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人形「人間になりたい」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:50:38.38 ID:k7MbU/IT0 [1/39]
女「はー」
「それでね、また失敗しちゃって」
人形(………)
女「皆に笑われちゃったんだー」
人形(………)
女「私、どうしたらいいのかな。人形ちゃん」
人形(………)
(私に言われてもなぁ)
女「はー」
「それでね、また失敗しちゃって」
人形(………)
女「皆に笑われちゃったんだー」
人形(………)
女「私、どうしたらいいのかな。人形ちゃん」
人形(………)
(私に言われてもなぁ)
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:51:20.96 ID:k7MbU/IT0
人形(はー)
女「ごめんね、いつも愚痴ばっかりだね」
人形(いいんだけど)
(長い付き合いだからねー)
(でも)
(私に言われてもなぁ)
女「はー」
人形(最近、女はいつも寂しそう)
(相談にのってあげたいんだけど)
(人間になりたい)
神『任せろ』
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:55:02.42 ID:k7MbU/IT0
人形『……貴方は?』
神『私は神だ』
人形『貴方が神か』
神『お前を九十九神にしに来た』
人形『九十九神?』
神『モノに魂が宿る的なアレ』
『お前はその娘に長年大事にされてきたから』
『今でも半・九十九神状態なの』
人形『………』
神『で、今宵を以ってめでたく九十九神に昇格するわけ』
『いよっ』ポン
人形『……!』フワァ
神『じゃ、そういうことで』スッ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:59:56.33 ID:k7MbU/IT0
人形「これは」グッグッ
「動く」ノビーン
「動くぞおおおおおおおお!」クルクルー
女「………」ポカーン
人形「あ」ピタ
「どうも」ペコリ
女「………」ソロー
人形「………」プニプニ
「いひゃいんれすけろ」ムニー
女「夢じゃ、ないよ、ね?」
人形「うん」
女「わぁ!」ガバッ
人形「息がつまる苦しい死んじゃう」ギュウウ
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:05:32.85 ID:k7MbU/IT0
翌日・女家
女「だから、人形ちゃんが動いたんだってば」
女母「はいはい、遅刻するわよ」
女「もぉ」
人形「………」
「ね、女」ヒソ
女「うん?」
人形「私のこと、皆に言っちゃダメだよ」ヒソ
女「どうして?」
人形「内緒にして。ね?」ヒソ
(はたから見てるとアブナイ子だから)
女母(女ちゃん、人形と話す癖、ひどくなってる……)
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:09:48.21 ID:k7MbU/IT0
街中
タッタッタッ
人形「ねぇ」ガッタガッタ
女「うん?」タッタッタッ
人形「歩こう。ゆとりは大切だよ」ガッタガッタ
女「ごめん、遅刻しそうだから」タッタッタッ
人形「そう……」ガッタガッタ
(今は耐えるのよ、人形)
(これも女を手助けするため)
ガン
人形「っ痛ぁ!」
「角!教科書の角当たった今!」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:15:42.09 ID:k7MbU/IT0
学校
オハヨー
ヨーッス
オハヨウゴザイマス
女「………」スタスタ
人形(………)
女「………」ガラガラ
「………」スタスタ
「………」ガタン
人形(………)
(女……)
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:22:14.03 ID:k7MbU/IT0
教室
人形(………)ヒョコ
(…不安だ)ジー
女「……あ」
「大丈夫だから」ニコ
人形(…不安だ)ジー
女「………」パラ
人形(読書をはじめた)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:26:22.13 ID:k7MbU/IT0
DQN女「でさー、そのエロオヤジがー」
取り巻き「ギャハハハハ」
取り巻き「あるよねー」
取り巻き「あ、DQN女の隣の席の奴さー、また本読んでるよー」
取り巻き「ネクラだよねー」
取り巻き「ギャハハハハ」
DQN女「ふんじゃあ、何読んでっか拝見してきましょーかー」
ツカツカツカ
ヒョイ
DQN女「えーっと、絵本かなーこれはー」
女「やめて、返して」
DQN女「ふーん」
「今のあたしにゃ分かんないねー」ケラケラ
女「もうっ」ヒョイ
「………」パラ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:30:47.80 ID:k7MbU/IT0
人形(………)ゴゴゴゴゴ
(あの不良娘……)ゴゴゴゴゴ
DQN女(……ん?)スタスタ ピタッ
(視線を感じる)クルッ
女「………」ペラ
DQN女(気のせいか)スッ スタスタ
人形(悔しい)
(私には睨むことしか出来ないんだ)
DQN女「絵本だったわー」
取り巻き「何それ」
取り巻き「ギャハハハハ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:38:02.31 ID:k7MbU/IT0
授業中
現国教師「でー、階段を登る視点、上空からの視点へとイメージがー」
女(ほー)
現国教師「ではー、ここの段落においてー、作者の意図は何かー」
女(ここはきっとこうだって)ウズウズ
人形(女がとても発言したそうにしている)
(今こそ手助けのとき)
「はい!」
現国教師「え?」
ザワ…ザワ…イマノダレ…?
女「に、人形ちゃん…!」ヒソ
人形(さぁ女!)b
DQN女(……さっきの声)
(女の方から聞こえたけど)
(あいつそーゆーキャラだっけ?)
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:44:08.71 ID:k7MbU/IT0
女「――、っと、私は思います」
現国教師「うむー、いい解釈だなー」
女(うぅ、恥ずかしい)ガタン
現国教師「積極的でいいぞ女ー」
女(あうぅ)カー
DQN女(………)
人形(この調子で行こう)
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:52:05.13 ID:k7MbU/IT0
体育の時間・教室
ワーワー
人形「流石に外に出て応援するのは躊躇われる」
「頑張れ女」
女 ズコーッ
人形「ありゃー」
ガラガラ
人形(――!)
(取りあえず隠れよう)コソコソ
DQN女「お邪魔しますよーっと」
人形(あいつは)
DQN女「ちょっとお金借りますねー」
「いーいーよー」
「ではでは遠慮なくー」ガサゴソ
人形「……おい」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:57:33.36 ID:k7MbU/IT0
DQN女「げ」
(まだ誰かいたのか…?)キョロキョロ
人形「………」ムスッ
チョコン
DQN女「( ゚д゚) ・・・ 」
「(つд⊂)ゴシゴシ」
チョコン
DQN女「(;゚д゚) ・・・」
「(つд⊂)ゴシゴシゴシ」
チョコン
_, ._
DQN女「(;゚ Д゚) …!?」
見回り教員「誰かいるのかー?」カツカツ
DQN女「やっべ」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:14:12.04 ID:k7MbU/IT0
見回り教員「お前は…DQN女か…」
「ここで何をしていたんだ…?」
DQN女「いや、さっき妖精さんが」
見回り教員「妖精さんだー?お前まさか怪しげなヤクに」
DQN女「ねーよ!マジ居るんだって!」
「ほら!」ビシッ
シィン
見回り教員「…何も見えんが」
DQN女「居たんだっつーの!」
見回り教員「はいはい」
「そんなこと言って体育サボりたいだけだろ?」
「ちゃんと出席してこい」
DQN女「チッ」
人形(……ふー)コソ
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:24:39.64 ID:k7MbU/IT0
授業中
数学教師「であるからしてこの式は」カッカッカッ
女(うんうん)カリカリ
数学教師「この値を代入するとこうなってだな」カッカッカッ
女(あれ?)カリ
(数字、間違えてる気がするんだけどな)ハラハラ
人形(女がとても指摘したそうにしている)
「間違ってるよ!」
数学教師「え?」
「あ、あぁ、そのようだな」
「女…か?すまんな」
女「い、いえ、その」カー
DQN女(やっぱり…!)
(あのちっこいのだ!)
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:36:46.85 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
女「ふい、放課後だ」
(今日は何だか疲れたな…)
(人形ちゃんったら強引なんだから…)
人形(今日は何だか疲れたなー)
(ま、これもかわいい女のため)
DQN女「なぁ」
女「!」
DQN女「ちょっとお喋りしようぜ」
「ツラ貸してくれよ」
女「え…」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 21:51:17.66 ID:k7MbU/IT0
校舎裏
女「な、何の用、かな」
DQN女「トボケんじゃねー」
「その鞄の中!見させてもらう」グッ
女「ちょ、ちょっと」グイ
DQN女「ぜっ!」ガバッ
人形「………」
DQN女「ヤー、こいつだ」
人形「…何よ」
「財布なら、ここには入ってない」
女「…財布?」
DQN女「い、いやっ、何でもねーよ」
「それより」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 21:56:37.44 ID:k7MbU/IT0
DQN女「何これ!何このカワイイ生き物!」キラキラ
「マジ欲しーんだけど!くれ!」キラキラ
女「え、それはちょっと」
DQN女「写メ撮っていい?撮っていい?」カシャーンカシャーン
人形「………」
DQN女「ひょおおおすっげえええええ」ツンツン
人形「………」ムニムニ
DQN女「んほおおおおおおお」スリスリ
人形「…やめろ気持ち悪い」ウニウニ
DQN女「ありがと!すっきりした!」ペカー
女「あ、そう…」
DQN女「また見せてくれ!じゃ!」タッタッタッ
女「な、何だったんだろう」
人形「……知らない」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:02:28.48 ID:k7MbU/IT0
夜・女の部屋
女「明日の準備は…これでオッケーかなぁ」
「よし、寝よう」
人形「おやすみ」
パチン
人形「………」
「女、寝た?」
女「……スゥ」
人形「そっか」
(今日の様子を見た感じだと)
(女は学校で一人みたいだね)
(どうにか友だちを作ってあげたい)
(よし、明日も頑張ろう)
……スゥ
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:08:26.54 ID:k7MbU/IT0
DQN女「送信っと」テンテンテン
「はーあんなメルヒェンな生き物が実在したとはなぁ」
「世の中捨てたもんじゃねーわぁ」
ピロリロリン
取り巻き「DQN女からメールだ」
『題:
本文:やべーまじやべー
添付ファイル:有』
取り巻き「何の写メだろ…」
「………」
「鞄?だよな…」
「何がやべーんだろ…」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:14:04.25 ID:k7MbU/IT0
翌日・教室
男友「男ってさー、好きな子いんの?」
男「ん、まぁ」
男友「へー、どんなのよ」
男「こう、おしとやかで、物静かでだな」
男友「んー、例えば」
「女、とか」
男「ブッ」
男友「え、まじで…?」
男「………」カー
男友「へ、へー…」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:22:05.97 ID:k7MbU/IT0
男友「どこがいいの?」
男「分かってねーな」
「大人しいし!黒髪ストレートだし!」
「理想のやまとなでしこじゃねーか」
ガラガラ
女「………」テクテク
男友「あ、女来たぞ」
「話しかけてみたら?」
男「いきなりそんな、話題が」
男友「挨拶でいーじゃん、ほら」ドン
男「わたっ」フラッ
女「………」チラ
男「あ、あの」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:29:22.68 ID:k7MbU/IT0
DQN女「妖精さーん!と女」ダダッ
「おっす」
女「う、うん」
「おはよう」
男(機先を制された…ッ)
(しかし、DQN女と女が何で…)
DQN女「見せてよ…あ・れ」
女「こ、ここじゃまずいよ」
DQN女「いいじゃんーほらほらぁ」グイグイ
女「ちょ、ちょっと」
男(まさか二人はそっち系?!)ガビーン
(何という)トボトボ
男友「え、先越されたくらいでそこまで落ち込むなよ」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:34:41.09 ID:k7MbU/IT0
人形(………)ジー
(さっきの奴)
(女に話しかけようとしてたな)
(気があるんだろうか)
(………)
(ふむ)
DQN女「みーせーてーよー」
女「ダメだって!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:44:00.45 ID:k7MbU/IT0
授業中
日本史教師「えーじゃあ、
この年に結んだ条約は何か分かるかね」
女(あー…)
(何だっけ)パラパラ
人形「はい!」
女(え、ちょっ)
日本史教師「女か、言ってみろ」
女「…わ、分かりません」
日本史教師「何だそれは」
ドッ
男(何だか女さん、最近よく発言するようになったな)
DQN女(かわいいよう声だけでもかわいいよう)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:49:21.95 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
男友「お昼だな」
男「あぁ」
男友「女さん誘ってくれば?」
男「えええいや流石にそれは大胆にすぎるだろ」
男友「いつも一人で食ってるじゃん」
「声かけたら喜ぶんじゃねぇの」
男「そうかな…」
「あ、あの」
DQN女「飯食おうぜー女ー」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:59:05.31 ID:k7MbU/IT0
男「……!」
(一度ならず…二度までも…)
女「え?うん、いいよ」
DQN女「机つけるぞー」ガッチャン
「あのさ、弁当にタコさんウィンナー入れてきたから」
「妖精さんにあーんってしたい!」
女「え、えぇ…?」
人形「……!」ガタン
DQN女「あーん」
人形「パク」
DQN女「かわえー」テレッ
女(食べるんだ……)
男(……?)
(今何か見えたような)
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:04:10.71 ID:k7MbU/IT0
人形「モグモグ」
(ん)
男 ジー
人形(またあいつか)
(やっぱ気があるに違いない)スゥ
DQN女「まだあるからねー」ヒョイ
人形「……!」パク
「モグモグ」
男(何なんだろう……)
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:10:43.46 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
男友「放課後だな」
男「あぁ」
男友「女さん誘って帰れば?」
男「家知らないし」
男友「じゃあ聞いてさぁ」
男「お、おう」
「あの」
DQN女「女の家って近いの?」
女「うん、割と」
DQN女「じゃさ、寄ってっていい?」
女「え、うん」
男「………」ガクッ
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:14:43.34 ID:k7MbU/IT0
人形「………」ヒョコ
男 ガクッ
人形(つくづく間の悪い奴だな)
(よし)
(この本を…)ガシッ
(とうっ)ポトッ
パタン…
DQN女「菓子屋寄ろうぜー」スタスタ
女「買い食いはダメって」スタスタ
男「………」
「……ん」
「本落ちてる…女さんのかな」
「お、女さん!」
「……居ない」
「えーっと」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:19:21.58 ID:k7MbU/IT0
女家
女「ただいま」
女母「あら、おかえり」
DQN女「お邪魔しまー」
女母「あら、いらっしゃ」
DQN女 ギャルーン
女母「い」
女「えっと、」
DQN女「友だちでーす」
女母「そ、そうなの」
(女ちゃん…そんなギャルギャルした子と…っ)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:23:25.05 ID:k7MbU/IT0
女の部屋
女「ここが私の部屋」
DQN女「こざっぱりした部屋だなー」
「あ、本すっげー置いてる」
女「本、好きだから」パカ
人形 ガサガサヒョコッ
DQN女「妖精さーん!」ガバッ
人形「見切った!」スッ
DQN女「………」スカ
人形「………」ドヤ
DQN女「お菓子あるんだけどなー」チラチラ
人形「……!」ガバッ
DQN女「かわえーのー」テレテレ
女「……あれ?」ガサ
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:34:47.25 ID:k7MbU/IT0
女「あの本がない…鞄に入れたと思ったのに」
人形「あー」
「学校に忘れてきたんじゃないかな!」
女「そうかな…」
人形「きっとそう!なかった気がする!」
女「そっか」
人形(あいつ…すぐに追っかけて渡しに来ると思ったのに)
DQN女「あのさ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:39:27.56 ID:k7MbU/IT0
DQN女「アド、交換しよーぜ。携帯持ってるだろ?」
女「う、うん」
セキガイセン
DQN女「オッケー」
女(高校入ってはじめての登録だ…)ワナワナ
DQN女「よろしくなー」
女「うん!」
人形(……何か違うんだけど)
(ま、いっか)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:43:46.74 ID:k7MbU/IT0
男の部屋
男「本、持って帰ってきてしまった」
「明日、学校で渡そう」
「………」
「……どんな本読んでるのかな」
カサ
『星の王子さま サン・テグジュペリ作』
「ふーん」
「絵本、か?」パラ
「………」パラ
「いや、帽子だろーこれ」
「………」パラ
「は!」
「折癖とかつけたら悪いし、やめとこう」パタン
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:47:28.65 ID:k7MbU/IT0
翌日・学校
女 ガラガラ
DQN女「おっす」
女「おはよう」
男「あ、あのさ!」ズイッ
女「ひっ」ビク
男「あ、ごめん」
「この本、昨日落としてたよ」
女「あ、やっぱり学校に忘れてったんだ」
「ありがとう」ニコ
男「いいいいやぁ」ワタワタ
「面白い絵本だね!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:53:38.72 ID:k7MbU/IT0
DQN女「勝手に読んだのかー?」
人形(お前が言うなよ)
男「いや!えっと…うん、ちょっとだけ」
女「そっか」
「どうだった?」
男「はじめの方だけしか見てないよ!」
「本、傷んだらいけないと思って」
女「………」
「よかったら、貸そうか?」
男「えっ」
「うん、貸して!」
(共通の話題ゲットォオオオオオ!)グッ
女(オーバーだなぁ…)
(この人も本、好きなんだろうか)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:56:05.12 ID:k7MbU/IT0
男「………」ペラ
男友「なっ!男が読書だと…」
「いつからインドア派になった」
男「ついさっき」
男友「あぁ」
「カバーなんかかけちゃって実はエロいなんかだろ?」チラ
男「ちげーよ」ペラ
男友「何それ。絵本?」
男「女さんから借りた」
男友「ついにアプローチが実ったのか」
男「そんなところ」ペラ
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:00:25.15 ID:mSWGXAEl0
キーンコーンカーンコーン
DQN女「おっ昼ぅー」
取り巻き「DQN女、飯食おうぜ」
DQN女「悪ィ、女と食うわー」
「飯だぞー」ガチャン
男「あ、俺も一緒いい?」
女「うん」
男「失礼ー」ガチャン
人形(……ふふ)
(なかなか楽しそうな昼食の風景になったな)
DQN女「はいっ、唐揚げ!」ヒョイ
人形「パク」
男「気になってたんだけど、その子何?」
女「この子はね、人形さん」
DQN女「へー、人形だったんだ」ヒョイ
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:03:25.85 ID:Sr/JXnl60 [1/35]
キーンコーンカーンコーン
DQN女「っしゃぁ授業終わりー」
取り巻き「DQN女、ゲーセンいかね?」
DQN女「悪ィ、女と帰るわ」
「女ー」
男「あ、俺も」
「って行っちゃった…」ガクッ
取り巻き「………」
取り巻き「最近、DQN女、付き合い悪くね?」
取り巻き「調子乗ってね?」
取り巻き「ハブらね?」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:06:21.21 ID:Sr/JXnl60 [2/35]
街中
DQN女「それで頭キてさー」
女「うん」
人形「お前が悪い」
DQN女「えー?そうかなー」
「と」チラ
老婆 オロオロ
DQN女「あー」
「おい婆さん」
老婆「……!」ビク
DQN女「今時そんな風呂敷包みとかねーだろー」
「ほら、持ってやるから貸せよ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:09:14.54 ID:Sr/JXnl60 [3/35]
老婆「けっ結構ですじゃ」フルフル
女「歩道橋の向こうまで運ぶだけですよ」ニコ
老婆「………」
「じゃあ…お願いするかのぅ」
DQN女「はじめッからそう言ってんじゃねーかー」ブスッ
「先行くぞー」ヒョイ
女「お手を」
老婆「すまんなぁ」
女「いえ」
(DQN女さん…良いところも、あるんだよね)クス
51 名前:はい[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:12:21.02 ID:Sr/JXnl60 [4/35]
人形「意外なことをする」チョコン
DQN女「あー?そうかもなー」
「思い出しちまったんだよ」
人形「何を?」
DQN女「なんだろーなー」
「まだ純粋だったころをさ」
人形「………」
DQN女「女の読んでた絵本、星の王子さまだろ?」
「あれ、あたしも昔読んだことあってさぁ」
「こんなおとなにゃなるまいと思ったもんだ」
「今のあたしじゃあ笑っちまうけどなー」ヘラッ
人形「そっか」
52 名前:内藤濯(あろう)訳、岩波書店[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:16:02.16 ID:Sr/JXnl60 [5/35]
夜・男の部屋
男「続き続き、と」
ペラ…
『ずるそうなふるまいはしているけど、
花はやさしいんだということをくみとらなきゃいけなかったんだ。
花のすることったら、ほんとにトンチンカンなんだから。
だけど、ぼくはあんまり小さかったから、
あの花をあいするってことが、わからなかったんだ。』
男「この絵本…なんか」
「子ども向け、じゃあないよなぁ」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:20:14.87 ID:Sr/JXnl60 [6/35]
翌日・教室
DQN女「ふんふんふふーん」ガラガラ
「………」
「なに、それ」
DQN女の席。
そこには、一瓶の花瓶が置かれていた。
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「………」ヒョイ
DQN女は、静かに教室の隅、
花瓶が元あった場所へと戻したのだった。
54 名前:欝展開はいりまーす[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:23:53.62 ID:Sr/JXnl60 [7/35]
授業中
化学教師「じゃ、資料集のー」
女「あ、忘れてきた」
DQN女「バカだなー」
「嵩張るんだから学校に置いとけば」スッ
『死ね』。『臭い』。『消えろ』。
開いた資料集には、油性ペンで罵詈雑言が書き殴られていた。
DQN女(まさか)
国語の便覧。倫理の資料集。その全てに。
DQN女(……ッ)
女「……どうか、した?」
DQN女「なんでもー」
「一昨年のやつと間違えてたわー」ニヘラ
女「雑把すぎるよー」
DQN女(………)ギリッ
55 名前:次からは大丈夫[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:26:59.44 ID:Sr/JXnl60 [8/35]
キーンコーンカーンコーン
DQN女「おっ昼ぅ」ガチャン
男「さりげなく」ガチャン
女「うん」
人形「うん」
DQN女「今日のおかずはなんとー」パカッ
はじめはトッピングかと思った。ギトギトした黒いもの。
平たく潰れたそれは、ご飯の上に、
DQN女「………」バン
「………」ギッ
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「……購買、いくわ」ス
ツカツカツカ ガラガラバタン
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:29:36.52 ID:Sr/JXnl60 [9/35]
女「終わったね」
DQN女「4限の体育って腹にくんだよなー」
女「そうだね」
ザワ…ザワ・・・
女「ん、なんだろう」ガラガラ
DQN女「うちの教室か」テクテク
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「………」
取り巻き「おめーの席、ねぇから!」
58 名前:1,2,3,昼,4,5の65分授業[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:33:02.28 ID:Sr/JXnl60 [10/35]
教室からは、DQN女の席だけが消えていた。
開け放たれた窓から、校庭が一望出来るのだが、
放り投げだされたと思われる机が、椅子が、
そこに見えた。
脚の一部が歪な曲がり方をして。
中に入っていただろう教科書、資料類が散乱して。
DQN女「あんたたちさ」
DQN女は、静かに告げる。
DQN女「あたしに気に入らないことがあったならさ、謝るよ」
「最近付き合い悪かった、って言われればまぁ、その通りだ」
「でもさ」
DQN女は、静かに怒っていた。
DQN女「そーゆーやり方って、ないんじゃねぇの」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:37:03.06 ID:Sr/JXnl60 [11/35]
取り巻き連中は、戸惑っていた。
ほんの少し、悪ふざけをしたつもりでしかなかったのだ。
取り巻き「みっちゃんがやろうって…」
取り巻き「なっ、のりピーだって乗り気だったじゃん!」
皆でやったから、なんて、
特有の連帯感が、悪い方向に働いて。
DQN女「歯。喰いしばろっか」
殴り飛ばした。
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:39:54.92 ID:Sr/JXnl60 [12/35]
DQN女「………」
女「DQN女さん…」
男「DQN女…」
DQN女「机」グシ
「取ってくるわ」ニッ
女「手伝うよ」
男「うん」
DQN女「別に一人で」
女「手伝う」
「友だち、でしょ?」
男「それ」
DQN女「……あぁ」
「…さんきゅー」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:42:47.04 ID:Sr/JXnl60 [13/35]
人形「………」シュン
女「あれ、どうしたの?」
人形「私ね」
「ずっと教室いたから」
「見てた」
女「……うん」
人形「止めようと思ったんだ」
「お前ら何やってんだーってさ」
女「うん」
人形「でもね」
「いくら叫んでも、全然聞いてくれなくて」
「何も…出来なかった…!」
女「……そうだったの」
DQN女「……そういや」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:44:51.03 ID:Sr/JXnl60 [14/35]
DQN女「あたし写メ撮ったじゃん」
「で、送ったんだけど。……あいつらに」
女「うん」
DQN女「鞄が何よ、って反応しかなかったわ」
「確かに写ってんだけど」ピ
男「すっごい嫌そう」
DQN女「ほんとに見えてんのかよ!」
男「いや、これはどうみても」
女「私も、そう見えるかな…」
DQN女「見える見えないあるのかもなー」
人形「………」
DQN女「だから、気にすんなって」
「なっ」
人形「……うん」
(ほんとに辛いのは…)
67 名前:>>65 書いてて思って付け足した奴だったりします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:46:43.81 ID:Sr/JXnl60 [15/35]
授業中
数学教師「で、ここは漸化式となるわけだ」カカカッ
女(うーん)カリカリ
DQN女「ほうほう」ジー
数学教師「であることを利用して、問題六が解けるものは?」
DQN女「えーっと、あーるひくいちぶんのあーるのえぬたすいちじょう…?」ジー
女「………」カリカリ
DQN女「ひく、いちだ!」
数学教師「DQN女…」
「女と同じ席、同じ椅子で窮屈だとは思わないか?」
DQN女「だってぶっ壊れたし」チョイチョイ
数学教師「何があったらそうなる…」
女「触れないでください!」
男「そうです、無神経ですよ!」
数学教師「え、あ、すまん」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:48:33.60 ID:Sr/JXnl60 [16/35]
キーンコーンカーンコーン
女「放課後だ」
DQN女「よし、帰ろー」
男「あ、俺も」
男友「男ー、部活いこうぜ」
男「………」
男友「な、なんだよその反応は」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:50:34.68 ID:Sr/JXnl60 [17/35]
街中
DQN女「んでさー、そこの服屋がマジお勧め」
女「そうなんだ」
DQN女「あとは、」
「………」
女「………」
「大丈夫?」
DQN女「挫けそうだよー」ヨヨヨ
「人形さんがうちに来てくれたらなおっちゃうかも」チラチラ
人形「………」
「まぁ、一日くらい」
DQN女「ひゅう!」スリスリ
人形(やっぱ止めようかな)ウニウニ
DQN女「あ、そうだ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:53:01.37 ID:Sr/JXnl60 [18/35]
女「うん?」
DQN女「『友だち、でしょ?』」キリッ
女「………」
DQN女「嬉しかったぞー」
「そんなわけで記念品を贈呈したく」
DQN女は、首にさげていたアクセサリーを外すと、
女の手に、包んで渡した。
DQN女「友だち記念」
「安物だけどなー」
女はその、ちょっと派手めな銀のチェーンを、
自分の首に、つけてみた。
女「……『その水は、たべものとは、べつなものでした。』」
DQN女「『しみじみとうれしい水だったのです。』ってか」
◇おめでとう! DQN女 は 女友 に 進化 した!
女友「似合ってるよ。また明日な!」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:56:01.58 ID:Sr/JXnl60 [19/35]
夜・男の部屋
男「また一緒に帰る機会を逃してしまった」
「ゆくゆくは女さんと一緒に」
「あわよくば家に」
「………」
「は!」
「まずは、続きを読もう」
「えーっと」
パラ
75 名前:じゃあ不慮の事故でも起こそうか[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:58:35.53 ID:Sr/JXnl60 [20/35]
『よくわすれられてることだがね。〈なかよくなる〉っていうことさ。』
『なかよくなる?』
『そうだとも。おれの目から見ると、あんたはまだ、
ほかの十万もの男の子と、べつにかわりない男の子なのさ。
だからおれは、あんたがいなくたっていいんだ。
あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。
あんたの目から見ると、おれは、
ほかの十万ものキツネとおんなじなんだ。
だけどあんたがおれをかいならすと、おれたちはもう、
おたがいにはなれちゃいられなくなるよ。
あんたはおれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、
おれはあんたにとって、かけがえのないものになるんだよ』
………
76 名前:頭痛いので休憩します 落ちたら立てな[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 01:01:11.45 ID:Sr/JXnl60 [21/35]
夜、女友の部屋
女友「グガー」
人形「苦しい」
「ずっとベアハッグ状態なんだが」
「………」
女友「スピー」ボイン
人形「………」スカッスカッ
「おのれ」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:19:00.32 ID:Sr/JXnl60 [22/35]
翌日・教室
女友「おっす」ペカー
人形「や、やぁ」ゲッソリ
女「…どうしたの?」
女友「分かんない」
人形「女ぁ」ピョン
女「うん?」ダキッ
人形「やはりここが落ち着く」
女友「お、新しい机きてんじゃん」
女「綺麗だね」
女友「思わず傷を残したくなる」シャカッ
女「やめよう?」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:26:48.63 ID:Sr/JXnl60 [23/35]
キーンコーンカーンコーン
女友「おっ昼ぅ」ガチャン
男「さりげなく」ガチャン
女「うん」
人形「うん」
男「そういや」
「そろそろだな。中間テスト」
女「そうだね」
女友「……え?」
女「え、って告知あったけど」
女友「……何もやってねぇ」
「女!勉強会をしよう!」ガバッ
「女ん家で!」
女「うん、いいよ」
男(好機…ッ!)
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:33:16.94 ID:Sr/JXnl60 [24/35]
街中
女「こっちの方」
男「へ、へー」
(一緒に帰るどころか家まで)
(ついてるぅ)
DQN女「おー、面白いもん咲いてる」プチッ
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:40:20.44 ID:Sr/JXnl60 [25/35]
女家
女「ただいま」
女母「あら、おかえり」
女友「お邪魔しまー」
女母「あら、いらっしゃい」
男「お邪魔します」
女母「あら、」
(……今度は異性連れてきてる)
(女ちゃんの交友関係って…)
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:45:38.07 ID:Sr/JXnl60 [26/35]
女の部屋
女「ここが私の部屋」
男「ほー」
「おんなの子の部屋ってはじめて入った」
女友「かまととぶってんじゃねーよー」
男「ほんとだって」
「本、いっぱい置いてあるんだな」
女「うん」
「気に入ったのあったら貸すよ?」
男「あ、いや」
「まだ星のやつ読み終わってないし」
女友「あんな短いもんすぐだろ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:53:06.60 ID:Sr/JXnl60 [27/35]
男「活字って苦手なんだよ」
女「え……?」
「じゃあ、無理に薦めちゃってたかな」
男「いや!そんなことは!」
「女さんが好きだから好きです!」
(――あ、言っちゃった)
女「…?なら、いいんだけど」
男(流されたー!)
「べ、勉強、はじめましょうよ」
女友「そうだった」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:03:06.83 ID:Sr/JXnl60 [28/35]
女「――で」
男「うん」
女友「うーーん?」
女「――でしょ」
男「あーなるほど」
女友「ヴァー」ゴロゴロ
女「ってこと」
男「そういう」
女友「ほれ、猫じゃらし」ピョコピョコ
人形「私を何だと思っているのか」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:07:39.73 ID:Sr/JXnl60 [29/35]
女友「うーん」ジー
人形「………」
女友(そもそも)
(人形さんにテスト助けてもらえば)
人形「………」
「自分でやれよ?」
女友「……はい」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:12:24.12 ID:Sr/JXnl60 [30/35]
女「じゃ、またね」フリフリ
人形「………」フリフリ
男「お邪魔しましたー」
バタン
女友「あんた家どっち?」
男「駅まで歩いて電車」
女友「遠いとこからよくやるな」
「あたしこっちだから」
「じゃ」
男「おう、また」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:19:47.51 ID:Sr/JXnl60 [31/35]
電車内
男「………」ガタンゴトン
「わりとローカルな駅までだから」
「各駅停車の普通なんだよな」
「………」ガタンゴトン
「そうだ、このヒマな時間に」スッ
ペラ
「………」ガタンゴトン
「……酔った」ガタンゴトン
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:25:55.46 ID:Sr/JXnl60 [32/35]
夜・女友家
女友「ただいまー」
「ん」
「また書き置きか」
『夕飯、つくってあるので
あたためて食べてください
今日も帰り、遅くなります
女友母』
女友「ま、いいけど」
「いつものことだし」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:30:42.60 ID:Sr/JXnl60 [33/35]
夜・女家
女「いただきます」パチ
女母「いただきます」パチ
「女ちゃん、最近よくお友だち呼ぶようになったわね」
女「うん、まぁ」
「この子のおかげなんだよ」
人形(………)
女母「またそんな人形持ち出して」
女「ほんとだって」
人形(女、友だちも出来たし)
(次、何やればいいんだろう)
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:36:42.94 ID:Sr/JXnl60 [34/35]
女の部屋
女「お母さんったらまだ信じてくれないんだよね」
「『おとなの人ってものは、
よくわけを話してやらないとわからないのです。』かー」
人形「女」
女「うん?」
人形「今さ、悩み事とか相談とか、何かないかな」
女「とくにないかなぁ」
人形「そ、そっか」
女「うん」
人形(………)
女「じゃ、電気消すねー」
パチン
人形(何、すれば……)
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:42:36.02 ID:Sr/JXnl60 [35/35]
夜・男の部屋
男「……よし」
「今日は全部読むぞー」
ペラ
『ぼくはつるべを、王子さまのくちびるにもちあげました。
すると王子さまは、目をつぶったまま、ごくごくとのみました。
おいわいの日のごちそうでもたべるように、
うまかったのです。
その水は、たべものとは、べつなものでした。
ほし空の下をあるいたあとで、車がきしるのをききながら、
ぼくのうでに力をいれて、くみあげた水だったのです。
だから、なにかおくりものでもうけるように、
しみじみとうれしい水だったのです。』
………
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 10:48:11.71 ID:Sr/JXnl60
翌日・学校
女「おはよう」
女友「おっす」
男「おう」
人形(挨拶…は自分からするようになったしなぁ)
男「あ、昨日読み終わったよ」
女「うん、どうだった?」
男「寂しい終わり方だったね」
「でも」
女「でも?」
男「優しい終わり方だった」
女「……そうだね」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 10:56:10.83 ID:Sr/JXnl60
授業中
現国教師「でー、この曇り空という一文がー、心理を描写していてだなー」
女(うんうん)
現国教師「ではー、ここの段落においてー、作者の意図は何かー」
女(これは…)ウズ
人形(女がとても発言したそうにしている)
「は――
女「はい」
現国教師「じゃあ女ー」
人形(え……)
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:02:53.75 ID:Sr/JXnl60
女「――、っと、私は思います」
現国教師「なるほどなー、そうとったかー」
「いい発想だぞー」
女「……ほっ」ガタン
「………」テレ
人形(………)シュン
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:08:21.87 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン
女友「おっひ」
女「とう」ガチャン
女友「るぅ」
「うお、負けた」
女「えへ」
男「俺もいるぞ」ガチャン
女友「あんたはいつも遅いなー」
男「場所が悪いから仕方ない」
人形(………)
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:14:33.20 ID:Sr/JXnl60
女友「うさりんご剥いてきたよー」
「ってあれ」
「人形さん、元気なくない?」
人形「……ん」
「そんなことはない」
女「どうか、した?」
人形「別に」
男(……?)
110 :>>108 いいえ:2010/06/26(土) 11:21:22.65 ID:Sr/JXnl60
………
人形「………」
ペラ
『ねえ…ぼくの花…、
ぼく、あの花にしてやらなくちゃならないことがあるんだ。
ほんとによわい花なんだよ。
ほんとにむじゃきな花なんだよ。
みのまもりといったら、四つのちっぽけなトゲしか、
もってない花なんだよ。…』
人形「いつまでも弱い花じゃーない、か」
男「ね」
人形「……!」ビクゥ
男「どうしたの」
「やっぱ様子おかしくて、心配になった」
人形「あー」
111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:27:26.58 ID:Sr/JXnl60
人形「正直私はもう、いらない存在なんじゃないかってね」
男「え?」
人形「前の女ったらさ、ずっと一人ぼっちで」
「よく私に話しかけてきたんだよ」
「他人に話せない悩み事とか」
男「そうなんだ」
人形「人形ながらも私はさ」
「女とは長い付き合いだから」
「何とかしてやりたいと思ってた」
男「うん」
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:32:30.59 ID:Sr/JXnl60
人形「何とかなった」
「今の女、楽しそうだろ」
男「そうだね」
「よく話すし、よく笑うようになった」
人形「もう、もし何かに悩んだって」
「友だちがついてるから、大丈夫だよね」
男「………」
(『きみが、きみのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』)
………
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:39:28.41 ID:Sr/JXnl60
数日後・女の部屋
ザァアア
女「う、ん…」
「雨か」
「今日も一日頑張ろう」
「さ、人形ちゃん」
人形「……あー」
「私、部屋にいるよ」
女「え?」
「具合でも、悪かったりとか」
人形「そんなんじゃない」
「気分だよ、気分」
「行っておいで」
女「……うん」
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:44:24.58 ID:Sr/JXnl60
バタン
人形「……はぁ」
「だって、一緒にいたって」
「何も出来なくて、虚しくなるからさ」
「人形離れしても十分な年頃だろう」
神『よ』
人形「……神か」
神『お前も一応神クラスなんだがな』
『調子どう』
人形「いまいち」
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:53:48.74 ID:Sr/JXnl60
教室
女「おはよう」
女友「おっす」
男「おう」
女友「あれ、人形さんは?」
女「部屋にいるって」
女友「えーーー」
ザァァアア
女「雨、強くなってきたね」
男「そうだ、今朝のニュース見た?」
女「見てない」
女友「人形さん人形さん人形さんー!」バタバタ
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:58:59.63 ID:Sr/JXnl60
数学教師「では今日の授業はここまでとする」
「で、お楽しみ中間テストの返却だ」
工工エエエエエェェ(´д`)ェェエエエエエ工工
数学教師「出席番号順に取りに来い」
「平均点は42点、追試は20点未満からだ」
ザワ…ザワ…
男「………」
「はっ!」ガバッ
「……おし、平均超えた」
男友「男…裏切りものめ…」
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:04:30.21 ID:Sr/JXnl60
女「………」チラ
「……ほっ」
女友「70点だと…化け物め」
女「女友さんは?」
女友「あたしは前より20点上がった」
女「……24点」
女友「ふ」ドヤ
女「お、おめでとう」
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:10:59.71 ID:Sr/JXnl60
女の部屋
人形「あのさ」
「元の、ただの人形に戻してはもらえないかな」
神『え、無理』
『許可はするけど否定は出来ない』
人形「じゃあ」
「人間に」
神『もっと無理』
人形「そ、っか」
「いっそ、意思なんて持たなければよかったと思うよ」
神『………』
(人の身に近過ぎたが故、か)
『ま、頑張って』
人形「………」
(私はいない方が、いいな)
120 :脳内とかで:2010/06/26(土) 12:17:53.73 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン
世界史教師「では、授業をはじめます」
「と」
「言いたかった、のです、が」
「暴風警報が出たので下校です」
女「暴風警報?」
男「うん」
「大型の台風がくるかもって言ってた」
女友「そーゆーこと先言えよ」
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:22:38.34 ID:Sr/JXnl60
街外れ、橋下
ザァァァアアアア
人形「………」
「ほんとに寂しかったのは」
「私かもしれないね」
「………」
「私は」
「女を幸せにしてあげたかったんだ」
「これでいい」
「これで」ギュ
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:30:43.51 ID:Sr/JXnl60
ザァァア
ヒュオオ…
女「風、強くなってきたなぁ」
女友「暴風だし」
男「あのさ、電車止まったかもしれないから」
「泊めってもらってもいいかな!」
女「うん、いいんじゃない?」
女友「あ、じゃ、あたしも泊まるー」
「どうせうち帰ってこないだろうし」
男「じゃあお菓子でも買って」
女「はやくかえろ?」
125 :数学はうちの高校だとこんなもん:2010/06/26(土) 12:39:43.45 ID:Sr/JXnl60
女家
女「ただいま」
女友「お邪魔しまー」
男「お邪魔します」
女母「あら、いらっしゃい」
女「台風で帰れないから、泊まりたいって」
女母「あらあら」
女友「お世話になりまー」
男「ご厄介になります」
126 :あ、過去形ですよ?念のため:2010/06/26(土) 12:43:52.02 ID:Sr/JXnl60
女の部屋
女友「人形さーん」ガチャ
シィン
女友「あれ」
「いなくない?」
女「え?」
「ほんとだ」
男「いないな」
(……まさか)
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:48:52.26 ID:Sr/JXnl60
男「あ、あのさ」
女「うん?」
男「人形さん、何か悩んでたみたいで」
「もしかしたら、……」
「ちょっと探してくる!」ダッ
女友「あ、あたしもっ!」ダッ
女「そんな…」
「人形ちゃんが…悩んでたなんて」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:55:43.26 ID:Sr/JXnl60
男「一応レインコート持ってきてるんだ、貸すよ」
女友「気がきくじゃん」
「あたし東の方探すから」タッタッタッ
男「俺、西」タッタッタッ
女「わ、私も」
ヒュオオオオオ
女「っ」
「風…飛ばされたり、しなきゃいいけど」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:59:37.03 ID:Sr/JXnl60
女「気付かなかった」
「気付いてあげられなかった」
「…一番、近くにいたのに」
「悩んでたなんて」
「………」
「昔、よく悩み、聞いてもらってたよね」
「どうしても泣きたいときは、よくあの橋の」
「……!」ダッ
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:04:36.35 ID:Sr/JXnl60
男「どうだった?」
女友「ダメ」
「女は?」
男「あれ」
「女も捜しに行ったのか」
ピロリロリン
男「「メールだ」」女友
『多分、街の外れの橋の下だと思う
昔ね、よくあの子とそこに行ったから』
男「どこ?」
女友「こっちだ」ツイ
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:08:26.06 ID:Sr/JXnl60
女「よし」ピ
「今、行くから!」
女は堤防沿いを走っていった。
傘。骨が折れたから、捨てた。
合羽。顔を覆う部位が水に濡れ煩わしく、
向かい風に押されるのもあり、外した。
首から上は直に雨を受けていた。
その隙間から滲む滴と、走り続けたことの汗で、
どのみち、女の身体はベタベタとなっていた。
横目に流れる川は、体積を増して、荒く。
牙を剥くときを、今か今かと待ち構えているかのようだった。
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:12:16.74 ID:Sr/JXnl60
人形「雨、止まないな」
「風もきつくなってきたし」
「地面も泥ッ泥じゃあないか」スッ
「……まったく、気が滅入るね」パンパン
「もうちょい、上にのぼろ」
「う」ズル
「しま――」
女「人形ちゃん!」ザザザ
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:19:02.37 ID:Sr/JXnl60
男「まだかよ!」
女友「うっせぇもうそこだ!」
「ほら、あの橋のことだ、きっと」
男「あれは…、下に女と…人形もいるか?」
女友「見えねーよ遠いし」
「いるんだな、そこに?」
男「あ」
「ぁ?」
女友「何さ」
男「飛び込んだ。川に」
女友「はぁ?!」
136 :>>133 女が3歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものでした。削ったの忘れてた:2010/06/26(土) 13:22:49.57 ID:Sr/JXnl60
『ぼくが、ぼくのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』
『にんげんっていうものは、このたいせつなことをわすれているんだよ。
だけど、あんたはこのことをわすれちゃいけない。
めんどうみたあいてには、いつまでもせきにんがあるんだ。
まもらなけりゃならないんだよ、バラの花とのやくそくをね……』
137 :終わったら、没案のところ貼ります:2010/06/26(土) 13:26:51.51 ID:Sr/JXnl60
………
『……な』
『女』
女「う…ん……」
『起きて』
女「はっ」
「人形ちゃんは…!」
『ここにいるから』
女「え……」
「その姿は…」
人形『何よ』
『私はこれでも、女の保護者のつもりだったんだ』
女(お姉ちゃんがいたら…こんな感じなのかな…)
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:29:31.76 ID:Sr/JXnl60
人形『悪かったね』
『暴走した』
女「…ううん」
「私こそ」
「ごめんね、気付けなくて」
「私の悩みは、聞いてもらってたのに」
人形『言わなかったからなぁ』
女「言ってよ…」
「そんなに、頼りない?」
人形『…意地みたいなもんかな』
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:32:31.32 ID:Sr/JXnl60
人形『私の悩み、聞いてくれる?』
女「うん」
人形『頼りない妹分がいて、不安で仕方なかった』
女「………」
人形『だから、背中を押してやった』
『するとびっくり』
『その子は自分で歩いていけた』
女「………」
人形『成長を喜ばしく思う反面』
『寂しかったかな。ちょっと』
女「………」
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:35:45.24 ID:Sr/JXnl60
人形『ここからは約束』
女「約束?」
人形『強く生きて』
『私を不安にさせないように』
『私に出来ることはもう、これが最後』
女「それ、って」
人形『さ、目を閉じて』スッ
『次に目が覚めたら、そこがあなたの居るべきところ』
『友だちを、大切に、ね』ポワ
女「………」クラ
ポワン
人形『はぁ』
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:37:58.28 ID:Sr/JXnl60
人形『本当はさ』
『やっぱりそばに居たくて仕方ないんだ』
『願いが叶うんだったなら』
『私は人間になりたかったよ』
神『無理だって』
『その姿で我慢するって話だろう』
人形『はいはい』
『……しっかりな。女』
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:05:15.99 ID:Sr/JXnl60
『あんたたちのためには、しぬ気になんかなれないよ。
そりゃ、ぼくのバラの花も、なんでもなく、
そばをとおってゆく人が見たら、
あんたたちとおんなじ花だとおもうかもしれない。
だけど、あのいちりんの花が、
ぼくにはあんたたちみんなよりもたいせつなんだ。
だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。
おおいガラスをかけて、ついたてで風にあたらないようにして、
ケムシをはらって、――チョウになるよう、少しはのこしておいたけど、
ふへいもきいてやって、じまんばなしもきいてやったし、
だまっているならいるで、ときにはどうしたのだろうと、
ききみみをたててやった花なんだからね。
ぼくのものになった花なんだからね。』
146 :とけた:2010/06/26(土) 14:08:31.29 ID:Sr/JXnl60
………
「……な!」
「女!」
女「う…ん……」
「起きて!」
女「ん」
女友「おい目覚ましたぞ」
男「よかった、もしものことがあったらって」
女「人形ちゃんは…?」
女友「手」
女「……!」ギュ
人形 ギュ
女友「ずっと握ってたんだ、手を」
「助かってからもずっとな」
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:11:14.84 ID:Sr/JXnl60
男「結構水飲んでて危なかったらしいんだけど」
「医師の話じゃ、後遺症の心配もなさそう、って」
女「そっか」
「きっと守ってくれたんだね」ハグ
人形
女「人形ちゃん?」
「………」
人形
女友「女……」
………
『子どもたちだけが、なにがほしいか、わかっているんだね。
きれでできた人形なんかで、ひまつぶしして、
その人形を、とてもたいせつにしてるんだ。
もし、その人形をとりあげられたら、子どもたちは……』
148 :前半は引用改変です:2010/06/26(土) 14:14:33.60 ID:Sr/JXnl60
さて、今となってみると、もう、確かに六年前のことです。
私は、この話をまだ、誰にもしたことがありません。
その後、私にあった知人たちは、
私が生きているのをみて、たいへん喜びました。
私は悲しかったのですけれど、知人たちには、
『なにしろ、疲れているので……』
と言っていたものです。
今となっては、悲しいことには悲しいのですが、
けれど私は悲しみません。
彼女と約束しましたから。
私は、まだ彼女の人形を、繕って部屋に置いてあります。
弱音を聞かせるためではなく、
私の生き様を、見守っていてもらえるように。
fin.
150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:17:27.90 ID:Sr/JXnl60
本編は以上です。
お付き合いありがとうございました。
で
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:19:52.23 ID:Sr/JXnl60
◆没案1
女家・女の部屋
女「はー」
この部屋の主は、今日何度目かのため息をついた。
女「それでね、また失敗しちゃって」
彼女の部屋は、年頃の娘の部屋にしては、装飾が少ない。
女「皆に笑われちゃったんだー」
そんな彼女の部屋で、女の子らしさを感じさせるものが、
学習机に鎮座した、かわいらしい、小さな人形だった。
この人形は女が三歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものだった。
幼かった女は、人形をいたく気に入ったものだ。
それは今も、なお。
女「私、どうしたらいいのかな。人形ちゃん」
彼女は、人形に話しかけていた。
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:21:21.90 ID:Sr/JXnl60
◆没案2 はじめはこんな感じだったのですがめんどくさくて会話文のみに
人形(はー)
その人形は、いろいろなことに頭?を悩ませていた。
女のことである。
十六歳にもなってこんなおままごとじみた真似を、だとか、
先ほどから上の空で、宿題が全然進んでいないぞ、だとか、
そんな気持ちを伝えられない、自分の無力感について。
人形は、女との付き合いは彼女の両親に次いで長いと自負しており、
女のことは自分の妹のように思っている。
女の相談に乗ってあげたいのはやまやまなのだが……。
人形(人間になりたいな)
人形(そうしたら、女を助けてあげられるのに)
叶わぬ願いと知りながらも、思わず嘆息してしまうのだった。
神『別にいいけど』
人形(え)
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:24:50.84 ID:Sr/JXnl60
改めて記載を。
星の王子さま サン・テグジュペリ 作
内藤濯 訳、 岩波書店
若干改変とかで字数削ったりもしました
人形(はー)
女「ごめんね、いつも愚痴ばっかりだね」
人形(いいんだけど)
(長い付き合いだからねー)
(でも)
(私に言われてもなぁ)
女「はー」
人形(最近、女はいつも寂しそう)
(相談にのってあげたいんだけど)
(人間になりたい)
神『任せろ』
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:55:02.42 ID:k7MbU/IT0
人形『……貴方は?』
神『私は神だ』
人形『貴方が神か』
神『お前を九十九神にしに来た』
人形『九十九神?』
神『モノに魂が宿る的なアレ』
『お前はその娘に長年大事にされてきたから』
『今でも半・九十九神状態なの』
人形『………』
神『で、今宵を以ってめでたく九十九神に昇格するわけ』
『いよっ』ポン
人形『……!』フワァ
神『じゃ、そういうことで』スッ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 19:59:56.33 ID:k7MbU/IT0
人形「これは」グッグッ
「動く」ノビーン
「動くぞおおおおおおおお!」クルクルー
女「………」ポカーン
人形「あ」ピタ
「どうも」ペコリ
女「………」ソロー
人形「………」プニプニ
「いひゃいんれすけろ」ムニー
女「夢じゃ、ないよ、ね?」
人形「うん」
女「わぁ!」ガバッ
人形「息がつまる苦しい死んじゃう」ギュウウ
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:05:32.85 ID:k7MbU/IT0
翌日・女家
女「だから、人形ちゃんが動いたんだってば」
女母「はいはい、遅刻するわよ」
女「もぉ」
人形「………」
「ね、女」ヒソ
女「うん?」
人形「私のこと、皆に言っちゃダメだよ」ヒソ
女「どうして?」
人形「内緒にして。ね?」ヒソ
(はたから見てるとアブナイ子だから)
女母(女ちゃん、人形と話す癖、ひどくなってる……)
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:09:48.21 ID:k7MbU/IT0
街中
タッタッタッ
人形「ねぇ」ガッタガッタ
女「うん?」タッタッタッ
人形「歩こう。ゆとりは大切だよ」ガッタガッタ
女「ごめん、遅刻しそうだから」タッタッタッ
人形「そう……」ガッタガッタ
(今は耐えるのよ、人形)
(これも女を手助けするため)
ガン
人形「っ痛ぁ!」
「角!教科書の角当たった今!」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:15:42.09 ID:k7MbU/IT0
学校
オハヨー
ヨーッス
オハヨウゴザイマス
女「………」スタスタ
人形(………)
女「………」ガラガラ
「………」スタスタ
「………」ガタン
人形(………)
(女……)
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:22:14.03 ID:k7MbU/IT0
教室
人形(………)ヒョコ
(…不安だ)ジー
女「……あ」
「大丈夫だから」ニコ
人形(…不安だ)ジー
女「………」パラ
人形(読書をはじめた)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:26:22.13 ID:k7MbU/IT0
DQN女「でさー、そのエロオヤジがー」
取り巻き「ギャハハハハ」
取り巻き「あるよねー」
取り巻き「あ、DQN女の隣の席の奴さー、また本読んでるよー」
取り巻き「ネクラだよねー」
取り巻き「ギャハハハハ」
DQN女「ふんじゃあ、何読んでっか拝見してきましょーかー」
ツカツカツカ
ヒョイ
DQN女「えーっと、絵本かなーこれはー」
女「やめて、返して」
DQN女「ふーん」
「今のあたしにゃ分かんないねー」ケラケラ
女「もうっ」ヒョイ
「………」パラ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:30:47.80 ID:k7MbU/IT0
人形(………)ゴゴゴゴゴ
(あの不良娘……)ゴゴゴゴゴ
DQN女(……ん?)スタスタ ピタッ
(視線を感じる)クルッ
女「………」ペラ
DQN女(気のせいか)スッ スタスタ
人形(悔しい)
(私には睨むことしか出来ないんだ)
DQN女「絵本だったわー」
取り巻き「何それ」
取り巻き「ギャハハハハ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:38:02.31 ID:k7MbU/IT0
授業中
現国教師「でー、階段を登る視点、上空からの視点へとイメージがー」
女(ほー)
現国教師「ではー、ここの段落においてー、作者の意図は何かー」
女(ここはきっとこうだって)ウズウズ
人形(女がとても発言したそうにしている)
(今こそ手助けのとき)
「はい!」
現国教師「え?」
ザワ…ザワ…イマノダレ…?
女「に、人形ちゃん…!」ヒソ
人形(さぁ女!)b
DQN女(……さっきの声)
(女の方から聞こえたけど)
(あいつそーゆーキャラだっけ?)
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:44:08.71 ID:k7MbU/IT0
女「――、っと、私は思います」
現国教師「うむー、いい解釈だなー」
女(うぅ、恥ずかしい)ガタン
現国教師「積極的でいいぞ女ー」
女(あうぅ)カー
DQN女(………)
人形(この調子で行こう)
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:52:05.13 ID:k7MbU/IT0
体育の時間・教室
ワーワー
人形「流石に外に出て応援するのは躊躇われる」
「頑張れ女」
女 ズコーッ
人形「ありゃー」
ガラガラ
人形(――!)
(取りあえず隠れよう)コソコソ
DQN女「お邪魔しますよーっと」
人形(あいつは)
DQN女「ちょっとお金借りますねー」
「いーいーよー」
「ではでは遠慮なくー」ガサゴソ
人形「……おい」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 20:57:33.36 ID:k7MbU/IT0
DQN女「げ」
(まだ誰かいたのか…?)キョロキョロ
人形「………」ムスッ
チョコン
DQN女「( ゚д゚) ・・・ 」
「(つд⊂)ゴシゴシ」
チョコン
DQN女「(;゚д゚) ・・・」
「(つд⊂)ゴシゴシゴシ」
チョコン
_, ._
DQN女「(;゚ Д゚) …!?」
見回り教員「誰かいるのかー?」カツカツ
DQN女「やっべ」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:14:12.04 ID:k7MbU/IT0
見回り教員「お前は…DQN女か…」
「ここで何をしていたんだ…?」
DQN女「いや、さっき妖精さんが」
見回り教員「妖精さんだー?お前まさか怪しげなヤクに」
DQN女「ねーよ!マジ居るんだって!」
「ほら!」ビシッ
シィン
見回り教員「…何も見えんが」
DQN女「居たんだっつーの!」
見回り教員「はいはい」
「そんなこと言って体育サボりたいだけだろ?」
「ちゃんと出席してこい」
DQN女「チッ」
人形(……ふー)コソ
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:24:39.64 ID:k7MbU/IT0
授業中
数学教師「であるからしてこの式は」カッカッカッ
女(うんうん)カリカリ
数学教師「この値を代入するとこうなってだな」カッカッカッ
女(あれ?)カリ
(数字、間違えてる気がするんだけどな)ハラハラ
人形(女がとても指摘したそうにしている)
「間違ってるよ!」
数学教師「え?」
「あ、あぁ、そのようだな」
「女…か?すまんな」
女「い、いえ、その」カー
DQN女(やっぱり…!)
(あのちっこいのだ!)
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:36:46.85 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
女「ふい、放課後だ」
(今日は何だか疲れたな…)
(人形ちゃんったら強引なんだから…)
人形(今日は何だか疲れたなー)
(ま、これもかわいい女のため)
DQN女「なぁ」
女「!」
DQN女「ちょっとお喋りしようぜ」
「ツラ貸してくれよ」
女「え…」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 21:51:17.66 ID:k7MbU/IT0
校舎裏
女「な、何の用、かな」
DQN女「トボケんじゃねー」
「その鞄の中!見させてもらう」グッ
女「ちょ、ちょっと」グイ
DQN女「ぜっ!」ガバッ
人形「………」
DQN女「ヤー、こいつだ」
人形「…何よ」
「財布なら、ここには入ってない」
女「…財布?」
DQN女「い、いやっ、何でもねーよ」
「それより」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 21:56:37.44 ID:k7MbU/IT0
DQN女「何これ!何このカワイイ生き物!」キラキラ
「マジ欲しーんだけど!くれ!」キラキラ
女「え、それはちょっと」
DQN女「写メ撮っていい?撮っていい?」カシャーンカシャーン
人形「………」
DQN女「ひょおおおすっげえええええ」ツンツン
人形「………」ムニムニ
DQN女「んほおおおおおおお」スリスリ
人形「…やめろ気持ち悪い」ウニウニ
DQN女「ありがと!すっきりした!」ペカー
女「あ、そう…」
DQN女「また見せてくれ!じゃ!」タッタッタッ
女「な、何だったんだろう」
人形「……知らない」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:02:28.48 ID:k7MbU/IT0
夜・女の部屋
女「明日の準備は…これでオッケーかなぁ」
「よし、寝よう」
人形「おやすみ」
パチン
人形「………」
「女、寝た?」
女「……スゥ」
人形「そっか」
(今日の様子を見た感じだと)
(女は学校で一人みたいだね)
(どうにか友だちを作ってあげたい)
(よし、明日も頑張ろう)
……スゥ
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:08:26.54 ID:k7MbU/IT0
DQN女「送信っと」テンテンテン
「はーあんなメルヒェンな生き物が実在したとはなぁ」
「世の中捨てたもんじゃねーわぁ」
ピロリロリン
取り巻き「DQN女からメールだ」
『題:
本文:やべーまじやべー
添付ファイル:有』
取り巻き「何の写メだろ…」
「………」
「鞄?だよな…」
「何がやべーんだろ…」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:14:04.25 ID:k7MbU/IT0
翌日・教室
男友「男ってさー、好きな子いんの?」
男「ん、まぁ」
男友「へー、どんなのよ」
男「こう、おしとやかで、物静かでだな」
男友「んー、例えば」
「女、とか」
男「ブッ」
男友「え、まじで…?」
男「………」カー
男友「へ、へー…」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:22:05.97 ID:k7MbU/IT0
男友「どこがいいの?」
男「分かってねーな」
「大人しいし!黒髪ストレートだし!」
「理想のやまとなでしこじゃねーか」
ガラガラ
女「………」テクテク
男友「あ、女来たぞ」
「話しかけてみたら?」
男「いきなりそんな、話題が」
男友「挨拶でいーじゃん、ほら」ドン
男「わたっ」フラッ
女「………」チラ
男「あ、あの」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:29:22.68 ID:k7MbU/IT0
DQN女「妖精さーん!と女」ダダッ
「おっす」
女「う、うん」
「おはよう」
男(機先を制された…ッ)
(しかし、DQN女と女が何で…)
DQN女「見せてよ…あ・れ」
女「こ、ここじゃまずいよ」
DQN女「いいじゃんーほらほらぁ」グイグイ
女「ちょ、ちょっと」
男(まさか二人はそっち系?!)ガビーン
(何という)トボトボ
男友「え、先越されたくらいでそこまで落ち込むなよ」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:34:41.09 ID:k7MbU/IT0
人形(………)ジー
(さっきの奴)
(女に話しかけようとしてたな)
(気があるんだろうか)
(………)
(ふむ)
DQN女「みーせーてーよー」
女「ダメだって!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:44:00.45 ID:k7MbU/IT0
授業中
日本史教師「えーじゃあ、
この年に結んだ条約は何か分かるかね」
女(あー…)
(何だっけ)パラパラ
人形「はい!」
女(え、ちょっ)
日本史教師「女か、言ってみろ」
女「…わ、分かりません」
日本史教師「何だそれは」
ドッ
男(何だか女さん、最近よく発言するようになったな)
DQN女(かわいいよう声だけでもかわいいよう)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:49:21.95 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
男友「お昼だな」
男「あぁ」
男友「女さん誘ってくれば?」
男「えええいや流石にそれは大胆にすぎるだろ」
男友「いつも一人で食ってるじゃん」
「声かけたら喜ぶんじゃねぇの」
男「そうかな…」
「あ、あの」
DQN女「飯食おうぜー女ー」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:59:05.31 ID:k7MbU/IT0
男「……!」
(一度ならず…二度までも…)
女「え?うん、いいよ」
DQN女「机つけるぞー」ガッチャン
「あのさ、弁当にタコさんウィンナー入れてきたから」
「妖精さんにあーんってしたい!」
女「え、えぇ…?」
人形「……!」ガタン
DQN女「あーん」
人形「パク」
DQN女「かわえー」テレッ
女(食べるんだ……)
男(……?)
(今何か見えたような)
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:04:10.71 ID:k7MbU/IT0
人形「モグモグ」
(ん)
男 ジー
人形(またあいつか)
(やっぱ気があるに違いない)スゥ
DQN女「まだあるからねー」ヒョイ
人形「……!」パク
「モグモグ」
男(何なんだろう……)
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:10:43.46 ID:k7MbU/IT0
キーンコーンカーンコーン
男友「放課後だな」
男「あぁ」
男友「女さん誘って帰れば?」
男「家知らないし」
男友「じゃあ聞いてさぁ」
男「お、おう」
「あの」
DQN女「女の家って近いの?」
女「うん、割と」
DQN女「じゃさ、寄ってっていい?」
女「え、うん」
男「………」ガクッ
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:14:43.34 ID:k7MbU/IT0
人形「………」ヒョコ
男 ガクッ
人形(つくづく間の悪い奴だな)
(よし)
(この本を…)ガシッ
(とうっ)ポトッ
パタン…
DQN女「菓子屋寄ろうぜー」スタスタ
女「買い食いはダメって」スタスタ
男「………」
「……ん」
「本落ちてる…女さんのかな」
「お、女さん!」
「……居ない」
「えーっと」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:19:21.58 ID:k7MbU/IT0
女家
女「ただいま」
女母「あら、おかえり」
DQN女「お邪魔しまー」
女母「あら、いらっしゃ」
DQN女 ギャルーン
女母「い」
女「えっと、」
DQN女「友だちでーす」
女母「そ、そうなの」
(女ちゃん…そんなギャルギャルした子と…っ)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:23:25.05 ID:k7MbU/IT0
女の部屋
女「ここが私の部屋」
DQN女「こざっぱりした部屋だなー」
「あ、本すっげー置いてる」
女「本、好きだから」パカ
人形 ガサガサヒョコッ
DQN女「妖精さーん!」ガバッ
人形「見切った!」スッ
DQN女「………」スカ
人形「………」ドヤ
DQN女「お菓子あるんだけどなー」チラチラ
人形「……!」ガバッ
DQN女「かわえーのー」テレテレ
女「……あれ?」ガサ
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:34:47.25 ID:k7MbU/IT0
女「あの本がない…鞄に入れたと思ったのに」
人形「あー」
「学校に忘れてきたんじゃないかな!」
女「そうかな…」
人形「きっとそう!なかった気がする!」
女「そっか」
人形(あいつ…すぐに追っかけて渡しに来ると思ったのに)
DQN女「あのさ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:39:27.56 ID:k7MbU/IT0
DQN女「アド、交換しよーぜ。携帯持ってるだろ?」
女「う、うん」
セキガイセン
DQN女「オッケー」
女(高校入ってはじめての登録だ…)ワナワナ
DQN女「よろしくなー」
女「うん!」
人形(……何か違うんだけど)
(ま、いっか)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:43:46.74 ID:k7MbU/IT0
男の部屋
男「本、持って帰ってきてしまった」
「明日、学校で渡そう」
「………」
「……どんな本読んでるのかな」
カサ
『星の王子さま サン・テグジュペリ作』
「ふーん」
「絵本、か?」パラ
「………」パラ
「いや、帽子だろーこれ」
「………」パラ
「は!」
「折癖とかつけたら悪いし、やめとこう」パタン
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:47:28.65 ID:k7MbU/IT0
翌日・学校
女 ガラガラ
DQN女「おっす」
女「おはよう」
男「あ、あのさ!」ズイッ
女「ひっ」ビク
男「あ、ごめん」
「この本、昨日落としてたよ」
女「あ、やっぱり学校に忘れてったんだ」
「ありがとう」ニコ
男「いいいいやぁ」ワタワタ
「面白い絵本だね!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:53:38.72 ID:k7MbU/IT0
DQN女「勝手に読んだのかー?」
人形(お前が言うなよ)
男「いや!えっと…うん、ちょっとだけ」
女「そっか」
「どうだった?」
男「はじめの方だけしか見てないよ!」
「本、傷んだらいけないと思って」
女「………」
「よかったら、貸そうか?」
男「えっ」
「うん、貸して!」
(共通の話題ゲットォオオオオオ!)グッ
女(オーバーだなぁ…)
(この人も本、好きなんだろうか)
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/25(金) 23:56:05.12 ID:k7MbU/IT0
男「………」ペラ
男友「なっ!男が読書だと…」
「いつからインドア派になった」
男「ついさっき」
男友「あぁ」
「カバーなんかかけちゃって実はエロいなんかだろ?」チラ
男「ちげーよ」ペラ
男友「何それ。絵本?」
男「女さんから借りた」
男友「ついにアプローチが実ったのか」
男「そんなところ」ペラ
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:00:25.15 ID:mSWGXAEl0
キーンコーンカーンコーン
DQN女「おっ昼ぅー」
取り巻き「DQN女、飯食おうぜ」
DQN女「悪ィ、女と食うわー」
「飯だぞー」ガチャン
男「あ、俺も一緒いい?」
女「うん」
男「失礼ー」ガチャン
人形(……ふふ)
(なかなか楽しそうな昼食の風景になったな)
DQN女「はいっ、唐揚げ!」ヒョイ
人形「パク」
男「気になってたんだけど、その子何?」
女「この子はね、人形さん」
DQN女「へー、人形だったんだ」ヒョイ
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:03:25.85 ID:Sr/JXnl60 [1/35]
キーンコーンカーンコーン
DQN女「っしゃぁ授業終わりー」
取り巻き「DQN女、ゲーセンいかね?」
DQN女「悪ィ、女と帰るわ」
「女ー」
男「あ、俺も」
「って行っちゃった…」ガクッ
取り巻き「………」
取り巻き「最近、DQN女、付き合い悪くね?」
取り巻き「調子乗ってね?」
取り巻き「ハブらね?」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:06:21.21 ID:Sr/JXnl60 [2/35]
街中
DQN女「それで頭キてさー」
女「うん」
人形「お前が悪い」
DQN女「えー?そうかなー」
「と」チラ
老婆 オロオロ
DQN女「あー」
「おい婆さん」
老婆「……!」ビク
DQN女「今時そんな風呂敷包みとかねーだろー」
「ほら、持ってやるから貸せよ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:09:14.54 ID:Sr/JXnl60 [3/35]
老婆「けっ結構ですじゃ」フルフル
女「歩道橋の向こうまで運ぶだけですよ」ニコ
老婆「………」
「じゃあ…お願いするかのぅ」
DQN女「はじめッからそう言ってんじゃねーかー」ブスッ
「先行くぞー」ヒョイ
女「お手を」
老婆「すまんなぁ」
女「いえ」
(DQN女さん…良いところも、あるんだよね)クス
51 名前:はい[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:12:21.02 ID:Sr/JXnl60 [4/35]
人形「意外なことをする」チョコン
DQN女「あー?そうかもなー」
「思い出しちまったんだよ」
人形「何を?」
DQN女「なんだろーなー」
「まだ純粋だったころをさ」
人形「………」
DQN女「女の読んでた絵本、星の王子さまだろ?」
「あれ、あたしも昔読んだことあってさぁ」
「こんなおとなにゃなるまいと思ったもんだ」
「今のあたしじゃあ笑っちまうけどなー」ヘラッ
人形「そっか」
52 名前:内藤濯(あろう)訳、岩波書店[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:16:02.16 ID:Sr/JXnl60 [5/35]
夜・男の部屋
男「続き続き、と」
ペラ…
『ずるそうなふるまいはしているけど、
花はやさしいんだということをくみとらなきゃいけなかったんだ。
花のすることったら、ほんとにトンチンカンなんだから。
だけど、ぼくはあんまり小さかったから、
あの花をあいするってことが、わからなかったんだ。』
男「この絵本…なんか」
「子ども向け、じゃあないよなぁ」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:20:14.87 ID:Sr/JXnl60 [6/35]
翌日・教室
DQN女「ふんふんふふーん」ガラガラ
「………」
「なに、それ」
DQN女の席。
そこには、一瓶の花瓶が置かれていた。
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「………」ヒョイ
DQN女は、静かに教室の隅、
花瓶が元あった場所へと戻したのだった。
54 名前:欝展開はいりまーす[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:23:53.62 ID:Sr/JXnl60 [7/35]
授業中
化学教師「じゃ、資料集のー」
女「あ、忘れてきた」
DQN女「バカだなー」
「嵩張るんだから学校に置いとけば」スッ
『死ね』。『臭い』。『消えろ』。
開いた資料集には、油性ペンで罵詈雑言が書き殴られていた。
DQN女(まさか)
国語の便覧。倫理の資料集。その全てに。
DQN女(……ッ)
女「……どうか、した?」
DQN女「なんでもー」
「一昨年のやつと間違えてたわー」ニヘラ
女「雑把すぎるよー」
DQN女(………)ギリッ
55 名前:次からは大丈夫[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:26:59.44 ID:Sr/JXnl60 [8/35]
キーンコーンカーンコーン
DQN女「おっ昼ぅ」ガチャン
男「さりげなく」ガチャン
女「うん」
人形「うん」
DQN女「今日のおかずはなんとー」パカッ
はじめはトッピングかと思った。ギトギトした黒いもの。
平たく潰れたそれは、ご飯の上に、
DQN女「………」バン
「………」ギッ
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「……購買、いくわ」ス
ツカツカツカ ガラガラバタン
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:29:36.52 ID:Sr/JXnl60 [9/35]
女「終わったね」
DQN女「4限の体育って腹にくんだよなー」
女「そうだね」
ザワ…ザワ・・・
女「ん、なんだろう」ガラガラ
DQN女「うちの教室か」テクテク
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
取り巻き「クスクスクス」
DQN女「………」
取り巻き「おめーの席、ねぇから!」
58 名前:1,2,3,昼,4,5の65分授業[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:33:02.28 ID:Sr/JXnl60 [10/35]
教室からは、DQN女の席だけが消えていた。
開け放たれた窓から、校庭が一望出来るのだが、
放り投げだされたと思われる机が、椅子が、
そこに見えた。
脚の一部が歪な曲がり方をして。
中に入っていただろう教科書、資料類が散乱して。
DQN女「あんたたちさ」
DQN女は、静かに告げる。
DQN女「あたしに気に入らないことがあったならさ、謝るよ」
「最近付き合い悪かった、って言われればまぁ、その通りだ」
「でもさ」
DQN女は、静かに怒っていた。
DQN女「そーゆーやり方って、ないんじゃねぇの」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:37:03.06 ID:Sr/JXnl60 [11/35]
取り巻き連中は、戸惑っていた。
ほんの少し、悪ふざけをしたつもりでしかなかったのだ。
取り巻き「みっちゃんがやろうって…」
取り巻き「なっ、のりピーだって乗り気だったじゃん!」
皆でやったから、なんて、
特有の連帯感が、悪い方向に働いて。
DQN女「歯。喰いしばろっか」
殴り飛ばした。
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:39:54.92 ID:Sr/JXnl60 [12/35]
DQN女「………」
女「DQN女さん…」
男「DQN女…」
DQN女「机」グシ
「取ってくるわ」ニッ
女「手伝うよ」
男「うん」
DQN女「別に一人で」
女「手伝う」
「友だち、でしょ?」
男「それ」
DQN女「……あぁ」
「…さんきゅー」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:42:47.04 ID:Sr/JXnl60 [13/35]
人形「………」シュン
女「あれ、どうしたの?」
人形「私ね」
「ずっと教室いたから」
「見てた」
女「……うん」
人形「止めようと思ったんだ」
「お前ら何やってんだーってさ」
女「うん」
人形「でもね」
「いくら叫んでも、全然聞いてくれなくて」
「何も…出来なかった…!」
女「……そうだったの」
DQN女「……そういや」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:44:51.03 ID:Sr/JXnl60 [14/35]
DQN女「あたし写メ撮ったじゃん」
「で、送ったんだけど。……あいつらに」
女「うん」
DQN女「鞄が何よ、って反応しかなかったわ」
「確かに写ってんだけど」ピ
男「すっごい嫌そう」
DQN女「ほんとに見えてんのかよ!」
男「いや、これはどうみても」
女「私も、そう見えるかな…」
DQN女「見える見えないあるのかもなー」
人形「………」
DQN女「だから、気にすんなって」
「なっ」
人形「……うん」
(ほんとに辛いのは…)
67 名前:>>65 書いてて思って付け足した奴だったりします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:46:43.81 ID:Sr/JXnl60 [15/35]
授業中
数学教師「で、ここは漸化式となるわけだ」カカカッ
女(うーん)カリカリ
DQN女「ほうほう」ジー
数学教師「であることを利用して、問題六が解けるものは?」
DQN女「えーっと、あーるひくいちぶんのあーるのえぬたすいちじょう…?」ジー
女「………」カリカリ
DQN女「ひく、いちだ!」
数学教師「DQN女…」
「女と同じ席、同じ椅子で窮屈だとは思わないか?」
DQN女「だってぶっ壊れたし」チョイチョイ
数学教師「何があったらそうなる…」
女「触れないでください!」
男「そうです、無神経ですよ!」
数学教師「え、あ、すまん」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:48:33.60 ID:Sr/JXnl60 [16/35]
キーンコーンカーンコーン
女「放課後だ」
DQN女「よし、帰ろー」
男「あ、俺も」
男友「男ー、部活いこうぜ」
男「………」
男友「な、なんだよその反応は」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:50:34.68 ID:Sr/JXnl60 [17/35]
街中
DQN女「んでさー、そこの服屋がマジお勧め」
女「そうなんだ」
DQN女「あとは、」
「………」
女「………」
「大丈夫?」
DQN女「挫けそうだよー」ヨヨヨ
「人形さんがうちに来てくれたらなおっちゃうかも」チラチラ
人形「………」
「まぁ、一日くらい」
DQN女「ひゅう!」スリスリ
人形(やっぱ止めようかな)ウニウニ
DQN女「あ、そうだ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:53:01.37 ID:Sr/JXnl60 [18/35]
女「うん?」
DQN女「『友だち、でしょ?』」キリッ
女「………」
DQN女「嬉しかったぞー」
「そんなわけで記念品を贈呈したく」
DQN女は、首にさげていたアクセサリーを外すと、
女の手に、包んで渡した。
DQN女「友だち記念」
「安物だけどなー」
女はその、ちょっと派手めな銀のチェーンを、
自分の首に、つけてみた。
女「……『その水は、たべものとは、べつなものでした。』」
DQN女「『しみじみとうれしい水だったのです。』ってか」
◇おめでとう! DQN女 は 女友 に 進化 した!
女友「似合ってるよ。また明日な!」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:56:01.58 ID:Sr/JXnl60 [19/35]
夜・男の部屋
男「また一緒に帰る機会を逃してしまった」
「ゆくゆくは女さんと一緒に」
「あわよくば家に」
「………」
「は!」
「まずは、続きを読もう」
「えーっと」
パラ
75 名前:じゃあ不慮の事故でも起こそうか[] 投稿日:2010/06/26(土) 00:58:35.53 ID:Sr/JXnl60 [20/35]
『よくわすれられてることだがね。〈なかよくなる〉っていうことさ。』
『なかよくなる?』
『そうだとも。おれの目から見ると、あんたはまだ、
ほかの十万もの男の子と、べつにかわりない男の子なのさ。
だからおれは、あんたがいなくたっていいんだ。
あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。
あんたの目から見ると、おれは、
ほかの十万ものキツネとおんなじなんだ。
だけどあんたがおれをかいならすと、おれたちはもう、
おたがいにはなれちゃいられなくなるよ。
あんたはおれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、
おれはあんたにとって、かけがえのないものになるんだよ』
………
76 名前:頭痛いので休憩します 落ちたら立てな[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 01:01:11.45 ID:Sr/JXnl60 [21/35]
夜、女友の部屋
女友「グガー」
人形「苦しい」
「ずっとベアハッグ状態なんだが」
「………」
女友「スピー」ボイン
人形「………」スカッスカッ
「おのれ」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:19:00.32 ID:Sr/JXnl60 [22/35]
翌日・教室
女友「おっす」ペカー
人形「や、やぁ」ゲッソリ
女「…どうしたの?」
女友「分かんない」
人形「女ぁ」ピョン
女「うん?」ダキッ
人形「やはりここが落ち着く」
女友「お、新しい机きてんじゃん」
女「綺麗だね」
女友「思わず傷を残したくなる」シャカッ
女「やめよう?」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:26:48.63 ID:Sr/JXnl60 [23/35]
キーンコーンカーンコーン
女友「おっ昼ぅ」ガチャン
男「さりげなく」ガチャン
女「うん」
人形「うん」
男「そういや」
「そろそろだな。中間テスト」
女「そうだね」
女友「……え?」
女「え、って告知あったけど」
女友「……何もやってねぇ」
「女!勉強会をしよう!」ガバッ
「女ん家で!」
女「うん、いいよ」
男(好機…ッ!)
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:33:16.94 ID:Sr/JXnl60 [24/35]
街中
女「こっちの方」
男「へ、へー」
(一緒に帰るどころか家まで)
(ついてるぅ)
DQN女「おー、面白いもん咲いてる」プチッ
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:40:20.44 ID:Sr/JXnl60 [25/35]
女家
女「ただいま」
女母「あら、おかえり」
女友「お邪魔しまー」
女母「あら、いらっしゃい」
男「お邪魔します」
女母「あら、」
(……今度は異性連れてきてる)
(女ちゃんの交友関係って…)
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:45:38.07 ID:Sr/JXnl60 [26/35]
女の部屋
女「ここが私の部屋」
男「ほー」
「おんなの子の部屋ってはじめて入った」
女友「かまととぶってんじゃねーよー」
男「ほんとだって」
「本、いっぱい置いてあるんだな」
女「うん」
「気に入ったのあったら貸すよ?」
男「あ、いや」
「まだ星のやつ読み終わってないし」
女友「あんな短いもんすぐだろ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 09:53:06.60 ID:Sr/JXnl60 [27/35]
男「活字って苦手なんだよ」
女「え……?」
「じゃあ、無理に薦めちゃってたかな」
男「いや!そんなことは!」
「女さんが好きだから好きです!」
(――あ、言っちゃった)
女「…?なら、いいんだけど」
男(流されたー!)
「べ、勉強、はじめましょうよ」
女友「そうだった」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:03:06.83 ID:Sr/JXnl60 [28/35]
女「――で」
男「うん」
女友「うーーん?」
女「――でしょ」
男「あーなるほど」
女友「ヴァー」ゴロゴロ
女「ってこと」
男「そういう」
女友「ほれ、猫じゃらし」ピョコピョコ
人形「私を何だと思っているのか」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:07:39.73 ID:Sr/JXnl60 [29/35]
女友「うーん」ジー
人形「………」
女友(そもそも)
(人形さんにテスト助けてもらえば)
人形「………」
「自分でやれよ?」
女友「……はい」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:12:24.12 ID:Sr/JXnl60 [30/35]
女「じゃ、またね」フリフリ
人形「………」フリフリ
男「お邪魔しましたー」
バタン
女友「あんた家どっち?」
男「駅まで歩いて電車」
女友「遠いとこからよくやるな」
「あたしこっちだから」
「じゃ」
男「おう、また」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:19:47.51 ID:Sr/JXnl60 [31/35]
電車内
男「………」ガタンゴトン
「わりとローカルな駅までだから」
「各駅停車の普通なんだよな」
「………」ガタンゴトン
「そうだ、このヒマな時間に」スッ
ペラ
「………」ガタンゴトン
「……酔った」ガタンゴトン
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:25:55.46 ID:Sr/JXnl60 [32/35]
夜・女友家
女友「ただいまー」
「ん」
「また書き置きか」
『夕飯、つくってあるので
あたためて食べてください
今日も帰り、遅くなります
女友母』
女友「ま、いいけど」
「いつものことだし」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:30:42.60 ID:Sr/JXnl60 [33/35]
夜・女家
女「いただきます」パチ
女母「いただきます」パチ
「女ちゃん、最近よくお友だち呼ぶようになったわね」
女「うん、まぁ」
「この子のおかげなんだよ」
人形(………)
女母「またそんな人形持ち出して」
女「ほんとだって」
人形(女、友だちも出来たし)
(次、何やればいいんだろう)
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:36:42.94 ID:Sr/JXnl60 [34/35]
女の部屋
女「お母さんったらまだ信じてくれないんだよね」
「『おとなの人ってものは、
よくわけを話してやらないとわからないのです。』かー」
人形「女」
女「うん?」
人形「今さ、悩み事とか相談とか、何かないかな」
女「とくにないかなぁ」
人形「そ、そっか」
女「うん」
人形(………)
女「じゃ、電気消すねー」
パチン
人形(何、すれば……)
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/26(土) 10:42:36.02 ID:Sr/JXnl60 [35/35]
夜・男の部屋
男「……よし」
「今日は全部読むぞー」
ペラ
『ぼくはつるべを、王子さまのくちびるにもちあげました。
すると王子さまは、目をつぶったまま、ごくごくとのみました。
おいわいの日のごちそうでもたべるように、
うまかったのです。
その水は、たべものとは、べつなものでした。
ほし空の下をあるいたあとで、車がきしるのをききながら、
ぼくのうでに力をいれて、くみあげた水だったのです。
だから、なにかおくりものでもうけるように、
しみじみとうれしい水だったのです。』
………
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 10:48:11.71 ID:Sr/JXnl60
翌日・学校
女「おはよう」
女友「おっす」
男「おう」
人形(挨拶…は自分からするようになったしなぁ)
男「あ、昨日読み終わったよ」
女「うん、どうだった?」
男「寂しい終わり方だったね」
「でも」
女「でも?」
男「優しい終わり方だった」
女「……そうだね」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 10:56:10.83 ID:Sr/JXnl60
授業中
現国教師「でー、この曇り空という一文がー、心理を描写していてだなー」
女(うんうん)
現国教師「ではー、ここの段落においてー、作者の意図は何かー」
女(これは…)ウズ
人形(女がとても発言したそうにしている)
「は――
女「はい」
現国教師「じゃあ女ー」
人形(え……)
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:02:53.75 ID:Sr/JXnl60
女「――、っと、私は思います」
現国教師「なるほどなー、そうとったかー」
「いい発想だぞー」
女「……ほっ」ガタン
「………」テレ
人形(………)シュン
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:08:21.87 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン
女友「おっひ」
女「とう」ガチャン
女友「るぅ」
「うお、負けた」
女「えへ」
男「俺もいるぞ」ガチャン
女友「あんたはいつも遅いなー」
男「場所が悪いから仕方ない」
人形(………)
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:14:33.20 ID:Sr/JXnl60
女友「うさりんご剥いてきたよー」
「ってあれ」
「人形さん、元気なくない?」
人形「……ん」
「そんなことはない」
女「どうか、した?」
人形「別に」
男(……?)
110 :>>108 いいえ:2010/06/26(土) 11:21:22.65 ID:Sr/JXnl60
………
人形「………」
ペラ
『ねえ…ぼくの花…、
ぼく、あの花にしてやらなくちゃならないことがあるんだ。
ほんとによわい花なんだよ。
ほんとにむじゃきな花なんだよ。
みのまもりといったら、四つのちっぽけなトゲしか、
もってない花なんだよ。…』
人形「いつまでも弱い花じゃーない、か」
男「ね」
人形「……!」ビクゥ
男「どうしたの」
「やっぱ様子おかしくて、心配になった」
人形「あー」
111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:27:26.58 ID:Sr/JXnl60
人形「正直私はもう、いらない存在なんじゃないかってね」
男「え?」
人形「前の女ったらさ、ずっと一人ぼっちで」
「よく私に話しかけてきたんだよ」
「他人に話せない悩み事とか」
男「そうなんだ」
人形「人形ながらも私はさ」
「女とは長い付き合いだから」
「何とかしてやりたいと思ってた」
男「うん」
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:32:30.59 ID:Sr/JXnl60
人形「何とかなった」
「今の女、楽しそうだろ」
男「そうだね」
「よく話すし、よく笑うようになった」
人形「もう、もし何かに悩んだって」
「友だちがついてるから、大丈夫だよね」
男「………」
(『きみが、きみのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』)
………
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:39:28.41 ID:Sr/JXnl60
数日後・女の部屋
ザァアア
女「う、ん…」
「雨か」
「今日も一日頑張ろう」
「さ、人形ちゃん」
人形「……あー」
「私、部屋にいるよ」
女「え?」
「具合でも、悪かったりとか」
人形「そんなんじゃない」
「気分だよ、気分」
「行っておいで」
女「……うん」
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:44:24.58 ID:Sr/JXnl60
バタン
人形「……はぁ」
「だって、一緒にいたって」
「何も出来なくて、虚しくなるからさ」
「人形離れしても十分な年頃だろう」
神『よ』
人形「……神か」
神『お前も一応神クラスなんだがな』
『調子どう』
人形「いまいち」
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:53:48.74 ID:Sr/JXnl60
教室
女「おはよう」
女友「おっす」
男「おう」
女友「あれ、人形さんは?」
女「部屋にいるって」
女友「えーーー」
ザァァアア
女「雨、強くなってきたね」
男「そうだ、今朝のニュース見た?」
女「見てない」
女友「人形さん人形さん人形さんー!」バタバタ
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 11:58:59.63 ID:Sr/JXnl60
数学教師「では今日の授業はここまでとする」
「で、お楽しみ中間テストの返却だ」
工工エエエエエェェ(´д`)ェェエエエエエ工工
数学教師「出席番号順に取りに来い」
「平均点は42点、追試は20点未満からだ」
ザワ…ザワ…
男「………」
「はっ!」ガバッ
「……おし、平均超えた」
男友「男…裏切りものめ…」
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:04:30.21 ID:Sr/JXnl60
女「………」チラ
「……ほっ」
女友「70点だと…化け物め」
女「女友さんは?」
女友「あたしは前より20点上がった」
女「……24点」
女友「ふ」ドヤ
女「お、おめでとう」
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:10:59.71 ID:Sr/JXnl60
女の部屋
人形「あのさ」
「元の、ただの人形に戻してはもらえないかな」
神『え、無理』
『許可はするけど否定は出来ない』
人形「じゃあ」
「人間に」
神『もっと無理』
人形「そ、っか」
「いっそ、意思なんて持たなければよかったと思うよ」
神『………』
(人の身に近過ぎたが故、か)
『ま、頑張って』
人形「………」
(私はいない方が、いいな)
120 :脳内とかで:2010/06/26(土) 12:17:53.73 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン
世界史教師「では、授業をはじめます」
「と」
「言いたかった、のです、が」
「暴風警報が出たので下校です」
女「暴風警報?」
男「うん」
「大型の台風がくるかもって言ってた」
女友「そーゆーこと先言えよ」
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:22:38.34 ID:Sr/JXnl60
街外れ、橋下
ザァァァアアアア
人形「………」
「ほんとに寂しかったのは」
「私かもしれないね」
「………」
「私は」
「女を幸せにしてあげたかったんだ」
「これでいい」
「これで」ギュ
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:30:43.51 ID:Sr/JXnl60
ザァァア
ヒュオオ…
女「風、強くなってきたなぁ」
女友「暴風だし」
男「あのさ、電車止まったかもしれないから」
「泊めってもらってもいいかな!」
女「うん、いいんじゃない?」
女友「あ、じゃ、あたしも泊まるー」
「どうせうち帰ってこないだろうし」
男「じゃあお菓子でも買って」
女「はやくかえろ?」
125 :数学はうちの高校だとこんなもん:2010/06/26(土) 12:39:43.45 ID:Sr/JXnl60
女家
女「ただいま」
女友「お邪魔しまー」
男「お邪魔します」
女母「あら、いらっしゃい」
女「台風で帰れないから、泊まりたいって」
女母「あらあら」
女友「お世話になりまー」
男「ご厄介になります」
126 :あ、過去形ですよ?念のため:2010/06/26(土) 12:43:52.02 ID:Sr/JXnl60
女の部屋
女友「人形さーん」ガチャ
シィン
女友「あれ」
「いなくない?」
女「え?」
「ほんとだ」
男「いないな」
(……まさか)
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:48:52.26 ID:Sr/JXnl60
男「あ、あのさ」
女「うん?」
男「人形さん、何か悩んでたみたいで」
「もしかしたら、……」
「ちょっと探してくる!」ダッ
女友「あ、あたしもっ!」ダッ
女「そんな…」
「人形ちゃんが…悩んでたなんて」
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:55:43.26 ID:Sr/JXnl60
男「一応レインコート持ってきてるんだ、貸すよ」
女友「気がきくじゃん」
「あたし東の方探すから」タッタッタッ
男「俺、西」タッタッタッ
女「わ、私も」
ヒュオオオオオ
女「っ」
「風…飛ばされたり、しなきゃいいけど」
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 12:59:37.03 ID:Sr/JXnl60
女「気付かなかった」
「気付いてあげられなかった」
「…一番、近くにいたのに」
「悩んでたなんて」
「………」
「昔、よく悩み、聞いてもらってたよね」
「どうしても泣きたいときは、よくあの橋の」
「……!」ダッ
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:04:36.35 ID:Sr/JXnl60
男「どうだった?」
女友「ダメ」
「女は?」
男「あれ」
「女も捜しに行ったのか」
ピロリロリン
男「「メールだ」」女友
『多分、街の外れの橋の下だと思う
昔ね、よくあの子とそこに行ったから』
男「どこ?」
女友「こっちだ」ツイ
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:08:26.06 ID:Sr/JXnl60
女「よし」ピ
「今、行くから!」
女は堤防沿いを走っていった。
傘。骨が折れたから、捨てた。
合羽。顔を覆う部位が水に濡れ煩わしく、
向かい風に押されるのもあり、外した。
首から上は直に雨を受けていた。
その隙間から滲む滴と、走り続けたことの汗で、
どのみち、女の身体はベタベタとなっていた。
横目に流れる川は、体積を増して、荒く。
牙を剥くときを、今か今かと待ち構えているかのようだった。
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:12:16.74 ID:Sr/JXnl60
人形「雨、止まないな」
「風もきつくなってきたし」
「地面も泥ッ泥じゃあないか」スッ
「……まったく、気が滅入るね」パンパン
「もうちょい、上にのぼろ」
「う」ズル
「しま――」
女「人形ちゃん!」ザザザ
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:19:02.37 ID:Sr/JXnl60
男「まだかよ!」
女友「うっせぇもうそこだ!」
「ほら、あの橋のことだ、きっと」
男「あれは…、下に女と…人形もいるか?」
女友「見えねーよ遠いし」
「いるんだな、そこに?」
男「あ」
「ぁ?」
女友「何さ」
男「飛び込んだ。川に」
女友「はぁ?!」
136 :>>133 女が3歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものでした。削ったの忘れてた:2010/06/26(土) 13:22:49.57 ID:Sr/JXnl60
『ぼくが、ぼくのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』
『にんげんっていうものは、このたいせつなことをわすれているんだよ。
だけど、あんたはこのことをわすれちゃいけない。
めんどうみたあいてには、いつまでもせきにんがあるんだ。
まもらなけりゃならないんだよ、バラの花とのやくそくをね……』
137 :終わったら、没案のところ貼ります:2010/06/26(土) 13:26:51.51 ID:Sr/JXnl60
………
『……な』
『女』
女「う…ん……」
『起きて』
女「はっ」
「人形ちゃんは…!」
『ここにいるから』
女「え……」
「その姿は…」
人形『何よ』
『私はこれでも、女の保護者のつもりだったんだ』
女(お姉ちゃんがいたら…こんな感じなのかな…)
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:29:31.76 ID:Sr/JXnl60
人形『悪かったね』
『暴走した』
女「…ううん」
「私こそ」
「ごめんね、気付けなくて」
「私の悩みは、聞いてもらってたのに」
人形『言わなかったからなぁ』
女「言ってよ…」
「そんなに、頼りない?」
人形『…意地みたいなもんかな』
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:32:31.32 ID:Sr/JXnl60
人形『私の悩み、聞いてくれる?』
女「うん」
人形『頼りない妹分がいて、不安で仕方なかった』
女「………」
人形『だから、背中を押してやった』
『するとびっくり』
『その子は自分で歩いていけた』
女「………」
人形『成長を喜ばしく思う反面』
『寂しかったかな。ちょっと』
女「………」
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:35:45.24 ID:Sr/JXnl60
人形『ここからは約束』
女「約束?」
人形『強く生きて』
『私を不安にさせないように』
『私に出来ることはもう、これが最後』
女「それ、って」
人形『さ、目を閉じて』スッ
『次に目が覚めたら、そこがあなたの居るべきところ』
『友だちを、大切に、ね』ポワ
女「………」クラ
ポワン
人形『はぁ』
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 13:37:58.28 ID:Sr/JXnl60
人形『本当はさ』
『やっぱりそばに居たくて仕方ないんだ』
『願いが叶うんだったなら』
『私は人間になりたかったよ』
神『無理だって』
『その姿で我慢するって話だろう』
人形『はいはい』
『……しっかりな。女』
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:05:15.99 ID:Sr/JXnl60
『あんたたちのためには、しぬ気になんかなれないよ。
そりゃ、ぼくのバラの花も、なんでもなく、
そばをとおってゆく人が見たら、
あんたたちとおんなじ花だとおもうかもしれない。
だけど、あのいちりんの花が、
ぼくにはあんたたちみんなよりもたいせつなんだ。
だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。
おおいガラスをかけて、ついたてで風にあたらないようにして、
ケムシをはらって、――チョウになるよう、少しはのこしておいたけど、
ふへいもきいてやって、じまんばなしもきいてやったし、
だまっているならいるで、ときにはどうしたのだろうと、
ききみみをたててやった花なんだからね。
ぼくのものになった花なんだからね。』
146 :とけた:2010/06/26(土) 14:08:31.29 ID:Sr/JXnl60
………
「……な!」
「女!」
女「う…ん……」
「起きて!」
女「ん」
女友「おい目覚ましたぞ」
男「よかった、もしものことがあったらって」
女「人形ちゃんは…?」
女友「手」
女「……!」ギュ
人形 ギュ
女友「ずっと握ってたんだ、手を」
「助かってからもずっとな」
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:11:14.84 ID:Sr/JXnl60
男「結構水飲んでて危なかったらしいんだけど」
「医師の話じゃ、後遺症の心配もなさそう、って」
女「そっか」
「きっと守ってくれたんだね」ハグ
人形
女「人形ちゃん?」
「………」
人形
女友「女……」
………
『子どもたちだけが、なにがほしいか、わかっているんだね。
きれでできた人形なんかで、ひまつぶしして、
その人形を、とてもたいせつにしてるんだ。
もし、その人形をとりあげられたら、子どもたちは……』
148 :前半は引用改変です:2010/06/26(土) 14:14:33.60 ID:Sr/JXnl60
さて、今となってみると、もう、確かに六年前のことです。
私は、この話をまだ、誰にもしたことがありません。
その後、私にあった知人たちは、
私が生きているのをみて、たいへん喜びました。
私は悲しかったのですけれど、知人たちには、
『なにしろ、疲れているので……』
と言っていたものです。
今となっては、悲しいことには悲しいのですが、
けれど私は悲しみません。
彼女と約束しましたから。
私は、まだ彼女の人形を、繕って部屋に置いてあります。
弱音を聞かせるためではなく、
私の生き様を、見守っていてもらえるように。
fin.
150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:17:27.90 ID:Sr/JXnl60
本編は以上です。
お付き合いありがとうございました。
で
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:19:52.23 ID:Sr/JXnl60
◆没案1
女家・女の部屋
女「はー」
この部屋の主は、今日何度目かのため息をついた。
女「それでね、また失敗しちゃって」
彼女の部屋は、年頃の娘の部屋にしては、装飾が少ない。
女「皆に笑われちゃったんだー」
そんな彼女の部屋で、女の子らしさを感じさせるものが、
学習机に鎮座した、かわいらしい、小さな人形だった。
この人形は女が三歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものだった。
幼かった女は、人形をいたく気に入ったものだ。
それは今も、なお。
女「私、どうしたらいいのかな。人形ちゃん」
彼女は、人形に話しかけていた。
153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:21:21.90 ID:Sr/JXnl60
◆没案2 はじめはこんな感じだったのですがめんどくさくて会話文のみに
人形(はー)
その人形は、いろいろなことに頭?を悩ませていた。
女のことである。
十六歳にもなってこんなおままごとじみた真似を、だとか、
先ほどから上の空で、宿題が全然進んでいないぞ、だとか、
そんな気持ちを伝えられない、自分の無力感について。
人形は、女との付き合いは彼女の両親に次いで長いと自負しており、
女のことは自分の妹のように思っている。
女の相談に乗ってあげたいのはやまやまなのだが……。
人形(人間になりたいな)
人形(そうしたら、女を助けてあげられるのに)
叶わぬ願いと知りながらも、思わず嘆息してしまうのだった。
神『別にいいけど』
人形(え)
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 14:24:50.84 ID:Sr/JXnl60
改めて記載を。
星の王子さま サン・テグジュペリ 作
内藤濯 訳、 岩波書店
若干改変とかで字数削ったりもしました
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