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黒子「半額弁当ですの!」 第2章
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/13(木) 23:36:48.32 ID:yepqOhQo [25/30]
第二章いきます。
このSSがベン・トーの販促になってなにより。
目指せこのラノ2011 第一位!
第二章いきます。
このSSがベン・トーの販促になってなにより。
目指せこのラノ2011 第一位!
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:37:52.53 ID:yepqOhQo [26/30]
第二章 幻想殺し お前ならできるさ、きっとな >上条当麻
黒子「だりゃあああああ!! ですのっ!」
結標「甘い! 甘いわよ!」
二人の打撃が交錯し、余波を撒き散らす。
両者ともスピード型の《狼》であるが故に、なかなか決定打こそ放たれないが、しかしその余波で双方かなり疲弊していた。
今、弁当コーナーに残っている半額弁当はたったの一つ。
そして、生き残っている《狼》は二人。
その符号が表すものは一つ。
生き残るのは――たったの一人。
黒子が瞬速の抜き手を放てば、それを結標が受け流す。
結標が鋭角な蹴りを放てば、それを黒子が捌ききる。
高速のやりとりの中、互いに弁当へ手を伸ばす事も忘れない。
どちらかが手を伸ばし、どちらかがそれを弾く。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:44:21.21 ID:yepqOhQo [27/30]
永遠に続くかと思われた攻防。しかし、そこへ割り込む影があった。
弁当コーナーの近くで倒れていた、ジョニーっぽいジャージ姿の男である。
ジョニー「うおおおおお!!!」
叫び、カゴを振り上げる。
再起不能と思われていた敵の攻撃に、しかし彼女らは一切狼狽えなかった。
互いにバックステップでカゴを避けると、体制を崩したジョニーへ挟撃をかける。
ジョニー「むん!」
しかしジョニーも負けてはいない。すかさずカゴの持ち手を握り、振り回すように一回転。全方向へ牽制を放つ。
だが、黒子と結標はこれを完全に読んでいた。
たしかに一回転攻撃は密集地帯では有効だ。しかし、こうして身動きを取りやすい場所では、上下方向からの反撃を許す。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:45:29.96 ID:yepqOhQo [28/30]
黒子が床を蹴り上へ。
結標が潜り込むように下へ。
ジョニーが体勢を整えようとした時にはもう遅い。
完全なコンビネーションで決まった上下からの打撃は衝撃を逃がさず、余すこと無くジョニーへダメージを与えていた。
轟ッ……と、ジョニーの巨体が地に沈む。
スタと地に降り、ここで黒子は気づく。己が結標に嵌められた事に。
地上から攻撃を放っていた結標は、打撃を与えると同時に弁当コーナーへダッシュをかけていた。
空中にいた黒子に、これを追う術はない。
彼女が走りだそうとした時には、すでに最後の半額弁当は結標の手にあった。
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:52:21.29 ID:yepqOhQo [29/30]
ズルズルと、どん兵衛をすする音が公園に響く。
黒子だ。
その横で温めた弁当のパックを開ける「カポ」と言う音。
恨めしそうに、黒子はベンチに座る面々を見やった。
先ほど黒子が取り逃したジャージャー麺弁当を啜る結標淡希。
先に弁当を奪取してレジに並んでいた上条当麻が箸をつけるのは、巨大なハンバーグが中央に鎮座するボリューム満点の弁当。
黒子「そう言えば、今日は見慣れぬ《狼》が何人かいましたわね」
どん兵衛の揚げにかぶりつき、中から滲み出してくる汁と共に味わいながら、黒子が言った。
上条「そうだな。あれは恐らく、東区の狼だろう」
答え、上条がハンバーグを二つに割る。すると湯気を立ち上らせる断面から、とろりとチーズが流れ出す。
上条は不敵な笑みを浮かべると、二つに割ってもまだ大きいハンバーグを持ち上げ、
チーズが溢れ無いよう気をつけながら口へ運んだ。
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:56:39.98 ID:yepqOhQo [30/30]
食いつき、噛みしめる。
するとどうだろう。ハンバーグの間から濃厚なチーズが溢れ出し、そこへ肉汁たっぷりのひき肉がダイブする。
柔らかかったチーズが口の中で徐々に冷え、肉と複雑に絡み合い、肉に独特な風味を与える。
一口食べただけなのにどっしりとした重量感を残すハンバーグ。
食べきれるか? と、思わず弱気になる上条だったが、咀嚼するうち、それが杞憂であると考え直す。
弁当箱の片隅、熱で若干しんなりとしたキャベツの中に、それよりも少し濃い緑色を見つけたのだ。
上条(これは……シソか!?)
そう、キャベツの間に紛れている千切りのシソが、こってりとした口の中を洗い流し、そのサッパリ感がさらなる一口を誘導する。
なんと、完璧に計算された弁当だろう。ハンバーグが! チーズが! キャベツが! シソが!
すべての食材が調和を持って奏でるハーモニー! この弁当こそまさしく――
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:05:16.12 ID:Ma1Pw.go [1/8]
黒子「当麻さん!」
上条「はっ!?」
結標「どうしたのよ上条くん。必死に弁当をがっついちゃって」
上条「すまん、あまりにも美味かったもんだから」
気づけば黒子たちも各々食事を終え、なぜ見慣れぬ狼たちが現れたのかと話をしている所だった。
黒子「それで、先程結標さんに聞きましたけれど、第七学区に『東区』と『西区』という括りがあったんですのね」
上条「ああ、と言っても、そう呼んでいる殆どが東の連中だけどな。あちらはどちらかと言うと功名心の高い狼が多いからさ」
結標「そう。そして東の狼達は何かと順位を付けたがるの」
黒子「順位……ですの?」
結標「えぇ、『この学区で一番強い狼は誰か』という事を重要視するの。
イマジンクリエイト
そして、今東区で最強と呼ばれる狼の名が《幻想創造》」
黒子「なんだか、三年後にでも戦うことになりそうな名前ですの」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:10:49.17 ID:Ma1Pw.go [2/8]
結標「幻想創造は強いわよ。若くして頭角を表し、まるで強くなりたいという幻想を具現化したかのような速度で成長してきた。
最近は新しく引き入れた犬を調教し、雷神の名を冠する『幻想』を作り上げたそうだけれど……」
黒子「ちょっと待ってくださいですの。『幻想』を『創造』するって、まるで当麻さんの二つ名と対になるようですわ」
結標「その通り。《幻想創造》は昔、西区の《狼》だったのよ。それが《幻想殺し》に負け、東へと逃げた」
黒子「そうなんですの?」
上条「あぁ、その頃のアイツはまだ新米の《狼》だったからな。血気盛んで、やたらと力に拘る奴だった。
俺にはアイツが何故そこまで力を求めるのかは分からなかったが、
《狼》として向かって来た以上《狼》として答えてやることしか出来なかったんだ」
黒子「なるほど。ではそれと、東区の狼がこちらへ流れてきている事と、何か関係が?」
上条「さあな。ま、それほど珍しいことではないさ。俺だってたまに、東のスーパーに顔を出す事だってある。血気盛んな東のヤツらなら尚更さ」
結標「そうね、気にする程の事では無いわよ。それじゃあ私は孤児院の仕事もあるし、帰るわ」
上条「ああ。じゃあな、結標」
黒子「ごきげんよう、結標さん」
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:20:13.47 ID:Ma1Pw.go [3/8]
軽く手を振り、結標が公園から去っていく。
その後もベンチから動かない所を見ると、上条はまだ帰りそうにない。
黒子はさりげなく彼の近くに座り直した。
黒子「今日は用事が入ってしまい申し訳ありませんでしたの。お姉さまとのお買い物はいかがでした?」
上条「んー? 映画は面白かったぜ。その後、御坂と感想を言いあったのも楽しかったし。ただ買い物の方は結局行けなかったからな」
黒子「何故ですの?」
上条「御坂の奴が急に用事が入ったとかで帰っちまってな。なんだったんだ?」
黒子(はぁ……お姉さまったら、また緊張に堪えきれなかったんですのね……)
美琴の性格から結論付け、黒子は呆れながらも、どこか安堵している自分に気づく。
それが上条に伝わらないよう、慌ててニヤケかけていた表情を元に戻すと、さらに上条へと問いかけた。
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:29:45.41 ID:Ma1Pw.go [4/8]
黒子「その《幻想創造》なる人物、東区最強と言われながらも元は新米の狼だったんですのね」
上条「ああ。ただ、何処か片鱗のようなものは見せていたように思う」
黒子「そう、ですの……今日も半額弁当を手に入れられませんでしたし、何だかその御方が羨ましいですわ」
上条「何、黒子もすぐ強くなるさ。おれが保証する」
黒子「当麻さんを超えられるくらいに、ですの?」
上条「ははは。お前ならできるさ、きっとな。ただ、そう簡単に抜かさせやしないぜ」
黒子「言いましたわね、後で吠え面をかいても知りませんのよ!」
上条「おう。期待してるぞ、黒子」
優しく微笑みかけられ、黒子は思わず狼狽えてしまう。
黒子(その笑顔は、反則ですの……)
上条「それじゃ、俺も帰るかな。送ろうか?」
黒子「いえ、テレポートを使えばスグですし、結構ですの」
上条「そうか。またな、黒子」
黒子「ええ。さようなら、当麻さん」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:35:55.11 ID:Ma1Pw.go [5/8]
上条を見送り、黒子も帰路に着く事にした。
テレポートを繰り返し、寮監の目から逃れるため、寮の外からベランダへ直接跳躍。靴を脱いで部屋へ入る。
美琴「あら黒子。おかえり」
黒子「ただいまですの! お姉さま~」
美琴「ちょっ!? とびかかってくんな!」
ビリビリと美琴の前髪から紫電が迸り、黒子がジタバタと床の上で悶絶する。
いつものやり取りである。
黒子「うぅ……ひどいですの」
美琴「どっちがよ!」
黒子「そ、そう言えば。今日はデートの途中で帰られたそうですが、一体何をしていらしたんですの?」
美琴「でででデートって!? 別にそんなんじゃないわよ……
ま、まぁ買い物の前に帰ったのは、その――ちょっと友達に頼まれごとされちゃって」
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:41:39.62 ID:Ma1Pw.go [6/8]
黒子「頼まれごと? 照れて一緒にいるのが耐えられなくなったのではありませんの?」
美琴「だ、誰があいつなんかに照れるか!
そ、それに最後の方は結構いい雰囲気だったんだから…… って、何言わせるのよ!」
黒子「ま、まぁいいですが……ところでお姉さま、最近お疲れのようではありませんの?」
美琴「え? そ、そう?」
黒子「ええ。最近少しお肌が荒れているような……なんだかヤツれているような気もしますし」
美琴「気のせいだって。でも、心配してくれてありがとね、黒子」
黒子「お、お姉さま……」
これは完全に予想外だった。
黒子はこの後「余計なお世話よビリビリー!」とでもされるだろうと思っていたのに。
いや、お仕置きされるのを前提で話しかけるのもどうかと思うが。
ともかく。不意に優しい言葉をかけられ、思わず黒子は立ち尽くしてしまったのだった。
そして、そこへさらなる不意打ちがかけられる。
美琴「黒子。あんたはずっと、私のパートナーだから」
黒子「お、お姉さま?」
黒子(なななななぁ!? どういう事ですの!? まさかお姉さまの方から、わたくしを抱きしめてくださるなんて!)
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:46:35.62 ID:Ma1Pw.go [7/8]
黒子がわきわきと怪しい手つきで美琴の細い腰に腕を回そうとした時だった。
スッと、美琴の方から離れて行ってしまう。
美琴「ごめんね、急にこんな事して。さ、今日はもう寝るわ」
黒子「えっ? そんな! もうサービスタイムは終わりですの!?
ついに激アツ確変リーチが来たと思いましたのに! この台ハイスペックすぎですの!
……・ん? CR超電磁砲……これは売れるかもしれませんの!」
美琴「おやすみー」
黒子「ナチュラルにスルーするのはやめて欲しいんですの……」
トボトボとシャワーを浴びに行く黒子を尻目に、美琴は本当に布団を頭まで被ってしまっていた。
がっくりと肩を落とした黒子は、制服を脱ぐと替えの下着を用意し、いそいそと浴室へと向かう事にした。
バタン。と、浴室の扉が閉じ、中から水の跳ねる音が聞こえ始める。
美琴「ごめんね、黒子。でも私は――私は、東の《狼》なの」
その呟きは、布団のなかで反射し、誰にも聞かれること無く、消えた。
第二章 終了
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:49:23.95 ID:Ma1Pw.go [8/8]
こんな感じ。このペースだとめちゃくちゃスレ余ると思うし、番外編のリクエストとかあったら書いてくだしあ。
三章は明日の夜くらいに投下できたらいいなと思うます。
製作はゆっくりできていいなぁ……
では、おやすみなさい。
第二章 幻想殺し お前ならできるさ、きっとな >上条当麻
黒子「だりゃあああああ!! ですのっ!」
結標「甘い! 甘いわよ!」
二人の打撃が交錯し、余波を撒き散らす。
両者ともスピード型の《狼》であるが故に、なかなか決定打こそ放たれないが、しかしその余波で双方かなり疲弊していた。
今、弁当コーナーに残っている半額弁当はたったの一つ。
そして、生き残っている《狼》は二人。
その符号が表すものは一つ。
生き残るのは――たったの一人。
黒子が瞬速の抜き手を放てば、それを結標が受け流す。
結標が鋭角な蹴りを放てば、それを黒子が捌ききる。
高速のやりとりの中、互いに弁当へ手を伸ばす事も忘れない。
どちらかが手を伸ばし、どちらかがそれを弾く。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:44:21.21 ID:yepqOhQo [27/30]
永遠に続くかと思われた攻防。しかし、そこへ割り込む影があった。
弁当コーナーの近くで倒れていた、ジョニーっぽいジャージ姿の男である。
ジョニー「うおおおおお!!!」
叫び、カゴを振り上げる。
再起不能と思われていた敵の攻撃に、しかし彼女らは一切狼狽えなかった。
互いにバックステップでカゴを避けると、体制を崩したジョニーへ挟撃をかける。
ジョニー「むん!」
しかしジョニーも負けてはいない。すかさずカゴの持ち手を握り、振り回すように一回転。全方向へ牽制を放つ。
だが、黒子と結標はこれを完全に読んでいた。
たしかに一回転攻撃は密集地帯では有効だ。しかし、こうして身動きを取りやすい場所では、上下方向からの反撃を許す。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:45:29.96 ID:yepqOhQo [28/30]
黒子が床を蹴り上へ。
結標が潜り込むように下へ。
ジョニーが体勢を整えようとした時にはもう遅い。
完全なコンビネーションで決まった上下からの打撃は衝撃を逃がさず、余すこと無くジョニーへダメージを与えていた。
轟ッ……と、ジョニーの巨体が地に沈む。
スタと地に降り、ここで黒子は気づく。己が結標に嵌められた事に。
地上から攻撃を放っていた結標は、打撃を与えると同時に弁当コーナーへダッシュをかけていた。
空中にいた黒子に、これを追う術はない。
彼女が走りだそうとした時には、すでに最後の半額弁当は結標の手にあった。
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:52:21.29 ID:yepqOhQo [29/30]
ズルズルと、どん兵衛をすする音が公園に響く。
黒子だ。
その横で温めた弁当のパックを開ける「カポ」と言う音。
恨めしそうに、黒子はベンチに座る面々を見やった。
先ほど黒子が取り逃したジャージャー麺弁当を啜る結標淡希。
先に弁当を奪取してレジに並んでいた上条当麻が箸をつけるのは、巨大なハンバーグが中央に鎮座するボリューム満点の弁当。
黒子「そう言えば、今日は見慣れぬ《狼》が何人かいましたわね」
どん兵衛の揚げにかぶりつき、中から滲み出してくる汁と共に味わいながら、黒子が言った。
上条「そうだな。あれは恐らく、東区の狼だろう」
答え、上条がハンバーグを二つに割る。すると湯気を立ち上らせる断面から、とろりとチーズが流れ出す。
上条は不敵な笑みを浮かべると、二つに割ってもまだ大きいハンバーグを持ち上げ、
チーズが溢れ無いよう気をつけながら口へ運んだ。
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:56:39.98 ID:yepqOhQo [30/30]
食いつき、噛みしめる。
するとどうだろう。ハンバーグの間から濃厚なチーズが溢れ出し、そこへ肉汁たっぷりのひき肉がダイブする。
柔らかかったチーズが口の中で徐々に冷え、肉と複雑に絡み合い、肉に独特な風味を与える。
一口食べただけなのにどっしりとした重量感を残すハンバーグ。
食べきれるか? と、思わず弱気になる上条だったが、咀嚼するうち、それが杞憂であると考え直す。
弁当箱の片隅、熱で若干しんなりとしたキャベツの中に、それよりも少し濃い緑色を見つけたのだ。
上条(これは……シソか!?)
そう、キャベツの間に紛れている千切りのシソが、こってりとした口の中を洗い流し、そのサッパリ感がさらなる一口を誘導する。
なんと、完璧に計算された弁当だろう。ハンバーグが! チーズが! キャベツが! シソが!
すべての食材が調和を持って奏でるハーモニー! この弁当こそまさしく――
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:05:16.12 ID:Ma1Pw.go [1/8]
黒子「当麻さん!」
上条「はっ!?」
結標「どうしたのよ上条くん。必死に弁当をがっついちゃって」
上条「すまん、あまりにも美味かったもんだから」
気づけば黒子たちも各々食事を終え、なぜ見慣れぬ狼たちが現れたのかと話をしている所だった。
黒子「それで、先程結標さんに聞きましたけれど、第七学区に『東区』と『西区』という括りがあったんですのね」
上条「ああ、と言っても、そう呼んでいる殆どが東の連中だけどな。あちらはどちらかと言うと功名心の高い狼が多いからさ」
結標「そう。そして東の狼達は何かと順位を付けたがるの」
黒子「順位……ですの?」
結標「えぇ、『この学区で一番強い狼は誰か』という事を重要視するの。
イマジンクリエイト
そして、今東区で最強と呼ばれる狼の名が《幻想創造》」
黒子「なんだか、三年後にでも戦うことになりそうな名前ですの」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:10:49.17 ID:Ma1Pw.go [2/8]
結標「幻想創造は強いわよ。若くして頭角を表し、まるで強くなりたいという幻想を具現化したかのような速度で成長してきた。
最近は新しく引き入れた犬を調教し、雷神の名を冠する『幻想』を作り上げたそうだけれど……」
黒子「ちょっと待ってくださいですの。『幻想』を『創造』するって、まるで当麻さんの二つ名と対になるようですわ」
結標「その通り。《幻想創造》は昔、西区の《狼》だったのよ。それが《幻想殺し》に負け、東へと逃げた」
黒子「そうなんですの?」
上条「あぁ、その頃のアイツはまだ新米の《狼》だったからな。血気盛んで、やたらと力に拘る奴だった。
俺にはアイツが何故そこまで力を求めるのかは分からなかったが、
《狼》として向かって来た以上《狼》として答えてやることしか出来なかったんだ」
黒子「なるほど。ではそれと、東区の狼がこちらへ流れてきている事と、何か関係が?」
上条「さあな。ま、それほど珍しいことではないさ。俺だってたまに、東のスーパーに顔を出す事だってある。血気盛んな東のヤツらなら尚更さ」
結標「そうね、気にする程の事では無いわよ。それじゃあ私は孤児院の仕事もあるし、帰るわ」
上条「ああ。じゃあな、結標」
黒子「ごきげんよう、結標さん」
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:20:13.47 ID:Ma1Pw.go [3/8]
軽く手を振り、結標が公園から去っていく。
その後もベンチから動かない所を見ると、上条はまだ帰りそうにない。
黒子はさりげなく彼の近くに座り直した。
黒子「今日は用事が入ってしまい申し訳ありませんでしたの。お姉さまとのお買い物はいかがでした?」
上条「んー? 映画は面白かったぜ。その後、御坂と感想を言いあったのも楽しかったし。ただ買い物の方は結局行けなかったからな」
黒子「何故ですの?」
上条「御坂の奴が急に用事が入ったとかで帰っちまってな。なんだったんだ?」
黒子(はぁ……お姉さまったら、また緊張に堪えきれなかったんですのね……)
美琴の性格から結論付け、黒子は呆れながらも、どこか安堵している自分に気づく。
それが上条に伝わらないよう、慌ててニヤケかけていた表情を元に戻すと、さらに上条へと問いかけた。
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:29:45.41 ID:Ma1Pw.go [4/8]
黒子「その《幻想創造》なる人物、東区最強と言われながらも元は新米の狼だったんですのね」
上条「ああ。ただ、何処か片鱗のようなものは見せていたように思う」
黒子「そう、ですの……今日も半額弁当を手に入れられませんでしたし、何だかその御方が羨ましいですわ」
上条「何、黒子もすぐ強くなるさ。おれが保証する」
黒子「当麻さんを超えられるくらいに、ですの?」
上条「ははは。お前ならできるさ、きっとな。ただ、そう簡単に抜かさせやしないぜ」
黒子「言いましたわね、後で吠え面をかいても知りませんのよ!」
上条「おう。期待してるぞ、黒子」
優しく微笑みかけられ、黒子は思わず狼狽えてしまう。
黒子(その笑顔は、反則ですの……)
上条「それじゃ、俺も帰るかな。送ろうか?」
黒子「いえ、テレポートを使えばスグですし、結構ですの」
上条「そうか。またな、黒子」
黒子「ええ。さようなら、当麻さん」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:35:55.11 ID:Ma1Pw.go [5/8]
上条を見送り、黒子も帰路に着く事にした。
テレポートを繰り返し、寮監の目から逃れるため、寮の外からベランダへ直接跳躍。靴を脱いで部屋へ入る。
美琴「あら黒子。おかえり」
黒子「ただいまですの! お姉さま~」
美琴「ちょっ!? とびかかってくんな!」
ビリビリと美琴の前髪から紫電が迸り、黒子がジタバタと床の上で悶絶する。
いつものやり取りである。
黒子「うぅ……ひどいですの」
美琴「どっちがよ!」
黒子「そ、そう言えば。今日はデートの途中で帰られたそうですが、一体何をしていらしたんですの?」
美琴「でででデートって!? 別にそんなんじゃないわよ……
ま、まぁ買い物の前に帰ったのは、その――ちょっと友達に頼まれごとされちゃって」
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:41:39.62 ID:Ma1Pw.go [6/8]
黒子「頼まれごと? 照れて一緒にいるのが耐えられなくなったのではありませんの?」
美琴「だ、誰があいつなんかに照れるか!
そ、それに最後の方は結構いい雰囲気だったんだから…… って、何言わせるのよ!」
黒子「ま、まぁいいですが……ところでお姉さま、最近お疲れのようではありませんの?」
美琴「え? そ、そう?」
黒子「ええ。最近少しお肌が荒れているような……なんだかヤツれているような気もしますし」
美琴「気のせいだって。でも、心配してくれてありがとね、黒子」
黒子「お、お姉さま……」
これは完全に予想外だった。
黒子はこの後「余計なお世話よビリビリー!」とでもされるだろうと思っていたのに。
いや、お仕置きされるのを前提で話しかけるのもどうかと思うが。
ともかく。不意に優しい言葉をかけられ、思わず黒子は立ち尽くしてしまったのだった。
そして、そこへさらなる不意打ちがかけられる。
美琴「黒子。あんたはずっと、私のパートナーだから」
黒子「お、お姉さま?」
黒子(なななななぁ!? どういう事ですの!? まさかお姉さまの方から、わたくしを抱きしめてくださるなんて!)
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:46:35.62 ID:Ma1Pw.go [7/8]
黒子がわきわきと怪しい手つきで美琴の細い腰に腕を回そうとした時だった。
スッと、美琴の方から離れて行ってしまう。
美琴「ごめんね、急にこんな事して。さ、今日はもう寝るわ」
黒子「えっ? そんな! もうサービスタイムは終わりですの!?
ついに激アツ確変リーチが来たと思いましたのに! この台ハイスペックすぎですの!
……・ん? CR超電磁砲……これは売れるかもしれませんの!」
美琴「おやすみー」
黒子「ナチュラルにスルーするのはやめて欲しいんですの……」
トボトボとシャワーを浴びに行く黒子を尻目に、美琴は本当に布団を頭まで被ってしまっていた。
がっくりと肩を落とした黒子は、制服を脱ぐと替えの下着を用意し、いそいそと浴室へと向かう事にした。
バタン。と、浴室の扉が閉じ、中から水の跳ねる音が聞こえ始める。
美琴「ごめんね、黒子。でも私は――私は、東の《狼》なの」
その呟きは、布団のなかで反射し、誰にも聞かれること無く、消えた。
第二章 終了
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:49:23.95 ID:Ma1Pw.go [8/8]
こんな感じ。このペースだとめちゃくちゃスレ余ると思うし、番外編のリクエストとかあったら書いてくだしあ。
三章は明日の夜くらいに投下できたらいいなと思うます。
製作はゆっくりできていいなぁ……
では、おやすみなさい。
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