?」

澪「いやボーッとしてるからどうしたのかなって」

唯「ごめんごめん、ちょっと……そう!花火に感動しちゃって」


16 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:34:18.32 ID:Tz1MTqc20
澪「言葉が出ないほど感動するなんてことあるんだな…」

唯「いやー、あはは」

でもそれはきっと私だけじゃないはずなんだ

みんな顔に出さないだけで心の中ではきっと私と同じことを考えてるんだろうな
いつかこんな毎日が、あたりまえの毎日がすっごく懐かしく感じる日が来るんだろうなって



17 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:35:42.68 ID:Tz1MTqc20
帰り道、私はふと空を見上げる

唯「きれい…」

その日の空はとても綺麗な夜空だった


ガチャ

唯「ただい……って今日憂お泊まり会だっけ」


いいなー

高校二年生なんて羨ましいなあ

戻れるなら戻りたいよ

だけどダメだ、前に進まなきゃ!


18 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:37:20.63 ID:Tz1MTqc20
後ろばっかり見ててもしょうがないよ!

そう自分に言い聞かせても、どこか毎日が名残惜しいんだ


卒業式なんかきっと、

唯「きっと私……泣いちゃうんだろうな」

大人になったらまた高校生に戻りたいって思うんだろうな


唯「いやだよ…そんなの…」


その日私はそのまま眠りについた


20 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:39:19.30 ID:Tz1MTqc20
翌日

唯「何時…?」

朝の9時24分

まだ憂帰ってきてないんだ

外からは雨の音が聴こえた

案の定窓を開けると昨日の天気が嘘のようにどしゃ降りだった

唯「今日は1日家かな…」

1人だとついゴロゴロしちゃうんだよね


21 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:40:13.10 ID:Tz1MTqc20
だから勉強なんてやりませーん、なんて言ってもいられないんだけど

こうやって1日1日が過ぎていって気がつけばもう文化祭、そして卒業


想像するとヤバいんだよねー


唯「ふわぁ…」

あくびを1つ

さて、ギターでも弾こうかな


22 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:41:27.39 ID:Tz1MTqc20
その日雨は止むことはなかった


8月16日

もう夏休みも残り二週間ほどで終わってしまう

早い…

だから久しぶりに部活をやることになった

音楽室
「やっぱりあずにゃんは早いねー」

梓「唯先輩が二番…」

唯「あーずにゃーーーん」ムギュ

梓「ひいぃ」

唯「お利口さんだねーあずにゃんは」ナデナデ

梓「うー」



23 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:43:29.46 ID:Tz1MTqc20
ガチャ

唯「あ!」

律「朝っぱらから何やってんだよ…」

澪「さー今日は目一杯練習するからな!」

紬「もちろんケーキ持ってきたわよ」

梓「皆さん……!」

ジャカジャカ♪



やっぱりこうやってみんなと演奏するのは楽しいな

それはみんな思ってることなんだよね、きっと


25 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:45:26.68 ID:Tz1MTqc20
ジャーーーーン♪


唯「もう一回やろ!ね?もう一回!」

律「しょうがないなーじゃーいくぞー!」

むぎちゃんには悪いけどティータイムなんてもったいないよ

やっと今になってあずにゃんの気持ちがわかった

その後悔したくないって気持ちに

その日私たちはずっとずっと演奏を続けた



26 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:48:33.86 ID:Tz1MTqc20
8月31日

とうとう夏休みも最終日を迎えた

そう、いつか夢で見たこの日が

唯「うぅ~終わってしまうのですね~」ポロポロ

この日は夏休み最後に軽音部のみんなで集まろうと私の家にみんなを呼んだ

澪「今年の夏もなんだかんだ結構遊んじゃったなー…」

紬「でもみんな受験終わったらいっぱい遊べるわよ!」

律「笑って終えられたらの話だけどな……」





27 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:50:56.28 ID:Tz1MTqc20
梓「でも先輩達頑張ってたって澪先輩が言っていましたよ?」

澪「ちょ、梓…!!」

唯「澪ちゃんやっぱりちゃんと見てくれてるねー」

律「澪……」

澪「え…?」

律「みーーーおーーー!!!!」

澪「う、うわぁ!こっち来るなー!」

そんな風景を見ながらあずにゃんは笑ってた

いつもの変わらない笑顔

梓「?」

あずにゃんとつい目が合ってしまったので私は目を反らしてしまった



29 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:52:26.66 ID:Tz1MTqc20
ミーンミンミン

外に出るとまだまだ夏の熱い陽射しは私たちを照らし、うるさいくらいセミが鳴いていた


でもいつの間にかセミの鳴き声も聴かなくなって、いつの間にか夏が終わってるんだよね


ついさっきりっちゃんがみんなと急に行きたい場所があると言って私たちを連れ出した

行き場所がわからないまま私たちは歩き電車に乗りそしてまた歩いた

律「この辺かな」

りっちゃんがそう言う頃にはもうすっかり日が暮れていた


30 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:55:06.87 ID:Tz1MTqc20
澪「こんなとこまで連れてきてしょうもないことだったら許さないからな!」

律「んなことわかってるよー」

梓「せめて何が起こるのか教えてくださいよ」

律「まーもうすぐわかるよ」

紬「えーなになにー?スゴくドキドキするわあ」

なんだろう


そして"それ"が見え始めた時、私たちは驚愕した


夜空いっぱいに輝く星たちが私たちを包んだ


澪「すごい…」

正直本当に言葉にならなかった


31 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:56:58.84 ID:Tz1MTqc20
律「いやー夏休みに一回はみんなで見たいなって思ってたんだけどさ、なかなか都合合わなくて」

散々と光る星が私たちを魅了する


律「すごいだろ?」
その後はずっとみんな黙って夜空を見上げていた

星も花火も似ている
夜にしか輝けない

私たちも一緒

輝けるのは今のうちだけなんだ


この景色もまた明日には思い出になってるんだろうな

唯「ねえ、みんな―――――――――――………



32 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 00:59:57.85 ID:Tz1MTqc20
始業式

さわ子(ついに始まるわ…2学期が)

ガヤガヤ

さわ子(この扉を開いた瞬間始まる…)

さわ子(一歩を一歩踏み出すのよさわ子!)

ガラガラガラ

ガヤガヤ

律「あー!さわちゃん久しぶりー!」

さわ子「起立!礼!」

「おはようございます」

さわ子「今日から2学期です。夏休みはたくさん勉強できましたか?受験に向けてまたこれからも頑張ってくださいね!あと体調管理にはちゃんと気を付けるように、でわ!」

澪(早っ…)

律「……先生?」


33 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:02:25.21 ID:Tz1MTqc20
さわ子「な、ななな何?」

さわ子(それから先は言わないで)

律「なんかさー、」

さわ子「やめ――――、」

律「太った?」

紬「そう言えば…」
さわ子「………」

律「ご……ごめんなさい…つい…」

さわ子「そうよ」

律「え?」


35 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:05:55.04 ID:Tz1MTqc20
さわ子「その通りよ」

澪(律のやつ新学期早々なにやってんだよ!)

さわ子「…………せいよ」

さわ子「あなたたちがなかなかティータイムやってくれないから自分で買って1人ティータイムやってたらこの有り様よ!!全部あなたたちのせいよ!バカ!」タッタッタ


律「やべ…」

クラスがシーンとしてしまった

ただ私はスゴく可笑しかった


こうして私たちの2学期は始まったのであった



37 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:08:14.95 ID:Tz1MTqc20
放課後音楽室

律「やっちまったな…」

澪「お前も女なら気持ちくらいわかるだろ!」

律「悪い…」

澪「ったく…」

2学期が始まったってことはそろそろ文化祭が始まる

そしてその文化祭が終わったら私たちは一旦休憩

だからこの1ヶ月は悔いが残らないように練習しなきゃ!

梓「あのー…そろそろ練しゅ」



38 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:09:38.99 ID:Tz1MTqc20
唯「練習しよっ!」

梓(え・・・・)

律「おいおいどうしたんだよ唯」

唯「もう文化祭まで時間無いんだしちゃんとやろーよー!」
澪「そうだな」

律「えー」

澪(まさか唯がこんなこと言うようになるなんてな…成長したな)

梓(唯先輩…)


40 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:10:26.03 ID:Tz1MTqc20
その日の帰り

唯「じゃーねー!」
みんなと別れ、私はあずにゃんと二人になった

梓「あのー」

唯「ん?」

梓「先輩変わりましたよね」

唯「そうかなあ」

梓「なんていうか立派になったっていうか…」

唯「べ、別にあずにゃんにそんなこと言われても嬉しくなんかないんだからね!」

梓「ツンデレですか」

唯「そうです!」フンス


41 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:11:16.52 ID:Tz1MTqc20
唯「…でもまあ、なんかもっと時間を大切にしなきゃなって思ってさ」

梓「……」

唯「一秒でも多く"五人で"演奏してたいから」

梓「先輩…」

唯「なんて私が言うセリフじゃないよね、あはは…」

梓「そんなことないです」

唯「本当に?」

梓「私すごく嬉しいです」

梓「私も先輩とずっと一緒に…」

梓(できることならずっと一緒に)


42 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:12:08.10 ID:Tz1MTqc20
唯「とりあえず文化祭、絶対成功させようね!」

梓「もう風邪引かないでくださいよ?」

唯「わかってるよー」



唯「バイバイあずにゃん!」

そして私たちはそれぞれの帰路に着いた

梓(そうか…もう終わっちゃうんだ)

梓(早かったなあ二年間)

梓(色々あったな…)

梓(今となっては本当に感謝してますよ、先輩)

梓「戻れるなら戻りたいな…」




44 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:13:04.47 ID:Tz1MTqc20
文化祭前日

本当あっという間

まだ昨日夏休みじゃなかったっけ?

いや違うなもっとだ
昨日入部したようなそんな感じがする


律「いよいよか…」
紬「早かったねー」
澪「明日で終わりか…」

唯「最後くらいお茶にしようよ?」

澪「それもそうだな」

お茶をしている間は特に交わす言葉はなくてみんな感慨にふけているようだった

それもそうだよね…

1つのことが終わろうとしているんだもん


46 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:14:28.76 ID:Tz1MTqc20
どんなに良い大学に行けても、どんなに良い会社に入っても、お金持ちになっても、もう二度とこの一瞬には戻ってこれないんだから


みんなの顔を見るとどんどん思い出が浮かんでくる

楽しい思い出も、ちょっと辛い思い出も

澪「あ、あのさ…写真撮らないか?」


紬「いいわね!撮りましょう写真」


澪「よし、セルフタイマーOKっと」

律「早く早く!」

澪「待て待て!」

ジリジリジリ

もう本当に終わっちゃうんだね

明日は絶対泣かない

私は心の深くにそう決めた


カシャッ


47 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:15:41.46 ID:Tz1MTqc20
文化祭当日

律「みんな体調は大丈夫かー?」

澪「OK!」

紬「大丈夫!」

梓「大丈夫です!」
唯「大丈夫大丈夫!」

律「よし!」


律「ではでは、最後に軽音部部長より言いたいことがある!」


やめてよ…りっちゃん

泣きそうだよ

澪ちゃんなんてもう目がうるうるしてるんだよ?



48 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:17:05.43 ID:Tz1MTqc20
律「よくここまでやってくれた。あとはこの文化祭を成功させるだけだ」


律「なーに、心配することないさ。みんな一緒なら大丈夫だから」


バタン

和「そろそろ時間よ」

律「あっ、はーい!」

和「頑張ってね」

和(あの唯がとうとうここまでね……よく頑張ったって言いたいけど今はまだ早そうね)

律「よっしゃー!いくぞー!」

一番りっちゃんが泣きそうな顔してるじゃん

って私もひどいんだろうなあ


50 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:19:03.81 ID:Tz1MTqc20
そういえば全部ここから始まったんだよね…

全部の思い出がここに詰まってるんだ

澪「おい、唯!早く行くぞ!」

唯「あ、待って!」
タッタッタ

もうここに取りに来る忘れ物はない


じゃあね




さわ子「ついにこの日が来たわね!みんな」

律「さわちゃん…」

さわ子「悔いのないようにね!」

澪「先生…」

さわ子(私の時もこんな感じだったからみんなの気持ちすごいわかるわ)



52 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:20:21.68 ID:Tz1MTqc20
『次は放課後ティータイムによるバンド演奏です』


始まりがあれば終わりがある

それは当然のことなのに

それがわかってるのに悲しいんだ

でも今日は泣かない!

だってそしたら気持ち良くあずにゃんに軽音部渡せないもん
あずにゃんだって私が泣いてたら気持ち良く進級できないもん

だから今日は泣かない!

『キャー』

『頑張れー!』


55 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:22:00.70 ID:Tz1MTqc20
一年生のあの日軽い気持ちで入った軽音部

一生懸命みんなでバイトして買ったギター

顧問探し

楽しい海での合宿


一回目の文化祭


新歓ライブ

新しい部員


二回目の合宿、文化祭、新歓ライブ

今年は山にも行った
受験勉強

花火大会

私たちを包んだ星空


56 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:22:51.19 ID:Tz1MTqc20
瞳を閉じればいつもそこにはそれがある
みんなと笑いあった日々が

みんなと演奏した日々が

それがもうすぐ終わろうとしているんだ

ねぇ、あの日の私

私、


ちょっとは変われたのかな


57 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:23:39.22 ID:Tz1MTqc20
ジャーーン♪

パチパチパチ

沸き上がる歓声と拍手

そして、私たちはとうとう最後の曲を迎えた


そう本当に最後の曲

唯「ついに…ついに私たち最後の曲です」


律(本当に終わっちゃうんだ…)


唯「だけど、」

ああダメだ

いやいや泣くな私!

今までの思い出が…


58 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:24:26.20 ID:Tz1MTqc20
律『唯ー!』

澪『こらー唯!』

紬『唯ちゃんったらもう………ウフフ』
梓『先輩やめてくださいよー』


唯「私たちの演奏はこれで終わりです………」

唯「だけど…」


こらえろ私…!



唯「だけど本当はぁ……ヒグッ…………もっと……もっとみんなと一緒…にぃ…バンドやってたかった……!」

紬「………」ポロポロ

澪(……泣かないとか言ってたくせに……お前が泣いてどうすんだよ)ポロポロ



59 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:25:21.38 ID:Tz1MTqc20
律(ったく…)

律「唯!」

唯「へ?」

律「お前が泣いてたら誰が歌うんだ?」

唯「……ごめん…ヒグッ」


律「そんなんじゃ最後気持ち良く終わらせられないぜ?」

唯「うぅ……」ポロポロ

梓「先輩!」

唯「あずにゃ……ヒグッ」

梓「そんな先輩嫌です!私に最後まで心配かけないでください!」

梓「最後くらい……私を泣かせるような演奏してみせてくださいよ!」



60 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:27:43.11 ID:Tz1MTqc20
そうだ…まだ終わってないんだ

『唯ー!頑張れー!』

『唯ー』

結局泣いちゃったけど、見ててねあずにゃん、みんな!

私もう泣かないから!

唯「ふー…」

律「頑張れ唯」

澪「唯!」

紬「大丈夫よ唯ちゃんなら」



61 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:28:36.37 ID:Tz1MTqc20
そうだ

どんな思い出にもそこにはみんながいる

どんな楽しい思い出も辛い思い出もみんながいたから楽しかったし乗り越えてこれたんだ


結局私はまた今も助けられてるし

でも逆に私は何をしてあげられたのかな


でもまあそれは今からでも恩返ししていけばいいのかな

梓「先輩!」


ありがとう、みんな

唯「この曲は私たちの思い出の曲……そして始まりの曲……!」

唯「ふわふわ時間!」


63 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:29:45.24 ID:Tz1MTqc20
悲しむなんてことはない

だってこれは終わりなんかじゃない

私たちの始まりなんだから



これからだってそう

どんなことでも乗り越えていける気がする

みんなと一緒なら――――――――――――……


64 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:31:07.79 ID:Tz1MTqc20
『卒業証書授与』


ついに私たちは卒業式を迎えた

あの文化祭以降、私たちは軽音部を引退(?)し、受験勉強に勤しんだ

結果はみんな第1志望に合格

でも最後まで助けてもらっちゃったけどね


『平沢唯』

唯「はい!」


この学校ともお別れか

楽しかったな


65 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:32:12.23 ID:Tz1MTqc20
卒業式後、音楽室


律「いやあ、ついに卒業かー!」

紬「もうここでこうやってお茶をすることもないわね」

梓「たまには来てくださいよ?待ってますから」

澪「そんなのあたりまえだ!いつでも来ていいように心構えしとけよ?」

唯「……」

梓「唯先輩?」

唯「え?あ、私もちゃんと行くからね!ケーキ食べに!」

律「ここは喫茶店か」



66 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:33:04.56 ID:Tz1MTqc20
唯「あずにゃんも寂しくなったらいつでも呼んでね!」

梓「はい!もちろんです!」

梓「先輩達よりもすごいバンドにするんですから!」

律「ほー、そりゃー楽しみだな!」

梓「笑っていられるのも今だけですよ?」

その後私たちは夜まで音楽室で話した




67 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:33:58.87 ID:Tz1MTqc20
帰り道

律「春休み中遊ぼうなー」

澪「梓を頼むぞー唯ー!」

紬「またいつか別荘にお泊まり会しようねー!」

唯「おー!」

梓「あはは…」


あずにゃんと二人だけの帰り道


何回も何回も一緒に帰ってきたのに

最後の一回ってなるとすごい寂しい

それはあずにゃんも一緒なのかな


68 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:34:55.49 ID:Tz1MTqc20
梓「先輩…」ギュッ

突然私はあずにゃんに抱きつかれた

唯「え、ど、どうしたの?」

私はちょっとびっくりして焦ってしまった

梓「………グスン」

唯「泣いてるの?」

そっか…今まであずにゃん泣かなかったけど本当はずっと我慢してたんだね

梓「本当は怖いんです…心配なんです…」ポロポロ

梓「不安で眠れないこともあるんです!」
唯「あずにゃん…」


69 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:35:49.11 ID:Tz1MTqc20
梓「私ひとりぼっちで…何ができるのか、何をしたらいいかわからないんです………」

唯「大丈夫だよ、あずにゃんなら」

梓「………グスン」

唯「それにあずにゃんはひとりぼっちなんかじゃないよ?」
唯「私たちだっていつでも相談のってあげるし、それに憂や純ちゃんだっているし」

梓「そうですよね………すいません」


そしてついに私たちにも"別れ"がきた

家も近いし会いたい時いつでも会えるのになんでこんな気持ちになるんだろう




70 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:36:42.21 ID:Tz1MTqc20
梓「先輩!」

唯「あずにゃん…」

私はこぼれ落ちそうな涙をぐっと堪えた

梓「三年間お疲れ様でした!」

とびっきりのあずにゃんの笑顔の瞳にはまだうっすら涙が浮かんでいた

唯「頑張ってね!」

梓「はい!」



そして私たちはそれぞれの道へと一歩を踏み出した


71 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:37:25.90 ID:Tz1MTqc20
その時、


「せーーーんぱーーーい!!!」


後ろを振り返るとあずにゃんが私を大声で呼んでいた

「本当にありがとうございましたーーー!!!」


そう言ってあずにゃんは私に向かって大きく手を振り自分の家の方角に走っていった


それはこっちのセリフだよあずにゃん


本当に、


本当にありがとう


72 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:38:03.24 ID:Tz1MTqc20
律家

聡「あ、姉ちゃんおかえ――――」

律「うわあああああああん!」

律母「どうしたの?」
聡「いやそれがよくわからいんだよ」


紬家

執事「お帰りなさいませ紬様」

紬「う………」ポロポロ

執事「だ、大丈夫ですか?」

紬「いいの…これは悲しい涙じゃないから」


73 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:39:36.64 ID:Tz1MTqc20
澪家

澪母「お帰り」

澪「ただいま」

澪母「卒業おめでとう」

澪「ありがとう」

澪母「ご飯は?」

澪「今日はいい」

澪母「そう…」

澪「ごめん…もう寝る」

澪母「今までお疲れ様」


バタン


澪「……ヒグッ」

澪「うう……」ポロポロ


74 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:40:25.79 ID:Tz1MTqc20
唯家

憂「お姉ちゃんお帰り!今までお疲れ様!」

唯「うっ…」ポロポロ

唯「うーーーいーーー!!!」

唯「うああああああん」

憂「良く頑張りました」ナデナデ

唯「えへへ…」


こうして私達の高校生活は終わった



そして季節が過ぎ

また春が来た


75 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:41:41.98 ID:Tz1MTqc20
大学生になってからはなかなか暇な時間が無かったものの、軽音部のことはメールや電話で部活の状況を聞いた


あずにゃんの話ではどうやらなんとか新入生が入ったらしい

これで心置き無く大学に通える


そんなある日のことだった


憂「お姉ちゃん、ちょっといいかな」

私は憂によびだされた

憂の顔から察するに楽しい話ではないんだということがわかった


76 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:44:04.60 ID:Tz1MTqc20
憂「………」

唯「どうしたの?」
憂「実はね、」


「軽音部…廃部になっちゃったの」


一瞬耳を疑った
唯「そんな…」

唯「で、でもあずにゃんは新入生入ったって」

憂「実際見た?」

唯「いやだって…」

憂「梓ちゃんはお姉ちゃん達に心配かけないように嘘ついてたの」

唯「そんな……だっていつでも相談乗るからねって私…」

憂「自分から聞くような努力はしたの?」

唯「そ、そんなこと言われても…」

唯「とりあえず、あずにゃんに話聞いてくる!」
タッタッタ



77 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:45:11.24 ID:Tz1MTqc20
喫茶店


梓「お待たせしました」

唯「………」

梓「話っていうのは…」

唯「軽音部…廃部になったんだって?」
梓「わかっちゃいましたか…」

唯「どうして何にも言ってくれなかったの?」

梓「……」

梓「最初は私だって頑張りましたけど…なかなか上手くいかなくて…」

梓「それでもいつかきっと入ってくれるって思ってたんですけど…」

唯「でもなんで嘘なんてついたの?」

梓「わかりませんか?私の気持ち」


79 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:45:51.85 ID:Tz1MTqc20
唯「私達を安心させるため?それはおかしいよ」

梓「ち、違います!」

唯「じゃあなに?」

梓「私一人の力でやりたかったんです」

梓「だ、だいたいいいじゃないですか、どうなったって!私の部活なんですし」

唯「………」

梓「それに私は十分二年間楽しめましたし」

唯「違う…」

唯「それは違うよ」
バンッ

梓「せ、先輩!?」

唯「もういいよ!」
タッタッタ

梓「………」



80 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:46:40.94 ID:Tz1MTqc20
嘘だよそんなの…

だって対バンする約束したじゃん

あんなに目を輝かせて言ってたのに


それでも私は怒ってしまった
多分頼りない私のせい

どこで間違えちゃったんだろう

やっぱり高校生は楽しかったなあ

できることなら、

もう一度過去に戻ってやり直すのにな


もう一度……


「戻りたい?」


81 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:52:51.87 ID:Tz1MTqc20
唯「え……?」

「まったく・・・・あなたって人は・・・」

聞き覚えのある声
私は後ろを振り返る

だが影に隠れて顔が見えない

「いい?チャンスは一度だけよ」

チャンス?何の話?

唯「え、ちょっと意味が…」

「変えてきなさい」

「未来を」

唯「うわっ!」

私は目映い光に包まれた

「あなたならできるはずよ」


「唯ちゃん」



84 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:55:29.70 ID:Tz1MTqc20
「…………わさん」

唯「…………」

さわ子「平沢さん!」

唯「うわあっ!」

「あははははは」

え?

紬「唯ちゃんまた…」

澪「まったく新学期早々居眠りか」

律「唯らしいな」


そんな…

唯「りっちゃん!今私何年生?あと今日何日?」

律「はあ?高三の4月8日だけど…」


85 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:57:14.16 ID:Tz1MTqc20
唯「わ…私…」

本当に戻ってきちゃった………!



さわ子「……」ピキピキ

唯「さわちゃーーん久しぶりー!」

さわ子「あとで職員室来てもらえるかな?」ピキピキ

唯「うん!行くよ!」

澪(なんという肝っ玉…!)



86 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:58:46.80 ID:Tz1MTqc20
職員室


さわ子「あなたねえ…もう受験生なのよ?自覚持ちなさい!」

唯「ごめんなさい…」

いや本当に戻ってきたって確証はまだないな

夢の可能性もあるし
というか夢の確率の方が高い

さわ子「あなたどんな夢見てたの?」

唯「未来の夢……かな」

それとも私は今過去の夢を見ているのかな

さわ子「そう……」

そういえば、さっきの声…どことなくさわちゃんに似てたような



87 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 01:59:35.32 ID:Tz1MTqc20
唯「ねぇさわちゃん」

さわ子「ん?」

唯「さわちゃんて魔法使いなの?」

さわ子「あなたの未来の世界って魔法が使えるの?」

唯「だよ…ね」

さわ子「バカ言ってないで早く戻りなさい!いいわね?」

唯「はーい」


唯「失礼しましたー」
ガチャ

さわ子「魔法使い………ねぇ」



88 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[] 投稿日:2010/07/11(日) 02:00:33.87 ID:Tz1MTqc20
教室

ガラガラガラ

律「おっ唯どうだった?」

唯「普通に怒られちゃったよ」

律「そっか…」

紬「唯ちゃんどんな夢見てたの?」

唯「夏休みから始まって、文化祭、卒業式あと…」

紬「あと…?」



唯「ううん、それだけ」



89 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 02:01:08.14 ID:Tz1MTqc20
言えない

言った方がいいのかな

って言っても所詮は夢の話かもしれないし

いやいや、あれはあり得るかもしれない未来だ

やっぱり言うべきか

澪「私達泣いてたか?」

唯「泣いてた…みんな」

澪「そっか…」

律「私は私は?」

唯「りっちゃんかっこ良かったよ?」

律「本当に!?」


唯「うん!」



91 名前:1[] 投稿日:2010/07/11(日) 02:07:32.33 ID:Tz1MTqc20
さて…どうしようかな

私がここに戻ってきたのは未来を変えるため

あの時私が思っていたのは軽音部廃部の阻止だ

そして今は高3の4月

だとすると、私がやるべきことは新入生の勧誘

そして確実に三人は入部させること

でもできるのかな

前だってできなかったのに…

でも、絶対変えなきゃ・・・・!!

待っててあずにゃん

私、頑張るからね

後編へつづく・・・・・


94 名前:1♯takoyakinotakobe0000[] 投稿日:2010/07/11(日) 02:18:41.49 ID:Tz1MTqc20 [73/74]
まだ後編できていないんで、そんなすぐはできないと思います

だけどいつの日か後編ができた際にはまた支援お願いします!

遅くまでありがとうございました



97 名前:1 ◆ruCTh0.iJLeN [] 投稿日:2010/07/11(日) 02:24:28.96 ID:Tz1MTqc20 [74/74]
そして最後に誤爆

こんなはずじゃ・・・・・

うう・・・・

続く?

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