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律「……私達の青春が平和でありますように」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 19:44:15.10 ID:gE8ytGVu0 [1/43]
一つここに仮定を立てよう。もしも私が彼女を引き止めず、この部を復活させなければどうなっていたか。

彼女は文芸部に、ある彼女は合唱部に、またある彼女はジャズ研。
そしてとある彼女は……おそらくニートだろうか。案外生徒会に引っ張れているかも知れない。

問題は私だ。仮定上、私はどこにいる?文芸部なんてちまちましたものは嫌だし、ジャズ研にドラムはいらない。

そもそも一人ならけいおん部さえ入る気すらないのだから仮定にはならないか。

そんな意味が無い仮定を立てたのも原因は今の状態にある。

今の地位には不満はないが何せ権力が足りない。権力があれば止められたかも知れないしな。


平沢唯が秋山澪に殴られた。事件は、歪みはここから全て始まった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 19:46:58.63 ID:gE8ytGVu0 [2/43]
始まっていたが正しいのかな?

もしもあの時私が澪に部活の話を持ちかけなかったら、この事件は起きなかったはずだ。


さて、事件を話す前に自己紹介をしよう。私は律。名前通り皆を『律』しているけいおん部の部長だ。

そしてそのけいおん部の部員……まぁ、知っていると思うし割愛。


皆さんがお知りの通り私達は仲が良い。
いや、正確には仲が良かったように見えた。

始めは前者だったんだけど人間ってやつは無駄な思考があって、嫉妬という事が起こる。目標は武道館だったが私達は本気でプロなんて目指しちゃいなかった。

ただの仲良しクラブか、と笑われたなら笑顔でそうだ、と肯定するだろう。その方が楽しいし。

ただ、その仲良しクラブの最大の誤算はそこに一人、ダイヤモンドの原石が混ざっていたことだ。

次第にそれは光だし、私たちを普通の石ころから価値のない石ころに変えてしまった。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 19:49:11.72 ID:gE8ytGVu0
人間は誰かに抜かされるというのに嫌悪感を抱く。教え子なら尚更だ。世の中には一子相伝の拳法みたいのもあるが、それは愛があってこそ。自分が優れていたと思っていたらそれは嘘で、勘違いだと気が付くのは痛みを伴う。

プライドに穴が開くのは痛いものだからねぇ。

「律先輩一体こんな時に何一人でぶつぶつ喋ってるんですか!唯先輩も澪先輩も部活来てくれませんよ!」

「まぁまぁ、焦るなよワトソン君。一番焦っているのは私だし」

焦りすぎて悟りひらきそうだ、ちきしょう。

今、音楽室には私、梓の二人だけだ。ムギはどちらかを探しに出ていった。

まだ学校にいるかも怪しいが二人が二人だけに案外トイレあたりにひきこもっているのかも知れない

「これが愛の逃避行ならまだいいんだけど」

よいしょ、と私も立ち上がり、背筋を伸ばした。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 19:51:33.60 ID:gE8ytGVu0
「律先輩らしくないですよ、我先に探しに行きそうなタイプなのに」

「それがさぁ、梓。かける言葉が見つからなくて」

今でも見つからない。私は澪になんて言葉を掛けられるんだ?
『唯に謝れよ』
『なんでそんなことしたんだ』
はたまた、
『大丈夫だよ?』
『元気出して?』
と慰めてみるか?澪が悪いはずなのに。

本当は簡単に解決するはずなのに自分から泥沼にはまっている気がする。

「このまま唯先輩と澪先輩が仲直りしなかったら、どうなるんでしょうね」

「……梓は嫉妬しなかったのか?唯に自分が抜かされて。梓だって自分の方が上手いっていう自覚あったろ?」

「抱かなかった、といったら嘘ですね。絶対音感、あの才能。同じ楽器をやってて嫉妬しないほうが可笑しいですよ」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 19:59:02.67 ID:gE8ytGVu0
だろうなぁ、と私は呟いた。ドラムは一人だから上手さに嫉妬して仲間割れなんてはしないけど、気持ちはよくわかる。ライブハウスの件とか。

「もう一度電話してみるか」

片手で携帯を開き、リダイアルの一番上の番号に掛ける。

…………。

『……律』

「なんだ、澪。出てくれないと思った。リダイアル12回目だぜ」

『うるさくて眠れないんだよ』

「電源切ればいいのにな、澪」

『……だな』

眠れない、ということは自宅か?声のトーンが沈んだ彼女の声を聞きながら、私はこれからを模索した。

「……澪先輩出たんですか?」

梓が駆け寄り、小声で尋ねてくるのに指で丸を作ると、再び私は教室の床に腰を落とす。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:04:04.81 ID:gE8ytGVu0
『怒ってるよな、急にあんなことして』

「ああ、怒り心頭で次会ったらどうしてやろうか考えいるとこだ」

『……唯は』

「学校には来てた。憂ちゃんに急かされたのかな?昨日の話は家じゃしなかったみたいだ。ただ部活には、な」

唯も唯なりに憂ちゃんに気を遣ったのだろう。あれでも姉だからな。弟がいる私としては兄弟に負担を掛けたくない気持ちはよくわかる。

『けど、私許せなかったんだ』

「許せなかった?自分がか?」

『違う、こんなこと行って信じてもらえないかもしれないけど、律達が思っているみたいな私は唯に嫉妬したからぶったんじゃない』

「……うん」

嫉妬じゃないのか。じゃあなんで澪は唯を殴ったんだよ?ヒステリーか?
梓が私の携帯に耳をよせ顔をよせで携帯中心に体温が上がっているのを感じながら、澪の話に耳を傾けた。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:09:57.54 ID:gE8ytGVu0
『私は嬉しかったんだ。これだけは信じてくれ!私は唯が上手くなって嬉しかったんだ!』

「ああ、信じるよ。親友なんだから当然だろ?だから泣くな、澪」

こっちまで悲しくなってくるじゃないか、と嗚咽まみれのあちら側を想像する。

『……ごめん、なんだか思い出して』

「で、なんで殴ったんだよ?何か理由があるんだろ」

『……律、ごめん。また掛ける』

……ツー、ツー、ツー。

「切られちゃいましたね」

「私のせいみたいに言うなよ、梓。けどどーゆうことだ?澪は嫉妬じゃないって言ってるぜ」

「出鱈目かも知れませんよ」

まさか、と私は苦笑いを浮かべながら澪の心情を思い浮べれば梓の説もあながち否定はできなかった。

ついカッとなって殴って、あとからこのままではいけないと自分の心理が判断し、私は嫉妬を抱いていない、なんていう嘘の記憶にすり替える。
あり得ない話じゃないよなぁ。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:13:35.56 ID:gE8ytGVu0
「けど、澪は許せなかったんだって言ってたんだぜ」

「許せなかった、ですか。なんだかよりわからなくなりました」

「……梓、とりあえず今の状況を整理してみないか?案外テンパってるのは私達だけで落ち着けば理由が隠れてるかも知れないぞ」

ですね、と飲みかけの紅茶が置いてあるテーブルに場所を移し、冷たくなっている紅茶を口を付けた。

「アイスティーと思えば飲めなくはないけどなぁ」

「やっぱりイマイチですね、分かってはいましたが」

テーブルには5人分の食器は準備してはいるがそのうち二つはカップが下を向いている。

「そもそもだ、誰が澪に唯が殴られた現場を見たんだ?私は知らせを聞いて日直ほったらかしにして飛んできたんだぞ」

「誰に聞いたんですか?私は律先輩から呼ばれて部室に来ましたから」

「ムギだよ。今、部室が大変なことになってるからって携帯に電話来てな」

「じゃあ二人の修羅場を目撃したのはムギ先輩になりますね」

「そうだな。澪はその日私のこと置いて部室に向かったし、唯は多分トイレ経由で行ったんじゃないか?それで何かトラブルが起きた」

「まるで探偵みたいですね、律先輩」

「だから言ったじゃないか、ワトソン君って」

適当に言った割りには今更になって効いてきたな、コレ。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:19:05.68 ID:gE8ytGVu0
「けど、澪先輩と唯先輩が喧嘩をする理由がわからないんですよね~」

「お互い別にギスギスした関係とか、最近何か仲違いが起こった、なんていうことも私は気が付かなかったぞ」

「じゃあやっぱりただ単にあることにカチンと来て殴っちゃったんでしょうか」

……ならこんな私が柄にもない名探偵にならなくてもいいんだけど。

「……とりあえず私は澪のウチに行ってくるよ。梓、お前も来るか?」

「なら私はムギ先輩と唯先輩の家に行きますよ。私じゃダメでもムギ先輩がなんとかしてくれそうですし」

と、梓は携帯を開きアドレス帳からムギの電話番号を探している様であった。

「律先輩も一途ですよね。案外尽くすタイプですか?」
「うーるーさーい」

ただ私は澪が心配なだけだ。それだけなんだ。

「……そういえば先輩、今回のこの喧嘩で、唯先輩と澪先輩が仲違いになって一番得をするのは誰なんですかね」

「なんだよ、それ」

「いえ、なんとなく」

「…………」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:24:10.75 ID:gE8ytGVu0
澪と唯が喧嘩して一番得をする人物、か。
なにかこう、歯に海苔が挟まるもどかしい感じがする。
……一度こんな事を思ってみたかったんだよなぁ。

澪と唯を引き離して得ねぇ……。

私はバッグをひょいと掴み、澪の顔を思い浮べた。

もし、そんなことをする犯人がいるとしたら、どう考えたって身内も身内だ。

「あっ、ムギ先輩ですか?梓です。今から唯先輩の家に行こうって話を……はい、学校にはやっぱりいないみたいで」

じゃあな、と梓に一言掛け、私は音楽室を出た。
励ましに澪のウチにいくのもいつぶりかな?中学生?いや、小学生だったかな。

「りっちゃん!」

ムギ、と私は音楽室近くの廊下で振り向いた。案外近くにいたらしい。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:28:32.78 ID:gE8ytGVu0
「澪のことは私に任せて、唯の事、よろしくな」

「その件なんだけど、今さっき変な話を聞いたのよ」

「変な話?また澪のファンクラブが何か企んでるのか?」

「ううん、そうじゃなくて……」

ムギが私の傍に近寄り、私とムギだけの内緒話のように耳打ちする。

……、………、………。


「……まさかねぇ」

「りっちゃん、何か心当たりある?」

「いや、まだわかんないな。もしかしたら勘違いかも」

勘違いだったら嬉しいんだけど。
と、内心思いながら私はムギと別れ、昇降口へと向かった。

あっ、そういえば今日はムギのケーキ食べなかったなぁ。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:32:29.40 ID:gE8ytGVu0




澪の家に行くのもなんだか久しぶりに思える。いつもは澪が私を迎えに私ん家に来たりすることが多いからあんまり澪の家には行くことも無くなってしまった。

ピンポーン

呼び鈴を鳴らす。少し胸がドキドキしているのは久しぶりだからだろうか。別に彼氏の家に行くわけじゃないのに。

彼氏なんて出来たことないけど。

あっ、澪はいたりするのかなぁ。小学生、中学生といつも一緒にいてそんな素振りは見せなかった。
いつもモテモテの割りに誰とも付き合わないのは私みたいなお目付け役というかお邪魔虫がいたからなんだろうなぁ。

今だってそうかも知れないけど実は……みたいな事がありそうで怖い。

浮気されている気分だ。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:35:50.41 ID:gE8ytGVu0
「……律、人ん家の玄関で何難しい顔してるんだ」

「よっ澪、案外元気そうだな」

「……上がってよ。話したいこともあるし」

ああ、と私は目にくまができている親友に率いられ、玄関で靴を脱ぎ捨てた。

「また寝てたのか?」

「いや、やっぱり寝付けなくて、シャワー浴びてた」

そういわれるとパジャマ姿の澪は妙に艶やかであった。雨に滴るじゃないけど、湿った肌や長い黒髪が妙に色っぽいものがある。

「澪の部屋も久しぶりだな」

「何言ってるんだ前だって…あれ、前いつ来たったけ」

「テスト前かな?ノート借りるついでに一緒に勉強したじゃん」

ああ、そうだった、と澪はベッドに座る。私は床にでも座るかと考えたが適当にバッグを投げたし澪の隣に座ることにした。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:40:00.17 ID:gE8ytGVu0
「…なんであんなことしたんだろうな、私」

「唯を殴った事か?そんなに気背負うなって。別に怪我させたわけじゃないんだし」

軽口を叩く。
澪が許せないのは自分の行った行為であって、その被害の大きさで無い事は重々分かっているつもりだ。

「…律は慰めるのへただよな、昔から」

「いや、昔よりはうまくなったんじゃないかなぁ。誰かさんがよく泣くせいで」
澪は俯き、その表情を見ることは出来ない。

「いつも慰めてくれるのは律だけだから」

「……澪だって私が風邪引いた時お見舞いに来てくれたじゃないか」

「それは……律が心配で」

澪が手を伸ばし、私の掌を握った。カーテンの閉まる部屋でベッドに座る二人が手を握り合う。
……安っぽい恋愛小説みたいだな。

「なんだよ、澪。手なんか握ってきて」


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:46:43.13 ID:gE8ytGVu0
掌に澪の冷たい手が乗っていてひんやりと気持ちがいい。
脈拍が上がったのばれていないかな?

「私、怖いんだ。また独りぼっちになるんじゃないかって。私のせいでみんながバラバラになっちゃうんじゃないかって」

「…うん」

「夢を見るんだ。私が誰かに首を絞められる夢。周りには梓、ムギ、和とかがこっちを見ているのに誰も助けてくれない。
誰が首を絞めているのかって顔を下げると夢が泣きながら私を締めあげてる。苦しいけど引き剥がせなかった。
そんな夢からいつも助けてくれるのは律、お前なんだ」

澪がこちらを見る。涙をめいいっぱい蓄めた目で。
トクン、と胸が高鳴る。

「律……」

握っていた手を離され、ゆっくりと澪がこちらに近づいてきた。
私は彼女から目線を外すことが出来ない。

彼女の手が、指が私を求めるように。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:50:45.06 ID:gE8ytGVu0
「律、抱きしめたい」

「……澪」

「寂しいんだ、怖いんだよ」

背中に腕を回され強引に引き寄せられる。

ちょっと澪の胸がクッションのように私の頭を、顔を覆った形のようになった。

「心臓、なんかすごく早く動いてる」

トク、トク、トクと早いテンポでリズムを刻む心臓。それに合わせるかのように私の鼓動も早くなっていく。

「あったかい」

「澪はなんだかひんやりしてるな」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:54:02.71 ID:gE8ytGVu0
「……これ、邪魔だ」

カチューシャを取られる。これで私はトレードマークを失った訳だ。さてここにいるのは田井中律ではない誰なのでしょうか。

「こっち向けよ、律」

「なんだよそんなまじまじと見て」

「やっぱりなんか違和感あるなって」

「……おかしくねーし」

長くなりはじめた私の前髪を澪の長くて細い指で弄ばれる。
なんだか慰めに来たのに主導権を握られてる気がするな。悔しいのだか、嬉しいのだか。

「本当は律の方が甘えん坊さんなんだよな」

「ん……」

私は澪の輪郭を確かめるように手を這わせた。目、鼻、頬、口。
本当、すべてが芸術品のように整っている。
すべて私のものにしたい欲求が自分を支配しそうで怖い。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 20:58:13.71 ID:gE8ytGVu0
「澪、私キスしたい」

顔が近づく。

澪の吐息が間近に感じられて、何か渇いた感覚が私を支配して

私達は唇を重ねた。

んっ、と澪の声が漏れる。

もう一度唇を重ねる。次は長く、もっと澪を感じられるように。

クチュ、と粘液の音がまた私を欲求を駆り立たせる。

「んっ、……あっ、……り、つ……」

何度も何度もキスをして、私と澪の口まわりは唾液に塗れていた。

「澪、口あけて」

トロン、とした彼女の目を見つめる。
ん、と小さく開けた口に私は舌を無理矢理捻り込む。
「あふっ……し、ひぃた……いれ……」

いやらしい澪の声。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:05:40.05 ID:gE8ytGVu0
力が抜ける彼女の身体を押し倒し、私は澪の口を犯し続けた。

澪の舌が動く。

くちゃ、くちゅ、と

舌と舌が絡み、粘液音が部屋に響いた。

「んっ、ふっ……あっ……」

唇を離す。

お互いの唾液が交ざり合う感覚に私は快感を覚えていた。

「澪の味がする」

「……律の味がした」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:08:35.63 ID:gE8ytGVu0
押し倒した形になっている。髪の毛は乱れ、顔は紅く染まり、呼吸ですら私の欲求を刺激していた。

「……いいよ、律なら」

小さな声で澪がつぶやく。

私の中で何かが切れる音がする。

澪の胸に手を伸ばし、彼女の身体は快感に身を痙攣させた。



……………。

携帯が鳴っている。
まどろみの中、私の意識はそこにあった。

手を伸ばす。スカートの中だったかな?と脳髄をめいいっぱい働かせ、私はベッドの中を探った。

澪の下着、私の下着……違うな。
私はとりあえずパンツだけは確保し、ベッドの下に落ちているだろうスカートを探した。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:10:44.61 ID:gE8ytGVu0
リボンにワイシャツ……あっ、コレか。

私は静かにベッドから降り、バイブレーションが震える携帯を取り出すと先ほどの行為を思い出し、身体が疼いた。

まさかあんなものが澪の部屋にあるなんてねぇ。

墓場まで持っていく話だな、と思いつつ私は携帯のディスプレイを見た。

うおっ、眩し。

目を細めディスプレイを眺めるとそこには

『中野梓』

と唯の家に向かったはずの彼女の名が記されていた。

「……もしもし」

『あっ、律先輩!なんで携帯出てくれないんですか!……あっ、そうか。昨日はお楽しみでしたね』

「お前なんだか古いネタ知ってるなぁ」

『別にそんなことはどうでもいいです!で、澪先輩はどうでした』



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:13:49.25 ID:gE8ytGVu0
どうと言われると、と私は澪の乱れた姿を思い出した。

「あー、凄かったよ。いろんな意味で」

『そーいう事じゃないですって!まだ惚けてるんですか!?何で唯先輩と喧嘩したか聞きましたか??』

「あっ、忘れてた」

『……律先輩のスケベ』

あっ、そのセリフはぐさりとくるなぁ。なんか私自身が思い描いてたイメージに傷がついた気がする。

「梓の方はどうなんだよ」

『はい、結局唯先輩とは話せませんでした。憂も今回の唯先輩のことについては知らないそうです』

「そうかー。憂ちゃんが何か知っているかなって思ったんだけどな」

『ということであとは律先輩が頼りですよ!あんまり惚けてないでちゃんとお願いしますね』

「ああ、分かったよ。ありがとうな、梓」

『はい、また明日。あっ、最後に一つ』

ん、と私は聞き返す。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:16:58.04 ID:gE8ytGVu0
『やっぱり律先輩は一途じゃなくて澪先輩に〔ぞっこん〕だったんですね』

「……うるせーやい切るぞ梓」

『冗談です。そういえば今日、純に言われたんですよ。澪先輩がジャズ研に入るって本当?って』

「ジャズ研?なんでまた」

『澪先輩がけいおん部に見切りをつけたって聞きましたけど』

「根も葉もない噂があったってことか」

『そういう事みたいです。じゃあ切りますね』

……澪がけいおん部を止める、か。
こればかりは本人に聞かないと分からないな、と私はベッドの方を振り向く。

「……梓か」

ベッドにはシーツで胸を押さえる澪がこちらを見ていた。

「ああ。私ったらつい目的を忘れちゃったみたいで怒られちった」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:19:35.56 ID:gE8ytGVu0

「律、こっちこいよ。話したいことがあるんだ」

うん、と私はまたベッドに潜り込み、澪を私の薄い胸に顔を埋める形に抱き締めた。

薄い胸と自分で思うと涙が出るが割愛。

「で、なんで唯と喧嘩したんだ」

「……噂を聞いたんだ。唯がジャズ研に入るって。へたっぴなど私たちを見限ってあっちに移るんだって」

「唯が?まさか」

「私だってはじめは信じられなかった。けどその話を聞いたのは和でさ。なんだかさ」

和が?んー、確かにそうなると信憑性があるよな。

「で、それを部室で唯と話し合った、って感じか」

そう、と澪は私の腕の中でもぞもぞと動いた。

なんかくすぐったくで胸に当たって少し気持ちいい……私、変態になってきたみたいだ。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:22:03.96 ID:gE8ytGVu0
「口論になってさ。私が止めたら、唯にそんな私をやめさせる為にみたいになって……気が付いたら唯をぶってた。最低だよな、私」

ん、私は何かまた矛盾みたいなものを感じた。唯が止めさせられる?誰に?あれ、なんか訳わからなくなってきたなぁ。

「和はいったい誰からその噂を聞いたんだろうなぁ」

「憂ちゃんから相談されたって和は言ってたから多分、憂ちゃんじゃないか?」

あの子、お姉ちゃん大好きっ子だし、と澪は呟く。

……和が嘘を吐いているのか?それとも澪、梓?

情報がうまく噛み合わない。

梓は憂ちゃんは何も知らないと言っているのに和は憂ちゃんから聞いたといっている。

これは矛盾だ。
誰かが嘘を吐いている。

先ほどから梓の言葉が頭の中をぐるんぐるんと回っていた。

『澪と唯が喧嘩して誰が得をするか』

誰もいないと思いたかったんだけどなぁ。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:24:15.45 ID:gE8ytGVu0
「………頭痛くなってきた」

「どうした、律。裸で寝たからか」

「それはないよ。澪があったかかったし」

考えすぎかな、とも思ったが違う。
多分、私はこの事件の結末を知ったから頭が痛くなったのだ。
あー、これからどうしよう。

「…澪、私これから唯の家に行って来る」

「これからって、もう7時過ぎだぞ」

「こういった面倒なことは今日中にけりをつけて終わらせたいからさ」

私は澪を離し、散らばった制服を掻き集めた。

あら、靴下の片方はどこにいったかな?

「……なんかごめん。本当は私が謝れば済む話なのに」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:30:45.01 ID:gE8ytGVu0
「そうだったらよかったんだけど実際はもっと面倒だったみたいだよ」

だけど、約束してくれ。
私はスカートを履きながら澪に言う。

「あしたは学校に来て唯と仲直りしろよ。約束」

「……うん、分かった。約束」

「よし、いい子だな澪」

優しく澪の頭を撫でる。
ん、と頷く澪も可愛いなぁ。私には絶対似合わない。

「あっ、そういえば貸してもらいたいものが二つあるんだけど」

唾液まみれのこの身体を洗い流したいし。
もう一つは……一応、念には念を入れなくちゃね。





38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:35:08.07 ID:gE8ytGVu0
…………。
「もしもし、和?私、律。実は聞きたいことがあるんだけどいいか?あの噂のことなんだが」

夜の住宅街を歩きながら私は今回の重要参考人である和に電話を掛けていた。

「あっ、そうそうそれ。あれって本当に……ああ、やっぱり気が付いたか?さすが生徒会長だな」

……私の疑問が決定打って訳だったのか。
サヨナラホームラン?

「……今から憂ちゃんに聞いてくる。ああ、大丈夫だよ」

唯ん家まであと2、3分。
私は和との電話を切り、大きく深呼吸を繰り返した。

神様、もしいるなら何も起こりませんように。




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:38:35.79 ID:gE8ytGVu0
ピンポーン

玄関のベルを鳴らす。
駐車場には車はなく、親はいないみたいだ。
私はスカートのポケットには携帯と『お守り』が入っているのを確認する。

『……どちら様ですか』

インターホンから聞こえてきた憂ちゃんの声を聞き、少し安心する。

「私だよ、田井中律。少し話があるんだけど」

『…いま開けますね』

と私はごめんね、と一言謝り、玄関が開くのを待った。

「こんばんは、律さん。どうぞ」

「こんばんは、憂ちゃん」
おじゃまします、と私は玄関に靴を脱ぎ捨て……ちゃんと整えてリビングへと向かった。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:42:15.40 ID:gE8ytGVu0
「今、お茶用意しますね」

「あー、大丈夫だよ、憂ちゃん。すぐに終わるから」
まぁ、座ってよ、とまるで家主のように私はテーブルの近くに座る。

憂ちゃんは何も言わないで向かいに座り、私を見た。
いや、睨まれた。

「話したいことは一つ。憂ちゃん、何でこんなことをしたの?」

「何の話ですか?」

「別にもう隠さなくたっていいよ」

ついでにその先ほどから後ろに隠している何かも隠さなくていいんだけど。

「じゃあ私から憂ちゃんに質問。なんで梓に嘘を吐いたのかな?和は憂ちゃんから話を聞いたって今電話で確認したよ。
けど、梓に憂ちゃんは何も知らないって話したよね?それはおかしくないか?憂ちゃんは知ってたんだよね、唯がジャズ研に移籍するいう噂を聞いて。
そして唯には澪がジャズ研に行くという嘘を教えた。なら、この二人には矛盾が生じる」

「……」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:44:59.60 ID:gE8ytGVu0
「梓が言っていたんだよ。唯と澪が喧嘩して一番得をする人は誰かって。それは……」

「もういいです、律さん」
憂ちゃんが立ち上がった。さて、後ろに煌めく刃は一体何に使うのか。まさか林檎を剥いてくれるなんていう事はないと思うし。
「私、お姉ちゃんが大好きなんです」

「うん、知ってる」

「お姉ちゃんも私が大好きなんですよ」

「そうだよなぁ、唯も憂ちゃん大好きだし」

「だけど最近はお姉ちゃん私に構ってくれないんですよ。私がどんなに愛情を注いだって、私がどんなに身を削ったって……おかしいと思いませんか」

いいえ、思いませんわよ。と内心で思う。
憂ちゃんも末期シスコンだから唯と結婚しようっていう将来の旦那さまは大変そうだ。

多分今の私みたいになる。

「考えたんです。お姉ちゃんが変わり始めたのは部活に入ってからだって。私としては嬉しい反面不安だったんです。その不安は的中しましたね」



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:47:51.91 ID:gE8ytGVu0
「不安?」

「はい、お姉ちゃんは徐々に私に構わなくなりました。何事も自分で頑張る傾向に。ああ、これが捨てられることかぁと染々思いましたよ」

「で、唯と澪が喧嘩をすれば唯は部活に行かなくなるって訳か」

「はい。泣き付いてきたお姉ちゃん可愛かったですよー!ビデオに撮っておきたいくらい」

よいしょ、と私は立ち上がる。
これ以上長居すると悪いし。
主に私のストレスとかにね。

「そっかー。律さんは一番気が付かないと思ったんですけど」

「私、けいおん部の部長だから」

「ッ!」

憂ちゃんの身体が私目がけて突進してくる。
身体の前には小さな刃物が握られていて。

「私とお姉ちゃんの関係を邪魔するものは許さないっ!!」

ヒュ、と空気を刃物が切り裂き、私の顔を突き刺そうと動く。
こういう時漫画みたいに動ければいいのに!

「痛ッ……」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:50:01.33 ID:gE8ytGVu0

やっぱり私の運動神経じゃ避けられないか。
頬が一直線に焼かれたように熱い。
澪にまた心配かけそうだ。
「ごめんなさい、律さん。次はありませんから」

「こんのぉ!!」

憂ちゃん目がけてスピアーの形でタックル。夜中聡とプロレス見てて正解だ。

リビングの床目がけ押し倒す形になる。

憂ちゃんのナイフからは一時も目も、ようやく押さえた腕も放さない。

「……キレたナイフってか」

じたばたと暴れる魚を押さえる漁師さんを思い出した。

左手でナイフを押さえ、体全体で憂ちゃんを押さえ、空いた左手で私は『お守り』を探った。

「……お互い感電しそうだな」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:53:01.19 ID:gE8ytGVu0
私の思考一時停止。

まずい、かなりまずい。

膠着状態で不利なのは私だ。
そをなことを考えたら体液が漏れる頬が痛くなってきた。

「お姉ちゃんは!!私が!!守ります!!」

憂ちゃんの叫び声に呼ばれるようにどたどた!と誰かが階段を降りる音がした。

「憂!もうやめて!!りっちゃんが死んじゃう!」

「お、お姉ちゃん」

唯っ、と私は頭を上げた。いつものTシャツ姿。寝癖が付いているところを見るとありゃ寝てたな。

「全部、聞いてたの…?」

「ごめんね、憂……最近私が部活ばかりに行って淋しかったんだよね」



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:55:10.29 ID:gE8ytGVu0
「お姉ちゃん、違うの、私は私はね!」

私は憂ちゃんを離し、頬を押さえながら立ち上がった。
あーあ、嫁入り前なのに顔に傷が。
澪、私のこと嫁に貰ってくれるかな。
あっ、いや逆に婿として迎えるか。

「お姉ちゃん!!」

「憂ッ!!」

崩れるように抱き締める憂ちゃんを唯が抱えるような形になっている。

「私、私……淋しかったから……お姉ちゃんごめんね嘘ついて」

「…憂、私こそごめんね。もっと私がしっかりしていたら……」

「……ある意味ハッピーエンドかな」

私的にはまだ終わりが見えないけど。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 21:59:46.30 ID:gE8ytGVu0
「りっちゃんも……ごめんね……」

「いいって、唯。私は部長だぞ!部長は部員の為に身を削るのさ」

文字どおり身を削るつもりはなかったんだけどさ。

「けど、怪我までしちゃって私、どうじだら……」

また涙まみれになってるぞ、と二年の文化祭を思い出しながら私は唯に笑い掛けた。

「じゃあ私と約束してくれ。一つは明日澪と仲直りすること。もう一つは憂ちゃんとも遊ぶこと。あとは……そうだな。パフェ奢ってくれよ」



……………。

「あっ、もしもし。ムギ?私だけど……あっ、それは8割解決したよ…うん、明日からはまたお茶会できそうだ……で、頼みたいことがあるんだが……病院紹介してくれない?」

怪我したの!?というムギの声が携帯から響き渡り、思わず顔を離した。
あれから憂ちゃんの涙まみれの介抱は受けたにしろ一応、私も乙女だし。

「ああ、少し切り傷がさ……あっ、じゃあバス停で待ってるから……悪いな、うん。じゃあ」

携帯を切る。すぐに迎えを出してくれる見たいだ。
さすが紬お嬢様。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:05:35.34 ID:gE8ytGVu0

さて、少し時間があるな、と私はバス停のベンチに座り、空を見上げた。

……死凶星が見える。嘘だけど。

……けどなんであの子まであんな事したのかなぁ。やっぱり唯には特別な何かがあるのかも知れない。

何か、こうフェロモンみたいな。

私は今までで一番かもしれない疲労に身体すべてをバス停の椅子に預ける。

頬は相変わらず痛い。
部活が無くならないなら安い代償だけど。
明日からはまたみんなでバンドができる。
また楽しい日々が始まる。

けど、やっぱりこんな真面目な役、ガラじゃないよなぁ。

やっぱり私は馬鹿やって澪からツッコミ貰って、ムギのケーキを食べて、梓と唯のスキンシップを煽りながら……。


眠気も最高潮になってきた。少しくらい寝たって大丈夫かな?

目を閉じる。

次、皆と会うときはいつもの私でいたいなぁ。

じゃあ次の放課後ティータイムまで……

……おやすみ。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:07:56.20 ID:gE8ytGVu0


















後日談を少し話そう。
その後、私は眠ったままムギに拉致られ、気が付いたら治療も終わっていて自分の部屋のベッドの上だった。たまに頭使うとこうだよ、全く。

次の日、澪と唯もなんとか仲直りをした。
両方とも泣きながら抱き締め合ってたし。

少し唯に妬いたのは秘密だ。

そして私たちは再び楽しい楽しいティータイムの時間を手に入れましたとさ。

めでたしめでたし。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:13:05.58 ID:gE8ytGVu0

「だったんだけどなぁ……」

と、私は一人音楽室で生徒会の書類に向かっていた。

忘れてたんじゃない。後回しにしてたんだ。

「ええっと……放課後ティータイムっと」

講堂を使うのも一苦労だよなぁ。

ドアノブが回る音がして誰かが音楽室に入ってきた。

「あれ、律一人なの?」

「おおっ、和。そうなんだ。あっ、この書類取りに来てくれたんだろ?ちょっと待ってくれよ」

全く、と和は笑いながら音楽室をぐるりと見回した。

大丈夫だよ、今日は誰も来るなって言っておいたから。

「……そういえば、和。なんであんなことしたんだよ」

「……何の話?」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:19:49.91 ID:gE8ytGVu0
「あー、それなら別に追及はしないぜ。一番頭に来ているのはおまえじゃないかなと思ったけどな」

部長、田井中律……と。
私は書類から目を離すことなく口を開く。

「……どうして気が付いたの」

「ん~、なんて言えばいいかな?気が付いたんだよ。まずはなんで和は澪に唯がジャズ研に入ることを聞いたのか、だな。
和と唯は幼なじみだろ?普通、まず唯に尋ねるよな。澪を挟むことは無かった。別に聞きにくいことでもないし」

「……それで」

「まずはそのおかしい点。あとは……憂ちゃんは唯がジャズ研に入る噂を聞いたんだ。もちろん本人じゃない。ということは憂ちゃんがこの噂を作ったんじゃない。と、なると……だ」

「律、やっぱりあなた結構鋭いわね」

「憂ちゃんに唯がジャズ研に入るなんていうデマを教えたのは和だろ?そしてもう一つ、澪がジャズ研に入る噂を流せば……という入れ知恵をした」

結局、憂ちゃんはまだ嘘を吐いていたことになる。

なんというか……純粋だよな。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:23:11.08 ID:gE8ytGVu0
「ご名答。律、あなた名探偵になれるわ」

「梓にも言われたよ」

ふぅ、と和はため息を吐き、私が座るテーブルの向かい側に腰掛けた。

「で、私のことどうするつもり?」

「べっつにー。どうもするつもりはないよ。ただ、一応確認したかっただけ。もうこのお話は終わってるし、時効だよ」

多分、私達の高校時代にはばれることはない話だ。

「まぁ、一つ頼みはあるんだけど」

「……何?」

「ここの書き方もう一回教えてくれ」


こうして、私達けいおん部最大の危機は去ったわけである。
あー、肩重い胃が痛い。ようやく私もドラムに専念できるわけだ。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:26:17.02 ID:gE8ytGVu0
Trrr...Trrr...

「律、電話」

「あっ、ハイハイ……もしもし?」

『律か!?私、澪だけど今教室で大変なことが起きて……』

「大変なこと??あっ、机の中にカビたパンでも入ってたか?」

『梓がムギを殴って……あっ、ほら止めろって!!早く来てくれ……律?……りーつー??』

携帯が手から離れる。
なんだか胃がキリキリと痛い。あー、また紬病院に通院かなぁ。

「……どうしたの?青い顔して」

「いやー……澪の机に隠した牛乳が発酵して見つかったみたいでさー」

笑う気力もない。
そのまま私は現実から逃げるように机に突っ伏した。

願うことなら


…………私達の青春が平和でありますように。


じゃあ……おやすみ。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 22:30:41.02 ID:gE8ytGVu0 [43/43]
おーしまい

りっちゃんはみんなの嫁


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