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紬「私唯ちゃん達をダルマにして地下に監禁するのが夢だったの」
閲覧注意
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 14:37:29.98 ID:SjF727f1O [1/39]
ボーリングはするかわからないけど少し書いていい?
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 14:37:29.98 ID:SjF727f1O [1/39]
ボーリングはするかわからないけど少し書いていい?
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 14:49:19.81 ID:SjF727f1O [2/39]
紬(はじまりは些細な出来事だったわ・・・)
唯「ムギちゃんこのケーキ美味しすぎるよ」ムシャムシャ
律「ホントだな、下手なケーキ屋よりよっぽど美味いぜ」
紬「うふふ…ありがとう。実はこれ、今度うちの系列で売り出すケーキの試作品なの。パティシエにも伝えておくわ」
律「どーりで!!お、澪どうした?食わないのか?」
澪「いや、食べたいんだけどさ…その」モジモジ
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 14:57:18.61 ID:SjF727f1O
律「ハハァ~ン…さては澪、お前太ったな?そういえば最近フトモモなんかもムチっとして…」ペラッ
澪「ッツ///」ポカッ
律「いてッ、冗談だよ、冗談…殴んなよォ」ヒリヒリ
唯「そうだよ澪ちゃん、気にしすぎだよ」パクパク
澪「お前らはいいよな、いくら食べても太らないし。ムギはどう…ムギ?どうした?」
紬「ふぇッ?う、うん…そうね…え~となんだったっけ?」
律「おいおい大丈夫かよww」
紬(あの時私はりっちゃんがめくった澪ちゃんのスカートの内側に目を奪われていた…いや、目だけではない。その時既に心までも)
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:07:05.70 ID:SjF727f1O
澪「お、もうこんな時間か、終わりにするか」
唯「やったぁ。ね、みんなアイス食べにいこーよ」
律「さっきケーキ食ったばっかだろ?今度はアイスかよ…唯はいつでも腹ペコだなぁ」
紬「唯ちゃん、よかったら余ったケーキ持ってく?」
唯「いいの?やったぁ」
澪「ふ~と~る~ぞ~」
律「平沢選手は秋山選手と違っていくら食べても平気なのであります」ペラッ
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:18:20.45 ID:SjF727f1O
唯「ふぇッ?」
澪「お、おいやめろ律…唯も少しは抵抗しろよ///」アタフタ
唯「え?別に見られても平気だよタイツ履いてるし」ペラペラ
律「そーだぞ澪、我々は日々のたゆまぬ努力により他人に見られても恥ずかしくない肉体を維持しているのだ」ペラペラ
澪「律まで!!や、やめろってこっちが恥ずかしい///だいたい努力じゃなくて体質だろ?ムギもこの馬鹿どもを止めてくれ///」
紬「」ウルウル
澪「ムギ?」
紬(美しかった…天真爛漫で健康的な唯ちゃんもしなやかで引き締まったりっちゃんも…)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:35:55.20 ID:SjF727f1O
紬(自分の容姿には不満なんて持っていなかった。母から受け継いだ髪の色も瞳の色も…うちの家系の象徴ともいえるこの眉毛も…)
紬(少し太りやすいけどこのプロポーションも、私は気に入っていたの)
紬「…(うつくしい)」ウルウル
澪「ムギ…どうかしたのか?」
紬(思えばあの時すでに壊れていたのかもしれないわね…もっと後だと思っていたけど)
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:46:58.67 ID:SjF727f1O
カツンカツン…いやに足音が響いている
紬(うふふ、お腹空かしてるかなぁ)
地上階と違いあまり飾り気のない廊下を歩く。それでも映画に出てくるような薄暗くて湿った空気の洞窟のような感じではない、どちらかというと研究所の廊下を思わせる、そして無機質な…
紬「澪ちゃん、お待たせ~ご飯よ。」
澪「うぅ~うぅ~」フゴフゴ
紬「ごめんね、すぐ猿ぐつわを取るからね」シュルシュル
澪「ム、ムギ…お願いだよ…もうこんなの嫌だ、耐えられない」
紬「あら澪ちゃん、またオモラシしちゃったのね?じゃあご飯の前に身体を洗ってあげるわ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:06:16.09 ID:SjF727f1O
紬「じゃあまずオムツを取るわね…ハァイ仰向けになりましょうね~」ゴロン
澪「や、やめてくれムギ」
紬「♪~」ベリベリ
澪「や、め…見ないで」モワン
紬「あらたくさん出したのね、いいのよ澪ちゃん健康な証拠なんだから。ウンチもオシッコもどんどん出してね。ペットのおトイレの始末をきちんとするのが飼い主の義務なんだから」
澪「ペット………飼い主」ガタガタ
紬「さ、一緒にお風呂に入りましょ。今日もいっぱい汗かいちゃった」
床に転がっている澪ちゃんを大事に抱え上げる
紬「お姫様だっこじゃなくて赤ちゃんを抱えてるみたいね、可愛いわ」
今の澪ちゃんは部室で体重を気にしていた頃に比べてずっと軽い…
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:18:39.77 ID:SjF727f1O
紬「はいキレイキレイしましょうね~」ゴシゴシ
澪「……」
紬「かゆいところはありませんか~お尻かぶれてないかしら?」ゴシゴシ
澪「……」
紬「今日もだんまりなのね。昔みたいに澪ちゃんとお話したいわ」ゴシゴシ
澪「……」
紬「うふふ…でもその凛とした表情も澪ちゃんらしいわ~。今日はね、みんなでビラを配ったの。和ちゃんも協力してくれたわ」
澪「!?」
紬「私が発案してね、駅前でビラを配ったの。秋山澪さんをどこかで見ませんでしたか~?私たちはこんなに心配しています~ってね。だから汗びっしょり」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:29:17.81 ID:SjF727f1O
澪「…く、狂ってる」
紬「そうかしら…いや、そうかもしれないわ。うふふ、りっちゃん凄く一生懸命でね。道行く人にビラを受け取ってもらえるように必死に呼び掛けてね…思い出したら興奮してきちゃった///」
澪「律…りつぅ~」シクシク
紬「澪ちゃん…今の姿をりっちゃんが見たらどう思うかしら?自分じゃおトイレにも行けない、ご飯もきれいに食べれない。まるで芋虫みたい」
私の一声で澪ちゃんの顔が瞬時に青ざめる…堪らなくゾクゾクする、心臓が鼓動を早める
澪「あ…あ、いや…嫌だ。見られたくない。こんな姿、律だけに」ポロポロ
凛とした表情も澪ちゃんらしい…でも悲しみにくれ涙する澪ちゃんはとても愛らしい
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:43:10.13 ID:SjF727f1O
紬「大丈夫よ、澪ちゃんは私が面倒を見てあげるから。ずっとね…さ、ご飯にしましょ。ご飯が終わったら髪をとかしてあげるわ~黒くて綺麗な髪の毛…私、澪ちゃんの髪の毛大好きよ~」
澪「………りつ、りつ、りつ」ブツブツ
紬「………いいわ澪ちゃん、りっちゃんに会いたいのね?いいわ、明日連れてきてあげるッ。そうして欲しいんでしょ!?」
澪「ム、ムギ!?や、やめてくれ…それだけはお願いだ」
紬「うふふ、冗談冗談~」
ゴメンね澪ちゃん、冗談で済ませるつもりはさらさらないの…りっちゃんも連れてきてあげるわ。でもさすがに一人目と違って二人目は直ぐには難しいの。だからもうちょっと我慢してね。もうちょっとだけ…
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:57:56.00 ID:SjF727f1O
澪ちゃんを連れ帰った日は本当に大変だったわ…その計画性のなさ、行き当たりばったりっぷりは思い出すだけで冷や汗が滲み出るかの。よくもバレずにここまで来たものだと自分に感心するわ
澪「ゴメンゴメン…遅くなった、あれ?ムギだけか」
紬「うふふ、りっちゃんと唯ちゃんは職員室にお呼び出しを受けてるわ」
澪「しょうがない奴らだな、まったく。新歓ライブも近いのに」
紬「うふふ…そうね。ねぇ澪ちゃん、今日も和ちゃんは生徒会かしら」
これまでに何回か同じ質問をしたことがある。唯ちゃんとりっちゃんが部室に来てなくて澪ちゃんと私だけがここにいるというシチュエーション…
澪「和?あぁ時期的にも今は忙しいみたいだな。HRが終わったら飛び出してったよ。挨拶する間もなくだよ、大変だよな」
キタ…頭の中で何かが弾けた
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:11:26.19 ID:SjF727f1O
その言葉を聞き私は身体中の汗腺から汗が滲み出るような…一気に鼓動が低速から高速になるような…
生まれてはじめて感じる感覚に目眩がしそうになった。あの日からずっと考えていた計画を遂行する時が訪れたことを瞬時に理解した
紬「澪ちゃん、先にお茶にしましょうか」
興奮を気取られないように平常心を保つ…わからない、押さえられているのか、おかしいことが悟られているのか
澪「そうだな、じゃあ頼むよ」ガタッ
席につく澪ちゃん。どうやら特に気取られることもなかったらしいわ…私はこんなにおかしいのに。いつもと変わらないように意識しながらティーセットに向かう
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:22:35.80 ID:SjF727f1O
数ある紅茶の中から奥に隠してある缶を開ける…お茶の葉っぱの下にあるビニール袋…強力な睡眠薬…でもこれには重大な欠点があるの
紬「澪ちゃん、ケーキ食べる?うちのパティシエの自信作なの」
澪「自信作!?いや、食べたいのは山々なんだけど…」
紬「うふふ、体重が気になるのね?」
澪「ハ、ハッキリ言い過ぎたぞムギ///最近またな…気をつけてはいるんだけど」
紬「じゃ~ん糖分、脂肪分が気になる食事にはこれを使えば安心よ。琴吹グループで開発した新薬なの!!」
澪「!?」
紬「これはねケーキとかの糖分、脂肪分を吸収させないようにする薬なの。もちろん副作用なんてないわ」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:32:03.50 ID:SjF727f1O
澪「凄いな、そんなのがあるのか」
紬「もうすぐ新聞でも発表されるわ。でもね、少し苦味があるの」
そう、それが欠点。お茶に溶かして飲ませるにはこの睡眠薬は苦すぎるの…だからあらかじめ苦味のことを伝えて薬が溶けたお茶を最後まで飲ませるようにしなきゃ…甘い甘い罠をしかけて
澪「う、苦いのか」タジタジ
紬「で、でもね、すぐに新しいお茶で流しちゃえばわからないわッ」アセアセ
明らかに普段の私とは違いすぎることに私自身が戸惑いながら弁解を続ける…
澪「そうだなムギの用意してくれたケーキも食べたいし苦いのも我慢するか」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:44:49.55 ID:SjF727f1O
希望が湧いてきた…目の前が明るくなる。瞳が輝く私を見て澪ちゃんはどう思ったかしら…
澪「おかしな奴だな、そんなにケーキを食べさせたかったのか?」
紬「うんッ…自信作を用意した日はいつも澪ちゃんに食べてもらえなかったから…さ、どうぞ」コポコポ
澪「フフッ…わかったよ。良薬口に苦し…だな。いくぞ」ゴクゴク
紬「……」ドキドキ
澪「に、苦ッ」ゴクゴク
紬「もうひとこえ~」
澪「プハッ…ムギ、想像以上に苦かったぞ…新しいお茶をくれ」
紬「大丈夫よ澪ちゃん、必要ないわ」
澪「え!?…なんだ、ム、ギ…身体が…」ガシャ
紬「おやすみ澪ちゃん」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:59:30.13 ID:SjF727f1O
唯「おそくなりました~」律「いや悪ぃ悪ぃ、サワちゃんがなかなか解放してくれなくてさ~あれ?澪はまだか?」
紬「まだ来てないわ~」
澪ちゃんは当分目を覚まさないだろう。あれはそういった薬なんだから…もうこれまでの幸せな日常には戻れない。事実上軽音楽部は崩壊してしまった。私が壊してしまった…あんなに楽しい時間だったのに
紬「先にお茶にしましょうか、澪ちゃんも直に来るわ。今日もね、美味しいケーキを用意したの」
結局澪ちゃんは現れず下校時刻になってしまった。私にとっては当然なんだけど…
律「澪のヤツ、無断で休みやがって…こうなったら電話の刑だ」
唯「ひぃ、りっちゃん奉行様それは酷い仕打ち…何卒ご容赦を~」
唯ちゃん、昨日時代劇を観たのね…あの時は二人の仕草をニコニコと眺めていた記憶がある。たぶん冗談を言い合えた最後の時間だったから
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:16:36.53 ID:SjF727f1O
律「出ねぇ…っていうか繋がりもしない」
ごめんねりっちゃん…澪ちゃんの携帯電話は既に電池を抜いてあるの
律「澪が何も言わず帰るなんて珍しいよな、まぁ明日来たら聞こうぜ。帰ろ帰ろ」
唯「その寛大な処分、りっちゃん奉行の優しさに平沢唯感動でありますッ」ビシッ
律「なんだよそれ」
紬「うふふ、じゃあ鍵は私が閉めるわ。今日は迎えが来るから先に帰ってて~」
律「う~す、じゃあムギ、戸締まりは頼むぞ。行くぞ唯」ガラガラ
唯「ムギちゃんバァイバァイ~」バタン
トタトタトタ…二人が階段を降り遠ざかる。今の私はどんな顔をしているのかしら。おもむろに用具入れを開ける
…そこには手足を布で拘束され同じように猿ぐつわをしてある澪ちゃん…幸せなそうな寝顔、ごめんね窮屈な場所に入れて。猿ぐつわを外し辺りが暗くなるまで澪ちゃんに膝枕をして時折頬を撫で黒く美しい髪をすいて時間が経つのをただただ待っていた
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:34:30.79 ID:SjF727f1O
辺りは暗くなり部活動で騒がしかった校内に一切の音は消えた。携帯を操作して電池をかける。澪ちゃんとは違い相手はすぐに出た
紬「斉藤、お父様とお母様は御在宅?」
斉藤『いえ、お二人とも海外へ…なにか至急お伝えしたいことでも?』
紬「いいの…斉藤、今日は迎えに来てちょうだい。でもね出来るだけ目立たない車で来てほしいの、うん。任せるわ。急いでね」
目を覚ます心配はないだろう。澪ちゃんを縛る布を外し担ぎ上げ廊下に出す。鍵をかけて誰もいない職員室に返す。部室に戻り澪ちゃんを背負って裏口から校舎の外に出る…さすがに校内には生徒は残っていないようだ…誰にも見つかってはいないはず…
人を一人背負っていても重くは感じなかった、なにか頭の中で興奮物質でも垂れ流しているのかしら?
自分が自分でないような…これだけのことをしているのに妙に冷静な、まるで他人のことのような…携帯電話が震えハッと我に返る。
紬「裏口から出るわ。すぐに着くからエンジンはそのままでいいわ」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:52:46.90 ID:SjF727f1O
斉藤「おや、その方は?」
紬「友達よ…家に泊めるわ。早く出しなさい」
スムーズに車は走り出し夜の街の風景が流れてゆく…時折街灯の灯が澪ちゃんの頬を、髪を、脚を照らして堪らなく綺麗だった。押さえ切れない興奮と躍動感、達成感…様々な感情が込み上げ訳がわからなくなりそう…正しくないことはわかっている
与えられるのではなく自分で手に入れた…その達成感は罪悪感を塗り潰し隠しきれない幸福感へ導く
何事もなく車は家に辿り着く。家路がこんなに長く感じたのは初めてかもしれない
紬「澪ちゃん、ここがこれから暮らす家よ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:07:20.81 ID:SjF727f1O
紬「斉藤、聞いておくわ。あなたは私の味方よね?」
斉藤「わたくしめは紬お嬢様がまだ産まれていない時よりお嬢様の、いや琴吹家の味方でございます」
紬「秋山澪ちゃんというの。この子を離れに連れていくわ。用意なさい」
斉藤「離れ!?……かしこまりました」
離れ…本宅とは別の、今は亡くなったお祖父様が使っていた住居。小さい頃は毎日のように相手をしてもらった記憶が蘇る。お祖父様は父に仕事を譲った後に離れを作りそこで悠々自適な生活を送っていた。
幼い私はそこにある珍しい物全てに目を輝かせお祖父様が語る話に耳を傾けていた。お祖父様は話相手が出来て嬉しいのか秘密を条件に内緒の場所を見せてくれると言い…幼い私は何の疑いもなく承諾した
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:21:58.04 ID:SjF727f1O
お祖父様はここは大切な物を仕舞っておく場所だと言っていた…そこには無機質な廊下と鍵のついた部屋が数部屋ある空間
そう、お父様もお母様も知らないお祖父様と斉藤、私だけが存在を知っている秘密の空間…そういえばあの時あの部屋にいた娘はどうなったんだろう
今度は私が手に入れたペットをあそこに仕舞える…ふと気づくとさっきまで友達だった澪ちゃんをいつのまにかペット扱いしている自分がいる。クスクスと笑いが込み上げる。可笑しいわ、せっかく出来た友達なのに
斉藤「準備が出来ました」
紬「ありがとう、澪ちゃんはまだ起きないと思うけど食事と着替えを用意なさい」
斉藤は軽く頭を下げ本宅へ消え私は澪ちゃんを背負い離れの戸を開け巧妙に隠された地下室への扉を開けた…
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:32:50.72 ID:SjF727f1O
紬「りっちゃんおはよ~」
律「ムギか…あのな、まだ内緒にして欲しいんけど…澪のやつ、昨日から家に帰ってないみたいなんだ」
紬「えっ!?それってどういうことなの?」
律「わかんねぇ…なにやってんだよあいつ、変な事に巻き込まれてなけりゃいいんだけど」ブルブル
紬「ご家族は警察には連絡したのかしら…心配だわ」
律「それでも昨夜のうちに相談に行って放課後までに連絡が無ければ捜索願を出すみたいなんだ」
紬「………」
律「唯にはまだ内緒にしといてな、心配かけたくないから」
紬「……わかったわ。私に出来ることがあったら言ってね」
律「ムギ、ありがとう」ギュッ
紬「いいのよ、友達じゃない」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:43:52.77 ID:SjF727f1O
あまり寝ていないのか、腫れぼったい目をこすりりっちゃんは机に顔を伏せた…ごめんね、澪ちゃんはこれから私が面倒を見るからね。許してりっちゃん
放課後、りっちゃんが唯ちゃんと私のところに来て部活の中止を告げ足早に教室を出ていった…なにも知らない唯ちゃんと二人、少しの間世間話をしていると…
和「唯、たまには一緒に帰ろっか」
唯「うん和ちゃん、帰ろ帰ろ~…あれ~生徒会はいいの~」
和「あぁ今日は集まりがないからね、じゃあね琴吹さん」
唯「じゃあね~」ブンブン
紬「うふふ、さようなら~」パタパタ
そろそろ澪ちゃんも起きたかしら?私も帰りましょう
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:55:54.87 ID:SjF727f1O
電車を降り軽やかな足取りで家路を急ぐ…この時点では特にどうしようという計画はなかった。ただあの美しくはち切れんばかりの若さを醸し出す澪ちゃんを手元に置いておきたかったのだ。その時はそれしか考えてなかった
裏口から入り悟られないように離れに急ぐ。秘密の地下室にはもうすぐだ…ふと閃きビデオカメラを用意する。日記代わりに使えるかしら…どうしよう楽しくて仕方がないの
ガチャリ
紬「うふふ、澪ちゃん起きてるかしら~?」
澪「ムギッ!!…ここはどこだ!?なんだこの部屋は!?それにこの鎖…一体なんのつもりだ」
紬「ここは琴吹家の離れにある地下室で、それは澪ちゃんが逃げられないようにする鎖よ。そして澪ちゃんはこれから私のペットなの」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:07:12.41 ID:SjF727f1O
澪「なにを言ってんだ、自分がなにをしてるかわかってるのか?」ジタバタ
紬「ふふっ……いたって冷静よ。これから澪ちゃんはここで私のペットとして暮らすの。初日だから記念にビデオ撮るわね~笑って笑って~」ジーッ
澪「狂ってる、変な奴だとは思ってたけどここまでとはな…早くここから出せ!!変態ッ!!今なら許してやる」
なにかしら、おかしいわ。澪ちゃんが見たこともないような表情で私を罵ってる。おかしい、こんなはずじゃ…コンナハズジャ…コンナハズジャ…オカシイワ…イヤ、オカシクナンカナイ
バキッ
うつ伏せに寝転がっている体勢で腹に蹴りを入れられ澪ちゃんが転がる、蹴ったのは…私?
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:17:14.78 ID:SjF727f1O
呼吸がうまく出来ないのか、澪ちゃんは咳き込み信じられない物を見るような目で私を見上げる。もう一発…
今度は二の腕を蹴られ悶絶する澪ちゃん…更に近づき今度は足に蹴りを…そこで気づいた。澪ちゃんが怯えるような泣き顔になっていることを。これよ、これ…うふふ、澪ちゃんはこうでなくっちゃ。
澪「ヒッ…ムギッ、もう止め」ビクビク
紬「うふふ、ごめんね澪ちゃん…痛かったよね?でもペットには躾が大事なの、わかってくれたら嬉しいわ。さ、笑って笑って~ビデオに撮るんだから」ニコニコ
澪「あ、あはは」
瞳に大粒の涙を貯め精一杯口の端を上げ懸命に作り笑いをする澪ちゃん…堪らなく愛らしいわ
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:28:20.80 ID:SjF727f1O
紬「ね、痛いのは嫌よね?私も大好きな澪ちゃんを蹴りたくないわ~だから大人しくペットになって欲しいの、駄目?」
澪「………」
断ったらまた蹴られると思っているのかはっきりと断れず、かといって友達のペットになれと言われ「ハイ、なります!!」などとは誰だって答えれないだろう
紬「いいわ、先にご飯にしましょ。待っててね、琴吹家のお抱えのシェフの一品をお持ちするわ」
澪「な、なぁムギ…その前にこの鎖を外してくれないか?」
紬「………暴れないって約束出来る?」
澪「と、当然だろッ…友達を疑うのか!?」
紬「それもそうね…でも澪ちゃんはもう友達じゃなくてペットなの、ごめんね。躾の行き届いてないペットを自由にするのはマナー違反なの」クスクス
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:38:43.92 ID:SjF727f1O
紬「お待たせ~今日はビーフシチューだったわ。とっても美味しいんだから…はい、どうぞ」コトッ
澪「あ、あはは…冗談きついなムギ…これじゃ食べれないよ。いや、まさかこのまま食べろなんて言わないよな?」
紬「うふふ、ペットはスプーンなんて使わないわ~あらビーフシチュー美味しいわ」パクパク
澪「ふ、ふざけるなッ…そんなこと出来るかッ」ワナワナ
紬「嫌なら食べなくてもいいのよ?澪ちゃん痩せたがってたし…少しくらいご飯なしでも平気よね?ごちそー様でした」
澪「くっそ、こんな鎖…外れろ、外れろよぉッ」ガシャガシャ
紬「あんまり暴れると食い込んで痛いわよ~」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:48:51.30 ID:SjF727f1O
紬「じゃあ家族に気取られる前に本宅に行くわ~また明日の朝に見に来るわ。おやすみなさ~い」ガチャリ
澪「ま、待ってくれムギ、待って…」
考えてみれば最初からじゃれてくるペットなんていないわよね…いろいろ考えなきゃ。地下室から出ると離れの玄関に置きっぱなしの携帯が光っていた。メールと着信、りっちゃんと唯ちゃんからね。まずはりっちゃんから…
律『もしもし、ムギか?』
紬「ごめんね、すぐ電話に出られなくて…澪ちゃんは見つかったのかしら?」
律『いや、見つからないんだ。親御さんは警察に届けを出したってさ…なんでこんなことになってんだ?一昨日まで何もなく過ごしてたのに…チクショウ、澪ォどこにいるんだよォ』シクシク
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:00:38.22 ID:SjF727f1O
紬「……ごめんなさい、力になれなくて」
律『いや、ムギのせいとかそんなつもりじゃないんだ。悪ィ…あたし余裕が無いんだな、ほんとゴメン』
紬「いいの、りっちゃんが優しいのはわかってるから…溜め込まずにいつでも電話して、ね?」
律『ありがとうムギ…またなにかあったら電話するよ』
本当に澪ちゃんが羨ましい。こんなに心配してくれる幼馴染みがいて…次は唯ちゃんね
唯『もしもしムギちゃ~ん、澪ちゃんがいなくなっちゃったんだって~知ってた~?』
紬「えぇ…今朝りっちゃんから聞いたわ。ごめんなさいね、黙ってて」
唯『ひどいな~わたしには内緒だなんて』プンプン
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:10:37.52 ID:SjF727f1O
紬「きっとりっちゃんは唯ちゃんに余計な心配かけたくなかったのよ」
唯『………』
紬「とりあえず警察も動いてくれてるみたいだから私たちは待ちましょ、ね?」
唯『うん、わかった』
紬「そう、いい子ね…うん、また明日」カチャ
唯ちゃんもいい子ね…澪ちゃんは幸せ者だわ~優しい幼馴染み、優しいお友達、優しい飼い主がいるなんて…うふふ
そういえばメールも入ってたわね…知らないアドレス。タイトルも内容も空っぽ…間違いメールかしら?まぁいいわ。いつまでも制服じゃ可愛そうだから澪ちゃんの着替え用意しよっと。まさか斉藤が着替えといったら桜高の制服を用意するとは思わなかったわ
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:26:24.54 ID:SjF727f1O
紬「おはよう澪ちゃん…あらあらこんなに散らかして悪い子ね」
澪「………」ジロッ
紬「ほら、言ったじゃない暴れたら食い込んで痛いって…すぐに消毒するわ~」
澪「触るなッ、汚ならしい」ジタバタ
紬「………」
澪「いいよ、蹴りたければ蹴ればいいさ…一晩中考えたんだ。私はお前のペットなんかにならな…ギィ」
どす黒い感情が溢れたが蹴りはしなかった…ただ澪ちゃんの足首についた鎖を足の上から思い切り踏みつける、何度も…何度も…
踏みつける度に聞いた事がない不快な音が部屋に響き踏みつける度に声にならない叫び声をあげていた澪ちゃんもいつしか痛みからか気を失っていた
アハ、アハハハハ…
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:32:43.02 ID:SjF727f1O
澪ちゃんの足首は血に染まり見たことがない形に捻れていた…気を失ったと同時に失禁してしまったのか澪ちゃんの身体がビクビク痙攣する度に黄色い水溜まりが少しずつ広がっていく
私は迷うことなくその様を録画し続けた。あんなに美しかった澪ちゃんが壊れていく様を見続けたい…いつしかそう思えていた。
紬「ごめんなさい、昨日一晩中寝付けなくて…今日は休ませてもらうわ」
律『わかった、サワちゃんには伝えとくからな。ムギまで倒れちゃ洒落にならないからな。気をつけろよ』
紬「ありがとう…それじゃあね。りっちゃん」カシャ
紬「澪ちゃん今日は一日中一緒にいれるね」
携帯を玄関に置き地下へ降りる。鍵のかかった別の部屋をあける…幼い日に一度だけ入ったことがある部屋…そこにある道具には人を傷つける以外に使い道がないような…そんな形状をしていた
ちょっと澪ちゃんの様子を見てくるから席を外します
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:04:12.44 ID:SjF727f1O
とりあえずこのまま澪ちゃんを放置するわけにはいかないわ…
紬「斉藤、A型の血液を用意して…あとはよくわからないわ。痛み止、包帯、消毒液…麻酔薬もね。急いで」
斉藤『……かしこまりました』
内線で斉藤に捲し立てすぐに道具に目を移す…お祖父様が亡くなってずいぶん経つと言うのにいうのに全ての道具に手入れが行き届いていた。
病院で使われているような金属製のワゴンに凶悪な器具が次々と積まれていく…ノコギリ、鉈、ペンチ、錐、釘、金槌、小型の電気ノコギリや電気ドリル…澪ちゃんが見たらそれだけで気を失っちゃいそうだわ~
紬「こんなところかしら」ガラガラ
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:17:53.61 ID:SjF727f1O
紬「澪ちゃん…大丈夫?」
澪「ムギ…ハァハァさっきはごめんなハァハァ…言い過ぎたよハァハァ」
紬「いいのよ…私こそごめんなさい。本当は澪ちゃんを傷つけたくなんかないの」
澪「わかってる…ハァハァムギは優しいからなハァハァ、なぁムギ…さっきから左足が焼けるように…凄く痛いんだ。ちょっと見てくれないか?この体勢だと自分じゃ見れないんだハァハァ」
紬「わかったわ、少し待ってね…え~とこれでいいかしら」ガチャガチャ
世間一般では鉈と呼ばれる道具を手に取る。
澪「足の怪我が治ったらさ…またバンドやろぉなハァハァどうだムギ?大したことないか?……ムギ?何だよそれ、冗談だろ」ガタガタ
紬「えいッ☆」バギィ
力の限り振り下ろす…元々骨が砕けていた位置を狙ったせいか澪ちゃんの左足首は一撃で千切れ飛んだ…
澪「あ゛ぁあ゛ぁあぁあ゛ぁあぁあぁあ゛ぁ」
澪ちゃんは獣のような雄叫びをあげのたうちまわる
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:31:52.48 ID:SjF727f1O
澪ちゃんはまた失神してしまった…今度は口の端からなにか泡みたいな物が出てる、切り離された足首は鮮血を撒き散らし離れたところに転がっていた。さっきとは比べられないほど出血が激しい
紬「ちょっとまずいかしら」
斉藤『お嬢様よろしいでしょうか?』
紬「いいわ、入りなさい」
斉藤「失礼します…お嬢様こういった場合には舌を噛むおそれがありますので秋山様にこちらをどうぞ」
斉藤が差し出したそれは猿ぐつわの真ん中に無数の穴が均等にあいた卓球の玉のような球体がついた物だった
紬「驚かないの?」
斉藤「今さら隠すこともないでしょうが先代様で慣れていますので。実はこうなることを見越しておりまして呼んでいる方がいます」
斉藤の後ろから白衣を来た小柄なお年寄りが入ってきた…不意の来客に冷や汗が出る
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:46:17.85 ID:SjF727f1O
紬「誰なの?」
斉藤「世にいう闇医者とでも呼ぶのでしょうか…先代様の頃から琴吹家抱えている専属医になります。口の方は固いのでご安心下さい」
医者「まずはそちらのお嬢さんの手当てからしましょう…紬様、四肢の切断は素人が気軽にやれるもんではありません。医師の指導の元、患者の生命を優先して少しずつ進めていくものなんです」
紬「でも澪ちゃんの飼い主は私よ、他人になんか任せられないわ~」プンプン
医者「紬様は先代様に似ておりますな…まぁ当然といえば当然なのですが。」
斉藤「………さ、秋山様の手当てにかかりましょう」
テキパキとした作業で輸血や縫合をはじめる斉藤とお医者様…手持ちぶさたな私は切り離された足首を手に取りその美しさにウットリとしていた
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:57:01.70 ID:SjF727f1O
医学のことは詳しくないからわからないけれどその医者によると人間の身体は一度に多くのパーツが欠損すると失血死や外因性のショック死を招くという。
相手の身体に損壊を与えて快楽を得たいという時でなければしっかり麻酔をかけ時間をかけプロセスを踏み取り外した方が安全らしい
…澪ちゃんが怯える様子も見たい気持ちもあるがそこは我慢することにした、命と一時の快楽じゃ天秤にかけられないわ
とりあえず澪ちゃんは床ではなくベッドのある別の部屋で治療していくことになった…少し物足りない気持ちもあるが医者と斉藤に治療を任せ地下を後にする
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:09:04.08 ID:NmARgbHIO [1/47]
地上に上がり澪ちゃんの足を切り落とした感触を思いだして奮えていると携帯がまた不在着信があることを告げる光を放っていた…
お昼休みにりっちゃんがかけてくれたらしい。唯ちゃんは体調を心配してくれるようなメールを送ってくれていた。本当にいい子たちだわ。そしてもう一件のメール…昨日の間違いメールと同じアドレスだ。内容は…
『校舎の裏口が開いてたわよ』
奥歯がカタカタ鳴り膝が震える、嫌な汗が全身から吹き出る…誰にも見つからず校舎から出たと思っていたが誰かに見られていたらしい。どうしようどうしようどうしよう
天国から地獄へ真っ逆さまに突き落とされたような気持ちになり生まれたての子馬のような足取りで再び地下へ降りる
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:21:59.67 ID:NmARgbHIO [2/47]
紬「ねぇ斉藤、困ったことになったわ」
斉藤「いかがなさいましたお嬢様」
紬「あの日、澪ちゃんを連れ出すところを誰かに見られていたらしいの…どうしたらいいの」
斉藤「ふむ、拝見しましょう…連れ去った直後ではなく二日ほどおいてから核心をつくような内容。相手は恐らくお嬢様を脅す算段でしょうな」
紬「私を脅す!?琴吹家の後継者の私を…一体誰なのよ、そんな不埒者はッ!!」ワナワナ
斉藤「お嬢様落ち着いて下さいませ。脅すのが目的でしたらそれほど恐ろしい相手ではありません。それに送り主はすぐわかりそうです」
紬「そうなの?誰なのよ」
斉藤「お嬢様のお近くによく慣れ親しんだ教師の方はいらっしゃいませんか?」
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:34:23.08 ID:NmARgbHIO [3/47]
紬「さわ子先生?」
斉藤「さわ子先生とおっしゃいますか?まぁ十中八九その方でしょうな」
紬「なんでわかるの?」
斉藤「わたくしの記憶が正しければ秋山様は校内でファンクラブが出来るほどの方らしくメールの送り主が生徒だった場合、そんな光景を目にすればすぐに警察なり教師なりに届けるでしょう。何しろ有名な方ですからね」
紬「言われてみればそうね」
斉藤「それにお嬢様を脅すとなれば琴吹家の家柄を知ってのことでしょう、身近な方は知っていても学内全員がお嬢様が琴吹グループの一人娘とは知りますまい」
紬「それに私のアドレスを知っていた…」
沸々と怒りが沸いてくる。きっとこの先の私の出方を想像し楽しんでいるのだろう…
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:49:25.02 ID:NmARgbHIO [4/47]
斉藤「そういうことですな」
紬「あの行き遅れ…」ギリギリ
斉藤「お嬢様、お口にお気をつけ下さいませ。余裕が無くなった人間から破滅するものです…先代様はいかなる時でも落ち着いて行動なされました」
紬「………お祖父様だったらこんな時どうするかしら」
斉藤「要求を聞く振りをして呼び出し捕らえて生まれてきたことを後悔させてから惨たらしく殺害なさるでしょうな」
紬「私にも出来るかしら」
斉藤「お嬢様がお望みなら…斉藤はその為におります。それに秋山様の手術に向けて練習台も必要かと…」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:01:57.99 ID:NmARgbHIO [5/47]
そうと決まればメールなんてまどろっこしい真似なんてしてられない。短縮番号でさわ子先生に電話を選択する
斉藤「お嬢様、お待ち下さい…さわ子先生様にはこちらの携帯電話をお使い下さい。お嬢様の履歴が残りますと後々面倒なことになりかねますので」
紬「そうね、ありがとう」
時刻は夕方6時を越えている、軽音楽部は活動していないだろう…さわ子先生は待っていたかのようにすぐに出た
さわ子『もしもし誰かしら?』
紬「さわ子先生、私です。琴吹です、今大丈夫ですか~?」
さわ子『あらムギちゃんだったのね。体は平気?大変だったわね~もう起きても平気なの?』
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:13:32.32 ID:NmARgbHIO [6/47]
白々しい…怒りに声が震えそうになるのを堪えて会話を繋げる
紬「先生、これからお会い出来ませんか?」
さわ子『あら急にどうしたのかしら?』
紬「相談にのって欲しいことがあって…先生ならご存知ではありませんか?」
さわ子『そうね、いいわよ。困ってる生徒の為なら時間外労働も苦じゃないわ』
紬「ありがとうございます。では家の者に迎えを行かせますので…ハイ、失礼します」
なにが困ってる生徒の為だ。吐き気がする
紬「斉藤、さわ子先生を連れてきて頂戴…誰にも見つからないようにね。あと出来るだけ無傷でね」
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:24:35.21 ID:NmARgbHIO [7/47]
澪ちゃんと違って今度は容赦しない…優しさの欠片も与えるつもりはない、さわ子先生の身体全体に愚かな自分が誰に脅しをかけたかわからせてあげる
一時間もしないうちに斉藤がさわ子先生を抱え戻ってきた…さわ子先生は傷一つなく眠っているようだ
斉藤「処理する事案がありますので少し外します…何かありましたらお呼び下さい。では先生、お嬢様を宜しくお願い致します」
医者「じゃあはじめますかの」
紬「宜しくお願いします」
医者「まずはアキレス腱からいこうかね…そこの大きなニッパーを取っておくれ。そうそうそれでいい。せ~の」バチン
完全に防音処理がされている部屋に繰り返し悲鳴があがり夜は更けていく…
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:38:28.49 ID:NmARgbHIO [8/47]
紬「おはよう、りっちゃん」
律「おっす、ムギ…もう平気なのか?」
りっちゃんは腫れぼったいような泣き腫らしたような目をして自分の席にいた。ずっと澪ちゃんの無事を祈り続けているのだろう…健気なりっちゃんにキュンキュンするわぁ
始業ベルより早くベルが鳴る…
『生徒の皆さんは至急体育館に集まるよう連絡します』
りっちゃんの目がカッと開き同時に体が震えだす
律「ま、まさか澪が…ムギ、どうしよう。立てないやハハハ」ガタガタ
紬「りっちゃん大丈夫よ、きっと澪ちゃんは無事」ギュッ
慈しむようにりっちゃんを抱き締める…いつも強がってばかりのりっちゃんが震えている
唯「………りっちゃん、ムギちゃん。おはよ」
いつの間にか唯ちゃんがそばにいた。唯ちゃんがとても言いにくそうな…口に出すのが恐ろしいといった感じで言葉を探しているのがわかる
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:51:34.28 ID:NmARgbHIO [9/47]
唯「あのね、そこで聞いたんだけどね…昨夜ね、さわちゃん先生が交通事故で死んじゃったみたいなの」グスグス
律「なに言ってんだよ唯、冗談だろ!?信じられるかよ…さわちゃんだぜ?車に轢かれたぐらいじゃ死なないだろ」
確かにあの女ときたら車に轢かれたぐらいじゃ死なないかもしれないわ~♪人間ってなかなか死なないものなのね。勉強になったわ。まぁあの状態が生きているかと聞かれたら素直にハイとは言えないけど
紬「とりあえず体育館に向かいましょ、ね?」
律「あぁ…もぅなにがなんだかわかんねぇよ。あたしらが何かしたのかよ」
唯「………りっちゃん」
260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:56:53.31 ID:NmARgbHIO [10/47]
臨時の朝礼は至ってシンプルなものだった。山中さわ子先生が交通事故に遭って亡くなったということだった。居眠り運転の大型トラックに引き摺られ死体は酷い状態だったと後日噂で耳にした
すべて斉藤から聞かされていたのでなにも驚く要素は見当たらない…逆にショックを受けた振りをするほうがやっかいだったわ
紬(あの女最後までしらばっくれてたわ。何が『メールなんて知らない!!』誰が信じるものですか…でもこれで安心して澪ちゃんを愛せるわぁ)
澪ちゃんとさわ子先生を失い軽音楽部は解散となった。明らかに元気を失ったりっちゃんと唯ちゃんを励ましながら季節は移ろい…夏を過ぎ秋になった。去年の今頃は学園祭のライブの準備であたふたしてたわ~
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 02:12:08.08 ID:NmARgbHIO [11/47]
律「おい、バカ澪起きろ~練習するぞ!!」
唯「りっちゃんかわいそうだよ~寝かせてあげようよ~」
やだよ、まだ眠たいんだ…邪魔しないでくれ
律「澪~学園祭のライブまで時間がないんだ早く起きろって。起きないとスカートめくるぞ~」
澪「やめろバカ律殴るぞ…え…あれ律?」
律「やっと起きたのかよ!大事な時に寝やがって…さ、練習するぞ」
澪「あぁ…」
なんか嫌な夢を見ていたような気がする…
紬「ねぇ澪ちゃん…腕がなくっちゃ演奏出来ないわよ~」
律「ホントだ!!澪はドジだなぁ~」
唯「澪ちゃんお人形さんみた~い」
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 02:23:01.21 ID:NmARgbHIO [12/47]
紬「澪ちゃん凄い寝汗ね…怖い夢でも見てたの?」
澪「………ムギ?怖かった、なんか嫌な夢を見てたんだ」
紬「大丈夫よ、私が側にいてあげるから」ナデナデ
自分自身の身に起こった事を理解した時、私は気が狂いそうだった…事実狂っていた。何度も自殺を図り、食事を採らず餓死を選ぼうとした時もあった。その度に小柄な白衣の老人が現れ死を望む私を無理矢理引き摺りあげるのだった
死ぬ事を許されない状況下で私も次第に狂ってしまったのかもしれない…ムギが以前より憎くないんだ。むしろこんな私の側にいてくれることを感謝すらしている…狂ってるのは私なのか…この地下室なのか…もうわからなくなってしまった
320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:36:41.28 ID:NmARgbHIO [14/47]
二年生の秋はせわしなく過ぎていく…その頃から私は受験勉強に専念するという名目の元、離れに部屋を写し両親が帰宅した時以外の余暇時間をそこで過ごしていた
澪ちゃんも最近では薬を使わなくても私に敵対心を抱かなくなり私にとってはとても理想的な日々だった。
食事と入浴を済ませたら澪ちゃんの髪をとかしながら学校でのことを教えてあげ、その後は一日の授業の内容を澪ちゃんと一緒に復習する。
もともと聡明だった澪ちゃんと復習するせいか学習塾や家庭教師を使うこともなく学力は上位をキープし続けることが出来た。おかげで両親も離れを使うことに反対することもなく安寧な日々が続く
学校でのことを話している時の澪ちゃんの瞳は憂いを秘めている気がする…そんな表情も私にとってはたまらないが少し胸が痛くなる
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:43:26.21 ID:NmARgbHIO [15/47]
紬「ねぇ…澪ちゃん、やっぱり私が学校に行ってる時って一人じゃ寂しいわよね~」ナデナデ
澪「んッ…でも私にはムギがいてくれるし…リモコンも使えるから録画してある番組も観れるし…さ、さびしくなんか…ひゃ、ムギどこ触って///」
ペットを撫でるように澪ちゃんの身体を優しく撫でまわす…澪ちゃんの息づかいが浅く速くなっていく
紬「いいのよ澪ちゃん、誰にも聞こえないんだから大きな声出しちゃっても平気よッ」
澪「ムッ…ムギィ///」
澪ちゃんの潤んだ瞳、上気を増した頬…なにもかもが愛おしい、たまらず口づけを交わし舌を潜り込ませる…澪ちゃんもそれに応えてくれ舌が淫らに絡み合う
唇を放し見つめ合い…かき混ぜられた唾液が尾を引き唇と唇を繋ぐ糸になった
322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:46:04.66 ID:NmARgbHIO [16/47]
紬「澪ちゃん、それじゃあヌギヌギしましょうか?仰向けにするわよ~」ハァハァ
澪ちゃんは小さく頷き頬が赤みを増す…仰向けにした澪ちゃんの服を少しずつ剥いでいく。恥ずかしいのだろうか、何度繰り返してもこの時目を逸らして口をギュッと閉じ、されるがままにしている
服を剥がされた澪ちゃんの裸身が明かりの下で照らされる…ベッド広がる黒い髪、潤んだ大きい瞳、形の良く豊満な胸、くびれたウェストか流れるヒップライン…この世の美の集大成ともいえる存在に思わず息をのむ
澪「ムギ…そんなに見られると、その…恥ずかしい」
324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:48:33.03 ID:NmARgbHIO [17/47]
お祖父様があの医者を気に入っていた理由がよくわかる…澪ちゃんの四肢があった箇所には傷口のような物はなく、代わりにそこに腕や脚なんてはじめから無かったかのような自然な曲線が描かれていた。
それだけではない、あの医者の処方する栄養剤のせいだろうか…地下室で半ば寝たきりの生活を送っている筈の澪ちゃんでさえこれまでと変わらぬ肉体を保ち続けている…
澪「おいムギ…大丈夫か?」
紬「えっ!?大丈夫、大丈夫よ…澪ちゃんに見とれちゃったわ」
澪「ば、馬鹿…恥ずかしいこと言うな」
紬「うふふ…今日もいっぱい気持ち良くしてあげるわね」
325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:55:26.33 ID:NmARgbHIO [18/47]
律「大丈夫かムギ…目の下、凄いクマだぜ?」
紬「うふふ、試験が近いから夜更かししちゃったわ~」
律「うへぇ…ムギは成績悪くないのによくやるぜ」
りっちゃん、本当はね…行方不明のあなたの幼馴染みと明け方までずっとじゃれあっていたのよ
唯「ムギちゃんはすごいな~わたしなんて和ちゃんに助けてもらわなきゃ赤点ばっかりだよぉ」
本当に何気ない会話…いつしか誰も澪ちゃんのことを口にしなくなった。駅前でのビラ配りもしばらくやっていない。みんな口に出さなくてもわかっているのだろう…
和「おはようみんな、唯悪いけど英語の辞書を貸してくれ。試験勉強で持ち帰ってさ、そのまま忘れてきちゃったんだ」
律「ここにもガリ勉がいるぜ~勘弁してくれよな~」
唯「ちょっと待っててね~ほいさッ」スチャ
和「ありがとう唯…ムギ、肩にゴミが付いてるぞ」
ムギ「あら、気付かなかったわ」
327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 13:06:18.09 ID:NmARgbHIO [19/47]
和ちゃんの指先に流れる一本の長く黒い髪…ジトリと汗がにじみ出る。気をつけているつもりだった、いや毎朝欠かさず澪ちゃんの痕跡は消し去っていた…なのに
いや澪ちゃんの髪の毛だとは限らない、電車の中で偶然ついた髪の毛かもしれない…でもこのメンバーの中で黒く長い髪の毛で思い当たるのはただ一人だろう
沈黙が続く…ここ最近の私たちにとって澪ちゃんの話題はある種の禁句だった。「澪ちゃんの髪の毛みたいだね!!」そんな冗談すら口に出来ない重い空気…沈黙を破ったのは取り上げた和ちゃん自身だった
和「ふふっ…黒くて長い毛だな。まるで澪の毛みたいだ。案外ムギの家にいたりしてな」
血の気が引くのがわかる…なんてことのない冗談に決まっている。普通に考えて同級生を自宅に監禁するなんて本気で思いなどしないだろう…でも冗談ではないんだ。私は澪ちゃんを監禁している
笑いとばせばいい…「そんなわけないわ~」軽くそう言えば場はうまく収まるだろう。でも…言葉が…出ない
バキィ
顔を上げると肩で息をしてりっちゃんが拳を握っていた。床には倒れた和ちゃん…
333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 13:30:57.65 ID:NmARgbHIO [20/47]
和ちゃんの口調ってサバサバしてるぐらいしか印象にないけど特徴あったっけ?
355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:14:25.46 ID:NmARgbHIO [21/47]
律「何言ってやがる…冗談でもそんなこと口にするなッ」フルフル
和「………」
唯「そうだよ、のどかちゃんひどいよ」
和「ごめん、冗談でも口にしていいことじゃなかったわ。律も唯も…ムギも…本当にすまない」ペコリ
りっちゃんは殴られた側の和ちゃんが素直に謝ったのが予想外だったのか振り上げた拳をしまうことが出来ず足早に教室から出ていった
唯「りっちゃん待って~」パタパタ
一瞬の出来事に何も出来ず成り行きを見守ることしか出来なかった私は唇の端を切った和ちゃんに無言でハンカチを渡す
和「ありがとう、洗って返すわ」
356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:15:19.20 ID:NmARgbHIO [22/47]
ずっと燻っていた…あまりに無謀すぎる…誰だって怪しむに決まっている…でもでもやっぱりりっちゃんも欲しい。大人しい澪ちゃんと元気いっぱいなりっちゃん、やっぱり二人は一緒に居る方が正しいに決まっている…
澪「ムギ、ご機嫌だな。何かいいことあったのか」
紬「うふふ、なんでもないわ~なんでもないようなことが幸せなのよ」
澪「ムギが幸せならそれが私にとって一番だよ」
紬「うふふ、ありがとう澪ちゃん」
待っててね澪ちゃん…すぐにお友達を連れてきてあげるから。でも今はまだ内緒、びっくりさせてあげるんだから
357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:16:27.43 ID:NmARgbHIO [23/47]
例の医者はしばらく来れないらしく悶々とした日々を過ごす。目の前を大きな魚が泳いでいるのに釣り上げる道具がない…学校でりっちゃんと過ごす度にこのまま無理にでも拐ってしまいたい欲望にかられる
斉藤「お嬢様、三日後から来れると連絡がありました」
紬「ほんとうッ!?待ってたわ~」
斉藤「……ですが本当に田井中様を?」
紬「本気よ~澪ちゃんとりっちゃん、二人は一緒にいるべきなの」
斉藤「秋山様、山中様…田井中様とさすがに軽音楽部から三人ともなると…」
紬「うふふ、斉藤…期待してるわよ」
358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:17:10.22 ID:NmARgbHIO [24/47]
紬「ごめんねりっちゃん休み時間に呼び出しちゃって…」
律「いいんだよムギ、で伝えたいことってなんだ?」
紬「え~とね、絶対に内緒にして欲しいの。約束できる?」
律「ははっ…ムギにしちゃもったいぶるな。約束するよ」
紬「澪ちゃんが見つかったわ」
りっちゃんは丸く大きな瞳をより大きく見開き掴みかかってきた
律「見つかったってどこでだ!?生きてるのか?元気なのか?」
紬「…りっちゃん…苦しいわ」ケホケホ
慌てて襟首から手を放すりっちゃん…なりふり構わず幼馴染みを心配するなんて。いい、すごくいいわ
359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:18:37.09 ID:NmARgbHIO [25/47]
律「ご、ごめんなムギ…頭に血が昇ってちまって」
紬「いいのよりっちゃん…無理もないわ。まず順をおって説明するわね」
ビラ配りをやめた頃から琴吹グループの力を使い捜索を続けていたこと。捜索の範囲は関東、本州、日本、アジア、欧州と広めていき中東で見つかったこと。交渉の末、身柄を確保したこと
全て嘘だがりっちゃんは想像以上の大規模なスケールに顔を青くして立ちすくんでいた…
律「で、澪は今どこにいるんだ?」
紬「うちの離れにいるわ…いろいろ事情があってまだ公開は出来ないの。それにマスコミが騒いだりしたら澪ちゃんも傷ついてしまうわ」
360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:19:22.05 ID:NmARgbHIO [26/47]
律「そ、そっか…唯には?」
紬「ごめんなさい…澪ちゃんがまずはりっちゃんにだけ会いたいって。ご家族にもまだ伝えてないわ」
律「いいんだいいんだ…さすが琴吹グループだよな!!あたしも澪もこんなな頼れる友達を持って幸せだぜ!!」バシバシ
紬「うふふ、りっちゃん痛いわ~」ハァハァ
律「じゃあムギん家に行けばいいのか?」
紬「迎えは用意してあるわ~」
りっちゃんは澪ちゃんに会いたい。私はりっちゃんと澪ちゃんにそばにいて欲しい…きっと澪ちゃんも同じ気持ちに決まってるわ~
361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:21:31.20 ID:NmARgbHIO [27/47]
りっちゃんを離れに誘き寄せるのは呆気ないくらい簡単だった。こんなにうまくいくのならもっと早く行動してれば良かったわ…
律「すごい仕掛けだな…地下があるなんて思いもしなかったぜ」カツンカツン
紬「お祖父様の趣味なの…きっと秘密基地みたいなものを作りたかったのね」
律「金持ちの考えることはわかんねぇな~」
紬「うふふ、そうね…ここよ」
小窓から中を覗き見る。澪ちゃんはソファーに座りテレビで何かを見ているようだ…ソファーの上から覗かせる後頭部でしか判断出来ないが見る人によっては澪ちゃんだと認識出来るだろう
りっちゃんの背中をそっと押す。りっちゃんは頷きドアを開ける
律「み…澪?」
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:27:09.28 ID:NmARgbHIO [28/47]
澪「り、律なのか?」
律「澪、良かった…ずっと会いたかったんだぞ」
いいわ、離ればなれになった幼馴染みの再会…これからはずっと一緒にいさせてあげるからね。ポケットから小型のスタンガンを取り出しグリップを握る…
律「ムギ、澪に会わせてくれてありがとう…一つ言っていいか?」
りっちゃんが振り向く、スタンガンは死角にある
紬「なぁに?なんでも言って」
律「校舎の裏口が開いてたぜ!!」
紬「!!??」
何で?りっちゃんが!?頭の中が真っ白になり『ドスッ』何かを突き刺す音がして左腕に激痛が走る。『グチュ』りっちゃんが手を捻ると痛みが増し思わずスタンガンを落とす。
カシャンカシャン…落ちたスタンガンはすぐさま蹴られ部屋の隅に転がっていく…
372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:34:01.14 ID:NmARgbHIO [29/47]
律「あいつの言ったとおりかよ…チクショウ。信じてたのによ」グスグス
あいつって誰?なんでりっちゃんは泣いてるの?痛みで膝をつきうずくまる…頭がうまく働かない。なんで?りっちゃんも私の物になるはずなのに…いや、私のものにする!!
顔をあげりっちゃんを睨む…大丈夫、まだいけるまだいける。これまでだって手に入れてきた、これからだってずっと!!膝に力を入れる。飛び掛かって捩じ伏せる
律「おらぁ!!」
『ガシャーンッ』澪の食事を運ぶワゴンだろうか、両手で上げるにはそれほど重くはないが金属製だ充分に効くだろう
ムギの頭は床には沈み鮮血が金髪を赤く染め上げる…死んじゃいないだろうな。ビクビク痙攣するムギの腕から鍵の束を引き抜く。嫌な感触が手に伝わる
383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 16:23:23.39 ID:NmARgbHIO [30/47]
律「さ、逃げるぞ澪」
澪「律…ムギは?」
律「まだあんなヤツの心配するのか?こっから出たら救急車でも呼んでやるよ」
澪「律…驚かないのか?手足が無いんだぜ…笑っちゃうだろ」
律「馬鹿言うなッ…どれだけ心配したと思ってる!?あたしは澪が生きててくれれば今はそれだけで構わない!!」
澪「律…」
澪を抱え廊下に出て地上へ駆け上がる。辺りは既に暗く離れの玄関の灯りと本宅の灯りしか足元を照らしてくれない。本宅は危ない気がする…おそらくムギの息がかかった連中しかいないだろう
外の塀へ向けてひた走る、足元が悪い、何度も澪を抱えたまま転びそうになる。それほど距離はないはずなのにえらく遠く感じた…あった、塀だ
385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 16:31:07.17 ID:NmARgbHIO [31/47]
律「チクショウ、思ったより高いな…門を探すしかないか」
澪「律…もぅいいんだ、私は置いていってくれ。そしてここであったことは全部忘れてどこか遠くで生きて欲しい。ムギには私から頼んでおくから」
律「なに言ってるかわかってるのか!?ふざけんなよ!!」
澪「律…わかってもらえないかもしれないけど…ここでの生活はそれほど悪くないんだよ」
あたしはその言葉を聞いて絶望の淵に立たされた。手足を奪われ地下に閉じ込められ自由を与えられない生活が悪くないだと!?狂ってる…澪もムギも…
澪が首を捻り腕に噛みつく。痛みに耐えきれず澪を地面に落としてしまう
澪「律、行ってくれ…私の分まで幸せになってくれッ…お願いだから…」
塀にとびつく、必死によじ登る…一瞬だけ振り返る。街灯の灯りに照らされた澪の頬に流れる涙の線は光を反射してただただ綺麗だった。もう二度と振り返らない
律「澪ッ…すぐ、すぐ助けに来るからなッ」
400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 17:18:01.75 ID:NmARgbHIO [32/47]
塀から飛び降りる、固いアスファルトに足から落ち冷たい道路に転がる…立ち上がれない程の痛みではない
塀に手を付きながら前へ前へ進む…方向なんかわからない。ただその場に立ち止まるのが酷く恐ろしい。ケータイ、ケータイ…ブレザーのポケット、スカートのポケットを探る。見つからない…
心細さで膝から落ちそうになる。嫌だ…もう嫌だ…澪、助けてくれよぉ。
あたしの呼吸と鼻をすする音しか聞こえない静寂の中でいやに底抜けに陽気な音楽が響く…
振り返ると塀から落ちた辺りにケータイの着信を告げるイルミネーションが瞬いていた
希望の元に…壁から手を放しケータイの元にひた走る。ほんの数メールのところでイルミネーションが消えた…代わりに車のハイビームが禍々しい光を放ち思わず目をつぶる
息を呑む…光に目が慣れる…傷だらけの高級車…運転手が耳元からケータイを放す…運転しているのはムギ…振り返りダッシュで走る…車が急発進する…ケータイを踏み潰す…衝撃…視界が暗転する
気がつくと全身が痛い…痛すぎてどこが痛いのかわからない。ズルズルと仰向けに足から引き摺られ星空が流れている…ムギの幸せそうな鼻歌が聞こえる…ごめんな澪、助けにいけそうにないや…
408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 17:39:27.80 ID:NmARgbHIO [33/47]
斉藤「まさかこのようなことになっていようとは…申し訳ございません。それと旦那様が…」
紬「いいのいいの…斉藤、りっちゃんの手当てしておいて♪りっちゃんには聞きたいことがいっぱいあるの~」
髪に血がこびりつきごわごわになって固まっている…腕の傷から流れた血がブレザーとシャツの袖を赤く染め上げている。端から見たらどんな風に思われるだろう?
私は体験したことがないが小さい子供が泥遊びで服を汚して帰る時には同じような気持ちなんだろうか?急ぎ足で本宅に向かう
紬「紬です。入ります」
瞬時に部屋の空気が変わる。父と母、執事とメイドが数人…離れのことも車のことも知っているのだろう…父も母も言葉を発せずにいる
紬「お見苦しい格好で申し訳ございません、お友達とじゃれてたら汚れてしまいましたわ」ニコッ
紬父「……車で友達を轢くのはじゃれるとは言わないだろう。それにあの離れはなんだ!?当主である私に断りもなく勝手な真似を…斉藤がついていながらこの体たらくはなんだ!!」
416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:00:46.12 ID:NmARgbHIO [34/47]
紬「当主なら当主らしく私が後を継ぐまでグループを保持することに専念して下さればいいのですわ」
紬父「な、父親に向かってその口の聞き方はなんだッ!!」
紬「父親か…さんざん放任教育しとおいて虫のいい話ですね。それに…お父様は…本当に私のお父様なのかしら?どう思いますお母様?」クスクス
話を振られ母は俯く…顔は倒れそうなくらい青ざめている
紬父「!?なにを言っている?」
紬「では道路の掃除と車の片付けお願いしますわ~あと警察がグタグタ抜かしたら追い払っておいて下さいね」
廊下に出ると斉藤が待っていた
斉藤「…ご存知でしたか」
紬「なんとなくよ…父、いや兄になるのかしら。面倒だからお父様でいいわ」クスクス
紬「お父様は琴吹の血筋にしては甘すぎるの~今時和を重んじるなんてナンセンスだわ。やっぱり欲しい物はガツンガツンと攻めなきゃ」
425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:20:23.51 ID:NmARgbHIO [35/47]
紬「ところでりっちゃんは?」
斉藤「先生が予定より早く見えられたので処置はお任せしとおります。意識は混濁してますが薬品で処理すれば尋問も可能かと思われます」
紬「いいわ、まぁ聞かなくてもわかってるし…りっちゃんは回復を待って唯ちゃんを先にしようかしら」
斉藤「…平沢様ですか?」
紬「今さら策を労するつもりなんてないわ、今度はペロッと拐ってくるわ。行くわよ斉藤!!」
斉藤「…御随意のままに」
435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:40:57.89 ID:NmARgbHIO [36/47]
和(…律の携帯に繋がらなくなったわね)
唯「ねぇねぇ…のどかちゃん。そろそろ帰ってもいいかな?憂も心配してるだろうし…」
和(さすがに律を拐ってすぐ唯を狙いに来るとは思えないけど…念のためにね)
和「唯、今日は泊まってきなさい。憂ちゃんには私から電話しておくわ…冷凍庫のアイス食べていいわよ」
唯「うん泊まってく~いただきま~す」パタパタ
和(唯にはなにも知らせたくない…憂ちゃんに伝えとかなきゃ)prrr prrrガチャ
和「……もしもし憂ちゃん?和だけど…」
憂『こんばんは、和さん』
和「唯だけどさ、今晩うちに泊めるから。急でごめんね」
憂『も~そういうことはもっと早く教えてって伝えといて下さいね』プンプン
和「それとムギ…いや琴吹が家に来ても絶対に出ちゃ駄目よ。あとこの話は唯には内緒にして?約束よ」
憂『琴吹先輩ですか?』
和「あいつは唯の敵…いや唯だけじゃないわ。いい、絶対に出ちゃ駄目よ?」ガチャ
憂『和さん?』
憂「なんなのかしら…お姉ちゃんの敵?喧嘩でもしてるのかな」
459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:58:41.50 ID:NmARgbHIO [37/47]
唯「和ちゃんの家に泊まるのって久しぶり~」ヌクヌク
和「そうだな…別にいつだって来ていいよ。ふふふ…ザリガニ風呂は勘弁だけどね」
唯「そんなこともあったね~またみんなでお泊まり会したいな~りっちゃんと澪ちゃんと~ムギちゃん…さわちゃん先生、憂に…それに和ちゃん!!」
和「そうだな…またやりたいな」
それはもう叶わない願い、さわ子先生、澪、おそらく律も…警察には通報したがまともに取り合ってもらえたことなどない。おそらく根回しがされているのだろう…無理もない相手は強大すぎる。
もし、もしあの時ムギを止めていたらこんなことにはならなかったのかな
あれは澪が失踪する前日、他の生徒会役員が帰った後も一人で作業を続けていた。ほんの少しの気の緩み…私は生徒会室で居眠りをしてしまった。気がついた時には辺りは暗くなっていた
479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 19:25:11.16 ID:NmARgbHIO [38/47]
生徒はもちろん教師すら残っていない校舎、鍵をかけ廊下に出る…昼間は賑やかな校舎もこうも静かだと薄気味も悪くなる…
すると階段を昇る足音が聞こえてくる…心臓を鷲掴みにされたような緊張が走り思わず物陰に潜む…
琴吹紬?ムギと呼ばれる唯たちの仲間だ。いつも美味しいお茶とお菓子を出してくれる子だ…部室に忘れ物をしたのだろうか?
特別親しい訳じゃないが戻ってくるのを待って一緒に帰ろう…そんなことを思っていた。ムギが戻ってくるその時までは…
階段を降りてきたムギは別の誰かを背負っていた…その表情は禍々しい笑顔に満ちて声をかけられる様子ではない…そして背負われているのは秋山澪、軽音楽部のメンバーで校内にファンクラブが出来るほどの人気者だ、階段の段差で首が揺れているがピクリとも動かない
直感的に死んでいないことは理解した。死体を運ぶにしてはムギの表情に不安が見えなかったからだと思う。そのままムギは校舎の裏門から夜の闇に消えていった
あの時はまだ楽観的に捉えてたのかもしれない、身近でそんなことが起こるわけがないという根拠のない自信…自分と自分の回りだけはミエナイチカラで守られている、そんなはずはないのにね…
496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 20:33:29.54 ID:NmARgbHIO [39/47]
始業直前になっても澪は学校に来なかった…急いで唯のクラスに向かう、ムギはいる…律となにか話しているみたいだった。始業ベルが鳴ったので急いで戻る。もしかしてあのままムギが…
授業にも身が入らず…昨夜のことばかり考える。何が目的なのかもわからない。もし、もしもムギが軽音楽部の部員を狙っているのだとしたら…
唯の身にも危険が迫るかもしれない。大袈裟だとはわかっている…生徒会の活動を休ませてもらうことを告げ唯を迎えに行った
唯「和ちゃんと帰るなんて久しぶりだね~」
軽音楽部と生徒会…唯と二人で帰る日なんてほとんどないようなもの、たまに軽音楽部のメンバーに私が加わるくらい。
軽音楽部のメンバーは中学の同級生と違い唯を虐げるようなやつはいなかった、唯を受け入れその才能を芽吹かせ…萎みかけていた大輪の花を再び咲かせるのを手助けしてくれた
単純に嬉しかった…唯が自分の殻に閉じ籠ることなく笑顔でいてくれることに
そして嫉妬した。その笑顔の元が自分でないことに
生徒会に入り、生徒会役員になり果ては生徒会長になって影から唯を守れる存在になりたい…それが目標だったのに
505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 20:56:50.40 ID:NmARgbHIO [40/47]
久しぶりに唯と二人きりで過ごす時間は夢のようだった…アイスを食べ楽器屋に行きゲームセンターで遊ぶ、特別なことなんてない…ただの放課後
唯とこんなに楽しく過ごせるなら生徒会なんかに入るんじゃなかった…それとも唯が軽音楽部に入るのを止めていれば…あるいはその両方か
『澪がこのままいなくなれば軽音楽部はなくなるんじゃないか?』
突然誰かが心の中で呼び掛けるなにを馬鹿なことを…
『澪がいなくなって悲しむ唯に頼られたくないか?』
澪がいなくなったと決まった訳ではない。今日は偶然休んだだけに決まっている
唯「和ちゃんどうかしたの?もう家だよ」
和「ん?あはは、考え事してただけよ。それじゃ唯、また一緒に帰りましょ」
唯「うん、約束だよ」
澪は次の日も来なかった…その日はムギも来なかった。律によると親御さんは捜索願いを出したらしい…
513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 21:41:22.05 ID:NmARgbHIO [41/47]
仕事終わったのでペース上げます。
最早疑いようがない事実…原因はわからないが澪を拐ったのはムギに間違いない、あの夜から澪は監禁され続けているのだ。唯か律に電話番号を聞いて早く澪を解放するように忠告するべきだということはわかっていた…警察でも構わない事態になっているかもしれない
結局その日、私がしたのは空メールだけだった…なんて打てばいいのか見当も付かなかった…
その日も唯と一緒に帰った…澪がいなくなり少し不安げな唯を元気づけ、そんな唯に頼られる満ち足りた時間を過ごした
523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:30:49.07 ID:NmARgbHIO [42/47]
ミスに気づいた…が、大したことじゃないからそのまま行きます
澪がいなくなってムギが休んだ日、私は罪悪感に耐えきれなくなり今度は空メールではなく短い文章をムギに送った…これで澪を拐ったことを第三者に知られているという事実を認識してすぐに澪を解放してくれればいい。そんな思いだった…
『校舎の裏口が開いてたわよ』
直接的ではないにしろ私はなんらかの手を打った…それだけでだいぶ楽になった気がした
放課後、軽音楽部の顧問でもある山中さわ子先生とすれ違った…直接面識がある先生ではないが軽音部経由で何度か話をしたことがある程度だ。挨拶のついでに何気なく聞いてみる…
和「あの山中先生、秋山さんのことなんですが…」
さわ子「ごめんなさい、ちょっと難しいことだから教えてあげられないの」
和「すいません…これからお帰りですか?」
さわ子「軽音部の琴吹さんって知ってるかしら?あの子、今日はお休みなの。秋山さんのことで悩んでるんでしょうね…だから少しお話に行くのよ」
527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:39:42.52 ID:NmARgbHIO [43/47]
会釈をして山中先生を見送る…私が送ったメールでムギが改心したに違いない。澪を解放したいけどすべてを無かったことにはとても出来ない…だから山中先生に仲裁を頼んだのだろう
この時はそう信じて疑わなかった
翌日、生徒会経由で山中先生の死を知らされた。生徒には公開されていないが居眠り運転のトラックに跳ねられ引き摺られ死体は原形を保ってなかったらしい…
私は恐怖した…ムギはメールの送り主を山中先生と勘違いし始末したのだと直感的に理解した。すぐさまアドレスを変えて様子を伺うことにする
ムギは落ち込んだ素振りをしているものの全てが演技にしか見えなかった。あの女は普通じゃない…関わってはいけない存在に違いない
しかし関わらざるをえない、ムギの側には唯がいるのだから…
530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:51:01.47 ID:NmARgbHIO [44/47]
その日から私はムギを監視生活を送り続けた。唯を守る為だけに…
ムギが駅前でビラを配るとか言い出した時は耳を疑った…自分の監禁してる人物の所在地を探す人間がどこにいる。律は見ているこっちが痛々しく思えるくらい必死だった…こいつは律の一生懸命さを見てほくそ笑んでいるのだろう
全てを糾弾して白日の元に曝してやりたかった…でもそれはとても恐ろしいことであることも理解出来た
失敗したらどうなるんだ?澪みたいに失踪させられるのか、山中先生みたいにゴミクズのようになるのか
私は今はまだ堪えることにした
537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:07:51.04 ID:NmARgbHIO [45/47]
ムギに恐怖を抱いたまま季節は移ろい、いつしか澪の話題も出なくなった…いや、敢えて口にしなくなったのだろう
私は英語の辞書を借りるため唯のクラスを訪れた…その時ムギの肩に一本の髪の毛を見つけた。黒く長い…すぐに澪の髪の毛ではないかという猜疑心が芽生えた
頭を回転させる…ほんの少しの隙間に指を差し入れドアを開け化け物を日の光の下に引き摺り出す為の策を練る…自分が疑われては意味がない、軽い冗談のようなノリで…
予想以上だった…ムギは想定外のアクシデントに対処出来ずにいるらしい…このまま私の握っている証拠を突き付けるか?気分が高揚してくる
しかし気づいた時には律に殴り倒されていた…一気に冷静になる。調子にのって無謀な戦いを挑むところだった…
540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:25:02.55 ID:NmARgbHIO [46/47]
律は教室を飛び出し唯も追い掛けていった…完全に失敗だった。ムギから借りたハンカチに澪の髪の毛と思われるものを包んで教室をあとにする…これが澪の毛だとしたらきっと澪は生存しているのだろう
ムギに見つからない時を見計らって律を呼び出す。自分の持っている情報を全て伝えた…律は激昂してその全てを否定する。無理もないだろう、只の中傷にすぎないような突拍子もない情報ばかりなのだ。私だって信じられない
数日後、律からメールが来た。放課後ムギの家に行くらしい…やめさせる為に何度も携帯電話にかけ続ける…一度も律が出ることはなく呼び出し音ではなく繋がらなくなった…
546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:41:57.24 ID:NmARgbHIO [47/47]
唯を自宅に泊めさせ思い出にふけていると深夜にも関わらず携帯電話が震えた…嫌な予感しかしない
和「……もしもし」
紬『もしもし和ちゃん、唯ちゃんそこにいるかしら~』
冷や汗が溢れる、心拍数が上がる、頭が真っ白になる…
和「いや、来てないけど…」
紬『あらそう、また嘘ついたのね憂ちゃん…嫌だわ』
憂…ちゃん…?なんで憂ちゃんの名前が出るの?
紬『嘘つきにはお仕置きが必要よね~今度はどうしようかしら』
や、やめてよ…唯はここにいるよ…憂ちゃんは嘘をついていないから…思ってはいても言葉には出来ない
機械の作動音が響く…モーターを軸に高速で回転するような音が…それに加え柔らかい物と少し硬い物を削るような音が続く…口を押さえられうまく発生出来ない叫び声と共に…
唯「何の音なの?和ちゃん…誰からなの?」
562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 00:04:03.87 ID:7fOS5fKeO [1/16]
紬『憂ちゃんってば健気で可愛いわ~でもね唯ちゃんが欲しいの、偽物じゃつまんないわ』
和「あんた無関係な人間を巻き込んで何がしたいんだよ!?」
紬『私、唯ちゃんたちをダルマにして地下に監禁するのが夢だったの…それだけなの、他の人はオマケにすぎないわ』
紬『すぐに迎えを出すわ…来なかったり下手な策を練るようなら憂ちゃんは殺すわ。じゃあね』ブチッ
和「ムギッ待って、待ちなさい」
唯「ムギちゃんだったの?」
唯は震えている。あんな化け物に唯を差し出すのか?そんなこと出来るわけない…
和「ねぇ唯…二人でどっか遠くに逃げちゃわない?」
唯「………」
和「私ね、いっぱい働くから…唯はなにもしなくていいの。アイスも好きなだけ買ってあげる。だから…」
唯が私を抱き締める…石鹸の香りと女の子の…唯の甘い匂い
唯「ごめんね和ちゃん、ホントは少し聞こえてたの。ムギちゃんが私を呼んでて行かなきゃ憂が酷い目にあっちゃうんだよね?だったら行かなきゃ」
610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 00:41:10.87 ID:7fOS5fKeO [2/16]
唯「ごめんね、和ちゃん…わたし憂のお姉ちゃんだから行かなきゃ…なんで憂を虐めるのかわかんないけどムギちゃんだって話せばきっとわかってくれるよ」
私はただただ泣き声を上げて子供のように唯の腰にすがり付いた。唯は少し困ったように微笑んで絡んだ私の手を優しくほどき立ち上がる…もう止めることは出来ない、かといって共に地獄に堕ちる勇気もない。唯はともかくムギにとって私の命などゴミクズに等しいのだから…
唯のいなくなった部屋で泣きじゃくっていると再び携帯電話が震える
和「……」
紬『斉藤から聞いたわ~唯ちゃんだけ向かわせたようね。私ね、そういった人間臭いのって大好きなの…もう会うこともないだろうし和ちゃんのことは忘れてあげる、唯ちゃんは私がずっと大事にしてあげるから心配しないでね』
パジャマのまま外へ出る…ふらついた足取りのまま唯の家に向かう…唯のいない生活なんて耐えられない。最期は唯の部屋で死ぬのもいいかもね…そんなことを考えていた
642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:07:24.58 ID:7fOS5fKeO [3/16]
憂ちゃんは余程抵抗したのだろう…リビングの家具は酷い有り様だった。床に落ちている包丁を拾い上げる、近くに鍵があることに気づく。急いで外に出る。車、鍵…車の運転なんてしたことない。でもどうせ死ぬんなら…急いで使えそうな物をかき集める
紬「唯ちゃんいらっしゃい…さ、来て来て」
唯「ムギちゃん…憂はどこなの」
紬「わかってるわ…すぐ会わせてあげる、斉藤!!憂ちゃんを運んできなさい」
運転手さんが病院で使うような担架を運んでくる…
唯「え?憂?嘘よね…」
全身に血が滲んだ包帯を乱雑に巻かれ微かに眼光が残る右目がわたしを捉えると明らかに指の数がおかしい左手を震えながら上げ担架の上の人物が短くなった舌べろで不自由そうに喋った
憂「お、おべぇひゃ」
唯「憂…本当に憂なの」ギュッ
紬「感動的な姉妹の再会だわ~…憂ちゃんね、凄く頑張ったのよ。いっぱい誉めてあげて欲しいわ。ここに連れてくるまでもすっごく暴れるしなかなか唯ちゃんの居場所を吐かないし…」
唯「ひ、酷いよムギちゃん」
紬「生きてるうちに再会も果たせたしお役御免よね」
震える憂の手があたしを突き飛ばす。次の瞬間真上に振り上げたムギちゃんの右手が憂の首辺りに力強く降り下ろされた。
659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:20:55.97 ID:7fOS5fKeO [4/16]
憂の頭は担架から転がり落ちる…担架の上に残された身体から作り物のように赤黒い血液が撒き散らされ、ムギちゃんはその中で嬉しいそうに微笑む…わたしは気を失った
塀や壁に擦りもしたがだいぶ運転になれた気がする…カーナビでおおよその位置を設定する
間に合うのか…たどり着けるのかもわからないのにな。計画なんてなにもない…それでも行くなんて自分でも愚かだとは思っている
。少しアクセルを強く踏んでみる、車はスムーズに加速する
頭が凄くぼんやりする…歯医者さんみたいな光源…身体は動かない。視界の端に白衣の人が見える…痛いのやだなぁ…ぼんやり考えているとまた意識が混濁して…
676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:39:29.06 ID:7fOS5fKeO [5/16]
この塀がずっと?…どれだけ大きいのか想像もつかないような敷地、着いたのはいいけどせめて入り口ぐらい見つけないと…
立派な門はあったけれどそんなとこから入ったんじゃムギの元に辿り着けるとは思えない…どうしよう…焦ってくる
塀の側に立つ。とても上まで届くような高さではない…いっそ正面から突っ込もうかしら。余裕がなくなり視線が泳ぐ
薄暗くてわからなかったが事故でもあったのか…車が塀に衝突したような跡をベニヤ板で補修してある。ベニヤ板をずらし最低限の道具を持って内側に潜り込む…おそらく生きては帰れないだろう
722 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 02:10:28.83 ID:7fOS5fKeO [6/16]
紬「うふふ…すっごい素敵な脚だわ~」ナデナデ
医者「紬お嬢様、脚を弄るのは後にして下され……処置に移りますぞ」
紬「わかってるわ……唯ちゃんもこれから可愛いペットになるのね。堪らないわぁ」ウットリ
和「……そんなことさせるわけないでしょ」
紬「!?」
振り返るムギの右目辺りに鉄パイプが直撃する…白衣に血が飛ぶ…容赦はしないそのまま肩の辺りに振り下ろす。くぐもった叫びを上げてムギが跪く……今度は背中に叩き込む
跪いたムギが足の甲に手術用のメスを突き立て捻る
痛みに耐えきれず叫び声をあげながら鉄パイプを振り下ろす、何度も何度も…
ムギの手から力が抜けたのを確認しメスを引き抜く
和「あなたもムギの味方なの?だったら容赦しないけど」
医者「お嬢様の味方には違いないが逆らうつもりは一切ない」
小柄な医者はおそれることなく言い切る
778 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 07:36:54.80 ID:7fOS5fKeO [8/16]
和「唯は連れて帰るわ……それに澪、律もね」
医者「……お嬢さん、欲張らないほうがいい。悪いことは言わないその娘さんだけで我慢しなさい」
和「そんなこと……はい、そーですね。なんて聞けるわけないじゃない」
医者「他の二人の命を諦めらきれないなら……お嬢様を今ここで殺しなされ」
和「出来ない……ムギは法で裁いてしっかり罪を償ってもらうわ」
とりあえず唯を車椅子に移し運び出す……ちゃんと元通りになるのかしら。自分の足の痛みなんか気にならない、ただただ唯が心配だった
エレベーターで地上に戻るとさっきの執事が待ち構えていた……
和「たぶん死んでないと思うわ…保証なんて出来ないけどね」
782 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 07:58:55.77 ID:7fOS5fKeO [9/16]
私は敷地内に潜り込み辺りを窺いながら明かりの方へ進み続けた……母屋の明かりとは別の離れた位置に明かりが灯っているのを見つける……
息を殺し足音を立てないように近づく…離れの辺りは何か重苦しい空気が漂っているような気がして脚がすくむ……唯を助けなきゃ……その義務感だけが重い脚を前に進ませる
玄関にドアノブに手をかけようとする…
斉藤「お友達を迎えに来られたならそちらの入り口は推奨出来かねますな」
不意に後ろから声をかけられ反射的に手に持っていた鉄パイプを声の方向へ振り回す……鉄パイプは空を切り体勢を崩す。同時に右手を捻りあげられ鉄パイプを落とす、声の主は捻った手を離すと片手で私の首根っこを掴み持ち上げる
呼吸が出来なくなり脚をばたつかせる、両手は首を掴む腕を離させるように抵抗するがびくともしない……もう終わりなの?まだムギのところにも辿り着いてないのに…苦しさと悔しさで涙が溢れる
786 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 08:12:36.17 ID:7fOS5fKeO [10/16]
意識が遠退く…口からよだれが垂れ手足が重くなる…
気を失う瞬間、首を掴んでいた手の力が抜け地面に落とされる、膝から崩れ落ち全力で呼吸をする……涙と鼻水とよだれでグシャグシャになった顔を恐る恐るあげると執事のような老人がにこやかに笑った
斉藤「ようこそおいでなさいました。わたくし琴吹家の執事、斉藤と申します。失礼ですが真鍋和様でおられますか?」
小さく頷くと斉藤と名乗る執事は手を伸ばし私を引き上げる……意味がわからず立ちすくむ
斉藤「平沢様をお迎えに来たのですね?まずはこちらへどうぞ」
790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 08:41:11.69 ID:7fOS5fKeO [11/16]
離れの玄関から裏口へ案内される……斉藤の言うには玄関のドアノブを回すとムギに侵入したことがバレてしまうらしい。監視カメラもあるそうだがおそらくムギは他のことに気をとられチェックしてないとのことだった
離れの中に入るといきなり吐き気がしてきた…生臭い鉄の、いや血の臭い少し進むと担架の上に血が滲んだ白いシートが被せてあった。人の形にふくらんだそれは確認しなくとも中身がわかった…澪?律?それとも憂ちゃん?確認は出来ない。辺りは赤黒い液体で染められていた
担架から続く血痕をたどり奥へ進むと突如壁に遮られ道がなくなった
斉藤さんの方へ視線を写すと近くの壁を触っている
壁が静かにスライドして道が生まれる
斉藤「平沢様とお嬢様はこの先の地下におられます。平沢様を連れ戻されることに関しては邪魔をいたしません。ですが万が一にでも真鍋様がお嬢様の命を奪われるようでしたら……」
細い目を薄く開け私を睨み付ける…闇より深い感情の見当たらない瞳に恐怖する
797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 09:03:47.28 ID:7fOS5fKeO [12/16]
和「……なぜ手助けをしてくれるの?私は紬の敵なのに」
素朴な疑問を口にする、目を閉じにこやかに斉藤は答える
斉藤「お招きする車の中で平沢様は何度も言われました『和ちゃんがきっと助けに来てくれる、わたしはそれまで待ってればいいだけ』と…そして真鍋様が現れました」
和「……唯」
斉藤「そして思いました。真鍋様なら同時にお嬢様を救って下さる方になるかもしれないと…」
和「買いかぶりしすぎよ…それに虫が良すぎるわ」
斉藤「でしょうな…無理はありません。ですがきっかけになればいいのです。ですからお嬢様の命は奪われないよう努々ご注意下さいませ」
和「……約束は出来ないけど努力はするわ」
870 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 11:00:32.42 ID:7fOS5fKeO [13/16]
斉藤「お車の用意は出来ています、さぁ病院へ向かいましょう…真鍋さまもお怪我をされているようですし…」
和「斉藤さん、唯を…唯をお願いします。私はまだしなくちゃいけないことが残ってるので…」
返事を待つことなく踵を返す…ドアが閉まりエレベーターが動き出す…地下に付き用心して辺りを探る
各部屋の窓には小窓が付いており中をうかがう…目を背けたくなるような道具が並べてある部屋、生活臭のない牢屋のような部屋…そして女の子の部屋を象徴するかのような室内の中に捜している人物がいた…
鍵がかかっているかと思いきやドアは普通に開く…ベッドに近づくとその子もこちらに気づく…秋山澪…
和「澪…」
澪「和、和なのか?ムギッ、やめてくれッ」
背後の気配に気付き反射的に前方に転がる、背後に潜んでいたムギが凶器を振り下ろす!!ベッドの側にあった機械が音をあげ破壊される…作り物みたいに火花をあげムギが凶器を引き抜く…
ムギ「ダメじゃない澪ちゃん…せっかく和ちゃんにお返ししようと思ったのに~」
太めの眉を下げて可愛らしく手を上下させる…これまでのムギだったら見ていて和みもしただろうか…
金髪は血に染まりボリュームをなくしベタリと貼り付いて窪んだ眼窩から汚ならしい体液を垂れ流し女子高生にはおよそ不釣り合いな形状の刃物を提げたムギは邪悪な笑みを浮かべていた
911 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 12:46:16.39 ID:7fOS5fKeO [14/16]
奥歯がカタカタ鳴りながらも歯を食いしばり鉄パイプを構える。ムギは嬉しそうに目を細め舌を少し出し唇を嘗める…刹那
鉄パイプはムギの一撃で弾き飛ばされ床を転がる、衝撃で尻餅をつく…ムギの攻撃を転がって避ける。息をつく間もない連撃を逃げ続ける…一方ムギは余裕を持って狩りを楽しんでいるようにも見える
澪「ムギ…律の様子がおかしいんだ…」
さっきは気づかなかったが澪と律は同じベッドに寝かされているらしい…律には体のあちこちに管やら電極がついていてそれらはムギによって破壊された機械に繋がっていた。澪の呼び掛けにムギが顔を向ける
その瞬間を狙い中腰の格好でタックルをかます。ムギが凶器を振り下ろすが体勢が悪いせいかさっきまでの威力がない、構わず力を込める
ムギの背中が機械にぶつかり火花が飛ぶ…危険に気づいたのか凶器を捨て両手で抵抗する。が、勢いは換わらずムギもろとも火花を放つ機械を押し倒す
一層激しく火花が散り感電しているのだろうか…ムギが気味悪い速さで痙攣する
926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 13:39:59.34 ID:7fOS5fKeO [15/16]
和(終わったのか?)
放心状態から我に返り澪と律に駆け寄る
澪は四肢を失った姿ではあったが…なぜかそれはとても神聖なもののような…完成された美を感じた
一方律は四肢は残っているものの部分的に血の滲んだ包帯を巻かれ寝かされていた…千切れ飛んだチューブや電極が痛々しい。あの機械が律の命を維持する装置だとしたら
悔しさに涙が溢れる…嗚咽が漏れ…澪にすがり付く。澪は慈愛に満ちた表情で私を慰めてくれた
澪「いいんだ、和…助けに来てくれたんだろ?ありがとう嬉しいよ。フフッ…お前は本当にいいやつだよな」
和「違う、私はそんな誉められるような人間じゃないッ…あの日澪が、澪が連れ去られたあの日…それだけじゃないさわ子先生も律も…」ヒックヒック
澪「いいんだ、和……それ以上言わなくてもいい。なぁ…それよりお願いがあるんだけど」
和「なに?私に出来ることなら何でも言って」
澪「何でもか?」
和「約束する、何でも言って!!」
澪「そっか……じゃあ私を殺してくれないか」
930 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 14:00:15.98 ID:7fOS5fKeO [16/16]
理解出来なかった…助かるのに死を望む?確かに不自由になるに決まってる…好奇な目で見られるだろう
和「澪…そんなこと言わないでよ。大丈夫、澪が嫌がるような奴らは私が追い払ってあげるから。唯もきっと協力してくれるわ」
澪「そうだな、そうしてくれると嬉しいな」
和「だから死にたいなんて言わないで一緒に帰りましょ?」
澪「和…私はね、律を一人ぼっちにしたくないんだ」
和「………」
澪「あの世がもしもあるならムギはきっと律とは一緒のところには行けないだろうな…律を一人にしたら天国は滅茶苦茶になっちゃうからなッ…あいつがバカした時の為に私も一緒に行かなくちゃな」
馬鹿げている…死語の世界なんて不確かな物の為に…でも馬鹿になんて出来ない、もし澪と同じ境遇で律を唯に置き換えたら……澪の首に手をかける。覚悟を決めたのか澪が目を瞑る
澪「痛いのとか苦しいのは嫌だからな……一思いにやってくれよ」
力を込める…澪の目が開き口元が歪む…顔が赤くなり…目に涙が貯まっていく
紬「うふふ……じゃあみんなで死んじゃおうかしら」
934 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:19:17.02 ID:7fOS5fKeO
思わず澪から手を放す…澪は大きく咳き込み口の端から涎が垂れる
澪「ムギ……生きてたのか。和もぅいい、行ってくれ」
ムギは倒れたままの姿でスカートのポケットから小さい小箱を取り出した…箱には小さなボタン…嫌な予感しかしない。
澪「和、さっきの願いはなしだ…私を置いて逃げてくれ…頼む」
ムギがボタンを押す…すぐにどうこうなる訳でもないらしく部屋の出口へ向かう。ムギの脇を通り抜ける瞬間、寝返りをうつようにムギが足を掴む…盛大に倒れる、掴まれてない方の脚でムギの顔面を踏みつける…そんな中でもムギは恍惚の表情を浮かべ続けている
ムギ「アハッ…いいわ和ちゃん、キュンキュンくるわ~」
変態め、埒があかない…辺りを見回し手を伸ばせば届く距離に禍々しい武器が光る…迷わない、武器を握り上体を起こしムギの腕に振り下ろす。鈍い感触が伝わり拘束が解ける…迷わず部屋から飛び出し地上へ向かう
942 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:38:59.74 ID:7fOS5fKeO
紬「最後のは凄く良かったわ~気持ち良すぎて意識が飛んじゃったみたいなの」
左腕から血を垂れ流し血の泡を噴きながらムギが近づいてくる。あんなに血をみるのが怖かった私だったがホラー映画に出てきそうなムギを見ても何故か怖くはなかった。部屋の壁にヒビが入り今にも崩れそうだ
ムギ「生き埋めとか焼け死ぬのは辛そうね」
澪「そうだな、ムギ頼めるか?」
ムギの手に凶器がある…目を瞑る…
刃が首に食い込み胴体と切り離されるまでの瞬間に夢を見た。いつもの放課後いつもの部室
律「遅いぞ澪~」
澪「悪い悪い……みんなは?あれ、憂ちゃん?」
憂「こんにちは澪さん」
律「さわちゃんもすぐに来るけどなんか反省文書かされてるみたいだぜ?生前の行いが悪いせいだよなッ」
憂ちゃんはクスクス笑っている。律も私も釣られて笑う…いつか唯もここに来るだろう。ずっと先の未来、ムギの罪も洗い流されここに来れたならまた四人でバンドが組めたらいいな…楽しみだな
951 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:58:07.93 ID:7fOS5fKeO
建物から出た後の記憶はあまりない、崩れ落ち燃えさかる建物から少しでも離れるようによろめきながら進む……サイレンが聞こえる、土の上に突っ伏して目前に誰かいるような気がした…そして意識をなくす
次に目が覚めたらそこには白い天井があった。起き上がろうとすると激痛が走る、可能な限り辺りの様子を探るとそこは病室らしかった。
意識を取り戻したのがわかるのか医師と看護師が現れた…そういえば地下にいたあの医者はどうしたんだろう、問診の内容よりそんなことばかりが気になった
あの後、病院に運ばれた私は三日ほど眠り続けたらしい。病院から連絡を受けたのか刑事を名乗る中年たちが訪れた
あの建物から発見された遺体は四名分、一階の担架にあった憂ちゃん、そして地下の部屋にあった遺体は焼け焦げて損傷が酷かったが検死の結果で澪、律、ムギと判断されたらしい。ムギの遺体は燃え盛る火から二人を庇うように両手で抱き締め覆い被さっていたという
世界的な財団のスキャンダルにテレビはこぞって特番を組んだが不自然な程に騒ぎは鎮火していった
962 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:33:06.87 ID:7fOS5fKeO
なんとか松葉杖で動けるようになった私は唯の病室に向かう…処置が早かったせいかまったくの元通りとはいかないが時間をかければ日常生活には支障が出ない程度には回復するらしい
個室とはいえ一般病室の私と違い唯はまだ集中治療室にいた。窓をノックする、気づいた唯がこっちを向き笑顔で手を振る
悲しくないはずがないのに無理に元気を装う唯を見るのは痛々しい…手を振り返し病室を後にする。
大丈夫、時間をかけていけば二人でまた心の底から笑い合える日々が遅れるはずだから
おしまい
963 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:34:05.90 ID:7fOS5fKeO
夜中にふと目が覚める…看護師の見回りだろうか?廊下に足音が響く。電灯で部屋の中が照らされる
眩しさを不快に布団を頭まで被り瞳を閉じる
電灯が消え足音が近づく…別に珍しいことではない、最近まで面会謝絶するほどの怪我を負っていたのだから…まぁすぐに出ていくだろう
続けて滑車が付いた担架が入ってきた…異変に気付き布団をめくる。腕を押さえつけられすぐさま注射を射たれる。意識はあるのに身体の自由が効かなくなる。担架に移され廊下を運ばれる
暗闇の中で目を凝らす…わざわざナースの格好をしたムギと白衣をまとった斉藤さん
968 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:35:45.69 ID:7fOS5fKeO
ムギ「和ちゃん、怖がらなくていいわ~」
和「ムギ…なんで生きてるんだ?じゃああの死体は?」
ムギ「うふふ、後で教えてあげるわ~」
和「唯、唯も拐うのか?絶対にさせないからッ」
ムギ「唯ちゃん?うふふ…もうペットはいらないわ~今度は親友が欲しいの…斉藤から唯ちゃんと和ちゃんの絆を聞いたの。そういうのすっごく憧れるわ。和ちゃん…私達きっと親友になれると思うのよ。これからはずっと一緒…楽しみだわ~ね、和ちゃんもそう思うでしょ?」
狂っている…叫びたいのに…怖くて声をあげられない…夢なら早く覚めて…そう願った
本当のおしまい
973 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:38:41.62 ID:7fOS5fKeO
おわりです。ほんとうにぐだぐだとすみませんでした。御支援、御批判、御叱りは次回の糧にさせて頂きます。保守の方にも重ね重ね感謝致します
あと本当にvipは変態ばっかりだな
紬(はじまりは些細な出来事だったわ・・・)
唯「ムギちゃんこのケーキ美味しすぎるよ」ムシャムシャ
律「ホントだな、下手なケーキ屋よりよっぽど美味いぜ」
紬「うふふ…ありがとう。実はこれ、今度うちの系列で売り出すケーキの試作品なの。パティシエにも伝えておくわ」
律「どーりで!!お、澪どうした?食わないのか?」
澪「いや、食べたいんだけどさ…その」モジモジ
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 14:57:18.61 ID:SjF727f1O
律「ハハァ~ン…さては澪、お前太ったな?そういえば最近フトモモなんかもムチっとして…」ペラッ
澪「ッツ///」ポカッ
律「いてッ、冗談だよ、冗談…殴んなよォ」ヒリヒリ
唯「そうだよ澪ちゃん、気にしすぎだよ」パクパク
澪「お前らはいいよな、いくら食べても太らないし。ムギはどう…ムギ?どうした?」
紬「ふぇッ?う、うん…そうね…え~となんだったっけ?」
律「おいおい大丈夫かよww」
紬(あの時私はりっちゃんがめくった澪ちゃんのスカートの内側に目を奪われていた…いや、目だけではない。その時既に心までも)
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:07:05.70 ID:SjF727f1O
澪「お、もうこんな時間か、終わりにするか」
唯「やったぁ。ね、みんなアイス食べにいこーよ」
律「さっきケーキ食ったばっかだろ?今度はアイスかよ…唯はいつでも腹ペコだなぁ」
紬「唯ちゃん、よかったら余ったケーキ持ってく?」
唯「いいの?やったぁ」
澪「ふ~と~る~ぞ~」
律「平沢選手は秋山選手と違っていくら食べても平気なのであります」ペラッ
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:18:20.45 ID:SjF727f1O
唯「ふぇッ?」
澪「お、おいやめろ律…唯も少しは抵抗しろよ///」アタフタ
唯「え?別に見られても平気だよタイツ履いてるし」ペラペラ
律「そーだぞ澪、我々は日々のたゆまぬ努力により他人に見られても恥ずかしくない肉体を維持しているのだ」ペラペラ
澪「律まで!!や、やめろってこっちが恥ずかしい///だいたい努力じゃなくて体質だろ?ムギもこの馬鹿どもを止めてくれ///」
紬「」ウルウル
澪「ムギ?」
紬(美しかった…天真爛漫で健康的な唯ちゃんもしなやかで引き締まったりっちゃんも…)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:35:55.20 ID:SjF727f1O
紬(自分の容姿には不満なんて持っていなかった。母から受け継いだ髪の色も瞳の色も…うちの家系の象徴ともいえるこの眉毛も…)
紬(少し太りやすいけどこのプロポーションも、私は気に入っていたの)
紬「…(うつくしい)」ウルウル
澪「ムギ…どうかしたのか?」
紬(思えばあの時すでに壊れていたのかもしれないわね…もっと後だと思っていたけど)
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 15:46:58.67 ID:SjF727f1O
カツンカツン…いやに足音が響いている
紬(うふふ、お腹空かしてるかなぁ)
地上階と違いあまり飾り気のない廊下を歩く。それでも映画に出てくるような薄暗くて湿った空気の洞窟のような感じではない、どちらかというと研究所の廊下を思わせる、そして無機質な…
紬「澪ちゃん、お待たせ~ご飯よ。」
澪「うぅ~うぅ~」フゴフゴ
紬「ごめんね、すぐ猿ぐつわを取るからね」シュルシュル
澪「ム、ムギ…お願いだよ…もうこんなの嫌だ、耐えられない」
紬「あら澪ちゃん、またオモラシしちゃったのね?じゃあご飯の前に身体を洗ってあげるわ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:06:16.09 ID:SjF727f1O
紬「じゃあまずオムツを取るわね…ハァイ仰向けになりましょうね~」ゴロン
澪「や、やめてくれムギ」
紬「♪~」ベリベリ
澪「や、め…見ないで」モワン
紬「あらたくさん出したのね、いいのよ澪ちゃん健康な証拠なんだから。ウンチもオシッコもどんどん出してね。ペットのおトイレの始末をきちんとするのが飼い主の義務なんだから」
澪「ペット………飼い主」ガタガタ
紬「さ、一緒にお風呂に入りましょ。今日もいっぱい汗かいちゃった」
床に転がっている澪ちゃんを大事に抱え上げる
紬「お姫様だっこじゃなくて赤ちゃんを抱えてるみたいね、可愛いわ」
今の澪ちゃんは部室で体重を気にしていた頃に比べてずっと軽い…
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:18:39.77 ID:SjF727f1O
紬「はいキレイキレイしましょうね~」ゴシゴシ
澪「……」
紬「かゆいところはありませんか~お尻かぶれてないかしら?」ゴシゴシ
澪「……」
紬「今日もだんまりなのね。昔みたいに澪ちゃんとお話したいわ」ゴシゴシ
澪「……」
紬「うふふ…でもその凛とした表情も澪ちゃんらしいわ~。今日はね、みんなでビラを配ったの。和ちゃんも協力してくれたわ」
澪「!?」
紬「私が発案してね、駅前でビラを配ったの。秋山澪さんをどこかで見ませんでしたか~?私たちはこんなに心配しています~ってね。だから汗びっしょり」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:29:17.81 ID:SjF727f1O
澪「…く、狂ってる」
紬「そうかしら…いや、そうかもしれないわ。うふふ、りっちゃん凄く一生懸命でね。道行く人にビラを受け取ってもらえるように必死に呼び掛けてね…思い出したら興奮してきちゃった///」
澪「律…りつぅ~」シクシク
紬「澪ちゃん…今の姿をりっちゃんが見たらどう思うかしら?自分じゃおトイレにも行けない、ご飯もきれいに食べれない。まるで芋虫みたい」
私の一声で澪ちゃんの顔が瞬時に青ざめる…堪らなくゾクゾクする、心臓が鼓動を早める
澪「あ…あ、いや…嫌だ。見られたくない。こんな姿、律だけに」ポロポロ
凛とした表情も澪ちゃんらしい…でも悲しみにくれ涙する澪ちゃんはとても愛らしい
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:43:10.13 ID:SjF727f1O
紬「大丈夫よ、澪ちゃんは私が面倒を見てあげるから。ずっとね…さ、ご飯にしましょ。ご飯が終わったら髪をとかしてあげるわ~黒くて綺麗な髪の毛…私、澪ちゃんの髪の毛大好きよ~」
澪「………りつ、りつ、りつ」ブツブツ
紬「………いいわ澪ちゃん、りっちゃんに会いたいのね?いいわ、明日連れてきてあげるッ。そうして欲しいんでしょ!?」
澪「ム、ムギ!?や、やめてくれ…それだけはお願いだ」
紬「うふふ、冗談冗談~」
ゴメンね澪ちゃん、冗談で済ませるつもりはさらさらないの…りっちゃんも連れてきてあげるわ。でもさすがに一人目と違って二人目は直ぐには難しいの。だからもうちょっと我慢してね。もうちょっとだけ…
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 16:57:56.00 ID:SjF727f1O
澪ちゃんを連れ帰った日は本当に大変だったわ…その計画性のなさ、行き当たりばったりっぷりは思い出すだけで冷や汗が滲み出るかの。よくもバレずにここまで来たものだと自分に感心するわ
澪「ゴメンゴメン…遅くなった、あれ?ムギだけか」
紬「うふふ、りっちゃんと唯ちゃんは職員室にお呼び出しを受けてるわ」
澪「しょうがない奴らだな、まったく。新歓ライブも近いのに」
紬「うふふ…そうね。ねぇ澪ちゃん、今日も和ちゃんは生徒会かしら」
これまでに何回か同じ質問をしたことがある。唯ちゃんとりっちゃんが部室に来てなくて澪ちゃんと私だけがここにいるというシチュエーション…
澪「和?あぁ時期的にも今は忙しいみたいだな。HRが終わったら飛び出してったよ。挨拶する間もなくだよ、大変だよな」
キタ…頭の中で何かが弾けた
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:11:26.19 ID:SjF727f1O
その言葉を聞き私は身体中の汗腺から汗が滲み出るような…一気に鼓動が低速から高速になるような…
生まれてはじめて感じる感覚に目眩がしそうになった。あの日からずっと考えていた計画を遂行する時が訪れたことを瞬時に理解した
紬「澪ちゃん、先にお茶にしましょうか」
興奮を気取られないように平常心を保つ…わからない、押さえられているのか、おかしいことが悟られているのか
澪「そうだな、じゃあ頼むよ」ガタッ
席につく澪ちゃん。どうやら特に気取られることもなかったらしいわ…私はこんなにおかしいのに。いつもと変わらないように意識しながらティーセットに向かう
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:22:35.80 ID:SjF727f1O
数ある紅茶の中から奥に隠してある缶を開ける…お茶の葉っぱの下にあるビニール袋…強力な睡眠薬…でもこれには重大な欠点があるの
紬「澪ちゃん、ケーキ食べる?うちのパティシエの自信作なの」
澪「自信作!?いや、食べたいのは山々なんだけど…」
紬「うふふ、体重が気になるのね?」
澪「ハ、ハッキリ言い過ぎたぞムギ///最近またな…気をつけてはいるんだけど」
紬「じゃ~ん糖分、脂肪分が気になる食事にはこれを使えば安心よ。琴吹グループで開発した新薬なの!!」
澪「!?」
紬「これはねケーキとかの糖分、脂肪分を吸収させないようにする薬なの。もちろん副作用なんてないわ」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:32:03.50 ID:SjF727f1O
澪「凄いな、そんなのがあるのか」
紬「もうすぐ新聞でも発表されるわ。でもね、少し苦味があるの」
そう、それが欠点。お茶に溶かして飲ませるにはこの睡眠薬は苦すぎるの…だからあらかじめ苦味のことを伝えて薬が溶けたお茶を最後まで飲ませるようにしなきゃ…甘い甘い罠をしかけて
澪「う、苦いのか」タジタジ
紬「で、でもね、すぐに新しいお茶で流しちゃえばわからないわッ」アセアセ
明らかに普段の私とは違いすぎることに私自身が戸惑いながら弁解を続ける…
澪「そうだなムギの用意してくれたケーキも食べたいし苦いのも我慢するか」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:44:49.55 ID:SjF727f1O
希望が湧いてきた…目の前が明るくなる。瞳が輝く私を見て澪ちゃんはどう思ったかしら…
澪「おかしな奴だな、そんなにケーキを食べさせたかったのか?」
紬「うんッ…自信作を用意した日はいつも澪ちゃんに食べてもらえなかったから…さ、どうぞ」コポコポ
澪「フフッ…わかったよ。良薬口に苦し…だな。いくぞ」ゴクゴク
紬「……」ドキドキ
澪「に、苦ッ」ゴクゴク
紬「もうひとこえ~」
澪「プハッ…ムギ、想像以上に苦かったぞ…新しいお茶をくれ」
紬「大丈夫よ澪ちゃん、必要ないわ」
澪「え!?…なんだ、ム、ギ…身体が…」ガシャ
紬「おやすみ澪ちゃん」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 17:59:30.13 ID:SjF727f1O
唯「おそくなりました~」律「いや悪ぃ悪ぃ、サワちゃんがなかなか解放してくれなくてさ~あれ?澪はまだか?」
紬「まだ来てないわ~」
澪ちゃんは当分目を覚まさないだろう。あれはそういった薬なんだから…もうこれまでの幸せな日常には戻れない。事実上軽音楽部は崩壊してしまった。私が壊してしまった…あんなに楽しい時間だったのに
紬「先にお茶にしましょうか、澪ちゃんも直に来るわ。今日もね、美味しいケーキを用意したの」
結局澪ちゃんは現れず下校時刻になってしまった。私にとっては当然なんだけど…
律「澪のヤツ、無断で休みやがって…こうなったら電話の刑だ」
唯「ひぃ、りっちゃん奉行様それは酷い仕打ち…何卒ご容赦を~」
唯ちゃん、昨日時代劇を観たのね…あの時は二人の仕草をニコニコと眺めていた記憶がある。たぶん冗談を言い合えた最後の時間だったから
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:16:36.53 ID:SjF727f1O
律「出ねぇ…っていうか繋がりもしない」
ごめんねりっちゃん…澪ちゃんの携帯電話は既に電池を抜いてあるの
律「澪が何も言わず帰るなんて珍しいよな、まぁ明日来たら聞こうぜ。帰ろ帰ろ」
唯「その寛大な処分、りっちゃん奉行の優しさに平沢唯感動でありますッ」ビシッ
律「なんだよそれ」
紬「うふふ、じゃあ鍵は私が閉めるわ。今日は迎えが来るから先に帰ってて~」
律「う~す、じゃあムギ、戸締まりは頼むぞ。行くぞ唯」ガラガラ
唯「ムギちゃんバァイバァイ~」バタン
トタトタトタ…二人が階段を降り遠ざかる。今の私はどんな顔をしているのかしら。おもむろに用具入れを開ける
…そこには手足を布で拘束され同じように猿ぐつわをしてある澪ちゃん…幸せなそうな寝顔、ごめんね窮屈な場所に入れて。猿ぐつわを外し辺りが暗くなるまで澪ちゃんに膝枕をして時折頬を撫で黒く美しい髪をすいて時間が経つのをただただ待っていた
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:34:30.79 ID:SjF727f1O
辺りは暗くなり部活動で騒がしかった校内に一切の音は消えた。携帯を操作して電池をかける。澪ちゃんとは違い相手はすぐに出た
紬「斉藤、お父様とお母様は御在宅?」
斉藤『いえ、お二人とも海外へ…なにか至急お伝えしたいことでも?』
紬「いいの…斉藤、今日は迎えに来てちょうだい。でもね出来るだけ目立たない車で来てほしいの、うん。任せるわ。急いでね」
目を覚ます心配はないだろう。澪ちゃんを縛る布を外し担ぎ上げ廊下に出す。鍵をかけて誰もいない職員室に返す。部室に戻り澪ちゃんを背負って裏口から校舎の外に出る…さすがに校内には生徒は残っていないようだ…誰にも見つかってはいないはず…
人を一人背負っていても重くは感じなかった、なにか頭の中で興奮物質でも垂れ流しているのかしら?
自分が自分でないような…これだけのことをしているのに妙に冷静な、まるで他人のことのような…携帯電話が震えハッと我に返る。
紬「裏口から出るわ。すぐに着くからエンジンはそのままでいいわ」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 18:52:46.90 ID:SjF727f1O
斉藤「おや、その方は?」
紬「友達よ…家に泊めるわ。早く出しなさい」
スムーズに車は走り出し夜の街の風景が流れてゆく…時折街灯の灯が澪ちゃんの頬を、髪を、脚を照らして堪らなく綺麗だった。押さえ切れない興奮と躍動感、達成感…様々な感情が込み上げ訳がわからなくなりそう…正しくないことはわかっている
与えられるのではなく自分で手に入れた…その達成感は罪悪感を塗り潰し隠しきれない幸福感へ導く
何事もなく車は家に辿り着く。家路がこんなに長く感じたのは初めてかもしれない
紬「澪ちゃん、ここがこれから暮らす家よ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:07:20.81 ID:SjF727f1O
紬「斉藤、聞いておくわ。あなたは私の味方よね?」
斉藤「わたくしめは紬お嬢様がまだ産まれていない時よりお嬢様の、いや琴吹家の味方でございます」
紬「秋山澪ちゃんというの。この子を離れに連れていくわ。用意なさい」
斉藤「離れ!?……かしこまりました」
離れ…本宅とは別の、今は亡くなったお祖父様が使っていた住居。小さい頃は毎日のように相手をしてもらった記憶が蘇る。お祖父様は父に仕事を譲った後に離れを作りそこで悠々自適な生活を送っていた。
幼い私はそこにある珍しい物全てに目を輝かせお祖父様が語る話に耳を傾けていた。お祖父様は話相手が出来て嬉しいのか秘密を条件に内緒の場所を見せてくれると言い…幼い私は何の疑いもなく承諾した
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:21:58.04 ID:SjF727f1O
お祖父様はここは大切な物を仕舞っておく場所だと言っていた…そこには無機質な廊下と鍵のついた部屋が数部屋ある空間
そう、お父様もお母様も知らないお祖父様と斉藤、私だけが存在を知っている秘密の空間…そういえばあの時あの部屋にいた娘はどうなったんだろう
今度は私が手に入れたペットをあそこに仕舞える…ふと気づくとさっきまで友達だった澪ちゃんをいつのまにかペット扱いしている自分がいる。クスクスと笑いが込み上げる。可笑しいわ、せっかく出来た友達なのに
斉藤「準備が出来ました」
紬「ありがとう、澪ちゃんはまだ起きないと思うけど食事と着替えを用意なさい」
斉藤は軽く頭を下げ本宅へ消え私は澪ちゃんを背負い離れの戸を開け巧妙に隠された地下室への扉を開けた…
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:32:50.72 ID:SjF727f1O
紬「りっちゃんおはよ~」
律「ムギか…あのな、まだ内緒にして欲しいんけど…澪のやつ、昨日から家に帰ってないみたいなんだ」
紬「えっ!?それってどういうことなの?」
律「わかんねぇ…なにやってんだよあいつ、変な事に巻き込まれてなけりゃいいんだけど」ブルブル
紬「ご家族は警察には連絡したのかしら…心配だわ」
律「それでも昨夜のうちに相談に行って放課後までに連絡が無ければ捜索願を出すみたいなんだ」
紬「………」
律「唯にはまだ内緒にしといてな、心配かけたくないから」
紬「……わかったわ。私に出来ることがあったら言ってね」
律「ムギ、ありがとう」ギュッ
紬「いいのよ、友達じゃない」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:43:52.77 ID:SjF727f1O
あまり寝ていないのか、腫れぼったい目をこすりりっちゃんは机に顔を伏せた…ごめんね、澪ちゃんはこれから私が面倒を見るからね。許してりっちゃん
放課後、りっちゃんが唯ちゃんと私のところに来て部活の中止を告げ足早に教室を出ていった…なにも知らない唯ちゃんと二人、少しの間世間話をしていると…
和「唯、たまには一緒に帰ろっか」
唯「うん和ちゃん、帰ろ帰ろ~…あれ~生徒会はいいの~」
和「あぁ今日は集まりがないからね、じゃあね琴吹さん」
唯「じゃあね~」ブンブン
紬「うふふ、さようなら~」パタパタ
そろそろ澪ちゃんも起きたかしら?私も帰りましょう
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 19:55:54.87 ID:SjF727f1O
電車を降り軽やかな足取りで家路を急ぐ…この時点では特にどうしようという計画はなかった。ただあの美しくはち切れんばかりの若さを醸し出す澪ちゃんを手元に置いておきたかったのだ。その時はそれしか考えてなかった
裏口から入り悟られないように離れに急ぐ。秘密の地下室にはもうすぐだ…ふと閃きビデオカメラを用意する。日記代わりに使えるかしら…どうしよう楽しくて仕方がないの
ガチャリ
紬「うふふ、澪ちゃん起きてるかしら~?」
澪「ムギッ!!…ここはどこだ!?なんだこの部屋は!?それにこの鎖…一体なんのつもりだ」
紬「ここは琴吹家の離れにある地下室で、それは澪ちゃんが逃げられないようにする鎖よ。そして澪ちゃんはこれから私のペットなの」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:07:12.41 ID:SjF727f1O
澪「なにを言ってんだ、自分がなにをしてるかわかってるのか?」ジタバタ
紬「ふふっ……いたって冷静よ。これから澪ちゃんはここで私のペットとして暮らすの。初日だから記念にビデオ撮るわね~笑って笑って~」ジーッ
澪「狂ってる、変な奴だとは思ってたけどここまでとはな…早くここから出せ!!変態ッ!!今なら許してやる」
なにかしら、おかしいわ。澪ちゃんが見たこともないような表情で私を罵ってる。おかしい、こんなはずじゃ…コンナハズジャ…コンナハズジャ…オカシイワ…イヤ、オカシクナンカナイ
バキッ
うつ伏せに寝転がっている体勢で腹に蹴りを入れられ澪ちゃんが転がる、蹴ったのは…私?
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:17:14.78 ID:SjF727f1O
呼吸がうまく出来ないのか、澪ちゃんは咳き込み信じられない物を見るような目で私を見上げる。もう一発…
今度は二の腕を蹴られ悶絶する澪ちゃん…更に近づき今度は足に蹴りを…そこで気づいた。澪ちゃんが怯えるような泣き顔になっていることを。これよ、これ…うふふ、澪ちゃんはこうでなくっちゃ。
澪「ヒッ…ムギッ、もう止め」ビクビク
紬「うふふ、ごめんね澪ちゃん…痛かったよね?でもペットには躾が大事なの、わかってくれたら嬉しいわ。さ、笑って笑って~ビデオに撮るんだから」ニコニコ
澪「あ、あはは」
瞳に大粒の涙を貯め精一杯口の端を上げ懸命に作り笑いをする澪ちゃん…堪らなく愛らしいわ
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:28:20.80 ID:SjF727f1O
紬「ね、痛いのは嫌よね?私も大好きな澪ちゃんを蹴りたくないわ~だから大人しくペットになって欲しいの、駄目?」
澪「………」
断ったらまた蹴られると思っているのかはっきりと断れず、かといって友達のペットになれと言われ「ハイ、なります!!」などとは誰だって答えれないだろう
紬「いいわ、先にご飯にしましょ。待っててね、琴吹家のお抱えのシェフの一品をお持ちするわ」
澪「な、なぁムギ…その前にこの鎖を外してくれないか?」
紬「………暴れないって約束出来る?」
澪「と、当然だろッ…友達を疑うのか!?」
紬「それもそうね…でも澪ちゃんはもう友達じゃなくてペットなの、ごめんね。躾の行き届いてないペットを自由にするのはマナー違反なの」クスクス
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:38:43.92 ID:SjF727f1O
紬「お待たせ~今日はビーフシチューだったわ。とっても美味しいんだから…はい、どうぞ」コトッ
澪「あ、あはは…冗談きついなムギ…これじゃ食べれないよ。いや、まさかこのまま食べろなんて言わないよな?」
紬「うふふ、ペットはスプーンなんて使わないわ~あらビーフシチュー美味しいわ」パクパク
澪「ふ、ふざけるなッ…そんなこと出来るかッ」ワナワナ
紬「嫌なら食べなくてもいいのよ?澪ちゃん痩せたがってたし…少しくらいご飯なしでも平気よね?ごちそー様でした」
澪「くっそ、こんな鎖…外れろ、外れろよぉッ」ガシャガシャ
紬「あんまり暴れると食い込んで痛いわよ~」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 20:48:51.30 ID:SjF727f1O
紬「じゃあ家族に気取られる前に本宅に行くわ~また明日の朝に見に来るわ。おやすみなさ~い」ガチャリ
澪「ま、待ってくれムギ、待って…」
考えてみれば最初からじゃれてくるペットなんていないわよね…いろいろ考えなきゃ。地下室から出ると離れの玄関に置きっぱなしの携帯が光っていた。メールと着信、りっちゃんと唯ちゃんからね。まずはりっちゃんから…
律『もしもし、ムギか?』
紬「ごめんね、すぐ電話に出られなくて…澪ちゃんは見つかったのかしら?」
律『いや、見つからないんだ。親御さんは警察に届けを出したってさ…なんでこんなことになってんだ?一昨日まで何もなく過ごしてたのに…チクショウ、澪ォどこにいるんだよォ』シクシク
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:00:38.22 ID:SjF727f1O
紬「……ごめんなさい、力になれなくて」
律『いや、ムギのせいとかそんなつもりじゃないんだ。悪ィ…あたし余裕が無いんだな、ほんとゴメン』
紬「いいの、りっちゃんが優しいのはわかってるから…溜め込まずにいつでも電話して、ね?」
律『ありがとうムギ…またなにかあったら電話するよ』
本当に澪ちゃんが羨ましい。こんなに心配してくれる幼馴染みがいて…次は唯ちゃんね
唯『もしもしムギちゃ~ん、澪ちゃんがいなくなっちゃったんだって~知ってた~?』
紬「えぇ…今朝りっちゃんから聞いたわ。ごめんなさいね、黙ってて」
唯『ひどいな~わたしには内緒だなんて』プンプン
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:10:37.52 ID:SjF727f1O
紬「きっとりっちゃんは唯ちゃんに余計な心配かけたくなかったのよ」
唯『………』
紬「とりあえず警察も動いてくれてるみたいだから私たちは待ちましょ、ね?」
唯『うん、わかった』
紬「そう、いい子ね…うん、また明日」カチャ
唯ちゃんもいい子ね…澪ちゃんは幸せ者だわ~優しい幼馴染み、優しいお友達、優しい飼い主がいるなんて…うふふ
そういえばメールも入ってたわね…知らないアドレス。タイトルも内容も空っぽ…間違いメールかしら?まぁいいわ。いつまでも制服じゃ可愛そうだから澪ちゃんの着替え用意しよっと。まさか斉藤が着替えといったら桜高の制服を用意するとは思わなかったわ
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:26:24.54 ID:SjF727f1O
紬「おはよう澪ちゃん…あらあらこんなに散らかして悪い子ね」
澪「………」ジロッ
紬「ほら、言ったじゃない暴れたら食い込んで痛いって…すぐに消毒するわ~」
澪「触るなッ、汚ならしい」ジタバタ
紬「………」
澪「いいよ、蹴りたければ蹴ればいいさ…一晩中考えたんだ。私はお前のペットなんかにならな…ギィ」
どす黒い感情が溢れたが蹴りはしなかった…ただ澪ちゃんの足首についた鎖を足の上から思い切り踏みつける、何度も…何度も…
踏みつける度に聞いた事がない不快な音が部屋に響き踏みつける度に声にならない叫び声をあげていた澪ちゃんもいつしか痛みからか気を失っていた
アハ、アハハハハ…
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 21:32:43.02 ID:SjF727f1O
澪ちゃんの足首は血に染まり見たことがない形に捻れていた…気を失ったと同時に失禁してしまったのか澪ちゃんの身体がビクビク痙攣する度に黄色い水溜まりが少しずつ広がっていく
私は迷うことなくその様を録画し続けた。あんなに美しかった澪ちゃんが壊れていく様を見続けたい…いつしかそう思えていた。
紬「ごめんなさい、昨日一晩中寝付けなくて…今日は休ませてもらうわ」
律『わかった、サワちゃんには伝えとくからな。ムギまで倒れちゃ洒落にならないからな。気をつけろよ』
紬「ありがとう…それじゃあね。りっちゃん」カシャ
紬「澪ちゃん今日は一日中一緒にいれるね」
携帯を玄関に置き地下へ降りる。鍵のかかった別の部屋をあける…幼い日に一度だけ入ったことがある部屋…そこにある道具には人を傷つける以外に使い道がないような…そんな形状をしていた
ちょっと澪ちゃんの様子を見てくるから席を外します
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:04:12.44 ID:SjF727f1O
とりあえずこのまま澪ちゃんを放置するわけにはいかないわ…
紬「斉藤、A型の血液を用意して…あとはよくわからないわ。痛み止、包帯、消毒液…麻酔薬もね。急いで」
斉藤『……かしこまりました』
内線で斉藤に捲し立てすぐに道具に目を移す…お祖父様が亡くなってずいぶん経つと言うのにいうのに全ての道具に手入れが行き届いていた。
病院で使われているような金属製のワゴンに凶悪な器具が次々と積まれていく…ノコギリ、鉈、ペンチ、錐、釘、金槌、小型の電気ノコギリや電気ドリル…澪ちゃんが見たらそれだけで気を失っちゃいそうだわ~
紬「こんなところかしら」ガラガラ
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:17:53.61 ID:SjF727f1O
紬「澪ちゃん…大丈夫?」
澪「ムギ…ハァハァさっきはごめんなハァハァ…言い過ぎたよハァハァ」
紬「いいのよ…私こそごめんなさい。本当は澪ちゃんを傷つけたくなんかないの」
澪「わかってる…ハァハァムギは優しいからなハァハァ、なぁムギ…さっきから左足が焼けるように…凄く痛いんだ。ちょっと見てくれないか?この体勢だと自分じゃ見れないんだハァハァ」
紬「わかったわ、少し待ってね…え~とこれでいいかしら」ガチャガチャ
世間一般では鉈と呼ばれる道具を手に取る。
澪「足の怪我が治ったらさ…またバンドやろぉなハァハァどうだムギ?大したことないか?……ムギ?何だよそれ、冗談だろ」ガタガタ
紬「えいッ☆」バギィ
力の限り振り下ろす…元々骨が砕けていた位置を狙ったせいか澪ちゃんの左足首は一撃で千切れ飛んだ…
澪「あ゛ぁあ゛ぁあぁあ゛ぁあぁあぁあ゛ぁ」
澪ちゃんは獣のような雄叫びをあげのたうちまわる
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:31:52.48 ID:SjF727f1O
澪ちゃんはまた失神してしまった…今度は口の端からなにか泡みたいな物が出てる、切り離された足首は鮮血を撒き散らし離れたところに転がっていた。さっきとは比べられないほど出血が激しい
紬「ちょっとまずいかしら」
斉藤『お嬢様よろしいでしょうか?』
紬「いいわ、入りなさい」
斉藤「失礼します…お嬢様こういった場合には舌を噛むおそれがありますので秋山様にこちらをどうぞ」
斉藤が差し出したそれは猿ぐつわの真ん中に無数の穴が均等にあいた卓球の玉のような球体がついた物だった
紬「驚かないの?」
斉藤「今さら隠すこともないでしょうが先代様で慣れていますので。実はこうなることを見越しておりまして呼んでいる方がいます」
斉藤の後ろから白衣を来た小柄なお年寄りが入ってきた…不意の来客に冷や汗が出る
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:46:17.85 ID:SjF727f1O
紬「誰なの?」
斉藤「世にいう闇医者とでも呼ぶのでしょうか…先代様の頃から琴吹家抱えている専属医になります。口の方は固いのでご安心下さい」
医者「まずはそちらのお嬢さんの手当てからしましょう…紬様、四肢の切断は素人が気軽にやれるもんではありません。医師の指導の元、患者の生命を優先して少しずつ進めていくものなんです」
紬「でも澪ちゃんの飼い主は私よ、他人になんか任せられないわ~」プンプン
医者「紬様は先代様に似ておりますな…まぁ当然といえば当然なのですが。」
斉藤「………さ、秋山様の手当てにかかりましょう」
テキパキとした作業で輸血や縫合をはじめる斉藤とお医者様…手持ちぶさたな私は切り離された足首を手に取りその美しさにウットリとしていた
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/20(日) 23:57:01.70 ID:SjF727f1O
医学のことは詳しくないからわからないけれどその医者によると人間の身体は一度に多くのパーツが欠損すると失血死や外因性のショック死を招くという。
相手の身体に損壊を与えて快楽を得たいという時でなければしっかり麻酔をかけ時間をかけプロセスを踏み取り外した方が安全らしい
…澪ちゃんが怯える様子も見たい気持ちもあるがそこは我慢することにした、命と一時の快楽じゃ天秤にかけられないわ
とりあえず澪ちゃんは床ではなくベッドのある別の部屋で治療していくことになった…少し物足りない気持ちもあるが医者と斉藤に治療を任せ地下を後にする
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:09:04.08 ID:NmARgbHIO [1/47]
地上に上がり澪ちゃんの足を切り落とした感触を思いだして奮えていると携帯がまた不在着信があることを告げる光を放っていた…
お昼休みにりっちゃんがかけてくれたらしい。唯ちゃんは体調を心配してくれるようなメールを送ってくれていた。本当にいい子たちだわ。そしてもう一件のメール…昨日の間違いメールと同じアドレスだ。内容は…
『校舎の裏口が開いてたわよ』
奥歯がカタカタ鳴り膝が震える、嫌な汗が全身から吹き出る…誰にも見つからず校舎から出たと思っていたが誰かに見られていたらしい。どうしようどうしようどうしよう
天国から地獄へ真っ逆さまに突き落とされたような気持ちになり生まれたての子馬のような足取りで再び地下へ降りる
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:21:59.67 ID:NmARgbHIO [2/47]
紬「ねぇ斉藤、困ったことになったわ」
斉藤「いかがなさいましたお嬢様」
紬「あの日、澪ちゃんを連れ出すところを誰かに見られていたらしいの…どうしたらいいの」
斉藤「ふむ、拝見しましょう…連れ去った直後ではなく二日ほどおいてから核心をつくような内容。相手は恐らくお嬢様を脅す算段でしょうな」
紬「私を脅す!?琴吹家の後継者の私を…一体誰なのよ、そんな不埒者はッ!!」ワナワナ
斉藤「お嬢様落ち着いて下さいませ。脅すのが目的でしたらそれほど恐ろしい相手ではありません。それに送り主はすぐわかりそうです」
紬「そうなの?誰なのよ」
斉藤「お嬢様のお近くによく慣れ親しんだ教師の方はいらっしゃいませんか?」
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:34:23.08 ID:NmARgbHIO [3/47]
紬「さわ子先生?」
斉藤「さわ子先生とおっしゃいますか?まぁ十中八九その方でしょうな」
紬「なんでわかるの?」
斉藤「わたくしの記憶が正しければ秋山様は校内でファンクラブが出来るほどの方らしくメールの送り主が生徒だった場合、そんな光景を目にすればすぐに警察なり教師なりに届けるでしょう。何しろ有名な方ですからね」
紬「言われてみればそうね」
斉藤「それにお嬢様を脅すとなれば琴吹家の家柄を知ってのことでしょう、身近な方は知っていても学内全員がお嬢様が琴吹グループの一人娘とは知りますまい」
紬「それに私のアドレスを知っていた…」
沸々と怒りが沸いてくる。きっとこの先の私の出方を想像し楽しんでいるのだろう…
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 00:49:25.02 ID:NmARgbHIO [4/47]
斉藤「そういうことですな」
紬「あの行き遅れ…」ギリギリ
斉藤「お嬢様、お口にお気をつけ下さいませ。余裕が無くなった人間から破滅するものです…先代様はいかなる時でも落ち着いて行動なされました」
紬「………お祖父様だったらこんな時どうするかしら」
斉藤「要求を聞く振りをして呼び出し捕らえて生まれてきたことを後悔させてから惨たらしく殺害なさるでしょうな」
紬「私にも出来るかしら」
斉藤「お嬢様がお望みなら…斉藤はその為におります。それに秋山様の手術に向けて練習台も必要かと…」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:01:57.99 ID:NmARgbHIO [5/47]
そうと決まればメールなんてまどろっこしい真似なんてしてられない。短縮番号でさわ子先生に電話を選択する
斉藤「お嬢様、お待ち下さい…さわ子先生様にはこちらの携帯電話をお使い下さい。お嬢様の履歴が残りますと後々面倒なことになりかねますので」
紬「そうね、ありがとう」
時刻は夕方6時を越えている、軽音楽部は活動していないだろう…さわ子先生は待っていたかのようにすぐに出た
さわ子『もしもし誰かしら?』
紬「さわ子先生、私です。琴吹です、今大丈夫ですか~?」
さわ子『あらムギちゃんだったのね。体は平気?大変だったわね~もう起きても平気なの?』
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:13:32.32 ID:NmARgbHIO [6/47]
白々しい…怒りに声が震えそうになるのを堪えて会話を繋げる
紬「先生、これからお会い出来ませんか?」
さわ子『あら急にどうしたのかしら?』
紬「相談にのって欲しいことがあって…先生ならご存知ではありませんか?」
さわ子『そうね、いいわよ。困ってる生徒の為なら時間外労働も苦じゃないわ』
紬「ありがとうございます。では家の者に迎えを行かせますので…ハイ、失礼します」
なにが困ってる生徒の為だ。吐き気がする
紬「斉藤、さわ子先生を連れてきて頂戴…誰にも見つからないようにね。あと出来るだけ無傷でね」
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:24:35.21 ID:NmARgbHIO [7/47]
澪ちゃんと違って今度は容赦しない…優しさの欠片も与えるつもりはない、さわ子先生の身体全体に愚かな自分が誰に脅しをかけたかわからせてあげる
一時間もしないうちに斉藤がさわ子先生を抱え戻ってきた…さわ子先生は傷一つなく眠っているようだ
斉藤「処理する事案がありますので少し外します…何かありましたらお呼び下さい。では先生、お嬢様を宜しくお願い致します」
医者「じゃあはじめますかの」
紬「宜しくお願いします」
医者「まずはアキレス腱からいこうかね…そこの大きなニッパーを取っておくれ。そうそうそれでいい。せ~の」バチン
完全に防音処理がされている部屋に繰り返し悲鳴があがり夜は更けていく…
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:38:28.49 ID:NmARgbHIO [8/47]
紬「おはよう、りっちゃん」
律「おっす、ムギ…もう平気なのか?」
りっちゃんは腫れぼったいような泣き腫らしたような目をして自分の席にいた。ずっと澪ちゃんの無事を祈り続けているのだろう…健気なりっちゃんにキュンキュンするわぁ
始業ベルより早くベルが鳴る…
『生徒の皆さんは至急体育館に集まるよう連絡します』
りっちゃんの目がカッと開き同時に体が震えだす
律「ま、まさか澪が…ムギ、どうしよう。立てないやハハハ」ガタガタ
紬「りっちゃん大丈夫よ、きっと澪ちゃんは無事」ギュッ
慈しむようにりっちゃんを抱き締める…いつも強がってばかりのりっちゃんが震えている
唯「………りっちゃん、ムギちゃん。おはよ」
いつの間にか唯ちゃんがそばにいた。唯ちゃんがとても言いにくそうな…口に出すのが恐ろしいといった感じで言葉を探しているのがわかる
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:51:34.28 ID:NmARgbHIO [9/47]
唯「あのね、そこで聞いたんだけどね…昨夜ね、さわちゃん先生が交通事故で死んじゃったみたいなの」グスグス
律「なに言ってんだよ唯、冗談だろ!?信じられるかよ…さわちゃんだぜ?車に轢かれたぐらいじゃ死なないだろ」
確かにあの女ときたら車に轢かれたぐらいじゃ死なないかもしれないわ~♪人間ってなかなか死なないものなのね。勉強になったわ。まぁあの状態が生きているかと聞かれたら素直にハイとは言えないけど
紬「とりあえず体育館に向かいましょ、ね?」
律「あぁ…もぅなにがなんだかわかんねぇよ。あたしらが何かしたのかよ」
唯「………りっちゃん」
260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 01:56:53.31 ID:NmARgbHIO [10/47]
臨時の朝礼は至ってシンプルなものだった。山中さわ子先生が交通事故に遭って亡くなったということだった。居眠り運転の大型トラックに引き摺られ死体は酷い状態だったと後日噂で耳にした
すべて斉藤から聞かされていたのでなにも驚く要素は見当たらない…逆にショックを受けた振りをするほうがやっかいだったわ
紬(あの女最後までしらばっくれてたわ。何が『メールなんて知らない!!』誰が信じるものですか…でもこれで安心して澪ちゃんを愛せるわぁ)
澪ちゃんとさわ子先生を失い軽音楽部は解散となった。明らかに元気を失ったりっちゃんと唯ちゃんを励ましながら季節は移ろい…夏を過ぎ秋になった。去年の今頃は学園祭のライブの準備であたふたしてたわ~
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 02:12:08.08 ID:NmARgbHIO [11/47]
律「おい、バカ澪起きろ~練習するぞ!!」
唯「りっちゃんかわいそうだよ~寝かせてあげようよ~」
やだよ、まだ眠たいんだ…邪魔しないでくれ
律「澪~学園祭のライブまで時間がないんだ早く起きろって。起きないとスカートめくるぞ~」
澪「やめろバカ律殴るぞ…え…あれ律?」
律「やっと起きたのかよ!大事な時に寝やがって…さ、練習するぞ」
澪「あぁ…」
なんか嫌な夢を見ていたような気がする…
紬「ねぇ澪ちゃん…腕がなくっちゃ演奏出来ないわよ~」
律「ホントだ!!澪はドジだなぁ~」
唯「澪ちゃんお人形さんみた~い」
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 02:23:01.21 ID:NmARgbHIO [12/47]
紬「澪ちゃん凄い寝汗ね…怖い夢でも見てたの?」
澪「………ムギ?怖かった、なんか嫌な夢を見てたんだ」
紬「大丈夫よ、私が側にいてあげるから」ナデナデ
自分自身の身に起こった事を理解した時、私は気が狂いそうだった…事実狂っていた。何度も自殺を図り、食事を採らず餓死を選ぼうとした時もあった。その度に小柄な白衣の老人が現れ死を望む私を無理矢理引き摺りあげるのだった
死ぬ事を許されない状況下で私も次第に狂ってしまったのかもしれない…ムギが以前より憎くないんだ。むしろこんな私の側にいてくれることを感謝すらしている…狂ってるのは私なのか…この地下室なのか…もうわからなくなってしまった
320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:36:41.28 ID:NmARgbHIO [14/47]
二年生の秋はせわしなく過ぎていく…その頃から私は受験勉強に専念するという名目の元、離れに部屋を写し両親が帰宅した時以外の余暇時間をそこで過ごしていた
澪ちゃんも最近では薬を使わなくても私に敵対心を抱かなくなり私にとってはとても理想的な日々だった。
食事と入浴を済ませたら澪ちゃんの髪をとかしながら学校でのことを教えてあげ、その後は一日の授業の内容を澪ちゃんと一緒に復習する。
もともと聡明だった澪ちゃんと復習するせいか学習塾や家庭教師を使うこともなく学力は上位をキープし続けることが出来た。おかげで両親も離れを使うことに反対することもなく安寧な日々が続く
学校でのことを話している時の澪ちゃんの瞳は憂いを秘めている気がする…そんな表情も私にとってはたまらないが少し胸が痛くなる
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:43:26.21 ID:NmARgbHIO [15/47]
紬「ねぇ…澪ちゃん、やっぱり私が学校に行ってる時って一人じゃ寂しいわよね~」ナデナデ
澪「んッ…でも私にはムギがいてくれるし…リモコンも使えるから録画してある番組も観れるし…さ、さびしくなんか…ひゃ、ムギどこ触って///」
ペットを撫でるように澪ちゃんの身体を優しく撫でまわす…澪ちゃんの息づかいが浅く速くなっていく
紬「いいのよ澪ちゃん、誰にも聞こえないんだから大きな声出しちゃっても平気よッ」
澪「ムッ…ムギィ///」
澪ちゃんの潤んだ瞳、上気を増した頬…なにもかもが愛おしい、たまらず口づけを交わし舌を潜り込ませる…澪ちゃんもそれに応えてくれ舌が淫らに絡み合う
唇を放し見つめ合い…かき混ぜられた唾液が尾を引き唇と唇を繋ぐ糸になった
322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:46:04.66 ID:NmARgbHIO [16/47]
紬「澪ちゃん、それじゃあヌギヌギしましょうか?仰向けにするわよ~」ハァハァ
澪ちゃんは小さく頷き頬が赤みを増す…仰向けにした澪ちゃんの服を少しずつ剥いでいく。恥ずかしいのだろうか、何度繰り返してもこの時目を逸らして口をギュッと閉じ、されるがままにしている
服を剥がされた澪ちゃんの裸身が明かりの下で照らされる…ベッド広がる黒い髪、潤んだ大きい瞳、形の良く豊満な胸、くびれたウェストか流れるヒップライン…この世の美の集大成ともいえる存在に思わず息をのむ
澪「ムギ…そんなに見られると、その…恥ずかしい」
324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:48:33.03 ID:NmARgbHIO [17/47]
お祖父様があの医者を気に入っていた理由がよくわかる…澪ちゃんの四肢があった箇所には傷口のような物はなく、代わりにそこに腕や脚なんてはじめから無かったかのような自然な曲線が描かれていた。
それだけではない、あの医者の処方する栄養剤のせいだろうか…地下室で半ば寝たきりの生活を送っている筈の澪ちゃんでさえこれまでと変わらぬ肉体を保ち続けている…
澪「おいムギ…大丈夫か?」
紬「えっ!?大丈夫、大丈夫よ…澪ちゃんに見とれちゃったわ」
澪「ば、馬鹿…恥ずかしいこと言うな」
紬「うふふ…今日もいっぱい気持ち良くしてあげるわね」
325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 12:55:26.33 ID:NmARgbHIO [18/47]
律「大丈夫かムギ…目の下、凄いクマだぜ?」
紬「うふふ、試験が近いから夜更かししちゃったわ~」
律「うへぇ…ムギは成績悪くないのによくやるぜ」
りっちゃん、本当はね…行方不明のあなたの幼馴染みと明け方までずっとじゃれあっていたのよ
唯「ムギちゃんはすごいな~わたしなんて和ちゃんに助けてもらわなきゃ赤点ばっかりだよぉ」
本当に何気ない会話…いつしか誰も澪ちゃんのことを口にしなくなった。駅前でのビラ配りもしばらくやっていない。みんな口に出さなくてもわかっているのだろう…
和「おはようみんな、唯悪いけど英語の辞書を貸してくれ。試験勉強で持ち帰ってさ、そのまま忘れてきちゃったんだ」
律「ここにもガリ勉がいるぜ~勘弁してくれよな~」
唯「ちょっと待っててね~ほいさッ」スチャ
和「ありがとう唯…ムギ、肩にゴミが付いてるぞ」
ムギ「あら、気付かなかったわ」
327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 13:06:18.09 ID:NmARgbHIO [19/47]
和ちゃんの指先に流れる一本の長く黒い髪…ジトリと汗がにじみ出る。気をつけているつもりだった、いや毎朝欠かさず澪ちゃんの痕跡は消し去っていた…なのに
いや澪ちゃんの髪の毛だとは限らない、電車の中で偶然ついた髪の毛かもしれない…でもこのメンバーの中で黒く長い髪の毛で思い当たるのはただ一人だろう
沈黙が続く…ここ最近の私たちにとって澪ちゃんの話題はある種の禁句だった。「澪ちゃんの髪の毛みたいだね!!」そんな冗談すら口に出来ない重い空気…沈黙を破ったのは取り上げた和ちゃん自身だった
和「ふふっ…黒くて長い毛だな。まるで澪の毛みたいだ。案外ムギの家にいたりしてな」
血の気が引くのがわかる…なんてことのない冗談に決まっている。普通に考えて同級生を自宅に監禁するなんて本気で思いなどしないだろう…でも冗談ではないんだ。私は澪ちゃんを監禁している
笑いとばせばいい…「そんなわけないわ~」軽くそう言えば場はうまく収まるだろう。でも…言葉が…出ない
バキィ
顔を上げると肩で息をしてりっちゃんが拳を握っていた。床には倒れた和ちゃん…
333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 13:30:57.65 ID:NmARgbHIO [20/47]
和ちゃんの口調ってサバサバしてるぐらいしか印象にないけど特徴あったっけ?
355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:14:25.46 ID:NmARgbHIO [21/47]
律「何言ってやがる…冗談でもそんなこと口にするなッ」フルフル
和「………」
唯「そうだよ、のどかちゃんひどいよ」
和「ごめん、冗談でも口にしていいことじゃなかったわ。律も唯も…ムギも…本当にすまない」ペコリ
りっちゃんは殴られた側の和ちゃんが素直に謝ったのが予想外だったのか振り上げた拳をしまうことが出来ず足早に教室から出ていった
唯「りっちゃん待って~」パタパタ
一瞬の出来事に何も出来ず成り行きを見守ることしか出来なかった私は唇の端を切った和ちゃんに無言でハンカチを渡す
和「ありがとう、洗って返すわ」
356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:15:19.20 ID:NmARgbHIO [22/47]
ずっと燻っていた…あまりに無謀すぎる…誰だって怪しむに決まっている…でもでもやっぱりりっちゃんも欲しい。大人しい澪ちゃんと元気いっぱいなりっちゃん、やっぱり二人は一緒に居る方が正しいに決まっている…
澪「ムギ、ご機嫌だな。何かいいことあったのか」
紬「うふふ、なんでもないわ~なんでもないようなことが幸せなのよ」
澪「ムギが幸せならそれが私にとって一番だよ」
紬「うふふ、ありがとう澪ちゃん」
待っててね澪ちゃん…すぐにお友達を連れてきてあげるから。でも今はまだ内緒、びっくりさせてあげるんだから
357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:16:27.43 ID:NmARgbHIO [23/47]
例の医者はしばらく来れないらしく悶々とした日々を過ごす。目の前を大きな魚が泳いでいるのに釣り上げる道具がない…学校でりっちゃんと過ごす度にこのまま無理にでも拐ってしまいたい欲望にかられる
斉藤「お嬢様、三日後から来れると連絡がありました」
紬「ほんとうッ!?待ってたわ~」
斉藤「……ですが本当に田井中様を?」
紬「本気よ~澪ちゃんとりっちゃん、二人は一緒にいるべきなの」
斉藤「秋山様、山中様…田井中様とさすがに軽音楽部から三人ともなると…」
紬「うふふ、斉藤…期待してるわよ」
358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:17:10.22 ID:NmARgbHIO [24/47]
紬「ごめんねりっちゃん休み時間に呼び出しちゃって…」
律「いいんだよムギ、で伝えたいことってなんだ?」
紬「え~とね、絶対に内緒にして欲しいの。約束できる?」
律「ははっ…ムギにしちゃもったいぶるな。約束するよ」
紬「澪ちゃんが見つかったわ」
りっちゃんは丸く大きな瞳をより大きく見開き掴みかかってきた
律「見つかったってどこでだ!?生きてるのか?元気なのか?」
紬「…りっちゃん…苦しいわ」ケホケホ
慌てて襟首から手を放すりっちゃん…なりふり構わず幼馴染みを心配するなんて。いい、すごくいいわ
359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:18:37.09 ID:NmARgbHIO [25/47]
律「ご、ごめんなムギ…頭に血が昇ってちまって」
紬「いいのよりっちゃん…無理もないわ。まず順をおって説明するわね」
ビラ配りをやめた頃から琴吹グループの力を使い捜索を続けていたこと。捜索の範囲は関東、本州、日本、アジア、欧州と広めていき中東で見つかったこと。交渉の末、身柄を確保したこと
全て嘘だがりっちゃんは想像以上の大規模なスケールに顔を青くして立ちすくんでいた…
律「で、澪は今どこにいるんだ?」
紬「うちの離れにいるわ…いろいろ事情があってまだ公開は出来ないの。それにマスコミが騒いだりしたら澪ちゃんも傷ついてしまうわ」
360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:19:22.05 ID:NmARgbHIO [26/47]
律「そ、そっか…唯には?」
紬「ごめんなさい…澪ちゃんがまずはりっちゃんにだけ会いたいって。ご家族にもまだ伝えてないわ」
律「いいんだいいんだ…さすが琴吹グループだよな!!あたしも澪もこんなな頼れる友達を持って幸せだぜ!!」バシバシ
紬「うふふ、りっちゃん痛いわ~」ハァハァ
律「じゃあムギん家に行けばいいのか?」
紬「迎えは用意してあるわ~」
りっちゃんは澪ちゃんに会いたい。私はりっちゃんと澪ちゃんにそばにいて欲しい…きっと澪ちゃんも同じ気持ちに決まってるわ~
361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:21:31.20 ID:NmARgbHIO [27/47]
りっちゃんを離れに誘き寄せるのは呆気ないくらい簡単だった。こんなにうまくいくのならもっと早く行動してれば良かったわ…
律「すごい仕掛けだな…地下があるなんて思いもしなかったぜ」カツンカツン
紬「お祖父様の趣味なの…きっと秘密基地みたいなものを作りたかったのね」
律「金持ちの考えることはわかんねぇな~」
紬「うふふ、そうね…ここよ」
小窓から中を覗き見る。澪ちゃんはソファーに座りテレビで何かを見ているようだ…ソファーの上から覗かせる後頭部でしか判断出来ないが見る人によっては澪ちゃんだと認識出来るだろう
りっちゃんの背中をそっと押す。りっちゃんは頷きドアを開ける
律「み…澪?」
365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:27:09.28 ID:NmARgbHIO [28/47]
澪「り、律なのか?」
律「澪、良かった…ずっと会いたかったんだぞ」
いいわ、離ればなれになった幼馴染みの再会…これからはずっと一緒にいさせてあげるからね。ポケットから小型のスタンガンを取り出しグリップを握る…
律「ムギ、澪に会わせてくれてありがとう…一つ言っていいか?」
りっちゃんが振り向く、スタンガンは死角にある
紬「なぁに?なんでも言って」
律「校舎の裏口が開いてたぜ!!」
紬「!!??」
何で?りっちゃんが!?頭の中が真っ白になり『ドスッ』何かを突き刺す音がして左腕に激痛が走る。『グチュ』りっちゃんが手を捻ると痛みが増し思わずスタンガンを落とす。
カシャンカシャン…落ちたスタンガンはすぐさま蹴られ部屋の隅に転がっていく…
372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 15:34:01.14 ID:NmARgbHIO [29/47]
律「あいつの言ったとおりかよ…チクショウ。信じてたのによ」グスグス
あいつって誰?なんでりっちゃんは泣いてるの?痛みで膝をつきうずくまる…頭がうまく働かない。なんで?りっちゃんも私の物になるはずなのに…いや、私のものにする!!
顔をあげりっちゃんを睨む…大丈夫、まだいけるまだいける。これまでだって手に入れてきた、これからだってずっと!!膝に力を入れる。飛び掛かって捩じ伏せる
律「おらぁ!!」
『ガシャーンッ』澪の食事を運ぶワゴンだろうか、両手で上げるにはそれほど重くはないが金属製だ充分に効くだろう
ムギの頭は床には沈み鮮血が金髪を赤く染め上げる…死んじゃいないだろうな。ビクビク痙攣するムギの腕から鍵の束を引き抜く。嫌な感触が手に伝わる
383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 16:23:23.39 ID:NmARgbHIO [30/47]
律「さ、逃げるぞ澪」
澪「律…ムギは?」
律「まだあんなヤツの心配するのか?こっから出たら救急車でも呼んでやるよ」
澪「律…驚かないのか?手足が無いんだぜ…笑っちゃうだろ」
律「馬鹿言うなッ…どれだけ心配したと思ってる!?あたしは澪が生きててくれれば今はそれだけで構わない!!」
澪「律…」
澪を抱え廊下に出て地上へ駆け上がる。辺りは既に暗く離れの玄関の灯りと本宅の灯りしか足元を照らしてくれない。本宅は危ない気がする…おそらくムギの息がかかった連中しかいないだろう
外の塀へ向けてひた走る、足元が悪い、何度も澪を抱えたまま転びそうになる。それほど距離はないはずなのにえらく遠く感じた…あった、塀だ
385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 16:31:07.17 ID:NmARgbHIO [31/47]
律「チクショウ、思ったより高いな…門を探すしかないか」
澪「律…もぅいいんだ、私は置いていってくれ。そしてここであったことは全部忘れてどこか遠くで生きて欲しい。ムギには私から頼んでおくから」
律「なに言ってるかわかってるのか!?ふざけんなよ!!」
澪「律…わかってもらえないかもしれないけど…ここでの生活はそれほど悪くないんだよ」
あたしはその言葉を聞いて絶望の淵に立たされた。手足を奪われ地下に閉じ込められ自由を与えられない生活が悪くないだと!?狂ってる…澪もムギも…
澪が首を捻り腕に噛みつく。痛みに耐えきれず澪を地面に落としてしまう
澪「律、行ってくれ…私の分まで幸せになってくれッ…お願いだから…」
塀にとびつく、必死によじ登る…一瞬だけ振り返る。街灯の灯りに照らされた澪の頬に流れる涙の線は光を反射してただただ綺麗だった。もう二度と振り返らない
律「澪ッ…すぐ、すぐ助けに来るからなッ」
400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 17:18:01.75 ID:NmARgbHIO [32/47]
塀から飛び降りる、固いアスファルトに足から落ち冷たい道路に転がる…立ち上がれない程の痛みではない
塀に手を付きながら前へ前へ進む…方向なんかわからない。ただその場に立ち止まるのが酷く恐ろしい。ケータイ、ケータイ…ブレザーのポケット、スカートのポケットを探る。見つからない…
心細さで膝から落ちそうになる。嫌だ…もう嫌だ…澪、助けてくれよぉ。
あたしの呼吸と鼻をすする音しか聞こえない静寂の中でいやに底抜けに陽気な音楽が響く…
振り返ると塀から落ちた辺りにケータイの着信を告げるイルミネーションが瞬いていた
希望の元に…壁から手を放しケータイの元にひた走る。ほんの数メールのところでイルミネーションが消えた…代わりに車のハイビームが禍々しい光を放ち思わず目をつぶる
息を呑む…光に目が慣れる…傷だらけの高級車…運転手が耳元からケータイを放す…運転しているのはムギ…振り返りダッシュで走る…車が急発進する…ケータイを踏み潰す…衝撃…視界が暗転する
気がつくと全身が痛い…痛すぎてどこが痛いのかわからない。ズルズルと仰向けに足から引き摺られ星空が流れている…ムギの幸せそうな鼻歌が聞こえる…ごめんな澪、助けにいけそうにないや…
408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 17:39:27.80 ID:NmARgbHIO [33/47]
斉藤「まさかこのようなことになっていようとは…申し訳ございません。それと旦那様が…」
紬「いいのいいの…斉藤、りっちゃんの手当てしておいて♪りっちゃんには聞きたいことがいっぱいあるの~」
髪に血がこびりつきごわごわになって固まっている…腕の傷から流れた血がブレザーとシャツの袖を赤く染め上げている。端から見たらどんな風に思われるだろう?
私は体験したことがないが小さい子供が泥遊びで服を汚して帰る時には同じような気持ちなんだろうか?急ぎ足で本宅に向かう
紬「紬です。入ります」
瞬時に部屋の空気が変わる。父と母、執事とメイドが数人…離れのことも車のことも知っているのだろう…父も母も言葉を発せずにいる
紬「お見苦しい格好で申し訳ございません、お友達とじゃれてたら汚れてしまいましたわ」ニコッ
紬父「……車で友達を轢くのはじゃれるとは言わないだろう。それにあの離れはなんだ!?当主である私に断りもなく勝手な真似を…斉藤がついていながらこの体たらくはなんだ!!」
416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:00:46.12 ID:NmARgbHIO [34/47]
紬「当主なら当主らしく私が後を継ぐまでグループを保持することに専念して下さればいいのですわ」
紬父「な、父親に向かってその口の聞き方はなんだッ!!」
紬「父親か…さんざん放任教育しとおいて虫のいい話ですね。それに…お父様は…本当に私のお父様なのかしら?どう思いますお母様?」クスクス
話を振られ母は俯く…顔は倒れそうなくらい青ざめている
紬父「!?なにを言っている?」
紬「では道路の掃除と車の片付けお願いしますわ~あと警察がグタグタ抜かしたら追い払っておいて下さいね」
廊下に出ると斉藤が待っていた
斉藤「…ご存知でしたか」
紬「なんとなくよ…父、いや兄になるのかしら。面倒だからお父様でいいわ」クスクス
紬「お父様は琴吹の血筋にしては甘すぎるの~今時和を重んじるなんてナンセンスだわ。やっぱり欲しい物はガツンガツンと攻めなきゃ」
425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:20:23.51 ID:NmARgbHIO [35/47]
紬「ところでりっちゃんは?」
斉藤「先生が予定より早く見えられたので処置はお任せしとおります。意識は混濁してますが薬品で処理すれば尋問も可能かと思われます」
紬「いいわ、まぁ聞かなくてもわかってるし…りっちゃんは回復を待って唯ちゃんを先にしようかしら」
斉藤「…平沢様ですか?」
紬「今さら策を労するつもりなんてないわ、今度はペロッと拐ってくるわ。行くわよ斉藤!!」
斉藤「…御随意のままに」
435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:40:57.89 ID:NmARgbHIO [36/47]
和(…律の携帯に繋がらなくなったわね)
唯「ねぇねぇ…のどかちゃん。そろそろ帰ってもいいかな?憂も心配してるだろうし…」
和(さすがに律を拐ってすぐ唯を狙いに来るとは思えないけど…念のためにね)
和「唯、今日は泊まってきなさい。憂ちゃんには私から電話しておくわ…冷凍庫のアイス食べていいわよ」
唯「うん泊まってく~いただきま~す」パタパタ
和(唯にはなにも知らせたくない…憂ちゃんに伝えとかなきゃ)prrr prrrガチャ
和「……もしもし憂ちゃん?和だけど…」
憂『こんばんは、和さん』
和「唯だけどさ、今晩うちに泊めるから。急でごめんね」
憂『も~そういうことはもっと早く教えてって伝えといて下さいね』プンプン
和「それとムギ…いや琴吹が家に来ても絶対に出ちゃ駄目よ。あとこの話は唯には内緒にして?約束よ」
憂『琴吹先輩ですか?』
和「あいつは唯の敵…いや唯だけじゃないわ。いい、絶対に出ちゃ駄目よ?」ガチャ
憂『和さん?』
憂「なんなのかしら…お姉ちゃんの敵?喧嘩でもしてるのかな」
459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 18:58:41.50 ID:NmARgbHIO [37/47]
唯「和ちゃんの家に泊まるのって久しぶり~」ヌクヌク
和「そうだな…別にいつだって来ていいよ。ふふふ…ザリガニ風呂は勘弁だけどね」
唯「そんなこともあったね~またみんなでお泊まり会したいな~りっちゃんと澪ちゃんと~ムギちゃん…さわちゃん先生、憂に…それに和ちゃん!!」
和「そうだな…またやりたいな」
それはもう叶わない願い、さわ子先生、澪、おそらく律も…警察には通報したがまともに取り合ってもらえたことなどない。おそらく根回しがされているのだろう…無理もない相手は強大すぎる。
もし、もしあの時ムギを止めていたらこんなことにはならなかったのかな
あれは澪が失踪する前日、他の生徒会役員が帰った後も一人で作業を続けていた。ほんの少しの気の緩み…私は生徒会室で居眠りをしてしまった。気がついた時には辺りは暗くなっていた
479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 19:25:11.16 ID:NmARgbHIO [38/47]
生徒はもちろん教師すら残っていない校舎、鍵をかけ廊下に出る…昼間は賑やかな校舎もこうも静かだと薄気味も悪くなる…
すると階段を昇る足音が聞こえてくる…心臓を鷲掴みにされたような緊張が走り思わず物陰に潜む…
琴吹紬?ムギと呼ばれる唯たちの仲間だ。いつも美味しいお茶とお菓子を出してくれる子だ…部室に忘れ物をしたのだろうか?
特別親しい訳じゃないが戻ってくるのを待って一緒に帰ろう…そんなことを思っていた。ムギが戻ってくるその時までは…
階段を降りてきたムギは別の誰かを背負っていた…その表情は禍々しい笑顔に満ちて声をかけられる様子ではない…そして背負われているのは秋山澪、軽音楽部のメンバーで校内にファンクラブが出来るほどの人気者だ、階段の段差で首が揺れているがピクリとも動かない
直感的に死んでいないことは理解した。死体を運ぶにしてはムギの表情に不安が見えなかったからだと思う。そのままムギは校舎の裏門から夜の闇に消えていった
あの時はまだ楽観的に捉えてたのかもしれない、身近でそんなことが起こるわけがないという根拠のない自信…自分と自分の回りだけはミエナイチカラで守られている、そんなはずはないのにね…
496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 20:33:29.54 ID:NmARgbHIO [39/47]
始業直前になっても澪は学校に来なかった…急いで唯のクラスに向かう、ムギはいる…律となにか話しているみたいだった。始業ベルが鳴ったので急いで戻る。もしかしてあのままムギが…
授業にも身が入らず…昨夜のことばかり考える。何が目的なのかもわからない。もし、もしもムギが軽音楽部の部員を狙っているのだとしたら…
唯の身にも危険が迫るかもしれない。大袈裟だとはわかっている…生徒会の活動を休ませてもらうことを告げ唯を迎えに行った
唯「和ちゃんと帰るなんて久しぶりだね~」
軽音楽部と生徒会…唯と二人で帰る日なんてほとんどないようなもの、たまに軽音楽部のメンバーに私が加わるくらい。
軽音楽部のメンバーは中学の同級生と違い唯を虐げるようなやつはいなかった、唯を受け入れその才能を芽吹かせ…萎みかけていた大輪の花を再び咲かせるのを手助けしてくれた
単純に嬉しかった…唯が自分の殻に閉じ籠ることなく笑顔でいてくれることに
そして嫉妬した。その笑顔の元が自分でないことに
生徒会に入り、生徒会役員になり果ては生徒会長になって影から唯を守れる存在になりたい…それが目標だったのに
505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 20:56:50.40 ID:NmARgbHIO [40/47]
久しぶりに唯と二人きりで過ごす時間は夢のようだった…アイスを食べ楽器屋に行きゲームセンターで遊ぶ、特別なことなんてない…ただの放課後
唯とこんなに楽しく過ごせるなら生徒会なんかに入るんじゃなかった…それとも唯が軽音楽部に入るのを止めていれば…あるいはその両方か
『澪がこのままいなくなれば軽音楽部はなくなるんじゃないか?』
突然誰かが心の中で呼び掛けるなにを馬鹿なことを…
『澪がいなくなって悲しむ唯に頼られたくないか?』
澪がいなくなったと決まった訳ではない。今日は偶然休んだだけに決まっている
唯「和ちゃんどうかしたの?もう家だよ」
和「ん?あはは、考え事してただけよ。それじゃ唯、また一緒に帰りましょ」
唯「うん、約束だよ」
澪は次の日も来なかった…その日はムギも来なかった。律によると親御さんは捜索願いを出したらしい…
513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 21:41:22.05 ID:NmARgbHIO [41/47]
仕事終わったのでペース上げます。
最早疑いようがない事実…原因はわからないが澪を拐ったのはムギに間違いない、あの夜から澪は監禁され続けているのだ。唯か律に電話番号を聞いて早く澪を解放するように忠告するべきだということはわかっていた…警察でも構わない事態になっているかもしれない
結局その日、私がしたのは空メールだけだった…なんて打てばいいのか見当も付かなかった…
その日も唯と一緒に帰った…澪がいなくなり少し不安げな唯を元気づけ、そんな唯に頼られる満ち足りた時間を過ごした
523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:30:49.07 ID:NmARgbHIO [42/47]
ミスに気づいた…が、大したことじゃないからそのまま行きます
澪がいなくなってムギが休んだ日、私は罪悪感に耐えきれなくなり今度は空メールではなく短い文章をムギに送った…これで澪を拐ったことを第三者に知られているという事実を認識してすぐに澪を解放してくれればいい。そんな思いだった…
『校舎の裏口が開いてたわよ』
直接的ではないにしろ私はなんらかの手を打った…それだけでだいぶ楽になった気がした
放課後、軽音楽部の顧問でもある山中さわ子先生とすれ違った…直接面識がある先生ではないが軽音部経由で何度か話をしたことがある程度だ。挨拶のついでに何気なく聞いてみる…
和「あの山中先生、秋山さんのことなんですが…」
さわ子「ごめんなさい、ちょっと難しいことだから教えてあげられないの」
和「すいません…これからお帰りですか?」
さわ子「軽音部の琴吹さんって知ってるかしら?あの子、今日はお休みなの。秋山さんのことで悩んでるんでしょうね…だから少しお話に行くのよ」
527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:39:42.52 ID:NmARgbHIO [43/47]
会釈をして山中先生を見送る…私が送ったメールでムギが改心したに違いない。澪を解放したいけどすべてを無かったことにはとても出来ない…だから山中先生に仲裁を頼んだのだろう
この時はそう信じて疑わなかった
翌日、生徒会経由で山中先生の死を知らされた。生徒には公開されていないが居眠り運転のトラックに跳ねられ引き摺られ死体は原形を保ってなかったらしい…
私は恐怖した…ムギはメールの送り主を山中先生と勘違いし始末したのだと直感的に理解した。すぐさまアドレスを変えて様子を伺うことにする
ムギは落ち込んだ素振りをしているものの全てが演技にしか見えなかった。あの女は普通じゃない…関わってはいけない存在に違いない
しかし関わらざるをえない、ムギの側には唯がいるのだから…
530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 22:51:01.47 ID:NmARgbHIO [44/47]
その日から私はムギを監視生活を送り続けた。唯を守る為だけに…
ムギが駅前でビラを配るとか言い出した時は耳を疑った…自分の監禁してる人物の所在地を探す人間がどこにいる。律は見ているこっちが痛々しく思えるくらい必死だった…こいつは律の一生懸命さを見てほくそ笑んでいるのだろう
全てを糾弾して白日の元に曝してやりたかった…でもそれはとても恐ろしいことであることも理解出来た
失敗したらどうなるんだ?澪みたいに失踪させられるのか、山中先生みたいにゴミクズのようになるのか
私は今はまだ堪えることにした
537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:07:51.04 ID:NmARgbHIO [45/47]
ムギに恐怖を抱いたまま季節は移ろい、いつしか澪の話題も出なくなった…いや、敢えて口にしなくなったのだろう
私は英語の辞書を借りるため唯のクラスを訪れた…その時ムギの肩に一本の髪の毛を見つけた。黒く長い…すぐに澪の髪の毛ではないかという猜疑心が芽生えた
頭を回転させる…ほんの少しの隙間に指を差し入れドアを開け化け物を日の光の下に引き摺り出す為の策を練る…自分が疑われては意味がない、軽い冗談のようなノリで…
予想以上だった…ムギは想定外のアクシデントに対処出来ずにいるらしい…このまま私の握っている証拠を突き付けるか?気分が高揚してくる
しかし気づいた時には律に殴り倒されていた…一気に冷静になる。調子にのって無謀な戦いを挑むところだった…
540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:25:02.55 ID:NmARgbHIO [46/47]
律は教室を飛び出し唯も追い掛けていった…完全に失敗だった。ムギから借りたハンカチに澪の髪の毛と思われるものを包んで教室をあとにする…これが澪の毛だとしたらきっと澪は生存しているのだろう
ムギに見つからない時を見計らって律を呼び出す。自分の持っている情報を全て伝えた…律は激昂してその全てを否定する。無理もないだろう、只の中傷にすぎないような突拍子もない情報ばかりなのだ。私だって信じられない
数日後、律からメールが来た。放課後ムギの家に行くらしい…やめさせる為に何度も携帯電話にかけ続ける…一度も律が出ることはなく呼び出し音ではなく繋がらなくなった…
546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/21(月) 23:41:57.24 ID:NmARgbHIO [47/47]
唯を自宅に泊めさせ思い出にふけていると深夜にも関わらず携帯電話が震えた…嫌な予感しかしない
和「……もしもし」
紬『もしもし和ちゃん、唯ちゃんそこにいるかしら~』
冷や汗が溢れる、心拍数が上がる、頭が真っ白になる…
和「いや、来てないけど…」
紬『あらそう、また嘘ついたのね憂ちゃん…嫌だわ』
憂…ちゃん…?なんで憂ちゃんの名前が出るの?
紬『嘘つきにはお仕置きが必要よね~今度はどうしようかしら』
や、やめてよ…唯はここにいるよ…憂ちゃんは嘘をついていないから…思ってはいても言葉には出来ない
機械の作動音が響く…モーターを軸に高速で回転するような音が…それに加え柔らかい物と少し硬い物を削るような音が続く…口を押さえられうまく発生出来ない叫び声と共に…
唯「何の音なの?和ちゃん…誰からなの?」
562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 00:04:03.87 ID:7fOS5fKeO [1/16]
紬『憂ちゃんってば健気で可愛いわ~でもね唯ちゃんが欲しいの、偽物じゃつまんないわ』
和「あんた無関係な人間を巻き込んで何がしたいんだよ!?」
紬『私、唯ちゃんたちをダルマにして地下に監禁するのが夢だったの…それだけなの、他の人はオマケにすぎないわ』
紬『すぐに迎えを出すわ…来なかったり下手な策を練るようなら憂ちゃんは殺すわ。じゃあね』ブチッ
和「ムギッ待って、待ちなさい」
唯「ムギちゃんだったの?」
唯は震えている。あんな化け物に唯を差し出すのか?そんなこと出来るわけない…
和「ねぇ唯…二人でどっか遠くに逃げちゃわない?」
唯「………」
和「私ね、いっぱい働くから…唯はなにもしなくていいの。アイスも好きなだけ買ってあげる。だから…」
唯が私を抱き締める…石鹸の香りと女の子の…唯の甘い匂い
唯「ごめんね和ちゃん、ホントは少し聞こえてたの。ムギちゃんが私を呼んでて行かなきゃ憂が酷い目にあっちゃうんだよね?だったら行かなきゃ」
610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 00:41:10.87 ID:7fOS5fKeO [2/16]
唯「ごめんね、和ちゃん…わたし憂のお姉ちゃんだから行かなきゃ…なんで憂を虐めるのかわかんないけどムギちゃんだって話せばきっとわかってくれるよ」
私はただただ泣き声を上げて子供のように唯の腰にすがり付いた。唯は少し困ったように微笑んで絡んだ私の手を優しくほどき立ち上がる…もう止めることは出来ない、かといって共に地獄に堕ちる勇気もない。唯はともかくムギにとって私の命などゴミクズに等しいのだから…
唯のいなくなった部屋で泣きじゃくっていると再び携帯電話が震える
和「……」
紬『斉藤から聞いたわ~唯ちゃんだけ向かわせたようね。私ね、そういった人間臭いのって大好きなの…もう会うこともないだろうし和ちゃんのことは忘れてあげる、唯ちゃんは私がずっと大事にしてあげるから心配しないでね』
パジャマのまま外へ出る…ふらついた足取りのまま唯の家に向かう…唯のいない生活なんて耐えられない。最期は唯の部屋で死ぬのもいいかもね…そんなことを考えていた
642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:07:24.58 ID:7fOS5fKeO [3/16]
憂ちゃんは余程抵抗したのだろう…リビングの家具は酷い有り様だった。床に落ちている包丁を拾い上げる、近くに鍵があることに気づく。急いで外に出る。車、鍵…車の運転なんてしたことない。でもどうせ死ぬんなら…急いで使えそうな物をかき集める
紬「唯ちゃんいらっしゃい…さ、来て来て」
唯「ムギちゃん…憂はどこなの」
紬「わかってるわ…すぐ会わせてあげる、斉藤!!憂ちゃんを運んできなさい」
運転手さんが病院で使うような担架を運んでくる…
唯「え?憂?嘘よね…」
全身に血が滲んだ包帯を乱雑に巻かれ微かに眼光が残る右目がわたしを捉えると明らかに指の数がおかしい左手を震えながら上げ担架の上の人物が短くなった舌べろで不自由そうに喋った
憂「お、おべぇひゃ」
唯「憂…本当に憂なの」ギュッ
紬「感動的な姉妹の再会だわ~…憂ちゃんね、凄く頑張ったのよ。いっぱい誉めてあげて欲しいわ。ここに連れてくるまでもすっごく暴れるしなかなか唯ちゃんの居場所を吐かないし…」
唯「ひ、酷いよムギちゃん」
紬「生きてるうちに再会も果たせたしお役御免よね」
震える憂の手があたしを突き飛ばす。次の瞬間真上に振り上げたムギちゃんの右手が憂の首辺りに力強く降り下ろされた。
659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:20:55.97 ID:7fOS5fKeO [4/16]
憂の頭は担架から転がり落ちる…担架の上に残された身体から作り物のように赤黒い血液が撒き散らされ、ムギちゃんはその中で嬉しいそうに微笑む…わたしは気を失った
塀や壁に擦りもしたがだいぶ運転になれた気がする…カーナビでおおよその位置を設定する
間に合うのか…たどり着けるのかもわからないのにな。計画なんてなにもない…それでも行くなんて自分でも愚かだとは思っている
。少しアクセルを強く踏んでみる、車はスムーズに加速する
頭が凄くぼんやりする…歯医者さんみたいな光源…身体は動かない。視界の端に白衣の人が見える…痛いのやだなぁ…ぼんやり考えているとまた意識が混濁して…
676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:39:29.06 ID:7fOS5fKeO [5/16]
この塀がずっと?…どれだけ大きいのか想像もつかないような敷地、着いたのはいいけどせめて入り口ぐらい見つけないと…
立派な門はあったけれどそんなとこから入ったんじゃムギの元に辿り着けるとは思えない…どうしよう…焦ってくる
塀の側に立つ。とても上まで届くような高さではない…いっそ正面から突っ込もうかしら。余裕がなくなり視線が泳ぐ
薄暗くてわからなかったが事故でもあったのか…車が塀に衝突したような跡をベニヤ板で補修してある。ベニヤ板をずらし最低限の道具を持って内側に潜り込む…おそらく生きては帰れないだろう
722 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 02:10:28.83 ID:7fOS5fKeO [6/16]
紬「うふふ…すっごい素敵な脚だわ~」ナデナデ
医者「紬お嬢様、脚を弄るのは後にして下され……処置に移りますぞ」
紬「わかってるわ……唯ちゃんもこれから可愛いペットになるのね。堪らないわぁ」ウットリ
和「……そんなことさせるわけないでしょ」
紬「!?」
振り返るムギの右目辺りに鉄パイプが直撃する…白衣に血が飛ぶ…容赦はしないそのまま肩の辺りに振り下ろす。くぐもった叫びを上げてムギが跪く……今度は背中に叩き込む
跪いたムギが足の甲に手術用のメスを突き立て捻る
痛みに耐えきれず叫び声をあげながら鉄パイプを振り下ろす、何度も何度も…
ムギの手から力が抜けたのを確認しメスを引き抜く
和「あなたもムギの味方なの?だったら容赦しないけど」
医者「お嬢様の味方には違いないが逆らうつもりは一切ない」
小柄な医者はおそれることなく言い切る
778 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 07:36:54.80 ID:7fOS5fKeO [8/16]
和「唯は連れて帰るわ……それに澪、律もね」
医者「……お嬢さん、欲張らないほうがいい。悪いことは言わないその娘さんだけで我慢しなさい」
和「そんなこと……はい、そーですね。なんて聞けるわけないじゃない」
医者「他の二人の命を諦めらきれないなら……お嬢様を今ここで殺しなされ」
和「出来ない……ムギは法で裁いてしっかり罪を償ってもらうわ」
とりあえず唯を車椅子に移し運び出す……ちゃんと元通りになるのかしら。自分の足の痛みなんか気にならない、ただただ唯が心配だった
エレベーターで地上に戻るとさっきの執事が待ち構えていた……
和「たぶん死んでないと思うわ…保証なんて出来ないけどね」
782 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 07:58:55.77 ID:7fOS5fKeO [9/16]
私は敷地内に潜り込み辺りを窺いながら明かりの方へ進み続けた……母屋の明かりとは別の離れた位置に明かりが灯っているのを見つける……
息を殺し足音を立てないように近づく…離れの辺りは何か重苦しい空気が漂っているような気がして脚がすくむ……唯を助けなきゃ……その義務感だけが重い脚を前に進ませる
玄関にドアノブに手をかけようとする…
斉藤「お友達を迎えに来られたならそちらの入り口は推奨出来かねますな」
不意に後ろから声をかけられ反射的に手に持っていた鉄パイプを声の方向へ振り回す……鉄パイプは空を切り体勢を崩す。同時に右手を捻りあげられ鉄パイプを落とす、声の主は捻った手を離すと片手で私の首根っこを掴み持ち上げる
呼吸が出来なくなり脚をばたつかせる、両手は首を掴む腕を離させるように抵抗するがびくともしない……もう終わりなの?まだムギのところにも辿り着いてないのに…苦しさと悔しさで涙が溢れる
786 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 08:12:36.17 ID:7fOS5fKeO [10/16]
意識が遠退く…口からよだれが垂れ手足が重くなる…
気を失う瞬間、首を掴んでいた手の力が抜け地面に落とされる、膝から崩れ落ち全力で呼吸をする……涙と鼻水とよだれでグシャグシャになった顔を恐る恐るあげると執事のような老人がにこやかに笑った
斉藤「ようこそおいでなさいました。わたくし琴吹家の執事、斉藤と申します。失礼ですが真鍋和様でおられますか?」
小さく頷くと斉藤と名乗る執事は手を伸ばし私を引き上げる……意味がわからず立ちすくむ
斉藤「平沢様をお迎えに来たのですね?まずはこちらへどうぞ」
790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 08:41:11.69 ID:7fOS5fKeO [11/16]
離れの玄関から裏口へ案内される……斉藤の言うには玄関のドアノブを回すとムギに侵入したことがバレてしまうらしい。監視カメラもあるそうだがおそらくムギは他のことに気をとられチェックしてないとのことだった
離れの中に入るといきなり吐き気がしてきた…生臭い鉄の、いや血の臭い少し進むと担架の上に血が滲んだ白いシートが被せてあった。人の形にふくらんだそれは確認しなくとも中身がわかった…澪?律?それとも憂ちゃん?確認は出来ない。辺りは赤黒い液体で染められていた
担架から続く血痕をたどり奥へ進むと突如壁に遮られ道がなくなった
斉藤さんの方へ視線を写すと近くの壁を触っている
壁が静かにスライドして道が生まれる
斉藤「平沢様とお嬢様はこの先の地下におられます。平沢様を連れ戻されることに関しては邪魔をいたしません。ですが万が一にでも真鍋様がお嬢様の命を奪われるようでしたら……」
細い目を薄く開け私を睨み付ける…闇より深い感情の見当たらない瞳に恐怖する
797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 09:03:47.28 ID:7fOS5fKeO [12/16]
和「……なぜ手助けをしてくれるの?私は紬の敵なのに」
素朴な疑問を口にする、目を閉じにこやかに斉藤は答える
斉藤「お招きする車の中で平沢様は何度も言われました『和ちゃんがきっと助けに来てくれる、わたしはそれまで待ってればいいだけ』と…そして真鍋様が現れました」
和「……唯」
斉藤「そして思いました。真鍋様なら同時にお嬢様を救って下さる方になるかもしれないと…」
和「買いかぶりしすぎよ…それに虫が良すぎるわ」
斉藤「でしょうな…無理はありません。ですがきっかけになればいいのです。ですからお嬢様の命は奪われないよう努々ご注意下さいませ」
和「……約束は出来ないけど努力はするわ」
870 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 11:00:32.42 ID:7fOS5fKeO [13/16]
斉藤「お車の用意は出来ています、さぁ病院へ向かいましょう…真鍋さまもお怪我をされているようですし…」
和「斉藤さん、唯を…唯をお願いします。私はまだしなくちゃいけないことが残ってるので…」
返事を待つことなく踵を返す…ドアが閉まりエレベーターが動き出す…地下に付き用心して辺りを探る
各部屋の窓には小窓が付いており中をうかがう…目を背けたくなるような道具が並べてある部屋、生活臭のない牢屋のような部屋…そして女の子の部屋を象徴するかのような室内の中に捜している人物がいた…
鍵がかかっているかと思いきやドアは普通に開く…ベッドに近づくとその子もこちらに気づく…秋山澪…
和「澪…」
澪「和、和なのか?ムギッ、やめてくれッ」
背後の気配に気付き反射的に前方に転がる、背後に潜んでいたムギが凶器を振り下ろす!!ベッドの側にあった機械が音をあげ破壊される…作り物みたいに火花をあげムギが凶器を引き抜く…
ムギ「ダメじゃない澪ちゃん…せっかく和ちゃんにお返ししようと思ったのに~」
太めの眉を下げて可愛らしく手を上下させる…これまでのムギだったら見ていて和みもしただろうか…
金髪は血に染まりボリュームをなくしベタリと貼り付いて窪んだ眼窩から汚ならしい体液を垂れ流し女子高生にはおよそ不釣り合いな形状の刃物を提げたムギは邪悪な笑みを浮かべていた
911 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 12:46:16.39 ID:7fOS5fKeO [14/16]
奥歯がカタカタ鳴りながらも歯を食いしばり鉄パイプを構える。ムギは嬉しそうに目を細め舌を少し出し唇を嘗める…刹那
鉄パイプはムギの一撃で弾き飛ばされ床を転がる、衝撃で尻餅をつく…ムギの攻撃を転がって避ける。息をつく間もない連撃を逃げ続ける…一方ムギは余裕を持って狩りを楽しんでいるようにも見える
澪「ムギ…律の様子がおかしいんだ…」
さっきは気づかなかったが澪と律は同じベッドに寝かされているらしい…律には体のあちこちに管やら電極がついていてそれらはムギによって破壊された機械に繋がっていた。澪の呼び掛けにムギが顔を向ける
その瞬間を狙い中腰の格好でタックルをかます。ムギが凶器を振り下ろすが体勢が悪いせいかさっきまでの威力がない、構わず力を込める
ムギの背中が機械にぶつかり火花が飛ぶ…危険に気づいたのか凶器を捨て両手で抵抗する。が、勢いは換わらずムギもろとも火花を放つ機械を押し倒す
一層激しく火花が散り感電しているのだろうか…ムギが気味悪い速さで痙攣する
926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 13:39:59.34 ID:7fOS5fKeO [15/16]
和(終わったのか?)
放心状態から我に返り澪と律に駆け寄る
澪は四肢を失った姿ではあったが…なぜかそれはとても神聖なもののような…完成された美を感じた
一方律は四肢は残っているものの部分的に血の滲んだ包帯を巻かれ寝かされていた…千切れ飛んだチューブや電極が痛々しい。あの機械が律の命を維持する装置だとしたら
悔しさに涙が溢れる…嗚咽が漏れ…澪にすがり付く。澪は慈愛に満ちた表情で私を慰めてくれた
澪「いいんだ、和…助けに来てくれたんだろ?ありがとう嬉しいよ。フフッ…お前は本当にいいやつだよな」
和「違う、私はそんな誉められるような人間じゃないッ…あの日澪が、澪が連れ去られたあの日…それだけじゃないさわ子先生も律も…」ヒックヒック
澪「いいんだ、和……それ以上言わなくてもいい。なぁ…それよりお願いがあるんだけど」
和「なに?私に出来ることなら何でも言って」
澪「何でもか?」
和「約束する、何でも言って!!」
澪「そっか……じゃあ私を殺してくれないか」
930 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 14:00:15.98 ID:7fOS5fKeO [16/16]
理解出来なかった…助かるのに死を望む?確かに不自由になるに決まってる…好奇な目で見られるだろう
和「澪…そんなこと言わないでよ。大丈夫、澪が嫌がるような奴らは私が追い払ってあげるから。唯もきっと協力してくれるわ」
澪「そうだな、そうしてくれると嬉しいな」
和「だから死にたいなんて言わないで一緒に帰りましょ?」
澪「和…私はね、律を一人ぼっちにしたくないんだ」
和「………」
澪「あの世がもしもあるならムギはきっと律とは一緒のところには行けないだろうな…律を一人にしたら天国は滅茶苦茶になっちゃうからなッ…あいつがバカした時の為に私も一緒に行かなくちゃな」
馬鹿げている…死語の世界なんて不確かな物の為に…でも馬鹿になんて出来ない、もし澪と同じ境遇で律を唯に置き換えたら……澪の首に手をかける。覚悟を決めたのか澪が目を瞑る
澪「痛いのとか苦しいのは嫌だからな……一思いにやってくれよ」
力を込める…澪の目が開き口元が歪む…顔が赤くなり…目に涙が貯まっていく
紬「うふふ……じゃあみんなで死んじゃおうかしら」
934 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:19:17.02 ID:7fOS5fKeO
思わず澪から手を放す…澪は大きく咳き込み口の端から涎が垂れる
澪「ムギ……生きてたのか。和もぅいい、行ってくれ」
ムギは倒れたままの姿でスカートのポケットから小さい小箱を取り出した…箱には小さなボタン…嫌な予感しかしない。
澪「和、さっきの願いはなしだ…私を置いて逃げてくれ…頼む」
ムギがボタンを押す…すぐにどうこうなる訳でもないらしく部屋の出口へ向かう。ムギの脇を通り抜ける瞬間、寝返りをうつようにムギが足を掴む…盛大に倒れる、掴まれてない方の脚でムギの顔面を踏みつける…そんな中でもムギは恍惚の表情を浮かべ続けている
ムギ「アハッ…いいわ和ちゃん、キュンキュンくるわ~」
変態め、埒があかない…辺りを見回し手を伸ばせば届く距離に禍々しい武器が光る…迷わない、武器を握り上体を起こしムギの腕に振り下ろす。鈍い感触が伝わり拘束が解ける…迷わず部屋から飛び出し地上へ向かう
942 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:38:59.74 ID:7fOS5fKeO
紬「最後のは凄く良かったわ~気持ち良すぎて意識が飛んじゃったみたいなの」
左腕から血を垂れ流し血の泡を噴きながらムギが近づいてくる。あんなに血をみるのが怖かった私だったがホラー映画に出てきそうなムギを見ても何故か怖くはなかった。部屋の壁にヒビが入り今にも崩れそうだ
ムギ「生き埋めとか焼け死ぬのは辛そうね」
澪「そうだな、ムギ頼めるか?」
ムギの手に凶器がある…目を瞑る…
刃が首に食い込み胴体と切り離されるまでの瞬間に夢を見た。いつもの放課後いつもの部室
律「遅いぞ澪~」
澪「悪い悪い……みんなは?あれ、憂ちゃん?」
憂「こんにちは澪さん」
律「さわちゃんもすぐに来るけどなんか反省文書かされてるみたいだぜ?生前の行いが悪いせいだよなッ」
憂ちゃんはクスクス笑っている。律も私も釣られて笑う…いつか唯もここに来るだろう。ずっと先の未来、ムギの罪も洗い流されここに来れたならまた四人でバンドが組めたらいいな…楽しみだな
951 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 14:58:07.93 ID:7fOS5fKeO
建物から出た後の記憶はあまりない、崩れ落ち燃えさかる建物から少しでも離れるようによろめきながら進む……サイレンが聞こえる、土の上に突っ伏して目前に誰かいるような気がした…そして意識をなくす
次に目が覚めたらそこには白い天井があった。起き上がろうとすると激痛が走る、可能な限り辺りの様子を探るとそこは病室らしかった。
意識を取り戻したのがわかるのか医師と看護師が現れた…そういえば地下にいたあの医者はどうしたんだろう、問診の内容よりそんなことばかりが気になった
あの後、病院に運ばれた私は三日ほど眠り続けたらしい。病院から連絡を受けたのか刑事を名乗る中年たちが訪れた
あの建物から発見された遺体は四名分、一階の担架にあった憂ちゃん、そして地下の部屋にあった遺体は焼け焦げて損傷が酷かったが検死の結果で澪、律、ムギと判断されたらしい。ムギの遺体は燃え盛る火から二人を庇うように両手で抱き締め覆い被さっていたという
世界的な財団のスキャンダルにテレビはこぞって特番を組んだが不自然な程に騒ぎは鎮火していった
962 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:33:06.87 ID:7fOS5fKeO
なんとか松葉杖で動けるようになった私は唯の病室に向かう…処置が早かったせいかまったくの元通りとはいかないが時間をかければ日常生活には支障が出ない程度には回復するらしい
個室とはいえ一般病室の私と違い唯はまだ集中治療室にいた。窓をノックする、気づいた唯がこっちを向き笑顔で手を振る
悲しくないはずがないのに無理に元気を装う唯を見るのは痛々しい…手を振り返し病室を後にする。
大丈夫、時間をかけていけば二人でまた心の底から笑い合える日々が遅れるはずだから
おしまい
963 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:34:05.90 ID:7fOS5fKeO
夜中にふと目が覚める…看護師の見回りだろうか?廊下に足音が響く。電灯で部屋の中が照らされる
眩しさを不快に布団を頭まで被り瞳を閉じる
電灯が消え足音が近づく…別に珍しいことではない、最近まで面会謝絶するほどの怪我を負っていたのだから…まぁすぐに出ていくだろう
続けて滑車が付いた担架が入ってきた…異変に気付き布団をめくる。腕を押さえつけられすぐさま注射を射たれる。意識はあるのに身体の自由が効かなくなる。担架に移され廊下を運ばれる
暗闇の中で目を凝らす…わざわざナースの格好をしたムギと白衣をまとった斉藤さん
968 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:35:45.69 ID:7fOS5fKeO
ムギ「和ちゃん、怖がらなくていいわ~」
和「ムギ…なんで生きてるんだ?じゃああの死体は?」
ムギ「うふふ、後で教えてあげるわ~」
和「唯、唯も拐うのか?絶対にさせないからッ」
ムギ「唯ちゃん?うふふ…もうペットはいらないわ~今度は親友が欲しいの…斉藤から唯ちゃんと和ちゃんの絆を聞いたの。そういうのすっごく憧れるわ。和ちゃん…私達きっと親友になれると思うのよ。これからはずっと一緒…楽しみだわ~ね、和ちゃんもそう思うでしょ?」
狂っている…叫びたいのに…怖くて声をあげられない…夢なら早く覚めて…そう願った
本当のおしまい
973 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/22(火) 15:38:41.62 ID:7fOS5fKeO
おわりです。ほんとうにぐだぐだとすみませんでした。御支援、御批判、御叱りは次回の糧にさせて頂きます。保守の方にも重ね重ね感謝致します
あと本当にvipは変態ばっかりだな
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