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黒子「御坂先輩、7月19日ですの」7月20日編
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 20:55:42.02 ID:rSCS392o [3/70]
・・・・・7月20日 水穂機構病院 御坂美琴の病室・・・・・
美琴
「予想通りというか案の定、脳波検査は上手くいかなかったわ。
医者もなんだか訝しげな顔してたし、いよいよまずいかも……さっさと逃げるが勝ちね」
美琴
「よし、まずは制服に着替えて―――」
コンコン
美琴
「?!」ビクッ
美琴
(誰?)
佐天
「御坂さーん?」
美琴
(さ、佐天さん?どうして?)
・・・・・7月20日 水穂機構病院 御坂美琴の病室・・・・・
美琴
「予想通りというか案の定、脳波検査は上手くいかなかったわ。
医者もなんだか訝しげな顔してたし、いよいよまずいかも……さっさと逃げるが勝ちね」
美琴
「よし、まずは制服に着替えて―――」
コンコン
美琴
「?!」ビクッ
美琴
(誰?)
佐天
「御坂さーん?」
美琴
(さ、佐天さん?どうして?)
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 20:57:37.86 ID:rSCS392o [4/70]
佐天
「いないんですかー?佐天ですよー」
美琴
(居留守を使う?いや、昨日ドア開けてたし無意味か。仕方ない)
美琴
「はーい、どうぞー」
ガチャ
佐天
「失礼しまーす。お早うございます。御坂さん」
美琴
「お、おはよう。佐天さん。今日はどうしたの」
佐天
「いやあ、177支部で白井さんに会ったら、まだ入院してるって話だったんで。
お見舞いついでに電撃使いの集いでもしようかなって」
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 20:59:41.84 ID:rSCS392o [5/70]
美琴
「その……電撃使いの集いってのは幻想御手の一件が解決したらじっくりって話じゃなったっけ?」
佐天
「ええ、そんなことも言ったかもしれませんが暇だったし、御坂さんも暇だって昨日言ってたじゃないですか。
だから暇人同士、仲良くしようと思ったんです」
美琴
「そうだったんだ。それはありがたいわね」
(なんつー有難迷惑、タイミングが悪すぎるわよ)
佐天
「でしょー、たまには私だって気を利かせることがあるんです。
初春に注意されてばかりじゃないんですよ」
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:02:57.00 ID:rSCS392o [6/70]
美琴
「それで、電撃使いの集いって具体的には何をやるの?」
佐天
「えっと、特に何も決めてないんで今から一緒に考えましょうか」
美琴
(考えなしって……。適当に切り上げてさっさと逃げ出さないと―――)
コンコン
美琴
(また誰か来た?!)
佐天
「はーい!」
美琴
「あっ……」
(勝手に返事しないでよ……)
ガチャ
木山
「失礼するよ。大脳生理学を研究している木山春生というものだが。
御坂美琴君と―――君は常盤台の超電磁砲だったかな」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:06:09.59 ID:rSCS392o [7/70]
美琴
(木山春生?!なんで―――)
佐天
「はいはーい、超電磁砲の佐天涙子でーす。いやあ、私ってそんなに有名ですかねえ」
木山
「研究者で君の事を知らない人間はいないだろうな」
木山
「それで、君が御坂美琴で間違いないね?
美琴
「はい、そうですけど……」
木山
「君の脳波測定の件を聞かせてもらったよ。なかなか興味深いな」
美琴
(うそでしょ?)
木山
「しかし、この病院の設備じゃ詳しいところまで計測するのは難しいと私は判断した」
美琴
(まさか―――)
木山
「私の研究所の方で精密な検査をしてみようと思うんだが、協力してもらえるかな?
110 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:07:49.07 ID:rSCS392o [8/70]
美琴
(やっぱり……。興味を持った研究者が木山春生って斜め上の展開になるなんて)
美琴
「それって絶対協力しなきゃダメなんですか……?
木山
「ふむ、それは拒否するということかな?」
美琴
「いや、そういうわけじゃないんですけど、これ以上の入院とかは勘弁してほしいかなって。ほら、もう夏休みですし」
木山
「夏休みなら学校にも影響しないし、逆に検査を受けやすいとは思うのだが?
美琴
「そういう意味じゃなくてですね」
木山
「まあ、なんにしろこの学園都市の学生である以上は研究には協力する義務があるからな」
木山
「それとも何か特別な事情でもあるのか?」
美琴
「特別ってほど特別な事情みたいなものはないんですけど……」
(どうすれば―――この状況どう切り抜ける?)
111 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:10:35.22 ID:rSCS392o [9/70]
佐天
「御坂さん……」
美琴
(佐天さん!嫌がる私を見て、まさか助け舟を?)
佐天
「そんなに嫌がることないじゃないですか。脳波検査くらいすぐ終わりますよ。ねえ、木山先生?」
美琴
(期待した私が馬鹿だったー)
木山
「ん、まあ1日で帰れるだろう……何も無ければな」
佐天
「ほら、全然大丈夫じゃないですか」
美琴
(佐天さん、もう黙ってて!)
112 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:12:30.58 ID:rSCS392o [10/70]
木山
「それとも何かね?詳しく検査されると困る理由でもあるのかな?」
美琴
「―――っ」
佐天
「ん?御坂さん、脳波検査されたらまずいんですか?
美琴
「べ、別に不味くは無いけどさ」
佐天
「なら、いいじゃないですか」
木山
「協力に感謝する。私はこの病院で色々やることがあるが、まあ昼前には終わるだろう」
木山
「それが終わり次第、迎えに来るから一緒に研究所の方に行こう」
美琴
「……はい、わかりました」ガックリ
(やられた……)
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:13:53.09 ID:rSCS392o [11/70]
木山
「そんなに落ち込まないでくれたまえ」
佐天
「そうですよ。御坂さん、ちょっとの辛抱なんですから
木山
「……そうだな、研究所に行く前に昼食を近くで摂って行こうか。超電磁砲も一緒にどうかな?」
佐天
「それは奢りですか?」
木山
「まあ、奢りだが。君の方が金持ちだろうし、払いたいなら払っても構わないぞ」
佐天
「いえいえ、ゴチになりまーす」
木山
「やれやれ。じゃあ、また後でな。時間が近くなったら準備しといてくれたまえ」
佐天
「はーい」
ガチャ……バタン
佐天
「木山先生って目つき悪いけど、いい人そうでしたね」
美琴
「うん、そうかもね……」
佐天
「いやあ、奢りかあ。楽しみだなあ」
114 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:15:09.06 ID:rSCS392o [12/70]
とある魔術のインタールード
・・・・・7月20日朝 上条当麻の部屋・・・・
上条
「今日はいい天気だし、布団でも干すかなー」
上条
「天気はいいんだけど、隣のビルのせいで実感がなあ。日照権とかこういう話ってどこに持ってけばいいのかねえ」
上条
「くだらねーこと考えてないで、布団干すぞー」
禁書
「…………」ダラーン
上条
「って、この白い物体はなんだ?」ビクッ
禁書
「…………」グテーン
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:16:59.46 ID:rSCS392o [13/70]
上条
「これって、どっからどう見ても人間だよな……?」
(それにこの服装は修道服っぽいな。修道服って普通は黒いはずだったような気がするが……?)
ピクン
上条
(うおっ、動いた!?)
禁書
「おなかへった」
上条
「…………」
(そして、喋った……外国人なのに日本語の発音上手いな)
禁書
「おなかへった」
禁書
「おなかへった、って言ってるんだよ?」
上条
「…………」
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:18:28.42 ID:rSCS392o [14/70]
上条
「もしかして、行き倒れだから飯を食わせろって言うのか?」
禁書
「見てわかんないのかな?行き倒れの倒れ死に寸前なんだよ!
おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」
上条
「そんなもんわかるわけねーだろ!それに見ず知らずの人間にいきなり飯をたかるな!」
グウゥゥゥゥ
禁書
「い、今のは私のお腹の音じゃないんだよ?」カアアアア
上条
「う~ん」
(なんか幸が薄そうな感じがする子だなあ。しょうがない)
上条
「……ま、上がれよ。冷蔵庫の残り物でなんか作ってやるよ」
禁書
「あ、ありがとうなんだよ。そしておじゃまします」
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:19:57.39 ID:rSCS392o [15/70]
・・・・・・・・・・
禁書
「ごちそうさまなんだよ!」
上条
「ふーん。それで、イギリス清教のインデックスさんは魔術結社とやらに追われてビルを飛び移ろうとした末にうちのベランダに干されてたわけか」
禁書
「そうなんだよ、一歩間違えれば死ぬところだったんだからね」
上条
(魔術結社……魔術、魔術ねえ。
そんなもんありえねえって言いたいところだけど、御坂さんみたいに科学で解明不能な現象があるなら、魔術みたいなもんがあってもおかしくないのかね……?)
上条
「なあ、最近宗旨替えして、不思議な現象も信じるようになったんだけど、魔術ってのもその類って認識でいいのか?」
118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:21:29.20 ID:rSCS392o [16/70]
禁書
「んー。魔術は不思議な現象じゃなくて、あなた達の世界の常識とは違う法則で引き起こされる現象かな。
だから、超常現象とかそういうふうに言われたりもするかも」
上条
「一応、なんでそれが起きるかはわかってるということなのか?」
禁書
「その通りなんだよ。魔術っていうのは体系化されていて、決められた方法を手順どおりに行えば同じ結果が取り出せるんだよ。
ただ、それが科学で証明されてない法則を使ってるというだけの話なんだよ」
上条
(なんか詳しく聞いたらうさんくさくなってきたな……。だけど、御坂さんも同じように大真面目に話してたしな……)
上条
「オーケー、だいたい理解した。世界は知らない事ばかりだってこともよくわかった」
119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:23:40.51 ID:rSCS392o [17/70]
上条
「それでだ。魔術ってのはだいたいわかったし、魔術結社ってのもまあわかる。
だけど、インデックスさんは、なんでその魔術結社に追われてるんだ?」
禁書
「それは私の持ってる、10万3000冊の魔導書を狙ってるんだと思うよ」
上条
「?」
(魔導書……。でも、手ぶらで何も持ってないな……)
上条
「魔導書ってのは本なんだろ?そんなもんどこに持ってるんだ?」
禁書
「それは秘密なんだよ」
「……そうだよな。狙われてるんだもんな。秘密にするのは当然か」
(こういうのって知らない方がいいことだったりするし、深く追求するのはよしておこう)
120 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:26:06.52 ID:rSCS392o [18/70]
禁書
「うん。そういうことなんだよ。それじゃあ、そろそろ私は出てくね」
上条
「ちょっと待てよ。狙われてるんだろ?一人で大丈夫なのか?」
禁書
「大丈夫なんだよ。この私が来てる服は『歩く教会』っていう極上の防御結界なんだから」
上条
「防御結界って……その服がバリアみたいなもんなのか?」
禁書
「これを着てれば、物理、魔術を問わず全ての攻撃を受け流し、吸収しちゃうんだからね」
上条
「そりゃ、またすごいな。どういう仕組みなんだ?」
禁書
「布地の織り方から刺繍の飾り方まで全てが魔術的に計算されてるんだよ。
そうすることで『服のカタチをした教会』になるってことなんだけど、わかる?」
上条
「んー、全くわからんが、特殊製法で造られた凄い服ってことでいいんだよな?」
禁書
「まあ、釈然としないけど間違っては無いんだよ。
そういうわけだから、私は一人でも大丈夫。ご飯ありがとうなんだよ」
121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:28:42.77 ID:rSCS392o [19/70]
上条
「待て待て、それでもダメだ。やっぱり追われてるなんて聞いたら、インデックスさんをほっておけるわけないだろ」
禁書
「むぅ」
上条
「そんな顔されてもなあ。ここにならとりあえず匿ってやれるし、他にも何か出来ることがあるかもしれない」
禁書
「―――じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
上条
「なっ?」
禁書
「ふふっ、大丈夫なんだよ。教会に逃げ込んじゃえば一人じゃなくなるもん。それじゃあね、ばいばい」
上条
「―――なあ、お前の言う地獄って言うのはどんなもんなんだ?」
禁書
「え――?」
122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:31:56.76 ID:rSCS392o [20/70]
禁書
「……地獄は地獄なんだよ。私と一緒だと酷い目に逢うんだから」
上条
「そうじゃなくて、具体的にお前と一緒にいるとどういう事が起きるかって聞いてるんだ。
雷でビリビリやられたり、目が覚めたらいきなり炎が目前に迫ってたり、なんだかよくわからないビームとか、この世に存在しない不思議物質で襲われたり、あらゆる物理現象を反射できる敵と対峙するはめになったりするのか?」
禁書
「そ、そこまで酷くはないんだよ」
上条
「―――なら、たいしたことはねえよ。そんなもん俺にとっては地獄でもなんでもない。日常茶飯事ってやつだ」
禁書
「からかってるの?そんな日常を送ってきて生きてるはずないんだよ」
上条
「まさか、こんな真面目な話をしてる時にからかったりはしねーよ。
お前がその歩く教会を頼りにしてるように俺にだって頼りになるモンがあるんだぜ」
禁書
「でも、絶対迷惑かけるんだよ」
上条
「昨日怒られたばっかりなんだ。女の子をちゃんと送って行けってね。だからさ、ついて行ってやるよ、その地獄の底とやらまでな―――」
123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:36:18.45 ID:rSCS392o [21/70]
・・・・・正午 水穂機構病院 御坂美琴 病室・・・・・・
佐天
「うーん、木山先生遅いですねえ」
美琴
「そうね……」
(佐天さんの相手をしてたら、考えが全然まとまらなかったわ……。
とりあえず、確定事項は二つね。一つ目は研究対象として認識されてるから逃げるのは無理。
二つ目は検査が出来なかったのは機械ではなく私の方に問題有り)
美琴
(これって半分詰んでるわよね……)
コンコン
佐天
「あ、来た!」
124 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:39:40.30 ID:rSCS392o [22/70]
木山
「遅くなってすまなかったね。待たせてしまったようだ」
初春
「失礼します」
佐天
「ありゃ、初春じゃないか」
初春
「佐天さん、来てたんですか?御坂に迷惑かけてないですか?」
佐天
「迷惑なんて全然かけてないって。さっきまで楽しくおしゃべりしてたもん」
美琴
(…………)
佐天
「初春はどうしたん?」
初春
「一昨日捕まえた爆弾魔なんですけど、いきなり意識不明になってしまったんですよ。
風紀委員に連絡があったから様子を見に来たんです」
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:40:54.64 ID:rSCS392o [23/70]
佐天
「へえ、幻想御手の副作用ってやつかな?」
初春
「今のところは何とも言えないですね。情報が少なすぎます」
佐天
「やっぱり、現物がなきゃ話は始まらないか」
初春
「本当なら昨日手に入ってるはずだったんですけどね?
佐天
「もしかして、まだ怒ってる?
初春
「別に怒ってませんよ。ただ、今も一生懸命幻想御手を探してる白井さんが可哀想だなって思っただけです」
佐天
「なんだか急に胸が痛くなってきた……」
初春
「そうですか、ここは病院なんだから診てもらったらどうですか?
佐天
「御坂さーん、初春がいじめるよー」
126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:42:36.85 ID:rSCS392o [24/70]
初春
「さて、私も遊んでる暇はないんでこの辺で失礼させてもらいます。木山先生、約束の方お願いしますね?」
木山
「ああ、わかってる。幻想御手が手に入ったら持ってきたまえ、すぐに解析できるように手筈は整えておこう」
初春
「ありがとうございます。それじゃあ御坂さん、お大事に―――」
美琴
「ちょっと待って、初春さん。黒子に木山先生の研究所に行くけど、大丈夫だからって伝えておいてくれない?」
(とりあえず、黒子にだけは伝えとかないと)
初春
「わかりましたけど、どこか悪いんですか?」
美琴
「ううん、ちょっとした検査をするだけだから」
初春
「そうですか。それでは」シュンッ
木山
「我々も行こうか。病院には話を通してあるからこのままで大丈夫だ」
佐天「さーて、何を食べようかなー」
美琴
「はい、わかりました」
(しょうがない覚悟を決めないと……)
127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:44:31.67 ID:rSCS392o [25/70]
・・・・・・とあるファミレス・・・・・
佐天
「ふー、食べた食べた。木山先生、ごちそうさまでした。やっぱり人にご馳走になると美味しく感じますねえ」
木山
「それはよかった」
佐天
「あれ、御坂さん、食欲無いんですか?全然減ってませんけど?」
木山
「やはり検査を強いることにしたのはまずかったかな?」
美琴
「えっ? そ、そんなことは……。
ちょっと考え事してただけなんで。さっさと片づけちゃうからちょっと待って」パクパク
128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:48:21.72 ID:rSCS392o [26/70]
美琴
(このまま木山と二人きりになるのはまずすぎるわ。
迂闊にボロを出せば一巻の終わりだし、私脳波の異常性―――どのくらいおかしいのかわからないけど、詳しく調べられることになったら長期間拘束されてしまう)
ここから一発逆転できる方法を考えないと……)
佐天
「御坂さん、すごい勢いですねえ」
美琴
(ん?……今ここに佐天さんがいるってことは木山をここで抑えることができるんじゃない!?)
よし、ここは一気に決めるしかないわ)モグモグ、ゴックン
美琴
「ごちそうさまでした」
佐天
「御坂さん、私達に気を使わずゆっくり食べて良かったんですよ?」
木山
「もっと良く噛んで食べた方がいいと思うんだが」
美琴
「まあ気にしないで、それより木山先生に聞きたいことが……」
木山
「ん、何かね?」
129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:49:48.57 ID:rSCS392o [27/70]
美琴
「人体実験で昏睡状態になった生徒さん達は治りそうですか?」
木山
「なんだ…と?」
佐天
「?」
美琴
「樹形図の設計者の使用許可がおりず、とある演算機器でシミュレーションすることにしたんですよね?」
木山
「何故、それを君が知っているんだ」ガタン
美琴
「木山先生落ち着いて下さい。ちゃんと説明しますから」
美琴
「あ、くれぐれも研究の副産物なんて使わないで下さいね。ここには『超電磁砲』がいるんですからね」チラリ
佐天「えっ、私?」
木山
「……どうするかは話を全部聞いてたからだ」
130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:52:00.15 ID:rSCS392o [28/70]
美琴
「それじゃあ、話を進めますね―――突然ですけど、並行世界って知ってますか?」
木山
「……いきなり何を言ってるんだ?」
佐天
「へーこーせかいっていうとSFのアレですか?」
美琴
「そう、その並行世界よ。この世界と並行して存在する別の世界」
美琴
「私って、そういう世界―――しかも、ちょっと未来から来たのよね。ついでに言うと精神だけ」
佐天
「えっ?何それ?どういうこと?」
美琴
「わかりやすくいうと、異世界人ってこと」
木山
「君は私をからかっているのか?」
美琴
「そう思われても仕方ないです。ですが、からかってるつもりなんて一切ありません」
131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:54:39.27 ID:rSCS392o [29/70]
木山
「本気で並行世界だの言うようなら、頭の検査をしっかりしなければならないかもしれんな」
美琴
「あちゃー、やっぱり普通はそういう反応ですよね?」
美琴
「まあそれでいいですよ。
並行世界の存在については常識的に考えれば信じがたいことなんで、信じてくれともいいません。
私の目的は並行世界の宣伝をして信じてもらうわけではないですから。
そういう仮定だと認識していたただければいいです」
木山
「……続けたまえ」
美琴
「ありがとうございます……。私のいた並行世界っていうのは一部を除いてこちらとほとんど同じなんです。
私はその世界で普通に過ごしていたんですけど、朝起きたらこっちの私になっていました」
木山
「なっていた?」
132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:57:10.85 ID:rSCS392o [30/70]
美琴
「この世界の体に私』が上書きされたとでも言えばいいんでしょうかね。話の本筋とはあまり関係ので聞き流してくれて結構です」
木山
「人格の入れ替わりに並行世界。常識的に考えればありえないな」
美琴
「それでも、私がここにいますからね」
木山
「証明する手立てはあるのかね?」
美琴
「あるとはいえばありますけど、ないといえばないです」
木山
「はっきりしないな」
美琴
「さっき、子供達について少し触れたじゃないですか?あれは向こうの世界で仕入れた情報なんです」
木山
「つまり、知りえない情報を知っているから並行世界があるから信じろという話か。弱いな」
133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:58:57.31 ID:rSCS392o [31/70]
美琴
「おっしゃる通りですね。
こちらの世界でもその情報を手に入れようと思えば出来ないこともない、そう言われてしまえばそれまでですから。
ですが、一般の学生が触れられないような情報を持ってるならば、話は少し違うんじゃないですか?」
木山
「確かにな。私の過去は学園都市の闇につながる物だ。一介の学生では情報統制が掛かってている表面上の情報以外は掴めまい」
木山
「では、一つ聞いていいかな?」
美琴
「なんでしょうか」
木山
「その情報はどこで仕入れたんだ?
二つの世界はほとんど同じだと君は言っていた。
ならば、そちらの世界でもその情報を手に入れることはできないのではないか?」
134 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:01:44.82 ID:rSCS392o [32/70]
美琴
「私は木山先生から直接教えてもらいましたから」
木山
「……それは驚いたな。一体どういう状況になれば君にそんなことを話す気になるんだろうか」
美琴
「その辺りも説明したいので話を進めてもいいですか?」
木山
「……ああ、頼む」
美琴
「先ほど、世界は非常にそっくりだと言いましたよね。こちらと向こうは起こる出来事もだいたい一緒なんです。
4日前は知っていた通りに銀行強盗も起きましたし、爆弾魔や幻想御手の副作用による意識不明も起きていました。
そして、私の世界ではどれも無事に解決されました」
木山
「解決した?」
美琴
「ええ、木山先生には残念ですけど」
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:04:48.74 ID:rSCS392o [33/70]
木山
「―――なるほど、君はこの幻想御手の騒動がこの後どうなるかわかるわけだな」
美琴
「一応、顛末まで見届けましたから、木山先生の事情もその時に」
木山
「そういうことか……それなら合点がいくな」
美琴
「まあ、それがこちらと同じ結末になるかどうかは確定してませんけどね」
木山
「なに……、それはどういうことだ?」
美琴
「こっちには私という異分子が紛れ込んでますから。実際に銀行強盗も爆弾魔も知っているとおりにはなりませんでした」
木山
「それは歴史を知ってる君がなにかしてるというわけか?」
美琴
「いえ、そういうわけじゃないです。ほとんど同じでもイコールと言うわけじゃないんです。
こっちとあっちじゃ微妙に配役が違うもんで、どうしても差異が出ちゃうんですよ」
木山
「ほう……。それはまた興味深い話だな」
佐天
「ちょっとちょっと、ちょーっと待って下さい!」
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:07:07.43 ID:rSCS392o [34/70]
佐天
「なんで二人して盛り上がってるんですか?この話って御坂さんの妄想じゃないの?
へーこーせかいだなんて、そんなの信じられるわけないじゃないですか」
美琴
「妄想って……」
佐天
「木山先生は御坂さんの話を信じてるんですか?」
木山
「まあ、八割―――いや九割程度は。私にも信じがたいことだがな」
佐天
「九割も?いきなり異世界人ですって言われたのに九割も信じてるんですか?」
木山
「君は幻想御手の首謀者を知っているかね?」
佐天
「なんですかいきなり、そんなのわかるわけないじゃないですか。
木山
「私だよ」
佐天
「え、ええーーー!?」
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:09:00.17 ID:rSCS392o [35/70]
美琴
「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
佐天
「そうなんですか?!」
美琴
「まあね」
佐天
「あ!だから、幻想御手について知ってるような感じがしたんですね?」
美琴
「うん、そういうこと」
佐天
「だったら、早く教えてくださいよー。初春や白井さんが可哀想ですよ!」
美琴
「一応、黒子は知ってるんだけどね。まあ初春さんには悪いことしちゃってるわね」
佐天
「白井さんは知ってたんですか?」
美琴
「うん、こっちに来た時に一番に説明して味方についてもらった」
佐天
「あっ、それじゃあ白井さんが秘密にしてた情報源っていうのは」
美琴
「そ、私よ。大っぴらに主張して歴史を大きく変えて私の知識が使えなくなることは避けたかったのよ」
佐天
「そういうことだったんですか」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:09:58.88 ID:rSCS392o [36/70]
>>137
みす><
>美琴
>「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
>木山
>「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:13:23.51 ID:rSCS392o [37/70]
木山
「誤差があるとはいえ、知っている歴史をなるべくなぞろうということか。
自分の掌の上でコントロールできる範囲に留めておくのは正しいな」
美琴
「私には『知識』しか頼れるものがありませんでしたから」
木山
「ならば、この状況は本筋にはないイレギュラーな物というわけだな」
美琴
「その通りです。木山先生の研究対象になるなんてことは向こうじゃ起こりませんでしたからね」
このまま研究所に連れてかれてしまえば、私がこの舞台から退場してしまうし、今後が読めなくなるどころか関わることもできなくなるっていう緊急事態なわけですよ」
佐天
「じゃあ御坂さんは、それをどうにかして軌道修正でもしようとしてるんですか?」
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:16:53.02 ID:rSCS392o [38/70]
木山
「いいや、それは違う。彼女が異世界人であるということを私に明かしたということはだな。
この幻想御手の騒動を今ここで解決しようとしているんだ。
軌道修正なんてまどろっこしいことは諦めたのだろうな。私が並行世界という存在を知ってしまえばシナリオをなぞることなんて当然出来なくなる」
木山
「つまり、彼女は前の世界のあったことを説明することで、過程すっとばして結果まで強引に辿りつこうとしているわけだ」
美琴
「そういうことです。木山先生、諦めてくれますか?」
木山
「諦めろか……。君は私がそんなに簡単に私が諦めないということは知ってるはずだろう?」
美琴
「ええ、知ってますよ。当然、木山先生は抵抗しますよね?」
木山
「ああ、当然だ。私の悲願をこんな茶番で止めるわけにはいかないんだ」
美琴
「でも、考えてみて下さい。私が予想出来る事に手を打たず、こんな賭けみたいなことをするわけないじゃないですか?
ここには超電磁砲がいるんです―――超電磁砲とやりあってみますか?」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:18:59.24 ID:rSCS392o [39/70]
木山
「……その自信、私は超電磁砲に敗北したということか」チラリ
美琴
「その通りです。あっちでは手加減されても勝てませんでしたよ。
やるっていうなら止めはしませんが、色々面倒な事になるんで出来ればやめてほしいかな」
木山
「手加減されても……か」
木山
「やれやれ、超電磁砲を食事に誘ったのは失敗だったな。
しばらく研究所に軟禁状態になるだろうから、その前に友達と一緒に食事でもと気を利かせたのが仇となるとはな。
どうも私は子供に甘いようだ……トラウマなんだろうか」
美琴
「二人きりだったら木山先生の勝ちでしたよ。私じゃ木山先生を抑えることが出来ませんから」
142 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:20:25.37 ID:rSCS392o [40/70]
佐天
「なんだかしらないけど、私が鍵になってる……」
美琴
「それはね、さっき配役が違うって言ったでしょ?
本人がいる前で言うのはなんだけどさ、私って向こうでは佐天さんの代わりに常盤台エースの超電磁砲だったのよ。
向こうでもこの一件に首を突っ込んで、木山先生とも一戦交えたってわけ。
こっちの世界に来たらレベル0になってて色々苦労したわ。ホント」
美琴
「そういうわけだから、木山春生を押さえるには超電磁砲の佐天さんが必要だったのよ」
木山
「君が超電磁砲、そういうこともあるのか……」
美琴
「へえ、だから超電磁砲にこだわってたんですか。でも、ちょっと待って下さいよ。
別にこっちでは御坂さんがわざわざ首を突っ込まなくても、風紀委員なり警備員に通報しちゃえば良かったんじゃないですか?」
143 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:22:09.98 ID:rSCS392o [41/70]
美琴
「そういうわけには行かないのよ。この木山春生は多才能力者なのよ」
佐天
「多才能力者?多重能力者じゃなくて?」
木山
「彼女の言う通り、多才能力者であっている
幻想御手は複数の能力者の脳を繋げて脳波のネットワークを形成し高度な演算を可能とするんだ。
そして、その副産物として複数の能力を同時に使うことできるというわけだ」
木山
「だから、理論上不可能といわれている多重能力とは方式が違う。
ちなみに複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワークというのは超電磁砲である君から得たものだよ」
佐天
「あー、妹達のサテンネットワークですね。話は聞いたことがありますよ。つまり私のおかげでやつですか」
木山「まあ、そういうことになるな」
美琴
「その多才能力で複数の能力を操り、追ってきた警備員を簡単に全滅させたのよ。
警備員を差し向けても無駄な犠牲が増えるだけだし、その時点で未来が読める私のアドバンテージも消えてしまう。
だから通報はしなかったし、できなかった」
144 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:23:54.42 ID:rSCS392o [42/70]
佐天
「そんなに多才能力ってすごいんですか?」
木山
「私は実戦で使ったことが無いからなんとも言えないが、彼女がそういうならそうなんだろう。
美琴
「そこそこってところよ。ちょっとビックリするけど、さっきも言ったように勝てない相手じゃなかったわ。
その後に幻想御手のネットワークが暴走して出来てきた幻想猛獣ってやつが厄介だったわね」
佐天
「多才能力に幻想猛獣―――は何か知らないけど、楽しそうな事してるんですねえ」
美琴
「幻想猛獣はAIM拡散力場で構成された化け物って言えばいいのかな?
馬鹿でかい胎児の形をしてたんだけど、幻想御手を解除するまで再生するし、暴れながら原子力施設に向かうわで大変だったわ」
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:26:53.89 ID:rSCS392o [43/70]
木山
「そんな物騒なものが幻想御手から生まれたのか……」
佐天
「そりゃ、すごいですね。私も戦ってみたかったなあ」
美琴
「疲れるだけだからあんまりおすすめしないわ。さて、私の話はだいたい終わりです」
木山
「ああ、わかった。プログラムを止めた後は自首しよう。そんな代物が生み出されるなら下手に暴れるわけにもいかなくなった」
佐天
「あのー、ちょっといいですか?」
佐天
「私って、木山先生がなんでこんなことをしでかしたか理由をまだ聞いてないんですよ。
御坂さんがさっき昏睡した子供たちとか言ってるのは聞きましたけど、詳しい話はさっぱりなんです。
事件も無事解決したようですし、私にも教えて欲しいかあって」
美琴
「……」チラッ
木山
「そうだな……。君には説明を受ける権利があるかもしれないな」
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:28:31.78 ID:rSCS392o [44/70]
木山
「私が巨大な演算機器を必要とした理由は、『暴走能力の法則解析用誘爆』という人体実験で使い捨てのモルモットにされた子供達を助けたかったからだ」
木山
「あの子達の快復手段と事件の原因をシミュレーションをしようと樹形図の設計者の使用許可を申請したが受けいれられることはなかった。
23回だ。23度も申請したが全て却下された。恐らく、統括理事会がグルなんだろう。
だから、私は自分で演算機器を用意することにした。あとは知っての通りだ」
美琴
「『この前』も言ったんだけど、アンタのやってることはそいつらと変わらないわよ。
木山
「シミュレーションが終われば、もちろん解放するつもりでいたし、後遺症も残らない。
犠牲は出すつもりはなかった。私はただ子供達を助けたかっただけなんだ」」
美琴
「そうは言うけど、幻想御手があったせいで色々な人が怪我したり、苦しんだりしたのよ。それは犠牲じゃないっていうの?」
木山
「耳が痛いな……そろそろ研究室に行こうか。幻想御手のプログラムを停止させなきゃならない」
147 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:31:06.89 ID:rSCS392o [45/70]
佐天
「それで、その巨大な演算機器っていうのはもう完成したんですか?」
木山
「いや、まだだが、あと4、5日もあれば……」
佐天
「うん、決めました!」
美琴
「決めたって、何を?」
木山
「?」
佐天
「私は木山先生の味方をすることに決めました」
美琴
「―――」
佐天
「木山先生は子供達を助けたいんでしょ?だったら助ければいいんですよ」
木山
「君は、御坂美琴の味方ではないのか?」
佐天
「うーん。御坂さんとは友達ですけど、それとこれは別の話ですから」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:32:30.41 ID:rSCS392o [46/70]
美琴
「な―――ちょ、ちょっと待ってよ。それってどういうことよ!」
佐天
「演算に使ったら解放するってんだから、別に邪魔する必要は無いですよ」
佐天
「さすがに脳味噌がパーンみたいなことになるようだったら、考えますけどね」
木山
「本当に私の味方をするというのか?」
佐天
「ええ、ご飯も奢ってもらいましたし、敵対するも理由もありませんから」
美琴
「佐天さん、良く考えてよ。幻想御手は色々な人に迷惑をかけてるのよ。人の心をもてあそんで、10000人もの人間を巻き込んでる」
佐天
「うん、それは確かに大変ですね。でも、私には関係ないですから」
美琴
「何言ってんのよ?!他人事じゃないのよ!」
佐天
「いやいや、他人事ですよ?
別に私が何か迷惑を被ってるわけじゃないですし、私が御坂さんを手伝って木山先生を止める理由にはちょっと弱いです」
149 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:35:11.21 ID:rSCS392o [47/70]
美琴
「意識不明になってる人だっているのよ!」
佐天
「それは幻想御手なんて正規じゃない手段を使ったペナルティでいいんじゃないですか?
一応、ズルと分類される手段で能力を上げてたんですし、なんらかの不利益があってもも文句は言えないかなあって」
佐天
「それに木山先生は後遺症無しで解放するって言ってるんですから」
木山
「ああ、それは約束する。幻想御手を解除すれば元通りだ。
佐天
「ほら、それなら別にいいじゃないですか。4,5日ほど目を瞑ればいいんですよ?」
美琴
「馬鹿言ってんじゃないわよ!そんなの出来るわけないじゃない!」
木山
「ならば、君はどうするのかね?超電磁砲がこちらについた以上、君の目的は達成できそうにない。君はもう詰んでいるだぞ?
しかし、最後に大逆転が待っているとは私も思わなかったよ。これであの子達を助けることができそうだ」
150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:38:26.33 ID:rSCS392o [48/70]
美琴
「幻想御手を使って―――そんな方法で、正しくない方法なんかで助けられて子供達が喜ぶと思うの?」
木山
「そうだな、喜ばないかもしれない」
美琴
「それなら―――」
木山
「だが、それは全てあの子達が目覚めてからの話だ。私はあの子達に誹りを受けようと軽蔑されようとあの子達を助ける」
木山
「―――これは私に課せられた義務であり贖罪なんだ」
佐天
「私は、……そうですね、一飯の恩ということで木山先生に協力しましょう」
美琴
「なんでよ……。私は正しいこと言ってるわよね?間違ってないでしょ?
人の脳を勝手に使って演算するなんて悪いことでしょ?それで人にも迷惑かけて……。
それを止めようとするのは正しいことでしょ。なんで佐天さんは協力してくれないの?」
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:42:22.13 ID:rSCS392o [49/70]
佐天
「それは―――私が御坂さんじゃないからですかねえ」
美琴
「どういうことよ……」
佐天
「御坂さんはたぶん正義の味方なんでしょうね。
御坂さんの間違ってる事を許さず、常に正しい事をしていたいって考えは非常に素晴らしいと思いますよ?
だけど、そんなの私は勘弁ですね。窮屈で大変ですもん。
私は正しいとか正しくないとか、そういう面倒くさい事を考えずに自分のやりたい事をやっていたいんですよ。
私はその方法が間違ってようが子供を助けようとする木山先生に協力する。だから、御坂さんには協力しない」
美琴
「そんなのただの自分勝手じゃない!」
佐天
「ええ、自分勝手ですよ。だけど、その自分勝手が許されるんです。それがレベル5なんですよ。
わかりますよね?御坂さんも超電磁砲なんですから」
美琴
「―――っ」
153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:44:20.63 ID:rSCS392o [50/70]
木山
「同じ超電磁砲でもずいぶん違うもんなんだな?」
佐天
「そうですね。御坂さんは甘ちゃんなところがありますから」
木山
「だが、彼女は私から見れば羨ましい。悪いことを悪いと言って正すことができるのだから」
佐天
「それはどうなんでしょうかね。力がないとその生き方をするのは難しいですから」
木山
「正義の味方になるには力が足りないか……」
佐天
「ええ、この学園都市じゃ間違いが多すぎて、私だって正義の味方にはなれませんからね」
木山
「全くもって、その通りだな。この学園都市ではそんな生き方じゃ長生きは出来やしない」
佐天
「辛気臭い話になってきましたし、そろそろ帰りましょうか」
木山
「ふむ……少々長居しすぎたな」
美琴
「あ……」
155 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:47:17.76 ID:rSCS392o [51/70]
木山
「ああ、そうだ。君の脳波異常は恐らくだが、並行世界の『超電磁砲』であることが理由の一つだと思われる。
もちろん治療法はわからない。並行世界云々は現代科学の範疇を超えているし、他人の精神が入り込むなんて事例も聞いたことが無い。
本来なら研究材料にするところだが、君のおかげで切り札が手に入ったし、今回は見なかったことにしておこう。
当然のことだが、君に何が起こるかは予想できない。何か異常を感じたら私を頼るといい。悪いようにはしない。
連絡先はここに置いておく。もちろん誰かに情報を漏らしたりもしないから安心してくれ」
木山
「それと、なるべく犠牲者は出したくないから風紀委員や警備員に通報するのはよしてくれたまえ。
強行手段に訴えて出てこられたら、多才能力で相手をするしかないからな」
佐天
「あ、そうなったら私も影から協力してあげますよ」
木山
「ほう、それは心強いな。
それじゃあ、この辺で失礼する」
158 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:49:21.97 ID:rSCS392o [52/70]
美琴
「待って―――待ちなさいよ」バチバチ
木山
「やれやれ、実力行使か?少しは場所を考えてほしいな」
佐天
「早速、私の出番ですかね?」
木山
「どうやら、こっちもやる気満々のようだが……超電磁砲とやりあってみるかい?」
佐天
「その前に一言いいですかね?」
美琴
「なによ……」
佐天
「御坂さん、幻想御手を止めるってことは子供達を見捨てるってことですよ?
木山先生は捕まり、治療法も不明のまま、事件の原因もわからず仕舞い。可哀想な事に罪のない子供達はずっと眠り続けるはめになります」
美琴
「それは……」
佐天
「もしかしたら、御坂さんは子供達に恨まれるかもしれませんね」
美琴
「……っ」
木山
「やめたまえ、恨まれるとしたらこの私だ。それに私はそういう手は好まない」
159 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:52:15.89 ID:rSCS392o [53/70]
佐天
「おっと、これは失礼。まあ、話はそれだけです。
じゃあ、始めましょう。入院中は毎日電撃使いの集いを開いてあげますから―――」バチバチィ
美琴
「くっ……」ガクガク
(な、なんで足が震えてんのよ?!)
佐天
「あれ?戦意喪失ですか?」
美琴
「…………」
木山
「もういいそうだ。では失礼するよ」
佐天
「そりゃ残念ですね。
ああ、御坂さん。別に無理に頑張らなくても誰も責める人はいないんですよ?
じゃ、そういうことで」
木山
「今のは最高に嫌味な言い方だったな」
佐天
「私もそう思います」
160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:54:56.39 ID:rSCS392o [54/70]
・・・・・・木山の車・・・・・・・
佐天
「それにしても木山先生、並行世界なんて本当にあるんですかね?」
木山
「彼女がいるんだからあるんだろう。
彼女は幻想御手や私について知りすぎていたし、話の筋も通っていて嘘をついているようには見えなかった」
佐天
「なんらかの方法で先生の情報を得た御坂さんが芝居をしてるとか、そういう可能性は?」
木山
「まず無いだろう。そんなことをするメリットが無い。統括理事会もそんな回りくどい妨害をするわけもないだろうしな」
まあ、科学者としては証明できてない並行世界の存在を100%肯定することはできないがね」
佐天
「はー、科学者って面倒くさいですね」
木山
「職業上の仕方ない悪癖だよ。そういう君はどうなんだい?」
161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:57:40.02 ID:rSCS392o [55/70]
佐天
「私は一通り話を聞いただけじゃ5割くらいしか信じられないですね。実際に行けたりすれば信じますけど。
でも、個人的な希望込みで8割、いや9割くらいにはなるかもしれません」
木山
「ふむ、その希望というのは?」
佐天
「最近、御坂さんが電撃使いになったんですよ」
木山
「最近、ね」
佐天
「今の御坂さんが本当に違う世界の超電磁砲だったらレベル5クラスに成長して私のライバルになるかもしれないじゃないですか。そうしたら面白い事になりそうだなあって、そういう希望です。
木山
「なるほど。彼女という存在を肯定するなら並行世界も同時に肯定するということか」
佐天
「そんなところです。自分に都合がいいようなら信じたくなるのが人間ってもんでしょう」
木山
「違いない」
162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:59:14.16 ID:rSCS392o [56/70]
佐天
「あ、ここでいいです。止めて下さい」
木山
「ああ、わかった」
佐天
「送ってくれてありがとうございます。なんかあったら連絡してくださいね」
木山
「ああ、気をつけて帰りたまえ」
佐天
「はっはっはっ、私を誰だと思ってるんですか?」
木山
「そうだったな。余計な心配だった」
佐天
「木山先生こそ、安全運転で帰って下さいね」
木山
「なに、私にも多才能力があるからな。事故に遭っても死にはしないさ」
佐天
「なーに言ってるんですか、交通事故は加害者にもなり得るんですよ?」
木山
「……、気をつけて帰るとするよ」
佐天
「そういうことをうっかり忘れるのも科学者の悪癖ですかね?」
165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:09:48.45 ID:rSCS392o [57/70]
・・・・・・柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・
美琴
「久しぶりに自分の部屋に帰って来たわ。
なぜか1ヶ月くらい病院にいた気がするわね」
黒子
「わたくしも御坂先輩の部屋に来たのは一月ぶりくらいに感じますの」
美琴
「…………ま、気のせいよね」
黒子
「そうですの。気のせいですの」
・・・・・・閑話休題・・・・・・
黒子
「それはともかく、木山の研究所に行くって聞いた時は心臓が止まるかと思いましたわ。
でも、戻ってこれたということはなんとかなかったってことですの?」
美琴
「全くもってそんなことはないのよ。最高にまずいことになったわ」
黒子
「な、なにが起こったんですの?」
美琴
「物凄く言いにくい事なんだけどね」
黒子
「はい……」ゴクリ
美琴
「……佐天さんが木山春生側についちゃった」
166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:12:07.46 ID:rSCS392o [58/70]
黒子
「は?」
黒子
「えっと、あの、わたくしの耳がおかしくなった可能性がありますので、もう一度お願いしますの」
美琴
「だから、佐天さんと木山が手を組んじゃった」
黒子
「え、ええええええええええええ」
黒子
「そ、それはいったい全体どういうことですの?」
美琴
「落ち着きなさいよ。ちゃんと説明するからさ」
黒子
「落ち着けるわけないですの!」
167 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:14:34.03 ID:rSCS392o [59/70]
・・・・・説明タイムですの!・・・・・・
美琴
「そういうわけで、作戦は見事失敗しました」
黒子
「それでどうするんですの?これで事実上手出しが出来なくなったも同然ですのよ」
美琴
「わかんないわよ。そんなの」
黒子
「そんな無責任な……」
美琴
「考えたってもう無駄でしょ。佐天さんが味方についてしまった以上、こっちにはそれをどうにかする手段はないわけだしさ。
あとね、木山春生を止めることが本当に正しいかどうかわからなくなったってのもあるのよね。
だって、ほっといてもこの騒動は収束するし、木山春生の子供達も助かるし、私が止める必要あるのかなって」
黒子
「御坂先輩、何をいまさら言ってるんですの?」
168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:17:20.22 ID:rSCS392o [60/70]
美琴
「でも、このまま私たちが目を瞑ってれば、私の世界みたいに幻想猛獣が暴れ出したりせず、何事も無かったように幻想御手事件は解決するのよ」
黒子
「本当に御坂先輩はそう思ってるんですの?
心の底から、何もせずに事件がただ収束するのを待っていればいいと思っているんですの?」
美琴
「それは……。よくない、と思う。間違ってる」
黒子
「わかってるじゃありませんか。
目を瞑っていれば何事もなく終わるなんて真っ赤な嘘でしかありませんの。
その4,5日の間に幻想御手によって犯罪に走る人間は当然いますし、その犯罪に犠牲になる人間だっていますのよ。
そもそも碌な臨床試験もしてないというのに後遺症が無いなんてどこまで本当かわかりませんの。
何を一体迷うことがあるんですの?」
黒子
「御坂先輩が木山春生を止めようとすることは正しいことですのよ」
169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:20:43.82 ID:rSCS392o [61/70]
美琴
「私、幻想御手を止めるってことは子供たちを見捨てることだって佐天さんに言われた時に木山春生の子供たちの顔を思い出したわ……。
木山春生の記憶を覗いた私には子供達を見捨てて、幻想御手を止めるのが本当に正しいって言い切る自信が無いの!」
黒子
「それは、子供達を助けるということが幻想御手の被害者や被害者になりうる人を犠牲にすることだとわかって言ってるんですよね?」
美琴
「わ、わかってるわよ」
黒子
「なら、佐天さんのように木山春生に肩入れすればいいのではありませんか?」
美琴
「えっ……」
黒子
「この件に関しては、残念ですがみんなで笑えるハッピーエンドなんてものは存在しませんの。
もしも、そんな状況があるとしたら誰かが我慢をして作り笑いをしてるだけですの。
どちらか一方を選ぶなら、もう片方を切り捨てなければなりませんの」
171 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:26:42.59 ID:rSCS392o [62/70]
黒子
「わたくしは根本的な所では当事者ではないので、木山春生の子供達と幻想御手による被害者達を天秤にかけたりはしません。
わたくしは自分の中の正義に基づいて木山春生を止めます。その結果、子供達が眠り続けることになったとしてもです」
黒子
「それがわたくしの選択ですの」
黒子
「どちらかしか選べないし、どちらかを選ばなくてはなりませんの。
ですから、木山の事情を知っている御坂先輩が子供達を助けてやりたいと思うのなら、わたくしに止める権利はありませんし、仕方ないと思いますの」
美琴
「黒子……」
黒子
「本当に、本気で助けたいと思っているのなら―――ですが」
美琴
「なによ、その言い方は」
黒子
「いえ、わたくしには気になることがありましてね。杞憂ならいいのですが」
172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:29:55.07 ID:rSCS392o [63/70]
美琴
「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
黒子
「じゃあ聞きますけど、御坂先輩は佐天さんから逃げたいと思っていらっしゃいません?」
美琴
「ア、アンタ何言ってんのよ?
私が佐天さんから逃げたい?そんなわけないじゃない馬鹿馬鹿しい」
黒子
「本当にそうですかね?」
黒子
「確かに御坂先輩には迷いが生まれているのかもしれませんの。
木山春生を止めるか止めないか。子供達を見捨てることは本当に正しい事なのか。
ですが、佐天さんから逃げるために、その答えとして木山春生を止めないことを選ぼうとしてしませんか?」
美琴
「そ、そんなことは……」
黒子
「そんなことはない、本当にそう言い切れますの?」
173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:32:32.49 ID:rSCS392o [64/70]
黒子
「事情を知りながらも、あれだけ木山春生を止めると息巻いていた御坂先輩が心変わりするのは少々疑問に感じますの。
それに、向こうの世界でも御坂先輩は木山春生を止めることを選んでるんじゃないですの?
その時に少しでも躊躇しましたか?」
美琴
「それは……」
黒子
「木山春生を止めようとするならば、佐天さんと衝突するのは必至ですの。
御坂先輩が『超電磁砲』だったとはいえ、現在はレベル3程度の能力しか使えない。
だから、佐天さんと戦わなくて済むように木山春生の子供達を言い訳にしようとしていませんか?」
美琴
「なによ……それ、まるで私が佐天さんにビビってるみたいじゃない」
黒子
「わたくしは先ほどからそう言ってますのよ、御坂先輩は佐天涙子―――超電磁砲にビビっている、と」
174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:34:58.54 ID:rSCS392o [65/70]
黒子
「まあ、超電磁砲の凄さは御坂先輩自身が一番わかってますものね、ビビっても仕方がないかもしれません」
美琴
「好き勝手言ってんじゃないわよ!じゃあ、アンタならどうすんのよ!
能力の差は絶望的、身体能力でも敵わない。そんな相手に立ち向かえるっていうの?
奇跡でも起こさなきゃ勝ち目すらない相手だっていうのに」
黒子
「……私には無理ですの。わたくしは卑怯で臆病ですから」
美琴
「ほら、見なさいよ」
黒子
「ですが、私の知っている『御坂美琴』ならできますの」
黒子
「1年前、『御坂美琴』は無能力者にも関わらず、能力者に立ち向かいましたわ」
美琴
「急に何を……」
175 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:39:21.05 ID:rSCS392o [66/70]
黒子
「あなたにもそれが出来ますの?」
美琴
「それくらいできるわよ。現にこないだレベル0の状態で爆弾魔と戦ったじゃない。もう忘れたの?」
黒子
「アナタ様は本当の無能力者として立ち向かったわけではないですの。
『御坂美琴』は、本当に無能力者として能力者の前に立ちはだかったんですのよ。あなたとは全く違いますの」
黒子
「『御坂美琴』だったら、レベル5相手だろうが逃げなかったはずですの。
たとえ、無謀で考えなしと馬鹿にされても、『御坂美琴』は佐天涙子の前に立ち向かうはずですわ。
アナタ様と『御坂美琴』は根っこは同じなはずですの。わたくしを失望させないで下さいませ」
美琴
「…………」
黒子
「…………」
黒子
「今日はもう失礼しますの、おやすみなさい」
ガチャッ
176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:43:22.97 ID:rSCS392o [67/70]
美琴
「…………」
美琴
「なによ、黒子のヤツ。好き勝手なことばっかり言って、レベル0なのは変わりじゃないじゃないの!
それにこの幻想御手事件はアンタ達の世界の事でしょ!私にばっかり押し付けるんじゃないわよ!」
美琴
「もう知らないわよ!どうなったって関係ないんだから!」
美琴
「もう寝るんだから」
・・・・・・・・・・・・・
美琴
(眠れない……)
『佐天さんから逃げてますの』
『佐天さんにビビってますの』
美琴
「うるさい、うるさい、うるさーい!!」
『失望させないでくださいませ』
プッツーーン
美琴
「決めた、決めたわ……。やればいいんでしょ?やってやろうじゃないの!
ここまで馬鹿にされて黙ってられるわけないじゃない!木山春生も佐天さんも二人まとめて倒してあげるんだから!」
pipipi
美琴
「…………ああ、木山先生ですか?私です。御坂美琴です。突然ですけど、決闘を申し込みます。
明日12時に操車場まで来てください―――もちろん、超電磁砲を連れて」
177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:45:31.11 ID:rSCS392o [68/70]
・・・・7月21日朝 柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・
黒子
「おはようございますの」
ガバッ
美琴
「おはよう、黒子。今日は―――」
黒子
「7月21日ですのよ」
美琴
「そうよね、今日は7月21日ね!戻っちゃってたら不完全燃焼で死ぬところだったわ」
美琴
「私、決めた。佐天さんと戦うわ」
黒子
「それは子供達を見捨てるということですか?」
美琴
「ううん、それは今はどうでもいいとうか、考えない事にしたわ」
黒子
「なんとまあ」
美琴
「子供たちをとるか、幻想御手の解決をとるかは佐天さんに勝ってから考える。
それが私にとって正しい答えの出し方だと思う」
180 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:49:28.27 ID:rSCS392o [69/70]
黒子
「なるほど、それはそうかもしれませんの。それで勝算はあるんですの?」
美琴
「そんなもんはないわ。今から考えてダメなら奇跡ってのに賭けるしかないわよ」
黒子
「それはまた、無謀な話ですの」
美琴
「まあね。しょうがないじゃない。それが『御坂美琴』なんでしょ?」
黒子
「そうでしたの。仕方がないことですの」
美琴
「黒子にお願いがあるの」
黒子
「なんですの?」
美琴
「風紀委員や警備員に木山春生の事を通報したりしないでね。
ワガママだってのはわかってる。だけど、私がこの手で決着をつけたいの。ひっかきまわした責任も取らなきゃならないしね」
黒子
「わかりましたの。本来なら風紀委員として見逃すことはできませんの。
ですが、今日のわたくしは御覧の通り体調不良で風紀委員はお休みですの」ゴホッゴホッ
黒子
「それに……昨日は少し言いすぎましたの。そのお詫びということで目を瞑りますの」
美琴
「その辺は別に気にしなくていいわ。ちょっと弱気になってたのは確かだもん。
ありがとね、黒子。やっぱりアンタは私の相棒よ」
7月21日編に続くよ!
182 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:56:36.58 ID:rSCS392o [70/70]
つーことで7月20日編は終わりです。
7月21日(最終日)はバトル展開を入れたいなあと思いつつも、地の文が必要になるし超面倒くさくて困ってる今日この頃。
あと展開予測は控えてくれると助かります。
話の大筋は出来てて細かいところを詰めて肉付けするだけなので、こっから修正するのは面倒っていうか無理なので。
佐天
「いないんですかー?佐天ですよー」
美琴
(居留守を使う?いや、昨日ドア開けてたし無意味か。仕方ない)
美琴
「はーい、どうぞー」
ガチャ
佐天
「失礼しまーす。お早うございます。御坂さん」
美琴
「お、おはよう。佐天さん。今日はどうしたの」
佐天
「いやあ、177支部で白井さんに会ったら、まだ入院してるって話だったんで。
お見舞いついでに電撃使いの集いでもしようかなって」
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 20:59:41.84 ID:rSCS392o [5/70]
美琴
「その……電撃使いの集いってのは幻想御手の一件が解決したらじっくりって話じゃなったっけ?」
佐天
「ええ、そんなことも言ったかもしれませんが暇だったし、御坂さんも暇だって昨日言ってたじゃないですか。
だから暇人同士、仲良くしようと思ったんです」
美琴
「そうだったんだ。それはありがたいわね」
(なんつー有難迷惑、タイミングが悪すぎるわよ)
佐天
「でしょー、たまには私だって気を利かせることがあるんです。
初春に注意されてばかりじゃないんですよ」
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:02:57.00 ID:rSCS392o [6/70]
美琴
「それで、電撃使いの集いって具体的には何をやるの?」
佐天
「えっと、特に何も決めてないんで今から一緒に考えましょうか」
美琴
(考えなしって……。適当に切り上げてさっさと逃げ出さないと―――)
コンコン
美琴
(また誰か来た?!)
佐天
「はーい!」
美琴
「あっ……」
(勝手に返事しないでよ……)
ガチャ
木山
「失礼するよ。大脳生理学を研究している木山春生というものだが。
御坂美琴君と―――君は常盤台の超電磁砲だったかな」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:06:09.59 ID:rSCS392o [7/70]
美琴
(木山春生?!なんで―――)
佐天
「はいはーい、超電磁砲の佐天涙子でーす。いやあ、私ってそんなに有名ですかねえ」
木山
「研究者で君の事を知らない人間はいないだろうな」
木山
「それで、君が御坂美琴で間違いないね?
美琴
「はい、そうですけど……」
木山
「君の脳波測定の件を聞かせてもらったよ。なかなか興味深いな」
美琴
(うそでしょ?)
木山
「しかし、この病院の設備じゃ詳しいところまで計測するのは難しいと私は判断した」
美琴
(まさか―――)
木山
「私の研究所の方で精密な検査をしてみようと思うんだが、協力してもらえるかな?
110 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:07:49.07 ID:rSCS392o [8/70]
美琴
(やっぱり……。興味を持った研究者が木山春生って斜め上の展開になるなんて)
美琴
「それって絶対協力しなきゃダメなんですか……?
木山
「ふむ、それは拒否するということかな?」
美琴
「いや、そういうわけじゃないんですけど、これ以上の入院とかは勘弁してほしいかなって。ほら、もう夏休みですし」
木山
「夏休みなら学校にも影響しないし、逆に検査を受けやすいとは思うのだが?
美琴
「そういう意味じゃなくてですね」
木山
「まあ、なんにしろこの学園都市の学生である以上は研究には協力する義務があるからな」
木山
「それとも何か特別な事情でもあるのか?」
美琴
「特別ってほど特別な事情みたいなものはないんですけど……」
(どうすれば―――この状況どう切り抜ける?)
111 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:10:35.22 ID:rSCS392o [9/70]
佐天
「御坂さん……」
美琴
(佐天さん!嫌がる私を見て、まさか助け舟を?)
佐天
「そんなに嫌がることないじゃないですか。脳波検査くらいすぐ終わりますよ。ねえ、木山先生?」
美琴
(期待した私が馬鹿だったー)
木山
「ん、まあ1日で帰れるだろう……何も無ければな」
佐天
「ほら、全然大丈夫じゃないですか」
美琴
(佐天さん、もう黙ってて!)
112 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:12:30.58 ID:rSCS392o [10/70]
木山
「それとも何かね?詳しく検査されると困る理由でもあるのかな?」
美琴
「―――っ」
佐天
「ん?御坂さん、脳波検査されたらまずいんですか?
美琴
「べ、別に不味くは無いけどさ」
佐天
「なら、いいじゃないですか」
木山
「協力に感謝する。私はこの病院で色々やることがあるが、まあ昼前には終わるだろう」
木山
「それが終わり次第、迎えに来るから一緒に研究所の方に行こう」
美琴
「……はい、わかりました」ガックリ
(やられた……)
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:13:53.09 ID:rSCS392o [11/70]
木山
「そんなに落ち込まないでくれたまえ」
佐天
「そうですよ。御坂さん、ちょっとの辛抱なんですから
木山
「……そうだな、研究所に行く前に昼食を近くで摂って行こうか。超電磁砲も一緒にどうかな?」
佐天
「それは奢りですか?」
木山
「まあ、奢りだが。君の方が金持ちだろうし、払いたいなら払っても構わないぞ」
佐天
「いえいえ、ゴチになりまーす」
木山
「やれやれ。じゃあ、また後でな。時間が近くなったら準備しといてくれたまえ」
佐天
「はーい」
ガチャ……バタン
佐天
「木山先生って目つき悪いけど、いい人そうでしたね」
美琴
「うん、そうかもね……」
佐天
「いやあ、奢りかあ。楽しみだなあ」
114 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:15:09.06 ID:rSCS392o [12/70]
とある魔術のインタールード
・・・・・7月20日朝 上条当麻の部屋・・・・
上条
「今日はいい天気だし、布団でも干すかなー」
上条
「天気はいいんだけど、隣のビルのせいで実感がなあ。日照権とかこういう話ってどこに持ってけばいいのかねえ」
上条
「くだらねーこと考えてないで、布団干すぞー」
禁書
「…………」ダラーン
上条
「って、この白い物体はなんだ?」ビクッ
禁書
「…………」グテーン
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:16:59.46 ID:rSCS392o [13/70]
上条
「これって、どっからどう見ても人間だよな……?」
(それにこの服装は修道服っぽいな。修道服って普通は黒いはずだったような気がするが……?)
ピクン
上条
(うおっ、動いた!?)
禁書
「おなかへった」
上条
「…………」
(そして、喋った……外国人なのに日本語の発音上手いな)
禁書
「おなかへった」
禁書
「おなかへった、って言ってるんだよ?」
上条
「…………」
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:18:28.42 ID:rSCS392o [14/70]
上条
「もしかして、行き倒れだから飯を食わせろって言うのか?」
禁書
「見てわかんないのかな?行き倒れの倒れ死に寸前なんだよ!
おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」
上条
「そんなもんわかるわけねーだろ!それに見ず知らずの人間にいきなり飯をたかるな!」
グウゥゥゥゥ
禁書
「い、今のは私のお腹の音じゃないんだよ?」カアアアア
上条
「う~ん」
(なんか幸が薄そうな感じがする子だなあ。しょうがない)
上条
「……ま、上がれよ。冷蔵庫の残り物でなんか作ってやるよ」
禁書
「あ、ありがとうなんだよ。そしておじゃまします」
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:19:57.39 ID:rSCS392o [15/70]
・・・・・・・・・・
禁書
「ごちそうさまなんだよ!」
上条
「ふーん。それで、イギリス清教のインデックスさんは魔術結社とやらに追われてビルを飛び移ろうとした末にうちのベランダに干されてたわけか」
禁書
「そうなんだよ、一歩間違えれば死ぬところだったんだからね」
上条
(魔術結社……魔術、魔術ねえ。
そんなもんありえねえって言いたいところだけど、御坂さんみたいに科学で解明不能な現象があるなら、魔術みたいなもんがあってもおかしくないのかね……?)
上条
「なあ、最近宗旨替えして、不思議な現象も信じるようになったんだけど、魔術ってのもその類って認識でいいのか?」
118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:21:29.20 ID:rSCS392o [16/70]
禁書
「んー。魔術は不思議な現象じゃなくて、あなた達の世界の常識とは違う法則で引き起こされる現象かな。
だから、超常現象とかそういうふうに言われたりもするかも」
上条
「一応、なんでそれが起きるかはわかってるということなのか?」
禁書
「その通りなんだよ。魔術っていうのは体系化されていて、決められた方法を手順どおりに行えば同じ結果が取り出せるんだよ。
ただ、それが科学で証明されてない法則を使ってるというだけの話なんだよ」
上条
(なんか詳しく聞いたらうさんくさくなってきたな……。だけど、御坂さんも同じように大真面目に話してたしな……)
上条
「オーケー、だいたい理解した。世界は知らない事ばかりだってこともよくわかった」
119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:23:40.51 ID:rSCS392o [17/70]
上条
「それでだ。魔術ってのはだいたいわかったし、魔術結社ってのもまあわかる。
だけど、インデックスさんは、なんでその魔術結社に追われてるんだ?」
禁書
「それは私の持ってる、10万3000冊の魔導書を狙ってるんだと思うよ」
上条
「?」
(魔導書……。でも、手ぶらで何も持ってないな……)
上条
「魔導書ってのは本なんだろ?そんなもんどこに持ってるんだ?」
禁書
「それは秘密なんだよ」
「……そうだよな。狙われてるんだもんな。秘密にするのは当然か」
(こういうのって知らない方がいいことだったりするし、深く追求するのはよしておこう)
120 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:26:06.52 ID:rSCS392o [18/70]
禁書
「うん。そういうことなんだよ。それじゃあ、そろそろ私は出てくね」
上条
「ちょっと待てよ。狙われてるんだろ?一人で大丈夫なのか?」
禁書
「大丈夫なんだよ。この私が来てる服は『歩く教会』っていう極上の防御結界なんだから」
上条
「防御結界って……その服がバリアみたいなもんなのか?」
禁書
「これを着てれば、物理、魔術を問わず全ての攻撃を受け流し、吸収しちゃうんだからね」
上条
「そりゃ、またすごいな。どういう仕組みなんだ?」
禁書
「布地の織り方から刺繍の飾り方まで全てが魔術的に計算されてるんだよ。
そうすることで『服のカタチをした教会』になるってことなんだけど、わかる?」
上条
「んー、全くわからんが、特殊製法で造られた凄い服ってことでいいんだよな?」
禁書
「まあ、釈然としないけど間違っては無いんだよ。
そういうわけだから、私は一人でも大丈夫。ご飯ありがとうなんだよ」
121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:28:42.77 ID:rSCS392o [19/70]
上条
「待て待て、それでもダメだ。やっぱり追われてるなんて聞いたら、インデックスさんをほっておけるわけないだろ」
禁書
「むぅ」
上条
「そんな顔されてもなあ。ここにならとりあえず匿ってやれるし、他にも何か出来ることがあるかもしれない」
禁書
「―――じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
上条
「なっ?」
禁書
「ふふっ、大丈夫なんだよ。教会に逃げ込んじゃえば一人じゃなくなるもん。それじゃあね、ばいばい」
上条
「―――なあ、お前の言う地獄って言うのはどんなもんなんだ?」
禁書
「え――?」
122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:31:56.76 ID:rSCS392o [20/70]
禁書
「……地獄は地獄なんだよ。私と一緒だと酷い目に逢うんだから」
上条
「そうじゃなくて、具体的にお前と一緒にいるとどういう事が起きるかって聞いてるんだ。
雷でビリビリやられたり、目が覚めたらいきなり炎が目前に迫ってたり、なんだかよくわからないビームとか、この世に存在しない不思議物質で襲われたり、あらゆる物理現象を反射できる敵と対峙するはめになったりするのか?」
禁書
「そ、そこまで酷くはないんだよ」
上条
「―――なら、たいしたことはねえよ。そんなもん俺にとっては地獄でもなんでもない。日常茶飯事ってやつだ」
禁書
「からかってるの?そんな日常を送ってきて生きてるはずないんだよ」
上条
「まさか、こんな真面目な話をしてる時にからかったりはしねーよ。
お前がその歩く教会を頼りにしてるように俺にだって頼りになるモンがあるんだぜ」
禁書
「でも、絶対迷惑かけるんだよ」
上条
「昨日怒られたばっかりなんだ。女の子をちゃんと送って行けってね。だからさ、ついて行ってやるよ、その地獄の底とやらまでな―――」
123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:36:18.45 ID:rSCS392o [21/70]
・・・・・正午 水穂機構病院 御坂美琴 病室・・・・・・
佐天
「うーん、木山先生遅いですねえ」
美琴
「そうね……」
(佐天さんの相手をしてたら、考えが全然まとまらなかったわ……。
とりあえず、確定事項は二つね。一つ目は研究対象として認識されてるから逃げるのは無理。
二つ目は検査が出来なかったのは機械ではなく私の方に問題有り)
美琴
(これって半分詰んでるわよね……)
コンコン
佐天
「あ、来た!」
124 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:39:40.30 ID:rSCS392o [22/70]
木山
「遅くなってすまなかったね。待たせてしまったようだ」
初春
「失礼します」
佐天
「ありゃ、初春じゃないか」
初春
「佐天さん、来てたんですか?御坂に迷惑かけてないですか?」
佐天
「迷惑なんて全然かけてないって。さっきまで楽しくおしゃべりしてたもん」
美琴
(…………)
佐天
「初春はどうしたん?」
初春
「一昨日捕まえた爆弾魔なんですけど、いきなり意識不明になってしまったんですよ。
風紀委員に連絡があったから様子を見に来たんです」
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:40:54.64 ID:rSCS392o [23/70]
佐天
「へえ、幻想御手の副作用ってやつかな?」
初春
「今のところは何とも言えないですね。情報が少なすぎます」
佐天
「やっぱり、現物がなきゃ話は始まらないか」
初春
「本当なら昨日手に入ってるはずだったんですけどね?
佐天
「もしかして、まだ怒ってる?
初春
「別に怒ってませんよ。ただ、今も一生懸命幻想御手を探してる白井さんが可哀想だなって思っただけです」
佐天
「なんだか急に胸が痛くなってきた……」
初春
「そうですか、ここは病院なんだから診てもらったらどうですか?
佐天
「御坂さーん、初春がいじめるよー」
126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:42:36.85 ID:rSCS392o [24/70]
初春
「さて、私も遊んでる暇はないんでこの辺で失礼させてもらいます。木山先生、約束の方お願いしますね?」
木山
「ああ、わかってる。幻想御手が手に入ったら持ってきたまえ、すぐに解析できるように手筈は整えておこう」
初春
「ありがとうございます。それじゃあ御坂さん、お大事に―――」
美琴
「ちょっと待って、初春さん。黒子に木山先生の研究所に行くけど、大丈夫だからって伝えておいてくれない?」
(とりあえず、黒子にだけは伝えとかないと)
初春
「わかりましたけど、どこか悪いんですか?」
美琴
「ううん、ちょっとした検査をするだけだから」
初春
「そうですか。それでは」シュンッ
木山
「我々も行こうか。病院には話を通してあるからこのままで大丈夫だ」
佐天「さーて、何を食べようかなー」
美琴
「はい、わかりました」
(しょうがない覚悟を決めないと……)
127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:44:31.67 ID:rSCS392o [25/70]
・・・・・・とあるファミレス・・・・・
佐天
「ふー、食べた食べた。木山先生、ごちそうさまでした。やっぱり人にご馳走になると美味しく感じますねえ」
木山
「それはよかった」
佐天
「あれ、御坂さん、食欲無いんですか?全然減ってませんけど?」
木山
「やはり検査を強いることにしたのはまずかったかな?」
美琴
「えっ? そ、そんなことは……。
ちょっと考え事してただけなんで。さっさと片づけちゃうからちょっと待って」パクパク
128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:48:21.72 ID:rSCS392o [26/70]
美琴
(このまま木山と二人きりになるのはまずすぎるわ。
迂闊にボロを出せば一巻の終わりだし、私脳波の異常性―――どのくらいおかしいのかわからないけど、詳しく調べられることになったら長期間拘束されてしまう)
ここから一発逆転できる方法を考えないと……)
佐天
「御坂さん、すごい勢いですねえ」
美琴
(ん?……今ここに佐天さんがいるってことは木山をここで抑えることができるんじゃない!?)
よし、ここは一気に決めるしかないわ)モグモグ、ゴックン
美琴
「ごちそうさまでした」
佐天
「御坂さん、私達に気を使わずゆっくり食べて良かったんですよ?」
木山
「もっと良く噛んで食べた方がいいと思うんだが」
美琴
「まあ気にしないで、それより木山先生に聞きたいことが……」
木山
「ん、何かね?」
129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:49:48.57 ID:rSCS392o [27/70]
美琴
「人体実験で昏睡状態になった生徒さん達は治りそうですか?」
木山
「なんだ…と?」
佐天
「?」
美琴
「樹形図の設計者の使用許可がおりず、とある演算機器でシミュレーションすることにしたんですよね?」
木山
「何故、それを君が知っているんだ」ガタン
美琴
「木山先生落ち着いて下さい。ちゃんと説明しますから」
美琴
「あ、くれぐれも研究の副産物なんて使わないで下さいね。ここには『超電磁砲』がいるんですからね」チラリ
佐天「えっ、私?」
木山
「……どうするかは話を全部聞いてたからだ」
130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:52:00.15 ID:rSCS392o [28/70]
美琴
「それじゃあ、話を進めますね―――突然ですけど、並行世界って知ってますか?」
木山
「……いきなり何を言ってるんだ?」
佐天
「へーこーせかいっていうとSFのアレですか?」
美琴
「そう、その並行世界よ。この世界と並行して存在する別の世界」
美琴
「私って、そういう世界―――しかも、ちょっと未来から来たのよね。ついでに言うと精神だけ」
佐天
「えっ?何それ?どういうこと?」
美琴
「わかりやすくいうと、異世界人ってこと」
木山
「君は私をからかっているのか?」
美琴
「そう思われても仕方ないです。ですが、からかってるつもりなんて一切ありません」
131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:54:39.27 ID:rSCS392o [29/70]
木山
「本気で並行世界だの言うようなら、頭の検査をしっかりしなければならないかもしれんな」
美琴
「あちゃー、やっぱり普通はそういう反応ですよね?」
美琴
「まあそれでいいですよ。
並行世界の存在については常識的に考えれば信じがたいことなんで、信じてくれともいいません。
私の目的は並行世界の宣伝をして信じてもらうわけではないですから。
そういう仮定だと認識していたただければいいです」
木山
「……続けたまえ」
美琴
「ありがとうございます……。私のいた並行世界っていうのは一部を除いてこちらとほとんど同じなんです。
私はその世界で普通に過ごしていたんですけど、朝起きたらこっちの私になっていました」
木山
「なっていた?」
132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:57:10.85 ID:rSCS392o [30/70]
美琴
「この世界の体に私』が上書きされたとでも言えばいいんでしょうかね。話の本筋とはあまり関係ので聞き流してくれて結構です」
木山
「人格の入れ替わりに並行世界。常識的に考えればありえないな」
美琴
「それでも、私がここにいますからね」
木山
「証明する手立てはあるのかね?」
美琴
「あるとはいえばありますけど、ないといえばないです」
木山
「はっきりしないな」
美琴
「さっき、子供達について少し触れたじゃないですか?あれは向こうの世界で仕入れた情報なんです」
木山
「つまり、知りえない情報を知っているから並行世界があるから信じろという話か。弱いな」
133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 21:58:57.31 ID:rSCS392o [31/70]
美琴
「おっしゃる通りですね。
こちらの世界でもその情報を手に入れようと思えば出来ないこともない、そう言われてしまえばそれまでですから。
ですが、一般の学生が触れられないような情報を持ってるならば、話は少し違うんじゃないですか?」
木山
「確かにな。私の過去は学園都市の闇につながる物だ。一介の学生では情報統制が掛かってている表面上の情報以外は掴めまい」
木山
「では、一つ聞いていいかな?」
美琴
「なんでしょうか」
木山
「その情報はどこで仕入れたんだ?
二つの世界はほとんど同じだと君は言っていた。
ならば、そちらの世界でもその情報を手に入れることはできないのではないか?」
134 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:01:44.82 ID:rSCS392o [32/70]
美琴
「私は木山先生から直接教えてもらいましたから」
木山
「……それは驚いたな。一体どういう状況になれば君にそんなことを話す気になるんだろうか」
美琴
「その辺りも説明したいので話を進めてもいいですか?」
木山
「……ああ、頼む」
美琴
「先ほど、世界は非常にそっくりだと言いましたよね。こちらと向こうは起こる出来事もだいたい一緒なんです。
4日前は知っていた通りに銀行強盗も起きましたし、爆弾魔や幻想御手の副作用による意識不明も起きていました。
そして、私の世界ではどれも無事に解決されました」
木山
「解決した?」
美琴
「ええ、木山先生には残念ですけど」
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:04:48.74 ID:rSCS392o [33/70]
木山
「―――なるほど、君はこの幻想御手の騒動がこの後どうなるかわかるわけだな」
美琴
「一応、顛末まで見届けましたから、木山先生の事情もその時に」
木山
「そういうことか……それなら合点がいくな」
美琴
「まあ、それがこちらと同じ結末になるかどうかは確定してませんけどね」
木山
「なに……、それはどういうことだ?」
美琴
「こっちには私という異分子が紛れ込んでますから。実際に銀行強盗も爆弾魔も知っているとおりにはなりませんでした」
木山
「それは歴史を知ってる君がなにかしてるというわけか?」
美琴
「いえ、そういうわけじゃないです。ほとんど同じでもイコールと言うわけじゃないんです。
こっちとあっちじゃ微妙に配役が違うもんで、どうしても差異が出ちゃうんですよ」
木山
「ほう……。それはまた興味深い話だな」
佐天
「ちょっとちょっと、ちょーっと待って下さい!」
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:07:07.43 ID:rSCS392o [34/70]
佐天
「なんで二人して盛り上がってるんですか?この話って御坂さんの妄想じゃないの?
へーこーせかいだなんて、そんなの信じられるわけないじゃないですか」
美琴
「妄想って……」
佐天
「木山先生は御坂さんの話を信じてるんですか?」
木山
「まあ、八割―――いや九割程度は。私にも信じがたいことだがな」
佐天
「九割も?いきなり異世界人ですって言われたのに九割も信じてるんですか?」
木山
「君は幻想御手の首謀者を知っているかね?」
佐天
「なんですかいきなり、そんなのわかるわけないじゃないですか。
木山
「私だよ」
佐天
「え、ええーーー!?」
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:09:00.17 ID:rSCS392o [35/70]
美琴
「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
佐天
「そうなんですか?!」
美琴
「まあね」
佐天
「あ!だから、幻想御手について知ってるような感じがしたんですね?」
美琴
「うん、そういうこと」
佐天
「だったら、早く教えてくださいよー。初春や白井さんが可哀想ですよ!」
美琴
「一応、黒子は知ってるんだけどね。まあ初春さんには悪いことしちゃってるわね」
佐天
「白井さんは知ってたんですか?」
美琴
「うん、こっちに来た時に一番に説明して味方についてもらった」
佐天
「あっ、それじゃあ白井さんが秘密にしてた情報源っていうのは」
美琴
「そ、私よ。大っぴらに主張して歴史を大きく変えて私の知識が使えなくなることは避けたかったのよ」
佐天
「そういうことだったんですか」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:09:58.88 ID:rSCS392o [36/70]
>>137
みす><
>美琴
>「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
>木山
>「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:13:23.51 ID:rSCS392o [37/70]
木山
「誤差があるとはいえ、知っている歴史をなるべくなぞろうということか。
自分の掌の上でコントロールできる範囲に留めておくのは正しいな」
美琴
「私には『知識』しか頼れるものがありませんでしたから」
木山
「ならば、この状況は本筋にはないイレギュラーな物というわけだな」
美琴
「その通りです。木山先生の研究対象になるなんてことは向こうじゃ起こりませんでしたからね」
このまま研究所に連れてかれてしまえば、私がこの舞台から退場してしまうし、今後が読めなくなるどころか関わることもできなくなるっていう緊急事態なわけですよ」
佐天
「じゃあ御坂さんは、それをどうにかして軌道修正でもしようとしてるんですか?」
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:16:53.02 ID:rSCS392o [38/70]
木山
「いいや、それは違う。彼女が異世界人であるということを私に明かしたということはだな。
この幻想御手の騒動を今ここで解決しようとしているんだ。
軌道修正なんてまどろっこしいことは諦めたのだろうな。私が並行世界という存在を知ってしまえばシナリオをなぞることなんて当然出来なくなる」
木山
「つまり、彼女は前の世界のあったことを説明することで、過程すっとばして結果まで強引に辿りつこうとしているわけだ」
美琴
「そういうことです。木山先生、諦めてくれますか?」
木山
「諦めろか……。君は私がそんなに簡単に私が諦めないということは知ってるはずだろう?」
美琴
「ええ、知ってますよ。当然、木山先生は抵抗しますよね?」
木山
「ああ、当然だ。私の悲願をこんな茶番で止めるわけにはいかないんだ」
美琴
「でも、考えてみて下さい。私が予想出来る事に手を打たず、こんな賭けみたいなことをするわけないじゃないですか?
ここには超電磁砲がいるんです―――超電磁砲とやりあってみますか?」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:18:59.24 ID:rSCS392o [39/70]
木山
「……その自信、私は超電磁砲に敗北したということか」チラリ
美琴
「その通りです。あっちでは手加減されても勝てませんでしたよ。
やるっていうなら止めはしませんが、色々面倒な事になるんで出来ればやめてほしいかな」
木山
「手加減されても……か」
木山
「やれやれ、超電磁砲を食事に誘ったのは失敗だったな。
しばらく研究所に軟禁状態になるだろうから、その前に友達と一緒に食事でもと気を利かせたのが仇となるとはな。
どうも私は子供に甘いようだ……トラウマなんだろうか」
美琴
「二人きりだったら木山先生の勝ちでしたよ。私じゃ木山先生を抑えることが出来ませんから」
142 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:20:25.37 ID:rSCS392o [40/70]
佐天
「なんだかしらないけど、私が鍵になってる……」
美琴
「それはね、さっき配役が違うって言ったでしょ?
本人がいる前で言うのはなんだけどさ、私って向こうでは佐天さんの代わりに常盤台エースの超電磁砲だったのよ。
向こうでもこの一件に首を突っ込んで、木山先生とも一戦交えたってわけ。
こっちの世界に来たらレベル0になってて色々苦労したわ。ホント」
美琴
「そういうわけだから、木山春生を押さえるには超電磁砲の佐天さんが必要だったのよ」
木山
「君が超電磁砲、そういうこともあるのか……」
美琴
「へえ、だから超電磁砲にこだわってたんですか。でも、ちょっと待って下さいよ。
別にこっちでは御坂さんがわざわざ首を突っ込まなくても、風紀委員なり警備員に通報しちゃえば良かったんじゃないですか?」
143 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:22:09.98 ID:rSCS392o [41/70]
美琴
「そういうわけには行かないのよ。この木山春生は多才能力者なのよ」
佐天
「多才能力者?多重能力者じゃなくて?」
木山
「彼女の言う通り、多才能力者であっている
幻想御手は複数の能力者の脳を繋げて脳波のネットワークを形成し高度な演算を可能とするんだ。
そして、その副産物として複数の能力を同時に使うことできるというわけだ」
木山
「だから、理論上不可能といわれている多重能力とは方式が違う。
ちなみに複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワークというのは超電磁砲である君から得たものだよ」
佐天
「あー、妹達のサテンネットワークですね。話は聞いたことがありますよ。つまり私のおかげでやつですか」
木山「まあ、そういうことになるな」
美琴
「その多才能力で複数の能力を操り、追ってきた警備員を簡単に全滅させたのよ。
警備員を差し向けても無駄な犠牲が増えるだけだし、その時点で未来が読める私のアドバンテージも消えてしまう。
だから通報はしなかったし、できなかった」
144 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:23:54.42 ID:rSCS392o [42/70]
佐天
「そんなに多才能力ってすごいんですか?」
木山
「私は実戦で使ったことが無いからなんとも言えないが、彼女がそういうならそうなんだろう。
美琴
「そこそこってところよ。ちょっとビックリするけど、さっきも言ったように勝てない相手じゃなかったわ。
その後に幻想御手のネットワークが暴走して出来てきた幻想猛獣ってやつが厄介だったわね」
佐天
「多才能力に幻想猛獣―――は何か知らないけど、楽しそうな事してるんですねえ」
美琴
「幻想猛獣はAIM拡散力場で構成された化け物って言えばいいのかな?
馬鹿でかい胎児の形をしてたんだけど、幻想御手を解除するまで再生するし、暴れながら原子力施設に向かうわで大変だったわ」
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:26:53.89 ID:rSCS392o [43/70]
木山
「そんな物騒なものが幻想御手から生まれたのか……」
佐天
「そりゃ、すごいですね。私も戦ってみたかったなあ」
美琴
「疲れるだけだからあんまりおすすめしないわ。さて、私の話はだいたい終わりです」
木山
「ああ、わかった。プログラムを止めた後は自首しよう。そんな代物が生み出されるなら下手に暴れるわけにもいかなくなった」
佐天
「あのー、ちょっといいですか?」
佐天
「私って、木山先生がなんでこんなことをしでかしたか理由をまだ聞いてないんですよ。
御坂さんがさっき昏睡した子供たちとか言ってるのは聞きましたけど、詳しい話はさっぱりなんです。
事件も無事解決したようですし、私にも教えて欲しいかあって」
美琴
「……」チラッ
木山
「そうだな……。君には説明を受ける権利があるかもしれないな」
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:28:31.78 ID:rSCS392o [44/70]
木山
「私が巨大な演算機器を必要とした理由は、『暴走能力の法則解析用誘爆』という人体実験で使い捨てのモルモットにされた子供達を助けたかったからだ」
木山
「あの子達の快復手段と事件の原因をシミュレーションをしようと樹形図の設計者の使用許可を申請したが受けいれられることはなかった。
23回だ。23度も申請したが全て却下された。恐らく、統括理事会がグルなんだろう。
だから、私は自分で演算機器を用意することにした。あとは知っての通りだ」
美琴
「『この前』も言ったんだけど、アンタのやってることはそいつらと変わらないわよ。
木山
「シミュレーションが終われば、もちろん解放するつもりでいたし、後遺症も残らない。
犠牲は出すつもりはなかった。私はただ子供達を助けたかっただけなんだ」」
美琴
「そうは言うけど、幻想御手があったせいで色々な人が怪我したり、苦しんだりしたのよ。それは犠牲じゃないっていうの?」
木山
「耳が痛いな……そろそろ研究室に行こうか。幻想御手のプログラムを停止させなきゃならない」
147 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:31:06.89 ID:rSCS392o [45/70]
佐天
「それで、その巨大な演算機器っていうのはもう完成したんですか?」
木山
「いや、まだだが、あと4、5日もあれば……」
佐天
「うん、決めました!」
美琴
「決めたって、何を?」
木山
「?」
佐天
「私は木山先生の味方をすることに決めました」
美琴
「―――」
佐天
「木山先生は子供達を助けたいんでしょ?だったら助ければいいんですよ」
木山
「君は、御坂美琴の味方ではないのか?」
佐天
「うーん。御坂さんとは友達ですけど、それとこれは別の話ですから」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:32:30.41 ID:rSCS392o [46/70]
美琴
「な―――ちょ、ちょっと待ってよ。それってどういうことよ!」
佐天
「演算に使ったら解放するってんだから、別に邪魔する必要は無いですよ」
佐天
「さすがに脳味噌がパーンみたいなことになるようだったら、考えますけどね」
木山
「本当に私の味方をするというのか?」
佐天
「ええ、ご飯も奢ってもらいましたし、敵対するも理由もありませんから」
美琴
「佐天さん、良く考えてよ。幻想御手は色々な人に迷惑をかけてるのよ。人の心をもてあそんで、10000人もの人間を巻き込んでる」
佐天
「うん、それは確かに大変ですね。でも、私には関係ないですから」
美琴
「何言ってんのよ?!他人事じゃないのよ!」
佐天
「いやいや、他人事ですよ?
別に私が何か迷惑を被ってるわけじゃないですし、私が御坂さんを手伝って木山先生を止める理由にはちょっと弱いです」
149 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:35:11.21 ID:rSCS392o [47/70]
美琴
「意識不明になってる人だっているのよ!」
佐天
「それは幻想御手なんて正規じゃない手段を使ったペナルティでいいんじゃないですか?
一応、ズルと分類される手段で能力を上げてたんですし、なんらかの不利益があってもも文句は言えないかなあって」
佐天
「それに木山先生は後遺症無しで解放するって言ってるんですから」
木山
「ああ、それは約束する。幻想御手を解除すれば元通りだ。
佐天
「ほら、それなら別にいいじゃないですか。4,5日ほど目を瞑ればいいんですよ?」
美琴
「馬鹿言ってんじゃないわよ!そんなの出来るわけないじゃない!」
木山
「ならば、君はどうするのかね?超電磁砲がこちらについた以上、君の目的は達成できそうにない。君はもう詰んでいるだぞ?
しかし、最後に大逆転が待っているとは私も思わなかったよ。これであの子達を助けることができそうだ」
150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:38:26.33 ID:rSCS392o [48/70]
美琴
「幻想御手を使って―――そんな方法で、正しくない方法なんかで助けられて子供達が喜ぶと思うの?」
木山
「そうだな、喜ばないかもしれない」
美琴
「それなら―――」
木山
「だが、それは全てあの子達が目覚めてからの話だ。私はあの子達に誹りを受けようと軽蔑されようとあの子達を助ける」
木山
「―――これは私に課せられた義務であり贖罪なんだ」
佐天
「私は、……そうですね、一飯の恩ということで木山先生に協力しましょう」
美琴
「なんでよ……。私は正しいこと言ってるわよね?間違ってないでしょ?
人の脳を勝手に使って演算するなんて悪いことでしょ?それで人にも迷惑かけて……。
それを止めようとするのは正しいことでしょ。なんで佐天さんは協力してくれないの?」
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:42:22.13 ID:rSCS392o [49/70]
佐天
「それは―――私が御坂さんじゃないからですかねえ」
美琴
「どういうことよ……」
佐天
「御坂さんはたぶん正義の味方なんでしょうね。
御坂さんの間違ってる事を許さず、常に正しい事をしていたいって考えは非常に素晴らしいと思いますよ?
だけど、そんなの私は勘弁ですね。窮屈で大変ですもん。
私は正しいとか正しくないとか、そういう面倒くさい事を考えずに自分のやりたい事をやっていたいんですよ。
私はその方法が間違ってようが子供を助けようとする木山先生に協力する。だから、御坂さんには協力しない」
美琴
「そんなのただの自分勝手じゃない!」
佐天
「ええ、自分勝手ですよ。だけど、その自分勝手が許されるんです。それがレベル5なんですよ。
わかりますよね?御坂さんも超電磁砲なんですから」
美琴
「―――っ」
153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:44:20.63 ID:rSCS392o [50/70]
木山
「同じ超電磁砲でもずいぶん違うもんなんだな?」
佐天
「そうですね。御坂さんは甘ちゃんなところがありますから」
木山
「だが、彼女は私から見れば羨ましい。悪いことを悪いと言って正すことができるのだから」
佐天
「それはどうなんでしょうかね。力がないとその生き方をするのは難しいですから」
木山
「正義の味方になるには力が足りないか……」
佐天
「ええ、この学園都市じゃ間違いが多すぎて、私だって正義の味方にはなれませんからね」
木山
「全くもって、その通りだな。この学園都市ではそんな生き方じゃ長生きは出来やしない」
佐天
「辛気臭い話になってきましたし、そろそろ帰りましょうか」
木山
「ふむ……少々長居しすぎたな」
美琴
「あ……」
155 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:47:17.76 ID:rSCS392o [51/70]
木山
「ああ、そうだ。君の脳波異常は恐らくだが、並行世界の『超電磁砲』であることが理由の一つだと思われる。
もちろん治療法はわからない。並行世界云々は現代科学の範疇を超えているし、他人の精神が入り込むなんて事例も聞いたことが無い。
本来なら研究材料にするところだが、君のおかげで切り札が手に入ったし、今回は見なかったことにしておこう。
当然のことだが、君に何が起こるかは予想できない。何か異常を感じたら私を頼るといい。悪いようにはしない。
連絡先はここに置いておく。もちろん誰かに情報を漏らしたりもしないから安心してくれ」
木山
「それと、なるべく犠牲者は出したくないから風紀委員や警備員に通報するのはよしてくれたまえ。
強行手段に訴えて出てこられたら、多才能力で相手をするしかないからな」
佐天
「あ、そうなったら私も影から協力してあげますよ」
木山
「ほう、それは心強いな。
それじゃあ、この辺で失礼する」
158 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:49:21.97 ID:rSCS392o [52/70]
美琴
「待って―――待ちなさいよ」バチバチ
木山
「やれやれ、実力行使か?少しは場所を考えてほしいな」
佐天
「早速、私の出番ですかね?」
木山
「どうやら、こっちもやる気満々のようだが……超電磁砲とやりあってみるかい?」
佐天
「その前に一言いいですかね?」
美琴
「なによ……」
佐天
「御坂さん、幻想御手を止めるってことは子供達を見捨てるってことですよ?
木山先生は捕まり、治療法も不明のまま、事件の原因もわからず仕舞い。可哀想な事に罪のない子供達はずっと眠り続けるはめになります」
美琴
「それは……」
佐天
「もしかしたら、御坂さんは子供達に恨まれるかもしれませんね」
美琴
「……っ」
木山
「やめたまえ、恨まれるとしたらこの私だ。それに私はそういう手は好まない」
159 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:52:15.89 ID:rSCS392o [53/70]
佐天
「おっと、これは失礼。まあ、話はそれだけです。
じゃあ、始めましょう。入院中は毎日電撃使いの集いを開いてあげますから―――」バチバチィ
美琴
「くっ……」ガクガク
(な、なんで足が震えてんのよ?!)
佐天
「あれ?戦意喪失ですか?」
美琴
「…………」
木山
「もういいそうだ。では失礼するよ」
佐天
「そりゃ残念ですね。
ああ、御坂さん。別に無理に頑張らなくても誰も責める人はいないんですよ?
じゃ、そういうことで」
木山
「今のは最高に嫌味な言い方だったな」
佐天
「私もそう思います」
160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:54:56.39 ID:rSCS392o [54/70]
・・・・・・木山の車・・・・・・・
佐天
「それにしても木山先生、並行世界なんて本当にあるんですかね?」
木山
「彼女がいるんだからあるんだろう。
彼女は幻想御手や私について知りすぎていたし、話の筋も通っていて嘘をついているようには見えなかった」
佐天
「なんらかの方法で先生の情報を得た御坂さんが芝居をしてるとか、そういう可能性は?」
木山
「まず無いだろう。そんなことをするメリットが無い。統括理事会もそんな回りくどい妨害をするわけもないだろうしな」
まあ、科学者としては証明できてない並行世界の存在を100%肯定することはできないがね」
佐天
「はー、科学者って面倒くさいですね」
木山
「職業上の仕方ない悪癖だよ。そういう君はどうなんだい?」
161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:57:40.02 ID:rSCS392o [55/70]
佐天
「私は一通り話を聞いただけじゃ5割くらいしか信じられないですね。実際に行けたりすれば信じますけど。
でも、個人的な希望込みで8割、いや9割くらいにはなるかもしれません」
木山
「ふむ、その希望というのは?」
佐天
「最近、御坂さんが電撃使いになったんですよ」
木山
「最近、ね」
佐天
「今の御坂さんが本当に違う世界の超電磁砲だったらレベル5クラスに成長して私のライバルになるかもしれないじゃないですか。そうしたら面白い事になりそうだなあって、そういう希望です。
木山
「なるほど。彼女という存在を肯定するなら並行世界も同時に肯定するということか」
佐天
「そんなところです。自分に都合がいいようなら信じたくなるのが人間ってもんでしょう」
木山
「違いない」
162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 22:59:14.16 ID:rSCS392o [56/70]
佐天
「あ、ここでいいです。止めて下さい」
木山
「ああ、わかった」
佐天
「送ってくれてありがとうございます。なんかあったら連絡してくださいね」
木山
「ああ、気をつけて帰りたまえ」
佐天
「はっはっはっ、私を誰だと思ってるんですか?」
木山
「そうだったな。余計な心配だった」
佐天
「木山先生こそ、安全運転で帰って下さいね」
木山
「なに、私にも多才能力があるからな。事故に遭っても死にはしないさ」
佐天
「なーに言ってるんですか、交通事故は加害者にもなり得るんですよ?」
木山
「……、気をつけて帰るとするよ」
佐天
「そういうことをうっかり忘れるのも科学者の悪癖ですかね?」
165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:09:48.45 ID:rSCS392o [57/70]
・・・・・・柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・
美琴
「久しぶりに自分の部屋に帰って来たわ。
なぜか1ヶ月くらい病院にいた気がするわね」
黒子
「わたくしも御坂先輩の部屋に来たのは一月ぶりくらいに感じますの」
美琴
「…………ま、気のせいよね」
黒子
「そうですの。気のせいですの」
・・・・・・閑話休題・・・・・・
黒子
「それはともかく、木山の研究所に行くって聞いた時は心臓が止まるかと思いましたわ。
でも、戻ってこれたということはなんとかなかったってことですの?」
美琴
「全くもってそんなことはないのよ。最高にまずいことになったわ」
黒子
「な、なにが起こったんですの?」
美琴
「物凄く言いにくい事なんだけどね」
黒子
「はい……」ゴクリ
美琴
「……佐天さんが木山春生側についちゃった」
166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:12:07.46 ID:rSCS392o [58/70]
黒子
「は?」
黒子
「えっと、あの、わたくしの耳がおかしくなった可能性がありますので、もう一度お願いしますの」
美琴
「だから、佐天さんと木山が手を組んじゃった」
黒子
「え、ええええええええええええ」
黒子
「そ、それはいったい全体どういうことですの?」
美琴
「落ち着きなさいよ。ちゃんと説明するからさ」
黒子
「落ち着けるわけないですの!」
167 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:14:34.03 ID:rSCS392o [59/70]
・・・・・説明タイムですの!・・・・・・
美琴
「そういうわけで、作戦は見事失敗しました」
黒子
「それでどうするんですの?これで事実上手出しが出来なくなったも同然ですのよ」
美琴
「わかんないわよ。そんなの」
黒子
「そんな無責任な……」
美琴
「考えたってもう無駄でしょ。佐天さんが味方についてしまった以上、こっちにはそれをどうにかする手段はないわけだしさ。
あとね、木山春生を止めることが本当に正しいかどうかわからなくなったってのもあるのよね。
だって、ほっといてもこの騒動は収束するし、木山春生の子供達も助かるし、私が止める必要あるのかなって」
黒子
「御坂先輩、何をいまさら言ってるんですの?」
168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:17:20.22 ID:rSCS392o [60/70]
美琴
「でも、このまま私たちが目を瞑ってれば、私の世界みたいに幻想猛獣が暴れ出したりせず、何事も無かったように幻想御手事件は解決するのよ」
黒子
「本当に御坂先輩はそう思ってるんですの?
心の底から、何もせずに事件がただ収束するのを待っていればいいと思っているんですの?」
美琴
「それは……。よくない、と思う。間違ってる」
黒子
「わかってるじゃありませんか。
目を瞑っていれば何事もなく終わるなんて真っ赤な嘘でしかありませんの。
その4,5日の間に幻想御手によって犯罪に走る人間は当然いますし、その犯罪に犠牲になる人間だっていますのよ。
そもそも碌な臨床試験もしてないというのに後遺症が無いなんてどこまで本当かわかりませんの。
何を一体迷うことがあるんですの?」
黒子
「御坂先輩が木山春生を止めようとすることは正しいことですのよ」
169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:20:43.82 ID:rSCS392o [61/70]
美琴
「私、幻想御手を止めるってことは子供たちを見捨てることだって佐天さんに言われた時に木山春生の子供たちの顔を思い出したわ……。
木山春生の記憶を覗いた私には子供達を見捨てて、幻想御手を止めるのが本当に正しいって言い切る自信が無いの!」
黒子
「それは、子供達を助けるということが幻想御手の被害者や被害者になりうる人を犠牲にすることだとわかって言ってるんですよね?」
美琴
「わ、わかってるわよ」
黒子
「なら、佐天さんのように木山春生に肩入れすればいいのではありませんか?」
美琴
「えっ……」
黒子
「この件に関しては、残念ですがみんなで笑えるハッピーエンドなんてものは存在しませんの。
もしも、そんな状況があるとしたら誰かが我慢をして作り笑いをしてるだけですの。
どちらか一方を選ぶなら、もう片方を切り捨てなければなりませんの」
171 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:26:42.59 ID:rSCS392o [62/70]
黒子
「わたくしは根本的な所では当事者ではないので、木山春生の子供達と幻想御手による被害者達を天秤にかけたりはしません。
わたくしは自分の中の正義に基づいて木山春生を止めます。その結果、子供達が眠り続けることになったとしてもです」
黒子
「それがわたくしの選択ですの」
黒子
「どちらかしか選べないし、どちらかを選ばなくてはなりませんの。
ですから、木山の事情を知っている御坂先輩が子供達を助けてやりたいと思うのなら、わたくしに止める権利はありませんし、仕方ないと思いますの」
美琴
「黒子……」
黒子
「本当に、本気で助けたいと思っているのなら―――ですが」
美琴
「なによ、その言い方は」
黒子
「いえ、わたくしには気になることがありましてね。杞憂ならいいのですが」
172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:29:55.07 ID:rSCS392o [63/70]
美琴
「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
黒子
「じゃあ聞きますけど、御坂先輩は佐天さんから逃げたいと思っていらっしゃいません?」
美琴
「ア、アンタ何言ってんのよ?
私が佐天さんから逃げたい?そんなわけないじゃない馬鹿馬鹿しい」
黒子
「本当にそうですかね?」
黒子
「確かに御坂先輩には迷いが生まれているのかもしれませんの。
木山春生を止めるか止めないか。子供達を見捨てることは本当に正しい事なのか。
ですが、佐天さんから逃げるために、その答えとして木山春生を止めないことを選ぼうとしてしませんか?」
美琴
「そ、そんなことは……」
黒子
「そんなことはない、本当にそう言い切れますの?」
173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:32:32.49 ID:rSCS392o [64/70]
黒子
「事情を知りながらも、あれだけ木山春生を止めると息巻いていた御坂先輩が心変わりするのは少々疑問に感じますの。
それに、向こうの世界でも御坂先輩は木山春生を止めることを選んでるんじゃないですの?
その時に少しでも躊躇しましたか?」
美琴
「それは……」
黒子
「木山春生を止めようとするならば、佐天さんと衝突するのは必至ですの。
御坂先輩が『超電磁砲』だったとはいえ、現在はレベル3程度の能力しか使えない。
だから、佐天さんと戦わなくて済むように木山春生の子供達を言い訳にしようとしていませんか?」
美琴
「なによ……それ、まるで私が佐天さんにビビってるみたいじゃない」
黒子
「わたくしは先ほどからそう言ってますのよ、御坂先輩は佐天涙子―――超電磁砲にビビっている、と」
174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:34:58.54 ID:rSCS392o [65/70]
黒子
「まあ、超電磁砲の凄さは御坂先輩自身が一番わかってますものね、ビビっても仕方がないかもしれません」
美琴
「好き勝手言ってんじゃないわよ!じゃあ、アンタならどうすんのよ!
能力の差は絶望的、身体能力でも敵わない。そんな相手に立ち向かえるっていうの?
奇跡でも起こさなきゃ勝ち目すらない相手だっていうのに」
黒子
「……私には無理ですの。わたくしは卑怯で臆病ですから」
美琴
「ほら、見なさいよ」
黒子
「ですが、私の知っている『御坂美琴』ならできますの」
黒子
「1年前、『御坂美琴』は無能力者にも関わらず、能力者に立ち向かいましたわ」
美琴
「急に何を……」
175 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:39:21.05 ID:rSCS392o [66/70]
黒子
「あなたにもそれが出来ますの?」
美琴
「それくらいできるわよ。現にこないだレベル0の状態で爆弾魔と戦ったじゃない。もう忘れたの?」
黒子
「アナタ様は本当の無能力者として立ち向かったわけではないですの。
『御坂美琴』は、本当に無能力者として能力者の前に立ちはだかったんですのよ。あなたとは全く違いますの」
黒子
「『御坂美琴』だったら、レベル5相手だろうが逃げなかったはずですの。
たとえ、無謀で考えなしと馬鹿にされても、『御坂美琴』は佐天涙子の前に立ち向かうはずですわ。
アナタ様と『御坂美琴』は根っこは同じなはずですの。わたくしを失望させないで下さいませ」
美琴
「…………」
黒子
「…………」
黒子
「今日はもう失礼しますの、おやすみなさい」
ガチャッ
176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:43:22.97 ID:rSCS392o [67/70]
美琴
「…………」
美琴
「なによ、黒子のヤツ。好き勝手なことばっかり言って、レベル0なのは変わりじゃないじゃないの!
それにこの幻想御手事件はアンタ達の世界の事でしょ!私にばっかり押し付けるんじゃないわよ!」
美琴
「もう知らないわよ!どうなったって関係ないんだから!」
美琴
「もう寝るんだから」
・・・・・・・・・・・・・
美琴
(眠れない……)
『佐天さんから逃げてますの』
『佐天さんにビビってますの』
美琴
「うるさい、うるさい、うるさーい!!」
『失望させないでくださいませ』
プッツーーン
美琴
「決めた、決めたわ……。やればいいんでしょ?やってやろうじゃないの!
ここまで馬鹿にされて黙ってられるわけないじゃない!木山春生も佐天さんも二人まとめて倒してあげるんだから!」
pipipi
美琴
「…………ああ、木山先生ですか?私です。御坂美琴です。突然ですけど、決闘を申し込みます。
明日12時に操車場まで来てください―――もちろん、超電磁砲を連れて」
177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:45:31.11 ID:rSCS392o [68/70]
・・・・7月21日朝 柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・
黒子
「おはようございますの」
ガバッ
美琴
「おはよう、黒子。今日は―――」
黒子
「7月21日ですのよ」
美琴
「そうよね、今日は7月21日ね!戻っちゃってたら不完全燃焼で死ぬところだったわ」
美琴
「私、決めた。佐天さんと戦うわ」
黒子
「それは子供達を見捨てるということですか?」
美琴
「ううん、それは今はどうでもいいとうか、考えない事にしたわ」
黒子
「なんとまあ」
美琴
「子供たちをとるか、幻想御手の解決をとるかは佐天さんに勝ってから考える。
それが私にとって正しい答えの出し方だと思う」
180 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:49:28.27 ID:rSCS392o [69/70]
黒子
「なるほど、それはそうかもしれませんの。それで勝算はあるんですの?」
美琴
「そんなもんはないわ。今から考えてダメなら奇跡ってのに賭けるしかないわよ」
黒子
「それはまた、無謀な話ですの」
美琴
「まあね。しょうがないじゃない。それが『御坂美琴』なんでしょ?」
黒子
「そうでしたの。仕方がないことですの」
美琴
「黒子にお願いがあるの」
黒子
「なんですの?」
美琴
「風紀委員や警備員に木山春生の事を通報したりしないでね。
ワガママだってのはわかってる。だけど、私がこの手で決着をつけたいの。ひっかきまわした責任も取らなきゃならないしね」
黒子
「わかりましたの。本来なら風紀委員として見逃すことはできませんの。
ですが、今日のわたくしは御覧の通り体調不良で風紀委員はお休みですの」ゴホッゴホッ
黒子
「それに……昨日は少し言いすぎましたの。そのお詫びということで目を瞑りますの」
美琴
「その辺は別に気にしなくていいわ。ちょっと弱気になってたのは確かだもん。
ありがとね、黒子。やっぱりアンタは私の相棒よ」
7月21日編に続くよ!
182 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/04/30(金) 23:56:36.58 ID:rSCS392o [70/70]
つーことで7月20日編は終わりです。
7月21日(最終日)はバトル展開を入れたいなあと思いつつも、地の文が必要になるし超面倒くさくて困ってる今日この頃。
あと展開予測は控えてくれると助かります。
話の大筋は出来てて細かいところを詰めて肉付けするだけなので、こっから修正するのは面倒っていうか無理なので。
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コメント
No title
管理人乙
本スレ見に行ったけど続き投下されてないみたいだね
まあ気長に待つよ
本スレ見に行ったけど続き投下されてないみたいだね
まあ気長に待つよ
No title
続きまだかよおおおおおおおおおおおおお
管理人さん乙です
管理人さん乙です
No title
続き待ってます
頑張れ!
頑張れ!
No title
続きいつやあああああ
No title
まだ、なのかな…?
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