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谷口「俺、とべんじゃん!」【ハルヒSS】
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 13:54:01.87 ID:NxFbS8JM0
落ちない程度にageながら投下していきます。さるさん対策で2~3分間隔になります。
投下レス数は280前後になります。無駄に長編なんで、バイトの時間つぶしにでも。
投下終了時刻は0時を目標としています。
このSSは一度VIP+に投下した物を大幅に加筆修正した物です。
それでは投下します。
───谷口家 リビング
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
谷口「プッ、WAハハハハ」
TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」
谷口「WAハハハハ」
谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」
谷口「あとでやるよ」
谷口父「いつも口先ばかりだ。基礎固めをしている今が大切な時期なんだぞ」
谷口「だからわかってるって!この番組終わったら勉強するから!」
落ちない程度にageながら投下していきます。さるさん対策で2~3分間隔になります。
投下レス数は280前後になります。無駄に長編なんで、バイトの時間つぶしにでも。
投下終了時刻は0時を目標としています。
このSSは一度VIP+に投下した物を大幅に加筆修正した物です。
それでは投下します。
───谷口家 リビング
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
谷口「プッ、WAハハハハ」
TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」
谷口「WAハハハハ」
谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」
谷口「あとでやるよ」
谷口父「いつも口先ばかりだ。基礎固めをしている今が大切な時期なんだぞ」
谷口「だからわかってるって!この番組終わったら勉強するから!」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 13:56:41.73 ID:NxFbS8JM0
谷口父「そういいだしてからもう3時間だ。その番組はなんだ?まさか24時間テレビだとかいうんじゃないだろうな」
谷口「ちげーよ!後15分で終ーわーりーまーすー!」
谷口父「どうだか。お前は補欠合格だった自覚があるのか?」
谷口「!!」
谷口父「他の人が遊んでる時にどれだけ頑張れるかがだな……」
谷口「うるせぇ!後で勉強するっつってんだろうが!」
谷口父「なんだその口のきき方は!」
谷口「もういい!興ざめだっての!」
ドタドタドタドタ(2階に上がる音)
谷口父「おい!……まったく。……ゴホッゴホッ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 13:58:47.33 ID:NxFbS8JM0
───谷口の部屋
谷口「毎夜毎夜同じ会話の繰り返し……」
谷口「ったく、TVぐらい気分よくみさせろよ」
谷口「自分が一流大学出だからってよ」
谷口「へん、人は勉強できるかできねえかだけで評価されるもんじゃないぜ」
谷口「親父は確かに頭が良いと思うし、同期でも出世頭だろうさ」
谷口「それはすげえと思うけど、俺とは価値観が全然違うんだよな」
谷口「親父は知らないかもしれねえけど」
谷口「俺にはもっと別の取り柄ってもんがあるんだよ」
谷口「お? 今チャイムが鳴ったな。だれか来たのか? ……どーでもいいな」
谷口「……さっさと寝るか」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:01:02.29 ID:NxFbS8JM0
───翌日 昼休み 学食
谷口「おーい!ここだここ!」
キョン「なんだ、ここ人の荷物が置いてあるじゃないか。席取りされてるんじゃないか?」
谷口「俺が前の休み時間からリザーブしといたんだよ。わざわざ体育着袋を教室から持ってきたんだぜ?」
国木田「そんな大事な席に僕も座っていいの?」
谷口「サービスサービスゥ、だ。さあさ、座ってくれ」
キョン「……いるよな、こういうやつ」
谷口「なんだ、文句あるのか? 席とっておいた男にその物言いはないぜ」
キョン「はいはい。と、その体操着袋名前が書いてあるな」
谷口「お、ホントだ。こりゃ有名人になっちまうな、WAハハハハ」
国木田「前の時間から席取りをするような小さい男としてね」
谷口「……食券買いにいってくるわ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:03:26.63 ID:NxFbS8JM0
sageとか悠長なこと言ってると、この時間帯でも軽く落ちる気がしてきた。
谷口「ズビビビビ。お、あそこの女子いいな。確か1年9組の沢崎! B+だったつもりだが、ありゃA-か。高校入って化粧覚えたみたいだな」
キョン「……モグモグ」
国木田「谷口はホントに女子のことが好きだね。彼女作ったりしないの?」
谷口「馬鹿やろう! 作れるもんならとっくに作ってるっての!」
国木田「ふーん。その割には誰かにモーションかけてるようにも見えないけどね」
谷口「あのなぁ。まるで俺がチキンみたいな物言いじゃねえか! ズビビビビ」
国木田「別にそうはいってないけどさ。お目当ての女子とかいないのかな、って」
谷口「そうだな……。朝倉涼子のことは狙ってたんだけどな。なんですぐに引っ越しちまったんだろうな、おかげさまでクラスのグレードが1ランク下がったぜ」
キョン「……。……モグモグ」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:06:07.38 ID:NxFbS8JM0
谷口「うちのクラスは今、涼宮でもってるようなもんだ」
キョン「なんでそうなる」
谷口「決まってんだろ? ミスコンやる、って話になったときのこと考えてもみろよ。かわいい女子が一人もいないクラスはみじめじゃねーか」
国木田「前提が意味わからないけど、言いたいことはわかるなぁ」
谷口「中身は最悪だけどな。付き合ってるキョンの気がしれないぜ」
キョン「おかしな物言いをするな」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:09:56.80 ID:NxFbS8JM0
谷口「でもうらやましくもあるな」
国木田「どこが?」
谷口「どこもここもないだろ。SOS団だっけか? 女子部員三人、涼宮朝比奈さん長門ってお前、どんだけだよ」
国木田「確かにねー。傍目から見ても可愛い子ばっかりが集まってるもんなぁ」
キョン「……ひとついいか」
谷口「ああん?」
キョン「例えばだ。無理やり付き合わされている部活があったとする。その部員が全員顔や性格がよろしくない連中だったらどうする?」
谷口「なんだそれ? いじめじゃねーか」
キョン「つまりだ。本来いじめ級の問題を、なんとか外見でごまかしてるようなもんなのさ」
国木田「案外面食いなんだね、キョン」
キョン「健全な高校男子だからな」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:12:05.04 ID:NxFbS8JM0
谷口「ま、涼宮の常軌を逸した行動の数々は知ってるしな、イーブンってとこか」
キョン「三人の眼福で涼宮を相殺したとして、おつりは出るぞ」
谷口「何?」
キョン「朝比奈さんがお茶を出してくれる」
谷口「なんですとっ!?」
キョン「それがまた美味くってな……」
谷口「……なんだか泣けてきたぜ」
国木田「どうして?」
谷口「コイツの高校生活に比べて、おれの高校生活がなんと華のないことか……」
女子「あのさー、隣の荷物どけてもらっていいかな?」
谷口(2年生の紺野先輩か……B+だな)
谷口「うおう、勿論おkっすよ!」
紺野真琴「いやー、わるいねー! 千昭! こっちこっち! 席取れたわよ!」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:14:21.91 ID:NxFbS8JM0
谷口(これはアタックチャンス!)
千昭「は? なんで俺がこんなむさい男の隣に座んなきゃいけねーんだよ。絶対ごめんだね」
谷口「む、むさ……!?」
千昭「第一、昨日俺との約束ブッチしといて昼飯暇だから呼ぶってどーゆー神経してんだよ」
真琴「いやー、いろいろあってさー! どーしても野球見に行けなくなっちゃったんだってー!」
千昭「俺楽しみにしてわざわざメガホンまで持ってったんだぜ? なのに妹がプリン買って来たぐらいでこねーってどーゆうことだよ。ったく、それにこんなジメジメしたとこで飯食うの俺はごめんだ。じゃあな」
真琴「あ、ちょっと! ……」
谷口(いっちまった……。なんか険悪なムードだったな)
谷口「そ、そんなに落ち込まないでくださいよ、水飲みます?」
ガタッ
紺野「……ホント今日はついてない。なーにがナイスの日よー、もー!」
国木田「いっちゃったね……」
谷口(いつもながら、眼中になし、か)
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:16:10.42 ID:NxFbS8JM0
国木田「そういえば来週から期末テストだね。谷口は勉強してる?」
谷口「……してねぇーよ! なんもかんもうまくいかねー! ブルー入りましたー!」
キョン「もう少ししっかりしないとな、お前」
谷口「わーったよ。ったく、どいつもこいつも」
国木田「さて、食器片付けようよ」
谷口(……キョンがうらやましいぜ)
谷口(俺にはなにもない。キョンも似たようなもんなのに、何が違うんだよ?)
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:18:16.70 ID:NxFbS8JM0
───放課後
生徒A「おい! 理科のノート、先生が持ってこいっていってなかったか? 日直!」
谷口「おいおい、日直誰だよ? ルーズすぎねぇか?」
国木田「今日の日直は谷口だよ」
谷口「……キョン、手伝ってくれねえ?」
キョン「仕方ないやつだな……」
ハルヒ「キョン! 団室行くわよ! さっさと用意するっ!」
キョン「……ということだ。悪いな」
谷口「……」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:20:39.11 ID:NxFbS8JM0
───理科室
ドスッ
谷口「ふぃーやっと半分。ったく、一人で運ぶ量じゃねーぞ! なんで何度も一号館と二号館を往復しなきゃいけねえんだ」
谷口「あーだりー。ごみ箱とかにテスト問題のコピーとか入ってねーかなー」
谷口「入ってねーよな。そううまくはいかねぇよな」
谷口「……たばこでも吸うかな。誰もこねーだろ。臭いは……窓の近くで吸えばダイジョブダイジョブーだろ」
カチッカチッ
谷口「……ふぅー。たまんねー。始めて一か月、もう既にやみつきです」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:22:49.06 ID:NxFbS8JM0
スッ フゥー
谷口「こうでもしなきゃ世の中の不条理なんて無視できねーよ」
谷口「なんでキョンの周りにだけ女子が寄ってくるんだろうな」
谷口「ありゃ一種の超能力だな。涼宮のやつ、超能力者は来なさい! とか言ってたし」
谷口「それで寄ってったんだからキョンは超能力者に違いない」
谷口「じゃああれか? SOS団のやつらみんなおかしな連中なんじゃねーか?」
谷口「涼宮は他に何を呼んでたっけな? コスプレーヤーにホモに綾波レイがいたら来いっつってたっけ?」
谷口「WAハハハハ、ま、いいや。さて、ノート取ってくるか。吸殻は……水道でも流しとくきゃいいべ」
ジャー
谷口「さてと……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:24:59.80 ID:NxFbS8JM0
ガタッ
谷口「!!!???」
谷口(誰かいる!?)
谷口(や、やべぇ……)
谷口(音源は準備室か……?)
谷口(吸ってっとこ見られたかな……。顔は? バレたか?)
谷口(いや、音がしただけだし……見られたとは限らねーぞ……)
谷口(確認する必要があるな……)
ギィィィ(ドアをあける音)
谷口『……おいーす。だ、誰かいますかぁ?』(小声)
……
谷口(誰もいない?)
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:27:13.02 ID:NxFbS8JM0
谷口「っかしーな、確かに物音したんだけど」
谷口(隠れてるのか? 驚かしてみるか)
谷口「……WAっ!!」
……
谷口「反応なし、か」
谷口「気のせいだったかな……と、あれ? なんか落ちてるな」
谷口「くるみか……? これがどっかから落っこちたのかな?」
ガタッ
谷口「だ、誰だっ? うおっ!」
谷口(こ、こける!)
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
谷口(な、なんだ!??)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:29:46.50 ID:NxFbS8JM0
テテーテレテレテレテレテレテレテー
谷口「ウァアハアハッハハハハッヒィイイイイヤアァアアアアアア」
谷口(なんぞなんぞこれなんぞこれええええ!!)
谷口(時計だらけな世界だ! うお、バッファローの群れかあれ? 何ぞこれ?)
谷口(新手のドラッグかぁあああああああ????)
谷口「うああああああああああああ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:31:59.67 ID:NxFbS8JM0
ドンッ
谷口「いってぇええええ……」
谷口「ここは?」
谷口「理科準備室か……」
谷口「ただこけただけだったのか? じゃあ今のは一体なんだ?」
ギィィィ
谷口「だ、誰だ!!??」
国木田「ビックリしたー。いきなり大きな声出さないでよ」
谷口「な、なーんだよ、国木田か」
国木田「なんだとは何さ。いつまでたってもノートが置きっぱなしだからわざわざ持ってきてあげたってのに」
谷口「ありがとな……。そうだ、今近くで誰か見なかったか?」
国木田「見てないけど……?」
谷口「そ、そうか……」
谷口(夢だったのか……? いったいなんなんだよったく)
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:34:09.18 ID:NxFbS8JM0
───その頃、SOS団室
ハルヒ「だーかーら! あんたがやればいいでしょそんなこと! 団長が手をだすまでもないわ!」
キョン「あ、あのなぁ、だからってなんで俺がやらにゃならんのだ! 汚したのはお前だろうが!」
ハルヒ「団長命令よ! さっさとやりなさい!」
キョン「民主党の誰かさんみたいに権力に居座るな!」
ハルヒ「うるさいうるさいうるさーい!あたしは汚職なんてしてないもん!当然の権利を行使してるだけよ!」
キョン「意味のわからんもん作って食器を汚してるじゃねーか!」
ハルヒ「それが?」
キョン「そ、それだけだが……」
ハルヒ「じゃあさっさと洗ってきなさいっ!」
キョン「ちくしょう……」
古泉(汚食器、おしょき、おしょくというわけですか……。さすがに安易すぎますね)
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:36:29.62 ID:NxFbS8JM0
長門「……」
古泉「? どうしたんです?何か気になることでも?」
長門「4分15秒前、想定外の情報爆発を確認した」
古泉「……一体どういうことです? 涼宮さんのケーキを彼が食べたのはたった今のことですよ?」
長門「それより、いくばくか前のこと」
古泉「では涼宮さんとは関係を持たないものであると?」
長門「断定できない。なんらかの干渉は行われた可能性がある」
古泉「なるほど……。その情報爆発について説明願えますか?」
長門「統合思念体が現在データベースから情報を策定中。全体の解析には多くの時間が必要」
古泉「具体的にはどれだけの時間が?」
長門「……解答できない。過去に似た事例が発見できた場合、明日にも解析は完了できる」
古泉「発見できなかった場合は……」
長門「涼宮ハルヒのように観察対象として指定される可能性がある」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:38:56.62 ID:NxFbS8JM0
古泉「なるほど。なかなかに由々しき事態ですね」
長門「そう」
古泉「しかしながら我々の機関では、現在の涼宮さんに関するチームと同様の人員や資金を用意できません」
長門「……」
古泉「機関の規模には自負がありますが、それでも二兎を追うことには多大なリスクが伴うと、おおよそ考えられるでしょう」
長門「……」
古泉「したがって、涼宮さんとその情報爆発の関連性が希薄な場合、我々は傍観の立場をとることになりそうです」
長門「饒舌」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:41:20.42 ID:NxFbS8JM0
古泉「我々も、少々統合思念体の力を計りかねているのですよ」
長門「……」
古泉「できることならばなるべく統合思念体のことは刺激しないよう、という方針なんです」
長門「……」
古泉「こちらの行動指針を知ってもらい、テリトリーについて一線引きたいとおもいまして」
長門「……」
古泉「あくまで我々は涼宮さんに興味がある訳ですよ。統合思念体の興味と我々の興味の対象は、被ることはあれど完全に一致している訳ではない、ということです」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:43:29.97 ID:NxFbS8JM0
長門「WINWINゲーム」
古泉「そのとおりです。流石ですね」
長門「今回私は貴方の機関に対し、この一件に手を出さないことを期待している」
古泉「!? 珍しいですね、私的な意見を伺えるとは」
長門「かもしれない」
古泉「それは一体何故ですか?」
長門「涼宮ハルヒと関係性を持たない事柄において、私的感情の行使は規制されていない」
古泉「……なるほど。では手を出してほしくない理由について、伺えますか?」
長門「……」
古泉「わかりました。とりあえず今回の一件は機関にはまわさないことにしましょう」
長門「……感謝する」
古泉(長門さん個人の関心が向くこと、ですか。んふ、興味深いですね)
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:45:41.27 ID:NxFbS8JM0
───下校中、人のほとんど通らない裏道にて
谷口「ったく一体なんだったんだ? 煙草も見られたかもしんないし、今日はついてねーぜ」
谷口「あーあ。テストやべーよ。出来る気がしねー。高校のテストってどんな感じなんだあ?」
谷口「高校入れたのだって奇跡みたいなもんだし。山張りあたりーのあたりーのだったもんな」
谷口「まったく山本勘助も真っ青だぜ」
谷口「まぁいいや。とっとと帰って勉強でも、っとその前に一服……」
谷口「一服……」
谷口「……ねぇ!!」
谷口「え、まじで? ……マジマジマジ!」
谷口「ねぇよねぇよねぇよ! ど、どっかにおとしたってかぁ!?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:47:50.99 ID:NxFbS8JM0
谷口「おいおい勘弁してくれよシャレになんねーって!」
谷口「あ! あの準備室でこけたときに落としたのか!?」
谷口「やべーよそれはやべーよ!」
谷口「日直で理科室入ったたのばれてるし!」
谷口「幸いなことに、まだ学校の近く!大して時間も経ってない!」
谷口「急いで戻れば間に合うかもしれねぇ! ここはダッシュだ!」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:50:01.40 ID:NxFbS8JM0
ダダダダダダ
谷口「うお、こんなとこに自転車が! しゃーない、ぎっちまうか!」
ガチャガチャッ
谷口「ちゃんと返すからよ!ちょっと借りるだけだから!」
キコキコキコキ
谷口「なんでこんなときに赤なんだっつの!」
谷口「こちとら学生生活がかかってるんだ! 喫煙で停学とかださすぎだぜ」
谷口「ここは強行突破だな!信号なんてきにしてられっかよ!」
ププーーーーーー!!!
谷口「えっ?」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:52:11.78 ID:NxFbS8JM0
谷口(あ、トラックだ。馬鹿なの、死ぬの?)
谷口(くだらなすぎるけど、俺にはふさわしいかもな)
谷口(WAWAWA……)
谷口(……でも死なずにすむなら……)
谷口(親父と……)
バーン!!
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:54:21.36 ID:NxFbS8JM0
───理科室前の廊下
谷口「ノートも置きっぱなしだったし、箱も動いてなかった」
谷口「ふー、とりあえず誰にも見られなかったってことだよな」
谷口「よかったよかった」
谷口「しかしさっきのはなんだったんだぁ?」
谷口「事故ったと思ったら、怪我もなくて自転車をギッた場所に戻ってた」
谷口「……時が、戻ったみたいだったな」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:56:33.29 ID:NxFbS8JM0
谷口「んなばかなことあるかよな……」
ガチャッ
キョン「ふぅー」
谷口「お、よおキョン」
キョン「谷口か」
谷口「家庭科室からなんか出てきて、何やってたんだ?」
キョン「みてのとおり、皿洗いだ」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:58:41.69 ID:NxFbS8JM0
キョン「昨日朝比奈さんがケーキを持ってきてくれたんだが、それがまたうまくてな」
谷口「ふーん」
キョン「それに涼宮が対抗心を燃やして、今日材料買い込んできたんだ」
谷口「ふんふん」
キョン「で、結果出来たのがケーキとは呼べないような見かけでな」
谷口「なるほど」
キョン「それをみんなに食わせたくないもんだから全部自分で食おうとしたんだが、もったいないから俺が一切れ食ってやったんだ」
谷口「ほう……」
キョン「それから、うまいぞ、って言ってやったのさ」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:00:41.47 ID:NxFbS8JM0
キョン「そしたら顔を真っ赤にして皿洗いをしてこいとか言うもんだから……」
谷口「……」
谷口「なぁキョン……」
キョン「そこで俺は……ん? どうした?」
谷口「時を跳ぶことってできると思うか?」
キョン「!!!!」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:02:51.76 ID:NxFbS8JM0
キョン「どこでそれを!!??」
谷口「何もそんなに驚かなくてもいいだろ、そんな真剣な話じゃねーよ」
キョン「……なんでそんなこと聞くんだ?」
谷口「べ、べつに? おまえらおかしなことしてるだろ? その一貫でそーゆう実験とかしてねーのかな、と思ってさ」
キョン「……」
谷口「いや、悪かったな。お前は涼宮菌におかされてないんだったっけな。おかしなことを聞いちまった。わすれてくれ」
キョン「……跳べるんじゃないか?」
谷口「……え?」
キョン「跳べると、思うぞ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:05:02.34 ID:NxFbS8JM0
キョン「年頃の奴にはありえる話だそうだ」
谷口「だ、だけどよ、ど、どうやって跳ぶんだ??」
キョン「方法はわからんが……やっぱりピンチのときとか、勢いじゃないか?」
谷口「……」
キョン「でも、なんでこんなことを聞くんだ?」
谷口「……笑わないか?」
キョン「俺がいつも誰の相手をしてると思ってるんだ……」
谷口「誰にも言うなよ、涼宮二世はいやだからな!」
キョン「わかったわかった。で?」
谷口「かくかくしかじか……」
キョン「……なんだって……」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:07:32.28 ID:NxFbS8JM0
谷口「な、なぁ、おかしなことになっちまったのか? 俺」
キョン「い、いいじゃないか。手から火の玉を出せる奴よりは随分実用的だ」
谷口「茶化すなよ」
キョン「は、はは。まあ、害のあることじゃないし、そんなに深刻に考えることないんじゃないか?」
谷口「それは、そうだが……」
キョン「そそそ、そうさ。じゃあ俺は団室に戻らないといけないから、もういくよ」
谷口「ああ、悪かったな、おかしな話につきあわせて」
キョン「いいさ。気にするな」
キョン(何か朝比奈さんと関係しているのか? 朝比奈さんに聞いてみるべきだろうか……いや、どうせ禁則事項に決まってるな)
キョン「ま、古泉やら長門もいるし、俺の出る幕ではないよな。ささ、早いとこ部室戻らんとまたハルヒが怒りだしそうだ」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:09:41.39 ID:NxFbS8JM0
そして時をおいて期末テスト明け
───期末テストの上位者発表掲示板
ガヤガヤガヤ
キョン「さすが国木田だな、学年3位とはうらやましいぜ」
国木田「ありがとう。でも、キョンも載ってるじゃない」
キョン「まぁな。うちの団長のスパルタ教育があったからな」
国木田「SOS団だっけ? 涼宮さんが2位、古泉君は5位、それに長門さんが22位。加えてキョンが49位とは、すごい集団だね」
キョン「涼宮はあそこで悔しがってるがね」
涼宮「むむぅ……」
谷口「……」
谷口(ブ、ブービー賞……)
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:11:52.08 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「ちょっとキョン! あんた49位ってふざけてんの?」
キョン「ふざけてるとはなんだ! お前が言った”団員は50位以内であるべし”をちゃんと守ったじゃないか!」
ハルヒ「かー、これだから昨今の若者は困るのよ。いーい? 1やれと言われたら2をやってくるぐらいじゃないと、社会じゃ通用しないわよ!」
キョン「でかい口叩いてるがな、お前だって公言してた一位、取れてないじゃないか!」
ハルヒ「うるっさいわね! バカキョンの癖に生意気よ!」
谷口「……49位だってすげえじゃねえか」
涼宮「何? 部外者は黙ってなさい」
谷口「キョンだって頑張ったんだ! みんなお前と同じようにはいかねぇんだよ!」
キョン「谷口……」
ハルヒ「……言うじゃない。で、あんたは何位なのよ?」
谷口「それは……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:13:32.50 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「それだけ言うんだから、あたしより上なんでしょうね?」
谷口「なーんでそうなる。そりゃ一位じゃねぇか」
涼宮「ふーん、なのにそんな大口叩いてるわけ」
谷口「ひ、人の取り柄ってのは勉強だけじゃねえんだよ!」
涼宮「それはそれ、これはこれ。さあ、その順位票みせなさいよ!」
ドゥシッバシュッ トリャー
キョン「お、おいハルヒ、やめろ」
谷口「ちょ、おまっ」
涼宮「いいじゃないちょっとぐらい! ほいっとー! へへーん!」
谷口「よ、よせよ!」
涼宮「さーて、順位はどーなのかしらねぇ? ……あ」
谷口「……」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:15:44.32 ID:NxFbS8JM0
涼宮「……」
キョン「ハルヒ……?」
谷口「もういいだろ、返せよ」
バシッ
涼宮「えっと、その……」
谷口「お前は勉強もスポーツもできるし、顔もいいだろうさ」
涼宮「……」
谷口「だが、出来ない奴を馬鹿にする権利があるのかよ」
涼宮「……」
谷口「わりいなキョン、先生に呼ばれてっからもういくわ」
キョン「お、おう」
ハルヒ「……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:17:52.82 ID:NxFbS8JM0
───放課後、団室
朝比奈「……うぅー、胃が痛いです~」
キョン「大丈夫ですよ、何か文句をいってきたら、俺がガツンといってやりますから」
朝比奈「でもキョン君がそんなことしたら……」
キョン「そんなこと気にする必要ありませんよ。なあ、古泉?」
古泉「やれやれ。多少のバイトぐらいは覚悟することとしましょう。仲間のためですからね。とはいえ、涼宮さんも厳しいことは言わないと思っていますが」
朝比奈「だけど今度はどんなかっこをさせられるかと思うと……」
バタンッ
朝比奈「ヒッ」
ハルヒ「……」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:20:02.07 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「……」
テクテクテク スワッ
朝比奈・キョン・古泉「……」
ハルヒ「……ハァ」
朝比奈・キョン・古泉「!!」
キョン「た、ためいきをついたぞ。これもお前のバイトの前兆じゃないか?」
古泉「いえ、今のところそういった連絡は……。涼宮さんの様子の原因について、何かご存知で?」
キョン「いや、そんなこと……あ」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:22:17.14 ID:NxFbS8JM0
古泉「何か知っているようですね。話していただけますか?」
キョン「さっき期末テストの順位発表があったろ?」
朝比奈「す、涼宮さんに聞こえないようにしてくださぁい……」
キョン「わかってます。そこで、ハルヒは一位を取れなかったことを悔しがってたんだ。あいつは2位だったんだがな」
古泉「ふふ……涼宮さんらしいですね。とはいえ、まさかそれが理由だとは思っていませんよね?」
キョン「だったら今頃どなりちらしてるだろうさ。その後の話だ。あいつは俺の順位にあたってきたんだが……」
かくかくしかじか
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:24:24.76 ID:NxFbS8JM0
古泉「なるほど……そんなことが」
キョン「谷口の順位がどれほど悪かったかはしらんが、どうやら谷口の言葉が効いたみたいだな、今の様子からすると」
朝比奈「谷口さんというのは、キョン君の友達なんですか?」
キョン「そうです、クラスメイトなんですよ」
朝比奈「谷口さんはすごいですね、涼宮さんにそんなこと……」
キョン「はは、馬鹿ばかりする奴ですけどね」
ガタッ
ハルヒ「ああああ、もう!」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:26:32.83 ID:NxFbS8JM0
キョン「ど、どうしたんだ」
ハルヒ「あんた、まさか私が勉強なんかで人を評価するちっさいやつだと思ってないでしょうね!?」
キョン「べつにそんなこと思っちゃいないが」
ハルヒ「今回のだってゲームみたいにした方が試験勉強が楽しくなると思っただけなのよ!」
キョン「だ、だからわかってるって、そんなこと」
ハルヒ「さ、さっきあのアレにつっかかっちゃったのだって一位がとれなくて、ちょっと不機嫌になっちゃってただけで……」
キョン(名前ぐらい覚えてやれよ)
ハルヒ「……決めた! 私がどれだけ器の大きな人間か、アレに見せ付けてやるわ!」
長門「……」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:28:42.87 ID:NxFbS8JM0
>>49
半年前にVIP+にて投下しました。ただ大幅な変更を加えたほか、エンディング周りは別物になってます。
キョン「ほほう、で、何をする気なんだ?」
ハルヒ「それをこれから考えるのよ。そうねぇ、何かあの男子生徒がビックリするようなのがいいわよねぇ」
キョン「なんだそれ、器を見せ付けてやるんじゃなかったのか?」
ハルヒ「そうよ! だから、勉強のことをちまちまいうしか脳のない人間じゃないっていう風に、あたしのことを見直させるようなことをしてやんのよ!」
キョン「だが、驚かせば人の価値観を変えられるってもんじゃないぞ」
ハルヒ「むむ……。それもそうね……。あんた何かいい考えないの?」
キョン「何で俺なんだ」
ハルヒ「あんたあの男子生徒と良く話してるじゃない」
キョン「そりゃあ、そうだが。んー、そーだなー……」
ハルヒ「やっぱいい! 自分で考えるから! あんたは黙ってなさい!」
キョン「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:30:54.07 ID:NxFbS8JM0
───下校中
谷口「はぁ……。職員室に呼び出されてこってりしぼられた」
谷口「一番へこんでるのが俺だってことが何故わからない……」
谷口「叱りたがる、それは教師のエゴだぜ……」
谷口「土日もほとんど勉強しなかったからな」
谷口「俺だって良い成績とりてえけど、ついついさぼっちまうんだよなぁ」
谷口「やり直せるならがっつり勉強するんだが……」
谷口「また親父に怒られるぜ……」
谷口「あの目、絶対馬鹿にしてる。なんといってもそれがいやだ……」
谷口「ったく胃がきりきりまいだぜ……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:33:04.60 ID:NxFbS8JM0
───家、リビングへ
ガチャッ
谷口「ただいまー、うおっ!」
谷口父「……」
谷口(な、なんで親父がこんな時間に家にいるんだよ)
谷口「お、おかえり。今日は早いんだな」
谷口父「ああ、ただいま」
谷口(なんとなく雰囲気がおかしい、か?)
谷口母「あら、帰ってたの。おかえり」
谷口「た、ただいま」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:35:13.85 ID:NxFbS8JM0
谷口母「そういえば今日期末テストの結果発表だったんじゃないの?」
谷口「な、なぜそれを……」
谷口母「母親はね、子の表情からいろいろ読み取れるものなのよ。とにかく、どうだったの?」
谷口「……」
谷口母「まさか、ブ-ビー賞?」
谷口「なっ……!」
谷口母「ええっ! あんた、そんな成績とっちゃったの!」
谷口父「お前……」
谷口(ちくしょうちくしょうちくしょう……)
谷口「畜生っ!」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:37:23.15 ID:NxFbS8JM0
───河川敷
谷口「……」
谷口「誰も俺のことをわかってなんかくれねえんだな……」
谷口「ミスッたことなんて重々承知なのに、傷に塩を塗るようなことをしてくれやがって」
谷口「あー俺がこんなに悩んでるってのに、子供は川で遊んでるぜ……。あの頃は何も考えなくてよかったから楽だったな」
谷口「明日のことなんて気にもとめなかった。怖いものなんてなかったな」
谷口「……俺は何が怖いんだろうな。なんでこんなに毎日苦しいんだ?」
谷口「考えて、なんとかなるもんでもねーんだろうな。おれ、頭悪いし」
子供「この石をこーやって投げると、ワープするんだぜ?」
ポチャッ ポチャッ ポチャッ
子供「な、すごいだろ?」
子供「すげー!」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:39:33.88 ID:NxFbS8JM0
谷口「ワープなんかしてねーよ、もっと目をこらせっての。必死に跳ねてるんだぜ? それ」
谷口「あー、でも俺さっきワープしたよな。カカカ、必死に自転車こいでよ!」
谷口「……でも……ワープ、か……。」
───キョン:……跳べるんじゃないか? 跳べると、思うぞ
谷口「やりなおしてえな」
谷口「がっつり勉強して、あの掲示板にのってやりてえ」
───涼宮:さあ、その順位票みせなさいよ!
谷口「そしたらみんなの俺を見る目が変わるだろうし」
───谷口父:いつも口先ばかりだ。
谷口「親父だって、俺のことを……」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:41:43.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「……決めた、いっちょやってやろーじゃねぇか!!」
ダダダッ
谷口「うおおおおおおおおおおお」
子供「うわ、男の人が河に飛び込もうとしてる!」
子供「ほ、ほんとだ! すごい顔!」
谷口(がんばるから、帰れたらがんばるから! 俺にチャンスをくれ!)
バッ
谷口「いっけぇえええええええええええ!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:43:54.00 ID:NxFbS8JM0
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」
……
ガラガラガシャッ
谷口「……っててて……」
谷口「こ、ここは? 家のリビング?」
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
谷口「この番組、見たことあんぞ……」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:46:13.77 ID:NxFbS8JM0
TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」
谷口「……もしかして……」
谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」
谷口「……おおおおおお!」
谷口父「おい?」
谷口「まかせろ!」
谷口父「!?」
ダダダダダダ(階段を登る音)
谷口「俺、跳べんじゃん!!」
谷口「うおおお!やりなおしてやるぜえええ!」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:48:25.08 ID:NxFbS8JM0
───期末テストの上位者発表掲示板
ザワザワ
キョン「国木田が2位、俺が50位、そして15位が……」
谷口「へっへーん! そう、俺様だぜ!」
キョン「まさか谷口がこんなに勉強できる奴とはな。授業中は先生からおこられてばかりだったのに」
谷口「脳ある鷹は爪を隠すってな!」
国木田「でもほんとに驚きだなぁ。まさか谷口が家で勉強してるなんてね」
谷口「WAハハハハ、まーあんまり褒めるなって!」
谷口(一度また期末を受けて、模範解答もらって、それだけ丸暗記して過去に跳んでやったぜ!)
谷口(労せずこの順位!)
谷口(うは! この力おいしすぎるぜ!)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:50:34.76 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「……」
キョン「どうしたんだ?」
ハルヒ「……べつに? なんでもないわよ」
谷口「涼宮は7位か。なんで不機嫌なんだ? 十分じゃねーか」
ハルヒ「うるさい!」
ダダダダダダ
谷口「な、なんだ?」
キョン「期末前から、テストのこととなるとずっとあの調子でな。ったく、何が気に食わないんだか」
谷口「ふーん、ま、どうでもいいけどな」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:52:50.14 ID:NxFbS8JM0
───下校時
谷口「よし、テストも終わったし!カラオケでもいこーぜ!」
国木田「カラオケかぁ。うん、いいよ」
谷口「よし! キョンはどうだ?」
キョン「せっかくの団活オフの日だしな、やぶさかじゃあない」
谷口「よし、じゃあ今日は俺のおごりだぜ!」
国木田「太っ腹だね、何かあったの?」
キョン「なんだなんだ、人が変わったようじゃないか」
谷口「がっはっは! 今日はテストもよかったし機嫌がいいんだよ!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:55:15.14 ID:NxFbS8JM0
───歌広にて
国木田「また後でソレはソレで♪ ちょっとしたネタに変わるって♪」
プルルルルル
谷口「はい」
店員「お時間5分前になりましたが、延長どうなさいますか?」
谷口「延長っすかぁ? それきいちゃう? 俺に?」
店員「はい?」
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」
……
国木田「一曲目何にしようかなぁ……とりあえず"友達としてはソレが"あたりかな」
谷口「……あれだ、他人のキャラソン以外を歌ってみるのもいいんじゃねえか?」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:57:24.80 ID:NxFbS8JM0
───下校中
谷口「ひー、つかれたぜー!」
国木田「いきなりどーしたの? さっきまで不気味なぐらい元気だったのに」
キョン「ひどいガラガラ声だな」
谷口「WA、わばばば」
谷口(結局10時間歌ってから、金払いたくないからこの時間まで戻っちまった)
キョン「テストも終わったし、カラオケでもいかないか?」
国木田「いいね、久々にキョンの美声を聞きたいし」
キョン「ほめてもなんもでないぞ」
谷口「スマン!今日はちょっと用事あってよ、さっさと家かえんねぇといけねえんだわ」
国木田「えー、つれなーい」
キョン「テストであんだけの点とっておいて、また家帰って勉強でもすんのか? お前勉強フェチなのか?」
谷口「だから謝ってんだろ? 今度なんかおごっからよ、じゃあな!」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:59:35.27 ID:NxFbS8JM0
───家の玄関
谷口(ついにこのときがきた)
谷口(毎度毎度成績の悪かった俺が、高校入っていきなり上位入賞)
谷口(親父も俺のことを見直すに違いないぜ)
谷口(……まぁ今回はちょっとせこい手使っちまったけど)
谷口(次からは自力でやるから、いいよな!)
谷口(よし!)
ガチャッ
───リビング
谷口「ただいまー!」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:01:45.38 ID:NxFbS8JM0
谷口父「……」
谷口母「あら、おかえりなさい」
谷口「今日期末テストの結果発表だったんだが、いやー最高の結果だったね!」
谷口母「あら、そういえばそういう時期ね」
谷口「そうなんだよ!」
谷口母「それにしても珍しいわね、あんたが勉強の話題をふるなんて」
谷口「いいじゃねえか!」
谷口母「ふーん? で、何位だったの?」
谷口「それがなんと……学年で15位だぜ!!」
谷口母「すごいじゃない! 遊んでばっかりだと思ってたけど、あんた頑張ってたのねー」
谷口「まぁな! 頑張らなくても出来る子なんだよ!」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:04:01.37 ID:NxFbS8JM0
谷口父「……」
谷口(お、親父は……?)
谷口父「期末テストの結果なんてどうでもいい」
谷口「え……?」
谷口母「ちょっとあなた、いくらなんでもそれは……」
谷口父「勉強とは、テストで結果を出すということではない」
谷口「……」
谷口「べつに親父の意見なんてきいてねーよ!」
ガチャッ ダッダッダッダッ
谷口父「……ゴホッゴホッ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:06:12.19 ID:NxFbS8JM0
───部屋
谷口「……」
谷口「力抜けちまった」
谷口「あー、彼女欲しー」
谷口「勉強にうつつを抜かしてた俺がバカだったぜ」
谷口「ったく……」
谷口「あーあ……」
谷口「良い点とるのもそんなにいいもんじゃねえな」
谷口「……」
谷口「……寝よ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:08:22.07 ID:NxFbS8JM0
───翌日、朝、教室
キョン「いやー、今日も熱いな。夏真っ盛りだ」
谷口「……」
キョン「? どーしたんだ?」
谷口「え、あ、なんだ? なんか用か?」
キョン「朝っぱらからボーっとしてると昼には熟睡コースだぞ。しこりすぎて寝不足か?」
谷口「……期末の結果さ、俺よかったよな?」
キョン「そうだな。正直びっくりしたぞ。で、しこりすぎて腱鞘炎にでもなったか?」
谷口「だよな。……俺のこと、見直したりとかしちゃったりしたか?」
キョン「どーだろうな」
谷口「それはどーゆう……」
キョン「まぁ、勉強はできるやつなんだな、と思い直したよ。だが……」
谷口「だが?」
キョン「友達が勉強できるかどうかなんて、正直どうでもいいな」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 16:10:32.26 ID:NxFbS8JM0
谷口「……それは、そうだけどよ」
キョン「勉強なんて一つの要素でしかない、人の取り柄ってのはべつにある。そういってたのはお前だろ?
谷口「それは、そうだけどよ」
キョン「ま、世の中は下からでしか支えてやれないような奴が沢山いるのさ」
谷口「??……おいおい、それは俺が底辺の人間だってことか?」
キョン「そうはいってない。だがお前の姿に安心できる奴がいるってことだ」
谷口「つまり?」
キョン「“ああ、谷口みたいな奴もいるんだから、俺も平気だろ”みたいな」
谷口「……もうどっかいってくれ」
キョン「す、すまん」
キョン(はて、そういやいつ谷口からそんなリア充めいた言葉を聞いただろう? ……あいつからまともな言葉なんて聴いた覚えがないが)
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:12:42.19 ID:NxFbS8JM0
───昼休み 団室
ハルヒ「草野球大会にでるわよ!」
キョン「なんだよいきなり! 面子全然足りないじゃないか! それにお前ルールしってんのか?」
ハルヒ「るっさいわね! でるったらでるの! いい? これは団長命令なんだからね!」
朝比奈「……」
ハルヒ「7月だからかしら? なーんだか気持ちがそわそわするのよねぇ。大事なことを忘れてるような気がしちゃって、テストも全然手につかなかったのよ」
キョン「そういやお前1位とるとかいってたくせに、全然だめだったじゃないか」
ハルヒ「あー、そんな話もあったわね。でもそんなのもうどーでもいいのよ。テスト勉強を頑張る要素の一部になった、それで十分じゃない。結果なんてどうでもいいの」
キョン「ほう……」
朝比奈「ほっ……」
古泉「ふむ……」
長門「……」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:14:59.52 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「そんなこんなでうやむやしてるのを、パーッと吹き飛ばすならやっぱりスポーツよね!」
キョン「お前にしちゃあまともな意見だな」
ハルヒ「まぁね。奇をてらってばかりでは奇じゃなくなっちゃうもの。それじゃ不思議も不思議とわかんなくなっちゃうし」
キョン「なんかの言葉遊びか?」
ハルヒ「いちいちうるさい! とにかく! 草野球大会にでるんだからね!!」
キョン「百歩譲って出るとしよう。面子はどうするんだ?」
ハルヒ「集めればいいじゃない」
キョン「誰が?」
ハルヒ「集めなさい」
キョン「おれかよ! なんでおれだよ!」
ハルヒ「だんちょーめいれい」
キョン「またかよっ! お手軽すぎだろ! マッククーポンじゃないんだぞ!」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:17:09.82 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「黙りなさい。じゃあ私は昼休み中にしないといけないことあるから、また教室でね!」
バタンッ
キョン「カースト制の一番下の気持ちがわかってきたぜ」
朝比奈「私も友達を誘ってみますね」
古泉「おや、多少乗り気のようですね? 野球はお得意ですか?」
朝比奈「いえ、私の時代ではもう教科書にすら載ってないスポーツですから、やったことはないんです。でも……」
キョン(まぁ、マイナースポーツだし、仕方ないだろうな)
朝比奈「でも勉強のことで、何も言われなかったのでうれしかったんです。そのお礼じゃないですけど、協力したいな、って」
古泉「野球がどんなスポーツか知ってます?」
朝比奈「いえ。でも、子供でもやれるんでしょう? なら私にも……」
古泉「野球というのはですね……かくかくしかじか」
朝比奈「100km近いボールを至近距離で打つんですかぁ?……え、それはないと思います……」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:19:41.68 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「私にできる訳ないですよ~!」
古泉「まぁまぁ、別に涼宮さんも朝比奈さんがヒットばかり打つことを期待してはいないと思いますよ。ただ、彼女はSOS団で何か大会に出たいのでしょう」
キョン「そーいや6月中に、“台風のやつのせいで草野球大会が延期されちゃったのよ! 腹立つわー!”とか言ってたな。そのしわ寄せか」
朝比奈「……はぁ、意思は固いみたいですねぇ……」
キョン「七月か……もうすぐ夏休みですね。その前の最後の難関だと思って、がんばりましょう」
朝比奈「どーせ夏休みだって涼宮さんに振り回されるに決まってますよ……」
キョン「……ひ、否定はできませんね」
古泉「ふふふ、退屈しないですみそうではありませんか。高校生活の夏休みなんて忙しいぐらいがちょうどいいですよ」
朝比奈「……じゃあ私、教室に戻りますね」
キョン「あ、じゃあまた放課後!」
朝比奈「はい……」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:21:49.96 ID:NxFbS8JM0
───放課後
キョン「まさかの千本ノック。みてるだけで疲れたわ」
キョン「と、面子集めないとな。どーしたものか」
キョン「谷口と国木田はきっとおkしてくれるだろ」
キョン「谷口といえば、朝、なんか様子がおかしかったな」
キョン「スポーツやりゃあ気が晴れるとハルヒですら言ってるんだ、谷口にも悪影響はあるまい」
キョン「早速電話かけるとするか」
ピピピピピッ
prrrrr ピッ
谷口「どうした?」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:24:01.20 ID:NxFbS8JM0
キョン「よう。いきなりなんだが、土曜暇か?」
谷口「特に用事はねえけど、なんかあんのか?」
キョン「草野球大会に涼宮が出たいっていいだして、その面子を探してるんだ。出てくれないか?」
谷口「なーんで俺がそんなこと」
キョン「何やら落ち込んでるようだったが、いい気分転換になると思うぞ」
谷口「野球なんかやったって面白くもなんともねーよ。授業でしかやったことないぜ」
キョン「……朝比奈さんのコスチューム姿みたくないか?」
谷口「……」
キョン「しかも応援してくれるんだぞ? どうだ?」
谷口「ったくしかたないねーな! そこまでいうならいってやるよ!」
キョン「よし! じゃあまた詳しいことはメールする。土曜日あけといてくれ」
谷口「ラージャ」
キョン(ちょろい。後は国木田と……妹でいいか)
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:26:20.97 ID:NxFbS8JM0
───大会当日
谷口「行く、っつったのはいいもののな、ずぶの素人がただ応援してもらうってのも気がひけるぜ」
谷口「こうなりゃ一発、かっこいいところ見せ付けてやんないとな」
谷口「たかが草野球大会、よくボール見て思いっきりバット振りゃなんとでもなるだろ!」
谷口「そんで女子の黄色い声を浴びながらホームベースを踏む俺……」
谷口「……絵になる! こいつは絵になるぜ! 才能だけで打ちました! みたいな!」
谷口「ここはおれの力の出番だな! コースみてから時間まきもどせば……ウヒヒ」
谷口「おれの人生バラ街道が始まりを告げそうだ! 待ってろよギャラリー達!」
谷口「さてさて、そうして俺は大会会場にやってきましたよっと」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:28:28.76 ID:NxFbS8JM0
谷口「お、いたいた。おーい、キョン!」
キョン「ああ、谷口か。よくきてくれたな、こっちだ」
谷口「わざわざ土曜だってのに来てやったんだ、感謝しろよ?」
キョン「わかってるわかってる。俺達は第一試合だからもうみんなベンチの方いってるんだ。急いでくれ」
谷口「あいよ」
───ベンチ付近
ハルヒ「キョン? それで全員?」
キョン「ああ。そうだ」
ハルヒ「……あんた、どっかで……」
谷口「ああ?」
キョン「何言ってんだ? クラスメイトだろうが」
ハルヒ「まぁいいわ、今日はよろしくね」
谷口「お、おう」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:30:38.59 ID:NxFbS8JM0
鶴屋「君がキョン君かい? へー、ふーん」
キョン「あ、あの……」
谷口「谷口です! 今日はホントは大事な用があったんですけど、親友の頼みだから断れなくって」
鶴屋「!! 君が谷口君? へぇー、ふーん、あれぇ~……きいてた話とちょっと違うにょろ……」
谷口「ど、どうかしたんですか?」
鶴屋「え、あはは、こっちの話っさ! よろしく、谷口君っ!」
谷口「こちらこそよろしくおねがいしますっ!」
谷口(なんやしらんけど脈ありげぞこれー!)
99 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:13:47.41 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「さあ締まっていくわよー!!」
古泉「まだ一点許しただけですし、落ち着いていきましょう。さっきのはラッキーホームランです、次はありませんよ」
ハルヒ「ふふん、ビギナーズラックが二発続いたらたまらないものね」
キョン「ビギナーズラックが続かないと俺らに勝ち目はないけどな」
ハルヒ「あんたはいちいちプロ精神が足りないのよ。ビギナーズラックなんていらないわ! 実力でもぎ取ってやるの! タイトル取れないからって他のチームに移籍したい、とか言いだしたら許さないんだから」
キョン「へいへい」
104 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:21:09.25 ID:NxFbS8JM0
谷口(ヤベェ、間に合うか?? 間に合うのか??)
谷口(ボールは朝比奈さんの眉間に直撃した……つまりそこをグローブで守れば!)
ダダダダ
朝比奈「……いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その」
谷口「……間に合ってくれ!!!」
ダダダダ
朝比奈「これ、その、えと、あの」
谷口「間に合え!!!」
ダダダダ
朝比奈「やっぱり、無理じゃ……」
谷口「うおぉおおっ!!!」
ダッ ドシン
「……アウトー!!」
107 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:25:01.16 ID:NxFbS8JM0
キョン「相手が外野狙いになってたのは明らかだった。実際レフトとセンターにぼてぼてのフライでヒットにされてたからな」
ハルヒ「それが何よ。あたしはヒット性のボールは打たせなかったわよ? 記録はエラーじゃない!」
キョン「それでもだ。お前が無理を言って集めたメンバーで、SOS団の団員とは言え朝比奈さんは大変な目に会うところだったんだぞ?」
ハルヒ「そ、それは……」
キョン「まぁ、運良く大惨事は避けられたがな。お前は誰かにお礼を言わないといけないんじゃないか?」
ハルヒ「……」
谷口「キョ、キョンよう、なにも起きずに済んだんだ、ラッキーだったと思ってよ、次気をつければそれでいーんじゃねーか?」
キョン「……ふぅ。じゃあ俺は運営のとこで朝比奈さんを休ませてもらってくるから」
ハルヒ「……」
谷口(に、睨んでらっしゃる!!)
111 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:28:10.70 ID:NxFbS8JM0
谷口(うひょー、やべえ、あれはやべええ!! 下手すりゃバッターボックスでテント張るハメになりかねねえぜ!!)
谷口(あんまり見ないようにしねぇと……)
ハルヒ「ちょっとあんた! 何もじもじしてんのよ! みくるちゃんのチアリーダー姿おがんでるんだから打たなかったら罰金だからね!」
谷口「おーし、絶対打ってやるぜっ!」
谷口(おれがリアリーダーに応援された試しがあっただろうか? いや、ない! 今俺人生の絶頂期! 打たない手はない嘘ではない!)
113 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:31:28.48 ID:NxFbS8JM0
谷口(あの朝比奈さんに……へたれ言われた……)
谷口「み、みてて下さい! 絶対次は打ちますんで!」
ハルヒ「アンタが出塁するにはデッドボールぐらいしかないわ! ほら、もっとベースに覆いかぶりなさいよ!」
谷口「うるせえ! お前になんか言ってねえんだよ!」
ハルヒ「へたれが何言ってもこっちまでは聞こえません。あーあー(耳をふさぐポーズ)」
谷口(こうなりゃ能力使ってでも打ってやる!!)
115 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:34:34.82 ID:NxFbS8JM0
バシッ ストラック
ハルヒ「プハハ! また尻もちなんて学習能力まったくないのね! 猿? いいえ、へたれです。せめてバットぐらい振りなさいよ!」
朝比奈「……クスクス」
谷口(ちくしょう、朝比奈さんにまで笑われてる……)
キョン「古泉、朝比奈さんのあんな笑顔、見たことあるか?」
古泉「いいえ。言ったでしょう? SOS団は仕事場ですから、僕らがいやされている笑顔は営業スマイルみたいなものです。今のように笑いをこらえきれない、といった表情は僕の記憶にはありませんね」
キョン「それに……」
古泉「ええ。まさかへたれ等という言葉が朝比奈さんの口から伺えるとは思ってもみませんでした」
キョン「……」
117 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:36:44.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「はあ、はあ」
ハルヒ「あんた、打つ前からなんでそんなに疲れてんの?」
谷口「う、うるせえ。お前こそそんだけ笑っててよくつかれねえな」
ハルヒ「?」
谷口(これで12回目のバッターボックス。今度こそ涼宮を笑わせねえ……)
ピッチャー、投げた。
谷口「うおおおおお!!」
カキン ヒュー ポテン セーフ!!
谷口「いいいよっしゃあああ!!」
119 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:38:46.11 ID:NxFbS8JM0
ハルヒの三塁打でおれは塁にかえった。しかし結局朝比奈さんがアウトになり、三回を終える。
その裏、ぼこぼこにやられる。
四回表を迎え、1-9。
谷口(こりゃ勝ち目ねえだろ。この回の裏で終わりだな、こりゃ)
谷口(なんか古泉と長門が話してる? 涼宮の機嫌取りの話か? もう爆発しそうだもんな)
谷口(しかし長門かわいいな。かわいい。うん。お人形さんみたいだぜ。しょーじきたまらん)
谷口(はぁはぁ、長門、かわいい、長門……ってホームラン打ちやがった!!!)
121 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:41:58.39 ID:NxFbS8JM0
谷口(そして訳のわからない魔球使って、そんでアウトか。なんだそれ)
谷口(結局勝っちまった。一体……どういうことだぜ?)
古泉「そうだ、谷口さん」
谷口「え、あ、おう?」
古泉「これから僕は私用でこの場を離れなければなりません。すると試合の人数が足りなくなるため、つい今二回戦辞退を申し込んできたところなんです」
谷口「つまり、もう帰ってもいいってことか?」
古泉「ええ、一応そういうことになりますね」
谷口(さて、家帰って……っと今日は休日だから親父が家にいるのか……。……漫喫でもいくかな……)
古泉「ですが、よろしければSOS団の打ち上げに参加しませんか?」
125 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:45:34.26 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「キョンまで何言い出すのよ! まさか男がいないと楽しくないなんてことじゃないでしょうね? あんたホモだったの?」
キョン「ちっがーう! 四月の上旬は谷口や国木田と遊ぶ時間があったが、今はSOS団に時間をつぶされておちおちゲーセンに寄ることもできんのだ。せっかくこうして一緒にいるんだし、打ち上げに参加するぐらいいいだろ」
ハルヒ「……ちっ。仕方ないわね。へたれの参加を許可します。あんた、感謝しなさいよ」
谷口「別に頼んでなんか……」
キョン「よかったよかった。数は多い方が楽しいし、朝比奈さんもうれしいですよね?」
朝比奈「え、え、え、ええ」
谷口「行きます! 是非行かせてください!」
ハルヒ「……まぁ、いっか」
128 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:50:04.66 ID:NxFbS8JM0
スッ フゥー
谷口「さて、そろそろ行きますかね」
朝比奈「あ、谷口君……」
谷口「え、あ!」
谷口(やべっ!)
ケシケシ
朝比奈「……」
タッタッタ
谷口「あーあ、みられちまった」
谷口「……ま、どうせ朝比奈さんもハルヒに引っ張られてるだけだし、俺のことなんてどうでもいいだろうから大丈夫だろ……」
131 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:54:34.05 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「あ、次の曲入ってないじゃない! じゃあ次は誰に歌ってもらおうかしら……」
朝比奈「……谷口さんどーですかぁ?」
谷口「え? 俺??」
ハルヒ「そーね! あんたまだ歌ってなかったものね」
谷口「よっしゃ、そんじゃ何入れよっかなー。俺様の美声を披露してやんよ、って、え? 曲流れだしたけど入れたの誰だよ??」
朝比奈「私です~」
谷口「しかもチョコレイトディスコて!! 男が歌ってどーするんすか! 止めて下さいよ!」
朝比奈「えー? 歌わないんですかぁ? そしたらさっき見たことを……」
谷口(まさかの朝比奈さんからの脅迫かよ!!)
谷口「うお、え、あー。歌います! 見せつけてやるぜっ!」
谷口「計算する女子~ 期待してる男子~」
138 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:59:50.65 ID:NxFbS8JM0
───3時間後、カラオケの外
ハルヒ「あーあ、ホンットあんた歌下手ね! しかもミクルちゃんみたいに愛嬌のある下手さじゃないから聞いててイラっとしたわ」
谷口「あんだけ……歌わせといて……それはねえだろ……喉いてえ……」
朝比奈「はぁーあ……。聞き疲れました……」
キョン「朝比奈さんツボにハマり通してましたもんね」
朝比奈「だって……。谷口さん……ブホッwwww」
キョン「思い出し笑い!?」
谷口「……」
谷口(まぁ、朝比奈さんの笑顔だけは仰山見れたし……。それだけでもいいとしといてやるか)
140 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:04:39.45 ID:NxFbS8JM0
キョン「!!!!」
谷口「ッハァ!? 何言い出すんだお前」
ハルヒ「何? いやなの? まあ、どっちにしろあんたに拒否権はないわ。こんだけ下手な歌であたし達の貴重な打ち上げを汚してくれたんだからね」
谷口「歌わせたのてめーだろーが!」
ハルヒ「歌ったのはあんたでしょ。それに感謝されても文句を言われる筋合いはないわ。どーせあんた部活も何もしてないんでしょ?」
谷口「別に部活入ってねぇから、って暇な訳じゃねーよ!」
ハルヒ「へー、じゃああんたいつも学校終わったら何やってるのよ?」
谷口「それは……」
ハルヒ「やーい暇じーん! ぼっちー! 一人飯ー!」
谷口「う、うるせえ!」
142 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:08:05.17 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「そーゆーことだから! いいわよね? みくるちゃん、有希?」
朝比奈「え、あ、はい、いいと思います」
長門「……」
ハルヒ「有希?」
長門「了解した」
ハルヒ「じゃ、古泉君にはあたしからメールしとくから! 今日はここで解散! また月曜日に会いましょ!」
タッタッタッタ...
146 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:12:58.63 ID:NxFbS8JM0
>>143
谷口の「聞いた話だって! マジで!」ってのを信じたケースでお願いします
谷口「な、今俺に待ってって言ったのは長門か??」
長門「そう」
谷口(A-の長門が俺に話しかけてくるってことはこれなんかのフラグかああ?? でも俺には朝比奈さんがー!)
谷口「お、俺にいったい、なんのようかな?」
長門「ついてきてほしい」
谷口「お、おお、おおおお、おお。いいぜ! そしてこれは断じて裏切りではないぜ! SOS団の仲間のことを知るためのだな……」
長門「……」
150 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:18:11.77 ID:NxFbS8JM0
長門「涼宮ハルヒにとって、どうということはない存在」
谷口「大切なことだから二回言ったんだよな?」
長門「非常に大切。貴方にとってではなく、私にとっても」
谷口「? ってかお前こんなにおしゃべりだったのか?」
長門「つまり、あなたは涼宮ハルヒの持つ自立進化の可能性とは、何ら関与するものではない」
谷口「無視ね。そんなもんと関与してたって嬉しくも何ともないからいいもんぜー」
長門「それを聞いて安心した」
谷口(?)
長門「これから話すことをよく聞いて」
谷口「お、おう」
153 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:21:38.59 ID:NxFbS8JM0
長門「そのテストの点数が悪かった際、涼宮ハルヒと貴方は言い合いをした」
谷口「……そんなこともあったかもな」
長門「結果、涼宮ハルヒは大きく落ち込んでいた」
谷口「え?」
長門「それを見て、朝比奈ミクルは貴方に興味を持った」
谷口「……でもそれ、時間跳ぶ前の話だぜ?」
長門「そう。だが、SOS団は様々な力に対して強い耐性がついているため、残留思念が残ることを想像するのは容易」
谷口「ふーん」
長門「とにかく、その時から私の中に一つの計画が生まれた」
谷口「ほうほう、その計画とやらをきかせてもらおーじゃねーか」
155 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:24:26.41 ID:NxFbS8JM0
長門「聞いて驚いてほしい。見て驚いてほしい」
谷口「おうおう!!」
長門「目の前でスイーツ漫画みたいな恋愛を見たい! 題して時をかける少年少女!」
谷口「ぱぱぱぱくーった!!!」ガビーン
長門「今更。大概のSSはパロの塊」
谷口「……あっちょんぶりけ」
157 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:27:43.68 ID:NxFbS8JM0
───谷口の家の前
谷口「おーおー、ずいぶん飲んじまった。足元がふらつくわ」
──長門:とにかく、あなたは涼宮ハルヒに近づきすぎてはならない。そうすれば古泉一樹の機関もあなたに手を出さない。それだけは覚えておいてほしい
谷口「そんなこと……俺は朝比奈さんとなかよくなりてーだけだってのー」
ガチャッ
谷口「ただいまー」
谷口母「遅かったわねー。ってあんた、また酒飲んできたの?」
谷口「記憶にございませーん」
162 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:32:08.06 ID:NxFbS8JM0
───翌日、月曜の朝
谷口「ちくしょー、力使って二度寝したのに、まだ頭いてーぜ」
谷口「お、なぜか知らんけど洗面所にウコンが!」
谷口「これ、あとから飲んでも何気に効くよのな」ゴクッ
谷口「ふー。ラッキーラッキー、ウコンがあってラッキーだったぜ」
谷口「ん? なんだこの手首の数字……」
谷口「3? ま、どーでもいっか!」
谷口「よっしゃ、元気出して学校いかねーとな! なんってったって今日からは毎日放課後に用事がある!」
谷口「わりい、俺これから部活なんだ! また誘ってくれ!」
谷口「うひひ、言い方練習しとかねーとな!」
谷口「いってくっぜ!!」
163 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:36:26.13 ID:NxFbS8JM0
───団室前
ジージージージー
谷口「セミがうるせえ」
谷口「暑くてシャツが体に張り付く」
谷口「たまに吹く風がここちいいが、それも一瞬のことだ」
谷口「とにかく暑い。夏の日」
谷口「そんな日に、俺の新しい章が幕をあける」
谷口「さあ、その扉をノックしようじゃないか……」
キョン「さっさと開けてくれ。中は冷房きいてんだから」
谷口「ひたらせてくれよ!!」
キョン「それに幕か扉かハッキリしてくれ」
谷口「うるせえしこまけえし!」
164 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:39:44.06 ID:NxFbS8JM0
───団室
谷口「おー! なんか遊び道具たくさんあんな! しかもPCもあるじゃねーか!」
キョン「まーな。うちの団長はやり手なんだ。極めて悪質だが」
谷口「それに……長門がいるぜ?」
キョン「文学部部長兼SOS団団員だからな。そりゃいるさ」
谷口「そっかそっか。それで、手を振ってる古泉の前に広げられてるボードゲーム、ありゃなんだ?」
キョン「大将棋だ。初めて三日目になるが、未だに終りがみえん」
谷口「……是非羽賀さんにやってもらいたいもんだな」
キョン「羽賀さん相手でも二日ぐらいは粘れる自信がある」
谷口「駒の動き覚えるのにまず一日かかりそうだぜ」
165 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:42:46.72 ID:NxFbS8JM0
谷口「で、で、他にももう一人団員いなかったっけか?」
キョン「朝比奈さんか?」
谷口「そうだ! 朝比奈さんだ! 彼女はまだ来てないのか?」
キョン「そろそろ来るんじゃないか?」
ガチャッ
谷口「!!」
ハルヒ「たのもー!」
谷口「f**k」
ハルヒ「なんかいった?」
谷口「別に……」
166 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:45:56.48 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「っていうか、なんであんたいるのよ?」
谷口「お前が放課後部室に来いっつったんだろ!」
ハルヒ「そーだっけ? あー、そーいえばそんなこともあったかもね」
谷口(おいおい追い返されるのか!?)
ハルヒ「なんてね、覚えてるにきまってるじゃないの。ふふん」
谷口「な、なんだよきもちわりーな」
ハルヒ「わかった、そわそわしてるのはミクルちゃんがいないからでしょ!?」
谷口「え、あ、うん?」
ハルヒ「そーこなくっちゃぁ! 健全たる男子たるもの、女のケツを追いかけてなんぼ、ってなもんなのよ!」
谷口「珍しいな、それは同意だぜ!」
167 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:49:25.97 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「ってことですが、ミクルちゃんなら今野球場いるわ。ほら、高校横にある公園のトコ」
キョン「そりゃまたなんで?」
ハルヒ「さあ? 野球にハマったんじゃない? でも団員が何かにやる気を出すのはいいことよね! ということで、今日の団活はあの公園で行います。ほら、さっさと準備する!」
キョン「はいはい」
谷口「こんなあっついのによくやるぜ。団室内で涼んでる方がいいんじゃねーのか?」
ハルヒ「ミクルちゃんが動いてんのよ? レアじゃないの! これを協力しない手はないわ! もしかしたら未来人からのメッセージかもしれないし!」
谷口「そーいやそーゆう趣旨のサークルだったっけか」
キョン「ま、どっちにせよ、だ。制服姿の朝比奈さんが野球やるとか、みたいだろう?」
谷口「見たい訳……見たいです!!!!」
キョン「んじゃ、とりあえずそこにあるグローブと金属バット持ってきてくれ」
谷口「お前は何持ってくんだ?」
キョン「カメラだ」
谷口「……」
171 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:53:40.74 ID:NxFbS8JM0
シュッ パシッ シュッ パシッ
ハルヒ「どりゃっ、里中ボール!」シュッ
キョン「うおっ! 親指使えないハズなのにシンカーが投げられるだとっ!」パシッ
ハルヒ「ふふん、スカイフォークもいけるわよ!」
キョン「大会でなげてりゃ長門の力も借りずに済んだだろうに」
ハルヒ「有希が何かやってたっけ?」
キョン「こっちの話だ」シュッ
谷口「大会ってったら、おれのダイビングキャッチがダイジェストだったよな!」パシッ
古泉「あれは見事でしたね。主に走行距離においてですが」
谷口「へへーん、打者の目線、俺の経験、俺イケメン、気づいたら俺は突っ走ってたんだよ。さすが天才は違うねー」
朝比奈「別に、谷口さんが来なくてもキャッチ出来たもん!」
174 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:58:39.43 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「じゃ、野球の練習はここまで! もう日も暮れてきたし、今日はこの場で解散にしましょ!」
キョン「そうだな」
ハルヒ「明日は普段通り団室に集合だから!」
朝比奈「待ってください!」
ハルヒ「え? なあに? ミクルちゃん」
朝比奈「えと、そのー。明日も……野球しませんか?」
キョン「!!」
古泉「これは驚きですね。朝比奈さん、野球が気に入ったんですか?」
朝比奈「……はい」
古泉「どうでしょう、涼宮さん、明日以降もしばらくここで練習するというのは?」
ハルヒ「そうねぇ……」
谷口「俺も野球やりてー! 夏っぽくていいじゃねえか、な、野球しようぜ?」
ハルヒ「ふーん。ま、いいわ。もうすぐ夏休みだし、夏休みまでのしばらくの間、放課後はここで野球をやりましょ」
朝比奈「ありがとうございます!」
179 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:01:57.89 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「野球。みんな、手を抜いてくれてたでしょ?」
谷口「手を抜く?」
朝比奈「ホントは思いっきり速い球投げたり、思いっきりボールを打ったりしたかったハズなのに、私が下手だから、それを気にしてみんな力を抑えてたよね」
谷口「えと……」
朝比奈「実はそれに気づいてたけど……気づいたところで野球がうまくなれる訳じゃなくて……」
谷口「……」
朝比奈「この前の大会は悔しくかった。でも涼宮さんが野球やりたいって言ったらそれをやらないといけないから……。私がイヤって言っても意味ないし、言っちゃいけないから……」
谷口(そういえば、朝比奈さんもSOS団……。涼宮のためにいる人間なんだよな)
朝比奈「……今日は楽しかった?」
183 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:05:23.99 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「……ふふ、君、すごくはずかしいこと言ってるよ?」
谷口「え、あ、す、すみませ」
朝比奈「……でも、ありがとう。なんだか、すごく自信がついたよ」
谷口「そうっすか? それは……よかったっす」
朝比奈「じゃあもう時間も遅いし、そろそろかえろっか?」
谷口「そ、そうっすね」
谷口(なんか朝比奈さん、感じ変わったな)
187 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:08:31.74 ID:NxFbS8JM0
長門「ということで、長門の恋のアドバイスコーナー」
谷口「いえー、ぱちぱちぱちぱち」
長門「女子高生の登下校の夢といったらなんでしょう」
谷口「え? あー、わっかんね」
長門「適当でもいいから要回答」
谷口「えーと、じゃー校門にリムジンで迎えに来てくれるどこぞの御曹司と一緒に帰ること? とか?」
長門「惜しい」
谷口「惜しいのかよ」
長門「すこぶる惜しい。ニュアンス的には正解」
谷口「褒めるねぇ」
長門「頭の良い生徒は嫌いじゃない。涼宮ハルヒにくっついてる彼ときたら、わざとフラグ折ってる疑惑があるぐらい、見ていて腹が立つ」
谷口「?」
189 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:11:18.45 ID:NxFbS8JM0
長門「とにかく、そういうことだから」
谷口「そういうこと? 自転車で登校してこいってか? あの坂道を? 上り続ける?」
長門「心肺機能のトレーニングにもってこい。それに登校時間の短縮。加えて後ろに彼女を乗せて帰ってこれる。お得ってベルじゃない」
谷口「いやいやいやいや。トレーニングってこの夏に汗かき放題で教室にin、しかも登りだから大して時間短縮にもならず、加えて後ろにのってくれる彼女もいねーよ! 虐殺じゃねーか!」
長門「シモ・ヘイヘもトレーニングが狙撃のすべてだと言っていた。貴方もトレーニングこそ心肺機能のすべてだと知るべき」
谷口「趣旨かわってんじゃねーか、そーじゃねーそーじゃねーんだよ! そこはわかっとけ!」
長門「わかった。とりあえず、乗ってみるべき」
谷口「何を言っても無駄か……」
長門「暇を持て余した宇宙人の遊び。そう思って付き合うべき」
谷口「あいあい、わかったよ、ったく」
193 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:14:53.52 ID:NxFbS8JM0
キョン「つまり機関がらみの話ではないってことだな?」
古泉「そうです。ただし……宇宙人がらみの話ですが」
キョン「!? 長門が何かかかわってるのか?」
古泉「はい。一体どういう思惑かは知りませんが……。彼女は機関や涼宮さんが朝比奈さんと……谷口さんに近づいてほしくない、と思っている」
キョン「何?」
古泉「つまりです、二人の関係を涼宮さんの持つ神の力と係わらせたくない、そう考えている訳です」
キョン「なぜだ?」
古泉「期末テスト前のことになります。長門さんからぼくに、ひとつの打診がありました」
キョン「お前ら、二人で話すことあるのか?」
古泉「……いえ。思い返せば、会話らしい会話をしたのはその時が初めてだったかもしれません」
キョン「そうか。つづけてくれ」
196 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:17:13.99 ID:NxFbS8JM0
古泉「とにかく、何か心あたりはありませんか? 時期的に彼ら二人と関わりがあることは間違いないんです」
キョン「心あたり、と言われても困るぞ。そもそも、情報爆発ってどーゆうときに起こるんだ?」
古泉「例えば涼宮さんに神の力が備わった瞬間、またそれを行使した瞬間などですね。流石にそれ程大きな出来事ではなかったようですが」
キョン「ううん……なんかあったかな……」
古泉「この現代にはありえないようなオーパーツの発現等もそれに当たるでしょう」
キョン「んんー」
古泉「ねぇ、お願いしますよ。僕には貴方しか頼りになる人がいないんです」
キョン「んなこと言われても……っとそーいやひとつ、おかしなことがあったな」
古泉「!! なんですか、それは!?」
キョン「谷口が、時を跳ぶことができるか? と聞いてきたことがある」
201 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:45:09.22 ID:NxFbS8JM0
保守ありがとうございました!再開します!
古泉「……谷口さんが……そんなことを……」
キョン「ちょうどテスト前ぐらいのことだったとおもうがな」
古泉「……いえ、なるほど、色々なことがそれなら納得できます」
キョン「ほう?」
古泉「まず、谷口さんの野球大会での挙動不審。打席に立った時、何もないのに突然疲れていたのは、おそらく時間を巻き戻して何度もボールを見たからでしょう」
キョン「細かいところ見ていたんだな」
古泉「ヒットを打てたこと自体が驚きでしたから、印象に残っているんです」
キョン「まあ、確かに。まぐれで打てる球じゃなかったしな」
古泉「そして、決定的な物が二つ。彼がSOS団に入ったこと、そして……」
古泉「あそこで自転車に2ケツで朝比奈さんと帰ろうとしていることです!!」
204 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:48:46.87 ID:NxFbS8JM0
───そうして、何日か過ぎた・・・・・・
キコキコキコキコ
朝比奈「もっと速くー!」
谷口「もう、これ、限界、っぽ」
タッ
朝比奈「そんなことない! ほら、立ち止まっちゃだめ! 時は待ってくれないんだから」
谷口「いやいや、俺の筋肉議決でもう限界だって結論出ましたから!」
朝比奈「なにそれw 議決で結論とかw 意味軽く重複してるよw」
谷口「ええい、嫌らしいつっこみをっ」
208 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:51:08.80 ID:NxFbS8JM0
キョン「うん? いいんじゃないか、涼しそうだしな。それもなんかの不思議探索か?」
ハルヒ「夏を夏らしく過ごすためにプールはかかせないって思っただけよ」
キョン「ふぅーん。なんか、珍しいな。目的もなく遊ぶなんてお前らしくもない気がするよ」
ハルヒ「別に遊びにいつも意味を求めてる訳じゃないわよ。そういうつまらない考え方してると、楽しい物も楽しくなくなっちゃうもの」
キョン「……そうだな。楽しけりゃ、それだけでいいこともあるからな」
ハルヒ「じゃあ、市営プール行く時は自転車で来なさいよ?」
キョン「は? 自転車と市営プール行くのに何の関係があるんだ?」
ハルヒ「あたしが後ろに乗せてもらうために決まってるでしょ!」
キョン「いや、決まってない。決まってないぞ。なんでそんなことしなきゃならんのだ」
ハルヒ「だって、その方が面白いじゃない!」
キョン「……やれやれ。ま、プールの前に汗をかくのも悪くないかもな。そう思うことにしよう」
ハルヒ「ちゃんと後ろ乗りやすいようにしときなさいよ! 坂道だって絶対下りて歩いたりしないんだからね!」
キョン「へいへい、せいぜい坂道のないルートを探しとくことにするさ」
キーンコーンカーンコーン...
213 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:54:03.14 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「あーっ! お茶っ葉切らしてました!」
ハルヒ「えー? さっきどじっこから成長したって言ったけど、まだ卒業できてる訳じゃなさそーねー」
朝比奈「ご、ごめんなさい」
ハルヒ「ま、いーわ。今日はまだ少し早いし、みんなで駅前の喫茶店でも行かない?」
古泉「いいですねぇ、僕も今日は時間があるんです」
朝比奈「丁度お茶っ葉も買わないといけないですし、行きます」
ハルヒ「良い返事ね! 有希は?」
長門「コクリ」
ハルヒ「よし! じゃあさっさと準備して、行きましょう!」
216 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:57:33.58 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「むー。みくるちゃんはどーなのよ? あんたやつの後ろに乗って下り坂をサーっと行きたくなんかないわよね?」
朝比奈「涼しそうだし、楽しそう、かな」
ハルヒ「……」
谷口「よっしゃ、じゃあぱぱっと行ってきちゃいましょう!」
朝比奈「じゃあ遠慮なくー」
ハルヒ「……」
古泉「では、またいつもの喫茶店で」
谷口「あいよ。しっかりつかまっててくださいよー!」
朝比奈「言われなくてもそうします。谷口さんの運転、さながらレールのないトロッコみたいな感じですから」
キョン「面白そうなアトラクションですね」
朝比奈「ふふ。じゃあ、行ってきますね」
タッ キコキコキコキコ...
219 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:00:25.00 ID:NxFbS8JM0
古泉「それでも、さびしいものですね」
キョン「お前もか?」
古泉「もちろんですよ。ふふ、いずれ貴方にも彼女ができたら、もっとさびしい思いをすることになるんでしょうね」
キョン「気持ち悪いこと言うな」
古泉「おかしな意味などありませんよ」
キョン「……俺に、彼女、ね」
古泉「変わっていくことを批判する立場に立とうなどと思ってはいないのですが……。ただ……」
キョン「ただ?」
古泉「……ずっと今のように楽しければいいのにと、僕はそう願わずにはいられないんです」
キョン「……」
古泉「僕も中学の時は朝比奈さんと同じような立場でした。自由も効かず、自分が何をしているかもわからない。身動きのとれない観測者とはつまらないものです」
キョン「……」
古泉「ですが今は……なんやかんやあって楽しいですからね。SOS団には本当に感謝しているんですよ」
224 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:05:04.83 ID:NxFbS8JM0
キコキコキコ...
谷口「お茶っ葉売ってるお店ってあんな住宅地の中にあるんすね、初めて知りましたよ」
朝比奈「デパートとかにも入ってるんだけど、あのお店の方が種類が豊富だから、あそこで買うようにしてるの」
谷口「へぇー。っていうか、あの店おれの家の近くっすよ」
朝比奈「そーなの? あそこらへんに住んでるんだ。うらやましいなぁ」
谷口「お茶っ葉屋が近くにあるだけじゃないっすか」
朝比奈「あはは」
谷口「そんなにお茶好きですか?」
朝比奈「はじめは嫌だったけどねー、なんだか召使いみたいで」
谷口「あ、やっぱ思ってたんすか」
朝比奈「だってそれまではコーヒーも紅茶もお茶も何も飲んだことなかったから」
227 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:08:08.09 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「谷口君?」
谷口「それは……」
谷口(でも、本当にこれでいいのか?)
谷口(何か俺は変わったか?)
谷口(周りが変わっただけで、おれは何も変わってないんじゃないか?)
谷口(親父の目が気にならなくなった? それは本当か?)
谷口(ただ、逃げ場所を見つけただけじゃないのか?)
谷口(……俺は……)
朝比奈「じゃあ先に、私の一番楽しい理由を教えてあげるよ」
谷口「え?」
朝比奈「君が……いるから」
231 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:14:52.21 ID:NxFbS8JM0
───朝比奈と谷口、商店街横の川沿いの道
キコキコキコイコ
朝比奈「ねえ、ちょっとここらへんで休んでいかない?」
谷口「……」
朝比奈「ねぇ?」
谷口「……」
朝比奈「あ、ちょっと雨降ってきそうだね。急いだ方がいっか」
谷口「……」
234 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:19:05.97 ID:NxFbS8JM0
谷口「ってのもありますけど、本当は……」
谷口(ダメだ……。こんなおれでも、こんな場面で嘘はつきたくないんだ……)
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「じゃあ私が先にSOS団が楽しい一番の理由を教えてあげるよ」
谷口「!!」
谷口(もうすぐ喫茶店につくのに!!)
朝比奈「君が……」
prrrrrr
237 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:21:37.46 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「それにしてもミクルちゃん、珍しいわよねー、お茶っ葉切らすなんて」
キョン「そうか? そういう少し抜けてる感じ、朝比奈さんらしいと思うが」
ハルヒ「そうかしら? まだメイドが板についてないなんて……これは教育が必要ね」
キョン「やめろ、メイドをおれ好みに教育するなんて、響きがエロすぎるぞ」
ハルヒ「そこまでは言ってないじゃない」
キョン「俺が主でメイドが俺で。うお、マーベラスだ」
ハルヒ「……その組み合わせなら人手がかからなくてよさそうね」
古泉「貴方が主で執事が僕でどうでしょう?」
キョン「断る」
古泉「んふ、でしょうね」
240 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:25:40.63 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「で、有希は犯行を認めるわけ? いいえ、言い直しましょう。有希に判決を言い渡す、有罪!」
キョン「こんなつまらない証人でいいのか?」
ハルヒ「いいわ。どっちにしろもうこの事件は立件の地点で有希の有罪で決まってるのよ」
キョン「なんで?」
ハルヒ「何度も言わせないで! その方が面白いからにきまってるじゃない! 普段無口な有希が窃盗よ? あー、つまらないサスペンスでよく万引きGメンとかやってるけど、実際立ち会ってみると結構面白そうね! Gメンのバイト募集してないかしら?」
古泉「窃盗して捕まった女子高生役のオファーならSOS団に届いてますよ?」
キョン「あってえーな映像じゃないか! そんなの売れなくなったアイドルに回してくれ! こちとらまだまだ現役なんだぞ!」
古泉「売れなくなったアイドルに女子高生役は厳しいと思いますが……」
ハルヒ「ごちゃごちゃうるさい! とにかく、有希はなんでそんなことをしたのか正直に話しなさい! そしたら情状酌量の余地もあるかもしれないわ」
キョン「たった今有罪、って宣告したじゃないか。情状酌量も何もないだろ」
ハルヒ「じゃあ正直に話す刑を言い渡すわ!」
242 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:28:27.98 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「とにかく! 有希はその理由を話しなさい」
長門「……私は」
キョン・古泉・ハルヒ「!!!」
長門「私はただ、朝比奈みくると谷口の仲の手伝いをしたかっただけ」
ハルヒ「え、それ、どういうこと?」
長門「お茶っ葉を抜いておけば皆で喫茶店に来ることになるだろうと予測していた。加えて、その際に谷口が自転車を学校に置いていく訳にも行かず手持無沙汰になるとも想像できた」
古泉「そうすれば谷口君は自転車に乗りたいという気持ちと朝比奈さんと一緒にいたいという願望が相まって、朝比奈さんと谷口さんが二人で自転車に乗りお茶っ葉を買いに行くだろうと考えた訳ですか?」
長門「そう」
ハルヒ「なんで二人で自転車に乗ってほしかったのよ?」
長門「……」
キョン「……」
長門「私は物語に出てくるような恋愛を見てみたかった」
ハルヒ「え……」
長門「ただそれだけ」
246 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:33:36.06 ID:NxFbS8JM0
キョン「なぜ?」
ハルヒ「なんかあたし、いつもSOS団の中でも浮いてるような気がしてたから……。ほら、みんな私が突然団室入ったりするとそわそわしてたじゃない? 実はみんなあたしのこと嫌いで、蔭口とか言ってるのかなぁ、って思ってたから」
キョン(態度にでちまってたか)
ハルヒ「なんか時々聞いたことないような単語が出てくるし……。みんな本音をいつも隠してるような気がしてたのよ」
古泉「そんなことは……」
ハルヒ「でもさっき、初めて有希ときちんとした会話ができたじゃない? それでみんなあの二人を応援してる、ってわかった。それでね、あたしやっとみんなと一緒になれた気がした」
長門「……」
ハルヒ「ようやくみんなで一丸になることができたな、って。野球の時はそーはいかなかったから……」
キョン「……お前もそういうこと考えてたんだな」
ハルヒ「どーゆう人間に見えてたのよ」
キョン「なんっていうか、能天気な奴っていえばいいのかね。人間らしい悩みのない奴だと思ってたさ」
ハルヒ「……あたしにだって悩みぐらいあるわよ。このSOS団だってそう、楽しいけど、みんなが何考えてるのか時々わからなくってイライラしてたわ」
キョン(お前の考えてることの方がよっぽど突拍子もなくて予測不可能だけどな)
252 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:39:03.46 ID:NxFbS8JM0
キョン「体内に充填するツール? なんだそれ、注射器みたいなものか?」
長門「そのようなもの。恐らくそのツールは朝比奈ミクルとは別の未来からやってきた何者かによって運び込まれ、それを谷口は偶然使用することとなった」
古泉「なるほど……。それで、朝比奈さんの能力とは別物なのですよね? その力の内容を教えていただけますか?」
長門「時を巻き戻す力」
キョン「? 朝比奈さんと一緒じゃないのか?」
長門「朝比奈みくるの持つ時を跳ぶ力は、同一の時間軸に二人の同一人物が存在する可能性を生み出す。しかし谷口の時を戻す力は違う。復元ポイントを定め、その地点まで自分ではなく時を巻き戻す」
キョン「随分と派手な力だな、谷口らしくもない」
長門「そう。巻き戻された分はなかったこととなる。ただし、その瞬間に未来は強い反発性によって再構築される」
キョン「?」
長門「未来はほぼ決まっている。人が何人か時を跳んでやり直したところで、それは湖に石を投げ込んで水際を波立たせるのと変わらず、すぐにまた静けさを取り戻す。巻き戻しによって未来もその力に巻き込まれ一瞬姿を消すが、同時にほぼ同じ姿をまた再構築する」
古泉「つまり結果的にはほぼ時を跳ぶことと変わらないことになる、と」
長門「世界にとってはそう。ただ本人にとっては違う。その未来はなかったことになる。本人にとっては大きな出来事」
256 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:43:24.90 ID:NxFbS8JM0
───病院
谷口「……」
タッタッタッタッタ
キョン「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。た、谷口」
谷口「……」
涼宮「えと」
谷口「……」
朝比奈「……」
キョン「お父さんは、大丈夫なのか?」
谷口「……末期の……肺がんだって」
涼宮「!」
谷口「ずっと前からもうわかってたのに……入院してなかったんだってよ」
キョン「それで、今はどこに?」
谷口「病室で寝てる……。もう転移が進みすぎてて手術とかは無理だって」
260 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:46:57.95 ID:NxFbS8JM0
ザーザー
谷口「ウグッ、ヒック」
ザーザー パパパパパタパタパタパタタパタタパ(雨が傘に当たる音)
谷口「え?」
朝比奈「……やっぱりここにいた」
谷口「……」
朝比奈「あらあら、こんなに濡れちゃって。二本持ってきたから、この傘使って?」
谷口「……ありがとうす」
朝比奈「……よいしょ」隣に座る
谷口「……」
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「君に……伝えたいことがあるんです」
261 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:49:59.74 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
朝比奈「……」
谷口「……今は何も聞きたくないっす」
朝比奈「いいえ、今聞いて。もうすぐ私は行かなきゃいけないから」
谷口「え?」
朝比奈「私は決まり事を守ることができませんでした。だからもうこの時間軸にとどまることはできないの」
谷口「一体、何を……」
朝比奈「私はきわめて私的な感情によって、でも強い思いによって、その決まりを破りました」
谷口「何を言ってるんすか、朝比奈さん?」
263 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:52:25.98 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「本当はもっといろいろな話を君としたかったし、いろいろなところに行ってみたかった。けどお話ができるのはこれが最後です」
谷口「いったい何の話をしてるんすか、マジで……」
朝比奈「そんな風に言われても仕方ないですね。でも私のことを信頼してください。……そうとしかいえないんです」
谷口「……そりゃ朝比奈さんのことは信頼してますけど……」
朝比奈「ふふ、よかった。じゃあこれからいう言葉を忘れないでね?」
谷口「……はい」
朝比奈「君のお父さんは君のことを愛していました」
ブイイイイイイイイイン
265 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:56:55.70 ID:NxFbS8JM0
谷口「??」
谷口「朝比奈さん?」キョロキョロ
谷口「あ、朝比奈さん?」
谷口「え?」
谷口「……いなくなってしまった……」
谷口「どーゆうことだ……」
タッタッタッタッタ
キョン「はぁ、はぁ、こんなとこにいたのか……」
谷口「キョン! 朝比奈さんが!」
キョン「? 朝比奈さんに何かあったのか?」
谷口「それが、朝比奈さんの体が光りだしたと思ったらとつぜん姿が見当たらなくなっちまってよ……」
267 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:00:29.27 ID:NxFbS8JM0
───病院、待合室
谷口「……」
ハルヒ「!! あんたどこ行ってたのよ!」
谷口「……」
キョン「すまんな、混乱してるんだ。今はそっとしておいてやってくれ」
ハルヒ「……それはわかるけど。いきなりどこかに行くからみんな心配したのよ?」
谷口「……」
古泉「まぁまぁ、こうしてびしょぬれになっている人を責めるのはやめましょう。一番つらいのは谷口君でしょうから」
ハルヒ「そうよね……。……あれ、そういえばみくるちゃんは? あんたのこと追いかけて出て行ったんだけど」
谷口「……」
270 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:06:19.91 ID:NxFbS8JM0
───家
谷口「……ただいま」
母「おかえり」
谷口「……」
母「なかなか戻ってこないから先に帰ってたわ。どこ行ってたの?」
谷口「……ちょっと、そこらへん周ってた」
母「そう。びしょぬれじゃない。お風呂沸かしてないけど、シャワーだけでも浴びてきたら?」
谷口「……あ、あのよ」
母「何?」
谷口「えと……その……。」
母「……私は前から知っていたの」
谷口「え?」
母「お父さんが病気だっていうこと」
273 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:08:57.04 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
母「親っていうのは自然になれるものじゃないわ。それを子供はぜんっぜん分かってないのよね」
谷口「は? 訳がわかんねーよ」
母「良い親になるために、お父さんは頑張った。私も頑張ってる。それはいやいや頑張ってる訳じゃなくて、自分の意思で頑張ってるの」
谷口「……訳わかんねーよ」
母「それでいいのよ。親がどう、とか貴方は気にする必要がないの。だって貴方は私の子供なんだから。そして、いつか誰かの親になって同じ想いを味わうんだから。ギブアンドテイクってやつよね」
谷口「病気でぶったおれる程の頑張りを甘受しろ、って?」
母「そうね。お父さんはちょっと頑張りすぎたのかも。でも、お父さんは必至で父親であろうとしたのよ」
谷口「……」
母「……ふぅ。今日は疲れちゃった。もう寝るわ。貴方も明日学校あるんだから、早く寝るのよ?」
谷口「……」
母「おやすみ」
谷口「……おやすみ」
275 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:11:30.07 ID:NxFbS8JM0
谷口(……わっかんねぇ……)
谷口(なんでだよ、あんな俺のことを馬鹿にしてくるような親だったのに)
谷口(テストでいい点取ったって、褒めてくれもしない親だったのに)
谷口(……俺のことを嫌いで、おれも嫌い……だったハズの親なのに)
谷口(涙が……)
谷口「うぐ……ひぐ……」
……
279 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:17:05.68 ID:NxFbS8JM0
───理科室、ベランダ
スッ フー
谷口「久々に吸う煙草、プライスレス」
谷口「カラオケの時以来か。つってもそんなに前じゃないな」スッハー
谷口「いろいろあったから随分前のことに感じるぜ……」
谷口「野球大会でて、カラオケの後、SOS団入って……」
谷口「朝比奈さんと2ケツでチャリ乗ったりしてたな」
スッ フー
谷口「ああ、そういやどれもこれもココで時を跳ぶ力を手に入れてからだっけ」
谷口「……お、手首の数字が1になってる。この前3だったのに……」
谷口「あ、これ、力を使える回数なのか」
谷口「……あと、一回か……」
281 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:22:06.16 ID:NxFbS8JM0
───団室
ガチャッ
谷口「お、お、お、おいすー」
ハルヒ「!!! あんた、ちょっとどーゆーことなのよ!!」
谷口「ハ?」
涼宮ハルヒはグーパンチを放った!
谷口「ソオイ! いってぇじゃねえか! 何すんだよいきなりよ!」
ハルヒ「問答無用よ! なんでミクルちゃんが転校することになったか教えなさい!」
谷口「……は? すまん、今なんて?」
ハルヒ「しらばっくれてんじゃないわよ! 最後にミクルちゃんとあったのはアンタなんだからね! 一体あんたミクルちゃんに何したのよ!」
キョン「お、落ち着けハルヒ! 別に谷口のせいで転校することになった訳じゃないぞ、親御さんの都合だそうじゃないか」
ハルヒ「そんなの信じられないわよ! 昨日まであんなにピンピンしてたのに!」
284 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:26:01.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
谷口(なんとなく話は読めた)
谷口(涼宮の力で世界崩壊の危機。そのトリガーとなったのは朝比奈さんの消失、か)
谷口(やっぱ昨日光に包まれてたのはそういうことだったのか……)
谷口(もう朝比奈さんに会えないのか?)
谷口(というか、これもしかして俺のせいで世界危機なんじゃねーの?)
谷口(だって朝比奈さんが禁則事項とやらを破ったのも俺が病院を飛び出したから……)
谷口(朝比奈さんは親父に会いに行った、って言ってもんな)
谷口(……世界、終わっちまうのか)
谷口「……」
谷口(あ……そっか、そーすりゃいーんじゃねーか)
谷口「ひとつだけ、世界を救う方法があるぜ」
キョン・古泉「!」
286 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:28:59.71 ID:NxFbS8JM0
古泉「あたりがだんだん暗くなってきました。谷口さん、急いで準備の方をお願いします」
谷口「おうよ。……あのよ」
キョン「なんだ?」
谷口「いや、なんていうか。……色んな想いを裏切っちまってすまん」
キョン「どうしたんだ、突然」
谷口「お前らに言っても仕方がないのかもしれないけどよ……。時を跳んで、いろんな人の必死な想いを、意味ないもんにしちまったと思うんだ」
古泉「それは……」
谷口「それがよ……申し訳なくって……」
289 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:32:05.23 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「なるほどねぇー、ミクルちゃんが未来人でルール破ったから未来に帰ってしまったと。そんで、そのルールを破る前まで谷口が時を巻き戻そうとしてる、って訳ね?」
長門「……そう」
ハルヒ「いやー、久々に見る明晰夢だわ、これ。あたしwktkしてきちゃった!」
キョン「は?」
ハルヒ「なーんかおかしいと思ってたのよねー、朝から。だってミクルちゃんがいなくなる訳ないんだもの!」
古泉「……えっと、ですね……」
ハルヒ「それでこの面白設定! ミクルちゃんが持ってるのはドジッ娘巨乳属性だけで、未来人だなんてある訳ないのに! いいわ、これぐらい楽しい夢の方が明晰夢には最適よ!」
キョン(明晰夢ってなんだ)コソコソ
古泉(夢の中で、自分が夢の中にいることを自覚し、思いのまま動くことができるという現象だと聞いています)コソコソ
キョン(なるほど、つまり今ハルヒは夢の中にいると勘違いしている訳だな? なんでそんなことに……)
古泉(わかりませんよ、実際世界は涼宮さんの願望と同化し始めている。辺りが少し薄暗いのも、“この間”の時と似ているように思いませんか?)
キョン(たしかにな……。とにかく、今はハルヒにあわせるしかないか)
古泉(そうですね。早く谷口君が時を巻き戻してくれることを祈りましょう)
292 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:34:14.80 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
谷口「もう、朝比奈さんとの思い出にも意味がなくなるんだな」
谷口「片方しか抱えてない二人の思い出って、どんな感じなんだろう」
谷口「どうでもいいか」
谷口「引きずったらつらいぜ。さ、深く考えずに……」
谷口「跳ぶとしましょうや……」
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
……
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
294 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:36:14.88 ID:NxFbS8JM0
───夜、河川敷
谷口「……」
スーッ フー
谷口「静かだぜ……」
谷口「……こんな時間じゃ、水切りしてる子供もいないわな。そりゃそーだ」
スーッ フー
谷口「……」
谷口「これで良い。やるべきことをやったんだ」
谷口「達成感ぐらいあってもいいもんだと思うがな」
スーッ フー
谷口「……戻ってきたってのに、なぜかやらなきゃいけないことだらけな気がする」
谷口「とりあえず、明日から本気出そう」
谷口「しばらくここでのんびりさせてくれ」
296 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:37:34.46 ID:NxFbS8JM0
───谷口から少し離れた河川敷上の道
???「わざわざこんなところまでお連れして申し訳ありません」
父「別に構わないですよ。……それで、お話があるということでしたね」
???「……はい。貴方の息子さんのことなんです」
父「……あいつのお話ですか。失礼ですが、朝比奈さんは息子とはどのようなご関係で?」
朝比奈「……高校の部活での後輩なんです」
父「なるほど、そうでしたか。一体息子はなんの部活をしているんですか?」
朝比奈「えと……ぶ、文芸部です」
父「あいつにそんな趣味があったんですか……。いや、お恥ずかしいのですが息子のことには疎くて、高校で何をしているか全くわからないんですよ」
朝比奈「そうなんですか……」
父「話の腰を折って申し訳ない。ささ、お話を聞かせて下さい」
朝比奈「……」
父「?」
299 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:40:27.31 ID:NxFbS8JM0
───会話の近くの暗がり
キョン(なるほど、これが朝比奈さんの禁則事項破りの現場か)コソコソ
古泉(……谷口さんの父親がいなくなって、朝比奈さん一人になりましたね)コソコソ
キョン(しかしこれ、巻き戻された世界の出来事だよな? この朝比奈さんはいないハズじゃないのか? これも俺達と同じように長門の力か?)
長門(……そう。谷口の時を巻き戻す力が発現する前に、この事象に関してプロテクトをかけた。私たちも同じ様なもの)
古泉(なるほど……では、彼女はもうすぐ未来に戻って、つまり消えてしまうのですね?)
長門(……)コクリ
ハルヒ(さあて……こっからが団長の腕の見せ所よね。どうやってアイツに私のことを見直させてやろうかしら)
キョン(なんで見直させる必要があるんだ……? 何かあったか?)
ハルヒ(……あれぇ、そーいえばそうね。でもとにかくアイツにガツンと言ってやんなきゃ気がすまないのよ)
キョン(勝手な話だなおい……)
301 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:41:28.48 ID:NxFbS8JM0
父「良い親になろうとするのは、難しいことです。愛するということは、与えるということと同議ではありませんから」
谷口「……」
父「優しくすることは簡単なことです。ですが、叱るということはとても難しい。結果、きっとうまくいかなくなってしまうのでしょう。子に嫌われたい親なんていないんですよ」
谷口「……」
父「それでも私は息子を愛している。それだけはハッキリ言えますよ」
朝比奈「……はい」
谷口(……そんなこと、親父は俺に一度だって言ったことなかったじゃねーか!)
303 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:43:24.62 ID:NxFbS8JM0
父「朝比奈さん。貴方からは非常に大切なことを教わりました」
朝比奈「え?」
父「いつになるかわかりませんが……いつか私も息子と腹を割って話がしたいと思います」
朝比奈「……ありがとうございます」
父「貴方はとても立派な人だ。貴方のような先輩を持てて息子は幸せ者です。これからもぜひ仲良くしてやってください」
朝比奈「こちらこそ、谷口君のような後輩を持てて……嬉しいです」
父「さあ、もう遅い。貴方はどちらにお住いですか? 車で送りましょう」
朝比奈「えっと、すぐ近くなんで大丈夫です」
父「そうですか。息子に送らせたいところなんですが、あいにく留守にしていました」
朝比奈「いえいえ……これで大丈夫です」
305 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:44:28.50 ID:NxFbS8JM0
谷口「な、どうしてお前がこんなとこにいるんだよ……!?」
ハルヒ「どーでもいいでしょそんなこと」
谷口「でも……俺に何の用だよ?」
ハルヒ「何の用? あんた副団員の癖に、SOS団のこと何にも分かっちゃいないのね」
谷口「副団員? それは跳ぶ前の話じゃ……」
ハルヒ「はぁ。ホント分かってないわ! 有希、言ってやって頂戴!」
長門「……」
谷口「長門……?」
長門「貴方には感謝している」
谷口「え?」
307 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:47:19.97 ID:NxFbS8JM0
キョン「……な」
古泉「……長門さんが……」
長門「過去、貴方ほど涼宮ハルヒに盾突いた男は一人を除いていない」
キョン「……む」
ハルヒ「そういえばそうね。谷口! 誇っていいわよ!」
谷口「そ、そんなもん」
長門「貴方には十分、想いを伝える強さがある」
谷口「強さ……」
長門「貴方のことを信じた私を……朝比奈ミクルのことを信じてほしい」
谷口「俺を信じた……?」
───朝比奈:君のことを私は信頼してるから! それを……忘れないでね
───朝比奈:さよなら。楽しかった
309 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:48:15.55 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「今日はお時間をありがとうございました」
父「こちらこそ。それでは……」
谷口「待て!!!!」
朝比奈「た、谷口君!?」
父「お前……どうしてここに……」
谷口「……」
谷口「ごめんなさい」
311 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:49:52.63 ID:NxFbS8JM0
父「……」
谷口「だけど……だけど、これからいう言葉だけは……嘘じゃないです……」
父「……」
谷口「親父……これまでありがとう。頼むから……すぐに入院してくれ」
父「なぜそれを……」
谷口「俺、これから頑張るから。絶対頑張るから。今度は嘘じゃない、約束する。今、この瞬間から頑張るから」
父「……」
谷口「親父、頼むから入院してくれ。俺も、いつか親父と酒が飲みたいんだ」
父「お前……」
谷口「……頼む」
父「……そうか。わかった。そうすることにする」
谷口「親父!」
父「……先に帰る。遅くならずにお前も帰れよ?」
谷口「ああ」
314 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:52:15.57 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「良かった、肩の荷が降りたよ」
谷口(謝らないっ!)
谷口(謝っちゃだめだ!)
谷口(だってまだ終わっちゃいないんだ!)
谷口(前へ! 進め俺!)
谷口「朝比奈さん!」
朝比奈「はい」
谷口「明日! 明日食堂に来て下さい!!」
316 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:53:29.81 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「え?」
谷口「明日! 食堂に来て下さい!」
朝比奈「……」
谷口「ずっと待ってます! ずっと待ってますから! ずっと!」
朝比奈「……」
谷口「席取って、ずっと待ってます! どうしても貴方に伝えたい言葉があるんです!」
朝比奈「……でも」
谷口「絶対来て下さい、ずっと待ってますから!」
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「……はい」
谷口「……ありがとうございます」
318 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:54:42.39 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「それじゃあ、また……」
谷口「また、明日」
朝比奈「……はい」
タッタッタッタッタ
キョン「谷口、行っちまったな」
古泉「あれでよかったんでしょうか」
キョン「さあ……」
長門「……」
320 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:55:49.17 ID:NxFbS8JM0
長門「もう時間」
ハルヒ「話はすんだわ。離陸準備、緑一色てなもんよ!」
古泉「……いよいよ、消える訳ですね」
キョン「どうした、さっきの元気はどうした?」
古泉「空元気アピールですよ。そうでなきゃあんないらないレス二つも使いません」
ハルヒ「何よ? 古泉君乗り物酔いするタイプ? 修学旅行で吐かないようにね、変なあだ名つけられたらSOS団の名に傷つくから」
古泉「十分に留意しておきますよ」
キョン「それで、本当に一体どうしたんだ?」
古泉「……自分がこれから消える訳ですよね」
キョン「ああ、そうだな」
古泉「そういうシステムであるということを知ってしまった以上、時が巻き戻されるのに身を任せるのは少々怖いではありませんか」
323 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:56:44.60 ID:NxFbS8JM0
───翌日 昼休み 食堂
谷口「よし、ちゃんと席取れてるよな」
谷口「一応三人分取っておいたけど、思えばキョン達を呼ぶ訳にもいかんな」
谷口「あとは……」
谷口「来てくれるだろうか……」
谷口「あ、あれは」
谷口「おーい、紺野せんぱーい!」
紺野「へ、あたし?」
325 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:58:17.88 ID:NxFbS8JM0
紺野「だから謝ってるじゃん! ほ、ほら、チケットあるからさ、今日いこうよ!」
千昭「えー? きょおー? どーすっかなぁ-」
功介「んじゃあ、おれと二人でいくか、マコト!」
紺野「功介! じゃあそうしよっかぁ? 千昭はいきたくないみたいだし……?」
千昭「別に行かねぇなんていってねーだろ! しーかーたーねーなぁ、お前らがそーんなに言うなんだったら、付き合ってやるよ」
功介「来たくなかったら、来なくたっていいんだぜ?」
千昭「んだと? お前こそ図書館で勉強してた方がたのしいんじゃねーの?」
紺野「まぁまぁ、とにかくさ! あたしお腹減ったし、食券買いに行こうよ!」
谷口(……。その時になれば、あいつらも走り出すだろうし。きっと心配いらないよな。そーゆーもんだもんな、こーゆーのって)
谷口(ってかついつい席譲っちまった。まぁーいーか。立って待つか)
327 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:59:10.59 ID:NxFbS8JM0
キーンコーンカーンコーン
谷口「……」
学食のおばさん「ちょっと君、もう授業始まってるけど、いいのかい?」
谷口「……はい」
学食のおばさん「そーかい……。ここ3時までだから、それまでには教室戻りなよ」
谷口「ありがとうございます」
328 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:01:37.59 ID:NxFbS8JM0
キーンコーンカーンコーン
ガチャッ
学食のおばさん「な、なんでまだこんなとこにいるんだい!? 学食しまってからずっとそこにいたのかい?」
谷口「はい」
学食のおばさん「もう5時回ってるよ? 一体何を待っているんだい? いつ約束したんだい?」
谷口「……昨日、ここで待っていると約束しました」
学食のおばさん「昨日約束して、忘れられてるのかい。ずいぶん薄情な人だね」
谷口「……信じてますから」
学食のおばさん「そうかい。それじゃあ私は帰るけど、遅くなりすぎる前に帰るんだよ??」
谷口「……はい」
329 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:02:39.48 ID:NxFbS8JM0
谷口「……7時か……」
谷口「もう見回りが来て、帰らされちまうな……」
谷口「……だめかな」
谷口「いや、信じるさ」
谷口「彼女は来る。だって約束したんだから……」
───タッタッタッタ
谷口「……!」
バチーーーン!
谷口「あいたーーー!! 突然何するんすか、朝比奈さん!」
朝比奈「馬鹿! へたれ! ……好き?」
谷口「……好きです!!! 大好きです!!」
完
332 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:06:39.44 ID:NxFbS8JM0
最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
ラストとか納得できなかったらごめんなさい><
何か質問などあればいくらでも受けるので、どうぞー
330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 22:05:43.41 ID:5Dvmlf/c0
乙
面白かった
後日談とかある?
333 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:08:09.51 ID:NxFbS8JM0
>>330
ないです。この後はおそらく、同じ関係を作り上げていくのだと思います、
335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 22:14:56.81 ID:aA9yzvUqO
>>1乙
前に谷口×みくるSSをみたんだが、あっちは結ばれなかった。
谷口ってみくるとくっつきやすいのか?
337 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:20:06.30 ID:NxFbS8JM0
>>335
くっつきやすいかって言うとどうなんでしょう。
お互い成長する余地がたくさんありますし、立ち位置的に書きやすかったのは確かです。
谷口父「そういいだしてからもう3時間だ。その番組はなんだ?まさか24時間テレビだとかいうんじゃないだろうな」
谷口「ちげーよ!後15分で終ーわーりーまーすー!」
谷口父「どうだか。お前は補欠合格だった自覚があるのか?」
谷口「!!」
谷口父「他の人が遊んでる時にどれだけ頑張れるかがだな……」
谷口「うるせぇ!後で勉強するっつってんだろうが!」
谷口父「なんだその口のきき方は!」
谷口「もういい!興ざめだっての!」
ドタドタドタドタ(2階に上がる音)
谷口父「おい!……まったく。……ゴホッゴホッ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 13:58:47.33 ID:NxFbS8JM0
───谷口の部屋
谷口「毎夜毎夜同じ会話の繰り返し……」
谷口「ったく、TVぐらい気分よくみさせろよ」
谷口「自分が一流大学出だからってよ」
谷口「へん、人は勉強できるかできねえかだけで評価されるもんじゃないぜ」
谷口「親父は確かに頭が良いと思うし、同期でも出世頭だろうさ」
谷口「それはすげえと思うけど、俺とは価値観が全然違うんだよな」
谷口「親父は知らないかもしれねえけど」
谷口「俺にはもっと別の取り柄ってもんがあるんだよ」
谷口「お? 今チャイムが鳴ったな。だれか来たのか? ……どーでもいいな」
谷口「……さっさと寝るか」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:01:02.29 ID:NxFbS8JM0
───翌日 昼休み 学食
谷口「おーい!ここだここ!」
キョン「なんだ、ここ人の荷物が置いてあるじゃないか。席取りされてるんじゃないか?」
谷口「俺が前の休み時間からリザーブしといたんだよ。わざわざ体育着袋を教室から持ってきたんだぜ?」
国木田「そんな大事な席に僕も座っていいの?」
谷口「サービスサービスゥ、だ。さあさ、座ってくれ」
キョン「……いるよな、こういうやつ」
谷口「なんだ、文句あるのか? 席とっておいた男にその物言いはないぜ」
キョン「はいはい。と、その体操着袋名前が書いてあるな」
谷口「お、ホントだ。こりゃ有名人になっちまうな、WAハハハハ」
国木田「前の時間から席取りをするような小さい男としてね」
谷口「……食券買いにいってくるわ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:03:26.63 ID:NxFbS8JM0
sageとか悠長なこと言ってると、この時間帯でも軽く落ちる気がしてきた。
谷口「ズビビビビ。お、あそこの女子いいな。確か1年9組の沢崎! B+だったつもりだが、ありゃA-か。高校入って化粧覚えたみたいだな」
キョン「……モグモグ」
国木田「谷口はホントに女子のことが好きだね。彼女作ったりしないの?」
谷口「馬鹿やろう! 作れるもんならとっくに作ってるっての!」
国木田「ふーん。その割には誰かにモーションかけてるようにも見えないけどね」
谷口「あのなぁ。まるで俺がチキンみたいな物言いじゃねえか! ズビビビビ」
国木田「別にそうはいってないけどさ。お目当ての女子とかいないのかな、って」
谷口「そうだな……。朝倉涼子のことは狙ってたんだけどな。なんですぐに引っ越しちまったんだろうな、おかげさまでクラスのグレードが1ランク下がったぜ」
キョン「……。……モグモグ」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:06:07.38 ID:NxFbS8JM0
谷口「うちのクラスは今、涼宮でもってるようなもんだ」
キョン「なんでそうなる」
谷口「決まってんだろ? ミスコンやる、って話になったときのこと考えてもみろよ。かわいい女子が一人もいないクラスはみじめじゃねーか」
国木田「前提が意味わからないけど、言いたいことはわかるなぁ」
谷口「中身は最悪だけどな。付き合ってるキョンの気がしれないぜ」
キョン「おかしな物言いをするな」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:09:56.80 ID:NxFbS8JM0
谷口「でもうらやましくもあるな」
国木田「どこが?」
谷口「どこもここもないだろ。SOS団だっけか? 女子部員三人、涼宮朝比奈さん長門ってお前、どんだけだよ」
国木田「確かにねー。傍目から見ても可愛い子ばっかりが集まってるもんなぁ」
キョン「……ひとついいか」
谷口「ああん?」
キョン「例えばだ。無理やり付き合わされている部活があったとする。その部員が全員顔や性格がよろしくない連中だったらどうする?」
谷口「なんだそれ? いじめじゃねーか」
キョン「つまりだ。本来いじめ級の問題を、なんとか外見でごまかしてるようなもんなのさ」
国木田「案外面食いなんだね、キョン」
キョン「健全な高校男子だからな」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:12:05.04 ID:NxFbS8JM0
谷口「ま、涼宮の常軌を逸した行動の数々は知ってるしな、イーブンってとこか」
キョン「三人の眼福で涼宮を相殺したとして、おつりは出るぞ」
谷口「何?」
キョン「朝比奈さんがお茶を出してくれる」
谷口「なんですとっ!?」
キョン「それがまた美味くってな……」
谷口「……なんだか泣けてきたぜ」
国木田「どうして?」
谷口「コイツの高校生活に比べて、おれの高校生活がなんと華のないことか……」
女子「あのさー、隣の荷物どけてもらっていいかな?」
谷口(2年生の紺野先輩か……B+だな)
谷口「うおう、勿論おkっすよ!」
紺野真琴「いやー、わるいねー! 千昭! こっちこっち! 席取れたわよ!」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:14:21.91 ID:NxFbS8JM0
谷口(これはアタックチャンス!)
千昭「は? なんで俺がこんなむさい男の隣に座んなきゃいけねーんだよ。絶対ごめんだね」
谷口「む、むさ……!?」
千昭「第一、昨日俺との約束ブッチしといて昼飯暇だから呼ぶってどーゆー神経してんだよ」
真琴「いやー、いろいろあってさー! どーしても野球見に行けなくなっちゃったんだってー!」
千昭「俺楽しみにしてわざわざメガホンまで持ってったんだぜ? なのに妹がプリン買って来たぐらいでこねーってどーゆうことだよ。ったく、それにこんなジメジメしたとこで飯食うの俺はごめんだ。じゃあな」
真琴「あ、ちょっと! ……」
谷口(いっちまった……。なんか険悪なムードだったな)
谷口「そ、そんなに落ち込まないでくださいよ、水飲みます?」
ガタッ
紺野「……ホント今日はついてない。なーにがナイスの日よー、もー!」
国木田「いっちゃったね……」
谷口(いつもながら、眼中になし、か)
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:16:10.42 ID:NxFbS8JM0
国木田「そういえば来週から期末テストだね。谷口は勉強してる?」
谷口「……してねぇーよ! なんもかんもうまくいかねー! ブルー入りましたー!」
キョン「もう少ししっかりしないとな、お前」
谷口「わーったよ。ったく、どいつもこいつも」
国木田「さて、食器片付けようよ」
谷口(……キョンがうらやましいぜ)
谷口(俺にはなにもない。キョンも似たようなもんなのに、何が違うんだよ?)
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:18:16.70 ID:NxFbS8JM0
───放課後
生徒A「おい! 理科のノート、先生が持ってこいっていってなかったか? 日直!」
谷口「おいおい、日直誰だよ? ルーズすぎねぇか?」
国木田「今日の日直は谷口だよ」
谷口「……キョン、手伝ってくれねえ?」
キョン「仕方ないやつだな……」
ハルヒ「キョン! 団室行くわよ! さっさと用意するっ!」
キョン「……ということだ。悪いな」
谷口「……」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:20:39.11 ID:NxFbS8JM0
───理科室
ドスッ
谷口「ふぃーやっと半分。ったく、一人で運ぶ量じゃねーぞ! なんで何度も一号館と二号館を往復しなきゃいけねえんだ」
谷口「あーだりー。ごみ箱とかにテスト問題のコピーとか入ってねーかなー」
谷口「入ってねーよな。そううまくはいかねぇよな」
谷口「……たばこでも吸うかな。誰もこねーだろ。臭いは……窓の近くで吸えばダイジョブダイジョブーだろ」
カチッカチッ
谷口「……ふぅー。たまんねー。始めて一か月、もう既にやみつきです」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:22:49.06 ID:NxFbS8JM0
スッ フゥー
谷口「こうでもしなきゃ世の中の不条理なんて無視できねーよ」
谷口「なんでキョンの周りにだけ女子が寄ってくるんだろうな」
谷口「ありゃ一種の超能力だな。涼宮のやつ、超能力者は来なさい! とか言ってたし」
谷口「それで寄ってったんだからキョンは超能力者に違いない」
谷口「じゃああれか? SOS団のやつらみんなおかしな連中なんじゃねーか?」
谷口「涼宮は他に何を呼んでたっけな? コスプレーヤーにホモに綾波レイがいたら来いっつってたっけ?」
谷口「WAハハハハ、ま、いいや。さて、ノート取ってくるか。吸殻は……水道でも流しとくきゃいいべ」
ジャー
谷口「さてと……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:24:59.80 ID:NxFbS8JM0
ガタッ
谷口「!!!???」
谷口(誰かいる!?)
谷口(や、やべぇ……)
谷口(音源は準備室か……?)
谷口(吸ってっとこ見られたかな……。顔は? バレたか?)
谷口(いや、音がしただけだし……見られたとは限らねーぞ……)
谷口(確認する必要があるな……)
ギィィィ(ドアをあける音)
谷口『……おいーす。だ、誰かいますかぁ?』(小声)
……
谷口(誰もいない?)
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:27:13.02 ID:NxFbS8JM0
谷口「っかしーな、確かに物音したんだけど」
谷口(隠れてるのか? 驚かしてみるか)
谷口「……WAっ!!」
……
谷口「反応なし、か」
谷口「気のせいだったかな……と、あれ? なんか落ちてるな」
谷口「くるみか……? これがどっかから落っこちたのかな?」
ガタッ
谷口「だ、誰だっ? うおっ!」
谷口(こ、こける!)
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
谷口(な、なんだ!??)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:29:46.50 ID:NxFbS8JM0
テテーテレテレテレテレテレテレテー
谷口「ウァアハアハッハハハハッヒィイイイイヤアァアアアアアア」
谷口(なんぞなんぞこれなんぞこれええええ!!)
谷口(時計だらけな世界だ! うお、バッファローの群れかあれ? 何ぞこれ?)
谷口(新手のドラッグかぁあああああああ????)
谷口「うああああああああああああ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:31:59.67 ID:NxFbS8JM0
ドンッ
谷口「いってぇええええ……」
谷口「ここは?」
谷口「理科準備室か……」
谷口「ただこけただけだったのか? じゃあ今のは一体なんだ?」
ギィィィ
谷口「だ、誰だ!!??」
国木田「ビックリしたー。いきなり大きな声出さないでよ」
谷口「な、なーんだよ、国木田か」
国木田「なんだとは何さ。いつまでたってもノートが置きっぱなしだからわざわざ持ってきてあげたってのに」
谷口「ありがとな……。そうだ、今近くで誰か見なかったか?」
国木田「見てないけど……?」
谷口「そ、そうか……」
谷口(夢だったのか……? いったいなんなんだよったく)
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:34:09.18 ID:NxFbS8JM0
───その頃、SOS団室
ハルヒ「だーかーら! あんたがやればいいでしょそんなこと! 団長が手をだすまでもないわ!」
キョン「あ、あのなぁ、だからってなんで俺がやらにゃならんのだ! 汚したのはお前だろうが!」
ハルヒ「団長命令よ! さっさとやりなさい!」
キョン「民主党の誰かさんみたいに権力に居座るな!」
ハルヒ「うるさいうるさいうるさーい!あたしは汚職なんてしてないもん!当然の権利を行使してるだけよ!」
キョン「意味のわからんもん作って食器を汚してるじゃねーか!」
ハルヒ「それが?」
キョン「そ、それだけだが……」
ハルヒ「じゃあさっさと洗ってきなさいっ!」
キョン「ちくしょう……」
古泉(汚食器、おしょき、おしょくというわけですか……。さすがに安易すぎますね)
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:36:29.62 ID:NxFbS8JM0
長門「……」
古泉「? どうしたんです?何か気になることでも?」
長門「4分15秒前、想定外の情報爆発を確認した」
古泉「……一体どういうことです? 涼宮さんのケーキを彼が食べたのはたった今のことですよ?」
長門「それより、いくばくか前のこと」
古泉「では涼宮さんとは関係を持たないものであると?」
長門「断定できない。なんらかの干渉は行われた可能性がある」
古泉「なるほど……。その情報爆発について説明願えますか?」
長門「統合思念体が現在データベースから情報を策定中。全体の解析には多くの時間が必要」
古泉「具体的にはどれだけの時間が?」
長門「……解答できない。過去に似た事例が発見できた場合、明日にも解析は完了できる」
古泉「発見できなかった場合は……」
長門「涼宮ハルヒのように観察対象として指定される可能性がある」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:38:56.62 ID:NxFbS8JM0
古泉「なるほど。なかなかに由々しき事態ですね」
長門「そう」
古泉「しかしながら我々の機関では、現在の涼宮さんに関するチームと同様の人員や資金を用意できません」
長門「……」
古泉「機関の規模には自負がありますが、それでも二兎を追うことには多大なリスクが伴うと、おおよそ考えられるでしょう」
長門「……」
古泉「したがって、涼宮さんとその情報爆発の関連性が希薄な場合、我々は傍観の立場をとることになりそうです」
長門「饒舌」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:41:20.42 ID:NxFbS8JM0
古泉「我々も、少々統合思念体の力を計りかねているのですよ」
長門「……」
古泉「できることならばなるべく統合思念体のことは刺激しないよう、という方針なんです」
長門「……」
古泉「こちらの行動指針を知ってもらい、テリトリーについて一線引きたいとおもいまして」
長門「……」
古泉「あくまで我々は涼宮さんに興味がある訳ですよ。統合思念体の興味と我々の興味の対象は、被ることはあれど完全に一致している訳ではない、ということです」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:43:29.97 ID:NxFbS8JM0
長門「WINWINゲーム」
古泉「そのとおりです。流石ですね」
長門「今回私は貴方の機関に対し、この一件に手を出さないことを期待している」
古泉「!? 珍しいですね、私的な意見を伺えるとは」
長門「かもしれない」
古泉「それは一体何故ですか?」
長門「涼宮ハルヒと関係性を持たない事柄において、私的感情の行使は規制されていない」
古泉「……なるほど。では手を出してほしくない理由について、伺えますか?」
長門「……」
古泉「わかりました。とりあえず今回の一件は機関にはまわさないことにしましょう」
長門「……感謝する」
古泉(長門さん個人の関心が向くこと、ですか。んふ、興味深いですね)
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:45:41.27 ID:NxFbS8JM0
───下校中、人のほとんど通らない裏道にて
谷口「ったく一体なんだったんだ? 煙草も見られたかもしんないし、今日はついてねーぜ」
谷口「あーあ。テストやべーよ。出来る気がしねー。高校のテストってどんな感じなんだあ?」
谷口「高校入れたのだって奇跡みたいなもんだし。山張りあたりーのあたりーのだったもんな」
谷口「まったく山本勘助も真っ青だぜ」
谷口「まぁいいや。とっとと帰って勉強でも、っとその前に一服……」
谷口「一服……」
谷口「……ねぇ!!」
谷口「え、まじで? ……マジマジマジ!」
谷口「ねぇよねぇよねぇよ! ど、どっかにおとしたってかぁ!?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:47:50.99 ID:NxFbS8JM0
谷口「おいおい勘弁してくれよシャレになんねーって!」
谷口「あ! あの準備室でこけたときに落としたのか!?」
谷口「やべーよそれはやべーよ!」
谷口「日直で理科室入ったたのばれてるし!」
谷口「幸いなことに、まだ学校の近く!大して時間も経ってない!」
谷口「急いで戻れば間に合うかもしれねぇ! ここはダッシュだ!」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:50:01.40 ID:NxFbS8JM0
ダダダダダダ
谷口「うお、こんなとこに自転車が! しゃーない、ぎっちまうか!」
ガチャガチャッ
谷口「ちゃんと返すからよ!ちょっと借りるだけだから!」
キコキコキコキ
谷口「なんでこんなときに赤なんだっつの!」
谷口「こちとら学生生活がかかってるんだ! 喫煙で停学とかださすぎだぜ」
谷口「ここは強行突破だな!信号なんてきにしてられっかよ!」
ププーーーーーー!!!
谷口「えっ?」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:52:11.78 ID:NxFbS8JM0
谷口(あ、トラックだ。馬鹿なの、死ぬの?)
谷口(くだらなすぎるけど、俺にはふさわしいかもな)
谷口(WAWAWA……)
谷口(……でも死なずにすむなら……)
谷口(親父と……)
バーン!!
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:54:21.36 ID:NxFbS8JM0
───理科室前の廊下
谷口「ノートも置きっぱなしだったし、箱も動いてなかった」
谷口「ふー、とりあえず誰にも見られなかったってことだよな」
谷口「よかったよかった」
谷口「しかしさっきのはなんだったんだぁ?」
谷口「事故ったと思ったら、怪我もなくて自転車をギッた場所に戻ってた」
谷口「……時が、戻ったみたいだったな」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:56:33.29 ID:NxFbS8JM0
谷口「んなばかなことあるかよな……」
ガチャッ
キョン「ふぅー」
谷口「お、よおキョン」
キョン「谷口か」
谷口「家庭科室からなんか出てきて、何やってたんだ?」
キョン「みてのとおり、皿洗いだ」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:58:41.69 ID:NxFbS8JM0
キョン「昨日朝比奈さんがケーキを持ってきてくれたんだが、それがまたうまくてな」
谷口「ふーん」
キョン「それに涼宮が対抗心を燃やして、今日材料買い込んできたんだ」
谷口「ふんふん」
キョン「で、結果出来たのがケーキとは呼べないような見かけでな」
谷口「なるほど」
キョン「それをみんなに食わせたくないもんだから全部自分で食おうとしたんだが、もったいないから俺が一切れ食ってやったんだ」
谷口「ほう……」
キョン「それから、うまいぞ、って言ってやったのさ」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:00:41.47 ID:NxFbS8JM0
キョン「そしたら顔を真っ赤にして皿洗いをしてこいとか言うもんだから……」
谷口「……」
谷口「なぁキョン……」
キョン「そこで俺は……ん? どうした?」
谷口「時を跳ぶことってできると思うか?」
キョン「!!!!」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:02:51.76 ID:NxFbS8JM0
キョン「どこでそれを!!??」
谷口「何もそんなに驚かなくてもいいだろ、そんな真剣な話じゃねーよ」
キョン「……なんでそんなこと聞くんだ?」
谷口「べ、べつに? おまえらおかしなことしてるだろ? その一貫でそーゆう実験とかしてねーのかな、と思ってさ」
キョン「……」
谷口「いや、悪かったな。お前は涼宮菌におかされてないんだったっけな。おかしなことを聞いちまった。わすれてくれ」
キョン「……跳べるんじゃないか?」
谷口「……え?」
キョン「跳べると、思うぞ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:05:02.34 ID:NxFbS8JM0
キョン「年頃の奴にはありえる話だそうだ」
谷口「だ、だけどよ、ど、どうやって跳ぶんだ??」
キョン「方法はわからんが……やっぱりピンチのときとか、勢いじゃないか?」
谷口「……」
キョン「でも、なんでこんなことを聞くんだ?」
谷口「……笑わないか?」
キョン「俺がいつも誰の相手をしてると思ってるんだ……」
谷口「誰にも言うなよ、涼宮二世はいやだからな!」
キョン「わかったわかった。で?」
谷口「かくかくしかじか……」
キョン「……なんだって……」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:07:32.28 ID:NxFbS8JM0
谷口「な、なぁ、おかしなことになっちまったのか? 俺」
キョン「い、いいじゃないか。手から火の玉を出せる奴よりは随分実用的だ」
谷口「茶化すなよ」
キョン「は、はは。まあ、害のあることじゃないし、そんなに深刻に考えることないんじゃないか?」
谷口「それは、そうだが……」
キョン「そそそ、そうさ。じゃあ俺は団室に戻らないといけないから、もういくよ」
谷口「ああ、悪かったな、おかしな話につきあわせて」
キョン「いいさ。気にするな」
キョン(何か朝比奈さんと関係しているのか? 朝比奈さんに聞いてみるべきだろうか……いや、どうせ禁則事項に決まってるな)
キョン「ま、古泉やら長門もいるし、俺の出る幕ではないよな。ささ、早いとこ部室戻らんとまたハルヒが怒りだしそうだ」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:09:41.39 ID:NxFbS8JM0
そして時をおいて期末テスト明け
───期末テストの上位者発表掲示板
ガヤガヤガヤ
キョン「さすが国木田だな、学年3位とはうらやましいぜ」
国木田「ありがとう。でも、キョンも載ってるじゃない」
キョン「まぁな。うちの団長のスパルタ教育があったからな」
国木田「SOS団だっけ? 涼宮さんが2位、古泉君は5位、それに長門さんが22位。加えてキョンが49位とは、すごい集団だね」
キョン「涼宮はあそこで悔しがってるがね」
涼宮「むむぅ……」
谷口「……」
谷口(ブ、ブービー賞……)
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:11:52.08 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「ちょっとキョン! あんた49位ってふざけてんの?」
キョン「ふざけてるとはなんだ! お前が言った”団員は50位以内であるべし”をちゃんと守ったじゃないか!」
ハルヒ「かー、これだから昨今の若者は困るのよ。いーい? 1やれと言われたら2をやってくるぐらいじゃないと、社会じゃ通用しないわよ!」
キョン「でかい口叩いてるがな、お前だって公言してた一位、取れてないじゃないか!」
ハルヒ「うるっさいわね! バカキョンの癖に生意気よ!」
谷口「……49位だってすげえじゃねえか」
涼宮「何? 部外者は黙ってなさい」
谷口「キョンだって頑張ったんだ! みんなお前と同じようにはいかねぇんだよ!」
キョン「谷口……」
ハルヒ「……言うじゃない。で、あんたは何位なのよ?」
谷口「それは……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:13:32.50 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「それだけ言うんだから、あたしより上なんでしょうね?」
谷口「なーんでそうなる。そりゃ一位じゃねぇか」
涼宮「ふーん、なのにそんな大口叩いてるわけ」
谷口「ひ、人の取り柄ってのは勉強だけじゃねえんだよ!」
涼宮「それはそれ、これはこれ。さあ、その順位票みせなさいよ!」
ドゥシッバシュッ トリャー
キョン「お、おいハルヒ、やめろ」
谷口「ちょ、おまっ」
涼宮「いいじゃないちょっとぐらい! ほいっとー! へへーん!」
谷口「よ、よせよ!」
涼宮「さーて、順位はどーなのかしらねぇ? ……あ」
谷口「……」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:15:44.32 ID:NxFbS8JM0
涼宮「……」
キョン「ハルヒ……?」
谷口「もういいだろ、返せよ」
バシッ
涼宮「えっと、その……」
谷口「お前は勉強もスポーツもできるし、顔もいいだろうさ」
涼宮「……」
谷口「だが、出来ない奴を馬鹿にする権利があるのかよ」
涼宮「……」
谷口「わりいなキョン、先生に呼ばれてっからもういくわ」
キョン「お、おう」
ハルヒ「……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:17:52.82 ID:NxFbS8JM0
───放課後、団室
朝比奈「……うぅー、胃が痛いです~」
キョン「大丈夫ですよ、何か文句をいってきたら、俺がガツンといってやりますから」
朝比奈「でもキョン君がそんなことしたら……」
キョン「そんなこと気にする必要ありませんよ。なあ、古泉?」
古泉「やれやれ。多少のバイトぐらいは覚悟することとしましょう。仲間のためですからね。とはいえ、涼宮さんも厳しいことは言わないと思っていますが」
朝比奈「だけど今度はどんなかっこをさせられるかと思うと……」
バタンッ
朝比奈「ヒッ」
ハルヒ「……」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:20:02.07 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「……」
テクテクテク スワッ
朝比奈・キョン・古泉「……」
ハルヒ「……ハァ」
朝比奈・キョン・古泉「!!」
キョン「た、ためいきをついたぞ。これもお前のバイトの前兆じゃないか?」
古泉「いえ、今のところそういった連絡は……。涼宮さんの様子の原因について、何かご存知で?」
キョン「いや、そんなこと……あ」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:22:17.14 ID:NxFbS8JM0
古泉「何か知っているようですね。話していただけますか?」
キョン「さっき期末テストの順位発表があったろ?」
朝比奈「す、涼宮さんに聞こえないようにしてくださぁい……」
キョン「わかってます。そこで、ハルヒは一位を取れなかったことを悔しがってたんだ。あいつは2位だったんだがな」
古泉「ふふ……涼宮さんらしいですね。とはいえ、まさかそれが理由だとは思っていませんよね?」
キョン「だったら今頃どなりちらしてるだろうさ。その後の話だ。あいつは俺の順位にあたってきたんだが……」
かくかくしかじか
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:24:24.76 ID:NxFbS8JM0
古泉「なるほど……そんなことが」
キョン「谷口の順位がどれほど悪かったかはしらんが、どうやら谷口の言葉が効いたみたいだな、今の様子からすると」
朝比奈「谷口さんというのは、キョン君の友達なんですか?」
キョン「そうです、クラスメイトなんですよ」
朝比奈「谷口さんはすごいですね、涼宮さんにそんなこと……」
キョン「はは、馬鹿ばかりする奴ですけどね」
ガタッ
ハルヒ「ああああ、もう!」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:26:32.83 ID:NxFbS8JM0
キョン「ど、どうしたんだ」
ハルヒ「あんた、まさか私が勉強なんかで人を評価するちっさいやつだと思ってないでしょうね!?」
キョン「べつにそんなこと思っちゃいないが」
ハルヒ「今回のだってゲームみたいにした方が試験勉強が楽しくなると思っただけなのよ!」
キョン「だ、だからわかってるって、そんなこと」
ハルヒ「さ、さっきあのアレにつっかかっちゃったのだって一位がとれなくて、ちょっと不機嫌になっちゃってただけで……」
キョン(名前ぐらい覚えてやれよ)
ハルヒ「……決めた! 私がどれだけ器の大きな人間か、アレに見せ付けてやるわ!」
長門「……」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:28:42.87 ID:NxFbS8JM0
>>49
半年前にVIP+にて投下しました。ただ大幅な変更を加えたほか、エンディング周りは別物になってます。
キョン「ほほう、で、何をする気なんだ?」
ハルヒ「それをこれから考えるのよ。そうねぇ、何かあの男子生徒がビックリするようなのがいいわよねぇ」
キョン「なんだそれ、器を見せ付けてやるんじゃなかったのか?」
ハルヒ「そうよ! だから、勉強のことをちまちまいうしか脳のない人間じゃないっていう風に、あたしのことを見直させるようなことをしてやんのよ!」
キョン「だが、驚かせば人の価値観を変えられるってもんじゃないぞ」
ハルヒ「むむ……。それもそうね……。あんた何かいい考えないの?」
キョン「何で俺なんだ」
ハルヒ「あんたあの男子生徒と良く話してるじゃない」
キョン「そりゃあ、そうだが。んー、そーだなー……」
ハルヒ「やっぱいい! 自分で考えるから! あんたは黙ってなさい!」
キョン「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:30:54.07 ID:NxFbS8JM0
───下校中
谷口「はぁ……。職員室に呼び出されてこってりしぼられた」
谷口「一番へこんでるのが俺だってことが何故わからない……」
谷口「叱りたがる、それは教師のエゴだぜ……」
谷口「土日もほとんど勉強しなかったからな」
谷口「俺だって良い成績とりてえけど、ついついさぼっちまうんだよなぁ」
谷口「やり直せるならがっつり勉強するんだが……」
谷口「また親父に怒られるぜ……」
谷口「あの目、絶対馬鹿にしてる。なんといってもそれがいやだ……」
谷口「ったく胃がきりきりまいだぜ……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:33:04.60 ID:NxFbS8JM0
───家、リビングへ
ガチャッ
谷口「ただいまー、うおっ!」
谷口父「……」
谷口(な、なんで親父がこんな時間に家にいるんだよ)
谷口「お、おかえり。今日は早いんだな」
谷口父「ああ、ただいま」
谷口(なんとなく雰囲気がおかしい、か?)
谷口母「あら、帰ってたの。おかえり」
谷口「た、ただいま」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:35:13.85 ID:NxFbS8JM0
谷口母「そういえば今日期末テストの結果発表だったんじゃないの?」
谷口「な、なぜそれを……」
谷口母「母親はね、子の表情からいろいろ読み取れるものなのよ。とにかく、どうだったの?」
谷口「……」
谷口母「まさか、ブ-ビー賞?」
谷口「なっ……!」
谷口母「ええっ! あんた、そんな成績とっちゃったの!」
谷口父「お前……」
谷口(ちくしょうちくしょうちくしょう……)
谷口「畜生っ!」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:37:23.15 ID:NxFbS8JM0
───河川敷
谷口「……」
谷口「誰も俺のことをわかってなんかくれねえんだな……」
谷口「ミスッたことなんて重々承知なのに、傷に塩を塗るようなことをしてくれやがって」
谷口「あー俺がこんなに悩んでるってのに、子供は川で遊んでるぜ……。あの頃は何も考えなくてよかったから楽だったな」
谷口「明日のことなんて気にもとめなかった。怖いものなんてなかったな」
谷口「……俺は何が怖いんだろうな。なんでこんなに毎日苦しいんだ?」
谷口「考えて、なんとかなるもんでもねーんだろうな。おれ、頭悪いし」
子供「この石をこーやって投げると、ワープするんだぜ?」
ポチャッ ポチャッ ポチャッ
子供「な、すごいだろ?」
子供「すげー!」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:39:33.88 ID:NxFbS8JM0
谷口「ワープなんかしてねーよ、もっと目をこらせっての。必死に跳ねてるんだぜ? それ」
谷口「あー、でも俺さっきワープしたよな。カカカ、必死に自転車こいでよ!」
谷口「……でも……ワープ、か……。」
───キョン:……跳べるんじゃないか? 跳べると、思うぞ
谷口「やりなおしてえな」
谷口「がっつり勉強して、あの掲示板にのってやりてえ」
───涼宮:さあ、その順位票みせなさいよ!
谷口「そしたらみんなの俺を見る目が変わるだろうし」
───谷口父:いつも口先ばかりだ。
谷口「親父だって、俺のことを……」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:41:43.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「……決めた、いっちょやってやろーじゃねぇか!!」
ダダダッ
谷口「うおおおおおおおおおおお」
子供「うわ、男の人が河に飛び込もうとしてる!」
子供「ほ、ほんとだ! すごい顔!」
谷口(がんばるから、帰れたらがんばるから! 俺にチャンスをくれ!)
バッ
谷口「いっけぇえええええええええええ!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:43:54.00 ID:NxFbS8JM0
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」
……
ガラガラガシャッ
谷口「……っててて……」
谷口「こ、ここは? 家のリビング?」
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
谷口「この番組、見たことあんぞ……」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:46:13.77 ID:NxFbS8JM0
TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」
谷口「……もしかして……」
谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」
谷口「……おおおおおお!」
谷口父「おい?」
谷口「まかせろ!」
谷口父「!?」
ダダダダダダ(階段を登る音)
谷口「俺、跳べんじゃん!!」
谷口「うおおお!やりなおしてやるぜえええ!」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:48:25.08 ID:NxFbS8JM0
───期末テストの上位者発表掲示板
ザワザワ
キョン「国木田が2位、俺が50位、そして15位が……」
谷口「へっへーん! そう、俺様だぜ!」
キョン「まさか谷口がこんなに勉強できる奴とはな。授業中は先生からおこられてばかりだったのに」
谷口「脳ある鷹は爪を隠すってな!」
国木田「でもほんとに驚きだなぁ。まさか谷口が家で勉強してるなんてね」
谷口「WAハハハハ、まーあんまり褒めるなって!」
谷口(一度また期末を受けて、模範解答もらって、それだけ丸暗記して過去に跳んでやったぜ!)
谷口(労せずこの順位!)
谷口(うは! この力おいしすぎるぜ!)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:50:34.76 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「……」
キョン「どうしたんだ?」
ハルヒ「……べつに? なんでもないわよ」
谷口「涼宮は7位か。なんで不機嫌なんだ? 十分じゃねーか」
ハルヒ「うるさい!」
ダダダダダダ
谷口「な、なんだ?」
キョン「期末前から、テストのこととなるとずっとあの調子でな。ったく、何が気に食わないんだか」
谷口「ふーん、ま、どうでもいいけどな」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:52:50.14 ID:NxFbS8JM0
───下校時
谷口「よし、テストも終わったし!カラオケでもいこーぜ!」
国木田「カラオケかぁ。うん、いいよ」
谷口「よし! キョンはどうだ?」
キョン「せっかくの団活オフの日だしな、やぶさかじゃあない」
谷口「よし、じゃあ今日は俺のおごりだぜ!」
国木田「太っ腹だね、何かあったの?」
キョン「なんだなんだ、人が変わったようじゃないか」
谷口「がっはっは! 今日はテストもよかったし機嫌がいいんだよ!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:55:15.14 ID:NxFbS8JM0
───歌広にて
国木田「また後でソレはソレで♪ ちょっとしたネタに変わるって♪」
プルルルルル
谷口「はい」
店員「お時間5分前になりましたが、延長どうなさいますか?」
谷口「延長っすかぁ? それきいちゃう? 俺に?」
店員「はい?」
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」
……
国木田「一曲目何にしようかなぁ……とりあえず"友達としてはソレが"あたりかな」
谷口「……あれだ、他人のキャラソン以外を歌ってみるのもいいんじゃねえか?」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:57:24.80 ID:NxFbS8JM0
───下校中
谷口「ひー、つかれたぜー!」
国木田「いきなりどーしたの? さっきまで不気味なぐらい元気だったのに」
キョン「ひどいガラガラ声だな」
谷口「WA、わばばば」
谷口(結局10時間歌ってから、金払いたくないからこの時間まで戻っちまった)
キョン「テストも終わったし、カラオケでもいかないか?」
国木田「いいね、久々にキョンの美声を聞きたいし」
キョン「ほめてもなんもでないぞ」
谷口「スマン!今日はちょっと用事あってよ、さっさと家かえんねぇといけねえんだわ」
国木田「えー、つれなーい」
キョン「テストであんだけの点とっておいて、また家帰って勉強でもすんのか? お前勉強フェチなのか?」
谷口「だから謝ってんだろ? 今度なんかおごっからよ、じゃあな!」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:59:35.27 ID:NxFbS8JM0
───家の玄関
谷口(ついにこのときがきた)
谷口(毎度毎度成績の悪かった俺が、高校入っていきなり上位入賞)
谷口(親父も俺のことを見直すに違いないぜ)
谷口(……まぁ今回はちょっとせこい手使っちまったけど)
谷口(次からは自力でやるから、いいよな!)
谷口(よし!)
ガチャッ
───リビング
谷口「ただいまー!」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:01:45.38 ID:NxFbS8JM0
谷口父「……」
谷口母「あら、おかえりなさい」
谷口「今日期末テストの結果発表だったんだが、いやー最高の結果だったね!」
谷口母「あら、そういえばそういう時期ね」
谷口「そうなんだよ!」
谷口母「それにしても珍しいわね、あんたが勉強の話題をふるなんて」
谷口「いいじゃねえか!」
谷口母「ふーん? で、何位だったの?」
谷口「それがなんと……学年で15位だぜ!!」
谷口母「すごいじゃない! 遊んでばっかりだと思ってたけど、あんた頑張ってたのねー」
谷口「まぁな! 頑張らなくても出来る子なんだよ!」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:04:01.37 ID:NxFbS8JM0
谷口父「……」
谷口(お、親父は……?)
谷口父「期末テストの結果なんてどうでもいい」
谷口「え……?」
谷口母「ちょっとあなた、いくらなんでもそれは……」
谷口父「勉強とは、テストで結果を出すということではない」
谷口「……」
谷口「べつに親父の意見なんてきいてねーよ!」
ガチャッ ダッダッダッダッ
谷口父「……ゴホッゴホッ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:06:12.19 ID:NxFbS8JM0
───部屋
谷口「……」
谷口「力抜けちまった」
谷口「あー、彼女欲しー」
谷口「勉強にうつつを抜かしてた俺がバカだったぜ」
谷口「ったく……」
谷口「あーあ……」
谷口「良い点とるのもそんなにいいもんじゃねえな」
谷口「……」
谷口「……寝よ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:08:22.07 ID:NxFbS8JM0
───翌日、朝、教室
キョン「いやー、今日も熱いな。夏真っ盛りだ」
谷口「……」
キョン「? どーしたんだ?」
谷口「え、あ、なんだ? なんか用か?」
キョン「朝っぱらからボーっとしてると昼には熟睡コースだぞ。しこりすぎて寝不足か?」
谷口「……期末の結果さ、俺よかったよな?」
キョン「そうだな。正直びっくりしたぞ。で、しこりすぎて腱鞘炎にでもなったか?」
谷口「だよな。……俺のこと、見直したりとかしちゃったりしたか?」
キョン「どーだろうな」
谷口「それはどーゆう……」
キョン「まぁ、勉強はできるやつなんだな、と思い直したよ。だが……」
谷口「だが?」
キョン「友達が勉強できるかどうかなんて、正直どうでもいいな」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 16:10:32.26 ID:NxFbS8JM0
谷口「……それは、そうだけどよ」
キョン「勉強なんて一つの要素でしかない、人の取り柄ってのはべつにある。そういってたのはお前だろ?
谷口「それは、そうだけどよ」
キョン「ま、世の中は下からでしか支えてやれないような奴が沢山いるのさ」
谷口「??……おいおい、それは俺が底辺の人間だってことか?」
キョン「そうはいってない。だがお前の姿に安心できる奴がいるってことだ」
谷口「つまり?」
キョン「“ああ、谷口みたいな奴もいるんだから、俺も平気だろ”みたいな」
谷口「……もうどっかいってくれ」
キョン「す、すまん」
キョン(はて、そういやいつ谷口からそんなリア充めいた言葉を聞いただろう? ……あいつからまともな言葉なんて聴いた覚えがないが)
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:12:42.19 ID:NxFbS8JM0
───昼休み 団室
ハルヒ「草野球大会にでるわよ!」
キョン「なんだよいきなり! 面子全然足りないじゃないか! それにお前ルールしってんのか?」
ハルヒ「るっさいわね! でるったらでるの! いい? これは団長命令なんだからね!」
朝比奈「……」
ハルヒ「7月だからかしら? なーんだか気持ちがそわそわするのよねぇ。大事なことを忘れてるような気がしちゃって、テストも全然手につかなかったのよ」
キョン「そういやお前1位とるとかいってたくせに、全然だめだったじゃないか」
ハルヒ「あー、そんな話もあったわね。でもそんなのもうどーでもいいのよ。テスト勉強を頑張る要素の一部になった、それで十分じゃない。結果なんてどうでもいいの」
キョン「ほう……」
朝比奈「ほっ……」
古泉「ふむ……」
長門「……」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:14:59.52 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「そんなこんなでうやむやしてるのを、パーッと吹き飛ばすならやっぱりスポーツよね!」
キョン「お前にしちゃあまともな意見だな」
ハルヒ「まぁね。奇をてらってばかりでは奇じゃなくなっちゃうもの。それじゃ不思議も不思議とわかんなくなっちゃうし」
キョン「なんかの言葉遊びか?」
ハルヒ「いちいちうるさい! とにかく! 草野球大会にでるんだからね!!」
キョン「百歩譲って出るとしよう。面子はどうするんだ?」
ハルヒ「集めればいいじゃない」
キョン「誰が?」
ハルヒ「集めなさい」
キョン「おれかよ! なんでおれだよ!」
ハルヒ「だんちょーめいれい」
キョン「またかよっ! お手軽すぎだろ! マッククーポンじゃないんだぞ!」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:17:09.82 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「黙りなさい。じゃあ私は昼休み中にしないといけないことあるから、また教室でね!」
バタンッ
キョン「カースト制の一番下の気持ちがわかってきたぜ」
朝比奈「私も友達を誘ってみますね」
古泉「おや、多少乗り気のようですね? 野球はお得意ですか?」
朝比奈「いえ、私の時代ではもう教科書にすら載ってないスポーツですから、やったことはないんです。でも……」
キョン(まぁ、マイナースポーツだし、仕方ないだろうな)
朝比奈「でも勉強のことで、何も言われなかったのでうれしかったんです。そのお礼じゃないですけど、協力したいな、って」
古泉「野球がどんなスポーツか知ってます?」
朝比奈「いえ。でも、子供でもやれるんでしょう? なら私にも……」
古泉「野球というのはですね……かくかくしかじか」
朝比奈「100km近いボールを至近距離で打つんですかぁ?……え、それはないと思います……」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:19:41.68 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「私にできる訳ないですよ~!」
古泉「まぁまぁ、別に涼宮さんも朝比奈さんがヒットばかり打つことを期待してはいないと思いますよ。ただ、彼女はSOS団で何か大会に出たいのでしょう」
キョン「そーいや6月中に、“台風のやつのせいで草野球大会が延期されちゃったのよ! 腹立つわー!”とか言ってたな。そのしわ寄せか」
朝比奈「……はぁ、意思は固いみたいですねぇ……」
キョン「七月か……もうすぐ夏休みですね。その前の最後の難関だと思って、がんばりましょう」
朝比奈「どーせ夏休みだって涼宮さんに振り回されるに決まってますよ……」
キョン「……ひ、否定はできませんね」
古泉「ふふふ、退屈しないですみそうではありませんか。高校生活の夏休みなんて忙しいぐらいがちょうどいいですよ」
朝比奈「……じゃあ私、教室に戻りますね」
キョン「あ、じゃあまた放課後!」
朝比奈「はい……」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:21:49.96 ID:NxFbS8JM0
───放課後
キョン「まさかの千本ノック。みてるだけで疲れたわ」
キョン「と、面子集めないとな。どーしたものか」
キョン「谷口と国木田はきっとおkしてくれるだろ」
キョン「谷口といえば、朝、なんか様子がおかしかったな」
キョン「スポーツやりゃあ気が晴れるとハルヒですら言ってるんだ、谷口にも悪影響はあるまい」
キョン「早速電話かけるとするか」
ピピピピピッ
prrrrr ピッ
谷口「どうした?」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:24:01.20 ID:NxFbS8JM0
キョン「よう。いきなりなんだが、土曜暇か?」
谷口「特に用事はねえけど、なんかあんのか?」
キョン「草野球大会に涼宮が出たいっていいだして、その面子を探してるんだ。出てくれないか?」
谷口「なーんで俺がそんなこと」
キョン「何やら落ち込んでるようだったが、いい気分転換になると思うぞ」
谷口「野球なんかやったって面白くもなんともねーよ。授業でしかやったことないぜ」
キョン「……朝比奈さんのコスチューム姿みたくないか?」
谷口「……」
キョン「しかも応援してくれるんだぞ? どうだ?」
谷口「ったくしかたないねーな! そこまでいうならいってやるよ!」
キョン「よし! じゃあまた詳しいことはメールする。土曜日あけといてくれ」
谷口「ラージャ」
キョン(ちょろい。後は国木田と……妹でいいか)
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:26:20.97 ID:NxFbS8JM0
───大会当日
谷口「行く、っつったのはいいもののな、ずぶの素人がただ応援してもらうってのも気がひけるぜ」
谷口「こうなりゃ一発、かっこいいところ見せ付けてやんないとな」
谷口「たかが草野球大会、よくボール見て思いっきりバット振りゃなんとでもなるだろ!」
谷口「そんで女子の黄色い声を浴びながらホームベースを踏む俺……」
谷口「……絵になる! こいつは絵になるぜ! 才能だけで打ちました! みたいな!」
谷口「ここはおれの力の出番だな! コースみてから時間まきもどせば……ウヒヒ」
谷口「おれの人生バラ街道が始まりを告げそうだ! 待ってろよギャラリー達!」
谷口「さてさて、そうして俺は大会会場にやってきましたよっと」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:28:28.76 ID:NxFbS8JM0
谷口「お、いたいた。おーい、キョン!」
キョン「ああ、谷口か。よくきてくれたな、こっちだ」
谷口「わざわざ土曜だってのに来てやったんだ、感謝しろよ?」
キョン「わかってるわかってる。俺達は第一試合だからもうみんなベンチの方いってるんだ。急いでくれ」
谷口「あいよ」
───ベンチ付近
ハルヒ「キョン? それで全員?」
キョン「ああ。そうだ」
ハルヒ「……あんた、どっかで……」
谷口「ああ?」
キョン「何言ってんだ? クラスメイトだろうが」
ハルヒ「まぁいいわ、今日はよろしくね」
谷口「お、おう」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:30:38.59 ID:NxFbS8JM0
鶴屋「君がキョン君かい? へー、ふーん」
キョン「あ、あの……」
谷口「谷口です! 今日はホントは大事な用があったんですけど、親友の頼みだから断れなくって」
鶴屋「!! 君が谷口君? へぇー、ふーん、あれぇ~……きいてた話とちょっと違うにょろ……」
谷口「ど、どうかしたんですか?」
鶴屋「え、あはは、こっちの話っさ! よろしく、谷口君っ!」
谷口「こちらこそよろしくおねがいしますっ!」
谷口(なんやしらんけど脈ありげぞこれー!)
99 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:13:47.41 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「さあ締まっていくわよー!!」
古泉「まだ一点許しただけですし、落ち着いていきましょう。さっきのはラッキーホームランです、次はありませんよ」
ハルヒ「ふふん、ビギナーズラックが二発続いたらたまらないものね」
キョン「ビギナーズラックが続かないと俺らに勝ち目はないけどな」
ハルヒ「あんたはいちいちプロ精神が足りないのよ。ビギナーズラックなんていらないわ! 実力でもぎ取ってやるの! タイトル取れないからって他のチームに移籍したい、とか言いだしたら許さないんだから」
キョン「へいへい」
104 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:21:09.25 ID:NxFbS8JM0
谷口(ヤベェ、間に合うか?? 間に合うのか??)
谷口(ボールは朝比奈さんの眉間に直撃した……つまりそこをグローブで守れば!)
ダダダダ
朝比奈「……いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その」
谷口「……間に合ってくれ!!!」
ダダダダ
朝比奈「これ、その、えと、あの」
谷口「間に合え!!!」
ダダダダ
朝比奈「やっぱり、無理じゃ……」
谷口「うおぉおおっ!!!」
ダッ ドシン
「……アウトー!!」
107 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:25:01.16 ID:NxFbS8JM0
キョン「相手が外野狙いになってたのは明らかだった。実際レフトとセンターにぼてぼてのフライでヒットにされてたからな」
ハルヒ「それが何よ。あたしはヒット性のボールは打たせなかったわよ? 記録はエラーじゃない!」
キョン「それでもだ。お前が無理を言って集めたメンバーで、SOS団の団員とは言え朝比奈さんは大変な目に会うところだったんだぞ?」
ハルヒ「そ、それは……」
キョン「まぁ、運良く大惨事は避けられたがな。お前は誰かにお礼を言わないといけないんじゃないか?」
ハルヒ「……」
谷口「キョ、キョンよう、なにも起きずに済んだんだ、ラッキーだったと思ってよ、次気をつければそれでいーんじゃねーか?」
キョン「……ふぅ。じゃあ俺は運営のとこで朝比奈さんを休ませてもらってくるから」
ハルヒ「……」
谷口(に、睨んでらっしゃる!!)
111 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:28:10.70 ID:NxFbS8JM0
谷口(うひょー、やべえ、あれはやべええ!! 下手すりゃバッターボックスでテント張るハメになりかねねえぜ!!)
谷口(あんまり見ないようにしねぇと……)
ハルヒ「ちょっとあんた! 何もじもじしてんのよ! みくるちゃんのチアリーダー姿おがんでるんだから打たなかったら罰金だからね!」
谷口「おーし、絶対打ってやるぜっ!」
谷口(おれがリアリーダーに応援された試しがあっただろうか? いや、ない! 今俺人生の絶頂期! 打たない手はない嘘ではない!)
113 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:31:28.48 ID:NxFbS8JM0
谷口(あの朝比奈さんに……へたれ言われた……)
谷口「み、みてて下さい! 絶対次は打ちますんで!」
ハルヒ「アンタが出塁するにはデッドボールぐらいしかないわ! ほら、もっとベースに覆いかぶりなさいよ!」
谷口「うるせえ! お前になんか言ってねえんだよ!」
ハルヒ「へたれが何言ってもこっちまでは聞こえません。あーあー(耳をふさぐポーズ)」
谷口(こうなりゃ能力使ってでも打ってやる!!)
115 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:34:34.82 ID:NxFbS8JM0
バシッ ストラック
ハルヒ「プハハ! また尻もちなんて学習能力まったくないのね! 猿? いいえ、へたれです。せめてバットぐらい振りなさいよ!」
朝比奈「……クスクス」
谷口(ちくしょう、朝比奈さんにまで笑われてる……)
キョン「古泉、朝比奈さんのあんな笑顔、見たことあるか?」
古泉「いいえ。言ったでしょう? SOS団は仕事場ですから、僕らがいやされている笑顔は営業スマイルみたいなものです。今のように笑いをこらえきれない、といった表情は僕の記憶にはありませんね」
キョン「それに……」
古泉「ええ。まさかへたれ等という言葉が朝比奈さんの口から伺えるとは思ってもみませんでした」
キョン「……」
117 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:36:44.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「はあ、はあ」
ハルヒ「あんた、打つ前からなんでそんなに疲れてんの?」
谷口「う、うるせえ。お前こそそんだけ笑っててよくつかれねえな」
ハルヒ「?」
谷口(これで12回目のバッターボックス。今度こそ涼宮を笑わせねえ……)
ピッチャー、投げた。
谷口「うおおおおお!!」
カキン ヒュー ポテン セーフ!!
谷口「いいいよっしゃあああ!!」
119 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:38:46.11 ID:NxFbS8JM0
ハルヒの三塁打でおれは塁にかえった。しかし結局朝比奈さんがアウトになり、三回を終える。
その裏、ぼこぼこにやられる。
四回表を迎え、1-9。
谷口(こりゃ勝ち目ねえだろ。この回の裏で終わりだな、こりゃ)
谷口(なんか古泉と長門が話してる? 涼宮の機嫌取りの話か? もう爆発しそうだもんな)
谷口(しかし長門かわいいな。かわいい。うん。お人形さんみたいだぜ。しょーじきたまらん)
谷口(はぁはぁ、長門、かわいい、長門……ってホームラン打ちやがった!!!)
121 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:41:58.39 ID:NxFbS8JM0
谷口(そして訳のわからない魔球使って、そんでアウトか。なんだそれ)
谷口(結局勝っちまった。一体……どういうことだぜ?)
古泉「そうだ、谷口さん」
谷口「え、あ、おう?」
古泉「これから僕は私用でこの場を離れなければなりません。すると試合の人数が足りなくなるため、つい今二回戦辞退を申し込んできたところなんです」
谷口「つまり、もう帰ってもいいってことか?」
古泉「ええ、一応そういうことになりますね」
谷口(さて、家帰って……っと今日は休日だから親父が家にいるのか……。……漫喫でもいくかな……)
古泉「ですが、よろしければSOS団の打ち上げに参加しませんか?」
125 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:45:34.26 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「キョンまで何言い出すのよ! まさか男がいないと楽しくないなんてことじゃないでしょうね? あんたホモだったの?」
キョン「ちっがーう! 四月の上旬は谷口や国木田と遊ぶ時間があったが、今はSOS団に時間をつぶされておちおちゲーセンに寄ることもできんのだ。せっかくこうして一緒にいるんだし、打ち上げに参加するぐらいいいだろ」
ハルヒ「……ちっ。仕方ないわね。へたれの参加を許可します。あんた、感謝しなさいよ」
谷口「別に頼んでなんか……」
キョン「よかったよかった。数は多い方が楽しいし、朝比奈さんもうれしいですよね?」
朝比奈「え、え、え、ええ」
谷口「行きます! 是非行かせてください!」
ハルヒ「……まぁ、いっか」
128 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:50:04.66 ID:NxFbS8JM0
スッ フゥー
谷口「さて、そろそろ行きますかね」
朝比奈「あ、谷口君……」
谷口「え、あ!」
谷口(やべっ!)
ケシケシ
朝比奈「……」
タッタッタ
谷口「あーあ、みられちまった」
谷口「……ま、どうせ朝比奈さんもハルヒに引っ張られてるだけだし、俺のことなんてどうでもいいだろうから大丈夫だろ……」
131 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:54:34.05 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「あ、次の曲入ってないじゃない! じゃあ次は誰に歌ってもらおうかしら……」
朝比奈「……谷口さんどーですかぁ?」
谷口「え? 俺??」
ハルヒ「そーね! あんたまだ歌ってなかったものね」
谷口「よっしゃ、そんじゃ何入れよっかなー。俺様の美声を披露してやんよ、って、え? 曲流れだしたけど入れたの誰だよ??」
朝比奈「私です~」
谷口「しかもチョコレイトディスコて!! 男が歌ってどーするんすか! 止めて下さいよ!」
朝比奈「えー? 歌わないんですかぁ? そしたらさっき見たことを……」
谷口(まさかの朝比奈さんからの脅迫かよ!!)
谷口「うお、え、あー。歌います! 見せつけてやるぜっ!」
谷口「計算する女子~ 期待してる男子~」
138 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:59:50.65 ID:NxFbS8JM0
───3時間後、カラオケの外
ハルヒ「あーあ、ホンットあんた歌下手ね! しかもミクルちゃんみたいに愛嬌のある下手さじゃないから聞いててイラっとしたわ」
谷口「あんだけ……歌わせといて……それはねえだろ……喉いてえ……」
朝比奈「はぁーあ……。聞き疲れました……」
キョン「朝比奈さんツボにハマり通してましたもんね」
朝比奈「だって……。谷口さん……ブホッwwww」
キョン「思い出し笑い!?」
谷口「……」
谷口(まぁ、朝比奈さんの笑顔だけは仰山見れたし……。それだけでもいいとしといてやるか)
140 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:04:39.45 ID:NxFbS8JM0
キョン「!!!!」
谷口「ッハァ!? 何言い出すんだお前」
ハルヒ「何? いやなの? まあ、どっちにしろあんたに拒否権はないわ。こんだけ下手な歌であたし達の貴重な打ち上げを汚してくれたんだからね」
谷口「歌わせたのてめーだろーが!」
ハルヒ「歌ったのはあんたでしょ。それに感謝されても文句を言われる筋合いはないわ。どーせあんた部活も何もしてないんでしょ?」
谷口「別に部活入ってねぇから、って暇な訳じゃねーよ!」
ハルヒ「へー、じゃああんたいつも学校終わったら何やってるのよ?」
谷口「それは……」
ハルヒ「やーい暇じーん! ぼっちー! 一人飯ー!」
谷口「う、うるせえ!」
142 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:08:05.17 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「そーゆーことだから! いいわよね? みくるちゃん、有希?」
朝比奈「え、あ、はい、いいと思います」
長門「……」
ハルヒ「有希?」
長門「了解した」
ハルヒ「じゃ、古泉君にはあたしからメールしとくから! 今日はここで解散! また月曜日に会いましょ!」
タッタッタッタ...
146 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:12:58.63 ID:NxFbS8JM0
>>143
谷口の「聞いた話だって! マジで!」ってのを信じたケースでお願いします
谷口「な、今俺に待ってって言ったのは長門か??」
長門「そう」
谷口(A-の長門が俺に話しかけてくるってことはこれなんかのフラグかああ?? でも俺には朝比奈さんがー!)
谷口「お、俺にいったい、なんのようかな?」
長門「ついてきてほしい」
谷口「お、おお、おおおお、おお。いいぜ! そしてこれは断じて裏切りではないぜ! SOS団の仲間のことを知るためのだな……」
長門「……」
150 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:18:11.77 ID:NxFbS8JM0
長門「涼宮ハルヒにとって、どうということはない存在」
谷口「大切なことだから二回言ったんだよな?」
長門「非常に大切。貴方にとってではなく、私にとっても」
谷口「? ってかお前こんなにおしゃべりだったのか?」
長門「つまり、あなたは涼宮ハルヒの持つ自立進化の可能性とは、何ら関与するものではない」
谷口「無視ね。そんなもんと関与してたって嬉しくも何ともないからいいもんぜー」
長門「それを聞いて安心した」
谷口(?)
長門「これから話すことをよく聞いて」
谷口「お、おう」
153 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:21:38.59 ID:NxFbS8JM0
長門「そのテストの点数が悪かった際、涼宮ハルヒと貴方は言い合いをした」
谷口「……そんなこともあったかもな」
長門「結果、涼宮ハルヒは大きく落ち込んでいた」
谷口「え?」
長門「それを見て、朝比奈ミクルは貴方に興味を持った」
谷口「……でもそれ、時間跳ぶ前の話だぜ?」
長門「そう。だが、SOS団は様々な力に対して強い耐性がついているため、残留思念が残ることを想像するのは容易」
谷口「ふーん」
長門「とにかく、その時から私の中に一つの計画が生まれた」
谷口「ほうほう、その計画とやらをきかせてもらおーじゃねーか」
155 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:24:26.41 ID:NxFbS8JM0
長門「聞いて驚いてほしい。見て驚いてほしい」
谷口「おうおう!!」
長門「目の前でスイーツ漫画みたいな恋愛を見たい! 題して時をかける少年少女!」
谷口「ぱぱぱぱくーった!!!」ガビーン
長門「今更。大概のSSはパロの塊」
谷口「……あっちょんぶりけ」
157 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:27:43.68 ID:NxFbS8JM0
───谷口の家の前
谷口「おーおー、ずいぶん飲んじまった。足元がふらつくわ」
──長門:とにかく、あなたは涼宮ハルヒに近づきすぎてはならない。そうすれば古泉一樹の機関もあなたに手を出さない。それだけは覚えておいてほしい
谷口「そんなこと……俺は朝比奈さんとなかよくなりてーだけだってのー」
ガチャッ
谷口「ただいまー」
谷口母「遅かったわねー。ってあんた、また酒飲んできたの?」
谷口「記憶にございませーん」
162 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:32:08.06 ID:NxFbS8JM0
───翌日、月曜の朝
谷口「ちくしょー、力使って二度寝したのに、まだ頭いてーぜ」
谷口「お、なぜか知らんけど洗面所にウコンが!」
谷口「これ、あとから飲んでも何気に効くよのな」ゴクッ
谷口「ふー。ラッキーラッキー、ウコンがあってラッキーだったぜ」
谷口「ん? なんだこの手首の数字……」
谷口「3? ま、どーでもいっか!」
谷口「よっしゃ、元気出して学校いかねーとな! なんってったって今日からは毎日放課後に用事がある!」
谷口「わりい、俺これから部活なんだ! また誘ってくれ!」
谷口「うひひ、言い方練習しとかねーとな!」
谷口「いってくっぜ!!」
163 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:36:26.13 ID:NxFbS8JM0
───団室前
ジージージージー
谷口「セミがうるせえ」
谷口「暑くてシャツが体に張り付く」
谷口「たまに吹く風がここちいいが、それも一瞬のことだ」
谷口「とにかく暑い。夏の日」
谷口「そんな日に、俺の新しい章が幕をあける」
谷口「さあ、その扉をノックしようじゃないか……」
キョン「さっさと開けてくれ。中は冷房きいてんだから」
谷口「ひたらせてくれよ!!」
キョン「それに幕か扉かハッキリしてくれ」
谷口「うるせえしこまけえし!」
164 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:39:44.06 ID:NxFbS8JM0
───団室
谷口「おー! なんか遊び道具たくさんあんな! しかもPCもあるじゃねーか!」
キョン「まーな。うちの団長はやり手なんだ。極めて悪質だが」
谷口「それに……長門がいるぜ?」
キョン「文学部部長兼SOS団団員だからな。そりゃいるさ」
谷口「そっかそっか。それで、手を振ってる古泉の前に広げられてるボードゲーム、ありゃなんだ?」
キョン「大将棋だ。初めて三日目になるが、未だに終りがみえん」
谷口「……是非羽賀さんにやってもらいたいもんだな」
キョン「羽賀さん相手でも二日ぐらいは粘れる自信がある」
谷口「駒の動き覚えるのにまず一日かかりそうだぜ」
165 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:42:46.72 ID:NxFbS8JM0
谷口「で、で、他にももう一人団員いなかったっけか?」
キョン「朝比奈さんか?」
谷口「そうだ! 朝比奈さんだ! 彼女はまだ来てないのか?」
キョン「そろそろ来るんじゃないか?」
ガチャッ
谷口「!!」
ハルヒ「たのもー!」
谷口「f**k」
ハルヒ「なんかいった?」
谷口「別に……」
166 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:45:56.48 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「っていうか、なんであんたいるのよ?」
谷口「お前が放課後部室に来いっつったんだろ!」
ハルヒ「そーだっけ? あー、そーいえばそんなこともあったかもね」
谷口(おいおい追い返されるのか!?)
ハルヒ「なんてね、覚えてるにきまってるじゃないの。ふふん」
谷口「な、なんだよきもちわりーな」
ハルヒ「わかった、そわそわしてるのはミクルちゃんがいないからでしょ!?」
谷口「え、あ、うん?」
ハルヒ「そーこなくっちゃぁ! 健全たる男子たるもの、女のケツを追いかけてなんぼ、ってなもんなのよ!」
谷口「珍しいな、それは同意だぜ!」
167 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:49:25.97 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「ってことですが、ミクルちゃんなら今野球場いるわ。ほら、高校横にある公園のトコ」
キョン「そりゃまたなんで?」
ハルヒ「さあ? 野球にハマったんじゃない? でも団員が何かにやる気を出すのはいいことよね! ということで、今日の団活はあの公園で行います。ほら、さっさと準備する!」
キョン「はいはい」
谷口「こんなあっついのによくやるぜ。団室内で涼んでる方がいいんじゃねーのか?」
ハルヒ「ミクルちゃんが動いてんのよ? レアじゃないの! これを協力しない手はないわ! もしかしたら未来人からのメッセージかもしれないし!」
谷口「そーいやそーゆう趣旨のサークルだったっけか」
キョン「ま、どっちにせよ、だ。制服姿の朝比奈さんが野球やるとか、みたいだろう?」
谷口「見たい訳……見たいです!!!!」
キョン「んじゃ、とりあえずそこにあるグローブと金属バット持ってきてくれ」
谷口「お前は何持ってくんだ?」
キョン「カメラだ」
谷口「……」
171 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:53:40.74 ID:NxFbS8JM0
シュッ パシッ シュッ パシッ
ハルヒ「どりゃっ、里中ボール!」シュッ
キョン「うおっ! 親指使えないハズなのにシンカーが投げられるだとっ!」パシッ
ハルヒ「ふふん、スカイフォークもいけるわよ!」
キョン「大会でなげてりゃ長門の力も借りずに済んだだろうに」
ハルヒ「有希が何かやってたっけ?」
キョン「こっちの話だ」シュッ
谷口「大会ってったら、おれのダイビングキャッチがダイジェストだったよな!」パシッ
古泉「あれは見事でしたね。主に走行距離においてですが」
谷口「へへーん、打者の目線、俺の経験、俺イケメン、気づいたら俺は突っ走ってたんだよ。さすが天才は違うねー」
朝比奈「別に、谷口さんが来なくてもキャッチ出来たもん!」
174 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:58:39.43 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「じゃ、野球の練習はここまで! もう日も暮れてきたし、今日はこの場で解散にしましょ!」
キョン「そうだな」
ハルヒ「明日は普段通り団室に集合だから!」
朝比奈「待ってください!」
ハルヒ「え? なあに? ミクルちゃん」
朝比奈「えと、そのー。明日も……野球しませんか?」
キョン「!!」
古泉「これは驚きですね。朝比奈さん、野球が気に入ったんですか?」
朝比奈「……はい」
古泉「どうでしょう、涼宮さん、明日以降もしばらくここで練習するというのは?」
ハルヒ「そうねぇ……」
谷口「俺も野球やりてー! 夏っぽくていいじゃねえか、な、野球しようぜ?」
ハルヒ「ふーん。ま、いいわ。もうすぐ夏休みだし、夏休みまでのしばらくの間、放課後はここで野球をやりましょ」
朝比奈「ありがとうございます!」
179 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:01:57.89 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「野球。みんな、手を抜いてくれてたでしょ?」
谷口「手を抜く?」
朝比奈「ホントは思いっきり速い球投げたり、思いっきりボールを打ったりしたかったハズなのに、私が下手だから、それを気にしてみんな力を抑えてたよね」
谷口「えと……」
朝比奈「実はそれに気づいてたけど……気づいたところで野球がうまくなれる訳じゃなくて……」
谷口「……」
朝比奈「この前の大会は悔しくかった。でも涼宮さんが野球やりたいって言ったらそれをやらないといけないから……。私がイヤって言っても意味ないし、言っちゃいけないから……」
谷口(そういえば、朝比奈さんもSOS団……。涼宮のためにいる人間なんだよな)
朝比奈「……今日は楽しかった?」
183 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:05:23.99 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「……ふふ、君、すごくはずかしいこと言ってるよ?」
谷口「え、あ、す、すみませ」
朝比奈「……でも、ありがとう。なんだか、すごく自信がついたよ」
谷口「そうっすか? それは……よかったっす」
朝比奈「じゃあもう時間も遅いし、そろそろかえろっか?」
谷口「そ、そうっすね」
谷口(なんか朝比奈さん、感じ変わったな)
187 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:08:31.74 ID:NxFbS8JM0
長門「ということで、長門の恋のアドバイスコーナー」
谷口「いえー、ぱちぱちぱちぱち」
長門「女子高生の登下校の夢といったらなんでしょう」
谷口「え? あー、わっかんね」
長門「適当でもいいから要回答」
谷口「えーと、じゃー校門にリムジンで迎えに来てくれるどこぞの御曹司と一緒に帰ること? とか?」
長門「惜しい」
谷口「惜しいのかよ」
長門「すこぶる惜しい。ニュアンス的には正解」
谷口「褒めるねぇ」
長門「頭の良い生徒は嫌いじゃない。涼宮ハルヒにくっついてる彼ときたら、わざとフラグ折ってる疑惑があるぐらい、見ていて腹が立つ」
谷口「?」
189 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:11:18.45 ID:NxFbS8JM0
長門「とにかく、そういうことだから」
谷口「そういうこと? 自転車で登校してこいってか? あの坂道を? 上り続ける?」
長門「心肺機能のトレーニングにもってこい。それに登校時間の短縮。加えて後ろに彼女を乗せて帰ってこれる。お得ってベルじゃない」
谷口「いやいやいやいや。トレーニングってこの夏に汗かき放題で教室にin、しかも登りだから大して時間短縮にもならず、加えて後ろにのってくれる彼女もいねーよ! 虐殺じゃねーか!」
長門「シモ・ヘイヘもトレーニングが狙撃のすべてだと言っていた。貴方もトレーニングこそ心肺機能のすべてだと知るべき」
谷口「趣旨かわってんじゃねーか、そーじゃねーそーじゃねーんだよ! そこはわかっとけ!」
長門「わかった。とりあえず、乗ってみるべき」
谷口「何を言っても無駄か……」
長門「暇を持て余した宇宙人の遊び。そう思って付き合うべき」
谷口「あいあい、わかったよ、ったく」
193 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:14:53.52 ID:NxFbS8JM0
キョン「つまり機関がらみの話ではないってことだな?」
古泉「そうです。ただし……宇宙人がらみの話ですが」
キョン「!? 長門が何かかかわってるのか?」
古泉「はい。一体どういう思惑かは知りませんが……。彼女は機関や涼宮さんが朝比奈さんと……谷口さんに近づいてほしくない、と思っている」
キョン「何?」
古泉「つまりです、二人の関係を涼宮さんの持つ神の力と係わらせたくない、そう考えている訳です」
キョン「なぜだ?」
古泉「期末テスト前のことになります。長門さんからぼくに、ひとつの打診がありました」
キョン「お前ら、二人で話すことあるのか?」
古泉「……いえ。思い返せば、会話らしい会話をしたのはその時が初めてだったかもしれません」
キョン「そうか。つづけてくれ」
196 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:17:13.99 ID:NxFbS8JM0
古泉「とにかく、何か心あたりはありませんか? 時期的に彼ら二人と関わりがあることは間違いないんです」
キョン「心あたり、と言われても困るぞ。そもそも、情報爆発ってどーゆうときに起こるんだ?」
古泉「例えば涼宮さんに神の力が備わった瞬間、またそれを行使した瞬間などですね。流石にそれ程大きな出来事ではなかったようですが」
キョン「ううん……なんかあったかな……」
古泉「この現代にはありえないようなオーパーツの発現等もそれに当たるでしょう」
キョン「んんー」
古泉「ねぇ、お願いしますよ。僕には貴方しか頼りになる人がいないんです」
キョン「んなこと言われても……っとそーいやひとつ、おかしなことがあったな」
古泉「!! なんですか、それは!?」
キョン「谷口が、時を跳ぶことができるか? と聞いてきたことがある」
201 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:45:09.22 ID:NxFbS8JM0
保守ありがとうございました!再開します!
古泉「……谷口さんが……そんなことを……」
キョン「ちょうどテスト前ぐらいのことだったとおもうがな」
古泉「……いえ、なるほど、色々なことがそれなら納得できます」
キョン「ほう?」
古泉「まず、谷口さんの野球大会での挙動不審。打席に立った時、何もないのに突然疲れていたのは、おそらく時間を巻き戻して何度もボールを見たからでしょう」
キョン「細かいところ見ていたんだな」
古泉「ヒットを打てたこと自体が驚きでしたから、印象に残っているんです」
キョン「まあ、確かに。まぐれで打てる球じゃなかったしな」
古泉「そして、決定的な物が二つ。彼がSOS団に入ったこと、そして……」
古泉「あそこで自転車に2ケツで朝比奈さんと帰ろうとしていることです!!」
204 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:48:46.87 ID:NxFbS8JM0
───そうして、何日か過ぎた・・・・・・
キコキコキコキコ
朝比奈「もっと速くー!」
谷口「もう、これ、限界、っぽ」
タッ
朝比奈「そんなことない! ほら、立ち止まっちゃだめ! 時は待ってくれないんだから」
谷口「いやいや、俺の筋肉議決でもう限界だって結論出ましたから!」
朝比奈「なにそれw 議決で結論とかw 意味軽く重複してるよw」
谷口「ええい、嫌らしいつっこみをっ」
208 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:51:08.80 ID:NxFbS8JM0
キョン「うん? いいんじゃないか、涼しそうだしな。それもなんかの不思議探索か?」
ハルヒ「夏を夏らしく過ごすためにプールはかかせないって思っただけよ」
キョン「ふぅーん。なんか、珍しいな。目的もなく遊ぶなんてお前らしくもない気がするよ」
ハルヒ「別に遊びにいつも意味を求めてる訳じゃないわよ。そういうつまらない考え方してると、楽しい物も楽しくなくなっちゃうもの」
キョン「……そうだな。楽しけりゃ、それだけでいいこともあるからな」
ハルヒ「じゃあ、市営プール行く時は自転車で来なさいよ?」
キョン「は? 自転車と市営プール行くのに何の関係があるんだ?」
ハルヒ「あたしが後ろに乗せてもらうために決まってるでしょ!」
キョン「いや、決まってない。決まってないぞ。なんでそんなことしなきゃならんのだ」
ハルヒ「だって、その方が面白いじゃない!」
キョン「……やれやれ。ま、プールの前に汗をかくのも悪くないかもな。そう思うことにしよう」
ハルヒ「ちゃんと後ろ乗りやすいようにしときなさいよ! 坂道だって絶対下りて歩いたりしないんだからね!」
キョン「へいへい、せいぜい坂道のないルートを探しとくことにするさ」
キーンコーンカーンコーン...
213 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:54:03.14 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「あーっ! お茶っ葉切らしてました!」
ハルヒ「えー? さっきどじっこから成長したって言ったけど、まだ卒業できてる訳じゃなさそーねー」
朝比奈「ご、ごめんなさい」
ハルヒ「ま、いーわ。今日はまだ少し早いし、みんなで駅前の喫茶店でも行かない?」
古泉「いいですねぇ、僕も今日は時間があるんです」
朝比奈「丁度お茶っ葉も買わないといけないですし、行きます」
ハルヒ「良い返事ね! 有希は?」
長門「コクリ」
ハルヒ「よし! じゃあさっさと準備して、行きましょう!」
216 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:57:33.58 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「むー。みくるちゃんはどーなのよ? あんたやつの後ろに乗って下り坂をサーっと行きたくなんかないわよね?」
朝比奈「涼しそうだし、楽しそう、かな」
ハルヒ「……」
谷口「よっしゃ、じゃあぱぱっと行ってきちゃいましょう!」
朝比奈「じゃあ遠慮なくー」
ハルヒ「……」
古泉「では、またいつもの喫茶店で」
谷口「あいよ。しっかりつかまっててくださいよー!」
朝比奈「言われなくてもそうします。谷口さんの運転、さながらレールのないトロッコみたいな感じですから」
キョン「面白そうなアトラクションですね」
朝比奈「ふふ。じゃあ、行ってきますね」
タッ キコキコキコキコ...
219 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:00:25.00 ID:NxFbS8JM0
古泉「それでも、さびしいものですね」
キョン「お前もか?」
古泉「もちろんですよ。ふふ、いずれ貴方にも彼女ができたら、もっとさびしい思いをすることになるんでしょうね」
キョン「気持ち悪いこと言うな」
古泉「おかしな意味などありませんよ」
キョン「……俺に、彼女、ね」
古泉「変わっていくことを批判する立場に立とうなどと思ってはいないのですが……。ただ……」
キョン「ただ?」
古泉「……ずっと今のように楽しければいいのにと、僕はそう願わずにはいられないんです」
キョン「……」
古泉「僕も中学の時は朝比奈さんと同じような立場でした。自由も効かず、自分が何をしているかもわからない。身動きのとれない観測者とはつまらないものです」
キョン「……」
古泉「ですが今は……なんやかんやあって楽しいですからね。SOS団には本当に感謝しているんですよ」
224 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:05:04.83 ID:NxFbS8JM0
キコキコキコ...
谷口「お茶っ葉売ってるお店ってあんな住宅地の中にあるんすね、初めて知りましたよ」
朝比奈「デパートとかにも入ってるんだけど、あのお店の方が種類が豊富だから、あそこで買うようにしてるの」
谷口「へぇー。っていうか、あの店おれの家の近くっすよ」
朝比奈「そーなの? あそこらへんに住んでるんだ。うらやましいなぁ」
谷口「お茶っ葉屋が近くにあるだけじゃないっすか」
朝比奈「あはは」
谷口「そんなにお茶好きですか?」
朝比奈「はじめは嫌だったけどねー、なんだか召使いみたいで」
谷口「あ、やっぱ思ってたんすか」
朝比奈「だってそれまではコーヒーも紅茶もお茶も何も飲んだことなかったから」
227 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:08:08.09 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「谷口君?」
谷口「それは……」
谷口(でも、本当にこれでいいのか?)
谷口(何か俺は変わったか?)
谷口(周りが変わっただけで、おれは何も変わってないんじゃないか?)
谷口(親父の目が気にならなくなった? それは本当か?)
谷口(ただ、逃げ場所を見つけただけじゃないのか?)
谷口(……俺は……)
朝比奈「じゃあ先に、私の一番楽しい理由を教えてあげるよ」
谷口「え?」
朝比奈「君が……いるから」
231 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:14:52.21 ID:NxFbS8JM0
───朝比奈と谷口、商店街横の川沿いの道
キコキコキコイコ
朝比奈「ねえ、ちょっとここらへんで休んでいかない?」
谷口「……」
朝比奈「ねぇ?」
谷口「……」
朝比奈「あ、ちょっと雨降ってきそうだね。急いだ方がいっか」
谷口「……」
234 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:19:05.97 ID:NxFbS8JM0
谷口「ってのもありますけど、本当は……」
谷口(ダメだ……。こんなおれでも、こんな場面で嘘はつきたくないんだ……)
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「じゃあ私が先にSOS団が楽しい一番の理由を教えてあげるよ」
谷口「!!」
谷口(もうすぐ喫茶店につくのに!!)
朝比奈「君が……」
prrrrrr
237 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:21:37.46 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「それにしてもミクルちゃん、珍しいわよねー、お茶っ葉切らすなんて」
キョン「そうか? そういう少し抜けてる感じ、朝比奈さんらしいと思うが」
ハルヒ「そうかしら? まだメイドが板についてないなんて……これは教育が必要ね」
キョン「やめろ、メイドをおれ好みに教育するなんて、響きがエロすぎるぞ」
ハルヒ「そこまでは言ってないじゃない」
キョン「俺が主でメイドが俺で。うお、マーベラスだ」
ハルヒ「……その組み合わせなら人手がかからなくてよさそうね」
古泉「貴方が主で執事が僕でどうでしょう?」
キョン「断る」
古泉「んふ、でしょうね」
240 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:25:40.63 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「で、有希は犯行を認めるわけ? いいえ、言い直しましょう。有希に判決を言い渡す、有罪!」
キョン「こんなつまらない証人でいいのか?」
ハルヒ「いいわ。どっちにしろもうこの事件は立件の地点で有希の有罪で決まってるのよ」
キョン「なんで?」
ハルヒ「何度も言わせないで! その方が面白いからにきまってるじゃない! 普段無口な有希が窃盗よ? あー、つまらないサスペンスでよく万引きGメンとかやってるけど、実際立ち会ってみると結構面白そうね! Gメンのバイト募集してないかしら?」
古泉「窃盗して捕まった女子高生役のオファーならSOS団に届いてますよ?」
キョン「あってえーな映像じゃないか! そんなの売れなくなったアイドルに回してくれ! こちとらまだまだ現役なんだぞ!」
古泉「売れなくなったアイドルに女子高生役は厳しいと思いますが……」
ハルヒ「ごちゃごちゃうるさい! とにかく、有希はなんでそんなことをしたのか正直に話しなさい! そしたら情状酌量の余地もあるかもしれないわ」
キョン「たった今有罪、って宣告したじゃないか。情状酌量も何もないだろ」
ハルヒ「じゃあ正直に話す刑を言い渡すわ!」
242 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:28:27.98 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「とにかく! 有希はその理由を話しなさい」
長門「……私は」
キョン・古泉・ハルヒ「!!!」
長門「私はただ、朝比奈みくると谷口の仲の手伝いをしたかっただけ」
ハルヒ「え、それ、どういうこと?」
長門「お茶っ葉を抜いておけば皆で喫茶店に来ることになるだろうと予測していた。加えて、その際に谷口が自転車を学校に置いていく訳にも行かず手持無沙汰になるとも想像できた」
古泉「そうすれば谷口君は自転車に乗りたいという気持ちと朝比奈さんと一緒にいたいという願望が相まって、朝比奈さんと谷口さんが二人で自転車に乗りお茶っ葉を買いに行くだろうと考えた訳ですか?」
長門「そう」
ハルヒ「なんで二人で自転車に乗ってほしかったのよ?」
長門「……」
キョン「……」
長門「私は物語に出てくるような恋愛を見てみたかった」
ハルヒ「え……」
長門「ただそれだけ」
246 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:33:36.06 ID:NxFbS8JM0
キョン「なぜ?」
ハルヒ「なんかあたし、いつもSOS団の中でも浮いてるような気がしてたから……。ほら、みんな私が突然団室入ったりするとそわそわしてたじゃない? 実はみんなあたしのこと嫌いで、蔭口とか言ってるのかなぁ、って思ってたから」
キョン(態度にでちまってたか)
ハルヒ「なんか時々聞いたことないような単語が出てくるし……。みんな本音をいつも隠してるような気がしてたのよ」
古泉「そんなことは……」
ハルヒ「でもさっき、初めて有希ときちんとした会話ができたじゃない? それでみんなあの二人を応援してる、ってわかった。それでね、あたしやっとみんなと一緒になれた気がした」
長門「……」
ハルヒ「ようやくみんなで一丸になることができたな、って。野球の時はそーはいかなかったから……」
キョン「……お前もそういうこと考えてたんだな」
ハルヒ「どーゆう人間に見えてたのよ」
キョン「なんっていうか、能天気な奴っていえばいいのかね。人間らしい悩みのない奴だと思ってたさ」
ハルヒ「……あたしにだって悩みぐらいあるわよ。このSOS団だってそう、楽しいけど、みんなが何考えてるのか時々わからなくってイライラしてたわ」
キョン(お前の考えてることの方がよっぽど突拍子もなくて予測不可能だけどな)
252 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:39:03.46 ID:NxFbS8JM0
キョン「体内に充填するツール? なんだそれ、注射器みたいなものか?」
長門「そのようなもの。恐らくそのツールは朝比奈ミクルとは別の未来からやってきた何者かによって運び込まれ、それを谷口は偶然使用することとなった」
古泉「なるほど……。それで、朝比奈さんの能力とは別物なのですよね? その力の内容を教えていただけますか?」
長門「時を巻き戻す力」
キョン「? 朝比奈さんと一緒じゃないのか?」
長門「朝比奈みくるの持つ時を跳ぶ力は、同一の時間軸に二人の同一人物が存在する可能性を生み出す。しかし谷口の時を戻す力は違う。復元ポイントを定め、その地点まで自分ではなく時を巻き戻す」
キョン「随分と派手な力だな、谷口らしくもない」
長門「そう。巻き戻された分はなかったこととなる。ただし、その瞬間に未来は強い反発性によって再構築される」
キョン「?」
長門「未来はほぼ決まっている。人が何人か時を跳んでやり直したところで、それは湖に石を投げ込んで水際を波立たせるのと変わらず、すぐにまた静けさを取り戻す。巻き戻しによって未来もその力に巻き込まれ一瞬姿を消すが、同時にほぼ同じ姿をまた再構築する」
古泉「つまり結果的にはほぼ時を跳ぶことと変わらないことになる、と」
長門「世界にとってはそう。ただ本人にとっては違う。その未来はなかったことになる。本人にとっては大きな出来事」
256 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:43:24.90 ID:NxFbS8JM0
───病院
谷口「……」
タッタッタッタッタ
キョン「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。た、谷口」
谷口「……」
涼宮「えと」
谷口「……」
朝比奈「……」
キョン「お父さんは、大丈夫なのか?」
谷口「……末期の……肺がんだって」
涼宮「!」
谷口「ずっと前からもうわかってたのに……入院してなかったんだってよ」
キョン「それで、今はどこに?」
谷口「病室で寝てる……。もう転移が進みすぎてて手術とかは無理だって」
260 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:46:57.95 ID:NxFbS8JM0
ザーザー
谷口「ウグッ、ヒック」
ザーザー パパパパパタパタパタパタタパタタパ(雨が傘に当たる音)
谷口「え?」
朝比奈「……やっぱりここにいた」
谷口「……」
朝比奈「あらあら、こんなに濡れちゃって。二本持ってきたから、この傘使って?」
谷口「……ありがとうす」
朝比奈「……よいしょ」隣に座る
谷口「……」
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「君に……伝えたいことがあるんです」
261 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:49:59.74 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
朝比奈「……」
谷口「……今は何も聞きたくないっす」
朝比奈「いいえ、今聞いて。もうすぐ私は行かなきゃいけないから」
谷口「え?」
朝比奈「私は決まり事を守ることができませんでした。だからもうこの時間軸にとどまることはできないの」
谷口「一体、何を……」
朝比奈「私はきわめて私的な感情によって、でも強い思いによって、その決まりを破りました」
谷口「何を言ってるんすか、朝比奈さん?」
263 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:52:25.98 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「本当はもっといろいろな話を君としたかったし、いろいろなところに行ってみたかった。けどお話ができるのはこれが最後です」
谷口「いったい何の話をしてるんすか、マジで……」
朝比奈「そんな風に言われても仕方ないですね。でも私のことを信頼してください。……そうとしかいえないんです」
谷口「……そりゃ朝比奈さんのことは信頼してますけど……」
朝比奈「ふふ、よかった。じゃあこれからいう言葉を忘れないでね?」
谷口「……はい」
朝比奈「君のお父さんは君のことを愛していました」
ブイイイイイイイイイン
265 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:56:55.70 ID:NxFbS8JM0
谷口「??」
谷口「朝比奈さん?」キョロキョロ
谷口「あ、朝比奈さん?」
谷口「え?」
谷口「……いなくなってしまった……」
谷口「どーゆうことだ……」
タッタッタッタッタ
キョン「はぁ、はぁ、こんなとこにいたのか……」
谷口「キョン! 朝比奈さんが!」
キョン「? 朝比奈さんに何かあったのか?」
谷口「それが、朝比奈さんの体が光りだしたと思ったらとつぜん姿が見当たらなくなっちまってよ……」
267 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:00:29.27 ID:NxFbS8JM0
───病院、待合室
谷口「……」
ハルヒ「!! あんたどこ行ってたのよ!」
谷口「……」
キョン「すまんな、混乱してるんだ。今はそっとしておいてやってくれ」
ハルヒ「……それはわかるけど。いきなりどこかに行くからみんな心配したのよ?」
谷口「……」
古泉「まぁまぁ、こうしてびしょぬれになっている人を責めるのはやめましょう。一番つらいのは谷口君でしょうから」
ハルヒ「そうよね……。……あれ、そういえばみくるちゃんは? あんたのこと追いかけて出て行ったんだけど」
谷口「……」
270 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:06:19.91 ID:NxFbS8JM0
───家
谷口「……ただいま」
母「おかえり」
谷口「……」
母「なかなか戻ってこないから先に帰ってたわ。どこ行ってたの?」
谷口「……ちょっと、そこらへん周ってた」
母「そう。びしょぬれじゃない。お風呂沸かしてないけど、シャワーだけでも浴びてきたら?」
谷口「……あ、あのよ」
母「何?」
谷口「えと……その……。」
母「……私は前から知っていたの」
谷口「え?」
母「お父さんが病気だっていうこと」
273 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:08:57.04 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
母「親っていうのは自然になれるものじゃないわ。それを子供はぜんっぜん分かってないのよね」
谷口「は? 訳がわかんねーよ」
母「良い親になるために、お父さんは頑張った。私も頑張ってる。それはいやいや頑張ってる訳じゃなくて、自分の意思で頑張ってるの」
谷口「……訳わかんねーよ」
母「それでいいのよ。親がどう、とか貴方は気にする必要がないの。だって貴方は私の子供なんだから。そして、いつか誰かの親になって同じ想いを味わうんだから。ギブアンドテイクってやつよね」
谷口「病気でぶったおれる程の頑張りを甘受しろ、って?」
母「そうね。お父さんはちょっと頑張りすぎたのかも。でも、お父さんは必至で父親であろうとしたのよ」
谷口「……」
母「……ふぅ。今日は疲れちゃった。もう寝るわ。貴方も明日学校あるんだから、早く寝るのよ?」
谷口「……」
母「おやすみ」
谷口「……おやすみ」
275 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:11:30.07 ID:NxFbS8JM0
谷口(……わっかんねぇ……)
谷口(なんでだよ、あんな俺のことを馬鹿にしてくるような親だったのに)
谷口(テストでいい点取ったって、褒めてくれもしない親だったのに)
谷口(……俺のことを嫌いで、おれも嫌い……だったハズの親なのに)
谷口(涙が……)
谷口「うぐ……ひぐ……」
……
279 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:17:05.68 ID:NxFbS8JM0
───理科室、ベランダ
スッ フー
谷口「久々に吸う煙草、プライスレス」
谷口「カラオケの時以来か。つってもそんなに前じゃないな」スッハー
谷口「いろいろあったから随分前のことに感じるぜ……」
谷口「野球大会でて、カラオケの後、SOS団入って……」
谷口「朝比奈さんと2ケツでチャリ乗ったりしてたな」
スッ フー
谷口「ああ、そういやどれもこれもココで時を跳ぶ力を手に入れてからだっけ」
谷口「……お、手首の数字が1になってる。この前3だったのに……」
谷口「あ、これ、力を使える回数なのか」
谷口「……あと、一回か……」
281 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:22:06.16 ID:NxFbS8JM0
───団室
ガチャッ
谷口「お、お、お、おいすー」
ハルヒ「!!! あんた、ちょっとどーゆーことなのよ!!」
谷口「ハ?」
涼宮ハルヒはグーパンチを放った!
谷口「ソオイ! いってぇじゃねえか! 何すんだよいきなりよ!」
ハルヒ「問答無用よ! なんでミクルちゃんが転校することになったか教えなさい!」
谷口「……は? すまん、今なんて?」
ハルヒ「しらばっくれてんじゃないわよ! 最後にミクルちゃんとあったのはアンタなんだからね! 一体あんたミクルちゃんに何したのよ!」
キョン「お、落ち着けハルヒ! 別に谷口のせいで転校することになった訳じゃないぞ、親御さんの都合だそうじゃないか」
ハルヒ「そんなの信じられないわよ! 昨日まであんなにピンピンしてたのに!」
284 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:26:01.33 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
谷口(なんとなく話は読めた)
谷口(涼宮の力で世界崩壊の危機。そのトリガーとなったのは朝比奈さんの消失、か)
谷口(やっぱ昨日光に包まれてたのはそういうことだったのか……)
谷口(もう朝比奈さんに会えないのか?)
谷口(というか、これもしかして俺のせいで世界危機なんじゃねーの?)
谷口(だって朝比奈さんが禁則事項とやらを破ったのも俺が病院を飛び出したから……)
谷口(朝比奈さんは親父に会いに行った、って言ってもんな)
谷口(……世界、終わっちまうのか)
谷口「……」
谷口(あ……そっか、そーすりゃいーんじゃねーか)
谷口「ひとつだけ、世界を救う方法があるぜ」
キョン・古泉「!」
286 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:28:59.71 ID:NxFbS8JM0
古泉「あたりがだんだん暗くなってきました。谷口さん、急いで準備の方をお願いします」
谷口「おうよ。……あのよ」
キョン「なんだ?」
谷口「いや、なんていうか。……色んな想いを裏切っちまってすまん」
キョン「どうしたんだ、突然」
谷口「お前らに言っても仕方がないのかもしれないけどよ……。時を跳んで、いろんな人の必死な想いを、意味ないもんにしちまったと思うんだ」
古泉「それは……」
谷口「それがよ……申し訳なくって……」
289 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:32:05.23 ID:NxFbS8JM0
ハルヒ「なるほどねぇー、ミクルちゃんが未来人でルール破ったから未来に帰ってしまったと。そんで、そのルールを破る前まで谷口が時を巻き戻そうとしてる、って訳ね?」
長門「……そう」
ハルヒ「いやー、久々に見る明晰夢だわ、これ。あたしwktkしてきちゃった!」
キョン「は?」
ハルヒ「なーんかおかしいと思ってたのよねー、朝から。だってミクルちゃんがいなくなる訳ないんだもの!」
古泉「……えっと、ですね……」
ハルヒ「それでこの面白設定! ミクルちゃんが持ってるのはドジッ娘巨乳属性だけで、未来人だなんてある訳ないのに! いいわ、これぐらい楽しい夢の方が明晰夢には最適よ!」
キョン(明晰夢ってなんだ)コソコソ
古泉(夢の中で、自分が夢の中にいることを自覚し、思いのまま動くことができるという現象だと聞いています)コソコソ
キョン(なるほど、つまり今ハルヒは夢の中にいると勘違いしている訳だな? なんでそんなことに……)
古泉(わかりませんよ、実際世界は涼宮さんの願望と同化し始めている。辺りが少し薄暗いのも、“この間”の時と似ているように思いませんか?)
キョン(たしかにな……。とにかく、今はハルヒにあわせるしかないか)
古泉(そうですね。早く谷口君が時を巻き戻してくれることを祈りましょう)
292 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:34:14.80 ID:NxFbS8JM0
谷口「……」
谷口「もう、朝比奈さんとの思い出にも意味がなくなるんだな」
谷口「片方しか抱えてない二人の思い出って、どんな感じなんだろう」
谷口「どうでもいいか」
谷口「引きずったらつらいぜ。さ、深く考えずに……」
谷口「跳ぶとしましょうや……」
ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
テテーテレテレテレテレテレテー
……
TV「カンッケーないから、関係ないからっ」
294 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:36:14.88 ID:NxFbS8JM0
───夜、河川敷
谷口「……」
スーッ フー
谷口「静かだぜ……」
谷口「……こんな時間じゃ、水切りしてる子供もいないわな。そりゃそーだ」
スーッ フー
谷口「……」
谷口「これで良い。やるべきことをやったんだ」
谷口「達成感ぐらいあってもいいもんだと思うがな」
スーッ フー
谷口「……戻ってきたってのに、なぜかやらなきゃいけないことだらけな気がする」
谷口「とりあえず、明日から本気出そう」
谷口「しばらくここでのんびりさせてくれ」
296 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:37:34.46 ID:NxFbS8JM0
───谷口から少し離れた河川敷上の道
???「わざわざこんなところまでお連れして申し訳ありません」
父「別に構わないですよ。……それで、お話があるということでしたね」
???「……はい。貴方の息子さんのことなんです」
父「……あいつのお話ですか。失礼ですが、朝比奈さんは息子とはどのようなご関係で?」
朝比奈「……高校の部活での後輩なんです」
父「なるほど、そうでしたか。一体息子はなんの部活をしているんですか?」
朝比奈「えと……ぶ、文芸部です」
父「あいつにそんな趣味があったんですか……。いや、お恥ずかしいのですが息子のことには疎くて、高校で何をしているか全くわからないんですよ」
朝比奈「そうなんですか……」
父「話の腰を折って申し訳ない。ささ、お話を聞かせて下さい」
朝比奈「……」
父「?」
299 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:40:27.31 ID:NxFbS8JM0
───会話の近くの暗がり
キョン(なるほど、これが朝比奈さんの禁則事項破りの現場か)コソコソ
古泉(……谷口さんの父親がいなくなって、朝比奈さん一人になりましたね)コソコソ
キョン(しかしこれ、巻き戻された世界の出来事だよな? この朝比奈さんはいないハズじゃないのか? これも俺達と同じように長門の力か?)
長門(……そう。谷口の時を巻き戻す力が発現する前に、この事象に関してプロテクトをかけた。私たちも同じ様なもの)
古泉(なるほど……では、彼女はもうすぐ未来に戻って、つまり消えてしまうのですね?)
長門(……)コクリ
ハルヒ(さあて……こっからが団長の腕の見せ所よね。どうやってアイツに私のことを見直させてやろうかしら)
キョン(なんで見直させる必要があるんだ……? 何かあったか?)
ハルヒ(……あれぇ、そーいえばそうね。でもとにかくアイツにガツンと言ってやんなきゃ気がすまないのよ)
キョン(勝手な話だなおい……)
301 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:41:28.48 ID:NxFbS8JM0
父「良い親になろうとするのは、難しいことです。愛するということは、与えるということと同議ではありませんから」
谷口「……」
父「優しくすることは簡単なことです。ですが、叱るということはとても難しい。結果、きっとうまくいかなくなってしまうのでしょう。子に嫌われたい親なんていないんですよ」
谷口「……」
父「それでも私は息子を愛している。それだけはハッキリ言えますよ」
朝比奈「……はい」
谷口(……そんなこと、親父は俺に一度だって言ったことなかったじゃねーか!)
303 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:43:24.62 ID:NxFbS8JM0
父「朝比奈さん。貴方からは非常に大切なことを教わりました」
朝比奈「え?」
父「いつになるかわかりませんが……いつか私も息子と腹を割って話がしたいと思います」
朝比奈「……ありがとうございます」
父「貴方はとても立派な人だ。貴方のような先輩を持てて息子は幸せ者です。これからもぜひ仲良くしてやってください」
朝比奈「こちらこそ、谷口君のような後輩を持てて……嬉しいです」
父「さあ、もう遅い。貴方はどちらにお住いですか? 車で送りましょう」
朝比奈「えっと、すぐ近くなんで大丈夫です」
父「そうですか。息子に送らせたいところなんですが、あいにく留守にしていました」
朝比奈「いえいえ……これで大丈夫です」
305 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:44:28.50 ID:NxFbS8JM0
谷口「な、どうしてお前がこんなとこにいるんだよ……!?」
ハルヒ「どーでもいいでしょそんなこと」
谷口「でも……俺に何の用だよ?」
ハルヒ「何の用? あんた副団員の癖に、SOS団のこと何にも分かっちゃいないのね」
谷口「副団員? それは跳ぶ前の話じゃ……」
ハルヒ「はぁ。ホント分かってないわ! 有希、言ってやって頂戴!」
長門「……」
谷口「長門……?」
長門「貴方には感謝している」
谷口「え?」
307 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:47:19.97 ID:NxFbS8JM0
キョン「……な」
古泉「……長門さんが……」
長門「過去、貴方ほど涼宮ハルヒに盾突いた男は一人を除いていない」
キョン「……む」
ハルヒ「そういえばそうね。谷口! 誇っていいわよ!」
谷口「そ、そんなもん」
長門「貴方には十分、想いを伝える強さがある」
谷口「強さ……」
長門「貴方のことを信じた私を……朝比奈ミクルのことを信じてほしい」
谷口「俺を信じた……?」
───朝比奈:君のことを私は信頼してるから! それを……忘れないでね
───朝比奈:さよなら。楽しかった
309 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:48:15.55 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「今日はお時間をありがとうございました」
父「こちらこそ。それでは……」
谷口「待て!!!!」
朝比奈「た、谷口君!?」
父「お前……どうしてここに……」
谷口「……」
谷口「ごめんなさい」
311 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:49:52.63 ID:NxFbS8JM0
父「……」
谷口「だけど……だけど、これからいう言葉だけは……嘘じゃないです……」
父「……」
谷口「親父……これまでありがとう。頼むから……すぐに入院してくれ」
父「なぜそれを……」
谷口「俺、これから頑張るから。絶対頑張るから。今度は嘘じゃない、約束する。今、この瞬間から頑張るから」
父「……」
谷口「親父、頼むから入院してくれ。俺も、いつか親父と酒が飲みたいんだ」
父「お前……」
谷口「……頼む」
父「……そうか。わかった。そうすることにする」
谷口「親父!」
父「……先に帰る。遅くならずにお前も帰れよ?」
谷口「ああ」
314 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:52:15.57 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「良かった、肩の荷が降りたよ」
谷口(謝らないっ!)
谷口(謝っちゃだめだ!)
谷口(だってまだ終わっちゃいないんだ!)
谷口(前へ! 進め俺!)
谷口「朝比奈さん!」
朝比奈「はい」
谷口「明日! 明日食堂に来て下さい!!」
316 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:53:29.81 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「え?」
谷口「明日! 食堂に来て下さい!」
朝比奈「……」
谷口「ずっと待ってます! ずっと待ってますから! ずっと!」
朝比奈「……」
谷口「席取って、ずっと待ってます! どうしても貴方に伝えたい言葉があるんです!」
朝比奈「……でも」
谷口「絶対来て下さい、ずっと待ってますから!」
朝比奈「……」
谷口「……」
朝比奈「……はい」
谷口「……ありがとうございます」
318 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:54:42.39 ID:NxFbS8JM0
朝比奈「それじゃあ、また……」
谷口「また、明日」
朝比奈「……はい」
タッタッタッタッタ
キョン「谷口、行っちまったな」
古泉「あれでよかったんでしょうか」
キョン「さあ……」
長門「……」
320 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:55:49.17 ID:NxFbS8JM0
長門「もう時間」
ハルヒ「話はすんだわ。離陸準備、緑一色てなもんよ!」
古泉「……いよいよ、消える訳ですね」
キョン「どうした、さっきの元気はどうした?」
古泉「空元気アピールですよ。そうでなきゃあんないらないレス二つも使いません」
ハルヒ「何よ? 古泉君乗り物酔いするタイプ? 修学旅行で吐かないようにね、変なあだ名つけられたらSOS団の名に傷つくから」
古泉「十分に留意しておきますよ」
キョン「それで、本当に一体どうしたんだ?」
古泉「……自分がこれから消える訳ですよね」
キョン「ああ、そうだな」
古泉「そういうシステムであるということを知ってしまった以上、時が巻き戻されるのに身を任せるのは少々怖いではありませんか」
323 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:56:44.60 ID:NxFbS8JM0
───翌日 昼休み 食堂
谷口「よし、ちゃんと席取れてるよな」
谷口「一応三人分取っておいたけど、思えばキョン達を呼ぶ訳にもいかんな」
谷口「あとは……」
谷口「来てくれるだろうか……」
谷口「あ、あれは」
谷口「おーい、紺野せんぱーい!」
紺野「へ、あたし?」
325 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:58:17.88 ID:NxFbS8JM0
紺野「だから謝ってるじゃん! ほ、ほら、チケットあるからさ、今日いこうよ!」
千昭「えー? きょおー? どーすっかなぁ-」
功介「んじゃあ、おれと二人でいくか、マコト!」
紺野「功介! じゃあそうしよっかぁ? 千昭はいきたくないみたいだし……?」
千昭「別に行かねぇなんていってねーだろ! しーかーたーねーなぁ、お前らがそーんなに言うなんだったら、付き合ってやるよ」
功介「来たくなかったら、来なくたっていいんだぜ?」
千昭「んだと? お前こそ図書館で勉強してた方がたのしいんじゃねーの?」
紺野「まぁまぁ、とにかくさ! あたしお腹減ったし、食券買いに行こうよ!」
谷口(……。その時になれば、あいつらも走り出すだろうし。きっと心配いらないよな。そーゆーもんだもんな、こーゆーのって)
谷口(ってかついつい席譲っちまった。まぁーいーか。立って待つか)
327 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:59:10.59 ID:NxFbS8JM0
キーンコーンカーンコーン
谷口「……」
学食のおばさん「ちょっと君、もう授業始まってるけど、いいのかい?」
谷口「……はい」
学食のおばさん「そーかい……。ここ3時までだから、それまでには教室戻りなよ」
谷口「ありがとうございます」
328 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:01:37.59 ID:NxFbS8JM0
キーンコーンカーンコーン
ガチャッ
学食のおばさん「な、なんでまだこんなとこにいるんだい!? 学食しまってからずっとそこにいたのかい?」
谷口「はい」
学食のおばさん「もう5時回ってるよ? 一体何を待っているんだい? いつ約束したんだい?」
谷口「……昨日、ここで待っていると約束しました」
学食のおばさん「昨日約束して、忘れられてるのかい。ずいぶん薄情な人だね」
谷口「……信じてますから」
学食のおばさん「そうかい。それじゃあ私は帰るけど、遅くなりすぎる前に帰るんだよ??」
谷口「……はい」
329 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:02:39.48 ID:NxFbS8JM0
谷口「……7時か……」
谷口「もう見回りが来て、帰らされちまうな……」
谷口「……だめかな」
谷口「いや、信じるさ」
谷口「彼女は来る。だって約束したんだから……」
───タッタッタッタ
谷口「……!」
バチーーーン!
谷口「あいたーーー!! 突然何するんすか、朝比奈さん!」
朝比奈「馬鹿! へたれ! ……好き?」
谷口「……好きです!!! 大好きです!!」
完
332 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:06:39.44 ID:NxFbS8JM0
最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
ラストとか納得できなかったらごめんなさい><
何か質問などあればいくらでも受けるので、どうぞー
330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 22:05:43.41 ID:5Dvmlf/c0
乙
面白かった
後日談とかある?
333 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:08:09.51 ID:NxFbS8JM0
>>330
ないです。この後はおそらく、同じ関係を作り上げていくのだと思います、
335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 22:14:56.81 ID:aA9yzvUqO
>>1乙
前に谷口×みくるSSをみたんだが、あっちは結ばれなかった。
谷口ってみくるとくっつきやすいのか?
337 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:20:06.30 ID:NxFbS8JM0
>>335
くっつきやすいかって言うとどうなんでしょう。
お互い成長する余地がたくさんありますし、立ち位置的に書きやすかったのは確かです。
<<妹「お姉ちゃん?何をなさってるんですか?」 | ホーム | 黒子「ひなまつり弁当360円ですの?」>>
コメント
No title
なんか展開が飛び飛びで、台詞が抜けてる気がするんだが
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