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上条「髪をかわしますよー」
939 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 00:58:19.69 ID:eggd9a.0 [1/6]
未完だけど、4レスほど投下します。
一巻と二巻の間の上条とインデックスの話。
未完だけど、4レスほど投下します。
一巻と二巻の間の上条とインデックスの話。
940 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 00:59:59.30 ID:eggd9a.0 [2/6]
上条が風呂からあがってみても、先に入浴をすませた居候は髪を乾かしていなかった。
テレビの前に正座で陣取って熱心に見入っており、タオルは首にひっかけているだけで、ぶかぶかのワイシャツが髪から水を吸って染みができていた。
今日は何に夢中になっているのやら。
首を伸ばして確認してみると、動物がちっちゃい女の子たちにくっつかれて空を飛んでいる。
繰り返し放送されているアニメ映画なのだが、記憶喪失の上条はもちろん、インデックスも見るのは初めてだ。
内容までは分からずともお子様向けであることは推し量れて、上条は居候の精神年齢が見た目以上に低いのではないかと疑いを深めてしまう。
「おい、インデックス。離れて見ないと目ぇ悪くなるぞ」
年齢も本名も不詳の彼女は生返事で振り向きもしない。
記憶を失う前の自分は、こういうときどうしていたんだろうか。
出会った経緯は情報として知っていても、自分と彼女の関係については曖昧だ。
上条は退院してからこっち、少女との距離感を探りながら接している。
自然体でいても平気だと分かってきたので、多少楽にはなったのだが。
内心溜め息を吐いて、キッチンで風呂上りの一杯を飲んだ。
体に染みこむようで心地いい。
「はー……っ、水でなきゃもっとよかったんだけど」
牛乳は夕食時にインデックスの締めの一杯として飲み干されていた。
飢えないだけましだろう――と、食に関する不幸指数が格段に低くなってしまっている上条だ。
バスタブの水気はあらかたふき取ってきたので、後は自然乾燥を待ち、寝床に変えるだけだ。
それまで何かすることはないかと記憶を整理しながらのたりのたりと部屋を徘徊する。
転がっていたペットボトルを洗って分別し、つまずいて雪崩をおこした漫画を積みなおし、ベッドの影に隠れていたドライヤーを見つけた。
居候の後姿とそれを見比べる。
941 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:01:13.89 ID:eggd9a.0 [3/6]
「とうま、下着姿でうろうろしないで欲しいんだよ」
インデックスが首だけ振り返って、上条の配慮に欠ける格好を指摘してきた。
テレビはCMに入っている。
「あー、悪い悪い」
娘にうざがられる父親の気持ちがちょっとわかった上条だったが、インデックスの抗議の理由は違っていた。
「私だって言われた通りにちゃんと着てるのに。とうまだけずるい」
口をへの字にしてむくれている。
暑がりな彼女は風呂上りに服を着ることを嫌がる。
それでも上条の指導により、せめて上条が浴室にひっこむまでは服を着ることを義務付けられている。
現に今はワイシャツの他に、家主から提供されたパジャマのズボンを着用していた。どうせなら上下ともパジャマにすればよかったのにと思うのだが、対である上は「とうまが使えばいい」と突っ返してきた。
どうも彼女の遠慮の基準が分からない。
上条は適当に見つけたジャージを穿き、上もインデックスに渡したパジャマの片割れに着替えた。
ちぐはぐで間抜けだが、似たような格好のインデックスは平然としているので、気にした方が負けだろう。
そうは言ってもなぁ、とコンセントにプラグを挿しこみながら上条。
「年頃の女の子としてその発言はいかがなものかと。露出狂認定されたくなかったら、服くらい着ろって。湯冷めしたらどうすんだ」
「ひ、人を変態みたいに言わないで欲しいかも!私は効率よく体の熱を逃がそうとしているだけで、裸を見せて興奮するような性癖は持ってないもん!何でそう意地悪言うかな!……あっ、そうだ!とうま、何回も言ってるけど、」
インデックスはさんざん話し合ったことをまた蒸し返そうとしている。
そうと気付いた上条は、彼女の後ろを指差した。
「CM終わってるぞ」
「……ッ!」
ずざっ、とインデックスは速攻で上条に背を向けてテレビに集中してしまう。
扱いにくいときと、そうでないときの差が激しい子である。
942 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:02:56.21 ID:eggd9a.0 [4/6]
上条はインデックスの背後に座る。
ドライヤーは脇に置いた。
櫛はガラステーブルに置いてある。
少女の背中では、ワイシャツが透けて肌にぴったりとひっついていた。
思春期の男児として思うところがないわけでもないが、紳士モードの彼には雑念などあってないようなもの。
シタゴコロなど皆無だし純粋な親切心からの行動なので、何も疚しいことはない。
「インデックスさーん、髪をかわしますよー」
「……んー」
首から抜き取ったタオルは乾いている面積の方が多い。
拭き取られるはずの水分はワイシャツの方へいってしまったらしい。
少女の銀髪をタオルで挟み、水気を取っていく。
自分以外の髪をこんな風に触るのは初めてだ。
慎重に、引っ張らないようにして扱う。
指に感じる髪の感覚がほんの少しひっかかる。
シャンプーが合っていないのだろうか。
丁寧に作業をこなしていると、視線を感じた。
何気なく顔をあげる。
インデックスが上条の手元を注視していた。
テレビ画面では大きな猫が夜空を走って、いよいよクライマックスに入ろうとしている。
彼女の意識がテレビからそらされるとは思っていなかったので、それでもって自分の行為をきょとんとした顔で見られているとも思っていなかったので、上条は顔を逸らした。
「な、何だよ」
「……えーと」
何を言ったらいいのか、しばし悩んだ彼女は、
「ありがとう?」
と礼を述べてきた。
少なくとも上条の行為を怪しんだりはしていない。
彼女と、彼女の知っている上条当麻の許容範囲に入るのだろう。
943 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:03:58.05 ID:eggd9a.0 [5/6]
「お、おう」
インデックスはテレビに向き直ったが、なんとなく変わってしまった雰囲気は上条をせっついた。
手の動きがぎこちなくなっていく。
目の前の彼女の背中は、さっきより姿勢がよくなっている。
妙な緊張感で肌は火照ってくるし、発汗作用までついてきた
。
「ねえ、とうま」
話しかけられて体がびくついた。
タオルに挟んだ髪の毛が振動で波打つ。
「なんでせうか。インデックスさん」
「なんで一緒に寝てくれないの?」
「ぶほっ!?……いやいや、駄目だ駄目です駄目なの!そもそもだな、年頃の男女が同じベッドで寝るなんて上条さん的にはアウトなわけで倫理に悖る行為は避けたい所存でありまして」
「退院してからは一緒に寝てたのに」
「ぐ……っ」
それは自然にそういう流れになってしまったからで、記憶がない上条は、彼女と恋人関係ではないにしてもそういうことは気にしない間柄なのだろうと思ってインデックスをベッドにお招きしたのだ。
彼女の寝相の悪さから、ふたつの意味で寝られない夜を過ごすことになるとは思っていなかった。
上条が床で寝ても居候は寝ぼけて家主の布団に潜り込んでくるし、浴室に放り込んでも結果は同じ。
残された道は、上条が浴室に立てこもる他ない。
懐かれているのは嬉しいが、一時の気の迷いで間違いなどあってはならないのだ。
築いた信頼を無碍にしては、彼女との繋がりを閉ざしてしまうことになる。
「どうしてもダメ?」
上条の無言をどう受け取ったのか、ぽつりと落とされた問いかけは心許なく、縋る色が隠されていた。
彼女の肩は縮こまっていて、良心が痛む。
「だ……」
天真爛漫な様子から一転して、不意に何も知らない子供のように弱くなるのは、ずるい。
そんなことはない大丈夫だと言いたくなってしまう。
「だめ、です」
944 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:05:52.76 ID:eggd9a.0 [6/6]
以上です。
お目汚し失礼いたしました。
上条が風呂からあがってみても、先に入浴をすませた居候は髪を乾かしていなかった。
テレビの前に正座で陣取って熱心に見入っており、タオルは首にひっかけているだけで、ぶかぶかのワイシャツが髪から水を吸って染みができていた。
今日は何に夢中になっているのやら。
首を伸ばして確認してみると、動物がちっちゃい女の子たちにくっつかれて空を飛んでいる。
繰り返し放送されているアニメ映画なのだが、記憶喪失の上条はもちろん、インデックスも見るのは初めてだ。
内容までは分からずともお子様向けであることは推し量れて、上条は居候の精神年齢が見た目以上に低いのではないかと疑いを深めてしまう。
「おい、インデックス。離れて見ないと目ぇ悪くなるぞ」
年齢も本名も不詳の彼女は生返事で振り向きもしない。
記憶を失う前の自分は、こういうときどうしていたんだろうか。
出会った経緯は情報として知っていても、自分と彼女の関係については曖昧だ。
上条は退院してからこっち、少女との距離感を探りながら接している。
自然体でいても平気だと分かってきたので、多少楽にはなったのだが。
内心溜め息を吐いて、キッチンで風呂上りの一杯を飲んだ。
体に染みこむようで心地いい。
「はー……っ、水でなきゃもっとよかったんだけど」
牛乳は夕食時にインデックスの締めの一杯として飲み干されていた。
飢えないだけましだろう――と、食に関する不幸指数が格段に低くなってしまっている上条だ。
バスタブの水気はあらかたふき取ってきたので、後は自然乾燥を待ち、寝床に変えるだけだ。
それまで何かすることはないかと記憶を整理しながらのたりのたりと部屋を徘徊する。
転がっていたペットボトルを洗って分別し、つまずいて雪崩をおこした漫画を積みなおし、ベッドの影に隠れていたドライヤーを見つけた。
居候の後姿とそれを見比べる。
941 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:01:13.89 ID:eggd9a.0 [3/6]
「とうま、下着姿でうろうろしないで欲しいんだよ」
インデックスが首だけ振り返って、上条の配慮に欠ける格好を指摘してきた。
テレビはCMに入っている。
「あー、悪い悪い」
娘にうざがられる父親の気持ちがちょっとわかった上条だったが、インデックスの抗議の理由は違っていた。
「私だって言われた通りにちゃんと着てるのに。とうまだけずるい」
口をへの字にしてむくれている。
暑がりな彼女は風呂上りに服を着ることを嫌がる。
それでも上条の指導により、せめて上条が浴室にひっこむまでは服を着ることを義務付けられている。
現に今はワイシャツの他に、家主から提供されたパジャマのズボンを着用していた。どうせなら上下ともパジャマにすればよかったのにと思うのだが、対である上は「とうまが使えばいい」と突っ返してきた。
どうも彼女の遠慮の基準が分からない。
上条は適当に見つけたジャージを穿き、上もインデックスに渡したパジャマの片割れに着替えた。
ちぐはぐで間抜けだが、似たような格好のインデックスは平然としているので、気にした方が負けだろう。
そうは言ってもなぁ、とコンセントにプラグを挿しこみながら上条。
「年頃の女の子としてその発言はいかがなものかと。露出狂認定されたくなかったら、服くらい着ろって。湯冷めしたらどうすんだ」
「ひ、人を変態みたいに言わないで欲しいかも!私は効率よく体の熱を逃がそうとしているだけで、裸を見せて興奮するような性癖は持ってないもん!何でそう意地悪言うかな!……あっ、そうだ!とうま、何回も言ってるけど、」
インデックスはさんざん話し合ったことをまた蒸し返そうとしている。
そうと気付いた上条は、彼女の後ろを指差した。
「CM終わってるぞ」
「……ッ!」
ずざっ、とインデックスは速攻で上条に背を向けてテレビに集中してしまう。
扱いにくいときと、そうでないときの差が激しい子である。
942 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:02:56.21 ID:eggd9a.0 [4/6]
上条はインデックスの背後に座る。
ドライヤーは脇に置いた。
櫛はガラステーブルに置いてある。
少女の背中では、ワイシャツが透けて肌にぴったりとひっついていた。
思春期の男児として思うところがないわけでもないが、紳士モードの彼には雑念などあってないようなもの。
シタゴコロなど皆無だし純粋な親切心からの行動なので、何も疚しいことはない。
「インデックスさーん、髪をかわしますよー」
「……んー」
首から抜き取ったタオルは乾いている面積の方が多い。
拭き取られるはずの水分はワイシャツの方へいってしまったらしい。
少女の銀髪をタオルで挟み、水気を取っていく。
自分以外の髪をこんな風に触るのは初めてだ。
慎重に、引っ張らないようにして扱う。
指に感じる髪の感覚がほんの少しひっかかる。
シャンプーが合っていないのだろうか。
丁寧に作業をこなしていると、視線を感じた。
何気なく顔をあげる。
インデックスが上条の手元を注視していた。
テレビ画面では大きな猫が夜空を走って、いよいよクライマックスに入ろうとしている。
彼女の意識がテレビからそらされるとは思っていなかったので、それでもって自分の行為をきょとんとした顔で見られているとも思っていなかったので、上条は顔を逸らした。
「な、何だよ」
「……えーと」
何を言ったらいいのか、しばし悩んだ彼女は、
「ありがとう?」
と礼を述べてきた。
少なくとも上条の行為を怪しんだりはしていない。
彼女と、彼女の知っている上条当麻の許容範囲に入るのだろう。
943 名前:上条「髪をかわしますよー」[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:03:58.05 ID:eggd9a.0 [5/6]
「お、おう」
インデックスはテレビに向き直ったが、なんとなく変わってしまった雰囲気は上条をせっついた。
手の動きがぎこちなくなっていく。
目の前の彼女の背中は、さっきより姿勢がよくなっている。
妙な緊張感で肌は火照ってくるし、発汗作用までついてきた
。
「ねえ、とうま」
話しかけられて体がびくついた。
タオルに挟んだ髪の毛が振動で波打つ。
「なんでせうか。インデックスさん」
「なんで一緒に寝てくれないの?」
「ぶほっ!?……いやいや、駄目だ駄目です駄目なの!そもそもだな、年頃の男女が同じベッドで寝るなんて上条さん的にはアウトなわけで倫理に悖る行為は避けたい所存でありまして」
「退院してからは一緒に寝てたのに」
「ぐ……っ」
それは自然にそういう流れになってしまったからで、記憶がない上条は、彼女と恋人関係ではないにしてもそういうことは気にしない間柄なのだろうと思ってインデックスをベッドにお招きしたのだ。
彼女の寝相の悪さから、ふたつの意味で寝られない夜を過ごすことになるとは思っていなかった。
上条が床で寝ても居候は寝ぼけて家主の布団に潜り込んでくるし、浴室に放り込んでも結果は同じ。
残された道は、上条が浴室に立てこもる他ない。
懐かれているのは嬉しいが、一時の気の迷いで間違いなどあってはならないのだ。
築いた信頼を無碍にしては、彼女との繋がりを閉ざしてしまうことになる。
「どうしてもダメ?」
上条の無言をどう受け取ったのか、ぽつりと落とされた問いかけは心許なく、縋る色が隠されていた。
彼女の肩は縮こまっていて、良心が痛む。
「だ……」
天真爛漫な様子から一転して、不意に何も知らない子供のように弱くなるのは、ずるい。
そんなことはない大丈夫だと言いたくなってしまう。
「だめ、です」
944 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 01:05:52.76 ID:eggd9a.0 [6/6]
以上です。
お目汚し失礼いたしました。
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