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美琴「えへへ………」

186 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:25:46.89 ID:Dv8i5P60 [1/22]
注意書き
昼ドラSSです。ドロドロしてます。
ビオフさんが好きな方
どんな美琴ちゃんも受け入れない方
は見ないことをおススメします。
都合上、地の文は原作仕様ではありません。
20レス借ります。

ほのぼのですの!

187 名前:美琴「えへへ………」1/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:27:39.49 ID:Dv8i5P60 [2/22]
九月の初め
暦の上では初秋だが、夏の暑さはまだ抜け切れない。
夕方と早朝には蜩の鳴声が聞こえてくる時期だ。
そんなある日
第七学区に建てられた洋館風の建物――常盤台中学学生寮――
の一室御坂美琴はベッドの上で本を読んでいた。
それは最近の流行りらしいのだが、
美琴の感想はまったくふざけたというものだった。
内容は端的に言うと愛憎劇。
恋人がいる男をかませでしかない一途な女の子が奪おうと奮闘する物語。
結果的に一途な女の子は男を寝取ろうとして、失敗。

(私がこの女ならこんな失敗するはずがないのに。こいつバカね)

あまりにも陳腐な奸計に男が堕ちるはずがないとまあこんな感じだ。
美琴は机の上に本を放り投げ、昨日起こった地下街のテロ事件を思い起こす。
気になることがある、それはインデックスと呼ばれたシスターが言った
『とうまは何があっても、絶対に帰ってきてくれるんだから』という台詞、
そしてその後に沸々と湧き起こった感情だった。
アイツ――上条当麻――とあのちっこいシスターが一緒にいると何故かいらいらする。
この感情はなんだろうかと。

(なんで私がアイツのことなんか考えなきゃいけないのよ)

ルームメイトの白井黒子のように自分の感情に真直ぐになれればいいのになあとの心境だ。
そのようなことを考えていると、ふと時間が気になり時計を見ると
門限まで1時間を切っていた。

「やば、もうこんな時間」

あのツンツン頭の少年を探そうと出かけようとする。
ここに黒子がいれば、何か咎めるだろうが
肝心の彼女は今ここにはおらず、どうやら風紀委員の仕事中みたいだ。
寮を出る。
昨日は名前で呼ばれ若干嬉しく、今日はまともに顔を合わせられるだろうか。
シスターと上条の関係を追究するつもりではない。

188 名前:美琴「えへへ………」2/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:28:15.71 ID:Dv8i5P60 [3/22]
少年がいそうないつもの公園にいく。
しかし、そこには誰も居なかった。人すらいない、
他をあたろうと思ったときよく見慣れたツンツン頭が見えた。

「ねえ!アンタってば!」

「なんだ御坂か?」

気だるそうに返し、溜息を吐く上条に対して
美琴は『御坂』か…と内心がっかりする。

「今から暇?」

「今日は特売もないので、上条さんは暇ですよ」

その言葉に美琴は愁眉を開くと言葉に詰まったので一息ついて次の言葉を捜す。
予定などない、無計画すぎる自分に嫌悪感を抱いてしまう。

「なんか食べない?」

「またそれかよ」

「いいじゃない、暇なんでしょ?」

「どうせ食べるなら、美琴センセーの作ったご飯が食べたいなあーなんて」
そもそも料理作れんのか?と上条は付け足す。

「バカにしてんの?アンタ、そのぐらい出来るわよ」

「あーはいはい、分かりましたから、やることないなら帰りますよー」

「だから!私がなんか作るって言ってるっつーの!!」

美琴の前髪からバチバチと紫電が散る。

「冗談のつもりで言ったわけですが、御坂さん」

「やるったらやるの!!食材買いに行くからついてきなさい。何食べたい?」

溜息をついて、呆れた様に何も言い返さない上条を見て、腹が立つ。
私といるのがそんなに嫌かと不安にも駆られてしまうが、なんだかんだいって付き合ってくれるので気にはならなかった。


190 名前:美琴「えへへ………」3/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:28:45.57 ID:Dv8i5P60 [4/22]
スーパーに着き、食材を探す。
結局美琴はカレーを作ることに決めた。
食費は自分が出すと言ったが上条はそれだけは譲れないとかなんとか。
美琴が買い物かごに入れる食材(主に肉)を見つめた上条はだらだらと汗を流している。
無理しなくてもお金なら出すのにと心の中で思うのだが本人の意向も無視できない。
本当はスパイスからの本格的なカレーを作りたかったが、
そこまでやるといろいろ誤解される――絶対ないだろうが――と思ったので止めた。
二人は会計を済ませ。店を出る。
勢いでここまできた為に気にならなかったが、
よくよく考えると今からすることを考えると非常に精神的にやばい。

(今からアイツの家に行くんだよね…何かされるかも
 だって力じゃかなわな…い…
 べ、別にされたいとかそういうのじゃなくて…)

実際そんなことはありえないが万が一を考えてしまう。
さっきから表情がころころ変わる美琴に対して
普段の上条なら訝しそうに見つめてくるだろうがそれに気づけるほど余裕はない。

「大丈夫か御坂?」

「………ぁ……ぅ…」

目の前に上条の顔が急に現れ、目を遇わせてしまった美琴はうまく思考ができない。
夕焼けに照らされた美琴の頬がさらに赤みをましてゆく。
しばらく二人は無言で歩くと、あれが俺の寮だと少年は少女に告げた。
美琴は心臓がばくばくしていて治まる気配がない。
ふと上条の方へ視線を向ける。
上条も落ち着いてないようだ。

(もしかしてコイツ意識してるのかな?)

と淡い希望を抱いてしまう。
上条の寮の中に入り部屋の前まで行くと上条は覚悟を決めたかのように

「ほんじゃ入りますか」

と言う。美琴は小さくビクッと震え、うんと頷いた。


191 名前:美琴「えへへ………」4/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:29:14.31 ID:Dv8i5P60 [5/22]
上条の部屋に入ると美琴はおじゃましまーす
と声を小さく発する――誰にも聞こえない程度の大きさだが――。
玄関の扉が閉まる音がし、
すると中から女性の声が聞こえ、こちらに向かって来る音も聞こえる。

「とうま、お帰りなんだよ」

美琴はいつかのえらいパンクな修道服を着ている少女と目が合った。
その少女は美琴を見るとすぐに敵意を剥き出しにしてきた。
どうしてこいつがいるのかと…いうふうに。

「どうして短髪がここにいるのかな。説明してほしいかもとうま」

「それはこっちのセリフよ!」

そして二人の少女はおどおどしている上条を見つめると、とうの本人は不幸だ…と呟いた。

上条は必死に二人に説明する。インデックスにはただ御坂が夕食を作りにきただけだと。
しかし美琴は上条の説明に納得できなかった。
いらいらする。胸の奥のやわらかい部分が締め付けられるような痛みも感じた。

居候?
なんでこんな奴が?
そんなに私の邪魔したいわけ?

「短髪はごはんをつくりにきたんならいいんだよ」

とさっきまでの敵意はなく、今度は臆面もなくシスターは言いやがった。
ごっはんごっはん♪と今度は楽しそうだ。
埒があかないと美琴は思い。

「夕食作るわ」

美琴の言葉を受けて上条は俺も手伝うよと返した。
ものすごく理想的な頼みごとだが美琴は断った。
上条を台所から追いやり、上条のエプロンをかりてカレー作りを開始する。
カレーができ、二人の前に運ぶ。我ながらうまくできたものだ。
食べている最中にも胸の痛みはさきほどと比べ小さくなったものの消えなかった。
食べ終え、料理を二人に褒められるとありがとうとは素直に言えず
当たり前よと返した。


192 名前:美琴「えへへ………」5/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:29:52.07 ID:Dv8i5P60 [6/22]
とその時、一匹の猫を発見した。かわいい。
触りたくても触れない体質がこういうところで悲しくなる。
美琴を見ていたのかシスターは猫を抱きかかえ、美琴の前まで持ってきた。

「スフィンクスっていうんだよ」

「あっかわいい…」

触りたくて手を伸ばそうとするが触れるのには躊躇する。
触れそうになった瞬間、猫がビクッと震え美琴から離れたからだ。
常盤台の寮の裏庭で、猫に餌をあげようとしているときもいつもこんなかんじだ。
だから、別に気にはしない。
どうしたの?とシスターは不思議そうな顔をする。
美琴の様子を見た上条は美琴の頭に右手を置いた。
すると猫は美琴に寄ってきた、猫を抱きかかえるとにゃーごろごろごろごろー
しばらく猫と戯れる。
さっきまで黙っていたシスターが歯をきらめかせ上条に噛みついた。

「ぎゃあああああああああああああ不幸だあああああああああ」

シスターがことに及んだ理由を考えると美琴は顔が真っ赤に染まった
ぶんぶんと顔を左右に振り、心を落ち着かせ、少年にお礼を言う。
こういうときに限って如才無い振舞いは反則だ。卑怯だ。
気まずくなったので帰ることにした。

「もうこんな時間だから帰るわね」

送っていくよという上条に対してバカにしてるのアンタ?と返すが
上条は強引に美琴を連れだそうとする。
シスターの方をチラッと見ると、一瞬寂しそうな顔をしたが
すぐに、獲物を見つけた猛獣のように歯をギラギラと輝かせ上条に忠告した。

「とうま~早く帰ってこないと噛み付くかも」

「分かりましたから、インデックスさん。
 だからその輝いているものをしまってください」


193 名前:美琴「えへへ………」6/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:30:32.50 ID:Dv8i5P60 [7/22]
時刻はだいたい九時ごろだろうか。
完全下校時間をとっくに過ぎ、通りには人がいない。当たり前か。
ぽつぽつと本当にそんな感じで暗闇の中、街灯がともっていた。
帰路に就く間、美琴は無言であった。それは隣にいる少年もそうであったが。
ひっそりと静かな周囲の中、
美琴は心になにか温かいものを感じながら歩いていた。
このままこの少年の隣にずっといたいとさえ思った。
常盤台の学生寮が視界に入る。

「ここまででいいわ、ありがと」

「おう、またな、飯うまかったぜ。また夕食つくりにこいよ」

そう言うと少年は来た道を返して行く。

「な、なにふざけたこと言ってんのよ!」

予想外とはいえ嬉しかった。それにしても不意打ち過ぎる。
美琴は顔を真っ赤にして少年の背中に向かって荒々しく答える。
「うん」とは素直に言えなかった。
いつもなら電撃を食らわしてやるのにそれも出来なかった。
彼の背中を見ながら少年の最後の言葉を反芻する。

(あ、あ、あのやろう、なんてこと言うのよ)

少年が暗闇に消え、寂しさと胸の温かみが心の中で満ちてゆく。

(やっぱり私・・・アイツのことが・・・すすす好きなのかな?)

いままで拒否していた少年への感情に素直になるとすごく体が楽になった。
あのシスターに強烈な嫉妬さえも、あの少年への下劣な独占欲さえも自覚してしまった。
今はそばにいたい、という思いだけが体中を廻る。

(どうしようどうしょう。早くあいたいよ)

その後どうやって寮監の目をごまかし、自室に入ったか覚えていない。
横のベッドにいる黒子がうふふ。えへへ。とか言ってる理由も分からない。
気づいたら、私はベッドに寝転がり寝巻きを着ていた。


194 名前:美琴「えへへ………」7/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:31:01.12 ID:Dv8i5P60 [8/22]
『ぷちぷちとやわらかいものをちぎる音がします。
 赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
 多少の服の汚れもまったく気にしません。
 いま、手にもっている温かいなにかは感触がとても心地よいです。
 バタンとドアが開く音がしました。
 そこに立っていたのはわたしの想い人です…
 どうしてここにやってきたのでしょうか?
 わたしに会いにきたのでしょうか?
 ですがさっきからずっとわたしの名前ではなくてなにか叫んでいるのです。
 しまいには生ゴミの入ったビニール袋に抱きついてしまいました。
 はっきりいって汚いです。そんなものに抱きつくとは正気の沙汰とは思えませんし、
 わたしが汚いといっても彼はわたしの言うことを聞かないのです。
 仕方ないのでわたしはさっきまで使っていた
 ひんやり冷たいもの――といっても持つところは触り心地のよい木製ですが――を
 手に持って想い人に抱きつきました。
 すると手にとても温かい液体が流れます。すごく温かいです。
 もう一生離しません。』




翌朝、美琴は目が覚めた。非常に心地の悪い夢を見たために
胸がむかむかして嘔吐しそうになった。
急いでトイレに駆け込む。
昨日食べたものが逆流してきそうになるがでない。
けほっけほっと咳をする。
しばらくして落ち着きを取り戻し部屋に戻り時計をみた。
朝食まであと一時間近くある。
さきほどまでの夢を思い出す。

まるで私があの小説のヒロイン。

そして私が■■■■を■すかのような内容だった。
忘れようとしても鮮明に映し出された妙に現実味のある悪夢が私に付き纏う。
その所為か朝食も喉を通らず、八時いっぱいまでかかった。


195 名前:美琴「えへへ………」8/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:32:59.89 ID:Dv8i5P60 [9/22]
学校につくと、美琴はすぐに机の上に突っ伏す。いつものことだ。
クラスメートに挨拶されても挨拶でしか返せず。会話は続かない。
上辺だけの人間関係に縛られた学校に居場所はない。
誰にも聞こえない程度の音量でふぅ…と溜息を吐き出す。
気付かない間に担任が教室にいた。
HRが終わり、授業が始まった。
やはり学校にいると夏休みという長期休暇の時よりも
私を対等に見て欲しい交友関係が欲しいという感情は日に日に増してゆく。
換言すると居場所が欲しいのだ。
対等に見てくれる人はいるがそこに私自身が入り込む余地などあるのか?
その居場所を占領しているものがいる限り、可能性は薄い。
実際、そこには不法占領者が居て、それがどれほど彼の心を蝕んでいるのかは分からない。
確かめる術などあるのか?分からなければ…
私の中に醜い感情が生まれ、邪魔者を■せと囁いて来るのも時間の問題だ。
しかし殺人を犯してまでその位置を奪おうとは思わない。
『実験』の件で人の命の重みは人一倍分かっていると自負していたからだ。

最良の策…?

――――私が告白すること、それが一番私らしい

もし断られたら…?

――――あきらめるつもりなんかない

仮に少年に意中の相手がいたら…?

――――、…………

それが私ではない誰かとしたら…?

あーもう!と大声を出したいが今は授業中だ。
ごちゃごちゃした思考を捨てたい。
どうでもいいから早くあの少年に会いたい。
一万人以上を■し、贖罪行為をどれ程重ねたとしても償いきれない
犯罪者を赦し、たった一言で救ってくれたあの少年に。


196 名前:美琴「えへへ………」9/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:33:56.35 ID:Dv8i5P60 [10/22]
美琴は学校が終わると少年を探しに行く。
もうストーカーだと認めた方が幾分、気が楽になるかもしれない。認めてしまえ。
思えば、夏休み中、海原に付きまとわれたのも私がやっていることと同じ。
私がされて嫌だったこと――――。

嫌われているのではないか?
昨日までの態度は彼の情けではないのか?

そう思うと心が痛くなる。

だがそんなことはないはずだ。ありえない。

美琴は知らず知らずのうちに歩調を速めていた。
そもそも少年の携帯番号すら知らない。
幾度となく、電撃を放ち………もう考えるだけで昔の自分が嫌になる。

過去のことは水に流し、新しい関係――恋人という関係――を築きたい。

そのためにはあのシスターが邪魔だった。
そういったいろいろな後ろめたさからシスターにだけは遇いたくなかった。
しかし幸か不幸にもシスターが目の前に現れた。
どうやらシスターは一人らしい。そして何故かそれを喜ぶ私がいた。
シスターは昼食が少なすぎて死にかけらしく、お腹減ったと連呼している。
積もる話もあるので、仕方なく、そこらにあるファミレスに入る。当然、私のおごりだが、
店に入り、美琴は紅茶を注文した。
シスターは手当たり次第に食べ物を注文している。
食べ物が来た瞬間、ばくばく食べ始めたシスターは幸せそうだった。

欲張りな奴だ。私の欲しいものを持っている。
そう思うと体の中に渦巻くゆらゆらと燃える黒い炎が内臓を焦がし、徐々に内側から喰っていくような。
中世のヨーロッパにあった拷問の一つに火炙りというものがある。
受刑者が括り付けられる木は足元から頭までの距離を燃やすのに一週間はかかるモノだとか。
じりじり迫ってくる火が受刑者の心を壊していく。早く殺してほしいと。
たいていは火が腹辺りに辿り着いたときにはもうショック死してるとか。
まるでそのようにじわじわと嫉妬が美琴のナカを侵食していく。


197 名前:美琴「えへへ………」10/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:35:08.70 ID:Dv8i5P60 [11/22]
目の前の少女の絹のような滑らかな白い肌が昨日の夢同様に赤に染まっていく。

「どうしたの短髪?顔が怖いんだよ」

「へっ!?大丈夫!!大丈夫よ!」

「短髪は食べないのかな?」

「アンタの食欲見てたら食べる気失せるわよ、フツー」

「そんなことより短髪の料理おいしかったからまた今度作りに来てもいいかも」

「はいはい、お世辞はいいわよ」

このシスターは私と上条が一緒にいてもいいのか
ダメなのかどっちかハッキリしなさいよと心の中で突っ込んだ。
シスターと二人きりの稀有な機会。
この少女がどれほど彼の心を占めているのか一つ試してみるか…。

「アンタ一昨日私に、『とうまは何があっても、絶対に帰ってきてくれるんだから』
 とか言ったわよね?確かめたいから賭けでもしてみない?」

「別にいいかも。負けるはずがないんだよ―――――――――」

賭けの内容
『最終下校時刻にアイツに一度だけ『帰ってきて欲しい』と意図する言葉を携帯で告げて、
 午前零時までにアイツがアンタの元に帰ってくること』
というものだった。

美琴はツンツン頭の少年に会うために全速力で第七学区を疾走する。
アイツがいそうな所を何度も何度も探し回った。だがいない。
最終下校時刻まではあと四十分。
汗を含んだ制服が肌に擦れる不快感や体の疲労感が限界に近づいたとき
ようやく見かけた。
彼は私がよく蹴る自販機がある公園にいたのだ…。
呼吸を整わせ、近づいていく。

( あ の 女 誰 ? )


198 名前:美琴「えへへ………」11/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:35:42.71 ID:Dv8i5P60
そこには仲良さげにベンチに腰を下ろし、缶ジュースを飲みながら談笑する少年と少女の姿があった。
少年から数メートル離れた物影から二人を観察した。
少女の外見は…長い黒髪で美人…大和撫子という言葉があてはまる。

(あはは……あーどうしよっかなー。どうやって―――――――)

痛い

さきほどの疲労感や不快感が徐々に薄れていき、今度はまったく違った痛みが体中に滲み出て、美琴の体を蝕む。
何故か黒髪の少女が美琴の視線に気付いたのかこちらを見つめてきた。
それにつられ、上条もこちらに向いた。

「おーい御坂」

と上条は手を振りながら呼びかけてきた。
すると少年の隣にいる少女がこちらやってきて無表情で口を開いた。

「私。■■■■。上条くんの■■。よろしく。あなたは?」

今なんていったのかしらこの女…上条の■■?

――――アはハコいつバかなノネ

痛い痛い痛い痛い痛い痛い

嘘に決まってる!そんなはずはない!!ありえない!!!!

「冗談だよ、そんなんじゃねーよ」

と上条はふざけたように返す。

――――明白な拒絶が見られない

ほんの数秒、美琴は上条に向かって目を吊り上げたあと、視線を黒髪の少女に戻し、
美琴は無理やり平静を装い■■に軽く自己紹介した。
作り笑いでもちゃんと笑顔で話せただろうか

「私。帰るね。上条くん。御坂さん。またね」

この女はそういうと去っていった。相変わらずの無表情で…
この■■とかいう女は危険だ。直感的に同じ―――――。


199 名前:美琴「えへへ………」12/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:36:13.58 ID:Dv8i5P60
はやくしないとアイツを■われてしまう。

私のモノが汚されてしまう。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

(賭けなんかもうどうでもよくなってきちゃった……………)

「アンタさ………私今から、妹に会いに行くの、一緒に来ない?」

妹達を盾に取り、妹達がいる病院に上条を連れて行く、しかし、
病院内であっても妹達がいる臨床研究エリアと呼ばれている場所に用はない。

「さっきから何も話さねーけど、どうしたんだよ」

美琴は少年の呼びかけに対して無言で彼の腕を引っ張る。
シスターとの賭けも利用させてもらう……………。
美琴の頬は自然と綻ぶ、目は黒曜石のごとく濁っていた。
ようやく欲しいものが手に入るやっとやっとやっとやっと。





病院の前につき、美琴は上条に携帯の電源切りなさいよと忠告する。
上条が電源を切ったのを美琴は確認する。
ホッと一息つこうとしたら、足元がぐらつき、倒れそうになった。
上条を探すために数時間もの間走り回ってきたせいか、
さっきまでの身を裂けるような痛みが急に無くなったせいか、
どちらにせよ自分が倒れる必要があったので、わざと倒れることにした。
アイツなら心配してくれるはずだ。
アイツなら大丈夫だとわかるまで側にいるはずだ。
自惚れではない…………。

「お…い………御坂!?…」

(アハハ、やっぱり、心配してくれた。嬉し――――)

そこまで思った瞬間、美琴の意識は本当に途切れてしまった。

200 名前:美琴「えへへ………」13/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:36:43.77 ID:Dv8i5P60
美琴は目が覚めると寮ではない薄暗い空間に寝かされていることに気づいた。
しばらく辺りを見渡すと、
さっきまでいた少年が壁にもたれながら椅子に座って寝ていること
自分が病院にいること
自分の制服がハンガーに吊るされていること
自分が病院服を着ていることが
理解できた。
病院の前で予想外にも倒れたことを思い出す。
予感は的中していた。
現在、目の前に少年がいる。
美琴は寝ている少年をベッドの中に引き摺り込み、
少年に抱き寄せる。彼は気持ちよさそうに寝言を洩らした。

「ぅん…………イン………デックス……」

ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり

「……抱…きつく…………なよ……」

どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――私じゃないの?
私は――――そこにいないの?――――――――――――――――――――

どうやって少年の心からシスターを追い出そうか。
自傷?監禁?調教?誘拐?殺人?軟禁?強姦?強奪?
もう手段は選ばない。仕方ない。
彼の携帯があるかを物色し、携帯を取り出すと、
少年に気付かれないように、そっと病室を出る。
ふらふらとした体を強制的に屋上へと持っていく。
屋上には昼間の暑さとはうって変わって、涼しい風が吹いていた。
さっきまで荒れ狂っていた心を落ち着かせる。
携帯を開き、電源を入れると、

――――着信アリ、二十三件

いずれもインデックスと表記されたものからだった。
最終下校時刻ちょうどに一件、午前零時以降から十分ごとに一件ずつ。


201 名前:美琴「えへへ………」14/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:37:09.82 ID:Dv8i5P60
(あっまた鳴った)

そろそろいいかな?

携帯が鳴る音がして、美琴は電話を取った。

『やっと、つながったんだよ、とうま!!何してるんだよ!!』

「こんばんわ~♪元気してた~?」

『どうして短髪が…』

「私いま、アイツと私の部屋にいるの」

『何言ってるんだよ!!!どうして短髪なんかと!!!』

「ちょっと静かにしてくれるかしら、今あいつ寝てるからさ。
 あの後さ、私アイツに告白したの。そしたらいきなり抱きついてきちゃってさ。
 アイツ、自分の部屋じゃ、邪魔なやつがいるからって言って、
 無理やり私の部屋来ちゃって、いきなり唇を奪われて、
 獣のように押し倒してきてさ、
 もー大変だったのよ?嬉しかったけどね。
 女の悦びってやつかしら?
 あ、でもアンタみたいな子供にこんな話しても何言ってるか分からないかー」

途中でぎゃあぎゃあ言ってくるシスターの言葉を無視し、電源をきる。
アドレス帳の中身が気になり、
■■■■という記号があるかどうかを確認すると携帯に電気を流し、壊す。

美琴の虚言に踊らされ理性を失ったかのように憤怒する少女に対して美琴は冷静だった。
私はこのさき雌猫を目の前に理性を保つことができるだろうか?
■■という黒髪の少女を目の前にしてそれが崩壊しかけたのは事実だ。
意図も簡単にさっきのシスターのように■■の欺瞞に惑わされた私――――。
短絡的に感情に身を任すだけは避けたい。いつか襤褸が出る。
あの『小説』のヒロインと同じ道だけは辿ることを避けたい。

口元が歪んだ。自分でも分かるほどに

あと一押しでシスターは潰れる。
あと少しで、少年の吐息が、手が、優しさが、逞しい肉体が―――――全てが手に入る。
雲間から差し込む月明かりに照らされた美琴は薄幸な少女にスポットライトを当てられるような。

上条が寝ている病室に戻り、再度少年の右腕に抱きつく。

(もう一生離さない。当麻のそばに這い回る害虫共は始末してやる)


202 名前:美琴「えへへ………」15/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:37:35.02 ID:Dv8i5P60
それが終わったら…………

「えへ…」

大星覇祭―――――
組みが別れたら罰ゲームをかけて競い合うのもいいかもしれない。
人気のないところで
競技で怪我をした彼を手当てしたり、
競技が終わった後の汗まみれの彼をタオルで拭く。
昼食は両親揃ってのお見合いみたいな食事会、
当然、昼食の弁当は私のお手製。

一端覧祭―――――
学祭の準備期間、あらかじめ与えられた衣装を少年の前で披露する。
私はかわいいと彼に褒めてもらい頬を染める。
学祭の間、店番がない間は二人で手をつなぎながら店を回る。
当然、これが超能力者の彼氏だと周囲に見せつけ、友人には冷やかされる。

「えへへ……」

休日のデート―――
手は恋人つなぎして街を歩く、予定とか決めずにぶらぶら歩くのもいい。
カラオケとか映画館とかショッピングとかゲーセンとか行ってその後は………
心地よい妄想の産物が美琴を支配してゆく、次第に体が熱くなるのを感じた。

(ダメ、当麻の前で……そんなこと…………)

さっきまで自分に絡みついていた少年の右腕をほどき、腕枕と同じ位置に持っていく。
その腕の下に身を縮こまらせた。


――――――――――――――

――――――――

―――

203 名前:美琴「えへへ………」16/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:38:05.43 ID:Dv8i5P60
目が覚める。部屋が明るい…もう朝なのか…
時間を確かめるべくあたりを見渡すと
目の前には寝転んだままで石のように固まった上条がいた。
慌てたように彼は口を開く。

「お、おおおおおはよう御坂」

昨日の自慰の所為か着衣が乱れていることにも気付かずに
寝ぼけたまま、美琴は上条に身を寄せ少年の胸に顔を摺り寄せる。

「みみみ御坂さんどうなさったのでしょうか?」

慌てて言葉を投げかける少年に対して美琴は寝ぼけた頭を覚醒させ、
自分の行為を自覚してしまった。

「ふにゃあ」

美琴は羞恥から倒錯した頭が放電を起こしてしまう。
上条は、予知能力でもあるのか空いた右手を咄嗟に美琴の背中に回してしまった。

「……ぁ……ん…っ……」

美琴は思わず甘美な吐息を漏らす。
少年に触られ、そして
昨日の自慰の余韻の所為か再び息が荒くなり、冷めた身体が再び熱を帯び始める。

(私をこんなのした責任とってよ…………はやく、楽にしてよ……)

文字通り胸襟を開きたくて胸がうずうずする。
潤んだ瞳を上目遣いで見つめ、どこか寂しそうな表情は庇護欲をそそるような。
上条は美琴から視線を逸らし、トイレと言ってこの場から逃げ出した。

(意気地なし…………)

下着が濡れていて、若干気持ち悪かったので、少年が戻るまでに着替えることにした。
ついでに制服に着替える。
かわいらしい下着を脱ぎ、短パンを下着代わりにする。
今日ほど、短パンに感謝した日はなかった。
常盤台の短いスカートの下が何もないのはつらいからだ。
上条が病室に戻った。着替え終わった美琴を見て、盛大に土下座した。
美琴は俯きながら、気にしなくていいわよと言う。
しばらく、病室に沈黙が続いたがそれを破ったのは上条であった。


204 名前:美琴「えへへ………」17/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:38:40.98 ID:Dv8i5P60
「もう動けるのか?」

「まだちょっとしんどい」

「あんまり無理すんなよ」

「そんなにたいしたことないって、ちょろっと出るわ」

「どこにいくんだよ?」

「察しなさいよ。バカ」

美琴はそういうと心を落ち着かせようと病室を出る。
そして数秒後ハッとする。
自分と同じ電磁波を数メートル先に感じ取れたからだ。
さっきの甘い雰囲気とは一転し、想い人を独占するために考えを巡らす。
ふと次の一手が頭に浮かんだ。
妹達のうちの一人――少年が呼ぶ御坂妹――を捕まえ、
私のふりをしてくれと頼んだ。
ミサカには何のメリットがあるのですか?と問い返されたが、
アイツのそばに居れるのよと言うと、やりますと即答された。
妹と少年が一緒にいるのは気に喰わないが仕方ない。我慢だ。
あとでいっぱい少年に甘えればいい。




第七学区の上条の家に着くまでの間、美琴は考えていた。
シスターのことだ。害虫の中でも寄生虫だと断じていい。
当麻の優しさという甘い蜜を吸いながら生きている…………
そんな寄生虫は■してやろうと思った。
幻想猛獣を倒したみたいに表皮をぐずぐずに焼いてから、
超電磁砲で撃ち■してやろうと思った。

救われたい

幻想御手の件と違うのは救われる対象が無能力者から超能力者に替わるだけ。ただそれだけ。
しかし、■した後が面倒だから止めた、今は一分一秒でも早く上条のところへ行きたい。
矛盾した二つの旋律が不協和音を奏で、その音が美琴の脳内に不快感を増幅させる。
少年の寮につき、エレベーターに乗り、部屋の前につく。
呼び鈴を押すとか面倒なので、ドアを開ける…………鍵は開いていた。
玄関にはシスターが膝を抱え地べたに座りこんでいた。

「と…うま…」

「やっほー♪捨て猫さん」

205 名前:美琴「えへへ………」18/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:39:08.54 ID:Dv8i5P60

「…ぇ…………どうして……」

「やっぱり、当麻がアンタに会いたくないって、お願いだから出て行ってだってさ」

「嘘なんだよ…謝るから…料理も掃除も洗濯も手伝うから…帰ってきて欲しいんだよ」

シスターは口をもごもご動かしているだけで、後になるにつれて言葉は聞こえてこない。

「へぇアンタ、本物の寄生虫だったんだ、家事の何一つできないなんて
 そんなんじゃ、当麻も本当に苦労してたんだー」

「………………………………………」

「………(あはは)」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

一瞬、無言だった害虫がジージー鳴いている。
何を言っているのか理解できない。
すると、ふらふらと立ち上がり、誰かに電話しだした。
電話が終わると部屋から出て行った。
美琴も部屋を出て、今朝いた病院に戻る。




上条がいる病室の前に着くとしばらくして、自分と同じ顔の少女が出てきた。

「もう終わりですか?とミサカは正直がっかりです」

「 ア ン タ 、 ア イ ツ に 何 か 手 を 出 し た ? 」

「ひっ………とミサ「ごめん、ごめんありがとね」

あとこのこと二人だけの秘密だからねと付け足し、別れを告げると美琴は病室に戻り、
上条のもとへ行く。

「私もう大丈夫だから、今までそ、その……一緒に居てくれてありがとね」

この後少年は糞忌々しい寄生女のことで悲しむだろうから、それを慰めて終わりだ。
病院にも用はないし、昼食でも食べに行こうと提案する美琴に

「御坂は妹に会いに来たんじゃないのか?」

との上条の問いかけ。それに対して

「昨日だったらいけたんだけどねー。今日は検査っぽいから無理みたい」

と美琴は言葉を濁す。

206 名前:美琴「えへへ………」19/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:39:34.81 ID:Dv8i5P60
美琴は何を思ったのか急に携帯の番号教えてくれない?と上条に頼んだ。
彼は素直に応じてくれた。
もちろん、携帯は美琴が回収した。あるはずがない。
携帯を失くしたと言い、相変わらず不幸だと呟く上条に、

「一緒に携帯買いに行かない?そのぐらい私が買ってあげるわよ?」

と美琴は提案した。上条は絶対に拒否すると思ったから、
間髪いれずにお詫びよ、お詫びだから勘違いしないでねーと付け足す。
携帯の購入の前に、適当なファーストフォード店で昼食を済ませてから
二人で携帯を買った。そのとき少年の携帯番号を初めて知った。
多少のやり取りのあと、二人は帰った。
今更気付いたのだが今日は休日だった。
常盤台の寮に戻る。部屋についた瞬間黒子が抱きついてきた。

「ごめんね、心配したでしょ?」

そのまま黒子の背中に腕を回す。

「お姉さま、とうとう素直になられましたの?」

「私、素直になったよ」

美琴はえへへと笑い。嬉しそうに抱きつく後輩をあしらうつもりはなかった。


207 名前:美琴「えへへ………」20/20[saga] 投稿日:2010/05/14(金) 13:40:03.13 ID:Dv8i5P60
夕方まで適当に時間を潰し、そろそろ日の落ちる時間だ。
美琴は頃合いだと思って
今日初めて知ったばかりの少年に電話をかける。
ツーコールの後、彼は電話にでた。彼の声は死んでいた。

「元気出しなさいよ。なんなら私が相談に乗るわよ?」

美琴はそう言うと、少年の寮へ向かって歩き出す。
本日二度目になるのだが。
部屋についた。当然だが部屋には少年しかいない。
少年はなかなか理由を教えてくれなかった。
私はそれが彼なりの優しさだと理解しているから気にしない。
それ以前に諸悪の根源は私だからだ。
目の前にいる彼は
泣きそうで今にも押し潰されそうな表情――以前の私と同じような――をする。
美琴は少年を抱きしめた。腰に手を回し、私を頼ってと耳元で囁く。
そしてこう続ける。

「何があったか知らないけど、私がそばにいてあげるから」

母性溢れる年上の女性のように温かく愛撫するかのように優しく少年に言葉をかけ、背中を擦る。

「…みさ……か…」

「一人で背負う必要なんてないんだからね」

「……………みさか……」

そしてついに美琴を抱き返す上条に少年からは見えない位置で美琴はほくそ笑んだ。

「今は私だけを見て…気が済むまで私を………好きに……して…いいから」




208 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 13:40:40.86 ID:Dv8i5P60 [22/22]
スレ汚し失礼しました。

Tag : とあるSS総合スレほのぼの

コメント

No title

KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE

ほのぼのじゃねえwww

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