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唯「妹という名の悪魔」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:29:56.32 ID:bqwJEE0M0 [1/15]
 突然ですが、平沢唯人生最大のピンチです 

 え、どうしたんだって?

 実は憂を怒らせてしまいました。 

 なぜかというと憂のアイスを食べてしまったからです。

 そりゃもちろん憂は自分のアイスを食べられたぐらいで怒りません。

 だけど今回私が食べたアイスは、本来私と一緒に食べるはずだったアイスなのです。

 憂は今日の朝からずっと「お姉ちゃんとアイス♪お姉ちゃんとアイス♪」と笑顔でつぶやいてました。

 それほど楽しみにしてた憂のアイスを食べてしまいました。

 だってしょうがないんです。

 今日はムギちゃんがお休みでティータイムがなかったから糖分が足りなかったんです。

 家に帰ってきた私は無我夢中で二つのアイスをペロリと平らげてしまいました。 

 でもこんなことになるなら……と私は少しの前の自分を思いっきりひっぱたいてやりたいほど後悔しています。

 誰か、助けてください。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:36:51.57 ID:bqwJEE0M0
 ガチャリとドアが開きます。

憂「……」

 出ました、悪魔です。

 見た目はなでなでペロペロしたいほどの超かわいい女の子ですが、今の私から見れば悪魔そのものです。

 私は布団から顔だけ出して生まれたての子牛のようにガクガクと震えながら悪魔のほうを弱く睨みます。

憂「お姉ちゃん、ご飯だよ」

 その言葉を聞いた瞬間私は泣きそうになりました。

 いつもなら「お姉ちゃ~んご飯だよぉ♪今日はお姉ちゃんが大好きなのいっぱい作ったからね♪早く降りておいで♪」と言ってくれるはずです。

 それが「お姉ちゃん、ご飯だよ」ですよ?

 いつ食われてもおかしくない。

 そんな不安が私の頭をよぎりました。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:43:15.54 ID:bqwJEE0M0
唯「う……うん」

 私は精一杯の勇気をだし小さな、小さな声で返事をしました。

憂「ん」

 憂はそう憎しみのオーラ満々の応答をし、階段を下りていきました。

 心なしかいつもの十倍は階段の音が大きく聞こえます。

 憂に会いたくない。

 だけどご飯は食べたい。

 命と食欲、一体どちらを優先すれば良いのでしょうか。

 ……。

唯「行こっと……」

 食欲でした。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:47:56.58 ID:bqwJEE0M0
 部屋を出ると目の前には階段がありました。

 十年以上上り下りしている馴染みの階段。

 しかし今の私には絞首台へと続く十三階段より絶望的に見えました。

 ギッ……ギッ……ギッ……。

 一段下りるごとに寿命が五年は縮んでいる気がします。

 半分ぐらい下りた頃でしょうか。

 下からはとても良い匂いがしてきました。

 間違いありません、今夜は肉じゃがです。

 あのホクホクとしたじゃがいもと柔らかいお肉がかもし出すハーモニー。

 私は死への十三階段を勢い良く下りてしまいました。

 それが悪魔の手招きとも知らずに。

9 名前:訂正。[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:49:24.41 ID:bqwJEE0M0
 部屋を出ると目の前には階段がありました。

 十年以上上り下りしている馴染みの階段。

 しかし今の私には絞首台へと続く十三階段より絶望的に見えました。

 ギッ……ギッ……ギッ……。

 一段下りるごとに寿命が五年は縮んでいる気がします。

 半分ぐらい下りた頃でしょうか。

 下からはとても良い匂いがしてきました。

 間違いありません、今夜は肉じゃがです。

 あのホクホクとしたじゃがいもと柔らかいお肉がかもし出すハーモニー。

 私は食欲を優先するあまり、死への十三階段を勢い良く下りてしまいました。

 それが悪魔の手招きとも知らずに。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 02:55:30.53 ID:bqwJEE0M0
 階段を下りきると、見なれた光景が目の前に広がりました。

 いつものテーブル。

 イス。

 食器。

 そして、妹の憂。

 いえ、今は悪魔と言うべきでしょうか。

憂「お姉ちゃん、早く座って?」

 まるで取調室で恐い恐い刑事さんが殺人犯に言うような威圧感で憂は私にイスへ座るよう命令しました。

唯「……うん」

 私が座るとイスはギシリと音を立てます。

 これはただのイスではなく、電気イスではないのだろうか。

 そんな気さえしてくる絶望感。

 犯罪を犯していないただの女子高生である私がなぜこう何度も死刑の体験をしなくてはならないのでしょうか。 

 ああ神様、お願いです。

 私を死刑因からただの女子高生に戻してください。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:00:10.27 ID:bqwJEE0M0
憂「じゃあ食べよっか」

唯「そ、だね」

憂「いただきます」

唯「いただきます……」

 テーブルの上に広がるのは宝石のようにキラキラとしたおかずの数々。

 いつもの私ならなりふり構わず口にかっこむことでしょう。

 だけど今は目の前に悪魔がいます。

 私は目を合わせないように伏せ、口にかっこんでいきます。 

 ああこれが最後の晩餐というものか。

 いくら美味しい物でも、美味しく感じない。

 ……ごめんなさいすごく美味しいです。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:06:54.01 ID:bqwJEE0M0
憂「お姉ちゃん、美味しい?」

唯「美味しい……よ」

憂「そっか」

 もはや憂がどのような表情で私に質問をしてるのかさえわかりませんし、わかりたくもありません。

 そして私はツヤツヤと光る白米を食べようとした時気づいてしまったのです。

 ご飯が……並盛り。

 憂は料理ができるようになってからずっと私のご飯は大盛りにしてくれました。

 それが、並盛り。

 どこからともなく汗が出てきます。

 私は今にもでそうな涙を必死にこらえてご飯を三杯おかわりし、足早に自分の部屋へ戻りました。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:13:42.32 ID:bqwJEE0M0
唯「どうしようどうしようどうしよう!?」

 部屋のドアを閉めると私はやっとお腹から声を出すことができました。

唯「そうだ、電話!」

 幼馴染の和ちゃんに電話をしよう。

 幸い、憂も私同様和ちゃんのことは大好きだ。

 和ちゃんと一緒に土下座をすればきっと憂だって許してくれるはず。

 他人に頼る自分に情けなさを感じながらも、私は携帯電話を探しました。

唯「あ……」

 携帯は、下の階のリビング。

 つまり、悪魔城の中でした。

唯「あぁ……」

 私はもう何も考えられなくなり、地面にペタリと座り込んでしまいました。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:22:12.47 ID:bqwJEE0M0
 それから何分たったでしょうか。

 私が布団の上で自分の今までの愚行を思い出していると、ドアがゆっくり開きました。

憂「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ」

 悪魔、再来。

 いつもの憂なら「お姉ちゃんお風呂わいたよ♪それでね……洗いっこしたいな、なんて。えへへ♪」とか言ってくれるはずなのに。

唯「はい……」

 もはや私は奴隷のように素直に応答することしかできませんでした。

 お母さん、お父さん。

 今まで私を育ててくれてありがとうございました。

 私、平沢唯は今日この世を去ると思います。

 お墓参りの際はアイスを持ってきてくださいね。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:33:22.86 ID:bqwJEE0M0
 私はゾンビのような足取りで、絞首台の階段を下りてお風呂場へ行きました。

 脱衣所の鏡に映る私がいつもより小さく見えます。

 おそらく自分の姿を見るのもこれが最後。

 私は衣類を脱ぎ、改めて自分の裸体をまじまじと見ました。

唯「一度でいいから、おっぱいで谷間……作りたかったなぁ」

 私は自分の体に不満をぶつけ、湯船に入りました。

唯「あちっ!」

 お風呂の温度を見ると四十三度。

 いつもなら四十二度なのに……。

 悪魔は私を煮てやろうと企んでいるのでしょうか。

唯「うっ……」

 熱くて入りたくない。

 けどせめて綺麗な体で死にたい。

 私はぐっとこらえ、火傷してしまうほどのお湯へと肩まで入りました。

唯「ふぃー」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:43:22.00 ID:bqwJEE0M0
唯「んー、気持ちいい」

 私が鼻歌交じりで人生最後の快楽へ身を委ねていると風呂場のドア越しに人影が見えました。

 悪魔、再再来。

憂「お姉ちゃん、着替え置いておくね」

唯「ん……ありがと」

 モザイクがかかってわからないけど、きっと憂は恐ろしい形相をしてることでしょう。

 そのまま無言で憂はリビングの方へ戻っていきました。

 いつもの憂なら三十秒置きに「お姉ちゃん湯加減はどう?」「背中流してあげよっか?」「私も入っちゃおっかな……」と言ってくれるはず。

 そしてその優しかった憂はいまごろリビングで風呂場から出た無防備な私をどうやって痛めつけてやろうか、と考えているはずです。

 もうこのまま湯船で一生を過ごして生きたいと心から思いました。

 しかし風呂上りの牛乳を飲みたいので私をさっさと体を洗い、湯船からあがりました。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:50:23.00 ID:bqwJEE0M0
 私はお風呂から上がり、憂の用意してくれたパジャマと言う名の死衣装を着てリビングへ向かいました。

 そして冷蔵庫を開けて牛乳をコップに注ぎ、それをいっきに飲みます。

唯「ぷはー!」

 生きていてよかったと思える瞬間です。

 そして同時に、最後の生きた実感がした時でした。

 牛乳の美味しさのあまり気づかなかったのです。

憂「……お姉ちゃん」


 悪魔が、私の背後にいたことを。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 03:56:01.17 ID:bqwJEE0M0
 お母さん、お父さん。

 いろいろ馬鹿する私をこんなに大きく育ててくれてありがとう。

 和ちゃん。

 小さい頃から迷惑かけてばっかりでごめんね。

 りっちゃん。

 りっちゃんのおかげで私、ギー太に出会うことができたんだよ。

 澪ちゃん。

 丁寧にギターのこと色々教えてくれて、ありがとうね。

 ムギちゃん。

 いつも笑顔でやさしくて接してくれて、そして美味しいお菓子を食べさせてくれてありがとう。

 あずにゃん。

 私、初めての後輩があずにゃんみたいなすごく可愛い子で本当によかった。

 さわちゃん。

 そろそろ結婚を考えたほうがいいと思うよ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 04:01:10.18 ID:bqwJEE0M0
憂「……お姉ちゃん」

唯「……はい」

憂「ごめんなさい、は?」

唯「……」

唯「……二人で食べようって言ったのに……一人で全部食べちゃって……」

唯「ほ゛ん゛どうに゛……ごべんな゛ざい゛!」

憂「……いいよ♪」

 
 その夜私は、憂と一緒に寝ました。



終わり。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 16:06:58.06 ID:nBIMAjlcO [1/17]
突然ですが、平沢憂人生最大の失望です

え、どうしたんだって?

実はお姉ちゃんに怒っています。

なぜかというと、お姉ちゃんがアイスを食べてしまったからです。

そりゃもちろん自分のアイスを食べられたくらいでは怒りません。

だけど今回お姉ちゃんが食べたアイスは、本来私と一緒に食べるはずだったアイスなのです。

私は今日の朝からずっと「お姉ちゃんとアイス♪お姉ちゃんとアイス♪」と笑顔でつぶやいていました。

それほど楽しみにしてた私のアイスを食べてしまいました。



どうしてなんでしょう。

いつもだったら「憂ー、一緒に食べようねー、えへへ」なんて言って私のほうが帰るの遅くなっても待っててくれるのに。

家に帰ってきた私は無造作に置かれた二つのアイスの残骸を見て絶望してしまいました。 

 でもこんなことになるなら……と私はもう少し早く学校でおしゃべりなんかしないで、帰ってくればよかったと、ちょっと前の自分を軽くひっぱたいてやりたいほど後悔しています。

もう、どうしてくれましょう。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 16:20:28.30 ID:nBIMAjlcO [2/17]
 夕飯ができたので、お姉ちゃんの部屋のドアを開けました。

憂「……」

 なんか、布団の中でうずくまっています。顔は出ていますが。

 見た目は抱きついてぎゅっぎゅしたいほどの超かわいい女の子ですが、今の私から見れば解体前の豚そのものです。

 お姉ちゃんは布団から顔だけ出して生まれたての子馬のようにガクガクと震えながら私のほうを弱く見ます。

憂「お姉ちゃん、ご飯だよ」

 その言葉を聞いた瞬間お姉ちゃんは泣きそうになりました。

 いつもなら「お姉ちゃ~んご飯だよぉ♪今日はお姉ちゃんが大好きなのいっぱい作ったからね♪早く降りておいで♪」と言ってあげるんだけど。

 それが「お姉ちゃん、ご飯だよ」ってさらっと言っちゃったもんだから。

 私が本当に怒ってるのを確信したのでしょう。

 そんなお姉ちゃんが私にはいつもより可愛く見えてしまったのです。







78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 16:30:32.54 ID:nBIMAjlcO [3/17]
唯「う……うん」

 お姉ちゃんは精一杯の勇気をだし小さな、小さな声で返事をしました。

憂「ん」

 私は「怒ってるんだよ、本当に怒ってるんだからね。」と憎しみのオーラ満々の応答をし、階段を下りていきました。

 心なしかいつもの十倍は階段を降りる音が大きくなってしまいました。

きっとお姉ちゃんは私に会いたくないでしょう。

 まさかこんなに怒るとは思ってもいなかったでしょう。

 今日はお姉ちゃん、一緒に食べないと思いました。

 ……。

たったったったっ

 もう来ました。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 16:52:12.38 ID:nBIMAjlcO [4/17]
 お姉ちゃんの部屋を出ると目の前には階段があります。

 十年以上上り下りしている馴染みの階段。

 そこで少しは躊躇するんだろう、やっぱり私にあわす顔なんかないとか、少しは考えてくれるのかなと思いました。

 たっ……たっ……たっ……。

 やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんでした。さすがに、いつもよりは降りるテンポがゆっくりだったような気もしなくもないですが。

 半分ぐらい下りた頃でしょうか。

 お姉ちゃんは大好きな匂いを嗅いだのでしょう。

 そうです、今夜はお姉ちゃんの大好きな肉じゃがです。

 あのホクホクとしたじゃがいもと柔らかいお肉がかもし出すハーモニー。

 お姉ちゃんは天国への階段を勢いよく降りた気分だったのでしょう。いつものように。


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 17:05:38.64 ID:nBIMAjlcO [5/17]
 階段を下りたお姉ちゃん、いつものように笑顔になりました。

 いつものテーブル。

 イス。

 食器。

 そして、妹の私。

 最後に私を見たお姉ちゃんは、すぐに笑顔が消え、動きが止まりました。

憂「お姉ちゃん、早く座って?」

 やっぱり、作りたてを食べるのなら、暖かいうちがいいじゃないですか。でも、やっぱりなんか納得できないので自然と声に威圧感が出てしまいました。

唯「……うん」

 お姉ちゃんはいつもより静かにイスに座りました。

 やっぱり、物凄く怒られるとか、後ろから刺されるんじゃないかとか。

 そんな気さえしてくる絶望感を漂わせながらお姉ちゃんはイスに座りました。

 そうだよ、お姉ちゃん。もっとちゃんと反省して。私、今日お姉ちゃんとアイスを一緒に食べるの、すごくすごく楽しみにしていたんだよ。 それなのに、お姉ちゃんは私に気も知らないで、それも全部食べちゃうなんて。

 ああ神様、お願いです。

 お姉ちゃんが私の目を見てちゃんと謝りますように。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 17:12:25.00 ID:nBIMAjlcO [6/17]
憂「じゃあ食べよっか」

唯「そ、だね」

憂「いただきます」

唯「いただきます……」

 テーブルの上に広がるのはいつものようにお姉ちゃんの為に作ったおかずの数々。

 いつものお姉ちゃんならなりふり構わず口にかっこむはずなのに。

 だけど今は目の前にはいつもと違う私がいます。

 お姉ちゃんは私に目を合わせないように伏せ、口にかっこんでいきます。 

 ああこれが私に謝る覚悟を決めたお姉ちゃんというものか。

 美味しい?お姉ちゃん。いつもみたいに作ってあげたんだよ。でも、美味しく感じないかな。私がこんな風だったら。

 ……ああ、すごく美味しいそうに食べています。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 17:23:34.59 ID:nBIMAjlcO [7/17]
憂「お姉ちゃん、美味しい?」

唯「美味しい……よ」

憂「そっか」

 私はいつものように聞いただけなんですが、お姉ちゃんの返事はどこか心許ない、力の無い返事です。

 やっぱり、夕飯の直前にアイスを二つも食べたんだから、やっぱり少しはお腹が苦しいよね。大丈夫だよ、お姉ちゃん。そうだと思って、いつもより量は少し減らしてあるから。

 ご飯は……並盛り。

 私は料理ができるようになってからずっとお姉ちゃんのご飯を大盛りにしていました。

 だけど、並盛り。

 なんだかお姉ちゃんの様子がおかしいです。 汗がいっぱい出ています。

 お姉ちゃん、そんなに無理しなくてもいいんだよ?そんな涙目になってまでおかわりとか無理にしなくていいんだからね。

さっきまでアイスを二つも食べたの、私が一番よく知ってるんだから。


お姉ちゃんはごはんおかわり3杯もすると、足早に自分の部屋に戻ってしまいました。

いくらなんでも、お姉ちゃんでも食べ過ぎだよ?

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 17:35:15.95 ID:nBIMAjlcO [8/17]
憂「もう、お姉ちゃんったら」

 空っぽになった食器を片付けながら、ふと我に帰りました。お姉ちゃんは結局誤ってくれませんでした。

憂「まったく……もう。」

 これからどのタイミングで謝りにくるのかな?

 お姉ちゃんだって、いつまでもこんな気まずい雰囲気は嫌だろうし、私だって嫌だよ。

  私の事、どうでもよくなったから一人で勝手にアイスを食べちゃったの?

 自分で悲観的になりすぎるとは思いながら、洗った食器を棚に戻しました。

憂「あ……」

 お姉ちゃんの携帯を発見しました。きっとアイスを食べている時に置いたままにしたんでしょう。

 

憂「お姉ちゃん、忘れも……」

 私はやっぱりお姉ちゃんに声をかけるのをやめました。携帯を取りにくるのが、謝ってくれるきっかけになればいいと思って。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 17:47:28.68 ID:nBIMAjlcO [9/17]
それから一時間くらいリビングで待っていたけど、お姉ちゃんは携帯を取りに戻ってきませんでした。

 お姉ちゃんを待っている間、準備したお風呂のお湯が沸いたので、お姉ちゃんを呼びに行きました。

憂「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ」

 
 いつもの私なら「お姉ちゃんお風呂わいたよ♪それでね……洗いっこしたいな、なんて。えへへ♪」とか誘うんですが、今日は純に頼まれたビデオの録画がもうすぐなので、誘えませんでした。

唯「はい……」

 お姉ちゃんは力の無い返事を返しました。やっぱり、私が怒ってる事に対して堪えているようです。

 お母さん、お父さん。

 お姉ちゃんがこんなになってしまったのは、二人のせいじゃないからね。

 私、平沢憂は今日からお姉ちゃんを厳しくしたいと思います。

 
泣き付いてきても、甘やかさないでくださいね。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:09:43.26 ID:nBIMAjlcO [10/17]
 お姉ちゃんはヨッパライのような足取りで、階段を下りてお風呂場へ行きました。

 脱衣所でなにやらもぞもぞしているお姉ちゃんが見えたので、ちょっと覗いてみます。

 なにやら全裸になって、腕をよせて胸の谷間を作ろうとしていました。

唯「一度でいいから、おっぱいで谷間……作りたかったなぁ」

 お姉ちゃんはなんかぶつくさいいながら、お風呂場に入っていきました。

唯「あちっ!」

 熱かったかな?ごめんね、お姉ちゃん。お腹冷やさないように、今日はいつもよりちょっと熱くしたんだよ?でも、アイス二つも食べてお腹が冷えていないか心配で心配で……。ちょっと我慢して入ってね。




92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:19:59.42 ID:nBIMAjlcO [11/17]
 私がお姉ちゃんの着替えを持って脱衣所に行くと、いつも通りの鼻歌が聞こえてきました。どうやらお姉ちゃんは湯ぶねに浸かれたようです。


憂「お姉ちゃん、着替え置いておくね」

唯「ん……ありがと」

 モザイクがかかってわからないけど、きっとお姉ちゃんは今にも昇天しそうな顔で湯ぶねに浸かっていることでしょう。

 私はそのままリビングの方へ戻りました。

 いつもの私なら三十秒置きに「お姉ちゃん湯加減はどう?」「背中流してあげよっか?」「私も入っちゃおっかな……」と誘っているのですが。

 純に頼まれた録画の編集をしてあげないといけないので、誘う事ができませんでした。

 ううん、甘やかしちゃいけないんです。さっきそう決めたばかりなんですが……。お姉ちゃん、せめてゆっくり浸かってね。

 って思った矢先、お姉ちゃんはお風呂場から出てきました。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:26:07.54 ID:nBIMAjlcO [12/17]
 お姉ちゃんはお風呂から上がり、私の用意したパジャマとを着てリビングへやってきました。

 そして冷蔵庫を開けて牛乳をコップに注ぎ、それをいっきに飲みます。

唯「ぷはー!」

 いつものお姉ちゃんの、お風呂上がりの最高の笑顔です。

 それを見た私は、ため息をついてお姉ちゃんの後ろに立ちました。

 お姉ちゃん、私が声をかけるまで気づかなかったみたいです。

憂「……お姉ちゃん」


 そう、今まで怒っていた私の事を。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:37:47.23 ID:nBIMAjlcO [13/17]
 お母さん、お父さん。

 私にこんな素敵なお姉ちゃんを本当にありがとう。

 純ちゃん。

 ビデオの録画くらい自分でやってね。

 梓ちゃん。

 お姉ちゃんの事、頼りない先輩かも知れないけど、これからもよろしくね。

 律さん。

 お姉ちゃんとあんまりはしゃぎ過ぎないでくださいね。

 澪さん。
 お姉ちゃん、時々変なことしますけど、私がいない時は面倒みてあげてください。
 
 紬さん。
 いつもおいしいお菓子をありがとうございます。今度、手作りのお菓子を軽音部に持っていきますね。


 和さん。
 
 昔からお姉ちゃんがご迷惑をおかけしてます。

 さわ子先生。

 私にまで変な服着せるのはやめてください。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:39:42.75 ID:nBIMAjlcO [14/17]
憂「……お姉ちゃん」

唯「……はい」

憂「ごめんなさい、は?」

唯「……」

唯「……二人で食べようって言ったのに……一人で全部食べちゃって……」

唯「ほ゛ん゛どうに゛……ごべんな゛ざい゛!」

憂「……いいよ♪」

 
 その夜私は、お姉ちゃんと一緒に寝ました♪



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 18:59:04.20 ID:nBIMAjlcO [15/17]
よなか!

唯「う~い~……」

憂「う~ん、お姉ちゃん?」

唯「う~い~、お腹痛いよぉ」

憂「ええっ!?そんな……」

憂「そんな、私のお姉ちゃんお腹緩まない計画は完璧だったはずなのに」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 19:05:02.90 ID:nBIMAjlcO [16/17]
唯「う~い~…ごめんねぇ……」

唯「わたし一人でおいしい思いしちゃったから、罰があたったんだよぉ」

憂「そんな事ないよ、お姉ちゃん!お姉ちゃんちゃんと私に謝ったもん!」

憂「今、正露玉持ってくるね!」

唯「う~……トイレ……」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/07(月) 19:10:02.57 ID:nBIMAjlcO [17/17]
トイレ前

憂「お姉ちゃん、大丈夫?」

唯「だ~いじょ~ぶだぁ~……じゃないかも~」

憂「お姉ちゃん、テーブルの上に薬置いておくね」

唯「あ~り~が~と~」


ここでスレ落ちでした

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