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唯「うい~、お弁当の作り方教えて?」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:22:07.05 ID:6edRAvZE0
ひらさわけ!

憂「え? べ、別にいいけど……急にどうしたの、お姉ちゃん」
唯「えへへ~。実は明日、みんなにお弁当作ってあげるって約束しちゃって~」
憂「みんなって、軽音部の?」
唯「うん」
憂「(ということは、少なくとも5人分……最悪、飲み物は紅茶を用意してもらうとしても、かなり厳しい……!)」
唯「どうしたの、うい~?」

 とは言ったものの、今日は残り物を片付けちゃおうと思ってたから、あんまり買い物していないのです。
 ……でも、お姉ちゃんに恥をかかせるわけにはいきません。

憂「うん、わかった! ビシビシやるからね、お姉ちゃん!」
唯「らじゃーであります、憂教官!」
憂「……教官?」
唯「あれ? 中尉とか将軍の方がよかった?」
憂「う、ううん。でも、いつも通り『憂』って呼んでくれた方がいいかな……って」
唯「うん! じゃあ憂、よろしくね!」
憂「うん、お姉ちゃん!」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:23:15.23 ID:6edRAvZE0
 とは言ったものの、手元にある食材は私達のお弁当の分しかない上に、残り物ばかりです。
 仮にお米の量を増やしてカサ増ししても、おかずを5人分まで膨らませることは不可能。
 しかもひとり、普段の食事が桁違いに高級すぎて、舌が肥えすぎていそうな人もいるし……。

憂「(うーん……これは、ちょっと遠いけど遅くまでやってるスーパーに行くしか……)」
唯「うい? どーしたの?」
憂「う、ううん! 何でもないよ!」
憂「あ……そっ、そーだ! ちょっと調味料が切れてるから、お買い物に行ってくるね!」
唯「ふぇ? こんな遅くに?」
憂「こ、コンビニ! コンビニだから、心配ないから!」
唯「そお~?」
憂「うん。だから、お姉ちゃんはお風呂とか済ませておいてね!」
唯「そっか……憂がそう言うんなら待ってるよ~」
憂「(ほっ……)」

 深夜営業のスーパーまでは、自転車で片道全力15分。
 お姉ちゃんのお風呂タイムは、平均40分。
 なぁんだ、食材選びに10分も取れるじゃない!

憂「それじゃ行ってくるね。長風呂と湯冷めには気を付けてね!」

唯「憂こそ、暗い夜道は気を付けてね! 月夜の晩ばかりじゃないんだよ!」

憂「それ、見送りの時に言うセリフじゃない……」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:24:14.57 ID:6edRAvZE0
スーパー!

憂「(こんな時間の割には、新鮮な食材が揃ってる……5割高だけど)」
憂「(でも、お姉ちゃんに恥をかかせない為には、このくらい我慢しなきゃ!)」

チーン。

憂「(とほほ……結局、うちの一週間分の食費と同じくらい買っちゃった……)」
憂「(……でもでも! これだけ買えば充分に5人分プラス私のお弁当が作れる!)」

 でもでもでも、明日の夕食からは緊縮財政で、もやしさんにエースになってもらわないと……。
 もやし炒め……もやし味噌汁……もやしの刺身……もやし親子丼……。
 うん、お姉ちゃんの食欲の為に頑張る!

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:27:33.55 ID:6edRAvZE0
 憂とはお別れしませんっていうか修羅場ありません

ひらさわけ!

憂「お姉ちゃん、一夜漬けだから本当にビシビシいくよ!?」
唯「はい、うい教官!」
憂「じゃあ、包丁の握り方から教えるねっ♪」
唯「イエスマム!」

 薄っすらわかっていたとはいえ、この時の私は、湯上りほっこりなお姉ちゃんの半裸パジャマ姿に目を奪われて、まともな判断が出来なくなっていたのでした……。

……………………。
…………。
……。

憂「はあ、はあ……じゃあ、こっちのウィンナーに切れ目を入れて……3ミリの深さで、幅は8ミリ」
唯「うん、まーかせて! 何だかコツが掴めてきたよ!」

 料理の基礎を教えるだけの為に、買ってきた食材の半分が犠牲になってしまいました。
 我が家で食べる分には大丈夫ですが、とても人様の前に出せる状態ではありません。

唯「ほっ! とっ! てりゃー!」

 お姉ちゃんは、かけ声だけは元気ですが……野菜のみじん切りが出来ません。
 大根のかつら剥きは出来たのに、どうしてなのかな……。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:30:08.08 ID:6edRAvZE0
唯「あ! いい感じに出来た! どうかな憂、これ! これ!」
憂「う……うん、なかなか上手、だと、思う……よ?」

 タコさんウィンナーの予定が、縦横にほぼ両断されています。
 包丁で切るのは、足と顔のとこだけでいいのになぁ。

唯「よーし! この調子でどんどん作っちゃうよ!」
憂「(私が手伝ったらお姉ちゃん怒るし……でも……)」

 メインのおかずがミニハンバーグだなんて、お姉ちゃんには絶対無理だと思います。
 だって、タマネギが……みじん切りも出来ないのに……。

唯「憂! タマネギってどうやってみじん切りにするの!? っていうかみじん切りって!?」
憂「ええと、その……フードプロセッサーあるから、それで作っちゃおう?」
唯「駄目だよそんな! 手作りじゃなくなっちゃうじゃん!」

 私の姉は、料理に興味の欠片すらないくせに、どうしてフードプロセッサーが何なのか知っているんでしょう。

憂「えと、えっと……つまり、お野菜をすっごく細かく切り刻むのがみじん切りなんだけど……」
唯「うんうん」
憂「タマネギはきっと目に染みて涙が出ちゃうから、お姉ちゃんがやると怪我すると思う……」
唯「大丈夫だよ!」

 ろくに料理したことないのに、その自信はどこからくるのかなあ。

唯「今まで、憂の美味しいハンバーグを一杯食べてきたから、きっと大丈夫だよ!」
憂「お、お姉ちゃん……」

 お恥ずかしながら、お姉ちゃんの言葉に私は赤面してしまって、その後の行動を止めることが出来なかったのです。
 軽音部の皆さん、梓……ごめんなさい。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:31:27.00 ID:6edRAvZE0
がっこうのひるやすみ!

 どーん!

唯「さあ召し上がれ!」
紬「わあ~! これが唯さんの手作り弁当なんですね!」
澪「見た目は思いの外まともだな……」
律「憂ちゃんに手伝ってもらったんじゃねーの?」
唯「しっけーな! 憂にはやり方を教えてもらっただけだよ!」
梓「(どうして私までここにいるのかな……唯先輩の手作りのお弁当を食べられるのは嬉しいんだけど)」
唯「さあ! さあ! さあさあさあ!」
梓「じゃ、じゃあ、いただきます……」
梓「(とりあえずメインであろうハンバーグ、腕前がどうであれ、他はサラダとかだしこれをしのぎきれば他はどうとでもなりそう!)」

 はむ。

梓「お……美味しい!?」
梓「(お弁当だから冷めてるのは仕方ないとして、それでも溢れ出る肉汁と……きっちり刻まれたタマネギのほのかに甘い食感!?)」
梓「(この前、憂におすそ分けしてもらったハンバーグと……いえ、それより上の味です!?)」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:32:50.26 ID:6edRAvZE0
澪「あ、美味しい」
律「……何か逆の意味で期待外れな美味さだな、これは」
唯「ふっふーん、どうだねチミタチィ? 改めて断っておくけど、憂には本当に作り方しか教えてもらってないんだからねぇ?」
唯「何なら憂に確かめてもいいよ? 憂ったら、記念だとか何とか言って、デジカムで撮ってて緊張したけど……私が作った証拠になるもんね!」

 フンス。

梓「……私、唯先輩を見直しました。てっきりほわほわでぽけぽけで、いくら食べても太らなくて、ギター弾くしか能がないのかと」
律「全くだ……ま、うちにくりゃもっと美味いハンバーグ食わせてやるけどな!」
澪「…………」
律「澪?」
澪「(う、嘘だ……唯が、私より料理上手だなんて……時々練習してるのに……)」
唯「澪ちゃん? 美味しくなかった?」
澪「い、いや……すごく美味いよ。唯って料理も得意だったんだ?」
唯「ううん、昨日まで包丁なんて握ったこともなかったよー」
律澪梓「えー!?」
唯「憂が教えてくれる通りにやってたら、こんなん出来ましたー!」
律澪梓「(これは偶然……それとも料理方面でも天賦の才が……?)」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:34:00.69 ID:6edRAvZE0
唯「あ、だけどみじん切りだけは上手く出来なくってさー」
梓「えっ? でも、タマネギ……すごく素敵な歯触りな大きさにカットされてて……」
唯「タマネギだけはギー太に協力してもらいました!」
律澪梓「……ええええー!?」
唯「ギー太の弦をね、こう……」
梓「ゆ、唯先輩っ! ギー太の手入れは!? 弦とかネックにタマネギの汁が染み込んでツーンとしてるんじゃ!」
唯「大丈夫だよー。憂と一緒に綺麗に拭いたから」
梓「拭けば済む問題じゃないですっ!」
澪「そ、そうか……弦の幅、確かに丁度いいな……」
律「おい澪!? 妙な考え起こすんじゃないぞ!? それは絶対に駄目だからな!?」

紬「というか、皆さん……」
律「んお?」
紬「何気にギー太の弦、つまり……唯さんの血と汗と涙と手垢の結晶を、『美味しい』って食べちゃったんですね♪」
梓「はっ!?」
梓「(い、いや、言われて見ればそうだけど……本当に美味しかったし……それに、唯先輩の……た、体液とか……私の身体の中に……消化吸収……)」
梓「はぁはぁ……ど、道理で美味しいわけです……」
律「おい、普通にキモい言い方すんなよ。いくら唯だって、ちゃんと拭くなりしてから使ったに決まってるじゃん」
澪「そうか、ハンバーグは手ごね……汗と手垢が味の決め手なのかっ!」
律「はいそこ、勘違いしなーい」
紬「私はもっと他の体液も味わってみたいけどね♪」
唯「ふふーん、うまかろーうまかろー」
梓「はい! ものっそ美味しいです! ご迷惑でなければ今日にでも唯先輩の家で餃子とかパンとかうどんとかお蕎麦とか、そういう方面の唯先輩の手料理をご馳走になりたいですっ!」
唯「やだなー、あずにゃん。冗談でも誉めすぎだよ~」
梓「(でっかい本気ですが)」
唯「でも嬉しい! おいで、あずにゃん! 抱き締め合いながら美味しさを分かち合おうよ!」
梓「はいっ!」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:37:32.24 ID:6edRAvZE0
 コンコンコン。

憂「あの~……」
律「お? 憂ちゃん、どうしたの」
憂「え、えっと、実は……盛り上がってるようで悪いんですが……」
唯「うふ~ん、あずにゃ~ん……♪」
梓「唯先輩……!」
律「……ああ、あっちは気にしないでくれ」
憂「気にしたら負けだと思いました」
憂「実は、皆さんのお弁当のハンバーグなんですけど……お姉ちゃんじゃなくて、私が作りました……!」
律「うん、何となくわかってた」
澪紬「えっ」
憂「えっ」
律「だって、唯だろ~? いくら先生がよくても、一夜漬けでこんな美味い弁当が作れるようになるハズないって!」
紬「そ、そんな……知らない方が幸せな事実を突き付けられるなんて……」
澪「そっ……そうだよな、料理の一夜漬けなんて……試験じゃないんだし、こんな美味いハンバーグ……もぐもぐ」
憂「すみませんでしたっ! お姉ちゃんの料理を期待してた皆さんを騙しちゃって……あれ?」
律「いやいや、いいんだよ。安心したっていうか……あ? あれ、って何?」
憂「いえ、梓の分のお弁当……あの不恰好な成形……全部ハネたハズの、お姉ちゃんのハンバーグのタネ……」

律「……実は、唯には料理の才能もあって、本当に美味かったってオチか?」
憂「い、いえ、焼いたけど味見してないので……ギー太で切ったタマネギなんて皆さんに食べさせられませんから、全部私のお弁当に入れたつもりだったんですけど……」
紬「(憂ちゃんは食べる気満々だったんですね)」
澪「いや私は弦楽器の新たな可能性を模索するべきかなと」
律「今は黙っとけ、むしろ忘れろ」
澪「はうっ」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:39:34.04 ID:6edRAvZE0
梓「唯先輩~」
唯「あずにゃ~ん♪ あずにゃんの方から甘えてきてくれるなんて、まるで夢のようだよぉ~♪」
梓「(うぁ……い、嫌なハズなのに……何だか、幸せ……)」
梓「ゴロゴロゴロ」
唯「んふ~、あずにゃんにゃ~ん♪」
梓「(唯先輩……とってもあったかくて柔らかい……ううん、ふわふわしてる……)」
梓「ゴロゴロ……」
紬「ああ……美少女同士が周囲の目も気にせず戯れる姿……堪りませんわぁ」
憂「堪ってください、お願いですから」

 もしかしたら、お姉ちゃんの作ったハンバーグは本当に美味しかったのもかもしれない。
 だとしたら……私が作ったのと入れ替えたのは、お姉ちゃんを信じてなかったっていうこと?
 妹の……私が……たったひとりの、素敵な、大切な、大好きな、お姉ちゃんを……信じられなかった……?

憂「(お、ねえ、ちゃん……)」

 ぐすん。

律「お、おい、憂? 急にどうしたんだ?」
憂「いえ……何でもありません」
澪「や、やっぱり手垢が味の決め手なのか!?」
律「お前は空気読めよ!」
憂「わ、私、帰ります!」
律「おい!? まだ昼休みだぞ!?」
憂「いえ! 私もお姉ちゃんにぎゅーってしてもらえるように、もっと美味しいご飯を作れるように精進します!」

 そう。
 お姉ちゃんは、いつも私のご飯を『美味しい』って言って食べてくれる。
 けど、あんな風に、ゴロゴロ言うまで抱き締めてくれることなんてなかった。
 ちょっと我慢したことはあるけど……本当に美味しいご飯を作ったら、我慢する暇もなく思わずゴロゴロ言うくらいお姉ちゃんが抱き締めてくれるんだ!


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:41:01.29 ID:6edRAvZE0
憂「それじゃあ皆さん! ごきげんよう!」
律「あ、ああ……ごきげんよう……?」
澪「……て、手垢じゃなかったのか……?」
律「料理はちゃんと手を洗ってから作るもんだぞ、澪」
澪「あ……」

 きちんとした材料、手順、技術。
 ……どれも料理にとっては大切だけど、もっと大切なものがある。
 私は今日、新しいことをを学んだ。
 あのメロメロになった梓ちゃんが証拠だ。

憂「(味そのものは予想通りだったけど……お互いの気持ちで、感じ方が全然違うんだね……)」

 上手に作ればいいわけじゃない。
 今まで、お姉ちゃんの舌に合わせていたつもりだったけど、それだけじゃ駄目なんだよね。

憂「お姉ちゃん……今日、私は、多分初めて本気の本気でお姉ちゃんの為にお料理するよ……!」

 リビングでおなかを空かせて待っているお姉ちゃんには、聞こえないように呟く。
 そう、私は今から……ただの『美味しい』では済まない料理を作る、つもり。
 お姉ちゃんが、お昼みたいに……梓にしたみたいに、だきだきごろごろふにふにしてくれたなら、私の考えは正しい。

 いや、それはまた別の話だけど。
 ……でも、だけど、そうでなければ、あんな風にしてくれるまで味と心を重ねるまで!

唯「うい~、お腹空いたよほほ~」
憂「はいはい、少しだけ待っててね」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 02:41:50.62 ID:6edRAvZE0
 『空腹は最高の調味料』だと、人はいう。
 けれども……本当の最高の調味料は、別にある。

唯「う~い~!」
憂「もうすぐだよ!」
憂「(私が作る……ううん。誰でもない、私だけがお姉ちゃんのお腹を満足させてあげられるんだ!)」

 料理自体を、お姉ちゃんの好みの味で完璧に仕上げるのは当然。
 お姉ちゃんが空腹を我慢しきれなくなる寸前に料理を出すのも当然。
 違うのは、今までそうしていたつもりだったけど、そうでなかったことだけ。
 そう。私は、お姉ちゃんの為に……お姉ちゃんの為だけに、お姉ちゃんのことだけを想って……!

憂「……いざ!」

~終わり~

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:51:34.83 ID:6edRAvZE0
ひらさわけ!

唯「憂! またハンバーグ作ろうよ!」
憂「えっ?」
唯「またみんなにお弁当作ってく約束しちゃったんだよ!」
憂「えー……」
唯「そんな残念そうな顔しないでよ! 作っていかないと、軽音部のみんなも私もお腹ペコペコでばたんきゅ~だよ!?」

 他の人はどうでもいい……とまでは言わないけど、お姉ちゃんが腹ペコなのはやだな……。
 お昼のお弁当はやっぱり楽しみだろうし、お姉ちゃんが予告したからにはみんなも今日以上に期待していそうだし。

唯「んーとね、何かね、こう……ハンバーグのコツを掴んだ気がするんだよ! それにね、空気抜くのにぺしぺしってやるじゃん!」
唯「あれ、憂とキャッチボールしながらやれば、姉妹のスキンシップも取れていっせきにちょー!」
憂「もし落としたら、その瞬間にハンバーグ1個アウトだよ、お姉ちゃん」
唯「あ」
憂「(だきだきならともかく、生ひき肉でスキンシップはやだよ……)」
唯「まだひき肉余ってたよね? モーモーとブーブーの合い挽き~♪」
憂「止めてお姉ちゃん」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:53:19.56 ID:6edRAvZE0
唯「うい?」
憂「え、えーとね……続けてハンバーグじゃ飽きるんじゃないかな? お姉ちゃんだって、同じおかずは嫌だよね?」
唯「う~ん? 憂のハンバーグ、すっごく美味しいから……別に毎日でも飽きないよ~?」
憂「(わっ……何て眩しい笑顔……!)」

 私はこれだけでお腹一杯です。
 なんてことを言葉どころか顔にすら出すわけにもいかず。

憂「あ、ありがと、お姉ちゃん……でも、ハンバーグ以外の料理も覚えた方が、みんなびっくりすると思うよ?」
唯「あ、それもそうだねえ……うん」
唯「じゃあ憂教官、ハンバーグじゃない料理を教えてください!」

 ……ハンバーグなぞ肉料理を好む若者に対しては一番の小者でござるよ、お姉ちゃん。

憂「お姉ちゃんは、お弁当のおかずはお肉がいいの?」
唯「……う~ん」
憂「う~ん?」
唯「憂の作ったお弁当は、とっても美味しいから全部好きだよ!」
憂「うわっ」

 ぱああ、とお姉ちゃんの笑顔が光ったような気がした。
 そう言ってくれるのは嬉しいけど、どうも、こう、プレッシャーというか……。

憂「(ううん、お姉ちゃんの為に頑張らなきゃ! ……といっても、やっぱり食材が足りないのです。
 使えそうなのは、学校帰りにパン屋さんで買ってきた食パンにスーパー特売のお野菜、常備品のバター、マヨ、チーズ……脂肪分ばっかり……。

唯「ふんふんふん」
憂「お姉ちゃん、お風呂入ってきて……私、またコンビニ行ってくるから」
唯「うん? ハムとツナ缶もあるし、これなら……サンドウィッチでいいんじゃない?」
憂「……ええ?」

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:53:55.92 ID:6edRAvZE0
 確かに。
 お姉ちゃんにしては珍しく冴えてる、っていうか私も考えたけど、具材のバリエーションが……。

唯「卵が沢山ある! よーし、明日は早起きしてゆで卵作りだー!」
憂「お、お姉ちゃんから早起きとか言い出すなんて……明日は雪? 空襲?」
唯「ゆで卵の作り方教えてね、憂!」
憂「……う、うん……」

 読んで字の如く、そのまんまなのに……お姉ちゃんはやっぱり、お姉ちゃんでした。


よくあさ!

唯「おお……おお……寝ぼけてる間にゆで卵が沢山出来てる……!」
憂「(危ないから私が茹でたんだけどね)」
唯「よーし、確かマヨとゆで卵で一品出来るんだよね! らくしょー!」
憂「じゃあお姉ちゃん、卵を潰してくれるかな? そこのマッシャー使うと楽だよ」
唯「まーかせて!」

 ……お姉ちゃんは、ギターを担いだり弾いたりする体力はあるくせに、ジャガイモを潰すより楽な卵潰しは出来ないようでした。
 結局、私がぐしゃぐしゃすることになりました。

唯「マヨ卵、美味しそうに出来たね~」
憂「朝ご飯は別に作るから、つまみ食いしちゃ駄目だよ、お姉ちゃん」

 お弁当に手を取られたせいで、お姉ちゃんにインスタント味噌汁を飲ませてしまうのが本当に心苦しいです。
 きちんとダシを取って、お姉ちゃんのことを想いながら味付けした、私のとびっきりを味わって欲しいのに……。



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:54:29.04 ID:6edRAvZE0
唯「そういえば、食パンはどこにあるの?」
憂「え? 目の前にあるけど……」
唯「……もしかして、この茶色い塊が食パン?」
憂「うん、そうだよ」
唯「……嘘だッ!」

 ……我が愛する姉ながら、ちょっと先行きが心配です。
 食パンは、スーパーで売られているモノしか知らないっぽいです。

憂「えーとね……ほら」

 パン切り包丁で端を切り落とすと、真っ白い部分が出てきました。
 お姉ちゃんはそれを見て、ようやく『茶色い塊』を『食パン』だと認識したみたいです。

唯「おお~!」
憂「えっとね、この塊を薄く切ったのが食パンになるの。うちには、このパン切り包丁しかないけど……ほら」

 ザザザッとパン粉を散らしながら切ってみせると、お姉ちゃんの目がキラキラ輝きました。
 でも、それは、私の知っている『好奇心』とかではなくて……。

唯「よーし、憂! このパンは私が全部スライスしてくるよ!」
憂「えっ? ううん、すぐ切るから大丈夫だよ?」
唯「憂はパンに挟む具を作っててよ! せめてこれくらいしなきゃ、私が何もしないことになっちゃうし!」
憂「う、うん……それじゃお願いね、お姉ちゃん」

 どんな無茶で変なお願いでも、お姉ちゃんに言われると断れないのが私、平沢憂なのです。



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:54:56.97 ID:6edRAvZE0
唯「綺麗に切れたよー」
憂「わあ! パン切り包丁より綺麗!?」
唯「ふふん、初めてにしては上出来でしょう、妹よ」

 角が少しも崩れていない切れ目、さすがはお姉ちゃんです。
 でも……一体どうやって?

唯「ほら、憂! 早くマヨ塗ってツナ塗ってマヨ塗ってツナ塗ってマヨ卵塗ってマヨ塗ってツナ塗って!」
憂「うっ、うん! お姉ちゃん用はもう出来てるから、一般的なのを作っちゃうね!」
唯「んふー……お腹空いたから、つまみ食いしていい?」
憂「そう言うと思って、リビングに朝食の用意が出来てるよ。お昼は洋食だから、和食にしたよ?」
唯「うーいー! 私、憂のそういう細かい心遣いが堪んなく大好きー!」
憂「もう、お姉ちゃんったら……」

 私はてれてれしつつも、美味しそうに朝食を摂るお姉ちゃんを眺めながらサンドウィッチを作っていくのでした。



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:56:36.28 ID:6edRAvZE0
がっこうのひるやすみ!

律「おお~! 今日も唯が作ったのか!?」
澪「(嘘だ……唯が私より……こんなに美味しそうなサンドウィッチを作るなんて……)」
紬「とても紅茶に合いそうですね♪ すぐに用意してきます」
梓「(……私が昨日あんなに誉めたから、余計に気合いを入れて……?)」
梓「(だ、だとしたら……もっとだきだきふにふにされる……!)」
唯「さあ! 皆さんどうぞ召し上がれ!」

 ふんす!

律「いっただっきまーす……あ、美味い」
澪「(美味しい……このツナマヨの特にマヨ分量が絶妙な……)」
唯「あーずにゃーん♪」
梓「せ、先輩っ!? 顔近いですよ!?」
唯「いやー、あずにゃんが食べてくれて、しかも美味しい表情になってくれたところを見逃したくないなーと思って♪」
梓「い、いえ、そんな表情はしませんけど……いただきます」

 はむ。

梓「はっ!?」
梓「(卵ッ……卵サンドが好物とはいえ、この……このッ! 白身の食感! 黄身もぼそぼそしすぎてない!?)」
梓「(ま、まさか唯先輩が、こんな……うわあ、毎日毎朝こんな素敵卵サンドを作られたら……私、きっと堕ちちゃう……!)」



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:57:40.45 ID:6edRAvZE0
 コンコンコン。

憂「おねーちゃーん?」
唯「あ、憂」
憂「折角まぜまぜしたスパイスボトル忘れてたよ~? 昨夜、一生懸命振ってたのに……」
唯「ああ~、手刀で食パン切るのに一生懸命で……それで疲れて忘れちゃってたよ!」
憂「……手刀?」
唯「はい、コショウとか何だとか色々混ざってる粉! これ振りかけるともっと美味しいよ!」

 うん、有名な波紋使いの人もコショウかけてたもんね!
 スパイスは重要だよ、お姉ちゃん!

律澪「色々?」
梓「はい、早速いただきます!」
律澪「ちょ……」
紬「はわぁ……♪」

梓「くちゅん! くちゅん! くちゅん!」
唯「あれ、あずにゃんてコショウ苦手だった?」
梓「い、いえ、にが……くちゅん! 苦手なのではなく……こうふ……間違って吸い込んじゃっただけです!」
唯「ううん、あずにゃんってば可愛いっ!」
梓「あん、先輩っ……」
憂「(お腹の底がムカムカするのは何でだろう、別に変なことしてるわけじゃないのに)」



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:58:22.11 ID:6edRAvZE0
憂「まー、今日のお弁当は私が作ったんですけどね」
律「……やっぱりなー」
唯「う、憂っ!? 黙っててくれるって約束っ」
澪「(そ、そうか……憂ちゃんが作ったのなら納得だ……でも年下なのに私とレベル差がありすぎて余計に凹む……)」
唯「で、でもパンは私が切ったんだよ!? ギー太の弦で!」
梓「……はい?」
唯「こう、緩めて挟んで、ピシッ! ピシッ! って!」
律澪梓「…………」
憂「あ、それですごい綺麗な切り口だったんだ!」
唯「でしょー♪」
律澪梓「(おいィ!?)」
梓「唯先輩! 今すぐギー太の手入れしましょう!? ナウ!」
唯「ナウ!?」
梓「先輩の分の憂のお弁当も持っていきますから! ナウ! ナウ!」
憂「……いってらっしゃい、お姉ちゃん」
憂「(道理で……)」
唯「ううっ、秘密だったのに……何でバレちゃったの?」
梓「自分でバラしたんじゃないですか! ほら早く!」



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 04:59:22.22 ID:6edRAvZE0
紬「結局、今日もみんな……唯ちゃんの手垢が美味しいって認めちゃったわけね♪」
律「なっ!? て、手垢は関係ないだろ手垢は!」
澪「(やっぱり隠し味は手垢なのか……)」
憂「あ、あの……今日のお弁当は、主に私が……」
紬「憂ちゃんは黙ってて!」
憂「はひぃっ!?」
紬「いい、みんな? 私達は例外なく、唯ちゃんの手垢まみれのお料理を『美味しい』と思って食べていた……」
紬「つまり、唯ちゃんの分泌物は美味しい。この結論が導き出されるわけよ」
律「それは突飛すぎやしないか?」
紬「なら、汗でも涙でも舐めて確かめるといい。でも、現時点での結論は変わらないわ」
澪「そ、そんな……私の分泌物じゃ……駄目なのか……?」
律「いやいやいや! 分泌物とか言ってる時点で駄目だから! 負けだから!」
梓「……私はわかるような気がします」
律「狂ったか梓ァ!?」
梓「分泌物……それは何も、汗とか涙とかだけじゃないと思うんです。その、心から溢れる想いとか……」
梓「私達に、美味しいお弁当を食べさせたいっていう気持ち、とか……」
憂「(それ、主に私が作ったんだけど……黙ってよう)」
澪「そ、そうか! そうだよな! 手垢とかじゃなくて、気持ちが一番大事ってことだよな!?」

 お姉ちゃんは梓に連れていかれちゃったからわからないけど、仲間であるみんなに、美味しいお弁当を食べてもらいたいっていう気持ちは本当だと思います。
 一緒に作った私がそう思うんだから、間違いありません。
 でも、梓を見る目が……私と一緒にいる時より……あれ、何だろうこの感情。
 と、ともかく、お姉ちゃんはみんなの美味しい笑顔を見たかっただけなんです! ……だと思います!

 だから私は、今後もお姉ちゃんのお弁当作りを手伝う所存なのです、まる



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 05:02:14.49 ID:6edRAvZE0
以上
唯キティにしようと思ったけど出来なかったごめん
∀の続きはちょっと寝てからにする


コメント

キャラの口調と二人称がおかしい
こんな基本的なこともできない奴には書かないでほしい

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