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番外→通行止め
2レスSS
882 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:23:19.00 ID:.StvxhE0 [2/5]
「はァ? 炊飯器でムニエル? 冗談だろォ?」
『本当なんだよってミサカはミサカは目の前の驚愕の事実を伝えてみる』
「どこまで行くンだよアイツは・・・」
ロビーの端で観葉植物の陰に紛れるようにして、あの人が電話を掛けている。
通話の相手は最終信号――『打ち止め(ラストオーダー)』と呼ばれる個体だ。
漏れ聞こえてくる話し声からして、随分と他愛のないことを会話しているらしい。近況だの、夕食だの、なんだの。
しかし、
「相変わらずくっだらねェなァおい」
『むぅ、そんなことないもんってミサカはミサカは理解のないあなたに主張してみる』
「はいはいはいはいわァかりましたァ! ・・・これで満足したかクソガキ」
『ひっどーい! ミサカはミサカは不満でいっぱい!』
会話は途切れることなく続く。くだらない内容ならば通話をやめてしまえばよい話なのに、そうされることはない。
そもそも確認できる限り、あの人の表情はいつもよりも豊かで、時々ほんのりと口の端に笑みがのっている。声音だって普段以上に柔らかくて優しい。
――ミサカの前では絶対に見せない表情だ、と、簡単にわかるくらいに。
883 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:23:46.70 ID:.StvxhE0 [3/5]
今は『暗闇の五月計画』をもととした能力進化計画を進行中のため、ミサカとあの人は行動をともにしている。
随分と付き合いも深くなったように思う。何だかんだで配慮してくれるあの人は優しかった。
そして魅かれた。あらゆる意味で、あの人はミサカに意味と居場所を与えてくれたから。
それゆえに、常に愕然とさせられる。
最終信号と比べたとき、ミサカとあの人との距離はあまりにも遠過ぎる。
最終信号を救うために、あの人はロシアまできた。
最終信号を守るために、あの人は絶望の権化である『番外個体(ミサカ)』と対峙した。
最終信号を助けるために、あの人は己を殺そうとした相手に頭を垂れた。
最終信号を生きさせるために、あの人は血まみれになっても歌い続けた。
そうやってあの人は命がけで最終信号を崩壊の淵から掬い上げた。
最終信号が「ずっと一緒にいたい」と願ったとき、あの人は初めて笑った。
そして言った。「俺も、ずっと一緒にいたかった」と。
今もあの人が闘っているのは、その願いを叶えるためなのだ。――『最終信号と共にいたい』という願いを、叶えるために。
確かにあの人はミサカのために尽力してくれる。ミサカも最終信号と同じくあの人の『守るもの』の一端だ。
でもそれは、あくまでも一万の中の一。最終信号のように、絶対でも唯一でもない
その差はいったい何? 何処に由来する? 製造計画やその目的の差? 早く出会っていたか否か? 容姿? 性格? 能力? 性質? それともそれら全て?
繰り返してもわからない。埋まることはない葛藤。絶望的な差異。違い。同じクローンなのに? どうして? 何故?
884 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:24:14.56 ID:.StvxhE0 [4/5]
「ン、そろそろ切るぞ」
『・・・また、電話するねって、ミサカはミサカは寂しさと名残惜しさを隠しながら次回の約束をお願いしてみる』
「そうだな・・・週末あたりには顔出せるかもしンねェ」
『ホントに?! ってミサカはミサカはすっごく嬉しい! この喜びを表すためにソファーの上でぴょんぴょん跳ねてみたら、ヨミカワに注意されちゃった』
「オマエはアホかァ? 大人しくしてろクソガキ。また電話する」
『はーい! ってミサカはミサカは週末をとっても楽しみにしてみる! 絶対無茶したり怪我したりしないでね! あなたはけっこう危なっかしくて、ミサカはミサカはいつも心配してるんだよってミサカはミサカはあなたに訴えてみたり。あと番外個体にも、無茶したり怪我したりしないようにしてねって伝えて欲しいな、ってミサカはミサカは最後にもう一つ大事なことをお願いしてみる』
「――わかった。番外個体にも伝えとく。じゃあな」
表情も声音も優しい。あの人は最終個体との時間をひどく大切にしていた。通話を終えた後も暫く携帯電話を握り、それを見つめたままだ。
それが、とても悲しかった。寂しかった。悔しかった。妬ましかった。羨ましかった。虚しかった。――辛かった。
どうして、その視線の、行為の、思いの対象がミサカではないのか、と。何かが少しでもずれていれば、最終個体とミサカの立場が逆転していたのかもしれないのに。思ってもどうしようもないこととはいえ、その思考を止めることはできなかった。
――ミサカも、あの人の『無二』になりたい
――ミサカは、あの人の『無二』になりたい
――ミサカ、は、『彼の最も大切な存在(ラストオーダー)』に、なりたかった
――・・・・・・そこにはどうやったら辿り着けるの? と、ミサカは、・・・ミサカは――――
885 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:26:18.23 ID:.StvxhE0 [5/5]
終わり。
ロシア編を久しぶりに読んだら一方通行さんの打ち止めしか見えていないっぷりを再確認した。さすが地の文=プロポーズ男。
にしても打ち止め復活のあたりの番外個体の置いてきぼりさは、うん。あれだ。御坂遺伝子はスルーされるか溺愛されるかの二択かもしれない。
あとどうでもいいけど気になっているのが、一方通行さんの携帯にはいってる打ち止めの写真はいついかなる状況で得たものなのか。待ちうけ? 気のせい? だーれーかーおしーえて くーれーませーんか?
「はァ? 炊飯器でムニエル? 冗談だろォ?」
『本当なんだよってミサカはミサカは目の前の驚愕の事実を伝えてみる』
「どこまで行くンだよアイツは・・・」
ロビーの端で観葉植物の陰に紛れるようにして、あの人が電話を掛けている。
通話の相手は最終信号――『打ち止め(ラストオーダー)』と呼ばれる個体だ。
漏れ聞こえてくる話し声からして、随分と他愛のないことを会話しているらしい。近況だの、夕食だの、なんだの。
しかし、
「相変わらずくっだらねェなァおい」
『むぅ、そんなことないもんってミサカはミサカは理解のないあなたに主張してみる』
「はいはいはいはいわァかりましたァ! ・・・これで満足したかクソガキ」
『ひっどーい! ミサカはミサカは不満でいっぱい!』
会話は途切れることなく続く。くだらない内容ならば通話をやめてしまえばよい話なのに、そうされることはない。
そもそも確認できる限り、あの人の表情はいつもよりも豊かで、時々ほんのりと口の端に笑みがのっている。声音だって普段以上に柔らかくて優しい。
――ミサカの前では絶対に見せない表情だ、と、簡単にわかるくらいに。
883 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:23:46.70 ID:.StvxhE0 [3/5]
今は『暗闇の五月計画』をもととした能力進化計画を進行中のため、ミサカとあの人は行動をともにしている。
随分と付き合いも深くなったように思う。何だかんだで配慮してくれるあの人は優しかった。
そして魅かれた。あらゆる意味で、あの人はミサカに意味と居場所を与えてくれたから。
それゆえに、常に愕然とさせられる。
最終信号と比べたとき、ミサカとあの人との距離はあまりにも遠過ぎる。
最終信号を救うために、あの人はロシアまできた。
最終信号を守るために、あの人は絶望の権化である『番外個体(ミサカ)』と対峙した。
最終信号を助けるために、あの人は己を殺そうとした相手に頭を垂れた。
最終信号を生きさせるために、あの人は血まみれになっても歌い続けた。
そうやってあの人は命がけで最終信号を崩壊の淵から掬い上げた。
最終信号が「ずっと一緒にいたい」と願ったとき、あの人は初めて笑った。
そして言った。「俺も、ずっと一緒にいたかった」と。
今もあの人が闘っているのは、その願いを叶えるためなのだ。――『最終信号と共にいたい』という願いを、叶えるために。
確かにあの人はミサカのために尽力してくれる。ミサカも最終信号と同じくあの人の『守るもの』の一端だ。
でもそれは、あくまでも一万の中の一。最終信号のように、絶対でも唯一でもない
その差はいったい何? 何処に由来する? 製造計画やその目的の差? 早く出会っていたか否か? 容姿? 性格? 能力? 性質? それともそれら全て?
繰り返してもわからない。埋まることはない葛藤。絶望的な差異。違い。同じクローンなのに? どうして? 何故?
884 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:24:14.56 ID:.StvxhE0 [4/5]
「ン、そろそろ切るぞ」
『・・・また、電話するねって、ミサカはミサカは寂しさと名残惜しさを隠しながら次回の約束をお願いしてみる』
「そうだな・・・週末あたりには顔出せるかもしンねェ」
『ホントに?! ってミサカはミサカはすっごく嬉しい! この喜びを表すためにソファーの上でぴょんぴょん跳ねてみたら、ヨミカワに注意されちゃった』
「オマエはアホかァ? 大人しくしてろクソガキ。また電話する」
『はーい! ってミサカはミサカは週末をとっても楽しみにしてみる! 絶対無茶したり怪我したりしないでね! あなたはけっこう危なっかしくて、ミサカはミサカはいつも心配してるんだよってミサカはミサカはあなたに訴えてみたり。あと番外個体にも、無茶したり怪我したりしないようにしてねって伝えて欲しいな、ってミサカはミサカは最後にもう一つ大事なことをお願いしてみる』
「――わかった。番外個体にも伝えとく。じゃあな」
表情も声音も優しい。あの人は最終個体との時間をひどく大切にしていた。通話を終えた後も暫く携帯電話を握り、それを見つめたままだ。
それが、とても悲しかった。寂しかった。悔しかった。妬ましかった。羨ましかった。虚しかった。――辛かった。
どうして、その視線の、行為の、思いの対象がミサカではないのか、と。何かが少しでもずれていれば、最終個体とミサカの立場が逆転していたのかもしれないのに。思ってもどうしようもないこととはいえ、その思考を止めることはできなかった。
――ミサカも、あの人の『無二』になりたい
――ミサカは、あの人の『無二』になりたい
――ミサカ、は、『彼の最も大切な存在(ラストオーダー)』に、なりたかった
――・・・・・・そこにはどうやったら辿り着けるの? と、ミサカは、・・・ミサカは――――
885 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] 投稿日:2010/12/21(火) 11:26:18.23 ID:.StvxhE0 [5/5]
終わり。
ロシア編を久しぶりに読んだら一方通行さんの打ち止めしか見えていないっぷりを再確認した。さすが地の文=プロポーズ男。
にしても打ち止め復活のあたりの番外個体の置いてきぼりさは、うん。あれだ。御坂遺伝子はスルーされるか溺愛されるかの二択かもしれない。
あとどうでもいいけど気になっているのが、一方通行さんの携帯にはいってる打ち止めの写真はいついかなる状況で得たものなのか。待ちうけ? 気のせい? だーれーかーおしーえて くーれーませーんか?
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