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黒子「レベル5ですの」
初春「え!白井さんレベル5になったって本当ですか!?」
黒子「本当ですの」
佐天「す、すごいなぁ…なんだか私達どんどん差をつけられちゃってるな……」
初春「佐天さん、泣き事はだめですよ!私達も頑張りましょう」
佐天「あははーそうだね、ごめんごめん」
初春「そうだ、白井さんさっそくレベル5の力見せてくださいよ~」
佐天「あ、私もぜひ見たいかも!」
黒子「いいですの」
ヒュン!!
初春「白井さん……その手にもったそれはなんですか……?」
黒子「佐天さんの心臓ですの」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:33:55.89 ID:swYySqWO0
静寂が三人の少女を包む
白井黒子は、手のひらに乗せた赤黒いブヨブヨした塊に気のない視線をおくっている
いく線かの筋を走らせたその塊は、生々しい艶を帯び、ビクン ビクンと鼓動を続けている
上部から伸びた管の束から赤色の液体が僅かに吹きこぼれた
「…………」
佐天の体に、形容しがたい喪失感が襲い、額に嫌な汗が滲んだ
やがてその表情は驚愕から動揺へ変化していった
「か……返……」
震える声で右腕を伸ばした
黒子は、ゆっくりと佐天に顔を向け笑った
小さな破裂音が、響く
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:36:05.05 ID:swYySqWO0
「さ、佐天さん!!」
初春飾利は、崩れ落ちていった親友の体に駆け寄り、抱き上げる
ピクピクと痙攣を起こしているその体からは、生命の温かみが消え去っていくのを感じられる
「さてんさん!!しっかりしてください!!」
その虚ろな瞳には、かつての輝きはない
「ああああ……!!!佐天さん!!さてんさん!!サテンサン!!!」
花飾りの少女は、冷たい親友の胸で、泣き伏す
その弾みに何枚かの花弁が、死者の体に舞い落ちた
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:38:22.84 ID:swYySqWO0
黒子「ご覧頂けたかしら」
黒子「これが、新しい力ですの」
黒子「まぁ空間から空間の物体の移動という基本は変わりませんの……」
黒子「ただ少々、強化されただけ」
黒子「まず触れずして能力の発動が可能になったこと」
黒子「それに追加して、対象の物体を視認していなくてもある程度イメージでの転移ができるようになりましたの」
黒子「そして、距離、重さ、個数の限界値の引き上げ、演算能力の大幅な向上……」
黒子「これで御姉さまに、また一歩でも近づけましたかしら……」
黒子「って初春聞いてますの?」
黒子「……何をそんなに泣いているのかしら」
黒子「ま、いいですの」
黒子「そうだ!ぜひ御姉さまにも生まれ変わった黒子の姿をお見せしなくては!」
黒子「~♪御姉さま~♪」
ヒュン!
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:40:32.91 ID:swYySqWO0
「こらー!!待ちなさい!!」
「不幸だー!!」
追う少女と、逃げる少年
白昼の公園で逃走劇が繰り広げられていた
しかし、その追いかけっこは、突然の終わりを迎えた
逃走者の少年が、つま先に衝撃を感じ、地面に倒れこんだのだ
躓きによる転倒
人前では、なかなか恥ずかしいものだ
案の定、鬼役の少女は指をさして高らかに声を上げ笑っていた
「痛たた……」
少年は、足元に目を向けた
「なんで、こんなところに段差が……」
まるで、自分を転ばせるためにそこに現れたかのような奇妙な長方形がそこにあった
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:42:44.46 ID:swYySqWO0
「御機嫌よう」
上条当麻は、体を返し、声のするほうを見た
そこには、追っ手のビリビリ中学生と同じ制服を着た少女が立っている
「く、黒子!?」
御坂美琴は、さっきのまでの威勢を削がれ、たじろいでいる
「御姉さま、この男になにかご用がおありで?」
「べ、別に用ってわけじゃないけど……」
上条は、口を挿んだ
「おい、助けてくれ!この電撃娘が、ストーカーをやめてくれないんだ!」
「だ、誰がストーカーだぁぁ!私は、ただ勝負しろって言ってるだけでしょうが!!」
御坂は、顔を赤らめ反論する
「勝負……」
「そういうことなら、露払い役の私がまずお相手になるのが筋というものでしょう」
白井黒子は、淡々とそう言った
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:45:03.46 ID:swYySqWO0
「いったいなんでそうなるんだ……」
上条当麻は、溜息を吐いた
結局、この新手の少女も御坂と同質の思考回路の持ち主なのか……
自身の不幸体質を恨めしく思う
「では……」
白井黒子は、ゆっくりと右手をあげた
ひゅんと金属を擦るような音が空気中に響く
次の瞬間、空手であったその手に、缶ジュースが握られていた
「あら、心臓を狙いましたのに」
「……え?」
続いて、黒子はその手で空中に斜め一線を描く
後方から、ずさささと何かが滑り落ちる音が鳴る
上条が振り返ると、そこには両断された自販機の姿があった
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:50:42.93 ID:swYySqWO0
「どうも」
「あなたには、遠方からの空間操作は効かないようですの」
「座標が無理やりにそれてしまいますの」
上条は、唾を飲んだ
これを、あの少女がやったというのか
自身の身がわりになった自販機は、真っ二つに断たれている
「異能の力を打ち消す右手でしったけ……」
視線を戻すと、少女は冷然とした目で自分を見返していた
獲物を仕留める方法を模索する狩人の目だ
「では……やり方をかえさせていただきますの」
次の瞬間、少女の体が消えた
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:56:34.33 ID:swYySqWO0
上条当麻は、辺りを見回すより早く、首に鋭い痛みを感じた
恐る恐る、眼球だけを動かし首元を見ると、そこには、深く埋められた銀色の金属棒が突出していた
「あっ…………あ………」
悲鳴を上げようとしたが上手く声が出せない
「能力が効かないのであれば……直接、この手で体内に押し込めばいいこと」
空間移動により間を一瞬で詰めた後、死角から急所に一撃
その無駄のない動きで勝負は、あっけなく決した
金属棒は再び黒子の手元に戻される
蓋を失った穴から、鮮血が吹きあがり、呆然と傍にたった、短髪少女の顔まで赤く濡らした
得意の長広舌も、愛用の口癖も使う間もなく
上条当麻は、崩れ落ちた
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 22:59:18.56 ID:swYySqWO0
黒子「あらあら……意外にあっけないものですね」
「御姉さまのお話からもっと手ごたえのある方だと思っていたのですが」
御坂「あ……あ……」
黒子「どうです?御姉さま、生まれ変わった黒子の力は」
「邪魔者は消え去りましたの……あとは二人の愛の時間と洒落込みますの」
御坂「うわあああああああああああ!!!」
黒子「御姉さま……何故逃げますの?」
御坂「来るな!!来るな!!来るなぁぁぁぁぁぁ!!」
黒子「おねえさま……?」
「その子から離れるじゃん!」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 23:01:26.93 ID:swYySqWO0
「アンチスキルじゃん!」
いつのまにか、白井黒子は警備員に囲まれていた
盾を構えた前衛の隊員達が扇状に並び、その盾と盾の隙間から銃口がこちらに向けられている
その後ろには五十人程だろうか……武装した隊員達が各々の配置についている
その中心の統制された隊を指揮する女性が拡声器で続ける
「能力者が、殺人を犯したと通報があったじゃん……どうやらこの人数できて正解だったようじゃん」
「初春ですのね……」
「お前は完全に包囲されているじゃん!大人しくお縄につく───」
奇矯な語尾を付ける前に、彼女は言葉を失った
その首と胴体が永遠の離別を迎えたのだ
「ごちゃごちゃ五月蠅いですの……」
白井黒子は、掴んだ生首を捨て、煩わしそうに腕を振り上げた
その動きに連動するかのように、景色がズレる
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 23:11:48.10 ID:swYySqWO0
一隊の後方にいた鉄装綴里は、その惨劇の一部始終を目撃していた
黄泉川愛穂の首が突然消え、その胴が崩れ落ちたこと
前列にいた防御隊の半身が腰から下を残して、右側に吹き飛んだこと
「こ、これはいったい……」
他の隊員達にもざわめきが走る
血の池の奥に佇む、標的の少女の表情はここからでは窺い知れない
「な……な……なにが……」
少女は鷹揚に腕を振り続ける
その姿は、まるでオーケストラの指揮者のようだと鉄装は思った
そして、ギロチンが振り落とされるかのように鉄装の体を引き千切った
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 23:13:57.08 ID:swYySqWO0
一部分だけを転移の対象にすることによる物体の切断
進化した彼女の能力は、個体のつながりを無視して空間と空間を切り張りすることが可能になった
かつては、紙一枚あればダイヤモンドを切断できると豪語していた彼女だが
いまや、紙一枚を必要とせず、ありとあらゆるものを切断することができるだろう
「……」
白井黒子は、殺戮の指揮を続ける
数十人分の、肉片と臓器と血が飛び交い、悲鳴と怒号の声が響き合う
生き残っている隊員の中には逃げ出す者もいたが、勇敢なものは銃を取り、標的に向けて引き金を絞った
しかし、銃弾は、黒子に被弾することなくその手間で虚空に消えていく
高速で処理される黒子の演算能力は、飛来する弾丸さえその対象なのだ
消えた銃弾は雨となって発砲者のもとに返される
空間転移の盾に守られた彼女に、あらゆる攻撃は、決して到達することはない
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 23:17:21.05 ID:swYySqWO0
「もうやめて!!!」
死の公演のたった一人の観客である御坂美琴は、後輩の小さな背に向けて叫声をあげた
しかし、その声は彼女の耳には届かない
「もう……やめてよ……いつもの黒子に戻ってよ!!」
充満した血の匂いが吐き気を呼ぶ
「こんなの……やだ……やだよ……」
そうだ、こんな悪夢はもうたくさんだ
はやくこの惨劇に終止符を打たなければならない
だが、どうすればいいのか……
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/16(日) 00:13:35.17 ID:7PpxOCt90 [1/3]
絶望が御坂を襲う
自身の名を冠する超電磁砲も、虚空に飲み込まれどこかで落雷に変わるだけだろう
もう前方から声は聞こえない
空間を分つ音だけがノイズのように響く
目の前の上条当麻の死体が見開いた目でこちらを見ていた
その瞳が何かを訴えてるようなきがする
すると使命感を帯びた闘志がわきあがってきた
「これなら……」
御坂は、落ちている金属棒を拾い上げた
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/16(日) 00:15:54.79 ID:7PpxOCt90 [2/3]
白井黒子は、後方からの衝撃にたじろいだ
首を落とすと、なにかが自身の胸から生えていた
よく見るとその正体は、腕だ
人間の腕が矢となって自身の胸部を射ぬいているのだ
振り返るとそこには、腕を構え滲んだ目で自分を見ている御姉さまと右腕のない死体が映った
傷口から血が染み込む、能力上、人体の構造を把握している黒子は自分の何が壊されたのか知っている
意識が薄れゆく
諦観した白井黒子は、最後の力を振り絞り、御坂美琴の身に自分を重ね合わせ飛んだ
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/16(日) 00:21:48.95 ID:7PpxOCt90 [3/3]
病室のベッドに、一人の少女が横たわっていた
顔以外の全身を包帯を巻かれた少女はただ、静かに呼吸運動を繰り返している
扉が開き、訪問者が現れた
「調子はどうかな」
白衣を着た男は、ベッド脇の椅子に腰かけ言った
「結合した人間同士を切りはす作業には苦労したらしいよ……」
白衣の男は、続ける
「君の命は粗末にされるべきではないな……なにしろ君は学園都市、有数の高位能力者なんだから」
包帯の少女は、沈黙で答える
「第三位、電撃使いの損失は、大きいけどね……彼女の都市への貢献は知ってるね?その抜けた穴を埋めるの君にしかできない」
「なにせ、君のその体の殆どは、彼女のものでもあったんだからね……もちろんその意志も継いでくれることと信じているよ」
少女の涙に一線の涙が流れる
「さっそくだが……絶対能力進化計画への適合者を決める君と第一位との戦闘実験についてだが───」
おしまい
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